説明

弾性舗装材料の製造方法および弾性舗装材料

【課題】バインダーとゴムとの間の接着性を改良することで、舗装面の強度が高く、耐久性に優れたアスファルト系の弾性舗装材料の製造方法、および、それにより得られる弾性舗装材料を提供する。
【解決手段】アスファルトおよびエチレン酢酸ビニル共重合体を含むバインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、を含有する弾性舗装材料の製造方法である。少なくともバインダーとゴムチップおよび/またはゴム粉末とを混合して混合物を得た後、得られた混合物を、100〜190℃で0.5〜10時間保持する保持工程を含む。上記弾性舗装材料の製造方法により製造された弾性舗装材料であって、ゴムチップおよび/またはゴム粉末が、バインダーにより膨潤している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性舗装材料の製造方法および弾性舗装材料(以下、単に「製造方法」および「舗装材料」とも称する)に関し、詳しくは、アスファルトをバインダーとして用いた弾性舗装材料の製造方法および弾性舗装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加硫ゴムを粉末またはチップ状にして利用する方法として、ウレタンやエポキシ等の硬化性樹脂をバインダーとして使用した低騒音弾性舗装が知られている。また、ゴムチップをこれらバインダーと混合してプレス成形した弾性舗装体が、歩道や運動場、車道等で使用されている。
【0003】
これらゴムチップを用いた弾性舗装は、ゴムチップの有する弾力性により歩行時の衝撃吸収性や転倒時の安全性といった優れた効果を奏するとともに、内部に空隙を有することから、排水性および通気性に加えて吸音性にも優れ、そのためタイヤと路面内で発生する騒音の低減にも有効であるため、都市部での交通騒音低減のための機能性弾性舗装材としても注目されている。
【0004】
しかし、ウレタン等の硬化性樹脂をバインダーとして用いた場合、施工した舗装をリサイクルする場合に、アスファルトのように加熱等により再利用を図ることができないという問題があった。また、コスト的に高価であることに加えて、常温で硬化が遅いため、養生時間に1〜2日程度要することとなり、その間交通規制をしなければならないという難点があり、成型品についても、道路のような大面積に施工するには困難であり、経済的な問題を有するものであった。
【0005】
これに対し、本出願人においては、上記硬化性バインダーにおける欠点を改良すべく、短時間で硬化可能であるとともに、低コストで2次リサイクルが可能なアスファルトをバインダーに用いた弾性舗装について種々検討を行ってきており、熱可塑性樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)をアスファルトとともにバインダーとして用いた弾性舗装材料について提案を行っている(例えば、特許文献1,2等)。
【0006】
一方、上記のような弾性舗装を形成するにあたっては、通常、ゴムチップや石粉、珪砂等の骨材とバインダーとを混合し、ミキサー等の混合機により混練する方法が用いられるが、ウレタン等の硬化性バインダーおよびアスファルト系バインダーのいずれにおいても、ゴムチップ等とバインダーとの混練については、3分程度の短時間しか行われないのが一般的であった。
【特許文献1】特願2004−381513
【特許文献2】特願2005−004509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、アスファルトとEVAとを用いたアスファルト系弾性舗装によれば、ウレタン等の硬化性バインダーにおけるコスト性や養生時間等の問題を解消することは可能である。しかしながら、アスファルト系弾性舗装においては、バインダーとゴムとの接着力が極めて小さいために、ゴムがバインダーから容易に剥離してしまい、そのため舗装の耐久性に劣るという難点があった。
【0008】
従って、アスファルト系バインダーとゴムとの間の接着力を向上して、より強度に優れた、高耐久の弾性舗装を実現し得る技術が求められていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、アスファルト系バインダーとゴムとの間の接着性を改良することで、舗装面の強度が高く、耐久性に優れたアスファルト系の弾性舗装材料の製造方法、および、それにより得られる弾性舗装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、アスファルト系バインダーとゴムとを混合した後、この混合物を一定温度で一定時間保持することにより、バインダーとゴムとの間の接着力を向上することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の弾性舗装材料は、アスファルトおよびエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含むバインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、を含有する弾性舗装材料の製造方法であって、少なくとも前記バインダーとゴムチップおよび/またはゴム粉末とを混合して混合物を得た後、得られた混合物を、100〜190℃で0.5〜10時間保持する保持工程を含むことを特徴とするものである。本発明の製造方法においては、好適には、前記保持工程において、前記混合物を混練する。
【0012】
また、本発明の弾性舗装材料は、上記本発明の弾性舗装材料の製造方法により製造された弾性舗装材料であって、前記ゴムチップおよび/またはゴム粉末が、前記バインダーにより膨潤していることを特徴とするものである。本発明の舗装材料においては、特には、前記バインダーがワックスを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バインダーとゴムとの混合物を一定温度で一定時間保持し、特には混練することで、ゴム中にバインダーが浸透して、ゴムをバインダーにより膨潤させることができ、これにより、バインダーとゴムとの間の接着力を向上することが可能とである。従って、本発明の弾性舗装材料によれば、舗装面の強度が高く、耐久性に優れたアスファルト系弾性舗装を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の弾性舗装材料の製造方法は、アスファルトおよびEVAを含むバインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、を含有する弾性舗装材料を製造するにあたり、バインダーとゴムチップおよび/またはゴム粉末とを混合して混合物を得た後、得られた混合物を一定の温度で一定時間保持する保持工程を含む点に特徴を有する。
【0015】
かかる保持工程を経ることで、バインダーをゴム中に浸透させて、ゴムをバインダーにより膨潤させることができ、アスファルト系バインダーとゴムとの間の接着力を、従来に比して著しく向上させることが可能となった。
【0016】
本発明における保持工程の保持温度は、100〜190℃、好適には120〜180℃であり、保持時間は、0.5〜10時間、好適には1〜4時間である。保持温度が上記範囲よりも低いとゴムの膨潤が起きにくく、一方、上記範囲よりも高いとゴムが熱劣化してしまう。また、保持時間が上記範囲よりも短いとゴムの膨潤が起きにくく、一方、上記範囲よりも長いと製造コストが高くなる。
【0017】
上記保持工程は、バインダーとゴムとの混合物を上記条件下で放置することにより行ってもよいが、混合物を上記条件下で混練することにより行うこともできる。いずれの場合においても、上記条件下で混合物中でバインダーとゴムとを接触させ、ゴムをバインダーにより膨潤させることが重要である。
【0018】
なお、弾性舗装材料は、通常、上記バインダーとゴムチップおよび/またはゴム粉末に加えて、骨材および所望に応じ他の添加成分を含有するが、本発明の製造方法においては、少なくともバインダーとゴムチップおよび/またはゴム粉末とを混合して得られた混合物を上記保持工程に供するものであればよく、これによりバインダーとゴムとの間の接着力を改良することができる。従って本発明においては、まず、バインダーとゴムとを混合して得られた混合物を上記保持工程に供することで、ゴムをバインダーにより膨潤させて、その後、骨材および他の添加成分を投入して混合してもよく、また、バインダーとゴムとの混合時に、同時に骨材および他の添加成分も混合して、全舗装材料成分の混合物を上記保持工程に供することで、ゴムをバインダーにより膨潤させることもできる。
【0019】
本発明の弾性舗装材料の製造方法は、上記保持工程を含むものであれば、それ以外の点については常法に従い行うことができ、特に制限されるものではない。例えば、舗装材料成分の混合時に用いるオイルとしては、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の3組成からなる石油系オイルのうち、環分析結果が36%以上の芳香族炭素を有する芳香族系オイルを好適に使用することができる。
【0020】
また、本発明の弾性舗装材料は、上記本発明の製造方法により製造されたものであって、ゴムチップおよび/またはゴム粉末がバインダーにより膨潤してなるものであり、これにより、ゴム−バインダー間の接着力に優れるという特性を有する。本発明の弾性舗装材料においては、上記バインダーおよびゴム以外の配合成分等については特に制限されるものではなく、所望に応じ適宜決定することが可能である。
【0021】
本発明において使用できるアスファルトとしては、特に制限されるものではなく、慣用のアスファルト、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、アスファルト乳剤やタール、ピッチ、オイルなどを添加したカットバックアスファルト、再生アスファルトなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。
【0022】
また、EVAとしては、例えば、EV210ET(三井デュポンケミカル(株)製)、EVA720、EVA680、EVA710((株)東ソー製)等の市場で入手し得るものを好適に使用することができる。EVAにおけるビニル酢酸単位は、ゴムとの接着性を高めるために、好ましくは10重量%以上とする。また、EVAのJIS K7215に準拠するデュロメータA硬さは、強度の面から70以上であることが好ましい。本発明に使用するバインダーにおいては、アスファルト20〜70重量部に対し、EVAを30〜80重量部にて配合することが好ましい。
【0023】
また、バインダーには、アスファルトおよびEVA以外の成分として、ワックスやシランカップリング剤等を添加することができる。かかるワックスとしては、特に制限されるものではなく、石油ワックス等の天然ワックスおよび合成ワックスのいずれを用いることもでき、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィンワックス、パラフィン系合成ワックス、ポリエチレンワックス、炭化水素系ワックス等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明に用いるワックスとしては、軟化点が80℃以上160℃以下、特には90℃以上130℃以下であるものが好ましい。さらに、25℃における針入度は、好適には20以下、より好適には8以下である。アスファルト系バインダーにおけるワックスの配合量は、60重量%以下、例えば、20〜50重量%程度とする。
【0024】
また、シランカップリング剤としては、市場で入手できるものを適宜使用することが可能であり、特に制限されるものではないが、中でもアミノ系シランカップリング剤が好適である。例えば、信越化学工業(株)製のKBM603、KBM903等を好適に使用することができる。シランカップリング剤を配合することにより、石表面の接着性も得られるため、耐久性をより高めることができる。本発明に用いるバインダーにおけるシランカップリング剤の配合量は、5重量%以下、例えば、0.1〜1重量%程度とする。
【0025】
その他、バインダー中には、例えば、強度等を向上させるために、他の熱可塑性エラストマーを添加することができる。かかる他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等の1種または2種以上の組み合わせを適宜選択して用いることができる。これら他の熱可塑性エラストマーの配合量は、例えば、全バインダーに対し、10〜50重量%程度とすることができる。また、施工性を改良するために、バインダー中に、低分子量の石油樹脂を1〜40重量%程度含有させてもよい。
【0026】
なお、本発明の弾性舗装材料中に占めるバインダーの割合は、骨材の結着強度の観点から、10〜35重量%程度とすることが好ましい。
【0027】
ゴムチップおよび/またはゴム粉末としては、特に材質等は限定されず、天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等を利用することができる。かかるゴムは、ゴムタイヤ、ウェザーストリップ、ホース類等の使用済み廃材、成形の際に生成する不要の端材、成形不良品等から得ることができる。
【0028】
また、骨材としては、特に制限はなく、天然骨材およびリサイクル骨材のいずれも用いることができ、川砂利、川砂等の砕石、珪砂、シリカサンド、スラグ、コンクリート、ガラス、FRP等が挙げられる。この骨材に使用する石材、砂等は、完成した舗装の強度、耐摩耗性を確保し、表面に露出して防滑作用を得るためのものである。石材は互いに噛み合って荷重を分散させる機能を持つことが好ましく、このため、砕石のような尖った形状で硬い物が適当である。また、粒径0.5〜30mmの粗粒骨材に対して、粒径0.5mm以下の細粒骨材を5体積%以上混合することが好ましい。粗粒骨材は、互いに噛み合って隙間を形成するような、砕石のような尖った形状で硬いものが適当である。一方、細粒骨材は、大型の粗粒骨材の表面に付着してタイヤ等に対して防滑作用(サンドペーパーのような研磨効果)をもたらすこととなる。
【0029】
これらゴムチップおよび/またはゴム粉末と骨材との体積比率は、100/0〜50/50、特には100/0〜75/25の範囲内である。ゴムの割合が少なすぎると弾性舗装としての効果が十分ではなく、また、骨材の割合が多すぎると十分な弾性および低音効果が得られなくなり、好ましくない。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
ゴムとバインダーとの接着力を調べるために、図1(a)に示すような、ゴムシート1(自社製)/アスファルト系バインダー2/ゴムシート1(自社製)の積層からなるサンプルを作製し、180℃で0,0.5、1,2,3時間それぞれ放置した後、常温および60℃でそれぞれピール試験(図1(b)参照)を行うことにより、接着力を評価した。
【0031】
ここで、使用したアスファルト系バインダーの配合は、ストレートアスファルト(25℃針入度60〜80,新日本石油(株)製)50重量部、EVA(EVA720,(株)東ソー製)50重量部およびアミノ系シランカップリング剤(KBM603,信越化学工業(株)製)0.5重量部とからなる。また、ゴムシート1の形状は2cm×9cm×2mm、アスファルト系バインダー2の形状は、2cm×7cm×2mmとした。
その結果を、図2のグラフに示す。
【0032】
図2のグラフからわかるように、180℃で0.5〜3時間保持した場合において、ゴムシート1とアスファルト系バインダー2との界面で良好な接着力が得られていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は実施例に用いたサンプル形状を示す概略断面図であり、(b)は実施例におけるピール試験に係る説明図である。
【図2】実施例におけるピール試験の結果を、膨潤時間(保持時間)と引張強度との関係にて示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 ゴムシート
2 アスファルト系バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトおよびエチレン酢酸ビニル共重合体を含むバインダーと、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、を含有する弾性舗装材料の製造方法であって、少なくとも前記バインダーとゴムチップおよび/またはゴム粉末とを混合して混合物を得た後、得られた混合物を、100〜190℃で0.5〜10時間保持する保持工程を含むことを特徴とする弾性舗装材料の製造方法。
【請求項2】
前記保持工程において、前記混合物を混練する請求項1記載の弾性舗装材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の弾性舗装材料の製造方法により製造された弾性舗装材料であって、前記ゴムチップおよび/またはゴム粉末が、前記バインダーにより膨潤していることを特徴とする弾性舗装材料。
【請求項4】
前記バインダーがワックスを含む請求項3記載の弾性舗装材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−186966(P2007−186966A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7934(P2006−7934)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】