説明

引き込み装置及び画像形成装置

【課題】 装置本体とユニットが係合しない状態で引き込み機構に振動や衝撃が加わっても、ユーザが復帰操作を行うことなく、ユニットを装置本体に装着できる引き込み装置を提供する。
【解決手段】 ユニットである給紙カセット9を装置本体の所定位置に引き込んで位置決めする引き込み装置には、被係合先端部4Aが設けられている。被係合先端部4Aがユニットの装着方向Xから押圧されることにより、被係合先端部4Aは、係止ピン6を外れないように閉鎖する閉鎖位置から、係止ピン6が被係合部に係合できる退避位置に退避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットを装置本体に引き込むための引き込み装置およびこの引き込み装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成するプリンタ等の画像形成装置には、画像形成装置本体(以下、装置本体という)に対して、装着および引き出し可能なユニットが設けられている。このユニットとしては、例えば、シートを収納する給紙カセットや、給紙カセットからシートを給送するためシート給送装置(シート給送ユニット)や、シートに画像を形成するための画像形成部(転写ユニット、定着ユニット等)などがある。
【0003】
これらのユニットは、装置本体に対して、確実に位置決めして装着される必要がある。
そこで、従来は、ユニットを装置本体に引き込むための引き込み装置が提案されている。例えば、トグル機構を利用した引き込み装置がある(特許文献1)。
【0004】
トグル機構を利用した引き込み装置101は、図10に示すように、揺動軸107を中心に揺動可能に構成されたトグルアーム106を備えている。このトグルアーム106の揺動端部には、給紙カセットに設けられている係止ピン102(図11に図示)を係止するための係止溝106aが形成されている。また、装置本体に設けられた軸110およびトグルアーム106に設けられた軸109との間に掛けられたトグルバネ108を備えている。また、係止ピン102を係止して案内するガイド部材111を備えている。
【0005】
そして、給紙カセットを装置本体の収納部に挿入すると、図11に示すように、給紙カセットの係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、トグルバネ108の弾性力により給紙カセットが引き込まれる。これを具体的に説明する。
【0006】
トグルバネ108は、弾性力の付勢方向が、中立位置を境に時計周り方向から反時計周り方向に反転するようになっており、給紙カセットが挿入される前は中立位置付近の中立位置より位相の少しずれた待機位置で待機しており、時計周り方向に付勢されている。
【0007】
そして、給紙カセットが挿入されて、係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、中立位置を超えるまでトグルアーム106が揺動させられると、トグルバネ108の付勢方向が反時計周り方向に反転する。これにより、給紙カセットが装置本体に引き込まれる。
【0008】
ところで、このような引き込み装置においては、装置本体と給紙カセットなどのユニットが係合しない状態で、引き込み機構に振動や衝撃が加わった場合に、振動や衝撃がアームや弾性体に伝達され、引き込み機構が誤作動してしまうことがあった。すなわち、給紙カセットが引き込み機構に係合されていない状態で振動や衝撃が引き込み機構に加わると、アーム106がトグルバネ108により引き込み位置(図11に示す状態)に移動してしまうことがあった。そして、このような状態では、アーム106は、給紙カセットに設けられた係止ピン102をつかむことができないため、給紙カセットを装置本体に引き込んで装着することができない。
【0009】
そこで、装置本体と給紙カセットが係合しない状態で、振動や衝撃により引き込み機構が誤作動してしまった場合に、引き込み機構をホームポジションに復帰させるための発明が提案されている(特許文献2)。
【0010】
この発明は、図12に示すように、給紙カセットの正面からドライバZを挿入し、アーム106の他端部を押し込んで、トグルバネ108の弾性力に抗してアーム106を強制的に引き込み位置からホームポジションに戻すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−85220号公報
【特許文献2】特開2006−151687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2で提案されている発明では、誤作動をしてしまった引き込み機構をホームポジションに復帰させる操作をユーザが行う必要があり、ユーザビリティの点で改良の余地あった。
【0013】
本発明の目的は、引き込み機構が誤作動してしまった場合でも、引き込み機構をホームポジションに復帰させる操作をユーザが行うことなく、ユニットを装置本体に装着することができる引き込み装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられる係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と弾性体を備え、前記弾性体の弾性力により待機位置から引き込み位置へ変位して前記ユニットを前記装置本体に引き込む引き込み機構と、
前記被係合部に設けられ、前記引き込み機構の引き込み位置で、前記被係合部と係合している前記係合部を外れないように閉鎖位置で閉鎖する被係合先端部と、を有し、
前記被係合先端部は、前記引き込み機構の前記引き込み位置で、前記係合部が前記被係合部と係合していない場合には、前記ユニットの装着方向から前記係合部に押圧されることにより、前記閉鎖位置から、前記係合部が前記被係合部に係合できるように退避位置に退避し、前記係合部が前記被係合部に係合すると、前記閉鎖位置に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被係合先端部がユニットの装着方向から押圧されることにより、被係合先端部は、係合部を外れないように閉鎖する閉鎖位置から、係合部が被係合部に係合できる退避位置に退避する。したがって、引き込み機構が誤作動してしまった場合でも、引き込み機構をホームポジションに復帰させる操作をユーザが行うことなく、ユニットを装置本体に装着することができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き込む動作を示す図
【図3】ユニットの装着動作の作用力を示す図
【図4】ユニットの位置決め機構を示す図
【図5】本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置を示す図
【図6】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図7】本発明が適用された引き込み装置の第2の実施形態を示す図
【図8】本発明が適用された引き込み装置の第3の実施形態を示す図
【図9】本発明が適用された引き込み装置の第4の実施形態を示す図
【図10】特許文献1に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【図11】特許文献2に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【図12】特許文献2に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
図5(a)は、本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置の全体構成を示し、図5(b)は、画像形成装置に設けられている給紙カセット9の断面図を示している。また、図6は画像形成装置の斜視図を示している。
【0018】
図5(a)において、1はフルカラーレーザービームプリンタ(以下、プリンタという)、1Aは画像形成装置本体(プリンタ本体)、1Bはシートに画像を形成する画像形成部、20は定着部である。2は装置本体1Aの上方に略水平に設置された上部装置である画像読取装置であり、この画像読取装置2と装置本体1Aとの間に、シート排出用の排紙空間Sが形成されている。なお、15はトナーカートリッジである。
【0019】
画像形成部1Bは、プロセスカートリッジ11を備えている。プロセスカートリッジ11は、感光体ドラム12と、帯電手段である帯電器13と、現像手段である現像器14を備えている。また、プロセスカートリッジ11の上方には、中間転写ユニット1Cが備えられている。
【0020】
中間転写ベルト16に1次転写ローラ19によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の負極性を持つトナー像が中間転写ベルト16に転写される。中間転写ユニット1Cの駆動ローラ16aと対向する位置には、中間転写ベルト上に形成されたカラー画像をシートPに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ17が設けられている。さらに、この2次転写ローラ17の上部に定着部20が配置されている。
【0021】
次に、このように構成されたプリンタ1の画像形成動作について説明する。まず、原稿の画像情報を画像読取装置2によって読み取ると、この画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部1Bのレーザスキャナ10に伝送される。なお、画像情報はパソコン等の外部機器から画像形成部1Bに入力される場合もある。そして、画像形成部1Bでは、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム12の表面をレーザスキャナ10から射出されたレーザ光により走査する。これにより、帯電器13によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光体ドラム12の表面が順次露光され、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム上に静電潜像が順次形成される。
【0022】
この後、この静電潜像を各色トナーにより現像して可視化すると共に、1次転写ローラ19に印加した1次転写バイアスにより、各感光体ドラム上の各色トナー像を中間転写ベルト16に順次重ね合わせて転写する。これにより、中間転写ベルト16上にトナー画像が形成される。
【0023】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート給送装置30からシートPが送り出される。シート給送装置30は、図7(b)に示すように、シートPを積載する積載板35を備えたシートP給紙カセット9、最上面のシートをピックアップする給紙ローラ31により搬送ローラ32と分離ローラ33から成る分離搬送ローラ対にシートを搬送する構成である。シートPが給送されるのにしたがって減少するのに合わせて、シート積載板35は給紙可能高さにシート面を上昇させる制御がされている。給送されてシートが無くなると、シート有無検知センサ36で検知されて給紙動作が停止して、シート補給の報知をパネルなどにする。給紙カセット9に収納されているシートが無くなった場合には、ユーザは給紙カセット9を引き出して、新たにシートを給紙カセット9に補給して給紙カセット9にシートを収納する。
【0024】
この後、シートPは、レジストローラ対40から2次転写部まで搬送される。この後、2次転写部にて、2次転写ローラ17に印加した2次転写バイアスにより、トナー像がシートP上に転写される。
【0025】
次に、このようにトナー像が転写されたシートPは、定着部20に搬送され、定着部20において熱及び圧力を受けて、シートPにカラーの画像として定着される。この後、画像が定着されたシートPは、定着部20の下流に設けられた第1排出ローラ対25aによって排出空間Sに排出され、排出空間Sの底面に突出された積載部23に積載される。
【0026】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1において、9は装置本体1Aに対して装着および引き出し可能なユニットとしての給紙カセットである。Dは、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置に引き込んで位置決めする引き込み機構である。
【0027】
まず、図1を用いて、弾性体の飛び移り座屈機構を利用した引き込み装置について説明する。
引き込み機構Dは、飛び移り座屈をする弾性体としての板バネ3と、板バネ3に設けられ被係合部4を有する。また、被係合部4には被係合先端部7が設けられている。係合部5は、被係合部4に係合する係止ピン6と、係止ピン6を揺動可能に支持するアーム7と、アーム7を回転可能に支持する回転軸8を備えている。第1の実施形態においては、係合部5はユニットとしての給紙カセット9に設けられ、引き込み機構Dは装置本体に設けられている。
【0028】
図1に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aから引出された状態において、板バネ3は、装置本体1Aに設けられた両端支持部50により、撓ませた状態で両端を支持され、被係合部4は板バネ3に沿って配置されている。
【0029】
板バネ3は、給紙カセット9の装置本体1Aへの装着方向X,引き出し方向Yに力を加えられると、弾性変形をする。また、板バネ3は、撓ませた状態で支持されているので、装着方向X、引き出し方向Yに加えられた力が一定限度を超えると、力が加えられた方向に飛び移り座屈による変形をする。
【0030】
本発明において、飛び移り座屈とは、撓んでいる弾性体に外側から力が加えられた場合に、その力が一定限度以上となると、それ以上の力を加えなくとも、弾性体が急激に変形し、力が加えられた方向(撓んでいる方向と逆方向)に反りかえる現象をいう。また、飛び移り座屈による変形は、弾性変形であり、飛び移り座屈による変形をした弾性体は、逆方向に力が加えられると、その方向に飛び移り座屈をする。
【0031】
なお、本発明の飛び移り座屈をする弾性体に用いることができる材料としてバネ用ステンレス鋼や、バネ用ベリリウム銅・りん青銅・洋白等を使用可能である。なお、板厚が比較的薄い板状の金属が、飛び移り座屈を起こしやすい。
【0032】
次に、引き込み機構Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着および引き出す動作について、図2に基づいて説明する。図2(a)〜(d)は、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置である装着完了位置まで装着する際の動作概略図である。
【0033】
まず、給紙カセット9を装置本体1Aに装着する動作について説明する。
図2(a)は、給紙カセット9が装置本体1Aから引き出された状態を示す。図2(a)に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aから引き出された状態では、引き込み機構Dは待機位置にある。
【0034】
給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、図2(b)に示すように、係止ピン6は被係合部4に当接する。さらに、給紙カセット9を装着方向Xに挿入すると、ピン6は、被係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、図2(c)に示すように、板バネ3に当接する。
【0035】
さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、ピン6は板バネ3を装置本体1Aの後側板に向かって押し込んでき、板バネ3は装着方向Xに弾性的に変形していく。そして、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、図2(d)に示すように、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こす。図2(d)は、引き込み機構Dによって給紙カセット9が装置本体1Aに引き込まれて装着された状態の図である。図2(d)に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aに装着された状態では、引き込み機構Dは引き込み位置にある。
【0036】
板バネ3は、飛び移り座屈による変形をする際に、弾性力により引き込み位置へ変位することで、装着方向Xに引き込み力を生じる。板バネ3が図2(d)の状態へ飛び移り座屈をする際に、被係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部5と被係合部4を介して装置本体1Aに引き込まれる。また、図2(d)に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aに装着された状態では、引き込み機構Dは引き込み位置にある。そして、引き込み機構Dが引き込み位置にある場合には、被係合先端部4Aは、係止ピン6が外れないように閉鎖位置で閉鎖している。
【0037】
一般的に、画像形成装置には、ユニットを装置本体への装着方向で位置決めをするための位置決め機構が設けられている。本実施形態での位置決め機構は、図4で示すように、給紙カセット9に設けられている突き当て部材21bと、装置本体1Aに設けられている基準部材21aとで構成されている。そして、給紙カセット9が装置本体1Aに装着されて突き当て部材21bが基準部材21aに突き当ることにより、給紙カセット9の装着方向の位置決めがされる。
【0038】
給紙カセット9が位置決め機構により位置決めされた状態では、板バネ3は、飛び移り座屈による変形を途中で止められた状態となっている。もし、位置決め機構による給紙カセット9の位置決めがされない場合には、図2(d)に示すように、点線で示される状態まで板バネ3は飛び移り座屈により変形する。このように、給紙カセット9は、装置本体1Aに装着された状態において、位置決め機構により板バネ3が飛び移り座屈による変形を途中で止めた位置にある。したがって、板バネ3により、給紙カセット9に装着方向Xの力が働き、給紙カセット9は引き込み方向に付勢される。これにより、給紙カセット9は装置本体1Aの装着完了位置で確実に位置決めされる。
【0039】
すなわち、ユーザが給紙カセット9を装置本体1Aに対して装着方向Xに挿入していき、板バネ3に一定限度以上の力が加えられると、給紙カセット9は、装着完了位置である図2(d)の状態へ板バネ3が飛び移り座屈をすることで引き込まれる。したがって、給紙カセット9を装置本体に対して確実に位置決めすることができる。一方、給紙カセット9の挿入による板バネ3に加えられる力が一定限度未満であれば、弾性変形した板バネ3は図2(c)の状態に戻るので、ユーザは給紙カセット9が装着されたと誤認することはない。
【0040】
次に、給紙カセット9を装置本体1Aに装着された状態から引出す動作について、図2に基づいて説明する。図2(d)の装着完了位置にある給紙カセット9を引き出し方向Yに引出し始めると、被係合部4に係合した係止ピン6が板バネ3を引き出し方向Yに弾性的に変形させる。
【0041】
そして、給紙カセット9を引き出し方向Yに引き出していき、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は挿入した際とは逆向きである引き出し方向Yに飛び移り座屈を起こし、図2(c)の状態となる。
【0042】
板バネ3は、飛び移り座屈をする際に引き出し方向Yの向きに力を生じる。板バネ3が図2(d)の状態から図2(c)の状態へ飛び移り座屈をする際に、被係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、被係合部4と係合部5を介して引き出される。
【0043】
以上説明したように、弾性体の飛び移り座屈機構を利用した引き込み機構Dによれば、簡易な構成で、ユニットを装置本体1Aに確実に位置決めすることができる。
【0044】
なお、図3は、給紙カセット9の装着および引き出す動作における板バネ3の作用力を表した図である。縦軸は板バネ3が給紙カセット9に作用する力を示し、横軸は給紙カセット9の装置本体1Aの装着完了位置からの距離を示す。作用力が正の値を示す場合は、板バネ3が給紙カセット9を引き出し方向Yに押し出す力を持っていることを示し、負の値を示す場合は板バネ3が給紙カセット9を装着方向Xに引き込む力を持っていることを示す。
【0045】
すなわち、給紙カセット9を挿入するユーザは、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図3(a)から図3(b)のときは、作用力が正の値を示すので、給紙カセット9を装着方向Xに押し込む力が必要である。また、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図3(b)から図3(c)のときは、作用力が負の値を示すので、ユーザが手で押し込まなくとも給紙カセット9は装着方向Xに引き込まれる。
【0046】
次に、引き込み機構Dが誤作動してしまった場合に、ユニットを装着する動作について説明する。
上記の弾性体の弾性力を利用する引き込み装置では、装置本体とのユニットが係合しない状態で、引き込み機構Dに振動や衝撃が加わった場合に、引き込み機構Dが誤作動してしまうことがある。
【0047】
図6(a)は、誤作動により引き込み機構Dが待機位置から引き込み位置へ変位してしまった状態を示す。引き込み機構Dの待機位置とは、板ばね3が前方に突出した状態で、引き込み位置とは、板ばね3が後方に突出した状態である。そして、引き込み位置にある引き込み機構Dの被係合先端部4Aは、バネ部材としての圧縮バネ35により、図6中左方向(閉鎖位置)に付勢されている。
【0048】
ユーザが給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、係合部5の係止ピン6が被係合先端部4Aを押圧する。被係合先端部4Aが装着方向Xから係止ピン6に押圧されると、圧縮バネ35は圧縮し、図6(b)に示すように、被係合先端部4Aは、バネ力に抗して図中右方向(退避位置)に退避する。図6(a)における被係合先端部4Aの位置を閉鎖位置、図6(b)における被係合先端部4Aの位置を退避位置とする。
【0049】
被係合先端部4Aが退避位置に退避することで、係止ピン6は、被係合部4に係合することができる。そして、係止ピン6が被係合部4に係合すると、図6(c)に示すように、圧縮バネ35の付勢力により、被係合先端部4Aは退避位置から閉鎖位置へ移動する。被係合先端部4Aは、閉鎖位置では、係止ピン6が被係合部4から外れないようにしている。
【0050】
以上のように、被係合部4が被係合先端部4Aを備える本実施形態によれば、引き込み機構Dが誤作動してしまった状態でも、ユニットとしての給紙カセット9を正規の状態で装置本体に装着することができる。その後は、正常に引き込み機構Dは作動することになる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図7に基づいて説明する。
第2の実施形態は、被係合先端部4Aが装着方向Xから押圧されると、閉鎖位置から回動して退避位置へ退避できるように、被係合先端部が回動軸を中心に回動可能に設けられている点のみが第1の実施形態と異なる。したがって、第1の実施形態と同等の構成については説明を省略する。
【0052】
図7(a)に示すように、第2の実施形態の引き込み装置には、被係合先端部を閉鎖位置に付勢するバネ部材としての付勢バネ45と、回動軸55が設けられている。被係合先端部4Aは、被係合先端部4Aと被係合部4との間に設けられた付勢バネ45により、閉鎖位置に付勢されている。ユーザが給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、図7(b)に示すように、被係合先端部4Aは、ユニットの装着方向Xから係止ピン6に押圧され、回動軸55を中心に閉鎖位置から退避位置に回動して退避する。
【0053】
図7(c)に示すように、被係合先端部4Aが退避位置に退避することで、係止ピン6は被係合部4とすることができる。そして、係止ピン6が被係合部4に係合すると、被係合先端部4Aは付勢バネ45の付勢力により、閉鎖位置に移動する。被係合先端部4Aは、閉鎖位置では、係止ピン6を被係合部4から外れないように閉鎖している。
したがって、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、図8に基づいて説明する。
第3の実施形態は、被係合部4に溝86が設けられている点のみが第1の実施形態と異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同じであるため、同等の構成については説明を省略する。
【0055】
上記の通り、本発明の引き込み装置には、ユニットの装着方向から押圧されることにより退避する被係合先端部4Aが設けられている。そして、第1の実施形態および第2の実施形態では、装置本体1Aに装着された給紙カセット9を引き出す際に、係止ピン6が被係合先端部4Aに当接する。この場合、給紙カセット9内の用紙積載重量が大きい場合や、給紙カセット9の引き出し速度が大きい場合には、係止ピン6から被係合先端部4Aに大きな負荷がかかってしまう。被係合先端部4Aは、ユニットの装着方向から押圧されると退避するように設けられているので、ユニットの引き出し方向から大きな負荷がかかると変形・劣化してしまうおそれがある。第3の実施形態は、給紙カセット9を引き出す際に、係止ピン6から被係合先端部4Aへ負荷がかかることによる、被係合先端部4Aの変形・劣化を防止するためのものである。
【0056】
図8(a)に示すように、第3の実施形態の引き込み装置には、被係合部4に、係止ピン6が嵌入できる溝86が設けられている。そして、給紙カセット9を引き出す際に、係止ピン6は溝86に嵌入しているので、係止ピン6は被係合先端部4Aに当接することがない。したがって、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果を奏すると共に、被係合先端部4Aに負荷をかけることなく、図8(b)に示す状態まで、給紙カセット9を引き出すことができるという効果を奏する。
【0057】
(第4の実施形態)
上記の第1の実施形態乃至第3の実施形態においては、引き込み機構として、弾性体の飛び移り座屈機構を利用したものついて説明した。しかし、本発明の引き込み機構は、飛び移り座屈機構を利用したものに限られず、種々の引き込み機構を用いることができる。
【0058】
例えば、図9に示すように、第4の実施形態に係る引き込み機構として、トグル機構を用いてもよい。引き込み機構としてトグル機構が用いられる場合は、被係合先端部4Aは、被係合部としてのアーム106の係止溝106aに設けられる。第4の実施形態においても第1の実施形態と同様に、被係合先端部4Aは、ユニットの装着方向から係止ピン6に押圧されることにより退避する。したがって、第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0059】
(変形例)
上記の第1の実施形態乃至第4の実施形態においては、引き込み機構Dが装置本体1Aに設けられ、係合部がユニットである給紙カセット9に設けられているが、本発明はこれに限らず、ユニットに引き込み機構Dが設けられていても良い。すなわち、装置本体およびユニットの一方であるユニットに引き込み機構を設け、装置本体およびユニットの他方である装置本体に係合部を設けてもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられる係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と弾性体を備え、前記弾性体の弾性力により待機位置から引き込み位置へ変位して前記ユニットを前記装置本体に引き込む引き込み機構と、
前記被係合部に設けられ、前記引き込み機構の引き込み位置で、前記被係合部と係合している前記係合部を外れないように閉鎖位置で閉鎖する被係合先端部と、を有し、
前記被係合先端部は、前記引き込み機構の前記引き込み位置で、前記係合部が前記被係合部と係合していない場合には、前記ユニットの装着方向から前記係合部に押圧されることにより、前記閉鎖位置から、前記係合部が前記被係合部に係合できるように退避位置に退避し、
前記係合部が前記被係合部に係合すると、前記閉鎖位置に移動することを特徴とする引き込み装置。
【請求項2】
前記被係合先端部を閉鎖位置に付勢するバネ部材を有し、
前記被係合先端部は、前記引き込み機構の前記引き込み位置で、前記係合部が前記被係合部と係合していない場合には、前記ユニットの装着方向から前記係合部に押圧されることにより、前記バネ部材の付勢力に抗して前記閉鎖位置から、前記係合部が前記被係合部に係合できるように退避位置に退避し、前記係合部が前記被係合部に係合すると、前記バネ部材の付勢力により前記閉鎖位置に移動することを特徴とする請求項1に記載の引き込み装置。
【請求項3】
前記被係合先端部は、回動軸を中心に回動可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の引き込み装置。
【請求項4】
前記被係合部は、前記係合部が嵌入できる溝を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項5】
前記弾性体は飛び移り座屈をする弾性体であり、前記被係合部は前記飛び移り座屈をする弾性体に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の引き込み装置を備えた画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−112497(P2013−112497A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262133(P2011−262133)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】