説明

微生物汚染制御方法、得られる無機懸濁物およびこの使用

本発明は、無機物の水性分散物および/または懸濁物の殺菌処理および/または保存および/またはこの微生物汚染の低下および/または制御のための、および、Brookfield粘度に関して良好な安定性を無機物の前記水性分散物および/または懸濁物に提供するための方法に関連する。本発明はまた、前記の得られた水性分散物および/または懸濁物、ならびに、鉱物産業、製紙産業および塗料産業におけるこれらの使用に関連する。本発明はさらに、得られた最終的な製造物に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まず第1に、無機物の水性分散物および/または懸濁物の微生物汚染の消毒および/または保存ならびに/もしくはこの低下および/または制御のためのプロセスであって、Brookfield(商標)粘度に関して満足な安定性を無機物の前記水性分散物および/または懸濁物に提供するプロセスに関連する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の別の目的は、Brookfield(商標)粘度に関して満足な安定性、および、非常に少ない数の微生物細菌を有し、および/または、この微生物細菌の濃度を本発明によるプロセスによって制御することができる無機物の水性分散物および/または懸濁物にある。
【0003】
本発明の別の目的は、鉱物産業における、また、製紙産業、好ましくは、紙の製造および/または紙の被覆における、また同様に、水系塗料の分野、および特に、ラッカーおよびワニスにおける無機物の前記水性分散物および/または懸濁物の使用にある。
【0004】
本発明の最後の目的は、本発明による無機物の前記水性分散物および/または懸濁物を含有することを特徴とする無機配合物、紙配合物(特に、紙シートおよび被覆用有色物)、水系塗料、ラッカーおよびワニスにある。
【0005】
従って、本発明の第1の目的は、無機物および/または充填材および/または顔料の懸濁物および/または水性分散物の微生物汚染の消毒および/または保存および/またはこの低下および/または制御のためのプロセスであって、前記分散物および/または懸濁物の調製時、使用者によって決定され得る時間間隔にわたるこれらの貯蔵時、これらの輸送時、また同時に、これらの改変時および/または処理時における微生物汚染および/または微生物の成長の計画的な制御に直面しての保護のためのプロセスである。本発明のプロセスは、好ましくは、鉱山、製紙産業、および、ワニス・塗料産業において使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロセスの目的は、本質的には、従来の殺生物剤(特に、「XXXVI Empfehlung」vom BgVV(Bundesinstitut fur gesundheitlichen Verbraucherschutz und Vetrinarmedizin、ドイツ)Kunststoffe im Lebensmittelverkehr」(Carl Heymanns Verlag kg、Koln、Berlin、Bonn、Munich)、および、連邦法典21の176.300条(2001年4月1日改定)において指定されるような殺生物剤)の濃度を低下させること、および/または、このような殺生物剤を回避することである。結果として、本発明のプロセスは、このような殺生物剤が、単独で、しかも、一般には高濃度で先行技術に従って使用されたとき、ヒトに対する汚染および中毒の危険性、ならびに、環境に対する損傷を少なくする。
【0007】
別の目的は、自由に選ぶことができ、システムがこの期間中に作用しなければならない一定の時間間隔を取り込むプロセスを新たに作ることである。
【0008】
別の大きな目的は、加工製品の性質および/またはこのその後の使用に影響を及ぼさないか、または、このことが回避できないことであるならば、好ましい方向への影響を及ぼすことである。
【0009】
別の目的は、無機物および/または顔料および/または充填材の製造の常用的な段階(特に、前記充填材の水中分散および/または粉砕の一般的な段階)においてこのような処置を組み合わせることである。
【0010】
最後の目的は、このようにして得られた無機物の水性懸濁物および水性分散物のBrookfield(商標)粘度の長期安定性を変えないプロセスを提供することである。
【0011】
本出願明細書において、下記が用語「微生物」によって示される:細菌界のあらゆる生物および/または微生物(好気性または嫌気性)、例えば、細菌、特に、中温性の好気性細菌、例えば、グラム陰性の代表的なものとして、シュードモナス・エルギノーサ(pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ・エンテリティディス(salmonella enteritidis)およびエシェリヒア・コリー(escherichia coli)など、および、グラム陽性の代表的なものとして、バシラス・サブチリス(bacillus subtilis)、スタフィロコッカス・アウレウス(staphylococcus aureus)、リステリア菌(listeria monocytogenes)およびミクロコッカス・ルテウス(micrococcus luteus)など、ならびに、嫌気性細菌および嫌気性硫酸還元細菌、例えば、デスルホビブリオ・デスルフリカンス(desulfovibrio desulfuricans)など、ならびに、菌類、特に、アスペルギルス・ニガー(asperguillus niger)など、ならびに、酵母、特に、サッカロマイセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)。
【0012】
表現「消毒および/または保存」により、無機物を含有する水および/または水溶液および/または水性懸濁物および/または水性分散物が、主に前記微生物の成長の防止および/または前記微生物の破壊によって、微生物の攻撃から保護され、および/または、微生物感染の危険性から保護されることもまた理解される。
【0013】
従って、消毒および保存のこれらの概念は、微生物の攻撃に関連して無機物の前記水性懸濁物および/または水性分散物の保護に関しての治療的効果および保護効果のすべての包含する。
【0014】
最後に、無機物の「分散物」および「懸濁物」の用語は、本出願明細書では、水、無機物(この乾燥重量比濃度が前記分散物および懸濁物の総重量に対して0.1%以上である)、および、必要に応じ使用される他の添加剤(例えば、特に、分散化剤、粉砕助剤および消泡剤など)を含有する組成物を示す。
【0015】
現在、無機物を含有する水および/または水溶液および/または水性懸濁物および/または水性分散物の消毒および保護を達成するために、当業者は、単独または組合せで使用することができる2通りの解決策を有する:殺生物剤の用語のもとで示される有機化学物質の使用、または、このような殺生物剤を伴わない処理プロセスの使用。次に、本出願人は、これら両方の方法に関連した技術の現状を示し、一方で、これらの現在の解決策によってもたらされる欠点を強調する。
【0016】
無機物および/または充填材および/または顔料の水性分散物および水性懸濁物は、個々に適用され得るか、または組合せで適用され得る殺生物剤を使用して常用的に保存される。無機物の水性懸濁物および/または水性分散物において、また、産業用循環水において使用される、殺生物効果を有する常用的な物質が、特に、連邦規則集21の170条から199条(2000年4月に改正)、176.300条(殺変形菌剤)に列挙される。このような物質はまた、Karl Heinz Wallhausserによる研究成果「Praxis der Sterilisation,Desinfektion−Konservierung」(完全改訂第5版、発行:Georg Thieme Verlag(Stuttgart))、および、文献「Microbicides for the protection of materials,a handbook by Wilfried Paulus」(第1版、1993年、発行:Chapman&Hall(2−6 Boundary Row,London SE1 8HN))で論じられている。加えて、「連邦規則集21の170条から199条(2001年4月に改正)では、殺生物効果を有するこのような物質が176.170条から176.300条に記載される」。
【0017】
広範囲に使用されている殺生物剤配合物の中には、一部の配合物が1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含有する。このような配合物の欠点は、「シュードモナスウインドウ(pseudomonas window)」と呼ばれるものである。すなわち、このような物質は多くの細菌に対して殺生物効果を有するが、これにもかかわらず、ある種の細菌(この場合にはシュードモナス属(Pseudomonas)細菌)に対しては有効性がこれらよりも低い。さらに、この物質は皮膚感作を引き起こし、結果として、使用者には有害である。別の欠点が前記製造物の安定性にあり、その後の適用期間中において、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの殺菌効果が無効化されず、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンが、その後、食品製造物に、このような製造物のための包装物質および/または食品製造物のための有用性物体を横切ることによって影響を及ぼし得る。加えて、この化合物の不良な分解性およびこの強い毒性は、前記製造物が、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含有する包装材を介して移動する場合、または、前記包装材を分解する場合には環境に対する破壊的影響を有する。
【0018】
さらに、当業者はまた、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリノンおよび2−メチル−4−イソチアゾリノンの混合物を使用し得る。この場合、欠点が、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリノンのみが細菌に対して十分な効力を現し、また、この物質は、アルカリ性pH値および熱にさらされたときには非常に不安定であり、その結果、アルカリ性pHの条件および/または40℃を超える温度で使用されるときにはこの有効性を急速に失うという事実にある。加えて、これらの物質もまた、皮膚に対する感作作用を有する。
【0019】
臭素を含有する物質、より一般的には、ハロゲン化製造物の組合せを使用することもまた可能である。しかしながら、このような組合せは、水にさらされる危険性がある分野では特に、環境を損ない得るので、多くの場合において望ましくない。中性およびアルカリ性のpH値についてのこれらの不安定性のために、このような殺生物剤は、すべての場合において酸pH値で安定化されなければならず、また、このようなものとして使用される。投薬が1回および/または数回行われる場合、適合性の問題が、中性および/またはアルカリ性のpH値に調節された顔料溶液に関して生じ得る。このような溶液の安定性が、結果として、このBrookfield(商標)粘度に関して損なわれ得る。高濃度の無機物(特に、炭酸カルシウムおよび/またはカオリン)を伴う水性分散物または水性懸濁物については非常に特に、粘度の増大および凝集物の形成を認める可能性がある。
【0020】
グルタルアルデヒドを使用することもまた知られている。グルタルアルデヒドは、40℃から45℃を超える温度では不安定であり、分解するか、または、環様構造体を形成し、従って、この効力を失う。加えて、グルタルアルデヒドは現在、特にこの発ガン性に関連して、多くの毒性研究の対象である。事実、この製造物が変異原性の点でヒトについて全く危険性を有しないことは明らかではない。この側面は未だ明確には明らかにされてないが、逆に、グルタルアルデヒドが慢性的な呼吸器疾患およびアレルギー性合併症を引き起こし得ることは周知である。その結果、グルタルアルデヒドは、使用者に対する明白な危険を表す。
【0021】
別の非常に大きな一群の殺生物剤が、分解してホルムアルデヒドを与える製造物にある。一般的に言えば、このような製造物は熱のもとではあまり安定ではなく、60℃を超える温度でホルムアルデヒドに自然分解する。ホルムアルデヒドは、発ガン性であることがさらに疑われている:欧州連合によって確立された分類によれば、ホルムアルデヒドは、「可能性のある発ガン性影響のためにヒトについて優先する物質」として、また、この大きな揮発性(純粋な製造物についてはTeb=−19.2℃)のために、カテゴリーNo.3に置かれており、大きな危険性を使用時に表す。O−ホルマールおよびN−ホルマール、エチレングリコールビスヘミホルマールならびにベンジル−ビス−ヘミホルマールがホルムアルデヒド解離体として主に使用される。Karl Heinz Wallhausserによる「Praxis der Sterilisation,Desinfektion−Konservierung」(完全改訂第5版、発行:Georg Thieme Verlag(Stuttgart)、1995年、43頁)と題された研究成果によれば、フェノール誘導体が殺菌活性な主剤として使用されることが知られている。
【0022】
特許文献DE10027588A1では、o−フェニルフェノールおよびこのアルカリ塩が保存剤として提案される。事実、後者はアルカリ性pHについて安定であり、また、ほとんどの微生物に対して活性であり、しかし、この満足すべき化学的安定性および熱安定性のために、しかしながら、これらを不活化することが困難である。この抗菌効果が永続的であってはならないことがときには不可欠である。このことは、特に製紙分野において見出される最も重要な要求である。例えば、特許文献WO04/90148には、紙の製造において凝固剤および/または接着剤および/または増粘剤として使用されるアクリルアミドタイプのポリマーの酵素的合成が記載される。さらには、特許文献CN1483773では、紙からインクを除去するためのプロセスにおける酵素配合物の使用が教示される。特許文献JP2004−169243もまた挙げることができ、これには、紙の製造において使用されるパルプを漂白するために酵素を使用するプロセスが記載される。従って、特定の文献は、ある種の酵素が製紙分野において有し得る重要性を十分に明らかにしている。従って、いくつかの製紙プロセスでは不可欠である前記酵素の存在を害しないために、この活性を制御することが可能である微生物保護対策を有することは重要である。加えて、o−フェニルフェノールは治療的効果および保護効果の両方を有することが知られている。これらの側面はともに当業者のためには等しく重要である。治療的効果および保護効果は、(文献「Worterbuch der Mikrobiologie H.Weber、Gustav Fischer Verlag、Jena、Stuttgart、Luber、Ulm」(1997)において449頁および321頁にそれぞれ記載されるように)その後の感染からの保護、または、既に生じている感染からの保護をそれぞれ確実となるために意図されるプロセスまたは物質の特性をそれぞれ意味することが解釈される。
【0023】
加えて、微生物物質を水性懸濁物および/または水性分散物の消毒および保存のために投与するプロセスは、ヒトの保護、熱のもとでの安定性、および/または、環境に対する損傷の領域において様々な欠点を有する。従って、これらの使用は避けなければならない。
【0024】
無機物を含有する水および/または水性懸濁物および/または水性分散物の消毒および保存を確実にするための別の方法は、化学物質を伴わない処理プロセスの使用にある。
【0025】
これに関して、食品製造物の分野では、最初に、殺菌効果を有する物質が、特に熱(例えば、UHTプロセス)を使用して滅菌および保存される。しかしながら、高すぎる熱は、保護すべき製造物の変質をもたらし得るし、結果として、多くの場合において勧めることができない。例えば、ビタミンは、高すぎる温度によって破壊され得る。
【0026】
文献では、電気泳動を使用するプロセスもまた記載される。この場合、発生期状態での水素または酸素が生じる。しかしながら、発生期状態での水素は、特に酸素の存在下では、爆発の危険性をもたらすことが周知である(爆発性ガス)。
【0027】
滅菌をX線によって達成することもまた知られている。しかしながら、X線源は、不適合な様式で取り扱われると危険であり得る。特別に訓練された人員が要求され、その結果、費用がかかり、また、使用することが困難であるという欠点がある。
【0028】
さらには、オゾンが消毒剤として使用されることが知られている。しかしながら、オゾンは毒性があり、製造するために費用がかかり、その結果、現場での使用には特に適していない。オゾンはまた、分散化剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなど)の効果を損ない得る。これにより、再度、処理される水性懸濁物および/または水性分散物の粘度の望ましくない増大がもたらされる。
【0029】
UV放射線もまた使用される(具体的には、殺菌のためのUV−C放射線)。しかしながら、UV放射線は危険である。例えば、UV光が水の殺菌のために使用される。しかしながら、透明でない物質はUV放射線の使用によって良好に処理することができない(シャドー現象)。
【0030】
「Hochschule CH−8820 Waedenswil」(スイス)は、強い電気的インパルスを使用することによって細菌を低下させるプロセスを発表している(「高電場パルス」プロセスおよびASE/AES会報3/01、44頁)。これはまた、このプロセスが使用されるために無機物製造プロセスに対する大きな改変を必要とするプロセスに関係する。
【0031】
加えて、論文「J.Food Prot.、Vol.64、No.10、2001、1579頁から1583頁、著者−神奈川工科大学、応用化学学部(厚木、日本)」には、炭化したカニ殻を使用して食品製造物を殺菌するためのプロセスが記載される。このプロセスでは、カニ殻が850℃を超える温度で加熱処理され、生じたCaOが、食品製造物のための殺菌剤として提案される。加工された製造物に対する何らかの負の影響の詳細は論じられていない。当業者は、得られた顔料の水性懸濁物または水性分散物に対して、また、これらの性質(例えば、粘度特性など)の変化に対して生じる影響に関してどんな知識もこの文献に基づいて何ら得ることができない。加えて、効力が時間とともに制限されるという問題については何も述べておらず、また、このシステムがこの期間中に作用しなければならない一定の時間間隔を生じさせることを目的とする別の可能な処理を何ら示していない。
【0032】
加えて、Brock−Biology of Microorganisms(第9版)(Madigan,M.T.およびMartinko,J.M.およびPerker,J.、2000、Upper Saddler River(Printice−Hall,Inc.)、154頁から155頁、図5.18において)および「Allgemeine Mikrobiologie(第7版)」(Schlegel,H.G.、1992、George Thieme Verlag、Stuttgart−New York、194頁から196頁)では、いくつかの微生物(例えば、バチルス属の種など)はまた極端なアルカリ性環境でも生存できることが述べられている。この文献では、pH値を上昇または低下させることによって、無機物の水性懸濁物の一時的な保存を、粘度に関して前記懸濁物の物理的性質を変化させることなく得ることが可能であるという事実は何ら述べていない。さらに、この文献は、特定の微生物がアルカリ性条件において生存し得ることを明らかにする傾向がある一方で、正確には、無機物の水性懸濁物を保護および/または消毒すること(これは本発明の1つの目的である)を期待して、このようなアルカリ性条件を使用することを当業者に勧めていない。本出願人は、このプロセス、もしくは、熱、オゾン、X線、UV線または電気的インパルスを使用する方法のどちらも、微生物の成長を、処理される無機物の懸濁物において制御することができないことを強く強調する。前に言及されているように、このことは、特に製紙産業では、当業者のためには重要な要件である。
【0033】
最後に、特許文献DE19811742には、pHを、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムの添加により12を超える値(好ましくは、12.6から12.8にわたる値)に増大させることによる、炭酸カルシウムおよびカオリンを用いて水を浄化するための水処理プロセスが記載される。この文献は、明らかに、細菌をこれらから除くために無機物の水性懸濁物を処理するためのプロセスの特別の技術分野ではないので、当業者によって見逃すことができない。この文献は、このような無機物懸濁物を浄化する目的で、このような無機物懸濁物の処理のためのより一般的なプロセスを示している。この文献は、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムの添加により、この場合には、懸濁されている無機物の綿状沈殿(これは、本出願人が、解決するために探し求めている技術的問題(微生物成長の低下または制御)との関連での求められていない効果である)がもたらされることを教示する。しかしながら、驚くべき様式ではあるが、本出願において開発されたプロセスを使用した場合、提起された問題が、懸濁されている無機物をおそらくは酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムの添加により綿毛状の凝集物として形成させることなく、申し分なく解決される。従って、驚くべき様式ではあるが、本発明によるプロセスは、本発明によるプロセスが適用される無機物の水性懸濁物および水性分散物の綿状沈殿をもたらさない。
【0034】
究極的には、殺生物剤(例えば、先行技術において記載される殺生物剤など)の使用はヒトについての危険性および環境に対する損傷に関して多くの欠点を有する。
【0035】
第2に、無機物の水性懸濁物を浄化するために現在使用されているプロセスは一般に、費用がかかり、また、前記無機物を製造するためのプロセスに組み込むことが困難であり、また、このようなプロセスに関する限り、環境に対する危険性およびヒトについての危険性もないとは言えない。
【0036】
さらに、常用的な化学物質のいずれも、また、汚染除去の公知のプロセスのいずれも、微生物の成長の発達の制御、すなわち、微生物の細胞分裂の発達の制御、および/または、微生物の総数の制御を無機物の前記水性懸濁物において長時間にわたって可能にしない。しかし、本出願人が以前に示しているように、このことは、特に製紙分野では、当業者のための基本的な要件である。
【0037】
加えて、このようにして得られた無機物の水性分散物および/または懸濁物のBrookfield(商標)粘度に関しての安定性を変化させないプロセスを開発することは根本的なことである。
【0038】
これらの問題が、無機物の水性分散物および/または懸濁物の消毒および/または保存ならびに/もしくはこの微生物汚染の低下および/または制御のためのプロセスにある本発明によって完全に解決され、この場合、このプロセスは、
a)前記水性分散物および/または前記水性懸濁物のOHイオン濃度を1×10−2モル/l以上の値に増大させるための少なくとも1つの段階、
b)少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤を可能ならば使用して段階a)の前またはこの期間中または後に行われる、前記水性分散物および/または懸濁物を分散および/または粉砕する少なくとも1つの段階、
c)段階a)の後で行われる、前記水性分散物および/または懸濁物のOHイオン濃度を1×10−2モル/l以下の値に低下させるための、場合により行われる少なくとも1つの段階、
d)段階a)および/または段階b)および/または段階c)の前またはこの期間中または後に行われる、殺菌効果を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、物理的な汚染除去プロセスの使用からなる、場合により行われる少なくとも1つの段階
を使用することを特徴とする。
【0039】
本出願人は、このプロセスがこのように一旦定義されると、段階a)、段階b)、段階c)および段階d)が、当業者にとって必要なだけ多数回繰り返され得ることを強調する。当業者は、本発明によるプロセスを、処理することが予想される無機物の水性分散物および/または懸濁物に対してどのように適合化するかを理解するはずである。
【0040】
従って、本発明のプロセスは、生物学的な細胞分裂の速度を低下させ、および/または、生物学的な細胞分裂を停止させ、および/または、前記水性分散物および/または懸濁物に存在する微生物を殺すために1つ以上のOHイオン供与体(例えば、アルカリ水酸化物および/またはアルカリ土類酸化物および/または水アルカリ水酸化物および/またはアルカリ土類水酸化物など)を使用したOHイオン濃度の増大によって特徴づけられる。
【0041】
また、要求されるように、水性懸濁物および/または水性分散物のOHイオン濃度は、1つ以上の一価および/または多価の弱い、または適度に強い、または強いH供与体(例えば、特に、炭酸水において解離したガス状COなど)を使用して低下させられる。これは、微生物細菌の天然の成長を再び確立させることを可能にする。
【0042】
本発明のプロセスは、微生物細菌の成長を制限するための段階、および、前記細菌の増殖の段階の両方で、無機物の水性懸濁物および/または水性分散物の劣化のすべて(例えば、貯蔵のためのこの好適性の劣化、このポンプ送液性の劣化、および/または、粘度に関してのこのレオロジー的性質の変化など)がこのその後の適用に関して防止されることを可能にする。
【0043】
従って、本発明の1つの重要な目的は、無機物の水性懸濁物および/または水性分散物の消毒および/または保存の手順を、無機物の前記水性懸濁物および/または水性分散物のBrookfield(商標)粘度に関しての安定性を変化させることなく、他の製造段階(例えば、特に、前記無機物の粉砕および/または分散など)との組合せで簡便化することである。
【0044】
本発明の別の目的は、無機物の水性懸濁物および/または水性分散物を、すべての微生物汚染および/または微生物攻撃に対して前記懸濁物および/または前記水性分散物の消毒および/または保護を可能にし、一方で、ヒト、環境または天然資源に対する損傷を最小限にするプロセスによって提供することである。具体的には、本発明によるプロセスを、有害性が最小限である適切な使用量および/またはより少ない量の化学物質(例えば、o−フェニルフェノールおよびこの塩など)と組み合わせることにより、好ましい実施形態が構成されるということを念頭に置いて、危険な化学物質が不必要に使用されないことを確実にすることが必要である。本発明のプロセスは好気性および嫌気性の生物種に対して適用可能であり得るに違いない。
【0045】
本発明の別の重要な目的は、微生物の決められた数を超えないように、微生物の成長の発達(すなわち、生物学的な細胞分裂の発達)および/または微生物の総数を長期にわたって制御することである。加えて、殺菌効果を、処理された水性懸濁物および/または水性分散物の安定性をBrookfield(商標)粘度に関して変化させることなく、また、本発明によるプロセスと好ましくは適合する酵素の使用による、特に製紙分野でのこのその後の使用を制限することなく、簡便な様式で制御することができる。
【0046】
本発明の別の目的は、貯蔵タンク、陸上輸送受器(例えば、コンクリートタンク、スチールタンク、鉄道タンク貨車、タンクおよび容器など)の浄化および消毒に関係する。顔料の水性懸濁物を輸送するために使用される鉄道タンク貨車は残存量の顔料を液体形態で含有し、これは乾燥によって一部が濃縮されている。鉄道タンク貨車は、戻ると、積載される新しい製造物のあらゆる汚染を防止するために掃除および消毒されなければならない。同じことが、このサイズおよび体積がいかなるものであれ、どの貯蔵用および輸送用の「受器」についても適用される。この場合もまた、ヒト、動物および環境を何らかの危険にさらさないために、「適時の」殺菌効果を無効にすることが不可欠である。
【0047】
この問題は、単独で、もしくは、他のプロセス(例えば、殺菌効果を有する適切な物質のさらなる使用など)または物理的プロセス(例えば、高電圧パルスまたは熱処理など)との組合せで、微生物の成長の低下および/または排除および/または制御を可能にするプロセス、すなわち、限定された作用時間を有し、制御することができるプロセスが提供されるという事実のために本発明に従って解決される。従って、本発明のプロセスは、このプロセスが保護効果を有するのと同じくらい多くの治療的効果を有する。最後に、前記プロセスは、このように処理された無機物の前記水性分散物および/または懸濁物のBrookfield(商標)粘度に関して安定性を変化させないか、または、ほんのわずかに変化させるだけである。
【0048】
従って、本発明の第1の目的は、無機物の水性分散物および/または懸濁物の消毒び/または保存ならびに/もしくはこの微生物汚染の低下および/または制御のためのプロセスであって、
a)前記水性分散物および/または前記水性懸濁物のOHイオン濃度を1×10−2モル/l以上の値に増大させるための少なくとも1つの段階、
b)少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤を可能ならば使用して段階a)の前またはこの期間中または後に行われる、前記水性分散物および/または懸濁物を分散および/または粉砕する少なくとも1つの段階、
c)段階a)の後で行われる、前記水性分散物および/または懸濁物のOHイオン濃度を1×10−2モル/l以下の値に低下させるための、場合により行われる少なくとも1つの段階、
d)段階a)および/または段階b)および/または段階c)の前またはこの期間中または後に行われる、殺菌作用を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、物理的な汚染除去プロセスの使用からなる、場合により行われる少なくとも1つの段階
を使用することを特徴とするプロセスである。
【0049】
このプロセスは、段階a)に関連するOHイオン濃度の値が好ましくは2×10−2モル/l以上であることを特徴とする。
【0050】
このプロセスはまた、段階a)に関連するOHイオン濃度の増大が、1つ以上のOHイオン供与体(例えば、アルカリ水酸化物および/またはアルカリ土類酸化物および/または水アルカリ水酸化物および/またはアルカリ土類水酸化物など)を使用して行われることを特徴とする。
【0051】
このプロセスはまた、段階c)に関連するOHイオン濃度の値が好ましくは1×10−3モル/l以下であり、非常に好ましくは1×10−4モル/l以下であることを特徴とする。
【0052】
このプロセスはまた、段階c)に関連するOHイオン濃度の低下が、1つ以上の一価および/または多価の弱い、または適度に強い、または強いH供与体(例えば、特に、炭酸水において解離したガス状COなど)を使用して行われることを特徴とする。
【0053】
このプロセスはまた、殺菌効果を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、微生物汚染除去の物理的プロセスの使用からなる場合により行われる段階d)が、少なくとも1つの殺生物剤、特に、o−フェニルフェノールおよび/またはこの塩もしくは実際にはこれらの混合物、および/または、微生物細菌(好ましくはシュードモナス属細菌、より好ましくははシュードモナス・エルギノーサ)を破壊する細菌を含有する少なくとも1つの製造物を使用すること、および、破壊する細菌がブデロビブリオ(Bdellovibrio)科の細菌であり、非常に好ましくはブデロビブリオ・バクテリオボルス(Bdellovibrio bacteriovorus)菌であることを特徴とする。
【0054】
このプロセスはまた、殺菌作用を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、微生物汚染除去の物理的プロセスの使用からなる場合により行われる段階d)が、少なくとも1つの物理的プロセス(例えば、好ましくは、温度の上昇に基づくプロセスなど)を使用することを特徴とする。
【0055】
段階c)の達成に対応するこのプロセスの1つの実施形態において、前記プロセスは、段階c)が、好ましくは段階a)の後の1週間から1ヶ月の間で行われることを特徴とする。
【0056】
この実施形態によれば、殺菌効果を有する物質が、この場合、処理される無機物の水性分散物および/または懸濁物において使用されない。
【0057】
このプロセスはまた、当業者が非常に熟知している用語によれば、不連続的、半連続的または連続的に使用され得ることを特徴とする。
【0058】
このプロセスはまた、処理される水ならびに/もしくは無機物の水性分散物および/または懸濁物に関して治療的効果および/または保護効果を含むことを特徴とする。
【0059】
このプロセスはまた、使用される無機物および/または顔料および/または充填材が、カオリン、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、タルク、石膏、サチンホワイト、雲母、炭酸カルシウム含有の無機物および/または充填材および/または顔料、具体的には、天然の炭酸カルシウム、大理石、石灰岩、ドロマイトまたはこれらの混合物、他の無機物とのこれらの混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物)、もしくはまた、三水酸化アルミニウムまたは三酸化アルミニウムとの炭酸カルシウムの混合物、もしくはまた、合成繊維または天然繊維との混合物、もしくはまた、無機物の共構造体(例えば、タルク−炭酸カルシウム共構造体、タルク−二酸化チタン共構造体、または、これらの混合物など)、ならびに/もしくは、ドロマイトを、沈殿による合成様式で製造された炭酸カルシウムおよび/または他の無機物との炭酸カルシウム沈降物と一緒に含有する炭酸カルシウムの中から選ばれることを特徴とする。好ましくは、これらの無機物および/または顔料および/または充填材は天然の炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムの中から選ばれ、非常に好ましくは、天然の炭酸カルシウムの中から選ばれ、特に、大理石、カルサイト、チョークまたはこれらの混合物の中から選ばれる。
【0060】
最後に、このプロセスは、鉱物産業の分野において、特に、貯蔵タンク、陸上輸送受器(例えば、コンクリートタンク、スチールタンク、鉄道タンク貨車、タンクおよび容器など)において、製紙産業において、好ましくは紙製造において、および/または、被覆用有色物において、ならびに、水性塗料の製造の分野において、また同様に、ラッカーおよびワニスにおいて使用されることを特徴とする。
【0061】
本発明の別の目的は、本発明によるプロセスの使用によって得られる無機物の水性分散物および/または懸濁物にある。
【0062】
このような分散物および/または懸濁物は、これらが、カオリン、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、タルク、石膏、サチンホワイト、雲母、炭酸カルシウム含有の無機物および/または充填材および/または顔料、具体的には、天然の炭酸カルシウム、大理石、石灰岩、ドロマイトまたはこれらの混合物、他の無機物とのこれらの混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物)、もしくはまた、三水酸化アルミニウムまたは三酸化アルミニウムとの炭酸カルシウムの混合物、もしくはまた、合成繊維または天然繊維との混合物、もしくはまた、無機物の共構造体(例えば、タルク−炭酸カルシウム共構造体、タルク−二酸化チタン共構造体、または、これらの混合物など)、ならびに/もしくは、ドロマイトを、沈殿による合成様式で製造された炭酸カルシウムおよび/または他の無機物との炭酸カルシウム沈降物と一緒に含有する炭酸カルシウムの中から選ばれる無機物および/または顔料および/または充填材を含有することを特徴とする。好ましくは、これらの無機物および/または顔料および/または充填材は天然の炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムの中から選ばれ、非常に好ましくは、天然の炭酸カルシウムの中から選ばれ、特に、大理石、カルサイト、チョークおよびこれらの混合物の中から選ばれる。
【0063】
本発明によるプロセスの段階c)が使用されない第1の実施形態において、これらの前記分散物および/または懸濁物は、
a)OHイオン濃度が1×10−2モル/l以上であり、好ましくは2×10モル/l以上であること、
b)微生物濃度が100個/グラム以下の微生物であり、好ましくは10個/グラム以下の微生物であること、
c)および、
1.無機物、
2.水、
3.場合により使用される少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.場合により使用される少なくとも1つの消泡剤、
5.場合により使用される少なくとも1つの殺菌剤
を含有することを特徴とする。
【0064】
この実施形態によれば、これらの分散物および/または懸濁物は、
前記分散物および/または懸濁物の総重量に対して、
1.乾燥重量比で0.1%から85%の無機物、
2.重量比で15%から99.9%の水、
3.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの消泡剤、
5.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの殺菌剤
を含有することを特徴とする。
【0065】
これらの水性分散物および/または懸濁物はまた、殺菌効果を有する物質が、o−フェニルフェノール、この塩、もしくはまた、これらの混合物、ならびに/もしくは、微生物細菌(好ましくはシュードモナス属細菌、より好ましくはシュードモナス・エルギノーサ)を破壊する細菌を含有する少なくとも1つの製造物の中から選ばれること、および、破壊する細菌がブデロビブリオ科の細菌であり、非常に好ましくはブデロビブリオ・バクテリオボルス菌であることを特徴とする。
【0066】
さらにこの実施形態によれば、また、段階d)に従って、温度の上昇に基づくプロセスが使用されるとき、これらの水性分散物および/または懸濁物はまた、微生物濃度が10個/グラム以下の微生物であることを特徴とする。
【0067】
第2の実施形態において、本発明によるプロセスの段階c)が使用され、また、殺菌効果を有する物質が段階d)に従って使用されない場合、これらの前記水性分散物および/または懸濁物は、
a)OHイオン濃度が1×10−2モル/l以下であり、好ましくは1×10−3モル/l以下であり、非常に好ましくは1×10−4モル/l以下であること、
b)微生物濃度が100個/グラム以下の微生物であり、好ましくは10個/グラム以下の微生物であること、
c)および、
1.無機物、
2.水、
3.少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.および、場合により使用される少なくとも1つの消泡剤、
を含有することを特徴とする。
【0068】
この実施形態によれば、本発明によるこれらの分散物および/または懸濁物はまた、
前記分散物および/または懸濁物の総重量に対して、
1.乾燥重量比で0.1%から85%の無機物、
2.重量比で10%から99.89%の水、
3.乾燥重量比で0.01%から5%の少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの消泡剤、
を含有することを特徴とする。
【0069】
この実施形態によれば、消泡剤は、特に、シロキサン化合物、脂肪酸エステルおよびこれらの混合物の中から選ばれる。
【0070】
さらにこの実施形態によれば、また、段階d)に従って、温度の上昇に基づくプロセスが使用されるとき、これらの水性分散物および/または懸濁物はまた、微生物濃度が10個/グラム以下の微生物であることを特徴とする。
【0071】
本発明の別の目的は、無機物の前記水性懸濁物および/または水性分散物の使用であって、鉱物産業の分野における使用、製紙産業における使用、好ましくは紙製造における使用、および/または、被覆用有色物における使用、また同様に、水性塗料の製造の分野における使用、および同様に、ラッカーおよびワニスにおける使用にある。
【0072】
本発明の最後の目的は、本発明による前記懸濁物および/または分散物を含有することを特徴とする無機配合物、紙配合物、特に紙シートおよび被覆用有色物、水性塗料、ラッカーおよびワニスにある。
【0073】
本発明は、実施形態の様々な例および比較例を使用して下記においてより詳細に記載される。しかしながら、本発明は下記の実施例に限定されない。当業者は、何らかの意図された活動を使用することなく、請求項と一緒にこの説明を使用して、他の例を組み立てることができ、また、他の適用分野を見出すことができる。
【0074】
(実施例)
手順の様式に関する一般的な観測結果
食品製造物産業ならびに製紙産業および顔料産業において細菌を測定するための常用的な方法が、例えば、食品製造物に関するスイスマニュアル(第56節、パラグラフ7.01、1985年編集、1988年改訂、表題:「Bestimmung von aeroben Bakterien und Keime」)、および、スイス食品製造物マニュアル(第56節、パラグラフ7.22、1985年編集、1988年改訂、表題:「Bestimmung von Pilzen」)に記載される。常用的には、測定に着手することができる前のインキュベーション時間は毎回、約48時間である。5日のインキュベーション時間が、胞子の存在を検出するためには適用される。
【0075】
Microbial Systems Ltdという企業が、Cellfacts(商標)Rの名称で販売される、粒子を分析するためのデバイスおよびプロセスを開発している。この課題に関するさらなる情報が、研究所および研究のために読者サービスを提供する、Labor flash 9/96と題される雑誌に見出される(Ott Verlag+ Druck AG、Ch−3607 Thun、スイス)。
【0076】
これらのデバイスは、サンプルにおける細菌濃度を、おそらくは外挿によって、電場に存在する粒子として測定することを可能にする。問題としているデバイスが、測定方法および対応する計算と一緒に、欧州特許EP1149172に詳しく記載される。
【0077】
実験で使用される顔料の懸濁物を、ポリアクリル酸ナトリウムの存在下での粉砕および/または分散によって作製した。最初のサンプルの量は5kgであった。直径が50mmの歯付きディスクを有する攪拌機を備える、容量が2リットルであるDynomillタイプのボールミルを使用した。粉砕体として、直径が2mmのガラスビーズおよび直径が0.5mmから2mmのケイ酸ジルコンビーズを使用したが、他のタイプの粉砕ボール(特に、磁器、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム(例えば、バデレアイトなど)およびこれらの混合物、ならびに/または、酸化アルミニウムまたは自生粉砕剤など)もまた使用することができる。
【0078】
無機物の水性懸濁物および/または水性分散物を、本発明によるプロセスの保護効果を調べるためにオートクレーブにおいて141℃で1時間殺菌した。
【0079】
懸濁物および/または分散物を、本発明による治療的効果を調べるために、定温器において32℃で1週間インキュベーションし、その後、対応する量およびタイプの試験細菌と再び混合した。
【0080】
特定の時間間隔で、細菌を、「Bestimmung von aeroben mesophilen Keimen」(Schweizerisches Lebensmittelbuch、第56節、パラグラフ7.01、1985年編集、1988年改訂)に従って定量した。
【0081】
OHイオンのモル濃度を常に22℃の温度で測定した(この場合、水の解離定数(pKw)は14に等しかった)
【0082】
【数1】

H3O+=COH−=10−7Mである22℃での水について、K(Kw)(22℃)=10−14である。
【0083】
水の解離定数(pKw)は温度の関数である。従って、22℃で測定された10のpH値は、100℃で測定されたならば、11に等しいpH値をもたらすであろうOHイオン濃度に対応する。
【0084】
従って、温度の影響を考慮するために、下記の表を使用して、水の解離定数の値を求めた:
【0085】
【表1】

【0086】
さらに、本出願明細書の残りのすべてでは、Brookfield(商標)粘度の表現は、モジュールNo.3を使用して100RPMの速度において同じ名前およびタイプRVTの粘度計で測定されたBrookfield(商標)粘度を示すことが示される。
【実施例1】
【0087】
本実施例の目的は、炭酸カルシウムである無機物の水性懸濁物に適用された場合、本発明によるプロセスをこの治療的モードで例示することである。
【0088】
この目的はまた、本発明によるプロセスが、微生物細菌の成長の発達を、この安定性を著しく変化させることなく、このような懸濁物において制御することを可能にすることを例示することである。
【0089】
顔料懸濁物:
粉砕することによって得られる78.3重量%の天然大理石(この粒子の90重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の65重量%が1μm未満の直径を有する)の水性懸濁物を、市販のナトリウム/マグネシウム混合物によって中和された0.65乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)のポリアクリラートを使用して調製した。
【0090】
粉砕後の懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、9.7であった。
【0091】
毎回、顔料懸濁物の1キログラムの2つのサンプルを調製した。
【0092】
微生物懸濁物
7つの異なるタイプの微生物の混合物を作製した(グラム陰性菌、オーストリアに由来する、自然に生じた炭酸カルシウムの懸濁物から単離されたシュードモナス科(大部分がシュードモナス・エルギノーサである)から主に作製された)。
【0093】
これら7つの異なる微生物種は、API(商標)試験(これは当業者には周知であり、会社BIOMERIEUX(商標)によって開発されている)を使用して同定することができた。
【0094】
この懸濁物において、微生物細菌の濃度は5×10細菌/mlである。
【0095】
サンプル1
1番目のサンプルは、十分な撹拌を伴う水酸化ナトリウムの添加により0.025モルのOHイオンと混合された前記顔料懸濁物の1kgに対応する(NaOHは2.5モル濃度の溶液として添加された)。
【0096】
水酸化ナトリウム添加直後のBrookfield(商標)粘度は308mPa.sであった。
【0097】
サンプル2
2番目のサンプルは、この技術の現状に関連した比較例として使用されたものであり、OHイオン供与体溶液の添加の伴わない、実施例1の冒頭で記載された顔料懸濁物の1kgに対応する。
【0098】
Brookfield(商標)粘度は389mPa.sであった。
【0099】
その後、両方のサンプルを10mlの微生物懸濁物と混合し、その後、定温器において30℃で毎回24時間インキュベーションした。本出願明細書の残り部分では、この作用は、暴露の用語のもとで示される。それぞれの例について、サンプルが同じ微生物懸濁物に暴露される。
【0100】
それぞれのサンプルについて、その後、細菌濃度(個数/mlの単位で)、OHイオン濃度の値(モル/lの単位で)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)を測定した。
【0101】
このデータが表1および表2に示される。
【0102】
【表2】

【0103】
これらの結果は、サンプル1に対する本発明による処理の保護効果を明らかにしている。すなわち、微生物の数の増大が認められなかった。
【0104】
【表3】

【0105】
加えて、本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は変化していない。すなわち、本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は、非処理サンプルのBrookfield(商標)粘度と類似する様式で変化している。
【0106】
最後に、26日目におけるBrookfield(商標)粘度は、撹拌後に測定された場合、最初のBrookfield(商標)粘度に非常に近い。従って、本発明による処理はBrookfield(商標)粘度に関して無機物の水性懸濁物の安定性を変化させない。
【0107】
26日後、前回の暴露にさらされている本発明によるサンプル1の一部を、OHイオン濃度を5×10−5モル/lに等しい値に低下させるようにガス状COの導入により処理した。
【0108】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0109】
サンプル1のこの一部は、これ以降、サンプル1−2と呼ばれ、本発明を表し、特定の回数のさらなる暴露にさらされる。
【0110】
サンプル1−2について、その後、OHイオン濃度、微生物細菌の数およびBrookfield(商標)粘度の測定を行う。
【0111】
結果が表3および表4に示される。
【0112】
【表4】

【0113】
【表5】

【0114】
本発明によるサンプル1−2の非撹拌時のBrookfield(商標)粘度は、比較サンプルに対して、貯蔵の継続期間にわたってわずかに増大するだけである。安定性は損なわれていない。26日後での撹拌状態でのBrookfield(商標)粘度は、本発明による処理の前の最初のBrookfield(商標)粘度とほとんど同一である。従って、本発明によるサンプルの安定性はBrookfield(商標)粘度に関して変化していない。
【0115】
26日後、本実施例の冒頭で記載されたような前回の暴露にさらされている本発明によるサンプル1の別の一部を、OHイオン濃度を8×10−5モル/lに等しい値に低下させるように硝酸の導入により処理した。
【0116】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0117】
サンプル1のこの一部は、これ以降、サンプル1−3と呼ばれ、本発明を表し、新しい暴露にさらされる。
【0118】
サンプル1−3について、その後、OHイオン濃度および微生物細菌の数の測定を行う。
【0119】
結果が表5に示される。
【0120】
【表6】

【0121】
阻害効果が、再度、クエン酸の添加により、すなわち、本発明によるプロセスによるHイオンの添加により除かれた。
【0122】
26日後、本実施例の冒頭で記載されたような前回の暴露にさらされている本発明によるサンプル1の別の一部を、OHイオン濃度を2.5×10−5モル/lに等しい値に低下させるようにリン酸の導入により処理した。
【0123】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0124】
サンプル1のこの一部は、これ以降、サンプル1−4と呼ばれ、本発明を表し、新しい暴露にさらされる。
【0125】
サンプル1−4について、その後、OHイオン濃度および微生物細菌の数の測定を行う。
【0126】
結果が表6に示される。
【0127】
【表7】

【0128】
阻害効果が、再び、クエン酸の添加による、すなわち、本発明によるプロセスによるHイオンの添加により除かれた。
【実施例2】
【0129】
本実施例の目的は、炭酸カルシウムである無機物の水性懸濁物に適用された場合、本発明によるプロセスをこの治療的モードおよび保護モードで例示することである。
【0130】
この目的はまた、本発明によるプロセスが、微生物細菌の成長の発達を、Brookfield(商標)粘度に関してこの安定性を変化させることなく、このような懸濁物において制御することを可能にすることを例示することである。
【0131】
顔料懸濁物:
粉砕することによって得られる78.3重量%の天然大理石(この粒子の90重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の65重量%が1μm未満の直径を有する)の水性懸濁物を、市販のナトリウム/マグネシウム混合物によって中和された0.65乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)のポリアクリラートを使用して調製した。粉砕後の懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、9.7であった。
【0132】
1kgの2つのサンプルをこの顔料懸濁物から調製した。
【0133】
微生物懸濁物
7タイプの異なるグラム陰性細菌の混合物を作製した(これは、オーストリアに由来する、細菌が自然に散布された炭酸カルシウムスラリーから単離されたシュードモナス科(大部分がシュードモナス・エルギノーサである)に従ってほとんどが構成された)。
【0134】
これら7つの異なる微生物種は、API(商標)試験(これは当業者には周知であり、会社BIOMERIEUXTMによって開発されている)を使用して同定することができた。
【0135】
この懸濁物の微生物細菌の濃度は5×10細菌/mlである。
【0136】
サンプル3
このサンプルは、本発明による処理をこの保護モードで例示するために使用される。
【0137】
このサンプルは、2.6×10−2モル/lのOHイオンを含有する粉砕されたCa(OH)(粒子の平均直径が2μである)の溶液において十分な撹拌のもとで混合された1kgの前記顔料懸濁物に対応する。
【0138】
添加の直後でのBrookfield(商標)粘度は357mPa.sであった。
【0139】
その後、本発明によるこのサンプルを10mlの微生物懸濁物と数回混合し、その後、定温器において30℃で24時間インキュベーションした。
【0140】
サンプル3を何回かの暴露にさらし、その後、OHイオン濃度、細菌濃度(個数/グラム)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の値もまた測定した。
【0141】
対応する結果が表7および表8に示される。
【0142】
【表8】

【0143】
これらの結果は、サンプル3に対する本発明による処理の保護効果を明らかにしている。すなわち、微生物細菌の数の増大が認められなかった。
【0144】
【表9】

【0145】
加えて、本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は変化していない。すなわち、本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は、サンプル2によって表される非処理サンプルのBrookfield(商標)粘度と類似する様式で変化している。
【0146】
最後に、26日目におけるBrookfield(商標)粘度は、撹拌後に測定された場合、最初のBrookfield(商標)粘度に非常に近い。従って、本発明による処理は、Brookfield(商標)粘度を回復させることが可能である。
【0147】
26日後、前回の暴露にさらされている本発明によるサンプル3の一部を、OHイオン濃度を5×10−5モル/lに等しい値に低下させるようにガス状COの導入により処理した。
【0148】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0149】
サンプル3のこの一部は、これ以降、サンプル3−2と呼ばれ、本発明を表し、特定の回数の暴露にさらされる。
【0150】
サンプル3−2について、その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌の数(個数/ml)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の測定を行う。
【0151】
対応する結果が表9および表10に示される。
【0152】
【表10】

【0153】
これらの結果は、本発明によるOHイオン濃度の減少の後、微生物細菌の成長が再開されることを明らかにしている。従って、本発明によるプロセスは、無機物の水性懸濁物における微生物細菌の成長を制御することを可能にする。
【0154】
【表11】

【0155】
加えて、本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は変化していない。本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は、サンプル2によって表される非処理サンプルのBrookfield(商標)粘度と類似する様式で変化している。
【0156】
最後に、26日目におけるBrookfield(商標)粘度は、撹拌後に測定されたとき、最初のBrookfield(商標)粘度に非常に近い。従って、本発明による処理は、Brookfield(商標)粘度を回復させることを可能にする。
【0157】
サンプル4
このサンプルは、本発明による処理をこの治療的モードで例示するために使用される。
【0158】
本発明によるこのサンプルは、10mlの微生物懸濁物と十分な撹拌のもとで混合され、その後、定温器において32℃で7日間間インキュベーションされた、本実施例の冒頭で記載された1kgの前記顔料懸濁物に対応する。1週間のインキュベーションの後での微生物濃度は2×10細菌/mlであった。
【0159】
このサンプルを、2.6×10−2モル/lのOHイオンを含有する粉砕されたCa(OH)(粒子の平均直径が2μである)の溶液において十分な撹拌のもとで混合した。
【0160】
前回の添加の直後でのBrookfield(商標)粘度は389mPa.sであった。
【0161】
サンプル4を新しい暴露にさらし、その後、OHイオン濃度(mol/l)、細菌濃度(個数/グラム)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の値もまた測定した。
【0162】
これらの結果が表11および表12に示される。
【0163】
【表12】

【0164】
これらの結果は、本発明による処理の治療的効果を明らかにしている。
【0165】
【表13】

【0166】
加えて、Brookfield(商標)粘度は損なわれていない。
【0167】
7日後、前回の暴露にさらされている本発明によるサンプル4の一部を、OHイオン濃度を3×10−5モル/lに等しい値に低下させるようにガス状COの導入により処理した。サンプル4のこの一部はサンプル4−2と呼ばれ、その後、1mlの微生物懸濁物に再び暴露された。
【0168】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0169】
サンプル4−2について、その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌濃度(個数/ml)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の測定を行った。
【0170】
これらの結果が表13および表14に示される。
【0171】
【表14】

【0172】
これらの結果は、本発明によるプロセスが、微生物細菌の濃度を新たに増大させることを可能にすることを明らかにしている。従って、本発明によるプロセスは、サンプルにおける微生物濃度を制御することを可能にする。
【0173】
【表15】

【0174】
加えて、Brookfield(商標)粘度は、本発明によるプロセスを使用することによって損なわれていない。
【0175】
サンプル4の一部(これはサンプル4−3と名付けられ、最初の治療的保存から得られた)を、液体COの添加により、3×10−5モル/lに等しいOHイオン濃度値に低下させた。
【0176】
このサンプルを、2.6×10−2モル/lのOHイオンを含有する粉砕されたCa(OH)(粒子の平均直径が2μである)の溶液において十分な撹拌のもとで混合した。
【0177】
この時を新しい時間開始点として選んだ。
【0178】
前回の添加の直後でのBrookfield(商標)粘度はこのとき、425mPa.sであった。
【0179】
20℃で測定されたOHイオン濃度の値は6.3×10−3mol/lであった。
【0180】
サンプル4−3について、その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌濃度(個数/グラム)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の測定値を求めた。
【0181】
これらの結果が表15および表16に示される。
【0182】
【表16】

【0183】
【表17】

【0184】
これらの結果は、本発明によるプロセスが、微生物の成長をOHイオン濃度の新たな増大によって停止させることを可能にすることを明らかにしている。従って、本発明によるプロセスは、サンプルにおける微生物汚染を制御することを可能にする。
【0185】
加えて、Brookfield(商標)粘度は損なわれていない。
【0186】
7日後、本発明によるサンプル4−3の一部を、OHイオン濃度を3×10−5モル/lに等しい値に低下させるようにガス状COの導入により処理した。サンプル4のこの一部はサンプル4−4と呼ばれ、その後、1mlの微生物懸濁物に再び暴露された。
【0187】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0188】
サンプル4−4について、その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌濃度(個数/グラム)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の測定を行った。
【0189】
【表18】

【0190】
これらの結果は、本発明によるプロセスが、微生物細菌の濃度を新たに増大させることを可能にすることを明らかにしている。従って、本発明によるプロセスは、サンプルにおける微生物濃度を制御することを可能にする。
【0191】
【表19】

【0192】
加えて、Brookfield(商標)粘度は、本発明によるプロセスを使用することによって損なわれていない。
【実施例3】
【0193】
本実施例の目的は、カオリンである無機物の水性懸濁物に適用された場合、本発明によるプロセスをこの治療的モードで例示することである。
【0194】
この目的はまた、本発明によるプロセスが、微生物細菌の成長の発達をこのような懸濁物において制御することを可能にすることを例示することである。
【0195】
顔料懸濁物
63.3重量%のアメリカ産カオリン(Georgia)(この粒子の90重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の70重量%が1μm未満の直径を有する)含有する水性懸濁物を、25重量%の濃度に粉砕し、その後、霧状化乾燥装置で乾燥し、0.25乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)の市販のポリアクリル酸ナトリウムの使用により水に分散することによって製造した。
【0196】
粉砕後の懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、7.7であった。
【0197】
1kgの2つのサンプルをこの顔料懸濁物から調製した。
【0198】
微生物懸濁物
7つの異なるタイプの細菌の混合物を作製した(これらはグラム陰性菌であり、オーストリアに由来する、自然に発生している炭酸カルシウム懸濁物から単離されたシュードモナス科(大部分がシュードモナス・エルギノーサである)からほとんどが形成された)。
【0199】
これら7つの異なる微生物種は、API(商標)試験(これは当業者には周知であり、会社BIOMERIEUX(商標)によって開発されている)を使用して同定することができた。
【0200】
微生物細菌の濃度は5×10細菌/mlである。
【0201】
サンプル5
1kgの前記顔料懸濁物に対応するサンプル5を、(2.7Mの濃度でのエチレングリコールにおけるCaO溶液の形態で添加された)0.053モルのOHイオンで十分な撹拌のもとで混合した。
【0202】
CaO添加直後でのカオリンの水性懸濁物のBrookfield(商標)粘度は327mPa.sであった。
【0203】
OHイオン濃度の値は1.25×10−2モル/lであった。
【0204】
サンプル6
サンプル6は先行技術を例示し、顔料懸濁物および微生物懸濁物の混合物に対応する。
【0205】
前の表記法を使用することによって、サンプル6およびサンプル7を特定の回数の暴露にさらし、その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌濃度(個数/グラム)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の値を測定した。
【0206】
これらの結果が表19および表20に示される。
【0207】
【表20】

【0208】
これらの結果は、本発明によるプロセスの効力をこの保護的態様で例示する。
【0209】
【表21】

【0210】
さらに、本発明によるサンプルのBrookfield(商標)粘度は、先行技術を表すサンプルと比較して損なわれていない。
【0211】
26日後、前回の暴露にさらされている本発明によるサンプル5の一部を、OHイオン濃度を2×10−6モル/lに等しい値に低下させるようにガス状COの導入により処理した。
【0212】
この例は、この新しいサンプルについてのT=0での例に対応する。
【0213】
サンプル5のこの一部は、これ以降、サンプル5−2と呼ばれ、本発明を表す場合、特定の回数の暴露にさらされる。
【0214】
サンプル5−2について、その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌の数(個数/ml)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)の測定を行う。
【0215】
これらの結果が表21および表22に示される。
【0216】
【表22】

【0217】
これらの結果は、本発明によるプロセスが、微生物細菌濃度を新たに増大させることを可能にすることを明らかにしている。従って、本発明によるプロセスは、無機物の水性懸濁物における微生物細菌を制御することを可能にする。
【0218】
【表23】

【0219】
さらに、Brookfield(商標)粘度は、先行技術を表すサンプルと比較して損なわれていない。
【実施例4】
【0220】
本実施例の目的は、カオリンである無機物の水性懸濁物に適用された場合であって、本発明によるプロセスが、o−フェニルフェノールである段階d)による殺生物剤を使用する場合において、本発明によるプロセスをこの治療的モードおよび保護モードで例示することである。
【0221】
この目的はまた、本発明によるプロセスが、微生物細菌の成長の発達をこのような懸濁物において制御することを可能にすることを例示することである。
【0222】
顔料懸濁物
粉砕することによって得られる、大理石である78.3乾燥重量%の天然炭酸カルシウム(この粒子の90重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の65重量%が1μm未満の直径を有する)を含有する水性懸濁物を、ナトリウム/マグネシウム混合物により中和された0.65乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)の市販のポリアクリラートを使用して調製した。
【0223】
粉砕後の懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、9.7であった。
【0224】
1kgの2つのサンプルをこの顔料懸濁物から調製した。
【0225】
微生物懸濁物
7タイプの異なるグラム陰性細菌から形成される混合物を作製した(これは、オーストリアに由来する、自然に発生している炭酸カルシウム懸濁物から単離されたシュードモナス科(大部分がシュードモナス・エルギノーサである)に従ってほとんどが構成された)。
【0226】
これら7つの異なる微生物種は、API(商標)試験(これは当業者には周知であり、会社BIOMERIEUX(商標)によって開発されている)を使用して同定することができた。
【0227】
微生物濃度は5×10細菌/mlである。
【0228】
サンプル7
このサンプルは、本発明によるプロセスを、この治療的モードで、および、o−フェニルフェノールである殺生物剤との組合せで例示するために使用される。
【0229】
1kgの前記顔料懸濁物に対応する本発明によるこのサンプルを10mlの微生物懸濁物における撹拌のもとで混合し、その後、定温器において32℃で7日間インキュベーションした。
【0230】
1週間のインキュベーションの後での細菌濃度は2×10細菌/mlであった。
【0231】
その後、200ppmのo−フェニルフェノールを、KOHを1モルのo−フェニルフェノールあたり1.07モルのKOHの濃度で含有する溶液に溶解されたo−フェニルフェノールの45%溶液の形態で十分な撹拌のもとでサンプルに加えた。1270ppmのCa(OH)もまた、細かく粉砕された懸濁物(粉砕後の粒子の平均直径が2μmであった)として2.7モル濃度のCa(OH)の濃度で加えた。
【0232】
CaO添加直後での炭酸カルシウムの懸濁物のBrookfield(商標)粘度は271mPa.sであった。
【0233】
その後、本発明によるこのサンプルを10mlの微生物懸濁物と数回混合し、その後、定温器において30℃で24時間、毎回インキュベーションした。
【0234】
その後、OHイオン濃度(mol/l)、微生物細菌濃度(個数/グラム)およびBrookfield(商標)粘度(mPa.s)を測定した。
【0235】
これらの結果が表23および表24に示される。
【0236】
【表24】

【0237】
これらの結果は、本発明によるプロセスでは、無機物の水性懸濁物の治療的処理が得られることを可能にすることを明らかにしている。
【0238】
【表25】

【0239】
さらに、本発明による無機物の水性懸濁物のBrookfield(商標)粘度は損なわれていない。
【0240】
サンプル8
このサンプルは、先行技術を例示するために使用され、また、o−フェニルフェノールである殺生物剤を使用する。
【0241】
1kgの前記顔料懸濁物に対応する本発明による第2のサンプルを10mlの微生物懸濁物と十分な撹拌のもとで混合し、その後、定温器において32℃で7日間インキュベーションした。
【0242】
1週間のインキュベーションの後での微生物濃度は2×10細菌/mlであった。
【0243】
200ppmのo−フェニルフェノールを、1モルのo−フェニルフェノールあたり1.07モルのKOHによって溶解されたo−フェニルフェノールの45%溶液の形態で十分な撹拌のもとでのこの第2のサンプルに加えた。
【0244】
o−フェニルフェノール添加直後のBrookfield(商標)粘度は285mPa.sであった。
【0245】
その後、OHイオン濃度(mol/l)および微生物細菌濃度(個数/グラム)を測定した。
【0246】
これらの結果が表27に示される。
【0247】
【表26】

【0248】
サンプル8(これは先行技術を表す)は、o−フェニルフェノールが、治療的範囲で使用されたとき、細菌に関連して不十分な殺菌効果をもたらしていることを示している。
【0249】
保存は不完全であり、十分ではない。逆に、本発明によるサンプル7の場合、o−フェニルフェノールの使用と、OHイオン濃度を増大する段階とを組み合わせる本発明によるプロセスでは、非常に満足な結果が、無機物の水性懸濁物における微生物細菌の低下に関して得られることを示すことができた。
【実施例5】
【0250】
本実施例の目的は、ワゴン洗浄水に関して、本発明によるプロセスをこの治療的モードおよび保護モードで例示することである。
【0251】
ワゴン洗浄水の保存
ワゴン洗浄水を模擬するために、実施例1から採取された炭酸カルシウム懸濁物の3重量%を含む緩衝化された食塩溶液を使用した。
【0252】
その後、消毒試験を2つの異なるサンプルについて着手した。
【0253】
サンプル9
このサンプルは、本発明によるプロセスをこの保護モードで例示するために使用される。
【0254】
Ca(OH)を無菌リン酸塩の緩衝化された溶液に0.85重量%(PBS)で溶解し、30℃での24時間の貯蔵の後、表28に示される細菌/酵母カクテルと混合した。
【0255】
サンプルをもう一度30℃で24時間インキュベーションし、その後、プレートから取り出した。
【0256】
成長した細菌を光学顕微鏡で調べた。
【0257】
サンプル10
このサンプルは、本発明によるプロセスをこの治療的モードで例示するために使用される。
【0258】
最初に細菌の(PBSにおける)カクテルを、次いで(PBSにおける)細菌/酵母カクテルをCa(OH)と混合し、貯蔵し、その後、これらの型から除いた。
【0259】
【表27】

【0260】
表29および表30は、Ca(OH)の異なる初期濃度について24時間のインキュベーションの後でサンプルにおいて測定されたOHイオン濃度(モル/l)および酵母菌濃度(個数/グラム)を示す。
【0261】
【表28】

【0262】
【表29】

【0263】
従って、表29は、200ppmの初期Ca(OH)濃度について、24時間後、1000/mlの微生物細菌濃度が得られ、OHイオン濃度が5×10−4モル/lであることを明らかにする。
【0264】
微生物細菌濃度の値が500ppmの初期Ca(OH)濃度に対し50/mlに低下した。ついで3×10−3モル/lのOHイオン濃度が得られる。
【0265】
これらの結果は実際に、本発明によるプロセスの保護効果を明らかにしている。
【0266】
最後に、微生物細菌濃度の値が500ppmの初期Ca(OH)濃度に対し10/ml未満の量に低下し、3×10−3モル/lのOHイオン濃度が得られる。
【0267】
この後者の結果は、この治療的モードで使用された本発明によるプロセスの場合には、非常に低い量(特に、1mlあたり10個未満の量)の微生物細菌を有する無機物の水性懸濁物を得ることが可能であることを例示している。
【0268】
同時に、表30は、特に初期Ca(OH)濃度が十分であるならば、24時間後には微生物濃度が減少しているので、本発明によるプロセスの効力をこの治療的モードで明らかにしている。
【0269】
従って、1000ppmの初期Ca(OH)濃度の場合、これらの濃度が24時間後において1mlあたり10個未満であるので、微生物細菌の非常に大きな割合が殺されていることは特筆される。
【0270】
この後者の結果は、この保護モードで使用された本発明によるプロセスの場合には、非常に低い量(特に、1mlあたり10個未満の量)の微生物細菌を有する無機物の水性懸濁物を得ることが可能であることを例示している。
【0271】
その後、初期Ca(OH)濃度が1000ppmに等しいサンプル9およびサンプル10を、30℃でのこれらの型から、PCA(平板計数寒天)と呼ばれる細菌用培地に取り出した。
【0272】
これらの培地は、下記の研究成果に記載される微生物用配合物に対応することが指摘される:「American Public Health Association:Standard Methods for the Examination of Dairy Producsts(第15版、1985年)」、「American Public Health Association,American Water Works Association and Water Pollution Control Federation:Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater(第20版、Washington、1998年)」、および、「総細菌数におけるタンパク質分解生物の検出のための改善された寒天培地、J.Appl.Bact.、33:363から370(1970)」。
【0273】
48時間のインキュベーションの後、サンプルをもう一度、これらの型からPCAタイプの同じ培地に取り出した。
【0274】
微生物細菌に関して、1mlあたり40個未満の細菌が計数され、および、1mlあたり100個未満の細菌以外の微生物が計数される。
【0275】
従って、これらの結果は本発明によるプロセスの効力をこの治療的モードで例示している。
【0276】
サンプル9の一部(これは9−2と呼ばれる)について、OHイオン濃度をガス状COの添加によって5×10−7モル/lの値に低下させた。このサンプルをもう一度、表28に記載される細菌および酵母のカクテルの存在下で24時間インキュベーションした。その後、このサンプルを、以前に記載されたように、この型からPCAタイプの細菌用培地に取り出した。
【0277】
以前に記載されたように、その後、初期Ca(OH)濃度の関数としての微生物細菌濃度を測定した。これらの結果が表31に示される。
【0278】
【表30】

【0279】
これらの結果は、OHイオン濃度を液体COの添加により低下させることによって、保護効果を無効にし、微生物の成長を再開させることが、本発明によるプロセスを使用した場合には可能であったことを明らかにしている。
【実施例6】
【0280】
本実施例は、OHイオン濃度を低下させる段階が物理的プロセス(この場合には、温度を上昇することに基づくプロセスである)と組み合わされる本発明によるプロセスを例示する。
【0281】
顔料懸濁物
粉砕することによって得られる、大理石である0.1乾燥重量%の天然炭酸カルシウム(この粒子の90重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の65重量%が1μm未満の直径を有する)を含有する水性懸濁物を、ナトリウム/マグネシウム混合物により中和された0.65乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)の市販のポリアクリラートを使用して調製した。
【0282】
2つのサンプルを各回調製した。
【0283】
微生物懸濁物
濃度が10個/gの微生物に等しい微生物懸濁物(この組成が表32によって与えられる)を調製した。
【0284】
サンプル11
このサンプルは本発明を例示し、微生物懸濁物が混合され、その後、500ppmのCa(OH)を含有する溶液が導入された顔料懸濁物からなる。
【0285】
このサンプルを20℃で24時間インキュベーションした。
【0286】
サンプル12
このサンプルは先行技術を例示し、Ca(OH)を含有しないことを除いて、サンプル11と同一である。
【0287】
このサンプルを20℃で24時間インキュベーションした。
【0288】
サンプル13
このサンプルは本発明を例示し、微生物懸濁物が混合され、その後、500ppmのCa(OH)を含有する溶液が導入された顔料懸濁物からなる。
【0289】
このサンプルを40℃で24時間インキュベーションした。
【0290】
サンプル14
このサンプルは先行技術を例示し、Ca(OH)を含有しないことを除いて、サンプル13と同一である。
【0291】
このサンプルを40℃で24時間インキュベーションした。
【0292】
【表31】

【0293】
それぞれのサンプルについて、OHイオン濃度(モル/l)を細菌濃度および細菌以外の微生物濃度(個数/ml)とともに測定した。これらの結果が表33に示される。
【0294】
【表32】

【0295】
表33は、OHイオン濃度を低下させる段階(これは本発明によるプロセスを表す)は、20℃において、すべてのタイプの微生物細菌の数を減少させることを可能にすることを明らかにしている(サンプル11)。
【0296】
OHイオン濃度を低下させるこの段階は、40℃への温度の上昇である物理的プロセスとの組合せ(この組合せもまた、本発明によるプロセスを表す)では、すべてのタイプの微生物における濃度を、この濃度がこの場合には1mlあたり10個未満であるので、非常に顕著な様式で減少させることを可能にすることもまた明らかにしている。
【0297】
本発明によるサンプル11およびサンプル13について、その後、OHイオン濃度をCOの添加により3.2×10−6モル/lの値に低下させた。その後、これらのサンプルをもう一度、上記の微生物カクテルにおいてインキュベーションし、その後、これらの型から30℃でのPCAタイプの微生物用カクテルに取り出し、前記カクテルを24時間にわたって作用させた。
【0298】
この場合、OHイオン濃度は1×10−4モル/lに等しく、また、微生物細菌の新たな増大がこの場合には観測される。従って、本発明によるプロセスによって、微生物の成長を再開させることが可能であった。
【実施例7】
【0299】
本実施例の目的は、炭酸カルシウムである無機物の水性懸濁物に適用された場合、本発明によるプロセスを、粉砕によるこの治療的モードで例示することである。
【0300】
この目的はまた、本発明によるプロセスが、微生物細菌の成長の発達を、Brookfield(商標)粘度に関してこの安定性を変化させることなく、このような懸濁物において制御することを可能にすることを例示することである。
【0301】
微生物懸濁物:
7タイプの異なるグラム陰性細菌の混合物を作製した(これは、オーストリアに由来する、細菌が自然に散布された炭酸カルシウムスラリーから単離されたシュードモナス科(大部分がシュードモナス・エルギノーサである)に従ってほとんどが構成された)。
【0302】
これら7つの異なる微生物種は、API(商標)試験(これは当業者には周知であり、会社BIOMERIEUX(商標)によって開発されている)を使用して同定することができた。
【0303】
微生物濃度は5×10細菌/mlである。
【0304】
サンプル15
このサンプルは、先行技術を例示するために使用される。このサンプルは、炭酸カルシウムの懸濁物を微生物懸濁物に暴露し、その後、炭酸カルシウムの前記懸濁物を粉砕することによって得られる。
【0305】
5kgの乾燥炭酸カルシウムを77.3乾燥重量%の天然大理石(この粒子の30重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の8重量%が1μm未満の直径を有する)の水性懸濁物から調製した。
【0306】
前記懸濁物を10mlの微生物懸濁物により処理し、30℃で24時間貯蔵した。
【0307】
ナトリウムおよびマグネシウムの市販混合物によって中和された0.65乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)のポリアクリラートとともに粉砕することによって、粒子の88重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の64重量%が1μm未満の直径を有する懸濁物を作製した。
【0308】
粉砕後の懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、9.7であった。
【0309】
粉砕後24時間でのBrookfield(商標)粘度は284mPa.sであった。
【0310】
粉砕後のこの懸濁物の微生物細菌濃度は10細菌/mlを超えていた。
【0311】
サンプル16
このサンプルは、本発明による処理をこの保護モードで例示するために使用される。
【0312】
5kgの乾燥炭酸カルシウムを77.1乾燥重量%の天然大理石(この粒子の30重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の8重量%が1μm未満の直径を有する)の水性懸濁物から調製した。
【0313】
前記懸濁物を10mlの微生物懸濁物により処理し、30℃で24時間貯蔵した。
【0314】
その後、このサンプルを、2×10−2モル/lのOHイオンを含有する粉砕されたCa(OH)(粒子の平均直径が2μmに等しい)の溶液において、十分な撹拌のもとで混合した。
【0315】
ナトリウムおよびマグネシウムの市販混合物によって中和された0.65乾燥重量%(無機物の乾燥重量に対して)のポリアクリラートとともに粉砕することによって、粒子の91重量%が2μm未満の直径を有し、粒子の66重量%が1μm未満の直径を有する懸濁物を作製した。
【0316】
粉砕後の懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、12.2であった。
【0317】
前回の添加後24時間でのBrookfield(商標)粘度は253mPa.sであった。
【0318】
粉砕後のこの懸濁物の細菌濃度は10細菌/ml未満であった。
【0319】
これらの結果は、本発明によるプロセスが、Brookfield(商標)粘度に関して本発明によるサンプルの安定性を変化させることなく、サンプルの微生物汚染を、先行技術の処理と比較して非常に明瞭に低下させることを可能にしていることを明らかにしている。
【0320】
2日後、本発明によるサンプル16を、OHイオン濃度を2×10−5モル/lに等しい値に低下させるように、ガス状COの導入により処理した。
【0321】
COの前回の添加の後の24時間でのBrookfield(商標)粘度は222mPa.sであった。
【0322】
粉砕後のこの懸濁物の細菌濃度は10細菌/ml未満であった。
【0323】
続いて、本発明によるサンプル16を再度、ガス状COの導入により処理した。
【0324】
その後、このサンプルを1mlの微生物懸濁物により処理し、30℃で48時間貯蔵した。この場合、この懸濁物の細菌濃度は10細菌/mlを超えていた。これらの結果は、本発明のよるプロセスが、ガス状COの添加により、サンプル中の微生物の成長を刺激することを可能することを明らかにしている。
【実施例8】
【0325】
本実施例の目的は、沈降炭酸カルシウムである無機物の水性懸濁物に適用された場合、本発明によるプロセスをこの治療的モードで例示することである。
【0326】
この目的はまた、本発明によるプロセスが、微生物細菌の成長の発達をこのような懸濁物において制御することを可能にすることを例示することである。
【0327】
顔料懸濁物:
OMYA社(商標)によって販売されるSyncarb(商標)F474タイプの炭酸塩沈殿物の50.0乾燥重量%を含有する水性懸濁物を製造した。この懸濁物のpH値は、20℃で測定されたとき、9.7であった。
【0328】
1kgの2つのサンプルをこの顔料懸濁物から調製した。
【0329】
細菌懸濁物:
7つの異なるタイプの細菌の混合物を作製した(これらはグラム陰性菌であり、オーストリアに由来する、自然に発生している炭酸カルシウム懸濁物から単離されたシュードモナス科(大部分がシュードモナス・エルギノーサである)からほとんどが形成された)。
【0330】
細菌濃度は2×10細菌/mlである。
【0331】
サンプル17
沈降炭酸カルシウムの懸濁物の1kgの最初のサンプルを、激しい撹拌のもとで、0.075モルのOHイオン(これは水におけるCa(OH)の2.7モル濃度の懸濁物の形態で添加された)と混合した。
【0332】
Ca(OH)添加直後での沈降炭酸カルシウムの懸濁物の粘度は227mPa.sに等しかった。
【0333】
懸濁物のpHは12.1に等しかった。
【0334】
この場合、この懸濁物は、本発明を例示するサンプル17に対応する。
【0335】
サンプル18
沈降炭酸カルシウムの懸濁物のもう一方の1kgのサンプルを細菌懸濁物と混合した。
【0336】
この懸濁物の粘度は257mPa.sに等しかった。
【0337】
この場合、この懸濁物は、先行技術を例示するサンプル18に対応する。
【0338】
その後、サンプル17およびサンプル18を、表34に示されるように特定の回数の暴露にさらした。OHイオン濃度を、表34にも示されるように、(以前に記載された方法に従って)種々の時間で微生物細菌濃度とともにこれらのそれぞれについて測定した。
【0339】
【表33】

【0340】
これらの結果は本発明によるプロセスの効力をこの保護的態様で例示している。
【0341】
加えて、T=2日およびT=4日で測定された本発明によるサンプル番号17の粘度は227mPa.sおよび232mPa.sに等しい。従って、これらは、先行技術を表すサンプルと比較されたとき、損なわれていない。
【0342】
4日後、本発明によるサンプル17の一部を、OHイオン濃度を4×10−6モル/リットルの値に低下させるように、ガス状COの導入により処理した。
【0343】
サンプル17のこの一部はこれ以降、サンプル17bと呼ばれる。
【0344】
その後、このサンプル17bを、表35に示されるように特定の回数の暴露にさらした。
【0345】
その後、OHイオン濃度を、表35に示されるように、(以前に記載された方法に従って)種々の時間で微生物細菌濃度とともに測定した(T=0の例は、ガス状COをサンプル17に導入した時に対応し、これ以降、サンプル17bと呼ばれる)。
【0346】
【表34】

【0347】
これらの結果は、本発明によるプロセスが、細菌濃度を新たに増大させることを可能にしたことを明らかにしている。従って、本発明によるプロセスは、沈降炭酸カルシウムの水性懸濁物における微生物成長が制御されることを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物の水性分散物および/または懸濁物の微生物汚染の消毒および/または保存および/または低下および/または制御のためのプロセスであって、
a)前記水性分散物および/または前記水性懸濁物のOHイオン濃度を1×10−2モル/l以上の値に増大させる少なくとも1つの段階、
b)少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤を場合により使用して、段階a)の前、期間中または後で行われる、前記水性分散物および/または懸濁物を分散および/または粉砕する少なくとも1つの段階、
c)場合により段階a)の後で行われる、前記水性分散物および/または懸濁物のOHイオン濃度を1×10−2モル/l以下の値に低下させる少なくとも1つの段階、
d)場合により段階a)および/または段階b)および/または段階c)の前、期間中または後に行われる、殺菌効果を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、物理的な汚染除去プロセスを使用する、少なくとも1つの段階
を使用することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
段階a)に関連するOHイオン濃度の値が好ましくは2×10−2モル/l以上であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
段階a)に関連するOHイオン濃度の増大が、1つ以上のOHイオン供与体(例えば、アルカリおよび/またはアルカリ土類酸化物および/またはアルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物)を使用して行われることを特徴とする、請求項1または2の一項に記載のプロセス。
【請求項4】
段階c)に関連するOHイオン濃度の値が好ましくは1×10−3モル/l以下であり、また非常に好ましくは1×10−4モル/l以下であることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のプロセス。
【請求項5】
段階c)に関連するOHイオン濃度の低下が、1つ以上の一価および/または多価の弱い、適度に強い、または強いH供与体を使用して、ならびに好ましくは、炭酸水において解離したガス状COを使用して行われることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のプロセス。
【請求項6】
殺菌効果を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、微生物汚染除去の物理的プロセスを使用する、場合により行われる段階d)が、o−フェニルフェノールおよび/またはこの塩もしくは実際にはこれらの混合物の中から、および/または、微生物細菌(好ましくはシュードモナス属(Pseudomonas)細菌、また、より好ましくはシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)細菌)を破壊する細菌を含有する少なくとも1つの製造物の中から選ばれる少なくとも1つの殺生物剤を使用すること、および破壊する細菌がブデロビブリオ(Bdellovibrio)科の細菌であり、また、非常に好ましくはブデロビブリオ・バクテリオボルス(Bdellovibrio bacteriovorus)菌であることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のプロセス。
【請求項7】
殺菌効果を有する少なくとも1つの物質の添加、および/または、微生物汚染除去の物理的プロセスを使用する、場合により行われる段階d)が、温度の上昇に基づく少なくとも1つの処理プロセスを使用することを特徴とする、請求項1から6の一項に記載のプロセス。
【請求項8】
段階c)が必須であること、および、殺菌剤が段階d)に従って使用されないこと、および、段階c)が好ましくは段階a)後の1週間から1ヶ月の間で行われることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のプロセス。
【請求項9】
不連続様式、半連続様式または連続様式で使用されることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載のプロセス。
【請求項10】
処理される無機物の水性分散物および/または懸濁物に関して治療的効果および/または保護効果を含むことを特徴とする、請求項1から9の一項に記載のプロセス。
【請求項11】
使用される無機物および/または顔料および/または充填材が、カオリン、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、タルク、石膏、サチンホワイト、雲母、炭酸カルシウム含有の無機物および/または充填材および/または顔料、また特に、天然の炭酸カルシウム、大理石、石灰岩、ドロマイトまたはこれらの混合物、他の無機物とのこれらの混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物)、もしくはまた、三水酸化アルミニウムまたは三酸化アルミニウムとの炭酸カルシウムの混合物、もしくはまた、合成繊維または天然繊維との混合物、もしくはまた、無機物の共構造体(例えば、タルク−炭酸カルシウム、あるいはタルク−二酸化チタン共構造体、または、これらの混合物など)、ならびに/もしくは、ドロマイトを、沈殿による合成様式で製造された炭酸カルシウムおよび/または他の無機物との炭酸カルシウム沈降物と一緒に含有する炭酸カルシウムの中から選ばれることを特徴とする、請求項1から10の一項に記載のプロセス。
【請求項12】
無機物および/または顔料および/または充填材が天然のおよび/または沈降炭酸カルシウムの中から選ばれることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
無機物および/または顔料および/または充填材が、天然の炭酸カルシウムの中から選ばれ、また好ましくは、大理石、カルサイト、チョークまたはこれらの混合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
鉱物産業の分野において、また特に、貯蔵タンク、陸上輸送受器(例えば、コンクリートおよびスチールタンク、鉄道タンク貨車、タンクおよび容器など)において、製紙産業において、好ましくは紙製造において、および/または、被覆用有色物において、ならびに、水性塗料の製造の分野において、また同様に、ラッカーおよびワニスにおいて使用されることを特徴とする、請求項1から13の一項に記載のプロセス。
【請求項15】
段階c)が必須であること、および、殺菌物質が段階d)に従って使用されないことを特徴とする、請求項1から14の一項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1から14の一項に記載のプロセスによって得られることを特徴とする、無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項17】
a)OHイオン濃度が1×10−2モル/l以上であり、また好ましくは2×10モル/l以上であること、
b)微生物濃度が100微生物/グラム以下であり、また好ましくは10微生物/グラム以下であること、
c)および、
1.無機物、
2.水、
3.場合により少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.場合により少なくとも1つの消泡剤、
5.場合により少なくとも1つの殺菌剤
を含有すること
を特徴とする無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項18】
請求項17に記載の無機物の水性分散物および/または懸濁物であって、前記水性分散物および/または懸濁物の総重量に対して、
1.乾燥重量比で0.1%から85%の無機物、
2.重量比で15%から99.9%の水、
3.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの消泡剤、
5.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの殺菌剤
を含有することを特徴とする、無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項19】
殺菌効果を有する物質が、o−フェニルフェノール、この塩、もしくはまた、これらの混合物、ならびに/もしくは、微生物細菌(好ましくはシュードモナス属細菌、またより好ましくはシュードモナス・エルギノーサ細菌)を破壊する細菌を含有する少なくとも1つの製造物の中から選ばれること、および、破壊する細菌がブデロビブリオ(Bdellovibrio)科の細菌であり、また非常に好ましくはブデロビブリオ・バクテリオボルス(Bdellovibrio bacteriovorus)菌であることを特徴とする、請求項17または18の一項に記載の無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項20】
請求項15に記載されるプロセスによって得られることを特徴とする無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項21】
a)OHイオン濃度が1×10−2モル/l以下であり、また好ましくは1×10−3モル/l以下であり、また非常に好ましくは1×10−4モル/l以下であること、
b)微生物濃度が100微生物/グラム以下であり、また好ましくは10微生物/グラム以下であること、
c)および、
1.無機物、
2.水、
3.少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.および場合により少なくとも1つの消泡剤、
を含有すること
を特徴とする無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項22】
請求項21に記載の無機物の水性分散物および/または懸濁物であって、前記水性分散物および/または懸濁物の総重量に対して、
1.乾燥重量比で0.1%から85%の無機物、
2.重量比で10%から99.89%の水、
3.乾燥重量比で0.01%から5%の少なくとも1つの分散化剤および/または少なくとも1つの粉砕助剤、
4.乾燥重量比で0%から5%の少なくとも1つの消泡剤、
を含有すること
を特徴とする、無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項23】
消泡剤が、シロキサン化合物、脂肪酸エステルおよびこれらの混合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項21または22の一項に記載の無機物の水性分散物および/または懸濁物。
【請求項24】
カオリン、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、タルク、石膏、サチンホワイト、雲母、炭酸カルシウム含有の無機物および/または充填材および/または顔料、また特に、天然の炭酸カルシウム、大理石、石灰岩、ドロマイトまたはこれらの混合物、他の無機物とのこれらの混合物(例えば、タルク−炭酸カルシウム混合物、炭酸カルシウム−カオリン混合物)、もしくはまた、三水酸化アルミニウムまたは三酸化アルミニウムとの炭酸カルシウムの混合物、もしくはまた、合成繊維または天然繊維との混合物、もしくはまた、無機物の共構造体(例えば、タルク−炭酸カルシウム、あるいはタルク−二酸化チタン共構造体、または、これらの混合物など)、ならびに/もしくは、ドロマイトを、沈殿による合成様式で製造された炭酸カルシウムおよび/または他の無機物との炭酸カルシウム沈降物と一緒に含有する炭酸カルシウムの中から選ばれる無機物および/または顔料および/または充填材を含有することを特徴とする、請求項16から23の一項に記載の分散物および/または懸濁物。
【請求項25】
無機物および/または顔料および/または充填材が天然のおよび/または沈降炭酸カルシウムの中から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載の分散物および/または懸濁物。
【請求項26】
無機物および/または顔料および/または充填材が、天然の炭酸カルシウムの中から選ばれ、また好ましくは、大理石、カルサイト、チョークまたはこれらの混合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項25に記載の分散物および/または懸濁物。
【請求項27】
鉱物産業の分野における、請求項16から26の一項に記載の無機物の水性分散物および/または懸濁物の使用。
【請求項28】
製紙産業における、また特に、紙の製造および/または紙の被覆における、請求項16から26の一項に記載される無機物の水性分散物および/または懸濁物の使用。
【請求項29】
水性塗料、ならびに特に、ラッカーおよびワニスの製造の分野における、請求項16から26の一項に記載の無機物の水性分散物および/または懸濁物の使用。
【請求項30】
請求項16から26の一項に記載の分散物および/または懸濁物を含有することを特徴とする無機配合物。
【請求項31】
請求項16から26の一項に記載の分散物および/または懸濁物を含有することを特徴とする紙配合物ならびに特に紙のシートおよび被覆用有色物。
【請求項32】
請求項16から26の一項に記載の分散物および/または懸濁物を含有することを特徴とする水性塗料ならびに特にラッカーおよびワニス。

【公表番号】特表2008−529564(P2008−529564A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552746(P2007−552746)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000151
【国際公開番号】WO2006/079911
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(505351050)オムヤ・デベロツプメント・アー・ゲー (22)
【Fターム(参考)】