弾性表面波フィルタ
【課題】高結合のLiNbO3、LiTaO3基板を用いて、耐熱衝撃性のSAWデバイスを得る。
【解決手段】圧電基板5上に表面波の伝搬方向に沿って近接配置した3つのIDT電極と、この3つのIDT電極の両側に配置したグレーティング反射器と、を備えた縦結合多重モード弾性表面波フィルタF1、F2を複数段縦続接続した縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタであって、3つのIDT電極の内、一方の端子に接続されるIDT電極と他方の端子に接続されるIDT電極は、インピーダンスが異なるように形成され、且つ、インピーダンスが高いIDT電極が圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低いIDT電極が−Z’軸側に配置されるように縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタF1、F2を構成するようにした。
【解決手段】圧電基板5上に表面波の伝搬方向に沿って近接配置した3つのIDT電極と、この3つのIDT電極の両側に配置したグレーティング反射器と、を備えた縦結合多重モード弾性表面波フィルタF1、F2を複数段縦続接続した縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタであって、3つのIDT電極の内、一方の端子に接続されるIDT電極と他方の端子に接続されるIDT電極は、インピーダンスが異なるように形成され、且つ、インピーダンスが高いIDT電極が圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低いIDT電極が−Z’軸側に配置されるように縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタF1、F2を構成するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波フィルタに関し、特に焦電性を有する圧電基板上に弾性表面波フィルタを形成する際に、熱衝撃試験の影響を低減するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波デバイス(SAWデバイス)は通信分野で広く利用され、高性能、小型、量産性等の優れた特徴に加え、低コストであるため携帯電話機等に多く用いられている。特にRF段に用いられるSAWデバイスは低損失、広帯域等が要求されるため、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、又はタンタル酸リチウム(LiTaO3)等の高結合材料を用いて構成される。しかしながら、高結合材料は同時に焦電効果も有するため、温度試験等によりIDT電極、あるいは基板が破損する虞がある。特許文献1には、LiNbO3又はLiTaO3基板を酸素還元処理し、圧電性を保ったまま抵抗率を1.0×107Ω・cm以上、1.0×1013Ω・cm以下とし、焦電荷が問題となる半田リフロー工程では、放電の時定数を従来の圧電基板に比べ1/100以下として、昇温中に焦電荷が発生したとしても蓄積されず、防止できることが開示されている。
一方、圧電基板の抵抗率が1.0×107Ω・cm以上であれば、寄生抵抗が約1.0×107Ω以上となり、例えばRF用弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)のインピーダンスである50Ω〜数百Ωと比較しても5桁以上大きいので、挿入損失に影響せず、SAWフィルタの電気的特性の劣化は生じない。
【0003】
また、SAWデバイスとパッケージのパッド電極とを接続するバンプは、300℃以下で接続可能な半田材、例えばAgSn合金、又はAuSn合金などを用いて、焦電化を抑圧した例が開示されている。Auなども、300℃以下の加熱において、超音波振動と加重を印加することでAuバンプとして用いることができる。パッケージ本体と蓋体との封止材は、融点が300℃以下であるもの、例えばAgSn合金又はAuSn合金を用いれば、圧電基板の温度上昇を抑えることにより、焦電性の復活を防止することができる。
還元処理した圧電基板であっても、空気中でアニール処理すると焦電性が復活し、アニール処理温度が約350℃以上になると急激に焦電性が復活する。そこで、窒素雰囲気であれば、加熱温度が高くなっても、圧電基板の焦電性復活防止に効果がある。従って、バンプの半田材や封止材の融点は、300℃以下に限定しなくてもよいと記されている。
【0004】
SAWデバイスの帯電防止対策が特許文献2に開示されている。SAWデバイスは、図17の断面図に示すように、圧電基板、例えばLiTaO3と該圧電基板41の一方の主面(下面)上に励振電極(櫛形電極)42aと該励振電極42aから延出するボンディングパッド42bとからなるSAWデバイス素子(以下「SAWチップ」と称す)40と、上面に前記SAWチップ実装用のパッド電極45を配設すると共に、下面に外部電極47を備えた平板状のプリント配線基板44、例えばセラミック基板と、を備えている。前記SAWチップ40の下面と前記プリント配線基板44の上面との間隙に所定のギャップ48を隔てて機械的に固定(フリップチップ実装)する共に、前記ボンディングパッド42bに固定した金属バンプ43を介して前記パッド電極45と電気的導通している。前記SAWチップ40を実装した前記プリント配線基板44の上面、即ち前記SAWチップ40の上面及び四側面と、前記プリント配線基板44の上面の前記SAWチップ40と重複しないスペースと、にかけて金属膜49a及び49bを、ドライプロセス(真空蒸着、スパッタリング及びCVD)によって形成する。さらに、前記金属膜49a(及び49bの上面、及び前記ギャップ48の開口部、即ち前記SAWチップ40の下面周縁部と、該周縁部に対向する前記プリント配線基板44の上面との間隙を、絶縁材料から成る樹脂部材46で封止する。
以上により、前記樹脂部材46、特に前記SAWチップ40の上面に形成する樹脂部材の厚みが約0.12mmと薄肉状であることから該樹脂部材46に帯電した電荷の電圧は高くならず、さらに前記樹脂部材46の内側面に前記金属膜49a及び49bが接触することで、樹脂部材46は見掛け体積固有抵抗値を小さく変質されて、静電気を蓄積しないことが確認できたと開示されている。
【0005】
ここで、例えば1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタについて簡単に説明する。図18はRF回路に用いられる2段縦続接続型の縦結合1次−3次二重モードSAWフィルタの構成を示す平面図であり、アンテナに接続する側(IN)は不平衡回路、IC回路に接続する側(OUT1−OUT2)は平衡回路として構成した例である。圧電基板51の主表面上に表面波の伝搬方向に沿ってIDT電極52、53、54を近接配置すると共に、該IDT電極52、53、54の両側にグレーティング反射器55a、55bを配設して、第1の1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタF1(以下、SAWフィルタと称す)を形成する。ここで、IDT電極52、53、54はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。さらに、同一圧電基板51上に第1のSAWフィルタF1と同様に、IDT電極52’、53’、54’と、反射器55’a、55’bとからなる第2のSAWフィルタF2を形成し、第1及び第2の1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタF1、F2を縦続接続して縦続接続型SAWフィルタを構成する。
図18では入力側を不平衡入力とするためIDT電極52の一方のくし形電極を入力端子INに、他方のくし形電極を接地している。そして、出力側を平衡出力とするためIDT電極52’の一方のくし形電極を出力端子OUT1に、他方のくし形電極を出力端子OUT2に接続している。ここで、縦続接続型SAWフィルタを構成するのは、減衰傾度、保証減衰量を増して要求される規格を満たすためである。
【特許文献1】WO2005/091500号公報
【特許文献2】特開2005−130412公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、焦電性を有する圧電基板(LiNbO3、LiTaO3等)を用いてSAWデバイスを構成する場合、特許文献1に開示されているような低焦電性基板(体積抵抗率の低い基板)を用いるのが一般的である。また、パッケージ内部の雰囲気は窒素(N2)で置換され、焦電性復活防止対策がなされている。
しかしながら、LiTaO3基板に1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタを2つ形成し、これらを縦続接続して構成した縦続接続型SAWフィルタに、数千サイクルの熱衝撃試験(ヒートサイクル試験)を行うと、焦電破壊は免れるものの、図20(a)の実線で示す通過域特性のように、熱衝撃試験前の通過域特性(破線)から劣化するという問題があった。ここで、図19に示す回路は、フィルタ特性測定に用いた測定回路で、縦続接続型SAWフィルタのインピーダンに合わせて入出力とも50Ωである。縦続接続型SAWフィルタは入出力対称で設計したので、一方の1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタの電極パターンを図21に示す。中心周波数を869MHz、中央のIDT電極60の対数を20.5対、両側のIDT電極61、62の対数を15.5対、交差幅を20λ(λは励起される表面波の波長)、反射器本数を91本、膜厚5%λとした。両側のIDT電極61、62の対数は15.5対であるが、中央側から2、6、10、22、26、30本目の電極指を接地側のバスバーから離し、信号側のバスバーに接続してある。また、段間の容量65、66を形成するIDT電極の対数はそれぞれ10対とした。
【0007】
熱衝撃試験をした縦続接続型SAWフィルタのパッケージの蓋体を開封し、IDT電極、反射器、リード電極、圧電基板、パッド部等を、顕微鏡を用いて観察したが、フィルタ特性の劣化に結びつくような現象、例えばIDT電極の破壊、圧電基板の破壊等は見出せなかった。そこで、縦続接続型SAWフィルタの入力及び出力からインピーダンス特性を測定し、これをスミスチャートで表した図が、図20(b)、(c)に示す図である。何れの図も破線が熱衝撃試験前、実線が試験後のスミスチャートである。図20(b)より熱衝撃試験後に通過域近傍の周波数領域において、入力側のインピーダンスが中心周波数近傍で実軸近傍から容量性側にシフトしていることが分かる。また、図20(c)より通過域近傍の出力側のインピーダンスは、入力側インピーダンスの容量性側へのシフトの影響によって終端インピーダンスである50Ωから離れてしまっているものの、入力側インピーダンスでみられた容量性側へのシフトは見られず、熱衝撃による影響が入力側に比べて小さいことが分かる。
本発明は上記問題を解決するためになされてもので、熱衝撃試験の影響をできるだけ軽減したSAWフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って近接配置した複数のIDT電極と、該複数のIDT電極の両側に配置したグレーティング反射器と、を備えた縦結合多重モード弾性表面波フィルタを複数段縦続接続した弾性表面波フィルタであって、前記複数段縦続接続した夫々の縦結合多重モード弾性表面波フィルタは互いにインピーダンスが異なるように形成され、且つインピーダンスが高い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが前記圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが−Z’軸側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように弾性表面波フィルタを構成すると、該フィルタをプリント基板に実装するため半田リフロー工程にかける際や、客先の要求により熱衝撃試験を行う際に、縦続接続型SAWフィルタの通過域特性、及びインピーダンス特性の劣化が抑えられるという効果がある。
【0011】
[適用例2]前記圧電基板がタンタル酸リチウムである適用例1に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
以上のようにタンタル酸リチウムを用いて縦続接続型SAWフィルタを構成すると、広帯域、低損失のSAWフィルタが構成でき、しかも熱衝撃による特性の劣化が防げるという利点がある。
【0012】
[適用例3]前記圧電基板がニオブ酸リチウムである適用例1に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
以上のようにニオブ酸リチウムを用いて縦続接続型SAWフィルタを構成すると、一層広帯域で、低損失のSAWフィルタが構成でき、且つ熱衝撃による特性の劣化も抑えられるという利点がある。
【0013】
[適用例4]前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタは、1次−3次縦結合多重モード弾性表面波フィルタである適用例1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
【0014】
以上のように、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の高結合基板上に、1次−3次縦結合モードを用いて多重モードSAWフィルタを構成すると、広帯域で低損失のフィルタが構成でき、且つ耐熱衝撃のあるSAWフィルタが構成できるという利点がある。
【0015】
[適用例5]前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタが1次−2次縦結合多重モード弾性表面波フィルタである適用例1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
【0016】
以上のように、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の高結合基板上に、1次−2次縦結合モードを用いて多重モードSAWフィルタを構成すると、中帯域のフィルタが構成でき、且つ耐熱衝撃のあるSAWフィルタが構成できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る第1の実施の形態の縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタの構成を示す平面図である。縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタ1(以下、縦続接続型SAWフィルタと称す)は、圧電基板5、例えばLiTaO3の主面上で表面波の伝搬方向に沿って3つのIDT電極10、11、12を近接配置し、該3つのIDT電極10、11、12の両側にグレーティング反射器(以下、反射器と称す)13a、13bをそれぞれ配置して、第1の1次−3次縦結合多重モード弾性表面波フィルタ(以下、多重モードSAWフィルタと称す)F1を形成する。IDT電極10、11、12はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。同様に、同一の圧電基板5上に表面波の伝搬方向に沿って3つのIDT電極20、21、22を近接配置し、該3つのIDT電極20、21、22の両側に反射器23a、23bをそれぞれ配置して、第2の多重モードSAWフィルタF2を形成する。IDT電極20、21、22はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。
【0018】
多重モードSAWフィルタF1の中央IDT電極10の圧電基板5端部寄りのバスバーと入力パッドINを接続し、IDT電極10の圧電基板5中央寄りのバスバーを接地する。F1の両側のIDT電極11、12の圧電基板5端部寄りのバスバーをそれぞれ接地し、IDT電極11、12の圧電基板5中央寄りのバスバーと、第2の多重モードSAWフィルタF2の両側のIDT電極21、22の圧電基板5中央寄りのバスバーと、を同一圧電基板5上に形成したリード電極にてそれぞれ接続する。F2の中央のIDT電極20の圧電基板5端部寄りのバスバーと出力パッドOUTとを接続し、IDT電極20の圧電基板5内部寄りのバスバーを接地する。更にIDT電極21,22の圧電基板5端部寄りのバスバーをそれぞれ接地する。そして、IDT電極11と21、及びIDT電極12と22を接続するリード電極と接地間に、それぞれくし形電極かなる容量27a、27bを接続して、縦続接続型SAWフィルタ1を構成する。
【0019】
本発明に係る縦続接続型SAWフィルタは、例えば携帯電話等のアンテナと回路側RF部との間に用いられる。このようなSAWフィルタは入出力が共に50Ωである場合が一般的であるが、アンテナ側が50Ω、RF部側が例えば200Ωと、インピーダンスが非対称のフィルタもある。後者のようなSAWフィルタでは、第1の多重モードSAWフィルタF1の中央のIDT電極10が呈するインピーダンスと、第2の多重モードSAWフィルタF2の中央のIDT電極20が呈するインピーダンスと、を異なるように形成する。そして、インピーダンスの高い側のIDT電極(図1ではIDT電極20)が圧電基板5の+Z’軸側に、インピーダンスの低い側のIDT電極(図1ではIDT電極10)が、−Z’軸側に配置されるように縦続接続型多重モードSAWフィルタ1を構成する。
圧電結晶LiTaO3、LiNbO3等は三方晶系に属し、3回対称軸のZ軸、Y軸、X軸が互いに直交している。図2は、θ°YカットX伝搬LiTaO3基板の切り出し角を示した図で、元の座標(X,Y,Z)のYカット基板をX軸の回りに反時計方向にθ°(36°〜48°)回転して切り出す。従って基板の主面に平行な方向はZ’軸と、X軸であり、垂直な方向がY’軸となる。なお、Z’軸には方向性があり、矢印の先端部側が+Z’軸方向、原点側が−Z’軸方向となる。
【0020】
図3はウエハー7上に縦続接続型SAWフィルタパターンを格子状に配置した図で、ウエハー7の場合も縦続接続型SAWフィルタパターンの内、+Z’軸方向にインピーダンスの高いIDT電極を、−Z’軸方向にインピーダンスの低いIDT電極を配置するようにする。つまり、A−Iの縦続接続型SAWフィルタパターンの場合、インピーダンスの高いIDT電極20’はウエハー内で、+Z’軸方向に、インピーダンスの低いIDT電極10’はウエハー内で−Z’軸方向に配置する。C−IIIの縦続接続型SAWフィルタパターンの場合も同様で、インピーダンスの高いIDT電極20’は、インピーダンスの低いIDT電極10’より+Z’軸方向に配置する。ウエハー7をダイシングソーで切断して個片の縦続接続型SAWフィルタ素子を得るが、個片の状態でも図1で説明したように、インピーダンスダンスの高い側のIDT電極が+Z’軸方向に、インピーダンスの低い側のIDT電極が−Z’軸方向に配置される。
【0021】
図20に示した熱衝撃試験前後のフィルタ特性の変化から、熱衝撃試験により縦続接続型SAWフィルタの入出力のインピーダンスに変化が生じたことは明らかである。そこで、このインピーダンスダンスの変化を電気回路で近似することができれば、測定回路の終端条件に近似回路を付加することにより熱衝撃試験の前後の特性を模擬的に評価できることを想致した。
種々の実験及びシミュレーションを用いて通過域特性、及びインピーダンスダンス特性を求めた。つまり、入出力インピーダンスが共に50Ωの縦続接続型SAWフィルタを測定回路を用いて実測し、該実測Sパラメータに計算上で容量を直列接続し、シミュレーションにより通過域特性、入出力インピーダンス特性を求めた。ただし、記述が煩雑になるのでシミュレーションにより求めたとせず、測定したと表現する。
熱衝撃試験前の縦続接続型SAWフィルタの測定は、50Ω−50Ω終端回路で実測するが、熱衝撃試験は、図4の回路に示すように、縦続接続型SAWフィルタの入力側15pF、出力側に45pFを、それぞれ直列に接続して測定した場合が、熱衝撃試験後の変化を表現できることを見出した。
【0022】
図5(a)は縦続接続型SAWフィルタの通過域特性で、破線が50Ω−50Ω終端の場合の通過域特性、実線が図4に示すように、(50Ω+15pF)−(45pF+50Ω)終端とした場合の特性である。同様に、図5(b)、(c)はそれぞれ入力側、出力側からみたインピーダンス特性のスミスチャートで、破線が50Ω終端の場合のスミスチャート、実線が容量素子15pF,45pFを含めて、図4のQ1、Q2からみたスミスチャートS(1,1)、S(2,2)である。図5と図20を比較して、縦続接続型SAWフィルタの入出力に容量素子を付加することにより、熱衝撃試験を行わずに熱衝撃試験前後の通過域特性の変化、入出力のインピーダンス特性の変化を、近似できることが分かる。
ちなみに、50Ω−50Ω終端の測定回路と、図6の測定回路に示すように縦続接続型SAWフィルタの入力側に45pF、出力側に15pFをそれぞれ直列に付加した測定回路と、を用いて縦続接続型SAWフィルタの通過域特性、入出力のインピーダンス特性を測定した図が、図7(a)、(b)、(c)に示す図である。通過域特性は変わらないものの入出力のインピーダンス特性は、図6のそれと逆になる。
【0023】
前述したように、非対称RF−SAWフィルタは、アンテナ側が50Ω、RF部側が、例えば200Ωと、入出力インピーダンスが非対称である。図8は、図1に示した入出力インピーダンスが非対称な縦続接続型SAWフィルタの詳細な電極パターンを示す図で、同図(a)が高インピーダンス側(200Ω)の多重モードSAWフィルタF2を、同図(b)が低インピーダンス側(50Ω)の多重モードSAWフィルタF1を、示すIDT電極構成である。試作した縦続接続型SAWフィルタの一例は中心周波数835MHz、入力側50Ω、出力側200Ωの非対称終端である。出力側のF2の中央IDT電極20は29対、両側のIDT電極21,22は共に19.5対で、交差幅は30λ(λは励起される表面波の波長)、反射器本数は85本、膜厚は3.7%λである。中央のIDT電極20はインピーダンスを高くするため、1対目、3対目、5対目と奇数対目を間引きしている。つまり、上下のバスバーから離して互いにリング状(ロ字状)に接続し、短絡グレーティングとして間引きを施している。また、入力側のF1の中央IDT電極10は、29対、両側のIDT電極11、12は共に19.5対、反射器本数は85本、膜厚は3.7%λである。
【0024】
インピーダンスが非対称なRF−SAWフィルタの熱衝撃試験前後の通過域特性の変化を予測するために、図9に示す50Ω−200Ω終端測定回路と、図10に示す(50Ω+15pF)−(45pF+200Ω)終端測定回路と、を用いた。中心周波数835MHzの縦続接続型SAWフィルタを試作し、図9の測定回路を用いて熱衝撃試験前の通過域特性を測定した図が、図11の破線で示すフィルタ特性である。熱衝撃試験後のインピーダンスの変化を、実際の熱衝撃試験にかけずに図10の測定回路を用いて模擬試験した。図10の測定回路を用いて測定した通過域特性が、図11に示す実線である。図10に示すように、入力側に15pF、出力側に45pFを付加して、縦続接続型SAWフィルタの入力側の劣化が大きいことを表現している。このように、入力側(50Ω)のインピーダンスの劣化が、出力側(200Ω)の劣化より大きな場合は、熱衝撃試験前後の通過域特性の変化が大きいことが想定される。
【0025】
そこで、図12に示す測定回路のように、入力側(50Ω+45pF)、出力側(15pF+200Ω)とした終端回路を用いて、縦続接続型SAWフィルタに実際の熱衝撃試験をかけずに、模擬試験で通過域特性の変化を予測した。図9、12に示した測定回路を用いて、縦続接続型SAWフィルタを測定したときの通過域特性が図13で、破線は図9を用いて測定した、つまり熱衝撃試験前の特性であり、実線は図12を用いて測定した、模擬熱衝撃試験後の特性である。図13より破線及び実線の通過域特性は差が極めて小さいことが分かった。
また、熱衝撃試験による縦続接続型SAWフィルタ特性へのダメージ、例えば通過域特性のシフト、インピーダンス特性の変化等は、−Z’軸側より+Z’軸側の方がよりダメージを受けることは、多数の実験より明らかとなっている。
図13の測定結果を踏まえ、よりダメージの大きい+Z’軸側にインピーダンスの高い側のIDT電極を配置し、インピーダンスダンスの低い側のIDT電極を−Z’軸側に配置することにより、熱衝撃試験後のフィルタ特性の劣化を最小限に止めることができることが判明した。
【0026】
図14は、縦続接続型SAWフィルタ素子1をパッケージ本体Pに収容し、素子1の入出力パッドS1、S2と、パッケージ本体Pの入出力端子P1、P2と、をそれぞれボンディングワイヤB1、B2で接続する。中央の接地パッドS3、S4と、パッケージ本体の接地端子G1,G2と、をボンディングワイヤB3、B4で接続し、接地パッドS5、S6と、パッケージ本体Pの接地端子G3、G4と、をボンディングワイヤB5、B6にて接続し、パッケージ本体のシールリングRに蓋部材(図示せず)をシーム溶接して縦続接続型SAWフィルタを構成する。
IDT電極の電極指を間引き操作してインピーダンスを高くする手段は、各種の手法が知られており、図15(a)〜(e)はその一例である。図15(a)は、上下のバスバーに接続する電極指と、相隣接する電極指2本を上端で短絡接続したものと、を交互に配置した構成であるが、所望とするインピーダンスにより種々の組み合わせがある。図15(b)は上下のバスバーに接続する電極指と、相隣接する電極指2本を電極指の中央で短絡接続したものと、を交互に配置した構成であるが、所望とするインピーダンスにより種々の組み合わせがある。図15(c)は上下のバスバーに接続する電極指と、相隣接する電極指3本を電極指中央で短絡接続したものと、を交互に配置した構成であるが、所望とするインピーダンスにより種々の組み合わせがある。図15(d)は、左側のIDT電極の右端から1、3番目の電極指を下側バスバーから離し、上側バスバーに接続して、左側のIDT電極のインピーダンスを高めた例である。図15(e)は、左側のIDT電極の右端から3、4、7、8本目の電極指を逆側のバスバーに接続し、インピーダンスを高めた例である。
【0027】
図16は本発明に係る他の縦続接続型多SAWフィルタの構成を示す平面図である。縦続接続型多SAWフィルタ2は、圧電基板(図示せず)、例えばLiTaO3の主面上で表面波の伝搬方向に沿って2つのIDT電極30、31を近接配置し、該2つのIDT電極30、31の両側に反射器32a、32bをそれぞれ配置して、第1の1次−2次縦結合多重モード弾性表面波フィルタ(以下、多重モードSAWフィルタと称す)F’1を形成する。IDT電極30、31はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。同様に、同一の圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って2つのIDT電極35、36を近接配置し、該2つのIDT電極35、36の両側に反射器37a、37bをそれぞれ配置して、第2の多重モードSAWフィルタF’2を形成する。第1及び第2の多重モードSAWフィルタF’1、F’2を縦続接続して縦続接続型多SAWフィルタ2を構成する。
そして、インピーダンスの高い側のIDT電極(図16ではIDT電極30)が圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低い側のIDT電極(図16ではIDT電極35)が−Z’軸側に配置されるように縦続接続型多重モードSAWフィルタ2を構成する。このようにIDT電極のインピーダンスの大小(高低)により、+Z’軸側と−Z’軸側とに配設することにより、熱衝撃試験による縦続接続型SAWフィルタのインピーダンスの劣化を最小限に抑えることができる。
【0028】
以上では圧電基板にLiTaO3を用いて説明したが、同じ三方晶系に属し、強焦電性を示すLiNbO3についても本発明を適用できる。つまり、インピーダンスの高い側のIDT電極を圧電基板(LiNbO3)の+Z’軸側に、インピーダンスの低い側のIDT電極を、−Z’軸側に配置することにより、熱衝撃試験による縦続接続型SAWフィルタのインピーダンスの劣化を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る縦続接続型SAWフィルタ素子の構成と、座標軸との関係を示す平面図である。
【図2】LiTaO3基板の切断方位と座標軸との関係を示した図である。
【図3】ウエハー上のIDT電極パターンと、座標軸との関係を示す平面図である。
【図4】測定回路を示した図である。
【図5】(a)は測定回路による通過域特性の違いを示した図、(b)、(c)はそれぞれ入出力のインピーダンス特性を示したスミスチャートである。
【図6】測定回路を示した図である。
【図7】(a)は測定回路による通過域特性の違いを示した図、(b)、(c)はそれぞれ入出力のインピーダンス特性を示したスミスチャートである。
【図8】(a)は高インピーダンスを呈する多重モードSAWフィルタの電極パターン、(b)は低インピーダンスを呈する多重モードSAWフィルタの電極パターンを示した図である。
【図9】測定回路を示した図である。
【図10】測定回路を示した図である。
【図11】非対称縦続接続型SAWフィルタの測定回路による通過域特性の違いを示した図である。
【図12】測定回路を示した図である。
【図13】非対称縦続接続型SAWフィルタの測定回路による通過域特性の違いを示した図である。
【図14】非対称縦続接続型SAWフィルタの組み立て図である。
【図15】(a)〜(e)はIDT電極を高インピーダンスにするための電極指の処理法を示した図である。
【図16】1次−2次縦結合二重モードSAWフィルタを縦続接続して構成した縦続接続型SAWフィルタの構成を示した平面図である。
【図17】従来の縦続接続型SAWフィルタの構成を示す断面図である。
【図18】従来の縦続接続型SAWフィルタの電極パターンを示した図である。
【図19】測定回路を示した図である。
【図20】(a)は熱衝撃試験前後の通過域特性の差、(b)、(c)は熱衝撃試験前後の入力及び出力のインピーダンス特性の差を示した図である。
【図21】入出力共に50Ωの縦続接続型SAWフィルタの電極パターンを示した図である。
【符号の説明】
【0030】
1 縦続接続型SAWフィルタ素子、5 圧電基板、7 圧電ウエハー、10、10’、11、12、20、20’、21、22、30、31、35、36 IDT電極、13a、13b、23a、23b、32a、32b、37a、37b 反射器、27a、27b 容量、F1、F2、F’1、F’2 多重モードSAWフィルタ、B1、B2、B3、B4、B5、B6 ボンディングワイヤ、S1、S2、S3、S4、S5、S6 パッド、P1、P2 入出力端子、G1、G2、G3、G4 接地端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波フィルタに関し、特に焦電性を有する圧電基板上に弾性表面波フィルタを形成する際に、熱衝撃試験の影響を低減するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波デバイス(SAWデバイス)は通信分野で広く利用され、高性能、小型、量産性等の優れた特徴に加え、低コストであるため携帯電話機等に多く用いられている。特にRF段に用いられるSAWデバイスは低損失、広帯域等が要求されるため、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、又はタンタル酸リチウム(LiTaO3)等の高結合材料を用いて構成される。しかしながら、高結合材料は同時に焦電効果も有するため、温度試験等によりIDT電極、あるいは基板が破損する虞がある。特許文献1には、LiNbO3又はLiTaO3基板を酸素還元処理し、圧電性を保ったまま抵抗率を1.0×107Ω・cm以上、1.0×1013Ω・cm以下とし、焦電荷が問題となる半田リフロー工程では、放電の時定数を従来の圧電基板に比べ1/100以下として、昇温中に焦電荷が発生したとしても蓄積されず、防止できることが開示されている。
一方、圧電基板の抵抗率が1.0×107Ω・cm以上であれば、寄生抵抗が約1.0×107Ω以上となり、例えばRF用弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)のインピーダンスである50Ω〜数百Ωと比較しても5桁以上大きいので、挿入損失に影響せず、SAWフィルタの電気的特性の劣化は生じない。
【0003】
また、SAWデバイスとパッケージのパッド電極とを接続するバンプは、300℃以下で接続可能な半田材、例えばAgSn合金、又はAuSn合金などを用いて、焦電化を抑圧した例が開示されている。Auなども、300℃以下の加熱において、超音波振動と加重を印加することでAuバンプとして用いることができる。パッケージ本体と蓋体との封止材は、融点が300℃以下であるもの、例えばAgSn合金又はAuSn合金を用いれば、圧電基板の温度上昇を抑えることにより、焦電性の復活を防止することができる。
還元処理した圧電基板であっても、空気中でアニール処理すると焦電性が復活し、アニール処理温度が約350℃以上になると急激に焦電性が復活する。そこで、窒素雰囲気であれば、加熱温度が高くなっても、圧電基板の焦電性復活防止に効果がある。従って、バンプの半田材や封止材の融点は、300℃以下に限定しなくてもよいと記されている。
【0004】
SAWデバイスの帯電防止対策が特許文献2に開示されている。SAWデバイスは、図17の断面図に示すように、圧電基板、例えばLiTaO3と該圧電基板41の一方の主面(下面)上に励振電極(櫛形電極)42aと該励振電極42aから延出するボンディングパッド42bとからなるSAWデバイス素子(以下「SAWチップ」と称す)40と、上面に前記SAWチップ実装用のパッド電極45を配設すると共に、下面に外部電極47を備えた平板状のプリント配線基板44、例えばセラミック基板と、を備えている。前記SAWチップ40の下面と前記プリント配線基板44の上面との間隙に所定のギャップ48を隔てて機械的に固定(フリップチップ実装)する共に、前記ボンディングパッド42bに固定した金属バンプ43を介して前記パッド電極45と電気的導通している。前記SAWチップ40を実装した前記プリント配線基板44の上面、即ち前記SAWチップ40の上面及び四側面と、前記プリント配線基板44の上面の前記SAWチップ40と重複しないスペースと、にかけて金属膜49a及び49bを、ドライプロセス(真空蒸着、スパッタリング及びCVD)によって形成する。さらに、前記金属膜49a(及び49bの上面、及び前記ギャップ48の開口部、即ち前記SAWチップ40の下面周縁部と、該周縁部に対向する前記プリント配線基板44の上面との間隙を、絶縁材料から成る樹脂部材46で封止する。
以上により、前記樹脂部材46、特に前記SAWチップ40の上面に形成する樹脂部材の厚みが約0.12mmと薄肉状であることから該樹脂部材46に帯電した電荷の電圧は高くならず、さらに前記樹脂部材46の内側面に前記金属膜49a及び49bが接触することで、樹脂部材46は見掛け体積固有抵抗値を小さく変質されて、静電気を蓄積しないことが確認できたと開示されている。
【0005】
ここで、例えば1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタについて簡単に説明する。図18はRF回路に用いられる2段縦続接続型の縦結合1次−3次二重モードSAWフィルタの構成を示す平面図であり、アンテナに接続する側(IN)は不平衡回路、IC回路に接続する側(OUT1−OUT2)は平衡回路として構成した例である。圧電基板51の主表面上に表面波の伝搬方向に沿ってIDT電極52、53、54を近接配置すると共に、該IDT電極52、53、54の両側にグレーティング反射器55a、55bを配設して、第1の1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタF1(以下、SAWフィルタと称す)を形成する。ここで、IDT電極52、53、54はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。さらに、同一圧電基板51上に第1のSAWフィルタF1と同様に、IDT電極52’、53’、54’と、反射器55’a、55’bとからなる第2のSAWフィルタF2を形成し、第1及び第2の1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタF1、F2を縦続接続して縦続接続型SAWフィルタを構成する。
図18では入力側を不平衡入力とするためIDT電極52の一方のくし形電極を入力端子INに、他方のくし形電極を接地している。そして、出力側を平衡出力とするためIDT電極52’の一方のくし形電極を出力端子OUT1に、他方のくし形電極を出力端子OUT2に接続している。ここで、縦続接続型SAWフィルタを構成するのは、減衰傾度、保証減衰量を増して要求される規格を満たすためである。
【特許文献1】WO2005/091500号公報
【特許文献2】特開2005−130412公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、焦電性を有する圧電基板(LiNbO3、LiTaO3等)を用いてSAWデバイスを構成する場合、特許文献1に開示されているような低焦電性基板(体積抵抗率の低い基板)を用いるのが一般的である。また、パッケージ内部の雰囲気は窒素(N2)で置換され、焦電性復活防止対策がなされている。
しかしながら、LiTaO3基板に1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタを2つ形成し、これらを縦続接続して構成した縦続接続型SAWフィルタに、数千サイクルの熱衝撃試験(ヒートサイクル試験)を行うと、焦電破壊は免れるものの、図20(a)の実線で示す通過域特性のように、熱衝撃試験前の通過域特性(破線)から劣化するという問題があった。ここで、図19に示す回路は、フィルタ特性測定に用いた測定回路で、縦続接続型SAWフィルタのインピーダンに合わせて入出力とも50Ωである。縦続接続型SAWフィルタは入出力対称で設計したので、一方の1次−3次縦結合二重モードSAWフィルタの電極パターンを図21に示す。中心周波数を869MHz、中央のIDT電極60の対数を20.5対、両側のIDT電極61、62の対数を15.5対、交差幅を20λ(λは励起される表面波の波長)、反射器本数を91本、膜厚5%λとした。両側のIDT電極61、62の対数は15.5対であるが、中央側から2、6、10、22、26、30本目の電極指を接地側のバスバーから離し、信号側のバスバーに接続してある。また、段間の容量65、66を形成するIDT電極の対数はそれぞれ10対とした。
【0007】
熱衝撃試験をした縦続接続型SAWフィルタのパッケージの蓋体を開封し、IDT電極、反射器、リード電極、圧電基板、パッド部等を、顕微鏡を用いて観察したが、フィルタ特性の劣化に結びつくような現象、例えばIDT電極の破壊、圧電基板の破壊等は見出せなかった。そこで、縦続接続型SAWフィルタの入力及び出力からインピーダンス特性を測定し、これをスミスチャートで表した図が、図20(b)、(c)に示す図である。何れの図も破線が熱衝撃試験前、実線が試験後のスミスチャートである。図20(b)より熱衝撃試験後に通過域近傍の周波数領域において、入力側のインピーダンスが中心周波数近傍で実軸近傍から容量性側にシフトしていることが分かる。また、図20(c)より通過域近傍の出力側のインピーダンスは、入力側インピーダンスの容量性側へのシフトの影響によって終端インピーダンスである50Ωから離れてしまっているものの、入力側インピーダンスでみられた容量性側へのシフトは見られず、熱衝撃による影響が入力側に比べて小さいことが分かる。
本発明は上記問題を解決するためになされてもので、熱衝撃試験の影響をできるだけ軽減したSAWフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って近接配置した複数のIDT電極と、該複数のIDT電極の両側に配置したグレーティング反射器と、を備えた縦結合多重モード弾性表面波フィルタを複数段縦続接続した弾性表面波フィルタであって、前記複数段縦続接続した夫々の縦結合多重モード弾性表面波フィルタは互いにインピーダンスが異なるように形成され、且つインピーダンスが高い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが前記圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが−Z’軸側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
このように弾性表面波フィルタを構成すると、該フィルタをプリント基板に実装するため半田リフロー工程にかける際や、客先の要求により熱衝撃試験を行う際に、縦続接続型SAWフィルタの通過域特性、及びインピーダンス特性の劣化が抑えられるという効果がある。
【0011】
[適用例2]前記圧電基板がタンタル酸リチウムである適用例1に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
以上のようにタンタル酸リチウムを用いて縦続接続型SAWフィルタを構成すると、広帯域、低損失のSAWフィルタが構成でき、しかも熱衝撃による特性の劣化が防げるという利点がある。
【0012】
[適用例3]前記圧電基板がニオブ酸リチウムである適用例1に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
以上のようにニオブ酸リチウムを用いて縦続接続型SAWフィルタを構成すると、一層広帯域で、低損失のSAWフィルタが構成でき、且つ熱衝撃による特性の劣化も抑えられるという利点がある。
【0013】
[適用例4]前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタは、1次−3次縦結合多重モード弾性表面波フィルタである適用例1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
【0014】
以上のように、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の高結合基板上に、1次−3次縦結合モードを用いて多重モードSAWフィルタを構成すると、広帯域で低損失のフィルタが構成でき、且つ耐熱衝撃のあるSAWフィルタが構成できるという利点がある。
【0015】
[適用例5]前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタが1次−2次縦結合多重モード弾性表面波フィルタである適用例1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタを特徴とする。
【0016】
以上のように、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の高結合基板上に、1次−2次縦結合モードを用いて多重モードSAWフィルタを構成すると、中帯域のフィルタが構成でき、且つ耐熱衝撃のあるSAWフィルタが構成できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る第1の実施の形態の縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタの構成を示す平面図である。縦続接続型多重モード弾性表面波フィルタ1(以下、縦続接続型SAWフィルタと称す)は、圧電基板5、例えばLiTaO3の主面上で表面波の伝搬方向に沿って3つのIDT電極10、11、12を近接配置し、該3つのIDT電極10、11、12の両側にグレーティング反射器(以下、反射器と称す)13a、13bをそれぞれ配置して、第1の1次−3次縦結合多重モード弾性表面波フィルタ(以下、多重モードSAWフィルタと称す)F1を形成する。IDT電極10、11、12はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。同様に、同一の圧電基板5上に表面波の伝搬方向に沿って3つのIDT電極20、21、22を近接配置し、該3つのIDT電極20、21、22の両側に反射器23a、23bをそれぞれ配置して、第2の多重モードSAWフィルタF2を形成する。IDT電極20、21、22はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。
【0018】
多重モードSAWフィルタF1の中央IDT電極10の圧電基板5端部寄りのバスバーと入力パッドINを接続し、IDT電極10の圧電基板5中央寄りのバスバーを接地する。F1の両側のIDT電極11、12の圧電基板5端部寄りのバスバーをそれぞれ接地し、IDT電極11、12の圧電基板5中央寄りのバスバーと、第2の多重モードSAWフィルタF2の両側のIDT電極21、22の圧電基板5中央寄りのバスバーと、を同一圧電基板5上に形成したリード電極にてそれぞれ接続する。F2の中央のIDT電極20の圧電基板5端部寄りのバスバーと出力パッドOUTとを接続し、IDT電極20の圧電基板5内部寄りのバスバーを接地する。更にIDT電極21,22の圧電基板5端部寄りのバスバーをそれぞれ接地する。そして、IDT電極11と21、及びIDT電極12と22を接続するリード電極と接地間に、それぞれくし形電極かなる容量27a、27bを接続して、縦続接続型SAWフィルタ1を構成する。
【0019】
本発明に係る縦続接続型SAWフィルタは、例えば携帯電話等のアンテナと回路側RF部との間に用いられる。このようなSAWフィルタは入出力が共に50Ωである場合が一般的であるが、アンテナ側が50Ω、RF部側が例えば200Ωと、インピーダンスが非対称のフィルタもある。後者のようなSAWフィルタでは、第1の多重モードSAWフィルタF1の中央のIDT電極10が呈するインピーダンスと、第2の多重モードSAWフィルタF2の中央のIDT電極20が呈するインピーダンスと、を異なるように形成する。そして、インピーダンスの高い側のIDT電極(図1ではIDT電極20)が圧電基板5の+Z’軸側に、インピーダンスの低い側のIDT電極(図1ではIDT電極10)が、−Z’軸側に配置されるように縦続接続型多重モードSAWフィルタ1を構成する。
圧電結晶LiTaO3、LiNbO3等は三方晶系に属し、3回対称軸のZ軸、Y軸、X軸が互いに直交している。図2は、θ°YカットX伝搬LiTaO3基板の切り出し角を示した図で、元の座標(X,Y,Z)のYカット基板をX軸の回りに反時計方向にθ°(36°〜48°)回転して切り出す。従って基板の主面に平行な方向はZ’軸と、X軸であり、垂直な方向がY’軸となる。なお、Z’軸には方向性があり、矢印の先端部側が+Z’軸方向、原点側が−Z’軸方向となる。
【0020】
図3はウエハー7上に縦続接続型SAWフィルタパターンを格子状に配置した図で、ウエハー7の場合も縦続接続型SAWフィルタパターンの内、+Z’軸方向にインピーダンスの高いIDT電極を、−Z’軸方向にインピーダンスの低いIDT電極を配置するようにする。つまり、A−Iの縦続接続型SAWフィルタパターンの場合、インピーダンスの高いIDT電極20’はウエハー内で、+Z’軸方向に、インピーダンスの低いIDT電極10’はウエハー内で−Z’軸方向に配置する。C−IIIの縦続接続型SAWフィルタパターンの場合も同様で、インピーダンスの高いIDT電極20’は、インピーダンスの低いIDT電極10’より+Z’軸方向に配置する。ウエハー7をダイシングソーで切断して個片の縦続接続型SAWフィルタ素子を得るが、個片の状態でも図1で説明したように、インピーダンスダンスの高い側のIDT電極が+Z’軸方向に、インピーダンスの低い側のIDT電極が−Z’軸方向に配置される。
【0021】
図20に示した熱衝撃試験前後のフィルタ特性の変化から、熱衝撃試験により縦続接続型SAWフィルタの入出力のインピーダンスに変化が生じたことは明らかである。そこで、このインピーダンスダンスの変化を電気回路で近似することができれば、測定回路の終端条件に近似回路を付加することにより熱衝撃試験の前後の特性を模擬的に評価できることを想致した。
種々の実験及びシミュレーションを用いて通過域特性、及びインピーダンスダンス特性を求めた。つまり、入出力インピーダンスが共に50Ωの縦続接続型SAWフィルタを測定回路を用いて実測し、該実測Sパラメータに計算上で容量を直列接続し、シミュレーションにより通過域特性、入出力インピーダンス特性を求めた。ただし、記述が煩雑になるのでシミュレーションにより求めたとせず、測定したと表現する。
熱衝撃試験前の縦続接続型SAWフィルタの測定は、50Ω−50Ω終端回路で実測するが、熱衝撃試験は、図4の回路に示すように、縦続接続型SAWフィルタの入力側15pF、出力側に45pFを、それぞれ直列に接続して測定した場合が、熱衝撃試験後の変化を表現できることを見出した。
【0022】
図5(a)は縦続接続型SAWフィルタの通過域特性で、破線が50Ω−50Ω終端の場合の通過域特性、実線が図4に示すように、(50Ω+15pF)−(45pF+50Ω)終端とした場合の特性である。同様に、図5(b)、(c)はそれぞれ入力側、出力側からみたインピーダンス特性のスミスチャートで、破線が50Ω終端の場合のスミスチャート、実線が容量素子15pF,45pFを含めて、図4のQ1、Q2からみたスミスチャートS(1,1)、S(2,2)である。図5と図20を比較して、縦続接続型SAWフィルタの入出力に容量素子を付加することにより、熱衝撃試験を行わずに熱衝撃試験前後の通過域特性の変化、入出力のインピーダンス特性の変化を、近似できることが分かる。
ちなみに、50Ω−50Ω終端の測定回路と、図6の測定回路に示すように縦続接続型SAWフィルタの入力側に45pF、出力側に15pFをそれぞれ直列に付加した測定回路と、を用いて縦続接続型SAWフィルタの通過域特性、入出力のインピーダンス特性を測定した図が、図7(a)、(b)、(c)に示す図である。通過域特性は変わらないものの入出力のインピーダンス特性は、図6のそれと逆になる。
【0023】
前述したように、非対称RF−SAWフィルタは、アンテナ側が50Ω、RF部側が、例えば200Ωと、入出力インピーダンスが非対称である。図8は、図1に示した入出力インピーダンスが非対称な縦続接続型SAWフィルタの詳細な電極パターンを示す図で、同図(a)が高インピーダンス側(200Ω)の多重モードSAWフィルタF2を、同図(b)が低インピーダンス側(50Ω)の多重モードSAWフィルタF1を、示すIDT電極構成である。試作した縦続接続型SAWフィルタの一例は中心周波数835MHz、入力側50Ω、出力側200Ωの非対称終端である。出力側のF2の中央IDT電極20は29対、両側のIDT電極21,22は共に19.5対で、交差幅は30λ(λは励起される表面波の波長)、反射器本数は85本、膜厚は3.7%λである。中央のIDT電極20はインピーダンスを高くするため、1対目、3対目、5対目と奇数対目を間引きしている。つまり、上下のバスバーから離して互いにリング状(ロ字状)に接続し、短絡グレーティングとして間引きを施している。また、入力側のF1の中央IDT電極10は、29対、両側のIDT電極11、12は共に19.5対、反射器本数は85本、膜厚は3.7%λである。
【0024】
インピーダンスが非対称なRF−SAWフィルタの熱衝撃試験前後の通過域特性の変化を予測するために、図9に示す50Ω−200Ω終端測定回路と、図10に示す(50Ω+15pF)−(45pF+200Ω)終端測定回路と、を用いた。中心周波数835MHzの縦続接続型SAWフィルタを試作し、図9の測定回路を用いて熱衝撃試験前の通過域特性を測定した図が、図11の破線で示すフィルタ特性である。熱衝撃試験後のインピーダンスの変化を、実際の熱衝撃試験にかけずに図10の測定回路を用いて模擬試験した。図10の測定回路を用いて測定した通過域特性が、図11に示す実線である。図10に示すように、入力側に15pF、出力側に45pFを付加して、縦続接続型SAWフィルタの入力側の劣化が大きいことを表現している。このように、入力側(50Ω)のインピーダンスの劣化が、出力側(200Ω)の劣化より大きな場合は、熱衝撃試験前後の通過域特性の変化が大きいことが想定される。
【0025】
そこで、図12に示す測定回路のように、入力側(50Ω+45pF)、出力側(15pF+200Ω)とした終端回路を用いて、縦続接続型SAWフィルタに実際の熱衝撃試験をかけずに、模擬試験で通過域特性の変化を予測した。図9、12に示した測定回路を用いて、縦続接続型SAWフィルタを測定したときの通過域特性が図13で、破線は図9を用いて測定した、つまり熱衝撃試験前の特性であり、実線は図12を用いて測定した、模擬熱衝撃試験後の特性である。図13より破線及び実線の通過域特性は差が極めて小さいことが分かった。
また、熱衝撃試験による縦続接続型SAWフィルタ特性へのダメージ、例えば通過域特性のシフト、インピーダンス特性の変化等は、−Z’軸側より+Z’軸側の方がよりダメージを受けることは、多数の実験より明らかとなっている。
図13の測定結果を踏まえ、よりダメージの大きい+Z’軸側にインピーダンスの高い側のIDT電極を配置し、インピーダンスダンスの低い側のIDT電極を−Z’軸側に配置することにより、熱衝撃試験後のフィルタ特性の劣化を最小限に止めることができることが判明した。
【0026】
図14は、縦続接続型SAWフィルタ素子1をパッケージ本体Pに収容し、素子1の入出力パッドS1、S2と、パッケージ本体Pの入出力端子P1、P2と、をそれぞれボンディングワイヤB1、B2で接続する。中央の接地パッドS3、S4と、パッケージ本体の接地端子G1,G2と、をボンディングワイヤB3、B4で接続し、接地パッドS5、S6と、パッケージ本体Pの接地端子G3、G4と、をボンディングワイヤB5、B6にて接続し、パッケージ本体のシールリングRに蓋部材(図示せず)をシーム溶接して縦続接続型SAWフィルタを構成する。
IDT電極の電極指を間引き操作してインピーダンスを高くする手段は、各種の手法が知られており、図15(a)〜(e)はその一例である。図15(a)は、上下のバスバーに接続する電極指と、相隣接する電極指2本を上端で短絡接続したものと、を交互に配置した構成であるが、所望とするインピーダンスにより種々の組み合わせがある。図15(b)は上下のバスバーに接続する電極指と、相隣接する電極指2本を電極指の中央で短絡接続したものと、を交互に配置した構成であるが、所望とするインピーダンスにより種々の組み合わせがある。図15(c)は上下のバスバーに接続する電極指と、相隣接する電極指3本を電極指中央で短絡接続したものと、を交互に配置した構成であるが、所望とするインピーダンスにより種々の組み合わせがある。図15(d)は、左側のIDT電極の右端から1、3番目の電極指を下側バスバーから離し、上側バスバーに接続して、左側のIDT電極のインピーダンスを高めた例である。図15(e)は、左側のIDT電極の右端から3、4、7、8本目の電極指を逆側のバスバーに接続し、インピーダンスを高めた例である。
【0027】
図16は本発明に係る他の縦続接続型多SAWフィルタの構成を示す平面図である。縦続接続型多SAWフィルタ2は、圧電基板(図示せず)、例えばLiTaO3の主面上で表面波の伝搬方向に沿って2つのIDT電極30、31を近接配置し、該2つのIDT電極30、31の両側に反射器32a、32bをそれぞれ配置して、第1の1次−2次縦結合多重モード弾性表面波フィルタ(以下、多重モードSAWフィルタと称す)F’1を形成する。IDT電極30、31はそれぞれ互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対のくし形電極から形成されている。同様に、同一の圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って2つのIDT電極35、36を近接配置し、該2つのIDT電極35、36の両側に反射器37a、37bをそれぞれ配置して、第2の多重モードSAWフィルタF’2を形成する。第1及び第2の多重モードSAWフィルタF’1、F’2を縦続接続して縦続接続型多SAWフィルタ2を構成する。
そして、インピーダンスの高い側のIDT電極(図16ではIDT電極30)が圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低い側のIDT電極(図16ではIDT電極35)が−Z’軸側に配置されるように縦続接続型多重モードSAWフィルタ2を構成する。このようにIDT電極のインピーダンスの大小(高低)により、+Z’軸側と−Z’軸側とに配設することにより、熱衝撃試験による縦続接続型SAWフィルタのインピーダンスの劣化を最小限に抑えることができる。
【0028】
以上では圧電基板にLiTaO3を用いて説明したが、同じ三方晶系に属し、強焦電性を示すLiNbO3についても本発明を適用できる。つまり、インピーダンスの高い側のIDT電極を圧電基板(LiNbO3)の+Z’軸側に、インピーダンスの低い側のIDT電極を、−Z’軸側に配置することにより、熱衝撃試験による縦続接続型SAWフィルタのインピーダンスの劣化を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る縦続接続型SAWフィルタ素子の構成と、座標軸との関係を示す平面図である。
【図2】LiTaO3基板の切断方位と座標軸との関係を示した図である。
【図3】ウエハー上のIDT電極パターンと、座標軸との関係を示す平面図である。
【図4】測定回路を示した図である。
【図5】(a)は測定回路による通過域特性の違いを示した図、(b)、(c)はそれぞれ入出力のインピーダンス特性を示したスミスチャートである。
【図6】測定回路を示した図である。
【図7】(a)は測定回路による通過域特性の違いを示した図、(b)、(c)はそれぞれ入出力のインピーダンス特性を示したスミスチャートである。
【図8】(a)は高インピーダンスを呈する多重モードSAWフィルタの電極パターン、(b)は低インピーダンスを呈する多重モードSAWフィルタの電極パターンを示した図である。
【図9】測定回路を示した図である。
【図10】測定回路を示した図である。
【図11】非対称縦続接続型SAWフィルタの測定回路による通過域特性の違いを示した図である。
【図12】測定回路を示した図である。
【図13】非対称縦続接続型SAWフィルタの測定回路による通過域特性の違いを示した図である。
【図14】非対称縦続接続型SAWフィルタの組み立て図である。
【図15】(a)〜(e)はIDT電極を高インピーダンスにするための電極指の処理法を示した図である。
【図16】1次−2次縦結合二重モードSAWフィルタを縦続接続して構成した縦続接続型SAWフィルタの構成を示した平面図である。
【図17】従来の縦続接続型SAWフィルタの構成を示す断面図である。
【図18】従来の縦続接続型SAWフィルタの電極パターンを示した図である。
【図19】測定回路を示した図である。
【図20】(a)は熱衝撃試験前後の通過域特性の差、(b)、(c)は熱衝撃試験前後の入力及び出力のインピーダンス特性の差を示した図である。
【図21】入出力共に50Ωの縦続接続型SAWフィルタの電極パターンを示した図である。
【符号の説明】
【0030】
1 縦続接続型SAWフィルタ素子、5 圧電基板、7 圧電ウエハー、10、10’、11、12、20、20’、21、22、30、31、35、36 IDT電極、13a、13b、23a、23b、32a、32b、37a、37b 反射器、27a、27b 容量、F1、F2、F’1、F’2 多重モードSAWフィルタ、B1、B2、B3、B4、B5、B6 ボンディングワイヤ、S1、S2、S3、S4、S5、S6 パッド、P1、P2 入出力端子、G1、G2、G3、G4 接地端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って近接配置した複数のIDT電極と、該複数のIDT電極の両側に配置したグレーティング反射器と、を備えた縦結合多重モード弾性表面波フィルタを複数段縦続接続した弾性表面波フィルタであって、
前記複数段縦続接続した夫々の縦結合多重モード弾性表面波フィルタは互いにインピーダンスが異なるように形成され、且つインピーダンスが高い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが前記圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが−Z’軸側に配置されていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記圧電基板がタンタル酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
前記圧電基板がニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタが1次−3次縦結合多重モード弾性表面波フィルタであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタが1次−2次縦結合多重モード弾性表面波フィルタであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項1】
圧電基板上に表面波の伝搬方向に沿って近接配置した複数のIDT電極と、該複数のIDT電極の両側に配置したグレーティング反射器と、を備えた縦結合多重モード弾性表面波フィルタを複数段縦続接続した弾性表面波フィルタであって、
前記複数段縦続接続した夫々の縦結合多重モード弾性表面波フィルタは互いにインピーダンスが異なるように形成され、且つインピーダンスが高い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが前記圧電基板の+Z’軸側に、インピーダンスの低い縦結合多重モード弾性表面波フィルタが−Z’軸側に配置されていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記圧電基板がタンタル酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
前記圧電基板がニオブ酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタが1次−3次縦結合多重モード弾性表面波フィルタであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
前記縦結合多重モード弾性表面波フィルタが1次−2次縦結合多重モード弾性表面波フィルタであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の弾性表面波フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−225094(P2009−225094A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67194(P2008−67194)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]