説明

弾性体からなるシール部材の耐久性を高めることができると共に、高差圧から低差圧まで広いレンジでシール性を好適に維持することが可能な弁を提供する。弁体(1)または弁座(2)に設けた弾性体からなるシール部材(5)を介して、弁体(1)と弁座(2)とが密接する弁(100)において、弁体(1)および/または弁座(2)の形状により画定され、これらの間に構成される流路を狭める絞り部(30)を有し、絞り部(30)は、シール部材(5)の周辺に設けられた弁(100)である。そして、この絞り部(30)によって狭まる流路は、弁体(1)の閉動作の際に、シール部材(5)の直近の流路に優先して狭まるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば燃料電池システムにおける高圧ガスの配管系に設けられるものであり、弁体と弁座とがこれらの一方に設けた弾性体からなるシール部材を介して密接する弁に関するものである。
【背景技術】
高圧の流体を対象とする従来の弁として、ゴムなどの弾性体からなるシール部材を弁体または弁座の一方に配置したものが知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。このうち、弁座側にシール部材を配置した特許文献1に記載のパイロット式電磁弁では、弁体の開弁時に、高圧の流体により押圧されたシール部材が、その流体の流れ方向の変形に起因して損傷しないように、シール部材および弁体の形状が形成されている。
【特許文献1】特開2003−240149号公報(第4頁および第2図)
【特許文献2】実開平5−73368号公報(第9頁および第2図)
【発明の開示】
しかしながら、このような従来の弁では、1次側と2次側との差圧が大きい条件となると、開弁時に、流体が急激に2次側へと流れ、この流体によりシール部材が急激な力を受けることになる。このため、弾性体であるシール部材は大きく変形し易く、その結果耐久性が損なわれ易い問題があった。
もっとも、かかる問題に鑑みて、シール部材の硬度を大きくすることも考えられる。しかし、1次側と2次側との差圧が小さい条件となると、閉弁時においてシール部材を押し付ける力が不足し、今度はシール性が損なわれ易くなる。
本発明は、弾性体からなるシール部材の耐久性を高めることができると共に、高差圧から低差圧まで広いレンジでシール性を好適に維持することが可能な弁を提供することをその目的としている。
上記課題を解決するため、本発明の弁は、弁体または弁座に設けられた弾性体からなるシール部材を介して、弁体と弁座とが密接する弁において、弁体および/または弁座の形状により画定され、これらの間に構成される流路を狭める絞り部を有し、絞り部は、シール部材の周辺に設けられたものである。
この構成によれば、シール部材の周辺に設けた絞り部によって流体は圧力損失が発生するため、シール部材に作用する流体の力が緩和される。これにより、1次側と2次側とが高差圧の場合であっても、シール部材の耐久性を好適に高めることができる。このことはまた、シール部材の硬度などの性状に自由度を持たせながら、高差圧から低差圧まで広いレンジでシール性を維持することを可能にする。
ここで、「シール部材の周辺」には、シール部材の上流側および下流側のいずれか一方または両者の位置が含まれる。例えば、シール部材が環状からなる場合には、絞り部は、シール部材の径方向の内側および外側の少なくとも一方に位置することにより、シール部材の周辺に設けられる。
絞り部は、弁体および弁座の一方のみの形状により画定することもできるし、両者の形状を関連付けることにより画定することもできる。
本発明の弁は、直動式およびパイロット式の両者に適用することができ、その駆動方式を手動としてもよいし、各種のアクチュエータによるものとしてもよく、例えば電磁弁とすることができる。
本発明の一態様によれば、絞り部によって狭まる流路は、弁体の閉動作の際に、シール部材の直近の流路に優先して狭まるように設定されていることが、好ましい。
この構成によれば、弁体の閉動作の際には、十分な圧力損失を発生させてシール部材の耐久性を好適に高めつつ、一方で弁の開時では、圧力損失を極力回避して弁内流路において十分な(所定の)流量を確保することができる。
本発明の他の弁は、弁体または弁座に設けられた弾性体からなるシール部材を介して、弁体と弁座とが密接する弁であって、流入口からシール部材の位置を通過して流出口に至る流路と、シール部材の近傍に設けられ、流路の断面積を部分的に小さくすることにより流体の流れを阻害する圧損部と、を有するものである。
この構成によれば、上記同様に、シール部材に作用する流体の力が緩和される。これにより、1次側と2次側とが高差圧の場合であっても、シール部材の耐久性を好適に高めることができる。
この場合、圧損部は、弁体の閉方向への移動に伴い、流路の断面積を部分的に徐々に小さくすることが、好ましい。
これらの場合、圧損部は、弁体および/または弁座の形状により画定されていることが、好ましい。
本発明のまた別の弁は、弁体または弁座に設けられた弾性体からなる環状のシール部材を介して、弁体と弁座とが密接する弁であって、弁体は、弁座に対向する第1の面と、第1の面に連なる第1の周面とを有し、弁座は、第1の面に対面する第2の面と、第1の周面に対向する位置に、第2の面よりも第1の周面側に突出された環状突部とを有し、シール部材は、第1の面および第2の面の一方に設けられ、且つ第1の面および第2の面の他方に密接可能に構成され、第1の周面と環状突部との間の流路には、第1の面と第2の面との間の流路よりも、断面積が小さくなるように設定された流路が含まれているものである。
この場合、前記断面積が小さくなるように設定された流路は、第1の面と第2の面との間の流路よりも、弁体の閉動作に伴う断面積の減少率が大きいことが、好ましい。
これらの場合、環状突部は、第2の面に連なり、第1の周面に対面可能な第2の周面を有し、前記断面積が小さくなるように設定された流路は、第1の周面と第2の周面との間の流路の少なくとも一部であることが、好ましい。
この場合、第1の周面は、テーパ状周面からなり、第2の周面は、弁体側へ傾斜する逆テーパ状周面からなることが、好ましい。
この場合、第1の面とテーパ状周面との交差部までの距離をRとし、第2の面と逆テーパ状周面との交差部までの距離をRとしたとき、R>Rを満たすことが、好ましい。
これらの場合.弁体の軸心に対するテーパ状周面の傾斜角度をθとし、弁体の軸心に対する逆テーパ状周面の傾斜角度をθとしたとき、θ>θを満たすことが、好ましい。
また、上記した本発明の弁の一態様によれば、第1の周面と環状突部との間の距離をHとし、第1の面と第2の面との間の距離をHとしたとき、H<Hを満たすことが、好ましい。
この場合、弁体の閉動作の際に、Hの減少率は、Hの減少率よりも大きくなるように設定されていることが、好ましい。
また、上記した本発明の弁の一態様によれば、環状突部は、第2の面に連なり、第1の周面に対面可能な第2の周面と、第2の周面に連なり、前記第2の面に平行な環状面と、を有していてもよい。
これらの場合、第1の面および第2の面は、平行であることが、好ましい。
これらの場合、シール部材は、第1の面および第2の面の一方から他方側に突出していることが、好ましい。
以上、本発明の弁によれば、シール部材に作用する急激な流体の流れが絞り部によって制限されるため、シール部材の耐久性を高めることができると共に、1次側と2次側とが高差圧および低差圧のいずれの場合であっても、すなわち1次側と2次側との差圧に関らず、シール部材によるシール性を適切に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施形態1に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図2は、実施形態1に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図3は、実施形態1に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図4は、実施形態1に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図5は、実施形態2に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図6は、実施形態3に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図7は、実施形態4に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図8は、実施形態5に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図9は、実施形態6に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図10は、実施形態7に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図11は、実施形態8に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図12は、実施形態9に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図13は、実施形態10に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図14は、実施形態11に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図15は、実施形態12に係る弁の概略を断面的に示す説明図である。
図16は、本発明による弁の一実施形態を用いた高圧タンクの一例を示す模式断面図である。
図17は、図16における要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る弁について説明する。この弁は、高圧のガス等の流体を対象として、流体の流路をシール部材を介して遮断するものであり、主として燃料電池システムの水素ガスや酸素ガスの配管系に組み込まれるものである。以下の説明では、パイロット式の電磁弁を例に、シール部材まわりの構造について詳述する。なお、図1ないし図15では、シール部材まわりの構造について、Y−Y軸を中心とした左半部が模式的に示されている。
[実施形態1]
図16は、前述の如く、本発明による弁の一実施形態を用いた高圧タンクの一例を示す模式断面図である。高圧タンク200は、全体形状が略円筒状のタンク本体201と、その長手方向の一端部または両端部に設けられた口金202と、その口金202に着脱可能に取り付けられたバルブアッセンブリ203と、を具備している。タンク本体201の内部は、例えば天然ガスや水素ガス等各種のガスといった流体を高圧で貯留する貯留空間204とされている。このような高圧タンク200を燃料電池システムに適用した場合には、例えば35MPa若しくは70MPaの水素ガス、又は20MPaのCNGガス(圧縮天然ガス)が、貯留空間204内に密閉保持される。
後述する本発明の対象となる弁体1、弁座2およびシール部材5を有する弁100は、少なくとも1MPa以上のガス等の流体を対象としたものである。この弁100は、好ましくは3MPa以上、より好ましくは35MPa以上の圧力の流体を対象としたものである。
タンク本体201は、ガスバリア性を有する内側のライナー210(内殻)の外側がFRPから成るシェル212(外殻)で覆われた二重構造を有するものである。ライナー210は、例えば高密度ポリエチレン等の樹脂で形成される。ただし、タンク本体201をアルミニウム合金等の金属製容器としても構わない。さらに、タンク本体201内に貯留されるガスは、口金202に取り付けられたバルブアッセンブリ203を通して外部のガスラインから貯留空間204に供給されると共に、そのバルブアッセンブリ203を通して外部のガスラインへ排出されるようになっている。
口金202とタンク200との間は、図示しない複数のシール部材によって気密に封止されている。また、口金202の開口部の外周面には、おねじ216が形成されている。バルブアッセンブリ203は、おねじ216を介して口金202の開口部に螺合接続される。さらに、バルブアッセンブリ203には、外部のガスラインと貯留空間204とを接続する流路218が設けられている。
バルブアッセンブリ203には、種々のバルブや継手等の配管要素が一体的に組み込まれている。バルブアッセンブリ203は、例えば、流路218上に配置された元弁となるパイロット式の電磁弁100と、電磁弁100と直列に流路218上に配置された図外のレギュレータ(バルブ)と、を備えている。なお、電磁弁100とレギュレータとを逆に配置することも可能であり、電磁弁100をバルブアッセンブリ203に一体的に組み込まず、バルブアッセンブリ203とは別体に構成して口金202に接続するようにしてもよい。
図17は、図16における要部を示す拡大断面図である。なお、図17および後述する図1〜図15においては、貯留空間204側すなわち上流側が図示上方になるように部材配置を示した。
図16および図17に示すように、電磁弁100は、駆動用のソレノイドユニット110に接続された弁体1と、その弁体1に離間して対向設置された弁座2と、弁体1に設けられた弾性体のシール部材5と、を具備している。ソレノイドユニット110の駆動により、弁体1が弁座2に対して離接移動する。弁体1は、シール部材5を介して弁座2に密接し、この密接状態(閉弁状態)となると、貯留空間204と流路218とが隔離シールされる。
電磁弁100は、その外殻をハウジング120により構成されている。ハウジング120には、流入口G1が弁体1の上流側に設けられていると共に、流路218に接続された流出口G2が弁座2の下流側に設けられている。電磁弁100を通流する流体は、流入口G1を経て1次側の高圧側3から流入し、弁体1および弁座2の間に構成される流路を通過し、2次側の低圧側4から流出口G2に流出する。
図1は、図17における要部を拡大して示す電磁弁100の概略断面図である。図1に示すように、弁体1、弁座2およびシール部材5は、Y−Y軸上に沿って同心的に配設されている。また、流出口に連なる通路6が、このY−Y軸上に形成されている。
弁体1は、金属等の非弾性体で形成され、その軸心であるY−Y軸方向に移動可能に構成されている。弁体1は、Y−Y軸に直交する表面10(第1の面)と、表面10から基部側にテーパ状に一体に連なる傾斜面11(第1の周面またはテーパ状周面)と、を有して、全体として略円錐台状に形成されている。弁体1の表面10はY−Y軸を中心として半径Rからなり、傾斜面11はY−Y軸に対して所定の角度θをなしている。
弁座2は、弁体1と同様に、金属等の非弾性体で形成され、全体として段付きの略環状部材で形成されている。弁座2は、弁体1の表面10に平行に対面するシート面21(第2の面)と、シート面21に一体に連なり、弁体1側へと傾斜する斜面22(第2の周面または逆テーパ状周面)と、斜面22に一体に連なり、シート面21と平行な非シート面23と、を有している。非シート面23は、シート面21に対するY−Y軸方向の距離がHに設定されている。斜面22および非シート面23により、シート面21よりも表面10側に突出された環状突部が構成され、環状突部が傾斜面11に対向している。
弁座2のシート面21はY−Y軸を中心として半径Rからなり、その斜面22はY−Y軸に対して所定の角度θをなしている。この場合、半径Rが半径Rよりも僅かに大きく設定され、且つ角度θが角度θよりも僅かに小さく設定されている。そして、弁体1および弁座2の両者のこれらの形状要素(θ、θ、R、R)により、弁体1と弁座2との間に構成される流路のうち、シール部材5の径方向の外側の流路を狭める絞り部30が画定されている。
絞り部30は、流入口G1(高圧側3)から流出口G2(低圧側4)に至る弁100内の流路を、シール部材5の近傍の上流側において周方向に亘って狭めている。すなわち、絞り部30での流路は、表面10とシート面21との間の流路よりも、断面積が小さく設定されている。このような絞り部30は、この弁100内の流路の断面積を、部分的に小さくすることにより流体の流れを阻害する圧損部として機能する。
絞り部30を画定する具体的な部位は、弁座2側では斜面22および非シート面23の交差部25からなる。一方、弁体1側で絞り部30を画定する部位は、この交差部25から最短距離に位置する傾斜面11の部位12に設定されるが、この部位12は弁体1の位置に基づいて変動するようになっている。
すなわち、図1に示すように、弁体1と弁座2とが十分に離間した開時では、絞り部30を画定する弁体1側の部位12は、その表面10および傾斜面11の交差部に設定される。一方、図3に示すように弁体1が弁座2に比較的接近した開時(閉動作時)では、絞り部30を構成する弁体1側の部位12は、弁座2側の交差部25から傾斜面11におろした垂線が交差する傾斜面11の所定の部位に設定される。
以下の説明では、絞り部30を構成する弁座2側の交差部25および弁体1側の部位12の間の距離をHとする。また、説明の便宜上、Hが、絞り部30によって狭められる流路(隙間)自体や、その大きさまたは流路断面積を意味することがある。同様に、弁体1の表面10と弁座2のシート面21との距離Hは、弁体1の表面10と非シート面23との間の距離Hに上記のHを加算したものである。同様に、説明の便宜上、Hは、絞り部30から外れたシール部材5の直近の流路(表面10−シート面21間の隙間)自体や、その大きさまたは流路断面積を意味することがある。
このように、絞り部30が形成されているため、図1に示す開時では、HはHよりも小さく設定されることになる。また、図2や図3に示す弁体1の閉動作の際には、HおよびHはH<Hの関係を維持しながら各々狭まっていくが、このとき、HはHに優先して狭まるように設定されることになる。すなわち、弁体1の閉動作の際に、単位時間当たりのHの減少率がHの減少率よりも大きくなるように設定されることになる。そしてこれにより、弁体1の閉動作の際に絞り部30で十分な圧力損失を発生させて、シール部材5に作用する流体の力が緩和されるようになっている。
シール部材5は、ゴム等の弾性体で形成され、Y−Y軸を中心として環状に形成されている。シール部材5は、絞り部30の周辺に、弁体1の表面10からシート面21側に突出するように設けられている。シール部材5は、弁座2のシート面21に対面する面がこれに平行な平坦面で構成されており、閉時にシート面21に密接して流路を遮断する。シール部材5により、高圧側3と低圧側4との間が気密にシールされる。
以上のように構成された電磁弁100の作用について、図1ないし図4を参照して説明する。図1に示す開時では、流体は、高圧側3からHおよびHを通過して低圧側4へと流れる。このときの流体の流量は、主としてHに依存される。
図2に示すように、弁体1の閉動作に移行した状態では、流体は、Hよりも優先して狭まったHを通過する際に圧力損失を受けると共に流量が制限されて、Hに流れ込む。一方で、H<Hの関係は維持されるため、Hでの流速は、Hでの流速に比べて低減される。したがって、Hに位置するシール部材5は、絞り部30がない場合と比較すると、流体より受ける力が低減されることになる。なお、このときの流体の流量は、主としてHに依存される。
図3に示すように、弁体1の閉動作がさらに後期に移行した状態では、シール部材5は弁座2のシート面21に当接するが、このとき流体は、Hを通過する際に極めて大きな圧力損失を受けることになると共に流量が大きく制限される。したがって、シール部材5は、絞り部30がない場合と比較すると、流体より受ける力が大きく低減されることになる。なお、シール部材5とシート面21との接触面圧が高圧側3の圧力以上となったところで、高圧側3と低圧側4との間が気密にシールされることになる。
このように、図2および図3に示す弁体1の閉動作の過程では、シール部材5に作用する流体の力が徐々に緩和されるようになっていることから、シール部材5の耐久性を好適に向上することができる。そして、図4に示す閉時では、弁体1の表面10と弁座2のシート面21とは、シール部材5のつぶししろを押しつぶすようにして互いに密接して、高圧側3と低圧側4との間が気密性良く確実にシールされる。このとき、Hは零またはほぼ零となり、Hは僅かに存在するように設定されている。なお、弁座2側の交差部25を弁体1の傾斜面11に接触させるようにして、Hが零になるように設定してもよい。
また、図2に示す弁体1の閉動作の過程では、流体の流れによるセルフセンタリングの原理によって、弁体1の弁座2に対する接触平面度および同心度が向上されるようになっている。具体的には、弁体1の閉動作に伴ってHが小さくなるほど、弁体1は流体によって軸心に且つY−Y軸のY方向に移動されるようになる。このため、弁体1は、弁座2に対して接触平面度を維持しつつ且つ自動向心しながら閉動作を行うと共に、その閉動作の移動速度が低減されることになる。
これにより、弁体1の閉動作を安定性よく行うことができると共に、図3に示すように、シール部材5と弁座2との接触を、その接触速度を緩和しながら行うことができる。したがって、図3および図4に示すシール部材5と弁座2との接触状態では、シール部材5は、その周方向において均一の力で弁座2に接触することになり、この点においてシール部材5の耐久性の向上に寄与することができる。
なお、詳述しないが、本実施形態の電磁弁100は、弁体1の開動作においても、すなわち図4→図3→図2→図1となる弁体1の動作においても、シール部材5が流体から受ける力は絞り部30によって緩和される。そして、図1に示す開時では、圧力損失を極力回避して、弁内の流路では十分な流量が確保される。
次に、本発明の他の実施形態に係る電磁弁100について図面を参照して説明する。その際、実施形態1ないしは各実施形態の相違点を中心に説明し、前記と同一部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
[実施形態2]
図5に示すように、実施形態2の電磁弁100は、実施形態1のシール部材5を弁座2のシート面21に設けたものである。実施形態2でのシール部材5の配置位置は、実施形態1での配置位置に対向する位置であり、シール部材5は弁体1の表面10に密接可能に構成されている。したがって、本実施形態においても、実施形態1と同様の作用および効果を奏することができる。
[実施形態3]
図6に示すように、実施形態3の電磁弁100は、実施形態1の構成要素に加えて、弁体1と弁座2との間に構成されるシール部材5の下流側の流路を狭める絞り部40を有している。この下流側の絞り部40は、実施形態1の上流側の絞り部30と同様の機能を有するものであるが、主として弁体1の表面10から突出させたニードル状の突出部41で画定されている。この突出部41は、その軸心をY−Y軸に合致させて設けられており、通路6に受容可能に構成されている。
下流側の絞り部40では、突出部41の斜面が上流側の絞り部30における傾斜面11に対応し、通路6を構成する弁座2の環状の角部42が上流側の絞り部30における弁座2の交差部25に対応している。下流側の絞り部40によって狭められる流路は、HとHとの関係と同様に、弁体1の閉動作の際に、シール部材5の直近の流路(H)に優先して狭まるように設定されている。また、下流側の絞り部40によって狭められる流路の断面積は、通路6の断面積よりも小さく設定されているが、弁体1の閉動作の際にも、この関係を維持しながら小さくなっていくように設定されている。
本実施形態によれば、実施形態1の作用および効果に加えて、特に弁体1の閉動作の際に、シール部材5の下流側でも絞り部40で圧力損失を発生させることができるため、シール部材5に作用する流体の力をより一層緩和させることができる。したがって、シール部材5の耐久性をより一層向上することができる。
[実施形態4]
図7に示すように、実施形態4の電磁弁100は、実施形態3のシール部材5を弁座2のシート面21に設けたものである。本実施形態は、実施形態3と同様に、シール部材5の上流側および下流側の前後に絞り部30、40があるため、実施形態3と同様の作用および効果を奏することができる。
[実施形態5]
図8に示すように、実施形態5の電磁弁100は、図6に示す実施形態3の構成から、上流側の絞り部30を省略したものである。したがって、図8に示す開時では、流体は、高圧側3からHを通過後、下流側の絞り部40によって狭められた流路を通過して、低圧側4へと流れる。
本実施形態は、シール部材5の下流側でのみ絞り部40が機能して圧力損失を発生させると共に、Hに流れ込む流量を制限することができるものであるが、実施形態1と同様に、シール部材5に作用する流体の力を緩和させることができる。したがって、本実施形態においても実施形態1と同様の作用および効果を奏することができる。
[実施形態6]
図9に示すように、実施形態6の電磁弁100は、実施形態5のシール部材5を弁座2のシート面21に設けたものである。実施形態6でのシール部材5の配置位置は、実施形態5での配置位置に対向するところであり、実施形態6は実施形態5と同様の作用および効果を奏することができる。
[実施形態7]
図10に示すように、実施形態7の電磁弁100では、実施形態1とは異なる絞り部30が形成されている。本実施形態の絞り部30は、弁体1の表面10から下方に突出形成した環状の凸部51と、凸部51に対応してこれを受容可能に形成され、弁座2のシート面21に環状に形成された凹部52と、で画定されている。
本実施形態の絞り部30によれば、シール部材5の周辺となるシール部材5の上流側の流路を狭めて、圧力損失を発生させることができるため、上記実施形態と略同様に、シール部材5に作用する流体の力を緩和させて、シール部材5の耐久性を向上することができる。なお、絞り部30を画定する形状要素は弁体1および弁座2間で逆の構成としてもよく、弁体1に凹部52を、弁座2に凸部51を形成してもよい。
[実施形態8]
図11に示すように、実施形態8の電磁弁100は、実施形態7のシール部材5を弁座2のシート面21に設けたものである。実施形態8でのシール部材5の配置位置は、実施形態7での配置位置に対向するところであり、実施形態8は実施形態7と同様の作用および効果を奏することができる。
[実施形態9]
図12に示すように、実施形態9の電磁弁100は、図10に示す実施形態7の絞り部30をシール部材5の下流側に設けたものである。本実施形態の絞り部40によれば、シール部材5の周辺となるシール部材5の下流側の流路を狭めて、圧力損失を発生させることができるため、実施形態7と略同様に、シール部材5に作用する流体の力を緩和させて、シール部材5の耐久性を向上することができる。
[実施形態10]
図13に示すように、実施形態10の電磁弁100は、実施形態9のシール部材5を弁座2のシート面21に設けたものであり、その配置位置は実施形態9での配置位置に対向する。したがって、本実施形態でも、実施形態9と同様の作用および効果を奏することができる。
[実施形態11]
図14に示すように、実施形態11の電磁弁100は、図10に示す実施形態7と図12に示す実施形態9との組み合わせに相当するものである。すなわち、本実施形態の電磁弁100は、シール部材5の上流側および下流側の両方に、凸部51および凹部52からなる絞り部30、40を設けたものであり、その際、凸部51を弁体1に形成したものである。本実施形態によれば、絞り部が一つの場合に比べて、シール部材5に作用する流体の力をより一層緩和させて、シール部材5の耐久性をより一層向上することができる。
[実施形態12]
図15に示すように、実施形態12の電磁弁100は、実施形態11のシール部材5を弁座2のシート面21に設けたものであり、その配置位置は実施形態11での配置位置に対向する。したがって、本実施形態でも、実施形態11と同様の作用および効果を奏することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体または弁座に設けられた弾性体からなるシール部材を介して、当該弁体と当該弁座とが密接する弁において、
前記弁体および/または前記弁座の形状により画定され、これらの間に構成される流路を狭める絞り部を有し、
前記絞り部は、前記シール部材の周辺に設けられた弁。
【請求項2】
前記絞り部によって狭まる流路は、前記弁体の閉動作の際に、前記シール部材の直近の流路に優先して狭まるように設定されている請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記シール部材は、環状からなり、
前記絞り部は、前記シール部材の径方向の内側および外側の少なくとも一方に位置することにより、前記シール部材の周辺に設けられている請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
弁体または弁座に設けられた弾性体からなるシール部材を介して、当該弁体と当該弁座とが密接する弁であって、
流入口から前記シール部材の位置を通過して流出口に至る流路と、
前記シール部材の近傍に設けられ、前記流路の断面積を部分的に小さくすることにより流体の流れを阻害する圧損部と、
を有する弁。
【請求項5】
前記圧損部は、前記弁体の閉方向への移動に伴い、前記流路の断面積を部分的に徐々に小さくする請求項4に記載の弁。
【請求項6】
前記圧損部は、前記弁体および/または前記弁座の形状により画定されている請求項4または5に記載の弁。
【請求項7】
弁体または弁座に設けられた弾性体からなる環状のシール部材を介して、当該弁体と当該弁座とが密接する弁であって、
前記弁体は、
前記弁座に対向する第1の面と、前記第1の面に連なる第1の周面と、を有し、
前記弁座は、
前記第1の面に対面する第2の面と、
前記第1の周面に対向する位置に、前記第2の面よりも前記第1の周面側に突出された環状突部と、を有し、
前記シール部材は、前記第1の面および前記第2の面の一方に設けられ、且つ前記第1の面および前記第2の面の他方に密接可能に構成され、
前記第1の周面と前記環状突部との間の流路には、前記第1の面と前記第2の面との間の流路よりも、断面積が小さくなるように設定された流路が含まれている弁。
【請求項8】
前記断面積が小さくなるように設定された流路は、前記第1の面と前記第2の面との間の流路よりも、前記弁体の閉動作に伴う断面積の減少率が大きい請求項7に記載の弁。
【請求項9】
前記環状突部は、前記第2の面に連なり、前記第1の周面に対面可能な第2の周面を有し、
前記断面積が小さくなるように設定された流路は、前記第1の周面と前記第2の周面との間の流路の少なくとも一部である請求項7または8に記載の弁。
【請求項10】
前記第1の周面は、テーパ状周面からなり、
前記第2の周面は、前記弁体側へ傾斜する逆テーパ状周面からなる請求項9に記載の弁。
【請求項11】
前記第1の面と前記テーパ状周面との交差部までの距離をRとし、前記第2の面と前記逆テーパ状周面との交差部までの距離をRとしたとき、
>Rを満たす請求項10に記載の弁。
【請求項12】
前記弁体の軸心に対する前記テーパ状周面の傾斜角度をθとし、前記弁体の軸心に対する前記逆テーパ状周面の傾斜角度をθとしたとき、
θ>θを満たす請求項10または11に記載の弁。
【請求項13】
前記第1の周面と前記環状突部との間の距離をHとし、前記第1の面と前記第2の面との間の距離をHとしたとき、
<Hを満たす請求項7に記載の弁。
【請求項14】
前記弁体の閉動作の際に、Hの減少率は、Hの減少率よりも大きくなるように設定されている請求項13に記載の弁。
【請求項15】
前記環状突部は、
前記第2の面に連なり、前記第1の周面に対面可能な第2の周面と、
前記第2の周面に連なり、前記第2の面に平行な環状面と、を有する請求項7または8に記載の弁。
【請求項16】
前記第1の面および前記第2の面は、平行である請求項7ないし15のいずれか一項に記載の弁。
【請求項17】
前記シール部材は、前記第1の面および前記第2の面の一方から他方側に突出している請求項7ないし16のいずれか一項に記載の弁。

【国際公開番号】WO2005/088175
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518820(P2005−518820)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004707
【国際出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】