弾性波フィルタ
【課題】入力側IDT電極、出力側IDT電極及びこれら電極間に介設されたグレーティング型の電極を備えた弾性波フィルタにおいて、波長が基本波の波長の半分である2倍波の出力側IDT電極への伝搬を抑えること。
【解決手段】長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指17が隙間領域を介して配置されたダブル電極構造31を弾性波の伝搬方向に沿って設けると共に、このダブル電極構造31がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域32と、ダブル電極構造31が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域33と、を連続して設ける。
【解決手段】長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指17が隙間領域を介して配置されたダブル電極構造31を弾性波の伝搬方向に沿って設けると共に、このダブル電極構造31がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域32と、ダブル電極構造31が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域33と、を連続して設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタ例えば(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
IDT(IDT:インターディジタルトランスデューサ)電極を圧電基板上に入力側電極及び出力側電極として配置したトランスバーサルタイプの弾性波フィルタ例えばSAWフィルタにおいて、これら電極間における弾性波の伝搬路に電極を配置せずに自由表面としたり、あるいは入出力電極間における結合容量を小さくするためにこの伝搬路の一部に例えば角型のベタ電極をシールド電極として配置したりする場合がある。このような場合には、弾性波の伝搬速度は、入出力電極間における伝搬路と、複数の電極指が弾性波の伝搬方向に対して概略直交方向に並ぶグレーティングである各電極との間で異なっている。そのため、例えば入力側電極から出力側電極に向かって弾性波が出力される時に屈折が起こり、通過周波数帯域においてエネルギーロスが発生する場合がある。そこで、この伝搬路と各電極との間において弾性波の伝搬速度を揃えるために、当該伝搬路にグレーティング型の電極を配置する技術が知られている。
【0003】
また、既述の入力側及び出力側のIDT電極として、一対のバスバーの一方側から他方側に向かって電極指の幅寸法及び離間寸法が広がるように、電極指群をテーパー型(スラント型)に配置する場合がある。この場合には、電極指の幅寸法及び離間寸法からなる周期単位λに対応する弾性波の伝搬路であるトラックをTrとすると、一方側のバスバーから他方側のバスバーに向かって、周期単位λが狭いトラックTrから広いトラックTrまで形成されていることになる。従って、各々のトラックTrにおける基本波の波長をλとすると、例えば特許文献1のように、入出力電極間の伝搬路に幅寸法がλ/8のライン(グレーティング電極指)をλ/8ずつ離間させて設けることによって、この伝搬路と各電極とにおける弾性波の伝搬速度がほぼ揃うことになる。そのため、弾性波の屈折の影響が低減されて、良好な周波数特性を得ることができる。
【0004】
しかし、この特許文献1には、入出力電極として例えばDART(Distributed acoustic reflection transducer)電極などの一方向性電極を用いた場合において、基本波と共に入力側電極から出力側電極に向かって伝搬する2倍波(波長が基本波の半分の弾性波)については具体的に検討されていない。
また、特許文献2には、グレーティング型のシールド電極における電極周期を調整することによってレイリー波へのリーキー波の混入を抑える技術が記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−89013
【特許文献2】特開2005−203996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力側IDT電極、出力側IDT電極及びこれら電極間に介設されたグレーティング型の電極を備えた弾性波フィルタにおいて、波長が基本波の半分である2倍波の出力側IDT電極への伝搬を抑えることのできる弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弾性波フィルタは、
弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のバスバーと、一方のバスバーから他方のバスバー側に向かって各々櫛歯状に伸び出すように形成された電極指群と、を各々備えると共に弾性波の伝搬方向に互いに離間するように圧電基板上に配置された入力側IDT電極及び出力側IDT電極と、
これら入力側IDT電極及び出力側IDT電極間に設けられ、弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のグレーティング部バスバーと、これら一対のグレーティング部バスバー間に接続されたグレーティング電極指群と、を有するグレーティング反射器と、を備え、
前記グレーティング反射器は、
波長が基本波の半分の2倍波を前記入力側IDT電極に向かって反射させるために、前記基本波の波長をλとすると、
長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指が隙間領域を介して1組となって弾性波の伝搬方向に沿って設けられたダブル電極構造を備え、
このダブル電極構造がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域と、ダブル電極構造が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域と、が連続して設けられていることを特徴とする。
【0008】
前記グレーティング電極指の幅寸法は、例えばYカットZ伝搬ニオブ酸リチウムを基板として用いた場合には、前記ダブル電極構造におけるグレーティング電極指同士の隙間寸法よりも広くなるように形成されていることが好ましい。
前記補助反射領域は、前記グレーティング反射器における前記入力側IDT電極側及び前記出力側IDT電極側の少なくとも一方または両方に配置されていることが好ましく、あるいは例えば4箇所以上に配置されていても良い。
前記入力側IDT電極の電極指、前記出力側IDT電極の電極指及び前記グレーティング反射器のグレーティング電極指は、前記弾性波の伝搬方向に直交する方向における一方側から他方側に向かって各々の幅寸法及び離間寸法からなる配列パターンが広がるように配置されたテーパー型の電極であり、
前記グレーティング電極指の配列パターンは、前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極の一方側のIDT電極の配列パターンが連続して受け継がれるように配置されると共に、前記他方側のIDT電極とグレーティング反射器との間における境界ラインにてこの他方側のIDT電極の配列パターンと接続され、
前記グレーティング反射器は、この境界ラインよりも前記一方側のIDT電極側において、前記ダブル電極構造が配置されていることが好ましい。
前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極は、各々DART電極であっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、弾性波フィルタにおいて伝搬する弾性波の基本波の波長をλとすると、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指が隙間領域を介して配置されたダブル電極構造を弾性波の伝搬方向に沿って設けると共に、このダブル電極構造がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域と、ダブル電極構造が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域と、を連続して設けているので、波長が基本波の半分の2倍波について前記入力側IDT電極に向かって反射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【図2】上述の弾性波フィルタの一部を拡大して模式的に示した平面図である。
【図3】上述の弾性波フィルタにおいて弾性波の伝搬する様子を示す模式図である。
【図4】従来の弾性波フィルタにおいて得られる特性を示す特性図である。
【図5】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図6】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図7】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図8】グレーティング電極指の幅寸法に応じて反射する2倍波の量を示す特性図である。
【図9】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図10】グレーティング反射器における反射特性を模式的に示す模式図である。
【図11】グレーティング反射器における反射特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。
【図12】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図13】本発明の弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図14】本発明の弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の弾性波フィルタ例えばSAWフィルタについて、図1を参照して説明する。このSAWフィルタは、例えばLiNbO3などからなる圧電基板11のY−Z面上(YカットZ伝搬ニオブ酸リチウム)において、互いに離間して形成されたテーパー型(スラント型)の入力側IDT電極12及び出力側IDT電極13を備えている。これらのIDT電極12、13は、後述するように、弾性波を入力側IDT電極12から出力側IDT電極13へと伝搬させるように、一方向性電極であるDART(Distributed acoustic reflection transducer)電極として夫々構成されている。また、これらIDT電極12、13では、波長が基本波の半分であって周波数がこの基本波の約2倍の2倍波と、波長が基本波の1/3であって周波数が基本波の約3倍の3倍波と、についても基本波と同様に入力側IDT電極12から出力側IDT電極13に伝搬する。これらのIDT電極12、13は、例えばアルミニウムなどの金属膜により構成されている。尚、各々のIDT電極12、13の側方側における圧電基板11の端部領域には、これらのIDT電極12、13を介して当該領域に伝搬する不要な弾性波を吸収するための図示しない吸音材(ダンパー)が形成されている。
【0012】
入力側IDT電極12において、14a、14bは、それぞれ一方側のバスバー及び他方側のバスバーであり、互いに平行となるように、図1中夫々手前側及び奥側に形成されている。また、一方側のバスバー14aは接地されており、他方側のバスバー14bは入力ポート21に接続されている。図1中15は、入力側IDT電極12のバスバー14a、14bの各々から対向するバスバー14b、14aに向かって互いに交互に櫛歯状となるように伸び出す電極指であり、26は一方側のバスバー14aから他方側のバスバー14bに向かって伸びる反射電極である。
【0013】
これらの電極指15及び反射電極26は、バスバー14a、14bの各々から互いに隣り合うように形成された一対の電極指15、15と、これらの電極指15に隣接するようにバスバー14aから伸びる反射電極26と、が1組になって所定の配列パターン(周期単位)λで弾性波の伝搬方向に沿って周期的に繰り返されるように配置されている。そのため、この入力側IDT電極12では、周期単位λと同じ長さの波長の弾性波が伝搬することになる。この周期単位λと同じ波長の弾性波を基本波と呼ぶ。
【0014】
また、電極指15及び反射電極26の配列パターンは、図1中奥側のバスバー14bから手前側のバスバー14aに向かって周期単位λが大きくなるように、電極指15及び反射電極26の幅寸法及びこれら電極指15、15間及び電極指15と反射電極26との間の間隔寸法が徐々に広がるように形成されている。従って、弾性波の伝搬路であるトラックをTrとすると、弾性波の伝搬方向に対して直交方向には、奥側のバスバー14bから手前側のバスバー14aにかけて、周期単位λが狭いTr1から広いTr2まで形成されていることになる。尚、図1では、電極指15及び反射電極26の幅寸法については、図示の簡略化のため、一定の幅として描画してある。
【0015】
この例では、反射電極26の幅寸法及び隣り合う電極指15、15において電極指15の中心を通る直線同士の間の寸法は、夫々3λ/8、λ/4となっている。また、電極指15の幅寸法及び電極指15、15間の離間距離は、夫々λ/8となっている。
【0016】
出力側IDT電極13は、入力側IDT電極12と同様の一方向性電極として構成されており、具体的には既述の図1に示すように、一方側のバスバー14c及び他方側のバスバー14dを備えている。一方側のバスバー14cは図1中手前側に配置されて出力ポート22に接続され、他方側のバスバー14dは奥側に配置されて接地されている。また、出力側IDT電極13は、入力側IDT電極12と同様に、弾性波の伝搬方向に沿って周期単位λが一定となり、また奥側のバスバー14dから手前側のバスバー14cに向かって周期単位λがTr1からTr2まで広がる配列パターンとなるように配置された電極指15及び反射電極26を備えている。この出力側IDT電極13の電極指15及び反射電極26の幅寸法や間隔寸法についても、既述の入力側IDT電極12における配列パターンと同じになるように形成されている。
【0017】
入力側IDT電極12と出力側IDT電極13との間には、接地されたグレーティング反射器16が例えばアルミニウムなどの金属により形成されており、このグレーティング反射器16は、弾性波の伝搬方向に沿って平行となるように配置された一対のグレーティング部バスバー18a、18bを備えている。一方のグレーティング部バスバー18aは図1中手前側に形成され、他方のグレーティング部バスバー18bは奥側に配置されている。これらのグレーティング部バスバー18a、18bの間には、既述の電極指15と同様に、弾性波の伝搬方向に対して概略直交方向に伸びる複数のグレーティング電極指17が形成されており、これらのグレーティング電極指17は、長さ方向における一端側及び他端側が夫々グレーティング部バスバー18a、18bに接続されている。
【0018】
続いて、このグレーティング電極指17の具体的なレイアウト及びこのようにグレーティング電極指17を配置した理由について詳述する。このグレーティング電極指17は、図1中奥側のグレーティング部バスバー18bから手前側のバスバー18aに向かって、既述のトラックTr1からトラックTr2までの弾性波が伝搬するように、幅寸法及び離間寸法からなる配列パターンが徐々に広がるように構成されている。また、このグレーティング電極指17の配列パターンは、出力側IDT電極13における電極指15及び反射電極26の配列パターンが出力側IDT電極13側から入力側IDT電極12に向かってそのまま延長されるように形成されており、グレーティング反射器16と入力側IDT電極12との間における境界ライン20にて当該入力側IDT電極12における配列パターンと接続されている。即ち、グレーティング電極指17は、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4(またはλ/2)となり、またIDT電極13におけるグレーティング反射器16に近接する電極指15と、当該電極指15に隣接するグレーティング電極指17と、の間の隙間寸法が夫々λ/8となっている。そして、このグレーティング電極指17の配列パターンは、入力側IDT電極12との間にバスバー18a、18b間に亘って幅寸法がλ/8の隙間領域が形成されるように、境界ライン20において切り欠かれた状態となっている。そのため、後述のダブル電極構造31は、この境界ライン20において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずに、グレーティング電極指17がやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトとなっている領域(トラックTr)が形成されている。
【0019】
ここで、グレーティング電極指17のレイアウト及びグレーティング反射器16において伝搬する弾性波の特性について、説明を簡略化するために、始めにトラックTr1からTr2までにおけるある一つのトラックTr具体的には図1中手前側のグレーティング部バスバー18aに近接する領域におけるトラックTrに着目して、図2を参照して説明する。従って、このグレーティング反射器16では、この図2において当該トラックTrを例に説明する特性とほぼ同じ特性を持つ弾性波が、既述のトラックTr1からTr2までに亘って伝搬することになる。尚、図1及び図2では、グレーティング電極指17の本数について簡略化して描画している。
【0020】
グレーティング電極指17は、図2に模式的に示すように、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となるように、2本のグレーティング電極指17、17が一組となって複数箇所に配置されている。これらの互いに隣接する2本のグレーティング電極指17、17の組をダブル電極構造31と呼ぶと、この例ではダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17、17間の隙間寸法は、例えば3/40λとなっている。また、ダブル電極構造31における各々のグレーティング電極指17、17の幅寸法は、互いに等しくなっており、この例では各々7/40λとなっている。従って、グレーティング電極指17の幅寸法及び隙間寸法を夫々L(ライン)及びS(スペース)とすると、一つのグレーティング電極指17におけるライン及びスペースに対するラインの比であるライン占有率η(=L/(L+S))は、この例では0.7になっている。
【0021】
ここで、互いに隣接するダブル電極構造31、31の配列周期、即ち例えば図2中各々のダブル電極構造31、31における左側のグレーティング電極指17、17の左側の縁同士の間の距離を配列間隔と呼ぶと、グレーティング反射器16には、このダブル電極構造31がλ/2の配列間隔で連続的に複数配置された主反射領域32が中央部側に形成されている。従って、この主反射領域32では、偶数本のグレーティング電極指17が3/40λの隙間領域を介して配置されていることになる。
【0022】
また、弾性波の伝搬方向における主反射領域32の両側には、当該主反射領域32の端部におけるダブル電極構造31との間の配列間隔が各々3/4λとなるように、各々ダブル電極構造31、31が配置されて補助反射領域33、33を形成している。これらの各領域32、33間の隙間寸法は、例えば13/40λとなっている。従って、このグレーティング反射器16は、この例では補助反射領域33が2箇所に配置されているので、弾性波の伝搬方向に沿って偶数本のグレーティング電極指17を3/40λの隙間領域を介して配置すると共に、任意の位置この例では当該グレーティング反射器16の右側及び左側から夫々3本目(図2参照)のグレーティング電極指17、17を取り除いて2つの領域32、33の境界としたレイアウトを採っていると言える。尚、図2において、上側には既述のように、1つのトラックTrにおける弾性波フィルタを模式的に示しており、この図2の下側には入力側IDT電極12における右側の領域及びグレーティング反射器16における左側の領域の一部(図2中上側の一点鎖線で囲んだ領域)を拡大して示している。
【0023】
続いて、グレーティング反射器16においてこのようにグレーティング電極指17を配置した理由について、図3を参照して説明する。先ず、このフィルタにおいて発生する弾性波について説明する。
既述のように、一方向性電極であるDART電極では、基本波と共に2倍波及び3倍波についても励振され、入力側IDT電極12から出力側IDT電極13に伝搬して出力ポート22に受信されてしまう。このDART電極を用いた場合に出力ポート22から受信される周波数特性について、基本波の中心周波数を140MHzに設定すると共にIDT電極12、13間に既述のグレーティング反射器16に代えてシールド電極として板状のベタ電極を配置した場合に得られる特性を図4に示す。この図4から分かるように、基本波の中心周波数の140MHzのほぼ2倍及び3倍の位置に2倍波及び3倍波が不要波として現れている。
【0024】
ここで、IDT電極12、13において基本波(波長λ)が発生している様子を図3(a)に模式的に示す。そして、この基本波の振幅が正の領域では電極(電極指15、15、反射電極26)において「+」の電荷が発生し、弾性波の振幅が負の領域では当該電極で「−」の電荷が発生している場合を考えると、一つの周期単位λの範囲内では、これら電極で発生する電荷の総量が零にならないことが分かる。従って、これらの電極で励振された各々の基本波は、互いに打ち消し合わずに例えば入力側IDT電極12から出力側IDT電極13に向かって伝搬していく。尚、弾性波は、実際には各電極間の交差領域にて励振されるが、ここでは説明を簡略化するため、これらの電極にて励振されるものとして記載している。
【0025】
一方、2倍波の波長をλ2(λ2=λ/2)とすると、図3(b)に示すように、この2倍波についても一つの周期内において電荷の総量が零にならないので、同様に出力側IDT電極13に向かって伝搬していく。3倍波についても同様である。このように、基本波と共に2倍波や3倍波が伝搬していくのは、DART電極などの一方向性電極に特有の現象である。
【0026】
この時、3倍波は、通常であれば2倍波よりも励振効率が小さく、マッチング回路によって減衰する場合が多い。更に、この3倍波では、波長比膜厚が基本波の3倍となるため、グレーティング電極指17の各々における反射量が基本波や2倍波よりも大きい。そのため3倍波については問題とならないことが多いが、2倍波については不要波として減衰特性を劣化させる場合がある。そこで、この2倍波について減衰量を多く取ることができるグレーティング電極指17のレイアウトについて、以下のように検討した。
【0027】
先ず、ダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17の幅寸法及び離間寸法について、IDT電極12、13における電極指15と同様の寸法(グレーティング電極指17の幅寸法:λ/8、グレーティング電極指17、17間の離間寸法:λ/8)に設定する(ライン占有率η(L/(L+S)=0.5))と共に、2倍波及び3倍波がどのように伝搬するか検討した。その結果、基本波については、図5に実線で示すように、グレーティング反射器16に代えて板状のベタ電極を形成した場合(図5中点線)よりも、回折及び屈折の影響が軽減されて、この基本波における通過周波数帯域のエネルギーロス及びリップルが小さくなり、回折効果により劣化していた高域側の減衰傾度(減衰特性)が改善されていた。尚、この図5(b)は、同図(a)の一部を拡大して示したものである。
【0028】
一方、2倍波及び3倍波については、図6に示すように、IDT電極12、13間にベタ電極を形成した場合よりも、減衰量が平均5dB程度増えている(入力側IDT電極12側への反射量が多い)ことが分かった。この理由について検討するため、既述の図3に示したように、1つのトラックTrについてシミュレーションを行った。その結果、図7に示すように、グレーティング反射器16を設けずにベタ電極を配置した場合に比べて、ダブル電極構造31による反射のストップバンド特性により、2倍波のメインローブにおける応答が欠ける(減衰量が多くなる)ことが分かった。尚、図6(b)は、同図(a)の一部を拡大して示したものである。
【0029】
即ち、図3(c)に示すように、グレーティング反射器16では、グレーティング電極指17の間隔がλ/4に設定されており、また隣接する2本のグレーティング電極指17、17の幅寸法が互いに等しくなっている。そのため、基本波については、互いに隣り合うグレーティング電極指17、17において反射する波長の差がλ/2(=λ/4+λ/4)となって逆相となり、またこれら反射波の振幅強度が等しくなるので、これらグレーティング電極指17、17同士の間における反射係数が等しくなり、従ってこれら反射波が互いに打ち消し合って見かけ上反射が起こらないことになる。
【0030】
一方、2倍波については、同図(d)に示すように、互いに隣り合うグレーティング電極指17、17において反射する波長の差がλ2(λ2:2倍波の波長、λ2=λ/2)となる。そのため、この2倍波から見ると、当該2倍波の波長の半分の周期でグレーティング電極指17が1本配置された正規型となるため、互いに隣接するグレーティング電極指17、17で各々発生する反射波同士が互いに同相となって増幅し合って入力側IDT電極12へと反射して、出力側IDT電極13への伝搬が抑えられることになる。従って、グレーティング反射器16を設けることにより、既述の図6のように、基本波については出力側IDT電極13への伝搬を妨げずに、2倍波及び3倍波については反射が生じて出力ポート22への伝達が抑えられることが分かる。
【0031】
この時の2倍波のメインローブの減少量は5.5dB程度となっており、図6と同程度の結果となっていた。尚、既述の各シミュレーションにおけるIDT電極12、13の互いに交差する電極指15、15間の寸法(開口長)については適度なインピーダンスとなるように設定しており、また同IDT電極12、13の励振及び反射についても間引き重み付けを行っている。以下のシミュレーションについても同様である。また、この図3は、弾性波フィルタを側方側から見た側面を模式的に示している。
【0032】
そこで、このグレーティング反射器16における2倍波の反射量を多くすることにより、既述の図6よりも優れた特性のフィルタが得られると考えられる。そのため、続いてグレーティング電極指17の幅寸法を変えることによって2倍波の反射量がどのように変化するか確認した。ここで、グレーティング電極指17の幅寸法を変えるにあたって、基本波については入力側IDT電極12側に反射しないようにするために、1つのダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17、17間の離間距離をλ/4に保つと共に、グレーティング電極指17、17間の隙間寸法が短くなるように、既述のライン占有率η(L/(L+S))を変化させてシミュレーションを行った。この結果を2倍波の反射率κ’12(κ’12:モード間結合係数)として図8に示す。この図8から、ライン占有率ηを増加させることにより、即ちグレーティング電極指17の幅寸法を太くしていくことにより、2倍波の反射率(反射量)が増加していくことが分かる。
【0033】
そこで、図3(e)に示すように、ライン占有率ηを例えば0.9とした場合(既述の主反射領域32がグレーティング反射器16の全体に配置されている場合)について、既述の図7と同様に1つのトラックTrについてシミュレーションを行ったところ、図9に示すように、反射のストップバンド幅が広がり、2倍波のメインローブが大きく欠けて減衰量が増加していた。そのため、トラックTr1からTr2に亘ってこの幅寸法のグレーティング電極指17を並べることにより、グレーティング反射器16に代えてベタ電極を配置した場合と比較して、2倍波のピークレベルが10dB程度減少すると考えられる。
【0034】
しかし、この図9のグラフでは、2倍波のメインローブのピークレベルが大きく減少しているが、当該メインローブの両端に角状のピークが残っており、フラットな特性が得られていない。そこで、本発明では、この角状のピークについても減少させるために、ライン占有率ηが0.9に近づく程度この例では0.7となるようにグレーティング電極指17を配置すると共に、ダブル電極構造31をλ/2の配列間隔で並べた主反射領域32に加えて、このダブル電極構造31を3/4λの配列間隔で配列した補助反射領域33を設けている。
【0035】
即ち、補助反射領域33を配置することによって、図3(f)に示すように、例えば入力側IDT電極12における任意の電極指15から見た時に、各々の領域32、33から反射する2倍波は、互いの位相が180°異なり、反射係数が逆相となる。いわば、補助反射領域33を設けることによって、図10に示す2倍波の反射特性について重み付けを行っていると言える。そのため、このような反射特性の重み付けを行った補助反射領域33をグレーティング反射器16に配置することによって、図12に示すように、2倍波のメインローブについて、角状のピークがほぼフラットになり、ベタ電極を配置した場合よりも15dB以上低減できる。図11には、この図10に示した反射特性についてシミュレーションを行った結果を示す。この図11中横軸には周波数、縦軸にはグレーティング反射器16の(機械的)反射特性をリターンロスとして示しており、リターンロスが0dBとは、全反射して入力側IDT電極12に弾性波が全て戻ってくることを意味している。また、この図11では、ダブル電極構造31を全てλ/2の配列間隔で配置した特性を実線で示し、このλ/2の配列間隔のダブル電極構造31に3/4λの配列間隔のダブル電極構造31を混在させた場合の特性を点線で示している。この図11から、3/4λの配列間隔のダブル電極構造31をλ/2の配列間隔のダブル電極構造31と共に配置することにより、λ/2の配列間隔だけのダブル電極構造31を配置した場合に比べて、ピークの反射率が若干減少しているが、メインローブの幅が広がり、入力側IDT電極12に反射する周波数の範囲が広くなっていることが分かる。
また、以上において説明した2倍波と同様に、3倍波についても反射によって出力側IDT電極13への伝搬が抑えられることになる。
【0036】
続いて、以上において説明したトラックTrとほぼ同様のレイアウトでTr1からTr2までに亘ってグレーティング電極指17が配置されたフィルタ全体の構成及び特性について説明する。このトラックTrよりも奥側のバスバー14bに近接する領域では、図1に示すように、既述の補助反射領域33、主反射領域32及び補助反射領域33に加えて、これら各領域32、33に左側(入力側IDT電極12側)から隣接するように、主反射領域32が同様のレイアウトで配置されている。即ち、補助反射領域33における入力側IDT電極12側のグレーティング電極指17との間の配列間隔が3/4λとなるように、ダブル電極構造31が複数配置された主反射領域32が形成されている。そして、境界ライン20において、入力側IDT電極12との間に幅寸法がλ/8の隙間領域が形成されるように、奥側のグレーティング部バスバー18bから伸びるグレーティング電極指17の先端部が切り欠かれている。
【0037】
そのため、既述のように、各ダブル電極構造31は、この境界ライン20において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずに、グレーティング電極指17がやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトとなっている領域(トラックTr)が形成されていることになる。言い換えると、グレーティング反射器16は、境界ライン20よりも出力側IDT電極13側において、詳しくは境界ライン20よりもλ/2程度図1中右側に離れた位置から出力側IDT電極13側において、ダブル電極構造31が形成されていることになる。従って、当該トラックTrでは境界ライン20において基本波の反射波同士が打ち消し合わずに、入力側IDT電極12に向かって僅かに反射する場合がある。しかし、グレーティング反射器16の内部ではダブル電極構造31が複数箇所に配置されているので、基本波はこの境界ライン20を越えて出力側IDT電極13側に向かう時には反射が抑えられるため、ほぼ全量のエネルギーが出力側IDT電極13に向かって伝搬していく。そのため、このフィルタでは、トラックTr1からTr2までに亘って、基本波については入力側IDT電極12への反射が抑えられると共に、2倍波については出力側IDT電極13への伝搬が抑制される。
【0038】
上述の実施の形態によれば、基本波の波長をλとすると、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指17が隙間領域を介して配置されたダブル電極構造31を用いて、このダブル電極構造31がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域32と、ダブル電極構造31が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域33と、を連続して設けている。そのため、基本波については入力側IDT電極12への反射を抑えて前記入力側IDT電極12から前記出力側IDT電極13に伝搬させると共に、2倍波については前記入力側IDT電極12に向かって反射させることができる。従って、2倍波などの高調波成分の低減された良好なフィルタ特性を得ることができる。
この時、2倍波などの高調波成分の伝搬を抑えるにあたって、各IDT電極12、13との間の弾性波の伝搬速度を揃えるために従来から用いられているグレーティング反射器16を利用しているので、例えばフィルタの大型化や製造コストの増大を抑えることができる。
【0039】
また、補助反射領域33をグレーティング反射器16の概略両側に設けているので、既述のように2倍波のメインローブのピーク形状がフラットとなるようにグレーティング反射器16における反射特性に対して重み付けすることができる。更に、グレーティング電極指17の幅寸法を太くして既述のライン占有率ηを大きくしているので、高調波成分をより一層低減することができる。
また、IDT電極12、13間にグレーティング反射器16を配置しているので、フィルタにおける弾性波の伝搬速度を揃えることができる。そのため、弾性波の回折や屈折の影響を抑えて、通過周波数帯域におけるエネルギーロス及びリップルを改善することができ、高域側の減衰傾度(減衰特性)について良好な特性が得られる。更に、IDT電極12、13及びグレーティング反射器16において、周期単位λの接続部が境界ライン20だけになるように各電極指15及びグレーティング電極指17を配置しているので、基本波については回折、屈折及び反射を抑えることができる。更にまた、このライン20を入力側IDT電極12とグレーティング反射器16との間に設けているので、グレーティング電極指17のレイアウトを設計しやすいというメリットがある。
【0040】
既述の例では、主反射領域32の両側に補助反射領域33、33を配置したが、生成する2倍波のメインローブのピーク形状に応じて位置を調整して例えばグレーティング反射器16の中央位置に補助反射領域33を設けても良い。更に、この補助反射領域33としては、3/4λの配列間隔で配置したが、例えば圧電基板11の材質、この圧電基板11上における弾性波の伝搬方位、各IDT電極12、13及びグレーティング反射器16の構成材料や厚さ寸法、電極指15及びグレーティング電極指17の幅寸法及び端部の形状などに応じて、発生する2倍波のメインローブのピーク形状が例えば平坦になるように、例えば3/4λ×±5%の範囲で各々ずらして配置しても良い。また、主反射領域32についても同様の範囲でλ/2の配列間隔からずらして配置しても良い。また、既述のライン占有率ηについては、各々のダブル電極構造31毎に個別に設定しても良い。
【0041】
ここで、例えばグレーティング電極指17の配列パターンについて、入力側IDT電極12に近接する領域については当該入力側IDT電極12の配列パターンが連続して受け継がれるように配置すると共に、出力側IDT電極13に近接する領域については当該出力側IDT電極13の配列パターンが連続して受け継がれるように配置して、既述のライン20を例えばグレーティング反射器16の中央位置に形成した場合には、ライン20の右側領域及び左側領域にて夫々入力側IDT電極12に向かって反射する2倍波が互いに打ち消し合ってしまう場合がある。そこで、このライン20については、入力側IDT電極12とグレーティング反射器16との間あるいはグレーティング反射器16と出力側IDT電極13との間に形成されるように配置される。従って、ダブル電極構造31において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずにやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトを採る領域は、グレーティング反射器16と入力側IDT電極12との間あるいはグレーティング反射器16と出力側IDT電極13との間ということになる。
【0042】
また、各IDT電極12、13とグレーティング反射器16との間の離間寸法をλ/8に設定すると共に、電極指15及びグレーティング電極指17の夫々の配列パターンが連続して引き継がれるようにこれらIDT電極12、13及びグレーティング反射器16を配置したが、当該離間寸法を例えばλ/8以上に設定しても良い。その場合であっても、ダブル電極構造31により基本波の入力側IDT電極12への反射が抑えられ、2倍波については出力側IDT電極13への伝搬が抑えられる。従って、既述のダブル電極構造31において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずにやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトを採る領域において、図13に示すように、例えば奥側のグレーティング部バスバー18bから伸びるグレーティング電極指17の先端部が境界ライン20に沿って切り欠かれた部位におけるダブル電極構造31を取り除くことにより、いわば全てのトラックTr1〜Tr2に亘ってダブル電極構造31だけが配置されるようにしても良い。
【0043】
また、既述の例では、ある一つのトラックTrについて2倍波のメインローブのピークがほぼフラットとなるようにグレーティング反射器16を形成したが、各トラックTrの特性を合成した周波数特性が良好となるようにグレーティング反射器16やIDT電極12、13の配置を最適化しても良い。更に、グレーティング電極指17の幅寸法をダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17、17間の隙間寸法よりも広く形成したが、このグレーティング電極指17の幅寸法については、圧電基板11の材質、切断方位、グレーティング電極指17の材質に応じて、2倍波の反射量が多くなるように種々設定しても良い。
【0044】
IDT電極12、13としては、電極指15について重み付けを行っても良い。更に、既述の例では、弾性波の伝搬方向における入力側IDT電極12の中央位置と、弾性波の伝搬方向における出力側IDT電極13の中央位置と、の間の離間寸法を各トラックTrにおいて等しく設定して、各IDT電極12、13における電極指15の本数が各トラックTrにおいて異なるようにしたが、例えば図14に示すように、各々のIDT電極12、13における電極指15の本数を各トラックTrにおいて等しくするために、弾性波の伝搬方向における入力側IDT電極12の中央位置と、弾性波の伝搬方向における出力側IDT電極13の中央位置と、の間の離間寸法が各トラックTrにおいて異なるようにしても良い。尚、この例においても、既述の図1と同様に各IDT電極12、13及びグレーティング反射器16はテーパー型に形成されているが、図14では簡略化して描画している。また、この図14では電極指15を曲線的に描画しているが、電極指15を直線状とするか曲線状とするかは設計上の調整の問題であり、一般的(例えば既述の図1のIDT電極12、13)には僅かに曲線状に形成される。
【0045】
更に、電極指15をテーパー状に配置せずに、あるトラックの弾性波が伝搬するように、既述の図2のようにバスバー14に対して各々の電極指15を直交させても良い。更にまた、IDT電極12、13としては、DART電極以外にも、基本波と共に2倍波の伝搬する電極例えばEWC−SPUDT(Electlode Width Controlled−SPUDT)電極であっても良いし、このような2倍波の伝搬する電極をこれらIDT電極12、13のうち少なくとも入力側IDT電極12だけに設けても良い。
【符号の説明】
【0046】
11 圧電基板
12 入力側IDT電極
13 出力側IDT電極
16 グレーティング反射器
17 グレーティング電極指
31 ダブル電極構造
32 主反射領域
33 補助反射領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタ例えば(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
IDT(IDT:インターディジタルトランスデューサ)電極を圧電基板上に入力側電極及び出力側電極として配置したトランスバーサルタイプの弾性波フィルタ例えばSAWフィルタにおいて、これら電極間における弾性波の伝搬路に電極を配置せずに自由表面としたり、あるいは入出力電極間における結合容量を小さくするためにこの伝搬路の一部に例えば角型のベタ電極をシールド電極として配置したりする場合がある。このような場合には、弾性波の伝搬速度は、入出力電極間における伝搬路と、複数の電極指が弾性波の伝搬方向に対して概略直交方向に並ぶグレーティングである各電極との間で異なっている。そのため、例えば入力側電極から出力側電極に向かって弾性波が出力される時に屈折が起こり、通過周波数帯域においてエネルギーロスが発生する場合がある。そこで、この伝搬路と各電極との間において弾性波の伝搬速度を揃えるために、当該伝搬路にグレーティング型の電極を配置する技術が知られている。
【0003】
また、既述の入力側及び出力側のIDT電極として、一対のバスバーの一方側から他方側に向かって電極指の幅寸法及び離間寸法が広がるように、電極指群をテーパー型(スラント型)に配置する場合がある。この場合には、電極指の幅寸法及び離間寸法からなる周期単位λに対応する弾性波の伝搬路であるトラックをTrとすると、一方側のバスバーから他方側のバスバーに向かって、周期単位λが狭いトラックTrから広いトラックTrまで形成されていることになる。従って、各々のトラックTrにおける基本波の波長をλとすると、例えば特許文献1のように、入出力電極間の伝搬路に幅寸法がλ/8のライン(グレーティング電極指)をλ/8ずつ離間させて設けることによって、この伝搬路と各電極とにおける弾性波の伝搬速度がほぼ揃うことになる。そのため、弾性波の屈折の影響が低減されて、良好な周波数特性を得ることができる。
【0004】
しかし、この特許文献1には、入出力電極として例えばDART(Distributed acoustic reflection transducer)電極などの一方向性電極を用いた場合において、基本波と共に入力側電極から出力側電極に向かって伝搬する2倍波(波長が基本波の半分の弾性波)については具体的に検討されていない。
また、特許文献2には、グレーティング型のシールド電極における電極周期を調整することによってレイリー波へのリーキー波の混入を抑える技術が記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−89013
【特許文献2】特開2005−203996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力側IDT電極、出力側IDT電極及びこれら電極間に介設されたグレーティング型の電極を備えた弾性波フィルタにおいて、波長が基本波の半分である2倍波の出力側IDT電極への伝搬を抑えることのできる弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弾性波フィルタは、
弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のバスバーと、一方のバスバーから他方のバスバー側に向かって各々櫛歯状に伸び出すように形成された電極指群と、を各々備えると共に弾性波の伝搬方向に互いに離間するように圧電基板上に配置された入力側IDT電極及び出力側IDT電極と、
これら入力側IDT電極及び出力側IDT電極間に設けられ、弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のグレーティング部バスバーと、これら一対のグレーティング部バスバー間に接続されたグレーティング電極指群と、を有するグレーティング反射器と、を備え、
前記グレーティング反射器は、
波長が基本波の半分の2倍波を前記入力側IDT電極に向かって反射させるために、前記基本波の波長をλとすると、
長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指が隙間領域を介して1組となって弾性波の伝搬方向に沿って設けられたダブル電極構造を備え、
このダブル電極構造がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域と、ダブル電極構造が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域と、が連続して設けられていることを特徴とする。
【0008】
前記グレーティング電極指の幅寸法は、例えばYカットZ伝搬ニオブ酸リチウムを基板として用いた場合には、前記ダブル電極構造におけるグレーティング電極指同士の隙間寸法よりも広くなるように形成されていることが好ましい。
前記補助反射領域は、前記グレーティング反射器における前記入力側IDT電極側及び前記出力側IDT電極側の少なくとも一方または両方に配置されていることが好ましく、あるいは例えば4箇所以上に配置されていても良い。
前記入力側IDT電極の電極指、前記出力側IDT電極の電極指及び前記グレーティング反射器のグレーティング電極指は、前記弾性波の伝搬方向に直交する方向における一方側から他方側に向かって各々の幅寸法及び離間寸法からなる配列パターンが広がるように配置されたテーパー型の電極であり、
前記グレーティング電極指の配列パターンは、前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極の一方側のIDT電極の配列パターンが連続して受け継がれるように配置されると共に、前記他方側のIDT電極とグレーティング反射器との間における境界ラインにてこの他方側のIDT電極の配列パターンと接続され、
前記グレーティング反射器は、この境界ラインよりも前記一方側のIDT電極側において、前記ダブル電極構造が配置されていることが好ましい。
前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極は、各々DART電極であっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、弾性波フィルタにおいて伝搬する弾性波の基本波の波長をλとすると、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指が隙間領域を介して配置されたダブル電極構造を弾性波の伝搬方向に沿って設けると共に、このダブル電極構造がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域と、ダブル電極構造が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域と、を連続して設けているので、波長が基本波の半分の2倍波について前記入力側IDT電極に向かって反射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【図2】上述の弾性波フィルタの一部を拡大して模式的に示した平面図である。
【図3】上述の弾性波フィルタにおいて弾性波の伝搬する様子を示す模式図である。
【図4】従来の弾性波フィルタにおいて得られる特性を示す特性図である。
【図5】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図6】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図7】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図8】グレーティング電極指の幅寸法に応じて反射する2倍波の量を示す特性図である。
【図9】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図10】グレーティング反射器における反射特性を模式的に示す模式図である。
【図11】グレーティング反射器における反射特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。
【図12】グレーティング反射器の有無に応じて変化する弾性波フィルタにおける特性を示す特性図である。
【図13】本発明の弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図14】本発明の弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の弾性波フィルタ例えばSAWフィルタについて、図1を参照して説明する。このSAWフィルタは、例えばLiNbO3などからなる圧電基板11のY−Z面上(YカットZ伝搬ニオブ酸リチウム)において、互いに離間して形成されたテーパー型(スラント型)の入力側IDT電極12及び出力側IDT電極13を備えている。これらのIDT電極12、13は、後述するように、弾性波を入力側IDT電極12から出力側IDT電極13へと伝搬させるように、一方向性電極であるDART(Distributed acoustic reflection transducer)電極として夫々構成されている。また、これらIDT電極12、13では、波長が基本波の半分であって周波数がこの基本波の約2倍の2倍波と、波長が基本波の1/3であって周波数が基本波の約3倍の3倍波と、についても基本波と同様に入力側IDT電極12から出力側IDT電極13に伝搬する。これらのIDT電極12、13は、例えばアルミニウムなどの金属膜により構成されている。尚、各々のIDT電極12、13の側方側における圧電基板11の端部領域には、これらのIDT電極12、13を介して当該領域に伝搬する不要な弾性波を吸収するための図示しない吸音材(ダンパー)が形成されている。
【0012】
入力側IDT電極12において、14a、14bは、それぞれ一方側のバスバー及び他方側のバスバーであり、互いに平行となるように、図1中夫々手前側及び奥側に形成されている。また、一方側のバスバー14aは接地されており、他方側のバスバー14bは入力ポート21に接続されている。図1中15は、入力側IDT電極12のバスバー14a、14bの各々から対向するバスバー14b、14aに向かって互いに交互に櫛歯状となるように伸び出す電極指であり、26は一方側のバスバー14aから他方側のバスバー14bに向かって伸びる反射電極である。
【0013】
これらの電極指15及び反射電極26は、バスバー14a、14bの各々から互いに隣り合うように形成された一対の電極指15、15と、これらの電極指15に隣接するようにバスバー14aから伸びる反射電極26と、が1組になって所定の配列パターン(周期単位)λで弾性波の伝搬方向に沿って周期的に繰り返されるように配置されている。そのため、この入力側IDT電極12では、周期単位λと同じ長さの波長の弾性波が伝搬することになる。この周期単位λと同じ波長の弾性波を基本波と呼ぶ。
【0014】
また、電極指15及び反射電極26の配列パターンは、図1中奥側のバスバー14bから手前側のバスバー14aに向かって周期単位λが大きくなるように、電極指15及び反射電極26の幅寸法及びこれら電極指15、15間及び電極指15と反射電極26との間の間隔寸法が徐々に広がるように形成されている。従って、弾性波の伝搬路であるトラックをTrとすると、弾性波の伝搬方向に対して直交方向には、奥側のバスバー14bから手前側のバスバー14aにかけて、周期単位λが狭いTr1から広いTr2まで形成されていることになる。尚、図1では、電極指15及び反射電極26の幅寸法については、図示の簡略化のため、一定の幅として描画してある。
【0015】
この例では、反射電極26の幅寸法及び隣り合う電極指15、15において電極指15の中心を通る直線同士の間の寸法は、夫々3λ/8、λ/4となっている。また、電極指15の幅寸法及び電極指15、15間の離間距離は、夫々λ/8となっている。
【0016】
出力側IDT電極13は、入力側IDT電極12と同様の一方向性電極として構成されており、具体的には既述の図1に示すように、一方側のバスバー14c及び他方側のバスバー14dを備えている。一方側のバスバー14cは図1中手前側に配置されて出力ポート22に接続され、他方側のバスバー14dは奥側に配置されて接地されている。また、出力側IDT電極13は、入力側IDT電極12と同様に、弾性波の伝搬方向に沿って周期単位λが一定となり、また奥側のバスバー14dから手前側のバスバー14cに向かって周期単位λがTr1からTr2まで広がる配列パターンとなるように配置された電極指15及び反射電極26を備えている。この出力側IDT電極13の電極指15及び反射電極26の幅寸法や間隔寸法についても、既述の入力側IDT電極12における配列パターンと同じになるように形成されている。
【0017】
入力側IDT電極12と出力側IDT電極13との間には、接地されたグレーティング反射器16が例えばアルミニウムなどの金属により形成されており、このグレーティング反射器16は、弾性波の伝搬方向に沿って平行となるように配置された一対のグレーティング部バスバー18a、18bを備えている。一方のグレーティング部バスバー18aは図1中手前側に形成され、他方のグレーティング部バスバー18bは奥側に配置されている。これらのグレーティング部バスバー18a、18bの間には、既述の電極指15と同様に、弾性波の伝搬方向に対して概略直交方向に伸びる複数のグレーティング電極指17が形成されており、これらのグレーティング電極指17は、長さ方向における一端側及び他端側が夫々グレーティング部バスバー18a、18bに接続されている。
【0018】
続いて、このグレーティング電極指17の具体的なレイアウト及びこのようにグレーティング電極指17を配置した理由について詳述する。このグレーティング電極指17は、図1中奥側のグレーティング部バスバー18bから手前側のバスバー18aに向かって、既述のトラックTr1からトラックTr2までの弾性波が伝搬するように、幅寸法及び離間寸法からなる配列パターンが徐々に広がるように構成されている。また、このグレーティング電極指17の配列パターンは、出力側IDT電極13における電極指15及び反射電極26の配列パターンが出力側IDT電極13側から入力側IDT電極12に向かってそのまま延長されるように形成されており、グレーティング反射器16と入力側IDT電極12との間における境界ライン20にて当該入力側IDT電極12における配列パターンと接続されている。即ち、グレーティング電極指17は、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4(またはλ/2)となり、またIDT電極13におけるグレーティング反射器16に近接する電極指15と、当該電極指15に隣接するグレーティング電極指17と、の間の隙間寸法が夫々λ/8となっている。そして、このグレーティング電極指17の配列パターンは、入力側IDT電極12との間にバスバー18a、18b間に亘って幅寸法がλ/8の隙間領域が形成されるように、境界ライン20において切り欠かれた状態となっている。そのため、後述のダブル電極構造31は、この境界ライン20において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずに、グレーティング電極指17がやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトとなっている領域(トラックTr)が形成されている。
【0019】
ここで、グレーティング電極指17のレイアウト及びグレーティング反射器16において伝搬する弾性波の特性について、説明を簡略化するために、始めにトラックTr1からTr2までにおけるある一つのトラックTr具体的には図1中手前側のグレーティング部バスバー18aに近接する領域におけるトラックTrに着目して、図2を参照して説明する。従って、このグレーティング反射器16では、この図2において当該トラックTrを例に説明する特性とほぼ同じ特性を持つ弾性波が、既述のトラックTr1からTr2までに亘って伝搬することになる。尚、図1及び図2では、グレーティング電極指17の本数について簡略化して描画している。
【0020】
グレーティング電極指17は、図2に模式的に示すように、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となるように、2本のグレーティング電極指17、17が一組となって複数箇所に配置されている。これらの互いに隣接する2本のグレーティング電極指17、17の組をダブル電極構造31と呼ぶと、この例ではダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17、17間の隙間寸法は、例えば3/40λとなっている。また、ダブル電極構造31における各々のグレーティング電極指17、17の幅寸法は、互いに等しくなっており、この例では各々7/40λとなっている。従って、グレーティング電極指17の幅寸法及び隙間寸法を夫々L(ライン)及びS(スペース)とすると、一つのグレーティング電極指17におけるライン及びスペースに対するラインの比であるライン占有率η(=L/(L+S))は、この例では0.7になっている。
【0021】
ここで、互いに隣接するダブル電極構造31、31の配列周期、即ち例えば図2中各々のダブル電極構造31、31における左側のグレーティング電極指17、17の左側の縁同士の間の距離を配列間隔と呼ぶと、グレーティング反射器16には、このダブル電極構造31がλ/2の配列間隔で連続的に複数配置された主反射領域32が中央部側に形成されている。従って、この主反射領域32では、偶数本のグレーティング電極指17が3/40λの隙間領域を介して配置されていることになる。
【0022】
また、弾性波の伝搬方向における主反射領域32の両側には、当該主反射領域32の端部におけるダブル電極構造31との間の配列間隔が各々3/4λとなるように、各々ダブル電極構造31、31が配置されて補助反射領域33、33を形成している。これらの各領域32、33間の隙間寸法は、例えば13/40λとなっている。従って、このグレーティング反射器16は、この例では補助反射領域33が2箇所に配置されているので、弾性波の伝搬方向に沿って偶数本のグレーティング電極指17を3/40λの隙間領域を介して配置すると共に、任意の位置この例では当該グレーティング反射器16の右側及び左側から夫々3本目(図2参照)のグレーティング電極指17、17を取り除いて2つの領域32、33の境界としたレイアウトを採っていると言える。尚、図2において、上側には既述のように、1つのトラックTrにおける弾性波フィルタを模式的に示しており、この図2の下側には入力側IDT電極12における右側の領域及びグレーティング反射器16における左側の領域の一部(図2中上側の一点鎖線で囲んだ領域)を拡大して示している。
【0023】
続いて、グレーティング反射器16においてこのようにグレーティング電極指17を配置した理由について、図3を参照して説明する。先ず、このフィルタにおいて発生する弾性波について説明する。
既述のように、一方向性電極であるDART電極では、基本波と共に2倍波及び3倍波についても励振され、入力側IDT電極12から出力側IDT電極13に伝搬して出力ポート22に受信されてしまう。このDART電極を用いた場合に出力ポート22から受信される周波数特性について、基本波の中心周波数を140MHzに設定すると共にIDT電極12、13間に既述のグレーティング反射器16に代えてシールド電極として板状のベタ電極を配置した場合に得られる特性を図4に示す。この図4から分かるように、基本波の中心周波数の140MHzのほぼ2倍及び3倍の位置に2倍波及び3倍波が不要波として現れている。
【0024】
ここで、IDT電極12、13において基本波(波長λ)が発生している様子を図3(a)に模式的に示す。そして、この基本波の振幅が正の領域では電極(電極指15、15、反射電極26)において「+」の電荷が発生し、弾性波の振幅が負の領域では当該電極で「−」の電荷が発生している場合を考えると、一つの周期単位λの範囲内では、これら電極で発生する電荷の総量が零にならないことが分かる。従って、これらの電極で励振された各々の基本波は、互いに打ち消し合わずに例えば入力側IDT電極12から出力側IDT電極13に向かって伝搬していく。尚、弾性波は、実際には各電極間の交差領域にて励振されるが、ここでは説明を簡略化するため、これらの電極にて励振されるものとして記載している。
【0025】
一方、2倍波の波長をλ2(λ2=λ/2)とすると、図3(b)に示すように、この2倍波についても一つの周期内において電荷の総量が零にならないので、同様に出力側IDT電極13に向かって伝搬していく。3倍波についても同様である。このように、基本波と共に2倍波や3倍波が伝搬していくのは、DART電極などの一方向性電極に特有の現象である。
【0026】
この時、3倍波は、通常であれば2倍波よりも励振効率が小さく、マッチング回路によって減衰する場合が多い。更に、この3倍波では、波長比膜厚が基本波の3倍となるため、グレーティング電極指17の各々における反射量が基本波や2倍波よりも大きい。そのため3倍波については問題とならないことが多いが、2倍波については不要波として減衰特性を劣化させる場合がある。そこで、この2倍波について減衰量を多く取ることができるグレーティング電極指17のレイアウトについて、以下のように検討した。
【0027】
先ず、ダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17の幅寸法及び離間寸法について、IDT電極12、13における電極指15と同様の寸法(グレーティング電極指17の幅寸法:λ/8、グレーティング電極指17、17間の離間寸法:λ/8)に設定する(ライン占有率η(L/(L+S)=0.5))と共に、2倍波及び3倍波がどのように伝搬するか検討した。その結果、基本波については、図5に実線で示すように、グレーティング反射器16に代えて板状のベタ電極を形成した場合(図5中点線)よりも、回折及び屈折の影響が軽減されて、この基本波における通過周波数帯域のエネルギーロス及びリップルが小さくなり、回折効果により劣化していた高域側の減衰傾度(減衰特性)が改善されていた。尚、この図5(b)は、同図(a)の一部を拡大して示したものである。
【0028】
一方、2倍波及び3倍波については、図6に示すように、IDT電極12、13間にベタ電極を形成した場合よりも、減衰量が平均5dB程度増えている(入力側IDT電極12側への反射量が多い)ことが分かった。この理由について検討するため、既述の図3に示したように、1つのトラックTrについてシミュレーションを行った。その結果、図7に示すように、グレーティング反射器16を設けずにベタ電極を配置した場合に比べて、ダブル電極構造31による反射のストップバンド特性により、2倍波のメインローブにおける応答が欠ける(減衰量が多くなる)ことが分かった。尚、図6(b)は、同図(a)の一部を拡大して示したものである。
【0029】
即ち、図3(c)に示すように、グレーティング反射器16では、グレーティング電極指17の間隔がλ/4に設定されており、また隣接する2本のグレーティング電極指17、17の幅寸法が互いに等しくなっている。そのため、基本波については、互いに隣り合うグレーティング電極指17、17において反射する波長の差がλ/2(=λ/4+λ/4)となって逆相となり、またこれら反射波の振幅強度が等しくなるので、これらグレーティング電極指17、17同士の間における反射係数が等しくなり、従ってこれら反射波が互いに打ち消し合って見かけ上反射が起こらないことになる。
【0030】
一方、2倍波については、同図(d)に示すように、互いに隣り合うグレーティング電極指17、17において反射する波長の差がλ2(λ2:2倍波の波長、λ2=λ/2)となる。そのため、この2倍波から見ると、当該2倍波の波長の半分の周期でグレーティング電極指17が1本配置された正規型となるため、互いに隣接するグレーティング電極指17、17で各々発生する反射波同士が互いに同相となって増幅し合って入力側IDT電極12へと反射して、出力側IDT電極13への伝搬が抑えられることになる。従って、グレーティング反射器16を設けることにより、既述の図6のように、基本波については出力側IDT電極13への伝搬を妨げずに、2倍波及び3倍波については反射が生じて出力ポート22への伝達が抑えられることが分かる。
【0031】
この時の2倍波のメインローブの減少量は5.5dB程度となっており、図6と同程度の結果となっていた。尚、既述の各シミュレーションにおけるIDT電極12、13の互いに交差する電極指15、15間の寸法(開口長)については適度なインピーダンスとなるように設定しており、また同IDT電極12、13の励振及び反射についても間引き重み付けを行っている。以下のシミュレーションについても同様である。また、この図3は、弾性波フィルタを側方側から見た側面を模式的に示している。
【0032】
そこで、このグレーティング反射器16における2倍波の反射量を多くすることにより、既述の図6よりも優れた特性のフィルタが得られると考えられる。そのため、続いてグレーティング電極指17の幅寸法を変えることによって2倍波の反射量がどのように変化するか確認した。ここで、グレーティング電極指17の幅寸法を変えるにあたって、基本波については入力側IDT電極12側に反射しないようにするために、1つのダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17、17間の離間距離をλ/4に保つと共に、グレーティング電極指17、17間の隙間寸法が短くなるように、既述のライン占有率η(L/(L+S))を変化させてシミュレーションを行った。この結果を2倍波の反射率κ’12(κ’12:モード間結合係数)として図8に示す。この図8から、ライン占有率ηを増加させることにより、即ちグレーティング電極指17の幅寸法を太くしていくことにより、2倍波の反射率(反射量)が増加していくことが分かる。
【0033】
そこで、図3(e)に示すように、ライン占有率ηを例えば0.9とした場合(既述の主反射領域32がグレーティング反射器16の全体に配置されている場合)について、既述の図7と同様に1つのトラックTrについてシミュレーションを行ったところ、図9に示すように、反射のストップバンド幅が広がり、2倍波のメインローブが大きく欠けて減衰量が増加していた。そのため、トラックTr1からTr2に亘ってこの幅寸法のグレーティング電極指17を並べることにより、グレーティング反射器16に代えてベタ電極を配置した場合と比較して、2倍波のピークレベルが10dB程度減少すると考えられる。
【0034】
しかし、この図9のグラフでは、2倍波のメインローブのピークレベルが大きく減少しているが、当該メインローブの両端に角状のピークが残っており、フラットな特性が得られていない。そこで、本発明では、この角状のピークについても減少させるために、ライン占有率ηが0.9に近づく程度この例では0.7となるようにグレーティング電極指17を配置すると共に、ダブル電極構造31をλ/2の配列間隔で並べた主反射領域32に加えて、このダブル電極構造31を3/4λの配列間隔で配列した補助反射領域33を設けている。
【0035】
即ち、補助反射領域33を配置することによって、図3(f)に示すように、例えば入力側IDT電極12における任意の電極指15から見た時に、各々の領域32、33から反射する2倍波は、互いの位相が180°異なり、反射係数が逆相となる。いわば、補助反射領域33を設けることによって、図10に示す2倍波の反射特性について重み付けを行っていると言える。そのため、このような反射特性の重み付けを行った補助反射領域33をグレーティング反射器16に配置することによって、図12に示すように、2倍波のメインローブについて、角状のピークがほぼフラットになり、ベタ電極を配置した場合よりも15dB以上低減できる。図11には、この図10に示した反射特性についてシミュレーションを行った結果を示す。この図11中横軸には周波数、縦軸にはグレーティング反射器16の(機械的)反射特性をリターンロスとして示しており、リターンロスが0dBとは、全反射して入力側IDT電極12に弾性波が全て戻ってくることを意味している。また、この図11では、ダブル電極構造31を全てλ/2の配列間隔で配置した特性を実線で示し、このλ/2の配列間隔のダブル電極構造31に3/4λの配列間隔のダブル電極構造31を混在させた場合の特性を点線で示している。この図11から、3/4λの配列間隔のダブル電極構造31をλ/2の配列間隔のダブル電極構造31と共に配置することにより、λ/2の配列間隔だけのダブル電極構造31を配置した場合に比べて、ピークの反射率が若干減少しているが、メインローブの幅が広がり、入力側IDT電極12に反射する周波数の範囲が広くなっていることが分かる。
また、以上において説明した2倍波と同様に、3倍波についても反射によって出力側IDT電極13への伝搬が抑えられることになる。
【0036】
続いて、以上において説明したトラックTrとほぼ同様のレイアウトでTr1からTr2までに亘ってグレーティング電極指17が配置されたフィルタ全体の構成及び特性について説明する。このトラックTrよりも奥側のバスバー14bに近接する領域では、図1に示すように、既述の補助反射領域33、主反射領域32及び補助反射領域33に加えて、これら各領域32、33に左側(入力側IDT電極12側)から隣接するように、主反射領域32が同様のレイアウトで配置されている。即ち、補助反射領域33における入力側IDT電極12側のグレーティング電極指17との間の配列間隔が3/4λとなるように、ダブル電極構造31が複数配置された主反射領域32が形成されている。そして、境界ライン20において、入力側IDT電極12との間に幅寸法がλ/8の隙間領域が形成されるように、奥側のグレーティング部バスバー18bから伸びるグレーティング電極指17の先端部が切り欠かれている。
【0037】
そのため、既述のように、各ダブル電極構造31は、この境界ライン20において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずに、グレーティング電極指17がやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトとなっている領域(トラックTr)が形成されていることになる。言い換えると、グレーティング反射器16は、境界ライン20よりも出力側IDT電極13側において、詳しくは境界ライン20よりもλ/2程度図1中右側に離れた位置から出力側IDT電極13側において、ダブル電極構造31が形成されていることになる。従って、当該トラックTrでは境界ライン20において基本波の反射波同士が打ち消し合わずに、入力側IDT電極12に向かって僅かに反射する場合がある。しかし、グレーティング反射器16の内部ではダブル電極構造31が複数箇所に配置されているので、基本波はこの境界ライン20を越えて出力側IDT電極13側に向かう時には反射が抑えられるため、ほぼ全量のエネルギーが出力側IDT電極13に向かって伝搬していく。そのため、このフィルタでは、トラックTr1からTr2までに亘って、基本波については入力側IDT電極12への反射が抑えられると共に、2倍波については出力側IDT電極13への伝搬が抑制される。
【0038】
上述の実施の形態によれば、基本波の波長をλとすると、長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指17が隙間領域を介して配置されたダブル電極構造31を用いて、このダブル電極構造31がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域32と、ダブル電極構造31が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域33と、を連続して設けている。そのため、基本波については入力側IDT電極12への反射を抑えて前記入力側IDT電極12から前記出力側IDT電極13に伝搬させると共に、2倍波については前記入力側IDT電極12に向かって反射させることができる。従って、2倍波などの高調波成分の低減された良好なフィルタ特性を得ることができる。
この時、2倍波などの高調波成分の伝搬を抑えるにあたって、各IDT電極12、13との間の弾性波の伝搬速度を揃えるために従来から用いられているグレーティング反射器16を利用しているので、例えばフィルタの大型化や製造コストの増大を抑えることができる。
【0039】
また、補助反射領域33をグレーティング反射器16の概略両側に設けているので、既述のように2倍波のメインローブのピーク形状がフラットとなるようにグレーティング反射器16における反射特性に対して重み付けすることができる。更に、グレーティング電極指17の幅寸法を太くして既述のライン占有率ηを大きくしているので、高調波成分をより一層低減することができる。
また、IDT電極12、13間にグレーティング反射器16を配置しているので、フィルタにおける弾性波の伝搬速度を揃えることができる。そのため、弾性波の回折や屈折の影響を抑えて、通過周波数帯域におけるエネルギーロス及びリップルを改善することができ、高域側の減衰傾度(減衰特性)について良好な特性が得られる。更に、IDT電極12、13及びグレーティング反射器16において、周期単位λの接続部が境界ライン20だけになるように各電極指15及びグレーティング電極指17を配置しているので、基本波については回折、屈折及び反射を抑えることができる。更にまた、このライン20を入力側IDT電極12とグレーティング反射器16との間に設けているので、グレーティング電極指17のレイアウトを設計しやすいというメリットがある。
【0040】
既述の例では、主反射領域32の両側に補助反射領域33、33を配置したが、生成する2倍波のメインローブのピーク形状に応じて位置を調整して例えばグレーティング反射器16の中央位置に補助反射領域33を設けても良い。更に、この補助反射領域33としては、3/4λの配列間隔で配置したが、例えば圧電基板11の材質、この圧電基板11上における弾性波の伝搬方位、各IDT電極12、13及びグレーティング反射器16の構成材料や厚さ寸法、電極指15及びグレーティング電極指17の幅寸法及び端部の形状などに応じて、発生する2倍波のメインローブのピーク形状が例えば平坦になるように、例えば3/4λ×±5%の範囲で各々ずらして配置しても良い。また、主反射領域32についても同様の範囲でλ/2の配列間隔からずらして配置しても良い。また、既述のライン占有率ηについては、各々のダブル電極構造31毎に個別に設定しても良い。
【0041】
ここで、例えばグレーティング電極指17の配列パターンについて、入力側IDT電極12に近接する領域については当該入力側IDT電極12の配列パターンが連続して受け継がれるように配置すると共に、出力側IDT電極13に近接する領域については当該出力側IDT電極13の配列パターンが連続して受け継がれるように配置して、既述のライン20を例えばグレーティング反射器16の中央位置に形成した場合には、ライン20の右側領域及び左側領域にて夫々入力側IDT電極12に向かって反射する2倍波が互いに打ち消し合ってしまう場合がある。そこで、このライン20については、入力側IDT電極12とグレーティング反射器16との間あるいはグレーティング反射器16と出力側IDT電極13との間に形成されるように配置される。従って、ダブル電極構造31において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずにやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトを採る領域は、グレーティング反射器16と入力側IDT電極12との間あるいはグレーティング反射器16と出力側IDT電極13との間ということになる。
【0042】
また、各IDT電極12、13とグレーティング反射器16との間の離間寸法をλ/8に設定すると共に、電極指15及びグレーティング電極指17の夫々の配列パターンが連続して引き継がれるようにこれらIDT電極12、13及びグレーティング反射器16を配置したが、当該離間寸法を例えばλ/8以上に設定しても良い。その場合であっても、ダブル電極構造31により基本波の入力側IDT電極12への反射が抑えられ、2倍波については出力側IDT電極13への伝搬が抑えられる。従って、既述のダブル電極構造31において2本のグレーティング電極指17、17が1組とならずにやむを得ずに1本だけ配置されたレイアウトを採る領域において、図13に示すように、例えば奥側のグレーティング部バスバー18bから伸びるグレーティング電極指17の先端部が境界ライン20に沿って切り欠かれた部位におけるダブル電極構造31を取り除くことにより、いわば全てのトラックTr1〜Tr2に亘ってダブル電極構造31だけが配置されるようにしても良い。
【0043】
また、既述の例では、ある一つのトラックTrについて2倍波のメインローブのピークがほぼフラットとなるようにグレーティング反射器16を形成したが、各トラックTrの特性を合成した周波数特性が良好となるようにグレーティング反射器16やIDT電極12、13の配置を最適化しても良い。更に、グレーティング電極指17の幅寸法をダブル電極構造31におけるグレーティング電極指17、17間の隙間寸法よりも広く形成したが、このグレーティング電極指17の幅寸法については、圧電基板11の材質、切断方位、グレーティング電極指17の材質に応じて、2倍波の反射量が多くなるように種々設定しても良い。
【0044】
IDT電極12、13としては、電極指15について重み付けを行っても良い。更に、既述の例では、弾性波の伝搬方向における入力側IDT電極12の中央位置と、弾性波の伝搬方向における出力側IDT電極13の中央位置と、の間の離間寸法を各トラックTrにおいて等しく設定して、各IDT電極12、13における電極指15の本数が各トラックTrにおいて異なるようにしたが、例えば図14に示すように、各々のIDT電極12、13における電極指15の本数を各トラックTrにおいて等しくするために、弾性波の伝搬方向における入力側IDT電極12の中央位置と、弾性波の伝搬方向における出力側IDT電極13の中央位置と、の間の離間寸法が各トラックTrにおいて異なるようにしても良い。尚、この例においても、既述の図1と同様に各IDT電極12、13及びグレーティング反射器16はテーパー型に形成されているが、図14では簡略化して描画している。また、この図14では電極指15を曲線的に描画しているが、電極指15を直線状とするか曲線状とするかは設計上の調整の問題であり、一般的(例えば既述の図1のIDT電極12、13)には僅かに曲線状に形成される。
【0045】
更に、電極指15をテーパー状に配置せずに、あるトラックの弾性波が伝搬するように、既述の図2のようにバスバー14に対して各々の電極指15を直交させても良い。更にまた、IDT電極12、13としては、DART電極以外にも、基本波と共に2倍波の伝搬する電極例えばEWC−SPUDT(Electlode Width Controlled−SPUDT)電極であっても良いし、このような2倍波の伝搬する電極をこれらIDT電極12、13のうち少なくとも入力側IDT電極12だけに設けても良い。
【符号の説明】
【0046】
11 圧電基板
12 入力側IDT電極
13 出力側IDT電極
16 グレーティング反射器
17 グレーティング電極指
31 ダブル電極構造
32 主反射領域
33 補助反射領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のバスバーと、一方のバスバーから他方のバスバー側に向かって各々櫛歯状に伸び出すように形成された電極指群と、を各々備えると共に弾性波の伝搬方向に互いに離間するように圧電基板上に配置された入力側IDT電極及び出力側IDT電極と、
これら入力側IDT電極及び出力側IDT電極間に設けられ、弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のグレーティング部バスバーと、これら一対のグレーティング部バスバー間に接続されたグレーティング電極指群と、を有するグレーティング反射器と、を備え、
前記グレーティング反射器は、
波長が基本波の半分の2倍波を前記入力側IDT電極に向かって反射させるために、前記基本波の波長をλとすると、
長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指が隙間領域を介して1組となって弾性波の伝搬方向に沿って設けられたダブル電極構造を備え、
このダブル電極構造がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域と、ダブル電極構造が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域と、が連続して設けられていることを特徴とする弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記グレーティング電極指の幅寸法は、前記ダブル電極構造におけるグレーティング電極指同士の隙間寸法よりも広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記補助反射領域は、前記グレーティング反射器における前記入力側IDT電極側及び前記出力側IDT電極側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記入力側IDT電極の電極指、前記出力側IDT電極の電極指及び前記グレーティング反射器のグレーティング電極指は、前記弾性波の伝搬方向に直交する方向における一方側から他方側に向かって各々の幅寸法及び離間寸法からなる配列パターンが広がるように配置されたテーパー型の電極であり、
前記グレーティング電極指の配列パターンは、前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極の一方側のIDT電極の配列パターンが連続して受け継がれるように配置されると共に、前記他方側のIDT電極とグレーティング反射器との間における境界ラインにてこの他方側のIDT電極の配列パターンと接続され、
前記グレーティング反射器は、この境界ラインよりも前記一方側のIDT電極側において、前記ダブル電極構造が配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極は、各々DART電極であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項1】
弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のバスバーと、一方のバスバーから他方のバスバー側に向かって各々櫛歯状に伸び出すように形成された電極指群と、を各々備えると共に弾性波の伝搬方向に互いに離間するように圧電基板上に配置された入力側IDT電極及び出力側IDT電極と、
これら入力側IDT電極及び出力側IDT電極間に設けられ、弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のグレーティング部バスバーと、これら一対のグレーティング部バスバー間に接続されたグレーティング電極指群と、を有するグレーティング反射器と、を備え、
前記グレーティング反射器は、
波長が基本波の半分の2倍波を前記入力側IDT電極に向かって反射させるために、前記基本波の波長をλとすると、
長さ方向における互いの中心線同士の離間距離がλ/4となり、且つ各々の幅寸法の等しい2本のグレーティング電極指が隙間領域を介して1組となって弾性波の伝搬方向に沿って設けられたダブル電極構造を備え、
このダブル電極構造がλ/2の配列間隔で配置された主反射領域と、ダブル電極構造が3/4λの配列間隔で配置された補助反射領域と、が連続して設けられていることを特徴とする弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記グレーティング電極指の幅寸法は、前記ダブル電極構造におけるグレーティング電極指同士の隙間寸法よりも広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記補助反射領域は、前記グレーティング反射器における前記入力側IDT電極側及び前記出力側IDT電極側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記入力側IDT電極の電極指、前記出力側IDT電極の電極指及び前記グレーティング反射器のグレーティング電極指は、前記弾性波の伝搬方向に直交する方向における一方側から他方側に向かって各々の幅寸法及び離間寸法からなる配列パターンが広がるように配置されたテーパー型の電極であり、
前記グレーティング電極指の配列パターンは、前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極の一方側のIDT電極の配列パターンが連続して受け継がれるように配置されると共に、前記他方側のIDT電極とグレーティング反射器との間における境界ラインにてこの他方側のIDT電極の配列パターンと接続され、
前記グレーティング反射器は、この境界ラインよりも前記一方側のIDT電極側において、前記ダブル電極構造が配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記入力側IDT電極及び前記出力側IDT電極は、各々DART電極であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−205400(P2011−205400A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70609(P2010−70609)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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