説明

形状測定装置

【課題】被測定物体を計測中に、被測定物体が計測可能範囲にあるか否かを容易に確認することができる形状測定装置を提供する。
【解決手段】形状測定装置が、被測定物体に計測光を照射する光源41と、光源41からの計測光が被測定物体に照射されたことにより生じる像を検出する光検出部44と、光検出部44からの検出出力に基づいて被測定物体の形状を検出する形状検出部24と、被測定物体の位置が、光検出部44で被測定物体の像が検出できる計測可能範囲から外れているか否かを判定する計測可能範囲判定部31と、計測可能範囲判定部31による判定出力に基づいて、計測光の波長とは異なる波長の指示光を照射する指示光発光部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多関節型アームの先端に非接触センサを有する測定部を取り付けた形状測定装置であって、測定者が手動で操作することにより被検査物体の形状を測定するように構成された装置(以下、「マニュアル測定機」と呼ぶ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなマニュアル測定機には、関節部にエンコーダが取り付けられており、移動機構部の先端部(最も先端側のアーム部の先端部)の移動速度や空間座標を検出可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アーム部に非接触センサを取り付けた形状測定装置では、測定者は、被測定物体の位置が計測可能範囲内になるように、センサと被測定物体との間の距離を保ちながら、走査を行う必要がある。被測定物体の位置が計測可能範囲内にあるか否かは、測定結果を表示するモニタ画面で確認できるが、被測定物体の計測中では、測定者は、被測定物体にセンサを走査させる作業に集中しており、モニタ画面に目を移しながらの作業は困難である。したがって、現状では、測定者は、被測定物体を一通り走査し、エラーとなった箇所について改めて計測し直すようにして、作業が行われている。
【0005】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、被測定物体を計測中に、被測定物体が計測可能範囲にあるか否かを容易に確認することができる形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る形状測定装置は、被測定物体に計測光を照射する光源と、前記光源からの計測光が前記被測定物体に照射されたことにより生じる像を検出する光検出部と、前記光検出部からの検出出力に基づいて前記被測定物体の形状を検出する形状検出部と、前記被測定物体の位置が、前記光検出部で前記被測定物体の像が検出できる計測可能範囲から外れているか否かを判定する計測可能範囲判定部と、前記計測可能範囲判定部による判定出力に基づいて、前記計測光の波長とは異なる波長の指示光を照射する指示光発光部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被測定物体を計測中に、被測定物体が計測可能範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】形状測定装置の構成を示す説明図である。
【図2】形状測定装置の制御部の基本的な構成を示すブロック図である。
【図3】測定部に設けられた光学式センサの構成を示す説明図である。
【図4】形状測定装置による形状測定処理を示すフローチャートである。
【図5】形状測定装置の計測可能範囲の説明図である。
【図6】計測可能範囲判定部の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1〜図3を用いて、本実施形態に係る形状測定装置の構成について説明する。この形状測定装置100は、例えば、形状測定部10と、制御部20と、表示部30と有して構成される。
【0010】
形状測定部10は、ステージ50上に載置された被測定物体51の形状を測定する。制御部20は、この形状測定部10から出力される角度情報及び測定情報に基づいて被測定物体51に関する形状情報を算出する。表示部30は、制御部20により算出された形状情報を、例えば、3次元画像にして出力する。なお、被測定物体51は、ステージ50上に載置されていなくても測定可能である。
【0011】
また、形状測定部10は、移動機構部11と、測定部12と、基台13とを有して構成される。移動機構部11は、複数のアーム部11aを複数の関節部(接続部)11bで接続した多関節構造を有している。測定部12は、この移動機構部11の先端部(最も先端側に位置するアーム部11aの先端部)に対して取付部14を介して着脱可能に構成されている。基台13には、移動機構部11の基端部(最も基端側に位置するアーム部11aの基端部)が取り付けられている。
【0012】
なお、関節部11bは、アーム部11a同士を繋ぎ、一方のアーム部11aに対して他方のアーム部11aを回転させる(揺動させる)ものや、基台13に対して基端側のアーム部11aを接地面に垂直方向の軸を中心に回転させるもの、若しくは、取付部14に取り付けられた測定部12を、先端側のアーム部11aに対して揺動させたり、回転させたりするものがある。
【0013】
関節部11bの回転軸の各々には、基台13や基端側に位置するアーム部11aに対して、この関節部11bに接続された先端側に位置するアーム部11a若しくは測定部12のなす角度を検出するためにこの回転軸の回転量を計測するエンコーダ21が取り付けられている。これらのエンコーダ21による計測値(以下、「角度情報」と呼ぶ)は、図2に示すように、制御部20に出力される。また、この関節部11bには、各々の関節部11bが接続するアーム部11a間若しくはアーム部11aと測定部12との間でこの関節部11bにかかるトルクを検出するトルク検出部であるトルクセンサ27が設けられている。
【0014】
さらに、この関節部11bには、関節部11bを介して接続されている基端側のアーム部11aに対して先端側のアーム部11a若しくは測定部12を回転軸を中心に回転(揺動)させる駆動部(例えば、モータ等)15が接続されている。なお、トルクセンサ27の検出値(以下、「トルク情報」と呼ぶ)は制御部20に出力され、駆動部15の作動の制御は制御部20により行われる。
【0015】
一方、測定部12には、図3に示すように、光源41と、投影光学系42と、撮像光学系43と、撮像素子(光検出部)44とからなる光学式センサ40が設けられている。この光源41は、計測光を照射するレーザーダイオード等である。投影光学系42は、この光源41から放射された光をシリンドリカルレンズ等のトーリックレンズ光学系によりライン光としてステージ50上の被測定物体51に照射する。撮像光学系43は、被測定物体51に投射されたライン光の像(以下、「ライン像」と呼ぶ)を結像する。撮像素子(光検出部)44は、この撮像光学系43により結像されたライン像を検出する。
【0016】
撮像素子44の受光面には、光源41からの波長の光だけを通過させる光学フィルタ45が設けられている。また、図1に示すように、この測定部12には、測定者が、被測定物体51の形状測定の開始及び停止を制御部20に指示するための操作スイッチ25が設けられている。なお、光源41から放射された光をライン光に変換するには、ガルバノスキャナ等によりライン光として照射する構成でも実現可能である。
【0017】
また、この測定部12には、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲内か否かを測定者に目視可能に知らせるための指示光を被測定物体51に照射する照明光源(指示光発光部)46a〜46cが設けられている。これらの照明光源46a〜46cは、光源41からの計測光が照射される領域に向けて照射される。すなわち、これらの照明光源46a〜46cは、被測定物体51に向けて照射される。また、これらの照明光源46a〜46cとしては、被測定物体51の形状を検出するための光源41とは異なる波長のものが用いられる。
【0018】
また、制御部20は、図2に示すように、処理部22と、位置検出部23と、形状検出部24と、トルク演算部28と、駆動力補助部29と、計測可能範囲判定部31とを有して構成されている。処理部22は、この形状測定装置100による被測定物体51の形状測定の処理を制御する。位置検出部23は、エンコーダ21の各々から出力される角度情報を用いて測定部12の空間座標及び姿勢(測定空間内の予め決められた点を原点とする座標及び姿勢であって、以下、「位置情報」と呼ぶ)を演算して、検出する。形状検出部24は、撮像素子44から出力されるライン像及び位置検出部23から出力される位置情報を用いて、被測定物体51の形状情報を算出して、検出する。トルク演算部28は、トルクセンサ27から出力されるトルク情報により、各関節部11bにかかるトルク(量及び方向)を演算する。駆動力補助部29は、トルクセンサ27から出力されるトルク情報やエンコーダ21から出力される角度情報(若しくは、位置検出部23から出力される位置情報)を用いて関節部11bの回転動作を補助するための駆動部15の回転方向及びトルクを演算する。
【0019】
計測可能範囲判定部31は、撮像素子44で撮像されたライン像の位置から、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れたか否かを判定し、この判定した結果に応じて照明光源46a〜46cを点灯させる。なお、計測可能範囲判定部31は、判定した結果に応じて照明光源46a〜46cを点灯させる場合、照明光源46a〜46cのうちいずれか1つの照明光源を点灯させる。このようにして、照明光源46a〜46cは、計測可能範囲判定部31による判定出力に基づいて、計測光の波長とは異なる波長の指示光を照射する。
【0020】
なお、操作スイッチ25からの出力(操作信号)は処理部22に入力され、光源41の点灯・消灯動作は処理部22により制御される。また、形状検出部24から出力された形状情報は、例えば、制御部20に設けられた記憶部26に記憶され、さらに、この形状情報は処理部22で処理されて表示部30に3次元画像として出力される。ここで、測定空間とは、この形状測定装置100により、測定部12を移動させて被測定物体51の空間座標を取得できる範囲(空間)のことである。また、制御部20は、例えばコンピュータで実現され、処理部22、位置検出部23、形状検出部24、トルク演算部28及び駆動力補助部29は、このコンピュータで実行されるプログラムとして実装される。
【0021】
ここで、アーム部11aの長さ等の情報は既知であるため、制御部20の位置検出部23は、エンコーダ21から出力された角度情報に基づいて、基台13や基端側に位置するアーム部11aに対する、先端側に接続されたアーム部11a若しくは測定部12の角度を算出することにより、測定部12の空間上の3次元座標(空間座標)を求めることができる。また同様に、測定部12における光源41、投影光学系42、撮像光学系43及び撮像素子44の位置(座標)も既知であるため、形状検出部24は、三角測量の原理に基づいて撮像素子44で取得された測定情報(ライン像)を処理することにより、撮像素子44で撮像できる範囲内にある被測定物体51の形状を演算して求めることができる。この被測定物体51の形状は、ライン光が投影されている被測定物体51の形状(例えば、この範囲の離散的に表される測定空間内での座標群)として表現される。
【0022】
なお、測定部12による被測定物体51の形状情報の取得方法は、上述の光切断による三角測量による方法だけでなく、明視野画像を取得してコンピュータ解析により形状を測定する方法や、ステレオ画像を用いた三角測量による方法等を適宜用いることができる。
【0023】
次に、この形状測定装置100を用いて被測定物体51の形状を測定する方法について図4を用いて説明する。測定者は、形状測定装置100の測定部12を操作し、被測定物体51の測定開始位置に、この測定部12を移動させる。そして、測定者は、被測定物体51に対して測定部12を所定の距離及び角度に配置し、操作スイッチ25をオン操作する。処理部22は、操作スイッチ25のオン操作を検知すると(ステップS1)、光源41を点灯させ、ライン光を被測定物体51に照射する(ステップS2)。この状態で、測定者は、被測定物体51の測定対象面に沿って測定部12を移動させることにより、被測定物体51の表面を走査する。処理部22は、操作スイッチ25がオン操作されると、所定の時間間隔で、位置検出部23から位置情報を取得し(ステップS3)、さらに、撮像素子44から測定情報(ライン像)を取得して形状検出部24により被測定物体51の形状情報を取得し(ステップS4)、その都度、この形状情報を記憶部26に記憶する。
【0024】
処理部22は、操作スイッチ25がオフ操作され、測定者により測定が終了されるまで(ステップS5でNo)、ステップS3からステップS4の処理を繰り返すため、操作スイッチ25がオン操作されている間に測定部12が走査した範囲の被測定物体51の形状情報が記憶部26に記憶される(ステップS6)。そして、操作スイッチ25が測定者によりオフ操作され、測定者により測定が終了されると(ステップS5でYes)、処理部22は光源41を消灯し(ステップS7)、それまでに取得した形状情報を記憶部26から読み出して、被測定物体51の走査範囲の3次元画像を生成し(ステップS8)、表示部30に出力する(ステップS9)。
【0025】
次に、形状測定装置100を用いて被測定物体51の形状を測定する場合の計測可能範囲について説明する。図3に示したように、この形状測定装置100においては、光源41から放射された光は、投影光学系42によりライン光としてステージ50上の被測定物体51に照射され、被測定物体51に投射されたライン像が撮像光学系43により撮像素子44の受光面に結像される。図5は、このときの被測定物体51と測定部12との間の距離と、撮像素子44で取得されるライン像光との関係を示している。なお、この図5においては、形状測定装置100が、半円柱状の被測定物体51を測定している場合について図示されている。
【0026】
図5(B)には、被測定物体51と測定部12との間の距離が、計測可能範囲の略中心にある場合が示されている。図5(A)には、被測定物体51と測定部12との間の距離が、図5(B)の場合に対比して測定部12の方に近い場合が示されている。図5(C)には、被測定物体51と測定部12との間の距離が、図5(B)の場合に対比して測定部12から遠い場合が示されている。
【0027】
この図5(B)に示すように、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲の略中心にある場合には、被測定物体51のライン像61bは、撮像素子44の受光面で上下方向の略中心部分に結像される。この場合には、ライン像61bは欠落することなく、全て、撮像素子44の受光面に結像される。
【0028】
図5(A)に示すように、被測定物体51と測定部12との間の距離が近い場合には、被測定物体51のライン像61aは、撮像素子44の受光面の上側の部分で結像される。また、この場合、ライン像61aの一部は、図5(A)に示すように、撮像素子44の受光面から外れて、欠落することもある。被測定物体51と測定部12との間の距離がさらに近づくと、そのライン像は撮像素子44の撮像範囲から上側に外れることになる。
【0029】
図5(C)に示すように、被測定物体51と測定部12との間の距離が遠い場合には、被測定物体51のライン像61cは、撮像素子44の受光面の下側の部分で結像される。また、この場合、ライン像61cの一部は、図5(C)に示すように、撮像素子44の受光面の下側の部分から外れて、欠落することもある。被測定物体51と測定部12との間の距離がさらに遠くなると、そのライン像は撮像素子44の撮像範囲から下側に外れることになる。
【0030】
このように、図5において、撮像素子44の受光面に結像されるライン像は、被測定物体51と測定部12との間の距離が近づくと、撮像素子44の上側の部分に結像され、計測可能範囲の近接端よりさらに近づくと、撮像素子44の受光面から上側の部分に外れる。被測定物体51と測定部12との間の距離が遠くなると、撮像素子44の下側の部分に結像され、計測可能範囲の遠隔端よりさらに遠くなると、撮像素子44の受光面から下側の部分に外れる。したがって、撮像素子44で検出できるライン像は、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲にあるときに限られる。
【0031】
なお、この図5では、撮像素子44は斜め上を向けている構成となっているため、被測定物体51と測定部12との間の距離が近づくと、撮像素子44の上側の部分にライン像が結像され、被測定物体51と測定部12との間の距離が遠くなると、撮像素子44の下側の部分にライン像が結像されているが、撮像素子44が斜め下を向く構成とすれば、その関係は反対になる。
【0032】
本発明の第1の実施形態では、図3に示したように、測定部12に、照明光源46a〜46cが設けられる。また、図2に示したように、制御部20には、計測可能範囲判定部31が設けられている。この計測可能範囲判定部31は、撮像素子44で撮像されたライン像の位置から、被測定物体51が計測可能範囲を外れたか否かを判定し、これに応じて、照明光源46a〜46cを点灯させる。そして、この照明光源46a〜46cが点灯されることにより照射される指示光は、光源41からの計測光が照射されている範囲に、この計測光とは異なる波長で照射される。すなわち、この指示光は、被測定物体51に向けて照射される。
【0033】
そのため、測定者は、被測定物体51を測定している場合に、この被測定物体51を目視しながら、指示光を目視することができる。よって、測定者は、この指示光が照射されているか否かを目視により確認することにより、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れたか否かを容易に視認できる。このようにして、測定者は、被測定物体を計測中に、被測定物体が計測可能範囲にあるか否かを容易に確認することができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、測定者は、指示光が照射されているか否かを目視により確認することにより、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れたか否かを確認する。すなわち、測定者は、光を目視により確認することにより、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れたか否かを確認する。そのため、測定者は、たとえば、工場などの騒音がある環境下においても、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れたか否かを確認することができる。
【0035】
また、計測可能範囲判定部31は、被測定物体51が計測可能範囲から測定部12の方に近づく方向に外れる場合と、遠ざかる方向に外れる場合とを判定し、この判定された場合ごとに予め対応付けられている波長の指示光を、照明光源46a〜46cを介して照射する。すなわち、照明光源46a〜46cは、計測可能範囲判定部31により判定された場合ごとに予め対応付けられている波長の指示光を照射する。
【0036】
これにより、測定者は、被測定物体51が計測可能範囲から測定部12の方に近づく方向に外れる場合と、遠ざかる方向に外れる場合とを、予め対応付けられている波長の指示光を目視により確認することにより、被測定物体51を測定している場合であっても、容易に確認することができる。
【0037】
また、計測可能範囲判定部31は、被測定物体51が計測可能範囲から既に外れている場合と、被測定物体51が計測可能範囲から外れる直前とを判定し、この判定された場合ごとに予め対応付けられている波長の指示光を、照明光源46a〜46cを介して照射する。すなわち、照明光源46a〜46cは、計測可能範囲判定部31により判定された場合ごとに予め対応付けられている波長の指示光を照射する。
【0038】
これにより、測定者は、被測定物体51が計測可能範囲から既に外れている場合と、被測定物体51が計測可能範囲から外れる直前とを、予め対応付けられている波長の指示光を目視により確認することにより、被測定物体51を測定している場合であっても、容易に確認することができる。
【0039】
なお、上述したように、指示光となる照明光源46a〜46cとしては、被測定物体51の形状を計測するための計測用の光源41から放射される光と異なる波長のものが用いられる。一例としては、光源41は赤色の光であるのに対して、照明光源46aは黄色の光源であり、照明光源46bは緑色の光源であり、照明光源46cは青色の光源である。このように、照明光源46a〜46cの光の波長と、光源41から放射される光源41の光の波長とは異なっている。このため、測定者は、その光の色から、被測定物体51を注視しながら、被測定物体51が計測可能範囲から外れているか否かを容易に視認できる。また、撮像素子44の受光面には、光源41からの波長の光(計測光)だけを通過させる光学フィルタ45が設けられている。このため、照明光源46a〜46cから指示光が照射されている場合であっても、計測光を用いた被測定物体51の測定に与える影響を減じることができる。
【0040】
次に、計測可能範囲判定部31による被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れたか否かを判定する処理について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。図6において、処理部22は、撮像素子44の撮像出力を取得し(ステップS101)、撮像素子44の撮像出力の中から、所定値以上のレベルの撮像出力を抽出する(ステップS102)。そして、処理部22は、撮像素子44の撮像出力から、測定可能なライン像を検出する(ステップS103)。
【0041】
ここで、測定可能なライン像の検出は、例えば、所定値以上の撮像レベルとなる画素の割合が所定の割合(例えば1ラインの長さの30%)以上であるか否かを判定することにより行う。たとえば、ライン像は、被測定物体51にある穴や凹凸に応じた形状となる。また、図5で説明したように、被測定物体51が計測可能範囲の近接端又は遠隔端にあるときには、ライン像の一部が欠落する。このため、所定値以上の撮像レベルとなる画素の割合が所定の割合(例えば1ラインの長さの30%)以上であるラインをライン像として検出している。なお、測定可能なライン像の検出方法は、このような方法に限定されるものではない。
【0042】
処理部22の計測可能範囲判定部31は、ステップS103での測定可能なライン像の検出処理を行った結果、測定可能なライン像が検出できたか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104で、測定可能なライン像が検出できない場合には、処理部22の計測可能範囲判定部31は、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲を外れており、測定結果はエラーとなるとして、例えば黄色の照明光源46aを点灯させて(ステップS105)、ステップS101にリターンする。ステップS104で、測定可能なライン像が検出できたと判定された場合には、処理部22は、検出されたライン像の画面上の座標を算出する(ステップS106)。
【0043】
次に、処理部22の計測可能範囲判定部31は、検出されたライン像の位置が近接側の警告範囲に入っているか否かを判定し(ステップS107)、検出されたライン像の位置が近接側の警告範囲に入っている場合には、例えば緑色の照明光源46bを点灯させて(ステップS108)、ステップS101にリターンする。ステップS107で、検出されたライン像の位置が近接側の警告範囲に入っていない場合には、処理部22の計測可能範囲判定部31は、検出されたライン像の位置が遠隔側の警告範囲に入っているか否かを判定し(ステップS109)、検出されたライン像の位置が遠隔側の警告範囲に入っている場合には、例えば青色の照明光源46cを点灯させて(ステップS110)、ステップS101にリターンする。
【0044】
ここで、ステップS107の近接側の警告範囲及びステップS109の遠隔側の警告範囲は、被測定物体51と測定部12との間の距離と、撮像素子44に結像されるライン像の位置との関係に応じて予め設定されている。すなわち、図5に示したように、撮像素子44の受光面に結像されるライン像は、被測定物体51と測定部12との間の距離が近づくと、撮像素子44の上側の部分に結像され、被測定物体51と測定部12との間の距離が遠くなると、撮像素子44の下側の部分に結像される。このような関係から、撮像素子44の撮像画面中で、上端側の領域が近接側の警告範囲として設定され、また、撮像素子44の撮像画面中で、下端側の領域が遠隔側の警告範囲として設定されている。なお、上述した図5において、撮像素子44が斜め下を向いている構成とすれば、近接側の警告領域は画面の下側となり、遠隔側の警告領域は画面の上側となる。
【0045】
ステップS107で、ライン像が近接側の警告領域にあれば、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲から近接端側に外れる直前であると判定できるので、ステップS108で、処理部22の計測可能範囲判定部31は、緑色の照明光を点灯する。ステップS109で、ライン像が遠隔側の警告範囲にあれば、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲から遠隔端側に外れる直前であると判定できるので、処理部22の計測可能範囲判定部31は、ステップS110で、青色の照明光を点灯する。
【0046】
ここで、ステップS109で、検出されたライン像の位置が遠隔側の警告範囲に入っていない場合には、ライン像は、近接側の警告範囲にも、遠隔側の警告範囲にも入っていない。すなわち、ライン像は、計測可能範囲内にあると判断できる。よって、ステップS109で、検出されたライン像の位置が遠隔側の警告範囲に入っていない場合には、処理部22は、ステップS111で赤・緑・青の照明光源を消灯し、ステップS101にリターンする。
【0047】
以上、ステップS101からステップS110の処理により、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲から完全に外れていると、黄色の照明光源46aが点灯され、被測定物体51と測定部12との間の距離が近接端側に計測可能範囲から外れる直前になると、緑色の照明光源46bが点灯され、被測定物体51と測定部12との間の距離が遠隔端側に計測可能範囲から外れる直前になると、青色の照明光源46cが点灯されるようになる。
【0048】
なお、以上の説明は、照明光源46a〜46bの点灯の仕方の一例であり、どのような条件と色とを組み合わせても良い。また、ここでは、黄色と緑色と青色の3色の照明光源46a〜46cを用いているが、これ以上若しくはこれ未満の色の組み合わせとしても良い。例えば、黄色の照明光源のみを設け、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲から外れた場合には、黄色の照明光源を発光させるような構成でも良い。
【0049】
また、以上の説明では、黄色と緑色と青色のそれぞれの色の光を照明光源46a〜46cは用いているが、1種類の波長(すなわち色)の照明光源に、その波長(すなわち色)を変更する手段を設けるようにしても良い。例えば、照明光源として白色光の光源を用意し、複数の色フィルタを切り替えて、複数の色の照明光を照射する。このようにして、照明光源46a〜46cは、指示光を照射する場合に、照射光の波長を変化させてもよい。
【0050】
また、以上の説明では、被測定物体51と測定部12との間の距離が計測可能範囲から外れることを、被測定物体51に向けて全体的に照射する照明光源で知らせているが、このような照明光ではなく、例えば枠状の光を被測定物体51に照射するような構成としても良い。
【0051】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…形状測定部、23…位置検出部、24…形状検出部、31…計測可能範囲判定部、41…光源、44…撮像素子(光検出部)、46a〜46c…照明光源(指示光発光部)、51…被測定物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物体に計測光を照射する光源と、
前記光源からの計測光が前記被測定物体に照射されたことにより生じる像を検出する光検出部と、
前記光検出部からの検出出力に基づいて前記被測定物体の形状を検出する形状検出部と、
前記被測定物体の位置が、前記光検出部で前記被測定物体の像が検出できる計測可能範囲から外れているか否かを判定する計測可能範囲判定部と、
前記計測可能範囲判定部による判定出力に基づいて、前記計測光の波長とは異なる波長の指示光を照射する指示光発光部と
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記光源及び前記光検出部をアーム部により回転可能により支持する移動機構部と、
前記光源及び前記光検出部の空間座標及び姿勢を検出する位置検出部と、
を有し、
前記形状検出部は、
前記光検出部からの検出出力と、前記位置検出部により検出された前記光源及び前記光検出部の空間座標及び姿勢とに基づいて前記被測定物体の形状を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記計測可能範囲判定部は、前記被測定物体が前記計測可能範囲から前記光源及び前記光検出部の方に近づく方向に外れる場合と、遠ざかる方向に外れる場合とを判定し、
前記指示光発光部は、前記計測可能範囲判定部により判定された場合ごとに予め対応付けられている波長の前記指示光を照射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記計測可能範囲判定部は、前記被測定物体が前記計測可能範囲から既に外れている場合と、前記被測定物体が前記計測可能範囲から外れる直前とを判定し、
前記指示光発光部は、前記計測可能範囲判定部により判定された場合ごとに予め対応付けられている波長の前記指示光を照射する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記指示光発光部は、前記指示光を照射する場合に、前記照射光の波長を変化させることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記指示光発光部は、前記指示光を、前記計測光が照射される領域に向けて照射することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127805(P2012−127805A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279590(P2010−279590)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】