説明

弾性繊維、ならびに該弾性繊維を用いて得られる弾性不織布およびそれを用いた繊維製品

【課題】プロピレンポリマー組成物を用いて得られる弾性繊維、ならびに該弾性繊維を用いて弾性特性に優れ、安価で、耐熱性が改良された不織布を提供する。
【解決手段】プロピレンポリマー組成物は、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4〜10のα・オレフィンを含むプロピレンコポリマーを含み、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱において、30〜110℃(第1ピーク)及び120〜170(第2ピーク)℃の範囲にそれぞれ1つ以上のピークを有し、かつ、60〜120℃の範囲において結晶化温度の単一ピークを有し、かつゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布が(Mw/Mn)が2.0以下であるプロピレン組成物を含んでなる弾性繊維、不織布およびそれらを用いた繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンポリマー組成物を用いて得られる弾性繊維、ならびに該弾性繊維を用いて得られる弾性不織布およびそれを用いた繊維製品に関する。詳しくは、弾性特性に優れ、安価で、耐熱性が改良された不織布を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
近年、身体へのフィット性を向上させるために、弾性繊維を用いた弾性不織布が好んで用いられるようになってきた。中でも、熱可塑性エラストマーを用いた不織布は、柔軟で、かつ伸縮性に富むため、使い捨ておむつ、衣類、キャップ、包帯、テープ、サポーター、手袋等、各種用途に用いられている。
【0003】
熱可塑性エラストマーの中でも、オレフィン系エラストマーであるポリエチレン系エラストマーを用いた不織布は、安価でかつ成形性が良好であり、各種用途への使用が試みられている。しかしながら、ポリエチレン系エラストマーを用いた不織布は、耐熱性に劣り、高温下での使用や保管ができないといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、ポリエチレン系エラストマーとポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンをブレンドする手法があるが、得られる不織布は、耐熱性が向上するものの、弾性特性、および弾性回復性に劣り、用途が制限されるものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、プロピレンポリマー組成物を用いて得られる弾性繊維、ならびに該弾性繊維を用いて得られる弾性不織布およびそれを用いた繊維製品を提供することにある。詳しくは、弾性特性に優れ、安価で、耐熱性を兼ね備えた不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決するために鋭意研究の結果、以下の条件を満たすようなときに弾性特性に優れ、安価で、耐熱性を兼ね備えた不織布が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下によって構成される。
(1)プロピレンポリマー組成物を含む弾性繊維であって、該プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱において、30〜110(第1ピーク)℃及び120〜170(第2ピーク)℃の範囲にそれぞれ1つ以上のピークを有し、かつ、60〜120℃の範囲において結晶化温度の単一ピークを有し、かつゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布が(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする弾性繊維。
(2)該プロピレンポリマー組成物の密度が0.85〜0.90g/cmで、かつメルトマスフローレート(230℃、公称荷重2.16kg)が1〜400g/10minであることを満たす、前記(1)項に記載の弾性繊維。
(3)前記弾性繊維が、少なくとも2種類の樹脂成分で構成された(i)鞘芯型、(ii)並列型、(iii)海島型の中から選ばれる少なくとも1種類の複合繊維であり、当該樹脂成分のうちの少なくとも1つが前記プロピレンポリマー組成物を含む、前記(1)または(2)項に記載の弾性繊維
(4)前記弾性繊維が、互いに異なる樹脂成分を用いて得られた少なくとも2種類の繊維がランダムに混合された混合繊維であり、当該樹脂成分のうちの少なくとも1つが前記プロピレンポリマー組成物を含む、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の弾性繊維。
(5)前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の弾性繊維を用いて得られる弾性不織布。
(6)弾性不織布が、スパンボンド法によって得られた弾性不織布である前記(5)項に記載の弾性不織布
(7)弾性不織布が、メルトブロー法によって得られた弾性不織布である前記(5)項に記載の弾性不織布。
(8)弾性不織布が、トウ開繊法によって得られた弾性不織布である前記(5)項に記載の弾性不織布。
(9)前記(5)〜(8)項のいずれか1項記載の弾性不織布に、該弾性不織布以外のウェブ、不織布、フィルム、編み物、織物およびトウから選ばれた少なくとも1種の物品を積層して得られる複合化不織布。
(10)前記(1)〜(4)項のいずれか1項記載の弾性繊維を用いて得られる繊維製品。
(11)前記(5)〜(8)項のいずれか1項記載の弾性不織布、または(9)に記載の複合化不織布を用いた繊維製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弾性繊維、ならびに該弾性繊維を用いて得られる弾性不織布およびそれを用いた繊維製品は、弾性特性に優れ、安価で、耐熱性を兼ね備えており、特にフィット感、弾性特性が求められる、使い捨ておむつ、衣類、キャップ、包帯、テープを始め各種繊維製品へ好適に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の弾性繊維は、プロピレンポリマー組成物を含む弾性繊維である。該プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱において、30〜110(第1ピーク)℃及び120〜170(第2ピーク)℃の範囲にそれぞれ1つ以上のピークを有し、かつ、60〜120℃の範囲において結晶化温度の単一ピークを有し、かつゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布が(Mw/Mn)が2.0以下である。また、該プロピレンポリマー組成物は、その密度が0.85〜0.90g/cmで、かつメルトマスフローレート(230℃、公称荷重2.16kg)が、1〜500g/10minであるのが好ましい。
【0010】
本発明の弾性不織布は、上記弾性繊維を含むウェブを堆積し、この堆積物を部分的に交絡することにより得られる。
【0011】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4〜10のα・オレフィンとのプロピレンコポリマーを含むことが好ましい。α・オレフィンとしては、炭素数4〜10のオレフィンが挙げられ、具体例としては、ブテン−1;ペンテン−1、2−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、:ヘキセン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、3,3−ジメチルブテン−1;ヘプテン−1;ヘキセン−1;メチルヘキセン−1;ジメチルペンテン−1;トリメチルブテン−1;エチルペンテン−1;オクテン−1;メチルペンテン−1;ジメチルヘキセン−1;トリメチルペンテン−1;エチルヘキセン−1;メチルエチルペンテン−1;ジエチルブテン−1;プロピレンペンタン−1;デセン−1;メチルノネン−1;ノネン−1;ジメチルオクテン−1;トリメチルヘプテン−1;エチルオクテン−1;メチルエチルブテン−1;ジエチルヘキセン−1;ドデセン−1およびヘキサドデセン−1からなる群から選択することができる。コモノマーとして、好ましくは、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1であり、特に好ましくはエチレンである。これらのコモノマーは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに上記のものに加えて、10重量%を超えない範囲でジエンを含むことができる。
【0012】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4〜10のα・オレフィンとのプロピレンコポリマーの他に、結晶性プロピレンポリマーを含んでも良い。結晶性プロピレンポリマーとしては、アイソタクチックポリプロピレン、或いは約10重量%以下のその他のコモノマーを含み、少なくとも90重量%のプロピレンを含むコポリマーを用いても良い。さらに、それらのブロック部が前記のプロピレンとエチレンもしくは炭素数4〜10のα・オレフィンとのプロピレンコポリマーと実質的に同じ立体規則性を有するような、グラフトまたはブロックコポリマーの形態で存在しても良い。
【0013】
さらに結晶性プロピレンポリマーとして、ホモポリプロピレンポリマー、および/またはランダムコポリマー、および/またはブロックコポリマーの組み合わせを用いても良い。結晶性プロピレンポリマーがコポリマーである場合のコモノマーとして好ましいのは、エチレンもしくは炭素数4〜12のα・オレフィンであり、最も好ましくはエチレンである。1種または2種以上のエチレン及びα・オレフィンをプロピレンと共重合させたものでも良い。
【0014】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱において、30〜110(第1ピーク)℃及び120〜170(第2ピーク)℃の範囲にそれぞれ1つ以上のピークを有し、かつ、60〜120℃の範囲において結晶化温度の単一ピークを有する。
【0015】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下である。好ましくは、1.0〜2.0である。
【0016】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、密度(JIS K 7112)が0.85〜0.90g/cmであるのが好ましい。
【0017】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、メルトマスフローレート(230℃、公称荷重2.16kg)が、1〜500g/10minであるのが好ましい。より好ましくは、5〜400g/10minであり、更に好ましくは10〜300g/10minである。
【0018】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物に含まれる総エチレン含有量はプロピレンポリマー組成物基準で1〜25wt%であるのが好ましい。より好ましくは5〜25wt%であり、更に好ましくは、5〜20wt%である。
【0019】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物のガラス転移温度は、−15〜−35℃であるのが好ましい。
【0020】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱特性、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(Mw/Mn)、密度、メルトマスフローレート、エチレン含有量、ガラス転移温度が上述の範囲を満たすとき、特に曳糸性、弾性、加工性、耐熱性、柔軟性に優れた弾性繊維および不織布が得られる。
【0021】
本発明を構成する上述の諸条件を満たしたプロピレンポリマー組成物は、少なくとも1種のメタロセン及び少なくとも1種の活性剤を含むメタロセン触媒系を使用し、特には、これらの成分を支持体物質上に担持したものを使用して、好適に製造される。
【0022】
好ましいメタロセンは、例えば、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ZrCl2 、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−ナフチル−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(2−ナフチル)−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ジイソプロピル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2,4,6−トリメチル−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−1−インデニル)ZrCl、1,2−エタンジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−1−インデニル)ZrCl、1,2−ブタンジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−エチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−イソプロピル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−t−ブチル−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−4−イソプロピル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−メチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2,4−ジメチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−エチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−4,5−(メチルベンゾ)−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−4,5−(テトラメチルベンゾ)−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ZrCl、1,2−エタンジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ZrCl、1,2−ブタンジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ZrCl、1,2−エタンジイルビス(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−1−インデニル)ZrCl、1,2−エタンジイルビス(2−メチル−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−1−インデニル)ZrCl、ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−1−インデニル)ZrCl、1,2−ブタンジイルビス(2−メチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−5−イソブチル−1−インデニル)ZrCl、フェニル(メチル)シランジイルビス(2−メチル−5−イソブチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−5−t−ブチル−1−インデニル)ZrCl、ジメチルシランジイルビス(2,5,6−トリメチル−1−インデニル)ZrCl、などである。これらの製造法等は、既に文献等によって公知である。
【0023】
特に、本発明において使用されるのが好ましいメタロセンは、アイソタクチック、結晶性プロピレンポリマーを製造することができる少なくとも1つのメタロセン触媒系である。少なくとも1つのメタロセンが、rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビス(2,4−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビス(2,5,6−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビスインデニルジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド及びrac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、及びrac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル)ジルコニウムジクロリドから成る群から選択されるのが好ましい。
【0024】
メタロセンは一般的に、活性剤と組合せて使用される。アルキルアルモキサンを活性剤として使用するのが好ましく、メチルアルモキサン(MAO)が最も好ましい。
【0025】
使用される触媒系は、例えば、タルク、無機酸化物、無機塩化物、ポリオレフィン又はポリマー化合物のような、多孔質粒状物質に担持されるのが好ましい。
【0026】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、例えば、プロピレンを単独重合した後、この単独重合体の存在下に、前記メタロセン触媒系を使用して、プロピレンとコモノマーとを共重合することなどによって製造することができる。重合温度等の重合条件としては、一般に採用されている条件を任意に設定できる。
【0027】
得られるプロピレンポリマー組成物の分子量分布等を調整するために、水素を重合系に添加してもよい
【0028】
本発明に係る弾性繊維および弾性不織布は、上述したプロピレンポリマー組成物を含む弾性繊維および弾性不織布である。弾性繊維は、該プロピレンポリマー組成物を含むレギュラー繊維構造でもよく、また他の熱可塑性ポリマーとの組み合わせである複合繊維構造、混合繊維構造を用いてもよい。
【0029】
本発明の弾性繊維の繊維断面形状は、曳糸性を考慮すると丸断面が好ましいが、曳糸性を損なわない範囲であれば、異型断面、または中空断面としてもよい。さらにそれらの断面構造は複合繊維構造であってもよい。さらにそれらを用いた混合繊維であってもよく、異なる樹脂を用いた繊維の混合、あるいは異なる繊維断面形状の繊維の混合であってもよい。
【0030】
上記弾性繊維がレギュラー繊維構造である場合、上述のプロピレンポリマー組成物単独で使用することが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0031】
上記弾性繊維が複合繊維構造である場合、鞘芯型、並列型、海島型等のいずれも使用できる。この場合、上述のプロピレンポリマー組成物と他の熱可塑性ポリマーとの組み合わせて使用される。鞘芯型では、プロピレンポリマー組成物が鞘成分であっても芯成分であってもよい。また海島型では、プロピレンポリマー組成物が海成分であっても島成分であってもよい。本発明の弾性繊維が複合繊維構造である場合、少なくとも2成分以上であれば良く、種類の異なる熱可塑性ポリマーを加えた3成分、4成分、またはそれ以上でも構わないが製造コストまた生産性の点から2成分が有利である。
【0032】
上記弾性繊維が混合繊維である場合、上述のプロピレンポリマー組成物を含む繊維(第1成分)とし、他の熱可塑性ポリマーを含む繊維(第2成分)として、組み合わせて(混繊して)使用される。上述のプロピレンポリマー組成物と他の熱可塑性ポリマーとを同一ダイの異なるノズルからそれぞれ独立して吐出することによって、プロピレンポリマー組成物を含む繊維と他の熱可塑性ポリマーを含む繊維が形成される。
【0033】
前記第2成分に含まれるその他の熱可塑性ポリマーは、弾性繊維および弾性不織布を製造できるものであれば特に限定されない。例えば、スチレン系エラストマー;オレフィン系エラストマー;塩化ビニル系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド類;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマー;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のα・オレフィンとの二元または三元共重合体、ポリスチレンなどのオレフィン類;ナイロン6、ナイロン66などのアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを共重合した低融点ポリエステルなどのエステル類;ポリ乳酸;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。更には、上記熱可塑性樹脂の混合物などを使用できる。
【0034】
本発明の弾性繊維は、50%伸長時の伸長回復率が70%以上となる優れた弾性を有していることが好ましい。より好ましくは50%伸長時の伸長回復率が80%以上、更に好ましくは90%以上である。50%伸長時の伸長回復率が70%以上であれば、得られる製品に対して十分な弾性を付与させることが可能となる。また、本発明の弾性不織布も同様に、50%伸長時の伸長回復率が70%以上となる優れた弾性を有していることが好ましい。より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。50%伸長時の伸長回復率が70%以上であれば、得られる製品に対して十分な弾性を付与させることが可能となる。
【0035】
本発明の弾性繊維は、原料樹脂としてプロピレンポリマー組成物を用いて、通常の熱溶融紡糸法により製造できる。熱溶融され、口金から吐出した溶融樹脂を、冷風、水等の冷媒で冷却する。溶融樹脂の吐出量および引取り速度は、任意に設定し、目標繊度の繊維とする。ここで、弾性繊維には金属との摩擦抵抗を低減し、繊維間の粘着を防止するために、油剤を付着させても良い。得られた弾性繊維は、単繊維毎に巻取り、単一糸とする束として巻取ってもよい。得られた弾性繊維を通常の延伸設備で延伸を行うこともできる。このとき、延伸は、紡糸工程から連続に行ってもよく、また、一度巻き取った後に、不連続に行ってもよい。
【0036】
本発明の弾性繊維の繊度は、特に限定されないが、通常、0.01〜4000dtexが利用できる。好ましくは0.05〜3000dtexであり、さらに好ましくは0.1〜2000dtexである。ここでいう繊度とは、単孔ノズルより得られる単糸繊維の繊度である。また、繊維束で使用する場合には、単糸繊度と構成本数を掛けた値が繊維束の総繊度となる。
【0037】
本発明の弾性繊維を用いて得られる弾性不織布の製造方法は特に限定されないが、ステープルファイバーやチョップ等の短繊維を得る方法、ならびにメルトブロー法、スパンボンド法、トウ開繊法等の長繊維を得る方法が例示できる。ステープルファイバーやチョップ等の短繊維を用いるの場合には、トウを3〜60mmの範囲の長さで切断し、カード法、エアレイド法、抄紙法等の方法によってウェブ化し、不織布に加工できる。メルトブロー法、スパンボンド法を用いる場合には、紡糸された繊維を、直接ウェブ化し、不織布に加工できる。トウ開繊法を用いる場合は、一旦トウを捕集した後、このトウを開繊して不織布に加工できる。これらの方法によって得られた弾性不織布は、ポイントボンド法、汎用のスルーエア法、ポイントスルーエア法、ソニックボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、レジンボンド法等によって、不織布強度を更に高くすることができる。なかでも、生産性、製造コスト、生産の容易性、風合の点から本発明ではスパンボンド法とメルトブロー法が好ましい。
【0038】
本発明の弾性繊維および弾性不織布には、本発明の効果を妨げない範囲において、安定剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、滑剤、親水剤などが添加されていても良い。
【0039】
本発明の弾性不織布を単独で使用する場合における目付は、特に限定されないが、5〜300g/mが好ましく、より好ましくは20〜200g/m、更に好ましくは50〜150g/mである。
【0040】
本発明の弾性不織布は、その効果を妨げない範囲で、その少なくとも片面に、該弾性不織布以外のフィルム、不織布、ウェブ、織物、編み物、およびトウから選ばれる少なくとも1種を積層した複合化不織布として利用できる。積層に使用される材料は、特に限定されないが、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エラストマーフィルム、スパンボンドポイントボンド不織布、ポイントスルーエア不織布、汎用スルーエア不織布等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記積層する場合における、本発明の弾性不織布の目付は、特に限定されないが1〜300g/mが好ましく、より好ましくは3〜200g/m、更に好ましくは5〜50g/mである。また目的に応じて、積層した後に、熱処理加工しても構わない。熱処理の方法としては、加熱エンボスロールによるポイントボンド法、加熱空気によるスルーエア法、赤外線ランプによる方法等の公知の方法が使用できる。また、ソニックボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、レジンボンド法等の加工法を用いてもよい。
【0042】
本発明の弾性繊維、弾性不織布、および複合化不織布を用いた繊維製品としては、例えば使い捨てオムツ用伸縮性部材、オムツ用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、オムツカバー用伸縮性部材等の衛生材料の伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣服用伸縮性部材等の他に、衣料用芯地、衣料用絶縁材や保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布材の基布、プラスター材の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター、エレクトレット加工をほどこしたエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、基材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材、シーツ等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における測定結果は下記の方法に従った。
【0044】
(1)弾性繊維の伸長回復率(50%伸長時の伸長回復率)
長さ200mmの繊維試験片を作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さを測定した(Lmm)。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)
={(100※1−L)/100※1}×100
※1:試験片の最初の長さ(mm)
【0045】
(2)弾性繊維の破断強度
長さ200mmの繊維試験片を、機械方向を長さ方向にして作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で伸長させ破断するまでの最大強度を1000dtex換算した値(N/1000dtex)を破断強度とした。
【0046】
(3)弾性不織布の伸長回復率(50%伸長時の伸長回復率)
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、不織布の機械方向を長さ方向にして作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)
={(100※1−L)/100※1}×100
※1:試験片の最初の長さ(mm)
【0047】
(4)弾性不織布の破断強度
幅25mm、長さ200mmの繊維試験片を、機械方向及び機械垂直方向のそれぞれについて作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で伸長させ破断するまでの最大強度(N/25mm)を破断強度とした。
【0048】
(5)耐熱性試験
得られた弾性繊維および弾性不織布を80℃に設定した恒温槽中に30分間放置し、熱による劣化を観察した。優:熱による劣化が見られない場合、不可:熱による劣化が見られた場合とした。
【0049】
(6)樹脂の密度
JIS K 7112に準拠して測定した。
【0050】
(7)分子量分布(Mw/Mn)
樹脂を1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解させて、GPC装置(WATER社製150C型、使用カラム;Shodex AT-806MS)を用いて145℃にて測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から計算した。
【0051】
(8)メルトマスフローレート
JIS K7210に準拠して、公称荷重2.16kg(21.18N)、MFRについては温度230℃、MIについては温度190℃で測定した。
【0052】
(9)エチレン含有量
プロピレンポリマー組成物のエチレン含有量は、ASTM D3900に準拠して測定した。
【0053】
(10)融点
JIS K 7122に準拠して、示差走査型熱分析装置により試料5mg、昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0054】
(11)ガラス転移温度
示差走査型熱分析装置により試料5mg、室温から降温速度10℃/minの条件で−75℃まで冷却し、その後、昇温速度10℃/minで180℃とし、さらに降温速度10℃/minの条件で−75℃まで冷却することでTgを測定した。
【0055】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は以下の方法にて製造した。
【0056】
メチルアルモキサンとジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリドとをシリカに担持した触媒系を用い、反応器温度を第1反応器においては64℃に設定し、第2反応器においては59℃に設定し、鉱油溶液としてヘキサン溶媒中のトリエチルアルミニウムと共に供給した後、プロピレンを第1反応器および第2反応器に供給した。水素を分子量制御のために第1反応器に添加し、第2反応器には水素の添加をせず、エチレンを添加した。上記重合より、プロピレンポリマー組成物を得た。
【0057】
なお、プロピレンポリマー組成物の組成変更は、エチレンのプロピレンに対する比率を変えることによって得られた。また、プロピレンポリマー組成物の分子量は、重合触媒の量と比較してエチレンとプロピレンの量を多くすることによって増加することができた。
【0058】
本発明において使用した材料と略号は以下の通りである。
【表1】

(その他の樹脂)
A−1:ポリプロピレン、MFR=40g/10min(公称荷重2.16kg)、密度=0.905g/cm
A−2:高密度ポリエチレン、MI=40g/10min(公称荷重2.16kg)、密度=0.942g/cm
A−3:ポリビニルアルコール、MFR=80g/min(公称荷重2.16kg)、融点210℃
A−4:スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、KRATON G1657((商品名)、クレイトンポリマージャパン(株)製)。
A−5:エチレン−オクテン共重合体、MI=30g/10min(公称荷重2.16kg)、密度=0.870g/cm
【0059】
実施例1
樹脂P−1を原料樹脂として用いた。スクリュー(20mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径1.0mm、孔数30ホール)及び冷却装置を備えた紡糸機と、引取ロール(ゴデーロール)及び巻取機からなる引取装置を用いて溶融紡糸を行った。なお引取ロールと巻取機の間には油剤付着のためのキスロールを設置した。
押出機に樹脂P−1を投入し、加熱体により樹脂P−1を250℃で加熱溶融させ、紡糸口金から単孔当たり0.17g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維に冷却装置で冷却風をあて、単糸同士が癒着しないようにキスロールで油剤を付着し、2m/分の速度で巻取った。得られた弾性繊維の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表2に示す。得られた弾性繊維は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0060】
実施例2
樹脂P−2を原料樹脂として用いた以外は、実施例1と同様の方法で弾性繊維を得た。
その結果を表2に示す。得られた弾性繊維は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0061】
比較例1
樹脂A−5を原料樹脂として用いた以外は、実施例1と同様の方法で弾性繊維を得た。
その結果を表3に示す。得られた弾性繊維は、優れた弾性を有していたが、耐熱性に劣るものであった。
【0062】
比較例2
樹脂A−1と樹脂A−5を重量比20:80の割合でブレンドしたものを原料樹脂として用いた以外は、実施例1と同様の方法で弾性繊維を得た。
その結果を表3に示す。得られた弾性繊維は、優れた弾性を有していたが、耐熱性に劣るものであった。
【0063】
実施例3
樹脂P−1を原料樹脂として用いた。スクリュー(40mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール)、エアーサッカー、帯電法開繊機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、ポイントボンド加工機及び巻取機からなる装置を用いてスパンボンド不織布の製造を行った。
樹脂P−1を押出機に投入し、加熱体により樹脂P−1を230℃で加熱溶融させ、ギアポンプで紡糸口金から単孔当たり0.57g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維をエアーサッカーに導入し直後に帯電法開繊機で開繊させ、捕集コンベアー上に捕集した。エアーサッカーの空気圧は、196kPaとした。捕集コンベアー上のウェブを上下ロール温度70℃に加熱したポイントボンド加工機(圧着面積率15%)に投入し、加工後の不織布を巻取機でロール状に巻取った。得られた弾性不織布の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0064】
実施例4
樹脂P−2を原料樹脂として用いた以外は、実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0065】
実施例5
樹脂P−3を原料樹脂として用いた以外は、実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0066】
実施例3で得られた弾性不織布を用い、鎮痛剤と粘着成分を塗布して、パップ剤を製造した。このパップ剤を10枚用意し、モニター10人の膝に24時間貼り付け、状態を観察した。その結果、モニター全員に、過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残っていなかった。また締め付け不足によるパップ剤のズレや剥げもなかった。
【0067】
実施例3で得られた弾性不織布を用い、片面に粘着成分を塗布して、止血剤を塗布した布(絆創膏用)を貼り付けた絆創膏を10枚用意し、10人のモニターの人差し指に24時間巻いていたが、充分な伸縮性があるために、モニターの指の動きに追従し、絆創膏のズレも剥げもなかった。
【0068】
実施例3で得られた弾性不織布を用い、片面に粘着成分を塗布したテープを用意した。傷に当てるサージカルテープとして10枚用意し、10人のモニターの肘に24時間巻いていたが、充分な伸縮性があるために、モニターの肘の動きに追従し、テープのズレも剥げもなかった。
【0069】
実施例6
樹脂P−4を原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホールが一列、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取機からなる不織布製造装置を用いてメルトブロー不織布の製造を行った。
押出機に樹脂P−4を投入し、加熱体により樹脂P−4を230℃で加熱溶融させ、ギアポンプにより紡糸口金から単孔当たり0.25g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気によって、走行速度2m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーは、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。捕集コンベアーで搬送された不織布を巻取機にてロール状に巻取った。得られた弾性不織布の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0070】
実施例7
樹脂P−1と樹脂A−1を重量比80:20の割合でブレンドしたものを原料樹脂として用いた以外は、実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0071】
実施例8
樹脂P−3と樹脂A−1を重量比50:50の割合でブレンドしたものを原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する1機の押出機、紡糸口金(孔径0.6mm、孔数500ホール)、ゴデーロール及び巻取機からなる紡糸装置、更に熱ロール延伸装置により2.2dtex、51mm長の短繊維を用意した。次に得られた短繊維をカード機でカーディングしてウェブとし、該ウェブを熱風貫通式ドライヤーにより、温度70℃で熱処理したスルーエア不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0072】
実施例9
鞘芯型複合紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−1を芯成分、樹脂A−1を鞘成分とし、鞘芯の重量比20:80の割合として用いたこと以外は実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0073】
実施例10
鞘芯型複合紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−1を鞘成分、樹脂A−2を芯成分とし、鞘芯の重量比50:50の割合として用いたこと以外は実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0074】
実施例11
鞘芯型複合紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホールが一列、有効幅500mm)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−4を芯成分、樹脂A−1を鞘成分とし、鞘芯の重量比20:80の割合として用いたこと以外は実施例6と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0075】
実施例12
鞘芯型複合紡糸口金(孔径0.6mm、孔数500ホール)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−3を鞘成分、樹脂A−2を芯成分とし鞘芯の重量比40:60の割合として用いたこと以外は実施例8と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0076】
実施例13
並列型複合紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−1を芯成分、樹脂A−2を鞘成分とし、鞘芯の重量比50:50の割合として用いたこと以外は実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0077】
実施例14
並列型複合紡糸口金(孔径0.6mm、孔数500ホール)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−3を芯成分、樹脂A−2を鞘成分とし、鞘芯の重量比50:50の割合として用いたこと以外は実施例8と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0078】
実施例15
海島型複合紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール、島成分は1ホール当たり64ホール)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−1を島成分、樹脂A−3を海成分とし、鞘芯の重量比50:50の割合として用いたこと以外は実施例4と同様の方法で不織布を得た。さらに得られた不織布を温水で処理することにより弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0079】
実施例16
混繊用紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール、図−1の紡糸配列)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−1を第1成分、樹脂A−1を第2成分とし、第1成分と第2成分を重量比80:20の割合として用いたこと以外は実施例4と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0080】
実施例17
混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、501ホール、異成分繊維が交互に一列に並んだ)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−4を第一成分、樹脂A−1を第2成分とし、第1成分と第2成分を重量比80:20の割合として用いたこと以外は実施例6と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0081】
実施例18
混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、501ホール、異成分繊維が交互に一列に並んだ)と2機の押出機を有する複合紡糸機を用いて、原料樹脂として樹脂P−4を第一成分、樹脂A−4を第2成分とし、第1成分と第2成分を重量比50:50の割合として用いたこと以外は実施例6と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。
【0082】
比較例3
樹脂A−5を原料樹脂として用いた以外は、実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表5に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性を有していたが、耐熱性に劣るものであった。
【0083】
比較例4
樹脂A−1と樹脂A−5を重量比20:80の割合でブレンドしたものを原料樹脂として用いた以外は、実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表5に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性を有していたが、耐熱性に劣るものであった。
【0084】
実施例19
立体捲縮ポリオレフィンステープルファイバーからなる目付100g/mの伸縮性不織布を、実施例3の弾性不織布と積層してウォータージェットを用いて交絡させ、積層化不織布を作成した。得られた積層化不織布からサポーターを作成し、5人のモニターの膝に24時間巻いていたが、締め付けに不足によるサポーターのズレや脱げもなかった。
【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の弾性不織布または弾性性複合化不織布を用いた繊維製品としては、例えば使い捨てオムツ用伸縮性部材、オムツ用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、オムツカバー用伸縮性部材等の衛生材料の伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣服用伸縮性部材等の他に、衣料用芯地、衣料用絶縁材や保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布材の基布、プラスター材の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター、エレクトレット加工をほどこしたエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、基材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材、シーツ等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の混合長繊維不織布をスパンボンド法にて製造する場合の紡糸口金の紡糸孔配列の一例を示す。○は第1成分樹脂の紡糸孔、●は第2成分樹脂の紡糸孔を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンポリマー組成物を含む弾性繊維であって、該プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱において、30〜110℃(第1ピーク)及び120〜170(第2ピーク)℃の範囲にそれぞれ1つ以上のピークを有し、かつ、60〜120℃の範囲において結晶化温度の単一ピークを有し、かつゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布が(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする弾性繊維。
【請求項2】
該プロピレンポリマー組成物の密度が0.85〜0.90g/cmで、かつメルトマスフローレート(230℃、公称荷重2.16kg)が1〜500g/10minであることを満たす、請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項3】
前記弾性繊維が、少なくとも2種類の樹脂成分で構成された(i)鞘芯型、(ii)並列型、(iii)海島型の中から選ばれる少なくとも1種類の複合繊維であり、当該樹脂成分のうちの少なくとも1つが前記プロピレンポリマー組成物を含む、請求項1または2に記載の弾性繊維
【請求項4】
前記弾性繊維が、互いに異なる樹脂成分を用いて得られた少なくとも2種類の繊維がランダムに混合された混合繊維であり、当該樹脂成分のうちの少なくとも1つが前記プロピレンポリマー組成物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性繊維。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性繊維を用いて得られる弾性不織布。
【請求項6】
弾性不織布が、スパンボンド法によって得られた弾性不織布である請求項5に記載の弾性不織布
【請求項7】
弾性不織布が、メルトブロー法によって得られた弾性不織布である請求項5に記載の弾性不織布。
【請求項8】
弾性不織布が、トウ開繊法によって得られた弾性不織布である請求項5に記載の弾性不織布。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項記載の弾性不織布に、該弾性不織布以外のウェブ、不織布、フィルム、編み物、織物およびトウから選ばれた少なくとも1種の物品を積層して得られる複合化不織布。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項記載の弾性繊維を用いて得られる繊維製品。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれか1項記載の弾性不織布、または請求項9記載の複合化不織布を用いた繊維製品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−277755(P2007−277755A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105021(P2006−105021)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(399120660)チッソポリプロ繊維株式会社 (41)
【Fターム(参考)】