説明

微生物回収用部材、及び免疫測定装置

【目的】 高精度かつ迅速な免疫測定を自動的に行うことのできる免疫測定装置を提供する。
【構成】 免疫測定対象微生物を含む試料液のろ過部101と、濃縮液生成部102と、免疫測定対象微生物を反応液中に回収する回収容器103と、回収された微生物の超音波破砕を行って微生物内の抗原を反応液中に拡散させる超音波破砕部105とにより構成される前処理装置と、反応液中の抗原とその抗体とを抗原抗体反応させる免疫反応装置111と、免疫反応により生成した抗原抗体複合体と発光試薬とを反応させる発光反応装置115と、免疫測定に用いる器具の移動装置と、各装置を制御して微生物の免疫測定を自動化する制御部とを備えた免疫測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫測定装置に関し、特に、免疫測定を自動化した免疫測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原量または抗体量を測定する定量法である免疫測定法は、測定対象と測定方法と反応形式等に基づいて様々な免疫測定法に分類できるが、その原理は抗体抗原反応に基づいている。
【0003】
従って、ラジオアイソトープを用いない非放射性免疫測定法や非標識免疫測定法は、最終的な測定系が異なるだけで各免疫測定法の操作には、それほど大きな違いはない。
【0004】
このような免疫測定は種々の分野で求められている。以下に免疫測定を大腸菌群の測定に応用する例を挙げる。
【0005】
我が国では下水処理場において処理された放流水中の大腸菌群数は3000個/(ml)以下でなければならないと定められている(下水道法)。
【0006】
そのため、各下水処理場では処理水を最終的に塩素と接触させて滅菌した後、放流するようにしている。現在、大腸菌群数の定量試験としては、デスオキシコール酸塩培地による平板培養法、最確数法(MPN法)、メンブレンフィルタ法などがある。このうち下水の水質の検定方法に関する省令および環境庁長官が定める排水基準に係わる検定法では、デスオキシコール酸塩培地による平板培養法が、また、水質汚濁に係わる環境基準では、最確数法(MPN法)が公定法として定められている。
【0007】
デスオキシコール酸塩培地による平板培養法(以下、デソ法と記載する)は、市販されているデスオキシコール酸塩培地を用い、平板培養したときに発生する大腸菌群固有の定形型コロニーを求めることによって測定対象中の大腸菌群数を求める方法である。その操作手順を以下に示す。
【0008】
(1)シャーレ2枚以上に試料名と希釈倍率を記入する。この場合、培養後の1シャーレ内のコロニー数が30〜300個の範囲に入るように数段階の希釈試料について培養する。
【0009】
(2)メスピペットを用いて試料を1(ml)正しく取り、無菌的にそれぞれのシャーレに入れる。
【0010】
(3)約45℃に保温したデスオキシコール酸塩培地を10(ml)ずつ無菌的にそれぞれのシャーレに加える。
【0011】
(4)寒天が固まらないようにシャーレを注意しながら前後左右に回転しながら試料と培地を十分に混和し、シャーレ一面に良く分散させた後、水平板上に静置し放冷する。
【0012】
(5)さらに培地5〜10(ml)を加え重層させる。
【0013】
(6)培地が完全に固まったらシャーレを逆さまにして35〜37℃で18〜20時間培養する。
【0014】
(7)培養後、赤色〜深紅色を呈する定形型コロニー(円形状または米粒状)を計数し、試料1(ml)中の大腸菌群数を求める。尚、疑わしいコロニーについて白金耳でBGLB発酵管に接種後、35〜37℃で48時間培養し、ガス発生のあったものは大腸菌群陽性とする。
【0015】
現在、大腸菌群の測定を短時間で行うとともに、測定を自動化して省力化を図ることが望まれているが、上記デソ法は操作が煩雑で熟練を要するばかりでなく、測定結果がでるまでに18時間以上要するので、今までその測定結果を塩素の注入指標にすることができなかった。従って、現状では適正な塩素の注入量制御が行われていないのが実状である。
【0016】
そこで、測定の自動化を行って省力化及び測定時間の短縮が望まれているが、上記測定方法では自動化が困難であるうえ、18〜20時間程度の培養を必要とするので、原理的に測定時間をこれ以上短縮することは不可能である。
【0017】
従って、免疫測定を応用して大腸菌群の測定を自動化するとともに、測定時間を短縮することが望まれている。
【0018】
このように、大腸菌群の測定にとどまらず、種々の分野に免疫測定を応用するために、短時間でかつ自動的に測定を行うことができる免疫測定装置が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、従来の免疫測定方法では測定に長時間を要するとともに、自動化を図ることは困難である。
【0020】
そこで、本願の出願人は先に特願平4−112478号、特願平4−112479号に等において、抗体結合固相調製法により、抗体を結合した試験管(回収容器)を抗原抗体反応の反応容器とした免疫測定方法を提案した。
【0021】
尚、上記抗体を結合した反応容器は、ポリスチレン製の試験管に予め溶液中の測定対象抗原のみに特異的に反応する抗体を結合させた抗体結合固相を調製して抗体を結合させることにより得られる。以下にその概要を示す。
【0022】
図41にマーカー(特に酵素)標識抗体、発光物質及び抗体結合した試験管による発光免疫測定法による溶液中の微量な抗原量の測定手順を示す。尚、上記抗体を結合した試験管は、ポリスチレン製の試験管に予め溶液中の測定対象抗原のみに特異的に反応する抗体を結合させた抗体結合固相を調製して抗体を結合させることにより得られる。
【0023】
(1)試験管に、測定対象抗原を含む溶液を一定量分注する。
【0024】
(2)一定温度で一定温時間インキュベーション(定温放置)する。
【0025】
(3)酵素標識抗体を器具を用いて手作業で(2)に一定量分注する。
【0026】
(4)一定温度で一定時間インキュベーションする。
【0027】
(5)この試験管を洗浄する。
【0028】
(6)酵素標識抗体と反応して化学発光する発光試薬溶液を(5)に一定量分注する。
【0029】
(7)(6)での化学発光量をセンサで検出する。
【0030】
上記(2)の操作では抗体抗原反応により抗体結合固相に抗原が結合し、上記(4)の操作では抗体−抗原−酵素標識抗体というサンドイッチ構造の複合体が形成される。
【0031】
(7)の操作においては抗体−抗原−酵素標識抗体というサンドイッチ構造の複合体と発光試薬との反応による化学発光の発光量を定量している。その発光量と、予め求めておいた酵素標識抗体濃度と発光量の検量関係とから、抗体−抗原−酵素標識抗体の濃度(すなわち溶液中の抗原濃度)を定量できる。
【0032】
このように免疫測定を行う際には溶液の定量が重要となり、測定に用いる容器としては精度が高く、取り扱いが容易なものを用いることが好ましい。
【0033】
試料液を入れる容器としては、ビーカ、三角フラスコ、またはこれらに近い形の容器が市販されており、入手も容易なので免疫測定の一部またはすべての測定を自動化した装置ではこれらの容器を使っている。
【0034】
また、免疫測定では抗原抗体反応を利用して微生物の定量を行う。その際に免疫測定に十分な濃度にまで試料液を濃縮する必要がある。従来の濃縮過程の説明図を図42に示す。
【0035】
この図に示されるように、まず濃縮する試料液を濃縮機にセットしたフィルタ4にかけて減圧ろ過し、ろ過によって生物(主に微生物、以下、ろ過対象となる生物を一括して微生物と記載する)を捕獲したフィルタ4をビーカ5に入れる。さらに緩衝液とビーズ2とを入れて振とう器6で振とうし、フィルタ5についている微生物を洗い落として緩衝液中に分散して回収する。
【0036】
その後に、微生物が回収された緩衝液を別の容器に移して濃縮液とする。この際、もとの試料液と緩衝液との比率により濃縮倍率が定まる。通常はもとの試料液と緩衝液との比率をそのまま濃縮倍率とする。
【0037】
このような免疫測定方法によれば、大腸菌群等の測定を2時間程度で行うことも可能である。
【0038】
しかし、上記のような短時間でできる免疫測定は手作業で行わざるを得ない。このように人的操作がなされるかぎり、偶然誤差や系統的誤差が必ずつきまとうので測定精度のバラツキや測定精度の向上に限界がある。
【0039】
特に、標識マーカー(特に酵素)と発光物質及び抗体結合固相を用いた発光免疫測定法による溶液中の微量な抗原量の測定は複雑で煩雑な手順からなり、高い精度を得ることは困難である。
【0040】
従って、免疫測定を自動化して測定精度を高くすることが求められている。現在、免疫測定の一部は汎用の装置によって自動化できるものもあるが、これらの装置においては以下のような課題が挙げられる。
【0041】
人間がろ過の操作を行うことは難しいことではないが、現状のままでは自動化の要求に応えられない。それは、これらの器具が自動化ができる形状・機構になっていないためである。よって、自動化のための工夫された形状・機構が求められる。
【0042】
また、濃縮工程においては決められた数のビーズをビーカ内に出し入れする必要があるが、この工程は繁雑なうえ時間がかかる。特に、免疫測定装置によって免疫測定を自動化するにあたっては、この工程の自動化はコストがかかる。
【0043】
更に、容器を振とうして緩衝液中に微生物を回収した後に濃縮液を抜き取る際には、吸引用のノズルをロボット等で操作するが、ビーカ内のビーズにノズル先端があたりノズルを破損したり濃縮液を完全に抜き取れない可能性がある。
【0044】
これは、振とう操作をした後ではビーズがどの位置にあるかが不確定なことに起因する。このようなことをなくすためには、振とう後ビーズを取り除けば良いが、これを機械化するには非常にコストがかかる。
【0045】
本発明は上記背景の下になされたものであり、手作業の煩雑さを極力排除した免疫測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0046】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、請求項1記載の発明は、フィルタの保持を自動で行うフィルタ保持装置及びろ過後のフィルタを前記フィルタ保持装置とともに移動させる作業を自動で行うフィルタ移動装置を有する自動吸引ろ過装置に用いる前記フィルタ保持装置であって、前記フィルタを配置する円形平面状のフィルタ固定部と、フィルタを吸引して前記フィルタ固定部に移動させる減圧ポンプに接続するコネクタと、前記フィルタ固定部表面の中心点に対して円周上に設けられた、前記減圧ポンプに通じる複数個の空気導入孔と、ろ過後に前記フィルタ上に堆積した堆積物と当該フィルタ保持装置の部材とが接触するのを防ぐために設けられた前記フィルタ固定部上の一定の間隙と、前記フィルタ移動装置がつかむピックアップ受けと、を有することを特徴とするフィルタ保持装置を提供する。
【0047】
請求項1記載のフィルタ保持装置では、フィルタを確実に、かつフィルタに捕獲された物質に触れることなく、そのままの状態で保持することができる。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明によれば以下のような効果が得られる。
【0049】
フィルタ全体を吸着して保持するフィルタ保持装置が得られるので、所定の位置から所定の位置への移動が簡単にできる。例えば、フィルタ置き場から、フィルタをろ過器の所定の位置へ置くとか、フィルタをビーカの底面に正確に置くことができる。したがって、フィルタの位置決め精度が高くなる。
【0050】
特に、フィルタ移動時において、フィルタろ過面が水平に保たれたまま、移動できるピンセットでフィルタをつかんで移動する場合を考えると、フィルタを一ヶ所つまんだ場合にフィルタ面は地面に対して垂直になり、フィルタろ過面に付着している物質が落下する可能性もある。これに対して水平に移動していればその心配はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
実施例1
本実施例に係る免疫測定装置の要部構成を図1に示す。なお、移動装置及び制御装置は図示省略した。
【0052】
この免疫測定装置は、ろ過部101と、濃縮液生成部102と、超音波破砕部105からなる前処理装置106を有し、また、免疫反応装置111、発光反応装置116、及び図示省略した移動装置及び制御装置を有する。
【0053】
超音波破砕部105は第1の回収容器103、超音波発生部104を備え、免疫反応装置111はノズル部107、標識抗体注入部108、振とう部109、第2の回収容器110を備える。この第2の回収容器110の内壁には抗体が固定されており、固相抗体として作用する。
【0054】
発光反応装置115は洗浄部112、発光反応測定部113、発光試薬注入部114を備える。
【0055】
以下、この免疫測定装置における制御部の具体的な動作を説明する。
【0056】
1.前処理装置106における動作
試料液がろ過部101にセットされたことを検出してろ過部101を作動し、試料液中の微生物をろ過膜(フィルタ)上に捕獲する。その後、ろ過の終了を検出し、濃縮液生成部102を作動する。作動された濃縮液生成部102は、微生物の濃縮液を生成するとともに、生成された濃縮液を第1の回収容器103に注入する。
【0057】
濃縮液が注入されたことを検出した後に、超音波発生部104を作動して超音波破砕を行う。
【0058】
更に、超音波破砕の終了を検出し、移動装置を制御してノズル部107を第1の回収容器内102に移動させ、超音波破砕後の濃縮液(以下、反応液とする)を吸引させた後に第2の回収容器110内に移動させて反応液をこの回収容器内に注入させる。
【0059】
2.免疫反応装置111における動作
第2の回収容器110内に反応液が注入されたことを検出し、振とう部109を作動させ、反応液内の抗原と第2の回収容器内壁に固定された抗体とを反応させる(第1反応)。
【0060】
次に、第1反応の終了を検出した後に標識抗体注入部108を作動して第2の回収容器110内に標識抗体を注入し、再度振とう部109を作動して抗原抗体反応を進行させる(第2反応)。
【0061】
3.発光反応装置116における動作
上記第2反応が終了したことを検出し、移動装置によって第2回収容器110を洗浄部112に移動させ、反応液の除去及び洗浄を行う。そして、発光反応測定部113に第2の回収容器を移動させる。
【0062】
次に、発光反応試薬注入部115を作動させて発光試薬を第2の回収容器110に注入し、発光反応測定部113にて発光反応を測定させる。
【0063】
制御装置によってこのように制御を行うことで、免疫測定を迅速かつ高精度に行うことができる。
【0064】
実施例2
この実施例では前処理装置におけるろ過部の詳細を説明する。
【0065】
図2にろ過部を示す。
【0066】
ろ過器201と吸引フラスコ205を管で接続しておく。フラスコ内は減圧ポンプ(図示せず)により減圧状態にすることができる。ろ過器にろ過膜202(フィルタ)をセットして、測定する試料液を注ぐ。
【0067】
コック206を開けるとろ過が始まる(フィルタのメッシュの大きさは測定物質より小さいものを選ぶ)。免疫測定装置にてはこれらの減圧ポンプの作動及びコック206の開閉は制御装置で制御する。
【0068】
人間がろ過操作を行う場合、ろ過が終了したことを確認した後に、フィルタをビーカに移してガラスビーズ203と少量の液を入れて振とう器204で振とうさせる。フィルタの表面に付着した測定物質はガラスビーカでこすられてフィルタ表面から遊離して液中に分散する。この液を回収すれば測定物質の濃縮液ができる。(参考文献:日本ミリポア・リミテッド、メンブランフィルタによる微生物の簡易検査 技術文献(1992),山口辰良、一般微生物学、技報堂p15(1968)
しかし、免疫測定装置にて自動測定を行う場合には、フィルタ(ろ過膜)の保持及び移動を人力を用いずに行わねばならない。
【0069】
この実施例では、フィルタ保持装置(フィルタ吸着器)によってフィルタを保持し、移動装置によってフィルタ保持装置を移動することにより、フィルタを所定の場所に移動している。このフィルタ保持装置の構造を図3、図4、図5に示す。図3は図4のABC断面図、図5は図3を右横方向から見た図である。
【0070】
このフィルタ保持装置では、フィルタを負圧で吸い付けて移動させる。
【0071】
311は空気を吸引するための管をコネクタで接続するためのコネクタ穴であり、空気は、B点を中心として円周上にあいている空気の導入孔13から入り、通風口12に入って、さらに、コネクタで接続された管の先の減圧ポンプ(真空ポンプ)に接続される(図示省略)。
【0072】
また、移動装置がフィルタ保持装置を容易につかめるように、フィルタ保持装置にピックアップ受け16を設けた。これらを板15がつなげている。
【0073】
フィルタを捕獲する場合には、フィルタをD−D’面で吸着する。D−D’面は図6、図7、図8の形状とした。図6の形状では、直径1mmの導入孔613が20個開けてある。図7の形状では、半径1.5mmの半円の導入孔713が20個開けてある。図8の形状では、1mm幅の溝813を円周上に構成し空気の導入孔としている。
【0074】
図3のフィルタ保持装置は図6の形状を採用しており、、その空気導入孔部分を拡大したものが図9である。
【0075】
図10は、図6のE−E’断面図、図11は吸着するフィルタを立体的に模した図である。
【0076】
まず、直径47mm、厚さ0.4μmのフィルタを使って図6、図7、図8に示した3つの形状の空気導入孔を比較した。
【0077】
【表1】

【0078】
実験の結果、図6の形状のとき、フィルタの捕獲・解放が一番安定していた。
【0079】
図10は、フィルタを吸着している状態である。一方、図11のように、ろ過操作をしたあとのフィルタ表面には、測定物質1101が付着している。フィルタ保持装置は、フィルタと一定間隔を保つための空間14を設けて、これらの物質に直接触れないようにしている。
【0080】
また、移動装置のピックアップがつかみ易いように、ピックアップがつかむためのピックアップ受け16を用意した。このようなフィルタ保持装置によって、フィルタを確実に、かつフィルタに捕獲された物質に触れることなく、そのままの状態で保持することができる。
【0081】
特に、免疫測定装置にてはこのフィルタ保持装置を制御装置によって制御してフィルタを捕獲、解放するとともに、移動装置を制御してこのフィルタ保持装置を移動装置によって移動させることで、フィルタの移動及び捕獲、解放を人力を用いずに自動的に行うことができる。
【0082】
実施例3
免疫反応装置及び発光反応装置の装置構成を図12〜図19に示す。尚、図12〜図19において、1は試験管立て置き場(回収容器の保管部)、2は試験管(回収容器)、3はターンテーブル(振とう器)、4は試験管移動装置(移動装置;試験管移動ロボット)5は温度調節器、6は分注装置(発光試薬注入部)、7はバルブ、8はノズル及びノズル台、9は洗浄部、10は暗箱、11,12はシャッタ、13はセンサ、14は制御装置をそれぞれ示す。
【0083】
暗箱10、シャッタ11,12及びセンサ13によって発光反応装置が構成される。
【0084】
図12において、固相抗体を結合させた反応容器を兼ねる試験管2(図示省略)に測定対象抗原を含む溶液を一定量分注して図示を省略した試験管立てに入れる。その試験管立てを試験管立て置き場1に置く。その後、免疫測定装置にて以下の免疫測定操作を自動的に行う。
【0085】
試験管立て置き場1に置かれた試験管2を図12中に示される移動装置4によってターンテーブル3に一本ずつ運んで設置する。この操作は制御装置によってなされる。
【0086】
図13にこのターンテーブル3の上面図を示す。この図に示されるように、この試験管立てには複数の試験管2を立てることができる。
【0087】
図14に試験管2が設置されたターンテーブルの説明図を示す。ターンテーブル3に設置された各試験管2は一定時間インキュベーションされる(第1反応)。このインキュベーション中に、図示省略した駆動装置によってターンテーブル3の正転と逆転を繰り返すことにより各試験管2を振とうさせる。
【0088】
この際、図14に示されるようにターンテーブル2に内蔵されている温度調節器5を作動させて各試験管2の温度を一定に保つ。測定ごとに反応時の温度が異なると測定制度が低くなる。これら試験管の振とう及び温度制御はターンテーブル制御部にて行う。
【0089】
インキュベーションの終了後、図17に示される分注装置6と図5に示されるバルブ7とを作動して、ノズル8から標識抗体溶液を分注する。
【0090】
第1反応と同様にターンテーブル3に置かれた各試験管2を再度一定時間インキュベーションする(第2反応)。
【0091】
第2反応の終了後、図17に示される洗浄部9により各試験管2を一本ずつ洗浄する。
【0092】
洗浄後の各試験管2に標識抗体と同様に発光試薬溶液を分注する。上記試薬の及び試薬の注入、及びインキュベーションを試薬注入制御部にて行う。その後に制御装置によって移動装置4を作動させ、各試験管2を一本ずつ外光を遮断した暗箱10へ移動する。この暗箱を図18に示す。
【0093】
図18に示されるように、測定時には制御部によって暗箱10の上部のシャッタ11を閉じて暗箱10の側面に取り付けてあるセンサ13(光電子増倍管)のシャッタ12を開き、センサ13により化学発光量を測定する。
【0094】
化学発光量を測定した後に、移動装置を制御装置によって作動させ、各試験管2を試験管立て置き場1に置かれた試験管立てに戻す。
【0095】
このようにしてこれら一連の自動操作が図19の制御装置14で制御され、自動測定が行われる。
【0096】
次に、上記免疫測定装置における各部の構成例(または変形例)を説明する。
【0097】
(A)温度調節器の変形例
図14に示される温度調節器5はヒータを用いた例であるが、反応によっては冷却が必要となることがある。この変形例にては、ペルチェモジュールを用いた温度調節器の構成を示す。
【0098】
図20に温度調節器の概略構成図を示す。この温度調節器はペルチェモジュール15、冷却フィン16、モータ17、ファン18、温度センサ19、温度コントローラ20によって構成されており、ターンテーブル3の試験管設置部21の下部に設置されている。
【0099】
ペルチェモジュールは電位差によって温度差を生じる素子であり、試験管設置部21が適温になるように、温度コントローラ20によって以下のようにその電位差を制御する。
【0100】
温度コントローラ20は、温度センサ19によって試験管設置部21の温度を測定し、その温度が目標値より低いと判断した場合にはペルチェモジュールの試験管設置部21側が高温になるようにその電位差を制御する。
【0101】
試験管設置部21の温度が目標値よりも高い場合には、ペルチェモジュールの試験管設置部21側が低温になるようにその電位差を制御する。しかし、ペルチェモジュールの冷却フィン側の温度が目標値よりも高い場合は電位差を制御しても試験管設置部21の温度を目標値まで冷却することはできない。
【0102】
この場合にはモータ17を駆動して冷却フィン16を回転させるとともに、ファン18を駆動して冷却フィン16を冷やしてその温度が目標値より低くなるようにする。
【0103】
(B)試験管移動装置(移動装置)の構成例及び試験管(回収容器)の構成例
この構成例ではピックアップ部を2つの部材(ピックアップ部材a,b)で構成し、各部材の電気的な状態(例えば静電容量や抵抗値)を検出して試験管がピックアップされているか否かを検出した。図21にその1構成例を示す。
【0104】
図21において、2101はピックアップ部材a、2102はピックアップ部材b、2103はピックアップ部材aに取り付けられたリード線、2104はピックアップ部材bに取り付けられたリード線、2105〜2106は試験管、2108,2109は絶縁体を示す。
【0105】
この例では、ピックアップ部材2101,2102は試験管(回収容器)をピックアップしていない状態では絶縁されている。
【0106】
ここで、試験管をピックアップした状態でピックアップ部材a,bが導通されるような試験管を用意し、この試験管を用いることによって、試験管をピックアップしていない状態ではピックアップ部材a,bが絶縁され、試験管をピックアップした状態ではピックアップ部材a,bが導通する。
【0107】
従って、リード線2103,2104間の抵抗値を調べることで、試験管がピックアップされているか否かを容易に検出することができる。尚、この構成例では特殊な試験管を用意したが、通常の試験管を用いた場合でも、特殊な例を除いては、試験管をピックアップした状態とピックアップしていない状態では、リード線間の電気抵抗や静電容量は異なるので、その変化を検出することによってピックアップの成否を検出することができる。
【0108】
また、試験管の形状としては図23に示す形状が挙げられる。
【0109】
この構成例では、図23(c)に示すように試験管の上部に試験管の中心部を通るように溝部を形成した。このように溝部を形成することで試験管に弾性が生じ、ピックアップ部材が試験管をはさみこむ力Fを受けると円周面が内側に曲がってピックアップ部材の先端に反力を返す。
【0110】
このように外形変化によって生じる弾性(あそび)により、試験管をピックアップする際の力Fが必要以上に強くなっても、過剰な力は外形変化によって吸収され、ピックアップ部材が変形することは殆どなくなる。駆動源としてパルスモータを用いている場合にはパルス量を多くして力Fを大きくすることができる。
【0111】
この溝がない場合には、素材自体の弾性しか得られず、あそびが殆どないので力Fが大きくなると、過剰な力はすべてピックアップ部材にかかり、ピックアップ部材の変形を招いてしまう。
【0112】
また、試験管は中空となっているが、図23(b)のように円柱体のように中実のものを移動対象とする場合には、好ましくはその上部に垂直に孔部を形成して溝を形成する。この溝は孔部よりも短くすることが好ましい。
【0113】
(C)振とう器の構成例
振とう器で試験管を振とうした場合、試験管の移動等を行うためには振とう後の試験管の位置を検出する必要がある。その検出方法としては、モータの回転軸に遮光板を取り付け、フォトセンサ(光センサ)によってその遮光状態を検出して試験管の位置を検出する方法が挙げられる。
【0114】
図24にその位置検出機構の1例を示す。
【0115】
図24において131はフォトセンサ、132はきりかき付き円板(遮光板)、133はモータ、134は回転台である。きりかき付き円板132は図14のように特定の一部のみ光線を透過するようになっている。また、きりかき付き円板132はモータの回転軸に固定されているので、振とうを行うとモータとともに回転する。
【0116】
従って、振とう前の初期状態において光線が透過するように調製しておけば、フォトセンサによって光線が透過する状態でモータが止まるようにすることで、回転台をつねに初期状態と同じ位置で停止させることができ、自動的に試験管も位置決めされる。
【0117】
尚、図25では初期状態で光線が透過する構成としたが、透過光の状態によってモータの回転角が検出できる構成であればよく、例えば遮光板を棒状として試験管が位置決めされた位置にある状態では光源からの光線が遮光され、他の状態で光線が透過してフォトセンサで検出されるような構成としてもよい。
【0118】
(D)洗浄部の構成例
洗浄部は図26のように構成される。図26において151は三方バルブ、152はニードル、153は回収容器(この例では試験管)、154は洗浄液供給管、155は吸引管である。
【0119】
試験管を洗浄するには洗浄液供給管154からニードル152を通じて洗浄液を試験管153に注入し、洗浄を終えた後に試験管152中の洗浄液を廃液としてニードル152を通じて吸引管155から吸引除去する。
【0120】
しかし、1本のニードルを使って洗浄液の分離及び吸引を行う場合、三方バルブからニードルの先端までが未反応物で汚染されてしまい、正常なB/F分離を行うことは困難になる。このため、測定精度が低くなってしまう。
【0121】
特に複数の試験管の洗浄を行う場合には、ニードル152に付着した未反応物が他の試験管の洗浄液中に溶解し、測定精度が低くなる。
【0122】
この構成例では図27に示すように洗浄液注入用のニードル164、洗浄液吸引用のニードル165をそれぞれ用意してそれぞれ洗浄液注入及び洗浄液吸引を行うようにした。洗浄液注入時及び吸引時の拡大図を図28に示す。
【0123】
このように洗浄液の注入及び吸引をそれぞれ専用のニードルを用いて行うことで、未反応物による洗浄液注入用ニードルの汚染を防ぐことができ、測定精度も向上する。
【0124】
実施例4
この実施例では免疫測定における微生物回収工程を容易にし、かつ自動化にも適した微生物回収用部材を製造した。この部材は微生物を捕獲したフィルタから微生物を回収するものであり、回収容器(例えばビーカ)内にフィルタ及び回収液(通常は緩衝液)を入れ、この微生物回収用部材を入れて振とうすることによって微生物の回収を行う。
【0125】
この微生物回収用部材の正面図を図29に示す。図29は微生物回収用部材を示し、この微生物回収用部材はホルダ31、ビーズ32及び糸33からなる。ホルダ31には複数の糸33が結束されており、各糸の先端にはビーズ32が固定される構造となっている。
【0126】
この微生物回収用部材を用いて微生物の回収を行った。まず、試料液を減圧ろ過して微生物をフィルタ34に捕獲する。次に図30(a)に示すようにフィルタ34をビーカ35に入れる。
【0127】
さらに緩衝液と微生物回収用部材を入れて振とう器36で振とうし、フィルタ35についている微生物を洗い落として緩衝液中に分散して回収する。微生物を緩衝液中に回収した後に微生物回収用部材を取り除く。
【0128】
従来はビーズは1つ1つ分離しており、一挙に除去することはできなかった。これらビーズを入れたままで微生物を回収した緩衝液をノズル等によって吸引する場合、図30(b)に示すようにノズル37がビーズと接触する恐れがあり、ノズル37の破損が生じたり、回収容器内に吸引しきれなかった溶液が残ってしまうことがある。
【0129】
このため、ビーズを手作業で取り除くことが必要である。従来はこの工程をビーズを1つ1つ手作業で除去することにより行っており、非常に繁雑な作業が必要とされた。
【0130】
この実施例のような微生物回収用部材を用いた場合には、すべてのビーズをホルダ31ごと除去することができる。従って、この工程を容易に自動化することができる。
【0131】
また、図31に微生物回収用部材の変形例を示す。この微生物回収用部材は、ピックアップ受け(ホルダ)201に軸202を設け、この軸202に止めわ203を介して孔あき円板204(分散板)を接合したものである。
【0132】
図29の微生物回収用部材と同様に、図31の微生物回収用部材をフィルタ34ともに振とうさせることで、微生物を回収することができる。
【0133】
この例ではホルダ31及びピックアップ受け201を円筒形として、ロボットの指に相当するピックアップが容易につかめるようにした。免疫測定装置にて自動測定を行う場合は、免疫測定装置の移動装置が微生物回収用部材のホルダ31もしくはピックアップ受け201をつかんで微生物回収用部材をビーカ内に出し入れする。
【0134】
また、測定を自動化する場合には試料液や緩衝液をノズル等によって吸引、注入するので、ノズルのホルダ部も微生物回収用部材のホルダ部と同様に円筒形状をしていることが好ましい。このようなノズルの断面図及び移動装置のピックアップ断面図をそれぞれ図32(a)、(b)に示す。
【0135】
図32(a)においてノズル37及びホルダ39は固定台38によって固定されており、ホルダ39は微生物回収用部材のホルダ31と同様の形状をしている。また、図32(b)において40は移動装置のピックアップ部を示す。このように、微生物回収用部材のホルダ31及びノズルのホルダ39の形状を統一することで、溶液の回収、注入を共通の移動装置で行うことができる。
【0136】
実施例5
この実施例では免疫測定における溶液の吸引回収を容易にし、かつ自動化にも適した免疫測定用容器を製造した。この免疫測定用容器は、実施例1における第1の回収容器、第2の回収容器等に適用できる。
【0137】
この免疫測定を行うには溶液の扱いが重要であり、特に溶液を吸引回収する際には、容器内に回収しきれないで残る残液の量をできるだけ少なくすることが要求される。
【0138】
(α)
まず、溶液をノズルで吸引回収する際に、容器を傾けて吸引回収を容易とした例を示す。図33はその説明図である。この図に示されるように、容器を傾けることで容器底面の端部に溶液が集中して液面が上がる。容器を傾けない場合には残液の量は容器の底面積に比例して大きくなるが、このように容器を傾けることで、残液の量を少なくすることができる。
【0139】
例えば、微生物の回収を終えた溶液を吸引回収する場合には、図34のように振とう器36に、ころ41を設けるとともに振とう器の設置部に傾斜をつけ、微生物の回収を終えた後に振とう器を移動させることで自動的に容器35が傾くようにする。免疫測定を自動化する場合でも、このような振とう器の移動を容易に行うことができ、簡易な構成で測定精度を向上することができる。
【0140】
(β)
上記(α)の例では、振とう器にころ41を設置して振とう器を移動させる必要がある。この例では上記のような特別な部材や振とう器の移動等が不要な免疫測定用容器を製造した。その例を図35に示す。図35(a)はこの例に係る免疫測定用容器の上面図、図35(b)はそのA−A'断面図を示す。
【0141】
図35(b)に示されるように、この免疫測定用容器においては円柱面42に傾斜角を付けて底面43を設けており、(α)のように容器を傾けた場合と同様の効果が得られる。
【0142】
この免疫測定用容器は、例えば容器の壁面を形成する筒と、容器の底を形成する底板とを用意し、容器の底を斜めに傾けて接合することにより得られる。
【0143】
さらに、免疫測定用容器の外径D1、内径D2並びに高さHを決めておけば、底面の最下部にノズル37を位置決めして下ろすことで残液の量を最小とすることができる。
【0144】
(γ)
この例では免疫測定用容器の底面45にノズルが挿入できる程度の直径の凹部44を形成し、この凹部44にノズルを挿入して溶液を吸引するようにした。その例を図36に示す。図36(a)はこの免疫測定用容器の上面図、図25(b)はそのA−A'断面図を示す。
【0145】
図36(b)に示されるように、この免疫測定用容器では容器内の溶液量が少なくなると凹部44に溶液が集中し、残液は凹部44内に残る。先述したように残液の量は溶液の底面積に比例するが、この容器では凹部の底面積は非常に小さい。従って、残液の量は、通常の容器の残液に比較して非常に小さくなる。
【0146】
また、免疫測定を自動化する場合には、免疫測定用容器の外径D1、内径D2、高さH及び凹部44の中心と容器の中心との距離Rを測定しておき、ノズルが凹部の中心にくるように位置決めすることで、残液の量を最小とすることができる。
【0147】
特に、図37のように免疫測定用容器の底面に傾斜をつけて凹部44が最下部となるようにすることで、容器の凹部44以外の部分に溶液が残ることが無いようにすることもできる。この例では凹部を容器の端部に設けたが、凹部が最下部になるように傾斜をつけてあれば凹部の位置に制限はなく、例えば容器の中心と凹部の中心を一致させてもよい。
【0148】
実施例6
従来の大腸菌群試験は測定時間が長く、下水処理場における塩素注入量制御等に適用することは困難である。
【0149】
そこで、免疫測定法によって大腸菌群試験を行い、従来の測定法であるデスオキシコール酸塩培地による平板培養法(デソ法)との相関性を検証したところ、相関係数(r)が0.88(n=182試料)と高い相関性があることが実証できた。
【0150】
上記のように、デソ法では測定に20〜30時間程度かかるが、この免疫測定方法では2時間程度で測定を行うことも可能である。
【0151】
実施例1の構成の免疫測定装置はこの短時間測定可能な免疫測定方法に対応しているので短時間での免疫測定が可能である。実施例5では、その免疫測定具体例を示す。なお、免疫測定装置に用いる機器、部材、装置等は実施例2〜4に示したものを用いる。
【0152】
前処理装置における具体的処理手順を図38のフローチャートを参照して説明する。尚、以下の各フローチャートにおいて、装置の作動、停止等の制御処理はすべて制御装置が行い、移動処理はすべて制御装置により制御された移動装置が行う。また、移動装置は、実施例3の(B)に示したものを用いた。
【0153】
まず、ろ過膜及び試料液をセットする。これは手作業で行う。
【0154】
ろ過速度を速めるために、濃縮器内の試料吸引用の減圧ポンプを作動させる(S1)。
【0155】
試料の残量をセンサがチェックする(S2)。
【0156】
試料の残量が無いことを検出し(S3)、減圧ポンプの運転を停止する(S4)。
【0157】
ろ過膜保持装置によってろ過膜を捕獲し、移動装置によってろ過膜保持装置を濃縮液生成部内の容器内に移動し、ろ過膜を解放して容器内に移動させる(S5)。
【0158】
この容器に緩衝液2(ml)を注入し(S6)、移動装置によって実施例3に示した微生物回収用部材をセットする(S7)。
【0159】
実施例3(C)に示した振とう器の運転を開始する(S8)。振とう時間を検出し(S9)、所定時間(5分程度)経過後に振とう器を停止する(S10)。
【0160】
大腸菌群が濃縮された反応液を超音波破砕容器(第1の回収容器)に0.5(ml)分取する(S11)。
【0161】
超音波発生部を作動させ、超音波照射30秒、休止60秒の周期を10サイクル繰り返して大腸菌群を破砕する(S12)。破砕の終了を検出する(S13)。
【0162】
なお、超音波破砕中の反応温度は実施例3(A)の温度調節器(ペルチェモジュール)によって調整する。この制御も制御装置で行った。
【0163】
次に、免疫反応装置における具体的処理手順を図39のフローチャートを参照して説明する。
【0164】
まず、ノズル部を作動して第2の回収容器内に超音波破砕された反応液を0.5(ml)注入する(S14)。
【0165】
振とう器を作動させて第1反応を行う。(S15)
第1反応の終了を検出し(S16)、振とう器の運転を停止する(S17)。
【0166】
反応緩衝液0.5(ml)を第2の回収容器内に注入する(S18)。その後に標識抗体注入部を作動させて酵素標識抗体0.1(ml)を第2の回収容器に分注する(S19)。
【0167】
振とう器を作動させて第2反応を行う(S20)。第2反応の終了を検出して(S21)振とう器を停止させる(S22)。
【0168】
前処理装置と同様に、超音波破砕中の反応温度は実施例3(A)の温度調節器(ペルチェモジュール)によって調整する。
【0169】
発光反応装置における具体的処理手順を図40のフローチャートを参照して説明する。尚、発光反応測定部は、実施例3の図18に示されるセンサを有する暗箱を用いて行った。
【0170】
移動装置によって第2の回収容器を洗浄部に移動する(S23)。
【0171】
実施例3の(D)に示した洗浄装置を作動させて第2の反応容器中の反応液を吸引除去させ、更に蒸留水5(ml)を注入して除去する洗浄処理を5回繰り返す(S24)。
【0172】
発光試薬注入部を作動させて発光試薬1(ml)を第2の回収容器に注入する(S25)。
【0173】
図18の発光測定部のシャッタ11を開き(S26)、第2の回収容器をこの暗箱内の所定位置に移動させる(S27)。
【0174】
シャッタ11を閉じる
光電子増倍管(センサ)の前面に設置されているシャッタ12を開く(S29)。
【0175】
発光量を計測し、1秒間当たりの発光量を出力する。これを30秒間行う(S30)。
【0176】
発光量計測終了を検出して、発光量の計測を停止する(S31)。シャッタ12を閉じる(S32)。シャッタ11を明ける(S33)。
【0177】
第2の回収容器を暗箱から除去する(S34)。
【0178】
以上のように、制御装置によって各部を制御することで、人力を用いずに免疫の自動測定がなされる。また、上記各例ではすべての装置や部材等の移動には共通の移動装置を用いており、移動対象にはすべてホルダ部を設けて、このホルダ部を移動装置のピックアップ部がつかんで移動するようにしている。従って、移動対象ごとに複数の移動装置を用意する必要がなく、構成が簡素となり、コストも低く抑えられる。
【0179】
以上説明したように、上記実施例によれば、以下のような効果が得られる。
【0180】
[1] 容器中の液体を吸引回収するにあたって、回収しきれずに残る残液の量を少なくすることができ、測定精度を向上することができる。
【0181】
[2] 従来は微生物の回収を行う際にビーズを1つ1つ出し入れすることが必要であったが、本発明に係るピックアップビーズでは、ビーズをまとめて出し入れすることができるので、容易に微生物の回収を行うことができる。
【0182】
更に、本発明に係る微生物回収用部材ではビーズ自体を用いることなく、容易に微生物の回収を行うことができる。
【0183】
[3] 従来は自動化が困難であった微生物の回収工程を簡素な構成でかつ低コストに自動化することができる。
【0184】
[4] 手作業による免疫測定における偶然誤差や系統誤差に起因した測定精度の悪化や手作業の煩雑さを解消し、溶液中の抗原量の定量測定及び溶液中の抗体量の高精度な定量測定ができる。
【0185】
[5] 抗原抗体反応時の温度を調製することで、反応温度による測定のバラツキを抑制することができる。特に電位差によって温度差を発生させるペルチェモジュールを用いることによって小さな装置構成で容易に反応温度を適温にて行わせることができ、測定精度が高くなる。
【0186】
[6] 2つのピックアップ部材間における電気抵抗値(または静電容量値)を検出して、その値が前記2つのピックアップ部材が前記格納容器を挟み込んだ状態での値であるか否かを検出することにより、前記移動装置に前記格納容器が保持されているか否かを容易かつ正確に判定することができ、コストも低い。
【0187】
[7] 遮光板とフォトセンサ(光センサ)によって位置決めを行っているので、低コストで正確に位置決めを行うことができる。
【0188】
[8] フィルタ全体を吸着して保持するフィルタ保持装置が得られるので、所定の位置から所定の位置への移動が簡単にできる。たとえば、フィルタ置き場から、フィルタをろ過器の所定の位置へ置くとか、フィルタをビーカの底面に正確に置くことができる。従ってフィルタの位置決め精度が高くなる。
【0189】
特に、フィルタ移動時において、フィルタろ過面が水平に保たれたまま移動できるピンセットでフィルタをつかんで移動する場合を考えると、フィルタを一カ所つまんだ場合にフィルタ面は地面に対して垂直になり、フィルタろ過面に付着している物質が落下する可能性もある。これに対して水平に移動していればその心配はない。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の1実施例に係る免疫測定装置の概略構成図。
【図2】ろ過部の説明図。
【図3】フィルタ保持装置の説明図。
【図4】フィルタ保持装置の上面図。
【図5】フィルタ保持装置の側面図。
【図6】フィルタ保持装置のフィルタ吸着部の説明図。
【図7】フィルタ保持装置のフィルタ吸着部の説明図。
【図8】フィルタ保持装置のフィルタ吸着部の説明図。
【図9】吸着部の拡大図。
【図10】フィルタ吸着状態の説明図。
【図11】フィルタの説明図。
【図12】本発明の1実施例に係る免疫測定装置の概略構成図。
【図13】本発明の1実施例に係る免疫測定装置のターンテーブルの上面図。
【図14】本発明の1実施例に係る免疫測定装置のヒータの右側面図。
【図15】本発明の1実施例に係る免疫測定装置の左側面図。
【図16】本発明の1実施例に係る免疫測定装置の正面図。
【図17】本発明の1実施例に係る免疫測定装置の試験管洗浄器の縦断面図。
【図18】本発明に係る免疫測定装置の暗箱とセンサの縦断面図。
【図19】本発明の1実施例に係る免疫測定装置の右側面図。
【図20】本発明の1実施例に係る温度調節器の説明図。
【図21】本発明の1実施例に係る試験管移動装置の説明図。
【図22】本発明の1実施例に係る試験管移動装置の説明図。
【図23】本発明の1実施例に係る試験管移動装置の説明図。
【図24】本発明の1実施例に係る振とう器の説明図
【図25】本発明の1実施例に係る遮光板の説明図。
【図26】試験管洗浄装置の説明図。
【図27】本発明の1実施例に係る試験管洗浄装置の説明図。
【図28】本発明の1実施例に係る試験管洗浄装置の拡大図。
【図29】本発明の1実施例に係る微生物回収用部材の説明図。
【図30】本発明の1実施例に係る微生物回収工程の説明図。
【図31】微生物回収部材の変形例の説明図。
【図32】本発明の1実施例に係るピックアップの説明図。
【図33】本発明の1実施例に係る溶液回収方法の説明図。
【図34】本発明の1実施例に係る溶液回収方法の説明図。
【図35】本発明の1実施例に係る免疫測定用容器の説明図。
【図36】本発明の1実施例に係る免疫測定用容器の説明図。
【図37】本発明の1実施例に係る免疫測定用容器の説明図。
【図38】前処理工程を示すフローチャート。
【図39】免疫測定工程を示すフローチャート。
【図40】発光測定工程を示すフローチャート。
【図41】抗原抗体反応の説明図。
【図42】従来例に係る微生物濃縮工程の説明図。
【図43】従来例に係る免疫測定用容器の説明図。
【図44】従来例に係る免疫測定用容器の説明図。
【符号の説明】
【0191】
1…試験管立て置き場
2…試験管
3…ターンテーブル
4…試験管移動ロボット
5…ヒータ
6…分注装置
7…バルブ
8…ノズル及びノズル台
9…試験管洗浄器
10…暗箱
11…シャッタ
12…シャッタ
13…センサ
14…制御装置
101…ろ過部
102…濃縮液生成部
103…第1の回収容器
104…超音波発生部
105…超音波破砕部
106…前処理装置
107…ノズル部
108…標識抗体注入部
109…振とう部
110…第2の回収容器
111…免疫反応装置
112…洗浄部
113…発光反応測定部
114…発光試薬注入部
115…発光反応装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタの保持を自動で行うフィルタ保持装置及びろ過後のフィルタを前記フィルタ保持装置とともに移動させる作業を自動で行うフィルタ移動装置を有する自動吸引ろ過装置に用いる前記フィルタ保持装置であって、
前記フィルタを配置する円形平面状のフィルタ固定部と、
フィルタを吸引して前記フィルタ固定部に移動させる減圧ポンプに接続するコネクタと、
前記フィルタ固定部表面の中心点に対して円周上に設けられた、前記減圧ポンプに通じる複数個の空気導入孔と、
ろ過後に前記フィルタ上に堆積した堆積物と当該フィルタ保持装置の部材とが接触するのを防ぐために設けられた前記フィルタ固定部上の一定の間隙と、
前記フィルタ移動装置がつかむピックアップ受けと、を有することを特徴とするフィルタ保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2006−133232(P2006−133232A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333635(P2005−333635)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【分割の表示】特願平6−215448の分割
【原出願日】平成6年9月9日(1994.9.9)
【出願人】(594151922)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】