説明

形状検査装置、形状検査システムおよび形状検査方法

【課題】対象物の表面の一部に撮像不可能な部分があっても、精度の良い形状検査を行うことが可能な形状検査装置、形状検査システムおよび形状検査方法を提供する。
【解決手段】形状検査装置30にクランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を仮補完用三次元モデルで補完して仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成部34、仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、複数の補完用三次元モデルのうちクランク軸2の三次元形状を補完した場合に仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定部35、クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を三次元モデル仮判定部35により選択された補完用三次元モデルで補完して判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成部36、判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定部37を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の三次元形状を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の三次元形状を検査する方法としては、対象物の表面に針の先端を接触させて走査し、針の高さの変化を検出することにより対象物の三次元形状を測定し、当該測定結果に基づいて対象物の形状を検査する接触式の形状検査方法、および、対象物にレーザ光等を照射したり対象物表面の画像を取得したりすることにより対象物の三次元形状を測定し、当該測定結果に基づいて対象物の形状を検査する非接触式の形状検査方法等が知られている。
【0003】
また、上記非接触式の形状検査方法の例としては、(1)CTスキャンにより対象物の断面形状を示す画像を走査方向にずらして複数取得し、これらの画像に基づいて対象物の三次元モデルを作成し、当該三次元モデルに基づいて対象物の形状が所定の基準を満たすか否かを判定する方法、(2)対象物の表面に複数のターゲットを貼り付け、これらのターゲットの座標を測定することにより対象物の三次元モデルを作成し、当該三次元モデルに基づいて対象物の形状が所定の基準を満たすか否かを判定する方法、(3)対象物の表面を、撮像部位を変えつつ撮像し、得られた複数の撮像画像を繋ぎ合わせることにより対象物の三次元モデルを作成し、当該三次元モデルに基づいて対象物の形状が所定の基準を満たすか否かを判定する方法、等が知られている。
【0004】
(1)の方法は、設備自体が大きく高価である上、X線を用いるため作業者への影響を考慮してX線を遮蔽する材料で囲う必要がある等付帯設備も含めると大がかりとなる。
また、測定精度を向上するためには断面形状を撮像する際の走査方向のピッチを短くしてより多くの断面形状を撮像しなければならず、測定に要する時間が長いという問題がある。
【0005】
(2)の方法は、対象物の表面にターゲットを貼り付けたり、対象物の表面を様々な角度から満遍なく撮像したりする等の煩雑な作業を必要とし、形状測定に要する時間が長いという問題がある。
特に、複雑な形状の対象物の測定精度を向上するためには測定点、すなわちターゲットを貼り付ける位置を多くする必要があり、形状測定に要する時間がさらに長くなる。
【0006】
これに対して、(3)の方法は、複数の画像を繋ぎ合わせて対象物の三次元モデルを作成する作業に要する時間がコンピュータの性能向上等により格段に短くなり、大量生産される対象物の三次元形状を全数検査する用途等に適用されることが有望視される。
例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
【特許文献1】特開2004−271411号公報
【特許文献2】特開2002−98521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記(3)の方法は、例えばエンジンのクランク軸のように対象物の形状が複雑な場合には、対象物の表面の一部が対象物の他の部分に隠れて撮像不可能となり、当該撮像不可能な部分の三次元形状を検査することができないという問題があった。
また、隠れていない部分であっても当該部分の表面と撮像方向との成す角度が小さい場合には、当該部分の三次元形状を精度良く測定することができず、当該部分についての形状検査の信頼性を確保することができないという問題があった。
本発明は以上の如き状況に鑑み、対象物の表面の一部に撮像不可能な部分があっても、精度の良い形状検査を行うことが可能な形状検査装置、形状検査システムおよび形状検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、
非接触で測定される対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、予め作成された対象物の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することにより対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、予め作成された対象物の複数の補完用三次元モデルのうち、前記対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する対象物の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定手段と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記三次元モデル仮判定手段により選択された対象物の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定手段と、
を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、
前記対象物がエンジンのクランク軸であり、
前記所定の基準が、
前記クランク軸が所定の加工代を有すること、前記クランク軸の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、前記クランク軸の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
【0011】
請求項3においては、
対象物の三次元形状を非接触で測定する三次元形状測定手段と、
前記対象物の仮補完用三次元モデルを作成する仮補完用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の複数の補完用三次元モデルを作成する補完用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記対象物の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することにより対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、前記対象物の複数の補完用三次元モデルのうち、前記対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する対象物の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定手段と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記三次元モデル仮判定手段により選択された対象物の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定手段と、
を具備するものである。
【0012】
請求項4においては、
前記対象物がエンジンのクランク軸であり、
前記所定の基準が、
前記クランク軸が所定の加工代を有すること、前記クランク軸の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、前記クランク軸の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
【0013】
請求項5においては、
対象物の三次元形状を非接触で測定する三次元形状測定工程と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、予め作成された対象物の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成工程と、
前記対象物の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することにより対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、予め作成された対象物の複数の補完用三次元モデルのうち、前記対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する対象物の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定工程と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記三次元モデル仮判定工程において選択された対象物の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成工程と、
前記対象物の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定工程と、
を具備するものである。
【0014】
請求項6においては、
前記対象物がエンジンのクランク軸であり、
前記所定の基準が、
前記クランク軸が所定の加工代を有すること、前記クランク軸の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、前記クランク軸の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、対象物の形状検査を精度良く行うことが可能である。
【0017】
請求項2においては、クランク軸の形状検査を精度良く行うことが可能であり、後工程の作業効率の向上に寄与する。
【0018】
請求項3においては、対象物の形状検査を精度良く行うことが可能である。
【0019】
請求項4においては、クランク軸の形状検査を精度良く行うことが可能であり、後工程の作業効率の向上に寄与する。
【0020】
請求項5においては、対象物の形状検査を精度良く行うことが可能である。
【0021】
請求項6においては、クランク軸の形状検査を精度良く行うことが可能であり、後工程の作業効率の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、図1および図2を用いて、本発明に係る形状検査システムの実施の一形態である形状検査システム1について説明する。
形状検査システム1はクランク軸2の形状検査を行うためのシステムである。
【0023】
クランク軸2は本発明に係る対象物の実施の一形態であり、自動車等のエンジンに用いられる部品の一つである。
【0024】
図2に示す如く、クランク軸2はメインジャーナル2a・2a・2a、アーム2b・2b・2b・2b、クランクピン2c・2c、カウンターウェイト2d・2d・2d・2d等を具備する。本実施例の場合、原料となる中炭素鋼等を鍛造することによりクランク軸2の大まかな形状が形成され、その後切削加工等を施すことによりクランク軸2の最終的な形状が形成される。
【0025】
メインジャーナル2aはクランク軸2の回転中心を成す部材である。
アーム2b・2bは一端がメインジャーナル2a・2aにそれぞれ延設され、他端がクランクピン2cの端部に延設される部材である。
クランクピン2cはその両端がそれぞれ対向するアーム2b・2bの他端に延設される部材であり、メインジャーナル2a・2a・2aにより形成されるクランク軸2の回転中心から見て所定の位相の半径方向に所定の距離だけずれた位置に配置される。クランクピン2cにはコンロッド(不図示)の一端が回転可能に枢着される。
カウンターウェイト2d・2dはアーム2b・2bにおいてクランクピン2cが延設される方の端部の反対側となる端部に延設される。カウンターウェイト2d・2dはクランク軸2の重量バランスを調整するために設けられる。
【0026】
図2に示す如く、クランク軸2は複雑な形状を成しており、例えば、クランクピン2cを挟んで配置されるアーム2b・2bおよびカウンターウェイト2d・2dの対向する面やメインジャーナル2a・2a・2aの外周部に形成された凹凸面においてアーム2b・2bおよびカウンターウェイト2d・2dに対向する面(図2中において太線で表した部分)等は、クランク軸2を構成する他の部材の陰に隠れてしまい、外部から撮像することが不可能である。また、外部から撮像することが可能な部分であっても、当該部分の表面と撮像手段(カメラ等)の撮像方向との成す角度が小さく、撮像して得られた画像から当該部分の三次元形状を精度良く把握することができない部分も生じ得る。
【0027】
鍛造後のクランク軸2には、最終製品としての寸法精度および重量バランスを満たすべく後工程で切削加工等が施される。
しかし、鍛造後のクランク軸2の三次元形状が所定の基準を満たさない場合には、後工程でどのような加工を施してもクランク軸2が最終製品としての寸法精度および重量バランスを満たすことが不可能となるという不具合が発生する場合がある。
よって、三次元形状が所定の基準を満たさない鍛造後のクランク軸2が後工程に供給されると、後工程の作業が無駄となり、後工程の作業効率の低下の要因となる。
【0028】
形状検査システム1を用いて鍛造後のクランク軸2の三次元形状が所定基準を満たすか否かを検査し、所定の基準を満たすクランク軸2のみを後工程に供給することにより、後工程の作業効率を向上させることが可能となる。
【0029】
ここで、「クランク軸2の三次元形状が所定の基準を満たす」とは、(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること、(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、の三つの基準をともに満たすことを指す。
【0030】
本実施例において「(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること」が所定の基準の一つとなっている理由は、加工代が小さ過ぎると後工程で切削加工等を施す余地が小さく、最終製品としての寸法精度や重量バランスを達成することが困難となること、および、加工代が大き過ぎると後工程における切削加工等の工数が大きくなり、作業効率が良くないことによる。
【0031】
本実施例において「(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること」が所定の基準の一つとなっている理由は、クランク軸2の曲がり量が大き過ぎると後工程でどのような加工を施しても最終製品としての寸法精度や重量バランスを達成することが困難となることによる。
【0032】
本実施例において「(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること」が所定の基準の一つとなっている理由は、切削加工等を施す前から重量バランスがあまりにも悪いと、後工程における切削加工等の工数が大きくなり、作業効率が良くないこと、および、クランク軸2が最終製品としての所定の寸法精度や重量バランスを達成することが困難となることによる。
【0033】
なお、本発明に係る「対象物」は、本実施例のクランク軸2に限定されず、本発明に係る形状検査装置、形状検査システムおよび形状検査方法による形状検査の対象となり得る物品(主として、ある程度の定形性を有する有体物)を広く含む。
また、本発明に係る「所定の基準」は、本実施例のクランク軸2についての所定の基準に限定されず、対象物の属性(対象物の機能や用途、製造方法等)により適宜定められる。
さらに、クランク軸2の形状や鍛造条件等によっては、クランク軸2についての所定の基準の三つの要件のうち、幾つかの要件については鍛造後のクランク軸2が常に要件を満たすことが実験にて分かっており、当該要件については所定の基準から外しても良い場合もある。
このような場合には、(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること、(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、の三つの要件のうち、何れか一つまたは二つを満たすことをクランク軸2についての所定の基準としても良い。
【0034】
図1に示す如く、形状検査システム1は、主として三次元形状測定装置10、三次元モデル作成装置20、形状検査装置30等を具備する。
【0035】
三次元形状測定装置10は、本発明に係る三次元形状測定手段の実施の一形態であり、クランク軸2の三次元形状を非接触で測定するものである。三次元形状測定装置10はクランク軸2の表面の撮像部位を変えつつ撮像し、得られた複数の画像を繋ぎ合わせることにより、非接触でクランク軸2の三次元形状(より厳密には、クランク軸2の三次元形状に係るデータ)を取得する。
三次元形状測定装置10により取得されたクランク軸2の三次元形状に係るデータは、後述するデータ変換部31にて「所定の形式」のデータに変換され、その後、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32に記憶される。
【0036】
なお、三次元形状測定装置10は専用品でも良いが、市販の三次元形状測定装置を用いて達成することも可能である。市販の三次元形状測定装置の例としては、Cogitens社のOptigoシリーズやSteinbichler社のCometシリーズ等が挙げられる。
【0037】
三次元モデル作成装置20は本発明に係る仮補完用三次元モデル作成手段の実施の一形態であるとともに、本発明に係る補完用三次元モデル作成手段の実施の一形態である。
三次元モデル作成装置20は、設計上のクランク軸2の理想的な三次元モデルに種々の仮定に沿ったアレンジを施すことにより、クランク軸2の仮補完用三次元モデル、クランク軸2の複数の補完用三次元モデル、およびクランク軸2の複数の再補完用三次元モデルを作成する。
【0038】
本実施例の場合、クランク軸2の仮補完用三次元モデルは、例えばクランク軸2の原料(中炭素鋼等)の鍛造前の重量の平均値および当該原料の密度から算出される体積を有し、クランク軸2の各部に適度な厚みの加工代が設けられ、クランク軸2の軸線方向から見て特定の位相に曲がっていないという条件を満たすものとしている。
【0039】
本実施例の場合、「(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること」の要件に対応するものとして、各部の加工代が許容範囲内で最も厚い条件となるもの、および、各部の加工代が許容範囲内で最も薄い条件となるもの、の二種類のクランク軸2の補完用三次元モデルが作成される。
このとき、上記二種類のクランク軸2の補完用三次元モデルは、クランク軸2についての過去の実験結果やシミュレーション結果等から、これ以上加工代が厚いものや薄いものを想定する必要が無いと思われるものであり、「(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること」の要件を満たす可能性が最も低い「最悪の」形状を有する。
【0040】
また、「(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること」の要件に対応するものとして、クランク軸2の軸線方向から見て、それぞれ位相θが0°、90°、180°、270°の方向に曲がった計四種類のクランク軸2の補完用三次元モデルが作成される。
このとき、上記四種類のクランク軸2の補完用三次元モデルは、クランク軸2についての過去の実験結果やシミュレーション結果等から、これ以上大きな曲がり量を想定する必要が無いと思われるものであり、「(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること」の要件を満たす可能性が最も低い「最悪の」形状を有する。
【0041】
さらに、「(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること」の要件に対応するものとして、クランク軸2の軸線方向から見て、それぞれ位相θ=0°、90°、180°、270°の方向に重量バランスが偏った計四種類のクランク軸2の補完用三次元モデルが作成される。
このとき、上記四種類のクランク軸2の補完用三次元モデルは、クランク軸2についての過去の実験結果やシミュレーション結果等から、これ以上重量バランスが偏ることを想定する必要が無いと思われるものであり、「(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること」の要件を満たす可能性が最も低い「最悪の」形状を有する。
【0042】
本実施例の場合、クランク軸2の複数の再補完用三次元モデルは、それぞれ上記クランク軸2の複数の補完用三次元モデルに対応する形で作成され、対応するクランク軸2の補完用三次元モデルに比べてクランク軸2の仮補完用三次元モデルに近い形状(クランク軸2の仮補完用三次元モデルとクランク軸2の補完用三次元モデルとの中間的な形状)を有する。
ただし、クランク軸2の再補完用三次元モデルの形状をクランク軸2の仮補完用三次元モデルにどの程度近づけた形状とするかは、後述する再判定結果が形状検査の信頼性に与える影響を勘案して適宜定める必要がある。
【0043】
なお、本発明に係る対象物の仮補完用三次元モデルおよび対象物の複数の補完用三次元モデルは本実施例のクランク軸2の仮補完用三次元モデルおよびクランク軸2の補完用三次元モデルに限定されず、対象物の性状等に応じて適宜作成することが可能である。
【0044】
三次元モデル作成装置20により作成されたクランク軸2の仮補完用三次元モデルに係るデータ、クランク軸2の複数の補完用三次元モデルに係るデータおよびクランク軸2の複数の再補完用三次元モデルに係るデータは、後述するデータ変換部31にて「所定の形式」のデータに変換され、その後、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32に記憶される。
【0045】
なお、本実施例の三次元モデル作成装置20は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータに市販のプログラム(CADソフト等)を格納したもので達成することも可能である。
また、本実施例の三次元モデル作成装置20は、本発明に係る仮補完用三次元モデル作成手段としての機能と、本発明に係る補完用三次元モデル作成手段としての機能と、の両方を兼ねるべく一体としたものであるが、本発明に係る形状検査システムはこれに限定されず、それぞれの機能について別体としても良い。
【0046】
形状検査装置30は本発明に係る形状測定装置の実施の一形態であり、主として、データ変換部31、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32、判定基準記憶部33、仮判定用三次元モデル作成部34、三次元モデル仮判定部35、判定用三次元モデル作成部36、三次元モデル判定部37、再モデリング部38、等を具備する。
【0047】
データ変換部31は三次元形状測定装置10により取得されたクランク軸2の三次元形状に係るデータ、三次元モデル作成装置20により作成されたクランク軸2の仮補完用三次元モデルに係るデータ、および、三次元モデル作成装置20により作成されたクランク軸2の複数の補完用三次元モデルに係るデータを、「所定の形式」のデータに変換するものである。
ここで、「所定の形式のデータ」とは、互換性を有し、比較対照可能な統一された形式のデータを指す。
【0048】
このように構成することにより、三次元測定装置10および三次元モデル作成装置20としてそれぞれ相互に互換性の無い形式のデータを取り扱う市販品を用いる場合でも、形状検査装置30にて統一された形式のデータに変換して取り扱うことが可能である。
なお、三次元測定装置10および三次元モデル作成装置20が取り扱うデータの形式が相互に互換性を有するものである場合には、データ変換部31を省略することが可能である。
【0049】
三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32は、データ変換部31により所定の形式のデータに変換されたクランク軸2の三次元形状に係るデータ、クランク軸2の仮補完用三次元モデルに係るデータおよびクランク軸2の複数の補完用三次元モデルに係るデータを記憶するものである。
【0050】
判定基準記憶部33は、クランク軸2の三次元形状について判定するための所定の基準を記憶するものである。
【0051】
仮判定用三次元モデル作成部34は本発明に係る仮判定用三次元モデル作成手段の実施の一形態であり、三次元形状測定装置10により取得されたクランク軸2の三次元形状(より厳密には、クランク軸2の三次元形状に係るデータ)のうち、クランク軸2の他の部分に隠れる等して測定不可能である部分を、三次元モデル作成装置20により作成されたクランク軸2の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを作成するものである。
ここで、「仮補完用三次元モデルを用いて補完する」とは、対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分に、対象物の仮補完用三次元モデルにおいて当該部分に対応する部分を繋ぎ合わせることを指す。その結果として、作成された仮判定用三次元モデルは、通常は閉じた三次元モデルとなる。
また、「測定不可能である部分(測定不可能領域)」は、(A)対象物の他の部分に隠れて実際に測定不可能である部分、に加えて、(B)測定可能であっても、対象物表面と三次元形状測定手段の撮像方向(またはレーザ等の照射方向)との成す角度が所定の角度(通常は20°から30°程度)よりも小さいために当該部分の三次元形状を精度良く測定することができず、ひいては当該部分についての形状検査の信頼性を確保することができない部分、を含む。
【0052】
本実施例の場合、仮判定用三次元モデル作成部34は三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32からクランク軸2の三次元形状に係るデータを取得し、クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を検出する。
次に、仮判定用三次元モデル作成部34は三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32からクランク軸2の仮補完用三次元モデルに係るデータを取得し、クランク軸2の仮補完用三次元モデルに係るデータにおいて「クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分」に対応する部分を切り取り、クランク軸2の三次元形状に係るデータに繋ぎ合わせる。このときクランク軸2の三次元形状に係るデータとクランク軸2の仮補完用三次元モデルに係るデータとの繋ぎ合わせは、例えば最小二乗法等により行われる。
このようにして、仮判定用三次元モデル作成部34は、クランク軸2の仮判定用三次元モデル(より厳密には、クランク軸2の仮判定用三次元モデルに係るデータ)を作成する。
【0053】
三次元モデル仮判定部35は本発明に係る三次元モデル仮判定手段の実施の一形態であり、仮判定用三次元モデル作成部34により作成されたクランク軸2の仮判定用三次元モデルを判定基準記憶部33に記憶された所定の基準に基づいて仮判定することによりクランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、三次元モデル作成装置20により作成されたクランク軸2の複数の補完用三次元モデルのうち、仮にクランク軸2の三次元形状を補完した場合に、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調するクランク軸2の補完用三次元モデルを選択するものである。
ここで、「仮判定する」とは、対象物の三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定するのではなく、対象物の三次元モデルが所定の基準に照らしてどのような傾向を有するかを把握することを指す。
また、「傾向」とは、対象物の三次元モデルが所定の基準をどのように満たしているか、あるいはどのように満たしていないのかといったことの具体的な内容を示す。
【0054】
本実施例の場合、三次元モデル仮判定部35は、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの形状を分析し、「(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること」の要件に照らして、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの加工代が全体的に厚いか薄いかといった「傾向」を把握し、「(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること」の要件に照らして、クランク軸2の仮判定用三次元モデルが軸線方向から見てどの位相の方向に曲がっているかといった「傾向」を把握し、「(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること」の要件に照らして、クランク軸2の仮判定用三次元モデルが軸線方向から見てどの位相の方向に重心がずれているかといった「傾向」を把握する。
次に、三次元モデル仮判定部35は、把握した「傾向」に基づいて、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32に記憶されている複数の補完用三次元モデルのうち、クランク軸2の三次元形状(に係るデータ)を補完した場合に、(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること、(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、の各要件について、これらの傾向を最も強調する補完用三次元モデルを選択する。
【0055】
例えば、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの加工代が全体的に厚い傾向を示す場合には、「(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること」の要件に係る二種類のクランク軸2の補完用三次元モデルのうち、各部の加工代が許容範囲内で最も厚い条件となるクランク軸2の補完用三次元モデルが選択され、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの加工代が全体的に薄い傾向を示す場合には、各部の加工代が許容範囲内で最も薄い条件となるクランク軸2の補完用三次元モデルが選択される。
また、クランク軸2の仮判定用三次元モデルが軸線方向から見て位相θ=75°の方向に曲がっている傾向を示す場合には、「(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること」の要件に係る四種類のクランク軸2の補完用三次元モデルのうち、位相がθ=75°に最も近いθ=90°の方向に曲がっているクランク軸2の補完用三次元モデルが選択される。
さらに、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの重量バランスが軸線方向から見て位相θ=15°の方向に偏っている傾向を示す場合には、「(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること」の要件に係る四種類のクランク軸2の補完用三次元モデルのうち、位相がθ=15°に最も近いθ=0°の方向に重量バランスが偏っているクランク軸2の補完用三次元モデルが選択される。
【0056】
なお、本実施例では所定の基準に係る要件ごとにクランク軸2の補完用三次元モデルを選択する構成としたが、本発明はこれに限定されず、所定の基準に係る複数の要件を加味して対象物の補完用三次元モデルを一つだけ選択する構成としても良い。
【0057】
判定用三次元モデル作成部36は本発明に係る判定用三次元モデル作成手段の実施の一形態であり、三次元形状測定装置10により取得されたクランク軸2の三次元形状(より厳密には、クランク軸2の三次元形状に係るデータ)のうち測定不可能である部分を、三次元モデル仮判定部35により選択されたクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の判定用三次元モデルを作成するものである。
本実施例の場合、所定の基準の三つの要件にそれぞれ対応するクランク軸2の補完用三次元モデルを用いてクランク軸2の三次元形状(より厳密には、クランク軸2の三次元形状に係るデータ)のうち測定不可能である部分を補完することにより、「(a)クランク軸2が所定の加工代を有すること」の要件を満たすか否かを判定するためのクランク軸2の判定用三次元モデル、「(b)クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること」の要件を満たすか否かを判定するためのクランク軸2の判定用三次元モデル、および、「(c)クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること」の要件を満たすか否かを判定するためのクランク軸2の判定用三次元モデル、を作成する。判定用三次元モデル作成部36がそれぞれのクランク軸2の判定用三次元モデルを作成する手法は、仮判定用三次元モデル作成部34がクランク軸2の仮判定用三次元モデルを作成する手法と略同じである。
【0058】
三次元モデル判定部37は本発明に係る三次元モデル判定手段の実施の一形態であり、判定用三次元モデル作成部36により作成された三つのクランク軸2の判定用三次元モデルがそれぞれ判定基準記憶部33に記憶された所定の基準の三つの要件を満たすか否かを判定するものである。
本実施例の場合、三つのクランク軸2の判定用三次元モデルがいずれも対応する所定の基準の要件を満たす場合には当該判定用三次元モデルの作成に係るクランク軸2は良品である(形状に関して所定の基準を満たす)と判定し、三つのクランク軸2の判定用三次元モデルのうちいずれか一つでも対応する所定の基準の要件を満たさない場合には当該判定用三次元モデルの作成に係るクランク軸2は不良品である(形状に関して所定の基準を満たさない)と判定する。
【0059】
再モデリング部38は、再モデリング検討部38a、再判定用三次元モデル作成部38b等を具備する。
【0060】
再モデリング検討部38aは、三次元モデル判定部37において不良品であると判定されたクランク軸2について再モデリングするか否か、すなわち、クランク軸2の三次元形状に係るデータをクランク軸2の再補完用三次元モデルを用いて補完することによりクランク軸2の再判定用三次元モデルを作成するか否か、を検討するものである。
【0061】
本実施例の場合、再判定用三次元モデルを作成するか否かは、例えば、クランク軸2の三次元形状のうち測定可能である部分と、クランク軸2の再補完用三次元モデルにおける当該測定可能である部分に対応する部分との一致度合い等により判断されるが、他の判断基準により判断しても良い。
【0062】
再判定用三次元モデル作成部38bは、再モデリング検討部38aにおいて再モデリングしても良いと判断された場合に、三次元モデル判定部37において不良品であると判定されたクランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、クランク軸2の再補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の再判定用三次元モデルを作成するものである。
再判定用三次元モデル作成部38bにより作成されたクランク軸2の再判定用三次元モデルは、三次元モデル判定部37により所定の基準を満たすか否か「再判定」される。
【0063】
「再判定」を行うことにより、クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を「最悪の」形状を有するクランク軸2の判定用三次元モデルを用いて補完したために、実際には良品とすべき形状のクランク軸2を不良品と判定することを防止することが可能であり、検査精度が向上する。
なお、本実施例の形状検査装置30は再モデリング部38を具備するが、本発明に係る形状検査装置および形状検査システムはこれに限定されず、「再判定」を行うことを必要としない場合には当該機能に係る部分(再モデリング部38に相当する部分)を省略することが可能である。
【0064】
なお、本実施例の形状検査装置30は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータにデータ変換部31、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32、判定基準記憶部33、仮判定用三次元モデル作成部34、三次元モデル仮判定部35、判定用三次元モデル作成部36、三次元モデル判定部37、再モデリング部38に対応する機能を果たすためのプログラムを格納したもので達成することも可能である。
また、本実施例の形状検査装置30は、本発明に係る仮判定用三次元モデル作成手段としての機能と、三次元モデル仮判定手段としての機能と、判定用三次元モデル作成手段としての機能と、三次元モデル判定手段としての機能と、を兼ねるべく一体としたものであるが、本発明に係る形状検査装置および形状検査システムはこれに限定されず、それぞれの機能について別体としても良い。
【0065】
以下では、図1乃至図3を用いて、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態について説明する。
図3に示す如く、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態は、三次元形状測定工程100、仮判定用三次元モデル作成工程200、三次元モデル仮判定工程300、判定用三次元モデル作成工程400、三次元モデル判定工程500、再モデリング工程600等を具備する。
【0066】
三次元形状測定工程100は、三次元形状測定装置10によりクランク軸2の三次元形状を非接触で測定する工程である。
三次元形状測定工程100が終了したら、仮判定用三次元モデル作成工程200に移行する。
【0067】
仮判定用三次元モデル作成工程200は、クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル作成装置20により予め作成され、データ変換部31にて「所定の形式」のデータに変換された後、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32に記憶されたクランク軸2の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを作成する工程である。
仮判定用三次元モデル作成工程200が終了したら、三次元モデル仮判定工程300に移行する。
【0068】
三次元モデル仮判定工程300は、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することによりクランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、三次元モデル作成装置20により予め作成され、データ変換部31にて「所定の形式」のデータに変換された後、三次元形状データ・三次元モデルデータ記憶部32に記憶されたクランク軸2の複数の補完用三次元モデルのうち、仮にクランク軸2の三次元形状を補完した場合に、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調するクランク軸2の補完用三次元モデルを選択する工程である。
三次元モデル仮判定工程300が終了したら、判定用三次元モデル作成工程400に移行する。
【0069】
判定用三次元モデル作成工程400は、クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル仮判定工程300において選択されたクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の判定用三次元モデルを作成する工程である。
判定用三次元モデル作成工程400が終了したら、三次元モデル判定工程500に移行する。
【0070】
三次元モデル判定工程500は、クランク軸2の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する工程である。
その結果、所定の基準を満たすと判定した場合には、形状検査に係るクランク軸2は良品であると判定して三次元モデル判定工程500は終了し、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態も終了する。
一方、所定の基準を満たさないと判断した場合には、形状検査に係るクランク軸2は不良品であると判定して三次元モデル判定工程500は終了し、再モデリング工程600に移行する。
【0071】
再モデリング工程600は、再モデリング検討工程610、再判定用三次元モデル作成工程620を具備する。
【0072】
再モデリング検討工程610は、三次元モデル判定工程500において不良品であると判定されたクランク軸2について再モデリングするか否か、すなわち、クランク軸2の三次元形状に係るデータをクランク軸2の再補完用三次元モデルを用いて補完することによりクランク軸2の再判定用三次元モデルを作成するか否か、を検討する工程である。
その結果、再モデリングすべきでないと判断した場合、形状検査に係るクランク軸2は不良品であり、かつ再モデリングすべきでないものであると判定して再モデリング検討工程610は終了し、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態も終了する。
一方、再モデリングしても良いと判断した場合、再モデリング検討工程610は終了し、再判定用三次元モデル作成工程620に移行する。
【0073】
再判定用三次元モデル作成工程620は、三次元モデル判定部37において不良品であると判定されたクランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、クランク軸2の再補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の再判定用三次元モデルを作成する工程である。
再判定用三次元モデル作成工程620が終了したら、三次元モデル判定工程500に移行する。
再判定用三次元モデル作成工程620から三次元モデル判定工程500に移行した場合、クランク軸2の再判定用三次元モデルについて「再判定」が行われ、その結果、所定の基準を満たすと判定した場合には、形状検査に係るクランク軸2はクランク軸2の再判定用三次元モデルで再判定した場合には良品であると判定して三次元モデル判定工程500は終了し、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態も終了する。
また、所定の基準を満たさないと判断した場合には、形状検査に係るクランク軸2は、クランク軸2の再判定用三次元モデルで再判定した場合でも不良品であると判定して三次元モデル判定工程500は終了し、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態も終了する。
【0074】
なお、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態は再モデリング工程600を具備するが、本発明に係る本発明に係る形状検査方法はこれに限定されず、「再判定」を行うことを必要としない場合には当該再判定に係る工程に相当する部分を省略することが可能である。
【0075】
以上の如く、形状検査装置30は、
三次元形状測定装置10により非接触で測定されたクランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル作成装置20により予め作成されたクランク軸2の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成部34と、
クランク軸2の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することによりクランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、三次元モデル作成装置20により予め作成されたクランク軸2の複数の補完用三次元モデルのうち、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調するクランク軸2の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定部35と、
クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル仮判定部35により選択されたクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成部36と、
クランク軸2の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定部37と、
を具備するものである。
このように構成することにより、非接触で測定されたクランク軸2の表面の一部に撮像不可能な部分があり、ひいては三次元形状が測定不可能な部分がある場合でも、当該測定不可能な部分を「最悪な」形状を有するクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完した三次元モデルで形状検査を行うことで、本来不良品と判定すべきものを誤って良品と判定することを防止することが可能であり、クランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能である。
また、一個のクランク軸2の形状検査に要する時間が従来の形状検査装置と比較して短く、クランク軸2の全数検査に使用することも可能である。
【0076】
また、形状検査装置30は、
その検査の対象物がエンジンのクランク軸2であり、
形状検査における所定の基準が、
クランク軸2が所定の加工代を有すること、クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
このように構成することにより、形状が複雑であり、非接触で三次元形状の測定を行った場合に測定不可能な部分が生じる可能性が高いクランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能であり、所定の基準を満たさないクランク軸2が後工程に供給されるのを防止して後工程の作業効率の向上に寄与する。
【0077】
また、形状検査システム1は、
クランク軸2の三次元形状を非接触で測定する三次元形状測定装置10と、
クランク軸2の仮補完用三次元モデルおよびクランク軸2の複数の補完用三次元モデルを作成する三次元モデル作成装置20と、
クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、クランク軸2の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成部34と、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することによりクランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、複数のクランク軸2の補完用三次元モデルのうち、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調するクランク軸2の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定部35と、クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル仮判定部35により選択されたクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成部36と、クランク軸2の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定部37と、を具備する形状検査装置30と、
を具備するものである。
このように構成することにより、非接触で測定されたクランク軸2の表面の一部に撮像不可能な部分があり、ひいては三次元形状が測定不可能な部分がある場合でも、当該測定不可能な部分を「最悪な」形状を有するクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完した三次元モデルで形状検査を行うことで、本来不良品と判定すべきものを誤って良品と判定することを防止することが可能であり、クランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能である。
また、一個のクランク軸2の形状検査に要する時間が従来の形状検査システムと比較して短く、クランク軸2の全数検査に使用することも可能である。
【0078】
また、形状検査システム1は、
その検査の対象物がエンジンのクランク軸2であり、
検査における所定の基準が、
クランク軸2が所定の加工代を有すること、クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
このように構成することにより、形状が複雑であり、非接触で三次元形状の測定を行った場合に測定不可能な部分が生じる可能性が高いクランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能であり、所定の基準を満たさない鍛造後のクランク軸2が後工程に供給されるのを防止して後工程の作業効率の向上に寄与する。
【0079】
また、形状検査システム1は、
その検査の対象物がエンジンのクランク軸2であり、
形状検査における所定の基準が、
クランク軸2が所定の加工代を有すること、クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
このように構成することにより、形状が複雑であり、非接触で三次元形状の測定を行った場合に測定不可能な部分が生じる可能性が高いクランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能であり、所定の基準を満たさないクランク軸2が後工程に供給されるのを防止して後工程の作業効率の向上に寄与する。
【0080】
また、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態は、
三次元形状測定装置10によりクランク軸2の三次元形状を非接触で測定する三次元形状測定工程100と、
クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル作成装置20により予め作成されたクランク軸2の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成工程200と、
クランク軸2の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することによりクランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、三次元モデル作成装置20により予め作成されたクランク軸2の複数の補完用三次元モデルのうち、クランク軸2の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調するクランク軸2の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定工程300と、
クランク軸2の三次元形状のうち測定不可能である部分を、三次元モデル仮判定工程300において選択されたクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、クランク軸2の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成工程400と、
クランク軸2の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定工程500と、
を具備するものである。
このように構成することにより、非接触で測定されたクランク軸2の表面の一部に撮像不可能な部分があり、ひいては三次元形状が測定不可能な部分がある場合でも、当該測定不可能な部分を「最悪な」形状を有するクランク軸2の補完用三次元モデルを用いて補完した三次元モデルで形状検査を行うことで、本来不良品と判定すべきものを誤って良品と判定することを防止することが可能であり、クランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能である。
また、一個のクランク軸2の形状検査に要する時間が従来の形状検査方法と比較して短く、クランク軸2の全数検査に使用することも可能である。
【0081】
また、本発明に係る形状検査方法の実施の一形態は、
その検査の対象物がエンジンのクランク軸2であり、
形状検査における所定の基準が、
クランク軸2が所定の加工代を有すること、クランク軸2の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、クランク軸2の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含むものである。
このように構成することにより、形状が複雑であり、非接触で三次元形状の測定を行った場合に測定不可能な部分が生じる可能性が高いクランク軸2の形状検査を精度良く行うことが可能であり、所定の基準を満たさないクランク軸2が後工程に供給されるのを防止して後工程の作業効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る形状検査システムの実施の一形態を示すブロック図。
【図2】クランク軸の側面図。
【図3】本発明に係る形状検査方法の実施の一形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0083】
1 形状検査システム
2 クランク軸(対象物)
10 三次元形状測定装置(三次元形状測定手段)
20 三次元モデル促成装置(三次元モデル作成手段)
30 形状検査装置
34 仮判定用三次元モデル作成部(仮判定用三次元モデル作成手段)
35 三次元モデル仮判定部(三次元モデル仮判定手段)
36 判定用三次元モデル作成部(判定用三次元モデル作成手段)
37 三次元モデル判定部(三次元モデル判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で測定される対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、予め作成された対象物の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することにより対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、予め作成された対象物の複数の補完用三次元モデルのうち、前記対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する対象物の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定手段と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記三次元モデル仮判定手段により選択された対象物の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定手段と、
を具備する形状検査装置。
【請求項2】
前記対象物がエンジンのクランク軸であり、
前記所定の基準が、
前記クランク軸が所定の加工代を有すること、前記クランク軸の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、前記クランク軸の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含む請求項1に記載の形状検査装置。
【請求項3】
対象物の三次元形状を非接触で測定する三次元形状測定手段と、
前記対象物の仮補完用三次元モデルを作成する仮補完用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の複数の補完用三次元モデルを作成する補完用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記対象物の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することにより対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、前記対象物の複数の補完用三次元モデルのうち、前記対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する対象物の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定手段と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記三次元モデル仮判定手段により選択された対象物の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成手段と、
前記対象物の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定手段と、
を具備する形状検査システム。
【請求項4】
前記対象物がエンジンのクランク軸であり、
前記所定の基準が、
前記クランク軸が所定の加工代を有すること、前記クランク軸の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、前記クランク軸の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含む請求項3に記載の形状検査システム。
【請求項5】
対象物の三次元形状を非接触で測定する三次元形状測定工程と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、予め作成された対象物の仮補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の仮判定用三次元モデルを作成する仮判定用三次元モデル作成工程と、
前記対象物の仮判定用三次元モデルを所定の基準に基づいて仮判定することにより対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を把握し、予め作成された対象物の複数の補完用三次元モデルのうち、前記対象物の仮判定用三次元モデルの傾向を最も強調する対象物の補完用三次元モデルを選択する三次元モデル仮判定工程と、
前記対象物の三次元形状のうち測定不可能である部分を、前記三次元モデル仮判定工程において選択された対象物の補完用三次元モデルを用いて補完することにより、対象物の判定用三次元モデルを作成する判定用三次元モデル作成工程と、
前記対象物の判定用三次元モデルが所定の基準を満たすか否かを判定する三次元モデル判定工程と、
を具備する形状検査方法。
【請求項6】
前記対象物がエンジンのクランク軸であり、
前記所定の基準が、
前記クランク軸が所定の加工代を有すること、前記クランク軸の曲がり量が所定の許容曲がり量以下にあること、前記クランク軸の重量バランスが所定の許容範囲内にあること、のうちの少なくとも一つを含む請求項5に記載の形状検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−212357(P2007−212357A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34224(P2006−34224)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】