弾性波デバイス及び電子部品
【課題】所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることが可能な弾性波デバイスを提供する。
【解決手段】圧電基板10には、予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために第1の電極である櫛歯電極20aと、第2の電極(櫛歯電極20b)とが設けられ、エネルギー閉じ込め機構(金属膜23)はこれら第1の電極及び第2の電極が設けられた領域に前記弾性波を閉じ込める効果を高める役割を果たす。そして、第1の電極(櫛歯電極20a)の各電極指22aは、前記予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波によって圧電基板10に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に配置されている。
【解決手段】圧電基板10には、予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために第1の電極である櫛歯電極20aと、第2の電極(櫛歯電極20b)とが設けられ、エネルギー閉じ込め機構(金属膜23)はこれら第1の電極及び第2の電極が設けられた領域に前記弾性波を閉じ込める効果を高める役割を果たす。そして、第1の電極(櫛歯電極20a)の各電極指22aは、前記予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波によって圧電基板10に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー閉じ込め現象を利用した弾性波デバイスに係り、特定のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末などの小型高周波通信機の周波数制御や周波数選択に際し、エネルギー閉じ込め型の共振子(以下、弾性波デバイスともいう)を用いた発振器やフィルタを採用しているものがある。
【0003】
エネルギー閉じ込め型の弾性波デバイスは、水晶などの圧電体内に厚み振動のエネルギーを閉じ込めることにより発生する共振を利用して必要な周波数応答を得ている。この種の弾性波デバイスで利用される厚み振動は、その圧電体の遮断周波数(カットオフ周波数)近傍における高周波数側の周波数にて振動する。このため、例えば図14に示す弾性波共振子8のように板状の圧電体81の上面及び下面の中央部に励振用の電極82、83を設け、この電極82、83の質量負荷効果によって当該電極を設けた領域の厚み振動の共振周波数を低下させて周辺部の厚み振動の遮断周波数よりも低くすることにより当該電極を設けた領域内への厚み振動エネルギーの閉じ込めを実現している。
【0004】
こうした弾性波デバイス内では、圧電体81の材料や厚さ、電極82、83のサイズなどに対応して複数のエネルギー閉じ込めモードが発生し得る。このため、当該弾性波デバイスを例えば共振子として利用する場合には電極の寸法を小さくすることにより、共振子内にエネルギー閉じ込めモードが1個だけ発生するようにしている。
【0005】
一方で携帯電話などの小型化や使用帯域の高周波数化に伴い、これら弾性波デバイスを構成する圧電体81や電極82、83も薄型化、小型化が進んだ結果、例えば所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを1つだけ発生させることに対して加工精度の確保が難しくなってきており、製品のコストを上昇させる要因となってきている。
【0006】
ここで特許文献1には、圧電体上に電極を分割して配置し、当該電極の配置に対応した次数のエネルギー閉じ込めモードを容易に励振させるように、当該電極のサイズや圧電体の厚さ、エネルギー閉じ込め領域とその周囲との間の遮断周波数を設定した圧電振動子が記載されている。しかしながら、この圧電振動子では分割された各電極を圧電振動子の上下面に正確に対向させる必要があり、圧電振動子の小型化が進むと加工精度の確保が難しくなる。
【0007】
また特許文献2には互いの電極指を交差させた櫛歯電極を圧電体の表裏両面に設けると共に、圧電体を挟んで対向する電極指が各々の同相となるように配置することにより、電極指の配置周期に対応したオーバートーンモードを励振させるオーバートーン振動子が記載され、特許文献3には同じく圧電体の表裏両面に櫛歯電極を設けて、圧電体の表裏両面における振動を結合共振させた端面反射型の振動子が記載されている。これらの振動子は、エネルギー閉じ込めモードに着目した技術ではなく、また振動子の小型化に伴い、圧電体を挟んで各電極指を正確に対向させることも難しくなってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−168409号公報:請求項1、5頁左上欄5行目〜左下欄5行目、6頁右上欄14行目〜左下欄1行目、図 1、5
【特許文献2】特開昭63−274207号公報:請求項1、図 1
【特許文献3】特開2002−368567号公報:請求項1、3、段落0019〜0023、図 1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることが可能な弾性波デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る弾性波デバイスは、エネルギー閉じ込め型の弾性波デバイスにおいて、
圧電基板と、
この圧電基板に予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために当該圧電基板の一面側に設けられ、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなる第1の電極と、
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために前記圧電基板に設けられた第2の電極と、を備え、
前記第1の電極の各電極指は、前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波によって圧電基板に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
前記弾性波デバイスは、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記第2の電極は、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなり、この第2の電極の各電極指は、前記誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極の電極指とは誘起電荷の極性が異なる位置に配置されていること。
(b)前記第2の電極は、前記圧電基板を挟んで前記第1の電極が設けられた領域と対向する領域に配置された電極膜であること。
(c)前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記圧電基板を挟んで第1の電極が設けられている領域と対向する領域に設けられた金属膜を備えること。
(d)前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられた圧電基板の表面、またはこの表面と対向する裏面に、前記第1の電極の輪郭形状に沿って形成された溝部または切り欠き部を備えること。
(e)前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられている領域に、当該第1の電極を覆うように設けられ、または前記圧電基板を挟んでこの領域と対向する領域に設けられた絶縁体膜を備えること。
また、他の発明に係わる電子部品は、上述のいずれかに記載の弾性波デバイスを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧電基板の板面に、予め設定した次数のエネルギー閉じ込めモードにより誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電化の極性が同じになる位置に櫛歯電極の電極指を配置しているので、所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることができる。この結果、他の次数のエネルギー閉じ込めモードの励振を抑え、スプリアスが少なく選択性の高い周波数特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【図2】前記弾性波共振子の側面図である。
【図3】エネルギー閉じ込めモードが励振される条件を示したスペクトラム図である。
【図4】前記弾性波共振子の作用を示す説明図である。
【図5】圧電基板の変位の経時変化と電極指の配置位置との関係を示す説明図である。
【図6】前記弾性波共振子の周波数特性図である。
【図7】実施の形態に係る弾性波共振子の温度特性を示す説明図である。
【図8】他の例に係わる弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【図9】前記他の例に係る弾性波共振子の側面図である。
【図10】さらに他の例に係る弾性波共振子の側面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【図12】前記第2の実施の形態に係る弾性波共振子の作用を示す説明図である。
【図13】前記第2の実施の形態に係わる弾性波共振子の他の例の作用を示す説明図である。
【図14】従来のエネルギー閉じ込め型の弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1、図2を参照しながら本実施の形態に係る弾性波デバイスの一例である弾性波共振子1の構成について説明する。図1の斜視図に示すように弾性波共振子1は、小片状に加工された圧電基板10の中央部の一面側(以下、表面側とする)に設けられた櫛歯電極部2と、当該圧電基板10を挟んでこの櫛歯電極部2と対向する位置に設けられた金属膜23と、を備えている。
圧電基板10は例えばATカットの水晶からなり、X-Z’面は櫛歯電極20a、20bや金属膜23を配置可能な面積を備え、Y’方向の高さがhの小片状の基板として構成されている。
【0015】
櫛歯電極部2には、第1の電極である櫛歯電極20aと第2の電極である櫛歯電極20bとが設けられ、各櫛歯電極20a、20bは、例えばアルミなどの金属膜からなるバスバー21a、21bに対して、同じくアルミなどの細長い電極指22a、22bを多数本接続した構成となっている。これら2つの櫛歯電極20a、20bは、相手側のバスバー21a、21bへ向けて電極指22a、22bを伸ばすようにして配置されており、双方のバスバー21a、21bから伸び出した電極指22a、22bが例えば1本ずつ互い違いとなるように交差指状に配置されている。
一般に櫛歯電極20a、20bは、圧電体の表面にSAW(Surface Acoustic Wave)を励振するための励振電極として用いられることが多いが、本例に係る櫛歯電極20a、20bは圧電基板10内にエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために設けられている点に特徴を有する。
【0016】
エネルギー閉じ込めモードを励振するという前記の機能を果たすため、各櫛歯電極20a、20bは、エネルギー閉じ込めモードを形成する圧電基板10内の弾性波の進行方向と直交する方向に向けて電極指22a、22bを伸ばすように配置されている。例えば図1、図2に示した弾性波共振子1は圧電基板10のZ’軸方向に向けて厚み振動、例えば厚みすべり振動を伝播させてエネルギー閉じ込めモードを励振させる例について示しており、この場合には電極指22a、22bはZ’軸方向と直交する方向、即ちX軸方向と平行になるように圧電基板10の表面に配置されている。各電極指22a、22bの幅や電極指22a、22b同士の配置間隔などについては後で詳しく説明する。
【0017】
図14に示したように従来の弾性波共振子8は、圧電体81を挟んで表裏両面に電極82、83を設け、これらの電極82、83の質量負荷効果を利用して当該電極82、83の設けられた領域内にエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するものである。これに対して本実施の形態の弾性波共振子1は、櫛歯電極部2内の櫛歯電極20a、20bが従来の弾性波共振子8の電極82、83に対応しており、当該櫛歯電極20a、20bの質量負荷効果により共振周波数を低下させて、櫛歯電極20a、20bを設けた領域(エネルギー閉じ込め領域3)内への厚みすべり波のエネルギー閉じ込めを実現している。
【0018】
金属膜23は、圧電基板10を挟んで、第1の電極である櫛歯電極20aが設けられている領域と対向する領域に配置されている。既述のように第1の電極である櫛歯電極20aと第2の電極である櫛歯電極20bとは、電極指22a、22bが交差指状に配置されていることから、本例において両櫛歯電極20a、20bの配置領域はほぼ重なっている。
【0019】
当該金属膜23は、質量負荷効果によりエネルギー閉じ込め領域3内にエネルギー閉じ込めモードの弾性波を閉じ込める効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構としての役割を果たす。先に説明したように、両櫛歯電極20a、20bはそれ自体の質量負荷効果により、エネルギー閉じ込め領域3内に厚みすべり波のエネルギー閉じ込めを実現しているところ、金属膜23は、その質量負荷効果により、エネルギー閉じ込め領域3内へのエネルギー閉じ込めの作用を向上させる役割を果たす。
【0020】
金属膜23は、アルミ膜などの金属から構成され、例えば対向する櫛歯電極部2の輪郭形状、即ちエネルギー閉じ込め領域3の平面形状に対応して四角形に形成されている。この金属膜23は、例えば接地されていてもよいし、電気的に浮いた状態となっていてもよい。
【0021】
櫛歯電極部2と金属膜23とは、上面側から見たとき互いの輪郭形状を上下に重ね合うようにして配置され、これらの櫛歯電極部2、金属膜23の輪郭で囲まれた圧電基板10内の領域がエネルギー閉じ込め領域3となる(図4(a)参照)。
また図1に示すように各櫛歯電極20a、20bのバスバー21a、21bは共振回路等に接続される端子となっている。
【0022】
以上に説明した構成を備えた弾性波共振子1の櫛歯電極部2や金属膜23が設けられていないエネルギー閉じ込め領域3の外側において、例えば基本モードの厚みすべり波についての圧電基板10のカットオフ周波数がf0’であるとする。このとき、エネルギー閉じ込め領域3に櫛歯電極部2及び金属膜23を設けると、その質量負荷効果によりエネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数はf0(<f0’)まで低下する。ここでエネルギー閉じ込め領域3の外側のカットオフ周波数f0’は圧電基板10の材質やその厚さhなどにより決定される一方、エネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数f0はこれらの変数に加え、櫛歯電極20a、20bや金属膜23の材質や厚さによって決定される。そしてこれらカットオフ周波数f0’、f0はシミュレータなどにより簡単に求めることができる。
【0023】
このとき、上述の2つカットオフ周波数(f0、f0’)の間の周波数は、エネルギー閉じ込め領域3内ではカットオフ周波数以下であるため励振可能である一方、エネルギー閉じ込め領域3の外部ではカットオフ周波数より大きいため励振できない。そこでこれら2つのカットオフ周波数の間の周波数にて共振条件が満たされるとエネルギー閉じ込めモードの弾性波が形成されることになる。各カットオフ周波数は、圧電基板10の厚さhに反比例するので、圧電基板10を薄くするほど共振周波数は高くなる。
【0024】
図3は厚みすべり波の基本波について、エネルギー閉じ込めモードが励振される条件を示したスペクトラム図である。縦軸のΨは、「(fR−f0)/(f0’―f0)」で表される基準化された周波数であり、横軸の変数「a(Δ)0.5/(2h)」のうち、aは厚みすべり波の伝播方向におけるエネルギー閉じ込め領域3の幅(櫛歯電極部2及び金属膜23の幅)、hは圧電基板10の厚さである。またΔは「(f0’―f0)/f0’」で表される周波数低下量である。資料の便宜上、図3は圧電基板10としてセラミックを用いた場合の例を示しているが、水晶の場合であっても横軸の変数内の係数に(図3の例では「1/2」)に異方係数を導入すれば同様の結果が得られるので、以下の説明は水晶の場合にも同様に成り立つ。
【0025】
圧電基板10の材質や厚さh、エネルギー閉じ込め領域3の幅aの設計値に基づいて、各カットオフ周波数f0’、f0が決まると、図3の横軸の変数の値が定まる。この変数値から縦軸と平行に直線を伸ばし、この直線が各エネルギー閉じ込めモードのスペクトラム曲線と交わる交点のΨの値を読み取ることによって共振周波数fRが求められる。図3に示すように横軸の変数を大きくしていくと、エネルギー閉じ込め領域3には、中央位置(「a/2」の位置)から見て圧電基板10の変位が対称となる対称モード(S0、S1、S2、…)と、圧電基板10の変位が反対称となる反対称モード(A0、A1、A2、…)とが変位の山の数が小さい順に交互に現れる。
【0026】
ここで圧電基板10に変位を与えるとエネルギー閉じ込め領域3には誘起電荷が誘起され、圧電基板10の変位の大きさと方向に応じ、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる一の領域と、誘起電荷の絶対値の分布が極大となり、且つ、前記一の領域とは誘起電荷の極性が異なる他の領域とが交互に誘起される。図3には、各エネルギー閉じ込めモードのスペクトラム曲線の横に、誘起電荷分布の模式図を併せて示してある。但し図14に示した従来の弾性波共振子8では、正電荷と負電荷とが打ち消しあって反対称モードは励振されないため、対称モード(S0、S1、S2、…)のみが励振される。
【0027】
図3を見ても分かるように、横軸の変数の値を大きくしていくと、エネルギー閉じ込め領域3内には複数のエネルギー閉じ込めモードが励振されてしまうことから、スプリアスの多い弾性波共振子となってしまう。そこで従来の弾性波共振子8では、スプリアスの発生しない横軸の変数の値が小さな領域を利用するように圧電体81の厚さや電極82、83のサイズを決定していた。しかしながら例えば高周波の共振周波数を得るために圧電体81を薄くしていくと、図3の横軸の値が大きくならないように電極82、83を小さくしなければならない。このため電極82、83の大きさを独立した設計変数とすることが難しく、弾性波共振子8は高周波になるほど製造が困難になる傾向があった。
【0028】
これに対して本実施の形態の弾性波共振子1では、櫛歯電極20a、20bを設けることにより、例えば図4(b)にある時点における圧電基板10の変位を模式的に示すように、所定の位置に変位の山が形成され、隣り合う山同士の間に、当該山とは変位の方向が反対の谷が形成される。そして、これらの山、谷に対応して、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」の領域と、これとは誘起電荷の極性が異なる「谷」の領域とが形成される。
【0029】
本例では図4(a)に示すように、圧電基板10(エネルギー閉じ込め領域3)内の誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘電電荷の極性が同じ位置(図4(b)において変位の山が形成されている位置)に第1の電極を成す櫛歯電極20aの電極指22aが配置されている。また、第2の電極を成す櫛歯電極20bの電極指22bについては、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aとは誘起電荷の極性が異なる位置に配置されている。
【0030】
ここで図4(a)には弾性波共振子1の縦断側面図内に、圧電基板10に形成される例えば基本モードの厚みすべり振動の変位を模式的に示してある。但し、当該厚みすべり波の変位の方向は、実際にはX軸に平行となる。また図4(b)は当該圧電基板10のエネルギー閉じ込め領域3内に形成されるエネルギー閉じ込めモードの変位の方向及び変位量の分布を模式的に示している。
【0031】
このように誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aを配し、この第1の電極の電極指22aの配置位置における誘起電荷の絶対値の分布とは、誘起電荷の極性が異なる位置に第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bを配することにより、予め設定した次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振することができる。
【0032】
即ち、これらの櫛歯電極20a、20bは、電極指22を設けた位置、及び本数に対応した次数であって、共振周波数fRを持つものを強勢に励振させることができる。そして本例に係る弾性波共振子1は、エネルギー閉じ込め領域3の特定の位置に外部からエネルギーを供給し、エネルギーが供給されている位置に対応する次数のエネルギー閉じ込めモードを励振させるので、対称モードのみならず反対称モードも励振させることができる。
【0033】
図3に示すようにn次の対称モードSn、反対称モードAnのエネルギー閉じ込めモードは、各々n+1個の誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」を有している。また、対称モードSnについては前記「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」をn個有している。従って幅aのエネルギー閉じ込め領域3にn次の対称モードを励振させる場合には、第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aがn+1本、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bがn本の合計2n+1本の電極指22a、22bが櫛歯電極部2に配置される。
【0034】
また反対称モードAnについては前記「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」をn+1個有している。従って、同じく幅aのエネルギー閉じ込め領域3にn次の反対称モードを励振させる場合には、第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aがn+1本、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bがn+1本の合計2n+2本の電極指22a、22bが櫛歯電極部2に配置される。
【0035】
例えば対称モードSnを励振する場合を例にとると、図4(a)に示すように電極幅の中心位置(「a/2」の位置)は、エネルギー閉じ込め領域3内に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」に相当するので、当該位置には第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aを配す。一方、この中心位置と隣り合う領域には、前記「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」に相当する位置が存在するので、当該「谷」となる位置に第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bを配す。
【0036】
こうして誘起電荷の絶対値の分布が「山、谷」となる位置に交互に電極指22a、22bを配し、合計2n+1本の電極指22を等間隔で配置していく。また反対称モードAnを励振する場合には、電極幅の中心位置を挟んで誘起電荷の絶対値の分布の「山」と「谷」とが並ぶので、この並びに対応させて各櫛歯電極20a、20bの電極指22a、22bを交合に等間隔で、合計2n+2本配置する。
【0037】
このとき各電極指22a、22bは、例えばその幅方向の(図4(a)中のZ’方向)の中心位置が誘起電荷の絶対値の分布の「山」や「谷」の中心位置と一致するように配置される。また電極指22a、22bの幅は、交互に配置された電極指22a、22b同士が接触しないように互いに間隔を空けつつ、誘起電荷の絶対値の分布の「山」や「谷」が形成される領域の幅(図4(b)中に示す電極幅方向の幅)の例えば半分以上を覆うことが可能な幅とする場合などが考えられる。
【0038】
ここで図4(b)に示した、ある時点におけるエネルギー閉じ込め領域3の変位(当該領域3内における誘起電荷の分布に対応する)は、図5に模式的に示すように(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(4)→…と、周期的に変化する。この変化に伴ってある時点(例えば図5の(1))に変位の「山」(誘起電荷の分布の「山」)であった領域は、「1/2fR」経過後(例えば図5の(5))には変位の「谷」(誘起電荷の分布の「谷」)となっている。
【0039】
このように図4(b)に示した変位(誘起電荷の分布)の山、谷が形成される位置は周期的に入れ替わる。従って、本実施の形態において第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aが配置される「誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に」とは、ある時点(例えば図4(b)に示した時点)において誘起電荷が正であり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置を意味している。
【0040】
また、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bが配置される「前記誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極の電極指とは誘起電荷の極性が異なる位置」とは、上述の時点(図4(b)に示した時点)において誘起電荷が負であり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置を意味している。
【0041】
なお、上述の設計法はエネルギー閉じ込めモードを利用した共振子の設計法の一例を概略的に示したものであり、本実施の形態に係る弾性波共振子1は当該法により設計されたものに限定されるものではない。例えばシミュレータなどを用いて、設計上の共振周波数「fR」にてエネルギー閉じ込めモードが励振される条件を探索し、エネルギー閉じ込め領域3のサイズやエネルギー閉じ込めモードの次数を決定してもよいことは勿論である。またこのとき有限要素法などの任意形状の周波数特性が計算できる構造シミュレータを利用すれば簡単に設計を行うことができる。
また櫛歯電極20a、20bや金属膜23はフォトリソグラフィを利用した周知のエッチングなどにより形成することができる。
【0042】
上述の構成を備えた弾性波共振子1によれば、予め設定された次数のエネルギー共振モードを選択的に励振させることができるので、図6に模式的に示すように共振周波数fRを中心としてスプリアスが少なく、選択性の高い周波数特性が得られる。この弾性波共振子1の特性を利用することにより周波数制御や周波数選択を行うことができる。
【0043】
例えば予め行ったシミュレーションでは、電極指22a、22bの本数N=50としたとき、共振周波数において圧電基板10には他の周波数に比較してエネルギー閉じ込め領域3には50倍近い電荷が誘起された。またN=100としたときには100倍近い電荷が誘起されることが分かり、予め設定されたエネルギー閉じ込めモードが励振されやすい状態が形成されることを確認している。
【0044】
ここで従来の弾性波共振子8では、圧電体81内を伝播する弾性波の伝播速度が圧電体の温度変化に応じて変化することにより、共振周波数が変化してしまうことが知られている。これに対して本例の弾性波共振子1では所定の位置に電極指22a、22bを配置することにより、圧電基板10の温度変化にかかわらずエネルギー閉じ込め領域3内には、ほぼ同じ変位分布を持つエネルギー閉じ込めモードが形成される。このため圧電体81の温度変化に応じて成り行きでエネルギー閉じ込めモードが形成される従来の弾性波共振子8と比較して温度変化に対する安定性が高い。
【0045】
図7は本実施の形態に係る弾性波共振子1及び従来の弾性波共振子8の温度特性をシミュレーションで比較した結果を模式的に表した図であり、横軸は基準温度に対する温度差、縦軸は共振周波数に対する周波数変化の大きさを示している。図7に示すように、破線で示した従来の弾性波共振子8の温度特性に比べ、実線で示した本例の弾性波共振子1は温度変化に対する共振周波数の安定性が高い。
【0046】
本実施の形態に係る弾性波共振子1によれば以下の効果がある。圧電基板10の板面に、予め設定した次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波により誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じになる位置に対応させて櫛歯電極20a、20bの電極指22a、22bを配置しているので、所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることができる。この結果、他の次数のエネルギー閉じ込めモードの励振を抑え、スプリアスが少なく選択性の高い周波数特性が得られる。
ここで本弾性波共振子1はSAW共振子ではないので、櫛歯電極部2の左右側方にグレーティング電極などからなる反射器を設ける必要はなく、その分だけ弾性波共振子1を小型化できる。
【0047】
また所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させ、その他の次数のエネルギー閉じ込めモードの励振を抑えることができる。このため複数のエネルギー閉じ込めモードの励振を避けるため、圧電体81の薄型化に伴って電極82、83までも小型化しなければならないといった従来の弾性波共振子8で見られた設計上の制約が発生せず、共振周波数を高周波化しても弾性波共振子1のサイズ設定の自由度が高い。
【0048】
また櫛歯電極部2と協働してエネルギー閉じ込め領域3内に弾性波を閉じ込めるエネルギー閉じ込め機構の構成は、図1の弾性波共振子1に示した金属膜23を設ける場合に限定されない。例えば図8は弾性波共振子1aのように、エネルギー閉じ込め領域3のZ’方向の左右外側位置に溝部11を設けた例示している。このように櫛歯電極部2(第1の電極部である櫛歯電極20aが含まれている)の輪郭形状に沿って形成されている溝部11を設けることにより、当該溝部11の領域のカットオフ周波数f0’をエネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数f0よりも高くしてエネルギー閉じ込めを実現してもよい。
【0049】
さらにエネルギー閉じ込めモード機構の構成は既述の溝部11の例に限られず、図9に示すようにエネルギー閉じ込め領域3の左右外側位置に切り欠き部12を設けてカットオフ周波数f0’を高くしてもよい。本例においても切り欠き部12は、櫛歯電極部2(第1の電極部である櫛歯電極20aが含まれている)の輪郭形状に沿って形成されている。
【0050】
これら溝部11、切り欠き部12は櫛歯電極20a、20bが形成される面の反対側の裏面に設ける場合に限定されるものではなく、櫛歯電極20a、20bと同じ表面側に形成してもよい。例えば櫛歯電極20a、20bが形成されていない裏面側に検知対象物質を吸着する吸着層を設け、検知対象物の吸着に起因する共振周波数の低下を検出するQCM(Quartz Crystal Microbalance)などを構成する場合には、吸着層を設ける面を平坦にすることが好ましい場合がある。一例を挙げると、マイクロ流路内を流れる試料を計測する場合などに前記QCMを適用する場合には、吸着層を設けた面に溝部11や切り欠き部12を形成しないことによって流路の圧力損失の増大を抑え、流路設計に際して高い自由度を確保できる。
【0051】
この他、図10に示した弾性波共振子1cは、櫛歯電極部2(第1の電極部である櫛歯電極20aが含まれている)を覆うようにして絶縁体膜13を設けることにより、エネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数f0を低下させてエネルギー閉じ込めを実現している。この例でもエネルギー閉じ込め領域3の裏面側に金属膜23などが存在せず、平坦な面が形成されるので、当該面に検知対象物の吸着層を設けてQCMなどを形成するのに好適な構成となっている。なお、絶縁体膜13は、弾性波共振子1cの裏面に設けてもエネルギー閉じ込め機構としての機能を発揮することができることは勿論である。
【0052】
以上、図4、図8〜図10には、各種のエネルギー閉じ込め機構を設けた例を示したが、エネルギー閉じ込め機構として設けられる金属膜23、溝部11、切り欠き部12、絶縁体膜13などは単体で設けられる場合に限られず、これらを組み合わせてもよい。一方で櫛歯電極20a、20bが弾性波共振子1への質量負荷効果を発揮することは既に説明した通りである。従ってこれらのエネルギー閉じ込め機構は必須の構成要素ではなく、金属膜23、溝部11、切り欠き部12、絶縁体膜13などを設けずに、櫛歯電極20a、20bのみによってエネルギー閉じ込め領域3内へのエネルギー閉じ込めを実現してもよい。
【0053】
次に、第2の実施の形態に係わる弾性波共振子1dについて説明する。先に説明した弾性波共振子1では、図4(a)、図4(b)に示すように第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aは、予め設定したエネルギー閉じ込めモードを励振させたとき、エネルギー閉じ込め領域3に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」の位置(互いに誘起電荷の極性が同じ位置)に配置される。また、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bは、前記誘起電荷の絶対値の分布が「山」の位置とは誘起電荷の極性が異なる「谷」の位置に配置される。
【0054】
このとき図5を用いて説明したように、誘起電荷の分布の「山、谷」は、周期的に入れ替わるので、これらいずれか一方の位置にのみ電極指22aを配置して、第1の電極を成す櫛歯電極20aを設ける場合であってもエネルギー閉じ込めモードを励振することが可能であることを確認している。
【0055】
例えば、図11、図12(a)に示した弾性波共振子1dの櫛歯電極部2aには、図1、図4(a)に示した櫛歯電極部2内の第1の電極である櫛歯電極20aのみが配置されている。そして圧電基板10を挟んで、この櫛歯電極20aが配置されている領域と対向する領域に配置されている電極膜23a(図4(a)の金属膜23に相当する)を第2の電極としている点が、第1の実施の形態の弾性波共振子1と異なる。
【0056】
この場合には、櫛歯電極20a(第1の電極)と電極膜23a(第2の電極)との間でエネルギー閉じ込め領域3内にエネルギー閉じ込めモードを励振されるので、これらの電極20a、23aが、従来の弾性波共振子8(図14)の電極82、83に相当する。従って図11に示すように本例では、共振回路等に接続される端子は櫛歯電極20aのバスバー21a、及び電極膜23aに設けられる。
【0057】
このとき本例の弾性波共振子1dでは、図12(a)、図12(b)に示すように櫛歯電極20aの電極指22aは、ある時点において、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」に対応する位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置にのみ配置されている。そして、この「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」に相当する位置には電極指が配置されていない。
【0058】
ここで図5を用いて説明したように、誘起電荷の絶対値の分布が「山、谷」となる位置は周期的に入れ替わるので、図12(b)に示した時点において、誘起電荷の絶対値の分布が「谷」となる位置にのみ電極指22bを配置した櫛歯電極20bを第1の電極として、第2の電極である電極膜23aとの間にエネルギー閉じ込めモードを励振させてもよいことは勿論である。
【0059】
また、第1の電極である櫛歯電極20aに対して、圧電基板10を挟んで対向する位置に配置される第2の電極は、図12に示した電極膜23aの例に限定されるものではない。例えば図13(a)に示すように、圧電基板10を挟んで第1の電極(櫛歯電極20a)と対向させて櫛歯電極20bを、第2の電極として設けてもよい。この場合には図13(b)に示した時点において、誘起電荷の絶対値の分布が「谷」となる位置に、当該櫛歯電極20bの電極指22bが配置される。
【0060】
これら図12(a)、図13(a)に示した弾性波デバイス1d、1eについても櫛歯電極20a、20b、電極膜23aのみをエネルギー閉じ込めモード機構として利用する場合に限られない。溝部11(図8)や切り欠き部12(図9)を設けたり、櫛歯電極20a、20bを絶縁体膜13(図10)で覆ったりする各種のエネルギー閉じ込め機構を適用してもよい。ここで圧電基板10の裏面に絶縁体膜13を設ける場合には、図12(a)に示した電極膜23aや図13(a)に示した櫛歯電極20bを覆うように絶縁体膜13が設けられる。
【0061】
さらに、図4、図8〜図10、図12〜図13に示した各弾性波デバイス1、1a〜1eにおいて、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山、谷」に相当する全ての位置に櫛歯電極20a、20bの電極指20a、20bを設けることは必須でない。必要に応じてこれらの電極指20a、20bの一部の配置を省略してもよい。
【0062】
またエネルギー閉じ込めモードを励振するための弾性波は、厚みすべり振動やSH波(厚みねじれ振動)に限られるものではなく、例えばラム波を利用してエネルギー閉じ込めモードを励振する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。さらには、圧電基板10となる圧電体も水晶に限られるものではなく、他の種類の圧電材料を採用してもよいことは勿論である。
【0063】
以上に説明した各弾性波共振子1、1a〜1eは例えば周知のコルピッツ回路内に組み込まれることにより発振器として利用され、またラダーフィルターなどに組み込まれる共振子などとして利用され、各種の電子部品に組み込まれる。
【符号の説明】
【0064】
1、1a〜1e
弾性波共振子
10 圧電基板
11 溝部
12 切り欠き部
13 絶縁体膜
2、2a 櫛歯電極部
20a、20b
櫛歯電極
21a、21b
バスバー
22a、22b
電極指
23 金属膜
23a 電極膜
3 エネルギー閉じ込め領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー閉じ込め現象を利用した弾性波デバイスに係り、特定のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末などの小型高周波通信機の周波数制御や周波数選択に際し、エネルギー閉じ込め型の共振子(以下、弾性波デバイスともいう)を用いた発振器やフィルタを採用しているものがある。
【0003】
エネルギー閉じ込め型の弾性波デバイスは、水晶などの圧電体内に厚み振動のエネルギーを閉じ込めることにより発生する共振を利用して必要な周波数応答を得ている。この種の弾性波デバイスで利用される厚み振動は、その圧電体の遮断周波数(カットオフ周波数)近傍における高周波数側の周波数にて振動する。このため、例えば図14に示す弾性波共振子8のように板状の圧電体81の上面及び下面の中央部に励振用の電極82、83を設け、この電極82、83の質量負荷効果によって当該電極を設けた領域の厚み振動の共振周波数を低下させて周辺部の厚み振動の遮断周波数よりも低くすることにより当該電極を設けた領域内への厚み振動エネルギーの閉じ込めを実現している。
【0004】
こうした弾性波デバイス内では、圧電体81の材料や厚さ、電極82、83のサイズなどに対応して複数のエネルギー閉じ込めモードが発生し得る。このため、当該弾性波デバイスを例えば共振子として利用する場合には電極の寸法を小さくすることにより、共振子内にエネルギー閉じ込めモードが1個だけ発生するようにしている。
【0005】
一方で携帯電話などの小型化や使用帯域の高周波数化に伴い、これら弾性波デバイスを構成する圧電体81や電極82、83も薄型化、小型化が進んだ結果、例えば所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを1つだけ発生させることに対して加工精度の確保が難しくなってきており、製品のコストを上昇させる要因となってきている。
【0006】
ここで特許文献1には、圧電体上に電極を分割して配置し、当該電極の配置に対応した次数のエネルギー閉じ込めモードを容易に励振させるように、当該電極のサイズや圧電体の厚さ、エネルギー閉じ込め領域とその周囲との間の遮断周波数を設定した圧電振動子が記載されている。しかしながら、この圧電振動子では分割された各電極を圧電振動子の上下面に正確に対向させる必要があり、圧電振動子の小型化が進むと加工精度の確保が難しくなる。
【0007】
また特許文献2には互いの電極指を交差させた櫛歯電極を圧電体の表裏両面に設けると共に、圧電体を挟んで対向する電極指が各々の同相となるように配置することにより、電極指の配置周期に対応したオーバートーンモードを励振させるオーバートーン振動子が記載され、特許文献3には同じく圧電体の表裏両面に櫛歯電極を設けて、圧電体の表裏両面における振動を結合共振させた端面反射型の振動子が記載されている。これらの振動子は、エネルギー閉じ込めモードに着目した技術ではなく、また振動子の小型化に伴い、圧電体を挟んで各電極指を正確に対向させることも難しくなってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−168409号公報:請求項1、5頁左上欄5行目〜左下欄5行目、6頁右上欄14行目〜左下欄1行目、図 1、5
【特許文献2】特開昭63−274207号公報:請求項1、図 1
【特許文献3】特開2002−368567号公報:請求項1、3、段落0019〜0023、図 1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることが可能な弾性波デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る弾性波デバイスは、エネルギー閉じ込め型の弾性波デバイスにおいて、
圧電基板と、
この圧電基板に予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために当該圧電基板の一面側に設けられ、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなる第1の電極と、
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために前記圧電基板に設けられた第2の電極と、を備え、
前記第1の電極の各電極指は、前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波によって圧電基板に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
前記弾性波デバイスは、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記第2の電極は、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなり、この第2の電極の各電極指は、前記誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極の電極指とは誘起電荷の極性が異なる位置に配置されていること。
(b)前記第2の電極は、前記圧電基板を挟んで前記第1の電極が設けられた領域と対向する領域に配置された電極膜であること。
(c)前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記圧電基板を挟んで第1の電極が設けられている領域と対向する領域に設けられた金属膜を備えること。
(d)前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられた圧電基板の表面、またはこの表面と対向する裏面に、前記第1の電極の輪郭形状に沿って形成された溝部または切り欠き部を備えること。
(e)前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられている領域に、当該第1の電極を覆うように設けられ、または前記圧電基板を挟んでこの領域と対向する領域に設けられた絶縁体膜を備えること。
また、他の発明に係わる電子部品は、上述のいずれかに記載の弾性波デバイスを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧電基板の板面に、予め設定した次数のエネルギー閉じ込めモードにより誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電化の極性が同じになる位置に櫛歯電極の電極指を配置しているので、所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることができる。この結果、他の次数のエネルギー閉じ込めモードの励振を抑え、スプリアスが少なく選択性の高い周波数特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【図2】前記弾性波共振子の側面図である。
【図3】エネルギー閉じ込めモードが励振される条件を示したスペクトラム図である。
【図4】前記弾性波共振子の作用を示す説明図である。
【図5】圧電基板の変位の経時変化と電極指の配置位置との関係を示す説明図である。
【図6】前記弾性波共振子の周波数特性図である。
【図7】実施の形態に係る弾性波共振子の温度特性を示す説明図である。
【図8】他の例に係わる弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【図9】前記他の例に係る弾性波共振子の側面図である。
【図10】さらに他の例に係る弾性波共振子の側面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【図12】前記第2の実施の形態に係る弾性波共振子の作用を示す説明図である。
【図13】前記第2の実施の形態に係わる弾性波共振子の他の例の作用を示す説明図である。
【図14】従来のエネルギー閉じ込め型の弾性波共振子の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1、図2を参照しながら本実施の形態に係る弾性波デバイスの一例である弾性波共振子1の構成について説明する。図1の斜視図に示すように弾性波共振子1は、小片状に加工された圧電基板10の中央部の一面側(以下、表面側とする)に設けられた櫛歯電極部2と、当該圧電基板10を挟んでこの櫛歯電極部2と対向する位置に設けられた金属膜23と、を備えている。
圧電基板10は例えばATカットの水晶からなり、X-Z’面は櫛歯電極20a、20bや金属膜23を配置可能な面積を備え、Y’方向の高さがhの小片状の基板として構成されている。
【0015】
櫛歯電極部2には、第1の電極である櫛歯電極20aと第2の電極である櫛歯電極20bとが設けられ、各櫛歯電極20a、20bは、例えばアルミなどの金属膜からなるバスバー21a、21bに対して、同じくアルミなどの細長い電極指22a、22bを多数本接続した構成となっている。これら2つの櫛歯電極20a、20bは、相手側のバスバー21a、21bへ向けて電極指22a、22bを伸ばすようにして配置されており、双方のバスバー21a、21bから伸び出した電極指22a、22bが例えば1本ずつ互い違いとなるように交差指状に配置されている。
一般に櫛歯電極20a、20bは、圧電体の表面にSAW(Surface Acoustic Wave)を励振するための励振電極として用いられることが多いが、本例に係る櫛歯電極20a、20bは圧電基板10内にエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために設けられている点に特徴を有する。
【0016】
エネルギー閉じ込めモードを励振するという前記の機能を果たすため、各櫛歯電極20a、20bは、エネルギー閉じ込めモードを形成する圧電基板10内の弾性波の進行方向と直交する方向に向けて電極指22a、22bを伸ばすように配置されている。例えば図1、図2に示した弾性波共振子1は圧電基板10のZ’軸方向に向けて厚み振動、例えば厚みすべり振動を伝播させてエネルギー閉じ込めモードを励振させる例について示しており、この場合には電極指22a、22bはZ’軸方向と直交する方向、即ちX軸方向と平行になるように圧電基板10の表面に配置されている。各電極指22a、22bの幅や電極指22a、22b同士の配置間隔などについては後で詳しく説明する。
【0017】
図14に示したように従来の弾性波共振子8は、圧電体81を挟んで表裏両面に電極82、83を設け、これらの電極82、83の質量負荷効果を利用して当該電極82、83の設けられた領域内にエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するものである。これに対して本実施の形態の弾性波共振子1は、櫛歯電極部2内の櫛歯電極20a、20bが従来の弾性波共振子8の電極82、83に対応しており、当該櫛歯電極20a、20bの質量負荷効果により共振周波数を低下させて、櫛歯電極20a、20bを設けた領域(エネルギー閉じ込め領域3)内への厚みすべり波のエネルギー閉じ込めを実現している。
【0018】
金属膜23は、圧電基板10を挟んで、第1の電極である櫛歯電極20aが設けられている領域と対向する領域に配置されている。既述のように第1の電極である櫛歯電極20aと第2の電極である櫛歯電極20bとは、電極指22a、22bが交差指状に配置されていることから、本例において両櫛歯電極20a、20bの配置領域はほぼ重なっている。
【0019】
当該金属膜23は、質量負荷効果によりエネルギー閉じ込め領域3内にエネルギー閉じ込めモードの弾性波を閉じ込める効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構としての役割を果たす。先に説明したように、両櫛歯電極20a、20bはそれ自体の質量負荷効果により、エネルギー閉じ込め領域3内に厚みすべり波のエネルギー閉じ込めを実現しているところ、金属膜23は、その質量負荷効果により、エネルギー閉じ込め領域3内へのエネルギー閉じ込めの作用を向上させる役割を果たす。
【0020】
金属膜23は、アルミ膜などの金属から構成され、例えば対向する櫛歯電極部2の輪郭形状、即ちエネルギー閉じ込め領域3の平面形状に対応して四角形に形成されている。この金属膜23は、例えば接地されていてもよいし、電気的に浮いた状態となっていてもよい。
【0021】
櫛歯電極部2と金属膜23とは、上面側から見たとき互いの輪郭形状を上下に重ね合うようにして配置され、これらの櫛歯電極部2、金属膜23の輪郭で囲まれた圧電基板10内の領域がエネルギー閉じ込め領域3となる(図4(a)参照)。
また図1に示すように各櫛歯電極20a、20bのバスバー21a、21bは共振回路等に接続される端子となっている。
【0022】
以上に説明した構成を備えた弾性波共振子1の櫛歯電極部2や金属膜23が設けられていないエネルギー閉じ込め領域3の外側において、例えば基本モードの厚みすべり波についての圧電基板10のカットオフ周波数がf0’であるとする。このとき、エネルギー閉じ込め領域3に櫛歯電極部2及び金属膜23を設けると、その質量負荷効果によりエネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数はf0(<f0’)まで低下する。ここでエネルギー閉じ込め領域3の外側のカットオフ周波数f0’は圧電基板10の材質やその厚さhなどにより決定される一方、エネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数f0はこれらの変数に加え、櫛歯電極20a、20bや金属膜23の材質や厚さによって決定される。そしてこれらカットオフ周波数f0’、f0はシミュレータなどにより簡単に求めることができる。
【0023】
このとき、上述の2つカットオフ周波数(f0、f0’)の間の周波数は、エネルギー閉じ込め領域3内ではカットオフ周波数以下であるため励振可能である一方、エネルギー閉じ込め領域3の外部ではカットオフ周波数より大きいため励振できない。そこでこれら2つのカットオフ周波数の間の周波数にて共振条件が満たされるとエネルギー閉じ込めモードの弾性波が形成されることになる。各カットオフ周波数は、圧電基板10の厚さhに反比例するので、圧電基板10を薄くするほど共振周波数は高くなる。
【0024】
図3は厚みすべり波の基本波について、エネルギー閉じ込めモードが励振される条件を示したスペクトラム図である。縦軸のΨは、「(fR−f0)/(f0’―f0)」で表される基準化された周波数であり、横軸の変数「a(Δ)0.5/(2h)」のうち、aは厚みすべり波の伝播方向におけるエネルギー閉じ込め領域3の幅(櫛歯電極部2及び金属膜23の幅)、hは圧電基板10の厚さである。またΔは「(f0’―f0)/f0’」で表される周波数低下量である。資料の便宜上、図3は圧電基板10としてセラミックを用いた場合の例を示しているが、水晶の場合であっても横軸の変数内の係数に(図3の例では「1/2」)に異方係数を導入すれば同様の結果が得られるので、以下の説明は水晶の場合にも同様に成り立つ。
【0025】
圧電基板10の材質や厚さh、エネルギー閉じ込め領域3の幅aの設計値に基づいて、各カットオフ周波数f0’、f0が決まると、図3の横軸の変数の値が定まる。この変数値から縦軸と平行に直線を伸ばし、この直線が各エネルギー閉じ込めモードのスペクトラム曲線と交わる交点のΨの値を読み取ることによって共振周波数fRが求められる。図3に示すように横軸の変数を大きくしていくと、エネルギー閉じ込め領域3には、中央位置(「a/2」の位置)から見て圧電基板10の変位が対称となる対称モード(S0、S1、S2、…)と、圧電基板10の変位が反対称となる反対称モード(A0、A1、A2、…)とが変位の山の数が小さい順に交互に現れる。
【0026】
ここで圧電基板10に変位を与えるとエネルギー閉じ込め領域3には誘起電荷が誘起され、圧電基板10の変位の大きさと方向に応じ、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる一の領域と、誘起電荷の絶対値の分布が極大となり、且つ、前記一の領域とは誘起電荷の極性が異なる他の領域とが交互に誘起される。図3には、各エネルギー閉じ込めモードのスペクトラム曲線の横に、誘起電荷分布の模式図を併せて示してある。但し図14に示した従来の弾性波共振子8では、正電荷と負電荷とが打ち消しあって反対称モードは励振されないため、対称モード(S0、S1、S2、…)のみが励振される。
【0027】
図3を見ても分かるように、横軸の変数の値を大きくしていくと、エネルギー閉じ込め領域3内には複数のエネルギー閉じ込めモードが励振されてしまうことから、スプリアスの多い弾性波共振子となってしまう。そこで従来の弾性波共振子8では、スプリアスの発生しない横軸の変数の値が小さな領域を利用するように圧電体81の厚さや電極82、83のサイズを決定していた。しかしながら例えば高周波の共振周波数を得るために圧電体81を薄くしていくと、図3の横軸の値が大きくならないように電極82、83を小さくしなければならない。このため電極82、83の大きさを独立した設計変数とすることが難しく、弾性波共振子8は高周波になるほど製造が困難になる傾向があった。
【0028】
これに対して本実施の形態の弾性波共振子1では、櫛歯電極20a、20bを設けることにより、例えば図4(b)にある時点における圧電基板10の変位を模式的に示すように、所定の位置に変位の山が形成され、隣り合う山同士の間に、当該山とは変位の方向が反対の谷が形成される。そして、これらの山、谷に対応して、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」の領域と、これとは誘起電荷の極性が異なる「谷」の領域とが形成される。
【0029】
本例では図4(a)に示すように、圧電基板10(エネルギー閉じ込め領域3)内の誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘電電荷の極性が同じ位置(図4(b)において変位の山が形成されている位置)に第1の電極を成す櫛歯電極20aの電極指22aが配置されている。また、第2の電極を成す櫛歯電極20bの電極指22bについては、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aとは誘起電荷の極性が異なる位置に配置されている。
【0030】
ここで図4(a)には弾性波共振子1の縦断側面図内に、圧電基板10に形成される例えば基本モードの厚みすべり振動の変位を模式的に示してある。但し、当該厚みすべり波の変位の方向は、実際にはX軸に平行となる。また図4(b)は当該圧電基板10のエネルギー閉じ込め領域3内に形成されるエネルギー閉じ込めモードの変位の方向及び変位量の分布を模式的に示している。
【0031】
このように誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aを配し、この第1の電極の電極指22aの配置位置における誘起電荷の絶対値の分布とは、誘起電荷の極性が異なる位置に第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bを配することにより、予め設定した次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振することができる。
【0032】
即ち、これらの櫛歯電極20a、20bは、電極指22を設けた位置、及び本数に対応した次数であって、共振周波数fRを持つものを強勢に励振させることができる。そして本例に係る弾性波共振子1は、エネルギー閉じ込め領域3の特定の位置に外部からエネルギーを供給し、エネルギーが供給されている位置に対応する次数のエネルギー閉じ込めモードを励振させるので、対称モードのみならず反対称モードも励振させることができる。
【0033】
図3に示すようにn次の対称モードSn、反対称モードAnのエネルギー閉じ込めモードは、各々n+1個の誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」を有している。また、対称モードSnについては前記「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」をn個有している。従って幅aのエネルギー閉じ込め領域3にn次の対称モードを励振させる場合には、第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aがn+1本、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bがn本の合計2n+1本の電極指22a、22bが櫛歯電極部2に配置される。
【0034】
また反対称モードAnについては前記「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」をn+1個有している。従って、同じく幅aのエネルギー閉じ込め領域3にn次の反対称モードを励振させる場合には、第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aがn+1本、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bがn+1本の合計2n+2本の電極指22a、22bが櫛歯電極部2に配置される。
【0035】
例えば対称モードSnを励振する場合を例にとると、図4(a)に示すように電極幅の中心位置(「a/2」の位置)は、エネルギー閉じ込め領域3内に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」に相当するので、当該位置には第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aを配す。一方、この中心位置と隣り合う領域には、前記「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」に相当する位置が存在するので、当該「谷」となる位置に第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bを配す。
【0036】
こうして誘起電荷の絶対値の分布が「山、谷」となる位置に交互に電極指22a、22bを配し、合計2n+1本の電極指22を等間隔で配置していく。また反対称モードAnを励振する場合には、電極幅の中心位置を挟んで誘起電荷の絶対値の分布の「山」と「谷」とが並ぶので、この並びに対応させて各櫛歯電極20a、20bの電極指22a、22bを交合に等間隔で、合計2n+2本配置する。
【0037】
このとき各電極指22a、22bは、例えばその幅方向の(図4(a)中のZ’方向)の中心位置が誘起電荷の絶対値の分布の「山」や「谷」の中心位置と一致するように配置される。また電極指22a、22bの幅は、交互に配置された電極指22a、22b同士が接触しないように互いに間隔を空けつつ、誘起電荷の絶対値の分布の「山」や「谷」が形成される領域の幅(図4(b)中に示す電極幅方向の幅)の例えば半分以上を覆うことが可能な幅とする場合などが考えられる。
【0038】
ここで図4(b)に示した、ある時点におけるエネルギー閉じ込め領域3の変位(当該領域3内における誘起電荷の分布に対応する)は、図5に模式的に示すように(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(4)→…と、周期的に変化する。この変化に伴ってある時点(例えば図5の(1))に変位の「山」(誘起電荷の分布の「山」)であった領域は、「1/2fR」経過後(例えば図5の(5))には変位の「谷」(誘起電荷の分布の「谷」)となっている。
【0039】
このように図4(b)に示した変位(誘起電荷の分布)の山、谷が形成される位置は周期的に入れ替わる。従って、本実施の形態において第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aが配置される「誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に」とは、ある時点(例えば図4(b)に示した時点)において誘起電荷が正であり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置を意味している。
【0040】
また、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bが配置される「前記誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極の電極指とは誘起電荷の極性が異なる位置」とは、上述の時点(図4(b)に示した時点)において誘起電荷が負であり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置を意味している。
【0041】
なお、上述の設計法はエネルギー閉じ込めモードを利用した共振子の設計法の一例を概略的に示したものであり、本実施の形態に係る弾性波共振子1は当該法により設計されたものに限定されるものではない。例えばシミュレータなどを用いて、設計上の共振周波数「fR」にてエネルギー閉じ込めモードが励振される条件を探索し、エネルギー閉じ込め領域3のサイズやエネルギー閉じ込めモードの次数を決定してもよいことは勿論である。またこのとき有限要素法などの任意形状の周波数特性が計算できる構造シミュレータを利用すれば簡単に設計を行うことができる。
また櫛歯電極20a、20bや金属膜23はフォトリソグラフィを利用した周知のエッチングなどにより形成することができる。
【0042】
上述の構成を備えた弾性波共振子1によれば、予め設定された次数のエネルギー共振モードを選択的に励振させることができるので、図6に模式的に示すように共振周波数fRを中心としてスプリアスが少なく、選択性の高い周波数特性が得られる。この弾性波共振子1の特性を利用することにより周波数制御や周波数選択を行うことができる。
【0043】
例えば予め行ったシミュレーションでは、電極指22a、22bの本数N=50としたとき、共振周波数において圧電基板10には他の周波数に比較してエネルギー閉じ込め領域3には50倍近い電荷が誘起された。またN=100としたときには100倍近い電荷が誘起されることが分かり、予め設定されたエネルギー閉じ込めモードが励振されやすい状態が形成されることを確認している。
【0044】
ここで従来の弾性波共振子8では、圧電体81内を伝播する弾性波の伝播速度が圧電体の温度変化に応じて変化することにより、共振周波数が変化してしまうことが知られている。これに対して本例の弾性波共振子1では所定の位置に電極指22a、22bを配置することにより、圧電基板10の温度変化にかかわらずエネルギー閉じ込め領域3内には、ほぼ同じ変位分布を持つエネルギー閉じ込めモードが形成される。このため圧電体81の温度変化に応じて成り行きでエネルギー閉じ込めモードが形成される従来の弾性波共振子8と比較して温度変化に対する安定性が高い。
【0045】
図7は本実施の形態に係る弾性波共振子1及び従来の弾性波共振子8の温度特性をシミュレーションで比較した結果を模式的に表した図であり、横軸は基準温度に対する温度差、縦軸は共振周波数に対する周波数変化の大きさを示している。図7に示すように、破線で示した従来の弾性波共振子8の温度特性に比べ、実線で示した本例の弾性波共振子1は温度変化に対する共振周波数の安定性が高い。
【0046】
本実施の形態に係る弾性波共振子1によれば以下の効果がある。圧電基板10の板面に、予め設定した次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波により誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じになる位置に対応させて櫛歯電極20a、20bの電極指22a、22bを配置しているので、所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させることができる。この結果、他の次数のエネルギー閉じ込めモードの励振を抑え、スプリアスが少なく選択性の高い周波数特性が得られる。
ここで本弾性波共振子1はSAW共振子ではないので、櫛歯電極部2の左右側方にグレーティング電極などからなる反射器を設ける必要はなく、その分だけ弾性波共振子1を小型化できる。
【0047】
また所望の次数のエネルギー閉じ込めモードを選択的に励振させ、その他の次数のエネルギー閉じ込めモードの励振を抑えることができる。このため複数のエネルギー閉じ込めモードの励振を避けるため、圧電体81の薄型化に伴って電極82、83までも小型化しなければならないといった従来の弾性波共振子8で見られた設計上の制約が発生せず、共振周波数を高周波化しても弾性波共振子1のサイズ設定の自由度が高い。
【0048】
また櫛歯電極部2と協働してエネルギー閉じ込め領域3内に弾性波を閉じ込めるエネルギー閉じ込め機構の構成は、図1の弾性波共振子1に示した金属膜23を設ける場合に限定されない。例えば図8は弾性波共振子1aのように、エネルギー閉じ込め領域3のZ’方向の左右外側位置に溝部11を設けた例示している。このように櫛歯電極部2(第1の電極部である櫛歯電極20aが含まれている)の輪郭形状に沿って形成されている溝部11を設けることにより、当該溝部11の領域のカットオフ周波数f0’をエネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数f0よりも高くしてエネルギー閉じ込めを実現してもよい。
【0049】
さらにエネルギー閉じ込めモード機構の構成は既述の溝部11の例に限られず、図9に示すようにエネルギー閉じ込め領域3の左右外側位置に切り欠き部12を設けてカットオフ周波数f0’を高くしてもよい。本例においても切り欠き部12は、櫛歯電極部2(第1の電極部である櫛歯電極20aが含まれている)の輪郭形状に沿って形成されている。
【0050】
これら溝部11、切り欠き部12は櫛歯電極20a、20bが形成される面の反対側の裏面に設ける場合に限定されるものではなく、櫛歯電極20a、20bと同じ表面側に形成してもよい。例えば櫛歯電極20a、20bが形成されていない裏面側に検知対象物質を吸着する吸着層を設け、検知対象物の吸着に起因する共振周波数の低下を検出するQCM(Quartz Crystal Microbalance)などを構成する場合には、吸着層を設ける面を平坦にすることが好ましい場合がある。一例を挙げると、マイクロ流路内を流れる試料を計測する場合などに前記QCMを適用する場合には、吸着層を設けた面に溝部11や切り欠き部12を形成しないことによって流路の圧力損失の増大を抑え、流路設計に際して高い自由度を確保できる。
【0051】
この他、図10に示した弾性波共振子1cは、櫛歯電極部2(第1の電極部である櫛歯電極20aが含まれている)を覆うようにして絶縁体膜13を設けることにより、エネルギー閉じ込め領域3のカットオフ周波数f0を低下させてエネルギー閉じ込めを実現している。この例でもエネルギー閉じ込め領域3の裏面側に金属膜23などが存在せず、平坦な面が形成されるので、当該面に検知対象物の吸着層を設けてQCMなどを形成するのに好適な構成となっている。なお、絶縁体膜13は、弾性波共振子1cの裏面に設けてもエネルギー閉じ込め機構としての機能を発揮することができることは勿論である。
【0052】
以上、図4、図8〜図10には、各種のエネルギー閉じ込め機構を設けた例を示したが、エネルギー閉じ込め機構として設けられる金属膜23、溝部11、切り欠き部12、絶縁体膜13などは単体で設けられる場合に限られず、これらを組み合わせてもよい。一方で櫛歯電極20a、20bが弾性波共振子1への質量負荷効果を発揮することは既に説明した通りである。従ってこれらのエネルギー閉じ込め機構は必須の構成要素ではなく、金属膜23、溝部11、切り欠き部12、絶縁体膜13などを設けずに、櫛歯電極20a、20bのみによってエネルギー閉じ込め領域3内へのエネルギー閉じ込めを実現してもよい。
【0053】
次に、第2の実施の形態に係わる弾性波共振子1dについて説明する。先に説明した弾性波共振子1では、図4(a)、図4(b)に示すように第1の電極(櫛歯電極20a)の電極指22aは、予め設定したエネルギー閉じ込めモードを励振させたとき、エネルギー閉じ込め領域3に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」の位置(互いに誘起電荷の極性が同じ位置)に配置される。また、第2の電極(櫛歯電極20b)の電極指22bは、前記誘起電荷の絶対値の分布が「山」の位置とは誘起電荷の極性が異なる「谷」の位置に配置される。
【0054】
このとき図5を用いて説明したように、誘起電荷の分布の「山、谷」は、周期的に入れ替わるので、これらいずれか一方の位置にのみ電極指22aを配置して、第1の電極を成す櫛歯電極20aを設ける場合であってもエネルギー閉じ込めモードを励振することが可能であることを確認している。
【0055】
例えば、図11、図12(a)に示した弾性波共振子1dの櫛歯電極部2aには、図1、図4(a)に示した櫛歯電極部2内の第1の電極である櫛歯電極20aのみが配置されている。そして圧電基板10を挟んで、この櫛歯電極20aが配置されている領域と対向する領域に配置されている電極膜23a(図4(a)の金属膜23に相当する)を第2の電極としている点が、第1の実施の形態の弾性波共振子1と異なる。
【0056】
この場合には、櫛歯電極20a(第1の電極)と電極膜23a(第2の電極)との間でエネルギー閉じ込め領域3内にエネルギー閉じ込めモードを励振されるので、これらの電極20a、23aが、従来の弾性波共振子8(図14)の電極82、83に相当する。従って図11に示すように本例では、共振回路等に接続される端子は櫛歯電極20aのバスバー21a、及び電極膜23aに設けられる。
【0057】
このとき本例の弾性波共振子1dでは、図12(a)、図12(b)に示すように櫛歯電極20aの電極指22aは、ある時点において、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山」に対応する位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置にのみ配置されている。そして、この「山」とは誘起電荷の極性が異なり、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「谷」に相当する位置には電極指が配置されていない。
【0058】
ここで図5を用いて説明したように、誘起電荷の絶対値の分布が「山、谷」となる位置は周期的に入れ替わるので、図12(b)に示した時点において、誘起電荷の絶対値の分布が「谷」となる位置にのみ電極指22bを配置した櫛歯電極20bを第1の電極として、第2の電極である電極膜23aとの間にエネルギー閉じ込めモードを励振させてもよいことは勿論である。
【0059】
また、第1の電極である櫛歯電極20aに対して、圧電基板10を挟んで対向する位置に配置される第2の電極は、図12に示した電極膜23aの例に限定されるものではない。例えば図13(a)に示すように、圧電基板10を挟んで第1の電極(櫛歯電極20a)と対向させて櫛歯電極20bを、第2の電極として設けてもよい。この場合には図13(b)に示した時点において、誘起電荷の絶対値の分布が「谷」となる位置に、当該櫛歯電極20bの電極指22bが配置される。
【0060】
これら図12(a)、図13(a)に示した弾性波デバイス1d、1eについても櫛歯電極20a、20b、電極膜23aのみをエネルギー閉じ込めモード機構として利用する場合に限られない。溝部11(図8)や切り欠き部12(図9)を設けたり、櫛歯電極20a、20bを絶縁体膜13(図10)で覆ったりする各種のエネルギー閉じ込め機構を適用してもよい。ここで圧電基板10の裏面に絶縁体膜13を設ける場合には、図12(a)に示した電極膜23aや図13(a)に示した櫛歯電極20bを覆うように絶縁体膜13が設けられる。
【0061】
さらに、図4、図8〜図10、図12〜図13に示した各弾性波デバイス1、1a〜1eにおいて、誘起電荷の絶対値の分布が極大となる「山、谷」に相当する全ての位置に櫛歯電極20a、20bの電極指20a、20bを設けることは必須でない。必要に応じてこれらの電極指20a、20bの一部の配置を省略してもよい。
【0062】
またエネルギー閉じ込めモードを励振するための弾性波は、厚みすべり振動やSH波(厚みねじれ振動)に限られるものではなく、例えばラム波を利用してエネルギー閉じ込めモードを励振する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。さらには、圧電基板10となる圧電体も水晶に限られるものではなく、他の種類の圧電材料を採用してもよいことは勿論である。
【0063】
以上に説明した各弾性波共振子1、1a〜1eは例えば周知のコルピッツ回路内に組み込まれることにより発振器として利用され、またラダーフィルターなどに組み込まれる共振子などとして利用され、各種の電子部品に組み込まれる。
【符号の説明】
【0064】
1、1a〜1e
弾性波共振子
10 圧電基板
11 溝部
12 切り欠き部
13 絶縁体膜
2、2a 櫛歯電極部
20a、20b
櫛歯電極
21a、21b
バスバー
22a、22b
電極指
23 金属膜
23a 電極膜
3 エネルギー閉じ込め領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー閉じ込め型の弾性波デバイスにおいて、
圧電基板と、
この圧電基板に予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために当該圧電基板の一面側に設けられ、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなる第1の電極と、
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために前記圧電基板に設けられた第2の電極と、を備え、
前記第1の電極の各電極指は、前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波によって圧電基板に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に配置されていることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第2の電極は、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなり、この第2の電極の各電極指は、前記誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極の電極指とは誘起電荷の極性が異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第2の電極は、前記圧電基板を挟んで前記第1の電極が設けられた領域と対向する領域に配置された電極膜であることを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記圧電基板を挟んで第1の電極が設けられている領域と対向する領域に設けられた金属膜を備えることを特徴とする請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられた圧電基板の表面、またはこの表面と対向する裏面に、前記第1の電極の輪郭形状に沿って形成された溝部または切り欠き部を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられている領域に、当該第1の電極を覆うように設けられ、または前記圧電基板を挟んでこの領域と対向する領域に設けられた絶縁体膜を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の弾性波デバイスを備えることを特徴とする電子部品。
【請求項1】
エネルギー閉じ込め型の弾性波デバイスにおいて、
圧電基板と、
この圧電基板に予め設定された次数のエネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために当該圧電基板の一面側に設けられ、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなる第1の電極と、
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波を励振するために前記圧電基板に設けられた第2の電極と、を備え、
前記第1の電極の各電極指は、前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波によって圧電基板に誘起される誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、互いに誘起電荷の極性が同じ位置に配置されていることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第2の電極は、複数の電極指と、これらの電極指が接続されたバスバーとを備えた櫛歯電極からなり、この第2の電極の各電極指は、前記誘起電荷の絶対値の分布が極大となる位置であって、前記第1の電極の電極指とは誘起電荷の極性が異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第2の電極は、前記圧電基板を挟んで前記第1の電極が設けられた領域と対向する領域に配置された電極膜であることを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記圧電基板を挟んで第1の電極が設けられている領域と対向する領域に設けられた金属膜を備えることを特徴とする請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられた圧電基板の表面、またはこの表面と対向する裏面に、前記第1の電極の輪郭形状に沿って形成された溝部または切り欠き部を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記エネルギー閉じ込めモードの弾性波の閉じ込め効果を高めるためのエネルギー閉じ込め機構として、前記第1電極が設けられている領域に、当該第1の電極を覆うように設けられ、または前記圧電基板を挟んでこの領域と対向する領域に設けられた絶縁体膜を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の弾性波デバイスを備えることを特徴とする電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−51485(P2013−51485A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187174(P2011−187174)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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