説明

弾性表面波素子及び弾性表面波デバイス

【課題】周波数を有効かつ十分に可変制御し得るSAW素子及びSAWデバイスを提供する。
【解決手段】SAW素子1は、水晶からなる圧電基板2の主面に、SAWを励振するためのIDT3とヒータ電極5a,5bとを設け、該ヒータ電極をIDTに対してSAW伝搬方向と直交する向きの両側に配置した。SAW素子の動作温度範囲は、圧電基板の周波数温度特性が2次曲線又は3次曲線で表される場合に、その極値を含まないように設定し、該2次曲線又は3次曲線が温度の上昇に関して常に負方向に変化するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板上に弾性表面波(SAW)を励振するためのIDT(すだれ状トランスデューサ)を形成した弾性表面波素子、及びこれを用いた弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からSAWデバイスは、携帯電話等の情報通信機器、その他様々な電子機器に広く使用されている。特に通信機器の分野では、優れた周波数温度特性を発揮するSAWデバイスが要求されている。SAWデバイスの周波数温度特性は、多くの場合、2次曲線や3次曲線で表すことができ、その周波数が極大値又は極小値となる頂点温度を使用温度範囲の中心温度に設定する。この場合、SAWデバイスの周波数は、中心温度付近では安定しているが、中心温度から離れるほど大きく変動することになる。
【0003】
そこで、環境温度の変化による周波数の変動を抑制するために、圧電基板の主面に励振電極とヒータ用の抵抗体とを形成し、該抵抗体への印加電流を調整して圧電基板の温度を調整可能にしたSAW素子が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。ヒータ用の抵抗体は、圧電基板の裏面に形成することができ、それによりSAW素子の小型化が図られる(例えば、特許文献2,3を参照)。
【0004】
また、圧電基板の裏面に熱電素子としてペルチェ素子を接合し、表面上のSAWに影響を与えることなく、圧電基板の表面温度を適切に制御するSAW共振器等のSAW装置が知られている(例えば、特許文献4を参照)。特許文献4によれば、圧電基板をその裏面の一部のみで支持することにより、圧電基板の周囲から受ける応力を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−218794号公報
【特許文献2】特開平1−261013号公報
【特許文献3】実開平4−132738号公報
【特許文献4】特開平8−79002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のヒータ付きのSAWデバイスは、その実用化に当たって次のような問題がある。圧電基板は、該基板上に設けた抵抗体からなるヒータ電極で直接加熱したとき、その内部には、ヒータ電極付近から離れる向きに温度勾配が生じる。このような不均一な温度分布による熱応力によって圧電基板が変形すると、その内部応力によって周波数が変動してしまう。従って、圧電基板の温度調節による周波数調整は、その温度変化で生じる内部応力による周波数変動をも考慮して行わないと、SAWデバイスの周波数を安定させることが困難になる。
【0007】
このようにSAWデバイスの圧電基板をヒータで加熱した場合の周波数温度特性について、本願発明者は以前より次のような解析を行っている。SAWデバイスをヒータ電極で加熱しない場合の周波数温度特性を、例えば65℃の使用温度を頂点温度とする2次曲線と仮定すると、図8のように表される。この場合に、圧電基板の温度を65±10℃の範囲に制御すれば、SAWデバイスの周波数は、数ppm程度の変動範囲に安定させることができる。ところが、圧電基板の温度をヒータによる加熱で環境温度よりも上昇させると、圧電基板のヒータを配置した部分とIDTを配置した部分との間に温度勾配が生じて、IDTを設けた部分に応力が作用する。この応力によるSAWデバイスの周波数変動量は、図9に示すように、温度上昇幅Δtに関して直線的に変化することが分かった。
【0008】
このため、例えば環境温度が25℃の状態で圧電基板の温度をヒータによる加熱で65℃まで上昇させたとき、SAWデバイスの周波数温度特性は2次曲線となる。図10は、このような2次曲線からなるSAWデバイスの周波数温度特性を25℃〜100℃の範囲で示しており、具体的には、図8の2次曲線から図9の周波数変動量を、25℃の位置で交差させて差し引いたものである。その結果、温度変化に対する周波数変動量が大きくなり、周波数を安定させることが困難になる。
【0009】
また、特許文献4記載のSAW装置も、圧電基板の温度分布が不均一になり易いという問題がある。圧電基板をその裏面の一部のみで支持すると、たとえ圧電基板の裏面全体に熱電素子を接合して加熱しても、その熱の一部が圧電基板の支持部から直接支持台に逃げるからである。
【0010】
更に本願発明者は、SAWデバイスの圧電基板上に設けたヒータにより発生する温度分布及び熱応力による内部応力を解析し、それらがSAWデバイスの周波数に及ぼす影響について検討した。この検討結果から、圧電基板上においてIDT及びヒータ電極を適切に配置することによって、SAWデバイスの周波数をヒータ電極への印加電力により可変制御可能であることを見出した。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、その目的は、周波数を有効かつ十分に可変制御し得るSAW素子及びSAWデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のSAW素子は、上記目的を達成するために、例えば良好かつ安定性に優れた温度特性の水晶基板からなる圧電基板の主面に、SAWを励振するためのIDTとヒータ電極とを設け、該ヒータ電極をIDTに対してSAW伝搬方向と直交する向きの少なくとも一方の側に配置したことを特徴とする。
【0013】
このようにヒータ電極を配置することによって、IDTを直接加熱せずにIDTの周辺部を加熱することができ、それにより圧電基板にヒータ電極を設けた領域とIDTを設けた領域との間に積極的に温度勾配を発生させ、その熱応力によって、ヒータ電極を設けた領域に圧縮応力を、IDTを設けた領域に引張応力を作用させることができる。この引張応力がSAW伝搬方向に作用して、SAW素子の周波数を変化させる。その結果、圧電基板の温度変化による周波数変化に、熱応力による周波数変化が加わることによって、SAW素子の周波数変動幅を従来よりも大きく拡大することができる。更に、ヒータ電極への印加電力を制御してヒータ電極の加熱温度を調整することによって、IDTを設けた領域に作用する引張応力を変化させ、SAW素子の周波数変動量を制御することができる。
【0014】
或る実施例では、SAW素子の動作温度範囲が、圧電基板の周波数温度特性が2次曲線又は3次曲線で表される場合に、その極値となる温度を含まないように設定され、かつ該動作温度範囲内で前記2次曲線又は3次曲線が温度の上昇に関して常に負方向に変化するようにする。このようにSAW素子の動作温度範囲を設定すると、圧電基板の周波数温度特性を2次曲線と仮定した場合に、2次曲線はその極値となる温度から離れるほど傾き即ち変化率が大きくかつより線形に近くなるから、SAW素子の周波数変動量及び周波数変動幅をより大きくし、かつ周波数変化を線形的により高精度に制御することができる。これは、圧電基板の周波数温度特性が3次曲線で表される場合にも、同様である。
【0015】
別の実施例では、圧電基板の裏面に、これを平面視したときに少なくともヒータ電極を含まない領域に、SAW素子を外部の支持基板等に固定支持するための突出部が一体に形成されている。この突出部でSAW素子を接着剤等により固定した場合、圧電基板はヒータ電極の領域のみが加熱され、他の領域は比較的低温で均一な温度に維持されるから、ヒータ電極の領域とIDTの領域との間に、より大きな温度差をより確実に生じさせることができる。その結果、ヒータ電極への同じ印加電力でSAW素子の周波数変動量をより大きくでき、かつその周波数変動幅をより大きくすることができる。
【0016】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明のSAW素子と、該SAW素子のヒータ電極への印加電力制御手段とを備えるSAWデバイスが提供される。印加電力制御手段によってヒータ電極への印加電力を制御でき、それによりヒータ電極の加熱温度を調整して、IDTを設けた領域に作用する引張応力を変化させることができるので、周波数可変制御のSAWデバイスを実現することができる。
【0017】
或る実施例のSAWデバイスは、SAW素子が圧電基板の裏面全面で接着剤により固定されることにより、該裏面から多くの熱が逃げるので、圧電基板のヒータ電極を設けた領域とIDTを設けた領域間の温度差を大きくし、大きい引張応力がIDTの領域に作用するようにできる。
【0018】
この場合に接着剤が高熱伝導性を有すると、圧電基板の裏面から逃げる熱がより多くなるので、ヒータ電極の領域とIDTの領域間の温度差がより大きくなる。その結果、より大きい引張応力がIDTの領域に作用し、印加電力に対する周波数変動量が略線形にかつやや急峻に変化するので、好都合である。
【0019】
別の実施例のSAWデバイスは、SAW素子の裏面に、これを平面視したときに少なくともヒータ電極を含まない領域に、例えばペルチェ素子である吸熱手段が配置され、該吸熱手段を介して固定支持される。これにより、圧電基板はヒータ電極の領域のみが加熱され、他の領域は比較的低温で均一な温度に維持されるので、ヒータ電極の領域とIDTの領域との間には、より大きな温度差がより確実に発生する。その結果、ヒータ電極への同じ印加電力でSAW素子の周波数変動量をより大きくし、かつその周波数変動幅をより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるSAW素子の実施例を示す平面図。
【図2】ヒータ電極により加熱した圧電基板表面の温度分布図。
【図3】ヒータ電極により加熱した圧電基板表面の応力分布図。
【図4】ヒータ電極への印加電力に対する周波数変動量の変化を示す線図。
【図5】ヒータ電極への印加電力に対する周波数変動量の変化を示す線図。
【図6】SAWデバイスの変形例を示す側面図。
【図7】(A)図は図1のSAW素子の変形例を示す側面図、(B)図はその端面図。
【図8】ヒータ電極で加熱しないSAWデバイスの周波数温度特性を示す線図。
【図9】ヒータ電極で加熱したSAWデバイスの温度上昇に対する周波数変動量を示す線図。
【図10】ヒータ電極で加熱したSAWデバイスの周波数温度特性を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。添付図面において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の参照符号を付して説明する。
【0022】
図1は、本発明のSAWデバイスに使用するSAW素子の実施例を示している。本実施例のSAW素子1は、水晶からなる矩形平板の圧電基板2を有する。圧電基板2の主面には、その略中央に交差指電極対からなるSAW励振用のIDT3が形成されている。IDT3の一方の前記交差指電極は、取出電極3aから外部の電源端子に接続され、他方の前記交差指電極は、取出電極3bから外部の接地端子に接続される。IDT3のSAW伝搬方向の両側には、それぞれ反射器4,4が配置されている。
【0023】
圧電基板2主面には、IDT3に対してSAW伝搬方向と直交する向き即ちその交差長方向の両側に、それぞれヒータ電極5a,5bが形成されている。ヒータ電極5a,5bは、圧電基板2の前記SAW伝搬方向の一方の端部に沿って設けられた配線6を介して直列に接続されている。圧電基板2の前記SAW伝搬方向の他方の端部付近には、ヒータ電極5a,5bの各端部に接続された入出力電極6a,6bが配置されている。入力電極6aは、前記ヒータ電極への印加電力を制御する外部の手段に接続され、出力電極6bは外部の接地端子に接続される。前記ヒータ電極は比較的細幅の配線からなり、前記IDT及び反射器の電極膜を形成する際にそれと同時に、フォトエッチングにより所望のパターンに形成される。
【0024】
本発明のSAWデバイスは、図1のSAW素子1を適当なパッケージに搭載することにより構成される。更に前記SAWデバイスは、SAW素子1の取出電極3aに接続されてIDT3への印加電圧を供給するための電源端子と、入出力電極6a,6bに接続されてヒータ電極5a,5bへの印加電力を制御するための印加電力制御手段とを備える。SAW素子1は、その裏面全面が適当な接着剤により前記パッケージのマウント部に接着されて固定支持される。
【0025】
SAW素子1を裏面全面で適当な接着剤により接着固定した状態で、前記印加電力制御手段からヒータ電極5a,5bに所定の電力を印加して加熱した場合に、圧電基板1の表面に発生する温度分布を解析した。この解析結果を図2に示す。同図に示すように、圧電基板2のSAW伝搬方向と平行な両側辺に沿って前記ヒータ電極を設けた領域A1,A2が、142℃以上の高温となった。これに対し、両領域A1,A2間のIDT3を設けた中央領域Bは、概ね均一で64℃以下の比較的低温となった。このように本実施例では、圧電基板2の交差長方向に両側辺領域から中央領域に向けて温度が急激に低下する不均一な温度分布が発生する。
【0026】
更に、上述したようにヒータ電極5a,5bでSAW素子1を加熱した場合に、圧電基板1の表面に発生する応力分布を解析した。この解析結果を図3に示す。同図において、正値は引張応力を、負値は圧縮応力を示すが、その数値は応力の大きさを段階的に表した指標であって、応力の大きさそのものを数値で表したものではない。
【0027】
同図から、図2の温度分布に対応して、高温に加熱されたヒータ電極5a,5bの領域には圧縮応力が発生し、比較的低温のIDT3の領域には引張応力が発生している。図2の温度分布と同様に、その熱応力による内部応力が、圧電基板2の交差長方向にヒータ電極5a,5bの領域からIDT3の領域に向けて急激に変化していることが分かる。注目すべき点は、IDT3の領域に発生する引張応力が、温度分布と同様に概ね一様なことである。
【0028】
また、ヒータ電極5a,5bへの印加する直流電流を変化させ、印加電力に対するSAW素子1の周波数変動量ΔFを測定した。この測定結果を図4に示す。同図において、ΔF1は、比較的熱伝導率の低い接着剤を用いてSAW素子1を接着固定した場合であり、印加電力に対して周波数変動量が略線形に変化している。これは、前記ヒータ電極による圧電基板2の温度上昇でSAW伝搬方向に発生した引張応力に比例して、周波数が低下することを示している。このように前記ヒータ電極への印加電力を調整制御することによって、SAW素子1の周波数を数100ppm〜数1000ppmもの広い変動幅をもって可変制御することができる。
【0029】
図4において、ΔF2は、比較的熱伝導率の高い接着剤を用いてSAW素子1を接着固定した場合であり、印加電力に対して周波数変動量が略線形にかつΔF1よりもやや急峻に変化している。これは、圧電基板2の裏面からより多くの熱がマウント部側に逃げた結果、比較的温度変化の少ないヒータ電極5a,5bの領域と、ΔF1の場合よりも温度が低下したIDT3の領域との温度差が大きくなり、より大きい引張応力がIDT3の領域に作用するようになったからである。このように、SAW素子1を固定したときに圧電基板から逃げる熱量を増やして、前記ヒータ電極の領域とIDTの領域間の温度差をより大きくすることによって、前記ヒータ電極への同じ印加電力でSAW素子1の周波数変動量をより大きくでき、かつその周波数変動幅をより大きくすることができる。
【0030】
更に、圧電基板2の周波数温度特性の頂点温度を常温即ち25℃よりも大幅に低い温度に設定した場合に、前記ヒータ電極への印加電力に対して周波数変動量がどのように変化するかを解析した。この解析結果を図5に示す。同図に示すように、ヒータ電極への同じ印加電力に対して、周波数変動量ΔFが略2倍に増加している。
【0031】
圧電基板2の周波数温度特性を2次曲線で表されると仮定した場合、SAW素子1の動作温度範囲を、その頂点温度に対して常に負方向に変化する側にかつ頂点温度よりも大きく離れた領域に設定する。例えば、この2次曲線の2次の係数が負の場合、その頂点温度よりも高い側に動作温度範囲を設定する。逆に2次曲線の2次の係数が正の場合には、その頂点温度よりも低い側に動作温度範囲を設定する。2次曲線の周波数温度特性は、その極値をとる温度から離れるほど、その傾き即ち変化率が大きくかつより線形に近くなる。従って、SAW素子1の周波数変動量及び周波数変動幅をより大きくでき、かつ周波数変化をより高精度に制御することができる。
【0032】
これは、圧電基板2の周波数温度特性が3次曲線で表されると考えられる場合も、同様である。この場合、SAW素子1の動作温度範囲は、3次曲線の極値を含まないようにかつ該3次曲線が温度の上昇に関して常に負方向に変化するように設定する。これによって、同様にSAW素子1の周波数変動量及び周波数変動幅をより大きくできるだけでなく、周波数変化をより高精度に制御することができる。
【0033】
図6は、本発明のSAWデバイスの変形例を示している。上述したように、圧電基板2の前記ヒータ電極の領域とIDTの領域間の温度差をより大きくすると、前記ヒータ電極への同じ印加電力でSAW素子1の周波数変動量をより大きくでき、かつその周波数変動幅をより大きくすることができる。そのために、本実施例は、SAW素子1が、圧電基板2の裏面に設けられたペルチェ素子7を介してマウント部8に固定支持されている。
【0034】
ペルチェ素子7は、少なくともヒータ電極5a,5bの領域を含まないように、寸法及び形状を決定しかつ配置される。これによって圧電基板2は、前記ヒータ電極の領域のみが加熱され、他の領域は比較的低温でかつ均一な温度に維持される。従って、前記ヒータ電極の領域とIDTの領域との間に、より確実にかつより大きな温度差を生じさせることができる。更に、特に前記IDTの領域がより均一な温度に維持され、前記ヒータ電極の加熱による引張応力がより均一に作用することによって、前記ヒータ電極への印加電力による周波数変化を、より安定して制御することができる。
【0035】
別の実施例では、ペルチェ素子7以外の吸熱手段を用いることによって、同様の作用効果を得ることができる。このような吸熱手段として、例えば、従来から熱交換器や冷却装置に使用されている吸熱板やヒートシンクが考えられる。
【0036】
図7(A)(B)は、図1のSAW素子の変形例を示している。本実施例のSAW素子1は、圧電基板2がその裏面に一体に形成された突出部9を有する。突出部9は、圧電基板2のSAW伝搬方向の全長に亘ってかつ少なくともヒータ電極5a,5bの領域を含まないように、一定の厚さで形成される。SAW素子1は、突出部9の下面全面で適当な接着剤10によって、前記パッケージのマウント部8に固定支持される。
【0037】
これによって圧電基板2は、図6の場合と同様に、前記ヒータ電極の領域のみが加熱され、他の領域は比較的低温でかつ均一な温度に維持される。従って、図6のような別個の吸熱手段を用いることなく、前記ヒータ電極の領域とIDTの領域との間に、より確実にかつより大きな温度差を生じさせ、同様に前記ヒータ電極への同じ印加電力でSAW素子1の周波数変動量をより大きくでき、かつその周波数変動幅をより大きくすることができる。
【0038】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、ヒータ電極は、IDTに対してSAW伝搬方向と直交する向きの一方の側のみに配置しても、同様の作用効果が得られる。また本発明は、反射器を有しないSAW素子及びSAWデバイスについても、同様に適用することができる。更に上記実施例のSAWデバイスは一端子対共振子であるが、二端子対共振子やトランスバーサル型フィルタ等、他の構造を有するSAWデバイスについても、本発明を同様に適用することができる。また、SAW素子の圧電基板には、水晶以外に、リチウムタンタレート、リチウムナイオベート、四硼酸リチウム等の公知の様々な圧電材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…SAW素子、2…圧電基板、3…IDT、3a,3b…取出電極、4…反射器、5a,5b…ヒータ電極、6…配線、6a,6b…入出力電極、7…ペルチェ素子、8…マウント部、9…突出部、10…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、SAWを励振するためのIDTと、ヒータ電極とを有し、前記IDT及び前記ヒータ電極が前記圧電基板の主面に設けられ、前記ヒータ電極が前記IDTに対してSAW伝搬方向と直交する向きの少なくとも一方の側に配置されていることを特徴とするSAW素子。
【請求項2】
前記圧電基板の周波数温度特性が2次曲線又は3次曲線で表される場合に、その極値となる温度を含まないように動作温度範囲が設定され、かつ前記動作温度範囲内で前記2次曲線又は3次曲線が温度の上昇に関して常に負方向に変化することを特徴とする請求項1記載のSAW素子。
【請求項3】
前記SAW素子を固定支持するために、前記圧電基板がその裏面に、これを平面視したときに少なくとも前記ヒータ電極を含まない領域に一体に形成された突出部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のSAW素子。
【請求項4】
前記圧電基板が水晶基板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のSAW素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載のSAW素子と、前記SAW素子の前記ヒータ電極への印加電力を制御するための手段とを備えるSAWデバイス。
【請求項6】
前記SAW素子が前記圧電基板の裏面全面で接着剤によって固定されていることを特徴とする請求項5記載のSAWデバイス。
【請求項7】
前記接着剤が高熱伝導性を有することを特徴とする請求項6記載のSAWデバイス。
【請求項8】
前記SAW素子の裏面に、これを平面視したときに少なくとも前記ヒータ電極を含まない領域に配置された吸熱手段を有し、前記吸熱手段を介して固定支持されていることを特徴とする請求項5記載のSAWデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−263388(P2010−263388A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112339(P2009−112339)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】