説明

弾性波フィルタ及び通信機

【課題】平衡−不平衡変換機能を有し、平衡度を改善することが可能とされている弾性波フィルタを得る。
【解決手段】不平衡信号端子211と、第1,第2の平衡信号端子212,213とを有し、弾性波伝搬方向に沿って順に第1〜第5のIDT201〜205が配置されており、第1のIDT201と、第3のIDT203の第1の分割くし歯状電極203bとが第1の平衡信号端子212に接続されており、第2の分割くし歯状電極203cと、第5のIDT205とが第2の平衡信号端子213に接続されており、第1のIDT201の電極指ピッチと、第5のIDT205の電極指ピッチとが異ならされている、弾性波フィルタ200。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡−不平衡変換機能を有する縦結合共振子型の弾性波フィルタ及びそれを備えた通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機のような通信機の小型化や軽量化を図るために、各構成部品の削減や小型化、さらには、複数の機能を複合した部品の開発も進んできている。このような状況を背景に、通信機のRF段に使用する弾性表面波フィルタに対し、平衡−不平衡変換機能、いわゆるバランの機能を持たせたものが使用されている。
【0003】
しかしながら、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタでは、第1の平衡信号端子と第2の平衡信号端子とから取り出される信号間の平衡度が悪いという問題があった。ここで、平衡度とは、振幅平衡度及び位相平衡度をいう。
【0004】
振幅平衡度及び位相平衡度とは、前記平衡−不平衡変換機能を有するフィルタ装置を3ポートのデバイスと考え、例えば不平衡入力端子をポート1、平衡出力端子のそれぞれをポート2、ポート3としたときの、振幅平衡度=|A|、A=|20log(S21)|−|20log(S31)|、位相平衡度=|B−180|、B=|∠S21−∠S31|で定義する。理想的にはフィルタの通過帯域内で振幅平衡度は0dB、位相平衡度は0度である。
【0005】
下記の特許文献1には、このような平衡度が改善された弾性表面波フィルタが提案されている。
【0006】
特許文献1の図1では、圧電基板上に、弾性表面波伝搬方向に沿って第1〜第3のくし型電極部(IDT)が配置された3IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタが開示されている。第1〜第3のIDTが設けられている領域の弾性表面波伝搬方向両側に第1,第2の反射器が配置されている。ここでは、中央の第2のIDTが弾性表面波伝搬方向において、二分割されることにより形成された第1,第2の分割くし歯状電極を有する。第1,第2の分割くし歯状電極が、それぞれ、第1,第2の平衡信号端子に接続されており、第1,第3のIDTが共通接続され不平衡信号端子に接続されている。特許文献1では、弾性表面波伝搬方向に直交する方向に延びる仮想中心軸Aを間に挟んで、一方側と他方側において、第1〜第3のIDT及び第1,第2の反射器のうち少なくとも一つの設計パラメータが異ならされている。それによって、平衡度が改善されると述べられている。
【0007】
また、特許文献1の図13では、弾性表面波伝搬方向に沿って5個のIDTが順に配置された5IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタが開示されている。特許文献1では、このような5IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおいても、3IDT型の実施例と同様に、仮想中心軸の一方側と他方側とを異ならせた構造を採用すればよい旨が示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2005/031971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1には、具体的には、5IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおいて、中心軸の一方側と他方側とをどのように異ならせるかについては具体的には何ら記載されていない。
【0010】
他方、特許文献1の図13に示されているような5IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタでは、中心軸の一方側と他方側とを異ならせるための構成が3IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタに比べて多くなっている。従って、単に中心軸の一方側と他方側とを非対称とするだけでは、平衡度を十分に改善することができず、平衡度がかえって悪化することもあった。
【0011】
本発明の目的は、弾性波伝搬方向に沿って5つのIDTが配置されている縦結合共振子型弾性波フィルタにおいて、第1,第2の平衡信号端子間の信号の平衡度をより一層確実に改善することを可能とする弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の第1の発明によれば、圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、前記第1及び第5のIDTがそれぞれ一定の電極指ピッチを有し、前記第1のIDTの電極指ピッチが前記第5のIDTの電極指ピッチよりも小さくされており、前記第1及び第2のIDTが隣り合う部分において、前記第1のIDTを流れる信号と前記第2のIDTを流れる信号の位相が同相である、弾性波フィルタが提供される。
【0013】
本願の第2の発明によれば、圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、平衡−不平衡変換機能を有するように、前記第2のIDTに対して前記第4のIDTが反転されており、前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、前記第1及び第5のIDTがそれぞれ一定の電極指ピッチを有し、前記第1のIDTの電極指ピッチが前記第5のIDTの電極指ピッチよりも小さくされており、前記第1及び第2のIDTとが隣り合う部分において、互いに隣り合う最外電極指の極性が同じである、弾性波フィルタが提供される。
【0014】
本願の第3の発明によれば、圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、前記第1及び第5のIDTが、メインピッチ電極指部と、メインピッチ電極指部よりも電極指ピッチが狭い狭ピッチ電極指部とを有し、前記第1のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、あるいは前記第1のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、前記第1及び第2のIDTが隣り合う部分において、前記第1のIDTを流れる信号と前記第2のIDTを流れる信号の位相が同相である、弾性波フィルタが提供される。
【0015】
本願の第4の発明によれば、圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、平衡−不平衡変換機能を有するように、前記第2のIDTに対して前記第4のIDTが反転されており、前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、前記第1及び第5のIDTが、メインピッチ電極指部と、メインピッチ電極指部よりも電極指ピッチが狭い狭ピッチ電極指部とを有し、前記第1のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、あるいは前記第1のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、前記第1及び第2のIDTとが隣り合う部分において、互いに隣り合う最外電極指の極性が同じである、弾性波フィルタが提供される。
【0016】
本願の第3または第4の発明のある特定の局面では、第1のIDTにおける狭ピッチ電極指部の電極指ピッチが第5のIDTにおける狭ピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされている。この場合にも、第1,第2の平衡信号端子間の信号の平衡度を改善することができる。
【0017】
本願の第5の発明は、圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、前記第1のIDTのデューティ比が前記第5のIDTのデューティ比よりも小さくされており、前記第1及び第2のIDTが隣り合う部分において、前記第1のIDTを流れる信号と前記第2のIDTを流れる信号の位相が同相である、弾性波フィルタである。
【0018】
本願の第6の発明によれば、圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、平衡−不平衡変換機能を有するように、前記第2のIDTに対して前記第4のIDTが反転されており、前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、前記第1のIDTのデューティ比が前記第5のIDTのデューティ比よりも小さくされており、前記第1及び第2のIDTとが隣り合う部分において、互いに隣り合う最外電極指の極性が同じである、弾性波フィルタが提供される。
【0019】
本発明に係る弾性波フィルタは、弾性波として弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタであってもよく、あるいは弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタであってもよい。
【0020】
本発明に係る通信機は、本発明の弾性波フィルタを備えることを特徴とする。従って、第1,第2の平衡信号端子間の平衡度を高めることができるので、弾性波フィルタに接続される平衡入出力を有する他の電子回路に平衡度に優れた入出力信号を与えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1〜第6の発明によれば、弾性波伝搬方向に沿って第1〜第5のIDTが配置されており、中央の第3のIDTが第1,第2の分割くし歯状電極を有する、平衡−不平衡変換機能を有する5IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタにおいて、最外側に位置する第1のIDTの電極指ピッチまたはデューティ比が第5のIDTの電極指ピッチまたはデューティ比と異ならされているため、第1,第2の平衡信号端子間の信号の平衡度を効果的に改善することが可能となる。
【0022】
特許文献1に記載の3IDT型の弾性表面波フィルタでは、単に仮想中心軸を介して一方側と他方側の構成を異ならせるだけで、平衡度の改善が図られていた。5IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタでは、中心軸の一方側と他方側の構成数が多いため、単に両側を異ならせるだけでは、必ずしも平衡度を改善することはできなかったが、本発明に従って、最外側に位置する第1のIDTの電極指ピッチやデューティ比を第5のIDTと異ならせることにより、平衡度を効果的に改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波フィルタがパッケージに収納された構造におけるパッケージの底面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波フィルタがパッケージに収納されている構造を示す模式的正面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の弾性表面波フィルタ及び第1の比較例の弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の弾性表面波フィルタ及び第1の比較例の弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図6】第2の比較例の弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態、並びに第1及び第2の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態、並びに第1及び第2の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態、並びに第1及び第3の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態、並びに第1及び第3の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態、並びに第1及び第4の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施形態、並びに第1及び第4の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態、並びに第5及び第6の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態、並びに第5及び第6の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図17】本発明の第3の実施形態、並びに第7及び第8の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図18】本発明の第3の実施形態、並びに第7及び第8の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【図20】本発明の第4の実施形態、並びに第9及び第10の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図21】本発明の第4の実施形態、並びに第9及び第10の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図22】本発明の第5の実施形態、並びに第11及び第12の比較例の各弾性表面波フィルタの振幅平衡度を示す図である。
【図23】本発明の第5の実施形態、並びに第11及び第12の比較例の各弾性表面波フィルタの位相平衡度を示す図である。
【図24】弾性境界波装置の一例を示す模式的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタの模式的平面図である。
【0026】
なお、本実施形態及び以下の各実施形態では、PCS(Personal Communication Services)受信用フィルタとして用いられる弾性波フィルタを説明する。なお、PCS受信用フィルタの通過帯域は1930〜1990MHzである。
【0027】
本実施形態の弾性表面波フィルタ200では、圧電基板P上に図示の電極構造が形成されている。圧電基板Pとしては、40°±5°YカットX伝搬のLiTaO基板が用いられている。この電極構造は、特に限定されるわけではないが、本実施形態では、アルミニウムを主体とする金属材料により形成されている。
【0028】
圧電基板P上に上記電極構造を形成することにより、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部200Aと、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部200Aに直列に接続された弾性表面波共振子214とが形成されている。
【0029】
縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部200Aは、弾性表面波伝搬方向に沿って設けられた第1〜第5のIDT201〜205を有する。IDT201〜205が配置されている領域の両側に、反射器206,207が配置されている。反射器206,207は、複数本の電極指を両端で短絡してなるグレーティング型反射器である。
【0030】
第1のIDT201を例にとり、IDTの構造を説明する。IDT201は、一対のくし歯状電極201a,201bを有する。くし歯状電極201aは、バスバーと、バスバーに一端が連ねられた複数本の電極指とを有する。同様に、くし歯状電極201bもまた、バスバーと、複数本の電極指とを有する。そして、くし歯状電極201aの複数本の電極指と、くし歯状電極201bの複数本の電極指とが互いに間挿し合うように、くし歯状電極201a,201bが対向されている。複数本の電極指は、弾性表面波伝搬方向と直交する方向に延ばされている。
【0031】
IDT202〜205も同様に、複数のくし歯状電極を有する。もっとも、中央に位置している第3のIDT203は、くし歯状電極203aと、くし歯状電極203aに対向されている他方側のくし歯状電極を弾性表面波伝搬方向に2分割することにより形成された第1,第2の分割くし歯状電極203b,203cとを有する。
【0032】
不平衡信号端子211に、弾性表面波共振子214を介して、第2,第4のIDT202,204の一端が接続されている。IDT202,204の他端はグラウンド電位に接続されている。第1,第5のIDT201,205の一端がグラウンド電位に接続されている。第1のIDT201の他端と、第1の分割くし歯状電極203bとが共通接続され、第1の平衡信号端子212に電気的に接続されている。同様に、第2の分割くし歯状電極203cと第5のIDT205の他端とが共通接続され、第2の平衡信号端子213に接続されている。
【0033】
また、中央の第3のIDT203のくし歯状電極203aがグラウンド電位に接続されている。
【0034】
不平衡信号端子211から入力された信号が第1,第2の平衡信号端子212,213で取り出される際の第1,第2の平衡信号端子212,213の信号間の位相が180°異なるように、また第1,第2の平衡信号端子212,213から位相が180°異なる入力信号が入力された際に、不平衡信号端子211から信号が取り出されるように、第4のIDT204は、第2のIDT202に対して反転されている。従って、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部200Aは、平衡−不平衡変換機能を有する。
【0035】
図1では、圧電基板P上に図示の電極構造を形成することにより構成された弾性表面波フィルタ200が示されている。この弾性表面波フィルタ200は、より具体的には、図3に模式的正面断面図で示すように、CSP型のパッケージ221に収納されている。パッケージ221は、ベース基板222とベース基板222上にフリップチップボンディング工法で実装された弾性表面波フィルタ200を覆うように形成された樹脂層223とを有する。実際には、マザーのベース基板上に複数の弾性表面波フィルタ200をフリップチップボンディング工法により実装し、しかる後一度に樹脂により封止し、次に切断することにより、弾性表面波フィルタ200が内蔵された複数のパッケージ221を得る。
【0036】
図2に示すように、ベース基板222の下面には、外部と電気的に接続するための端子電極301〜305が形成されている。端子電極301〜305は、それぞれ、Wなどの適宜の電極材料からなる。
【0037】
ここで、パッケージ221の下面に設けられている端子電極301が、弾性表面波フィルタ200の不平衡信号端子211に電気的に接続されている。また、端子電極302,303が、それぞれ、弾性表面波フィルタ200の第1,第2の平衡信号端子212,213に電気的に接続されている。端子電極304,305は、グラウンド電位に接続される端子電極である。
【0038】
パッケージ221の下面は矩形の形状を有し、上記端子電極301は、一方の短辺に沿うように、かつ該短辺の中央に配置されている。そして、この短辺の中心を通り、長辺に平行な中心軸に対し、端子電極302,304と、端子電極303,305とが対称に配置されている。このように、複数の端子電極302,304と、複数の端子電極303,305とが中心軸を介して対称に配置されていることが好ましく、それによって、第1,第2の平衡信号端子間の信号の平衡度をより一層高めることができる。平衡度をより一層高めるためには、この中心軸は、後述の仮想中心軸Aと重なる位置にあることが好ましい。
【0039】
図1に戻り、図1に示すように、IDT201〜205においては2つのIDT同士が隣り合う部分では、IDT端部に位置する電極指を含む複数本の電極指の電極指ピッチが、当該IDTの他の部分の電極指ピッチよりも狭くされている。この相対的に電極指ピッチが狭くされている部分は、いわゆる狭ピッチ電極指部と称されているものである。図1において、狭ピッチ電極指部を模式的にNで示す。Nで示されている部分(狭ピッチ電極指部)以外の部分は、狭ピッチ電極指部とは異なるピッチの電極指部すなわちメインピッチ電極指部と称することとする。
【0040】
周知のように、狭ピッチ電極指部を設けることにより、IDT同士が隣接している部分における弾性表面波の伝搬特性の連続性を高めることができる。
【0041】
本実施形態の特徴は、第1のIDT201のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが、第5のIDT205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされていることにある。より具体的には、第1のIDT201のメインピッチ電極指部の電極指ピッチは、第5のIDT205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第5のIDT205の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくされている。それによって、後述の実施例で示すように、平衡度が改善される。
【0042】
なお、各IDT201〜205の電極指ピッチを含む仕様は下記の表1に示す通りである。
【0043】
【表1】

【0044】
第1のIDT201と第2のIDT202とが隣り合っている部分において、第1のIDT201の最外側電極指及び第2のIDT202の最外側電極指は、いずれもアース側電極指である。すなわち、両電極指は同一極性を有している。
【0045】
これに対して、第4のIDT204と第5のIDT205とが隣り合っている部分においては、第4のIDT204の最外側電極指はホット側電極指であり、第5のIDT205の最外側電極指はアース側電極指であり、両電極指の極性は異なっている。
【0046】
第2のIDT202と第3のIDT203とが隣り合っている部分において、第2のIDT202の最外側電極指及び第3のIDT203の最外側電極指はいずれもアース側電極指であり、両電極指は同一極性を有している。
【0047】
これに対して、第3のIDT203と第4のIDT204とが隣り合っている部分においては、第3のIDT203の最外側電極指はアース側電極指であり、第4のIDT204の最外側電極指はホット側電極指であり、両電極指の極性は異なっている。
【0048】
従って、第1のIDT201と第2のIDT202とが隣り合っている部分においては、第2のIDT202を流れる信号の位相と、第1のIDT201を流れる信号の位相は同相となっており、第4のIDT204と第5のIDT205とが隣り合っている部分においては、第4のIDT204を流れる信号の位相と第5のIDT205を流れる信号の位相は逆相となっている。
【0049】
すなわち、本実施形態では、第1または第2の平衡信号端子212,213に接続されている最外側のIDTである、第1のIDT201または第5のIDT205と、不平衡信号端子211に接続されている第2のIDT202または第4のIDT204とが隣り合っている部分において、両側のIDTを流れる信号の位相が同相である第1のIDT201のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが、両側のIDTを流れる信号の位相が逆相である第5のIDT205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされている。
【0050】
なお、本実施形態では、第1のIDT201と第5のIDT205とのメインピッチ電極指部の電極指ピッチを異ならせたことを除いては、弾性表面波の伝搬方向に対して垂直方向に延びる上記仮想中心軸Aに対し、圧電基板P上の構造は対称とされている。それによって、平衡度が高められる。これは、中央の第3のIDTに対して隣り合っている電極指の極性が、第2のIDT202の電極指と第4のIDT204の電極指とで異なっていることを除いては、不平衡成分がほぼ発生しないことによる。
【0051】
図4及び図5は、本実施形態の弾性表面波フィルタ200の振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。比較のために、第1のIDT201のメインピッチ電極指部の電極指ピッチと、第5のIDT205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを等しくしたことを除いては、本実施形態と同様とした第1の比較例の振幅平衡度及び位相平衡度を図4及び図5に破線で示す。
【0052】
平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタでは、通過帯域内における振幅平衡−不平衡変換機能度が0dB、位相平衡−不平衡変換機能度が180°であることが理想である。一般には、通過帯域内において、振幅平衡度が−1.2dB〜+1.2dBの範囲内であること、位相平衡度が168°〜192°の範囲内であることが求められている。
【0053】
また、振幅平衡度及び位相平衡度を評価する場合には、通過帯域内における振幅平衡度及び位相平衡度の最も悪い値の大きさが重要である。すなわち、通過帯域内における振幅平衡度の最も悪い値の絶対値が小さいこと、また位相平衡度では、最も悪い値が180°に近いことが求められる。
【0054】
図4から明らかなように、本実施形態及び第1の比較例のいずれにおいても、PCS受信用フィルタの通過帯域上限である1990MHz付近における振幅平衡度が最も悪い値となっている。第1の比較例では、1990MHzにおける振幅平衡度は約−1.0dBである。これに対して、本実施形態では、1990MHzにおける振幅平衡度は−0.8dBである。従って、本実施形態によれば、振幅平衡度が約0.2dB改善されている。これは、第1の平衡信号端子212と、第2の平衡信号端子213との間の位相のずれが、第1のIDT201と第5のIDT205との電極指ピッチを異ならせることにより補正されていることによる。
【0055】
他方、位相平衡度については、本実施形態では、第1の比較例よりも若干悪化している。しかしながら、本実施形態においても、位相平衡度の最も悪い値は、168°〜192°の範囲内におさまっている。従って、本実施形態によれば、位相平衡度をさほど悪化させることなく、振幅平衡度を飛躍的に改善し得ることがわかる。
【0056】
図6は、第1の実施形態に対して比較のために用意した第2の比較例の電極構造を示す平面図である。第2の比較例の弾性表面波フィルタでは、第1の実施形態とは逆に、第5のIDT205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを、第1のIDT201のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT201の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくし、その他の点については、第1の実施形態と同様とされている。
【0057】
図7及び図8は、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ、上述した第1の比較例の弾性表面波フィルタ及び第2の比較例の弾性表面波フィルタの各振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。実線が第1の実施形態の結果を、破線が第1の比較例の結果を、一点鎖線が第2の比較例の結果を示す。
【0058】
図7及び図8から明らかなように、第2の比較例では、1990MHz付近の振幅平衡度が−1.4dBであり、第1の比較例よりも悪化しており、求められる範囲である−1.2dB〜+1.2dBの範囲を満たしていない。
【0059】
次に、第3の比較例の弾性表面波フィルタを用意した。第3の比較例の弾性表面波フィルタでは、下記の表2に示すように、第2のIDT202のメインピッチ電極指部の電極指ピッチと、第4のIDT204のメインピッチ電極指部の電極指ピッチとを異ならせた。第2,第4のIDT202,204のメインピッチ電極指部の電極指ピッチがλと等しい第1の比較例に対し、第2のIDT202のメインピッチ電極指部の電極指ピッチをλ×1.001とし、第4のIDT204のメインピッチ電極指部の電極指ピッチをλ×0.999とした。その他の電極指ピッチについては、第1の比較例と同様とした。比較のために、表2においては、第1の実施形態における第1〜第5のIDTの電極指ピッチも併せて示す。
【0060】
【表2】

【0061】
図9及び図10は、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ、第1の比較例の弾性表面波フィルタ及び第3の比較例の弾性表面波フィルタの各振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。ここでも実線が第1の実施形態の結果を示し、破線が第1の比較例の結果を示し、一点鎖線は第3の比較例の結果を示す。
【0062】
なお、第3の比較例では、第3のIDT203の最外側電極指は、中正点、すなわちアース電位とされており、第2のIDT202の第3のIDT203側の最外側電極指はアース側電極指、第4のIDT204の第3のIDT203側の最外側電極指はホット側電極指であるため、上記のように第2のIDT202のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを、第4のIDT204のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも大きく設定した。
【0063】
図9から明らかなように、第3の比較例では、1990MHz付近の振幅平衡度が−1.7dBと第1の比較例より悪化し、求められる範囲である−1.2〜+1.2dBの範囲を満たしていない。これは、第2のIDT202と第4のIDT204とが電気的に接続されているので、一方のIDTにおけるパラメータの変化が他方のIDTに悪影響を及ぼしていることによると考えられる。
【0064】
次に、下記の表3に示すように、第1〜第5のIDTの電極指ピッチが設定された第4の比較例の弾性表面波フィルタを用意した。なお、表3のλ2〜λ4は、表2中のλ2〜λ4と同じ値である。
【0065】
【表3】

【0066】
表3から明らかなように、第4の比較例の弾性表面波フィルタでは、第1,第2の分割くし歯状電極203b,203cのメインピッチ電極指部の電極指ピッチをそれぞれ、λ×1.001並びにλ×0.999とした。その他の点については、第4の比較例の弾性表面波フィルタは、上記第1の比較例の弾性表面波フィルタと同様とした。比較のために、表3において、第1の実施形態の弾性表面波フィルタの第1〜第5のIDT201〜205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチも併せて示す。
【0067】
図11及び図12は、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ、第1の比較例の弾性表面波フィルタ及び第4の比較例の弾性表面波フィルタの振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。図11及び図12において、実線が第1の実施形態の結果を、破線が第1の比較例の結果を示し、一点鎖線が第4の比較例の結果を示す。
【0068】
図11及び図12から明らかなように、第4の比較例では、1990MHz付近の振幅平衡度が−1.4dBと第1の比較例より平衡度が悪化しており、求められる範囲である−1.2〜+1.2dBの範囲を満たしていない。これは、第1,第2の分割くし歯状電極203b,203cの電極指同士が隣り合っており、音響的結合が強くなっているため、一方の分割くし歯状電極におけるパラメータの変化が、他方の分割くし歯状電極に悪影響を及ぼしているためと考えられる。
【0069】
上記第1の実施形態及び第1〜第4の比較例の結果から明らかなように、平衡信号端子212,213に接続される最外側のIDTである第1のIDT201及び第5のIDT205と、不平衡信号端子211に接続されるIDTである第2のIDT202及び第4のIDT204とが隣接する部分において、流れる信号の位相が同相である第1のIDT201の電極指ピッチが、流れる信号の位相が逆相である第5のIDT205の電極指ピッチよりも小さくなるように設定することが必要であり、それによって、平衡度を飛躍的に改善し得ることがわかる。
【0070】
なお、第1の実施形態では、第1,第5のIDT201,205のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを全て異ならせたが、IDTのメインピッチ電極指部において、一部の電極指部の電極指ピッチのみを異ならせてもよい。また、第1のIDT202の狭ピッチ電極指部の電極指ピッチと、第5のIDT205の狭ピッチ電極指部の電極指ピッチを異ならせてもよい。その場合においても、上記第1の実施形態と同様に、平衡度を改善することができる。
【0071】
また、第1の実施形態では、IDT201〜205において狭ピッチ電極指部が設けられていたが、狭ピッチ電極指部を設けず、一定の電極指ピッチとしてもよい。このような場合でも、一定の電極指ピッチを有する第1,第5のIDT201,205の電極指ピッチを異ならせることで、平衡度を改善することができる。
【0072】
なお、上述してきた実施形態では、40°±5°YカットX伝搬のLiTaO基板を用いたが、本発明の効果が得られる原理からも明らかなように、本発明は、これに限らず、他の圧電単結晶基板が用いられてもよい。例えば、64°〜72°YカットX伝搬のLiNbO基板や41°YカットX伝搬のLiNbO基板などを用いても、同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態において、第1,第2の平衡信号端子212,213にそれぞれ接続されている第1,第2の分割くし歯状電極IDT203b、203cと対向するくし歯状電極203aの電極指は、浮き電極指であってもよく、その場合においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
〔第2の実施形態〕
図13は、本発明の第2の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【0075】
第2の実施形態の弾性表面波フィルタ400は、第1の実施形態と同様に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部400Aと、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部400Aに直列に接続された弾性表面波共振子414とを有する。第2の弾性表面波フィルタ400は、基本的な構造において、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ200と同様であるため、同一部分については、200番台の参照番号に代えて、400番台の参照番号を付することにより、その詳細な説明は省略する。なお、第2の実施形態の弾性表面波フィルタ400では、第2,第4のIDT402,404が、それぞれ、第1の実施形態の第2,第4のIDT202,204に対して反転されている。
【0076】
第2の実施形態においても、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部400Aは、弾性表面波伝搬方向に沿って配置された第1〜第5のIDT401〜405を有する。第2,第4のIDT402,404が弾性表面波共振子414を介して不平衡信号端子411に接続されている。他方、第1のIDT401及び第3のIDT403の第1の分割くし歯状電極403bが共通接続され、第1の平衡信号端子412に接続されている。同様に、第2の分割くし歯状電極403c及び第5のIDT405が共通接続され、第2の平衡信号端子413に接続されている。
【0077】
ここでは、平衡−不平衡変換機能を実現するために、第1の実施形態の場合と同様に、IDT402に対し、第4のIDT404が反転されている。
【0078】
より具体的には、第2のIDT402の最外側電極指は、不平衡信号端子411に接続されるホット側電極指である。他方、第1のIDT401の第2のIDT402側の最外側電極指は、アース側電極指である。従って、第1のIDT401と第2のIDT402とが隣り合っている部分では、異なる極性の電極指同士が隣り合っている。また、第3のIDT403の最外側電極指はアース側電極指である。従って、第2,第3のIDT402,403が隣り合っている部分においても、異なる極性の電極指同士が隣り合っている。
【0079】
これに対して、第4のIDT404の最外側電極指はアース側電極指である。従って、第3,第4のIDT403,404が隣り合っている部分においては、同じ極性の電極指同士が隣り合っている。IDT404,405が隣り合っている部分においても、同じ極性の電極指同士が隣り合っている。
【0080】
従って、第1のIDT401と第2のIDT402とが隣り合っている部分において、第2のIDT402を流れる信号の位相は第1のIDT401を流れる信号の位相と逆相となっており、第4のIDTと第5のIDTとが隣り合っている部分においては、第4のIDT404を流れる信号の位相は第5のIDT405を流れる信号の位相と同相となっている。
【0081】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1,第2の平衡信号端子412,413にそれぞれ電気的に接続されている最外側のIDTである第1のIDT401及び第5のIDT405と、不平衡信号端子411に電気的に接続されている第2,第4のIDT402,404とが隣り合っている部分において、同じ極性の電極指同士が隣り合う関係を有する第5のIDT405のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが、第1のIDT401のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT401の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくされている。
【0082】
図14及び図15は、第2の実施形態の弾性表面波フィルタの振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。図14及び図15では、実線で第2の実施形態を示す。比較のために、第1のIDT401のメインピッチ電極指部の電極指ピッチと、第5のIDT405のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを等しくしたことを除いては、本実施形態と同様とした第5の比較例の弾性表面波フィルタと、第1のIDT401及び第5のIDT405のメインピッチ電極指部の電極指ピッチの関係が本実施形態と反対とされている第6の比較例の弾性表面波フィルタとを用意した。すなわち、第6の比較例の弾性表面波フィルタでは、第1のIDT401のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを、第5のIDT405のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT401の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくしたことを除いては、第2の実施形態と同様とした。破線で第5の比較例の結果を、一点鎖線で第6の比較例の結果を示す。
【0083】
図14及び図15から明らかなように、第2の実施形態及び第5の比較例のいずれにおいても、1990MHz付近において振幅平衡度が最も悪い値となっている。第5の比較例では1990MHzにおける振幅平衡度が−1.1dBであるのに対し、第2の実施形態では−0.8dBである。従って、本実施形態によれば、第5の比較例に比べて、振幅平衡度が0.3dB改善されている。
【0084】
他方、位相平衡度については、第2の実施形態は第5の比較例よりも若干悪化するものの、168°〜192°の範囲を満たしている。
【0085】
また、第6の比較例においても、1990MHz付近における振幅平衡度が最も悪い値である約−1.4dBであり、第5の比較例よりも振幅平衡度が悪化していることがわかる。従って、図14及び図15から明らかなように、第2の実施形態においても、第5,第6の比較例に比べ、平衡度を改善し得ることがわかる。
【0086】
〔第3の実施形態〕
図16は、本発明の第3の実施形態の弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。第3の実施形態もまた、第1の実施形態とほぼ同様に構成されているので、相当する部分については、200番台の参照番号に代え、500番台の参照番号を付することにより、その詳細な説明を省略する。なお、第3の実施形態の弾性表面波フィルタ500は、第1,第5のIDT501,505が、それぞれ第1の実施形態の第1,第5のIDT201,205に対して反転されていると共に、第3のIDT503の最外側電極指がホット側電極指とされている。
【0087】
本実施形態においても、弾性表面波フィルタ500は、不平衡信号端子511に弾性表面波共振子514を介して縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部500Aが接続されている。
【0088】
第2,第4のIDT502,504が、弾性表面波共振子514を介して不平衡信号端子511に接続されている。
【0089】
第2のIDT502に対し、第4のIDT504が反転され、それによって、平衡−不平衡変換機能が実現されている。
【0090】
本実施形態では、第2のIDT502の最外側電極指はアース側電極指とされている。第4のIDT504の最外側電極指は、いずれも、不平衡信号端子511に接続されるホット側電極指とされている。
【0091】
第3のIDT503においては、第2のIDT502側の最外側電極指が、平衡信号端子512に接続されている、ホット側電極指とされている。また、第3のIDT503の第4のIDT504側の最外側電極指は、第2の平衡信号端子513に接続されている、ホット側電極指とされている。
【0092】
第1のIDT501の第2のIDT502側の最外側電極指は、第1の平衡信号端子512に接続されている、ホット側電極指である。
【0093】
第5のIDT505の第4のIDT504側の最外側電極指は、第2の平衡信号端子513に接続されており、ホット側電極指である。
【0094】
従って、本実施形態では、第1,第2のIDT501,502が隣り合っている部分においては、ホット側電極指と、アース側電極指とが隣り合っており、隣り合っている最外側電極指は逆極性となっている。第2,第3のIDT502,503が、隣り合っている部分においても、アース側電極指と、ホット側電極指とが隣り合っており、隣り合っている最外側電極指は逆極性となっている。
【0095】
これに対して、第3,第4のIDT503,504が隣り合っている部分においては、隣り合っている最外側電極指はいずれもホット側電極指であり、同極性である。また、第4,第5のIDT504,505が隣り合っている部分では、隣り合っている最外側電極指はいずれもホット側の電極指であり、同極性である。
【0096】
言い換えれば、第1,第2のIDT501,502が隣り合っている部分において、第2のIDT502から第1のIDT501に流れる信号位相は逆相となっており、第4,第5のIDT504,505が隣り合っている部分においては、第4のIDT504から第5のIDT505に流れる信号の位相は同相となっている。
【0097】
本実施形態では、第5のIDT505のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが第1のIDT501のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT501の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくされている。すなわち、第1の実施形態と同様に、平衡信号端子に接続される最外側のIDTである、第1,第5のIDT501,505と、不平衡信号端子に接続されるIDTである第2,第4のIDT502,504とがそれぞれ隣り合っている部分において、流れる信号の位相が同相である第5のIDT505のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが、流れる信号の位相が逆相である第1のIDT501のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT501の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくされている。
【0098】
本実施形態においても、第1〜第5のIDT501〜505が上記のように構成されているため、平衡度を改善することができる。これを、図17及び図18を参照して説明する。
【0099】
図17及び図18は、第3の実施形態の弾性表面波フィルタ500の振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。比較のために、第1のIDT501のメインピッチ電極指部の電極指ピッチと、第5のIDT505のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを等しくしたことを除いては、本実施形態と同様とした第7の比較例の弾性表面波フィルタと、第1のIDT501及び第5のIDT505のメインピッチ電極指部の電極指ピッチの関係が本実施形態と反対とされている第8の比較例の弾性表面波フィルタとを用意した。すなわち、第8の比較例の弾性表面波フィルタでは、第1のIDT501のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが、第5のIDT505のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT501の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくされていることを除いては、第3の実施形態と同様とした。実線が第3の実施形態の結果を示し、破線が第7の比較例の結果を、一点鎖線が第8の比較例の結果を示す。
【0100】
図17及び図18から明らかなように、第3の実施形態及び第7の比較例及び第8の比較例のいずれにおいても、1990MHz付近において振幅平衡度が最も悪い値となっている。第7の比較例では、1990MHz付近における振幅平衡度が約−1.2dBであり、これに対して、第3の実施形態では、1990MHzの振幅平衡度は約−1.1dBである。従って、第7の比較例に比べ、本実施形態によれば、振幅平衡度を約0.1dB改善し得ることがわかる。
【0101】
なお、第8の比較例では1990MHz付近の振幅平衡度は、約−1.4dBとなり、平衡度が悪化していることがわかる。
【0102】
なお、位相平衡度については、第3の実施形態については、第7の比較例よりも若干悪化するものの、168°〜192°の範囲を満たしている。
【0103】
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、従来の弾性表面波フィルタに比べて、平衡度を改善し得ることがわかる。
【0104】
〔第4の実施形態〕
図19は、本発明の第4の実施形態に係る弾性表面波フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。
【0105】
第4の実施形態の弾性表面波フィルタ600は、第1の実施形態と同様に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部600Aと、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部600Aに直列に接続された弾性表面波共振子614とを有する。弾性表面波フィルタ600は、基本的な構造において、第1の実施形態の弾性表面波フィルタ200と同様であるため、同一部分については、200番台の参照番号に代えて、600番台の参照番号を付することにより、その詳細な説明は省略する。
【0106】
第4の実施形態においても、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部600Aは、弾性表面波伝搬方向に沿って配置された第1〜第5のIDT601〜605を有する。第2,第4のIDT602,604が、弾性表面波共振子614を介して不平衡信号端子611に接続されている。他方、第1のIDT601及び第3のIDT603の第1の分割くし歯状電極603bが共通接続され、第1の平衡信号端子612に接続されている。同様に、第2の分割くし歯状電極603c及び第5のIDT605が共通接続され、第2の平衡信号端子613に接続されている。
【0107】
ここでは、平衡−不平衡変換機能を実現するために、第1の実施形態の場合と同様に、IDT602に対し、第4のIDT604が反転されている。
【0108】
第4の実施形態は、第1の実施形態における第1のIDT電極201、第2のIDT202、第4のIDT204及び第5のIDT205を反転させて、第1のIDT601、第2のIDT602、第4のIDT604及び第5のIDT605を形成したこと、並びに第3のIDT603では、最外側電極指がホット側電極指とされていることを除いては、第1の実施形態の弾性表面波フィルタと同様とされている。第2のIDT602の最外側電極指は、不平衡信号端子611に接続されるホット側電極指である。他方、第1のIDT601の第2のIDT602側の最外側電極指は、ホット側電極指である。従って、第1,第2のIDT601,602が隣り合っている部分では、同じ極性の電極指同士が隣り合っている。また、第4のIDT604の最外側電極指はアース側電極指である。他方、第5のIDT605の第4のIDT604側の最外側電極指はホット側電極指である。従って、第4,第5のIDT604,605が隣り合っている部分において、隣り合っている最外側電極指が異なる極性となっている。
【0109】
従って、第1のIDT601と、第2のIDT602が隣接し合っている部分において、第2のIDT602を流れる信号の位相は第1のIDT601を流れる信号の位相と同相となっている。第4のIDT604と第5のIDT605とが隣り合っている部分では、第4のIDT604を流れる信号の位相は第5のIDT605を流れる信号の位相と逆相となっている。
【0110】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、平衡信号端子612及び613にそれぞれ電気的に接続されている最外側のIDTである第1,第5のIDT601,605と、不平衡信号端子611に電気的に接続されている第2,第4のIDT602,604とが隣り合っている部分において、同じ極性の電極指が隣り合う関係を有する第1のIDT601のメインピッチ電極指部の電極指ピッチが、第5のIDT605のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第5のIDT605の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくされている。
【0111】
図20及び図21は、第4の実施形態の弾性表面波フィルタ600の振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。図20及び図21では、実線で第4の実施形態の結果を示す。比較のために、第1のIDT601のメインピッチ電極指部の電極指ピッチと、第5のIDT605のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを等しくしたことを除いては、本実施形態と同様とした第9の比較例の弾性表面波フィルタと、第10の比較例の弾性表面波フィルタを用意した。第10の比較例の弾性表面波フィルタでは、第4の実施形態と逆に、第5のIDT605のメインピッチ電極指部の電極指ピッチを、第1のIDT601のメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも第1のIDT601の電極指ピッチに対して約0.2%分小さくしたことを除いては、第4の実施形態と同様とした。破線で第9の比較例の結果を、一点鎖線で第10の比較例の結果を示す。
【0112】
図20及び図21から明らかなように、第4の実施形態及び第9の比較例のいずれにおいても、1990MHz付近において振幅平衡度が最も悪い値となっている。第9の比較例では、1990MHzにおける振幅平衡度が約−1.2dBであるのに対し、第4の実施形態では約−1.1dBであり、従って、本実施形態によれば、第9の比較例に比べて、振幅平衡度が約0.1dB改善されている。
【0113】
他方、位相平衡度については、第4の実施形態は第9の比較例よりも若干悪化するものの、168°〜192°の範囲を満たしている。
【0114】
また、第10の比較例においても、1990MHz付近における振幅平衡度が最も悪い値である約−1.4dBであり、第9の比較例よりも振幅平衡度が悪化していることがわかる。従って、図20及び図21から明らかなように、第4の実施形態においても、第9,第10の比較例に比べ、平衡度を改善し得ることがわかる。
【0115】
〔第5の実施形態〕
第5の実施形態は、第1のIDTと第5のIDTとにおいて、第1の実施形態のようにメインピッチ電極指部の電極指ピッチを異ならせるのではなく、下記の表4に示すように両者のメインピッチ電極指部のデューティ比を異ならせた点においてのみ相違する。従って、第5の実施形態の弾性表面波フィルタの電極構造は、第1の実施形態と同様であるため、以下の第5の実施形態の説明においては、図1に示した第1の実施形態を援用することとする。
【0116】
【表4】

【0117】
上記の通り、本実施形態では、第1のIDT201のデューティ比が、第5のIDT205のデューティ比よりも第5のIDT205のデューティ比に対して約6%分小さくされている。
【0118】
図22及び図23は、このようにして構成された第5の実施形態の弾性表面波フィルタの振幅平衡度及び位相平衡度を示す図である。
【0119】
比較のために、第1のIDT201と第5のIDT205のデューティ比を等しくしたことを除いては、上記第5の実施形態と同様とした第11の比較例と、第12の比較例の弾性表面波フィルタを用意した。なお、第12の比較例の弾性表面波フィルタは、デューティ比が第5の実施形態の場合とは反対とされている構成、すなわち第5のIDT205のデューティ比が第1のIDT201のデューティ比よりも小さくなるように形成されていることを除いては、上記第5の実施形態と同様とされている。
【0120】
図22及び図23において、実線が第5の実施形態の結果を、破線が第11の比較例の結果を、一点鎖線が第12の比較例の結果を示す。
【0121】
図22及び図23から明らかなように、第5の実施形態及び第11の比較例及び第12の比較例のいずれにおいても、1990MHz付近において振幅平衡度が最も悪い値となっている。第11の比較例では、1990MHz付近における振幅平衡度が約−1.1dBであり、これに対して、第5の実施形態では、1990MHzの振幅平衡度約−0.9dBである。従って、第11の比較例に比べ、本実施形態によれば、振幅平衡度約0.2dB改善し得ることがわかる。従って、第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、振幅平衡度を改善し得ることがわかる。
【0122】
なお、位相平衡度については、第5の実施形態については、第11の比較例よりも若干悪化するものの、168°〜192°の範囲を満たしている。
【0123】
また、第12の比較例においても、1990MHz付近の振幅平衡度は約−1.2dBと悪化した。
【0124】
従って、第5の実施形態から明らかなように、電極指ピッチに代えて、デューティ比を異ならせることによっても、平衡度を改善し得ることがわかる。
【0125】
従って、本実施形態においても、従来の弾性表面波フィルタに比べて、平衡度を改善し得ることがわかる。
【0126】
〔その他〕
なお、上述してきた第1〜第3の実施形態では、弾性表面波フィルタにつき説明したが、本発明は、上記のように、第1〜第5のIDTを有する縦結合共振子型弾性波フィルタの電極構造により上述した平衡度改善効果を得るものであるため、弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタだけでなく、弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタにも適用することができる。すなわち、図24に略図的正面断面図で示す弾性境界波装置701では、圧電体からなる圧電基板702上に、誘電体703が積層されている。圧電基板702と誘電体703との界面に、IDTを含む電極構造704が設けられている。この電極構造704として、前述した各実施形態の電極構造を形成することにより、本発明に従って、弾性境界波フィルタを提供することができる。
【符号の説明】
【0127】
200…弾性表面波フィルタ
200A…弾性表面波フィルタ部
201〜205…IDT
201a〜201c…くし歯状電極
211…不平衡信号端子
212…第1の平衡信号端子
213…第2の平衡信号端子
214…弾性表面波共振子
221…パッケージ
222…ベース基板
223…樹脂層
301〜305…端子電極
400…弾性表面波フィルタ
400A…弾性表面波フィルタ部
401〜405…IDT
403a〜403c…くし歯状電極
411…不平衡信号端子
412…第1の平衡信号端子
413…第2の平衡信号端子
414…弾性表面波共振子
500…弾性表面波フィルタ
500A…弾性表面波フィルタ部
501〜505…IDT
511…不平衡信号端子
512…第1の平衡信号端子
513…第2の平衡信号端子
514…弾性表面波共振子
600…弾性表面波フィルタ
600A…弾性表面波フィルタ部
601〜605…IDT
603a〜603c…くし歯状電極
611…不平衡信号端子
612…第1の平衡信号端子
613…第2の平衡信号端子
614…弾性表面波共振子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、
前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、
前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、
前記第1及び第5のIDTがそれぞれ一定の電極指ピッチを有し、前記第1のIDTの電極指ピッチが前記第5のIDTの電極指ピッチよりも小さくされており、
前記第1及び第2のIDTが隣り合う部分において、前記第1のIDTを流れる信号と前記第2のIDTを流れる信号の位相が同相である、弾性波フィルタ。
【請求項2】
圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、
前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、
平衡−不平衡変換機能を有するように、前記第2のIDTに対して前記第4のIDTが反転されており、
前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、
前記第1及び第5のIDTがそれぞれ一定の電極指ピッチを有し、前記第1のIDTの電極指ピッチが前記第5のIDTの電極指ピッチよりも小さくされており、
前記第1及び第2のIDTとが隣り合う部分において、互いに隣り合う最外電極指の極性が同じである、弾性波フィルタ。
【請求項3】
圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、
前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、
前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、
前記第1及び第5のIDTが、メインピッチ電極指部と、メインピッチ電極指部よりも電極指ピッチが狭い狭ピッチ電極指部とを有し、前記第1のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、あるいは前記第1のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、
前記第1及び第2のIDTが隣り合う部分において、前記第1のIDTを流れる信号と前記第2のIDTを流れる信号の位相が同相である、弾性波フィルタ。
【請求項4】
圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、
前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、
平衡−不平衡変換機能を有するように、前記第2のIDTに対して前記第4のIDTが反転されており、
前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、
前記第1及び第5のIDTが、メインピッチ電極指部と、メインピッチ電極指部よりも電極指ピッチが狭い狭ピッチ電極指部とを有し、前記第1のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTのメインピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、あるいは前記第1のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチが前記第5のIDTの狭ピッチ電極指部の電極指ピッチよりも小さくされており、
前記第1及び第2のIDTとが隣り合う部分において、互いに隣り合う最外電極指の極性が同じである、弾性波フィルタ。
【請求項5】
圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、
前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、
前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、
前記第1のIDTのデューティ比が前記第5のIDTのデューティ比よりも小さくされており、
前記第1及び第2のIDTが隣り合う部分において、前記第1のIDTを流れる信号と前記第2のIDTを流れる信号の位相が同相である、弾性波フィルタ。
【請求項6】
圧電基板と、前記圧電基板に形成された縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを少なくとも備え、
前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、複数の電極指を有する複数のくし歯状電極が互いの電極指が間挿し合うように対向されており、かつ弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1,第2,第3,第4及び第5のIDTと、前記第1,第2,第3,第4及び第5のIDTが配置された領域を挟み込むように弾性波の伝搬方向に沿って配置された第1及び第2の反射器とを備え、
前記第3のIDTの対向するいずれか一方側のくし歯状電極は、弾性波の伝搬方向に沿って分割された第1及び第2の分割くし歯状電極を有し、かつ前記第1の分割くし歯状電極は前記第2のIDTに近い側に、前記第2の分割くし歯状電極は前記第4のIDTに近い側にそれぞれ配置されており、
平衡−不平衡変換機能を有するように、前記第2のIDTに対して前記第4のIDTが反転されており、
前記第2及び第4のIDTは不平衡信号端子に、前記第1のIDTと前記第3のIDTの第1の分割くし歯状電極とは第1の平衡信号端子に、前記第5のIDTと前記第3のIDTの第2の分割くし歯状電極とは第2の平衡信号端子にそれぞれ接続されており、
前記第1のIDTのデューティ比が前記第5のIDTのデューティ比よりも小さくされており、
前記第1及び第2のIDTとが隣り合う部分において、互いに隣り合う最外電極指の極性が同じである、弾性波フィルタ。
【請求項7】
弾性波が弾性表面波であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項8】
弾性波が弾性境界波であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性波フィルタを備えることを特徴とする、通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−251964(P2010−251964A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97933(P2009−97933)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】