説明

弾性波フィルタ及び弾性波デュプレクサ

【課題】本発明は、弾性波フィルタのフィルタ特性を向上させることを目的とするものである。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、入力側の第1の端子1と、出力側の第2の端子2と、第1、第2の端子1、2間に電気的に接続される複数個の共振器3と、第1、第2の端子1、2と複数個の共振器3との上面に設けられた圧電基板5とを備え、圧電基板5の厚さは0.2mm未満とする弾性波フィルタとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に用いられる弾性波フィルタ及び弾性波デュプレクサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の弾性波フィルタは、図12に示すごとく、入力側の第1の端子101と、出力側の第2の端子102と、これら第1の端子101、第2の端子102間に電気的に接続される複数個の共振器103と、この共振器103の上面に設けられた圧電基板105とを備え、入力側の第1の端子101からは、1800MHz〜2300MHzの周波数の信号が入力される構成としていた。
【0003】
そして、この前記圧電基板105は、ベース基板104上にフリップチップ実装されパッケージ化されており、圧電基板105が封止106で覆われる構成となっている。
【0004】
この封止106を樹脂で形成することにより、封止106とベース基板104との密着性を確保していた。
【0005】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、2が知られている。
【特許文献1】特開平9−74329号公報
【特許文献2】特開平10−22763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の弾性波フィルタでは、そのフィルタ特性が悪いことが問題となっていた。
【0007】
すなわち、上記従来の弾性波フィルタにおいては、図13のA部に示すごとく、2140MHz付近における減衰特性が悪く、その結果としてフィルタ特性が悪くなってしまっていた。
【0008】
そこで本発明は、弾性波フィルタのフィルタ特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、圧電基板の厚さを0.2mm未満としたものである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、2140MHz付近における減衰特性を改善することができ、その結果として、フィルタ特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における弾性波フィルタについて図面を参照しながら説明する。
【0012】
本実施の形態に示す弾性波フィルタは、図1に示すごとく、入力側の第1の端子1と、出力側の第2の端子2と、図2に示すごとく、これら第1、第2の端子1、2間に電気的に接続される共振器3a〜3eと、図1に示すごとく、この共振器3a〜3eの上面に設けられた圧電基板5とを備えており、この圧電基板5の材料は、LiTaO3またはLiNbO3のいずれか一方の材料で構成される。
【0013】
ここで、図2に示した弾性波フィルタの共振器3a〜3eは金属材料で構成されているため、その酸化を防止する目的や、共振器3a〜3eの表面に汚染物質が付着すると特性が大きく変化してしまうこと、また、外部からの応力に対する耐久性や小型化しやすい構成などの点を考慮して、当該弾性波フィルタをパッケージ化している。具体的には、図1に示すごとく、複数の共振器3が設けられた圧電基板5はベース基板4上にフリップチップ実装され、この圧電基板5を覆うように樹脂封止6を施している。
【0014】
そして、圧電基板5の厚さW1を0.2mm未満とすることにより、2140MHz付近における減衰特性を改善することができ、その結果として、フィルタ特性を向上させることができる。以下、その説明をする。
【0015】
まず、本実施の形態における弾性波フィルタの、入力側の第1の端子1と、出力側の第2の端子2間の通過特性を図4に示す。グラフの横軸は弾性波フィルタに入力される信号の周波数を、グラフの縦軸は入出力間の信号の通過特性を表わしている。縦軸の通過特性(dB)の絶対値が小さいほど信号が通りやすい状態を示す。
【0016】
これは、携帯電話システムの送信側のシステムで使用されるフィルタであり、1920MHz〜1980MHzが送信側システムで使用される周波数帯域である。送信側フィルタでは、この周波数帯域の信号だけをより多く通過させる必要があるため、この周波数帯域においては、信号の減衰量が小さいほど通過特性が良い状態を示す。
【0017】
また、2110MHz〜2170MHzが受信側のシステムで使用される周波数帯域であり、この周波数帯域の信号が送信側のシステムに回り込まないようにするために、送信側フィルタにおいては、この周波数帯域の減衰を一定値以上にとる必要がある。従って、この周波数帯域においては、信号の減衰量が大きいほど減衰特性が良い状態を示す。
【0018】
ここで、図1に示した圧電基板5の厚さW1を0.35mmから0.025mmまで徐々に変更させて、圧電基板5の厚さに対する2140MHz付近での減衰特性の変化を調べた結果、図3のような変化を示すことが明らかになった。グラフの横軸は圧電基板5の厚さW1を、縦軸は2140MHzにおける減衰量(dB)を表わしており、減衰量の絶対値が大きいほど特性が良い状態を示す。
【0019】
図3に示すごとく、圧電基板5の厚さW1を0.35mmから徐々に薄くするに従って減衰特性も徐々に良くなり、0.15mm付近で減衰特性が最も良くなり、そこから更に薄くした場合には減衰特性が劣化している。圧電基板5の厚さが0.075mm以上0.2mm未満の範囲では、2140MHzにおける減衰量が−50dB以下となっており、良い減衰特性の結果が得られている。また、最も薄くした0.025mmにおいても0.35mmよりは減衰特性が向上していることがわかる。
【0020】
圧電基板5の厚さW1を従来の例としての0.35mmから、本実施の形態における1つの実施例である0.15mmへと変更した場合のフィルタ特性の比較を図4に示す。2140MHzにおける減衰特性は、図4に示すごとく、−41.1dBから−61.5dBへと改善されている。
【0021】
従って、圧電基板5の厚さW1を0.2mm未満、好ましくは0.075mm以上0.2mm未満とすることでフィルタの減衰特性を向上させることができるということができる。
【0022】
なお、その理由としては、共振器に並列に発生する容量結合を減少させることにより、減衰特性が改善したものと考えている。即ち、圧電基板5は高い誘電率を持っているため、この圧電基板5の内部では様々な電気的結合成分が形成されるが、その一例として、図2に示すごとく、複数個の共振器3a〜3eのそれぞれに並列に、容量結合7a〜7eなどの不要結合成分が形成され、これが特性を悪化させる一要因であった。この容量結合は、圧電基板の内部を通って形成される成分であるため、圧電基板5が厚い場合には、結合経路が広くなるためにその成分も大きくなってしまう。それに対し、圧電基板5の厚さを薄くした場合には、結合経路が狭くなるため、容量結合を小さくすることができ、その結果、フィルタの減衰特性を向上させることができるようになったものと考えている。
【0023】
本実施の形態においては、圧電基板5を覆うように樹脂封止6を施してパッケージ化した構造について述べたが、樹脂封止6は樹脂以外の絶縁材料であっても、本発明と同様の効果が得られる。また、樹脂封止6のような封止材の無い構造であってもよい。
【0024】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における弾性波デュプレクサについて図面を参照しながら説明する。
【0025】
本実施の形態に示す弾性波デュプレクサは、図5に示すごとく、送信端子19と、この送信端子19に電気的に接続されるとともにアンテナ22が接続されるアンテナ端子20と、このアンテナ端子20に電気的に接続される受信端子21と、送信端子19とアンテナ端子20との間に介在する共振器13f、13g、13h、13i、13jと、アンテナ端子20と受信端子21との間に介在する共振器13k、13l、13m、13n、13o、13p、13qと、図8に示すごとく、これら複数の共振器13の上面に設けられた圧電基板15とを備えており、この圧電基板15の材料は、LiTaO3またはLiNbO3のいずれか一方の材料で構成される。
【0026】
複数の共振器13と、その上面に設けられた圧電基板15は、図8に示すごとくパッケージ化されている。
【0027】
本実施の形態における弾性波デュプレクサは、図5に示すごとく、送信フィルタ23と受信フィルタ24を1本のアンテナ22で共用するデバイスであり、送信端子19とアンテナ端子20間に配置された複数個の共振器13f、13g、13h、13i、13jによって送信フィルタ23が構成され、アンテナ端子20と受信端子21間に配置された複数個の共振器13k、13l、13m、13n、13o、13p、13qによって受信フィルタ24が構成される。
【0028】
このような弾性波デュプレクサの、送信端子19とアンテナ端子20との間の送信フィルタ23の通過特性を図7に示す。グラフの横軸は周波数を、縦軸は通過特性を表わしている。この弾性波デュプレクサの送信フィルタ23は、携帯電話システムの送信側のシステムで使用されるものである。
【0029】
弾性波デュプレクサの送信フィルタ23において、図8に示した圧電基板15の厚さW2に対する2140MHz付近の減衰特性の変化を調べた結果を図6に示す。
【0030】
図6に示すごとく、圧電基板15の厚さW2を0.35mmから徐々に薄くするに従って減衰特性も徐々に良くなり、0.125mm付近で特性が最も良くなり、そこから更に薄くした場合には特性が劣化している。圧電基板15の厚さが0.075mm以上0.2mm未満の範囲では、2140MHzにおける減衰量が−50dB以下となっており、良い減衰特性の結果が得られている。また、最も薄くした0.025mmにおいては0.2mmよりも減衰特性が向上しており、0.2mm未満の全てにおいて良い減衰特性の結果が得られている。
【0031】
圧電基板15の厚さW2を従来の例としての0.35mmから、本実施の形態における1つの実施例である0.125mmへと変更した場合のフィルタ特性の比較を図7に示す。2140MHzにおける減衰特性は、図7に示すごとく、−41.8dBから−76.7dBへと改善されている。
【0032】
以上のように、弾性波デュプレクサにおいて圧電基板15の厚さW2を0.2mm未満、好ましくは0.075mm以上0.2mm未満とすることでフィルタの減衰特性を向上させることができる。
【0033】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における弾性波フィルタについて図面を参照しながら説明する。
【0034】
本実施の形態3に示す弾性波フィルタは、図9に示すごとく複数の共振器3と、その上面に設けられた圧電基板5とを備えている。その圧電基板5の複数の共振器3が設けられた面が空隙を設けて密封されるように、圧電基板5がベース基板4上に実装されてパッケージ化されている。即ち、弾性波フィルタは、図1に示すような圧電基板5を覆う樹脂封止6を備えない構造となっている。弾性波フィルタをこのようなパッケージ構成とすることによって、実施の形態1や実施の形態2で示したパッケージ構造よりも更に小型化が可能となる。
【0035】
本実施の形態3における弾性波フィルタの、入力側の第1の端子1と、出力側の第2の端子2間の通過特性を図10に示す。この弾性波フィルタは、実施の形態1で示した弾性波フィルタと同じ周波数帯の、携帯電話システムの送信側のシステムで使用されるものである。
【0036】
図10は、圧電基板5の厚さW1を従来の例としての0.35mmから、本実施の形態3における1つの実施例である0.15mmへと変更した場合のフィルタ特性の比較を示している。この図10により、2140MHzにおける減衰特性は、およそ−50dBからおよそ−80dBへと改善されていることが分かる。
【0037】
さらに、図9に示した圧電基板5の厚さW1に対する2140MHz付近の減衰特性の変化を調べた結果を図11に示す。
【0038】
図11に示すごとく、圧電基板5の厚さW1を0.35mmから徐々に薄くするに従って減衰特性も徐々に良くなり、0.15mm付近で特性が最も良くなり、そこから更に薄くした場合には特性が劣化している。さらに、圧電基板5の厚さが0.075mm以上0.2mm未満の範囲では、良い減衰特性の結果が得られている。
【0039】
以上のように、ウエハーレベルで実装されたパッケージ構成の弾性波フィルタにおいても、圧電基板5の厚さW1を0.2mm未満、好ましくは0.075mm以上0.2mm未満とすることでフィルタの減衰特性を向上させることができる。
【0040】
本実施の形態においては、ウエハーレベルで実装されたパッケージ構成の弾性波フィルタについて述べたが、同構成の弾性波デュプレクサにおいても、本実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0041】
なお、本発明の弾性波フィルタまたは弾性波デュプレクサにおける圧電基板は単一の材料で構成されているが、これに限るものでなく、例えば、異なる材料の基板を複数貼り合わせた構成であっても、本発明と同様の効果が得られる。異なる材料の基板を複数貼り合わせた構成の貼り合わせ基板においては、複数の基板全体の厚さを0.2mm未満、好ましくは0.075mm以上0.2mm未満とする。
【0042】
なお、本発明の弾性波フィルタまたは弾性波デュプレクサにおいては、フリップチップ実装され、樹脂封止された、弾性波フィルタおよび弾性波デュプレクサについて述べたが、この構成に限るものではなく、圧電基板の共振器が設けられている側の反対側、すなわち圧電基板の裏面がシールド電極を備えていない構成、例えば、ウエハーレベルの実装や、境界波デバイスなどの構成であっても、本発明と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の弾性波フィルタ、弾性波デュプレクサは、高いフィルタ特性を有するという効果を有し、携帯電話等の各種電子機器において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性波フィルタを示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1における弾性波フィルタの共振器の接続を示す等価回路図
【図3】本発明の実施の形態1における弾性波フィルタの圧電基板の厚さに対する2140MHzでの減衰量の変化を示す特性図
【図4】本発明の実施の形態1における弾性波フィルタの通過特性図
【図5】本発明の実施の形態2における弾性波デュプレクサの共振器の接続を示す等価回路図
【図6】本発明の実施の形態2における弾性波デュプレクサの圧電基板の厚さに対する2140MHzでの減衰量の変化を示す特性図
【図7】本発明の実施の形態2における弾性波デュプレクサの通過特性図
【図8】本発明の実施の形態2における弾性波デュプレクサを示す断面図
【図9】本発明の実施の形態3における弾性波フィルタを示す断面図
【図10】本発明の実施の形態1における弾性波フィルタの圧電基板の厚さに対する2140MHzでの減衰量の変化を示す特性図
【図11】本発明の実施の形態1における弾性波フィルタの通過特性図
【図12】従来の弾性波フィルタを示す断面図
【図13】従来の弾性波フィルタの通過特性図
【符号の説明】
【0045】
1 第1の端子
2 第2の端子
3 共振器
5 圧電基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、第2の端子と、
前記第1、第2の端子間に電気的に接続される共振器と、
前記第1、第2の端子と前記共振器との上面に設けられた圧電基板とを備え、
前記圧電基板の厚さは0.2mm未満とした
弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記圧電基板の厚さは0.075mm以上0.2mm未満とした
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記圧電基板はベース基板上にフリップチップ実装され、
前記圧電基板には樹脂封止が施されてパッケージ化されている
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記圧電基板がLiTaO3またはLiNbO3からなる
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記第1、第2の端子間には1800MHz〜2300MHzの信号が伝搬される
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
前記圧電基板は、異なる材料の基板を複数貼り合わせた構成である請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
送信端子と、受信端子と、アンテナ端子と、
前記送信端子と前記アンテナ端子間に電気的に接続される共振器と、
前記受信端子と前記アンテナ端子間に電気的に接続される共振器と、
前記送信端子、受信端子、アンテナ端子、及び前記共振器の上面に
設けられた圧電基板とを備え、
前記圧電基板の厚さは0.2mm未満とした
弾性波デュプレクサ。
【請求項8】
前記圧電基板の厚さは0.075mm以上0.2mm未満とした
請求項6に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項9】
前記圧電基板はベース基板上にフリップチップ実装され、
前記圧電基板は樹脂封止が施されてパッケージ化されている
請求項6に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項10】
前記圧電基板がLiTaO3またはLiNbO3からなる
請求項6に記載の弾性波デュプレクサ。
【請求項11】
前記第1、第2の端子間には1800MHz〜2300MHzの信号が伝搬される
請求項6に記載の弾性波デュプレクサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−147914(P2009−147914A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265982(P2008−265982)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】