弁内蔵管接手
【課題】管接手切離し時に、連結口に配設した弁体の間の残留油を実質的になくし、連結・切離し時に油漏れしにくい構造の弁内蔵管接手を提供する。
【解決手段】一対の第1接手1a、第2接手1bを連結した場合には、密接した連結口11a、11bにおいて、外部から駆動される回動軸部21と従動軸部22を有する回動可能な円盤状弁体2を開放状態にし、連通流路10が形成される。この円盤状弁体2は、厚み方向に直角に全体として2分割可能に構成され、この管接手を切り離したときには、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとに2分割されるよう構成され、円盤状弁体2は、回動されるとともに分割されて、一方の第1分割弁体2aは第1接手1aの連結口11aを閉止するよう配置され、他方の第2分割弁体2bは第2接手1bも連結口11bを閉止するよう配置される。
【解決手段】一対の第1接手1a、第2接手1bを連結した場合には、密接した連結口11a、11bにおいて、外部から駆動される回動軸部21と従動軸部22を有する回動可能な円盤状弁体2を開放状態にし、連通流路10が形成される。この円盤状弁体2は、厚み方向に直角に全体として2分割可能に構成され、この管接手を切り離したときには、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとに2分割されるよう構成され、円盤状弁体2は、回動されるとともに分割されて、一方の第1分割弁体2aは第1接手1aの連結口11aを閉止するよう配置され、他方の第2分割弁体2bは第2接手1bも連結口11bを閉止するよう配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧装置などに用いられる油圧配管のための、弁を内蔵した管接手に関するものであって、特に、切離し時に油漏れを防止するようにした弁を内蔵した管接手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧配管を連結する目的の弁を内蔵した管接手としては、特許文献1に示すような、注液管と排液管のそれぞれの連結口部分に弁体を対向させて配設したものが知られている。そして、このような構造の弁内蔵管接手では、連結時または切離し時に弁の開閉動作の時間的ずれのため若干の油漏れが生じる問題があった。また、特に切離し時には、それぞれの弁体相互間の空間に残留する油が、連結口から溢れ出るという問題もあった。
【0003】
特許文献1では、このような問題の解決方法を提案している。すなわち、連結口の一方に弾性的に伸縮自在な2重蛇腹管を装着して、連結時には予め2重蛇腹管で隙間を封止するようにし、また切離し時には弁体に閉鎖完了まで隙間を封止するようにして、油漏れを防止するとともに、弁体相互間の空間に残留する油をこの2重蛇腹管内に自動的に吸引するようにしたものである。
【0004】
ところが、この伸縮自在な2重蛇腹管は、常時、連結口から突出しているため、管接手の連結作業時に邪魔になるうえ、干渉しやすいため破損しやすいなどという不具合があった。さらに、搬送油分に対して高耐久性の構造とすることにもかなり困難があった。
【特許文献1】特開昭52−76731号公報:特許請求に範囲、第4図、第5図、第6図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、先ず、管接手切離し時に、それぞれの連結口に配設した弁体の間の残留油を実質的になくするとともに、連結・切離し時に油漏れしにくいうえ、自動化が容易な弁内蔵管接手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題は、連結・切離し可能に当接する一対の連結口に、外部から駆動される回動軸部を有する回動可能な円盤状弁体を備えた弁内蔵管接手であって、該円盤状弁体は、厚み方向に直角に2分割可能に構成されていて、この管接手を切り離したときには、その円盤状弁体は2分割され、一方の分割弁体は一方の連結口を閉止するよう配置され、他方の分割弁体は他方の連結口を閉止するよう配置されるとともに、この管接手を連結したときには、それぞれの分割弁体は一体となって回動され、閉止していた連結口を開放して連通流路を形成可能にしたことを特徴とする本発明の弁内蔵管接手によって、解決することができる。
【0007】
そして、本発明は、前記円盤状弁体の回動軸部基部には、管接手の連結口端部に嵌着するための軸シール部が一体に形成され、かつ円盤状弁体と同じく2分割可能に形成されているとともに、対向する連結口端部には略環状の連結口シール部が設けられている形態に具体化される。この前記各軸部を包囲するシール部材は、軸部の近傍部分は外周部分より軟質のゴム質で構成され、その軸部が回動するときには、近傍部分のシール部材は軸部と一体となって回動するものの、外周部分は管接手の連結口端部に固着されているものであるのが好適である。
【0008】
また、本発明は、前記管接手の連結口外周には、内面に出没可能な弁体固定ピン部材が設けられ、この管接手を切り離すときには、それぞれの分割弁体の外周部分を拘束して連結口の閉止状態を保持するとともに、この管接手を連結するときには、前記拘束を解いてそれぞれの分割弁体を回動可能にするようにした形態に具体化される。
【0009】
前記した弁体の回動操作および固定ピンの操作については、前記管接手の連結・切離しに際して、その操作力をラックを介して前記円盤状弁体の回動軸に設けたピニオンに伝達して連結口開閉のため弁体を回動駆動するとともに、その操作力で移動するカムによって前記弁体の拘束・解除のため前記弁体固定ピン部材を押出し・引込み操作するように構成するのが好ましい。
【0010】
また、前記管接手の連結口外周には、その管接手の連結位置を定めるための位置決め部材として、一方の管接手側にはガイドロッドを設け、他方の管接手側にはそのガイドロッドを挿入可能なガイド溝が設けるのが好ましく、さらには、連結時に連結口相互を拘束して外れないようにするロック機構をその位置決め部材に内装するようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
先ず、本発明では、厚み方向に直角に全体が2分割可能に構成された円盤状弁体を連結口に備えた弁内蔵管接手であって、この管接手を切り離したときには、その円盤状弁体は2分割され、一方の分割弁体は一方の連結口を閉止するよう配置され、他方の分割弁体は他方の連結口を閉止するよう配置されるとともに、この管接手を連結したときには、それぞれの分割弁体は一体となって回動され、閉止していた連結口を開放して連通流路を形成可能にしたことにより、管接手切離し時には、それぞれの連結口に配設した弁体の間に空間が生じないのでその間に搬送油が残留することがないという利点がある。
【0012】
次いで、この管接手を連結状態から切り離すときには、予め2分割される円盤状弁体のそれぞれがそれぞれの連結口を閉止するように操作され、またこの管接手を切離し状態から連結するときには、実質的に連結が行われてから、閉止していた連結口を開放するよう操作できるので、連結・切離しの操作時に油漏れが生じることが防止され、さらに連結・切離しの操作時の各パーツの動作を自動化し易く構成できるなどの利点が得られるのである。かくして本発明は、従来の問題点を解消した弁内蔵管接手として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の弁内蔵管接手に係る実施形態について、図1〜11を参照しながら説明する。
(基本的な構造原理)
先ず、図1、2を参照して本発明の構造原理について説明する。ここで、本発明の弁内蔵管接手のうち一方の接手を第1接手1a、他方の接手を第2接手1bとする。
本発明は、連結・切離し可能に当接する一対の第1接手1a、第2接手1bを図1に示すように連結した場合には、密接した連結口11a、11bにおいて、外部から駆動される回動軸部21と従動軸部22を有する回動可能な円盤状弁体2を開放状態にして配設し、連通流路10が形成されるようにした点を基本的構造としている。
【0014】
そしてこの円盤状弁体2は、厚み方向に直角に全体として2分割可能に構成され、この管接手を図2ように切り離したときには、その円盤状弁体2は、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとに2分割されるよう構成されている。この場合、回動軸部21と従動軸部22も、半円柱状の第1分割回動軸部21a、第2分割回動軸部21bと、同じく第1分割従動軸部22a、第2分割従動軸部22bとに2分割される。
【0015】
そして、第1接手1a、第2接手1bを図2に示すように切り離した場合には、円盤状弁体2は、開放状態から回動されるとともに分割されて、一方の第1分割弁体2aは第1接手1aの連結口11aを閉止するよう配置され、他方の第2分割弁体2bは第2接手1bも連結口11bを閉止するよう配置されるのである。そして、この状態から管接手が連結されるときには、それぞれの分割弁体2a、2bは一体となり、同じく一体化された回動軸部21と従動軸部22を軸として回動され、図1に示すごとく、閉止していた連結口11a、11bを開放して連通流路10を形成可能とするものである。
【0016】
かくして、本発明では、このように分割方式の弁体を用いることにより、接手の連結・切離し時の機械的動作に連動させて、円盤状弁体2を正方向または逆方向に回動させれば、連結口を閉止・開放することができ、切離し時には、従来の接手のように弁体間に油が残留することないので残留油が漏れ出すということがない利点が得られるのである。この場合、軸部21、22の周辺および連結口11a、11b間、分割弁体2a、2bの対向面など可動部分や接離部分には適宜なシール部材を介在させて所要の封止状態を保持するのが好ましい。
【0017】
(軸部のシール構造)
次に、軸部21、22の周辺および連結口11a、11b間に設けられるシール部について図3を参照して説明すると、第2分割弁体2bの第2分割回動軸部21bと第2分割従動軸部22bのそれぞれには、管接手側の連結口端部に嵌着するための回動軸シール部31b、従動軸シール部32bが一体に形成され、また図4に示すように、第1分割弁体2a側にも、全く対称的に回動軸シール部31a、従動軸シール部32aが一体に形成されている。
【0018】
そして、それぞれの軸シール部31a、31b、32a、32bには、管接手側の連結口端部を内外から挟持するための一対のフランジ部33a、34a、同じくフランジ部33b、34b、同じくフランジ部35a、36a、同じくフランジ部35b、36bが設けられている。しかして、これら回動軸シール部31a、31b、従動軸シール部32a、32bのそれぞれは、図5に示すように、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとを密着させたときには、一体化されるとともにそれぞれの軸部と連結口端部とはシールされるのである。
【0019】
なお、第1および第2分割回動軸部21a、21bの先端には、図3、4に示すように、それぞれ分割ピニオン歯車23a、23bが設けられている。この分割ピニオン歯車23a、23bは、追って詳しく説明するが、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとを連結し密着させたときには一体化された円形ピニオン歯車として機能するのはいうまでもないことである。
【0020】
ここで、各軸シール部31a、31b、32a、32bの特長について補足すると、これら各軸部を包囲するシール部材は、軸部の近傍部分は外周部分より軟質のゴム質で構成され、回動軸シール部31a、31b、従動軸シール部32a、32bが一体化され回動するときには、それらと近傍部分のシール部材は軸部と一体となって回動するものの、外周部分は管接手の連結口端部に固着されているものである。すなわち、軸部とシール部材、シール部材と連結口端部の接合部分は、相互に拘束していて、シール部材は全体として軸部を中心にねじれた状態となるのであって、回動中に滑動する部分がないのである。従って、部材間からの油漏れ防止のシール作用はより一層確実となる利点がある。
【0021】
(連結口間のシール構造)
図3(B)に示すように、対向する第1接手1a、第2接手1bの連結口端部には円周に沿って、リング状凹条12a、リング状凸条12bを設けて、連結時にそれが嵌合してシール作用を発揮する略環状の連結口シール部とするものである。これは、連結時には弁体2が閉止から開放状態に回動するわずかな時間だけ、予め両接手1a、1b間をシールするためであり、また切離し時には、弁体2が開放から閉止状態に回動するわずかな時間だけ、予め両接手1a、1b間をシールするためである。かくして、連結・切離し時の油漏れを防止できるのである。
【0022】
(分割弁体間のシール構造)
同じく、図3(B)に示すように、前記した連結口間のシール構造の合わせて、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bの対向面外周部近傍にリング状凹条25a、リング状凸条25bが設けられ、連結時にそれが嵌合してシール作用を発揮する弁体間シール部とするのが好ましい。これは、連結・切離し時に分割弁体2a、2bがわずかに離間したときでも、分割弁体2a、2b間の隙間に油が侵入しないようシールするものである。弁が開放状態では分割弁体2a、2bは密着しているので、もともと相互の隙間には油の侵入はごく少ないのであるが、この弁体間シール部によって残留油は無視できる程度のものとなる。
【0023】
(分割弁体の固定構造)
本発明では、切離し時には第1、2の管接手の連結口11a、11bは、それぞれ分割弁体2a、2bによって閉止され(図3A参照)、連結時には、それらが一体化して回動し連結口を開放するのであるから、分割弁体2a、2bは何らかの手段によって連結口11a、11b部分に解除可能に固定されることが必要である。
【0024】
このために、図6(A)に示すような、固定形態が好ましい。すなわち、前記管接手の連結口11a、11b近傍の外周壁に配置された、好ましくは4個の弁体固定ピン部材4であり、この弁体固定ピン部材4は、図6(B)のように、金属製先細先端を持つの固定ピン41と、その周囲に一体に形成される弾性パッキン42からなり連結口近傍の外周壁に設けられた固定穴13にシール状態に嵌着され、固定ピン41が押出し・引込み可動状態に保持されたものである。
【0025】
そして、この弁体固定ピン部材4の操作は、この管接手を切り離しするときには、前記固定ピン41が内側に押し出されて分割弁体2a、2bの外周部分の予め設けたピン孔26(図4を参照)に係合され、分割弁体の動きを拘束して連結口の閉止状態を保持する。また、この管接手を連結するときには、分割弁体2a、2bが一体化されるともに、前記固定ピン41全てが外側に引き込まれて前記拘束を解いて、全体として回動可能となるのである。
なお、この固定ピン41の押出し・引込み操作は電気駆動や油圧駆動としてもよいが、好ましい機械的駆動方式について次に述べることとする。
【0026】
(弁体の開閉操作構造、弁体固定ピン部材の操作構造)
本発明の弁体および固定ピンの部材の機械的駆動方式は、管接手の連結・切離しに際して、その機械的動作をラックを介して弁体の回動軸21(21a+21b)に設けたピニオン歯車23(23a+23b)に伝達して弁体を回動駆動し開閉操作するとともに、同時にその機械的動作によって前記弁体固定ピン部材4の固定ピン41を押出し・引込み操作して前記弁体の拘束・解除するようにしたものである。以下、具体的に説明する。
【0027】
(弁体の開閉操作構造)
図7、8、9を参照して、弁体の開閉操作のための構造について述べる。
第1接手1a側面には、リタンスプリング51aで保持され、先端を突出させた第1進退ロッド51を進退可能にガイドする第1ガイド枠部51bが設けられている。
また、第2接手1b側面には、リタンスプリング52aで保持された第2進退ロッド52を進退可能にガイドする第2ガイド枠部52bが設けられ、その第2進退ロッド52の後端には後記のテコ式プッシュリンク6の一方のアームにリンクするベアリング52cを備えている。また、この第2ガイド枠部52bと平行に、リタンスプリング53aで保持された第3進退ロッド53を進退可能にガイドする第3ガイド枠部53bが設けられ、この第3進退ロッド53の後端には前記テコ式プッシュリンク6の他方のアームにリンクするベアリング53cが設けられるとともに、その先端にはラック歯53dが形成されている。
【0028】
そしてこれらの第1、第2、第3進退ロッド51、52、53は、接手の軸方向に平行に進退可能に配置されていて、接手の連結時には、第1進退ロッド51と第2進退ロッド52とは同軸上に配置され、第1進退ロッド51の動きは第2進退ロッド52に伝達され、次いでテコ式プッシュリンク55を介して、第3進退ロッド53に伝達されよう相互の位置関係が保持されよう配設されるとともに、第3進退ロッド53のラック歯53dは、弁体の分割回動軸のピニオン歯車23bに噛み合うよう全体の位置関係が保持されている。
【0029】
さらに、本発明では、弁体の軸対称の位置に、前記第1、第2、第3進退ロッド51、52、53の組合せからなるリンク構造と同様なもう一組のリンク装置54を配設しておくものである。かくして回動軸21のピニオン歯車23を2組のリンク装置で挟みつけて協同して操作することになるので、次に述べるような弁体の回動操作が極めて円滑に行える利点が得られる。
【0030】
以上説明したリンク構造によれば、連結時には、切離し状態を示す図7の状態から連結口を接近させて図8の連結状態に連結させる動作にともない、第1進退ロッド51の前進動作は、前記の通り、第2進退ロッドを経て第3進退ロッド53のラック歯53dを前進させる動作として伝達され、噛み合うピニオン歯車23bを動かし、一体化された弁体2を開放状態(鎖線で表示)にすることとなる。
【0031】
また、切離し時には、それぞれに設けられたリタンスプリング51a、52a、53aの復元力によって、各進退ロッド51、52、53は、図8の連結状態から図7の切離し状態に自動的に復帰し、分割された分割弁体2a、2bをもってそれぞれの連結口を閉止状態(図3に示すような状態。図7では省略)として、各接手が切り離しされるのである。
【0032】
なお、本発明の弁体の連結操作に当たっては、固定ピンの拘束解除(追って詳細に説明する)、弁体の回動・開放、および連結口の密接接合という一連の動作が、間隔を置かないで進行する必要がある。このためには、それぞれのタイミングの設定が重要であるが、特に、回動操作を迅速に行うのが極めて重要である。
この目的のため、前記ピニオン歯車23a、23bをすばやく回動させるには、第1進退ロッド51の動作を拡大して第3進退ロッド53に伝達するのが好ましいから、中間に介在するテコ式プッシュリンク55の腕長さ比(L2/L1)を2以上の拡大側に設定しておくのがよい。
【0033】
(固定ピンの押出し・引込み操作構造)
次に、図6、7、10を参照して、固定ピン41の押出し・引込み操作構造について述べる。
第1、2接手1a、1bの側面に設けられた前記弁体固定ピン部材4に重なる位置に、前記第1ガイド枠部51bと第2ガイド枠部52bを配置するようにして、内部の第1進退ロッド51と第2進退ロッド52には、固定ピン41、41の上部に設けたローラ43、43を嵌着可能なカムガイド溝51d、52dが形成されている。そして、このカムガイド溝51d、52dは、進退ロッド51、52が反対方向に押し込まれるに従い、固定ピン41を引き込めるよう、また進退ロッド51、52が引き出されるに従い、固定ピン41を押出すよう傾斜溝が設けられているのである。
【0034】
かくして、連結・切離し時の第1進退ロッド51と第2進退ロッド52の機械的動作によって、固定ピンによる弁体への拘束解除動作、弁体への拘束動作が自動的に行なわれることになる。
なお、以上の説明は、前記第1、第2進退ロッド51、52の組合せを事例に基づいておこなわれたが、これらと回動軸対称に設けられているもう一組のリンク装置54、54についても全く同様な構造の構成の固定ピンの操作構造を配設しておくものである。
【0035】
さらに、従動軸22側の2個の弁体固定ピン部材については、先に述べた各進退ロッドとカムガイドのリンク構造を利用すればよいが、この場合には弁体を回動する機能は不要なので、回動動作に要する関連部材、例えば、テコ式プッシュリンク55、第3進退ロッド53関連部材などは不要である。
【0036】
以上説明したように、本発明の弁体および固定ピン部材の機械的駆動方式によれば、管接手の連結のための押し付け動作および切離しのための引き抜き動作という機械的動作によって、固定ピンによる弁体拘束の解除動作、弁体の閉止から開放への回動動作、開放から閉止への回動動作、および固定ピンによる弁体の拘束動作が自動的に行なわれ、電気、油圧など外部からの操作動力が不要であるという利点が得られる。従って、野外などで電源装置が求められないような場所においても利用できるという効果がある。
【0037】
(連結時の位置決め構造)
前記管接手1a、1bの連結口外周には、その管接手の連結位置を定めるための位置決め部材として、図7のように、一方の管接手側の対称的な位置に2本のガイドロッド56a、56cが設けられ、他方の管接手側にはそのガイドロッド56a、56cを挿入可能なガイド溝56b、56が設けられている。そして、連結時の機械的動作によって、図8のように、その2本のガイドロッド56a、56cは、それぞれ対応するガイド溝56b、56に挿入されることより、それぞれの管接手1a、1bが自動的に所定の位置関係に連結されることになる。
【0038】
(連結時のロック構造)
本発明の弁内蔵管接手では、連結時には管接手1a、1bが気密状態を維持される相互に圧着状態が保持される必要があるのはいうまでもない。このような圧着状態は適宜な手段で実現されるものであるが、本発明では、位置決め部材である前記ガイドロッド56a、56cと同じくガイド溝56b、56cに公知のロック機構を付設することができる。
【0039】
例えば、ガイドロッド56aの先端部分に小ロッド57b、57cをリタンスプリングとともに配設し、その基端部を、偏芯させて引張した遊動片57aにリンクさせて、ガイドロッド56aを前進させたとき先ず小ロッド57cがガイド溝56b底に当たり押し込まれることで、リンクする遊動片57aが時計針方向に跳転してその先端がガイド溝56b側の凹部57dに係合して、ガイドロッド56aが後退しないようロックされる。
【0040】
このロックを解除するには、ガイドロッド56aを若干前進させると、小ロッド57cに代わって突出している小ロッド57bがガイド溝56b底に当たり押し込まれて、リンクする遊動片57aが時計針逆方向に跳転し、ロックが解除されるのである。なお、このようなロック・解除メカニズムは、ノッチ式ロックとして知られているものが利用できる。
【0041】
かくして、本発明の弁内蔵管接手では、このような機構を利用することにより、連結・切離し時の機械的動作によって、電気的または油圧的手段を用いることなく、連結状態を保持するためのロックと、切離しのためのロック解除を自動的に行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の弁内蔵管接手の連結状態を示す部分切欠き斜視原理図。
【図2】本発明の弁内蔵管接手の切離し状態を示す部分切欠き斜視原理図。
【図3】弁内蔵管接手の連結口の状態を示す部分切欠き斜視図(A)および要部c−c断面図(B)。
【図4】本発明の分割弁体の正面図。
【図5】本発明の対をなす分割弁体の上面図。
【図6】弁体固定ピン部材の配置図(A)およびその構造を示す断面略図。
【図7】弁の開閉操作を説明するための切離し状態にある接手の要部上面略図。
【図8】弁の開閉操作を説明するための連結状態にある接手の要部上面略図。
【図9】弁の開閉操作を説明するためのリンク部材の配置略図。
【図10】固定ピンの操作を説明するためのリンク部材の配置略図。
【図11】接手間のロック操作を説明するためのロック部材の配置略図。
【符号の説明】
【0043】
10:連通流路、1a:第1接手、1b:第2接手、11a、11b:連結口
2:円盤状弁体、2a:第1分割弁体、2b:第2分割弁体、21:回動軸部、21a:第1分割回動軸部、21b:第2分割回動軸部、22:従動軸部、22a:第1分割従動軸部、22b:第2分割従動軸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧装置などに用いられる油圧配管のための、弁を内蔵した管接手に関するものであって、特に、切離し時に油漏れを防止するようにした弁を内蔵した管接手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧配管を連結する目的の弁を内蔵した管接手としては、特許文献1に示すような、注液管と排液管のそれぞれの連結口部分に弁体を対向させて配設したものが知られている。そして、このような構造の弁内蔵管接手では、連結時または切離し時に弁の開閉動作の時間的ずれのため若干の油漏れが生じる問題があった。また、特に切離し時には、それぞれの弁体相互間の空間に残留する油が、連結口から溢れ出るという問題もあった。
【0003】
特許文献1では、このような問題の解決方法を提案している。すなわち、連結口の一方に弾性的に伸縮自在な2重蛇腹管を装着して、連結時には予め2重蛇腹管で隙間を封止するようにし、また切離し時には弁体に閉鎖完了まで隙間を封止するようにして、油漏れを防止するとともに、弁体相互間の空間に残留する油をこの2重蛇腹管内に自動的に吸引するようにしたものである。
【0004】
ところが、この伸縮自在な2重蛇腹管は、常時、連結口から突出しているため、管接手の連結作業時に邪魔になるうえ、干渉しやすいため破損しやすいなどという不具合があった。さらに、搬送油分に対して高耐久性の構造とすることにもかなり困難があった。
【特許文献1】特開昭52−76731号公報:特許請求に範囲、第4図、第5図、第6図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、先ず、管接手切離し時に、それぞれの連結口に配設した弁体の間の残留油を実質的になくするとともに、連結・切離し時に油漏れしにくいうえ、自動化が容易な弁内蔵管接手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題は、連結・切離し可能に当接する一対の連結口に、外部から駆動される回動軸部を有する回動可能な円盤状弁体を備えた弁内蔵管接手であって、該円盤状弁体は、厚み方向に直角に2分割可能に構成されていて、この管接手を切り離したときには、その円盤状弁体は2分割され、一方の分割弁体は一方の連結口を閉止するよう配置され、他方の分割弁体は他方の連結口を閉止するよう配置されるとともに、この管接手を連結したときには、それぞれの分割弁体は一体となって回動され、閉止していた連結口を開放して連通流路を形成可能にしたことを特徴とする本発明の弁内蔵管接手によって、解決することができる。
【0007】
そして、本発明は、前記円盤状弁体の回動軸部基部には、管接手の連結口端部に嵌着するための軸シール部が一体に形成され、かつ円盤状弁体と同じく2分割可能に形成されているとともに、対向する連結口端部には略環状の連結口シール部が設けられている形態に具体化される。この前記各軸部を包囲するシール部材は、軸部の近傍部分は外周部分より軟質のゴム質で構成され、その軸部が回動するときには、近傍部分のシール部材は軸部と一体となって回動するものの、外周部分は管接手の連結口端部に固着されているものであるのが好適である。
【0008】
また、本発明は、前記管接手の連結口外周には、内面に出没可能な弁体固定ピン部材が設けられ、この管接手を切り離すときには、それぞれの分割弁体の外周部分を拘束して連結口の閉止状態を保持するとともに、この管接手を連結するときには、前記拘束を解いてそれぞれの分割弁体を回動可能にするようにした形態に具体化される。
【0009】
前記した弁体の回動操作および固定ピンの操作については、前記管接手の連結・切離しに際して、その操作力をラックを介して前記円盤状弁体の回動軸に設けたピニオンに伝達して連結口開閉のため弁体を回動駆動するとともに、その操作力で移動するカムによって前記弁体の拘束・解除のため前記弁体固定ピン部材を押出し・引込み操作するように構成するのが好ましい。
【0010】
また、前記管接手の連結口外周には、その管接手の連結位置を定めるための位置決め部材として、一方の管接手側にはガイドロッドを設け、他方の管接手側にはそのガイドロッドを挿入可能なガイド溝が設けるのが好ましく、さらには、連結時に連結口相互を拘束して外れないようにするロック機構をその位置決め部材に内装するようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
先ず、本発明では、厚み方向に直角に全体が2分割可能に構成された円盤状弁体を連結口に備えた弁内蔵管接手であって、この管接手を切り離したときには、その円盤状弁体は2分割され、一方の分割弁体は一方の連結口を閉止するよう配置され、他方の分割弁体は他方の連結口を閉止するよう配置されるとともに、この管接手を連結したときには、それぞれの分割弁体は一体となって回動され、閉止していた連結口を開放して連通流路を形成可能にしたことにより、管接手切離し時には、それぞれの連結口に配設した弁体の間に空間が生じないのでその間に搬送油が残留することがないという利点がある。
【0012】
次いで、この管接手を連結状態から切り離すときには、予め2分割される円盤状弁体のそれぞれがそれぞれの連結口を閉止するように操作され、またこの管接手を切離し状態から連結するときには、実質的に連結が行われてから、閉止していた連結口を開放するよう操作できるので、連結・切離しの操作時に油漏れが生じることが防止され、さらに連結・切離しの操作時の各パーツの動作を自動化し易く構成できるなどの利点が得られるのである。かくして本発明は、従来の問題点を解消した弁内蔵管接手として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の弁内蔵管接手に係る実施形態について、図1〜11を参照しながら説明する。
(基本的な構造原理)
先ず、図1、2を参照して本発明の構造原理について説明する。ここで、本発明の弁内蔵管接手のうち一方の接手を第1接手1a、他方の接手を第2接手1bとする。
本発明は、連結・切離し可能に当接する一対の第1接手1a、第2接手1bを図1に示すように連結した場合には、密接した連結口11a、11bにおいて、外部から駆動される回動軸部21と従動軸部22を有する回動可能な円盤状弁体2を開放状態にして配設し、連通流路10が形成されるようにした点を基本的構造としている。
【0014】
そしてこの円盤状弁体2は、厚み方向に直角に全体として2分割可能に構成され、この管接手を図2ように切り離したときには、その円盤状弁体2は、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとに2分割されるよう構成されている。この場合、回動軸部21と従動軸部22も、半円柱状の第1分割回動軸部21a、第2分割回動軸部21bと、同じく第1分割従動軸部22a、第2分割従動軸部22bとに2分割される。
【0015】
そして、第1接手1a、第2接手1bを図2に示すように切り離した場合には、円盤状弁体2は、開放状態から回動されるとともに分割されて、一方の第1分割弁体2aは第1接手1aの連結口11aを閉止するよう配置され、他方の第2分割弁体2bは第2接手1bも連結口11bを閉止するよう配置されるのである。そして、この状態から管接手が連結されるときには、それぞれの分割弁体2a、2bは一体となり、同じく一体化された回動軸部21と従動軸部22を軸として回動され、図1に示すごとく、閉止していた連結口11a、11bを開放して連通流路10を形成可能とするものである。
【0016】
かくして、本発明では、このように分割方式の弁体を用いることにより、接手の連結・切離し時の機械的動作に連動させて、円盤状弁体2を正方向または逆方向に回動させれば、連結口を閉止・開放することができ、切離し時には、従来の接手のように弁体間に油が残留することないので残留油が漏れ出すということがない利点が得られるのである。この場合、軸部21、22の周辺および連結口11a、11b間、分割弁体2a、2bの対向面など可動部分や接離部分には適宜なシール部材を介在させて所要の封止状態を保持するのが好ましい。
【0017】
(軸部のシール構造)
次に、軸部21、22の周辺および連結口11a、11b間に設けられるシール部について図3を参照して説明すると、第2分割弁体2bの第2分割回動軸部21bと第2分割従動軸部22bのそれぞれには、管接手側の連結口端部に嵌着するための回動軸シール部31b、従動軸シール部32bが一体に形成され、また図4に示すように、第1分割弁体2a側にも、全く対称的に回動軸シール部31a、従動軸シール部32aが一体に形成されている。
【0018】
そして、それぞれの軸シール部31a、31b、32a、32bには、管接手側の連結口端部を内外から挟持するための一対のフランジ部33a、34a、同じくフランジ部33b、34b、同じくフランジ部35a、36a、同じくフランジ部35b、36bが設けられている。しかして、これら回動軸シール部31a、31b、従動軸シール部32a、32bのそれぞれは、図5に示すように、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとを密着させたときには、一体化されるとともにそれぞれの軸部と連結口端部とはシールされるのである。
【0019】
なお、第1および第2分割回動軸部21a、21bの先端には、図3、4に示すように、それぞれ分割ピニオン歯車23a、23bが設けられている。この分割ピニオン歯車23a、23bは、追って詳しく説明するが、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bとを連結し密着させたときには一体化された円形ピニオン歯車として機能するのはいうまでもないことである。
【0020】
ここで、各軸シール部31a、31b、32a、32bの特長について補足すると、これら各軸部を包囲するシール部材は、軸部の近傍部分は外周部分より軟質のゴム質で構成され、回動軸シール部31a、31b、従動軸シール部32a、32bが一体化され回動するときには、それらと近傍部分のシール部材は軸部と一体となって回動するものの、外周部分は管接手の連結口端部に固着されているものである。すなわち、軸部とシール部材、シール部材と連結口端部の接合部分は、相互に拘束していて、シール部材は全体として軸部を中心にねじれた状態となるのであって、回動中に滑動する部分がないのである。従って、部材間からの油漏れ防止のシール作用はより一層確実となる利点がある。
【0021】
(連結口間のシール構造)
図3(B)に示すように、対向する第1接手1a、第2接手1bの連結口端部には円周に沿って、リング状凹条12a、リング状凸条12bを設けて、連結時にそれが嵌合してシール作用を発揮する略環状の連結口シール部とするものである。これは、連結時には弁体2が閉止から開放状態に回動するわずかな時間だけ、予め両接手1a、1b間をシールするためであり、また切離し時には、弁体2が開放から閉止状態に回動するわずかな時間だけ、予め両接手1a、1b間をシールするためである。かくして、連結・切離し時の油漏れを防止できるのである。
【0022】
(分割弁体間のシール構造)
同じく、図3(B)に示すように、前記した連結口間のシール構造の合わせて、第1分割弁体2aと第2分割弁体2bの対向面外周部近傍にリング状凹条25a、リング状凸条25bが設けられ、連結時にそれが嵌合してシール作用を発揮する弁体間シール部とするのが好ましい。これは、連結・切離し時に分割弁体2a、2bがわずかに離間したときでも、分割弁体2a、2b間の隙間に油が侵入しないようシールするものである。弁が開放状態では分割弁体2a、2bは密着しているので、もともと相互の隙間には油の侵入はごく少ないのであるが、この弁体間シール部によって残留油は無視できる程度のものとなる。
【0023】
(分割弁体の固定構造)
本発明では、切離し時には第1、2の管接手の連結口11a、11bは、それぞれ分割弁体2a、2bによって閉止され(図3A参照)、連結時には、それらが一体化して回動し連結口を開放するのであるから、分割弁体2a、2bは何らかの手段によって連結口11a、11b部分に解除可能に固定されることが必要である。
【0024】
このために、図6(A)に示すような、固定形態が好ましい。すなわち、前記管接手の連結口11a、11b近傍の外周壁に配置された、好ましくは4個の弁体固定ピン部材4であり、この弁体固定ピン部材4は、図6(B)のように、金属製先細先端を持つの固定ピン41と、その周囲に一体に形成される弾性パッキン42からなり連結口近傍の外周壁に設けられた固定穴13にシール状態に嵌着され、固定ピン41が押出し・引込み可動状態に保持されたものである。
【0025】
そして、この弁体固定ピン部材4の操作は、この管接手を切り離しするときには、前記固定ピン41が内側に押し出されて分割弁体2a、2bの外周部分の予め設けたピン孔26(図4を参照)に係合され、分割弁体の動きを拘束して連結口の閉止状態を保持する。また、この管接手を連結するときには、分割弁体2a、2bが一体化されるともに、前記固定ピン41全てが外側に引き込まれて前記拘束を解いて、全体として回動可能となるのである。
なお、この固定ピン41の押出し・引込み操作は電気駆動や油圧駆動としてもよいが、好ましい機械的駆動方式について次に述べることとする。
【0026】
(弁体の開閉操作構造、弁体固定ピン部材の操作構造)
本発明の弁体および固定ピンの部材の機械的駆動方式は、管接手の連結・切離しに際して、その機械的動作をラックを介して弁体の回動軸21(21a+21b)に設けたピニオン歯車23(23a+23b)に伝達して弁体を回動駆動し開閉操作するとともに、同時にその機械的動作によって前記弁体固定ピン部材4の固定ピン41を押出し・引込み操作して前記弁体の拘束・解除するようにしたものである。以下、具体的に説明する。
【0027】
(弁体の開閉操作構造)
図7、8、9を参照して、弁体の開閉操作のための構造について述べる。
第1接手1a側面には、リタンスプリング51aで保持され、先端を突出させた第1進退ロッド51を進退可能にガイドする第1ガイド枠部51bが設けられている。
また、第2接手1b側面には、リタンスプリング52aで保持された第2進退ロッド52を進退可能にガイドする第2ガイド枠部52bが設けられ、その第2進退ロッド52の後端には後記のテコ式プッシュリンク6の一方のアームにリンクするベアリング52cを備えている。また、この第2ガイド枠部52bと平行に、リタンスプリング53aで保持された第3進退ロッド53を進退可能にガイドする第3ガイド枠部53bが設けられ、この第3進退ロッド53の後端には前記テコ式プッシュリンク6の他方のアームにリンクするベアリング53cが設けられるとともに、その先端にはラック歯53dが形成されている。
【0028】
そしてこれらの第1、第2、第3進退ロッド51、52、53は、接手の軸方向に平行に進退可能に配置されていて、接手の連結時には、第1進退ロッド51と第2進退ロッド52とは同軸上に配置され、第1進退ロッド51の動きは第2進退ロッド52に伝達され、次いでテコ式プッシュリンク55を介して、第3進退ロッド53に伝達されよう相互の位置関係が保持されよう配設されるとともに、第3進退ロッド53のラック歯53dは、弁体の分割回動軸のピニオン歯車23bに噛み合うよう全体の位置関係が保持されている。
【0029】
さらに、本発明では、弁体の軸対称の位置に、前記第1、第2、第3進退ロッド51、52、53の組合せからなるリンク構造と同様なもう一組のリンク装置54を配設しておくものである。かくして回動軸21のピニオン歯車23を2組のリンク装置で挟みつけて協同して操作することになるので、次に述べるような弁体の回動操作が極めて円滑に行える利点が得られる。
【0030】
以上説明したリンク構造によれば、連結時には、切離し状態を示す図7の状態から連結口を接近させて図8の連結状態に連結させる動作にともない、第1進退ロッド51の前進動作は、前記の通り、第2進退ロッドを経て第3進退ロッド53のラック歯53dを前進させる動作として伝達され、噛み合うピニオン歯車23bを動かし、一体化された弁体2を開放状態(鎖線で表示)にすることとなる。
【0031】
また、切離し時には、それぞれに設けられたリタンスプリング51a、52a、53aの復元力によって、各進退ロッド51、52、53は、図8の連結状態から図7の切離し状態に自動的に復帰し、分割された分割弁体2a、2bをもってそれぞれの連結口を閉止状態(図3に示すような状態。図7では省略)として、各接手が切り離しされるのである。
【0032】
なお、本発明の弁体の連結操作に当たっては、固定ピンの拘束解除(追って詳細に説明する)、弁体の回動・開放、および連結口の密接接合という一連の動作が、間隔を置かないで進行する必要がある。このためには、それぞれのタイミングの設定が重要であるが、特に、回動操作を迅速に行うのが極めて重要である。
この目的のため、前記ピニオン歯車23a、23bをすばやく回動させるには、第1進退ロッド51の動作を拡大して第3進退ロッド53に伝達するのが好ましいから、中間に介在するテコ式プッシュリンク55の腕長さ比(L2/L1)を2以上の拡大側に設定しておくのがよい。
【0033】
(固定ピンの押出し・引込み操作構造)
次に、図6、7、10を参照して、固定ピン41の押出し・引込み操作構造について述べる。
第1、2接手1a、1bの側面に設けられた前記弁体固定ピン部材4に重なる位置に、前記第1ガイド枠部51bと第2ガイド枠部52bを配置するようにして、内部の第1進退ロッド51と第2進退ロッド52には、固定ピン41、41の上部に設けたローラ43、43を嵌着可能なカムガイド溝51d、52dが形成されている。そして、このカムガイド溝51d、52dは、進退ロッド51、52が反対方向に押し込まれるに従い、固定ピン41を引き込めるよう、また進退ロッド51、52が引き出されるに従い、固定ピン41を押出すよう傾斜溝が設けられているのである。
【0034】
かくして、連結・切離し時の第1進退ロッド51と第2進退ロッド52の機械的動作によって、固定ピンによる弁体への拘束解除動作、弁体への拘束動作が自動的に行なわれることになる。
なお、以上の説明は、前記第1、第2進退ロッド51、52の組合せを事例に基づいておこなわれたが、これらと回動軸対称に設けられているもう一組のリンク装置54、54についても全く同様な構造の構成の固定ピンの操作構造を配設しておくものである。
【0035】
さらに、従動軸22側の2個の弁体固定ピン部材については、先に述べた各進退ロッドとカムガイドのリンク構造を利用すればよいが、この場合には弁体を回動する機能は不要なので、回動動作に要する関連部材、例えば、テコ式プッシュリンク55、第3進退ロッド53関連部材などは不要である。
【0036】
以上説明したように、本発明の弁体および固定ピン部材の機械的駆動方式によれば、管接手の連結のための押し付け動作および切離しのための引き抜き動作という機械的動作によって、固定ピンによる弁体拘束の解除動作、弁体の閉止から開放への回動動作、開放から閉止への回動動作、および固定ピンによる弁体の拘束動作が自動的に行なわれ、電気、油圧など外部からの操作動力が不要であるという利点が得られる。従って、野外などで電源装置が求められないような場所においても利用できるという効果がある。
【0037】
(連結時の位置決め構造)
前記管接手1a、1bの連結口外周には、その管接手の連結位置を定めるための位置決め部材として、図7のように、一方の管接手側の対称的な位置に2本のガイドロッド56a、56cが設けられ、他方の管接手側にはそのガイドロッド56a、56cを挿入可能なガイド溝56b、56が設けられている。そして、連結時の機械的動作によって、図8のように、その2本のガイドロッド56a、56cは、それぞれ対応するガイド溝56b、56に挿入されることより、それぞれの管接手1a、1bが自動的に所定の位置関係に連結されることになる。
【0038】
(連結時のロック構造)
本発明の弁内蔵管接手では、連結時には管接手1a、1bが気密状態を維持される相互に圧着状態が保持される必要があるのはいうまでもない。このような圧着状態は適宜な手段で実現されるものであるが、本発明では、位置決め部材である前記ガイドロッド56a、56cと同じくガイド溝56b、56cに公知のロック機構を付設することができる。
【0039】
例えば、ガイドロッド56aの先端部分に小ロッド57b、57cをリタンスプリングとともに配設し、その基端部を、偏芯させて引張した遊動片57aにリンクさせて、ガイドロッド56aを前進させたとき先ず小ロッド57cがガイド溝56b底に当たり押し込まれることで、リンクする遊動片57aが時計針方向に跳転してその先端がガイド溝56b側の凹部57dに係合して、ガイドロッド56aが後退しないようロックされる。
【0040】
このロックを解除するには、ガイドロッド56aを若干前進させると、小ロッド57cに代わって突出している小ロッド57bがガイド溝56b底に当たり押し込まれて、リンクする遊動片57aが時計針逆方向に跳転し、ロックが解除されるのである。なお、このようなロック・解除メカニズムは、ノッチ式ロックとして知られているものが利用できる。
【0041】
かくして、本発明の弁内蔵管接手では、このような機構を利用することにより、連結・切離し時の機械的動作によって、電気的または油圧的手段を用いることなく、連結状態を保持するためのロックと、切離しのためのロック解除を自動的に行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の弁内蔵管接手の連結状態を示す部分切欠き斜視原理図。
【図2】本発明の弁内蔵管接手の切離し状態を示す部分切欠き斜視原理図。
【図3】弁内蔵管接手の連結口の状態を示す部分切欠き斜視図(A)および要部c−c断面図(B)。
【図4】本発明の分割弁体の正面図。
【図5】本発明の対をなす分割弁体の上面図。
【図6】弁体固定ピン部材の配置図(A)およびその構造を示す断面略図。
【図7】弁の開閉操作を説明するための切離し状態にある接手の要部上面略図。
【図8】弁の開閉操作を説明するための連結状態にある接手の要部上面略図。
【図9】弁の開閉操作を説明するためのリンク部材の配置略図。
【図10】固定ピンの操作を説明するためのリンク部材の配置略図。
【図11】接手間のロック操作を説明するためのロック部材の配置略図。
【符号の説明】
【0043】
10:連通流路、1a:第1接手、1b:第2接手、11a、11b:連結口
2:円盤状弁体、2a:第1分割弁体、2b:第2分割弁体、21:回動軸部、21a:第1分割回動軸部、21b:第2分割回動軸部、22:従動軸部、22a:第1分割従動軸部、22b:第2分割従動軸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結・切離し可能に当接する一対の連結口に、外部から駆動される回動軸部を有する回動可能な円盤状弁体を備えた弁内蔵管接手であって、該円盤状弁体は、厚み方向に直角に2分割可能に構成されていて、この管接手を切り離したときには、その円盤状弁体は2分割され、一方の分割弁体は一方の連結口を閉止するよう配置され、他方の分割弁体は他方の連結口を閉止するよう配置されるとともに、この管接手を連結したときには、それぞれの分割弁体は一体となって回動され、閉止していた連結口を開放して連通流路を形成可能にしたことを特徴とする弁内蔵管接手。
【請求項2】
前記円盤状弁体の回動軸部基部には、管接手の連結口端部に嵌着するための軸シール部が一体に形成され、かつ円盤状弁体と同じく2分割可能に形成されているとともに、対向する連結口端部には略環状の連結口シール部が設けられている請求項1に記載の弁内蔵管接手。
【請求項3】
前記各軸部を包囲するシール部材は、軸部の近傍部分は外周部分より軟質のゴム質で構成され、その軸部が回動するときには、近傍部分のシール部材は軸部と一体となって回動するものの、外周部分は管接手の連結口端部に固着されているものである請求項2に記載の弁内蔵管接手。
【請求項4】
前記管接手の連結口外周には、内面に出没可能な弁体固定ピン部材が設けられ、この管接手を切り離すときには、それぞれの分割弁体の外周部分を拘束して連結口の閉止状態を保持するとともに、この管接手を連結するときには、前記拘束を解いてそれぞれの分割弁体を回動可能にするようにした請求項1、2または3に記載の弁内蔵管接手。
【請求項5】
前記管接手の連結・切離しに際して、その操作力をラックを介して前記円盤状弁体の回動軸に設けたピニオンに伝達して連結口開閉のため弁体を回動駆動するとともに、その操作力で移動するカムによって前記弁体の拘束・解除のため前記弁体固定ピン部材を押出し・引込み操作するようにした請求項4に記載の弁内蔵管接手。
【請求項6】
前記管接手の連結口外周には、その管接手の連結位置を定めるための位置決め部材として、一方の管接手側にはガイドロッドが設けられ、他方の管接手側にはそのガイドロッドを挿入可能なガイド溝が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の弁内蔵管接手。
【請求項7】
連結時に連結口相互を拘束して外れないようにするロック機構を前記位置決め部材に内装した請求項6に記載の弁内蔵管接手。
【請求項1】
連結・切離し可能に当接する一対の連結口に、外部から駆動される回動軸部を有する回動可能な円盤状弁体を備えた弁内蔵管接手であって、該円盤状弁体は、厚み方向に直角に2分割可能に構成されていて、この管接手を切り離したときには、その円盤状弁体は2分割され、一方の分割弁体は一方の連結口を閉止するよう配置され、他方の分割弁体は他方の連結口を閉止するよう配置されるとともに、この管接手を連結したときには、それぞれの分割弁体は一体となって回動され、閉止していた連結口を開放して連通流路を形成可能にしたことを特徴とする弁内蔵管接手。
【請求項2】
前記円盤状弁体の回動軸部基部には、管接手の連結口端部に嵌着するための軸シール部が一体に形成され、かつ円盤状弁体と同じく2分割可能に形成されているとともに、対向する連結口端部には略環状の連結口シール部が設けられている請求項1に記載の弁内蔵管接手。
【請求項3】
前記各軸部を包囲するシール部材は、軸部の近傍部分は外周部分より軟質のゴム質で構成され、その軸部が回動するときには、近傍部分のシール部材は軸部と一体となって回動するものの、外周部分は管接手の連結口端部に固着されているものである請求項2に記載の弁内蔵管接手。
【請求項4】
前記管接手の連結口外周には、内面に出没可能な弁体固定ピン部材が設けられ、この管接手を切り離すときには、それぞれの分割弁体の外周部分を拘束して連結口の閉止状態を保持するとともに、この管接手を連結するときには、前記拘束を解いてそれぞれの分割弁体を回動可能にするようにした請求項1、2または3に記載の弁内蔵管接手。
【請求項5】
前記管接手の連結・切離しに際して、その操作力をラックを介して前記円盤状弁体の回動軸に設けたピニオンに伝達して連結口開閉のため弁体を回動駆動するとともに、その操作力で移動するカムによって前記弁体の拘束・解除のため前記弁体固定ピン部材を押出し・引込み操作するようにした請求項4に記載の弁内蔵管接手。
【請求項6】
前記管接手の連結口外周には、その管接手の連結位置を定めるための位置決め部材として、一方の管接手側にはガイドロッドが設けられ、他方の管接手側にはそのガイドロッドを挿入可能なガイド溝が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の弁内蔵管接手。
【請求項7】
連結時に連結口相互を拘束して外れないようにするロック機構を前記位置決め部材に内装した請求項6に記載の弁内蔵管接手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−57758(P2006−57758A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241230(P2004−241230)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(504318913)
【出願人】(504318935)前川酒造有限会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(504318913)
【出願人】(504318935)前川酒造有限会社 (5)
【Fターム(参考)】
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