説明

微生物測定装置および微生物測定方法

【課題】微生物測定試料の採取、微生物数の測定、試料および微生物に汚染された可能性のある材料の廃棄までを、衛生的にその場で迅速に行うことのできる微生物測定装置および微生物測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】微生物採取面を備えたヘッド部と、前記ヘッド部が液体を保持することのできる着脱可能な測定セルを備え、誘電泳動電源およびインピーダンス測定部、演算部、表示部、操作スイッチを具備した測定本体と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物採取および微生物測定用具に関し、各種の表面に付着した微生物を採取し測定するための微生物採取および測定用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚、粘膜などの生体組織表面や、キッチン、風呂、床、壁などの表面に生息する微生物を採取する技術として、微生物を採取する面に定量的な運動を生じさせて採取する技術が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−334059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の採取用具では微生物の採取のみを行うものであり、採取した微生物の検査に関しては他の手段を用いる必要があった。また、微生物の検査は測定試料の採取から検査、試料および試料に汚染された可能性のある材料の廃棄までを、衛生的に行う必要があるが、その一連の操作を行う技術に関しては記載されていない。
【0004】
また、微生物検査は表面上に存在する微生物だけでなく、水道水や貯水タンク内の水、飲料水など、液体中に懸濁された状態で存在する微生物を測定する要求があるが、表面および液体中の微生物検査を行える装置に関しては技術の提案がなされていない。
【0005】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、微生物測定試料の採取、微生物数の測定、試料および微生物に汚染された可能性のある材料の廃棄までを、衛生的にその場で迅速に行うことのできる微生物測定装置および微生物測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の微生物測定装置は、微生物の採取および測定をするための微生物測定装置であって、微生物の採取および測定をするための微生物測定装置であって、微生物採取面を備えたヘッド部と、液体を保持することのできる前記ヘッド部に着脱可能な測定セルと、誘電泳動電極と、測定本体と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、単一の装置で表面上の微生物採取と測定をその場で迅速に行うことができる。
【0008】
また、本発明の微生物測定装置は、前記ヘッド部と、前記測定本体が着脱可能に連結される。
【0009】
上記構成によれば、微生物によって汚染される可能性のあるヘッド部を衛生的に破棄することができる。
【0010】
また、本発明の微生物測定装置は、前記微生物採取面および誘電泳動電極が、同一の基板上に形成される。
【0011】
上記構成によれば、専用の測定セルが無くてもビーカーなど一般的な容器を利用して微生物検査が行え、更には、微生物が液体中に懸濁された状態の測定試料も直接測定することが可能であり、微生物測定装置の汎用性が高くなる。
【0012】
また、本発明の微生物測定装置は、前記誘電泳動電極が、前記微生物採取面上に形成される。
【0013】
上記構成によれば、微生物採取面が誘電泳動電極の基板を兼ねることから、製造工程と材料費の低減ができる。
【0014】
また、本発明の微生物測定装置は、前記微生物採取面が、有効径0.05〜5μmのフィルタ素材からなる。
【0015】
上記構成によれば、微生物採取面の表面に、採取対象の微生物の寸法と同程度の孔径のフィルタを用いることにより、微生物を確実に保持することができる。
【0016】
また、本発明の微生物測定装置は、前記測定本体が振動手段を備え、前記ヘッド部に直線往復および/または回転振動を与える。
【0017】
上記構成によれば、被採取面に付着する微生物を剥離させ、確実に採取することができ、微生物検査の精度が向上する。また、前記誘電泳動電極と液体との間に相対的な位置を変化さることができるため、より多くの微生物を誘電泳動力の働くギャップ近傍へ供給することができ、測定感度が向上する。
【0018】
また、本発明の微生物測定方法は、微生物測定装置を用いて微生物を測定する方法であって、前記微生物採取面を微生物検査対象の表面に接触させて前記微生物採取面に微生物を付着させる微生物採取ステップと、液体が入った測定セルにヘッド部を含浸し前記微生物採取面に付着した微生物を液体中に懸濁するステップと、前記誘電泳動電極に交流電圧を印加し、誘電泳動力によって測定セル中に懸濁された微生物を前記誘電泳動電極に捕集すると同時にインピーダンス変化の計測を行うインピーダンス計測ステップと、計測したインピーダンス変化から測定セル中の微生物濃度を表示するステップと、微生物に汚染された前記ヘッド部を汚染部分に触れることなく破棄するステップを有する。
【0019】
また、本発明の微生物測定方法は、微生物測定装置を用いて微生物を測定する方法であって、少なくとも微生物採取ステップまたはインピーダンス計測ステップと同時に前記測定本体に具備された前記振動手段によって前記ヘッド部に振動を与える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、微生物測定試料の採取、微生物数の測定、試料および微生物に汚染された可能性のある材料の廃棄までを、衛生的にその場で迅速に行うことのできる微生物測定装置および微生物測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施の形態1)
本発明の微生物採取用具の実施の形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は微生物採取用具の略正面図、図2は微生物の測定を行うための測定セルを示す略断面図である。
【0022】
図1において、実施の形態1の微生物測定装置1はいわゆるハブラシの柄様の形態を備え、ヘッド部2および測定本体3はプラスチックなど任意の材料で形成される。ヘッド部2の先端部には微生物採取対象の表面(以下、被採取面と呼ぶ)の微生物を付着させる採取面4および、後述する誘電泳動電極12(図3に記載)と測定回路を電気的に接続する複数のヘッド側端子5を備える。また、ヘッド部2は着脱可能な構成にて測定本体3と接続される。
【0023】
採取面4は、多孔質材料となるのであれば、特に素材は問わない。PETなどのプラスチック材料、アルミニウムなどの金属材料、繊維材料、フィルタ素材など各種素材の使用が可能であるが、本実施の形態では、フィルタ穴径が0.5μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルタを用いている。フィルタ穴径は測定対象とする微生物の代表寸法と同程度であることが望ましい。ウイルスから酵母、原虫まで捕獲することを対象とするため、ここでは0.05μmから5μmの穴径を選択した。これにより被採取面の微生物をフィルタに確実に保持することが可能となるため、被採取面から確実に微生物を採取でき、精度の高い微生物検査が可能となる。
【0024】
測定本体3は、測定結果など検査実施者に対して各種情報を表示するLCD等を用いた表示手段6と、少なくとも一つの操作スイッチ7を有する。更には、図示しない圧電素子や各種スピーカーなどを用いたブザーを備えることで、検査実施者に様々なステータスを知らせるようにしても良い。
【0025】
図2は、微生物の測定を行うための測定セル8略断面図である。測定セル8は、液体保持領域11を形成するためのセル構造体9の開口部に、シール10が貼り付けられている。液体保持領域11は微生物の測定を行うのに必要な容量が確保できていれば良く、本実施の形態では5mlとしている。
【0026】
セル構造体9はその容量を確保できるだけの大きさで、プラスチックなど液体を保持できる任意の材料で形成される。シール10はセル構造体9内部に保持される液体が外部に漏れ出さず、腐敗を防止するためにビニールやPET、またはそれらとアルミ薄膜を張り合わせた材料などで形成される。セル構造体9内部に保持される液体の種類は、微生物を懸濁したときに浸透圧の不均衡によって測定対象の微生物が破壊されないものであればいずれも使用可能であるが、本実施の形態では、糖アルコールであるマンニトール溶液を用いている。
【0027】
また、セル構造体9はシール10を取り外した状態で、その開口部がヘッド部2の採取面4を覆うことのできる構造にて形成される。具体的には、ヘッド部2の採取面4周囲と測定セル8内部の開口部にそれぞれねじ切りをするなどして実現する。
【0028】
図3は測定セル8のシール10(図2)を取り除き、開口部側から見た概略図である。底面には金属薄膜で形成された誘電泳動電極12を備える。誘電泳動電極12はセル構造体9に直接形成されてもよいが、別途ガラスやPETフィルムなどの基板上に形成し、セル構造体9の底面に貼り付けても良い。測定セル8の開口部の端面には、ヘッド部2に備えられたヘッド側端子5と電気的に接続可能なセル側端子13を備える。
【0029】
図4は、誘電泳動電極の拡大図であり、一方の極14および極15の複数極から成り、それぞれの極の間にギャップ16が形成されている。誘電泳動電極12間に交流電界を印加すると、液体保持領域内の液体中に懸濁された微生物は、最も電界が集中するこのギャップ16に向かって泳動される。誘電泳動のより詳細な説明は、「ACエレクトロカイネティクス:コロイドとナノ分子(ヒーウェルモーガン、ニコラスGグリーン共著)(Research Studies Press LTD.,2002 )AC Electrokinetics : colloids and nanoparticles(Hywel Morgan and Nicolas G Green著)」などを参照されたい。
【0030】
誘電泳動電極12のパターン形成は、フォトリソグラフィやめっき成長法、スクリーン印刷法など金属薄膜パターンを作成することのできる一般的な方法を適用可能である。本実施の形態では、PETフィルム上にスクリーン印刷にてパターン形成したものを用いている。
【0031】
図5は、ヘッド部に測定セルを取り付けた際の、誘電泳動電極および測定本体内の測定回路との接続を表すブロック図である。
【0032】
測定セル8(図2)上に形成された誘電泳動電極12の複数の極は、本体側端子5およびセル側端子13を介して、ヘッド部2(図1)内においてリード線などで電気的に配線され、測定本体3(図1)内の測定部17に接続される。測定部17は、誘電泳動を発生させるための交流電圧を誘電泳動電極12に供給すると共に、このとき電極に流れる電流を測定する。
【0033】
演算部18は、測定部17が印加した交流電圧および測定電流の値から、インピーダンスを算出する。制御部19は図示しないCPUやメモリなどから構成される回路によって構成され、測定手段17の測定動作のための制御、演算部18からのデータ取得、表示手段6へのデータ出力、操作スイッチ7からの入力など、微生物測定に必要な制御全般を行う。
【0034】
採取面4(図1)を含むヘッド部2(図1)に回転方向振動もしくは、上下方向振動、もしくは縦横方向振動、もしくはその1種類以上を組み合わせた振動を与える振動手段20が制御部19に接続されている。振動手段20として用いられる機構は、ヘッド部2(図1)に上記の振動運動を与えられるものであれば適用可能であるが、本実施の形態では、回転軸に偏心おもりを取り付けたDCモータを使用している。振動手段20はヘッド部2(図1)に振動を効率よく伝えられるようにするため、好ましくは測定本体3内部の最もヘッド部2(図1)に近接する部分に設置される。
【0035】
これら一連の測定部17、演算部18、制御部19、振動手段20は測定本体3内にPCB(Printed Circuit Board)基板やリード線などを用いて回路形成することで格納される。
【0036】
以下、実施の形態1において図1〜図5とともに、微生物を被採取面から採取し、微生物を測定・結果表示し、汚染部分を廃棄するまでの一連の流れ(微生物測定方法)を説明する。
【0037】
まず、被採取面上の微生物を採取するステップ(以下、採取ステップと呼ぶ)について説明する。検査実施者は、測定本体3を手に持ち、採取面4を被採取面に押し当てる。次いで、検査実施者は操作スイッチ7を押下することで、微生物採取を開始する。制御部19は初期状態で操作スイッチ7が押下されると、振動手段20を動作させ、採取面4に一定の振動を与える。
【0038】
微生物は自身が産生するグルカンなど粘着性のある多糖体、微生物表層の線毛様構造、その他の物理化学的な吸着によって被採取面に固着しているものも多く、単に採取面4を被採取面に押し当てるだけでは、採取面4に保持できる微生物数が限られるため、被採取面の微生物の生息状態を正確に検査することができない。そこで、本実施の形態のように採取面4に振動を与えることで、被採取面に付着する微生物を剥離させ、確実に採取することができる。
【0039】
振動を開始してから一定時間が経過すると、制御部19は振動手段20の動作を停止し、好ましくはブザーを鳴らすなどして検査実施者に微生物採取が完了したことを通知する。このように振動を付与する時間を一定にすることで、微生物検査の定量性を保つことができる。微生物採取が完了したことを認知した検査実施者は、被採取面から採取面4を離すことで、採取ステップを完了する。
【0040】
次に、採取ステップにて採取面4に採取した微生物を測定するステップ(以下、測定ステップと呼ぶ)について説明する。
【0041】
まず、検査実施者は測定セル8に貼り付けられたシール10を剥がし、測定セル8の開口部を採取面4に合わせる形で取り付ける。ことのき、ヘッド側端子5とセル側端子13が電気的に導通する。
【0042】
次いで、検査実施者は操作スイッチ7を押下することで、微生物数の測定を開始する。採取ステップが完了した状態で操作スイッチ7が押下されると、振動手段20が動作すると同時に、測定部17が誘電泳動電極12へ交流電圧の印加を開始する。測定時に測定セル8に対して振動を付加することによって、採取面4に付着した微生物が容易に液体中に懸濁されると共に、誘電泳動電極12と液体との間に相対的な位置を変化さることができるため、より多くの微生物を誘電泳動力の働くギャップ16近傍へ供給することができ、測定感度が向上する。
【0043】
液体中に懸濁された微生物は、誘電泳動力によってギャップ16近傍に向かって濃縮されていく。十分な数の微生物がギャップ16に捕捉された場合、ギャップ16間が微生物によって架橋されるほどになる。印加する電圧や付加する振動が一定の条件下では、所定の時間後にギャップ16付近の所定領域に集まっている微生物の数は液体中の微生物数に比例するため、この比例関係を基に液体中の微生物数を算出することができる。
【0044】
一般的に微生物は、電気的に抵抗と静電容量の並列接続された素子として等価的に表現することができる。これは微生物がイオンリッチで比較的電気伝導率が大きな細胞壁と、リン脂質からなり電気伝導率の小さな細胞膜に囲まれていることに起因する。誘電泳動によりギャップ16に移動する微生物によってギャップ16が架橋されるに従い、誘電泳動電極12のインピーダンス(抵抗成分および静電容量成分)が変化する。ギャップ16へ泳動される微生物の数が増え、微生物による架橋の数が増えるとその数に比例してインピーダンスが変化するため、その値はギャップ16近傍に移動してきた微生物数、ひいては液体中に存在する微生物数に相関した測定結果を得ることができる。
【0045】
誘電泳動電極12に交流電圧の印加を開始した直後から、測定部17は誘電泳動電極12に流れる電流の測定を開始する。電流測定は、シャント抵抗を介した電圧変換など、公知の技術が利用可能である。演算部18は測定部17が測定した電流値を受け取り、印加電圧の振幅および周波数、電流と電圧の位相差からインピーダンス値を算出する。算出されたインピーダンス値は制御部19に渡され、図示しないメモリに記憶される。これら一連の動作が一定時間毎に行われ、結果としてメモリ上に誘電泳動電極12に交流電圧を印加した時のインピーダンス変化が記憶されていく。
【0046】
所定の時間が経過すると、制御部19は交流電圧の印加を停止し、記憶されたインピーダンス変化から液体中の微生物数を算出する。電気的に濃縮と測定を行うため、数分程度の非常に短時間での測定が可能であり、微生物を採取したその場での測定を実現できる。
【0047】
インピーダンス変化と微生物数を関連付けるためには、インピーダンス変化と微生物数の変換式が必要である。この変換式は、微生物数が明らかな校正用試料液を測定しておき、一定時間測定した時のインピーダンス値の変化をメモリ上にテーブルとして記憶しておき、微生物数が未知の試料を測定する場合には、測定したインピーダンス変化とテーブルとを比較し、微生物数を算出する。
【0048】
微生物数の算出が終了すると、制御部18は表示手段に結果を表示し、好ましくはブザーを鳴らすなどして測定ステップが完了した旨を検査実施者に通知する。結果表示の方法としては、微生物数の数値表現でも良いし、段階的なレベル表示をすることも可能である。
【0049】
測定ステップが完了すると、検査実施者は測定結果を確認した後、ヘッド部2を測定本体3から切り離し、ヘッド部2を廃棄する。採取面4および測定セル8内部は微生物に汚染された可能性が高く、ここに触れると微生物による感染の可能性がある。本実施の形態では、採取面4および測定セル8内部に触れることなくヘッド部2ごと廃棄することができるため、衛生的に微生物検査を実施することが可能である。
【0050】
以上、本実施の形態1によれば、単一の装置で微生物の採取と検査をその場で迅速に行うことができる。
【0051】
また、微生物によって汚染される可能性のあるヘッド部を衛生的に破棄することができ、検査実施者にとって衛生的な微生物検査が行える。
【0052】
また、採取対象の微生物の寸法と同程度の孔径のフィルタを用いることにより、微生物を確実に保持することができる。
【0053】
また、ヘッド部2の振動によって、被採取面に付着する微生物を剥離させ、確実に採取することができ、精度の高い細菌検査を実施することが可能である。また、測定ステップにおいて誘電泳動電極12と液体との間に相対的な位置を変化さることができるため、より多くの微生物を誘電泳動力の働くギャップ16近傍へ供給することができ、測定感度が向上する。
【0054】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について図面を参照しながら詳細に説明する。実施の形態2において実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0055】
図6は実施の形態2におけるヘッド部の略正面と断面を示す図である。誘電泳動電極12をPETやポリイミドなどの絶縁体材料を用いた基板上に形成する。更に、同一の基板上に誘電泳動電極12のギャップ16を覆わない形状で採取面3が接着される。誘電泳動電極12からの引き出し線は、ヘッド部2内部に、図示しないリード線などの配線手段を設けることで、測定本体3の測定部17に電気的に接続される。
【0056】
図7は実施の形態2におけるヘッド部の略正面と断面の別の実施の形態を示す図である。図7に示すように、誘電泳動電極12は採取面3上に直接形成することも可能である。誘電泳動電極12を形成する基板と採取面3が共通化できるため、材料および製造工程が削減でき、装置の低価格化が実現できるというメリットがある。
【0057】
以下、実施の形態2において微生物を被採取面から採取し、微生物を測定・結果表示し、汚染部分を廃棄するまでの一連の流れを説明するが、採取ステップまでの工程は実施の形態1と同様であるため、測定ステップのみを説明する。
【0058】
まず、検査実施者は測定セル8に貼り付けられたシール10を剥がし、測定セル8の開口部が採取面4を覆う形で取り付ける。本実施の形態2で用いる測定セル8は、誘電泳動電極12およびセル側端子13を備える必要は無い。
【0059】
また、本実施の形態2の微生物測定装置によれば、必ずしも専用の測定セル8を使用する必要はなく、ビーカーなど測定に用いる液体が保持された一般的な容器にヘッド部2を含浸して測定することも可能であり、測定の汎用性が高くなる。
【0060】
次いで、検査実施者は操作スイッチ7を押下することで、微生物数の測定を開始する。以下の操作は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
以上、本実施の形態2によれば、測定セルが無くてもビーカーなど一般的な容器を利用して微生物検査が行え、汎用性が高い微生物測定装置の提供が可能である。
【0062】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3において実施の形態1および2と重複する説明は省略する。
【0063】
本実施の形態3では、実施の形態2で用いた、ヘッド部2に微生物測定のための誘電泳動電極12が具備された装置を用いる。本実施の形態3では、被採取面上に存在する微生物ではなく、水道水や貯水タンク内の水、飲料水など、既に水中に懸濁されている微生物が測定対象となる。
【0064】
検査実施者はまず、検査対象となる液体中にヘッド部2の先端、誘電泳動電極12を含浸する。次いで操作スイッチ7を押下することで、微生物数の測定を開始する。以下の操作は実施の形態1および2と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
以上、本実施の形態3によれば、被採取面上の微生物だけでなく、微生物が液体中に懸濁された状態の測定試料も直接測定することが可能であり、微生物測定装置の汎用性が高くなる。
【0066】
(実施の形態4)
本発明で実施した微生物測定装置と従来の微生物測定装置を用い、それぞれ、微生物数を計測した。本発明では、微生物採取の面積が規定できる。つまり、採取面の面積が一定である。そこで、従来の微生物測定装置においても微生物採取量が一定となるようにした。
【0067】
検体は口腔内細菌とし、従来の微生物測定方法では、微生物採取面積を一定とするため、本発明で実施した微生物測定装置の採取面と同面積(3cm2)となるように、プラスチックシートに円穴を作成した微生物採取補助治具を準備した。微生物の採取は微生物採取補助治具を舌の上に貼付し、円穴部を従来の微生物採取装置を用い、舌上にある微生物を採取した。一方、本発明の微生物測定方法では、そのまま、舌上の微生物を採取した。
【0068】
本発明の微生物測定装置では、測定セル8を用いて微生物数を測定した。従来の微生物測定装置としては、前述の微生物採取補助治具によって採取した微生物を、5mlの0.1Mマンニトール溶液に含浸して懸濁した後、50μlを血液寒天培地上に塗布し48時間の嫌気培養を行い、コロニーカウントにより微生物数を算出した。
【0069】
測定結果を比較すると、本発明の微生物測定方法と従来の微生物測定方法においては採取した微生物量にほとんど差は認められず、それぞれ、単位採取面積当たりに含まれる微生物数は1000000個/cm2であった。
【0070】
しかしながら、従来の微生物測定方法では、一定面積の微生物を採取する場合、前出の治具を準備する必要があり、さらに、治具の廃棄においても手間取り、本実施の形態で示した微生物測定装置のほうが、利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明に係る微生物測定装置および微生物測定方法によれば、微生物測定試料の採取から測定、試料および微生物に汚染された可能性のある材料の廃棄までを、衛生的にその場で迅速に行うことのできるという効果を有し、被採取面の表面上に存在する微生物および液体中の微生物を検査するための微生物測定装置および微生物測定方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】微生物測定装置の略正面図
【図2】測定セルの略断面図
【図3】測定セルの開口部側から見た概略図
【図4】誘電泳動電極の拡大図
【図5】回路接続ブロック図
【図6】誘電泳動電極を備えたヘッド部の略正面と断面を示す図
【図7】誘電泳動電極を備えたヘッド部の略正面と断面を示す別の形態の図
【符号の説明】
【0073】
1 微生物測定装置
2 ヘッド部
3 測定本体
4 採取面
5 ヘッド側端子
6 表示手段
7 操作スイッチ
8 測定セル
9 セル構造体
10 シール
11 液体保持領域
12 誘電泳動電極
13 セル側端子
14 一方の極
15 他方の極
16 ギャップ
17 測定部
18 演算部
19 制御部
20 振動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の採取および測定をするための微生物測定装置であって、
微生物採取面を備えたヘッド部と、
液体を保持することのできる前記ヘッド部に着脱可能な測定セルと、
誘電泳動電極と、
測定本体と、
を備えることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項2】
ヘッド部と測定本体が着脱可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載の微生物検査装置。
【請求項3】
微生物採取面と誘電泳動電極とが同一の基板上に形成されることを特徴とする請求項1〜2に記載の微生物検査装置。
【請求項4】
誘電泳動電極が微生物採取面上に形成されることを特徴とする請求項1〜3に記載の微生物検査装置。
【請求項5】
微生物採取面が有効径0.05〜5μmの多孔質材料からなることを特徴とする請求項1〜4に記載の微生物検査装置。
【請求項6】
測定本体が振動手段を備えヘッド部に少なくとも直線往復または回転振動を与えることを特徴とする請求項1〜5に記載の微生物検査装置。
【請求項7】
微生物を測定する方法であって、
微生物採取面を微生物検査対象の表面に接触させて前記微生物採取面に
微生物を付着させる微生物採取ステップと、
液体が入った測定セルにヘッド部を含浸し前記微生物採取面に付着した
微生物を液体中に懸濁するステップと、
前記誘電泳動電極に交流電圧を印加し、誘電泳動力によって測定セル中に懸濁された
微生物を前記誘電泳動電極に捕集すると同時にインピーダンス変化の計測を行う
インピーダンス計測ステップと、
計測したインピーダンス変化から測定セル中の微生物濃度を表示するステップと、
前記ヘッド部を微生物の汚染部分に触れることなく破棄するステップ
を有することを特徴とする微生物測定方法。
【請求項8】
微生物を測定する方法であって、
微生物採取面を微生物検査対象の表面に接触させて前記微生物採取面に
微生物を付着させる微生物採取ステップと、
液体が入った測定セルにヘッド部を含浸し前記微生物採取面に付着した
微生物を液体中に懸濁するステップと、
前記誘電泳動電極に交流電圧を印加し、誘電泳動力によって測定セル中に懸濁された
微生物を前記誘電泳動電極に捕集すると同時にインピーダンス変化の計測を行う
インピーダンス計測ステップと、
計測したインピーダンス変化から測定セル中の微生物濃度を表示するステップと、
微生物採取ステップおよび/またはインピーダンス計測ステップと同時に前記測定本体に具備された前記振動手段によって前記ヘッド部に振動を与えるステップと
前記ヘッド部を微生物の汚染部分に触れることなく破棄するステップ
を有することを特徴とする微生物測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−110962(P2007−110962A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305498(P2005−305498)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】