強誘電体メモリの駆動方法および強誘電体メモリ
【課題】強誘電体メモリの駆動方法であって信頼性が高い新規な駆動方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、半導体11と、半導体11上に積層された絶縁膜12、電極13、強誘電体膜14および電極15とを含む強誘電体メモリの駆動方法である。この駆動方法は、強誘電体膜14を第1分極状態にする第1書き込み電圧、または、第2分極状態にする第2書き込み電圧による書き込みステップと、第2の電極15に、電圧R1ボルトと電圧R2ボルトのパルスを印加する読み出しステップとを含む。|R1|>|R2|、R1・R2<0である。第2分極状態は、第1分極状態よりも分極の大きさが小さい。第1書き込み電圧は電圧W11ボルトのパルスを含み、電圧第2書き込み電圧は、電圧W21ボルトのパルスと電圧W22ボルトのパルスとを含む。強誘電体キャパシタの抗電圧をVcボルトとすると、|W21|>|W22|、W21・W22<0、|W21|≧|W11|>|Vc|である。
【解決手段】本発明の方法は、半導体11と、半導体11上に積層された絶縁膜12、電極13、強誘電体膜14および電極15とを含む強誘電体メモリの駆動方法である。この駆動方法は、強誘電体膜14を第1分極状態にする第1書き込み電圧、または、第2分極状態にする第2書き込み電圧による書き込みステップと、第2の電極15に、電圧R1ボルトと電圧R2ボルトのパルスを印加する読み出しステップとを含む。|R1|>|R2|、R1・R2<0である。第2分極状態は、第1分極状態よりも分極の大きさが小さい。第1書き込み電圧は電圧W11ボルトのパルスを含み、電圧第2書き込み電圧は、電圧W21ボルトのパルスと電圧W22ボルトのパルスとを含む。強誘電体キャパシタの抗電圧をVcボルトとすると、|W21|>|W22|、W21・W22<0、|W21|≧|W11|>|Vc|である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体メモリの駆動方法および強誘電体メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体薄膜をゲート絶縁膜に用いたFET型強誘電体メモリは、不揮発性で且つ非破壊読み出しが可能であり、高速性および集積度がDRAM(Dynamic Random Access Memory)程度である。そのため、FET型強誘電体メモリは、究極のメモリと呼ばれ研究されてきた。
【0003】
FET型強誘電体メモリにおいて、シリコン上に強誘電体膜を直接積層すると、両者が反応してしまう場合がある。そのため、従来から、シリコンと強誘電体膜との間に、熱的・化学的に安定な常誘電体であるバッファ層を挿入した構造が提案されてきた。バッファ層は、それにかかる電圧を低くするために、酸化シリコンよりも誘電率が高い材料で形成される。
【0004】
しかし、バッファ層を含む従来のFET型強誘電体メモリは、(1)メモリ保持時間が数日程度と短い、(2)DRAM型の強誘電体メモリに比べてかなり高い動作電圧が必要になる、(3)バッファ層とシリコンとの界面特性が悪く、メモリ動作が不安定になる、といった問題を有する。そのため、その実用化はかなり難しいと考えられている。
【0005】
このような問題を解決するため、本願の発明者は、新規な構造を有する強誘電体メモリを提案した(特許文献1)。この強誘電体メモリは、強誘電体キャパシタと、MIS(Metal−Insulator−Silicon)型のFETとを備える構成として、模式的に考えることが可能である。この強誘電体メモリでは、強誘電体キャパシタのみに書き込み電圧が印加される。
【0006】
このメモリにおいて、”1”および”0”のメモリ状態は、強誘電体膜の正の残留分極および負の残留分極に対応している。以下の説明では、強誘電体膜の正の残留分極の状態を「状態Pr+」と呼び、強誘電体膜の負の残留分極の状態を「状態Pr-」と呼ぶ場合がある。
【特許文献1】特開2002−251877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発明者らが検討した結果、従来の駆動方法でデータの書き込みおよび読み出しを行うと、状態Pr-においてメモリ状態が劣化することが明らかとなった。従来の方法における状態Pr+の書き込み電圧VW+、状態Pr-の書き込み電圧VW-、および読み出し電圧VRの一例を、それぞれ、図17(a)、(b)および(c)に示す。また、状態Pr-におけるメモリ状態の劣化の様子を、図18に示す。図18は、強誘電体キャパシタの容量Cfと、FETの入力容量CSに蓄積される電荷の状態を示す。
【0008】
まず、書き込み電圧VW-の印加によって状態Pr-の書き込みが行われると、図18(a)に示すように、強誘電体キャパシタ(Cf)にだけ電荷Qfが蓄積・保持される。次に、読み出し電圧VR(VR>0)を印加することによって、読み出しが行なわれる。このとき、FET(CS)には、読み出し電圧VRの印加によって電荷ΔQが誘起され、強誘電体キャパシタ(Cf)の電荷の絶対値は|(Qf−ΔQ)|に減少する(図18(b))。しかし、図18(c)に示すように、VR→0となる読み出し直後では、FET(CS)の電荷ΔQが、強誘電体キャパシタ(Cf)に対して瞬時に負バイアス(−ΔQ/Cs)を印加したように作用する。その結果、強誘電体キャパシタ(Cf)に再び電荷が蓄積される。当初、この動作によって、読み出し後に再び図18(a)の電荷状態に戻ることが期待された。しかし実際には、読み出し後、図18(d)に示すように、強誘電体キャパシタ(Cf)の蓄積電荷が初期状態に戻らないために、FET(CS)にはΔQ’の電荷が残る。そのΔQ’は、Csの漏れ電流によりしばらくすると無くなる。その結果、読み出し回数が増加するに従って、強誘電体キャパシタ(Cf)の蓄積電荷が徐々に減り、記録されたデータが劣化してしまうという問題があった。このように、従来の駆動方法では、記録されたデータの劣化が大きく、非破壊読み出しができないという問題があった。なお、読み出し電圧VRは正であるため、状態Pr+では、読み出し後も保持電荷は充分に維持される。
【0009】
このような状況において、本発明は、強誘電体メモリの駆動方法であって信頼性が高い新規な駆動方法、およびその駆動方法で駆動される強誘電体メモリを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために検討した結果、発明者らは、特別な書き込み電圧および/または読み出し電圧を印加することによって、書き込み状態の劣化を抑制できることを見出した。本発明は、この新規な知見に基づく発明である。
【0011】
すなわち、強誘電体メモリを駆動するための本発明の第1の駆動方法は、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリの駆動方法である。前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。前記駆動方法は、前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含む。前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たす。前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態である。前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含み、前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む。前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと前記電圧W11、W21およびW22とが、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。
【0012】
また、本発明の第1の強誘電体メモリは、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリである。前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。本発明の第1の強誘電体メモリは、上記本発明の第1の駆動方法で駆動される。
【0013】
また、本発明の第2の強誘電体メモリは、複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのそれぞれに接続されるワード線ならびに第1および第2のビット線とを含む強誘電体メモリである。前記メモリセルは、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタと、書き込み用トランジスタとを含む。前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記絶縁膜上に直接積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。前記第2の電極は、前記ワード線に接続され、前記ソース電極およびドレイン電極のうちの一方が、前記第2のビット線に接続されている。前記書き込み用トランジスタのゲート電極は前記第1のビット線に接続されている。前記書き込み用トランジスタのソース電極およびドレイン電極は、その内の一方が前記第1の電極に接続され、残りのもう一方が前記第2のビット線に接続されている。
【0014】
また、強誘電体メモリを駆動するための本発明の第2の駆動方法は、上記本発明の第2の強誘電体メモリの駆動方法である。この駆動方法は、前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含む。前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たす。前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態である。前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトの第1のパルスP11とそれに続く電圧W12ボルトの第2のパルスP12とを含む第1書き込み電圧パルスを前記第2の電極に印加すると共に、前記第1のパルスP11が印加されているときだけ前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される。前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む第2書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、前記第1および第2のパルスP21およびP22が印加されているときに前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、第1の電極と第2の電極との間に印加される。前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと、前記電圧W11、W12、W21およびW22とが、|W11|>|W12|、W11・W12<0、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明の強誘電体メモリおよびその駆動方法(動作方法)によれば、既に書き込まれた状態の劣化を抑制できる。すなわち、本発明によれば、強誘電体メモリにおいて、メモリ状態をほとんど劣化させることなくデータの読み出し及び再書き込みを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
【0017】
[強誘電体メモリを駆動する第1の方法]
本発明の第1の方法で駆動される強誘電体メモリは、半導体と、半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、半導体上に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜)と、半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む。その強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含む。強誘電体キャパシタの第1の電極は、ゲート絶縁膜上に積層されているか、または、ゲート絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。電界効果トランジスタのオン/オフ、すなわち半導体のチャネルの制御は、強誘電体キャパシタの第2の電極の電位と強誘電体膜の分極状態とを制御することによって行うことができる。強誘電体キャパシタの第1の電極、強誘電体膜および第2の電極がゲート絶縁膜上に順に積層されている場合、強誘電体キャパシタはゲート電極として機能する。
【0018】
第1の駆動方法は、書き込みステップと読み出しステップとを含む。書き込みステップでは、強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、第1の電極と第2の電極との間に印加することによって書き込みが行われる。
【0019】
読み出しステップでは、第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しが行われる。読み出し電圧パルスの電圧R1およびR2は、|R1|>|R2|、R1・R2<0を満たす。強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧R1とは、通常、|R1|>|Vc|の関係を満たす。
【0020】
第2の分極状態は、第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさ(分極の絶対値)が小さい状態である。第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含む。第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトのパルスとそれに続く電圧W22ボルトのパルスとを含む。強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧W11、W21およびW22とは、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。
【0021】
本発明の好ましい一例では、第2の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値は、第1の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値の0倍〜0.4倍の範囲にあってもよい。
【0022】
[第1の駆動方法で駆動される強誘電体メモリの一例]
第1の強誘電体メモリの構成の一例を、図1(a)に模式的に示す。図1(a)の強誘電体メモリ素子10は、半導体(半導体基板)11と、半導体11上に順に積層された絶縁膜12、第1の電極13、強誘電体膜14および第2の電極15と、半導体11に接続されたソース電極16およびドレイン電極17とを含む。また、半導体11上には、素子を分離するための絶縁膜18が形成されている。第1の電極13、強誘電体膜14および第2の電極15は、少なくともソース電極16とドレイン電極17との間の領域に形成されるが、より広い範囲に形成されてもよい。
【0023】
第1の電極13と強誘電体膜14と第2の電極15とは、強誘電体キャパシタとして機能する。また、その強誘電体キャパシタと、半導体11、絶縁膜12、ソース電極16およびドレイン電極17は、電界効果トランジスタ(図1の例ではMIS−FET)として機能する。ソース電極16とドレイン電極17との間に電圧を印加したときにそれらの電極間を流れる電流量は、第2の電極15の電位および強誘電体膜14の分極状態によって変化する。このとき、ソース電極16とドレイン電極17との間の領域にある半導体11は、チャネル領域として機能する。
なお、本発明の効果が得られる限り、第1の電極13と強誘電体膜14と第2の電極15とを含む強誘電体キャパシタは、絶縁膜12から離して形成されてもよい。その場合、絶縁膜12上にはゲート電極が形成され、そのゲート電極と第1の電極13とが接続される。このような構成においても、ソース電極16とドレイン電極17との間に電圧を印加したときにそれらの電極間を流れる電流量は、第2の電極15の電位および強誘電体膜14の分極状態によって変化する。したがって、この場合のメモリ素子も、メモリ素子10と同様の機能を有する。
【0024】
上記各部分の材料には、一般的な材料を用いることができる。たとえば、半導体11には、シリコン基板を用い、絶縁膜12には酸化シリコン膜を用い、強誘電体膜14にはPZT膜(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、電極には金属電極を用いることができる。なお、本発明の効果が得られる限り、他の材料を用いてもよい。また、上記構成以外の部分については、公知の技術および構成を適用してもよい。
【0025】
強誘電体メモリ素子10は、模式的に、図1(b)に示す回路として表すことが可能である。すなわち、強誘電体メモリ素子10は、電界効果トランジスタ(FET)20と、強誘電体キャパシタ30とによって構成されていると考えることが可能である。
【0026】
図2に、強誘電体キャパシタ30の分極−電圧特性(P−V特性)の一例を示す。この特性の傾き(微少の分極変化分/微少の電圧変化分)が、強誘電体の単位面積当たりの容量Cf(以後、これを単に「容量Cf」と呼ぶ)となる。図2に示すように、V>0の電圧印加では、正の残留分極の状態Pr+からの強誘電体の容量Cfよりも、負の残留分極の状態Pr-からの強誘電体の容量Cfの方が大きい。強誘電体メモリでは、強誘電体の残留分極の状態の相違による容量の相違が利用できるようにデータを書き込みし、そのデータを読み出す。すなわち、強誘電体の異なる分極状態が、異なる論理値(”0”または”1”)を表す。
【0027】
図3に電圧の印加方法を示す。書き込み電圧VWは、端子31(第1の電極13)を例えばアースに接続した状態で、強誘電体キャパシタ30の第1の電極13と第2の電極15とに印加される。一方、読み出し電圧VRは、端子31(第1の電極13)をフローティングにした状態で、強誘電体キャパシタ30の第2の電極15に印加される。
【0028】
図2に示すように、状態Pr+から正の飽和分極へ移行するときのCfと、状態Pr-から正の飽和分極へ移行するときのCfとは、大きく異なる。一方、読み出し電圧VRが印加されたときにFET20のゲートに印加される電圧Vtは、Vt=VRCf/(CS+Cf)と表される(CSはFETの入力容量)。このように、VtはCfに依存することから、読み出し電圧の閾値は強誘電体キャパシタ30の状態に応じて異なる。その結果、メモリ動作が可能となる。書き込まれているデータが”0”であるか”1”であるかの判定は、ドレイン電流ID、または図3の抵抗RDの一端における出力電圧V0に基づいて行うことができる。
【0029】
[第1の駆動方法]
本発明の第1の駆動方法(書き込み・読み出し方法)は、強誘電体膜14を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、強誘電体膜14を第2の分極状態(第1の分極状態とは異なる分極状態)にする第2の書き込み電圧を、第1の電極13と第2の電極15との間に印加することによって書き込みを行うステップと、第2の電極15に読み出し電圧を印加することによって読み出しを行うステップとを含む。
【0030】
図18に示した従来の課題を解決するために発明者らが検討した結果、特定の書き込み電圧および/または特定の読み出し電圧を用いることによって、データの劣化を抑制できることを見出した。以下、書き込み方法および読み出し方法について説明する。なお、書き込み電圧および読み出し電圧に関する以下の説明では、アース電位に比べて高い電位を与える電圧を正の電圧とする。
【0031】
[書き込み方法]
データの書き込みは、強誘電体キャパシタ30の第1の電極13と第2の電極15との間に書き込み電圧を印加することによって行われる。このとき、例えば図3の端子31(第1の電極13)をアースに接続することによって、強誘電体キャパシタ30のみに電圧が印加される。
【0032】
書き込み電圧には、強誘電体膜14を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧と、強誘電体膜14を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧の2種類がある。以下では、第1の分極状態が正の分極状態Pr+であり、第2の分極状態が、正の分極状態Pr+よりも無電界下における分極の大きさ(分極の絶対値)が小さい分極状態である場合について説明する。
【0033】
本発明の駆動方法では、第2の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値は、第1の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値の0倍〜0.4倍(たとえば0倍〜0.2倍)の範囲にあることが好ましい。
【0034】
第1の駆動方法では、強誘電体膜を正の分極状態Pr+にするために、第1の書き込み電圧が加えられる。第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含む。第1の書き込み電圧には、従来と同じく、一般的な正の電圧パルスを用いることができる。電圧W11ボルトは、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトよりも大きい。
【0035】
また、第1の駆動方法では、強誘電体膜を分極が小さい分極状態Pr0にするために、書き込み電圧VW0が印加される。ここで、分極状態Pr0とは、無電界下において分極の大きさ(分極の絶対値)が小さい状態、すなわち、P−V座標の原点近傍にある分極状態を意味する。P−V座標の原点にある強誘電体膜に正の電圧を印加すると、図4の点線に示す初期曲線に従って分極状態が変化する。
【0036】
図18に示したように、状態Pr-の読み出し時に大きなΔQ’が残留するのは、読み出し電圧の印加によって減少した分極を復活させることができるような大きい負バイアスが、読み出し直後に強誘電体膜に印加されないためであった。このことから、読み出し電圧の印加による分極の減少が状態Pr-よりも少ない状態Pr0を用いることによって、ΔQ’を小さくできると考えられる。図4に示すように、状態Pr0(この例では図4の原点)では、読み出し電圧の印加によって分極状態が原点から状態A’に移動し、読み出し終了時には状態B’に移動する。原点と状態B’との分極差が、図4の状態Pr0におけるΔQ’となる。一方、状態Pr-では、読み出し電圧の印加によって分極状態が状態Sから状態Aに移動し、読み出し終了時には状態Bに移動する。状態Sと状態Bとの分極差が状態Pr-におけるΔQ’となる。図4に示すように、状態Pr0を用いることによって、ΔQ’の大きさを小さくできると考えられる。
【0037】
この状態Pr0を得るための書き込み電圧VW0には、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含むパルス列を用いる。ここで、電圧W21およびW22は、|W21|>|W22|、およびW21・W22<0の関係を満たす。すなわち、電圧W21および電圧W22は共にゼロではなく、符号が逆である。また、電圧W21ボルトの第1のパルスP21は、書き込む前の強誘電体キャパシタの状態がPr+であれPr0であれ、書き込む前の状態に関係なくその状態をリセットするために、|W21|≧|W11|の関係を満たす。電圧W22の絶対値は、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧W22の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。
【0038】
なお、「電圧Xボルトのパルス」とは、絶対値が最大となる部分での電圧がXボルトであるパルスを意味する(以下、同様である)。
【0039】
電圧W21およびW22の大きさ、ならびにパルスP21およびP22のパルス幅は、強誘電体膜の材料や厚さに応じて設定される。一例では、パルスP21およびP22のパルス幅は、それぞれ独立に、0.001マイクロ秒〜100マイクロ秒(たとえば0.001マイクロ秒〜1マイクロ秒)の範囲にある。また、一例では、電圧W21は0.3ボルト〜5ボルト(たとえば0.5ボルト〜3ボルト)の範囲にあり、電圧W22は−0.01ボルト〜−4ボルト(たとえば−0.1ボルト〜−2.5ボルト)の範囲にある。通常、電圧W22の絶対値は、電圧W21の絶対値の0.002倍〜0.8倍(たとえば0.4倍〜0.75倍)の範囲にある。
【0040】
書き込み電圧VW0の一例を、図5(a)に示す。図5(a)の一例は、W21>0の例である。
【0041】
第1および第2のパルスP21およびP22は、たとえば矩形パルスである。ただし、本発明の効果が得られる限り、パルスP21およびP22は、他の形状のパルス、たとえば三角波状のパルスであってもよい。また、本発明の効果が得られる限り、書き込み電圧のパルス列は、パルスP21およびP22に加えて、さらに他のパルスを含んでもよい。また、パルスP21およびP22は通常連続して印加されるが、本発明の効果が得られる限り、それらのパルスは非連続であってもよい。
【0042】
電圧W21ボルトの第1のパルスP21が印加されると、状態Pr+または状態Pr0にある強誘電体膜は、もしW21=W11ならば、いずれも状態Pr+にリセットされ、また|W21|>|W11|ならば、いずれも新たなメモリ状態にリセットされる。電圧W22ボルトの第2のパルスP22は、第1のパルスP21によって実現されたリセット状態を状態Pr0にするためのパルスである。なお、W21<0の第1のパルスを用いることによって、例えば、第1のパルスで強誘電体キャパシタを状態Pr-にし、第2のパルスP22によって状態Pr-から状態Pr0にすることも可能である。
【0043】
状態Pr0からの強誘電体キャパシタの容量Cfは、状態Pr-ほどではないが状態Pr+からのものよりも明らかに大きい。そのため、状態Pr+と状態Pr0とを、それぞれ異なる論理値に対応させ、メモリ動作をさせることも可能である。
【0044】
[読み出し方法]
データの読み出しは、第2の電極15に読み出し電圧を印加することによって行われる。すなわち、読み出し電圧は、ソース電極16および/またはドレイン電極17と、第2の電極15との間に印加される。読み出し電圧を印加する際は、第1の電極13をフローティング状態にする。
【0045】
読み出し電圧は、電圧R1ボルトの第1のパルスとそれに続く電圧R2ボルトの第2のパルスとを含む。電圧R1およびR2は、|R1|>|R2|、R1・R2<0を満たす。すなわち、電圧R1および電圧R2は共にゼロではなく、符号が逆であり、電圧R1の絶対値は電圧R2の絶対値よりも大きい。また、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧R1とは、通常、|R1|>|Vc|の関係を満たす。本発明の効果が得られる限り、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。
【0046】
電圧R1およびR2の大きさ、ならびに第1および第2のパルスのパルス幅は、強誘電体膜の材料や厚さに応じて設定される。一例では、第1および第2のパルス幅は、それぞれ独立に、0.001マイクロ秒〜100マイクロ秒(たとえば0.001マイクロ秒〜1マイクロ秒)の範囲にある。また、一例では、電圧R1は0.3ボルト〜5ボルト(たとえば0.5ボルト〜3ボルト)の範囲にあり、電圧R2は−0.01ボルト〜−4ボルト(たとえば−0.1ボルト〜−2.5ボルト)の範囲にある。通常、電圧R2の絶対値は、電圧R1の絶対値の0.002倍〜0.8倍(たとえば0.4倍〜0.75倍)の範囲にある。
【0047】
読み出し電圧VRの一例を、図5(b)に示す。図5(b)の一例は、R1>0の例である。
【0048】
第1および第2のパルスは、たとえば矩形パルスである。ただし、本発明の効果が得られる限り、第1および第2のパルスは、他の形状のパルス、たとえば三角波状のパルスであってもよい。また、本発明の効果が得られる限り、読み出し電圧のパルス列は、第1および第2のパルスに加えて、さらに他のパルスを含んでもよい。
【0049】
従来の駆動方法における読み出し電圧(図17(c)参照)では、強誘電体キャパシタに加えられた電荷ΔQが完全に消去されず、電荷ΔQ’が残ってしまう。これに対し、本発明の読み出し方法では、電圧R1ボルトの第1のパルスの直後に(連続して)、第1のパルスとは符号が逆の電圧R2ボルトの第2のパルスを印加する。これによって、残留する電荷ΔQ’を低減し、読み出しによるメモリ状態の劣化を抑制できる。
【0050】
[メモリセルの一例]
メモリセルが集積されたメモリ装置を構成するメモリセルの一例を、図6に示す。なお、図6に示すメモリセルは一例であり、本発明はこの例に限定されない。
【0051】
図6のメモリセルは、強誘電体メモリ素子10と、書き込み用(スイッチング用)トランジスタ60(たとえばMIS−FET)とを含む。なお、図6のE点は、FET20のオン・オフによって電流Iに充分に差がでるような電位に保持されればよく、必ずしもアースに接続される必要はない。
【0052】
書き込みの際は、第1のビット線Bi1の電圧を制御してトランジスタ60をオンにし、ワード線WLおよび第2のビット線Bi2を介して強誘電体キャパシタ30に書き込み電圧を印加する。書き込み終了後の保持状態においては、第1のビット線Bi1の電圧を制御してトランジスタ60をオフにする。一方、読み出しの際には、ワード線WLを介して読み出し電圧VRを印加するとともに、第2のビット線Bi2に所定の電圧を印加する。読み出し電圧VRの印加によって流れる電流Iの大きさは、強誘電体キャパシタ30の分極状態に応じて異なる。したがって、電流Iの大きさから、記録されている論理値(”0”または”1”)を読み取ることができる。
【0053】
[実施例]
以下、実施例によって本発明の第1の駆動方法を詳細に説明する。
【0054】
[評価方法]
評価は、図7に示す回路を用いて行った。FET20には、市販のMOS−FETを用いた。評価に用いた強誘電体キャパシタ30の構造を、図7に示す。
【0055】
図7の強誘電体キャパシタ30は、以下の方法で形成した。まず、表面に厚さ10nmの熱酸化膜71a(SiO2膜)が形成されているSi基板71を用意した。その熱酸化膜71a上に、第1の電極72として、RuO2膜72a(厚さ60nm)と、Pt膜72b(厚さ700nm)とを積層した。次に、多結晶のPb(Zr,Ti)O3からなる多結晶PZT膜73(厚さ200nm)を形成した。次に、多結晶PZT膜73の上に、第2の電極74としてRuO2膜(厚さ)を形成した。これらの膜は、スパッタ法によって形成した。このようにして強誘電体キャパシタ30を形成した。そして、第1の電極72のPt膜72bを、端子75を介してFET20のゲート電極に接続した。
【0056】
このようにして形成された回路を用いて測定を行った。なお、ドレイン電圧VDを2V、ドレイン抵抗RDを1kΩとした。また、書き込み(Writing)は、端子75をアースに接続した状態で強誘電体キャパシタ30のみに電圧VWを印加することによって行った。読み出し(Reading)は、強誘電体キャパシタの第2の電極74とアースとの間に、電圧VRを印加することによって行った。出力電圧VOは,FET20のドレイン端にオシロスコープを接続して観測した。
【0057】
読み出し特性の評価の手順を図8に示す。メモリに書き込みをした後、第1回目の読み出しを行なう。次に、強誘電体キャパシタの第2の電極74とFET20のドレイン電極とをアースに接続し、且つ端子75(図7参照)をフローティングにした状態を1分間保つ(保持状態)。その後、第2回目の読み出しを行なう。次に、メモリを再度、保持状態にする。このような読み出しと保持のサイクルを10回繰り返し、各読み出し時の出力電圧VOをオシロスコープで観測した。
【0058】
[例1]
例1では、従来の書き込み・読み出し法によってデータの書き込みおよび読み出しを行った。例1において、状態Pr+および状態Pr-の書き込みには、それぞれ、図9(a)に示す4Vの2パルス、および図9(b)に示す−4Vの2パルスを印加した。また、読み出しには、図9(c)に示す3.5Vの2パルスを印加した。なお、例1では、書き込み電圧および読み出し電圧を、同じパルスを連続した2パルスの電圧としているが、単一のパルスであってもよい(以下の例においても同様である)。
【0059】
状態Pr+において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図9(d)に示し、状態Pr-において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図9(e)に示す。状態Pr+における出力電圧VOは、読み出しを10回行った後も、1回目の読み出しと同じく2Vで一定であり、MOSFETのOFF状態が安定に維持された。このことから、状態Pr+のメモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が、劣化することなく保持されていることが分かる。
【0060】
一方、状態Pr-における出力電圧VOは、何れの読み出しにおいてもMOSFETがON状態ではあったが、読み出し回数が増えるにつれて、出力電圧VOの変化が小さくなった。このことから、読み出しによって、メモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が劣化していることがわかる。
【0061】
[例2]
例2では、新規な書き込み方法を用いてデータの書き込みを行った。ただし、読み出しは、従来の方法と同じ方法で行った。例2では、強誘電体キャパシタを状態Pr+または状態Pr0とすることによって、書き込みを行った。状態Pr+の書き込みには、例1と同様に図9(a)に示す4Vの2パルスを用いた。一方、状態Pr0の書き込みには、図10(a)に示す、4Vのパルスとそれに続く−2.5Vのパルスからなるパルス列を用いた。読み出しでは、例1と同様に、図10(b)に示す3.5Vの2パルスを印加した。
【0062】
状態Pr0において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を、図10(c)に示す。例2においても、読み出し回数が増えるにつれて出力電圧の変化が小さくなった。このことから、従来の方法を用いた例1と同様に、例2においても、メモリ状態が劣化していることがわかる。しかし、例1に比べ、例2では、読み出しを繰り返すことによる出力電圧の変化の減少がゆるやかである。これは、状態Pr0を利用することによって、電荷ΔQ’が減少したためであると考えられる。
【0063】
[例3]
例3では、データの書き込み・読み込みの両方に新規な方法を用いた。例3では、強誘電体キャパシタを状態Pr+または状態Pr0とすることによって、書き込みを行った。状態Pr+の書き込みには、例1と同様に図11(a)に示す4Vの2パルスを用いた。一方、状態Pr0の書き込みには、図11(b)に示す、4Vのパルスとそれに続く−2.6Vのパルスからなるパルス列を用いた。読み出しは、図11(c)に示す、3.5Vのパルスとそれに続く−2.1Vのパルスからなるパルス列を2つ連続して印加することによって行った。なお、読み出し時に印加するパルス列は1つであってもよい。
【0064】
状態Pr+において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図11(d)に示し、状態Pr0において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図11(e)に示す。状態Pr+における出力電圧VOは、読み出しを10回行った後も、1回目の読み出しと同じく約2Vでほぼ一定であり、MOSFETのOFF状態が安定に維持された。このことから、状態Pr+においては、メモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が劣化することなく保持されていることが分かる。
【0065】
また、状態Pr0における出力電圧VOは、読み出し回数が増えてもほとんど変化がなかった。このことから、状態Pr0のメモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が、劣化することなく保持されていることが分かる。このように、本発明の駆動方法を用いることによって、ほぼ非破壊の読み出しが可能である。
【0066】
次に、状態Pr+および状態Pr0において読み出しを行った後に、メモリ状態が読み出し前の状態に戻るかどうかを検証した。読み出しによるメモリ状態の劣化がなければ、非破壊読出しを何回も繰り返し続けることができる。具体的には、図7に示す回路において、端子75にオシロスコープを接続し、読み出し電圧VRと、読み出し電圧VRの印加によって誘電体キャパシタに蓄積された電荷量Qfとの関係を評価した。なお、強誘電体キャパシタに蓄積されている蓄積電荷Qfそのものは、原理的にオシロスコープでは簡単に観測できないので、読み出しによるその変化を測定した。つまり、オシロスコープで観測できるのは、読み出し前の蓄積電荷量から変化した電荷量QfOであるので、読み出し後もQfOがゼロであればメモリ状態は劣化していないといえる。
【0067】
読み出し電圧は、本来は矩形パルスであるが、オシロスコープで読みやすいように、図12に示す三角波に類似のパルスを読み出し電圧に用いた。但し、最大電圧および最小電圧は、図11の結果を踏まえて、それぞれ3.5Vおよび−2.1Vとした。
【0068】
状態Pr+における結果を図13(a)に示し、状態Pr0における結果を図13(b)に示す。いずれの場合も、読み出し電圧VRの印加によって、幅の小さいヒステリシスを描いており、電圧VRの印加後(読み出し後)も、電荷量QfOはゼロであった。このことから、本発明の方法によれば非破壊読み出しを繰り返し行えることが裏付けられた。
【0069】
図13(a)および(b)に示すように、VR−QfOのヒステリシスループで囲まれる面積は小さい。一般に、この面積は、1サイクルごとに消費されるエネルギー、すなわち、1サイクルごとに強誘電体膜内で熱として消費されるエネルギーを示している。この消費エネルギーが大きいと、強誘電体膜の劣化がより早く進行する。図2に示すように、ヒステリシスループの幅が広い状態を用いてデータの書き込み・読み出しを行う場合、強誘電体膜内におけるエネルギー損失が大きく、強誘電体膜の劣化が大きいと推測される。このことが、強誘電体メモリで実用上問題となっている疲労現象などを助長している可能性は充分にある。それに対して、本発明の方法では、書き込み・読出し共に強誘電体膜内のエネルギー消費量を小さくできるが、特に読み出しではそれを極端に小さくすることが可能であるので、強誘電体膜の寿命が延び、且つメモリ動作に必要な消費電力も少なくなると考えられる。
なお、上記本発明の読み出し方法および書き込み方法は、いずれか一方のみを用いても効果が得られるが、両方を用いることによってより高い効果が得られる(第2の駆動方法においても同様である)。
【0070】
[本発明の第2の強誘電体メモリ]
本発明の第2の強誘電体メモリは、複数のメモリセルと、複数のメモリセルのそれぞれに接続されるワード線ならびに第1および第2のビット線とを含む。本発明の強誘電体メモリの一例では、複数のメモリセルは、行方向および列方向にマトリックス状に配置される。そして、ワード線は、行ごとに配置され、第1および第2のビット線は列ごとに配置される。
【0071】
メモリセルは、半導体と、半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、半導体上に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜)と、半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタと、書き込み用トランジスタとを含む。強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含む。強誘電体キャパシタの第1の電極は、ゲート絶縁膜上に直接積層されているか、または、ゲート絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。このメモリセルは、別の観点では、第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含む強誘電体キャパシタと、その強誘電体キャパシタがゲート電極として機能する電界効果トランジスタと、書き込み用トランジスタとを備える。強誘電体キャパシタおよび電界効果トランジスタについては、第1の駆動方法で説明したものと同じであるため、重複する説明を省略する。
【0072】
強誘電体キャパシタの第2の電極は、ワード線に接続される。強誘電体キャパシタで制御される電界効果トランジスタのソース電極およびドレイン電極のうちの一方は、第2のビット線に接続されている。書き込み用トランジスタのゲート電極は、第1のビット線に接続されている。書き込み用トランジスタのソース電極およびドレイン電極は、その内の一方が強誘電体キャパシタの第1の電極に接続され、残りのもう一方が第2のビット線に接続されている。書き込み用トランジスタには、MIS−FETなどの電界効果トランジスタを用いることができる。
【0073】
上記メモリセルの一例は、図6に示したメモリセルである。したがって、上述した事項と重複する説明は省略する。本発明の第2の強誘電体メモリの駆動方法(本発明の第2の駆動方法)において、第1の分極状態および第2の分極状態を書き込む原理、ならびに読み出しの原理については、第1の駆動方法と同じである。第2の駆動方法では、ワード線およびビット線に印加する電圧パルスを工夫することによって、特定のメモリセルに書き込みを行う際に、書き込みを行わない他のメモリセルの強誘電体膜の分極状態の劣化をより少なくしている。
【0074】
第2の駆動方法で駆動される強誘電体メモリについて、一例の構成を図14に示す。なお、図14では、2行×2列の部分のみを示すが、実際には、より多数のメモリセルがマトリクス状に配置される。図14では、i番目の行でj番目の列にあるメモリセルを、Cijで示す。
【0075】
各メモリセルは、FET20と、強誘電体キャパシタ30と、書き込み用トランジスタ60とを含む回路として模式的に表される。i番目の行には、ワード線WLiが配置されている。また、j番目の列には、第1のビット線Bj1と第2のビット線Bj2とが配置されている。
【0076】
書き込み用トランジスタ60のゲート電極は、第1のビット線Bj1に接続されている。書き込み用トランジスタ60のソース電極およびドレイン電極は、いずれか一方が第2のビット線Bj2に接続され、他方が強誘電体キャパシタ30の第1の電極(FET20側の電極)に接続されている。FET20のソース電極およびドレイン電極は、いずれか一方が第2のビット線Bj2に接続され、他方がアースに接続されている。なお、図14でアース電位としている箇所の電位は、読み出し時に強誘電体膜の分極状態に応じた電流がソース−ドレイン間を流れる電位であればよく、必ずしもアース電位である必要はない。また、本発明の効果が得られる限り、ワード線およびビット線の通常時の電位は、アース電位でなくてもよい。
【0077】
[第1の駆動方法の一例の課題]
図14のメモリセルC11に対して、上述した第1の駆動方法で説明した電圧パルスの一例を用いて書き込みおよび読み出しを行う場合について説明する。メモリセルC11の読み出しおよび書き込みの際に印加する読み出し電圧および書き込み電圧を、図15(a)〜(c)に示す。
【0078】
図15(a)に示すように、読み出しは、第2のビット線B12に電圧VDを印加した状態で、ワード線WL1に読み出し電圧を印加することによって行われる。読み出し電圧は、電圧R1ボルトのパルスと、それに続く電圧R2ボルトのパルスとによって構成される。読み出しの際には、書き込み用トランジスタ60はオフの状態にある。
【0079】
分極状態Pr+の書き込みは、図15(b)に示すように、第1のビット線B11の電位を高レベルにして書き込み用トランジスタ60をオン状態にするとともに、ワード線WL1に第1の書き込み電圧を印加することによって行われる。分極状態Pr0の書き込みは、図15(c)に示すように、第1のビット線B11の電位を高レベルにして書き込み用トランジスタ60をオン状態にするとともに、ワード線WL1に第2の書き込み電圧を印加することによって行われる。
【0080】
ワード線WL1以外のワード線の電位は、アース電位である。また、第1のビット線の電位は、メモリセルC11の書き込み用トランジスタ60をオンにするとき以外は、アース電位である。また、第2のビット線の電位は、メモリセルC11を読み出すとき以外はアース電位である。
【0081】
メモリセルC11に対して読み出しおよび書き込みを行う場合、それによってメモリセルC11以外のメモリセルのメモリ状態が変化することをできるだけ抑制する必要がある。読み出し電圧の印加によるメモリ状態の劣化は、メモリセルC11に加えて、読み出しが選択されていないメモリセルに対しても少ないことは、上述した通りである。
【0082】
メモリセルC11に対して書き込みを行う場合でも、メモリセルC11と異なる行に存在するメモリセルCmj(mは1以外の数)の強誘電体キャパシタCfのメモリ状態は変化しない。これは、メモリセルCmjに接続されるワード線WLmおよび第2のビット線Bj2の電位がアース電位であるためである。
【0083】
一方、メモリセルC11に対して書き込みを行う場合、メモリセルC11と同じ行に存在するメモリセルC1n(nは1以外の数)の強誘電体キャパシタCfには、何らかの電圧が印加される。これは、書き込み用トランジスタ60はオフ状態であるが、ワード線WL1に印加された電圧が、アース電位にあるFET20のソース電極またはドレイン電極と、強誘電体キャパシタCfの第2の電極との間に印加されるためである。そのため、書き込みがされるメモリセルC11と同じ行にあるメモリセルC1nは、ディスターブを受ける場合がある。それらを、以下の表1にまとめる。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、メモリセルC1nが分極状態Pr0である場合にワード線WL1にPr0の書き込み電圧が印加されても、メモリセルC1nの分極状態は変わらない。しかし、メモリセルC1nが分極状態Pr0である場合にワード線WL1にPr+の書き込み電圧が印加されると、ランダムな分極状態に近い分極状態Pr0が、正電圧の印加によって徐々に分極状態Pr+に近づいて劣化していく。仮にメモリセルC1nの強誘電体キャパシタCfに印加される電圧が強誘電体キャパシタCfの抗電圧未満であったとしても、メモリセルC1nの分極状態は徐々に遷移し、ランダムに近い初期の状態とは異なる正の残留分極の状態となる。そのため、メモリ状態を明確に見分けることが難しくなる。
【0086】
メモリセルC1nが分極状態Pr+である場合にワード線WL1にPr0の書き込み電圧が印加される場合、メモリセルC1nの書き込み用トランジスタ60はオフであり、また、Pr0の書き込み電圧パルスは読み出し電圧パルスと同形である。そのため、この場合には非破壊読出し動作と同じ動作が行われるため、メモリセルC1nにおけるディスターブは実質的に問題とならない。
【0087】
[本発明の第2の駆動方法]
上述したように、第1の駆動方法で説明した書き込み電圧をワード線に印加することによって書き込みを行う場合には、書き込みが行われるメモリセル以外のメモリセルのメモリ状態が劣化する場合がある。そのような劣化を避けるために、第2の駆動方法では、ワード線およびビット線に印加する電圧に工夫を加えている。
【0088】
本発明の第2の駆動方法は、本発明の第2の強誘電体メモリを駆動する方法である。この駆動方法は、書き込みを行うステップと、読み出しを行うステップとを含む。
【0089】
書き込みを行うステップでは、強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、強誘電体キャパシタの2つの電極間(第1の電極と第2の電極との間)に印加することによって書き込みを行う。
【0090】
また、読み出しを行うステップでは、強誘電体キャパシタの第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行う。そして、電圧R1およびR2は、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たす。強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧R1とは、通常、|R1|>|Vc|の関係を満たす。本発明の効果が得られる限り、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。読み出し電圧の各パルスの長さおよび大きさの一例は、第1の駆動方法で説明した一例と同じである。
【0091】
第2の分極状態(Pr0)は、第1の分極状態(Pr+またはPr-)よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態である。第1の分極状態および第2の分極状態については、第1の駆動方法で説明したため、重複する説明を省略する。
【0092】
第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトの第1のパルスP11とそれに続く電圧W12ボルトの第2のパルスP12とを含む第1書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、第1のパルスP11が印加されているときだけ書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、強誘電体キャパシタの2つの電極間(第1の電極と第2の電極との間)に印加される。
【0093】
第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む第2書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、第1および第2のパルスP21およびP22が印加されているときに書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、強誘電体キャパシタの2つの電極間(第1の電極と第2の電極との間)に印加される。そして、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと、電圧W11、W12、W21およびW22とは、|W11|>|W12|、W11・W12<0、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。電圧W12の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧W12の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。電圧W22の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧W22の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。第2の書き込み電圧の各パルスの長さおよび大きさの一例は、第1の駆動方法で説明した一例と同じである。
【0094】
電圧W11およびW12の大きさ、および第1および第2のパルスP11およびP12のパルス幅は、強誘電体膜の材料や厚さに応じて設定される。一例では、第1および第2のパルスP11およびP12のパルス幅は、それぞれ独立に、0.001マイクロ秒〜100マイクロ秒(たとえば0.001マイクロ秒〜1マイクロ秒)の範囲にある。また、一例では、電圧W11は0.3ボルト〜5ボルト(たとえば0.5ボルト〜3ボルト)の範囲にあり、電圧W12は−0.01ボルト〜−4ボルト(たとえば−0.1ボルト〜−2.5ボルト)の範囲にある。通常、電圧W12の絶対値は、電圧W11の絶対値の0.002倍〜0.8倍(たとえば0.4倍〜0.75倍)の範囲にある。
【0095】
第2の駆動方法では、第1書き込み電圧パルス、第2書き込み電圧パルスおよび読み出し電圧パルスから選ばれる2つ以上の電圧パルスが同じ電圧パルスであってもよい。たとえば、第1書き込み電圧パルスと第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスであってもよい。また、読み出し電圧パルスと第1書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスであってもよい。さらに、読み出し電圧パルスと第1書き込み電圧パルスと第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスであってもよい。これらのパルスを同じにすることによって、回路全体の構成を簡略化できる。
【0096】
[第2の駆動方法の一例]
以下に、図14のメモリセルC11に、第2の駆動方法で読み出しおよび書き込みを行う場合の一例について説明する。この一例では、読み出しは、図16(a)に示すように、第1の駆動方法の一例で説明したのと同じ方法で行われる。第2の駆動方法によってメモリセルC11の強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr+にする場合のワード線WL1および第1のビット線B11の電位を図16(b)に示す。
【0097】
メモリセルC11の強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr+にする場合、第1のビット線B11には、書き込み用トランジスタ60をオン状態にするための電圧VBボルトが印加される。ワード線WL1には、電圧W11ボルトの第1のパルスP11と、電圧W12ボルトの第2のパルスP12とからなる第1書き込み電圧パルスが印加される。この第1書き込み電圧パルスは、読み出し電圧パルスと同形である。電圧W11ボルトの第1のパルスP11は、書き込み用トランジスタ60がオン状態となっている時間よりも時間tlagだけ長く印加される。電圧W12ボルトの第2のパルスP12は、書き込み用トランジスタ60がオフ状態となってから印加される。そのため、強誘電体キャパシタCfの2つの電極間に印加されるのは、第1のパルスP11の電圧W11ボルトと、CfとFET20の入力容量CSとで決まる第2のパルスP12の電圧W12ボルトによる分圧、W12Cs/(Cs+Cf)ボルトである。この電圧W12ボルトの分圧W12Cs/(Cs+Cf)ボルトは、W12ボルトより低く、読み出し時の電圧R2ボルトのパルスを印加したときのCfにかかる分圧R2Cs/(Cs+Cf)ボルトに近いため、メモリ状態は劣化しにくい。そのため、強誘電体キャパシタCfの2つの電極間に印加される電圧パルスは、実質的に第1の駆動方法と同じであると考えられる。その結果、強誘電体キャパシタCfは分極状態Pr+とされる。なお、tlagは回路応答の遅れを考慮した時間であり、本発明の効果が得られる限り時間tlagがなくてもよい。
【0098】
第2の駆動方法において、メモリセルC11の強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr0にする場合のワード線WL1および第1のビット線B11の電位を図16(c)に示す。強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr0にする場合、第1のビット線B11には、書き込み用トランジスタ60をオン状態にするための電圧VBボルトが印加される。ワード線WL1には、電圧W21ボルトの第1のパルスP21と、電圧W22ボルトの第2のパルスP22とからなる第2書き込み電圧パルスが印加される。第1のパルスP21および第2のパルスP22は、書き込み用トランジスタ60がオン状態になっているときに印加される。このように、分極状態Pr0にする書き込み方法は、第1の駆動方法と同じである。
【0099】
この一例では、第1書き込み電圧パルスと第2書き込み電圧パルスと読み出し電圧のパルス列とは、同形のパルス列であり、電圧W11と電圧W21と電圧R1とは等しく、電圧W12と電圧W22とは等しく、電圧W12あるいは電圧W22と電圧R2とは近い。したがって、メモリセルC11に分極状態Pr+を書き込む際に、メモリセルC11以外の第1行目のメモリセルC1nには、非破壊読み出し動作を行う読み出し電圧パルスとほぼ同形のパルスが印加される。そのため、読み出し動作を行ったときと同様に、メモリセルC1nの分極状態はほとんど変化しない。
【0100】
このように、第2の駆動方法によれば、メモリセルC11に分極状態Pr+を書き込む際に生じる他のメモリセルのメモリ状態の劣化を抑制できる。また、読み出しおよび分極状態Pr0の書き込みによるメモリ状態の劣化が少ないことは、上述した通りである。
【0101】
なお、以上の説明では、読み出しの際に状態Pr+と状態Pr0との間の容量の相違が出るようにデータの書き込みを行う例について説明したが、状態Pr-と状態Pr0との間の容量の相違が出るようにデータの書き込みを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、強誘電体メモリおよびその駆動方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】(a)本発明の第1の強誘電体メモリの構造を示す断面図、および(b)それを模式的に示す回路図である。
【図2】強誘電体膜の分極−電圧特性の一例を示す図である。
【図3】本発明の強誘電体メモリにおける電圧印加方法の一例を示す模式図である。
【図4】強誘電体キャパシタについて、状態Pr-および状態Pr0における分極−電圧特性を示す図である。
【図5】(a)本発明の第1の駆動方法において、強誘電体膜を状態Pr0とするための書き込み電圧の一例を示す図、および(b)本発明の第1の駆動方法における読み出し電圧の一例を示す図である。
【図6】メモリ装置を構成するメモリセルの一例を示す図である。
【図7】実施例で用いた評価回路の構成を模式的に示す図である。
【図8】実施例における評価方法を示す図である。
【図9】従来の書き込み・読み出し方法と、その結果を示す図である。
【図10】本発明の書き込み方法と、その結果を示す図である。
【図11】本発明の書き込み・読み出し方法と、その結果を示す図である。
【図12】実施例において評価に用いた読み出し電圧を示す図である。
【図13】図12の読み出し電圧VRの印加時における誘電体キャパシタに蓄積された電荷量の変化分QfOを示す図である。
【図14】本発明の第2の駆動方法で駆動される強誘電体メモリの一例を示す回路図である。
【図15】本発明の第1の駆動方法によって読み出しおよび書き込みを行う場合の電圧パルス一例を示す図である。
【図16】本発明の第2の駆動方法によって読み出しおよび書き込みを行う場合の電圧パルスの一例を示す図である。
【図17】従来の駆動方法における書き込み電圧および読み出し電圧の例を示す図である。
【図18】従来の駆動方法における課題を説明する図である。
【符号の説明】
【0104】
10 メモリ素子
11 半導体(半導体基板)
12 絶縁膜
13 第1の電極
14 強誘電体膜
15 第2の電極
16 ソース電極
17 ドレイン電極
18 絶縁膜
20 電界効果トランジスタ(FET)
30 強誘電体キャパシタ
60 書き込み用トランジスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体メモリの駆動方法および強誘電体メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体薄膜をゲート絶縁膜に用いたFET型強誘電体メモリは、不揮発性で且つ非破壊読み出しが可能であり、高速性および集積度がDRAM(Dynamic Random Access Memory)程度である。そのため、FET型強誘電体メモリは、究極のメモリと呼ばれ研究されてきた。
【0003】
FET型強誘電体メモリにおいて、シリコン上に強誘電体膜を直接積層すると、両者が反応してしまう場合がある。そのため、従来から、シリコンと強誘電体膜との間に、熱的・化学的に安定な常誘電体であるバッファ層を挿入した構造が提案されてきた。バッファ層は、それにかかる電圧を低くするために、酸化シリコンよりも誘電率が高い材料で形成される。
【0004】
しかし、バッファ層を含む従来のFET型強誘電体メモリは、(1)メモリ保持時間が数日程度と短い、(2)DRAM型の強誘電体メモリに比べてかなり高い動作電圧が必要になる、(3)バッファ層とシリコンとの界面特性が悪く、メモリ動作が不安定になる、といった問題を有する。そのため、その実用化はかなり難しいと考えられている。
【0005】
このような問題を解決するため、本願の発明者は、新規な構造を有する強誘電体メモリを提案した(特許文献1)。この強誘電体メモリは、強誘電体キャパシタと、MIS(Metal−Insulator−Silicon)型のFETとを備える構成として、模式的に考えることが可能である。この強誘電体メモリでは、強誘電体キャパシタのみに書き込み電圧が印加される。
【0006】
このメモリにおいて、”1”および”0”のメモリ状態は、強誘電体膜の正の残留分極および負の残留分極に対応している。以下の説明では、強誘電体膜の正の残留分極の状態を「状態Pr+」と呼び、強誘電体膜の負の残留分極の状態を「状態Pr-」と呼ぶ場合がある。
【特許文献1】特開2002−251877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発明者らが検討した結果、従来の駆動方法でデータの書き込みおよび読み出しを行うと、状態Pr-においてメモリ状態が劣化することが明らかとなった。従来の方法における状態Pr+の書き込み電圧VW+、状態Pr-の書き込み電圧VW-、および読み出し電圧VRの一例を、それぞれ、図17(a)、(b)および(c)に示す。また、状態Pr-におけるメモリ状態の劣化の様子を、図18に示す。図18は、強誘電体キャパシタの容量Cfと、FETの入力容量CSに蓄積される電荷の状態を示す。
【0008】
まず、書き込み電圧VW-の印加によって状態Pr-の書き込みが行われると、図18(a)に示すように、強誘電体キャパシタ(Cf)にだけ電荷Qfが蓄積・保持される。次に、読み出し電圧VR(VR>0)を印加することによって、読み出しが行なわれる。このとき、FET(CS)には、読み出し電圧VRの印加によって電荷ΔQが誘起され、強誘電体キャパシタ(Cf)の電荷の絶対値は|(Qf−ΔQ)|に減少する(図18(b))。しかし、図18(c)に示すように、VR→0となる読み出し直後では、FET(CS)の電荷ΔQが、強誘電体キャパシタ(Cf)に対して瞬時に負バイアス(−ΔQ/Cs)を印加したように作用する。その結果、強誘電体キャパシタ(Cf)に再び電荷が蓄積される。当初、この動作によって、読み出し後に再び図18(a)の電荷状態に戻ることが期待された。しかし実際には、読み出し後、図18(d)に示すように、強誘電体キャパシタ(Cf)の蓄積電荷が初期状態に戻らないために、FET(CS)にはΔQ’の電荷が残る。そのΔQ’は、Csの漏れ電流によりしばらくすると無くなる。その結果、読み出し回数が増加するに従って、強誘電体キャパシタ(Cf)の蓄積電荷が徐々に減り、記録されたデータが劣化してしまうという問題があった。このように、従来の駆動方法では、記録されたデータの劣化が大きく、非破壊読み出しができないという問題があった。なお、読み出し電圧VRは正であるため、状態Pr+では、読み出し後も保持電荷は充分に維持される。
【0009】
このような状況において、本発明は、強誘電体メモリの駆動方法であって信頼性が高い新規な駆動方法、およびその駆動方法で駆動される強誘電体メモリを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために検討した結果、発明者らは、特別な書き込み電圧および/または読み出し電圧を印加することによって、書き込み状態の劣化を抑制できることを見出した。本発明は、この新規な知見に基づく発明である。
【0011】
すなわち、強誘電体メモリを駆動するための本発明の第1の駆動方法は、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリの駆動方法である。前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。前記駆動方法は、前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含む。前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たす。前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態である。前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含み、前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む。前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと前記電圧W11、W21およびW22とが、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。
【0012】
また、本発明の第1の強誘電体メモリは、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリである。前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。本発明の第1の強誘電体メモリは、上記本発明の第1の駆動方法で駆動される。
【0013】
また、本発明の第2の強誘電体メモリは、複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのそれぞれに接続されるワード線ならびに第1および第2のビット線とを含む強誘電体メモリである。前記メモリセルは、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタと、書き込み用トランジスタとを含む。前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記絶縁膜上に直接積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。前記第2の電極は、前記ワード線に接続され、前記ソース電極およびドレイン電極のうちの一方が、前記第2のビット線に接続されている。前記書き込み用トランジスタのゲート電極は前記第1のビット線に接続されている。前記書き込み用トランジスタのソース電極およびドレイン電極は、その内の一方が前記第1の電極に接続され、残りのもう一方が前記第2のビット線に接続されている。
【0014】
また、強誘電体メモリを駆動するための本発明の第2の駆動方法は、上記本発明の第2の強誘電体メモリの駆動方法である。この駆動方法は、前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含む。前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たす。前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態である。前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトの第1のパルスP11とそれに続く電圧W12ボルトの第2のパルスP12とを含む第1書き込み電圧パルスを前記第2の電極に印加すると共に、前記第1のパルスP11が印加されているときだけ前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される。前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む第2書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、前記第1および第2のパルスP21およびP22が印加されているときに前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、第1の電極と第2の電極との間に印加される。前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと、前記電圧W11、W12、W21およびW22とが、|W11|>|W12|、W11・W12<0、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明の強誘電体メモリおよびその駆動方法(動作方法)によれば、既に書き込まれた状態の劣化を抑制できる。すなわち、本発明によれば、強誘電体メモリにおいて、メモリ状態をほとんど劣化させることなくデータの読み出し及び再書き込みを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
【0017】
[強誘電体メモリを駆動する第1の方法]
本発明の第1の方法で駆動される強誘電体メモリは、半導体と、半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、半導体上に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜)と、半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む。その強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含む。強誘電体キャパシタの第1の電極は、ゲート絶縁膜上に積層されているか、または、ゲート絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。電界効果トランジスタのオン/オフ、すなわち半導体のチャネルの制御は、強誘電体キャパシタの第2の電極の電位と強誘電体膜の分極状態とを制御することによって行うことができる。強誘電体キャパシタの第1の電極、強誘電体膜および第2の電極がゲート絶縁膜上に順に積層されている場合、強誘電体キャパシタはゲート電極として機能する。
【0018】
第1の駆動方法は、書き込みステップと読み出しステップとを含む。書き込みステップでは、強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、第1の電極と第2の電極との間に印加することによって書き込みが行われる。
【0019】
読み出しステップでは、第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しが行われる。読み出し電圧パルスの電圧R1およびR2は、|R1|>|R2|、R1・R2<0を満たす。強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧R1とは、通常、|R1|>|Vc|の関係を満たす。
【0020】
第2の分極状態は、第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさ(分極の絶対値)が小さい状態である。第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含む。第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトのパルスとそれに続く電圧W22ボルトのパルスとを含む。強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧W11、W21およびW22とは、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。
【0021】
本発明の好ましい一例では、第2の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値は、第1の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値の0倍〜0.4倍の範囲にあってもよい。
【0022】
[第1の駆動方法で駆動される強誘電体メモリの一例]
第1の強誘電体メモリの構成の一例を、図1(a)に模式的に示す。図1(a)の強誘電体メモリ素子10は、半導体(半導体基板)11と、半導体11上に順に積層された絶縁膜12、第1の電極13、強誘電体膜14および第2の電極15と、半導体11に接続されたソース電極16およびドレイン電極17とを含む。また、半導体11上には、素子を分離するための絶縁膜18が形成されている。第1の電極13、強誘電体膜14および第2の電極15は、少なくともソース電極16とドレイン電極17との間の領域に形成されるが、より広い範囲に形成されてもよい。
【0023】
第1の電極13と強誘電体膜14と第2の電極15とは、強誘電体キャパシタとして機能する。また、その強誘電体キャパシタと、半導体11、絶縁膜12、ソース電極16およびドレイン電極17は、電界効果トランジスタ(図1の例ではMIS−FET)として機能する。ソース電極16とドレイン電極17との間に電圧を印加したときにそれらの電極間を流れる電流量は、第2の電極15の電位および強誘電体膜14の分極状態によって変化する。このとき、ソース電極16とドレイン電極17との間の領域にある半導体11は、チャネル領域として機能する。
なお、本発明の効果が得られる限り、第1の電極13と強誘電体膜14と第2の電極15とを含む強誘電体キャパシタは、絶縁膜12から離して形成されてもよい。その場合、絶縁膜12上にはゲート電極が形成され、そのゲート電極と第1の電極13とが接続される。このような構成においても、ソース電極16とドレイン電極17との間に電圧を印加したときにそれらの電極間を流れる電流量は、第2の電極15の電位および強誘電体膜14の分極状態によって変化する。したがって、この場合のメモリ素子も、メモリ素子10と同様の機能を有する。
【0024】
上記各部分の材料には、一般的な材料を用いることができる。たとえば、半導体11には、シリコン基板を用い、絶縁膜12には酸化シリコン膜を用い、強誘電体膜14にはPZT膜(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、電極には金属電極を用いることができる。なお、本発明の効果が得られる限り、他の材料を用いてもよい。また、上記構成以外の部分については、公知の技術および構成を適用してもよい。
【0025】
強誘電体メモリ素子10は、模式的に、図1(b)に示す回路として表すことが可能である。すなわち、強誘電体メモリ素子10は、電界効果トランジスタ(FET)20と、強誘電体キャパシタ30とによって構成されていると考えることが可能である。
【0026】
図2に、強誘電体キャパシタ30の分極−電圧特性(P−V特性)の一例を示す。この特性の傾き(微少の分極変化分/微少の電圧変化分)が、強誘電体の単位面積当たりの容量Cf(以後、これを単に「容量Cf」と呼ぶ)となる。図2に示すように、V>0の電圧印加では、正の残留分極の状態Pr+からの強誘電体の容量Cfよりも、負の残留分極の状態Pr-からの強誘電体の容量Cfの方が大きい。強誘電体メモリでは、強誘電体の残留分極の状態の相違による容量の相違が利用できるようにデータを書き込みし、そのデータを読み出す。すなわち、強誘電体の異なる分極状態が、異なる論理値(”0”または”1”)を表す。
【0027】
図3に電圧の印加方法を示す。書き込み電圧VWは、端子31(第1の電極13)を例えばアースに接続した状態で、強誘電体キャパシタ30の第1の電極13と第2の電極15とに印加される。一方、読み出し電圧VRは、端子31(第1の電極13)をフローティングにした状態で、強誘電体キャパシタ30の第2の電極15に印加される。
【0028】
図2に示すように、状態Pr+から正の飽和分極へ移行するときのCfと、状態Pr-から正の飽和分極へ移行するときのCfとは、大きく異なる。一方、読み出し電圧VRが印加されたときにFET20のゲートに印加される電圧Vtは、Vt=VRCf/(CS+Cf)と表される(CSはFETの入力容量)。このように、VtはCfに依存することから、読み出し電圧の閾値は強誘電体キャパシタ30の状態に応じて異なる。その結果、メモリ動作が可能となる。書き込まれているデータが”0”であるか”1”であるかの判定は、ドレイン電流ID、または図3の抵抗RDの一端における出力電圧V0に基づいて行うことができる。
【0029】
[第1の駆動方法]
本発明の第1の駆動方法(書き込み・読み出し方法)は、強誘電体膜14を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、強誘電体膜14を第2の分極状態(第1の分極状態とは異なる分極状態)にする第2の書き込み電圧を、第1の電極13と第2の電極15との間に印加することによって書き込みを行うステップと、第2の電極15に読み出し電圧を印加することによって読み出しを行うステップとを含む。
【0030】
図18に示した従来の課題を解決するために発明者らが検討した結果、特定の書き込み電圧および/または特定の読み出し電圧を用いることによって、データの劣化を抑制できることを見出した。以下、書き込み方法および読み出し方法について説明する。なお、書き込み電圧および読み出し電圧に関する以下の説明では、アース電位に比べて高い電位を与える電圧を正の電圧とする。
【0031】
[書き込み方法]
データの書き込みは、強誘電体キャパシタ30の第1の電極13と第2の電極15との間に書き込み電圧を印加することによって行われる。このとき、例えば図3の端子31(第1の電極13)をアースに接続することによって、強誘電体キャパシタ30のみに電圧が印加される。
【0032】
書き込み電圧には、強誘電体膜14を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧と、強誘電体膜14を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧の2種類がある。以下では、第1の分極状態が正の分極状態Pr+であり、第2の分極状態が、正の分極状態Pr+よりも無電界下における分極の大きさ(分極の絶対値)が小さい分極状態である場合について説明する。
【0033】
本発明の駆動方法では、第2の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値は、第1の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値の0倍〜0.4倍(たとえば0倍〜0.2倍)の範囲にあることが好ましい。
【0034】
第1の駆動方法では、強誘電体膜を正の分極状態Pr+にするために、第1の書き込み電圧が加えられる。第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含む。第1の書き込み電圧には、従来と同じく、一般的な正の電圧パルスを用いることができる。電圧W11ボルトは、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトよりも大きい。
【0035】
また、第1の駆動方法では、強誘電体膜を分極が小さい分極状態Pr0にするために、書き込み電圧VW0が印加される。ここで、分極状態Pr0とは、無電界下において分極の大きさ(分極の絶対値)が小さい状態、すなわち、P−V座標の原点近傍にある分極状態を意味する。P−V座標の原点にある強誘電体膜に正の電圧を印加すると、図4の点線に示す初期曲線に従って分極状態が変化する。
【0036】
図18に示したように、状態Pr-の読み出し時に大きなΔQ’が残留するのは、読み出し電圧の印加によって減少した分極を復活させることができるような大きい負バイアスが、読み出し直後に強誘電体膜に印加されないためであった。このことから、読み出し電圧の印加による分極の減少が状態Pr-よりも少ない状態Pr0を用いることによって、ΔQ’を小さくできると考えられる。図4に示すように、状態Pr0(この例では図4の原点)では、読み出し電圧の印加によって分極状態が原点から状態A’に移動し、読み出し終了時には状態B’に移動する。原点と状態B’との分極差が、図4の状態Pr0におけるΔQ’となる。一方、状態Pr-では、読み出し電圧の印加によって分極状態が状態Sから状態Aに移動し、読み出し終了時には状態Bに移動する。状態Sと状態Bとの分極差が状態Pr-におけるΔQ’となる。図4に示すように、状態Pr0を用いることによって、ΔQ’の大きさを小さくできると考えられる。
【0037】
この状態Pr0を得るための書き込み電圧VW0には、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含むパルス列を用いる。ここで、電圧W21およびW22は、|W21|>|W22|、およびW21・W22<0の関係を満たす。すなわち、電圧W21および電圧W22は共にゼロではなく、符号が逆である。また、電圧W21ボルトの第1のパルスP21は、書き込む前の強誘電体キャパシタの状態がPr+であれPr0であれ、書き込む前の状態に関係なくその状態をリセットするために、|W21|≧|W11|の関係を満たす。電圧W22の絶対値は、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧W22の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。
【0038】
なお、「電圧Xボルトのパルス」とは、絶対値が最大となる部分での電圧がXボルトであるパルスを意味する(以下、同様である)。
【0039】
電圧W21およびW22の大きさ、ならびにパルスP21およびP22のパルス幅は、強誘電体膜の材料や厚さに応じて設定される。一例では、パルスP21およびP22のパルス幅は、それぞれ独立に、0.001マイクロ秒〜100マイクロ秒(たとえば0.001マイクロ秒〜1マイクロ秒)の範囲にある。また、一例では、電圧W21は0.3ボルト〜5ボルト(たとえば0.5ボルト〜3ボルト)の範囲にあり、電圧W22は−0.01ボルト〜−4ボルト(たとえば−0.1ボルト〜−2.5ボルト)の範囲にある。通常、電圧W22の絶対値は、電圧W21の絶対値の0.002倍〜0.8倍(たとえば0.4倍〜0.75倍)の範囲にある。
【0040】
書き込み電圧VW0の一例を、図5(a)に示す。図5(a)の一例は、W21>0の例である。
【0041】
第1および第2のパルスP21およびP22は、たとえば矩形パルスである。ただし、本発明の効果が得られる限り、パルスP21およびP22は、他の形状のパルス、たとえば三角波状のパルスであってもよい。また、本発明の効果が得られる限り、書き込み電圧のパルス列は、パルスP21およびP22に加えて、さらに他のパルスを含んでもよい。また、パルスP21およびP22は通常連続して印加されるが、本発明の効果が得られる限り、それらのパルスは非連続であってもよい。
【0042】
電圧W21ボルトの第1のパルスP21が印加されると、状態Pr+または状態Pr0にある強誘電体膜は、もしW21=W11ならば、いずれも状態Pr+にリセットされ、また|W21|>|W11|ならば、いずれも新たなメモリ状態にリセットされる。電圧W22ボルトの第2のパルスP22は、第1のパルスP21によって実現されたリセット状態を状態Pr0にするためのパルスである。なお、W21<0の第1のパルスを用いることによって、例えば、第1のパルスで強誘電体キャパシタを状態Pr-にし、第2のパルスP22によって状態Pr-から状態Pr0にすることも可能である。
【0043】
状態Pr0からの強誘電体キャパシタの容量Cfは、状態Pr-ほどではないが状態Pr+からのものよりも明らかに大きい。そのため、状態Pr+と状態Pr0とを、それぞれ異なる論理値に対応させ、メモリ動作をさせることも可能である。
【0044】
[読み出し方法]
データの読み出しは、第2の電極15に読み出し電圧を印加することによって行われる。すなわち、読み出し電圧は、ソース電極16および/またはドレイン電極17と、第2の電極15との間に印加される。読み出し電圧を印加する際は、第1の電極13をフローティング状態にする。
【0045】
読み出し電圧は、電圧R1ボルトの第1のパルスとそれに続く電圧R2ボルトの第2のパルスとを含む。電圧R1およびR2は、|R1|>|R2|、R1・R2<0を満たす。すなわち、電圧R1および電圧R2は共にゼロではなく、符号が逆であり、電圧R1の絶対値は電圧R2の絶対値よりも大きい。また、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧R1とは、通常、|R1|>|Vc|の関係を満たす。本発明の効果が得られる限り、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。
【0046】
電圧R1およびR2の大きさ、ならびに第1および第2のパルスのパルス幅は、強誘電体膜の材料や厚さに応じて設定される。一例では、第1および第2のパルス幅は、それぞれ独立に、0.001マイクロ秒〜100マイクロ秒(たとえば0.001マイクロ秒〜1マイクロ秒)の範囲にある。また、一例では、電圧R1は0.3ボルト〜5ボルト(たとえば0.5ボルト〜3ボルト)の範囲にあり、電圧R2は−0.01ボルト〜−4ボルト(たとえば−0.1ボルト〜−2.5ボルト)の範囲にある。通常、電圧R2の絶対値は、電圧R1の絶対値の0.002倍〜0.8倍(たとえば0.4倍〜0.75倍)の範囲にある。
【0047】
読み出し電圧VRの一例を、図5(b)に示す。図5(b)の一例は、R1>0の例である。
【0048】
第1および第2のパルスは、たとえば矩形パルスである。ただし、本発明の効果が得られる限り、第1および第2のパルスは、他の形状のパルス、たとえば三角波状のパルスであってもよい。また、本発明の効果が得られる限り、読み出し電圧のパルス列は、第1および第2のパルスに加えて、さらに他のパルスを含んでもよい。
【0049】
従来の駆動方法における読み出し電圧(図17(c)参照)では、強誘電体キャパシタに加えられた電荷ΔQが完全に消去されず、電荷ΔQ’が残ってしまう。これに対し、本発明の読み出し方法では、電圧R1ボルトの第1のパルスの直後に(連続して)、第1のパルスとは符号が逆の電圧R2ボルトの第2のパルスを印加する。これによって、残留する電荷ΔQ’を低減し、読み出しによるメモリ状態の劣化を抑制できる。
【0050】
[メモリセルの一例]
メモリセルが集積されたメモリ装置を構成するメモリセルの一例を、図6に示す。なお、図6に示すメモリセルは一例であり、本発明はこの例に限定されない。
【0051】
図6のメモリセルは、強誘電体メモリ素子10と、書き込み用(スイッチング用)トランジスタ60(たとえばMIS−FET)とを含む。なお、図6のE点は、FET20のオン・オフによって電流Iに充分に差がでるような電位に保持されればよく、必ずしもアースに接続される必要はない。
【0052】
書き込みの際は、第1のビット線Bi1の電圧を制御してトランジスタ60をオンにし、ワード線WLおよび第2のビット線Bi2を介して強誘電体キャパシタ30に書き込み電圧を印加する。書き込み終了後の保持状態においては、第1のビット線Bi1の電圧を制御してトランジスタ60をオフにする。一方、読み出しの際には、ワード線WLを介して読み出し電圧VRを印加するとともに、第2のビット線Bi2に所定の電圧を印加する。読み出し電圧VRの印加によって流れる電流Iの大きさは、強誘電体キャパシタ30の分極状態に応じて異なる。したがって、電流Iの大きさから、記録されている論理値(”0”または”1”)を読み取ることができる。
【0053】
[実施例]
以下、実施例によって本発明の第1の駆動方法を詳細に説明する。
【0054】
[評価方法]
評価は、図7に示す回路を用いて行った。FET20には、市販のMOS−FETを用いた。評価に用いた強誘電体キャパシタ30の構造を、図7に示す。
【0055】
図7の強誘電体キャパシタ30は、以下の方法で形成した。まず、表面に厚さ10nmの熱酸化膜71a(SiO2膜)が形成されているSi基板71を用意した。その熱酸化膜71a上に、第1の電極72として、RuO2膜72a(厚さ60nm)と、Pt膜72b(厚さ700nm)とを積層した。次に、多結晶のPb(Zr,Ti)O3からなる多結晶PZT膜73(厚さ200nm)を形成した。次に、多結晶PZT膜73の上に、第2の電極74としてRuO2膜(厚さ)を形成した。これらの膜は、スパッタ法によって形成した。このようにして強誘電体キャパシタ30を形成した。そして、第1の電極72のPt膜72bを、端子75を介してFET20のゲート電極に接続した。
【0056】
このようにして形成された回路を用いて測定を行った。なお、ドレイン電圧VDを2V、ドレイン抵抗RDを1kΩとした。また、書き込み(Writing)は、端子75をアースに接続した状態で強誘電体キャパシタ30のみに電圧VWを印加することによって行った。読み出し(Reading)は、強誘電体キャパシタの第2の電極74とアースとの間に、電圧VRを印加することによって行った。出力電圧VOは,FET20のドレイン端にオシロスコープを接続して観測した。
【0057】
読み出し特性の評価の手順を図8に示す。メモリに書き込みをした後、第1回目の読み出しを行なう。次に、強誘電体キャパシタの第2の電極74とFET20のドレイン電極とをアースに接続し、且つ端子75(図7参照)をフローティングにした状態を1分間保つ(保持状態)。その後、第2回目の読み出しを行なう。次に、メモリを再度、保持状態にする。このような読み出しと保持のサイクルを10回繰り返し、各読み出し時の出力電圧VOをオシロスコープで観測した。
【0058】
[例1]
例1では、従来の書き込み・読み出し法によってデータの書き込みおよび読み出しを行った。例1において、状態Pr+および状態Pr-の書き込みには、それぞれ、図9(a)に示す4Vの2パルス、および図9(b)に示す−4Vの2パルスを印加した。また、読み出しには、図9(c)に示す3.5Vの2パルスを印加した。なお、例1では、書き込み電圧および読み出し電圧を、同じパルスを連続した2パルスの電圧としているが、単一のパルスであってもよい(以下の例においても同様である)。
【0059】
状態Pr+において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図9(d)に示し、状態Pr-において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図9(e)に示す。状態Pr+における出力電圧VOは、読み出しを10回行った後も、1回目の読み出しと同じく2Vで一定であり、MOSFETのOFF状態が安定に維持された。このことから、状態Pr+のメモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が、劣化することなく保持されていることが分かる。
【0060】
一方、状態Pr-における出力電圧VOは、何れの読み出しにおいてもMOSFETがON状態ではあったが、読み出し回数が増えるにつれて、出力電圧VOの変化が小さくなった。このことから、読み出しによって、メモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が劣化していることがわかる。
【0061】
[例2]
例2では、新規な書き込み方法を用いてデータの書き込みを行った。ただし、読み出しは、従来の方法と同じ方法で行った。例2では、強誘電体キャパシタを状態Pr+または状態Pr0とすることによって、書き込みを行った。状態Pr+の書き込みには、例1と同様に図9(a)に示す4Vの2パルスを用いた。一方、状態Pr0の書き込みには、図10(a)に示す、4Vのパルスとそれに続く−2.5Vのパルスからなるパルス列を用いた。読み出しでは、例1と同様に、図10(b)に示す3.5Vの2パルスを印加した。
【0062】
状態Pr0において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を、図10(c)に示す。例2においても、読み出し回数が増えるにつれて出力電圧の変化が小さくなった。このことから、従来の方法を用いた例1と同様に、例2においても、メモリ状態が劣化していることがわかる。しかし、例1に比べ、例2では、読み出しを繰り返すことによる出力電圧の変化の減少がゆるやかである。これは、状態Pr0を利用することによって、電荷ΔQ’が減少したためであると考えられる。
【0063】
[例3]
例3では、データの書き込み・読み込みの両方に新規な方法を用いた。例3では、強誘電体キャパシタを状態Pr+または状態Pr0とすることによって、書き込みを行った。状態Pr+の書き込みには、例1と同様に図11(a)に示す4Vの2パルスを用いた。一方、状態Pr0の書き込みには、図11(b)に示す、4Vのパルスとそれに続く−2.6Vのパルスからなるパルス列を用いた。読み出しは、図11(c)に示す、3.5Vのパルスとそれに続く−2.1Vのパルスからなるパルス列を2つ連続して印加することによって行った。なお、読み出し時に印加するパルス列は1つであってもよい。
【0064】
状態Pr+において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図11(d)に示し、状態Pr0において読み出し電圧を印加した際の出力電圧VOの変化を図11(e)に示す。状態Pr+における出力電圧VOは、読み出しを10回行った後も、1回目の読み出しと同じく約2Vでほぼ一定であり、MOSFETのOFF状態が安定に維持された。このことから、状態Pr+においては、メモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が劣化することなく保持されていることが分かる。
【0065】
また、状態Pr0における出力電圧VOは、読み出し回数が増えてもほとんど変化がなかった。このことから、状態Pr0のメモリ状態(強誘電体キャパシタの分極状態)が、劣化することなく保持されていることが分かる。このように、本発明の駆動方法を用いることによって、ほぼ非破壊の読み出しが可能である。
【0066】
次に、状態Pr+および状態Pr0において読み出しを行った後に、メモリ状態が読み出し前の状態に戻るかどうかを検証した。読み出しによるメモリ状態の劣化がなければ、非破壊読出しを何回も繰り返し続けることができる。具体的には、図7に示す回路において、端子75にオシロスコープを接続し、読み出し電圧VRと、読み出し電圧VRの印加によって誘電体キャパシタに蓄積された電荷量Qfとの関係を評価した。なお、強誘電体キャパシタに蓄積されている蓄積電荷Qfそのものは、原理的にオシロスコープでは簡単に観測できないので、読み出しによるその変化を測定した。つまり、オシロスコープで観測できるのは、読み出し前の蓄積電荷量から変化した電荷量QfOであるので、読み出し後もQfOがゼロであればメモリ状態は劣化していないといえる。
【0067】
読み出し電圧は、本来は矩形パルスであるが、オシロスコープで読みやすいように、図12に示す三角波に類似のパルスを読み出し電圧に用いた。但し、最大電圧および最小電圧は、図11の結果を踏まえて、それぞれ3.5Vおよび−2.1Vとした。
【0068】
状態Pr+における結果を図13(a)に示し、状態Pr0における結果を図13(b)に示す。いずれの場合も、読み出し電圧VRの印加によって、幅の小さいヒステリシスを描いており、電圧VRの印加後(読み出し後)も、電荷量QfOはゼロであった。このことから、本発明の方法によれば非破壊読み出しを繰り返し行えることが裏付けられた。
【0069】
図13(a)および(b)に示すように、VR−QfOのヒステリシスループで囲まれる面積は小さい。一般に、この面積は、1サイクルごとに消費されるエネルギー、すなわち、1サイクルごとに強誘電体膜内で熱として消費されるエネルギーを示している。この消費エネルギーが大きいと、強誘電体膜の劣化がより早く進行する。図2に示すように、ヒステリシスループの幅が広い状態を用いてデータの書き込み・読み出しを行う場合、強誘電体膜内におけるエネルギー損失が大きく、強誘電体膜の劣化が大きいと推測される。このことが、強誘電体メモリで実用上問題となっている疲労現象などを助長している可能性は充分にある。それに対して、本発明の方法では、書き込み・読出し共に強誘電体膜内のエネルギー消費量を小さくできるが、特に読み出しではそれを極端に小さくすることが可能であるので、強誘電体膜の寿命が延び、且つメモリ動作に必要な消費電力も少なくなると考えられる。
なお、上記本発明の読み出し方法および書き込み方法は、いずれか一方のみを用いても効果が得られるが、両方を用いることによってより高い効果が得られる(第2の駆動方法においても同様である)。
【0070】
[本発明の第2の強誘電体メモリ]
本発明の第2の強誘電体メモリは、複数のメモリセルと、複数のメモリセルのそれぞれに接続されるワード線ならびに第1および第2のビット線とを含む。本発明の強誘電体メモリの一例では、複数のメモリセルは、行方向および列方向にマトリックス状に配置される。そして、ワード線は、行ごとに配置され、第1および第2のビット線は列ごとに配置される。
【0071】
メモリセルは、半導体と、半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、半導体上に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜)と、半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタと、書き込み用トランジスタとを含む。強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含む。強誘電体キャパシタの第1の電極は、ゲート絶縁膜上に直接積層されているか、または、ゲート絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されている。このメモリセルは、別の観点では、第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含む強誘電体キャパシタと、その強誘電体キャパシタがゲート電極として機能する電界効果トランジスタと、書き込み用トランジスタとを備える。強誘電体キャパシタおよび電界効果トランジスタについては、第1の駆動方法で説明したものと同じであるため、重複する説明を省略する。
【0072】
強誘電体キャパシタの第2の電極は、ワード線に接続される。強誘電体キャパシタで制御される電界効果トランジスタのソース電極およびドレイン電極のうちの一方は、第2のビット線に接続されている。書き込み用トランジスタのゲート電極は、第1のビット線に接続されている。書き込み用トランジスタのソース電極およびドレイン電極は、その内の一方が強誘電体キャパシタの第1の電極に接続され、残りのもう一方が第2のビット線に接続されている。書き込み用トランジスタには、MIS−FETなどの電界効果トランジスタを用いることができる。
【0073】
上記メモリセルの一例は、図6に示したメモリセルである。したがって、上述した事項と重複する説明は省略する。本発明の第2の強誘電体メモリの駆動方法(本発明の第2の駆動方法)において、第1の分極状態および第2の分極状態を書き込む原理、ならびに読み出しの原理については、第1の駆動方法と同じである。第2の駆動方法では、ワード線およびビット線に印加する電圧パルスを工夫することによって、特定のメモリセルに書き込みを行う際に、書き込みを行わない他のメモリセルの強誘電体膜の分極状態の劣化をより少なくしている。
【0074】
第2の駆動方法で駆動される強誘電体メモリについて、一例の構成を図14に示す。なお、図14では、2行×2列の部分のみを示すが、実際には、より多数のメモリセルがマトリクス状に配置される。図14では、i番目の行でj番目の列にあるメモリセルを、Cijで示す。
【0075】
各メモリセルは、FET20と、強誘電体キャパシタ30と、書き込み用トランジスタ60とを含む回路として模式的に表される。i番目の行には、ワード線WLiが配置されている。また、j番目の列には、第1のビット線Bj1と第2のビット線Bj2とが配置されている。
【0076】
書き込み用トランジスタ60のゲート電極は、第1のビット線Bj1に接続されている。書き込み用トランジスタ60のソース電極およびドレイン電極は、いずれか一方が第2のビット線Bj2に接続され、他方が強誘電体キャパシタ30の第1の電極(FET20側の電極)に接続されている。FET20のソース電極およびドレイン電極は、いずれか一方が第2のビット線Bj2に接続され、他方がアースに接続されている。なお、図14でアース電位としている箇所の電位は、読み出し時に強誘電体膜の分極状態に応じた電流がソース−ドレイン間を流れる電位であればよく、必ずしもアース電位である必要はない。また、本発明の効果が得られる限り、ワード線およびビット線の通常時の電位は、アース電位でなくてもよい。
【0077】
[第1の駆動方法の一例の課題]
図14のメモリセルC11に対して、上述した第1の駆動方法で説明した電圧パルスの一例を用いて書き込みおよび読み出しを行う場合について説明する。メモリセルC11の読み出しおよび書き込みの際に印加する読み出し電圧および書き込み電圧を、図15(a)〜(c)に示す。
【0078】
図15(a)に示すように、読み出しは、第2のビット線B12に電圧VDを印加した状態で、ワード線WL1に読み出し電圧を印加することによって行われる。読み出し電圧は、電圧R1ボルトのパルスと、それに続く電圧R2ボルトのパルスとによって構成される。読み出しの際には、書き込み用トランジスタ60はオフの状態にある。
【0079】
分極状態Pr+の書き込みは、図15(b)に示すように、第1のビット線B11の電位を高レベルにして書き込み用トランジスタ60をオン状態にするとともに、ワード線WL1に第1の書き込み電圧を印加することによって行われる。分極状態Pr0の書き込みは、図15(c)に示すように、第1のビット線B11の電位を高レベルにして書き込み用トランジスタ60をオン状態にするとともに、ワード線WL1に第2の書き込み電圧を印加することによって行われる。
【0080】
ワード線WL1以外のワード線の電位は、アース電位である。また、第1のビット線の電位は、メモリセルC11の書き込み用トランジスタ60をオンにするとき以外は、アース電位である。また、第2のビット線の電位は、メモリセルC11を読み出すとき以外はアース電位である。
【0081】
メモリセルC11に対して読み出しおよび書き込みを行う場合、それによってメモリセルC11以外のメモリセルのメモリ状態が変化することをできるだけ抑制する必要がある。読み出し電圧の印加によるメモリ状態の劣化は、メモリセルC11に加えて、読み出しが選択されていないメモリセルに対しても少ないことは、上述した通りである。
【0082】
メモリセルC11に対して書き込みを行う場合でも、メモリセルC11と異なる行に存在するメモリセルCmj(mは1以外の数)の強誘電体キャパシタCfのメモリ状態は変化しない。これは、メモリセルCmjに接続されるワード線WLmおよび第2のビット線Bj2の電位がアース電位であるためである。
【0083】
一方、メモリセルC11に対して書き込みを行う場合、メモリセルC11と同じ行に存在するメモリセルC1n(nは1以外の数)の強誘電体キャパシタCfには、何らかの電圧が印加される。これは、書き込み用トランジスタ60はオフ状態であるが、ワード線WL1に印加された電圧が、アース電位にあるFET20のソース電極またはドレイン電極と、強誘電体キャパシタCfの第2の電極との間に印加されるためである。そのため、書き込みがされるメモリセルC11と同じ行にあるメモリセルC1nは、ディスターブを受ける場合がある。それらを、以下の表1にまとめる。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、メモリセルC1nが分極状態Pr0である場合にワード線WL1にPr0の書き込み電圧が印加されても、メモリセルC1nの分極状態は変わらない。しかし、メモリセルC1nが分極状態Pr0である場合にワード線WL1にPr+の書き込み電圧が印加されると、ランダムな分極状態に近い分極状態Pr0が、正電圧の印加によって徐々に分極状態Pr+に近づいて劣化していく。仮にメモリセルC1nの強誘電体キャパシタCfに印加される電圧が強誘電体キャパシタCfの抗電圧未満であったとしても、メモリセルC1nの分極状態は徐々に遷移し、ランダムに近い初期の状態とは異なる正の残留分極の状態となる。そのため、メモリ状態を明確に見分けることが難しくなる。
【0086】
メモリセルC1nが分極状態Pr+である場合にワード線WL1にPr0の書き込み電圧が印加される場合、メモリセルC1nの書き込み用トランジスタ60はオフであり、また、Pr0の書き込み電圧パルスは読み出し電圧パルスと同形である。そのため、この場合には非破壊読出し動作と同じ動作が行われるため、メモリセルC1nにおけるディスターブは実質的に問題とならない。
【0087】
[本発明の第2の駆動方法]
上述したように、第1の駆動方法で説明した書き込み電圧をワード線に印加することによって書き込みを行う場合には、書き込みが行われるメモリセル以外のメモリセルのメモリ状態が劣化する場合がある。そのような劣化を避けるために、第2の駆動方法では、ワード線およびビット線に印加する電圧に工夫を加えている。
【0088】
本発明の第2の駆動方法は、本発明の第2の強誘電体メモリを駆動する方法である。この駆動方法は、書き込みを行うステップと、読み出しを行うステップとを含む。
【0089】
書き込みを行うステップでは、強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、強誘電体キャパシタの2つの電極間(第1の電極と第2の電極との間)に印加することによって書き込みを行う。
【0090】
また、読み出しを行うステップでは、強誘電体キャパシタの第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行う。そして、電圧R1およびR2は、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たす。強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと電圧R1とは、通常、|R1|>|Vc|の関係を満たす。本発明の効果が得られる限り、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧R2の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。読み出し電圧の各パルスの長さおよび大きさの一例は、第1の駆動方法で説明した一例と同じである。
【0091】
第2の分極状態(Pr0)は、第1の分極状態(Pr+またはPr-)よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態である。第1の分極状態および第2の分極状態については、第1の駆動方法で説明したため、重複する説明を省略する。
【0092】
第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトの第1のパルスP11とそれに続く電圧W12ボルトの第2のパルスP12とを含む第1書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、第1のパルスP11が印加されているときだけ書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、強誘電体キャパシタの2つの電極間(第1の電極と第2の電極との間)に印加される。
【0093】
第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む第2書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、第1および第2のパルスP21およびP22が印加されているときに書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、強誘電体キャパシタの2つの電極間(第1の電極と第2の電極との間)に印加される。そして、強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと、電圧W11、W12、W21およびW22とは、|W11|>|W12|、W11・W12<0、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす。電圧W12の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧W12の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。電圧W22の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。一例では、電圧W22の絶対値は、抗電圧Vcの絶対値より大きい。第2の書き込み電圧の各パルスの長さおよび大きさの一例は、第1の駆動方法で説明した一例と同じである。
【0094】
電圧W11およびW12の大きさ、および第1および第2のパルスP11およびP12のパルス幅は、強誘電体膜の材料や厚さに応じて設定される。一例では、第1および第2のパルスP11およびP12のパルス幅は、それぞれ独立に、0.001マイクロ秒〜100マイクロ秒(たとえば0.001マイクロ秒〜1マイクロ秒)の範囲にある。また、一例では、電圧W11は0.3ボルト〜5ボルト(たとえば0.5ボルト〜3ボルト)の範囲にあり、電圧W12は−0.01ボルト〜−4ボルト(たとえば−0.1ボルト〜−2.5ボルト)の範囲にある。通常、電圧W12の絶対値は、電圧W11の絶対値の0.002倍〜0.8倍(たとえば0.4倍〜0.75倍)の範囲にある。
【0095】
第2の駆動方法では、第1書き込み電圧パルス、第2書き込み電圧パルスおよび読み出し電圧パルスから選ばれる2つ以上の電圧パルスが同じ電圧パルスであってもよい。たとえば、第1書き込み電圧パルスと第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスであってもよい。また、読み出し電圧パルスと第1書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスであってもよい。さらに、読み出し電圧パルスと第1書き込み電圧パルスと第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスであってもよい。これらのパルスを同じにすることによって、回路全体の構成を簡略化できる。
【0096】
[第2の駆動方法の一例]
以下に、図14のメモリセルC11に、第2の駆動方法で読み出しおよび書き込みを行う場合の一例について説明する。この一例では、読み出しは、図16(a)に示すように、第1の駆動方法の一例で説明したのと同じ方法で行われる。第2の駆動方法によってメモリセルC11の強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr+にする場合のワード線WL1および第1のビット線B11の電位を図16(b)に示す。
【0097】
メモリセルC11の強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr+にする場合、第1のビット線B11には、書き込み用トランジスタ60をオン状態にするための電圧VBボルトが印加される。ワード線WL1には、電圧W11ボルトの第1のパルスP11と、電圧W12ボルトの第2のパルスP12とからなる第1書き込み電圧パルスが印加される。この第1書き込み電圧パルスは、読み出し電圧パルスと同形である。電圧W11ボルトの第1のパルスP11は、書き込み用トランジスタ60がオン状態となっている時間よりも時間tlagだけ長く印加される。電圧W12ボルトの第2のパルスP12は、書き込み用トランジスタ60がオフ状態となってから印加される。そのため、強誘電体キャパシタCfの2つの電極間に印加されるのは、第1のパルスP11の電圧W11ボルトと、CfとFET20の入力容量CSとで決まる第2のパルスP12の電圧W12ボルトによる分圧、W12Cs/(Cs+Cf)ボルトである。この電圧W12ボルトの分圧W12Cs/(Cs+Cf)ボルトは、W12ボルトより低く、読み出し時の電圧R2ボルトのパルスを印加したときのCfにかかる分圧R2Cs/(Cs+Cf)ボルトに近いため、メモリ状態は劣化しにくい。そのため、強誘電体キャパシタCfの2つの電極間に印加される電圧パルスは、実質的に第1の駆動方法と同じであると考えられる。その結果、強誘電体キャパシタCfは分極状態Pr+とされる。なお、tlagは回路応答の遅れを考慮した時間であり、本発明の効果が得られる限り時間tlagがなくてもよい。
【0098】
第2の駆動方法において、メモリセルC11の強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr0にする場合のワード線WL1および第1のビット線B11の電位を図16(c)に示す。強誘電体キャパシタCfを分極状態Pr0にする場合、第1のビット線B11には、書き込み用トランジスタ60をオン状態にするための電圧VBボルトが印加される。ワード線WL1には、電圧W21ボルトの第1のパルスP21と、電圧W22ボルトの第2のパルスP22とからなる第2書き込み電圧パルスが印加される。第1のパルスP21および第2のパルスP22は、書き込み用トランジスタ60がオン状態になっているときに印加される。このように、分極状態Pr0にする書き込み方法は、第1の駆動方法と同じである。
【0099】
この一例では、第1書き込み電圧パルスと第2書き込み電圧パルスと読み出し電圧のパルス列とは、同形のパルス列であり、電圧W11と電圧W21と電圧R1とは等しく、電圧W12と電圧W22とは等しく、電圧W12あるいは電圧W22と電圧R2とは近い。したがって、メモリセルC11に分極状態Pr+を書き込む際に、メモリセルC11以外の第1行目のメモリセルC1nには、非破壊読み出し動作を行う読み出し電圧パルスとほぼ同形のパルスが印加される。そのため、読み出し動作を行ったときと同様に、メモリセルC1nの分極状態はほとんど変化しない。
【0100】
このように、第2の駆動方法によれば、メモリセルC11に分極状態Pr+を書き込む際に生じる他のメモリセルのメモリ状態の劣化を抑制できる。また、読み出しおよび分極状態Pr0の書き込みによるメモリ状態の劣化が少ないことは、上述した通りである。
【0101】
なお、以上の説明では、読み出しの際に状態Pr+と状態Pr0との間の容量の相違が出るようにデータの書き込みを行う例について説明したが、状態Pr-と状態Pr0との間の容量の相違が出るようにデータの書き込みを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、強誘電体メモリおよびその駆動方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】(a)本発明の第1の強誘電体メモリの構造を示す断面図、および(b)それを模式的に示す回路図である。
【図2】強誘電体膜の分極−電圧特性の一例を示す図である。
【図3】本発明の強誘電体メモリにおける電圧印加方法の一例を示す模式図である。
【図4】強誘電体キャパシタについて、状態Pr-および状態Pr0における分極−電圧特性を示す図である。
【図5】(a)本発明の第1の駆動方法において、強誘電体膜を状態Pr0とするための書き込み電圧の一例を示す図、および(b)本発明の第1の駆動方法における読み出し電圧の一例を示す図である。
【図6】メモリ装置を構成するメモリセルの一例を示す図である。
【図7】実施例で用いた評価回路の構成を模式的に示す図である。
【図8】実施例における評価方法を示す図である。
【図9】従来の書き込み・読み出し方法と、その結果を示す図である。
【図10】本発明の書き込み方法と、その結果を示す図である。
【図11】本発明の書き込み・読み出し方法と、その結果を示す図である。
【図12】実施例において評価に用いた読み出し電圧を示す図である。
【図13】図12の読み出し電圧VRの印加時における誘電体キャパシタに蓄積された電荷量の変化分QfOを示す図である。
【図14】本発明の第2の駆動方法で駆動される強誘電体メモリの一例を示す回路図である。
【図15】本発明の第1の駆動方法によって読み出しおよび書き込みを行う場合の電圧パルス一例を示す図である。
【図16】本発明の第2の駆動方法によって読み出しおよび書き込みを行う場合の電圧パルスの一例を示す図である。
【図17】従来の駆動方法における書き込み電圧および読み出し電圧の例を示す図である。
【図18】従来の駆動方法における課題を説明する図である。
【符号の説明】
【0104】
10 メモリ素子
11 半導体(半導体基板)
12 絶縁膜
13 第1の電極
14 強誘電体膜
15 第2の電極
16 ソース電極
17 ドレイン電極
18 絶縁膜
20 電界効果トランジスタ(FET)
30 強誘電体キャパシタ
60 書き込み用トランジスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリの駆動方法であって、
前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、
前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されており、
前記駆動方法は、前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含み、
前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たし、
前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態であり、
前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含み、
前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含み、
前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと前記電圧W11、W21およびW22とが、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす、強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項2】
前記第2の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値は、前記第1の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値の0倍〜0.4倍の範囲にある請求項1に記載の、強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項3】
半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリであって、
前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、
前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されており、
請求項1または2に記載の駆動方法で駆動される強誘電体メモリ。
【請求項4】
複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのそれぞれに接続されるワード線ならびに第1および第2のビット線とを含む強誘電体メモリであって、
前記メモリセルは、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタと、書き込み用トランジスタとを含み、
前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、
前記第1の電極は、前記絶縁膜上に直接積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されており、
前記第2の電極は、前記ワード線に接続され、
前記ソース電極およびドレイン電極のうちの一方が、前記第2のビット線に接続され、
前記書き込み用トランジスタのゲート電極は前記第1のビット線に接続され、
前記書き込み用トランジスタのソース電極およびドレイン電極は、その内の一方が前記第1の電極に接続され、残りのもう一方が前記第2のビット線に接続されている、強誘電体メモリ。
【請求項5】
請求項4に記載の強誘電体メモリの駆動方法であって、
前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、
前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含み、
前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たし、
前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態であり、
前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトの第1のパルスP11とそれに続く電圧W12ボルトの第2のパルスP12とを含む第1書き込み電圧パルスを前記第2の電極に印加すると共に、前記第1のパルスP11が印加されているときだけ前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加され、
前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む第2書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、前記第1および第2のパルスP21およびP22が印加されているときに前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、第1の電極と第2の電極との間に印加され、
前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと、前記電圧W11、W12、W21およびW22とが、|W11|>|W12|、W11・W12<0、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす、強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項6】
前記第1書き込み電圧パルスと前記第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスである請求項5に記載の強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項7】
前記読み出し電圧パルスと前記第1書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスである請求項5に記載の強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項8】
前記読み出し電圧パルスと前記第1書き込み電圧パルスと前記第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスである請求項5に記載の強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項1】
半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリの駆動方法であって、
前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、
前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されており、
前記駆動方法は、前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含み、
前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たし、
前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態であり、
前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトのパルスを含み、
前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含み、
前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと前記電圧W11、W21およびW22とが、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす、強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項2】
前記第2の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値は、前記第1の分極状態の無電界下における分極(μC/cm2)の絶対値の0倍〜0.4倍の範囲にある請求項1に記載の、強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項3】
半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタとを含む強誘電体メモリであって、
前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、
前記第1の電極は、前記絶縁膜上に積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されており、
請求項1または2に記載の駆動方法で駆動される強誘電体メモリ。
【請求項4】
複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルのそれぞれに接続されるワード線ならびに第1および第2のビット線とを含む強誘電体メモリであって、
前記メモリセルは、半導体と、前記半導体に接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体上に形成された絶縁膜と、前記半導体のチャネルを制御できる強誘電体キャパシタと、書き込み用トランジスタとを含み、
前記強誘電体キャパシタは、積層された第1の電極、強誘電体膜および第2の電極を含み、
前記第1の電極は、前記絶縁膜上に直接積層されているか、または、前記絶縁膜上に積層されたゲート電極に接続されており、
前記第2の電極は、前記ワード線に接続され、
前記ソース電極およびドレイン電極のうちの一方が、前記第2のビット線に接続され、
前記書き込み用トランジスタのゲート電極は前記第1のビット線に接続され、
前記書き込み用トランジスタのソース電極およびドレイン電極は、その内の一方が前記第1の電極に接続され、残りのもう一方が前記第2のビット線に接続されている、強誘電体メモリ。
【請求項5】
請求項4に記載の強誘電体メモリの駆動方法であって、
前記強誘電体膜を第1の分極状態にする第1の書き込み電圧、または、前記強誘電体膜を第2の分極状態にする第2の書き込み電圧を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加することによって書き込みを行うステップと、
前記第2の電極に、電圧R1ボルトのパルスとそれに続く電圧R2ボルトのパルスとを含む読み出し電圧パルスを印加することによって読み出しを行うステップとを含み、
前記電圧R1およびR2が、|R1|>|R2|、およびR1・R2<0の関係を満たし、
前記第2の分極状態は、前記第1の分極状態よりも無電界下における分極の大きさが小さい状態であり、
前記第1の書き込み電圧は、電圧W11ボルトの第1のパルスP11とそれに続く電圧W12ボルトの第2のパルスP12とを含む第1書き込み電圧パルスを前記第2の電極に印加すると共に、前記第1のパルスP11が印加されているときだけ前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加され、
前記第2の書き込み電圧は、電圧W21ボルトの第1のパルスP21とそれに続く電圧W22ボルトの第2のパルスP22とを含む第2書き込み電圧パルスを第2の電極に印加すると共に、前記第1および第2のパルスP21およびP22が印加されているときに前記書き込み用トランジスタをオン状態にすることによって、第1の電極と第2の電極との間に印加され、
前記強誘電体キャパシタの抗電圧Vcボルトと、前記電圧W11、W12、W21およびW22とが、|W11|>|W12|、W11・W12<0、|W21|>|W22|、W21・W22<0、および|W21|≧|W11|>|Vc|の関係を満たす、強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項6】
前記第1書き込み電圧パルスと前記第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスである請求項5に記載の強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項7】
前記読み出し電圧パルスと前記第1書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスである請求項5に記載の強誘電体メモリの駆動方法。
【請求項8】
前記読み出し電圧パルスと前記第1書き込み電圧パルスと前記第2書き込み電圧パルスとが同じ電圧パルスである請求項5に記載の強誘電体メモリの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−204596(P2008−204596A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2531(P2008−2531)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】
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