説明

微粒子フィルタを再生するためのデバイスおよび方法、ならびに、微粒子フィルタの再生のための媒体の使用法および該媒体を含む補給用パッケージ

本発明は、燃焼燃料を触媒的に酸化することにより微粒子フィルタ(19)の再生のために十分な温度まで排気ガスを加熱することを目的としてディーゼル・エンジン(11)の微粒子フィルタ(19)の直前の排気ガスを濃縮するための、ディーゼル燃料やディーゼル燃料の分解産物とは異なる、具体的にはモノエチレングリコールおよび/またはメタノールである燃焼燃料の使用法に関する。また、本発明はこの使用法を可能にするためのデバイスに関し、この目的のために、このデバイスは、ディーゼル・エンジンのディーゼル・タンク(15)ではない燃焼燃料タンク(25)と、ディーゼル・エンジン(11)の排気ガス・システム(17)に接続されている燃焼燃料ライン(27)とを有する。さらに、本発明は、ディーゼル・エンジン(11)およびそのタンク(15)に加えて、微粒子フィルタ(19)を備える排気ガス・システム(17)を有してよい。本発明のすべての態様に共通する概念は、燃焼燃料、具体的にはメタノールおよび/またはエチレングリコールを、微粒子フィルタ(19)の直前のディーゼル・エンジン(11)の排気ガスに加え、その結果、気相の燃焼燃料が触媒表面(21)上で酸化し、それにより、微粒子フィルタの再生を行うことができる温度にまで排気ガスが加熱されるという工程を特徴とする方法において説明される。燃焼燃料タンク(25)が推進燃料タンク(15)から分離されていることから、ディーゼル燃料にとっては低すぎる排気温度で触媒(21)と反応する燃焼燃料がこの目的において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子フィルタの再生またはその方法、ならびに、微粒子フィルタの再生のための媒体の使用法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子フィルタは、ディーゼル車やディーゼル・エンジンを備えたユニット内に設置される。このようなタイプの微粒子フィルタは目詰まりを起こす場合がある。それで、排気ガスシステム内の対抗圧力が増大する。排気システムの圧力が大幅に増加した場合、エンジンが最終的に停止してしまい、それ以後始動することができなくなる。
【0003】
これを回避するためには、微粒子フィルタを再生しなければならない。微粒子フィルタの再生のために、微粒子フィルタ内に固着されているすす粒子を焼却しなければならない。このようなタイプの再生には本質的に2つの可能性がある。これらの再生代替形態のどちらの場合においても、運転温度を最小にする必要がある。
【0004】
再生を実現するための第1の手法では、すすで構成されるフィルタ・ケーキがNO2によって酸化されてCO2となる。NO2は、排気ガスに含まれるNOからの酸化触媒および排気ガスに含まれる残留酸素によって酸化される。このタイプの酸化触媒は大部分が白金で被覆されているが、パラジウムの部分も含んでいる。
【0005】
したがって、酸化触媒は構成要素として排気ガス流れ内に配置され、微粒子フィルタの上流に配置される。このタイプの微粒子フィルタは「連続生成型」と呼ばれる。すなわち、約180℃の排気ガスの温度からNO2が連続的に生成されて微粒子フィルタ内のすすと反応する。したがって、微粒子フィルタの再生は運転温度に左右される。微粒子フィルタの再生は約220℃の温度から起こるが、微粒子フィルタ内の運転温度が上昇するにつれて指数関数的に強まる。しかし、実際において妥当である温度範囲では、NO2の生成は温度が上昇するにつれて基本的に直線的に増加する。
【0006】
しかし、強酸化剤および刺激性ガスであるNO2の排出が増加することは望ましくない。したがって、このように微粒子フィルタを連続的に再生する際には、NO2の生成は蓄積されるすすの量に応じてできるだけ正確に調節されなければならない。NO2の排出は、触媒の白金ドーピングが減少することによって減少される。しかし、蓄積されるすすの量はディーゼル・エンジンの運転方式によって異なり、また、すすを用いたNO2のCO2およびNOへの温度依存の転化は低温では弱いことから、すすの蓄積量が多く、運転温度が低い場合、具体的には運転温度が220℃未満に低下した場合には、微粒子フィルタが目詰まりを起こす危険性がある。したがって、微粒子フィルタを連続的に再生させる場合における目的の不一致は、一方で、低い排気ガスの温度においてもフィルタの再生を実現させるためにはできるだけ多くのNO2が生成されなければならず、同時に、環境保護のためにNO2が過剰になることは回避されなければならないことである。
【0007】
微粒子フィルタの再生を実現するための第2の手法はサーマル再生(thermal regeneration)と呼ばれる。フィルタ・ケーキをその時々で熱的に焼失させる。この目的のために、フィルタ・ケーキは一般に600℃の温度まで加熱される。この温度ではすすが単独で焼失される。微粒子フィルタの触媒コーティングを介することにより、すすの発火温度を660℃から450℃まで低下させることができる。発火温度を低下させる別の手法としては、ディーゼル燃料に添加剤を加える手法がある。この添加剤は通常鉄化合物をベースとする。添加物はエンジンを通って排気ガス内まで到達し、すすと共に微粒子フィルタ内に固着される。微粒子フィルタ内に固着される、フィルタ・ケーキのすすと添加剤とのこのような混合物は、添加剤がない場合のすすよりも発火温度が低く、その温度は約450℃である。
【0008】
微粒子フィルタ内に構築されるフィルタ・ケーキは、サーマル再生の場合では、通常排気システム内の対抗圧力に応じて定期的に焼失される。この目的のために、フィルタ・ケーキを発火させて一般には単独で焼失させる。
【0009】
フィルタ・ケーキを発火させる手法には4つの可能性がある。
・電熱器を用いた発火。
・排気ガスの温度を上昇させることを目的としてエンジンの運転条件を調整することによる発火。これは、例えば、燃焼空気の供給を操作する(例えば、空気取入れノズル内のスロットル・バルブを閉じる)ことによって実現されてよい。
・裸火での燃料の燃焼による発火。この目的のために、燃料作動式バーナーが排気ガス流れ内に設置される。
・燃料の触媒燃焼による発火。
【0010】
触媒燃焼では、燃料が排気ガス流れ内に直接に噴射される、または、燃料が、未燃焼燃料のエンジン制御デバイスを操作することによりエンジンから排出されるかのどちらかである。どちらの場合でも、燃料を豊富に含む排気ガス流れが触媒被覆表面を経由するように誘導されることから、燃料は触媒的に(すなわち、無発火で)酸化されて排気ガスの加熱を開始する。燃料の噴射には、ディーゼル・エンジンの場合、ディーゼル燃料の沸点が高いためにディーゼル燃料を圧縮空気ノズルを用いて非常に微細に噴霧しなければならないという欠点がある。したがって、燃料の噴射を実現するために、圧縮空気の供給を確立しておく必要がある。実際に、供給パイプの端部に配置された噴射ノズルが燃料の炭化により容易に目詰まりを起こしてしまうことが分かっており、この炭化を回避するためには特別な予防措置が必要となる。
【0011】
サーマル再生で使用される触媒は、一般に、連続再生で使用される触媒と比較してより多くのパラジウムおよびより少ない白金を含む。したがって、触媒上でのNO2の生成は抑制される。燃料の触媒燃焼で使用される触媒は、構成要素として微粒子フィルタの上流に配置されてよい。しかし、この触媒は添加剤としてディーゼル燃料または排気ガスに混合されてもよく、この場合、触媒はフィルタ・ケーキ上に固着される。また、微粒子フィルタ自体が触媒層で被覆されてもよい。
【0012】
このサーマル・タイプの再生では、現在市販されている触媒を用いる場合には、噴射されたディーゼル燃料の少なくとも半分が触媒的に酸化されるように、触媒の手前の排気ガスの温度が200度を超えていることが必要となる。ディーゼル燃料の主な成分は、一分子当たり約9個から22個の炭素原子を有しており沸騰範囲が150℃から390℃の間である、アルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素類である。ディーゼル燃料の蒸発温度は、非常に小さな溶滴に噴霧化されることにより公称の沸騰温度未満に低下される。それにもかかわらず、200℃未満の排気ガスの温度においても極わずかのディーゼル成分は揮発する。一部の触媒では、少なくとも新品の状態において、ライトオフ温度を180℃まで下げることができるが、その場合はディーゼル燃料の燃焼が不完全となり、煙状の未燃ディーゼル燃料が排気管から排出される(ブルー・スモーク)。これは、実際の使用においては許容できないとみなされる。ディーゼル燃料の多くの成分が反応状態となることから、ディーゼル燃料は、実際に、触媒上に発生する熱を介することにより、触媒内の温度が200℃を超える場合にのみ微粒子フィルタを再生するのに使用され得る。
【0013】
ディーゼル燃料からの分解産物によって排気ガスを濃縮することにより触媒の反応温度をさらに低下させる試みがなされている。しかし、これには、ディーゼル燃料を、とりわけ、沸点が低く、鎖が短いアルカンに分解するための技術的に非常に複雑な装置が必要となる(「改質器」)。この手法は今のところ商用化段階にはなく、また、「車上」のディーゼル燃料を分解するこのタイプの手法が現実的に実現可能であるかどうかは疑問の余地が大いにある。
【0014】
すなわち、摂氏200度未満の排気ガスの温度において、燃料を触媒的に酸化することによって微粒子フィルタを再生させるような、技術的に非常に複雑であるディーゼル燃料の分解を介さずに実現されるシステムは知られていない。
【0015】
低い排気ガスの温度で微粒子フィルタを再生することの必要性は、例えば、スペースの関係でフィルタをエンジンからかなり離れた距離に設置する必要がある場合などに増す。このような場合には、排気ガスの温度損失を減少させるために、コストはかかるがエンジンと触媒との間の長い排気パイプを遮断する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、例えば200℃未満のような低い排気ガスの温度での微粒子フィルタの再生を実現することを可能にする解決策を提案することである。さらに具体的な目的は、電気式エンジン制御デバイスによる調整を必要とすることなく、微粒子フィルタを備えている既存の車およびユニットでも使用され得る方法において用いられる再取付可能なデバイスを作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、添付の独立請求項の特徴を用いた本発明により達成される。
【0018】
本発明は、ディーゼル駆動式内燃機関の微粒子フィルタを再生するための方法において、従来技術と共通の工程を含んでおり、この工程では、排気ガスが、微粒子フィルタの上流にある供給点において、再生のためには低すぎる排気ガスの温度で、触媒により酸化可能な媒体により濃縮され、その後、その媒体の触媒的な酸化を介して、微粒子フィルタを再生するのに十分な温度まで加熱される。従来技術では、具体的にはディーゼル燃料である燃料が媒体であり、さらには、試験においてはディーゼル燃料の分解産物も使用されるのに対して、本発明によると、排気ガスは、ディーゼル燃料およびその分解産物とは異なる燃料により濃縮される。
【0019】
従来技術では既存のディーゼル・タンクからディーゼル燃料を得てそれを排気ガスに加えるが、本発明では燃料用の第2のタンクが必要となる。これには、2つの媒体を補給しなければならないという欠点がある。しかし、このタイプの燃料には広範囲の可燃性物質から選択されてよいという利点がある。
【0020】
本発明に従ったこの処置では、可能性のある燃料の範囲は、水素、プロパンまたはブタンなどのガスから、灯油、ガソリンまたはそれらの成分および分解産物などの有機液体までに及び、さらには、あまり普及していない燃料にまで及ぶ。燃料は、有利には、200度未満の温度で揮発するまたは触媒上においてディーゼル燃料より低い温度で酸化する燃料から選択される。燃料の酸化がNO2の生成とできる限り競合しないようにする場合は、NO2により再生される微粒子フィルタを用いることが特に有利である。
【0021】
好適な燃料はアルコール類から見つけられることが分かっている。多くのアルコールは揮発温度が200℃未満であることから、複雑な空気霧化を介することなく排気ガス流れ内へと導入され得る。また、アルコールは残留することなく揮発することから、炭化する危険性がなく、さらに、少なくとも一部は150℃からの排気ガスの温度で既知の触媒表面と反応する。(モノ)エチレングリコールは例えば165℃を超えると解体され、その結果、特に、グリコールアルデヒド、グリオキサル、アセトアルデヒド、メタン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素および水素を放出する。毒性の低いプロピレングリコールの沸点は187℃である。さらに、好適であるメタノール(メチルアルコール)の沸点は摂氏65℃である。
【0022】
アルコールはガソリンスタンドにある標準的な市販製品であることから、本発明において使用される燃料の売却において新たな流通経路を確立する必要がない。
【0023】
このような燃料を用いることにより、すなわち、例えばメタノールを排気ガス・システム内へ噴霧して触媒的に酸化させることにより、排気ガスの温度が再生のために必要となる温度へと直接的に加熱されるようになる。これは、排気ガス・システム内でディーゼル燃料の噴射を行わない車およびユニットにとって好都合である。
【0024】
排気ガス・システム内でディーゼル燃料の噴射を行う車およびユニットの場合では特に、追加燃料により、排気ガスをディーゼル燃料が触媒的に酸化され得る温度、例えば240℃までしか加熱しないことが有利である。その後、従来の手法で排気ガスをディーゼル燃料で濃縮することにより再生に必要となる反応温度を得ることができる。これには、再生過程を開始するのに少量の燃料のみが必要となるという利点があるが、再生に好都合な温度を維持するために既存する大量のディーゼル燃料が使用される場合がある。
【0025】
排気ガスは燃料およびディーゼル燃料で濃縮されてよい。この濃縮は、連続的にまたは燃料とディーゼル燃料との混合物を用いて同時に実施されてよい。
【0026】
本発明による方法は、一般に酸化触媒に適しており、具体的には、白金および/またはパラジウムで被覆されている市販の触媒に適している。したがって、本発明による方法は、NO2による再生に特に適しているわけではなく、また、サーマル再生に限定して適しているわけでもない。
【0027】
好適なアルコールは、メタノール(メチルアルコール、CH3OH)およびモノエチレングリコール(MEG、エチレングリコール、エタン−1,2−ジオール、C262)である。これら2つのアルコールはNO2の生成を一切妨害しないと考えられることから、酸化窒素を含む微粒子フィルタの再生の場合に特に驚くべき効果が得られる。しかし、別の燃料も、触媒がNO2の生成に競合するのを抑制すると考えられる。
【0028】
設置された触媒表面を用いることなく使用される排気ガス浄化システム、すなわち、触媒表面が微粒子フィルタ内に存在しておりその大部分がすすで覆われているような排気ガス浄化システムでは、触媒により酸化する添加剤が加えられてよい。この添加剤は燃焼燃料または推進剤に加えられてよい。いずれの場合も、この添加物は排気ガス/燃焼燃料の混合物内で触媒として作用する。
【0029】
しかし、供給点と微粒子フィルタとの間の排気ガス・システム内に設置される触媒は、一般に、燃焼燃料の触媒による酸化のために使用される。大部分のフィルタ・ボウルが微粒子フィルタ成分の上流に触媒成分を含んでいる。
【0030】
燃焼燃料による排気ガスの濃縮は、内燃機関の直前またはその中での処置によって行われてよい。好適には、排気ガスの濃縮は内燃機関と微粒子フィルタとの間で行われる。特に再取付可能キットの場合、これは、排気ガス・システム内への燃焼燃料の噴射に適した場所である。これはエンジンの運転形式とは無関係であることから、エンジン制御デバイスを調整する必要はない。
【0031】
媒体を触媒的に酸化することにより、微粒子フィルタの再生に十分な排気ガスの温度まで排気ガスを加熱することを目的とした、内燃機関の排気ガスを濃縮するための触媒により酸化可能な媒体の、本発明に従った使用法は、この媒体が、ディーゼル燃料や内燃機関の燃料およびそれらの分解産物とは異なる燃焼燃料を不可欠な部分として含み、この別の燃焼燃料がディーゼル燃料より低い温度で触媒により酸化することできることを特徴とする。
【0032】
原則的に、ガスが燃焼燃料として使用されてもよい。取り扱いを容易にするために、燃焼燃料は液体であることが好ましい。ここでは、液体は、加熱されたときに酸化可能なガスに分裂する液体であると考えられてよい。好適には、本発明の実施において、有機液体、とりわけアルコール類が燃焼燃料とみなされる。
【0033】
この場合、燃焼燃料は、アルコール、またはアルコールを少なくとも40%含んでいる混合物であってよい。この燃料は、好適には、メチルアルコール、またはメチルアルコールを少なくとも10%含んでいる混合物であってよい。他の燃焼燃料と比較して有利なことに、この燃料には、モノエチレングリコール、またはモノエチレングリコールを少なくとも10%含んでいる混合物も同様に含まれてよい。さらに、この燃料には、他の燃焼燃料と比較して有利なことに、プロピレングリコール、またはプロピレングリコールを少なくとも10%含んでいる混合物が含まれてよい。グリコールは費用効果が高く、耐凍害性があり、引火点が高く、毒物学的には比較的無害である。また、グリコールは水可溶性であることから、ここでの条件において取り扱いが容易である。これらのことから、グリコールは燃焼燃料に適している。さらに有利な燃焼燃料は、グリセリン、具体的には、バイオディーゼルの生成時に廃棄物質として蓄積されるために特に費用効果が高いメタノール含有グリセリン溶液である。
【0034】
燃焼燃料の有利な選択は、燃焼燃料の揮発温度が、具体的には摂氏250度未満であるディーゼル燃料の基本的成分の揮発温度より低いという条件で説明されてもよい。揮発温度は、燃焼燃料が揮発するときの分解温度(モノエチレングリコールの場合)あるいは沸騰温度(メタノールの場合)を意味する。これには、再生が、ディーゼル燃料が相当な程度までは揮発していないときの温度で実施され得るという利点がある。
【0035】
燃焼燃料の好適な選択は、燃焼燃料の揮発温度が、ディーゼル燃料の触媒反応に必要となる下限の排気ガスの温度、具体的には摂氏200度未満、好ましくは摂氏190度未満、とりわけ180℃未満であるという特徴によって制限されてもよい。このように選択することには、ディーゼル燃料と触媒との間で反応が起こらないと予想される状態において燃焼燃料が既に揮発しているという利点がある。
【0036】
驚くべきことに、この燃焼燃料は水が混合されてよく、また、水溶液中で使用されてもよい。これにより取り扱いが容易になる。例えば、メチルアルコールと水との混合物は危険がないことからポリ袋で購入することができる。水の含有量は比較的大きくてよく、これが触媒内の熱の動きに実質的な影響を与えることはない。
【0037】
燃料タンクおよび燃料ラインを有する本発明によるデバイスは、例えば、ディーゼル・エンジンと、ディーゼル燃料用のディーゼル・タンクと、排気・システムと、排気・システム内にある微粒子フィルタとを有するデバイス上にある緊急用の再生デバイスまたは再生開始デバイスとして使用される。このデバイスの本発明に従った使用法では、上記に挙げた構造的特徴をやはり満たしているフロントガラス洗浄システムとは異なり、燃料ラインが微粒子フィルタの上流で排気ガス・システムに開口して配置されており、それにより、排気ガスが微粒子フィルタの手前で燃焼燃料タンクからの燃焼燃料によって濃縮され得るようになる。このデバイスは、排気ガス・システム内の温度が微粒子フィルタの再生のためには不十分であるが再生が必要であるような場合にのみ使用される。
【0038】
本発明によると、内燃機関と、内燃機関用のディーゼル燃料を収容するためのディーゼル・タンクと、ディーゼル・タンクから内燃機関までのディーゼル・ラインとを有しており、内燃機関に隣接している排気ガス・システムおよびその中に配置されている触媒表面と、微粒子フィルタとが存在している、デバイスが、上述したタイプのデバイスを備える。本発明によると、この追加のデバイスは内燃機関の既知のシステムを特徴とする。このデバイスは、ディーゼル・タンクから分離されておりディーゼル燃料およびその分解産物とは異なる燃料を収容するための燃焼燃料タンクと、排気ガス・システムに開口している、燃焼燃料タンクから、微粒子フィルタおよび触媒表面の上流に位置される排気ガス・システム内の供給点までの燃焼燃料ラインと、燃焼燃料を排気ガス・システム内まで搬送するための搬送手段と、搬送手段を作動させるための回路とを有する。以下のものが搬送手段として考えられる:バルブと組み合わせの燃焼燃料タンク内の過剰圧力;具体的には空気またはCO2であるガスを燃焼燃料タンク内に押し込むためのポンプまたは圧力源;それぞれが任意選択で燃焼燃料ライン内にあるバルブと組み合わされる、燃焼燃料ラインの中または燃焼燃料タンクの中にある燃焼燃料のための液体ポンプ。
【0039】
組み立ておよび取り扱いを単純にするためには、燃焼燃料ラインを通るように燃料をポンプで加圧するための、燃焼燃料ライン内にある液体ポンプが好適である。同様の燃焼燃料の搬送手法の単純化が、排気ガス流れ(鋼パイプまたはベンチュリ)内のセルフプライミング噴射ノズルによってなされる。
【0040】
このデバイスは、内燃機関を有するデバイスの、微粒子フィルタの再生を制御する制御デバイスまたは微粒子フィルタの再生が必要であることを表示する表示デバイスに直接に接続されてよい。例えば表示デバイスによりまたは表示デバイスを作動させる信号により緊急の再生を開始することができる。このデバイスはまた、排気ガス・システム内の圧力状態および/または温度状態を監視するための独自のセンサを備えていてよく、このセンサは、燃焼燃料の排気ガス・システムへの供給を作動させて再生を開始するためのスイッチ信号を発する。
【0041】
細かくみると、本発明は、一方では、燃焼燃料を触媒的に酸化することにより排気ガスを微粒子フィルタの再生に十分な温度まで加熱することを目的としてディーゼル・エンジンの微粒子フィルタの手前で排気ガスを濃縮するために、グリコール(好適には、モノエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール)および/またはメタノールを使用する。したがって、本発明には、再生デバイスの燃焼燃料タンクを充填するための市販パッケージの燃焼燃料が含まれる。このタイプの補給用パッケージは、有利には、メタノールと少なくとも1つのグリコールとの混合物が少なくとも60%の含有量であることを特徴とする。便宜的には、この補給用パッケージは少なくとも20%のメタノールと少なくとも30%の水とを含む。
【0042】
本発明は、他方では、上述の使用を可能にするためのデバイスに関係し、この目的のために、ディーゼル・エンジンのディーゼル・タンクではない燃焼燃料タンクと、ディーゼル・エンジンの排気ガス・システムに取り付けられており、排気ガス・システムに開口するように配置される燃焼燃料ラインとを有する。したがって、本発明は、エンジンおよび微粒子フィルタを有する形態において、ディーゼル・エンジンおよびそのタンクに加えて、微粒子フィルタを備える排気ガス・システムも有する。
【0043】
本発明のこれらの態様すべてに共通する概念を、燃焼燃料、具体的にはメタノールおよび/またはグリコール(好適には、モノエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール)が、微粒子フィルタの直前でディーゼル・エンジンの排気ガスに加えられ、その結果、気相の燃焼燃料が触媒表面上で酸化し、それにより、微粒子フィルタの再生を行うことできる温度にまで排気ガスが加熱されるという方法において説明する。燃焼燃料タンクが推進燃料タンクから分離されていることから、ディーゼル燃料にとっては低すぎる排気温度で触媒と反応する燃焼燃料がこの目的において使用され得る。
【0044】
具体的な試験構成をベースとしかつ選択された複数の燃焼燃料を使用することをベースとして本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】エンジン、ならびに、排気ガスを加熱するための排気ガス・システムと、ディーゼル・タンクと、燃焼燃料タンクとを備えるトラックを示す図である。
【図2】ディーゼル・タンクおよび内燃機関を除いた、第1の試験構成を示す図である。
【図3】内燃機関を除いた、第2の試験構成を示す図である。
【図4】内燃機関を除いた、第3の試験構成を示す図である。
【図5】噴射なしの場合(基準線)および異なる媒体による噴射の場合における、第1のディーゼル酸化触媒(製造業者:HJS)を介した、排気ガスの温度Tに対する温度上昇ΔTのグラフである。
【図6】噴射なしの場合および異なる媒体による噴射の場合におけるNO2濃度を示す対応するグラフである。
【図7】モノエチレングリコールを用いた場合の、図1に従った酸化触媒による再生の前およびその最中における排気ガスの圧力および温度の動きのグラフである。
【図8】酸化触媒および水とグリコールとからなる噴射された媒体の合成物の手前の排気ガスの温度に対する酸化触媒上の温度上昇のグラフである。
【図9】酸化触媒ならびに水とグリセリンとからなる噴射された媒体の合成物の手前の排気ガスの温度に対する酸化触媒上の温度上昇のグラフである。
【図10】微粒子フィルタを再生するための燃焼燃料を含んでいる容器を示す図である。
【図11】噴射なしの場合(基準線)および異なる媒体による噴射の場合における、第2のディーゼル酸化触媒(製造業者:Peugeot)を介した、排気ガスの温度Tに対する温度上昇ΔTのグラフである。
【図12】噴射なしの場合および種々の媒体による噴射の場合におけるNO2の濃度を示す対応するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1では、ディーゼル・ポンプ13を用いてディーゼル・タンク15からディーゼル燃料が供給されるディーゼル・エンジン11を有するトラックが図的に示されている。ディーゼル燃料は、少ない燃料でエンジン11のシリンダ内の圧縮空気と燃焼し、動力および熱を生み出し、すすを生成する。この燃焼からの排気ガスは排気ガス・システム17内へと流れて最終的に微粒子フィルタ19に到達する。すす粒子は、微粒子フィルタ19に捕捉され、濾過されて排気ガスとなる。微粒子フィルタ19内のすす粒子が増加することで、微粒子フィルタ19の抵抗が増す。抵抗が限界を超えると、排気ガス・システム17内の排気ガス圧力が高くなりすぎて内燃機関11が停止してしまう。
【0047】
したがって、微粒子フィルタは、内燃機関11が効率的に動作できなくなるさらには停止する前に、再生されることによってすすを除去されなければならない。
【0048】
酸化触媒21が、再生を実現するために図1に示した微粒子フィルタ19の上流に配置される。一般に、酸化触媒21および微粒子フィルタ19は共通のマフラー内に配置される。これは全体として微粒子フィルタと称されてよい。用語を明確にするために、微粒子フィルタ19および触媒21と一体になったマフラーを、この明細書ではフィルタ・ボウル23と称す。酸化触媒21の手前の排気ガスの温度が十分である場合、排気ガス内に含まれているNOが排気ガス内の残留酸素と合わさって触媒21の表面上でNO2に転化される。このNO2は、微粒子フィルタ19内のすすをCO2に酸化することができる強力な酸化剤である。この反応は250度から300度の低温でも起こるが、温度が上昇するにつれて強まる。燃焼におけるすすの生成と触媒21でのNO2の生成との間で均衡がとれている場合、排気ガスが一定温度を超えていれば微粒子フィルタの再生が継続的に保証される。
【0049】
しかし、安全な再生のためには、一定量の過剰のNO2が生成されなければならない。このNO2の過分は環境的に有害な刺激性ガスとして排気ガス・システム内に残るが、これは回避されなければならない。したがって、最近のフィルタ・ボウル23は、過剰のNO2が平均して少なくなるような寸法形状にされており、これは、必要となる微粒子フィルタの再生が平均してわずか250度から450度の温度で行われることを意味する。したがって、ある運転条件下では再生の効率が平均を下回り、別の条件下では平均を上回る。再生の効率が平均を下回る状態が長く続く場合、微粒子フィルタが次第に目詰まりを起こしてしまう。
【0050】
NO2の生成は排気ガスの温度とも関係がある。触媒の手前の排気ガスの温度が220度未満である場合、本発明の効果は制限またはさらには妨害される。したがって、たとえ過剰のNO2を生成するくらい十分な量のNOおよびO2が排気ガス内に含まれている場合でも、フィルタ・ケーキは低い排気ガスの温度で増大される。これが微粒子フィルタが目詰まりを起こす主な理由である。
【0051】
そこで、過剰のNO2をわずかしか生成しないフィルタ・ボウル23を内燃機関の排気ガス・システム内に設置できるようにするためには、連続再生が長い時間不十分である場合でも再生を行えるようにすることが必要となる。フィルタ・ケーキが厚すぎる場合、再生はしたがって強制される。これまで、これは、例えば、ディーゼル燃料を排気ガス・システム内に噴射するまたは未燃ディーゼル燃料をエンジン11を通るように押圧することによって行われていた。このディーゼル燃料はその後、触媒の直前の排気ガスが200度を越えるような条件下では、触媒作用により触媒上で燃焼して排気ガスの温度を約450度まで上昇させ、その結果、排気ガスが、触媒が十分なNO2を生成して微粒子フィルタの再生が素早く行われるくらいに、十分に高温になる。
【0052】
しかし、また、ディーゼル燃料の触媒燃焼には最低でも200度の排気ガスの温度が必要となる。低温では、未燃ディーゼル燃料の燃焼が保証されない。しかし、触媒燃焼がない場合は、ディーゼル燃料による排気ガスの濃縮により、排出される炭化水素の増加を確実に引き起こされることのみが保証されるだけである。排気ガスの温度は上昇せず、微粒子フィルタは再生されない。
【0053】
そこで、このような状況においても、200度未満の排気ガスの温度で微粒子フィルタの再生を実現するために、本発明により、排気ガスを、ディーゼル燃料とは異なる媒体で濃縮することが提案される。この目的のために、ディーゼル・タンクから分離された燃焼燃料タンク25が必要となる。この燃焼燃料タンクは、排気ガス・システムに開口している独自の燃焼燃料ライン27と、燃焼燃料ポンプ29とを有する。
【0054】
この場合、燃焼燃料は、ディーゼル燃料より低温の段階において既に排気ガス内の残留酸素と触媒的に反応して排気ガスの温度を上昇させるような燃料から選択されてよい。排気ガスの温度の上昇は、少なくとも、ディーゼル燃料の触媒酸化が可能となりそれによりディーゼル燃料による排気ガスの効果的な濃縮が可能となるような温度まで行われなければならない。
【0055】
そのために、微粒子フィルタを再生するためのデバイスは、ディーゼル・タンク15から分離されている燃焼燃料タンク25、燃焼燃料ライン27、および、例えば搬送手段29としてポンプを有さなければならない。このデバイスの機能を自動化するために、図1に示した制御デバイス31が存在する。この制御デバイスは、例えば警告灯33を用いて、微粒子フィルタ23を再生しなければならないことを指示する。この目的のために、例えば逆圧力測定デバイスといったようなセンサがフィルタ・ボウル23内に配置され、その信号は制御デバイスによって評価される。この場合、この制御デバイス31からの信号に基づいて、燃焼燃料を用いての再生が開始されてよい。例えば、燃焼燃料ポンプ29が、警告灯33の照明と同時にまたは時間差をおいて作動されてよい。
【0056】
図2は、上述したデバイスからの一部分のみ、すなわち、燃焼燃料タンク25と、燃焼燃料ポンプ29を備える燃焼燃料ライン27と、酸化触媒21および微粒子フィルタ19を備えるフィルタ・ボウル23とを示している。
【0057】
アルコールが燃焼燃料タンク25に注入される。このアルコールは、緊急の再生時にノズル35により排気ガス内へ吹き付けされる。吹き付けられたアルコールは、例えばわずか190度でも排気ガス内で素早く揮発する。このような低温(150℃を超える)においても、アルコールは触媒表面上で熱を放出しながら残留酸素と反応し、その結果、排気ガスが、加えられるアルコールの量に応じて100度から300度だけ加熱される。酸化触媒を過ぎた後の排気ガスでの圧力の動きおよび温度のグラフが図7に示されている。これは後で説明する。これらの測定値は図2によるデバイスを基にして得られたものであり、ここでは、排気ガスを加熱するためにモノエチレングリコールを使用した。
【0058】
図3は、燃焼燃料および推進燃料を噴射するのに適している例示の実施形態を示している。ポンプ29が、バルブ35および35´の位置に応じて、燃焼燃料、ディーゼル燃料、または、燃焼燃料およびディーゼル燃料を触媒要素21の直前にあるチャンバ内へと押し込む。制御デバイス31が、排気ガス37を濃縮するために、バルブ35、35´を操作してディーゼル燃料と燃焼燃料との割合を調整する。触媒21と微粒子フィルタ19との間の温度センサが、この目的のために必要な情報を提供する。
【0059】
図4は、ディーゼル燃料により排気ガスを加熱することができる、微粒子フィルタを備える現存する車およびユニットに再取付けするのに適している実施形態の変形形態を示している。この場合の分離型の燃焼燃料タンクは、適切な燃料を含んでいるアフターマーケット部品または現存する容器であってよい。このようなタイプの既存の燃焼燃料容器は、十分な不凍剤が中に収容されている場合は、冷却水タンクである。他には、洗浄液の中に存在するアルコールの含有量が十分に高い場合はフロントガラス洗浄システムのタンクがある。排気ガス37内への燃焼燃料および推進燃料の噴射は、互いに別個に行われてよい。
【0060】
図5から図9に示した測定値はEuro3の工業用ディーゼル・エンジン(ターボチャージャー、直接噴射式および排気ガス再循環式のVWの1.91TDI)およびHJSから市販されている連続再生用の微粒子フィルタシステム(白金がドープされた酸化触媒)を用いた試験構成から得られたものである。複数の燃料を排気ガス・システム内に噴射した。フィルタ・ボウル23の内側の触媒21の上流にある図2に示したデバイスに従って噴射を行った。それぞれの噴射量は、燃焼の完了時に約100℃の温度上昇が得られるように選択した。排気ガスの温度を内燃機関の速度および負荷(動力式ブレーキ)を介して調整した。
【0061】
複数の有機液体の、市販の白金触媒上での温度上昇(図5)およびNO2の生成(図6)への影響は図5および図6から分かる。ここでは、驚くべきことに、180℃のところで、メタノールおよびモノエチレングリコールの2つのアルコールの大幅な温度上昇およびNO2生成の増加が既に始まっている。モノエチレングリコール(MEG)、メタノールおよびプロピレングリコールの場合のライトオフ温度は180℃であった。メタノールおよびMEGの場合、190度において既に完全な転化が確認された。温度の動きに関しては、メタノールおよびモノエチレングリコールの効果はほぼ同等である。図6から分かるように、メタノールは、NO2の再生がモノエチレングリコールと比較して約20℃低い温度のところで既に増加していることから、連続再生システムに好適であると考えられる。
【0062】
同様に、エタノール、2−プロパノールおよびシクロヘキサノンを使用した場合のNO2の生成が温度の動きに平行して増加していないことに注目されたい。燃焼燃料を噴射しない場合(基準線)の、温度に応じたNO2生成の増加と比較して、上述の燃焼燃料を噴射した場合のNO2生成の増加はより平坦である。これは、とりわけ、触媒上での燃焼燃料の酸化とNOの酸化との間の競合が原因である。また、より鎖の長いアルコールの一部の酸化生成物、具体的には酢酸および対応するアルデヒドが、NO/NO2の転化に関連する触媒を不活性化するように働く。
【0063】
比較のために、ディーゼル推進燃料も噴射した。使用した触媒上での温度上昇は220℃を超えるまで始まらなかった(図5)。しかし、その結果、NO2の生成は多分に妨害されてしまう(図6)。
【0064】
また、メタノール、モノエチレングリコール、エタノールおよびディーゼル燃料を用いた試験を、異なるフィルタ・ボウル(製造業者:Peugeot)上で行った。このフィルタ・ボウルは十分な白金がドープされていると推定される触媒を含んでおり、この触媒はNO2および下流の微粒子フィルタを生成し、この微粒子フィルタは同様に、触媒、とりわけパラジウムがドープされていると推定される。このフィルタは、燃料添加剤が使用されるPeugeotの自動車用に市販されている。添加剤およびすすによって形成されるフィルタ・ケーキは、エンジン制御デバイスが未燃ディーゼル燃料を排出するように操作されることにより、これらの車の中で発火される。フィルタ・ケーキは、触媒上および触媒がドープされた微粒子フィルタ上で放熱しながら酸化する。修正なしでPeugeotのこのフィルタ・ボウルを使用したが、エンジンは添加剤を含む燃料ではなくディーゼル燃料で駆動させた。これらの試験では、未燃ディーゼル燃料をエンジンからフィルタ・ボウルに誘導するために、エンジン制御デバイスで調整する代わりに燃焼燃料を排気ガス流れ内に導入した。これらの試験では、推進燃料または燃焼燃料を酸化するときのライトオフ温度が約30度から40度低下したが、質的には、第1の触媒(HJS)の場合と非常に類似した状態が得られた。また、メタノールおよびモノエチレングリコールのみは非常に低い温度で既に温度上昇を引き起こすことができ(図11)、したがって、NO2の生成を妨害することはなかった(図12)。
【0065】
上述の試験で使用した微粒子フィルタ(HJS)の再生も試験した。図7に示した圧力パターンは、図2による排気ガス・システム37内の圧力が5.75時間の間に140ミリバールまで増加していることを示している。この時間における触媒21を過ぎた後の排気ガスの温度は摂氏約200度である。「始動時」では、モノエチレングリコール(排気ガス1kg当たり8.5g)が噴射される(ノズル35)。燃焼燃料の揮発により、圧力は12mbarだけ増加する。揮発したMEGは、触媒要素21の触媒表面により(図2)排気ガス37内の酸素と反応して熱を放出する。このように、触媒を過ぎた後の約350℃まで増加した温度により、微粒子フィルタの再生が開始され、圧力はすすの減少と共に安定して減少する。より多くの燃焼燃料を噴射することにより、より高い温度まで到達することができ、より迅速なすすの減少を実現することができる。実際に微粒子フィルタの再生をより迅速に行うためには、温度は450度を超えることが望ましい。「停止時」に噴射を終了すると、排気ガスの圧力は急速に100mbar未満まで減少して、再び増加し始める。このように再び増加するのは、モノエチレングリコールの噴射終了後に、温度が220度未満の水準にまで急激に減少することによりNO2が生成されなくなり、低温とNO2の不足によりそれ以降再生が行われなくなることが原因である。MEGを噴射することにより、排気ガス内のNO2の濃度は60ppmから115ppmまで増加した。それにより、すすの燃焼のための十分なNO2が得られた。
【0066】
本発明の欠点、すなわち、その中身が燃焼燃料として排気ガス流れ内に噴射され得る媒体用タンクを推進燃料タンクから分離する必要性が、既に動力車に載せられている液体を使用することで軽減され得るかどうかを明確にするために、触媒により酸化可能な燃焼燃料により排気ガスを濃縮する際に、車の既存の容器を使用し、その中に収容されている媒体を濃縮することを試みた。原則的に、グリコール濃度が通常は約50%から60%である冷却液がその中を流れている冷却液システムが使用可能である。該当する容器に入っているフロントガラス洗浄液も使用可能である。フロントガラス洗浄液は、通常、水50%と、アルコールまたはアルコール混合物50%とで構成される。
【0067】
その結果として、図8は、グリコール100%からグリコール含有量がわずか50%であるグリコール水溶液までの、触媒上での温度上昇への影響を示している。水溶液の場合、温度上昇は予想どおりに水の含有量が増すにつれて低下していく。これは、水が揮発エネルギーを吸収するためである。示した測定値では、各試験において同じ量のアルコールが噴射されるように、水の含有量を修正して適用量を調整した。驚くべきことに、記録された温度上昇の損失はわずかであった。
【0068】
さらに、グリセリン含有量がそれぞれ75%および50%であるグリセリン溶液に関しての同様の結果を図9に示した。この場合でも同様の結果が示された。すなわち、水溶液を使用した場合でも、温度上昇は再生を可能にするくらい十分なものである。
【0069】
ここでの洞察には2つの側面がある。1つ目は、微粒子フィルタを再生するのに十分な温度まで排気ガスの温度を上昇させるために、触媒により酸化可能な媒体により排気ガスを濃縮するのに冷却液またはフロントガラス洗浄液が使用され得るということである。このような液体は既存の容器から除去され得る。
【0070】
2つ目の側面は、明らかに、例えばメチルアルコールといったような簡単に燃えてしまうアルコールの水溶液も使用され得るということである。このような水溶液は販売時および取り扱い時において無害である。このような水溶液は、微粒子フィルタの再生のために特別に設けられた燃焼燃料タンクに注入され得て、例えばガス容器の場合とは異なり特別な安全措置を一切必要としない。
【0071】
本発明の好適な実施形態では、すすのフィルタ・ケーキを「発火」させるために、推進燃料の添加剤を用いて加えられた触媒と共に混合物中に存在する燃焼燃料が使用される。これは、排気ガスの温度を短い時間で上昇させることを目的とした、このタイプのフィルタ・ケーキを電気的に発火させるまたはエンジン制御デバイスを操作することによって発火させるような既知の手法の代替案である。好適な変形形態では、燃焼燃料により濃縮される排気ガスは、微粒子フィルタの直前に配置された酸化触媒上で転化され、それにより、排気ガスがフィルタ・ケーキの発火温度を上回るように加熱される。
【0072】
排気ガス流れ中に配置される触媒要素の代わりに推進燃料の添加剤を選択することにより、すすフィルタ・ケーキ自体の中に存在する触媒が、加えられる燃焼燃料(例えば、白金)を酸化するのに使用され得るようになる。好適な変形形態では、微粒子フィルタ内に固着されているすすに鉄をドープすることによりフィルタ・ケーキの発火温度を低下させるために、従来の鉄質の推進燃料添加剤が使用される。再生を開始するために、まず、鉄添加物の代わりに白金添加物が推進燃料に加えられ、その結果、フィルタ・ケーキの表面上に白金層が形成される。次いで、再生に必要となる燃焼燃料が噴射されてすす表面上で白金触媒と直接に反応し、それによりフィルタ・ケーキが発火される。
【0073】
以上のことから、ディーゼル・エンジンおよび微粒子フィルタを備える車またはユニットに設置するための小売販売され得るデバイスは、例えば水性アルコール溶液用の燃焼燃料タンク、ラインおよびポンプに加えて、排気ガス・システム内に燃焼燃料を噴射するためのノズルを有する。ラインには、アフターマーケット部品の場合、排気パイプを取り囲むことができるカフが設けられていてよい。それにより、排気パイプ内にノズルを有するこのラインの構成が非常に単純になる。また、ポンプ・モータとスイッチとの間に電路が必要である。スイッチは手動で作動されてもよい。
【0074】
最後に、図10は、微粒子フィルタの再生のために用意された燃焼燃料を含んでいる容器を示している。この燃焼燃料は例えば80%のアルコール水溶液であってよい。アルコール分には種々の成分が含まれていてよく、具体的には、主成分として、NO2を早期に増加させるためのメタノールと、任意選択で、低含有量のモノエチレングリコールが含まれる。このタイプの容器は、既存の流通経路によりガソリンスタンドで入手可能である。
【0075】
本発明による解決策は主として緊急の再生を可能にするものであるが、通常時の再生に使用されてもよい。緊急の再生は再生サイクルの2回に一度より頻繁に行われることはなく、好適には、再生サイクルの5回に一度より頻繁に行われることはない。緊急の再生は、希薄エンジンの所与の運転条件において、通常時の再生を行うことができず、その後もエンジンを作動させるのに再生が必要である場合にのみ行われる。
【符号の説明】
【0076】
11 ディーゼル・エンジン; 13 ディーゼル・ポンプ;
15 ディーゼル・タンク; 17 排気ガス・システム;
19 微粒子フィルタ; 21 酸化触媒; 23 フィルタ・ボウル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄燃焼エンジン(11)、特にディーゼル・エンジン、の微粒子フィルタ(19)を再生するため、排気ガスの温度が低すぎる場合に、排気ガス(37)が前記微粒子フィルタ(19)の上流にある供給点において触媒により酸化可能な媒体により濃縮されて、前期媒体の触媒酸化により前記微粒子フィルタの再生のために十分な排気ガスの温度まで加熱される、微粒子フィルタを再生する方法において、
前記排気ガス(37)が、推進燃料およびその分解産物とは異なっており、推進燃料より低い温度において触媒上で酸化する燃焼燃料により濃縮されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記燃焼燃料を含む前記排気ガスの温度が第1の温度まで加熱され、その温度では、前記排気ガス(37)が推進燃料によって濃縮されるのと同時にまたはその後に前記燃焼燃料が触媒的に酸化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
媒体の触媒酸化により排気ガス(37)を微粒子フィルタの再生に十分な排気ガスの温度まで加熱することを目的として希薄燃焼エンジン(11)の前記排気ガス(37)を濃縮するための触媒により酸化可能な媒体の使用法であって、前記媒体が、前記希薄燃焼エンジンの推進燃料およびその分解産物とは異なる燃焼燃料であり、この燃焼燃料が前記推進燃料より低い温度で触媒的に酸化することができることを特徴とする使用法。
【請求項4】
前記燃焼燃料が有機液体であるまたは有機液体を含むことを特徴とする、請求項3に記載の使用法。
【請求項5】
前記燃焼燃料が、アルコール、または、少なくとも40%、好適には少なくとも50%のアルコールを含む混合物であることを特徴とする、請求項4に記載の使用法。
【請求項6】
前記燃焼燃料が、メチルアルコール、または、少なくとも10%のメチルアルコールを含む混合物であることを特徴とする、請求項4または5に記載の使用法。
【請求項7】
前記燃焼燃料が、グリコール、好適にはモノエチレングリコールまたはプロピレングリコールであること、あるいは、前記燃焼燃料が少なくとも10%のグリコールを含む混合物であることを特徴とする、請求項4から5のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項8】
前記燃焼燃料の揮発温度が前記推進燃料の平均的な揮発温度より低い、特に摂氏250度より低い、ことを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項9】
前記燃焼燃料の揮発温度が、前記推進燃料の触媒反応のために必要となる下限の排気ガスの温度未満、例えば摂氏220度未満、好ましくは摂氏220度未満、特に好適には190℃未満であることを特徴とする、請求項3から8のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項10】
前記燃料が水中で溶解されることを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項11】
希薄燃焼エンジン(11)と、推進燃料タンク(15)と、排気ガス・システム(17)と、前記排気ガス・システム内にある微粒子フィルタ(19)とを有するデバイスを備える緊急用再生デバイスとしての、燃焼燃料タンク(25)および燃焼燃料ライン(27)と、搬送手段(29)とを有するデバイスの使用であって、前記燃焼燃料ライン(27)が、前記排気ガス・システムに開口して前記微粒子フィルタ(19)の上流に配置されておりまたは配置され、それにより、前記微粒子フィルタ(19)の手前の前記排気ガス(37)が前記燃焼燃料タンク(25)からの燃焼燃料によって濃縮され得るようになした使用。
【請求項12】
−希薄燃焼エンジン(11)、推進燃料タンク(15)、および、前記推進燃料タンクから前記希薄燃焼エンジンまでの推進燃料ラインと、
−前記希薄燃焼エンジン(11)に隣接している排気ガス・システム(17)およびその中に配置される触媒表面(21)、ならびに、微粒子フィルタ(19)と
を有するデバイスであって、
−前記推進燃料タンクから分離されており、推進燃料およびその分解産物とは異なる燃焼燃料を収容するための燃焼燃料タンク(25)、
−前記微粒子フィルタ(19)および前記触媒表面(21)の上流に位置されており、前記排気ガス・システム(17)に開口している、前記燃焼燃料タンク(25)から前記排気ガス・システム(17)内の供給点までの燃焼燃料ライン(27)、ならびに
−前記燃焼燃料を前記排気ガス・システム(17)内まで搬送するための搬送手段(29)、および、前記搬送手段(29)を作動させるための回路(31)
を備える、ことを特徴とする、デバイス。
【請求項13】
前記排気ガス・システム(17)内の圧力状態および/または温度状態を監視するためのおよび前記回路(31)を作動させるためのセンサ(41)を備える、ことを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記回路(31)の、前記微粒子フィルタ(19)の再生が必要であることを指示する希薄燃焼エンジン(11)の警告デバイス(33)との接続部を備える、ことを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
ディーゼル燃料およびディーゼル燃料の分解産物とは異なる燃焼燃料、特にアルコール、を含む、ディーゼル・エンジン(11)の微粒子フィルタ(19)を再生するためのデバイスのための補給用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−524669(P2010−524669A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504412(P2010−504412)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000176
【国際公開番号】WO2008/131573
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509294450)
【Fターム(参考)】