説明

形状測定装置

【課題】高い操作性を有する新たな形状測定装置を提供する。
【解決手段】形状測定装置は、被測定物60を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機CMM1,CMM2と、これらの測定機ごとにそれぞれ対応して接続される少なくとも2台の操作コントローラ51,52と、を備えるものである。そして、操作コントローラ51,52のそれぞれは、非接続の測定機CMM2,CMM1を含むすべての測定機を操作可能に構成されている。また、操作コントローラ51,52は、切替ボタン53,54を有しており、この切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に係り、特に、2台以上の駆動機構付き測定機が被測定物を挟んで対向配置される構成の形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両ボディーのような大きな被測定物の形状を高速に測定する三次元形状測定装置として、2台の三次元測定機が被測定物を挟んで対向配置され、これら2台の測定機を用いることによって被測定物の同時測定を行うことができるデュアル形式の形状測定装置が知られている。この様な形式の形状測定装置の場合、2台の測定機で被測定物の形状測定を行うことができるので、効率の良い形状測定が可能となっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−347256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のデュアル形式の形状測定装置にあっては、2台の三次元測定機のそれぞれに操作コントローラが接続されており、これら操作コントローラは、接続する三次元測定機のみを操作できるように構成されるものであった。したがって、オペレータは、2台の操作コントローラをそれぞれ操作することによって三次元測定機を動作させなければならなかった。また、2台の操作コントローラは、それぞれが離れた位置に設置されているので、このような構成の三次元形状測定装置を効率良く操作することは、非常に困難なことであった。
【0005】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、高い操作性を有する新たな形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る形状測定装置は、被測定物を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機と、これらの測定機ごとにそれぞれ対応して接続される少なくとも2台の操作コントローラと、を備える形状測定装置であって、前記操作コントローラのそれぞれが、非接続の測定機を含むすべての測定機を操作可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る形状測定装置では、前記操作コントローラは切替ボタンを有しており、当該切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い操作性を有する新たな形状測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る形状測定装置の概略構成を例示する外観斜視図であり、図2は、図1で示した本実施形態に係る形状測定装置のシステム構成を示したシステム概念図である。
【0011】
図1および図2にて示されるように、本実施形態に係る形状測定装置は、2台の三次元測定機CMM1,CMM2を有しており、これら2台の三次元測定機CMM1,CMM2が被測定物60を挟んで対向配置される構成を有している。一方の三次元測定機CMM1には、スピンドル11とその先端に取り付けられた測定子21、これらを駆動する駆動装置31、測定のための移動制御を行う制御装置41、並びにこの制御装置41を介して三次元測定機CMM1の手動操作を行うための操作コントローラ51が設置されている。他方の三次元測定機CMM2についても同様に、スピンドル12とその先端に取り付けられた測定子22、これらを駆動する駆動装置32、測定のための移動制御を行う制御装置42、並びにこの制御装置42を介して三次元測定機CMM2の手動操作を行うための操作コントローラ52が備わっている。
【0012】
一方の三次元測定機CMM1に接続する制御装置41と、他方の三次元測定機CMM2に接続する制御装置42とは、互いの連携が可能となるように有線もしくは無線の連携手段によって接続されており、これら2台の制御装置41,42が連携して制御を行うことにより、本実施形態に係る形状測定装置における全体の動作制御が実現可能となっている。
【0013】
また、これら2台の制御装置41,42は、2台の三次元測定機CMM1,CMM2が互いに連携して効率良く形状測定動作を行えるようにするために、一方の三次元測定機CMM1については優先的に操作可能なメイン測定機として制御し、他方の三次元測定機CMM2についてはメイン測定機の動作状態に応じて動作が制約されるサブ測定機として制御するように構成されている。2台の制御装置41,42による制御をこのような構成とすることによって、2台の三次元測定機CMM1,CMM2の間での優先順位が規定され、効率良い測定動作が実現されることとなる。
【0014】
なお、スピンドル11,12の先端に取り付けられた測定子21,22については、接触式や非接触式のものを設置することができ、具体的には、タッチプローブや倣いプローブ、レーザプローブ、画像プローブなどのあらゆる形式のものを採用することが可能となっている。
【0015】
制御装置41に接続する操作コントローラ51と、制御装置42に接続する操作コントローラ52とは、通常は操作コントローラ51を操作することによって三次元測定機CMM1が操作制御でき、操作コントローラ52を操作することによって三次元測定機CMM2が操作制御できるようになっているが、一方で、2つの操作コントローラ51,52にはそれぞれ切替ボタン53,54が設置されており、この切替ボタン53,54を切り替えることによって、操作対象となる測定機CMM1,CMM2を選択可能となっている。つまり、本実施形態に係る形状測定装置は、2つ設置される操作コントローラ51,52のそれぞれが、非接続の測定機を含むすべての測定機を操作可能に構成されているので、操作オペレータにとって非常に操作性の高い装置となっている。
【0016】
本実施形態に係る形状測定装置は、以上のような構成を有しているので、2台の三次元測定機CMM1,CMM2を効率良く操作でき、X,Y,Z三軸方向での高効率な測定作業が可能となっている。なお、本実施形態に係る形状測定装置については、コンピュータ制御を利用した自動測定機能と、ジョイスティック等を用いた操作コントローラによる手動測定機能とを有するように構成することが可能であるが、本発明は、操作コントローラを用いた手動測定の場合の効率化を実現するものである。
【0017】
次に、図3を用いて、本実施形態に係る形状測定装置の具体的な駆動切替・解除処理について説明を行う。なお、図3で示すフローチャートの場合、通常は三次元測定機CMM1の操作を行う操作コントローラ51が、三次元測定機CMM2の操作を行えるように切り替えが実施され、その後その処理が解除されて再び三次元測定機CMM1の操作を行うように設定される際の具体的な処理フローが示されている。
【0018】
まず、ステップS10から始まる駆動切替処理では、2つの操作コントローラ51,52が2台の三次元測定機CMM1,CMM2に対してそれぞれ接続されているかどうかの接続確認が行われる(ステップS11)。操作コントローラ51,52が三次元測定機CMM1,CMM2にそれぞれ接続されていない場合には、駆動切替処理を行う必要はないので、本処理は実行されず無効となる。
【0019】
ステップS11にて2つの操作コントローラ51,52の三次元測定機CMM1,CMM2に対する接続確認が終了すると、次に、三次元測定機CMM1,CMM2が操作コントローラ51,52を使用するモードになっているか否かが確認される(ステップS12)。このとき、いずれか一方の三次元測定機CMM1,CMM2が、例えば自動測定モードになっている場合には、そちらのモードが優先され、駆動切替処理は実行されない。
【0020】
ステップS12にて、全ての三次元測定機CMM1,CMM2が操作コントローラ51,52を使用するモードになっていることが確認されると、切替待機指示が出され(ステップS13)、操作コントローラ51が有する切替ボタン53を押せば、操作できる測定機を三次元測定機CMM1から三次元測定機CMM2に変更することができる状態となる。
【0021】
この段階でオペレータが操作コントローラ51を用いて通常通り三次元測定機CMM1を操作したい場合には、そのまま操作コントローラ51を操作すれば良く、図3に示す駆動切替処理はステップS14にてループ状態を繰り返すこととなる。
【0022】
一方、オペレータが操作コントローラ51を用いて三次元測定機CMM2を操作したいと判断した場合には、操作コントローラ51が有する切替ボタン53を押すことによって三次元測定機CMM2が操作可能な状態に切り替わり(ステップS14)、操作対象となる測定機の切り替えが実施されることとなる(ステップS15)。
【0023】
その後も操作コントローラ51が有する切替ボタン53を押すことによって操作対象となる測定機の切り替えが可能であり、オペレータは所望の操作対象測定機を容易に選択することが可能となっている(ステップS17)。
【0024】
なお、本処理は、全ての三次元測定機CMM1,CMM2が操作コントローラ51,52を使用するモードになっている場合にのみ有効な処理となっているため、処理の途中で操作コントローラ51,52を使用するモードが解除された場合には(ステップS16)、強制的に本駆動切替処理は解除されることとなる(ステップS18)。もちろん、オペレータは、自らの意思で本駆動切替処理を終了することも可能であり、その終了処理は、切替ボタン53,54の操作によって可能となっている(ステップS17,ステップS18)。
【0025】
以上説明した図3に示されるアルゴリズムにより、1つの操作コントローラで複数台の三次元測定機CMM1,CMM2が操作可能となるので、オペレータによる操作性が飛躍的に向上した形状測定装置を得ることができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、上述した本実施形態に係る形状測定装置では、2台の三次元測定機CMM1,CMM2を有する場合を例示して説明したが、3台以上の三次元測定機が設置された場合であっても本発明の操作コントローラによる駆動切替処理は適用可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る形状測定装置の概略構成を例示する外観斜視図である。
【図2】図1で示した本実施形態に係る形状測定装置のシステム構成を示したシステム概念図である。
【図3】本実施形態に係る形状測定装置の具体的な駆動切替処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
CMM1,CMM2 三次元測定機、11,12 スピンドル、21,22 測定子、31,32 駆動装置、41,42 制御装置、51,52 操作コントローラ、53,54 切替ボタン、60 被測定物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機と、
これらの測定機ごとにそれぞれ対応して接続される少なくとも2台の操作コントローラと、
を備える形状測定装置であって、
前記操作コントローラのそれぞれが、非接続の測定機を含むすべての測定機を操作可能に構成されていることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記操作コントローラは切替ボタンを有し、当該切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能としたことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−264840(P2009−264840A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112911(P2008−112911)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】