説明

微小電気機械システムを修復するための装置及び方法

半導体試験に使用するプローブカードを含むMEMSシステムを修復するための新規な装置及び方法を開示する。一実施形態において、半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードは、基板と、該基板に接続され該診断用コンピュータと電気的に接続するように構成された複数の操作プローブと、該基板に接続された複数の代替プローブとを備え、該複数の操作プローブと該複数の代替プローブは、実質的に同じ製造工程で作製される。修復可能な新規なプローブカードも開示する。具体的には、半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードは、基板と、該基板に接続された複数の操作プローブとを備え、該複数の操作プローブは該診断用コンピュータと電気的に接続するように構成され、該複数の操作プローブは電圧の印加によって活性化する犠牲材料を含む。プローブカードから損傷プローブを除去する方法も開示する。該方法は、基板に接続された複数の操作プローブを含むプローブカードから損傷プローブを除去し、該複数の操作プローブは、該電圧の印加によって活性化する犠牲材料を備える。該方法は、該損傷プローブを特定することと、該損傷プローブに該電圧を印加することと、該損傷プローブをエッチング液に曝すことと、該損傷プローブをプローブカードから除去することと、を含む。プローブカードの損傷プローブを修復するための第2の方法も開示する。該方法は、基板に接続された複数の操作プローブと、該基板に接続された複数の代替プローブとを含むプローブカードの損傷プローブを修復し、該複数の操作プローブと該複数の代替プローブは実質的に同じ製造工程で作製される。該方法は、該損傷プローブを特定するステップと、該損傷プローブをプローブカードから除去するステップと、該複数の代替プローブのいずれか1つを該基板から分離するステップと、該複数の代替プローブから分離した該1つのプローブを、該損傷プローブを除去した箇所に設置するステップとを含む。それらの装置及び方法の改良点をいくつか開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体試験に使用するプローブカードを含む微小電気機械システムの修復に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は大量並列工程で半導体ウェハをパターニングし加工することによって製造される。それぞれのウェハは「ダイ」と称する多数の同一集積回路コピーを有する。半導体ウェハの試験は、ダイが個々の集積回路に切断され、販売のためにパッケージングされる前に行うことが望しい。欠陥が検出された場合は、かかる不良ダイは不具合のある部品をパッケージングして資源を無駄にする前に処分することができる。個々の集積回路に切断されパッケージングされた後にダイの試験を行うこともできる。
【0003】
通常、試験対象装置(DUT)と称するウェハ又は個々のダイの試験においては、微小電気機械(MEMSと称す)プローブカードアセンブリを使用し、これをDUTの表面に接触させる。通常、プローブカードは(1)ダイパッドと接触するためZ方向に動くXYプローブ配列と、(2)カードを回路試験装置に接続する電気的インターフェイスと、(3)プローブカードを適切な位置に正確に搭載するための剛性基準面、という3つの固有の特徴を備える。ダイパッドにプローブカードを接触させる際には、Z方向の動きによってプローブ先端部との密な接触が可能となる。プローブカードは最終的には回路試験装置をDUTに一時的に接続するための電気的インターフェイスを提供する。このダイ試験方法であれば多数のダイを同時に試験できるため、極めて効率的である。この効率性をさらに高めるため、プローブカードの製造業者はプローブの数を増やしたプローブカードの大型化を図っている。
【0004】
現在、半導体ダイ試験に使われているプローブの設計には、カンチレバー型とトーション型の2種類がある。図7A及び7Bは、従来のカンチレバー型プローブを示す図である。このプローブ(705)はプローブ先端部(710)と、屈曲素子(715)と、基板(725)に装着されるプローブ台座(720)とを備える。ここではかかる構造全体をプローブカードと称する。通常はプローブカード全体がZ方向(矢印730で示す)に動くことによって屈曲素子(715)が曲がり、プローブ先端部(710)が試験対象ダイパッドに接触する。図7Bは屈曲素子(735)が曲がってダイと接触する様子を示している。個々のプローブが移動してDUTのコンタクトパッドに接触する(このことをタッチダウンと称する)と、プローブ先端部によってコンタクトパッドが擦れ、ダイとの電気的接触が成立し、試験を開始できる。通常はアルミニウム製のダイコンタクトパッドには薄い酸化アルミニウム層やその他の保護塗膜がしばしば塗布されるが、電気的接続を成立させるには、プローブ先端部でこの塗膜を切り込まなければならない。試験が完了すると、プローブ(705)はダイパッドから遠ざかって元の位置に戻る。
【0005】
2番目のタイプのプローブはトーション型設計に基づく。例えば特許文献1にはトーションバネ設計が記載されている。図8はトーション型プローブ設計を示す図である。DUTコンタクトパッドに接触するプローブ先端部(81)は、プローブ先端部(81)に垂直にかかる力に応じて撓む。先端部(81)の垂直運動によってアーム(82)が押圧され、トーション素子(83)は矢印(90)の方向に捻じ曲がる。トーション素子(83)がトーションバネの働きをすることによって先端部(81)に復元力が与えられる。
【0006】
プローブは、トーション型であってもカンチレバー型であっても損傷することがあり、損傷した場合は交換しなければならない。損傷は使用の繰り返しから生じ得る。例えば、個々のプローブが数千回ものタッチダウンを経て、通常の擦り切れによって損傷することがある。また、当初より欠陥のあるプローブが早期に壊れることもある。あるいはプローブカードの取り扱いに誤りがあってプローブが損傷することもある。損傷の理由に関わらず、通常は、損傷したプローブを修復してプローブカード全体の使用を再開したほうが有利である。
【0007】
プローブカードの製造業者が従来の手法を用いてプローブカードを修復するには、最初に新しいプローブを作製し、損傷したプローブをプローブカードから取り除き、新しいプローブをプローブカードに設置しなければならない。プローブ構造の作製方法は、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6に記載されている。特許文献7にはバネ接点で修復を行う方法が記載されている。特許文献7の方法では、まずバネ接点を切ってスタブを残すか、局所的加熱により半田からバネを外すことにより、バネ接点を除去する。特許文献8に記載の損傷プローブワイヤを修復する方法では「ワイヤを基礎の部分で破断するまで引っ張る」ことにより損傷したプローブワイヤを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,426,638号公報
【特許文献2】米国特許第5,190,637号公報
【特許文献3】米国特許第6,436,802号公報
【特許文献4】米国特許第6,452,407号公報
【特許文献5】米国特許第6,297,164号公報
【特許文献6】米国特許第6,520,778号公報
【特許文献7】米国特許第6,777,319号公報
【特許文献8】米国特許第6,523,255号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of MicroMechanical Microengineering, 9(1999) 97-104, entitled In-situ fabrication of sacrificial layer in electrodeposited NiFe microstructures(電着NiFe微細構造における元位置での犠牲層作製)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ただし、上記の技術にはいくつかの欠点がある。例えば、新しいプローブの作製には数週間かかることがある。プローブカードが組み立てラインから外されて効率がかなり損なわれるばかりでなく、少量代替プローブを事後に作製するのはかなり費用がかかる。また、製造法のばらつきのため、新たに作製されるプローブの特性が元のプローブと同じではなくなる可能性がある。新たに交換されたプローブの性能がプローブカード上の他のプローブと異なり、修復済みのプローブカードの使用が再開した際に効率が悪くなる可能性がある。さらに、特許文献8及び特許文献7に記載されている現在の損傷プローブ除去方法は手際が悪く、他の隣接するプローブを傷めるおそれがある。
【0011】
したがって、MEMSプローブカードを修復するための、廉価で迅速で正確な構造及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
プローブカードを含む半導体試験用MEMSシステムを修復するための新規な装置及び方法を開示する。一実施形態においては、半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードは、基板と、該基板に接続され該診断用コンピュータと電気的に接続するように構成された複数の操作プローブと、該基板に接続された複数の代替プローブとを備え、該複数の操作プローブと該複数の代替プローブは実質的に同じ製造工程で作製される。この実施形態の改良として、該製造工程では所望の構造が形成されるまでマスキング、機械加工、電気メッキを行うことができる。また、該複数の代替プローブは剥離層を含んでもよい。かかる剥離層は電圧の印加によって活性化できる。
【0013】
修復可能な新規なプローブカードも開示する。具体的には、半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードは、基板と、該基板に接続された複数の操作プローブとを備え、該複数の操作プローブは診断用コンピュータと電気的に接続するように構成され、該複数の操作プローブは電圧の印加によって活性化する犠牲材料を含む。
【0014】
別の実施形態では、別の新規なプローブカードを開示する。具体的には、半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードは、基板と、該基板に接続された複数の操作プローブとを備え、該複数の操作プローブは診断用コンピュータと電気的に接続するように構成され、該複数の操作プローブは電圧の印加によって活性化する剥離層を含む。
【0015】
プローブカードから損傷プローブを除去する方法を開示する。かかる方法は、基板に接続された複数の操作プローブを含むプローブカードから損傷プローブを除去し、該複数の操作プローブは、該損傷プローブと、電圧の印加によって活性化する犠牲材料とを備える。かかる方法は、該損傷プローブを特定することと、該損傷プローブに該電圧を印加することと、該損傷プローブをエッチング液に曝すことと、該損傷プローブを該プローブカードから除去することと、を含む。この実施形態の改良として、該プローブカードは該基板に接続された複数の代替プローブをさらに備え、該複数の操作プローブと該複数の代替プローブは実質的に同じ製造工程で作製され、かかる方法は該複数の代替プローブのいずれか1つを該基板から分離するステップと、分離した該1つのプローブを、該損傷プローブを除去した箇所に設置するステップと、をさらに含む。該複数の代替プローブから1つのプローブを分離するステップは、機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、犠牲層エッチング、及びそれらの組み合わせを含み得る。かかる方法に用いる該プローブカード上の該複数のプローブは、第2の電圧の印加によって活性化する剥離層をさらに備えてもよく、該複数の代替プローブから該1つのプローブを分離するステップは、該1つのプローブに該第2の電圧を印加することと、該1つのプローブを第2のエッチング液に曝すことと、をさらに含んでもよい。また、該複数の代替プローブからの該1つのプローブの分離は、該プローブカードを使用のために載置する前に実行できる。最後に、分離された該1つのプローブを設置するステップは、ダイボンダ等の適切な手段を用いて実行できる。
【0016】
プローブカードの損傷プローブを修復するための方法も開示する。かかる方法は、基板に接続された複数の操作プローブと、基板に接続された複数の代替プローブとを含むプローブカードの損傷プローブを修復し、該複数の操作プローブと該複数の代替プローブは実質的に同じ製造工程で作製される。かかる方法は、損傷した操作プローブを特定するステップと、該損傷した操作プローブを該プローブカードから除去するステップと、複数の代替プローブのいずれか1つを該基板から分離するステップと、該複数の代替プローブから分離した該1つのプローブを、該損傷した操作プローブを除去した箇所に設置するステップとを含む。この実施形態の改良として、該複数の代替プローブは、電圧の印加によって活性化する剥離層を備え、該複数の代替プローブから該1つのプローブを分離するステップは、該1つのプローブに電圧を印加することと、該1つのプローブをエッチング液に曝すことと、さらに含む。また、該複数の代替プローブから該1つのプローブを分離するステップは、機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、犠牲層エッチング、及びそれらの組み合わせによって実行でき、且つ該プローブカードを使用のために載置する前に実行できる。分離された該1つのプローブを設置するステップは、ダイボンダ等の適切な手段を用いて実行できる。最後に、該損傷した操作プローブを除去するステップは、機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、及びそれらの組み合わせによって果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】複数の操作プローブと複数の代替プローブの両方を備える新規なプローブカードを示す図である。
【図1B】複数の代替プローブと複数の操作プローブとを、図1よりも高い倍率で示す図である。
【図2A】剥離層を備える新規なカンチレバー型プローブの構造を示す図である。
【図2B】剥離層を備える新規なカンチレバー型プローブの構造を示す図である。
【図2C】剥離層を備える新規なトーション型プローブの構造を示す図である。
【図2D】剥離層を備える新規なトーション型プローブの構造を示す図である。
【図3A】カンチレバー型プローブの台座に電圧活性化剥離層を具備する新規なプローブカード設計を示す図である。
【図3B】カンチレバー型プローブ全体が電圧活性化犠牲材料からなる新規なプローブカード設計を示す図である。
【図3C】新規なプローブカード設計で、損傷プローブが除去され代替プローブが設置される様子を示す図である。
【図4A】トーション型プローブの台座に電圧活性化剥離層を具備する新規なプローブカード設計を示す図である。
【図4B】新規なプローブカード設計で、損傷したトーション型プローブが除去され、旋回軸を維持している様子を示す図である。
【図4C】新規なプローブカード設計で、損傷プローブが除去され代替プローブが設置される様子を示す図である。
【図5】損傷プローブを除去するための新規な方法の概要を示すフローチャートである。
【図6】損傷プローブを修復するための新規な方法の概要を示すフローチャートである。
【図7A】カンチレバー型設計を採用した先行技術のプローブを示す図である。
【図7B】カンチレバー型設計を採用した先行技術のプローブを示す図である。
【図8】トーション型設計を採用した先行技術のプローブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
プローブカードを含む半導体試験用MEMSシステムを修復するための新規な装置及び方法を開示する。図1Aはプローブカード(100)を示す図であり、プローブカード(100)は20個の単独ダイプローブ領域(105)を含み、20個のダイを同時に試験できる。それぞれのダイプローブ領域(105)は複数の操作プローブ(110及び112)を有し、ダイの試験においてはそれらの操作プローブを診断用コンピュータに接続できる。かかるプローブカードを製造する際には複数の代替プローブ(115及び120)も製造する。操作プローブという用語は、ダイの試験に使用することを意図したプローブを意味し、代替プローブは、後で損傷した代替プローブを修復する際に使用するプローブである。もちろん、損傷した操作プローブの修復に使われる代替プローブは操作プローブとしてダイ試験に使われることになる。
【0019】
かかる新規なプローブカードの製造には数通りの方法があり、犠牲層による多段階フォトリソグラフィ(又はX線リソグラフィ)を含む場合がある。例えば、特許文献2に記載の方法では多数のマスク曝露によって事実上自由な三次元形状を作ることができる。この場合はまず、基板表面上にメッキベースを設け、このメッキベースにフォトレジスト層を塗布する。フォトレジストを一定のパターンで放射線に曝露し、曝露パターン(すなわちマスク)で溶解するようにする。このフォトレジストを除去し、除去した箇所のメッキベースに第1の金属層を電気メッキする。そして残りのフォトレジストを除去する。第1の一次金属層を覆って取り囲むため、第1の二次金属層をメッキベースに電気メッキを施す。この二次金属は、一次金属を実質的にエッチングせず、差別的にエッチングできるものを選ぶ。さらに、二次金属の露出面を平坦な表面に機械加工し、第1の一次金属層が露出する高さにする。このマスキングと機械加工と電気メッキからなる工程を所望の構造が形成されるまで繰り返す。特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6に開示されている方法等、その他の方法は当業者には明らかであろう。
【0020】
特許文献2に記載の工程では、プローブ構造が完成するまで層ごとにプローブ構造を構築していく。複数の操作プローブと代替プローブの両方を同じ製造過程で製造することもできる。例えば、操作プローブと代替プローブのプローブ台座を同じ層に作ってもよい。同様に、カンチレバー型設計によるプローブ屈曲素子やトーション型設計によるトーション素子を同じ層に作ってもよい。
【0021】
加えて、代替プローブ(115及び120)と操作プローブの設計を統一することもできる。具体的には、複数の操作プローブ(110及び112)を含む単一ダイプローブ領域(105)を図1Bに示す。ダイの試験においては、それらの操作プローブを診断用コンピュータへ接続できる。複数の代替プローブ(115及び120)も示してある。代替プローブ(115)の設計は操作プローブ(110)の設計と同じであり、代替プローブ(120)の設計は操作プローブ(112)のそれと同じである。
【0022】
プローブカードを製造した後にウェハ基板から代替プローブを分離できる。かかる分離は、プローブカードを使用のために載置する前に行うことができ、その場合は後での使用のためにプローブを保管する。あるいはカードを使用のために載置した後に代替プローブを分離してもよい。また、全ての代替プローブを除去したり、修復に必要な数だけ除去してもよい。
【0023】
代替プローブの除去には数通りの方法がある。その1つの方法を図2Aに示す。基板(200)上に搭載したカンチレバー型プローブ(205)を示してある。このプローブ(205)は剥離層(210)を具備する。図2Bに示すように、この剥離層によって代替プローブ(215)全体を基板(200)から分離することができる。図2Cはトーション型プローブ(230)に応用された剥離層(225)を示す図である。ここでも、剥離層(225)を用いることで代替プローブ(230)全体を基板(235)から分離することができる。剥離層は、代替プローブ構造の作製後にエッチングされる犠牲層でもよく、電圧印加とエッチング液によって活性化される犠牲層を含んでもよい。非特許文献1を参照されたい。かかる新規なプローブカードに複数の代替プローブに至る独立した電気的接続を設けると有利である。そうすることで、代替プローブに選択的に電圧を印加でき、液中では代替プローブの剥離層に限って選択的にエッチアウェイされる。
【0024】
代替プローブを備えた新規なプローブカードにはいくつかの利点がある。第1に、操作プローブと代替プローブは実質的に同じ製造工程で製造されるため、両プローブの公差は、全く同じではなくともほぼ同じにはなる。第2に、同じ製造工程で製造される代替プローブと操作プローブの材料特性は、同じか、またはほぼ同じになる。第3に、代替プローブと操作プローブの設計は同じになる。第4に、操作プローブと共に作製される代替プローブのコストはごくわずかである。第5に、代替プローブは予め用意されているため、損傷した操作プローブの修復にかかる時間は格段に短縮される。最後に、損傷した操作プローブの修復にかかる時間とコストが抑えられるため、新規なプローブの使用効率は格段に向上する。
【0025】
現在の手法では、それらの利点を求めることはできない。現在の手法で代替プローブを作製するのは、当初のプローブカードが使用のために載置された後である。それには、必要とされるごく少数の代替プローブに合わせて機械加工を変更しなければならないため、数週間を要する。当然ながら、少数の代替プローブの作製に機械が独占され、時間と費用がかかり、機械はラインから外され、他のプローブカードは製造できなくなる。さらに、代替プローブを別の製造工程で製造すると、損傷していないプローブと代替プローブの材料特性に大きなばらつきが生じる。材料のばらつきにより、無損傷プローブに比べて代替プローブの性能に影響を与える可能性がある。最後に、代替プローブの公差は無損傷プローブのそれと異なる。プローブカードを最初に製造する際には、種々の構造間に不整合性が生じる。ただし、全てのプローブが同じ製造工程で製造されるとすれば、不整合性はプローブカード上の全てのプローブに共通する。不整合性が共通であれば各プローブはほぼ同じ性能を発揮し、不整合性を是正するためにプローブカードを調整することもできる。しかし、別の製造工程で作製される代替プローブの不整合性は、無損傷プローブのそれと異なったものとなる。このため、代替プローブと無損傷のプローブとで性能に違いが生じる。通常、プローブ性能のばらつきは非効率的で容認されない。特に、台座、旋回軸、先端部の3点で整合性が要求されるトーション型プローブ設計の場合は、損傷プローブとの不均一な整合性の問題が重大となる。
【0026】
以下に、修復可能な新規なプローブカードを開示する。プローブカードは数個の(場合によっては数千の)プローブを有する非常に複雑な構造物であり、各プローブは診断用コンピュータに至る独立した電気的接続を有することがある。次に、この複雑な構造を使用する新規なプローブカードを開示する。具体的には、図3Aのカンチレバー型プローブ(305)を備えるプローブカード基板(300)を参照する。プローブ(305)は、電圧によって活性化する犠牲材料でできた剥離層(310)を具備する。この種の材料については上述した通りである。非特許文献1も参照されたい。損傷が確認されたプローブには電圧を印加し、エッチング液に曝す。種々のプローブに至る独立した電気的接続がプローブカードに用意されていれば、損傷プローブに対して選択的に電圧を印加でき、液中の剥離層は選択的にエッチアウェイされる。剥離層がエッチアウェイされた後に基板から損傷プローブを除去する。図3Bに示す実施形態では、カンチレバー型プローブ(310)全体が電圧活性化犠牲材料からなる。損傷プローブを除去した後に代替プローブ(315)を設置できる。代替プローブ(315)からプローブカードにかけての良好な電気的接続を果たすための箇所を用意するため、プローブパッド(320)を現状のまま残しておくことが望ましい場合もある(図3C参照)。通常、プローブパッド(320)は金等の高導電性材で製造され、上述の工程ではエッチアウェイされない。電圧活性化エッチング材を使用する前に、損傷プローブの一部を機械的に剪断もしく摘取するか、レーザ切断することが望ましい場合もある。
【0027】
前述したカンチレバー型プローブ設計と同様、修復可能なトーション型プローブ設計を図4Aから4Cに示す。図4Aではトーション型プローブ(400)が基板(405)上に装着されており、プローブ台座は剥離層(410)を具備する。剥離層(410)は電圧活性化犠牲材料からなる。この種の材料は上述した通りである。また非特許文献1も参照されたい。損傷が確認されたプローブには電圧を印加し、エッチング液に曝す。種々のプローブに至る独立した電気的接続がプローブカードに用意されていれば、損傷プローブに対して選択的に電圧を印加でき、液中の剥離層は選択的にエッチアウェイされる。剥離層がエッチアウェイされた後に基板から損傷プローブを除去する。電圧活性化エッチング材を使用する前に、損傷プローブの一部を機械的に剪断もしくは摘取するか、レーザ切断することが望ましい場合もある。
【0028】
図4Bはプローブ(400)が除去された基板を示す。プローブ旋回軸(415)とプローブパッド(420)は現状のまま残っているため、代替プローブ(425)からプローブカードにかけて良好な電気的な接続を果たすことができる。図4Cではプローブパッド(420)に代替プローブが設置されている。
【0029】
図5は損傷プローブを除去する方法を示す図である。最初に電圧活性化犠牲材料を備えるプローブカードを製造し(500)、使用のために載置する(505)。かかるプローブカードについては図3Aから4Cを参照しつつ説明した通りである。ユーザは使用中のプローブカードで不具合に気付くことがある(510)。これは、ある特定のダイプローブ領域で極端に多い偽陽性を発生することによって判明することがある。つまり、プローブカード上の特定の箇所で絶えず欠陥DUTが記録される状態である。あるいは、ユーザが定期的に組み立てラインからプローブカードを取り除き、平面性試験、診断試験、目視点検を行うことで判明する場合もある。非効率に気付く手段が何であっても、損傷プローブも特定されることになる(515)。そこで損傷プローブに電圧を印加し(520)、エッチング液(525)に曝す。次にプローブカード基板から損傷プローブを除去する(530)。この時点でプローブカードを修復できる(535)。プローブカードを修復する方法の1つを以下で説明する。
【0030】
図6を参照し、損傷した操作プローブを修復する方法を開示する。まずは操作プローブと代替プローブとを備えるプローブカードを製造し(600)、使用のために載置する(605)。かかるプローブカードについては図1Aから2Dを参照しつつ説明した通りである。ユーザは使用中のプローブカードで不具合に気付くことがある(610)。これは、ある特定のダイプローブ領域で極端に多い偽陽性を経験することによって判明することがある。言い換えると、プローブカード上の特定の箇所で絶えず欠陥DUTが記録される状態である。あるいはユーザが定期的に組み立てラインからカードを取り除き、平面性試験、診断試験、目視点検を行うことで判明する場合もある。非効率に気付く手段が何であっても、損傷した操作プローブも特定されることになる(615)。損傷プローブは除去しなければならない(620)。機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、犠牲層エッチング、ならびにそれらの組み合わせを含み、またそれらに限定されない、何らかの適切な手段によって損傷した操作プローブを除去できること(622)は、当業者には明らかであろう。損傷した操作プローブを除去した後に代替プローブを設置しなければならない。そのため、最初に代替プローブを用意しなければならない(625)。それには、カードを使用のために載置する前に基板から代替プローブを分離し(630)、後で使用できるように保管する(635)。あるいは、カードを使用のために載置した後に代替プローブを基板から分離することもできる(640)。機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、犠牲層エッチング、ならびにそれらの組み合わせを含み、ただしそれらに限定されない、何らかの適切な手段によって、代替プローブをステップ630又は640で基板から分離できること(645)は、当業者には明らかであろう。代替プローブは、損傷した操作プローブを除去した箇所に設置できる(650)。これはプローブパッドに直接設置できる。ダイボンディングを含み、ただしこれに限定されない、代替プローブの設置に適した種々の手段は、当業者には明らかであろう。例えば、Semiconductor Equipment CorporationのModel 860 Eagle Omni Bonderを参照されたい。
【0031】
代替プローブを設置したら、代替プローブを、場合によってはプローブカード全体を試験し、運用公差と仕様を満たしていることを確認する(655)。代替プローブ/プローブカードが公差と仕様を満たしていれば、プローブカードの使用を再開する(660)。満たさない場合は、公差と仕様を満たすまでプローブカードを調整するが(665)、これは代替プローブの交換をともなう場合がある。
【0032】
本発明による方法及び構造をいくつかの好適な実施形態を参照しつつ詳細に説明したが、添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱しない範囲で変形及び変更が可能であることは明らかであろう。さらに、本出願人は添付の請求の範囲と「明細書の実施形態が厳密に同延である」ことを意図しないことを明言する(Phillips v. AHW Corp., 415 F.3d 1303, 1323(Fed. Cir. 2005) (en banc)の事例参照)。
【符号の説明】
【0033】
100 プローブカード
105 ダイプローブ領域
110、112 操作プローブ
115、120、215、315、415 代替プローブ
200、235、405 基板
205、305、310 カンチレバー型プローブ
210、225、410 剥離層
230 トーション型プローブ
300 プローブカード基板
320、420 プローブパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードであって、前記プローブカードは、
基板と、
前記基板に接続され、前記診断用コンピュータと電気的に接続するように構成された複数の操作プローブと、
前記基板に接続された複数の代替プローブとを備え、
前記複数の操作プローブと前記複数の代替プローブが実質的に同じ製造工程で作製されること、
を特徴とするプローブカード。
【請求項2】
前記製造工程が、マスキング、機械加工、電気メッキ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されること、を特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項3】
前記複数の操作プローブと前記複数の代替プローブがトーション型プローブ設計からなること、を特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項4】
前記複数の操作プローブと前記複数の代替プローブがカンチレバー型プローブ設計からなること、を特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項5】
前記複数の代替プローブが剥離層を備えること、を特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項6】
前記剥離層が電圧の印加によって活性化されること、を特徴とする請求項5に記載のプローブカード。
【請求項7】
半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードであって、前記プローブカードは、
基板と、
前記基板に接続され、前記診断用コンピュータと電気的に接続するように構成された複数の操作プローブとを備え、
前記複数の操作プローブが、電圧の印加によって活性化する犠牲材料を備えること、
を特徴とするプローブカード。
【請求項8】
半導体ウェハ試験において診断用コンピュータと併せて使用するプローブカードであって、前記プローブカードは、
基板と、
前記基板に接続され、前記診断用コンピュータと電気的に接続するように構成された複数の操作プローブとを備え、
前記複数の操作プローブが、電圧の印加によって活性化する剥離層を備えること、
を特徴とするプローブカード。
【請求項9】
プローブカードから損傷プローブを除去する方法であって、前記プローブカードは、基板に接続された複数の操作プローブを備え、前記複数の操作プローブは前記損傷プローブと、電圧の印加によって活性化する犠牲材料とを備え、
前記方法は、
(a)前記損傷プローブを特定することと、
(b)前記損傷プローブに前記電圧を印加することと、
(c)前記損傷プローブをエッチング液に曝すことと、
(d)前記損傷プローブを前記プローブカードから除去することと、を含むこと、
を特徴とする方法。
【請求項10】
前記プローブカードは前記基板へ接続された複数の代替プローブをさらに備え、前記複数の操作プローブと前記複数の代替プローブは実質的に同じ製造工程で作製され、
前記方法は、
(e)前記複数の代替プローブのいずれか1つを前記基板から分離するステップと、
(f)ステップ(e)で分離した前記1つのプローブを、ステップ(d)で前記損傷プローブを除去した箇所に設置するステップと、をさらに含むこと、
を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の代替プローブは第2の電圧の印加によって活性化する剥離層を備え、
前記方法のステップ(e)は、
(e)(1)前記1つのプローブに前記第2の電圧を印加することと、
(e)(2)前記1つのプローブを第2のエッチング液に曝すこと、をさらに含むこと、
を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(e)の分離方法が、機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、犠牲層エッチング、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されること、
を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プローブカードが使用のために載置される前に前記方法のステップ(e)が実行されること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記方法のステップ(f)がダイボンダを用いて実行されること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
プローブカードの損傷プローブを修復するための方法であって、前記プローブカードは、基板に接続された複数の操作プローブと、前記基板に接続された複数の代替プローブとを備え、前記複数の操作プローブと前記複数の代替プローブは実質的に同じ製造工程で作製され、
前記方法は、
(a)前記損傷プローブを特定するステップと、
(b)前記損傷プローブを前記プローブカードから除去するステップと、
(c)前記複数の代替プローブのいずれか1つを前記基板から分離するステップと、
(d)ステップ(c)で分離した前記1つのプローブを、ステップ(b)で前記損傷プローブを除去した箇所に設置するステップと、をさらに含むこと、
を特徴とする方法。
【請求項16】
前記複数の代替プローブは、電圧の印加によって活性化する剥離層を備え、
前記方法のステップ(c)は、
(c)(1)前記1つのプローブに前記電圧を印加することと、
(c)(2)前記1つのプローブをエッチング液に曝すこと、をさらに含むこと、
を特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)の分離方法が、機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、犠牲層エッチング、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されること、
を特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記プローブカードが使用のために載置される前に前記方法のステップ(c)が実行されること、を特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記方法のステップ(d)がダイボンダを用いて実行されること、を特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)の前記除去方法が、機械的摘取、機械的剪断、レーザ切断、電圧活性化エッチング、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されること、
を特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−533861(P2010−533861A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516962(P2010−516962)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/073579
【国際公開番号】WO2009/011696
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508034565)タッチダウン・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】