説明

強化用繊維束の接続方法、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法及び巻回体

【課題】長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合などにその素材とする強化用繊維束に対して、必要とされる接続強度を備えさせ、破断による中断を防止できるようにし、もって長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットなどの製造効率を高められるようにする。
【解決手段】先行する強化用繊維束の末端部と巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部とに加圧エアを吹きつけて両方の強化用繊維束をほぐしつつ絡み合わせて接続する方法において、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部と先行の巻回体の末端部とに含有される集束剤の量を0wt%以上4wt%以下に調整する準備工程を経た後に両方の強化用繊維束を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合などにその素材とする強化用繊維束を接続するための方法、この接続方法を採用した長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法、及び巻回体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形の原料などとして使用される長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造するには、次の方法が知られている。
すなわち、ボビンへ巻き取られた状態で提供される強化用繊維束を連続的に引き出しつつ、溶融樹脂を貯留した含浸ダイへ通過させ、この含浸ダイのダイノズルから長繊維強化樹脂ストランドとして取り出し、その後、この長繊維強化樹脂ストランドを冷却し、撚りをかけてから所定長さに切断してペレット化するという方法である(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
強化用繊維束は、ガラス繊維などの長繊維(フィラメント)を2000〜3000本集めて外径1〜2mm程度の束にさせ、ポリプロピレン (PP)系などの集束剤を塗布することによって保形させたものである。ここにおいて、集束剤は長繊維ごとのほつれが発生しないように集束状態を維持させ、また紐のように柔軟な可撓性を生じさせるために必要とされていると言うことができる。
【0004】
ところで、強化用繊維束は前記したようにボビンに巻き取られた状態(以下、巻回体という)で提供されることから、個々の巻回体ごとに先端部と末端部とを有している。そのため、連続して長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する際は、巻回体を交換するたびに、強化用繊維束の末端部と先端部とを接続する必要が生じる。
強化用繊維束を接続するには、末端部と先端部との両方をエアスプライサ(加圧エアを吹き付ける装置)に装填し、加圧エアによって繊維束を長繊維単位にほつれさせ、ほつれた長繊維同士を互いに絡み合わせることで接続を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−83420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、強化用繊維束には集束剤が塗布されているが、この集束剤は塗布前はエマルジョン状態であって元々水分を含んでいる。そこで、強化用繊維束をボビンに巻き取って巻回体を形成させた後、この巻回体全体を乾燥させて余分な水分を取り除く乾燥作業を行う。ところが、このような乾燥作業を行うと、巻回体の外周面側で水分が蒸発する状況が続き、巻回体の中心側から外周面側へ向けた水分の移動(浸透)が起こる。
【0007】
このとき、水分と一緒に集束剤も移動することになるが、巻回体の外周面側で蒸発するのは水分だけであることから、結果として、乾燥が終わったときに巻回体の外周面側では集束剤の残量濃度が高くなる濃化現象(マイグレーション)が発生する。
例えば、集束剤の含有量が0.6wt%と表記された巻回体を実測したところ、巻回体の中心部寄りに巻かれた強化用繊維束では、ほぼ表記通りの集束剤含有量であったものの、巻回体の外周寄りに巻かれた強化用繊維束では集束剤含有量が6wt%以上にも達する場合があった。
【0008】
このように集束剤含有量が多い強化用繊維束では、表面の摩擦が小さくなり過ぎる傾向がある。また、集束剤含有量が多い強化用繊維束に対してエアスプライサで加圧エアを吹き付けても、強化用繊維束が十分にほつれにくい。当然、エアスプライサを用いて接続した際の接続強度(引張強度)は弱くなりやすく、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合、含浸ダイのダイノズル等で強化用繊維束の接続箇所が破断する、又は長繊維強化樹脂ストランドの該当箇所が破断する確率が高くなり、生産効率が著しく低下するといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合などにその素材とする強化用繊維束に対して、必要とされる接続強度を備えさせ、破断による中断を防止できるようにし、もって長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットなどの製造効率を高めることができるようにした強化用繊維束の接続方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、この強化用繊維束の接続方法を採用した長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、接続強度(引張強度)が低下することなくエアスプライサを用いて接続することができる巻回体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る強化用繊維束の接続方法は、先行する強化用繊維束の末端部と巻回体の外周側から巻き出した強化用繊維束の先端部とに加圧エアを吹きつけて両方の強化用繊維束をほぐしつつ絡み合わせて接続する方法において、巻回体の外周側から巻き出した強化用繊維束の先端部と先行の巻回体の末端部とに含有される集束剤の量を0wt%以上4wt%以下に調整する準備工程を経た後に両方の強化用繊維束を接続することを特徴とする。
【0012】
このようにすることで、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合などに、強化用繊維束の接続部分に対して、必要とされる接続強度を備えさせることができる。そのため、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合などにあって、強化用繊維束が破断することによる中断を防止できるようになり、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットなどの製造効率を高めることができるようになる。
【0013】
なお、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部及び先行の巻回体の末端部に含有される集束剤の量が4wt%を超えると、ほぐされた状態の長繊維(フィラメント)相互間に過大な滑りが起こり易い。また、集束剤の量が4wt%を超えると、強化繊維束がほつれ難くなって、絡みが不十分となり、必要とされる接続強度(引張強度)が得られなくなる虞がある。そこで、本発明の接続方法では、集束剤を準備工程で4wt%以下、最も減らす場合は集束剤が殆ど検出されなくなるまで集束剤の量を減らすのである。
【0014】
前記準備工程は、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部を加熱することにより集束剤を除去する方法、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部に溶剤を塗布又は含浸させる方法、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部を研磨することにより繊維束表面の集束剤を削り落とす方法などを採用することができる。
一方、本発明に係る長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法は、先行する強化用繊維束の末端部と巻回体の外周側から巻き出した強化用繊維束の先端部とに加圧エアを吹きつけて両方の強化用繊維束をほぐしつつ絡み合わせて接続するに際し、巻回体の外周側から巻き出した強化用繊維束の先端部と先行の巻回体の末端部とに含有される集束剤の量を0wt%以上4wt%以下に調整する準備工程を経た後に両方の強化用繊維束を接続し、この強化用繊維束を連続的に引き出しつつ溶融樹脂を含浸させることで長繊維強化樹脂ストランドとし、この長繊維強化樹脂ストランドをペレット化することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る巻回体は、集束剤が塗布された強化用繊維束が巻き回されてなる巻回体であって、前記強化用繊維束の先端部と末端部との双方に含有される集束剤の含有量が0wt%以上4wt%以下に調整されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る強化用繊維束の接続方法、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法及び巻回体によれば、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する場合などに、強化用繊維束の接続部分に対して必要とされる接続強度を備えさせ、破断による中断を防止できるようにし、もって長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】強化用繊維束の接続方法を模式的に示した側面図である。
【図2】長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造工程を模式的に示した側面図である。
【図3】加熱装置を用いた準備工程を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図2は、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット15の製造工程を模式的に示している。
この製造工程では、まず、一つ又は複数の巻回体1(図例では3つ)から強化用繊維束2を連続的に引き出し、この強化用繊維束2を、溶融樹脂3が貯留されている含浸ダイ4へ通過させる。そして、この含浸ダイ4内にて溶融樹脂3が含浸された強化用繊維束2を、含浸ダイ4のダイノズル5へ通過させ、所定断面径(太さ)を有した長繊維強化樹脂ストランド6として取り出す。
【0019】
長繊維強化樹脂ストランド6はその後、水槽10へ通すことで冷却し、撚りローラ装置11によって撚りをかけ、ペレタイザ12で所定長さに切断する。これにより、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット15が製造される。
巻回体1は、強化用繊維束2がボビン17へ巻き取られた状態で提供されている。巻回体1の強化用繊維束2には、巻回体1から巻き出しを開始する際の先端部2bと、巻き出しを終える際(消費し終わった際)の末端部2aとがある。先端部2b及び末端部2aは、強化用繊維束2の両端からそれぞれ300mm〜2000mm程度までの長さの部分であり、この先端部2bは巻回体1の内周側にまた末端部2aは外周側に配備されている。
【0020】
ところで、連続して長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット15を製造する際には、巻回体1を強化用繊維束2の残量が少なくなったもの(消費しそうになったもの)から新たな巻回体1に交換する必要があり、先行する強化用繊維束2の末端部2aと巻回体1の外周側から巻き出した強化用繊維束2の先端部2bとを300mm〜2000mm、好ましくは300mm〜1000mmの長さに亘って接続する必要がある。
【0021】
この強化用繊維束2の末端部と先端部との接続は、図1に模式的に示されるように、先行する強化用繊維束2の末端部2aと、巻回体1から巻き出した強化用繊維束2の先端部2bとをエアスプライサ20に装填する等して、これら両方(2a,2b)に加圧エア(6kg/cm2)を吹きつけ、両方の強化用繊維束2をほぐした後互いに絡み合わせて接続するものである。
【0022】
ところが、強化用繊維束2には後述するように集束剤が塗布されており、巻回体1から巻き出した強化用繊維束2の先端部2bにはこの集束剤が濃化して、集束剤の含有量が非常に多くなっている。このように集束剤が多く含有された先端部2bと先行する巻回体1の末端部2aとをエアスプライサ20に装填して加圧エアを吹き付けても、強化用繊維束2を十分にほぐすことはできない。また、集束剤含有量が多い強化用繊維束では、表面の摩擦が小さくなる。このような理由から、末端部2aと先端部2bとの接続部分では十分な接続強度が得られなくなり、含浸ダイ4のダイノズル5から長繊維強化樹脂ストランド6を取り出すときに、含浸ダイ4内で強化用繊維束2の接続箇所が破断したり、或いはダイノズル5の下流側で長繊維強化樹脂ストランド6の該当箇所が破断したりする可能性があった。
【0023】
そこで、本発明では、予め、巻回体1の強化用繊維束2に関して、強化用繊維束2の両端からそれぞれ300mm〜2000mm、好ましくは300mm〜1000mmまでの先端部2b及び末端部2aに含有する集束剤の量を0wt%以上4wt%以下に調整する準備工程を経ておくようにする。このように強化用繊維束2の先端部2bと末端部2aとの双方に含有される集束剤の含有量が0wt%以上4wt%以下に調整された巻回体1を用いれば、接続強度(引張強度)を低下することなくエアスプライサを用いて接続することができるからである。
【0024】
次に、この集束剤及び準備工程について説明する。
集束剤は、例えばポリプロピレン系、ナイロン系、アクリル系、またはウレタン系などの有機系接着剤を含んでおり、この接着剤を界面活性剤などを用いて水に懸濁してエマルジョン化したものである。これらの集束剤は、引き揃えられた強化用繊維に対して含浸や塗工などの手段を用いて塗布され、強化用繊維がほぐれないように拘束している。
【0025】
ところで、塗布直後の集束剤には水分が含まれておりそのままでは強化用繊維に対して拘束力を発揮することができない。それゆえ、集束剤が強化用繊維に対して拘束力を発揮するためには乾燥が必要となる。そこで、集束剤が塗布された強化用繊維束は巻回体1として巻き取られた後、巻回体1全体を乾燥する乾燥作業に移される。
この乾燥作業では、巻回体1の外周面側で水分が蒸発し、蒸発により失われた水分を補給するように巻回体1の中心側から外周面側へ向けた水分の移動(浸透)が起こる。このとき、水分と一緒に集束剤も移動することになる。ところが、巻回体1の外周面側では水分だけが蒸発するため、水分と一緒に移動した集束剤だけが取り残されて集束剤の含有量が高くなる。結果として、乾燥が終わったときに巻回体の外周面側では集束剤の残量濃度が高くなる濃化現象(マイグレーション)が発生する。このように濃化された集束剤の含有量を調整するため、次の準備工程が行われる。
【0026】
準備工程は、巻回体1から巻き出した強化用繊維束2の先端部2b及び先行する巻回体1の末端部2aを加熱装置7(本実施形態ではマントルヒータ7)によって加熱して、集束剤を除去することで行う。集束剤に用いられるポリプロピレン系などの有機系接着剤は加熱により熱分解するため、加熱するだけで余分な接着剤を除いて、集束剤の含有量を0wt%以上4wt%以下に調整することができる。
【0027】
マントルヒータ7は、被加熱物を取り囲むようなリング形乃至筒形等に形成されており、被加熱物をコントローラ8を用いて一定温度に保持させたり、所定の昇温速度に設定したりできるように構成されている。但し、加熱装置としてマントルヒータが限定されるわけではなく、また加熱装置には温度調整できないものを用いることもできる。例えば、バーナなどを用いて加熱するような加熱装置であっても良い。
【0028】
図3に示すように、本第1実施形態では、マントルヒータ7内を所定温度(例えば400℃)で一定に加熱させておき、このマントルヒータ7内に強化用繊維束2の末端部2aと先端部2bとを10〜240秒に亘り装填しておく方法を採用した。
ところで、強化用繊維束2の先端部2bを加熱するときの加熱温度や加熱時間は次のような実験を行って求めてある。
【0029】
すなわち、複数の巻回体1を準備し、それらから強化用繊維束2の先端部2bを巻き出し、これら先端部2bを空気雰囲気中に設置したマントルヒータ7に装填して加熱してゆく。
そして、所定時間が経過するたびにマントルヒータ7から1本又は複数本の強化用繊維束2を取り出して、それぞれの集束剤の含有量と接続強度とを測定した。
【0030】
なお、いずれの巻回体1に備えられる強化用繊維束2も、2000〜3000本のガラス繊維を外径1〜2mm程度の束にし、ポリプロピレンによる集束剤を塗布してあるものとした。いずれも表記上は集束剤の含有量が0.6wt%とされていたが、加熱前の段階で測定したところ、先端部2bの集束剤含有量はおおよそ6wt%であった。
集束剤の含有量は、TGA(熱重量分析)により測定される重量減少量を充当するものとした。測定機には、RIGAKU製のThermo Plus[型番:TG8120]を用い、空気雰囲気中で室温から800℃まで昇温速度10℃/minで加熱した際に検出される物質の量から集束剤の含有量を計算した。
【0031】
接続強度の測定は、インストロン製の引張試験機[型番:5582]を用い、接続部分の両端を互いに300mmの間隔に保持されたチャック部のそれぞれに固定し、一方のチャック部のみを100mm/minの試験速度で他方のチャック部から離れるように移動させ、このときに発生する力を接続強度とした。なお、接続強度の測定は同じ条件毎に再現数3で実施しており、測定結果は平均値で示している。
【0032】
表1は、マントルヒータによる加熱時間、強化用繊維束2の接続強度、集束剤の含有量、及び長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット15の製造時における強化用繊維束2の破断の有無について、それらの相関を調べた結果を示している。
【0033】
【表1】

【0034】
この表1から、強化用繊維束2の接続強度(引張強度)としては、破断を起こさないためには80N以上を要することが判る。また、強化用繊維束2の接続強度を80N以上とさせるためには、集束剤の量を4wt%以下とする必要があることが判る。補足として、加熱温度を400℃とするときには加熱時間を40秒より長く、好ましくは80秒を超えて加熱するのが好ましいことも判る。
【0035】
これらの結果として、強化用繊維束2の先端部2b及び末端部2bを加熱するときの加熱温度や加熱時間を決定してある。
以上詳説したところから明らかなように、巻回体1から巻き出した強化用繊維束2の先端部2bに対し、接続作業前に行う準備工程にて集束剤含有量を0wt%以上4wt%以下となるように調整しておけば、その後、この先端部2bと先行使用した強化用繊維束2の末端部2aとを接続するときに、ほぐされた状態の長繊維(フィラメント)相互が強力に絡みあうようになり、必要十分な接続強度が得られるものとなる。
【0036】
そのため、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット15を製造する場合などにあって、強化用繊維束2の接続箇所が破断することはなく、破断による中断を防止できる。その結果、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット15の製造効率を高めることができるようになる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0037】
例えば、強化用繊維束2の長繊維は、ガラス繊維の他、カーボン繊維、ナイロン、アラミドなどを使用することもできる。
準備工程としては、巻回体1から巻き出した強化用繊維束2の先端部2bに対し、例えばアセトンなどの溶剤を塗布又は含浸させて、集束剤を溶剤に溶解させて集束剤の量を4wt%以下とする方法がある。この溶剤を用いる準備工程は、集束剤に含まれる有機系接着剤に高融点のものが用いられている場合に、特に有効性が高い。この場合、集束剤に上述のPP系の樹脂用いる場合は溶剤としてはPPに対して可溶性を示すアセトン以外の無極性溶剤、例えばMEK、ベンセン、トルエンなどの無極性溶剤を用いることができる。また、溶剤に塗布又は含浸させて処理する条件(時間、濃度など)は、集束剤として用いる樹脂の種類や濃度により変化するため一概に定めることはできないが、例えば上述のPP系の樹脂用いる場合であればアセトン中に浸漬してもよい。
【0038】
また別の準備工程としては、巻回体1から巻き出した強化用繊維束2の先端部2bを研磨することにより繊維束表面の集束剤を削り落とす方法がある。集束剤に含まれる有機系接着剤によってはウェスなどを用いて集束剤を拭き取ることでも、集束剤の含有量を下げることができるからである。なお、集束剤が強固に強化用繊維束2に固着している場合は、例えば上述した加熱や溶剤を用いた集束剤の除去と併用して行うか、ウェスなどより集束剤を削り落とす力の強いサンドペーパなどを用いても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 巻回体
2 強化用繊維束
2a末端部
2b先端部
3 溶融樹脂
4 含浸ダイ
5 ダイノズル
6 長繊維強化樹脂ストランド
7 マントルヒータ
8 コントローラ
10 水槽
11 ローラ装置
12 ペレタイザ
15 長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行する強化用繊維束の末端部と巻回体の外周側から巻き出した強化用繊維束の先端部とに加圧エアを吹きつけて両方の強化用繊維束をほぐしつつ絡み合わせて接続する方法において、
巻回体の外周側から巻き出した強化用繊維束の先端部と先行の巻回体の末端部とに含有される集束剤の量を0wt%以上4wt%以下に調整する準備工程を経た後に、両方の強化用繊維束を接続することを特徴とする強化用繊維束の接続方法。
【請求項2】
前記準備工程は、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部を加熱することにより集束剤を除去するものであることを特徴とする請求項1記載の強化用繊維束の接続方法。
【請求項3】
前記準備工程は、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部に溶剤を塗布又は含浸させることにより集束剤を溶出させるものであることを特徴とする請求項1記載の強化用繊維束の接続方法。
【請求項4】
前記準備工程は、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部を研磨することにより繊維束表面の集束剤を削り落とすものであることを特徴とする請求項1記載の強化用繊維束の接続方法。
【請求項5】
先行する強化用繊維束の末端部と巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部とに加圧エアを吹きつけて両方の強化用繊維束をほぐしつつ絡み合わせて接続するに際し、巻回体から巻き出した強化用繊維束の先端部と先行の巻回体の末端部とに含有する集束剤の量を0wt%以上4wt%以下に調整する準備工程を経た後に両方の強化用繊維束を接続し、この強化用繊維束を連続的に引き出しつつ溶融樹脂を含浸させることで長繊維強化樹脂ストランドとし、この長繊維強化樹脂ストランドをペレット化することを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
集束剤が塗布された強化用繊維束が巻き回されてなる巻回体であって、
前記強化用繊維束の先端部と末端部との双方に含有される集束剤の含有量が0wt%以上4wt%以下に調整されていることを特徴とする巻回体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−99181(P2011−99181A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255045(P2009−255045)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】