説明

微細構造体の製造方法

【課題】凹版に半固体状の微細構造体材料を塗布し、微細構造体材料を基体へと転写させる微細構造体の製造方法を提供すること。さらに、微細構造体材料を半固体状とすることにより、微細構造体材料が凹版の形状に追従し、凹版の形状に応じた先端部を備える3次元構造体の製造を提供すること。
【解決方法】凹版に半固体状の微細構造体材料を塗布する工程と、基体と凹版とを対向させ配置する工程と、基体と平版を接近させ、基体と微細構造体材料とを接触させる工程と、基体と微細構造体材料とを定着させる工程と、を含むことを特徴とする微細構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の微細構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の微細な3次元構造パターンを形成した微細構造体が広範に用いられている。
【0003】
微細構造体の用途には、例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイスなどが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、例えば、走査型電子顕微鏡等の電子ビーム装置などに用いられる熱電界放出素子として、多層構造の凸型階段状の積層電子放出面を有する熱電界放出素子(図3)が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献2には、例えば、反射防止用途のために設けるモスアイ構造体において、微細構造パターンを、先のとがった錐形(円錐、四角錘、多角錘など)の形状にすることが開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
このような3次元の微細構造体を形成するためには、構造体に応じた微細加工技術が必要とされる。
【0007】
特許文献3には、例えば、リソグラフィと電鋳とを繰り返して3次元構造体を形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
微細構造体を形成するための微細構造体の製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−228877号公報
【特許文献2】特開2006−038928号公報
【特許文献3】特開2007−204809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、簡便に行える微細構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、凹版に半固体状の微細構造体材料を塗布する工程と、基体と凹版とを対向させ配置する工程と、基体と平版を接近させ、基体と微細構造体材料とを接触させる工程と、基体と微細構造体材料とを定着させる工程と、を含むことを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、微細構造体材料はゲル状であることを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、微細構造体材料はゲル状の分散剤を含むことを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、凹版の表面は疎水性であることを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、凹版は、可撓性を有することを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0016】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、凹版は、シリコン基板又は石英基板からなることを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0017】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、基体は親水性を示す表面を有することを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0018】
本発明の請求項8に係る発明は、請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、塗布する工程と、配置する工程と、接触させる工程と、定着させる工程と、を複数回、繰り返し、凹版に充填する微細構造体材料の量を順次減少させることを特徴とする微細構造体の製造方法としたものである。
【0019】
本発明の請求項9に係る発明は、微細構造体材料は、親油性の材料であり、基体の表面は、親油性を示し、凹版の表面は、疎油性を示すことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微細構造体の製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、凹版に半固体状の微細構造体材料を塗布し、微細構造体材料を基体へと転写させる微細構造体の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、微細構造体材料を半固体状とすることにより、微細構造体材料が凹版の形状に追従し、凹版の形状に応じた先端部を備える3次元構造体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)〜(e)は本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法に用いる凹版の製造方法を示す概略工程図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を示す概略工程図である。
【図3】先端に積層膜を備えた熱電界放出素子の一例であり、(a)は、熱電界放出素子を示す断面図であり、(b)は、熱電界放出素子を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法について、図面を参照して、説明を行う。なお、実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する。
【0023】
図2(a)〜(e)は、本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を示す概略工程図である。図2(e)に示すように、本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を用いて形成された微細構造体は、基体11の上部に積層膜12を備えている。積層膜12は微細構造体材料として半固体状の材料を用いて、凸型階段状に形成されている。ここで、半固体状とは、弾力性を有し、柔らかい(可塑性を備えた)物質を意味する。半固体状としては、例えば、ゲル物質、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。微細構造体材料を半固体状とするために、微細構造体材料そのものをゲル化させてもよいし、微細構造体材料にゲル状の分散剤を含ませてもよい。
【0024】
<凹版に微細構造体材料を塗布する工程>
まず、凹版14に微細構造体材料を塗布し、基体11と対向させる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る凹版14は用途により適宜選択することができる。凹版14は、あらかじめ微細加工技術を用いて、加工されているものを用いることができる。微細加工技術としては、例えば、リソグラフィ方法、エッチング方法、微細機械加工法(レーザ加工、マシニング加工、研削加工など)などを用いることができる。
【0026】
凹版14の材質は、微細構造体材料に溶出しない材料であれば適宜選択して用いることができる。凹版14の材質として、例えば、シリコン基板、石英基板、アルミ基板などを用いることができる。特に、シリコン基板又は石英基板は、自然酸化膜への処理方法によって親水性にも疎水性にもなり得るため、表面エネルギーの制御を好適に行うことができ、本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法に用いる凹版14の材質として好ましい。
【0027】
ここで、凹版14に対して親水性の微細構造体材料の離型性を高める場合には、凹版14表面の表面エネルギーを低減させることが好ましい。表面エネルギーの低減方法は特に限定されないが、例えば、凹版14表面に対するHMDS(ヘキサメチルジシラザン)等のシランカップリング剤による表面処理や、フッ素系粒子含有の撥水メッキによる疎水処理、微細加工技術によって微細な凹凸を形成することでの表面処理、金属メッキ法による表面処理等が挙げられる。
【0028】
また、凹版14は前述の微細加工技術による加工品を母型として、転写成形法により作製した成形品を用いても良い。成形品の材質は特に限定されず、ポリカーボネイト、ポリスチレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂、またはシリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストランなどの生体適合性樹脂等が挙げられる。
【0029】
凹版14の上面形状は設計事項であり、特に限定されるものではない。上面形状は、例えば、四角形、三角形、円形などのパターンであっても良い。また、凹版14のパターンは、版内に一つ配置しても良いし、複数配置しても良い。凹版にパターンを複数配置する場合には、凹版14のパターンをアレイ状に配置することができる。
【0030】
凹版14の断面形状は設計事項であり、特に限定されるものではない。また、凹版14の上面形状及び断面形状に関する各寸法は設計事項であり、特に限定されるものではない。
【0031】
微細構造体材料は、凹版14への塗工時において、塗工が可能であるように流体であることに加えて、凹版14から基体11への転写時においては、転写が可能であるように流体もしくはゲル状(半固体状)であることが好ましい。微細構造体材料の形態は微細構造体の用途に応じて適宜選択することができる。また、微細構造体材料は、極性に応じて溶媒を適宜加えても良い。一般に、極性の材料は極性溶媒(水系など)に分散しやすく、非極性の材料は非極性溶媒(溶剤系)に分散しやすいことが知られている。
【0032】
極性溶媒としては、例えば、アセトン、MEK、MIBK等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル等のエステル類の他、純水等を挙げることができる。
【0033】
非極性溶媒としては、例えば、イソオクタン、シクロヘキサン、イソホロン等の芳香族炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、n−ヘキサン、n−デカン、の脂肪族炭化水素類を挙げることができる。
【0034】
微細構造体材料の流動性は特に限定されないが、半固体状の微細構造体材料を用いることが望ましい。微細構造体材料をゲル化させることで、微細構造体材料の表面張力起因による転写不良が発生しないことから、基体への転写工程を好適に行うことができる。微細構造体材料をゲル化させる場合は、各種溶媒に分散した微細構造体材料をゲル化剤と混合させる。
【0035】
微細構造体材料をゲル状とする為のゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、グァーガム等を挙げることができる。
【0036】
凹版14に微細構造体材料を塗布する工程においては、凹版14内に所望の微細構造体材料を充填する必要がある。特にゲル化した微細構造体材料については、塗布時には流動性を有した状態であることが望ましい。この為、塗布時に予め微細構造体材料を加熱しておくことで、ゲル化した微細構造体材料に流動性を与えることができ、塗布工程を好適に行うことができる。
【0037】
また、微細構造体材料を塗布する方法としては、特に限定されず、種々の高粘度液体に最適なものを適宜用いることができる。例えば、具体的には、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、液滴法などを用いることができる。
【0038】
微細構造体材料を塗布した後は、凹版14内の微細構造体材料を冷却することで、それをゲル化させることができる。親水性のゲルとしては、疎水性の凹版14内において、離型性の高い状態で保持される。これによって、後の基体11への転写工程を好適に行うことができる。
【0039】
したがって基体11に微細構造体材料の転写を考慮した場合、基体11表面は親水性であることが好ましい。基体11表面の処理方法は特に限定されず、所望する表面特性に応じて適宜公知の処理方法を用いることができる。このとき、表面処理方法として、例えばオゾン照射、紫外線やX線等の電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射、表面への特性改質物質付加、光触媒の付加等を好適に用いることができる。また、例えば、パターニング方法として、メタルマスクを用いて選択的に表面処理を行う、などの方法を用いても良い。
【0040】
基体11は用途により適宜選択して用いることができる。また、あらかじめ微細加工技術を用いて、加工されていても良い。例えば、微細加工技術として、リソグラフィ方法、エッチング方法、微細機械加工法(レーザ加工、マシニング加工、研削加工など)などを用いても良い。
【0041】
<基体と凹版とを対向させ配置する工程>
基体11と凹版14とを対向させ配置する工程においては、基体11と凹版14それぞれの位置に正確に合わせることが望ましい。位置合わせの方法は特に限定されないが、例えば位置合わせ用のマークをそれぞれに配置した上で位置合わせする方法や、位置合わせ用のジグを用いる方法などが挙げられる。
【0042】
また基体11と凹版14とを対向させ配置する工程においては、アレイ状に配列された突起部を備えた基体11と、アレイ状に配列された凹版14とを用いても良い。この場合、アレイ状に配列された複数の凹版14のパターンに対して、塗布する微細構造体材料の量を変化させることにより、アレイ間の突起部の一部のみに選択的に微細構造体材料を塗布することができる。これにより、アレイ状に配列された突起部の高さに分布を持たせたアレイ状の3次元構造体を形成することができる。このような3次元構造体は、反射防止体として活用ができる。
【0043】
<基体と微細構造体材料とを接触させる工程>
次に、基体11の突起部と微細構造体材料が接触する距離まで、どちらかまたは両方を近づけ、微細構造体材料とを定着させる。さらに微細構造体材料の定着を高めたい場合、柔軟性(可撓性)を有する凹版14を用いることが望ましい。前述の転写成形法により作製した成形品などを用いれば、基体11の接触に対しても凹版14が柔軟性を有することから、基体11の破壊を抑制しながら、高い圧力で基体11と微細構造体材料を接触させることができる。
【0044】
<基体と微細構造体材料とを定着させる工程>
基体11と微細構造体材料とを定着させる工程において、定着させる方法は、用いた微細構造体材料に応じて選択することができる。例えば、乾燥により溶媒を揮発させたり、微細構造体材料のプラズマ耐性によってはプラズマ処理で溶媒を揮発させたりしても良い。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法は、上述した各工程を、順次、複数回繰り返しても良い。各工程を複数回繰り返すことにより、微細構造体材料が積層された積層膜12を形成することができる。
【0046】
また、各工程を複数回繰り返す場合、工程を繰り返す度に平版に塗布する微細構造体材料の量を順次減少させることが好ましい。このとき、凸型階段形状の積層膜12を形成することができ、錐状の微細構造体を形成することができる。
【0047】
本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法は、広範な分野に用いることができる。特に、熱電子放出素子の製造に用いる場合には好適である。熱電子放出素子は、使用中、エミッタ先端に高電界が集中する為、エミッタ先端部が消失してしまい、熱電界放出素子の寿命が尽きてしまう問題がある。このため、電子放出面をエミッタ先端に積層させることが提案されている(図3(a)断面図、(b)上面図)。本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を用いれば、エミッタ先端部(基体11)が積層膜12となった熱電子放出素子を特に好適に製造することができる。
【0048】
本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法において、疎水性、疎油性とは以下の程度の表面であればよい。一例として、具体的に、程度範囲を示す。
【0049】
疎水性とは、水との接触角が、水の場合110°以上、好ましくは水の場合150°以上、水の転落角(竿管内壁面において0.5mlの量の1個の水滴が転落するために必要な傾斜角度)が水の場合10°以下、好ましくは水の場合5°以下である表面のことをいう。
【0050】
また、疎油性とは、油(例えばガソリン)との接触角が、油の場合90°以上、好ましくは油の場合110°以上、油の転落角(竿管内壁面において0.5mlの量の1個の油滴が転落するために必要な傾斜角度)が油の場合20°以下、好ましくは油の場合10°以下である表面のことをいう。
【実施例】
【0051】
以下、実施例として、微細構造体の製造方法を用いて、エミッタ(基体11)の先端部がZrO(ジルコニア)の積層膜12により形成された熱電界放出素子の製造方法を図1(a)〜(f)、図2(a)〜(e)を参照して説明する。
【0052】
まず、疎水性を示す樹脂製の凹版14(図1(f)参照)を作製した。図1(a)に示すように、凹版14の作製にあたっては、露光光透過部3に対角100μmのひし形の島状遮光部4を形成したフォトマスク13を用意した。
【0053】
次に、図1(b)に示すように、4インチのシリコン基板5上に、マイクロケム社製、SU−8 レジストを用いて、スピンコーティング法により、膜厚を300μmとしたレジスト層6を形成した。
【0054】
次に、図1(c)に示すように、スピンコーティング後のシリコン基板5とレジスト層6とに対し、フォトマスク13をコンタクトさせた。
【0055】
次に、図1(d)に示すように、コンタクトさせたフォトマスク13とレジスト層6に対して露光を行った。露光時においては、傾斜角度が制御できるステージへ露光する基板(図示せず)をセットし、基板を正方向に15°傾斜させ、高圧水銀ランプによる露光を行った。次に、図1(e)に示すように、露光光(正方向)7での露光が完了したら、反対方向へ15°傾斜させて露光を行った。このとき、正方向7及び反対方向8の露光量を積算して2000mJ/cmの露光量とした。正方向7と反対方向8からの入射光と反射光により、300μmのレジスト層6の露光部において、V字形状の潜像を得た。
【0056】
次に、現像を行った。現像液として、マイクロケム社製、SU−8 Developerを用い、金属製のバットにて揺動させながら現像を行った。その結果、樹脂製による凹版14を得た。接触角を測定した結果、水への接触角が120°となり、疎水性であることを確認した。
【0057】
次に、図1(f)に示すように、樹脂特有の柔軟な凹版14を得るため、水酸化カリウムによって、4インチのシリコン基板5を溶解させた。
【0058】
次に、図2(a)に示すように、微細構造体材料(単層膜10)を準備し、液滴法によって凹版14に充填した。微細構造体材料はジルコニウムを用いた。ジルコニウムは一部の極性溶媒に可溶であり、硝酸ジルコニウムとして溶液に分散させ、それにゼラチン水溶液を混合させることで、ゲル化した微細構造体材料を調製した。
【0059】
凹版14への微細構造体材料の充填には、ディスペンサ9を用いた。ディスペンサ9は、ノズル径50μmを有するMicrodrop社製MD−K−140を使用した。MD−K−140は、圧電素子による圧力で塗液を飛び出させる機構である。
【0060】
そこで、ディスペンサ9の配管を90℃に加熱することで、微細構造体材料に流動性を持たせた。その結果、ディスペンサ9のヘッドからは直径約50μmの微細構造体材料が塗出され、凹版14内に充填・冷却された後もその直径を維持しながら保持された。
【0061】
次に、図2(b)に示すように、熱電界放出電子銃のエミッタ(基体11)先端を、凹版14に位置合わせした。
【0062】
次に、図2(c)に示すように、熱電界放出電子銃のエミッタ(基体11)先端と凹版14とを接近させて凹版14内の液滴を接触させた。転写を確実に行うため、エミッタ先端を凹版14に高い圧力で押し付けた結果、微細構造体材料をエミッタ先端に転写することができた。柔軟な凹版14を用いたため、エミッタ先端の破壊はみられなかった。
【0063】
転写後、図2(d)に示すように、熱電界放出電子銃のエミッタ先端には、ゲル化したジルコニウム溶液が付着されており、加熱による乾燥工程を経て直径50μm、膜厚5nmのZrO(ジルコニア)の単層膜10を得ることができた。
【0064】
次に、ディスペンサ9による吐出条件を変更し凹版14に吐出、着弾後に直径45μmの液滴を吐出した。
【0065】
次に、図2(e)に示すように、再度、転写工程と乾燥工程とを行い、直径50μm、膜厚5nmのZrOの単層膜10上に、直径45μm、膜厚5nmのZrOの単層膜10を重ねた積層膜12を得ることができた。
【0066】
以上より、熱電界放出電子銃のエミッタ先端に対し、先端幅5μ、膜厚50nmの凸型階段形状の積層電子放出面を形成することができた。熱電界放出素子の使用期間が10000時間程度となり、従来よりも長寿命化できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の微細構造体の製造方法は、微細構造体を形成することが求められる広範な分野に利用することが期待される。微細構造体としては、例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイスなどを製造することができる。
【符号の説明】
【0068】
3…露光光透過部
4…島状遮光部
5…基板
6…レジスト層
7…露光光(正方向)
8…露光光(反対方向)
9…ディスペンサ
10…単層膜
11…基体
12…積層膜
13…フォトマスク
14…凹版
21…エミッタ
22…積層膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹版に半固体状の微細構造体材料を塗布する工程と、
基体と前記凹版とを対向させ配置する工程と、
前記基体と前記平版を接近させ、前記基体と前記微細構造体材料とを接触させる工程と、
前記基体と前記微細構造体材料とを定着させる工程と、
を含むことを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記微細構造体材料はゲル状であることを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記微細構造体材料はゲル状の分散剤を含むことを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記凹版の表面は疎水性であることを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記凹版は、可撓性を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記凹版は、シリコン基板又は石英基板からなることを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記基体は親水性を示す表面を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の微細構造体の製造方法であって、
前記塗布する工程と、前記配置する工程と、前記接触させる工程と及び前記定着させる工程と、を複数回、繰り返し、
前記凹版に充填する前記微細構造体材料の量を順次減少させることを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項9】
前記微細構造体材料は、親油性の材料であり、
前記基体の表面は、親油性を示し、
前記凹版の表面は、疎油性を示すことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−46789(P2010−46789A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61411(P2009−61411)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】