説明

微小変位計測法及び装置

干渉計を用いることなく、空間的にランダムな構造を有するスペックルパターン等から算出される擬似位相情報を利用して物体の微小変位や3次元形状を非接触かつ高精度に検出する。変位前の被検体のスペックル画像を取得し、これをN次元フーリエ変換して空間周波数スペクトルを算出し、この振幅分布におけるゼロ周波数を含む半平面内の周波数スペクトル振幅をゼロに設定して残りの半平面内の周波数スペクトル振幅をフーリエ逆変換して複素解析信号を取得する。そしてこの複素解析信号の振幅値を一定値に置換し、得られた解析信号の一部領域を取り出して位相限定相関関数により位相情報を算出してN次元での相互相関ピークを得る。上記方法を被検体の変位後に対しても行い、変位前後の相互相関ピークの差分を求めることで変位量を求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースペックルパターンやランダムドットパターンなどのように空間的にランダムな構造を有するパターンやテクスチャを指標として物体の微小変位や3次元形状を非接触で計測する微小変位計測法及び装置に関し、特に、このようなパターンの解析信号が有する擬似位相情報を利用して高精度な非接触計測を実現する微小変位計測法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザースペックルパターンやランダムドットパターンなどのように空間的にランダムな構造を有するパターンやテクスチャを指標として、物体の微小変位を非接触で計測する技術が注目されている。特に、非破壊検査や材料強度試験などの産業応用分野においてこの技術は重要な位置を占めている。
【0003】
上記背景から従来、ランダムな構造を有する空間パターンの変位検出は以下のような方法で行われてきた。すなわち、1つめは、変位を与える前後でそれぞれパターンの光強度分布をカメラで撮像し、この光強度分布の空間信号領域で相互相関関数を直接計算して、そのピーク位置に基づいて変位の方向と変位量を求める方法である。2つめの方法は、前述の方法と数学的に全く同等な処理を空間周波数領域で行う方法である。すなわち、変位前後の2つの空間パターンをそれぞれフーリエ変換し、得られた空間周波数スペクトルの一方の複素共役を取り、これを他方に掛け合わせた合成スペクトルを作成して、これを更にフーリエ逆変換して相互相関関数を求める方法である。
【0004】
しかし上記2つの方法により求められた相互相関関数は、基本的には空間パターンの光強度分布そのものを用いて直接計算した強度相関関数であるので、光強度を検出するカメラの感度の非線形特性や量子ノイズの影響を受け易いという問題がある。
【0005】
一方で、通信理論の分野では信号の強度情報より位相情報の方が検出器の非線形特性や量子化ノイズに対して強いということが知られている。このことは相関関数の計算に強度情報を直接用いる従来の相関関数の代わりに信号の位相情報を利用すれば変位計測装置の性能を向上させることができることを意味している。
【0006】
このような位相情報を利用する相関関数の計算法としては、特許文献1記載の位相限定相関法がよく知られている。この方法は複素関数である前述の合成スペクトルの振幅を一定化または対数関数等により抑制し、位相情報のみからなる振幅限定複素合成スペクトルを作成してこれをフーリエ逆変換して相互相関関数を求めるものである。
【特許文献1】特許第3035654号
【発明の開示】
【0007】
上記特許文献1記載の方法は、利用する位相情報が空間パターンの空間周波数スペクトルの位相情報であり、信号検出や量子化がおこなわれる信号領域における空間パターンの位相ではない。
また上記方法で行う空間周波数スペクトル領域における振幅限定や振幅抑制の演算は、ランダムパターンの空間周波数スペクトルの高周波成分を強調する演算であるため、相関関数をシャープにする効果がある一方で、高周波ノイズも強調するという問題がある。そのため、例えばレーザースペックルパターンが横変位とともにパターン自身の変形を伴う場合などには急激な相関ピーク値の低下が生じ、それによる誤測定が生じやすくなるという問題がある。
【0008】
更に、上記方法は周波数領域で位相情報を利用してはいるものの、それを逆フーリエ変換して得られる信号領域の相関関数は高周波が強調された状態の強度相関関数であることには変わりがないので、前述の問題を本質的に解決することができない。
【0009】
また、光強度のみにしか感度をもたない光検出器を用いて波動としての光の位相を検出するには干渉計を用いる必要があるが、干渉計を用いると計測系が複雑になる。更に、干渉計は振動や空気の揺らぎによる影響を受け易いので環境の悪い現場での利用に適さないという問題がある。
【0010】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、干渉計を用いずに空間的なランダムパターンの解析信号が有する擬似位相情報を利用して物体の微小変位や3次元形状を非接触で検出する微小変位計測法及び装置を提供することにある。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明に係る微小変位計測法は、測定対象物の表面を撮像する第1撮像工程と、第1撮像工程で撮像した画像をN次元フーリエ変換(N=1,2)する第1フーリエ変換工程と、第1フーリエ変換工程で変換された周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換する第1ヒルベルト変換工程と、第1ヒルベルト変換工程後の周波数スペクトルから周波数成分を抽出する第1周波数抽出工程と、周波数成分をN次元フーリエ逆変換(N=1,2)して第1複素解析信号を取得する第1フーリエ逆変換工程と、第1複素解析信号の振幅値を一定値となるように補正を行う第1振幅補正工程と、振幅補正された第1位相限定解析信号を記録する第1位相限定信号記録工程と、一方、第1撮像工程後、測定対象物の表面を撮像する第2撮像工程と、第2撮像工程で撮像した画像をN次元フーリエ変換(N=1,2)する第2フーリエ変換工程と、第2フーリエ変換工程で変換された周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換する第2ヒルベルト変換工程と、第2ヒルベルト変換工程後の周波数スペクトルから周波数成分を抽出する第2周波数抽出工程と、周波数成分をN次元フーリエ逆変換(N=1,2)して第2複素解析信号を取得する第2フーリエ逆変換工程と、第2複素解析信号の振幅値を一定値となるように補正を行う第2振幅補正工程と、振幅補正された第2位相限定解析信号を記録する第2位相限定信号記録工程と、第1位相限定解析信号と第2位相限定解析信号の全領域又は一部領域に対して位相限定相互相関関数を求める位相限定相関処理工程と、位相限定相互相関関数が最大絶対値を示す相関ピークの位置から変位量を算出する変位量算出工程と、を有することを要旨とする。
【0012】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の微小変位計測法において、第1及び第2振幅補正工程は、第1及び第2複素解析信号の振幅値を一定値に置換する振幅限定処理方法、若しくは第1及び第2複素解析信号の振幅値を対数変換により一定値に抑制する振幅抑制処理方法を用いることを要旨とする。
【0013】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の微小変位計測法において、位相限定相関処理工程で行う位相限定相互相関処理において、振幅限定相互相関関数、又は振幅抑圧相互相関関数を用いることを要旨とする。
【0014】
請求項4記載の本発明に係る微小変位計測装置は、測定対象物の表面を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像した画像をN次元フーリエ変換(N=1,2)するフーリエ変換手段と、フーリエ変換手段で変換された周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換するヒルベルト変換手段と、ヒルベルト変換手段でゼロに置換されたゼロ置換領域以外の領域に含まれる周波数スペクトルから周波数成分を抽出する周波数抽出手段と、周波数抽出手段で抽出された周波数成分をN次元フーリエ逆変換して複素解析信号を出力するフーリエ逆変換手段と、複素解析信号の振幅値を一定値となるように補正を行う振幅補正手段と、振幅補正手段で補正された信号の全領域又は一部領域に対して位相限定相関処理を行う位相限定相関処理手段と、位相限定相関関数の最大絶対値を示す相関ピークの位置から変位量を算出する変位量算出手段とを有することを要旨とする。
【0015】
請求項5記載の本発明は、請求項4記載の微小変位計測装置において、振幅補正手段は、複素解析信号の振幅値を一定値に置換する位相限定処理手段、若しくは複素解析信号の振幅値を対数変換により一定値に抑制する振幅抑制処理手段を備えることを要旨とする。
【0016】
請求項6記載の本発明は、請求項4記載の微小変位計測装置において、位相限定相関処理手段は、位相限定複素相互相関関数、又は振幅抑圧複素相互相関関数を用いることを要旨とする。
【0017】
本発明の微小変位計測法及び装置によれば、干渉計を用いることなく、空間的にランダムな構造を有するスペックルパターンやランダムドットパターンから算出された解析信号パターンが有する擬似位相情報を利用して物体の微小変位や3次元形状を非接触かつ高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)〜図1(e)は、本発明に係る微小変位計測法を説明するための工程図であり、具体的には測定対象物の変位前のスペックル画像に対して施す処理工程である。
【図2】図2(a)〜図2(e)は、変位後のスペックル画像に対して施す処理工程である。
【図3】図3は、図1及び図2の処理により得られた複素相関関数の絶対値分布を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係る微小変位計測装置1の構成を説明する図である。
【図5】図5は、本発明に係る微小変位計測装置1の動作を説明するためのフローチャート(その1)である。
【図6】図6は、本発明に係る微小変位計測装置1の動作を説明するためのフローチャート(その2)である。
【図7】図7は、本発明に係る微小変位計測装置1の動作を説明するためのフローチャート(その3)である。
【図8】図8(a)は、従来の画像処理工程を示すフローチャートである。図8(b)は、本発明の画像処理工程を示すフローチャートである。
【図9】図9(a)は、従来方法において被検体3に微小回転を与えたときの白色スペックルパターンの移動から物体面上の各点における局所的な変位の分布を求めた結果を示す一例である。図9(b)は、本発明において被検体3に微小回転を与えたときの白色スペックルパターンの移動から物体面上の各点における局所的な変位の分布を求めた結果を示す一例である。
【図10】図10(a)は、従来方法において回転角を小さくして微小変位を与えたときの結果を示す一例である。図10(b)は、本発明において回転角を小さくして微小変位を与えたときの結果を示す一例である。
【図11】図11(a)は、本発明の方法による空間信号領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの自己相関関数を示した図である。図11(b)は、従来方法による空間周波数領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの自己相関関数を示した図である。図11(c)は、本発明の方法による空間信号領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの相互相関関数を示した図である。図11(d)は、従来方法による空間周波数領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの相互相関関数を示した図である。
【図12】図12(a)は、スペックルの変形の大きな場合において本発明の方法による空間信号領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの自己相関関数を示した図である。図12(b)は、スペックルの変形の大きな場合において従来方法による空間周波数領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの自己相関関数を示した図である。図12(c)は、スペックルの変形の大きな場合において本発明の方法による空間信号領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの相互相関関数を示した図である。図12(d)は、スペックルの変形の大きな場合において従来方法による空間周波数領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの相互相関関数を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1(a)〜図1(e)は、本発明に係る微小変位計測法を説明するための工程図であり、具体的には測定対象物の変位前のスペックル画像に対して施す処理工程である。図2(a)〜図2(e)は、変位後のスペックル画像に対して施す処理工程である。また図3は、図1及び図2の処理により得られた複素相関関数の絶対値分布を示す図である。
【0021】
この微小変位計測法は、まず撮像装置を用いて測定対象物である被検体の表面のスペックル画像を撮影し、この画像をN次元フーリエ変換(N=1または2)して周波数スペクトルを取得する。そしてこの周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換し、置換されていないの残りの周波数スペクトルから周波数成分を抽出して、この周波数成分をN次元フーリエ逆変換して第1複素解析信号を取得する。そしてこの第1複素解析信号の振幅値を一定値に補正することで第1位相情報を取得する。
【0022】
一方で、上記被検体の表面を撮影する工程から所定時間経過後、上記同様の方法で被検体の表面のスペックル画像を撮影して、この画像をN次元フーリエ変換(N=1または2)して、この画像に含まれる周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換し、残りの周波数スペクトルから周波数成分を抽出して、これをN次元フーリエ逆変換し、第2複素解析信号を取得する。そして第2複素解析信号の振幅値を一定値に補正することで第2位相情報を取得する。
【0023】
そして上記方法でそれぞれ取得した第1位相情報と第2位相情報をもつ2つの位相限定複素解析信号の局所的な相互相関関数が最大絶対値を示す相関ピークの位置から被検体の各位置における局所的な変位を検出する。
【0024】
ここで本発明の特徴のひとつは、従来の位相限定相関法で利用していた空間パターンの空間周波数スペクトル領域における位相限定演算に代えて、信号検出や量子化が行われる信号領域における空間パターンの複素解析に対して位相限定演算をおこない,信号領域の位相情報を用いる点にある。これにより撮像装置が有する非線形特性や量子ノイズに対して、従来よりも耐非線形性および耐ノイズ性を有する高精度なパターン変位検出を行うことができるようになる。その結果、この高精度な変位計測を行うことができる。
また周波数領域における位相限定演算に代えて信号領域の位相限定演算をおこなうことにより高周波ノイズを強調させずに信号処理を行うことができる。これにより、例えばレーザースペックルパターンが横変位とともにパターン自身が変形するような場合であっても、急激な相関ピーク値の低下により生じる誤測定の発生を低減させることができるので、その結果、誤測定の少ない微小変位計測を行うことができる。すなわち、高精度な微小変位計測を行うことができる。
【0025】
また本発明の他の特徴は、被検体の表面のスペックル画像を撮影し,N次元フーリエ変換するフーリエ変換部と、フーリエ変換された画像の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換するヒルベルト変換部と、置換後の残りの周波数スペクトルから周波数成分を抽出する周波数抽出部と、周波数成分をN次元フーリエ逆変換して複素解析信号を出力するフーリエ逆変換部と、複素解析信号の振幅値を一定値に補正する位相限定のための振幅補正部と、補正後の信号の全領域又は一部領域に対して位相限定相関処理を行って位相情報を算出する位相限定相関処理部と、相互相関関数の最大絶対値を示す相関ピーク位置から変位量を算出する変位量算出部を備える点にある。これにより被検体の変位量を干渉計を用いずに測定することができるので測定装置自体を簡素化することができる。また干渉計を用いた場合に生じる振動や空気の揺らぎ等によるノイズ等の影響を考慮する必要が無くなるため劣悪な環境下で測定を行っても確実に位相情報を取り出すことができる。これによりノイズ等の影響を低減させたパターン変位検出を行うことができる。その結果、小型で耐ノイズ性を向上させた高精度な微小変位計測を実現できる。
【0026】
以下、図1(a)〜図1(e)を参照して詳細な処理工程を説明する。
【0027】
図1(a)は、変位が生じる前のスペックル画像(スペックルパターンともいう。)
【数1】

【0028】
を示す図である。図1(b)は、空間周波数スペクトル
【数2】

【0029】
の振幅分布を明るさで表示したときの図である。また図1(c)は、この空間周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の左半面を振幅ゼロと置換したときの周波数成分を示す図である。また図1(d)は、右半面の周波数スペクトルを逆フーリエ変換して得た複素解析信号の位相分布を濃度表示した図である。更に図1(e)は、図1(d)から切り出された計測対象となる微小窓Wの解析信号の位相分布を濃度表示した図である。
【0030】
まず図1(a)に示すように、変位が生じる前の被検体のスペックル画像
【数3】

【0031】
を取得し、これを2次元高速フーリエ変換して、図1(b)に示すような空間周波数スペクトル
【数4】

【0032】
を得る。図1(b)に示した画像は、空間周波数スペクトル
【数5】

【0033】
の振幅分布を明るさで表示した図である。
【0034】
次に図1(b)の空間周波数スペクトル
【数6】

【0035】
のゼロ周波数を含む平面内の左半分の周波数スペクトル振幅をゼロと置く(図1(c))。本実施の形態では左半分の周波数スペクトル振幅をゼロを置いているが、これは右半分であっても上半分又は下半分であってもよい。
【0036】
そして図1(c)に示すように、左半分が振幅ゼロの周波数成分で表されたフィルタ
【数7】

【0037】
(ヒルベルトフィルタともいう。)の右半分に残された半平面内の周波数スペクトル
【数8】

【0038】
を2次元高速フーリエ逆変換して複素解析信号
【数9】

【0039】
を得る。図1(d)はフーリエ逆変換後の複素解析信号の位相値を濃淡分布で表示した図である。
【0040】
次いで図1(d)に位相分布を濃度表示した複素解析信号の変位が場所に依存して変化する場合は、計測対象とする各位置での局所的な変位を計測する。そのために計測対象とする小領域の部分の解析信号を微小窓Wにより切り出す。
【0041】
そして図1(e)に示すように、切り出されて計測対象とされた小領域の解析信号
【数10】

【0042】
の位相分布を濃度表示させる。
【0043】
そして同様の一連処理を変位後のスペックル画像
【数11】

【0044】
に対しても行う。この処理を図2(a)〜図2(e)に示す。基本的には図1(a)〜図1(e)の処理と同じ処理を行う。
【0045】
すなわち、まず図2(a)に示すように、被検体に変位が生じた後のスペックル画像
【数12】

【0046】
を取得し、これを2次元フーリエ変換して、図2(b)に示すような空間周波数スペクトル
【数13】

【0047】
を得る。図2(b)に示した画像は、空間周波数スペクトル
【数14】

【0048】
の振幅分布を明るさで表示した図である。
【0049】
次に図2(b)の空間周波数スペクトル
【数15】

【0050】
のゼロ周波数を含む平面内の左半分の周波数スペクトル振幅をゼロと置く(図1(c))。本実施の形態では左半分の周波数スペクトル振幅をゼロと置いたが、ゼロと置く領域は右半分、上半分、又は下半分の何れであってもよい。
【0051】
そして図2(c)に示すように左半分が振幅ゼロの周波数成分で表されたフィルタ
【数16】

【0052】
(ヒルベルトフィルタともいう。)の右半分に残された半平面内の周波数スペクトル
【数17】

【0053】
を2次元高速フーリエ逆変換して複素解析信号
【数18】

【0054】
を得る。図2(d)はフーリエ逆変換後の複素解析信号の位相値を濃淡分布で表示した図である。
【0055】
次いで図2(d)に示したように位相分布を濃度表示した複素解析信号の変位が場所に依存して変化する場合は、計測対象とする各位置での局所的な変位を計測する。そのために計測対象とする小領域の部分の解析信号を微小窓Wにより切り出す。
【0056】
そして図2(e)に示すように、切り出されて計測対象とされた小領域の解析信号
【数19】

【0057】
の位相分布を濃度表示させる。
【0058】
上記図2(a)〜図2(e)の変位後の信号処理が終了後、変位前のスペックル画像
【数20】

【0059】
と変位後のスペックル画像
【数21】

【0060】
の2つのスペックル画像の複素解析信号から微小窓で切り出した信号の一方(この例では、変形後の解析信号)の位相共役を取り、横ずらしを与えて掛け合わせることで得られる合成信号の2次元複素相互相関関数を求める。この際に,スペックル画像の複素解析信号の振幅を
【数22】

【0061】
のように固定することにより,位相情報のみに限定した位相限定複素相互相関関数を求める。この位相限定複素相互相関関数を式(1)に示す。
【数23】

【0062】
ここでCpのpは位相(phase)情報のみに限定した解析関数の相互相関関数であることを意味している.ここで振幅を1と固定する代わりに,振幅値に対数変換や平方根操作を施して振幅の変化を抑制した複素相互相関関数を求めてもよい。一般に位相情報は複素指数関数の指数部を介して信号に現れるため、スペックル画像の微細空間構造をより高感度に信号値に反映する。そのため、計測への利用価値が高い。各点の振幅値はその点の位相情報の相関計算への反映の度合いを重み付けする役割を果たしており、振幅の小さいところでは位相情報は相関計算に利用されにくくなる。本発明のように信号領域で振幅を固定するか振幅変化を抑制することにより、より多くの位相情報を計測に利用することができるようになる。
【0063】
尚、図3は、上述の一連の処理により得られた複素相互相関関数の絶対値の分布を表している。このようにして位相限定相互相関関数のピークの生じる位置から相関窓を切り出した領域における局所的変位を求めることができる。
【0064】
次に図4を参照して、本発明に係る微小変位計測装置1の構成を説明する。
【0065】
この微小変位計測装置1は、大きく分けると、被検体3と、この被検体3の表面に光を照射して得られるスペックルパターンを検出する検出部5と、検出した被検体3の表面のスペックルパターンを画像処理する画像処理部7とを備えている。
【0066】
ここで検出部5は、照射手段である光源51と撮像手段であるカメラ52を少なくとも備えている。照射手段とはLD(レーザダイオード)やLED、又は白色光源等である。またカメラとはスペックルパターン撮像用の高精度CCDカメラやCMOSカメラである。光源51から放出された照射光は被検体3に入射し、その一部が反射してカメラに入射する。光源51は、図4に示したように必ずしも検出部5に内蔵させる必要はなく外部に設ける構成としてもよい。
【0067】
画像処理部7は、カメラ52で撮影した被検体3の表面画像データ(スペックルパターン)を一時的に記憶する第1記憶部(例えばフレームメモリなど。以下、FMと称す。)71と、このスペックルパターンをファイル化して格納する第2記憶部(例えばハードディスクなど。以下、HDDと称す。)72と、スペックルパターンをフーリエ変換するフーリエ変換部73と、フーリエ変換された空間周波数スペクトルにヒルベルトフィルタ処理を施すヒルベルトフィルタ処理部74と、ヒルベルトフィルタ処理された空間周波数スペクトルから周波数成分を抽出する周波数抽出部75と、この周波数成分をフーリエ逆変換するフーリエ逆変換部76と、フーリエ逆変換により得られた複素解析信号の振幅を一定値となるように補正する振幅補正部77と、補正された複素解析信号の全領域又は一部領域に対して位相限定相関処理を施す位相限定相関処理部78と、位相限定相関処理により算出された変位前の位相情報と変位後の位相情報を利用した位相限定相関関数の絶対値のピーク位置から変位量を算出する変位量算出部79と、これら機能部の制御を行う処理制御部(例えば中央演算処理装置。以下、CPUと称す。)80と、これら一連の処理制御プログラムが格納されている第3記憶部(例えばリードオンリーメモリーなど。以下、ROMと称す。)81とを少なくとも備えている。このROM81には、図1及び図2で説明した信号処理工程を記載したプログラムが記憶されている。
【0068】
また画像処理部7の外部には、この画像処理部7で処理された結果を外部に表示するための表示部9が設けられている。
【0069】
次に、この微小変位計測装置1の動作を図5〜図7のフローチャートを参照して説明する。
【0070】
図5は、被検体3を撮像する撮像工程及び撮影した画像を記憶する記憶工程を示すフローチャートである。図6は、記憶された画像を処理する画像処理工程を示すフローチャートである。図7は、処理された2つの画像を比較して被検体3の変位の有無および変位量を算出する変位量算出工程を示すフローチャートである。尚、本実施の形態においては、被検体3を回転させることで面内変位を自発的に発生させ、被検体3の変位前と変位後のスペックルパターンをそれぞれ撮影して変位量算出を行った。
【0071】
まず図4のブロック図及び図5のフローチャートに示すように、被検体3の正面にカメラ52を配置して、光源51から出射される光を被検体3に照射し、被検体表面で観察される変位前のスペックルパターンや表面固有のテクスチャによるスペックルパターンをカメラ52で撮影する。そしてこのスペックルパターン(図1(a)の画像)をFM71に一時的に記憶し、その後ファイル化処理した後にこのファイルを変位前のスペックルパターンとしてHDD72に格納する(S11、S13)。
【0072】
次に一定時間又は一定期間経過後、本実施の形態においては被検体3を回転させた後に、上記撮像条件と同じ条件で被検体3の撮影を行う。そして得られたスペックルパターン(図2(a)の画像)をFM71に一時的に記憶し、その後ファイル化処理して、このファイルを変位後のスペックルパターンとしてHDD72に格納する(S15、S17)。
【0073】
ここでCPU76は、HDD72に格納されているスペックルパターン情報を常に監視しており、最新のスペックルパターン(ここでは変位後のスペックルパターンを指す。)が格納されたことを検出すると、このスペックルパターンの1つ前に格納されたスペックルパターン(ここでは変位前のスペックルパターンを指す。)を読み出す(図6のS21)。
【0074】
そしてこの変位前スペックルパターンをフーリエ変換部73で2次元高速フーリエ変換処理により空間周波数スペクトルに変換する(S23)。次いでこの空間周波数スペクトルをヒルベルトフィルタ処理部74でヒルベルトフィルタ演算処理、すなわち、空間周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の左半分の周波数スペクトル振幅をゼロと置く処理を行う(S25)。そして右半分の残りの空間周波数スペクトルから周波数成分を抽出して逆フーリエ変換部76で2次元高速逆フーリエ変換処理により複素解析信号に変換する(S27)。変換された複素解析信号はファイル化された後、変位前の複素解析信号としてHDD72に再度格納する(S29)。
【0075】
次に、CPU80は、HDD72から変位後のスペックルパターンを読み出す(S31)。そして上記処理と同じ様に2次元高速フーリエ変換後、ヒルベルトフィルタ演算処理して、空間周波数スペクトルから周波数成分を抽出し、再びこれをフーリエ逆変換して複素解析信号を取得する。この複素解析信号は、変位後の複素解析信号としてHDD72に格納する(S33〜S39)。
【0076】
上記画像信号処理が終了するとCPU80は、HDD72から変位前と変位後の複素解析信号をそれぞれ読み出す(図7のS41)。そして局所的な変位の計測対象となる領域の複素解析信号の局所データを微小窓Wで切り出す(S43)。次いで変位前後の複素解析信号に対して振幅一定化または振幅抑制を行い位相限定相関関数または擬似位相限定相関関数を用いて算出し、その相関ピーク位置から局所的な変位の有無および変位量を求める(S45、S47)。そして他に局所的な変位を求めるべき点があるか否か検出し、更に局所的に変位を求めるべき点があれば新たな局所データの切出しWnを行い、S43に戻ってこの局所に対してS43〜S49の処理を行う。尚、S51で局所的に変位量を求めるべき点が存在しなければこの処理を終了する。上記処理内容は途中の計算結果を含めて表示部9のディスプレイでモニターする。
【0077】
上述したこれらの一連の処理工程は予めプログラム化されてROM81に記憶されており、CPU80がこのプログラムを読み込んで適宜各機能部を駆動させて変位量算出を行う。また尚、本実施の形態ではスペックルパターンを元に変位量算出を行ったが、ランダムドットパターンを用いて同様に変位量算出を行うことができる。
【0078】
次に、本発明と特許文献1の技術を比較し、その差異について説明する。
【0079】
一般に位相情報を利用した相互相関計算法としては図8(a)に示す方法が知られている。この従来方法は相互相関を求めようとする画像1g(x,y)と画像2
【数24】

【0080】
のそれぞれをフーリエ変換して得られるフーリエスペクトル
【数25】

【0081】
とフーリエスペクトル
【数26】

【0082】
の振幅を「1」と固定、又は対数変換等により抑制する(S100〜S103)。そして、一方の複素共役をとって掛け合わせることにより変位前の空間周波数スペクトルの位相情報
【数27】

【0083】
と変位後の空間周波数スペクトルの位相情報
【数28】

【0084】
のみを利用して(S104〜S107)複素信号を空間周波数領域で位相差
【数29】

【0085】
を取得する(S108)。そしてこの位相差を逆フーリエ変換して相関関数
【数30】

【0086】
を求める方法である(S109)。
【0087】
したがって、この方法で利用する位相情報は空間周波数スペクトルの位相情報であり、得られる相関関数は画像1と画像2の全体の大域的な変位に対する相関関数であって画像上の任意の各点における局所的な変位の相関関数を求めることができない。また、前述のように、空間周波数スペクトルの振幅の同一化や対数関数等による振幅抑制は空間周波数スペクトルの高周波成分を強調するため、スペックルの変形やノイズの影響を受け易くなるという問題が生じる。
【0088】
これに対して、本発明による方法では、図1から図7及び図8(b)に示すように、位相限定または振幅抑制による相関演算は空間周波数スペクトル領域ではなく、空間信号領域で各画像の複素解析信号に対して行われる。そのため、空間周波数スペクトルの高周波成分を強調することがなく、ノイズやスペックルの変形による影響を受け難いという利点が生じる。
【0089】
すなわち、図8(b)に示すように、相互相関を求めようとする画像1
【数31】

【0090】
と画像2
【数32】

【0091】
のそれぞれをフーリエ変換してフーリエスペクトル
【数33】

【0092】
とフーリエスペクトル
【数34】

【0093】
を求める(S100〜S103)。そして、これらにヒルベルトフィルタを演算し、その後フーリエ逆変換することで複素解析信号
【数35】

【0094】

【数36】

【0095】
をそれぞれ取得する(S200、S203)。そして各複素解析信号
の位相差情報
【数37】

【0096】
と位相差情報
【数38】

【0097】
のみを利用し,一方の複素共役をとって掛け合わせる(S201、S202、S204、S205)ことにより信号領域での位相限定相関関数
【数39】

【0098】
を求める(S206)。
【0099】
このように図8(a)に示すエリアAの空間周波数領域における処理と図8(b)に示すエリアBの信号領域における処理は全く異なる処理内容となっている。また、複素解析信号を得る(S200)ためのヒルベルトフィルタ処理は従来法にはない新しい機能である。
【0100】
さらにその際の複素解析信号の一部を微小窓Wで切り出して位相限定または振幅抑制相関を計算することにより画像の各点における局所的な変位の分布を求めることができる。尚、相関計算の際に切り出し微小窓Wの大きさを拡大すれば従来方法と同じような画像全体の大域的な変位に対する相関関数も求めることができる。
【0101】
また図9に被検体3に微小回転を与えたときの白色スペックルパターンの移動から物体面上の各点における局所的な変位の分布を求めた結果の一例を示す。この結果から、回転中心からの距離に比例して変位が増加していることが分かる。従来の強度相関法では図9(a)に示すように、変位が大きくなりスペックル自身の形の変形(デコリレーション)が生じると計測誤差が生じている(図中点線で囲ったa1及びa2)のに対して、本発明による方法では図9(b)に示すように大きな変位に対しても正しい計測結果を与えることができている。もうひとつの従来方法である空間周波数領域での位相限定相関または振幅抑制相関法は、前述のように画像全域の大域的な相関を与えるために、その原理上の制約からこのような局所的な変位分布を求めることができない。
【0102】
ところで図9(a)、(b)は、大きな変位の検出における本発明の優位性を示したものであるが、図10は逆に回転角を小さくして微小変位を与えたときにおける本発明の優位性を示すものである。図10のグラフの縦軸は変位量の大きさを示し、変位は回転中心からの距離に比例するので理想的な計測結果は逆円錐状になるが、従来方法の強度相関では図10(a)に示すように多くの計測誤差を含んでいる。それに対して本発明による方法では図10(b)に示すように、ごく微小の変位に対してもほぼ円錐状に近い計測結果が得られている。
【0103】
前述のように、従来方法の空間周波数領域での位相限定または振幅抑制相関法は局所的な変位計測に適用できないので、物体全体が一様に変位する場合について本方法との性能の比較をおこなった。図11(a)は、本発明の方法による空間信号領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの自己相関関数を示した図である。図11(b)に示すように従来方法の空間周波数領域での位相限定相関関数によるスペックルパターンの自己相関関数と較べると相関関数の広がり幅が大きくて自己相関関数の分解能については優位性がない。しかし図11(d)に示すように従来方法の空間周波数領域での位相限定相関関数による相互相関関数はピークの高さが低下するのに対して、図11(c)に示した本発明による空間信号領域での相互相関関数は高い相関ピークを維持しているため信頼性の高い計測が可能となる。レーザースペックルは変位により変形するため、変位量が大きくなりスペックルの変形が激しくなると本発明による方法の優位性がさらに顕著になる。
【0104】
図12はスペックルの変形の大きな場合の相互相関関数を比較したものである。図12(a)、(b)は、それぞれ本発明による方法(空間信号領域での位相限定相関関数)と従来法(空間周波数領域での位相限定相関関数)による自己相関関数である。この場合はスペックルの変形が無いので従来法に対する優位性はないが、図12(d)に示すように従来法(空間周波数領域での位相限定相関関数)は相互相関関数のピークの高さが著しく低下するのに対して、図12(c)に示した本発明(空間信号領域での位相限定相関関数)による相互相関関数は高い相関ピークを維持しているためスペックルの変形の大きな場合に対しても信頼性の高い計測が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のことから本発明によれば、被検体表面に存在するユニークなスペックルパターンを用いて高精度な微小変位計測を可能にする。これにより例えば半導体素子や航空機の胴体・翼、又は車体などの金属材料の内部で生じた微小欠陥に基づく物体表面の変位を非接触で検出することができる。またこの検査を定期的に行うことで、金属疲労や経年変化を予測することが可能になるので、破断等を未然に防ぐ非破壊検査装置としても利用できる。また環境の悪い揚所でも測定可能になることから、スペックルパターンを用いた個人識別やセキュリティー装置としての応用も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の表面を撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程で撮像した画像をN次元フーリエ変換(N=1,2)する第1フーリエ変換工程と、
前記第1フーリエ変換工程で変換された周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換する第1ヒルベルト変換工程と、
前記第1ヒルベルト変換工程後の周波数スペクトルから周波数成分を抽出する第1周波数抽出工程と、
前記周波数成分をN次元フーリエ逆変換(N=1,2)して第1複素解析信号を取得する第1フーリエ逆変換工程と、
前記第1複素解析信号の振幅値を一定値となるように補正を行う第1振幅補正工程と、
前記振幅補正された第1位相限定解析信号を記録する第1位相限定信号記録工程と、
一方、前記第1撮像工程後、前記測定対象物の表面を撮像する第2撮像工程と、
前記第2撮像工程で撮像した画像をN次元フーリエ変換(N=1,2)する第2フーリエ変換工程と、
前記第2フーリエ変換工程で変換された周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換する第2ヒルベルト変換工程と、
前記第2ヒルベルト変換工程後の周波数スペクトルから周波数成分を抽出する第2周波数抽出工程と、
前記周波数成分をN次元フーリエ逆変換(N=1,2)して第2複素解析信号を取得する第2フーリエ逆変換工程と、
前記第2複素解析信号の振幅値を一定値となるように補正を行う第2振幅補正工程と、
前記振幅補正された第2位相限定解析信号を記録する第2位相限定信号記録工程と、
前記第1位相限定解析信号と前記第2位相限定解析信号の全領域又は一部領域に対して位相限定相互相関関数を求める位相限定相関処理工程と、
前記位相限定相互相関関数が最大絶対値を示す相関ピークの位置から変位量を算出する変位量算出工程と、
を有することを特徴とする微小変位計測法。
【請求項2】
前記第1及び第2振幅補正工程は、前記第1及び第2複素解析信号の振幅値を一定値に置換する振幅限定処理方法、若しくは前記第1及び第2複素解析信号の振幅値を対数変換により一定値に抑制する振幅抑制処理方法を用いることを特徴とする請求項1記載の微小変位計測法。
【請求項3】
前記位相限定相関処理工程で行う位相限定相互相関処理において、振幅限定相互相関関数、又は振幅抑圧相互相関関数を用いることを特徴とする請求項1記載の微小変位計測法。
【請求項4】
測定対象物の表面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像をN次元フーリエ変換(N=1,2)するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段で変換された周波数スペクトルのゼロ周波数を含む平面内の半分又は一部の周波数スペクトル振幅をゼロに置換するヒルベルト変換手段と、
前記ヒルベルト変換手段でゼロに置換されたゼロ置換領域以外の領域に含まれる周波数スペクトルから周波数成分を抽出する周波数抽出手段と、
前記周波数抽出手段で抽出された周波数成分をN次元フーリエ逆変換して複素解析信号を出力するフーリエ逆変換手段と、
前記複素解析信号の振幅値を一定値となるように補正を行う振幅補正手段と、
前記振幅補正手段で補正された信号の全領域又は一部領域に対して位相限定相関処理を行う位相限定相関処理手段と、
前記位相限定相関関数の最大絶対値を示す相関ピークの位置から変位量を算出する変位量算出手段と、
を有することを特徴とする微小変位計測装置。
【請求項5】
前記振幅補正手段は、前記複素解析信号の振幅値を一定値に置換する位相限定処理手段、若しくは前記複素解析信号の振幅値を対数変換により一定値に抑制する振幅抑制処理手段を備えることを特徴とする請求項4記載の微小変位計測装置。
【請求項6】
前記位相限定相関処理手段は、位相限定複素相互相関関数、又は振幅抑圧複素相互相関関数を用いることを特徴とする請求項4記載の微小変位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【国際公開番号】WO2005/103610
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【発行日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−512596(P2006−512596)
【国際出願番号】PCT/JP2005/007683
【国際出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】