説明

微細パターン形成用部材

【課題】各々の径が数10nmオーダーの微細な貫通孔を構成要素とする微細なパターンを形成する目的で用いられる微細パターン形成用部材の提供。
【解決手段】マイクロポア貫通孔を複数有するアルミニウム陽極酸化皮膜のマイクロポア貫通孔の内部に有機溶媒で現像可能な樹脂組成物が充填された微細パターン形成用部材。前記部材に所望のパターンとなるように露光を行い、その後、有機溶剤を用いた現像処理を行うことにより、前記部材に微細パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターン形成用部材に関する。より具体的には、各々の径が数10nmオーダーの微細な貫通孔を構成要素とする、微細なパターンを形成する目的で用いられる微細パターン形成用部材に関する。本発明の微細パターン形成用部材は、微細な貫通孔を構成要素とする導波路若しくは導光路を有する光学素子や、二次元フォトニック結晶を用いた光学素子を作成するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
微細なピッチを有する発光源、受光源に対応できる光ガイド板が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の光ガイド板は、アルミニウム基板に陽極酸化等を施して形成された酸化膜層を光ガイド基板とし、該ガイド基板に設けられた0.5〜0.8μm(50〜80nm)程度の微細な貫通孔が導光路をなす。該貫通光には、光を透過する物質が充填される場合もある。
特許文献1に記載の光ガイド板では、導光路をなす微細な貫通孔を所望のパターンで配置することが要求される場合がある。また、所望のパターンとなるように、該貫通孔に光を透過する物質を充填することが要求される場合がある。
【0003】
また、特許文献2,3に記載されているように、光エレクトロニクスの分野においては、二次元フォトニック結晶の平面光回路への応用が期待されている。二次元フォトニック結晶を用いた平面光回路は、直径数nm〜数100nmの細孔の周期的配列を基本構造とし、該細孔の一部に異種材料を充填することにより、屈折率を変化させたり、機能性を持たせたものである。
したがって、二次元フォトニック結晶を用いた平面光回路を作成する際には、周期的に配列している直径数nm〜数100nmの細孔の一部に、所望のパターンになるように異種材料を充填することが要求される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の光ガイド板において、所望のパターンとなるように、貫通孔を配置することは困難であり、また、所望のパターンとなるように光を透過する物質を貫通孔に充填することはさらに困難であった。
また、特許文献2,3において、周期的に配列している直径数nm〜数100nmの細孔の一部に、所望のパターンになるように異種材料を充填することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−93803号公報
【特許文献2】特許第3919594号明細書
【特許文献3】特開2002−277659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術の問題点を解決するため、各々の径が数10nmオーダーの微細な貫通孔を構成要素とする、微細なパターンを形成する目的で用いられる微細パターン形成用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、以下の(i)〜(iii)を提供する。
(i)マイクロポア貫通孔を複数有するアルミニウム陽極酸化皮膜のマイクロポア貫通孔の内部に有機溶媒で現像可能な、感光性樹脂組成物が充填された微細パターン形成用部材。
(ii)上記(i)に記載の部材に対して、所望のパターンとなるように露光を行い、その後、有機溶剤を用いた現像処理を行うことにより、上記(i)に記載の部材に微細パターンを形成する方法。
(iii)上記(ii)の方法により得られる微細パターンを有する部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微細パターン形成用部材によれば、各々の径が数10nmオーダーの微細な貫通孔を構成要素とする微細なパターンを容易に形成することができる。
本発明によれば、フォトリソグラフィプロセスを用いることで、所望な微細パターンを容易に形成することができる。
また、微細なパターンは、アルミニウム陽極酸化皮膜の内部に形成されるため、外部からの物理的刺激に対して傷つきにくくなり、微細なパターンの耐久性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ゾーンプレートの一例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
<マイクロポアを有するアルミニウム陽極酸化皮膜>
電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られるアルミニウム陽極酸化皮膜には、直径数nm〜数100nm程度の複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。
本発明の微細パターン形成用部材には、このような直径数nm〜数100nm程度の複数のマイクロポアが規則的に形成されたアルミニウム陽極酸化皮膜のうち、該マイクロポアが該アルミニウム陽極酸化皮膜を貫通しているもの、すなわち、マイクロポア貫通孔を有するものを用いる。
【0011】
このような直径数nm〜数100nm程度の複数のマイクロポア貫通孔が規則的に形成されたアルミニウム陽極酸化皮膜については、特開2008−202112号公報に具体的に記載されている。
本発明において、マイクロポア貫通孔を複数有するアルミニウム陽極酸化皮膜の作成手順、および、マイクロポア貫通孔に関する各種パラメータ(ポア径、平均ポア密度、ポア径の分散度、マイクロポア貫通孔の規則化度等)については特開2008−202112号公報の記載を参考にすればよい。
但し、特開2008−202112号公報では、マイクロポア貫通孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜を得る際に、(B)処理として、マイクロポア貫通孔が形成されたアルミニウム陽極酸化皮膜を50℃以上の温度で少なくとも10分以上加熱する処理を実施しているが、本発明の場合、(B)処理の実施は任意である。また、特開2008−202112号公報では、(B)処理の結果として、アルミニウム陽極酸化皮膜が下記組成を満たしているが、本発明の場合、アルミニウム陽極酸化皮膜が下記組成を満たすことは必ずしも要求されない。
S原子濃度:3.2wt%以下
C原子濃度:2.5wt%以下
P原子濃度:1.0wt%以下
【0012】
<感光性樹脂組成物>
フォトリソグラフィプロセスではアルカリ性の現像液が最も一般的に使用される。しかしながら、本発明において、アルカリ性の現像液を使用すると、基材であるアルミニウム陽極酸化皮膜が現像液によってダメージを受けることから、中性の有機溶媒を現像液として使用する。
このため本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、有機溶媒で現像可能なものであることが要求される。感光性樹脂組成物としては、有機溶媒で現像可能なものであれば、化学線(遠〜近紫外線、X線、または電子ビーム)による露光時にポジ型の反応を示すもの(例えば、露光により現像液への溶解速度が向上、または可溶化)、あるいはネガ型の反応を示すもの(例えば、露光により重合または架橋し、現像液に対し、溶解速度低下、または不溶化)のいずれも使用することが出来る。
【0013】
有機溶媒で現像可能なポジ型の感光性樹脂組成物としては、従来公知の光分解性ジアゾニウム塩を用いた組成物や、o−ナフトキノンジアジド化合物と樹脂を混合した組成物等が挙げられる。
但し、本発明では現像液として有機溶剤を用いることから、露光部が現像液に対して溶解速度が低下、あるいは不溶化するネガ型の感光性樹脂組成物が、画像形成性の観点で好ましい。
有機溶媒で現像可能なネガ型の感光性樹脂組成物としては、従来公知の、光重合性組成物、ジアゾ樹脂からなる組成物、感光性アジド化合物からなる組成物、光架橋性組成物などを使用することが出来る。
これらの中でも、フォトリソグラフィプロセスを用いて所望な微細パターンを形成するのに際して、解像力に優れる点で光重合性化合物が望ましい。
【0014】
光重合性組成物は、重合性化合物と、光重合開始剤と、任意にバインダー樹脂とを含有する。
重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。
これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
【0015】
また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。
また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。
また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0016】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0017】
また、メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0018】
また、イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
また、クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
また、イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
また、マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0019】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0020】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0021】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、一般式(A)中、R4及びR5は、それぞれ、H又はCH3を示す。)
【0022】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0023】
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。
更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0024】
本発明の重合性化合物としては、硬化性の観点で、トリメチロールプロパントリアクリレートペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがより好ましい。
【0025】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、感光性樹脂組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。
【0026】
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を、使用する光源の波長により適宜選択して用いることができる。
具体的には、例えば、特開2008-308603号公報の段落[0139]〜[0160]に記載の有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ビイミダゾール系化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
また、使用する露光光源に合わせて分光増感を行なう増感色素を併用することが好ましい。この場合、特開2001−133969号公報の段落[0017]〜[0019]に記載されているようなシアニン染料を併用し、赤外線に感光するようにしても良いし、特開2007−58170号公報の段落[0017]〜[0055]に記載されているような増感色素を用いて350〜450nmの波長域の光線に感光するようにしても良い。
【0027】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、露光感度の観点から、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、メタロセン化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物、オニウム系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
より好ましくは、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物、オニウム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物であり、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
【0028】
バインダー樹脂としては、有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アミド系樹脂、合成ゴム系樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂などを挙げることができるが、特に、α,β−不飽和エチレン単量体単位を有する高分子重合体が好適に用いられる。該α,β−不飽和エチレン系単量体単位を構成する単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなどのスチレン類、ビニルナフタレン類、エチレンやプロピレン、ブチレン、C3〜C10およびそれ以上のα−オレフィン類、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンなどのビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールなどのN−ビニル化合物類などが挙げられる。これらの単量体は1種用いても良いし、また2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
光架橋性樹脂としては、ポリ桂皮酸ビニルや、側鎖にマレイミド基を有する高分子化合物を用いた組成物、環化ゴムにアジド化合物を併用した組成物、あるいは不飽和ポリエステル組成物等を使用することが出来る。また、酸架橋型の感光性樹脂組成物も好適に挙げられる。酸架橋型の組成物は光酸発生剤と、酸により架橋する化合物(架橋剤)、および酸の存在下で架橋剤と反応しうる高分子化合物を含有する。このタイプの感光性樹脂組成物も前述のシアニン染料を併用し、赤外線を用いてパターン形成することも出来る。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物は、希釈のための溶剤を含んでいても良い。この溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
さらに本発明の感光性樹脂組成物中には、添加剤(例えば塗布性を向上させるための界面活性剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤) を含有させても良い。また、光重合性組成物を用いた場合、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、その他の共重合体が挙げられる。
【0032】
<マイクロポア貫通孔への感光性樹脂組成物の充填>
アルミニウム陽極酸化皮膜に形成されたマイクロポア貫通孔の内部に感光性樹脂組成物を充填する手順について以下に述べる。
【0033】
マイクロポア貫通孔の内部に感光性樹脂組成物を充填する方法は特に限定されないが、以下の点に留意することが好ましい。
光学的な散乱、複屈折の抑制の観点から、マイクロポア貫通孔の内壁と、充填された感光性樹脂組成物と、の界面に空隙が存在することや、充填された感光性樹脂組成物中に「ボイド」が存在することは望ましくない。
界面での空隙抑制のためには、充填時に感光性樹脂組成物がマイクロポア貫通孔の壁面となじむように、感光性樹脂組成物に対する該壁面の親和性を高めることが好ましい。
感光性樹脂組成物に対する親和性を高めるためには、マイクロポア貫通孔の壁面に修飾処理(シリケート処理、ポリビニルホスホン酸処理など)を施すことが好ましい。
【0034】
また、界面での空隙抑制、および、「ボイド」の発生の抑制のためには、定着(乾燥など)時に感光性樹脂組成物の収縮を出来うる限り抑制することが重要である。
感光性樹脂組成物の収縮を抑制するには出来るだけ長時間をかけて乾燥を行うことが重要である。
【0035】
以上の点を考慮して、マイクロポア貫通孔の内部に感光性樹脂組成物を充填するには、マイクロポア貫通孔が形成されたアルミニウム陽極酸化皮膜の表面に、過剰な感光性樹脂組成物を塗布した後、減圧室内で乾燥を進めることが好ましい。
この手順を実施した場合、乾燥後のアルミニウム陽極酸化皮膜表面には余剰の感光性組成物が残存するため、研磨等の物理的手段、若しくは気相処理によるクリーニング、またはこれらの両方を実施することにより、これを除去する。
【0036】
以上の手順を実施することで、本発明の微細パターン形成用部材が得られる。
本発明の微細パターン形成用部材の使用方法について以下に述べる。
本発明では、上記の微細パターン形成用部材に対して、所望のパターンとなるように露光を行い、その後、有機溶剤を用いた現像処理を行うことにより、マイクロポア貫通孔を構成要素とする微細パターンを有する部材を得ることができる。
パターン露光および現像処理の実施後の部材においては、一部のマイクロポア貫通孔に充填された感光性樹脂組成物が除去される。すなわち、ポジ型の感光性樹脂組成物が使用されている場合、マイクロポア貫通孔のうち、露光部の感光性樹脂組成物が除去される。一方、ネガ型の感光性樹脂組成物が使用されている場合、マイクロポア貫通孔のうち、未露光部の感光性樹脂組成物が除去される。
この結果、下記(1)〜(3)のいずれかの微細なパターンを有する部材が得られる。
(1)感光性樹脂組成物が充填されていないマイクロポア貫通孔を構成要素とする微細なパターン。
(2)感光性樹脂組成物が充填されたマイクロポア貫通孔を構成要素とする微細なパターン。
(3)感光性樹脂組成物が充填されたマイクロポア貫通孔と、感光性樹脂組成物が充填されていないマイクロポア貫通孔と、を構成要素とする微細なパターン。
【0037】
<パターン露光>
パターン露光は、本発明の微細パターン形成用部材上に、所望のパターンを有するマスクを重ねた状態で光線の照射を行ってもよく、所望のパターンを有するマスクを介して、光線を照射して行っても良い。あるいは、所望のパターンのデータをインプットしたコンピュータでレーザー光源を制御して、直接パターン露光を行なっても良い。
光源としては、フォトリソグラフィプロセスに使用される光源から広く選択することができ、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射する場合には、光学フィルタを利用してもよい。
【0038】
<現像処理>
フォトリソグラフィプロセスではアルカリ性の現像液が最も一般的に使用される。しかしながら、本発明の場合、基材である陽極酸化皮膜がアルカリ雰囲気下では溶解が進むので、アルカリ性の現像液を使用すると、現像時に陽極酸化皮膜が溶解し強度が低下する問題が起こる。また現像液中のアルカリが陽極酸化皮膜中に残存し、経時による劣化の原因ともなる。そのため、本発明では中性の有機溶媒を用いた現像液として使用する。
本発明の現像液として用いられる有機溶剤は、感光性樹脂組成物を現像可能なものであれば制限はなく、有機溶剤自体でも良いが、有機溶剤を現像可能な量で含む水溶液も使用することが出来る。
また、現像液として用いられる有機溶剤としては、上述の感光性樹脂組成物を希釈する際に使用される有機溶剤の中から任意に選択しても良い。
本発明において好ましい有機溶剤は、感光性樹脂組成物の種類により適宜選択可能であるが、入手性等の観点からは、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
なお、本発明の現像液として、有機溶剤を含む水溶液を使用する場合、該水溶液中の有機溶剤の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明によって得られる微細パターンを有する部材の好適な用途について以下に述べる。
本発明によって得られる微細パターンを有する部材の好適な用途の一例は、二次元フォトニック結晶を用いた光学素子である。
上述したように、二次元フォトニック結晶を用いた光学素子とは、直径数nm〜数100nmの細孔の周期的配列を基本構造とし、該細孔の一部に異種材料を充填することにより、屈折率を変化させたり、機能性を持たせたものである。
二次元フォトニック結晶を光集積デバイスに適用する研究は世界的に盛んで、注目すべき物理現象が見いだされている。例えば、二次元フォトニック結晶中に共振器(光の自励振動が保持される構造)や導波路(光の通路)を作ると、光を数10万サイクル蓄積したり、進行速度を真空中より2桁も低くできることが確認されている。これらは、将来の量子通信や演算などへの応用や、スローライト技術・ストッピングライト技術の一つとして世界的な関心を集めている。
【0040】
二次元フォトニック結晶中に線状の欠陥列を導入すると、光は欠陥列に沿って伝搬することが可能となるが、欠陥以外の領域には光は伝搬不可能なため、該欠陥列は無損失な導波路となる。したがって、二次元フォトニック結晶中に所望の配置となるように線状の欠陥列を形成することにより、極微小な平面光回路を形成することができる。
二次元フォトニック結晶中に線状の欠陥列を形成するには、フォトニック結晶の周期性を部分的に壊してやればよい。本発明の微細パターン形成用部材の場合、感光性樹脂組成物が充填されたマイクロポア貫通孔のうち、所望の部分のみ該感光性樹脂組成物を除去することで二次元フォトニック結晶の周期性を破壊できる。
【0041】
上記した二次元フォトニック結晶を有する光学素子は、使用時において、アルミニウム陽極酸化皮膜の断面方向から光を入射する光学素子である。
一方、本発明によって得られる微細パターンを有する部材の好適な用途の別の一例は、使用時において、アルミニウム陽極酸化皮膜の表面から光が入射する光学素子である。このような、アルミニウム陽極酸化皮膜の表面から光が入射する光学素子の具体例としては、回折格子や、回折レンズが挙げられる。
【0042】
回折レンズのひとつであるゾーンプレートについて以下に述べる。
ゾーンプレートとは、レンズが屈折と言う現象をつかって光線を集めて結像するのに対して、回折という現象をつかって光線を集め結像するもので、眼に見える可視光線よりも波長が短い光線、例えば、X線やマイクロウエーブのような電磁波を集め結像する際に、レンズの代わりに使用される。
ゾーンプレートにおける各ゾーンの境界は、透過型であるレンズと同じように光路長が半波長ずつ異なるように作成する必要があるので、その形状は図1に示すように外側に行くほど細かくなる同心円状の回折格子となる。
ゾーンプレートの分解能は最外輪帯幅で決まり、最外輪帯幅=0.15μm(150μm)場合、0.5μmの結像が可能である。
本発明では、微細パターン形成用部材に対して、図1に示すパターンとなるように、パターン露光を行い、その後、現像処理を行うことで、所望のパターンを有するゾーンプレートを容易に作成することが出来る。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
(実施例1)
本実施例では、特開2008−202112号公報に記載の方法と同様の手順で、マイクロポア貫通孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜を作成した。但し、本実施例では、特開2008−202112号公報に記載の手順のうち、マイクロポア貫通孔を有するアルミニウム酸化皮膜の加熱処理は実施しなかった。
[1]金属基板
金属基板として、高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、陽極酸化処理を施す部分を一辺10cmの正方形にすることができるような大きさにカットして用いた。
【0045】
[2]鏡面仕上げ処理
上記のアルミニウム基板に以下の手順で鏡面仕上げ処理を施した。
<鏡面仕上げ処理>
研磨布を用いた研磨、バフ研磨および電解研磨をこの順に行うことにより、鏡面仕上げ処理を施した。バフ研磨後には水洗を行った。研磨布を用いた研磨は、研磨盤(Struers Abramin、丸本工業社製)および耐水研磨布(市販品)を用い、耐水研磨布の番手を#200、#500、#800、#1000および#1500の順に変更しつつ行った。バフ研磨は、スラリー状研磨剤(FM No.3(平均粒径1μm)およびFM No.4(平均粒径0.3μm)、いずれもフジミインコーポレーテッド社製)を用いて行った。電解研磨は、下記組成の電解液(温度70℃)を用いて、陽極を基板、陰極をカーボン電極とし、130mA/cm2の定電流で、2分間行った。電源としては、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。
<電解液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬工業社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
【0046】
[3]工程(1) − 陽極酸化皮膜形成工程
鏡面仕上げ処理を施した基板の表面に、以下に示される条件で、陽極酸化処理を行った。すなわち、電解液中に基板を浸せきさせ、以下に示される電解液(種類および濃度)、電圧、温度、平均流速および処理時間で、直流電解による陽極酸化処理を行い、陽極酸化皮膜を形成させた。陽極酸化処理においては、冷却装置としてNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)、電源としてGP0650−2R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の平均流速は、渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて測定した。
電解液:0.3M硫酸
電圧:25V
温度:15℃
電解液流速:3cm/s
処理時間:60分
【0047】
[4]工程(2) − 陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる工程
以下に示される条件で、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる処理を行った。
すなわち、以下に示される処理液(種類、濃度)、温度、流速、及び浸せき時間条件にて、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を処理液に浸せきさせて、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させた。
処理液:0.5Mりん酸
温度:40℃
電解液流速:3cm/s
処理時間:15分
【0048】
[5]工程(3) − 陽極酸化処理工程
次に電解液中に基板を浸せきさせ、以下に示される電解液(種類および濃度)、電圧、温度、平均流速および処理時間で、直流電解による陽極酸化処理を行い、陽極酸化皮膜を深さ方向に成長させた。なお、種々の処理装置に関しては、上記工程(1)にて記載したものと同様の装置を使用した。
電解液:0.3M硫酸
電圧:25V
温度:15℃
電解液流速:3cm/s
処理時間:60分
【0049】
[6]工程(4) − マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する工程
更に以下に示される条件で、工程(3)実施後のマイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去し、マイクロポアの断面形状を略直管形状とするため、陽極酸化皮膜の溶解処理を行った。すなわち、以下に示される処理液(種類、濃度)、温度、流速、及び浸せき時間条件にて、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を処理した。処理後の形状については、上記工程(3)実施前後の陽極酸化皮膜を、断面方向からFE−SEMにより撮影することで確認した。
【0050】
[7]工程(3)および工程(4)の繰返し処理
上述した、[5]工程(3)、及び、[6]工程(4)を、それぞれ3回繰返し行った。この時点において、基板上には断面形状が略直管形状のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成されている。
【0051】
[8]アルミニウム基板の除去
[7]工程実施後、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を濃度2mol/Lの塩化水銀水溶液を用いて、20℃、3時間浸漬させ、アルミニウム基板を溶解して除去して、断面形状が略直管形状のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を得た。
【0052】
[9]マイクロポア貫通処理
[8]工程実施後の陽極酸化皮膜を5質量%リン酸を用いて、30℃、30分間浸漬処理し、マイクロポアを貫通させて、マイクロポア貫通孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜を得た。
【0053】
[10]感光性樹脂組成物の充填
下記組成の感光性樹脂組成物を調製し、[9]工程実施後のアルミニウム陽極酸化皮膜の一方の表面にスピンコーターで塗布し、減圧室内で、80℃で1分間乾燥させた。乾燥後のアルミニウム陽極酸化皮膜表面に残存する余剰の感光性組成物を、研磨と気相処理によるクリーニングを組み合わせて除去して、マイクロポア貫通孔に感光性樹脂組成物が充填されたアルミニウム陽極酸化皮膜を得た。
感光性樹脂組成物
光重合性化合物:DPHA(日本化薬社製) 3.0質量部
光重合開始剤:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラェ
ニル−1,2’−ビイミダゾール 1.0質量部、
2−メルカプトベンゾイミダゾール 0.3質量部
増感色素:下記式で表わされる増感色素(1) 0.3質量部
バインダー樹脂:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(mol比、70/30、質量
平均分子量50,000) 3.0質量部
界面活性剤:メガファックF−780F(DIC社) 0.2質量部
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル:30質量部
メチルエチルケトン 30質量部
【化1】

【0054】
[11]パターン露光
光源として半導体レーザー(波長405nm)を使用し、L/S=10μmのパターンを有するエマルジョンマスクを介して、[10]工程実施後のアルミニウム陽極酸化皮膜を全面露光した。
【0055】
[12]現像処理
[11]工程によりパターン露光したアルミニウム陽極酸化皮膜を現像液(20℃)に浸漬し30分放置して現像処理を行い、その後、アルミニウム陽極酸化皮膜を水洗して、L/S=10μmの微細パターンを有する部材(アルミニウム陽極酸化皮膜に形成されたマイクロポア貫通孔のうち、感光性樹脂組成物が除去された部分がL/S=10μmの微細パターンを構成する部材)を得た。なお、現像液にはメチルエチルケトン(MEK)を使用した。
【0056】
上記の手順で得られた微細パターンを有する部材に対して、下記評価を実施した。
[皮膜強度測定]
上記の手順で得られた微細パターンを有する部材を、ギャップ=10mmの台に乗せ、上方から刃状ジグを押し当てて応力(アルミニウム陽極酸化皮膜が破断するまでに印加した力)を測定した。結果を下記表に示す。なお、下記表において、[9]工程実施後、[10]〜[12]の工程を実施しなかった陽極酸化皮膜よりも皮膜強度が大きい場合を○と判定し、皮膜強度が小さい場合を×と判定した。
【0057】
[耐擦り性]
下記手順で合紙擦りテストを実施した後のアルミニウム陽極酸化皮膜表面を目視観察し、更にパターンの健全性をSEMにて観察し評価した。結果を下記表に示す。なお、下記(1)、(2)の判定基準をいずれも満たす場合を○と判定し、下記(1)、(2)の判定基準のいずれかを満たさない場合を×と判定した。
合紙擦りテスト:2cm□のフェルトに10gの荷重をかけ往復で5回こすった。
判定基準
(1)目視観察で外観上の傷が認められない場合が合格、外観上の傷が認められる場合が不合格。
(2)SEMによる観察でパターンが健全な状態(直立した状態)を維持していた場合が合格、パターンが倒れていた場合が不合格。
【0058】
(参考例1)
[9]工程の実施後、[10]工程を実施することなしに、[11]工程および[12]工程を実施した点を除いて、実施例1と同様に実施した。
【0059】
(比較例1)
[11]工程でアルカリ現像液(KOH水溶液(pH12、濃度0.1M%)を使用した点を除いて、実施例1と同様に実施した。
【0060】
(参考例2)
[11]工程でアルカリ現像液(KOH水溶液(pH12、濃度0.1M%)を使用した点を除いて、参考例1と同様に実施した。
【0061】
(比較例2)
基材として、マイクロポア貫通孔を有するアルミニウム陽極酸化皮膜の代わりに、ガラス基板を使用した。
[10]工程に記載の感光性樹脂組成物をガラス基板の一方の表面にスピンコーターで塗布した後、減圧室内で、80℃で1分間乾燥させた。その後、[11]工程および[12]工程を実施した。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロポア貫通孔を複数有するアルミニウム陽極酸化皮膜のマイクロポア貫通孔の内部に有機溶媒で現像可能な樹脂組成物が充填された微細パターン形成用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の部材に対して、所望のパターンとなるように露光を行い、その後、有機溶剤を用いた現像処理を行うことにより、請求項1に記載の部材に微細パターンを形成する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法により得られる微細パターンを有する部材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−190969(P2010−190969A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32785(P2009−32785)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】