説明

微小球

本発明は、推進剤をカプセル封入するエチレン性不飽和モノマーから作られたポリマーシェルを含む熱膨張性の熱可塑性微小球であって、該エチレン性不飽和モノマーは、20〜80重量%のアクリロニトリルおよび1〜70重量%の1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルを含み、アクリロニトリルおよび1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルの合計量がエチレン性不飽和モノマーの30〜100重量%である、熱膨張性の熱可塑性微小球に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性の熱可塑性微小球、その製造および使用、ならびにそのような微小球を含む水性スラリー、ならびに膨張した微小球に関する。
【背景技術】
【0002】
推進剤をカプセル封入する熱可塑性ポリマーシェルを含む膨張性の熱可塑性微小球は、商標EXPANCELの下に市販されていて入手可能であり、多くの異なる用途において発泡剤として使用される。
【0003】
そのような微小球においては、推進剤は通常、熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度以下の沸騰温度を有する液体である。加熱すると、シェルが軟化すると同時に、推進剤は蒸発して内圧を上げ、微小球の有意の膨張を生じる。膨張が開始する温度はT開始といわれ、一方、最大の膨張に達する温度はT最大といわれる。膨張性の微小球は、種々の形態で、例えば乾燥自由流動粒子として、水性スラリーとして、または部分的に脱水された湿潤ケーキとして、販売されている。
【0004】
膨張性の微小球は、エチレン性不飽和モノマーを推進剤の存在下で重合することによって、製造することができる。種々の膨張性微小球およびそれらの製造についての詳細な説明は、例えば米国特許第3,615,972号、3,945,956号、4,287,308号、5,536,756号、6,235,800号、6,235,394号および6,509,384号明細書、米国特許出願公開2004/0,176,486号および2005/0,079,352号、英国特許第1,024,195号、欧州特許第486,080号公報および欧州特許第1,288,272号公報、国際特許出願公開WO 2004/072,160号公報ならびに特開昭62(1987)-286,534号公報、特開平17(2005)213,379号公報および特開平17(2005)272,633号公報において見出すことができる。
【0005】
膨張性微小球の1つの重要な用途は、例えば米国特許第3,556,934号および第4,133,688号明細書、日本国特許第2,689,787号公報、特開平15(2003)-105,693号公報、国際特許出願公開WO 2004/113,613号公報、WO 2006/068,573号公報およびWO 2006/068,574号公報ならびにO.ソデルベルグ(Soderberg)、「ワールド パルプ アンド ペーパー テクノロジー 1995/96年、ザ インターナショナル レビュー フォー ザ パルプ アンド ペーパー インダストリー(World Pulp & Paper Technology 1995/96, The International Reviewfor the Pulp & Paper Industry)」、第143-145頁に記載されているような製紙である。
【0006】
膨張性微小球の他の重要な用途は、印刷インク、ビニルフォーム(例えばプラスチゾル)、不織布および人造皮革である。
【0007】
幾つかの用途においては、微小球が比較的低いT開始を有することが望ましい。しかしながら、低いT開始を有する市販の入手可能な微小球におけるポリマーシェルは通常、ハロゲン含有モノマー、例えば塩化ビニリデンを含むモノマー混合物でできている。そのような微小球は通常、高い残留モノマー量ならびに、化学物質、例えば人造皮革およびプラスチゾルにおいて使用される溶媒および可塑剤に対する乏しい耐性を欠点としてもっている。ハロゲン含有モノマーを含まずに低いT開始および高い膨張性能を有する微小球を作る試みはなお、これらの問題を十分には解決していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの目的は、高含量のハロゲン含有モノマーを含むことなく、好ましくは化学物質に対する高い耐性を有する、高い膨張性能および低いT開始を有する膨張性微小球を提供することである。
【0009】
本発明のなお別の目的は、製紙または印刷インクにおいて、例えばその中の発泡剤として有用な膨張性微小球を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、紙の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のなおさらなる目的は、紙の製造において有用な膨張性微小球を含む水性スラリーを提供することである。
【0012】
驚くべきことに、ある組合せのモノマーから作られたポリマーシェルを有する微小球を提供することによって、これらの目的を満たすことが可能であると見出された。
【0013】
本発明の1つの態様は、推進剤をカプセル封入するエチレン性不飽和モノマーから作られたポリマーシェルを含む熱膨張性の熱可塑性微小球であって、該エチレン性不飽和モノマーは、20〜80重量%のアクリロニトリルおよび、1〜70重量%の1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルを含み、アクリロニトリルおよび1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルの合計量がエチレン性不飽和モノマーの30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%であるか、または65〜100重量%である、熱膨張性の熱可塑性微小球に関する。
【0014】
エチレン性不飽和モノマーは好ましくは1〜60重量%、最も好ましくは1〜50重量%または5〜50重量%の1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルを含む。極端に低いT開始が望まれないなら、5〜30重量%の量が特に好ましい。ビニルエーテルは、ただ1種類のビニルエーテルまたは異なるビニルエーテルの混合物であることができる。1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルの例としては、アルキル基が好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキルビニルエーテルを包含する。詳細な例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、sec-ブチルビニルエーテルおよびそれらの混合物を包含し、それらのうち、メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテルが特に好ましい。アルキル基上の1個以上の水素原子は、官能基、例えばヒドロキシル、カルボン酸、アミン、エーテル等で置換することができる。1つの詳細な例は、エチレングリコールビニルエーテルである。
【0015】
エチレン性不飽和モノマーは好ましくは40〜80重量%、最も好ましくは50〜70重量%のアクリロニトリルを含む。
【0016】
エチレン性不飽和モノマーはさらに好ましくは、好ましくは1〜50重量%、最も好ましくは5〜40重量%の量で、メタクリロニトリルを含む。
【0017】
エチレン性不飽和モノマーはさらに、1種以上のアクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルおよびそれらの混合物を含むことができる。それらのモノマーの量は、例えば1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%であり得る。
【0018】
含まれるなら、メタクリル酸のエステルは、例えばメチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートのうちの1種以上であることができ、そのうちメチルメタクリレートが特に好ましい。
【0019】
含まれるなら、アクリル酸のエステルは、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートまたはヒドロキシエチルアクリレートのうちの1種以上であることができ、そのうちメチルアクリレートが特に好ましい。
【0020】
エチレン性不飽和モノマーが実質的に塩化ビニリデンを含まないことが好ましい。含まれるなら、その量は、好ましくはエチレン性不飽和モノマーの10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満であり、または1重量%未満ですらある。エチレン性不飽和モノマーは実質的に、いかなるハロゲン含有モノマーをも含まないことがまた好ましい。含まれるなら、その量は、好ましくはエチレン性不飽和モノマーの10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満であり、または1重量%未満ですらある。
【0021】
好ましくはエチレン性不飽和モノマーは、少量の1種以上の架橋多官能性モノマー、例えば1種以上のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、アリルメタアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG #200ジ(メタ)アクリレート、PEG #400ジ(メタ)アクリレート、PEG #600ジ(メタ)アクリレート、3-アクリロイルオキシグリコールモノアクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル等を含む。特に好ましくは、少なくとも3官能性の架橋モノマーであり、その例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネートおよびトリアリルイソシアヌレートを包含する。架橋官能性モノマーの量は、例えばエチレン性不飽和モノマーの0.1〜10重量%、または0.1〜1重量%または1〜3重量%であり、1種以上の多官能性モノマーが少なくとも3官能性である場合には、0.1〜1重量%が特に好ましく、1種以上の多官能性モノマーが2官能性である場合には、1〜3重量%が特に好ましい。
【0022】
アクリロニトリル、ビニルエーテル、メタクリロニトリル、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルおよび1種以上の架橋多官能性モノマー以外のエチレン性不飽和モノマーが含まれるなら、その量は、好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0〜5重量%である。含まれることができるそのような他の種類のモノマーの例は、ニトリル含有モノマー、例えばα-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルまたはクロトニトリル;ビニルピリジン;ビニルエステル例えば酢酸ビニル;スチレン、例えばスチレン、ハロゲン化スチレンもしくはα-メチルスチレン;ジエン例えばブタジエン、イソプレンおよびクロロプレン;不飽和カルボキシル化合物たとえばアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩;または他の不飽和モノマー例えばアクリルアミド、メタクリルアミドもしくはN-置換マレイミドである。
【0023】
本発明の1つの実施態様においては、エチレン性不飽和モノマーは実質的に、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテル、メタクリロニトリル、アクリル酸もしくはメタクリル酸の1種以上のエステルおよび1種以上の架橋多官能性モノマーからなる。別の実施態様においては、エチレン性不飽和モノマーは実質的に、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテル、メタクリロニトリルおよび1種以上の架橋多官能性モノマーからなる。なお別の実施態様においては、エチレン性不飽和モノマーは実質的に、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテル、アクリル酸もしくはメタクリル酸の1種以上のエステルおよび1種以上の架橋多官能性モノマーからなる。さらなる実施態様においては、エチレン性不飽和モノマーは実質的に、アクリロニトリル、アルキルビニルエーテルおよび1種以上の架橋多官能性モノマーからなる。
【0024】
普通、そのガラス転移温度(Tg)に対応する、ポリマーシェルの軟化温度は、好ましくは0〜140℃の範囲内、最も好ましくは30〜100℃の範囲内にある。
【0025】
推進剤は普通、熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度以下の沸騰温度を有する液体であり、1種以上の炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタンおよびイソドデカンを含むことができる。それらの他に、他の炭化水素タイプをまた使用することができ、例えば石油エーテル、または塩素化もしくはフッ素化炭化水素、例えば塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、過フッ素化炭化水素、フッ素含有エーテル等である。好ましい推進剤は、プロパン、n-ブタン、イソブタンもしくはイソペンタンのうちの少なくとも1種を、単独もしくは混合物で、または1種以上の他の炭化水素との混合物で含む。推進剤中のn-ブタンおよび/またはイソブタンおよび/またはイソペンタンの量は、好ましくは50〜100重量%、最も好ましくは75〜100重量%である。プロパンが存在するなら、推進剤中のその量は、好ましくは10〜50重量%である。大気圧下での推進剤の沸点は、好ましくは-50〜100℃の範囲内、最も好ましくは-40℃もしくは-30℃〜50℃、または-30℃もしくは-20℃〜30℃である。
【0026】
膨張性微小球についてのT開始は、好ましくは40〜140℃、最も好ましくは50〜100℃である。膨張性微小球についてのT最大は、好ましくは80〜200℃、最も好ましくは100〜170℃である。
【0027】
ポリマーシェルおよび推進剤に加えて、微小球は、その製造中に添加されるさらなる物質を、通常0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の量で含むことができる。そのような物質の例は、固体懸濁剤、例えば1種以上のデンプン、架橋ポリマー、ガム寒天、誘導セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース、シリカ、コロイド状クレー、例えばチョークおよびベントナイト、ならびに/または、金属例えばAl、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、NiおよびMnの1種以上の塩、酸化物もしくは水酸化物、例えば1種以上のリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、およびアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケルもしくはマンガンの水酸化物である。存在するなら、これらの固体懸濁剤は通常、主にポリマーシェルの外表面に位置する。しかしながら、懸濁剤が微小球の製造中に添加されたとしても、これは、後の工程で洗い流され、かくして、実質的に最終製品に存在しないことがあり得る。
【0028】
膨張性微小球は、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜100μm、最も好ましくは10〜50μmの体積中央直径を有する。膨張性微小球中の推進剤の量は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%、特に最も好ましくは20〜35重量%である。
【0029】
本明細書において使用される膨張性微小球という語は、予め膨張されていない膨張性の微小球、すなわち膨張されていない膨張性微小球をいう。
【0030】
本発明のさらなる態様は、上記した膨張性熱可塑性微小球の製造方法に関する。この方法は、上記したエチレン性不飽和モノマーを、好ましくは水性懸濁物で、推進剤の存在下で重合して、該推進剤をカプセル封入するポリマーシェルを含む微小球を生じることを含む。モノマーおよび推進剤の種類および量に関しては、膨張性微小球の先の説明が言及される。製造は、先に挙げた米国特許第3,615,972号、3,945,956号、4,287,308号、5,536,756号、6,235,800号、6,235,394号および6,509,384号明細書、米国特許出願公開2004/0,176,486号および2005/0,079,352号、英国特許第1,024,195号、欧州特許第486,080号公報、欧州特許第1,288,272号公報、国際特許出願公開WO 2004/072,160号公報ならびに特開昭62(1987)-286,534号公報、特開平17(2005)-213,379号公報および特開平17(2005)-272,633号公報において記載されたのと同じ原理に従うことができる。
【0031】
本発明の1つの実施態様においては、微小球はバッチ式プロセスで製造され、その後重合を、反応容器中で以下に記載されたようにして行うことができる。100部のモノマー相(適当には、モノマーおよび推進剤を含み、その割合は、ポリマーシェル中のモノマーの割合および最終製品における推進剤の量を決定する)については、好ましくは0.1〜5部の量の1種以上の重合開始剤、好ましくは100〜800部の量の水性相、および好ましくは1〜20部の量の1種以上の好ましくは固体コロイド懸濁剤が混合され、均質化される。得られるモノマー相の液滴の大きさは、例えば、種々の懸濁剤を用いた全ての同様の製造法に対して適用することができる米国特許第3,615,972号明細書に記載された原理にしたがって、最終の膨張性微小球の大きさを決定する。温度は適当には40〜90℃、好ましくは50〜80℃に維持され、一方、適当なpHは、使用される懸濁剤に依存する。例えば、高いpH、好ましくは5〜12、最も好ましくは6〜10は、懸濁剤が、金属たとえばCa、Mg、Ba、Zn、NiおよびMnの塩、酸化物または水酸化物、例えばリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウムおよび、亜鉛、ニッケルもしくはマンガンの水酸化物のうちの1種以上から選択されるなら、適当である。低いpH、好ましくは1〜6、最も好ましくは3〜5は、懸濁剤が、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム寒天、シリカ、コロイド状クレー、またはアルミニウムもしくは鉄の酸化物もしくは水酸化物から選択されるなら、適当である。上記の剤のそれぞれ1種は、例えば溶解性データに依存する異なる最適pHを有する。
【0032】
懸濁剤の効果を高めるために、少量、例えば0.001〜1重量%の1種以上の促進剤を添加することがまた可能である。通常、そのような促進剤は有機物質であり、例えば水溶性スルホン化ポリスチレン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、テトラメチルアンモニウム水酸化物もしくは塩化物または、水溶性錯体樹脂様アミン縮合生成物、例えばジエタノールアミンとアジピン酸との水溶性縮合生成物、エチレンオキシド、尿素およびホルムアルデヒドの水溶性縮合生成物、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、両性物質、例えばタンパク質様の物質、例えばゼラチン、にかわ、カゼイン、アルブミン、グルチン等、非イオン物質、例えばメトキシセルロース、通常乳化剤として分類されるイオン物質、例えばせっけん、アルキル硫酸エステルおよびスルホン酸エステル、ならびに長鎖4級アンモニウム化合物のうちの1種以上から選択することができる。
【0033】
慣用のラジカル重合を使用でき、開始剤は適当には、1種以上の有機ペルオキシド、例えばジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、またはアゾ化合物から選択される。適当な開始剤としては、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジオクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルラウレート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、クメンエチルペルオキシド、ジイソプロピルヒドロキシジカルボキシレート、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等を包含する。放射、例えば高エネルギーイオン化放射を用いて重合を開始することがまた可能である。
【0034】
重合が本質的に終了したときには、微小球は通常、水性スラリーまたは分散物として得られ、これは、そのまま使用するか、または任意の慣用の手段、例えば床ろ過(bed filtering)、圧ろ過、リーフろ過(leaf filtering)、回転ろ過、ベルトろ過または遠心によって脱水して、いわゆる湿潤ケーキを得ることができる。しかしながら、任意の慣用の手段、例えば噴霧乾燥、シェルフ乾燥、トンネル乾燥、回転乾燥、ドラム乾燥、空気式乾燥、ターボシェルフ乾燥、ディスク乾燥または流動床乾燥によって、微小球を乾燥することがまた可能である。
【0035】
適当なら、微小球は、任意の段階で処理されて、例えば先に挙げた国際特許出願公開WO 2004/072,160号公報または米国特許第4,287,308号明細書に記載された任意の手順によって、残留する未反応モノマーの量を減らすことができる。
【0036】
本発明のさらなる態様は、例えば膨張していない微小球より2〜5倍大きい粒径に、上記した膨張性微小球を膨張させることによって得られる膨張した微小球に関する。膨張した微小球の密度は、例えば0.005〜0.06g/cm3であり得る。膨張は、膨張性微小球を、T開始より上の温度に加熱することによって行われる。温度の上限は、微小球がつぶれ始めたときに設置され、ポリマーシェルと推進剤との正確な組成に依存する。ほとんどの場合、80〜150℃の温度が適当である。膨張した微小球の密度は、加熱のための温度および時間を選択することによって制御することができる。膨張は、例えば欧州特許第0,348,372号、国際特許出願公開WO 004/056,549またはWO 2006/009,643号公報に記載されている任意の適当な装置での任意の適当な加熱手段によって行うことができる。
【0037】
本発明の膨張性微小球および膨張した微小球は、種々の用途、例えば製紙、印刷インク(例えば水性インク、溶剤性インク、プラスチゾル、UV-硬化インク等、例えば織物、壁紙等のため)、パテ、シーラント、おもちゃ用粘土、アンダーボディコーティング、接着剤、接着剤の剥脱、人造皮革、真性の皮革、塗料、不織布物質、紙および板、コーティング(例えばすべり防止コーティング等)において、種々の物質、例えば紙、板、プラスチック、金属および織物、爆薬、ケーブル絶縁材、熱可塑性物質(例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびエチレン-酢酸ビニル)もしくは熱可塑性エラストマー(例えばスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタンおよび熱可塑性ポリオレフィン)、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、加硫ゴム、シリコーンゴム、熱硬化性ポリマー(例えばエポキシ、ポリウレタンおよびポリエステル)のために有用である。これらの用途の幾つかにおいて、例えばパテ、シーラント、おもちゃ用粘土、真性の皮革、塗料、爆薬、ケーブル絶縁材、および熱硬化性ポリマー(例えばエポキシ、ポリウレタンおよびポリエステル)において、膨張した微小球は特に有利である。幾つかの場合、例えばアンダーボディコーティング、シリコーンゴムおよび軽重量フォームにおいて、本発明の膨張した微小球および膨張性微小球の混合物を使用することがまた可能である。
【0038】
なお本発明のさらなる態様は、上記した膨張性熱可塑性微小球を、好ましくは5〜55重量%、最も好ましくは20〜55重量%の量で含む水性スラリーに関する。そのようなスラリーは、例えば製紙を含む、膨張性微小球の種々の用途のために有用である。スラリーは好ましくはまた、少なくとも1種の増粘剤、好ましくは製紙と適合性の増粘剤を含む。そのような増粘剤の例としては、でんぷん、ガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、デキストリン、アクリル酸もしくはその塩(好ましくは50モル%まで、最も好ましくは20モル%までのアクリル酸もしくはその塩)を含むモノマーから作られたコポリマー、アクリル酸のエステルもしくはアミドを含むモノマーから作られたホモ-およびコポリマー、メタクリル酸、そのエステルもしくはアミドを含むモノマーから作られたホモ-およびコポリマー、ゴムラテックス、ポリ(塩化ビニル)およびコポリマー、ポリ(ビニルエステル)およびコポリマー(例えばエチレンとのコポリマー)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレン/ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、およびアミノプラストおよびフェノプラスト予備縮合物、例えば尿素/ホルムアルデヒド、尿素/メラミン/ホルムアルデヒドまたはフェノール/ホルムアルデヒドならびにポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂からなる群より選択される少なくとも部分的に水溶性のポリマーを包含する。適当なガムの例としては、ガーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、テアガム、カラヤ、オクラ、アカシア、キサンタンガム等ならびにそれらの混合物を包含し、そのうちガーガムが特に好ましい。適当なセルロースの例としては、誘導体、例えば任意的に化学的に変性されたCMC(カルボキシメチルセルロース)およびセルロースエーテル、例えばEHEC(エチルヒドロキシエチルセルロース)およびHEC(ヒドロキシエチルセルロース)ならびにそれらの混合物を包含する。化学的に変性されたセルロース誘導体としては、例えば種々の官能基、例えば4級アミン、他のアミン、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドで変性されたものを包含する。
【0039】
少なくとも部分的に水溶性のポリマーは、直鎖、分岐もしくは架橋されることができる。平均分子量は、ポリマーの種類に依存して、広い範囲内で変化し得る。ほとんどの場合、好ましい平均分子量は、少なくとも500、より好ましくは少なくとも2,000、最も好ましくは少なくとも5,000である。上限は必須ではなく、ほとんどの場合、平均分子量は好ましくは50,000,000まで、より好ましくは10,000,000まで、最も好ましくは1,000,000までである。
【0040】
特に好ましいポリマーとしては、デンプン、CMC、EHEC、ガーガム、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂、アクリル酸と他のモノマー(例えばアクリルアミド)とのコポリマー、ならびにポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリ(ビニルアルコール)およびポリエチレン/ポリプロピレンオキシドのホモ-もしくはコポリマーを包含する。
【0041】
増粘剤として有効な1種以上の少なくとも部分的に水溶性のポリマーは好ましくは、再び再分散することができない範囲までの微小球の実質的な沈降または浮揚に対して、スラリーを安定化させる量で存在する。多くの場合、これは、25℃にて約150〜約1000mPas、最も好ましくは25℃にて約200〜約600mPasのスラリーの好ましい粘度(スピンドルL3を備えたAnton Paar DV-1P粘度計を用いての測定による)を得るのに十分なポリマーを添加することによって達成することができる。スラリーを安定化させるのに必要とされる量は、ポリマーおよび他の情況、例えばpHに依存する。多くの場合、少なくとも部分的に水溶性のポリマーのスラリー中の好ましい含量は、約0.1〜約15重量%であり、最も好ましくは約0.1〜約10重量%、特に最も好ましくは約0.5〜約10重量%である。
【0042】
先に挙げた国際特許出願公開WO2006/068,573号およびWO2006/068,574号公報のいずれに開示された全ての増粘剤および他の添加剤も、本発明の水性スラリーにおいて、そこにまた開示された好ましい量で使用することができる。
【0043】
本発明の特定の態様は、先に記載された膨張性微小球を印刷インク、人造皮革および不織布において、および特にセルロース繊維を含むストックからの紙の製造において、使用することに関する。さらなる態様は、上記した膨張した微小球を紙の製造において使用することに関する。
【0044】
印刷インク、特に水性印刷インクにおいて使用されるときには、膨張性微小球、好ましくは湿潤未膨張微小球が、当業者によく知られた標準の処方物に添加される。そのような処方物は通常、1種以上のバインダーおよび1種以上の増粘剤を含む。他の成分としては、例えば顔料、消泡剤、充填剤、剥離または詰まりを防ぐための化学物質等を包含し得る。印刷インクはまた、膨張性微小球を含む、アクリレート分散物またはプラスチゾルに基づくことができる。印刷後、微小球は、インクの乾燥前、乾燥中または乾燥後に、加熱により膨張される。そのような印刷インクは、織物または壁紙に印刷するのに特に適当である。
【0045】
人造皮革において使用されるときには、膨張性微小球、好ましくは乾燥未膨張微小球が、当業者に公知の標準の手順で標準の処方物において、例えばスエードタイプまたは任意の他の種類の構造の多層人造皮革の表面層において、例えば使用される。人造皮革は、任意の標準の物質、例えばポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル (PVC)およびそれらの混合物から、任意の標準のプロセス、例えばリリースペーパープロセス、織物または不織布のダイレクトコーティングまたは凝固プロセスによって製造することができる。通常、任意の上記プロセスによって製造された人造皮革は、膨張性微小球を含むPUまたはPVCペーストでコーティングされた後、加熱されて微小球を膨張させる。
【0046】
不織布の製造は、繊維のウェブを形成する工程、該ウェブにバインダーおよび上記した膨張性微小球を添加する工程ならびに、不織布を形成し、かつ熱を施与して微小球の温度をそれが膨張するのに十分に上げ、それによって不織布の嵩を増加させる工程を含むことができる。膨張性微小球およびバインダーは、別々に、または混合物として添加することができる。添加される膨張性微小球の量は、好ましくは乾燥製品の約0.1〜30重量%、最も好ましくは乾燥製品の約0.5〜約15重量%である。添加されるバインダーの量は、好ましくは乾燥製品の約10〜90重量%、最も好ましくは乾燥製品の約20〜約80重量%である。さらなる詳細は、先に挙げた国際特許出願公開WO 2004/113,613号公報に見出すことができる。
【0047】
紙の製造においては、膨張性微小球は好ましくは、紙の嵩を増加するために使用されるが、また他の目的にかなうことがあり得る。微小球はその後好ましくは、セルロース繊維を含むストックに添加され、それはその後、脱水され、乾燥され、そこで、微小球は膨張し、紙の嵩を増加させるのに寄与する。
【0048】
本発明の特別の態様は、紙の製造方法であって、上記した熱膨張性微小球をセルロース繊維を含むストックに添加する工程、ストックをワイヤ上で脱水して紙を得る工程、および熱を施与することによって紙を乾燥させ、それによってまた微小球の温度を、それが膨張し、紙の嵩を増加させるのに十分なように上げる工程を含む方法に関する。
【0049】
ストックに添加される膨張性微小球の量は、好ましくは0.1〜20重量%、最も好ましくは0.2〜10重量%の、ストック中の乾燥微小球の乾燥含量である。当分野で公知の任意の種類の製紙機を使用することができる。
【0050】
本明細書において使用される「紙」という語は、シート形態またはウェブ形態の全てのタイプのセルロースに基づく製品で、例えば板紙、厚紙およびボール紙を含む製品を包含することを意味する。本発明は、特に50〜1000g/m2、好ましくは150〜800 g/m2の基準重量を有する、板紙、厚紙およびボール紙の製造のために特に有利であるとわかった。
【0051】
紙は、単層または多層の紙として製造され得る。紙が3層以上の層を含むなら、膨張性微小球は、1種または数種のこれらの層を形成するストックの一部分に添加することができ、例えば任意の2つの外層を形成しないストックの部分のみに添加することができる。
【0052】
ストックは好ましくは、乾燥物質に基づき50〜100重量%、最も好ましくは70〜100重量%のセルロース繊維を含む。脱水前に、ストックは、膨張性微小球のほかにまた、1種以上の充填剤、例えば無機充填剤例えばカオリン、陶土、二酸化チタン、石膏、タルク、チョーク、粉砕大理石または沈降炭酸カルシウム、および任意的に他の一般的に使用される添加剤、例えば保持助剤、サイジング剤、アルミニウム化合物、染料、湿潤強度樹脂、蛍光増白剤等を含むことができる。アルミニウム化合物の例としては、明礬、アルミネートおよびポリアルミニウム化合物、例えばポリアルミニウムクロリドおよびサルフェートを包含する。保持助剤の例としては、カチオンポリマー、有機ポリマーと組み合わせたアニオン無機物質、例えばカチオンポリマーと組み合わせたベントナイトまたは、カチオンポリマーもしくはカチオンおよびアニオンポリマーと組み合わせたシリカに基づくゾルを包含する。サイジング剤の例としては、セルロース反応性のサイズ、例えばアルキルケテン2量体およびアルケニルコハク酸無水物、ならびにセルロース反応性でないサイズ、例えばロジン、デンプンおよび他のポリマーサイズ、例えばスチレンとビニルモノマー例えばマレイン酸無水物、アクリル酸およびそのアルキルエステル、アクリルアミド等とのコポリマーを包含する。
【0053】
乾燥では、紙およびそれによってまた微小球は、好ましくは50〜150℃、最も好ましくは60〜110℃の温度に加熱される。これは、微小球の膨張を生じ、それによってまた、紙の嵩の増加を生じる。この嵩の増加の大きさは、種々の要因、例えばセルロース繊維の起源およびストック中の他の成分に依存するが、ほとんどの場合には、膨張性微小球または他の膨張剤を添加しないで製造された同じ種類の紙と比べて、乾燥された紙中に保持された微小球の重量パーセント当たり5〜70%またはそれ以上である。熱を紙に移すことに関連する任意の慣用の乾燥手段、例えば接触乾燥(例えば加熱されたシリンダーによる)、強制対流乾燥(例えば熱空気による)、赤外線法またはそれらの組合せを適用することができる。接触乾燥の場合には、接触表面、例えばシリンダーの温度は、好ましくは20〜150℃、最も好ましくは30〜130℃である。紙は、昇温している一連の数個の、例えば20個以上までのシリンダーを通過することができる。紙は次に、任意の種類の慣用の処理、例えば表面サイジング、コーティング、カレンダー処理等を受けることができる。
【0054】
ストック中のセルロース繊維は、例えば任意の種類の植物、好ましくは木材、例えば堅材および軟材から作られたパルプから生じたものであり得る。セルロース繊維はまた、一部または全部再生紙由来であることができ、その場合には、本発明は、予想できないほど良好な結果を与えるとわかった。
【0055】
膨張性微小球は、任意の形態で添加することができるが、実際的な観点から、上記した水性スラリーの形態で添加することが最も好ましい。
【0056】
本発明のさらなる態様は、先に記載された膨張性微小球から得られる膨張した微小球を含む紙に関する。紙はさらに、セルロース繊維および他の慣用の成分を含むことができる。微小球は、上記した紙の製造法において膨張されていることができるか、または別々に膨張され、その後紙が製造されるセルロース繊維を含むストックに添加されることができる。
【0057】
本発明を、以下の実施例に関してさらに説明するが、しかしながら、これは本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。他に記載がなければ、全ての部およびパーセントは、重量部および重量パーセントを指す。
【0058】
本発明を、以下の実施例に関してさらに説明するが、しかしながら、これは本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。他に記載がなければ、全ての部およびパーセントは、重量部および重量パーセントを指す。
【0059】
微小球の膨張特性は、20℃/分の加熱速度および0.06Nの荷重(正味)を用いて、TC15TAプロセッサーを有するメトラー(Mettler) TMA 40およびSTAR(商標)ソフトウェアを有するPCで評価した。T開始は膨張が開始する温度であり、T最大は最大の膨張が得られる温度であり、TMA-密度はT最大での微小球の密度である。
【0060】
粒径および粒度分布は、湿潤試料において、マルベルン マスターサイザー ハイドロ(Malvern Mastersizer Hydro) 2000 SM装置にて、レーザー光散乱によって決定した。平均粒径は体積中央直径d(0.5)として示される。
【0061】
推進剤の量は、メトラー トレド(Mettler Toledo)TGA/SDTA851eにて、熱重量分析(TGA)によって決定された。全ての試料は、できるだけ多くの水分、および存在するならまた残留モノマーを排除するために、分析の前に乾燥した。分析は、30℃で開始して20℃/分の加熱速度を用いて、窒素雰囲気下で行った。
【0062】
実施例1: 水中にMg(OH)2-安定化された有機液滴を含む反応混合物を、相を混合し、適当な液滴の大きさが達成されるまで激しく撹拌することによって作った。水分散物は、2.2部のMg(OH)2および332部の水を含んでいた。有機液滴は、2部のジラウロイルペルオキシド、38部のイソブタン、52部のアクリロニトリル、28部のメタクリロニトリル、20部のエチルビニルエーテルおよび0.3部のトリメチロールプロパントリメタクリレートを含んでいた。撹拌下で封止した反応器中で62℃にて重合を行った。室温に冷却後、得られた微小球スラリーの試料を、粒度分布を決定するために除いた。ろ過し、洗浄し、乾燥した後、粒子をTMAによって分析した。乾燥粒子は、約23重量%のイソブタンを含んでおり、約25μmの平均粒径を有していた。TMAの結果は表1に見出される。
【0063】
実施例2-30: 表1に従って添加されたモノマーおよび推進剤以外は実施例1と同様に行った複数の重合実験において、微小球を製造した。架橋モノマーとして、0.3〜1部のトリメチロールプロパントリメタクリレート(実施例2〜10および17〜30)またはジ(エチレングリコール)ジメタクリレート(実施例11〜16)を使用し、開始剤として、2.0〜2.5部のジラウロイルペルオキシドを使用した。実施例17および18においては、推進剤はそれぞれ、38部の、n-ブタンおよび、プロパンとn-ブタンとの混合物(14/86重量/重量)であった。実施例における水およびMg(OH)2の量はそれぞれ、251〜332部および2.2〜4.8部で変化した。これは、異なる重合反応器中での処方の小さな差異によるが、重合された粒子の熱特性に影響を及ぼさない。重合は、実施例1に記載されたように61〜62℃で行った。実施例2においては、反応器の外で粒子を取り扱う前に、残留モノマーの量を、73℃にて4時間2.1部のNaHSO3と共に処理することによって減らし、その後、温度を室温に下げ、粒子を分離し、分析した。実施例22および23においては、生成物は、高含量の未反応モノマーを含んでおり、試料は、分析するのが困難であった。実施例30からの乾燥粒子は、おそらく粒子の乾燥中の漏れにより、低含量の推進剤を含んでいた。分析結果は、表1に見出すことができる。
【0064】
実施例31-32: 表1に従って添加されたモノマーおよび推進剤ならびに、Mg(OH)2の代わりにシリカの水分散物を使用して有機液滴を安定化させたこと以外は実施例1と同様にして、微小球を製造した。252部の水、11部の1M NaOH、19部の10%酢酸、0.3部のCr(NO3)3、10部の40%コロイド状シリカ、0.6部の、ジエタノールアミンとアジピン酸との縮合生成物を混合することによって、水分散物を製造した。室温に冷却後、得られた微小球スラリーの試料を、粒径分布の決定のために除いた。ろ過、洗浄および乾燥後、粒子をTMAにより分析した。分析結果は、表1に見出すことができる。
【0065】
表1. 実施例1-32についての分析結果および、重量部として表した使用された異なる化学物質の量

【0066】
実施例33-38: 表2に従って添加されたモノマーおよび推進剤以外は実施例1と同様にして行った複数の重合実験において、微小球を製造した。実施例における水の量は、320〜332部で変化した。これは、異なる重合反応器中での処方の小さな差異によるが、重合された粒子の熱特性に影響を及ぼさない。分析結果は、表2に見出すことができる。
【0067】
表2. 実施例33-38についての分析結果および、重量部として表した使用された異なる化学物質の量

【0068】
実施例39-43: 表3に従って添加されたモノマーおよび推進剤以外は実施例1と同様にして行った複数の重合実験において、微小球を製造した。実施例39-40および43においては、1部の架橋モノマー、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレートを使用し、一方実施例41-42においては、BDVE以外の架橋モノマーは使用しなかった。開始剤として、2.0〜2.5部のジラウロイルペルオキシドを使用した。実施例における水およびMg(OH)2の量はそれぞれ、251〜332部および2.1〜4.8部で変化した。これは、異なる重合反応器中での処方の小さな差異によるが、重合された粒子の熱特性に影響を及ぼさない。重合は、実施例1に記載されたように61〜62℃で行った。表3においてわかるように、モノマーとして1,4-ブタンジオールジビニルエーテルを使用するときには、粒子は、表1の実施例4および12と比べて、乏しい膨張を示すか、または全く膨張を示さない。
【0069】
表3. 実施例39-43についての分析結果および、重量部として表した使用された異なる化学物質の量

【0070】
実施例44: 16.1部の湿った微小球(74.4%乾燥重量)、73.9部の酢酸ビニル-エチレンコポリマー分散物バインダー(Mowilith DM-107、セラニーズ(Celanese)から、60%乾燥重量)、66.3部のメチルメタクリレート-エチルアクリレートコポリマーエマルジョンバンダー(Primal ECO-16、ローム アンド ハース(Rohm and Haas)から、45.5%乾燥重量)、10.0部のグリセロール、0.8部の鉱油に基づく消泡剤(Nopco ENA-515、コグニス(Cognis)から)および29.9部の水を、シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いて混合することにより、均質な分散物を作ることによって、実施例2からの微小球を、印刷インクにおいて試験した。次に、3.0部のアクリルポリマー分散物増粘剤(Alcoprint PT-XN、チバ(Ciba)から)を添加した後、増粘が完了し、滑らかな混合物が得られるまで、ディゾルバーミキサーでさらに混合した。これにより、12%乾燥重量の微小球を含む印刷物を生じた。スクリーン印刷物を作り、これを室温で一晩乾燥した。次に、未膨張の印刷物の厚みをコーティング厚みゲージ(エルコメーター(Elcometer)355規格)を用いて測定し、40μmであるとわかった。この印刷物を、マシス ラブドライヤー(Mathislabdryer)熱空気オーブン中で90〜160℃にて60秒間膨張させた。膨張した印刷物の厚みを測定し、未膨張印刷物の厚みで割ることによって、膨張率を計算した。58%の塩化ビニリデン、33%のアクリロニトリルおよび9%のメチルメタクリレートのポリマーシェルを有し、かつ推進剤としてイソブタンを有する市販の入手可能な微小球から作られた、膨張性印刷インクを同様の方法で試験した。膨張率を表3に示す。
【0071】
表3. 印刷インク中の微小球についての膨張率

【0072】
結果は、本発明の塩素を含まない微小球からのインクの膨張率は、特に110〜150℃の領域において、塩素を含有する微小球からの膨張率と比べて高いことを示す。
【0073】
実施例45: 約300g/m2の基準重量を有する単層板紙を、機械速度4m/分で、再循環されるプロセス水を有していない試験的製紙機で製造した。パルプは、42.5重量%の堅材、42.5重量%の軟材パルプおよび15.0重量%の充填剤(GCC)から成り、28°SRのショッパー-リーグラー値(Schopper-Riegler value)まで粉砕した後、分散させて、パルプスラリー/ストックを与えた。膨張性微小球の水性スラリーは、混合ボックス前に、ストック中の乾燥物質約2.0重量%の乾燥微小球量で、ストックに添加された。保持助剤としてCompozil(商標)(エカ ケミカルズ(Eka Chemicals))を使用し、AKDをサイジング剤として使用した。乾燥区画で、70〜120℃の温度プロフィールを有するシリンダーによって、紙ウェブを加熱した。実施例2からの膨張性微小球を試験した。73%の塩化ビニリデン、24%のアクリロニトリルおよび3%のメチルメタクリレートのポリマーシェルを有し、かつ推進剤としてイソブタンを有する微小球を含む市販の入手可能な微小球スラリーを、対照の微小球として試験した。デンプン(アベベ スターチズ ノース ヨーロッパ(Avebe Starches North Europe)からのSolvitose C5(商標))を増粘剤として微小球スラリーに添加して、浮揚または沈降に対して安定化させた。微小球の保持率を決定するために、紙試料を、微小球の量を決定するための圧縮区画の前に取った。これは、GCによって紙中に存在するイソブタンの量の定量化によって行い、それから微小球の量を計算した。保持率は、微小球の添加量および紙中の微小球の含量から計算した。さらに、乾燥した紙からの試料を、嵩および厚みの決定のために取った。結果を表4に示す。
【0074】
表4. 紙における嵩の増加

【0075】
結果は、本発明の塩素を含まない微小球からの紙の嵩の増加は、塩素を含む微小球からの嵩の増加に比べて良好であることを示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進剤をカプセル封入する、エチレン性不飽和モノマーから作られたポリマーシェルを含む熱膨張性の熱可塑性微小球であって、該エチレン性不飽和モノマーは、20〜80重量%のアクリロニトリルおよび1〜70重量%の1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルを含み、アクリロニトリルおよび1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルの合計量がエチレン性不飽和モノマーの30〜100重量%である、熱膨張性の熱可塑性微小球。
【請求項2】
該エチレン性不飽和モノマーが、40〜80重量%のアクリロニトリルを含む請求項1記載の微小球。
【請求項3】
該不飽和モノマーが、5〜50重量%の1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルを含む請求項1〜2のいずれか1項記載の微小球。
【請求項4】
アクリロニトリルおよび1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルの合計量が、エチレン性不飽和モノマーの50〜100重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の微小球。
【請求項5】
該1個だけの炭素-炭素二重結合を有するビニルエーテルがアルキルビニルエーテルである請求項1〜4のいずれか1項記載の微小球。
【請求項6】
アルキル基が1〜10個の炭素原子を有する請求項5記載の微小球。
【請求項7】
アルキルビニルエーテルが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルおよびそれらの混合物からなる群より選択される請求項6記載の微小球。
【請求項8】
該エチレン性不飽和モノマーが、メタクリロニトリルを含む請求項1〜7のいずれか1項記載の微小球。
【請求項9】
該エチレン性不飽和モノマーが、ハロゲン含有モノマーを実質的に含まないか、または10重量%未満のハロゲン含有モノマーを含む請求項1〜8のいずれか1項記載の微小球。
【請求項10】
該推進剤が、プロパン、n-ブタン、イソブタンまたはイソペンタンのうちの少なくとも1種を含む請求項1〜9のいずれか1項記載の微小球。
【請求項11】
T開始が40〜140℃である請求項1〜10のいずれか1項記載の微小球。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球の製造方法であって、エチレン性不飽和モノマーを推進剤の存在下で重合して、該推進剤をカプセル封入するポリマーシェルを含む微小球を生じることを含み、該エチレン性不飽和モノマーは、20〜80重量%のアクリロニトリルおよび1〜70重量%の1個だけの炭素-炭素二重結合を有するアルキルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーを含み、アクリロニトリルおよび1個だけの炭素-炭素二重結合を有するアルキルビニルエーテルからなる群より選択されるモノマーの合計量がエチレン性不飽和モノマーの30〜100重量%である方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球を含む水性スラリー。
【請求項14】
デンプン、ガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、デキストリン、アクリル酸もしくはその塩を含むモノマーから作られたコポリマー、アクリル酸のエステルもしくはアミドを含むモノマーから作られたホモ-およびコポリマー、メタクリル酸、そのエステルもしくはアミドを含むモノマーから作られたホモ-およびコポリマー、ゴムラテックス、ポリ(塩化ビニル)およびコポリマー、ポリ(ビニルエステル)およびコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレン/ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、およびアミノプラストおよびフェノプラスト予備縮合物、ならびにポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂から成る群より選択される少なくとも部分的に水溶性のポリマーである少なくとも1種の増粘剤をさらに含む請求項13記載の水性スラリー。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項記載の膨張性微小球を膨張させることによって得られる膨張した微小球。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球を、紙の製造において使用する方法。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球を、印刷インクにおいて使用する方法。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球を、人造皮革の製造において使用する方法。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球を、不織布の製造において使用する方法。
【請求項20】
請求項15記載の膨張した微小球を、紙の製造において使用する方法。
【請求項21】
紙の製造方法であって、請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球を、セルロース繊維を含むストックに添加する工程、ストックをワイヤー上で脱水して紙を得る工程および、熱を施与することによって紙を乾燥し、それによってまた、微小球が膨張しかつ紙の嵩を増加させるのに十分なように微小球の温度を上げる工程を含む、紙の製造方法。
【請求項22】
熱膨張性微小球が、請求項13〜14のいずれか1項記載の水性スラリーの形態で添加される請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか1項記載の熱膨張性微小球から得られる膨張した微小球を含む紙。

【公表番号】特表2009−540047(P2009−540047A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514238(P2009−514238)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050334
【国際公開番号】WO2007/142593
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】