説明

強化粒子を有する感光要素、およびこの要素から印刷フォームを作製するための方法

【課題】感光要素、およびこの要素から印刷フォームを作製するための方法を提供すること。
【解決手段】感光要素は、結合剤、モノマー、およびノリッシュII型光開始剤を含有する感光性組成物の層を含み、この感光性層は、20%未満の化学線透過率を有し、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブの強化粒子を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光要素と、この要素から印刷フォームを作製するための方法とに関し、詳細には、添加剤を含有する光重合性組成物を有する感光要素と、印刷に適した面が形成されるようにこの要素を処理するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版は、例えばボール紙、プラスチックフィルム、アルミ箔といった包装材料など、軟質で変形し易いものから比較的硬質なものに及ぶ印刷面に、使用されることが周知である。フレキソ印刷版は、文献に記載されているような(例えば、特許文献1および2参照)光重合性組成物を含有する感光要素から作製することができる。光重合性組成物は、一般に、エラストマー結合剤と、少なくとも1種のモノマーと、光開始剤とを含む。感光要素は、一般に、支持体とカバーシートまたは多層カバー要素との間に介在させた光重合性エラストマー層を有する。化学線で画像通りに露光すると、光重合性層の光重合が露光領域に生じ、それによって、この層の露光領域が硬化し、不溶性になる。この要素を適切な溶液で、例えば溶媒または水性ベースの洗い流しによって処理し、あるいは熱によって処理し、それによって光重合性層の非露光領域を除去して、フレキソ印刷に使用することができる印刷レリーフを残す。
【0003】
ある場合には、エラストマー材料を融除し、かつ印刷に適した面、例えばレリーフを形成するのに十分な強度のレーザ光線で、印刷フォームに直接彫り込むことが望ましいと考えられる。光重合性印刷要素は、レーザ光線で画像通りに融除する前に、この要素を化学線で全面露光することによって、しばしば光化学的に強化される。この要素の彫り込み効率を高めるために、かつこの要素の機械的性質を強化するために、レーザ光線に対して感受性のある粒子材料を感光性組成物に添加してもよい。
【0004】
ある文献は(例えば、特許文献3および4参照)、軟質支持体上の1つまたは複数の強化エラストマー層をレーザ彫刻することによって、フレキソ印刷版を作製するためのプロセスを開示する。このプロセスでは、1つまたは複数の強化エラストマー層を強化し、かつレーザ彫刻する。エラストマー層は、機械的に、または光化学的に、または熱化学的に、またはこれらの組合せによって強化することができる。機械的な強化は、微粉化粒子材料などの強化剤をエラストマー層に組み込むことによってもたらされる。カーボンブラックおよび黒鉛が、適切な強化剤として挙げられている。光化学的強化は、光硬化性材料をエラストマー層に組み込み、この層を化学線で露光することによって実現される。光硬化性材料は、光開始剤または光開始剤系を有する光架橋性および光重合性の系を含む。どちらの特許も、カーボンブラックで機械的にのみ強化される感光要素の例を示しており、このときのエラストマー層におけるカーボンブラックの量は、このエラストマー層の1から25重量%であった。また、どちらの特許も、エラストマー層のカーボンブラックで機械的に強化されると共に光化学的に強化される感光要素の例も示している。しかし、ある文献(例えば、特許文献3参照)では、光開始剤として2−フェニル−2,2−ジメトキシアセトフェノン(アセトフェノンの誘導体である)を有するエラストマー層を光化学的に強化するために、エラストマー層内の強化剤の量が著しく少なかった(機械的にのみ強化されたエラストマー層と比較して)。エラストマー層が機械的にかつ光化学的強化された例の感光要素中のカーボンブラックの量は、エラストマー層の0.23重量%未満であり、したがって化学線は、この層を十分に透過することができ、かつこの要素を光化学的に強化することができた。ある文献(例えば、特許文献4参照)の例は、感光性組成物の最上層が、機械的強化粒子として18.7重量%のカーボンブラックと光開始剤系として2−イソプロピルチオキサントンおよびエチル−p−ジメチルアミノベンゾエートを含んでいる、多層版を作製した。しかし、多層版は、フレキソ印刷場として使用するためにレーザ彫刻がなされた。
【0005】
フレキソ印刷版は、印刷フォームが画像領域から印刷されるレリーフ印刷のフォームであり、即ち、印刷フォームの画像領域が盛り上がっておりかつ非画像領域が凹んでいるフォームである。グラビア印刷は、画像領域が凹んでおりかつインクまたは印刷材料を含有する小さなリセスカップまたはウェルからなり、また非画像領域がフォームの面である印刷フォームが、画像領域から印刷される印刷方法である。しかし、グラビア印刷フォームは高価であり、製造するのにかなりの時間および材料を必要とする。グラビアシリンダは、本質的に、銅またはクロム層をベースローラ上に電気めっきし、次いで小さなリセスセルまたはウェルからなる画像を、ダイヤモンドチップ付きまたはレーザエッチング用の機械によるデジタル処理によって彫り込むことにより作製される。
【0006】
光重合性レリーフ印刷フォームは、グラビア様印刷に使用できると考えられる。グラビア様印刷は、画像領域が凹んでおりかつ印刷中に転写されるインクを保持するためのウェルを形成するリセス領域からなるレリーフ印刷フォームを使用すること以外、グラビア印刷に類似している。しかし、光重合性レリーフ印刷フォームの耐摩耗性や引張り強さ、剛性などの機械的性質は、この要素を従来のグラビアシリンダとしてまたはこのシリンダと同様に効果的に機能させるため、高める必要があると考えられる。インクを保持するエラストマーフレキソ印刷フォームのリセス領域は、インクの転写中にまたは基材とのニップ接触中に体積が変化する可能性があり、それによって、許容できない画像品質が生ずると予測される。また、従来のグラビア印刷は、グラビアシリンダのリセス領域に転写されるインクの量を調節するために、典型的にはドクターブレードを使用する。しかし、グラビア様の適用例におけるエラストマーフレキソ印刷フォームは、ドクターブレードとの連続的な接触に関連した摩耗および摩滅に対して十分な抵抗力を持っていないようである。この点に関し、要素の機械的性質を強化するために、粒子材料を感光性組成物に添加してもよい。グラビア様印刷に合わせて機能する光重合性印刷フォームは、レーザ彫刻によって、または従来の画像通りの露光および前述の処理によって、容易に画像形成することができた。
【0007】
さらに、光重合性レリーフ印刷フォームの耐溶媒性も、この印刷フォームを従来のグラビアシリンダとしてまたはこのシリンダと同様に効果的に機能させるため、高める必要がある。従来のグラビア印刷に使用されたほとんどのインクは、典型的には、強力な溶媒であるトルエンを含有する。エラストマーフレキソ印刷フォームは、トルエンまたはその他の強力な溶媒に対して十分な抵抗力がなく、インクに接触すると、特に時間の経過と共に、溶解しまたは膨潤する可能性がある。プレス中の印刷フォームの膨潤は、品質が不十分な印刷画像をもたらすことになる。また、溶媒インクは、印刷フォームからの成分の一部を浸出させる可能性があり、それによって、プレス中に印刷フォームの完全な失敗を引き起こす可能性もある。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4323637号明細書
【特許文献2】米国特許第4427759号明細書
【特許文献3】米国特許第5798202号明細書
【特許文献4】米国特許第5804353号明細書
【特許文献5】米国特許第4177074号明細書
【特許文献6】米国特許第4431723号明細書
【特許文献7】米国特許第4517279号明細書
【特許文献8】米国特許第5679485号明細書
【特許文献9】米国特許第5830621号明細書
【特許文献10】米国特許第5863704号明細書
【特許文献11】米国特許第4323636号明細書
【特許文献12】米国特許第4430417号明細書
【特許文献13】米国特許第4045231号明細書
【特許文献14】米国特許第3458311号明細書
【特許文献15】米国特許第4273857号明細書
【特許文献16】米国特許第6210854号明細書
【特許文献17】米国特許第6025098号明細書
【特許文献18】米国特許第5889116号明細書
【特許文献19】米国特許第4293635号明細書
【特許文献20】米国特許第5015556号明細書
【特許文献21】米国特許第5175072号明細書
【特許文献22】米国特許第4956252号明細書
【特許文献23】米国特許第5707773号明細書
【特許文献24】米国特許第3380831号明細書
【特許文献25】米国特許第2927024号明細書
【特許文献26】米国特許第4753865号明細書
【特許文献27】米国特許第4726877号明細書
【特許文献28】米国特許第4894315号明細書
【特許文献29】国際公開第2007/017298号パンフレット
【特許文献30】米国特許第3684771号明細書
【特許文献31】米国特許第3788996号明細書
【特許文献32】米国特許第4070388号明細書
【特許文献33】米国特許第4032698号明細書
【特許文献34】米国特許第3620726号明細書
【特許文献35】米国特許第2649382号明細書
【特許文献36】米国特許第3909282号明細書
【特許文献37】米国特許第5301610号明細書
【特許文献38】米国特許第2760863号明細書
【特許文献39】米国特許第3036913号明細書
【特許文献40】米国特許第5292617号明細書
【特許文献41】米国特許第4460675号明細書
【特許文献42】米国特許第5262275号明細書
【特許文献43】米国特許第5719009号明細書
【特許文献44】米国特許第5607814号明細書
【特許文献45】米国特許第5506086号明細書
【特許文献46】米国特許第5766819号明細書
【特許文献47】米国特許第5840463号明細書
【特許文献48】米国特許第6238837号明細書
【特許文献49】米国特許第6558876号明細書
【特許文献50】米国特許第6773859号明細書
【特許文献51】独国特許出願公開第3828551号明細書
【特許文献52】米国特許第3796602号明細書
【特許文献53】米国特許出願公開第2004/0048199A1号明細書
【特許文献54】特公昭第53−008655号
【特許文献55】米国特許第3060023号明細書
【特許文献56】米国特許第3264103号明細書
【特許文献57】米国特許第5215859号明細書
【特許文献58】米国特許第5279697号明細書
【特許文献59】米国特許第6797454号明細書
【特許文献60】欧州特許出願公開第0017927号明細書
【特許文献61】米国特許第4806506号明細書
【非特許文献1】Plastic Technology Handbook, Chandler et al.,Ed.,(1987)
【非特許文献2】“Use of A-B Block Polymers as Dispersants For Non-aqueous Coating Systems", H.K.Jakubauskas, Journal of Coating Technology, Vol.58; Number 736; pages 71-82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
機械的にかつ光化学的に強化されるエラストマー層を有する感光性印刷フォームに関連した問題とは、所望のレリーフ品質を得るために、また最終的には印刷品質を得るために、レーザ彫刻によってエラストマー材料が効率的に除去されないことである。光化学的に要素を強化することにより、彫り込みならびに印刷版としてのその最終用途に望ましい性質を得ることができる。しかし、強化剤のような粒子状添加剤が存在することによって、要素を光化学的に強化するのに必要な紫外線の透過が少なくなる。エラストマー層が、光化学的な強化中に不十分に硬化される場合、レーザ光線は、材料を効果的に除去することができず、彫り込まれた領域の不十分なレリーフ品質がもたらされる。さらに、レーザ彫刻から生じた破片は、粘着性を有する傾向があり、要素から完全に除去することが難しい。さらに、要素が光化学的に十分に強化されない場合、フレキソまたはグラビア様印刷版として必要な最終用途の性質が実現されない。これらの問題は、彫り込み効率またはグラビア様印刷のための機械的性質を高める添加剤の濃度が上昇するにつれて、さらに悪化する傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、結合剤、モノマー、およびノリッシュII型光開始剤を含む感光性組成物の層を含む、印刷フォームとして使用される感光要素であって、感光性層が、化学線の透過率が20%未満の層をもたらす強化粒子を含有しており、強化粒子が、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、感光要素を提供する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、結合剤、モノマー、およびノリッシュII型光開始剤を含む感光性組成物の層を含む、感光要素から得た印刷フォームを作製するための方法であって、感光性層が、化学線の透過率が20%未満の層をもたらす強化粒子を含有しており、強化粒子が、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法を提供する。この方法は、感光要素を化学線で露光するステップと、印刷に適した面を有する印刷フォームが形成されるように、露光された感光要素を処理するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、感光要素と、この感光要素から印刷フォームを作製する方法とを提供する。感光要素は、レリーフの隆起面から得た凸版印刷用の印刷フォーム、例えばフレキソおよび活版印刷の印刷フォームとして、またはレリーフのリセス面(またはウェル)から得たグラビア印刷用のグラビア様印刷フォームとして使用することができる。感光要素は、結合剤、少なくとも1種のモノマー、光開始剤、および強化粒子を含む感光性組成物の層で形成された光重合性要素である。具体的には感光要素は、結合剤および少なくとも1種のモノマーと共に、化学線の透過率が約20%未満、場合によっては15%未満、その他の場合には10%未満の層をもたらす強化粒子と、ノリッシュII型光開始剤である光開始剤とを含む感光性層を有する。
【0013】
本発明の感光性印刷要素には、いくつかの利点がある。光重合性層内に、強化粒子がノリッシュII型光開始剤と併せて存在することにより、凸版印刷およびグラビア様印刷の両方の適用例で使用される感光要素の機械的性質が改善される。感光性印刷要素は、得られる印刷フォームの線やハイライトドットなど、微細なフィーチャの高品質印刷に適したレリーフ面を形成する処理に関連した、厳しい条件に耐えることができる。また、感光性印刷要素は、印刷レリーフ面の摩耗およびレリーフ面内のレリーフ要素のドットチッピングにも耐えることができる。光重合性層内に強化剤が存在することにより、光重合性層に彫り込む効率またはその深さ方向に除去する効率を高めることによって、感光要素から印刷フォームを形成する方法の生産性を改善することができる。光重合性層内に強化粒子が存在することにより、凸版印刷およびグラビア様印刷の適用例で使用される感光要素の耐溶媒性も、改善することができる。驚くべきことに、感光要素の耐溶媒性は、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択された強化剤を含有する光重合性層によって、著しく増大する。ノリッシュII型光開始剤が存在することにより、化学線の透過率を約20%未満、場合によっては15%未満、その他の場合には10%未満に低下させる強化粒子の存在にも関わらず、要素を光化学的に強化するのに必要な化学線、例えば紫外線の、効果的な開始および透過が可能になる。共開始剤を有するノリッシュII型光開始剤は、本発明の感光要素の光重合の開始時に、特に効果的である。ノリッシュII型光開始剤としてのケトスルホン化合物の使用は、本発明の感光要素に対して特に効果的な開始剤である。
【0014】
感光性印刷要素は、光重合性組成物と見なすことができる感光性組成物の、少なくとも1つの層を含む。本明細書で使用される「光重合性」という用語は、光重合性、光架橋性、またはその両方の系を包含するものとする。組成物層が基材上に複数の光重合性層を含む場合、光重合性層のそれぞれの組成物は、その他の光重合性層のいずれかと同じにすることができ、または異ならせることができる。光重合性層は、結合剤、モノマー、光開始剤、および強化粒子からなる固体層である。一実施形態では、この層がエラストマー系である。光開始剤は、化学線に対して感受性がある。本明細書の全体を通して、化学線は、紫外線および/または可視光線を含むことになる。一実施形態において、光重合性組成物の固体層を画像通りに露光し、1種または複数の溶液で処理し、かつ/または加熱して、印刷に適したレリーフを形成することができる。別の実施形態では、光重合性組成物の固体層が、化学線を用いた全面露光によって光化学的に強化され、強化剤によって機械的に強化され、次いで印刷に適した面が形成されるように材料を選択的に除去するため、レーザ光線を用いた露光によって彫り込まれる。本明細書で使用される「固体」という用語は、限られた体積および形状を有し、かつその体積または形状を変化させる傾向のある力に抵抗する、層の物理的状態を指す。光重合性組成物の層は、約5℃から約30℃の間の室温で固体である。光重合性組成物の固体層は、重合(光硬化)されても重合されなくてもよく、またはその両方でよい。
【0015】
他に特に指示しない限り、「感光要素」および「印刷フォーム」という用語は、限定するものではないがフラットシート、プレート、継ぎ目のない連続した形、円筒状の形、プレートオンスリーブ、およびプレートオンキャリアを含めた、印刷に適した任意の形の要素または構造を包含する。感光要素から得られる印刷フォームは、フレキソや活版印刷などの凸版印刷、およびグラビア様印刷のための、最終用途である印刷適用例を有すると考えられる。感光要素から印刷フォームを製造し、凸版またはグラビア様印刷に適したレリーフ構造を生成するのに、様々なプロセスを使用してよい。
【0016】
層を形成する感光性組成物は、結合剤、モノマー、光開始剤、および強化粒子からなる。結合剤は、それ自体が光活性でよく、または光活性成分、即ちモノマーおよび光開始剤の1種または複数に対するマトリックスとして働いてもよい。結合剤は、露光および非露光感光性組成物に、所望の物理的および化学的性質を与える分散性ポリマー成分である。ポリマーは、典型的には事前に形成されるが、必ずしもその必要はない。ポリマーは限定されず、線状、分枝状、放射状、くし形のポリマー、および相互侵入網目構造になることのできるポリマーが含まれる。
【0017】
結合剤は、露光前にモノマーおよび光開始剤系のマトリックスとして働く、事前に形成されたポリマーにすることができ、露光の前と後の両方でフォトポリマーの物理的性質に寄与するものである。結合剤を添加することにより、画像形成要素を製造し、乾燥フィルムとして取り扱うことが可能になる。光開始剤およびモノマーの場合のように、結合剤の選択基準は用途に応じて変化する。分子量、ガラス転移温度、柔軟性、耐薬品性、溶解性、靭性、および引張り強さ、ならびにコストおよび利用可能性は、結合剤の選択を左右する要因の1つである。結合剤は、十分な分子量のものであり、かつ組成物をコーティングするときにフィルムが形成されるよう十分に高いガラス転移温度を有するべきである。適切な結合剤は、25000程度の低さから300000超まで、広く様々に変化する分子量を有することができ、1200000程度の高さまで記述されている。他に特に指示しない限り、ポリマー結合剤の分子量は、ポリスチレン標準物質を使用したゲル透過クロマトグラフィの助けを借りて決定された、平均分子量Mwである。
【0018】
結合剤は、単一のポリマーまたはポリマーの混合物にすることができる。結合剤は、適切な調製または最終使用条件下で、印刷フォームとして使用するのに適した特徴を得られた要素に与える材料の組合せを含むことができる。結合剤は、熱可塑性、エラストマー系熱可塑性、エラストマー系、または非エラストマー系にすることができる。熱可塑性エラストマー結合剤を含有する層を光化学的に強化する場合、この層はエラストマーのままであるが、そのような強化の後にはもはや熱可塑性ではない。下記の結合剤のいずれかは、単独で使用することができ、または所望の接着性、柔軟性、硬さ、酸素透過性、感湿性、およびその加工または最終用途に必要なその他の機械的または化学的性質を、感光要素にもたらすように組み合わせて使用することができる。組成物中のその他の成分は、透明で曇りのない感光性層が生成される程度まで、結合剤と適合すべきである。結合剤は、感光性組成物中に、この組成物の重量に対して10から95重量%、好ましくは40〜80重量%、最も好ましくは45〜65重量%存在する。
【0019】
結合剤として使用するのに適したポリマーには、イソプレンやブタジエンなど、共役ジオレフィン炭化水素の天然または合成ポリマーのエラストマー系ポリマーが含まれる。適切なエラストマー結合剤の例には、限定するものではないが、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンおよびブタジエンのコポリマー、ニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、メタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ブチルゴム、スチレンおよびイソプレンのコポリマー、ポリノルボルネンゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が含まれる。エチレン−プロピレン、エチレン−アクリレート、エチレン−酢酸ビニル、またはアクリレートゴムも、結合剤として適している。ビニル置換芳香族炭化水素および共役ジエンのブロックコポリマーも、結合剤として使用するのに適している。エラストマー結合剤のその他の例には、ポリアルキレンオキシド;ポリホスファゼン;アクリレートおよびメタクリレートのエラストマー系ポリマーおよびコポリマー;エラストマー系ポリウレタンおよびポリエステル;エチレン−プロピレンコポリマーや非架橋EPDMなどの、オレフィンのエラストマー系ポリマーおよびコポリマー;酢酸ビニルおよびその部分水素化誘導体のエラストマー系コポリマーが含まれる。ポリマーは、単独で、または本明細書に記述されるABブロックコポリマーと組み合わせて使用してよい。結合剤として使用するのに適したエラストマー材料追加の例は、文献(例えば、非特許文献1参照)に記載されている。
【0020】
熱硬化性や室温硬化性のシリコーンゴムなど、光化学反応以外の手段により硬化可能なポリマーは、これらのポリマーが主に光化学的に硬化可能な系と効果的に化合できる程度まで含めることができる。
【0021】
単独のまたは組み合わせたその他の適切な結合剤の、さらにその他の例には:ポリアクリレートおよびα−アルキルポリアクリレートエステル、例えばポリメチルメタクリレートおよびポリエチルメタクリレート;ポリビニルエステル、例えばポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル、および加水分解したポリ酢酸ビニル;エチレン/酢酸ビニルコポリマー;ポリスチレンポリマーおよびコポリマー、例えば無水マレイン酸およびエステルとのコポリマー;塩化ビニリデンコポリマー、例えば塩化ビニリデン/アクリロニトリル;塩化ビニリデン/メタクリレート、および塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマー;ポリ塩化ビニルおよびコポリマー、例えばポリ(塩化ビニル/酢酸ビニル);ポリビニルピロリドンおよびコポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)飽和および不飽和ポリウレタン;約4000から1000000の平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリエチレンオキシド;エポキシド、コポリエステル、例えば、式HO(CH2nOHのポリメチレングリコール(式中、nは2から10までの整数である)と、(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸、およびテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸、およびセバシン酸、(3)テレフタル酸およびセバシン酸、(4)テレフタル酸およびイソフタル酸、(5)前記グリコールと、(i)テレフタル酸、イソフタル酸、およびセバシン酸、(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、およびアジピン酸とから調製されたコポリマーの混合物との反応生成物から調製されたもの;ナイロンまたはポリアミド、例えばN−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド;ポリビニルアルコール;セルロース、およびセルロースエステルなどのセルロース誘導体、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートスクシネート、およびセルロースアセテートブチレートと、セルロースエーテル、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、およびベンジルセルロース;ポリカーボネート;ポリビニルアセタール、例えばポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール;およびポリホルムアルデヒドが含まれる。
【0022】
結合剤は、水性、半水性、水、または有機溶媒洗い流し溶液中で溶解させ、膨潤させ、または分散させることができる。水性または半水性現像液中で処理することによって除去することができる結合剤は、文献に開示されている(例えば、Proskowの特許文献5:Poskowの特許文献6;Wornsの特許文献7;Suzukiらの特許文献8および9;Sakuraiらの特許文献10参照)。文献中に論じられているブロックコポリマー(例えば、Chenの特許文献11;Heinzらの特許文献12;およびTodaらの特許文献13参照)は、有機溶媒溶液中で洗い流すことによって処理することができる。一般に、洗い流し現像に適した結合剤は、加熱によって光重合性層の非重合領域が軟化し、融解し、または流動する熱処理にも適している。感光性組成物の水性現像が望ましい場合、分枝状ポリマー生成物および/または結合剤は、組成物を水性現像液中で加工可能にするのに十分な、酸性またはその他の基を含有すべきである。有用な水性加工可能な結合剤には、文献に開示されているものが含まれる(例えば、特許文献14、15、16、8、17、9、10、および18参照)。有用な両性ポリマーには、N−アルキルアクリルアミドまたはメタクリルアミド、酸性フィルム形成コモノマー、およびアルキルまたはヒドロキシアクリレートから得られたインターポリマー、例えば文献に開示されているようなもの(例えば、特許文献19参照)が含まれる。
【0023】
一実施形態において、結合剤は、非エラストマーブロックおよびエラストマーブロックからなる熱可塑性エラストマーブロックコポリマーであり、但しAは、ビニル置換芳香族炭化水素の非エラストマーブロックを表し、Bは、共役ジエンのエラストマーブロックを表す。スチレンおよびメチルスチレンは、適切なビニル置換芳香族炭化水素の例である。ポリブタジエンおよびポリイソプレンは、1,2−または1,4−結合されてよい共役ジエンの例である。ブロックコポリマーは、線状ブロックコポリマー、放射状ブロックコポリマー、星形ブロックコポリマー、または準放射状ブロックコポリマーにすることができる。ブロックコポリマーは、完全にまたは部分的に水素化してよい。ブロックコポリマーの結合剤は、トリブロックA−B−Aコポリマーを含むことができるが、A−Bタイプのブロックコポリマー、または複数の交互エラストマー性および熱可塑性ブロックを含むもの、例えばA−B−A−B−Aを含むものにすることもできる。ブロックコポリマーは、文献に記載されている(例えば、特許文献11、12、および13参照)。特に適切な熱可塑性エラストマートリブロックコポリマーには、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)(SIS)ブロックコポリマー、ポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)(SBS)ブロックコポリマー、SISおよびSBSブロックコポリマーの組合せが含まれる。2種以上の異なるブロックコポリマーの混合物を用いることも可能である。例えばABAブロックコポリマーは、ABジブロックコポリマーを含有することができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレンブチレン)−ポリスチレン(SEBS)ブロックコポリマー、およびポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレンプロピレン)−ポリスチレン(SEEPS)ブロックコポリマーなども、ブロックコポリマーとして含まれる。非エラストマーとエラストマーとの比は、好ましくは10:90から35:65の範囲内である。結合剤としてのブロックコポリマーは、感光性層の40重量%から95重量%の量で存在してよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、結合剤は、ノリッシュII型光開始剤との反応後に水素を供与するのに十分な、例えばメチルやエチル、t−ブチルなどの炭素原子が1から6個のアルキル側基を含むことが望ましいと考えられる。例えばABAブロックコポリマーは、水素供与に利用可能でありかつノリッシュII型光開始剤と反応することができる、中間ブロック内の側基である1個または複数のビニル基、即ち共役ジエンを含んでよい。
【0025】
適切な多成分系の一実施形態は、エラストマーポリウレタン組成物を含む。適切なポリウレタンエラストマーの例は、(i)有機ジイソシアネートと、(ii)分子1個当たり、イソシアネート基と重合することが可能な少なくとも2個の遊離水素基を有し、かつ少なくとも1個のエチレン系不飽和付加重合性基を有する、少なくとも1種の連鎖延長剤と、(iii)最小分子量が500であり、イソシアネート基と重合することが可能な少なくとも2個の遊離水素含有基を有する有機ポリオールとの反応生成物である。これらの材料の一部に関する記述は、文献(例えば、特許文献20および21参照)を参照されたい。
【0026】
別の実施形態において、結合剤は、Frydらの文献(例えば、特許文献22参照)およびQuinnらの文献(例えば、特許文献23参照)に開示されるような、コアシェルマイクロゲルと、マイクロゲルおよび事前に形成された高分子ポリマーのブレンドとを包含する。
【0027】
化学線によって活性化された組成物で使用することができるモノマーは、当技術分野で周知であり、限定するものではないが、比較的低い分子量、即ち約30000未満、好ましくは約5000未満の分子量を有する付加重合エチレン系不飽和化合物が含まれる。本明細書において他に特に指示しない限り、分子量は、加重平均分子量である。付加重合化合物は、オリゴマーでもよく、単一のオリゴマーまたはオリゴマーの混合物にすることができる。ポリアクリロイルオリゴマーを使用する場合、このオリゴマーは、好ましくは1000よりも大きい分子量を有するべきである。組成物は、単一のモノマーまたはモノマーの組合せを含有することができる。付加重合が可能なモノマー化合物は、少なくとも、組成物の5重量%、好ましくは10から20重量%の量で存在する。
【0028】
適切なモノマーには、限定するものではないがアルコールおよびポリオールのアクリレートモノエステル;アルコールおよびポリオールのアクリレートポリエステル;アルコールおよびポリオールのメタクリレートモノエステル;アルコールおよびポリオールのメタクリレートポリエステルが含まれ;適切なアルコールおよびポリマーには、アルカノール、アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、エトキシル化トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびポリアクリロールオリゴマーが含まれる。その他の適切なモノマーには、イソシアネート、エステル、およびエポキシドなどのアクリレート誘導体およびメタクリレート誘導体が含まれる。単官能性および多官能性アクリレートまたはメタクリレートの組合せを使用してもよい。
【0029】
適切なモノマーの例には、下記のものが含まれる:t−ブチルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレート、デカメチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレートおよび文献に開示されているような(例えば、特許文献24参照)同様の化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、ビスフェノールAのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−アクリルオキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−Aのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−Aのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−Aのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−Aのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ジフェノール酸のジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルオントリメチロールプロパントリアクリレート(462)、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、l−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、ジアリルフマレート、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、および1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン。
【0030】
適切なモノマーのその他の例には、イソシアネート、エステル、およびエポキシドなどのアクリレートおよびメタクリレート誘導体が含まれる。いくつかの最終使用印刷フォームでは、要素にエラストマー性を与えるモノマーを使用することが望ましいと考えられる。エラストマー系モノマーの例には、限定するものではないがアクリル化液体ポリイソプレン、アクリル化液体ブタジエン、高ビニル含量の液体ポリイソプレン、および高ビニル含量の液体ポリブタジエン(即ち、1〜2個のビニル基の含量が、約20重量%よりも多い)が含まれる。
【0031】
別の種類のモノマーには、炭素が2から15個のアルキレングリコールまたはエーテル結合が1から10個のポリアルキレンエーテルから調製された、アルキレンまたはポリアルキレングリコールジアクリレート、および文献に開示されているもの(例えば、特許文献25参照)、例えば、特に末端結合として存在する場合に複数の付加重合製エチレン結合を有するものが含まれる。そのような結合の少なくとも1つ、好ましくはほとんどが二重結合炭素と共役しているこの種類のモノマーであって、炭素、および窒素や酸素、硫黄などのヘテロ原子に二重結合された炭素を含むモノマーが、いくつかの実施形態に適している。エチレン系不飽和基、特にビニリデン基がエステルまたはアミド構造と共役しているようなモノマー材料も、適している。
【0032】
モノマーのその他の例を、Chenの文献(例えば、特許文献11参照);Frydらの文献(例えば、特許文献26参照);Frydらの文献(例えば、特許文献27参照)、およびFeinbergらの文献(例えば、特許文献28参照)に見出すことができる。
【0033】
光開始剤は、フリーラジカル架橋および/または重合反応を開始させる化学種を形成ために、化学線に対して感受性のある任意の単一の化合物、または化合物の組合せにすることができる。主または全面露光(ならびに任意選択のポスト露光およびバックフラッシュ)用の光開始剤は、310から400nmの間、好ましくは345から365nmの間の可視光線または紫外線に対して感受性がある。光誘起性水素抽出メカニズムに基づいてフリーラジカルを発生させる光開始剤または光開始剤系が、本発明で使用するのに特に適している。これらの光開始剤は、感光性層に衝突する化学線を捕え、この層の露光部分で重合を開始して、完全なまたは実質的に完全な光化学的強化を引き起こす際に、特に有効である。水素抽出を基にした光開始剤は、ノリッシュII型光開始剤と呼んでもよい。電気的に励起されたカルボニル化合物は、ノリッシュII型光開始剤と見なされる水素抽出体である。水素抽出メカニズムの一実施形態では、励起状態のカルボニル化合物が、共開始剤として知られる適切な基材または水素供与化合物から水素を抽出して、ケチルラジカル(カルボニル化合物から得られる)と、共開始剤から得られるラジカルとを形成する。共開始剤ラジカルは、重合を開始し、または別の基材から水素原子を抽出して、重合を開始する2次ラジカルを生成することができる。ノリッシュII型光開始剤として適切なカルボニル化合物には、芳香族ケトンおよびキノン、例えばベンゾフェノン、ケトスルホン、チオキサントン、1,2−ジケトン、アントラキノン、フルオレノン、キサントン、アセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキシレート、モノ−およびビス−アシルホスフィンなどが含まれる。適切な共開始剤には、チオール、アルデヒド、第2級アルコール、第1級アミン、第2級アミン、および第3級アミンが含まれる。適切な共開始剤の一実施形態は、参照により本明細書に組み込まれているRomagnanoらの文献(例えば、特許文献29参照)により、式Iで開示されている、芳香族アミンである。ノリッシュII型光開始剤および共開始剤からなる適切なノリッシュII型光開始剤系の例には、限定するものではないがアントラキノンおよび水素供与体;ベンゾフェノンおよび第3級アミン;ミヒラーケトン単独およびベンゾフェノンを有するもの;チオキサントンおよび共開始剤;および3−ケトクマリンおよび共開始剤が含まれる。適切な、光誘起水素抽出光開始剤および共開始剤の一実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているRomagnanoらの文献(例えば、特許文献29参照)によって、開示されている。ノリッシュII型光開始剤は、感光性組成物の重量に対して0.1から15重量%の量で、感光性組成物中に存在する。一実施形態において、共開始剤は、感光性組成物の重量に対して0.1から15重量%の量で、感光性組成物中に存在してよい。別の実施形態では、共開始剤は、必ずしも存在する必要はない。結合剤が、例えばメチルやエチル、t−ブチルなどの、炭素原子が1から6個のアルキル側基を十分に含む実施形態では、この結合剤は、共開始剤を補助することができ、またはノリッシュII型光開始剤との反応によって水素を供与する際に共開始剤として働くことができる。
【0034】
ノリッシュII型光開始剤は、感光要素に対する光重合反応の大部分を推進させることになるが、下記の任意選択の光開始剤を、要素の光硬化に役立ててもよい。任意選択で、感光性組成物は、光解離メカニズムに基づいてフリーラジカルを発生させる、ノリッシュI型光開始剤とも呼ばれる第2の光開始剤または光開始剤系を含んでよい。光解離メカニズムに適した開始剤には、限定するものではないがペルオキシド、アゾ化合物、ベンゾイン誘導体、アセトフェノンの誘導体、ベンゾインのケトキシムエステル、トリアジン、およびビイミダゾールが含まれる。当業者に知られるように、アセトフェノン誘導体は、ノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤反応の核にすることができる。
【0035】
任意選択で、220から300nm、好ましくは245から265nmの間の放射線に対して感受性のある第2の光開始剤を、感光性組成物中に任意選択で存在させてもよい。処理または彫り込みの後、プレートは、レリーフ面の粘着性をなくすために、220から300nmの間の放射線で仕上げることができる。第2の光開始剤は、プレートの粘着性をなくすのに必要な後露光時間を短縮させる。この粘着性をなくす反応は、印刷フォームの外面(即ち、接触面)で生じるので、第2の光開始剤は、化学線に対する透過率が20%未満である感光要素において、有効にすることができる。これらの任意選択の光開始剤は、光重合性組成物の重量に対して0.001%から10.0%の量で、独立に存在してよい。
【0036】
感光性組成物は、印刷要素の機械的強度を高める強化粒子を含む。要素の機械的強度は、レーザ彫刻のために、かつ/またはインクや基材などの材料および印刷プロセスの使用に関連したある特定の印刷用途の過酷に耐える最終使用のために、高めることができる。感光性層内に強化粒子が存在することにより、印刷要素の耐溶媒性も高めることができる。感光性層内のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブの強化粒子は、驚くべきことに、溶媒作用に対する障壁をもたらし、感光要素および得られる印刷フォームでの溶媒およびさらに強力な溶媒による膨潤に対する抵抗力も、著しく改善する。強化粒子は、本明細書において、強化微粒子および強化剤と呼んでもよい。
【0037】
感光性組成物は、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される強化粒子を含む。グラフェンは、ベンゼン環構造内に稠密に充填された、芳香族と見なされるsp2−結合炭素原子の単一の平坦なシートである。グラフェンは、3次元黒鉛の2次元対応物である。カーボンナノチューブは、ナノメートルサイズの円筒状に巻き上げられたグラフェンシートと見なされる。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブの強化粒子は、感光性組成物から層内に適切に分散されるべきであり、これは分散剤の助けを借りて実現することができる。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブは、約100nmから約10ミクロンに及ぶことのできる粒度を有する。その他の実施形態では、粒度は、約100nmから約5000nmに及ぶことができる。いくつかの実施形態では、グラフェンの粒度は、約200nmから約7から10ミクロンの長さに及ぶことができる。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの粒度は、約300から800nmの長さに及ぶことができる。
【0038】
任意選択で、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブは、組成物中に粒子を分散させかつ要素の感光性層内に粒子を均一に分布させることが可能な成分に、組み込むことができる。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含有する層は、粒子と1種または複数の成分とを組み合わせることにより、従来の方法によって調製することができる。一般に、液状成分中で微粒子の形をとるグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを組み合わせることは、このグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを溶液中に分散させることが難しいので、適切ではない。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブは粒状形態をとるので、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブ粒子を分散させるために、かつ凝結および凝集を回避するために、分散剤を添加することができる。使用に適した分散剤は、この分散剤が強化粒子を層内に均一に分散させる限り、限定されず、透明で曇りのない感光性層が生成される程度まで、結合剤および感光性層内のその他の成分と十分に適合可能である。広く様々な分散剤が市販されている。適切な分散剤の一実施形態は、ある文献(例えば、非特許文献2参照)に概略的に記述されているA−B分散剤である。有用なA−B分散剤は、文献(例えば、特許文献30、31、32、および33参照)に開示されている。分散剤は、一般に、感光性組成物の全重量に対して約0.1から10重量%の量で存在する。別の実施形態では、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブが、ポリマー結合剤に組み込まれる。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブは、感光性層および追加の層内での使用に適すると言われている結合剤から選択することができ、かつ感光性層および/または追加の層内で使用される結合剤と同じにすることができまたは異ならせることができるポリマー結合剤と、組み合わせることができる。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含有する組成物の調製に好ましい方法は、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブと結合剤の総量の一部とを事前に配合し、次いで結合剤の残りの部分を、事前に配合した混合物に添加することである。事前に配合した混合物を、結合剤の残りの部分に添加するステップには、希釈、混合、および/またはブレンドが含まれる。事前に配合するステップの任意のポイントで、希釈、混合、および/またはブレンドするステップで使用される材料を分散させるために、溶媒を使用することができる。いくつかの実施形態において、事前に配合した混合物と残りの結合剤部分との重量比は、1:10000から1:100にすることができ、その他の実施形態では1:1000から1:10にすることができる。これは、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブが結合剤中に十分に分散し、かつ層内に均一に分布するのを確実にするために行われる。
【0039】
グラフェンおよびカーボンナノチューブの強化粒子は暗色であり、即ちこれらの粒子は、それ自体がまたは感光性組成物と組み合わせた場合に、部分的に光に欠けており、光を全くまたはごく一部しか受け取らず、反射せず、または透過させない。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブの強化粒子が存在することにより、化学線に対する透過率が20%未満、いくつかの実施形態では10%未満の感光性層が得られる。強化粒子としてグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを存在させることにより、化学線に対する透過率が、いくつかの実施形態において10%未満であり、その他の実施形態においては5%未満であり、さらにその他の実施形態においては1%未満である感光性層が得られる。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブの強化粒子は、感光性組成物の重量に対し、いくつかの実施形態では0.4重量%より高い量で、その他の実施形態では0.8重量%より高い量で、さらにその他の実施形態では1重量%より高い量で感光性層内に存在する。いくつかの実施形態では、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブの強化粒子は、組成物の1から5重量%の量で存在する。
【0040】
任意選択で、感光性組成物は、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブと共に、追加の強化粒子を含んでもよい。任意のタイプの追加の強化粒子は、この粒子が感光性組成物から形成された層内に適切に分散することができる限り、本発明に用いることができる。任意選択で、追加の強化粒子を、上述の分散剤の助けを借りて感光性組成物に組み込むこともできる。強化微粒子は、有機、無機、有機および無機化合物の混合物、または多成分にすることができる。強化微粒子は、添加剤を含むことができる。強化粒子は、広範な粒度を有する微粉であることが好ましい。
【0041】
暗色である追加の強化粒子の場合、この強化粒子が感光性層内に0.4重量%程度の少量で存在することによって、感光性層を、この層の光化学的強化に必要な化学線、即ち紫外線の透過率を妨げまたは著しく低下させるよう(10%未満、いくつかの実施形態では20%未満)十分不透明にすることができる。感光性層は、感光性層内では暗色ではない追加の強化粒子を多量の投入した場合(例えば、いくつかの実施形態では0.4重量%より高く、その他の実施形態では1重量%より高く、さらにその他の実施形態では10重量%より高い)、10%未満の透過率を有してよい。追加の強化粒子は、感光性組成物の重量に対して、いくつかの実施形態では0.4重量%より高い量で、その他の実施形態では0.8重量%より高い量で、さらにその他の実施形態では1重量%より高い量で、感光性層内に存在する。いくつかの実施形態では、追加の強化粒子は、組成物の1から5重量%、5から20重量%、1から約25重量%の量で存在する。
【0042】
感光性層の彫り込み感度は、彫り込みに使用されるレーザ光線の波長、即ちいくつかの実施形態においては9から12マイクロメートルである波長に対して、感受性のある強化粒子を存在させることによって上昇する。一実施形態では、強化粒子の感受性は、典型的にはCO2レーザである彫り込みに使用されるレーザ光線の波長と一致する。いくつかの実施形態では、強化粒子は、9から12マイクロメートルの赤外線を吸収する。エラストマー層の彫り込み感度が高くなることにより、彫り込み速度が速くなり(強化粒子を含まないエラストマー材料に比べて)、彫り込みによって発生した破片の粘着性が低下する。添加剤は、引張り強さ、剛性、引裂き抵抗、および耐摩耗性などの、エラストマー層の機械的性質を高めることもできる。
【0043】
強化粒子の量を増加させることにより、特定の組成物に関する最適な投入量を表す最大量に達するまで、感光要素(および印刷フォーム)のレーザ彫刻性および機械的性質が同時に改善する。このポイントを超えると、感光性層の性質は劣化することになる。強化粒子の有効性は、粒度、および材料が凝集しまたは鎖を形成する傾向にも依存する。一般に、引張り強さ、耐摩耗性および引裂き抵抗、硬さ、および靭性は、粒度の縮小と共に増大する。
【0044】
強化粒子の有効性は、粒度、および材料が凝集しまたは鎖を形成する傾向にも依存する。一般に、引張り強さ、耐摩耗性および引裂き抵抗、硬さ、および靭性は、粒度の縮小と共に増大する。直径が200から500オングストロームの粒度を有するカーボンブラックが適している。その他の追加の強化粒子では、直径が数マイクロメートルまでの粒度を使用することができる。いくつかの実施形態では、粒子が1マイクロメートル未満である。ナノメートル(10-9)サイズの粒子である強化粒子は、このナノメートル粒子が非常に小さいために要素を露光する化学線の透過または散乱を低下させないという、従来のミクロンサイズの強化粒子よりも優れた特定の利点をもたらし、それによって、強化粒子をより高い投入レベルで感光性層に組み込むという能力をもたらすことができる。
【0045】
追加の強化粒子に適した材料の例には、限定するものではないがカーボンブラック、黒鉛、およびファーネスブラックが含まれる。追加の強化粒子のその他の例には、限定するものではないがTiO2、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミニウム、およびアルミナが含まれる。追加の強化粒子は、シリカ−酸素(Si−O結合)官能基またはリン−酸素(P−O結合)官能基を有する材料も包含する。シリカ−酸素単結合官能基を有する適切な材料には、クレー、タルク、マイカ、およびケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、およびケイ酸ジルコニウムなどの無機充填剤材料が含まれる。リン−酸素単結合官能基を含有する適切な材料には、芳香族ホスフェート、芳香族ホスフィト、および芳香族ホスホネートなどの微粒子が含まれる。
【0046】
追加の強化粒子のその他の例には、顔料粒子やトナー粒子、顔料粒子の混合物、トナー粒子の混合物、顔料およびトナー粒子の混合物などの、色を有する粒子が含まれる。強化粒子としての顔料粒子は、結晶形態にすることができ、または凝集体でもよい。使用に適した顔料粒子は、顔料が、機械的強化の増大など所望の特徴を感光要素に与える限り、いずれかにすることができる。いくつかの適切な、追加の強化粒子は、青色顔料および濃褐色顔料を含む。顔料粒子のその他の例には、限定するものではないがトルイジンレッド(C.I.顔料レッド3)、トルイジンイエロー(C.I.顔料イエロー1)、銅フタロシアニン結晶、キナクリドン結晶、トルイジンレッドYW、ウォッチュング(Watchung)レッドBW(C.I.顔料レッド48)、トルイジンイエローGW(C.I.顔料イエロー1)、モナストラルブルーBW(C.I.顔料ブルー15)、モナストラルグリーンBW(C.I.顔料グリーン7)、顔料スカーレット(C.I.顔料レッド60)、オーリックブラウン(C.I.顔料ブラウン6)、モナストラルグリーン(顔料グリーン7)、およびモナストラルマローンB、およびモナストラルオレンジが含まれる。顔料粒子として、亜クロム酸銅、酸化クロム、およびアルミン酸クロムコバルト;アルミニウム、銅、または亜鉛などの金属、ビスマス、インジウム、および銅などの合金も適している。
【0047】
トナー粒子は、後に所望の粒度に研磨される、樹脂マトリックス中に微細に分散された顔料粒子を含む、着色有機樹脂粒子である。着色有機粒子は、参照により本明細書に組み込まれているChuおよびMangerの文献(例えば、特許文献34参照);Vesceの文献(例えば、特許文献35参照);およびGrayの文献(例えば、特許文献36参照)に記載されている。トナー粒子に使用するのに適した顔料は、トナー粒子が、その他の所望の特徴と共に所望の不透過率を粒子に与える限り、上述のものを含めたいずれかにすることができる。適切な樹脂マトリックスには、限定するものではないがポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートが含まれる。水溶性ポリマーマトリックス、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースも有用である。使用されている特定のマトリックスは、トナーを所望の有効粒度にまで加工する機械的手段、所望の不透過率、および所望の融除感度に応じて異なる。粉末層としての使用に適するトナーは限定されず、プリプレスプルーフィングシステムに使用されるトナー、ならびにゼログラフィコピーシステムで使用される導電性トナーを含むことができる。特に好ましいトナーは、Cromalin(登録商標)黒色トナーとしてDuPontによって販売されている黒色トナー、例えばCromalin(登録商標)型KK6黒色トナー、例えばカーボンブラックおよびセルロースアセテートのブレンドである。
【0048】
一実施形態において、感光性組成物は、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択された強化粒子を含む。別の実施形態では、感光性組成物は、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択された強化粒子;およびある種類の追加の強化粒子を含む。その他の実施形態では、感光性組成物が、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せ;および複数の種類の追加の強化粒子からなる群から選択された強化粒子を含む。グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブ単独のこれら強化粒子のいくつかの実施形態は、要素の機械的強化および耐溶媒性に所望の改善をもたらすことができ、ノリッシュII型光開始剤が光化学的強化のために重合反応を適切に推進するように、層を十分に不透明にすることができる(即ち、層は、化学線に対する透過率が10%未満であり、その他の実施形態では化学線に対する透過率が20%未満である)。その他の実施形態では、グラフェンおよび/またはカーボンナノチューブ単独のこれら強化粒子は、要素の機械的強化および耐溶媒性に所望の改善をもたらすことができるが、層は、十分に不透明にならない(即ち、層は、化学線に対する透過率が約10%超であり、いくつかの実施形態では20%超である)。この場合、層を適切に不透明にする染料またはその他の材料を含むことが望ましいと考えられる。
【0049】
感光性層への追加の添加剤には、可塑剤、着色剤、染料、加工助剤、酸化防止剤、およびオゾン劣化防止剤が含まれる。モノマー官能基を時々含んでもよい可塑剤は、アクリル化液体ポリイソプレン、アクリル化液体ポリブタジエン、高ビニル含量の液体ポリイソプレン、および高ビニル含量の液体ポリブタジエン(即ち、1〜2個のビニル基の含量が20重量%よりも多い)を含むことができる。加工助剤は、結合剤に適合した低分子量ポリマーなどでよい。オゾン劣化防止剤は、炭化水素ワックス、ノルボルネン、および植物油を含む。適切な酸化防止剤は、アルキル化フェノール、アルキル化ビスフェノール、重合トリメチルジヒドロキノン、およびチオプロピオン酸ジラウリルを含む。
【0050】
固体感光性層の厚さは、所望の印刷フォームのタイプに応じて、広範囲わたり様々にすることができる。一実施形態では、感光性層は、約0.015インチから約0.250インチまたはそれ以上(約0.038から約0.64cmまたはそれ以上)、好ましくは約0.020から0.155インチ(約0.5から約3.9mm)の厚さを有することができる。別の実施形態では、感光性層は、約0.002インチから0.025インチ(0.051から0.64mm)、好ましくは0.005から0.020インチ(0.13から0.5mm)の厚さを有することができる。
【0051】
感光要素は、任意選択で、感光性組成物の層に隣接する支持体を含んでよい。支持体は、印刷フォームの作製に使用される感光要素に従来から使用されている、任意の材料または材料の組合せからなることができる。いくつかの実施形態では、支持体は、この支持体を通した「バックフラッシュ」露光に順応するように、化学線を透過させる。適切な支持体材料の例には、付加ポリマーおよび線状縮合ポリマーによって形成されるようなポリマーフィルム、透明なフォーム、およびファイバグラスなどの生地が含まれる。ある最終使用条件下では、金属支持体が放射線と透過しないとしても、アルミニウムや鋼、ニッケルなどの金属を支持体として使用してもよい。好ましい支持体は、ポリエステルフィルムであり;ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体は、シート形態、またはスリーブなどの円筒形態でもよい。スリーブは、印刷用のスリーブの形成に従来から使用されている、任意の材料または材料の組合せを形成することができる。スリーブは、単層、多層、複合体、または一体構造を有することができる。ポリマーフィルムから作製されたスリーブは、典型的には化学線を透過させ、それによって、円筒形印刷要素に床部を構築するためのバックフラッシュ露光に順応させる。多層化スリーブは、文献(例えば、特許文献37参照)に開示されるように、柔軟性材料の層の間に接着層またはテープを含んでよい。スリーブは、ニッケルやガラスエポキシなど、不透明な化学線遮断材料から作製してもよい。スリーブは、同じにまたは異ならせることができかつ内部に組み込ませた充填剤および/または繊維を有する、樹脂組成物の1つまたは複数の層からなるものでよい。樹脂組成物として適切な材料は限定されず、その例には、エポキシ樹脂;ポリスチレンおよびポリビニル樹脂、例えばポリ塩化ビニルやポリ酢酸ビニルなど;フェノール樹脂;および芳香族アミン硬化エポキシ樹脂が含まれる。樹脂組成物に使用される繊維は限定されず、例えばガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、金属繊維、およびセラミック繊維を含むことができる。スリーブに組み込まれた繊維は、連続的な、織られた、かつ/または巻き上げられた材料を含むことができる。繊維で強化された樹脂組成物で形成された支持体は、複合体スリーブの一例である。支持体は、典型的には0.002から0.050インチ(0.0051から0.127cm)の厚さを有する。シート形態の支持体に好ましい厚さは、0.003から0.016インチ(0.0076から0.040cm)である。スリーブは、約0.01から約6.35mmまたはそれ以上の肉厚を有することができる。いくつかの実施形態では、スリーブは、約0.25から0.80mmの間の肉厚を有する。いくつかの実施形態では、スリーブは、約10から80ミル(0.25から2.0mm)の肉厚を有し、その他の実施形態では、10から40ミル(0.25から1.0mm)の肉厚を有する。さらにその他の実施形態では、スリーブは、約1から3mmの間の厚さを有する。
【0052】
任意選択で、要素は、支持体と光重合性層との間に接着層を含むことができ、または、光重合性層に隣接する支持体の面が接着促進面を有する。支持体の表面の接着層は、支持体と光重合性層との間に強力な接着をもたらすため、文献に開示されるように(例えば、特許文献38参照)、接着材料の下塗り層またはプライマーまたは固定層にすることができる。Burgの文献(例えば、特許文献39参照)に開示されている接着組成物も効果的である。あるいは、光重合性層が存在する支持体の面は、火炎処理または電子処理、例えばコロナ処理により、支持体と光重合性層との間の接着が促進するように処理することができる。さらに、光重合性層支持体との接着は、Feinbergらの文献(例えば、特許文献40参照)により開示されるように、支持体を通して要素を化学線で露光することにより調節することができる。
【0053】
一実施形態において、感光要素は、支持体と、この支持体上にある感光性組成物の層とを含む。感光性組成物の層は、この要素および得られる印刷フォームの機械的性質を高めるために、主に強化粒子を含むことによって強化される。強化粒子の存在によって、レーザ光線による要素の彫り込み効率も高めることができる。また感光性層は、深さ方向の光硬化を行うために、化学線で露光することによって光化学的に強化される。感光性層は、完全なまたは実質的に完全な光化学的強化を可能にするために、化学線を捕えかつ微粒子充填層の露光部分を通して重合を開始する際に効果的な、ノリッシュII型光開始剤を含む。組成物層は、印刷に適したレリーフが形成されるように処理することが可能な、基材上にある、少なくとも1つの層である。本発明では、処理は、1種または複数の溶液を付着させ、かつ/または画像通りに露光された感光要素を加熱して非硬化部分(即ち、非重合材料)を層から除去し、それによって凸版印刷面を形成する方法;および感光要素を化学線で露光して要素を光化学的に強化し、レーザ光線で露光することにより強化材料を選択的に除去して、凸版印刷面を形成する方法を含めた、感光要素から凸版印刷面を形成する様々な方法を包含する。一実施形態では、感光要素は、フレキソ印刷フォームとしての使用に適したエラストマー印刷要素である。別の実施形態では、感光要素を、グラビア様印刷のための印刷フォームに変えることができる。
【0054】
感光要素は、少なくとも1つの感光性層であって、この層の化学線に対する透過率を20%未満にしかつグラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される強化粒子を含有する、少なくとも1つの感光性層を含む。感光要素は、2層または多層構造にすることができ、この場合、追加の層は感光性でよく(または感光性にすることができる)、または非感光性でよい。1つまたは複数の追加の層は、強化粒子を含有する感光性組成物と同じ、または実質的に同じ、または異なる組成を有することができる。いくつかの実施形態では、感光要素は、支持体と強化粒子を含有する感光性組成物の最上層との間に、中間層を含んでよい。いくつかの実施形態では、中間層は、印刷フォームとしての最終使用のため、感光要素に所望のバルク特性を与えてよい。例えば、フレキソ印刷フォームとして使用される感光要素の一実施形態では、中間層は、印刷フォームに所望のショアA硬度、弾性、および/または圧縮性を与えるエラストマー非感光性層でよく、最上層は、強化粒子を含有する感光性層である。1つまたは複数の追加の層は、強化粒子を含有する感光性層が受けるものと同じ処理ステップを受けることができ、またはそのような処理ステップによる影響を受けないままにすることができる。
【0055】
感光要素は、感光性層上にまたは感光性層に隣接して、1つまたは複数の追加の層を含んでよい。ほとんどの実施形態では、1つまたは複数の追加の層は、支持体とは反対側の、感光性層の面上にある。追加の層の例には、限定するものではないが剥離層、キャッピング層、エラストマー層、障壁層、およびこれらの組合せが含まれる。1つまたは複数の追加の層は、その全体または一部を、処理中に除去することができる。追加の層の1つまたは複数は、感光性組成物層を覆い、または部分的にのみ覆ってよい。感光性組成物層を部分的にのみ覆う追加の層の例は、化学線遮断材料またはインクを画像通りに付着させることによって、即ち、インクジェットでの付着によって形成される、マスキング層である。
【0056】
剥離層は、組成物層の表面を保護し、感光要素の画像通りの露光に使用されるマスクの容易な除去を可能にする。剥離層として適切な材料は、当技術分野で周知である。キャッピング層に適した組成物、およびこの層を要素上に形成するための方法は、Gruetzmacherらの文献(例えば、特許文献2および41参照)に記載されている、多層カバー要素のエラストマー組成物として開示されている。エラストマーキャッピング層は、画像通りに露光した後に、処理によってこのエラストマーキャッピング層が少なくとも部分的に除去可能である点が、感光性層と類似している。エラストマーキャッピング層は、上述のエラストマー結合剤と同じにしまたは異ならせることができるエラストマー結合剤として、かつ任意選択で、1種または複数のモノマー、光開始剤または光開始剤系、および感光性層に関して記述されたその他の添加剤を含む。エラストマー層またはキャッピング層は、それ自体を感光性にすることができ、即ち、モノマーおよび開始剤を含有することができ、あるいは、光重合性層と接触したときに感光性にすることができる。エラストマーキャッピング層の組成物は、隣接する光重合性層の組成と同じにすることができ、または実質的に同じにすることができ、または異ならせることができる。いくつかの実施形態では、エラストマー層は、エラストマー結合剤と共に、ノリッシュII型光開始剤と、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択された強化剤とを含む。エラストマーキャッピング層は、一般に、隣接する光重合性層とモノリシック構造を形成する固体である。エラストマーキャッピング層の厚さは、典型的には約0.001インチから約0.010インチ(0.025から0.25mm)の間である。
【0057】
本発明の感光要素は、感光要素の最上層の上面に、一時的なカバーシートをさらに含んでよい。カバーシートの1つの目的は、保存および取扱い中に、感光要素の最上層を保護することである。最終用途に応じて、カバーシートは、画像形成前に除去してもしなくてもよいが、現像前には除去される。カバーシートに適した材料は、当技術分野で周知である。
【0058】
感光性組成物は、当技術分野で周知の様々な技法を用いることによって調製することができる。使用することができる1つの方法は、成分(即ち、結合剤、開始剤、シリカ粒子を有するモノマー、およびその他の成分)を押出し機内で混合し、次いで混合物を、ホットメルトとして支持体上に押し出すことである。押出し機は、成分の溶融、混合、脱気、および濾過の役割を果たすために使用することが好ましい。均一な厚さを実現するために、押出しステップは、高温混合物が2枚のシートの間または1枚の平らなシートと剥離ロールとの間に流延されるカレンダ掛けステップに結び付けることが有利である。あるいは、材料を、一時的な支持体上に押し出し/カレンダ掛けし、その後、積層して所望の最終的な支持体にすることができる。要素は、適切な混合器内で成分を配合し、次いで材料を、適切な型で所望の形状にプレスすることによって、作製することもできる。材料は、一般に、支持体とカバーシートとの間でプレスされる。成型ステップでは、圧力および/または熱を必要とする。カバーシートは、感光要素が形成されるときに光重合性層に転写される、追加の層の1つまたは複数を含んでよい。
【0059】
一実施形態において、感光要素は、この要素を化学線で画像通りに露光することによる処理のために作製される。画像通りの露光の後、感光要素は、放射線硬化性組成物層の露光領域に硬化部分を含有し、放射線硬化性組成物層の非露光領域に非硬化部分を含有する。画像通りの露光は、画像保持マスクを通して感光要素を露光することにより実施される。画像保持マスクは、印刷される対象を含有する黒白トランスペアレンシーまたはネガでよく、あるいは、当技術分野で知られている手段によって組成物層上に形成されたin−situマスクでよい。画像通りの露光は、真空(フレーム)中で実施することができ、または大気中の酸素の存在下で実施してもよい。露光すると、マスクの透明領域では付加重合または架橋が引き起こされ、その一方で、化学線不透過領域は架橋しないままである。露光は、露光領域を支持体にまで、または背面露光層(床部)にまで架橋するのに十分な所要時間があるものである。画像通りの露光時間は、典型的にはバックフラッシュ時間よりも非常に長く、数分から数十分に及ぶ。
【0060】
文献に開示されている(例えば、特許文献42、43,44、45、46、47、48、49、および50参照)ダイレクト刷版画像形成では、画像保持マスクが、赤外線露光エンジンを使用してレーザ光線感受性層によりその場で形成される。画像通りのレーザ露光は、750から20000nmの範囲、好ましくは780から2000nmの範囲を放出する様々なタイプの赤外線レーザを使用して、実施することができる。ダイオードレーザを使用してよいが、1060nmで放出されるNd:YAGレーザが好ましい。赤外線感受性層を、やはり暗色でありかつ下にある光重合性層に悪影響を及ぼすことなく感光性層から除去することができまたは感光性層に転写することができるように、赤外線レーザ露光エンジンを制御しまたは調整することができる限り、これらの系は適切である。
【0061】
in−situデジタルマスクの形成は、インクジェットインクの形で放射線不透過材料を画像通りに付着させることにより、実現することができる。インクジェットインクの画像通りの付着は、光重合性層上に直接行うことができ、または感光要素の別の層上の光重合性層の上方に配置することができる。デジタルマスクの形成を実現することができる、別の考えられる方法は、別個の担体上に放射線不透過層のマスク画像を生成し、次いで支持体とは反対側の、光重合性層の面に、熱および/または圧力を加えることによって転写することである。光重合性層は、典型的には粘着性があり、転写された画像が保持されることになる。次いで別個の個体を、画像通りに露光する前に要素から除去することができる。別個の担体は、放射線不透過材料を選択的に除去しかつ画像を形成するために、レーザ光線で画像通りに露光される放射線不透過層を有してよい。
【0062】
化学線源は、紫外線、可視光線、および赤外線波長領域を包含する。特定の化学線源が適切か否かは、開始剤の感受性と、感光要素からのフレキソ印刷版を作製する際に使用される少なくとも1種のモノマーによって決定される。ほとんどの一般的なフレキソ印刷版の、好ましい感受性は、より良好な室内灯安定性をもたらすので、スペクトルの紫外線および遠可視領域内である。化学線で露光される組成物層の部分は、化学的に架橋し硬化する。照射されない(非露光)組成物層の部分は硬化せず、硬化した照射部分よりも低い融解または液化温度を有する。次いで画像通りに露光された感光要素は、光重合性層の非重合領域を除去する処理を受ける準備ができ、それによって、画像のレリーフ画像領域が形成される。
【0063】
支持体側からの全面背面露光、いわゆるバックフラッシュ露光は、支持体に隣接するフォトポリマー層の所定の厚さを重合させるために実施してよい。バックフラッシュ露光は、その他の画像形成ステップ、画像通りの露光の前、後、または最中にも実施してよい。フォトポリマー層のこの重合部分は、床部と呼ばれる。床部は、光重合性層と支持体との間に改善された接着性をもたらし、ドット解像度を際立たせるのを助け、プレートレリーフの深さも確立する。床部の厚さは、露光時間、露光源などに応じて様々である。この露光は、拡散的または直接行ってもよい。画像通りの露光に適切な全ての放射線源を使用してよい。露光は、一般に10秒から30分である。
【0064】
マスクを通した紫外線による全面露光の後、感光性印刷要素を、光重合性層の非重合領域が除去されるように処理し、それによってレリーフ画像を形成する。処理ステップは、少なくとも、光重合性層の、化学線で露光されなかった領域、即ち非露光領域または非硬化領域の光重合性層を除去する。エラストマーキャッピング層を除き、典型的には光重合性層上に存在してよい追加の層が、この光重合性層の重合領域から除去され、または実質的に除去される。in−situマスクを有する感光要素の場合、処理ステップは、マスク画像(化学線で露光された)および下にある光重合性層の非露光領域も除去する。
【0065】
一実施形態において、感光要素の処理は、(1)光重合性層を適切な現像液に接触させて、非重合領域を洗い流す「湿式」現像と、(2)光重合性層の非重合領域を融解させまたは軟化させまたは流動させる現像温度にまで感光要素を加熱し、次いで除去する「乾式」現像とを含む。乾式現像は、熱現像と呼んでもよい。湿式および乾式処理の組合せを使用してレリーフを形成できることも考えられる。
【0066】
湿式現像は、通常は室温程度で実施される。現像液は、有機溶媒、水性または半水性溶液、および水にすることができる。現像液に何を選択するかは、主に、除去される光重合性材料の化学的性質に左右されることになる。適切な有機溶媒現像液は、芳香族または脂肪族炭化水素、および脂肪族または芳香族ハロ炭化水素溶媒、またはそのような溶媒と適切なアルコールとの混合物を含む。その他の有機溶媒現像液は、文献(例えば、特許文献51参照)に開示されている。適切な半水性現像液は、通常、水および水混和性有機溶媒およびアルカリ性材料を含有する。適切な水性現像液は、通常、水およびアルカリ性材料を含有する。その他の適切な水性現像液の組合せは、文献(例えば、特許文献52参照)に記載されている。
【0067】
現像時間は変えることができるが、好ましくは約2から約25分の範囲内である。現像液は、浸漬、噴霧、およびブラシまたはローラ塗布を含めた任意の従来の手法で付着させることができる。ブラッシング助剤は、要素の非重合部分を除去するのに使用することができる。洗い流しは、プレートの非硬化部分を除去し、露光画像を構成するレリーフおよび床部を残すために、現像液および機械的ブラッシング動作を使用する自動加工ユニットで実施することができる。
【0068】
溶液中での現像による処理の後、一般に凸版印刷版を拭いまたは水分を拭き取り、次いで強制空気炉または赤外線炉内でより完全に乾燥させる。乾燥時間および温度は変えてもよく、しかし、典型的にはプレートは、60℃で60から120分間乾燥する。高温は、支持体が収縮し位置合わせの問題が生ずる可能性があるので、推奨されない。
【0069】
要素の熱処理は、少なくとも1つの光重合性層(および追加の層)を有する感光要素を、この光重合性層を液化させ、即ち軟化させまたは融解しまたは流動させるのに十分な温度まで加熱し、非硬化部分を除去するステップを含む。感光性組成物の層は、熱現像によって部分的に液化することが可能である。即ち、熱現像中に、非硬化組成物は、妥当な加工または現像温度で軟化しまたは融解しなければならない。感光要素が、光重合性層上に1つまたは複数の追加の層を含む場合、光重合性層に許容される現像温度の範囲内で、1つまたは複数の追加の層も除去可能であることが好ましい。光重合性層の重合領域(硬化部分)は、非硬化領域(非硬化部分)よりも高い融解温度を有し、したがって、熱現像温度では融解せず、軟化せず、または流動しない。非硬化部分は、文献に記載されるような(例えば、特許文献53参照)加圧下での空気または液体の流れ、文献に記載されるような(例えば、特許文献54参照)真空、および文献に記載されるような(例えば、特許文献55、56、20、21、57、58、および59参照)吸収材料を含めた任意の手段によって、組成物層の硬化部分から除去することができる。非硬化部分を除去するための好ましい方法は、要素の最外面を現像媒体なとの吸収剤の表面に接触させて、融解部分を吸収させ、または吸い取り、または拭うことである。
【0070】
「融解」という用語は、吸収材料に吸収させるために軟化させ、粘度を低下させる高温にかけられた組成物層の、非照射(非硬化)部分の挙動を述べるのに使用する。組成物層の融解性部分の材料は、通常、固体と液体との間で急峻な転移を示さない粘弾性材料であり、したがって、このプロセスは、現像媒体の吸収の閾値よりもいくらか高い任意の温度で、加熱された組成物層を吸収するように機能する。このように、組成物層の非照射部分は、高温にかけられたときに、軟化しまたは液化する。しかし、本明細書の全体を通して、「融解」、「軟化」、および「液化」という用語は、組成物が固体状態と液体状態との間で急峻な転移温度を有する可能性があるか否かにかかわらず、組成物層の加熱された非照射部分の挙動を示すのに使用してよい。本発明の目的で、組成物層を「融解」するのに広い温度範囲を利用してよい。吸収は、このプロセスの首尾よい操作の間、より低い温度でより遅く、より高い温度でより速くてよい。
【0071】
感光要素を加熱し、この要素の最外面を現像媒体に接触させる熱処理ステップは、現像媒体に接触させたときに、光重合性層の非硬化部分が依然として軟質でありまたは融解状態にある限り、同時にまたは逐次行うことができる。少なくとも1つの光重合性層(および追加の層)は、伝導、対流、輻射、またはその他の加熱方法によって、非硬化部分を融解させるのに十分な温度であるがこの層の硬化部分を歪ませるほど高くはない温度にまで加熱される。光重合性層の上方に配置された1つまたは複数の追加の層は、軟化しまたは融解してよく、現像媒体によって同様に吸収されてもよい。感光要素は、光重合性層の非硬化部分を融解させまたは流動させるために、約40℃よりも高い表面温度、好ましくは約40℃から約230℃(104〜446°F)まで加熱される。現像媒体と、非硬化領域内で融解する光重合性層との多少密接な接触を維持することによって、光重合性層から現像媒体への非硬化感光性材料の転写が生じる。依然として加熱状態にある間、現像媒体を、支持体層に接触している硬化済みの光重合性層から分離し、それによってレリーフ構造を明らかにする。光重合性層を加熱するステップ、および融解(部分)層を現像媒体に接触させるステップのサイクルは、非硬化材料を適切に除去しかつ十分なレリーフ深さを生成するのに必要なだけ、何回も繰り返すことができる。しかし、適切なシステム性能のためには、サイクル数を最小限に抑えることが望ましく、典型的には、光重合性要素は5から15サイクルで熱処理される。現像媒体と光重合性層(非硬化部分が融解している)との密接な接触は、層と現像媒体とを一緒に加圧することによって維持してよい。
【0072】
感光要素を熱現像するのに適切な装置は、Petersonらの文献(例えば、特許文献58参照)に、またJohnsonらの文献(例えば、特許文献59参照)にも開示されている。全ての実施形態での感光要素は、プレートの形をとる。しかし、当業者なら、シリンダまたはスリーブの形をとる感光要素の取付けに適応するように、開示された装置のそれぞれを修正することができることを理解すべきである。
【0073】
現像媒体は、放射線硬化性組成物の非照射または非硬化部分の融解または軟化または液化温度を超える融解温度を有するように、かつ同じ操作温度で良好な引裂き抵抗を有するように、選択される。選択された材料は、加熱中の感光要素の加工に必要な温度に耐えることが好ましい。現像媒体は、本明細書では、現像材料、吸収材料、吸収ウェブ、およびウェブと呼んでもよい。現像媒体は、不織材料、用紙、繊維性織布、連続気泡フォーム材料、空隙容量として含まれる体積のかなりの部分を多かれ少なかれ含有する多孔質材料から選択される。現像媒体は、ウェブまたはシートの形をとることができる。現像媒体は、現像媒体1平方センチメートル当たりが吸収することのできるエラストマー組成物のミリグラム数によって測定したときに、融解したエラストマー組成物に対して高い吸収力も有するべきである。繊維は、この繊維が現像中にフォーム内に堆積しないように、繊維を含有する現像媒体に結合されることも望ましい。不織ナイロンおよびポリエステルウェブが好ましい。
【0074】
処理ステップの後、感光要素を均一に後露光して、光重合プロセスが完了するように、かつそのように形成されたフレキソ印刷版が印刷中および保存中に安定なままになるように、確実に行うことができる。この後露光ステップは、画像通りの主露光と同じ放射線源を利用することができる。さらに、フレキソ印刷版の表面が依然として粘着性である場合、粘着性をなくす処理を利用してもよい。そのような方法は、「仕上げ」とも呼ばれ、当技術分野で周知である。例えば、粘着性は、フレキソ印刷版を臭素または塩素溶液で処理することによって、除去することができる。粘着性をなくすステップは、300nm以下の波長を有する紫外線源で露光することによって実現することが好ましい。この、いわゆる「光仕上げ」は、文献(例えば、特許文献60および61参照)に開示されている。様々な仕上げ方法を組み合わせてもよい。典型的には、後露光および仕上げ露光を、両方の放射線源を有する露光器を使用して、感光要素上で同時に行う。
【0075】
別の実施形態において、感光性層は、レーザ彫刻前に深さ方向に光硬化が行われるよう、化学線で全面露光することにより、光化学的に強化される。エラストマー組成物の層は、要素の製造中、または印刷版での要素の形成の一部としての最終使用中に、光化学的に強化することができる。エラストマー層の光硬化を行う放射線源は、放出された波長がノリッシュII型光開始剤の感度範囲に一致するように、選択すべきである。この紫外線源は、この放射線の有効量を供給すべきである。日光の他に、適切な高エネルギー放射線源には、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、蛍光管が含まれ、サブランプが適している。レーザは、その郷土が光硬化の開始のみに十分でありかつ材料を融除しない場合、使用することができる。露光時間は、放射線の強度およびスペクトルエネルギー分布、そのエラストマー組成物からの距離、エラストマー組成物の性質および量に応じて変わることになる。除去可能なカバーシートは、露光の後でありレーザ彫刻の前に除去されることを前提として、露光ステップ中は存在させることができる。
【0076】
感光要素から印刷フォームを作製するプロセスで光硬化した後、感光要素をレーザ光線で彫り込む。レーザ彫刻では、レーザ光線を吸収させ、熱を局在化させて、材料を3次元で除去する。本発明のレーザ彫刻プロセスでは、マスクまたはステンシルを使用しない。これは、レーザが、その焦点スポットまたはその付近で、掘り込まれる強化層に衝突するからである。このように、掘り込まれる最小フィーチャは、レーザ光線そのものによって決定される。レーザ光線および掘り込まれる材料は、互いに対して一定に動き、したがって、プレートの各微細領域(画素)が、レーザによって個々に処理される。画像情報は、ステンシルを介してではなく、デジタルデータとしてコンピュータからこのタイプのシステムに直接提供される。同じまたは異なる画像の単一画像または複数画像の任意のパターンを彫り込んでよい。
【0077】
レーザ彫刻の場合に考慮される要因には、限定するものではないが要素の深さ方向でのエネルギーの堆積、熱散逸、融解、蒸発、酸化などの熱誘導型化学反応、掘り込まれる要素表面での空気伝播材料の存在、および掘り込まれる要素からの材料の機械的排出が含まれる。集束レーザ光線を用いた金属およびセラミック材料の彫り込みに関する調査努力によれば、彫り込み効率(レーザエネルギーの単位当たり除去される材料の体積)および精度は、掘り込まれる材料の特徴およびレーザ彫刻が行われる条件と、密接に結び付いていることが実証された。エラストマー材料を彫り込む場合、そのような材料が金属およびセラミック材料と全く異なるとしても、同様の複雑さが生じる。
【0078】
レーザ彫刻可能な材料は、通常、何らかの強度閾値を示し、即ちその値よりも低いと材料が除去されなくなる閾値を示す。閾値より低いと、材料中に堆積されたレーザエネルギーは、この材料の蒸発温度に到達する前に散逸する。この閾値は、金属およびセラミック材料の場合に非常に高くすることができる。しかし、エラストマー材料に関しては、非常に低くなる可能性がある。この閾値よりも高いと、エネルギー入力の速度は、熱散逸などの拮抗するエネルギー損失メカニズムとじつによく競合する。照明領域の内部ではないがその近くで散逸したエネルギーは、材料を蒸発させるのに十分になる可能性があり、したがって、彫りこまれたフィーチャは、より広くかつより深くなる。この作用は、低融解温度を有する材料でより顕著である。
【0079】
レーザ彫刻は、9から12マイクロメートルの波長、特に10.6マイクロメートルの波長の放射線を放出する様々なタイプの赤外線レーザの、いずれかによって実現することができる。レーザによる材料の除去は、レーザにより発生した放射線エネルギーを吸収する強化エラストマー層内に、赤外線に対して感受性のある添加剤を存在させることにより、補助される。フレキソ印刷要素を彫り込むのに特に適切なレーザは、10.6マイクロメートルの波長で放出される二酸化炭素レーザである。二酸化炭素レーザは、妥当なコストで市販されている。二酸化炭素レーザは、連続波および/またはパルスモードで動作することができる。低または中程度の放射線強度では、パルス彫刻がそれほど効率的ではない可能性があるので、両方のモードでレーザを作動できることが望ましい。材料を加熱することができ、融解させることもでき、しかし材料を蒸発させないエネルギー、またはその他の方法で材料を物理的に切り離すエネルギーが、失われる。その一方で、低または中程度の強度での連続波照射は、所与の領域内に蓄積され、それと共にこの光線が、領域近傍をスキャンする。このように、低強度の連続波モードが好ましいと考えられる。パルスモードは、高強度で好ましいモードと考えられるが、それは、放射線吸収材料の雲が形成された場合、この雲がパルス間の時間間隔で消散する時間が存在する可能性があるからであり、したがって、固体表面への放射線のより効率的な送達が可能になるからである。
【0080】
典型的には、フレキソ印刷要素は、レーザに関連付けられた回転ドラムの外面に取り付けられる。レーザは、ドラム表面の要素に衝突するよう集束される。ドラムが回転し、レーザ光線に対して並進するにつれ、要素はらせん状にレーザ光線で露光される。レーザ光線は、画像データにより変調され、その結果、要素、即ち3次元要素に彫りこまれたレリーフによる2次元画像が得られる。レリーフの深さは、床部の厚さと印刷層の厚さとの差である。あるいはレーザは、ドラム上の要素に対して移動してもよい。
【0081】
本明細書に記述される、レーザ彫刻可能なフレキソ印刷要素は、レーザ彫刻の前および後に、表面の粘着性が除去されるように任意選択で処理することができる。スチレン−ジエンブロックコポリマーの表面粘着性を除去するのに使用されてきた、適切な処理には、臭素または塩素溶液による処理、光仕上げ、即ち300nm以下の波長を有する放射線源による露光が含まれる。そのような処理は、エラストマー層の光化学的強化を構成しないことを理解すべきである。ノリッシュII型光開始剤のいくつかの実施形態は、光仕上げに使用される波長でも動作可能である。
【0082】
さらに、これらの要素は、化学線による全面露光などの、ポストレーザ彫刻処理にかけることができる。化学線による露光は、一般に、化学的硬化プロセスを終了させるものとする。これは特に、レーザ彫刻によって作製された床部および側壁面の場合に当てはまる。
【0083】
(実施例)
【0084】
【表1】

【0085】
下記の実施例において、光重合性層は、MYLAR(登録商標)601の2枚のフィルムシート間に形成した。
【0086】
光重合性層(PETシートなし)を通した紫外線の透過率パーセントは、McBeth TD904濃度計で測定した。
【実施例1】
【0087】
D1192 100g、D1119 40g、CN307 20g、SR238 10g、CN2304 10g、SM308、および下記の表に示されたレベルのグラフェンの混合物を、ブラベンダーミキサで10分間、150℃で混合した。SM308は、組成物の4重量%であった。得られた混合物を、2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)シートの間に入れて型内で加圧し、それによって、厚さ25ミルの光重合性層を形成し、これを3つの6”×9”プレートサンプルに切断した。
【0088】
紫外線に対するプレートサンプルの透過率は、約7〜8%と測定された。
【実施例2】
【0089】
上記混合物にグラフェンを2重量%含有させたこと以外、実施例1の光重合性層の調製を繰り返した。
【0090】
紫外線に対するプレートサンプルの透過率は、約2〜4%と測定された。
【0091】
(比較例1Aおよび1B)
実施例1の混合物にグラフェンを含有させなかったこと以外、実施例1の光重合性層の調製を繰り返した。
【0092】
紫外線に対するプレートサンプルの透過率は、約80〜90%と測定された。
【0093】
(比較例2)
実施例1の混合物にグラフェンを含有させず、かつAerosil R−812Sを下記の表に示されるレベルで含有させたこと以外、実施例1の光重合性層の調製を繰り返した。
【0094】
プレートサンプルの透過率は、約80〜90%と測定された。
【実施例3】
【0095】
D1192 100g、D1119 40g、CN307 20g、SR238 10g、CN2304 10g、Aerosil R−812S 13.5g、Vor−Tough 10g、およびSM308の混合物を、ブラベンダーで10分間、150℃で混合した。SM308は、組成物の4重量%であった。得られた混合物を、2枚のPETシートの間に入れて型内で加圧し、それによって、厚さ25ミルの光重合性層を形成し、これを3つの6”×9”プレートサンプルに切断した。
【0096】
プレートサンプルの透過率は、約12%と測定された。
【実施例4】
【0097】
D1192 100g、D1119 40g、CN307 20g、SR238 10g、CN2304 10g、Aerosil R−812S 11g、Vor−Tough 20g、およびSM308の混合物を、ブラベンダーで10分間、150℃で混合した。SM308は、組成物の4重量%であった。得られた混合物を、2枚のPETシートの間に入れて型内で加圧し、それによって、厚さ25ミルの光重合性層を形成し、これを3つの6”×9”プレートサンプルに切断した。
【0098】
プレートサンプルの透過率は、約3から5%と測定された。
【実施例5】
【0099】
D1192 100g、D1119 40g、CN307 20g、SR238 10g、CN2304 10g、Aerosil R−812S 15g、Vor−Tough 20g、およびSM308の混合物を、ブラベンダーで10分間、150℃で混合した。SM308は、組成物の4重量%であった。得られた混合物を、2枚のPETシートの間に入れて型内で加圧し、それによって、厚さ25ミルの光重合性層を形成し、これを3つの6”×9”プレートサンプルに切断した。
【0100】
プレートサンプルの透過率は、約3から5%と測定された。
【実施例6】
【0101】
実施例4の混合物中のSM308光開始剤の代わりに、Esacure TZTを3重量%およびEsacure A122を2重量%用いたこと以外、実施例4の光重合性層の調製を繰り返した。Esacure TZTは、ノリッシュII型光開始剤であり、Esacure A122は共開始剤である。
【0102】
プレートサンプルの透過率は、約3から5%と測定された(その他の実施例と同様に、実施例6のプレートサンプルを、365nmの紫外線で5分間露光し、重合させた)。
【実施例7】
【0103】
実施例1の混合物にグラフェンを0.5重量%含有させたこと以外、実施例1の光重合性層の調製を繰り返した。
【0104】
紫外線に対するプレートサンプルの透過率は、約16から18%と測定された。
【0105】
(対照A)
実施例5の混合物中のSM308の代わりに、2−フェニル,2,2−ジメチルオキシアセトフェノンを4重量%用いたこと以外、実施例5の光重合性層の調製を繰り返した。
【0106】
プレートサンプルの透過率は、約3から5%と測定された。プレートサンプルは、紫外線で露光したときに、その露光の20分後であっても重合しなかった。
【0107】
(対照B)
D1192 100g、D1119 40g、CN307 20g、SR238 10g、CN2304 10g、HiBlack20 10g、およびSM308の混合物を、ブラベンダーで10分間、150℃で混合した。SM308は、組成物の4重量%であった。
【0108】
得られた混合物を、2枚のPETシートの間に入れて型内で加圧し、それによって、厚さ25ミルの光重合性層を形成し、これを3つの6”×9”プレートサンプルに切断した。
【0109】
プレートサンプルの透過率は、約2〜3%と測定された。
【0110】
イヌ用の骨の形をした5つのサンプルを、プレートサンプルから切断し、365nmの紫外線で5分間露光した。PETフィルムを、サンプルの両面から除去した。次いでイヌ用の骨のサンプルを、インストロン3344(Instron、Norwood、MAから)内に置き、製造業者により推奨された手順に従って、100ニュートンのロードセルを使用して靭性および破断点応力の機械的性質の試験をした。5つの成形されたサンプルに関する機械的試験を、下記の表に、平均値として報告する。残りのプレートサンプルの中で、各プレートサンプルからの2”×2”の小片を、365nmで5分間露光し、次いでトルエンが入っている広口瓶に浸漬した。サンプル片を、トルエン中に24時間放置し、次いで空気中で1時間乾燥し、その後、それらの厚さおよび膨潤%を測定した。結果を下記の表に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
対照A対実施例5は、暗色強化剤を含有する光重合性層が、ノリッシュII型光開始剤および共開始剤も含む必要性を実証した。
【0113】
対照B1およびB2は、従来の暗色強化剤、カーボンブラックが存在することによって、いかなる強化剤も含まない比較例1Aおよび1Bと比較したときに、機械的性能または耐溶媒性に特定の利点をもたらさなかったことを実証した。
【0114】
実施例1および2は、光重合性層内に暗色強化剤としてグラフェンが存在することによって、強化剤としてカーボンブラックを有する対照2Bと比較したときに、層の耐溶媒性が著しく改善されたことを実証した。実施例1および2は、強化剤を含まないサンプル(比較例B1)または強化剤としてカーボンブラックを含むサンプル(比較例B2)に比べ、機械的性質が最小限改善されたが、耐溶媒性が改善されたことによって、他の感光性層よりも適切な利点が得られた。
【0115】
実施例6は、感光性組成物中にノリッシュI型光開始剤およびノリッシュII型および共開始剤を含んだ実施例4と比べた場合、ノリッシュII型光開始剤(共開始剤を有する)が、グラフェンの暗色強化粒子を有する感光性層を硬化するのに十分であることを実証した。
【0116】
比較例2は、光重合性層内のシリカが存在することによって、耐溶媒性に若干の上昇が得られたことを実証したが(比較例1Bに比べ)、実施例3、4および5に示されるグラフェンの添加によって、光重合性層の耐溶媒性は著しく改善された。膨張%が低下するほど、溶媒侵襲に対する層の抵抗力はより高くなる。実施例3および5は、光重合性層中にグラフェンが存在することによって、光重合性層中にシリカしか含まない比較例2に比べ、機械的性質が著しく改善されたことも実証した。靭性および破断点応力に関してより高い値を有するサンプルは、プレス機での印刷の際、改善された耐摩耗性を示す可能性があると予測される。
【0117】
実施例4および5のサンプルを、365nmの紫外線で10分間露光し(1250ジュール/cm2)、CYREL(登録商標)デジタル画像形成機赤外線レーザ露光ユニット(Esko Graphics Imaging GmbH製CDI Spark 2530)を使用して、ドラム速度325rpmおよび出力18Wで画像形成する。典型的には、CYREL(登録商標)デジタル画像形成機を使用して、非常に薄い材料層を選択的に融除、即ち除去するが、深さ方向の除去(即ち、10〜15ミクロン程度の厚さ)には使用しない。しかし、本発明の試験は、CYREL(登録商標)デジタル画像形成機のIRレーザ光線が光硬化層を彫り込むように、即ち硬化した材料を深さ方向に除去するように、実施した。プレートサンプルには、深さ約8〜12ミクロン(0.5ミル)の文字を有する200 lpi画像を彫り込んだ。サンプルには、異なるレーザ光線露光ユニット、特により高い出力のユニットを使用した場合、2から3ミルの深さまで容易に彫り込むことができると予測される。
【0118】
実施例7は、比較例1Bと比べた場合、耐溶媒性が著しく改善されるが機械的性質は同様であることを実証した。プレートサンプル中にグラフェンが0.5%でも存在することにより、その溶媒膨潤が、比較例1Bによって示された場合の約3分の1であるサンプルが得られた。さらに少ない膨潤は、トルエンほど強力ではない溶媒中の実施例7のサンプルによって、示される可能性があることが予測される。
【0119】
上記実施例および比較例において、365nmの放射線による5分間のプレートサンプルの全面露光は、暗色でありかつノリッシュII型光開始剤を含有するこれらプレートサンプルに関し、サンプル中の光重合性層を重合しまたは硬化するのに十分であった。プレートサンプルの光重合性層は、354nmの放射線でほぼ同じ時間露光した場合、重合しまたは硬化する可能性があると予測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤、モノマー、およびノリッシュII型光開始剤を含む感光性組成物の層
を含み、
前記感光性層が、前記層に20%未満の化学線透過率を与える強化粒子を含有し、前記強化粒子が、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される
ことを特徴とする印刷フォームとして使用される感光要素。
【請求項2】
結合剤は、エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項3】
強化粒子は、感光性組成物の重量に対して約0.4から30重量%の量であることを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項4】
感光性組成物は、カーボンブラック、黒鉛、ファーネスブラック、暗色顔料、および暗色トナーからなる群から選択された追加の強化粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項5】
感光性組成物は、TiO2、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミニウム、およびアルミナ、シリカ−酸素(Si−O結合)官能基を有する材料、リン−酸素(P−O結合)官能基を有する材料、顔料粒子、トナー粒子、およびこれらの組合せからなる群から選択された追加の強化粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項6】
ノリッシュII型光開始剤は、ベンゾフェノン、ケトスルホン、チオキサントン、1,2−ジケトン、アントラキノン、フルオレノン、キサントン、アセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキシレート、モノ−アシルホスフィン、およびビス−アシルホスフィンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項7】
光開始剤は、ケトスルホンであることを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項8】
光開始剤と共に、共開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項9】
共開始剤は、チオール、アルデヒド、第2級アルコール、第1級アミン、第2級アミン、および第3級アミンからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の感光要素。
【請求項10】
光開始剤はケトスルホンであり、共開始剤はアミンであることを特徴とする請求項8に記載の感光要素。
【請求項11】
層は、5%未満の化学線透過率を有することを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項12】
結合剤は、ノリッシュII型光開始剤と反応したときに水素を供与するのに十分な、炭素原子が1から6個のアルキル側基を含むことを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項13】
層は、2から250ミルの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項14】
感光性層は、15%未満の化学線透過率を有することを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項15】
感光性層は、10%未満の化学線透過率を有することを特徴とする請求項1に記載の感光要素。
【請求項16】
a)結合剤、モノマー、およびノリッシュII型光開始剤を含む感光性組成物の層を含み、前記感光性層が、前記層に20%未満の化学線透過率をもたらす強化粒子を含有し、前記強化粒子が、グラフェン、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、感光要素を提供するステップと、
b)前記感光要素を化学線で露光するステップと、
c)印刷に適切なレリーフ面が形成されるように、露光された感光要素を処理するステップと
を含むことを特徴とする感光要素から印刷フォームを作製するための方法。
【請求項17】
露光するステップは、重合部分および非重合部分を形成するための、マスクを通した画像通りの露光であり、処理するステップは、
(a)溶媒溶液、水性溶液、半水性溶液、および水からなる群から選択された、少なくとも1種の洗い流し溶液で処理するステップと、
(b)非重合部分を融解させ、流動させ、または軟化させるのに十分な温度まで前記要素を加熱し、前記非重合部分を除去するステップと
からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
露光するステップは、層を硬化するための全面露光であり、処理するステップは、硬化した層の部分を選択的に除去するために、レーザ光線で感光要素を彫り込むことを特徴とする請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2009−145870(P2009−145870A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−236599(P2008−236599)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】