説明

弁体開閉装置

【課題】弁体開閉装置の入力ポート数の増加等により、装置内に流入する流体の流体圧の総和が大きくなった場合であっても、簡易な構成で流体の流路を完全に封止することができる弁体開閉装置を提供する。
【解決手段】内部に空間が形成された本体10と、該本体10に接続され該空間に流体を流入させる流入管12および該空間から流体を流出させる流出管14と、前記流体が前記流入管12から前記本体10を経て前記流出管14に流れる流路を開閉する弁体16と、該弁体16を開閉駆動する駆動部18を備えた弁体開閉装置1において、前記弁体16は、前記本体16の前記流入管12と接続される開口65の該流入管12側に設けられ、開口65に当接することで閉状態をなし、開口65から離間することで開状態をなすことを特徴とする弁体開閉装置1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体開閉装置に関し、更に詳しくは、モータ駆動によって弁体を動作させて流路を開閉する弁体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータを駆動源として弁体を駆動し、冷蔵庫等の冷媒流路を開閉する弁体開閉装置が知られている。特許文献1には、弁体をネジ部材に取り付け、このネジ部材をモータによって回転させることにより、弁体をその軸線方向に進退移動させて、冷媒が流入する流路を開閉する弁体開閉装置が記載されている。このような弁体開閉装置は、その用途、配置個所に応じて、入力/出力ポート数等の機械的構造や、その制御方法等が決定される。
【0003】
例えば、特許文献2には、冷凍冷蔵庫において、冷凍室内の温度制御および除霜のために、冷凍室用蒸発器の上流位置に除霜弁を設けた構成が記載されている(図10等参照)。この除霜弁は、入力される温度の異なる三種の冷媒から冷凍室用蒸発器に流出する一種を選択制御するものであり、複数の入力ポート(入力ポート数3、出力ポート数1)を有するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−349740号公報
【特許文献2】特開2001−241825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される弁体開閉装置は、流体の流路を閉鎖する際には、装置内に流入する流体圧に抗して弁体を動作させなければならない。そのため、確実に流路を封止するためには、新たに減速歯車を追加したり、モータ自体のトルクを大きくする等の対応が必要となる場合があり、弁体開閉装置が大型化したり、製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2に示されるような、複数の入力される流体から流出させる流体を選択制御する弁体開閉装置の場合には、入力される流体が単数のものと比較し、装置に入力される流体圧の総和が大きくなる場合が多い。したがって、流体の流路を封止する力をさらに高めることが必要となり、弁体開閉装置の大型化および製造コストの上昇という問題がさらに大きくなる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、弁体開閉装置の入力ポート数の増加等により、装置に付加される流体の流体圧の総和が大きくなった場合であっても、簡易な構成で流体の流路を確実に封止することができる弁体開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る弁体開閉装置は、内部に空間が形成された本体と、該本体に接続され該空間に流体を流入させる流入管および該空間から流体を流出させる流出管と、前記流体が前記流入管から前記本体を経て前記流出管に流れる流路を開閉する弁体と、該弁体を開閉駆動する駆動部を備えた弁体開閉装置において、前記弁体は、前記本体の前記流入管と接続される開口の該流入管側に設けられ、前記開口に当接することで閉状態をなし、前記開口から離間することで開状態をなすことを要旨とするものである。
【0009】
この場合、請求項2に記載のように、前記流入管は複数設けられ、該流入管のそれぞれに前記弁体が設けられていることが望ましい。
【0010】
また、請求項3に記載のように、前記複数の弁体によって前記複数の流入管からの流路の全てを閉状態にするモードと、いずれか一つの流入管からの流路のみを開状態とするモードとを備えていれば好適である。
【0011】
また、請求項4に記載のように、前記複数の弁体によって前記複数の流入管からの流路の全てを開状態にするモードを備えていればさらに良い。
【0012】
また、請求項5に記載のように、前記駆動部は、駆動源であるモータと、該モータの回転により前記弁体を前記開口に当接または離間するよう駆動する直動機構部とからなり、該直動機構部は前記モータによって回転すると共に前記弁体を前記開口から離間させる方向に付勢するカムと、前記弁体を閉方向に付勢する付勢手段とを備えることが望ましい。
【0013】
また、請求項6に記載のように、前記直動機構部は、前記弁体の回転を規制する回り止め機構を有し、該回り止め機構は、前記弁体と係合される直動部材に設けられた凸部と、該直動部材に前記モータの駆動力を伝達するための回転動力伝達部材が支承される軸に形成された凹部とで構成されていればよい。
【0014】
また、請求項7に記載のように、前記回転動力伝達部材にはその回転量を一回転未満に規制するための回転規制部が設けられていればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る弁体開閉装置によれば、流体の流路を開閉する弁体は、弁体開閉装置の本体の外側、すなわち、流体が流入する開口の流入管側に配置されるため、弁体は流入する流体の流体圧によって閉方向に付勢される。そのため、開口を閉状態とする際には、流体に抗する力が必要なくなり、流路を確実に封止することができる。また、この弁体は、その軸線方向に動作することで、開口に当接/開口から離間するように構成されているため、弁体を開口に接続された流入管内に収容することができ、弁体開閉装置の小型化に寄与する。
【0016】
この場合、請求項2に記載のように、上記流入管が複数設けられ、該流入管のそれぞれに弁体が設けられている構成であれば、また、請求項3に記載のように、上記複数の弁体によって複数の流入管からの流路の全てを閉状態にするモードと、いずれか一つの流入管からの流路のみを開状態とするモードとを有する構成であれば、装置内に入力される複数種の流体(例えば温度の異なる複数の流体)のうち、出力する流体を選択的に制御可能な弁体開閉装置とすることができる。
【0017】
さらに、請求項4に記載のように、上記複数の流入管からの流路の全てを開状態にするモードを備えていれば、弁体を開口から離間させておくことで、弁体開閉装置を冷蔵庫等に組み付ける際に生じる溶接熱等により、弁体が損傷してしまうのを防止することができる。
【0018】
また、請求項5に記載のように、上記弁体は、付勢手段によって開口を閉状態とする方向に常に付勢されているため、開口を開状態とする方向に付勢する場合のみ、駆動源であるモータの駆動力が直動機構部を介して使用される。よって、弁体開閉装置の消費電力等を従来よりも抑えることができる。
【0019】
そして、請求項6に記載のように、上記直動機構部において、弁体と係合される直動部材、およびこの直動部材にモータの駆動力を伝達するための回転動力伝達部材が支承される軸に回り止め機構が設けられており、また、請求項7に記載のように、上記回転動力伝達部材には、その回転量を一回転未満に規制するための回転規制部が設けられている。そのため、弁体の回り止めや、歯車等の回転動力伝達部材の回転止めとして別部材を新たに設ける必要がなく、弁体開閉装置の構成をコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係る弁体開閉装置1の断面図であり、図2はその外観斜視図である。
【0021】
この弁体開閉装置1は、装置に入力(流入)される二種の流体(温度の異なる二種の流体)のうち、いずれか一方の流体を選択的に出力(通過)させることができる、いわゆる「2IN/1OUT」バルブである。なお、以下の説明において、装置に入力される一方の流体Aを制御するための構成部品と、他方の流体Bを制御するための構成部品は同一であるため、一方の説明は省略する。また、場合によっては、流体Aを制御するための構成部品に符号「a」を、流体Bを制御するための構成部品に符号「b」を付し、両者を区別して説明する。
【0022】
弁体開閉装置1は、内部に流体空間5を有する本体10と、この本体10に接続され、流体空間5内に流入する流体の流路となる流入管12と、流体空間5から流出する流体の流路となる流出管14と、流入管12内に設けられ、弁座68に密着/離間することで流体空間内に流入する流体の流路を開閉する弁体16と、この弁体16を開閉駆動するための駆動部18とを備える。以下、各構成について具体的に説明する。
【0023】
本体10は、流体空間5が形成されるケース体であり、本体ケース20およびベースプレート22とから構成される。本体ケース20は、相対的に大径の大径筒部201と相対的に小径の小径筒部202とが、ステンレス材料のプレス絞り加工により形成されてなるものである。
【0024】
ベースプレート22は、ステンレス製の板材であり、本実施形態では、流体が流体空間5へ流入するための流入口24、流体空間5から流出するための流出口(図示しない)が形成されている。また、後述するプレート52を位置決め固定するための位置決めピン23が二個所に立設されている。
【0025】
そして、上記本体ケース20の大径筒部201の開口端縁には、フランジ部21が、ベースプレート22の周縁には、段差部221が形成されている。このフランジ部21と段差部221がTIG(タングステンイナートガス)溶接により固着されることによって、本体10が構成される。
【0026】
一方、流入管12および流出管14は、銅製のパイプである。流入管12および流出管14は、上記ベースプレート22に形成された流入口24および図示されない流出口にそれぞれロウ付けにより接続固定される。これにより、本体10の流体空間5に流入する流体、および流体空間5から流出する流体の流路を形成する。
【0027】
弁体16は、円柱状のゴム製の弾性部材である。弁体16は、詳細を後述するスライダ60の先端部66に形成された段差部661に、ワッシャ191を介してスプリングナット192により固定される。この弁体16がモータ30の駆動力を得て弁座68に密着/離間することで、弁体開閉装置1に流入する流体の流路を遮断/開放する。
【0028】
駆動部18は、駆動源であるモータ30と、このモータ30の駆動力を上記弁体16に伝達するための直動機構部50とを備える。
【0029】
モータ30は、公知のステッピングモータであり、ロータ32およびステータ部40とから構成される。ロータ32は、本体ケース20およびベースプレート22の中央に支持された支軸90に支承されている。ロータ32には、支軸90に遊挿される軸筒部34に円環状のマグネット(永久磁石)36が、軸筒部34の外周両端縁に周設される保持部341に支持された状態で一体的に設けられている。また、ロータ32のベースプレート22側には、図示されないカップリング機構により、モータ30の回転動力を出力するための出力歯車38がロータ32と一体的に回転するように設けられている。この出力歯車38は、後述するプレート52の貫通孔521に挿通されて、大径筒部201の内周側に位置する。
【0030】
そして、このロータ32に対応して、本体ケース20の小径筒部202の外周面には、2層のステータ401が配設されたステータ部40が形成されている。各ステータ401は、コイルボビン42に駆動コイル44が巻回されることで形成される。このステータ部40は、その外周面を囲うようにステータケース46に固定され、本体ケース20の外側に被着されている。
【0031】
また、このステータ401の各駆動コイル44は、この端子の各先端部分が制御基板48の所定の位置に接続されており、この制御基板48が駆動コイル44への通電を制御することにより、ロータ32の回転が制御される。
【0032】
直動機構部50は、プレート52と、伝達歯車56と、スライダ60と、スプリング70とを備える。この直動機構部50の構成を説明するための分解図を図3および4に示す。
【0033】
プレート52は、ポリナノメチレンテレフタラミド(PA9T)により一体成形された板状の部材であり、ベースプレート22に取り付けられる部材である。その略中央には、ロータ32の出力歯車38が挿通可能な貫通穴521が形成されている。また、貫通穴521の周囲には、軸53および位置決めボス54が貫通孔521を隔てて、それぞれ二本設けられている。軸53は、伝達歯車56およびスライダ60が支承される軸部材であり、その長手方向に延在して、スライダ60の回り止め機構の一部である凹部531が形成されている。一方、位置決めボス54には、ベースプレート22に立設された位置決めピン23が係合され、これにより、プレート52は、所定の位置に位置決め固定されることとなる。
【0034】
伝達歯車56は、プレート52と同様にポリナノメチレンテレフタラミド(PA9T)により一体成形され、ロータ30の出力歯車38と噛合する歯車である。その回転軸線上には、上記軸53が遊挿可能な軸孔57が貫通して形成されている。また、この軸孔57と同軸上に、軸孔57よりも径が大きい有底の係合穴58が形成されている。そして、係合穴58の底面には、係合穴58の壁面に沿って所定幅に形成されたカム溝591が形成された凹カム面59が形成されている。このカム溝591は、伝達歯車56の回転方向に沿って、溝が深くなるように形成されている。
【0035】
また、伝達歯車56には、回転規制部561が設けられている。この回転規制部561は、伝達歯車56の原位置を設定し、かつ伝達歯車56が一回転以上しないよう規制するための凸部材である。さらに、この回転規制部561には、円形の凹部562が形成されている。この凹部562は、伝達歯車56aおよび56bの回転方向の位置関係が所定の関係になるようにするため使用される。具体的には、例えば、治具プレートに二本の位置決めピンを立設し、この位置決めピンを凹部562に係合させることで、伝達歯車56aおよび56bを所定の位置関係に位置決めする。
【0036】
スライダ60は、プレート52および伝達歯車56と同様にポリナノメチレンテレフタラミド(PA9T)により一体成形され、土台部62、本体部64、先端部66とからなる軸部材である。
【0037】
土台部62は、伝達歯車56の係合穴58に係合される部分であり、その底面には、上記カム溝591と係合される突起631が形成された凸カム面63が形成されている。
【0038】
本体部64は、スプリング70および弁座68に挿通される部分であり、その外周面には、回転方向に90度間隔で長手方向に所定幅の溝641が形成されている。図5に図1におけるF−F断面図(弁体16と弁座68の当接面の断面図)を示す。この図から分かるように、本体部64が弁座68の軸孔681に挿通されると、溝641により弁座68の軸孔681と、スライダ60の本体部64の間に開口65ができる。弁体16が開状態にある際には、この開口65を通じ、弁体開閉装置1に入力される流体が流体空間5内に流れ込むこととなる。
【0039】
先端部66は、弁体16が取付固定される部分であり、前述のように、その段部661に、弁体16が載置されて固定されている。
【0040】
また、スライダ60には、軸53が挿通される軸孔67が形成されている。そして、この軸孔67には、軸孔67の半径方向の内側に向かって突出した係合凸部671が形成されている。この係合凸部671は、プレート52の軸53に形成された係合凹部531と係合し、スライダ60(弁体16)の回り止め機構を構成する。なお、この回り止め機構は、このような構造に限られるものではない。つまり、軸53および軸孔67の係合によって、スライダ60(弁体16)の回り止めがなされる構成であればよく、例えば、軸53および軸孔67の断面をD形にしたいわゆるDカット構造や、断面を鋸歯形にしたいわゆるセレーション構造を採用してもよい。これにより、新たにスライダ60(弁体16)回り止めのための別部材を設ける必要がなく、かつ直動機構部50の構成をコンパクトなものとすることができる。
【0041】
また、このスライダ60は、軸53に挿通されると共に、前述のように伝達歯車56の係合穴58に係合される。したがって、スライダ60の軸線に対し垂直方向(ラジアル方向)の動きが規制されている。これにより、スライダ60の倒れ、つまり弁体16の倒れを防止することができるため、流体の流路を閉鎖する際には、弁体16と弁座68が平行に密着し流路を確実に遮断する。
【0042】
弁座68は、ステンレス製の筒状の部材であり、スライダ60の本体部64が遊挿される軸孔と、この軸孔よりも大きく、スライダ60の本体部64に挿通されたスプリング70が収納可能なスプリング収納孔681が形成されている。弁座68は、小径部と大径部とからなり、小径部がベースプレート22に形成された各流入口24に圧入されることで、ベースプレート22に固定されている。
【0043】
このように構成される弁体開閉装置1の組立方法について、一部上記説明と重複するが、図6、7および図1を参照して説明する。
【0044】
まず、ベースプレート22の流出口24に弁座68を圧入固定した後、流出管12および流入管14をロウ付けにより固定する(図6)。なお、ロウ材としては、特に限定されるものではないが、ニッケルロウが最も好適である。
【0045】
次いで、プレート52の軸53に伝達歯車56およびスライダ60を挿通する。具体的には、スライダ60の土台部62を伝達歯車56の係合穴58に嵌め込み、伝達歯車56の凹カム面59とスライダ60の凸カム面63とを係合させた状態で軸53に挿通する。この時、軸53に形成された係合凹部531と、スライダ60の軸孔67に形成された係合凸部671が係合する。また、伝達歯車56aおよび56bは、前述した凹部562を利用する方法により、歯車の回転方向が所定の位置関係になるよう組み付ける。そして、スライダ60の本体部64にスプリング70を挿通する。
【0046】
この状態で、プレート52の位置決めボス54に、ベースプレート22に立設された位置決めピン23を係合し、プレート52をベースプレート22に取り付ける。これにより、伝達歯車56およびスライダ60がベースプレート22とプレート62の間に支持される。また、スプリング70は、弁座68とスライダ60間に挾持される。そして、弁座16は、流入管12の先端から落とし込まれる(図7)ことにより、スライダ60の先端部66に固定される(図8)。
【0047】
最後に、ロータ32を収納した本体ケース20とベースプレート22がTIG溶接により固定され、ステータ部40および冷蔵庫等に弁体開閉装置1を固定するための取付板99が取り付けられて組立は完了する(図1)。
【0048】
次に、弁体開閉装置1における弁体16の開閉動作について、図9のタイムチャートに基づき以下説明する。なお、このタイムチャートにおいて、INAが弁体16aの開閉状態を表し、INBが弁体16bの開閉状態を示しており、またタイムチャートの下には、弁体16aおよび弁体16bの開閉状態を模式的に示した図を付属した。
【0049】
まず、初期状態(原位置)においては、入力される流体圧によって弁体16aおよび16bが弁座68aおよび68bに押圧され、開口65aおよび65b(流入口24aおよび24b)は、共に閉状態となっている(1.閉−閉モード)。
【0050】
この状態から、モータ30を駆動し、ロータ32を回転させると、これに伴い伝達歯車56a,56bが回転する。このときの伝達歯車56aの回転方向と、伝達歯車56bの回転方向は逆方向になる。所定量ロータ32が回転すると、伝達歯車56aの凹カム面59aにより、前述の回り止め機構により回転方向への動きが規制されているスライダ60aが押し上げられ、弁体16aが開状態となる。一方、弁体16bは、未だ閉状態に位置する(2.開−閉モード)。なお、このとき、スライダ60aが押し上げられることにより、スライダ60aと弁座68aの間に介在されたスプリング70aが収縮し、弁体16aを閉方向に付勢する状態となる。
【0051】
次いで、さらに所定量ロータ32を回転させると、今度は伝達歯車56bの凹カム面59bにより、スライダ60bが押し上げられ、弁体16bが開状態となる。一方、弁体16aの開状態もそのまま維持される(3.開−開モード)。このとき、弁座16aと同様に、スプリング70bが収縮し、弁体16bを閉方向に付勢する状態となる。
【0052】
そして、さらに所定量ロータ32を回転させると、伝達歯車56aの凹カム面59aによるスライダ60aの押し上げが解除される。すると、弁体16aは、スプリング70の付勢力により、閉状態に戻ろうとする。さらにこの時、弁体16aは、スプリング70aの付勢力に加え、流体空間5に流入している流体圧の閉方向への付勢力を受けて、弁座68に押圧されることから、確実に流体の流れを遮断することができる(4.閉−開モード)。
【0053】
このように、本実施形態に係る弁体開閉装置1は、弁体16a,16bの開閉状態として、四種類のモードを有し、モータ30の正転/逆転を適宜切り替えて、所望のモードになるように制御される。そのうち、いずれか一方が開状態となるモード、すなわち、(2.開−閉モード)と(4.閉−開モード)を適宜切り替えることで、入力される二種の流体のうち、いずれか一方の流体を選択的に通過させることができる。
【0054】
なお、上記弁体16の開閉動作の説明において、初期状態(原位置)が(1.閉−閉モード)であることを説明したが、これに限られるものではない。つまり、ロータ32の回転量を変化させることにより、上記四種類のモードを適宜切替制御することができる構成であればよい。
【0055】
また、本実施形態は、弁体16aおよび16bを開状態に位置させる(3.開−開モード)が、選択可能に構成されている。このモードは、弁体開閉装置1の流入管12および流出管14が流体流路と溶接(ロウ付け)により連結される際の熱より、ベースプレート22が高温になってしまう場合に使用すればよい。つまり、ベースプレート22から弁体16aおよび16bの両方を離間させることで、溶接熱による弁体16aおよび16bの損傷を防止することができる。さらに、当然ではあるが、弁体開閉装置1の使用態様により、入力される二種の流体を混合させて通過させることが必要である場合に使用すればよい。
【0056】
次に、本発明の第二の実施形態に係る弁体開閉装置を説明する。この弁体開閉装置は、装置に流入(入力)する三種の流体(温度の異なる三種の流体)のうち、いずれか一種の流体を選択的に出力(通過)することができる、いわゆる「3IN/1OUT」バルブである。なお、この弁体開閉装置は、入力される流体が増加したことに伴い、これに対応した流路(流入管12)および伝達歯車56やスライダ60等の直動機構部50の構成部品が増加した点のみで、上記第一の実施形態に係る弁体開閉装置1と異なる。したがって、第二の実施形態に係る弁体開閉装置において加わった構成部品については、符号「c」を付して表すものとし、その具体的な構成ならびに組立方法の説明は省略する。
【0057】
この弁体開閉装置における弁体16の開閉動作について、図10のタイムチャートに基づき以下説明する。なお、このタイムチャートにおいて、INAが弁体16a、INBが弁体16b、INCが弁体16cの開閉状態を示している。
【0058】
まず、初期状態(原位置)においては、入力される流体圧によって弁体16a〜16cが弁座68a〜68cに押圧され、開口65a〜65c(流入口24aおよび24c)は、全て閉状態となっている(1.閉−閉−閉モード)。
【0059】
この状態から、モータ30を駆動し、ロータ32を回転させると、これに伴い伝達歯車56a〜56cが回転する。所定量ロータ32が回転すると、伝達歯車56aの凹カム面59aにより、前述の回り止め機構により回転方向への動きが規制されているスライダ60aが押し上げられ、弁体16aが開状態となる。一方、弁体16bおよび16cは、未だ閉状態に位置する(2.開−閉−閉モード)。このとき、スライダ60aが押し上げられることにより、スライダ60aと弁座68aの間に介在されたスプリング70aが収縮し、弁体16aを閉方向に付勢する状態となる。
【0060】
この状態から、さらに所定量ロータ32を回転させると、今度は伝達歯車56bの凹カム面59bにより、スライダ60bが押し上げられ、弁体16bが開状態となる。一方、弁体16aの開状態、弁体16cの閉状態もそのまま維持される(3.開−開−閉モード)。このとき、弁座16aと同様に、スプリング70bが収縮し、弁体16bを閉方向に付勢する状態となる。
【0061】
そして、さらに所定量ロータ32を回転させると、伝達歯車56aの凹カム面59aによるスライダ60aの押し上げが解除される。すると、弁体16aは、スプリング70aの付勢力により、閉状態に戻ろうとする。さらにこの時、弁体16aは、スプリング70aの付勢力に加え、流体空間5に流入している流体圧の閉方向への付勢力を受けて、弁座68に押圧されることから、確実に流体の流れを遮断することができる(4.閉−開−閉モード)。
【0062】
この後、順次所定量ロータ32を回転させていくことにより、弁体16cが開状態となり(5.閉−開−開モード)、次いで弁体16bがスプリング70bおよび流体圧の付勢により閉状態となり(6.閉−閉−開モード)、次いで弁体16aが開状態となり(7.開−閉−開モード)、最後に弁体16bが開状態となり、弁体16a〜16cのすべてが開状態に位置することとなる(8.開−開−開モード)。
【0063】
このように、第二の実施形態に係る弁体開閉装置は、弁体16a〜16cの開閉状態として、八種類のモードを有する。そのうち、いずれか一つが開状態となるモード、すなわち、(2.開−閉−閉モード)、(4.閉−開−閉モード)および(6.閉−閉−開モード)を適宜切り替えることで、入力される三種の流体のうち、いずれか一種の流体を選択的に通過させることができる。
【0064】
なお、この弁体開閉装置によれば、弁体開閉装置に入力される三種の流体のうち二種以上を混合させて通過させるモード、すなわち、(3.開−開−閉モード)、(5.閉−開−開モード)、(7.開−閉−開モード)、(8.開−開−開モード)を適宜切り替えることで、出力される流体温度等を調節することも可能である。
【0065】
また、第一の実施形態に係る弁体開閉装置1と同様に、弁体16a〜16cの全てを開状態に位置させるモード(8.開−開−開モード)を選択することにより、溶接熱による弁体16a〜16cの損傷を防止することができる。
【0066】
なお、上記第一および第二の実施形態に係る弁体開閉装置において、モータ30の駆動力は、その出力歯車38から伝達歯車56に伝達されることを説明したが、これに限られるものではない。すなわち、このような歯車機構のみならず、プーリやスプロケット等による伝達機構を採用してもよい。また、弁体16を開方向に付勢する駆動力が不足する場合、出力歯車38と伝達歯車56との間に減速ギヤを介在させて、出力トルクを増加させる構成としてもよい。
【0067】
このように、本実施形態に係る弁体開閉装置によれば、流体流路を開閉する弁体16は、本体10の外側、すなわち、流体が流入する開口65(流入口65)の流入管側に配置されるため、弁体16は、流入する流体の流体圧によって閉方向に付勢される。そのため、開口65(流入口65)を閉状態とする際には、流体に抗する力が必要なくなり、開口65(流入口65)を確実に封止することができる。また、この弁体16は、その軸線方向に動作することで、開口65(流入口65)に当接、および開口65(流入口65)から離間するように構成されているため、弁体16を流入管12内に収容することができ、弁体開閉装置の小型化に寄与する。
【0068】
また、弁体開閉装置は、複数の弁体16によって複数の流入管12からの流路の全てを閉状態にするモードと、いずれか一つの流入管12からの流路のみを開状態とするモードとを有ているため、入力される複数種の流体のうち、通過させる流体を選択的に制御する場合に好適に使用することができる。
【0069】
さらに、弁体開閉装置は、複数の流入管12からの流路の全てを開状態にするモードを備えているため、弁体開閉装置を冷蔵庫等に組み付ける際に生じる溶接熱等により、弁体16を開口から離間させておくことで、弁体16が損傷してしまうのを防止することができる。
【0070】
また、弁体16は、スプリング70によって開口65を閉状態とする方向に常に付勢されているため、開口65を開状態とする方向に付勢する場合のみ、駆動源であるモータ30の駆動力が直動機構部50を介して使用される。これにより、弁体開閉装置の消費電力等を従来よりも抑えることができる。
【0071】
さらに、直動機構部50においては、弁体16と係合されるスライダ60の係合凸部671と、伝達歯車56が支承される軸53に形成された係合凹部531とが係合することによって、スライダ60(弁体16)回り止め機構が構築されている。また、伝達歯車56には、その回転量を一回転未満に規制するための回転規制部561が設けられている。そのため、弁体16の回り止めや、伝達歯車56の回転止めとして別部材を新たに設ける必要がなく、弁体開閉装置の構成をコンパクトにすることができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0073】
例えば、本実施形態に係る弁体開閉装置は、取付板99によって冷蔵庫等の内部に取付固定されて、イソブタンやフロン等の冷媒流路を開閉制御する場合に好適に使用できるものであるが、その他の液体や気体を開閉制御する開閉バルブにも本願発明の技術的思想は適用可能である。
【0074】
また、上記駆動源は、(ステッピング)モータ30であることを説明したが、駆動源としてソレノイド、シリンダ等を使用してもよい。さらに、上記実施形態では、凹カム面59と凸カム面63によるカム機構により回転動力が直線動力に変換されることを説明したが、弁体が設けられたネジ部材を回転させることによって、弁体を開口65に対して進退動作させる構造等、回転運動を直線運動に変換できる動力伝達機構を有していればよく、上記構成に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る弁体開閉装置の断面図である。
【図2】図1に示した弁体開閉装置の外観斜視図である。
【図3】図1に示した弁体開閉装置における直動機構部の構成を説明するための分解斜視図である。
【図4】図1に示した弁体開閉装置における直動機構部の構成を説明するための分解斜視図である。
【図5】図1に示した弁体開閉装置のF−F断面図である。
【図6】図1に示した弁体開閉装置の組立方法を説明するための断面図である(弁座、流出管および流入管がベースプレートに固定された状態を示す)。
【図7】図1に示した弁体開閉装置の組立方法を説明するための断面図である(弁体が流入管の先端から組み付けられる状態を示す)。
【図8】図1に示した弁体開閉装置の組立方法を説明するための断面図である(弁体がスライダに組み付けられた状態を示す)。
【図9】図1に示した弁体開閉装置の開閉動作を説明するためのタイムチャートである。
【図10】本発明の第二の実施形態に係る弁体開閉装置の開閉動作を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 弁体開閉装置(第一実施形態)
10 本体
12 流入管
14 流出管
16 弁体
18 駆動部
24 流入口
30 モータ
50 直動機構部
52 プレート
53 軸
531 係合凹部
56 伝達歯車
59 凹カム面
591 カム溝
60 スライダ
63 凸カム面
631 突起
641 溝
65 開口
671 係合凸部
68 弁座
70 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間が形成された本体と、該本体に接続され該空間に流体を流入させる流入管および該空間から流体を流出させる流出管と、前記流体が前記流入管から前記本体を経て前記流出管に流れる流路を開閉する弁体と、該弁体を開閉駆動する駆動部を備えた弁体開閉装置において、
前記弁体は、前記本体の前記流入管と接続される開口の該流入管側に設けられ、前記開口に当接することで閉状態をなし、前記開口から離間することで開状態をなすことを特徴とする弁体開閉装置。
【請求項2】
前記流入管は複数設けられ、該流入管のそれぞれに前記弁体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弁体開閉装置。
【請求項3】
前記複数の弁体によって前記複数の流入管からの流路の全てを閉状態にするモードと、いずれか一つの流入管からの流路のみを開状態とするモードとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の弁体開閉装置。
【請求項4】
前記複数の弁体によって前記複数の流入管からの流路の全てを開状態にするモードを備えていることを特徴とする請求項3に記載の弁体開閉装置。
【請求項5】
前記駆動部は、駆動源であるモータと、該モータの回転により前記弁体を前記開口に当接または離間するよう駆動する直動機構部とからなり、該直動機構部は前記モータによって回転すると共に前記弁体を前記開口から離間させる方向に付勢するカムと、前記弁体を閉方向に付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の弁体開閉装置。
【請求項6】
前記直動機構部は、前記弁体の回転を規制する回り止め機構を有し、該回り止め機構は、前記弁体と係合される直動部材に設けられた凸部と、該直動部材に前記モータの駆動力を伝達するための回転動力伝達部材が支承される軸に形成された凹部とで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の弁体開閉装置。
【請求項7】
前記回転動力伝達部材にはその回転量を一回転未満に規制するための回転規制部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の弁体開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−261433(P2008−261433A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104621(P2007−104621)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】