説明

弾性舗装体

【課題】アスファルト系バインダーを用いたアスファルト系の弾性舗装体において、下地となるコンクリートとの間の接着性を良好に確保することのできる技術を提供する。
【解決手段】アスファルト系バインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末とを含有するアスファルト系弾性舗装および接着層からなり、接着層を介して下地面上に接着される弾性舗装体である。接着層が、合成ゴムラテックスを含む改質アスファルト乳剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性舗装体に関し、詳しくは、コンクリート舗装等の下地面との間の接着性を向上した弾性舗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加硫ゴムを粉末またはチップ状にして利用する方法として、ウレタンやエポキシ等の硬化性樹脂をバインダーとして使用した低騒音弾性舗装が知られている。また、ゴムチップをこれらバインダーと混合してプレス成形した弾性舗装体が、歩道や運動場、車道等で使用されている。
【0003】
これらゴムチップを用いた弾性舗装は、ゴムチップの有する弾力性により歩行時の衝撃吸収性や転倒時の安全性といった優れた効果を奏するとともに、内部に空隙を有することから、排水性および通気性に加えて吸音性にも優れ、従ってタイヤと路面内で発生する騒音の低減にも有効であるため、都市部での交通騒音低減のための機能性弾性舗装材として注目されている。
【0004】
しかし、ウレタン等の硬化性樹脂をバインダーとして用いた場合、施工した舗装をリサイクルする場合に、アスファルトのように加熱等により再利用を図ることができないという問題があった。また、常温で硬化が遅いため、養生時間に1〜2日程度要することとなり、その間交通規制をしなければならないという難点があり、成型品についても、道路のような大面積に施工するには困難であり、経済的な問題を有するものであった。
【0005】
これに対し、本出願人においては、ウレタンやエポキシ等の従来の硬化性バインダーに代えて、低コストで2次リサイクルが可能なアスファルトをバインダーに用いた弾性舗装について種々検討を行ってきており、例えば、特許文献1,2において、熱可塑性樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)をアスファルトとともにバインダーとして用いた弾性舗装材料について提案を行っている。
【特許文献1】特願2004−381513
【特許文献2】特願2005−004509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2等に示されているように、冷却硬化型であるアスファルト系バインダーを用いることにより、上述したような硬化時間やリサイクル性などの問題を解決することは可能である。しかしながら、アスファルト系弾性舗装は、下地となるコンクリートとの接着性が低いという問題を有しており、良好な接着性を得るための技術が求められていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、アスファルト系バインダーを用いたアスファルト系の弾性舗装体において、下地となるコンクリートとの間の接着性を良好に確保することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
アスファルト系弾性舗装と下地面との間を接着するために、従来のアスファルト乳剤を用いた場合、十分な接着は得られなかった。これに対し、本発明者らは鋭意検討した結果、弾性舗装と相溶性が良いと考えられるゴム成分を含む改質アスファルト乳剤を適用することで、アスファルト系弾性舗装の、下地面に対する接着性を確保することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の弾性舗装体は、アスファルト系バインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末とを含有するアスファルト系弾性舗装および接着層からなり、該接着層を介して下地面上に接着される弾性舗装体であって、該接着層が、合成ゴムラテックスを含む改質アスファルト乳剤からなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記改質アスファルト乳剤の、25℃におけるエングラー度が1〜10の範囲内であることが好ましく、その蒸発残留度は好適には50%以上である。また、前記改質アスファルト乳剤の蒸発残留物の、25℃における針入度が6〜10mmの範囲内であることが好ましく、その軟化点は好適には48℃以上である。
【0011】
また、本発明においては、前記合成ゴムラテックスがカチオン性乳化剤の存在下で重合されてなるものであることが好ましく、特には、前記合成ゴムラテックスがクロロプレン(CR)ラテックスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、下地となるコンクリートとの間の接着性を良好に確保することのできるアスファルト系弾性舗装体を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、アスファルト系バインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末とを含有するアスファルト系弾性舗装および接着層からなり、接着層を介して下地面上に接着される弾性舗装体であって、かかる接着層が、合成ゴムラテックスを含む改質アスファルト乳剤からなる点に特徴を有する。
【0014】
即ち、アスファルト系バインダーを用いたアスファルト系弾性舗装と下地面との間に、合成ゴムラテックスを含む改質アスファルト乳剤からなる接着層を設けたことで、従来のアスファルト乳剤では得られなかった、アスファルト系弾性舗装と下地面との間の良好な接着性を確保することが可能となったものである。
【0015】
本発明に用いる改質アスファルト乳剤は、合成ゴムラテックスを含むことから同様にゴムを含有する弾性舗装との相溶性が良く、これにより弾性舗装−下地面間の接着性向上に寄与できるものであり、それ以外の点については特に制限されるものではないが、特には、以下の物性を有するものを用いることが好ましい。
【0016】
本発明において好適に用いることのできる改質アスファルト乳剤は、25℃におけるエングラー度が1〜10、特には5〜9の範囲内であり、また、蒸発残留度が50%以上、特には50〜70%の範囲内であることが好ましい。また、かかる改質アスファルト乳剤の蒸発残留物の、25℃における針入度は、好適には6〜10mmの範囲内であり、軟化点は48℃以上、特には49〜60℃であることが好ましい。
【0017】
さらに、かかる改質アスファルト乳剤に含まれる合成ゴムラテックスとしては、カチオン性乳化剤の存在下で重合されたものが好適であり、特には、CRラテックスを用いる。具体的には例えば、特開昭45−25219、特開昭49−23838、特開昭50−22819等に開示された改質アスファルト乳剤を好適に用いることができる。
【0018】
本発明に係るアスファルト系弾性舗装に用いるアスファルト系バインダーは、少なくともアスファルトを含むものである。かかるアスファルトとしては、特に制限されるものではなく、慣用のアスファルト、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、アスファルト乳剤やタール、ピッチ、オイルなどを添加したカットバックアスファルト、再生アスファルトなどを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アスファルトは脱色アスファルトであってもよい。
【0019】
かかるアスファルト系バインダーには、アスファルトに加えて、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を好適に配合することができる。かかるEVAとしては、例えば、EV210ET(三井デュポンケミカル(株)製)、EVA720、EVA680、EVA710((株)東ソー製)等の市場で入手し得るものを好適に挙げることができる。EVAにおけるビニル酢酸単位は、ゴムとの接着性を高めるために、好ましくは10重量%以上とする。また、EVAのJIS K7215に準拠するデュロメータA硬さは、強度の面から70以上であることが好ましい。本発明に係るアスファルト系バインダーにおいては、好適にはアスファルト20〜70重量部に対し、EVAを30〜80重量部にて配合する。
【0020】
また、アスファルト系バインダーには、ワックスを配合することが好ましい。ワックスとしては、特に制限されるものではなく、石油ワックス等の天然ワックスおよび合成ワックスのいずれを用いることもでき、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィンワックス、パラフィン系合成ワックス、ポリエチレンワックス、炭化水素系ワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなワックスは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明に用いるワックスとしては、軟化点が80℃以上160℃以下、特には90℃以上130℃以下であるものが好ましい。さらに、25℃における針入度は、好適には20以下、より好適には8以下である。本発明のバインダーにおけるワックスの配合量は、好適には10〜20重量%とする。
【0021】
さらに、アスファルト系バインダー中には、シランカップリング剤を含有することが好ましく、これにより石表面の接着性も得られるため、耐久性をより高めることが可能である。シランカップリング剤としては、市場で入手できるものを適宜使用することが可能であり、特に制限されるものではないが、中でもアミノ系シランカップリング剤が好適であり、例えば、信越化学工業(株)製のKBM603、KBM903等を好適に使用することができる。シランカップリング剤の配合量としては、例えば、全バインダーに対し、0.2〜5重量%程度とすることができる。
【0022】
その他、アスファルト系バインダー中には、例えば、強度等を向上させるために、他の熱可塑性エラストマーを添加することができる。かかる他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等の1種または2種以上の組み合わせを適宜選択して用いることができる。これら他の熱可塑性エラストマーの配合量は、例えば、全バインダーに対し、10〜50重量%程度とすることができる。
【0023】
また、アスファルト系バインダー中には、施工性を改良するために、低分子量の石油樹脂を1〜40重量%含有させるてもよい。
【0024】
なお、アスファルト系バインダーの粘度としては、施工性の観点から、好ましくは10Pa・s以下であり、バインダーの形態としては、粒径5〜10mmのペレット状でも、あるいは粉末状であってもよい。本発明に係る弾性舗装中のアスファルト系バインダーの割合は、10〜35体積%程度とすることができる。
【0025】
また、弾性舗装に用いる骨材としては、特に制限はなく、川砂利、川砂等の天然の骨材や砕石、スラグ、コンクリート、ガラス、FRP等のリサイクル骨材を使用することができる。この骨材に使用する石材、砂等は、完成した舗装の強度、耐摩耗性を確保し、表面に露出して防滑作用を得るためのものである。石材は互いに噛み合って荷重を分散させる機能を持つことが好ましく、このため、砕石のような尖った形状で硬いものが適当である。また、粒径0.5〜30mmの粗粒骨材に対して、粒径0.5mm以下の細粒骨材を5体積%以上混合することが好ましい。粗粒骨材は、多孔質構造を形成するものであり、互いに噛み合って隙間を形成するような、砕石のような尖った形状で硬いものが適当である。一方、細粒骨材は、大型の粗粒骨材の表面に付着してタイヤ等に対して防滑作用(サンドペーパーのような研磨効果)をもたらすこととなる。
【0026】
本発明に係る弾性舗装中の骨材の割合は、好ましくは35〜55体積%である。この割合が35体積%未満であると強度が十分ではなく、一方、55体積%を超えると、十分な弾性および低音効果が得られなくなり、好ましくない。
【0027】
弾性舗装に用いるゴムチップおよび/またはゴム粉末は、特に材質等は限定されず、天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等を利用することができる。かかるゴムは、ゴムタイヤ、ウェザーストリップ、ホース類等の使用済み廃材、成形の際に生成する不要の端材、成形不良品等から得ることができる。本発明に係る弾性舗装中におけるゴムの割合は、好ましくは20〜70体積%である。この割合が20体積%未満であると弾性舗装材料としての効果が十分ではなく、一方、70体積%を超えると、アスファルト舗装に適用するために十分な物性が得られなくなり、いずれも好ましくない。
【0028】
これら弾性舗装の配合材料の混合時に用いるオイルとしては、特に限定はされないが、例えば、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の3組成からなる石油系オイルのうち、環分析結果が36%以上の芳香族炭素を有する芳香族系オイルを好適に使用することができる。
【0029】
本発明の弾性舗装体は、下地面となるコンクリート舗装等の表面に、適宜量、例えば、200〜500ml/m2程度にて前記改質アスファルト乳剤を塗布することにより接着層を形成し、その後、弾性舗装を、例えば、10〜50mm程度の厚さに、空隙率10〜40%程度として施工することにより形成することができ、これにより下地面との良好な接着性を確保できるものである。本発明においては、弾性舗装と下地面との間に接着層を設けた点のみが重要であり、弾性舗装の具体的構成や形成方法等については特に制限されるものではなく、常法に従い適宜決定することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下地としてのコンクリート舗装面(300mm×300mm)に、下記の表1中に示す各種アスファルト乳剤をそれぞれ400ml/m2にて塗布して接着層を形成し、さらにその表面に、φ100mm×30mmのアスファルト系弾性舗装を形成した。このアスファルト系弾性舗装は、ゴム(粒径3〜5mm)と硅砂とを75:25(体積比率)にて混合し、この混合物75体積%と、アスファルトバインダー(ストレートアスファルト(25℃針入度60〜80)/エチレン酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製,EVA625)/ワックス(日本精鑞(株)製,FT100)=20/40/40(体積比率))25体積%とを混合し、攪拌機で180℃で約20分間攪拌することにより調製した材料を用い、空隙20%にて形成した。
【0031】
図1に示すように、形成した弾性舗装の上部に引っ張り治具1を設置して、引っ張り応力を測定することにより、下地10と弾性舗装との間の接着力を評価した。その結果を、下記の表1中に併せて示す。この接着力が0.1MPa以上であれば、実用上問題なく良好である。
【0032】
【表1】

*1)一般アスファルト乳剤(ニチレキ(株)製,カチオゾールCPE−4)
*2)改質アスファルト乳剤(ニチレキ製(株),カチオゾールGM(ゴムラテックス含有))
【0033】
上記表1に示すように、合成ゴムラテックスを含む改質アスファルト乳剤からなる接着層をアスファルト系弾性舗装と下地面との間に設けた実施例においては、弾性舗装−下地間において、良好な接着力が得られることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例における引張り応力の測定方法を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10 下地
1 引っ張り治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト系バインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末とを含有するアスファルト系弾性舗装および接着層からなり、該接着層を介して下地面上に接着される弾性舗装体であって、該接着層が、合成ゴムラテックスを含む改質アスファルト乳剤からなることを特徴とする弾性舗装体。
【請求項2】
前記改質アスファルト乳剤の25℃におけるエングラー度が1〜10の範囲内である請求項1記載の弾性舗装体。
【請求項3】
前記改質アスファルト乳剤の蒸発残留度が50%以上である請求項1または2記載の弾性舗装体。
【請求項4】
前記改質アスファルト乳剤の蒸発残留物の25℃における針入度が6〜10mmの範囲内である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の弾性舗装体。
【請求項5】
前記改質アスファルト乳剤の蒸発残留物の軟化点が48℃以上である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の弾性舗装体。
【請求項6】
前記合成ゴムラテックスがカチオン性乳化剤の存在下で重合されてなる請求項1〜5のうちいずれか一項記載の弾性舗装体。
【請求項7】
前記合成ゴムラテックスがクロロプレンラテックスである請求項6記載の弾性舗装体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−277858(P2007−277858A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103263(P2006−103263)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】