微細構造製造方法および微細構造製造装置
微細構造の配列を微細成形する方法であって、材料シートを対応する微細構造に変形させるためそれぞれ成形した突起部の配列を有するパンチを、前記パンチとダイの間に配置された材料シートに向かって前進させる工程と、材料シートを定位置に保持するためのホルダを設ける工程と、材料シートにパンチの突起部で穴を開けて、材料シート上に前記微細構造の配列を成形する工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、微細構造の配列の微細成形方法及び微細構造の配列の微細成形装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
極微針等の微細構造は、多くの異なる技術分野において利用されている。例えば、皮下注射や経口投与は、その即効性、有効性、直接性から、人間の体に薬剤を投与するために最も一般的に使用されている方法である。これらの方法にも、スパイク濃度や皮下注射によるトラウマ、薬剤を経口投与した際に消化管が受ける薬剤によるダメージや薬剤使用目的の臓器以外で起こる合併症等、いくつか不利な点もある。一方、経口投与や静脈内注射を代替する方法である経皮薬剤輸送は、痛みを生じずに人間の体に薬剤を投与する手段であり、これらの薬剤輸送手段は、薬剤が消化管内でダメージを受けることや、薬剤が肝臓にすぐに吸収されてしまうことを防ぐ。従来の経皮薬剤輸送用の製品は、患者の動きを制限せずに長時間の薬物輸送ができるよう、通常、人間の体に吸着できるパッチ形状とする。これらの製品は、通常、不浸透性の裏当てと定常状態の薬剤輸送率を制御する膜表面に挟まれた薬剤用のリザーバを有する。既存の経皮性薬剤輸送の応用例としては、乗り物酔い防止薬のスコポラミンや、禁煙用ニコチンパッチ、狭心痛治療用のニトログリセリン、ホルモン置換治療用のエストロゲンがある。
【0003】
経皮性薬剤輸送システムは、一般的に、能動輸送システムと受動拡散システムに分類される。能動輸送システムは、イオン注入法、電気穿孔法、超音波等の外的方法を使用し、皮膚バリアを超えた人間の体内への薬剤の侵入を増加させる。これらの方法は、電気的手段又は高周波数電気パルスや音波の適用することによって薬物の皮膚への拡散を増進させて、薬剤の吸収を改善する。上記の方法を行う従来の装置は、機器費用及び作業費用が高いことや、持ち運び可能な電気機器が必要になる等の不都合があり、未だ商業的な成功には至っていない。
【0004】
上記の経皮パッチは、受動拡散システムの例であり、その機能性は、皮膚内への薬剤の拡散に基づくもので、皮膚の多孔性、薬剤分子の大きさ及び多孔性、角質層(ヒトの皮膚の最も外側にある層)の濃度勾配等のパラメータに依存する。一般的に、従来の経皮パッチでは、薬剤から皮膚への薬剤の拡散率が低いことが問題であった。
【0005】
この低拡散率を改善する方法として、皮膚(角質層)の破壊によって拡散バリアを壊す方法がある。これは、非中空又は中空の突起、例えば、極微針列を使用して、引っ掻いたり、皮膚に直接浸透させて行ってもよい。これは、経皮薬剤輸送で一般的な問題である低拡散を克服するための、効果的、かつ、低費用の方法である。
【0006】
従来の極微針列を製造する方法としては、例えば、金属堆積法や射出成形法に伴ってシリコン基板を使った方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの方法は、製造コスト及び時間が多くかかり、大量生産には向いていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様にしたがって、微細構造の配列を微細成形する方法であって、材料シートを対応する微細構造に変形させるためにそれぞれ形成された突起部の配列を有するパンチを、該パンチとダイの間に配置された材料シートに向かって前進させる工程と、材料シートを定位置に保持するためのホルダを設ける工程と、材料シートにパンチの突起部で穴を開けて、材料シート上に前記微細構造の配列を成形する工程とを備える方法を提供する。
【0009】
前記微細構造は、極微針からなっていてもよい。
【0010】
本発明による微細構造の配列を微細成形する方法は、微細成形中に、前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与える工程をさらに備えていてもよい。
【0011】
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられてもよい。
【0012】
前記ダイは、変形可能なダイであってもよい。
【0013】
前記微細構造の成形中に、材料シート内で平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比を選択してもよい。
【0014】
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0015】
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0016】
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されていてもよく、前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる。
【0017】
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなってもよい。
【0018】
前記材料は、半結晶高分子材料からなっていてもよい。
【0019】
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなってもよい。
【0020】
固体潤滑剤をパンチに塗布する工程をさらに備えていてもよい。
【0021】
固体潤滑剤は、Ta−Cコーティングからなってもよい。
【0022】
本発明の微細成形方法は、前記微細構造を強化するために、前記微細構造それぞれの内面をコーティングする工程をさらに備えていてもよい。
【0023】
前記コーティング工程は、電気めっき工程を含んでもよい。
【0024】
記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含んでいてもよい。
【0025】
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなっていてもよい。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、微細構造の配列を微細成形する装置であって、突起部の配列を有するパンチと、ダイと、微細成形中に材料シートを定位置に保持するためのホルダとを備え、各突起部は、材料シートを対応する微細構造に変形させるために形成されており、材料シートに前記突起部の配列で穴を開けて、前記微細構造の配列を成形する装置を提供する。
【0027】
前記微細構造は、極微針であってもよい。
【0028】
微細成形中に前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与えてもよい。
【0029】
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられてもよい。
【0030】
前記ダイは、変形可能なダイであってもよい。
【0031】
前記微細構造の成形中に材料シート内における平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比が選択されていてもよい。
【0032】
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0033】
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0034】
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されていてもよく、前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる。
【0035】
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなってもよい。
【0036】
前記材料は、半結晶高分子材料からなっていてもよい。
【0037】
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなっていてもよい。
【0038】
固体潤滑剤がパンチに塗布されていてもよい。
【0039】
固体潤滑剤はTa−Cコーティングからなっていてもよい。
【0040】
本発明の微細成形装置は、前記微細構造を硬化するために、前記微細構造それぞれの内面をコーティングする手段をさらに備えていてもよい。
【0041】
前記コーティング工程は、電気めっき工程を含んでいてもよい。
【0042】
前記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含んでいてもよい。
【0043】
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなっていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本明細書に記載の実施形態は、一般的に、微細成形を用いた、例えば極微針等の微細構造の製造に関する。極微針は、列状に成形してもよく、生体に薬剤を投与するため又は生体から体液を抽出するための経皮性薬剤輸送システムにおいて使用してもよい。
【0045】
微細成形とは、1mm以下の少なくとも二次元の金属成形による構造体の一部又は構造体を製造することである。一般的に、微細成形は、従来の金属成形プロセスを小型化したものとして考えられ、微細成形及び金属成形は、用いられる材料、使用手段、使用プロセス、使用機械の4つの主要要素で構成されることを特徴とする。用いられる材料は、重要な要素である。従来の金属成形の小型化に伴う問題に関連する材料は、材料自身の小型化と強く結びついている。(a)微細構造は、例えば、プロセスの寸法には依存せず、(b)表面トポグラフィーは不変である。これらの要素によって、例えば、結晶粒径等の微細構造や表面のパラメータに対するある部分の寸法の割合が小型化に伴って変化する所謂サイズ効果が起こる。これらの要素すべてによって、従来の金属成形プロセスのノウハウを微細成形の分野で応用することが妨げられている。
【0046】
技術的には、微細成形では、流動応力や垂直平均異方性、延性が低下して、成形性の限界が徐々に低下することが示唆される。乾式成形法の場合は摩擦が寸法に依存しないのに対し、油で潤滑する場合は小型化に伴い摩擦が増加する。
【0047】
微細成形用に使用される装置10の一実施形態を図1(a)と図1(b)に示す。図1(a)は、装置10の分解斜視図を示す。装置10は、パンチ20とホルダ30とダイ40とを有する。本実施形態では、パンチ20とホルダ30とダイ40とは、円筒形の形状を有する。しかし、これらは他のいかなる形状に成形されてもよい。図1(b)は、パンチ20とホルダ30とダイ40とを組立てた際の装置10の透視断面を示す。装置10は、例えば、プレス機等、様々な手段によって作動させてもよく、手動で作動させてもよい。また、サーボプレス機を使用して、装置10を作動させ、より精密に製造工程を進めてもよい。サーボプレス機の動作範囲の例としては、穿孔負荷が5N〜500N、穿孔スピードが0.1mm/s〜35mm/sとしてもよい。望ましい極微針列の大きさに応じて、穿孔負荷と穿孔スピードを増加してもよい。
【0048】
パンチ20とダイ30とは、例えば、フライス加工法や、放電加工法(EDM)、精密ワイヤ切断法等の様々な方法で製造してもよい。ダイ30は、例えば、ワイヤ切断法で成形し、ダイに貫通孔を製造してもよい。一方、ダイの貫通孔が必要でない場合は、ダイは、EDMで製造してもよい。
【0049】
図2(a)は、他の実施形態にしたがって、フライス加工法で製造した、円錐形状の突起部225を有するパンチ220を示す。パンチ220の表面仕上げは、一貫した結果を得るために十分とみなされ、典型的に、極微針(又は、微細構造)成形後のパンチの後退に大きく依存している。従来のCNCフライスによる仕上がり表面の表面粗さ(表面仕上げ)は、例えば、寸法が約500ミクロンよりも大きい応用例のほとんどに対して十分である。例えば、寸法が、約100ミクロンより小さい構造を作成するには、求められる平均表面粗さは、約0.1ミクロンよりも小さいものであることがわかる。さらに、固体潤滑剤を使用する場合、表面粗さの要件は、0.1ミクロンから0.5ミクロンまで緩和されてもよい。図2(b)に示すように、パンチ220を穿孔ホルダ230に装着する前に、各パンチ220に、それぞれ別々にフライス加工とトリミング加工とを施して、パンチ220の列を得てもよい。本実施形態では、4つのパンチ220は、パンチホルダ230に装着され、2×2列のパンチ220を成形する。
【0050】
図2(c)は、他の実施形態にしたがって、EDMによって成形されたパンチ250を示す。EDMより成形したパンチ250の仕上がり表面は、ミリングや精密ワイヤ切断に比べてなだらかである。
【0051】
図2(d)と図2(e)は、他の実施形態にしたがって、精密ワイヤ切断によって成形された6×6列のパンチ列260の立体視図と側面図をそれぞれ示している。パンチ265は、3つの切断パスを有するように成形されており、各パンチ265の寸法は、底面の幅が0.25mm、高さが0.75mmである。パンチ265の底部、したがって、極微針(図2(a)〜図2(e)には図示せず)の底部には、ワイヤ切断プロセスによって使用するワイヤの半径に応じて、固有の有限湾曲が生じる。そうではあっても、図21(b)に見られるように、極微針の底部の外側におけるワイヤの半径によって、該底部の外側が鋭い端縁となることが回避され、パンチ構造を強化している。実施形態において、パンチ(及び、ダイ)はテーパー加工された壁を有し、微細成形中のパンチの後退を可能にしている。さらに、微細成形と共に打ち抜きプロセス又は穴あけプロセスを行うときには、材料を塑性的に変形させてパンチの形状に一致させるように、パンチの壁をある程度テーパー加工することが必要となる。
【0052】
上記の実施形態では、パンチは、ほぼ円形の断面を有しているが、用途によっては、例えば、三角形状、矩形状、八角形状等、様々な形状とすることができる。
【0053】
図3(a)〜図3(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形によって極微針を製造する工程の流れを示す概略図である。金属シート340をパンチ列320と固定ダイ330の間に配置する。ホルダ310を金属シート340の上面上に配置し、金属シート340が微細成形プロセス中に動かないように、また、金属シート340のしわを防ぐようにする。反りやしわが生じないよう金属シート340を拘束するために、金属シート340の固定ダイ330へのさらなる固定(図示せず)が必要となる場合がある。金属シート340は、304鋼、1100アルミニウム、銅(99%)等の金属材料で構成してもよい。金属シート340は、金属シート340の最小の長さがダイ330の直径の約5倍を超えるように、影響を受ける領域(ダイ330の直径)を十分に被う必要がある。
【0054】
ラム350を設定し、適切なスピードでパンチ列を落下させ、続いて、図3(b)に示すように、極微針345の列を金属シード340に作成する。本実施形態において、パンチ320は、円錐形状の突起部325を有しており、ダイ330は、パンチ320上の円錐形突起部325に対応する凹形状を持つ。極微針345の表面形状は、パンチ320とダイ330とに対応するように成形される。極微針345を金属シート340に成形した後、パンチ320をラム350によって後退させる。パンチ320は、図3(c)に示すように、極微針345の列が成形された金属シート340がダイ上に残るように後退させてもよい。また、パンチ320は、図3(d)に示すように、ホルダ310と極微針345の列が成形された金属シート340とがパンチ320上に残るように後退させてもよい。最終的に、装置のデザインや違いに応じて、作成した極微針345をパンチ列320又は固定ダイ330から取り外すことができる(図3(e))。なお、極微針列が大きいほど、大きいパンチ負荷が必要となる場合がある。パンチ負荷は、作成される極微針列の極微針の数にほぼ比例して増加することがわかっている。
【0055】
作成された極微針345がパンチの後退ストローク中にダメージを受ける得るパンチの後退においては、摩擦の作用が大きい。パンチ後退による極微針のダメージを防ぐため、潤滑剤コーティングをパンチに適用してもよい(図示せず)。
【0056】
他の実施形態において、Ta−C等の固体潤滑剤をパンチに塗布する。Ta−Cは、約2ミクロンの膜厚を有するダイアモンド状炭素コーティングである。図4には、約6mmの高密度ポリエチレン(HOPE)パッドをダイ(図示せず)として使用して、0.15mmの膜厚を有するアルミニウムシート(純度99%)上に微細成形した、アスペクト比が約1.2の極微針410の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。パンチ(図示せず)は底面直径が1mm、高さが1.5mm、約1.5のアスペクト比であった(パンチの先端を切り取った後の実際の高さは、およそ1.45mm)。パンチの先端を切り取ることで、非中空の極微針を開口なしで成形することができ、また、裂け目や穴の拡張を遅らせることもできる。
【0057】
図5は、他の実施形態にしたがって成形した極微針510のSEM写真であり、極微針510の底面半径へのレトロパンチング効果を示している。極微針510は強く削られ、オーバーエッチ効果が残った。極微針510は、底面の直径が約0.5mm、高さが約1mmの寸法を持つパンチ(図示せず)によって、膜厚が約0.15mmのアルミニウムシート(純性99%)を使用して作成された。極微針510の内表面の底面に亘るストリップは、研削プロセス中に作られて蓄積していったばりのような人工物である。そして、極微針510を、本質的にテーパー穴である雌パンチ(図示せず)によってレトロパンチした。このレトロパンチ工程によって、極微針510の底面半径はかなり小さくなり、アスペクト比が約1.4の極微針510が得られる。このような寸法の大幅な縮小にも関わらず、極微針510のは、取り扱い時や皮膚浸透中の機械負荷を維持するのに十分な膜厚を有する。また、ここでは、皮膚浸透を促進するために、微細成形された極微針の側面にどのようなパターンが成形されるのかが示されている。例えば、各極微針の外側表面に、極微針を鋭利にする波形の細い線や他の模様を成形すること、又は、刻むことで皮膚浸透を促進してもよい。
【0058】
図6(a)〜図6(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。本実施形態では、図3(a)〜図3(e)に示す固定ダイ330を変形可能なダイ630に置き換える。変形可能なダイ630は、例えば、高密度ポリエチレン(HOPE)やポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ポリエチレテレフタレート(PET)等の変形可能な半結晶性高分子である軟質材料から成るシート状に成形してもよい。これらの材料は、通常、非結晶性高分子に比べて、強度が高く、熱による分解や軟化に対してもより耐性が高い。変形可能なダイ630に使用する材料は、パンチ620によって穴をあけた後、部分的又は実質的に回復し、変形可能なダイ630が再利用できるような材料であることが好ましい。変形可能なダイ630によって、パンチ620が前進している間の材料の流れを継続でき、したがって、微細成形プロセス中の引き伸ばしによって、極微針のネッキングを防ぐことができる。図3(a)〜図3(e)の固定ダイ330に比べ、微細成形の前に、パンチ620の突起部625の形状の凹形状を変形可能なダイ630に成形する必要はない。パンチ620は、例えば、Ta−C等の固体潤滑剤で覆われていてもよい。パンチ620を下げ、図6(b)に示すように、変形可能なダイ630上に配置した金属シート640に押し付ける。同時に、パンチ620によって、変形可能なダイ630に穴をあけ、パンチ620上の突起部625の形状の凹形状に相当するキャビティ635を成形する。極微針645の長さ分に到達したら、パンチ620の動きを止める。同様に、成形した極微針645は、プロセスのデザインや違いに応じて、パンチ620又は変形可能なダイ630から取り外すことができる。成形された極微針645の取り外しの簡便さは、成形圧力と変形可能なダイ630と金属シート640に使用した高分子材料の性質による。キャビティ635は変形可能なダイ630に永久的に設けられるが、キャビティ635は縮んだり、元の形状に戻ることができるので、変形可能なダイ630は十分に再利用できる。
【0059】
図7(a)〜図7(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。本実施形態では、固体潤滑パンチ720を、変形可能な高分子ダイ730上に配置した金属シート740に押し付ける。極微針745の長さ分に到達した後、図7(c)と図7(d)に示すように、追加圧力をかけパンチ720をさらに前進させ、成形した極微針列748を金属シート740の残りの部分から打ち抜く。成形した極微針列748は、プロセスのデザインや違いに応じて、後退したパンチ720(図7(c))に付着させてもよいし、変形可能なダイ730(図7(d))上に残してもよく、その後、極微針列748を取り除いて、図7(e)に示すような極微針列748が得られる。
【0060】
ダイが従来の金属成形において一般的に果たす2つの役割、すなわち、加工品を特にダイの肩の部分で三次元構造に変形させる役割、及び/又は、アイアニング効果による材料の精密な薄膜化を確実に行う成形プロセス中に三次元構造の側体において「アイロン・ボード」として働く役割は、一般的に、微細成形には適応できないことがわかる。極微針の成形は、パンチのデザイン、特にパンチのアスペクト比と、極微針の成形に使用する材料から成るシートの膜厚とに依存することがわかる。また、材料シートに対する反作用支持によって、成形プロセス中の極微針の初期不具合を遅らせることができることもわかる。一般的には、パンチと材料シート間の接触面では、微細成形中は、膜厚が厚いシートも薄いシートもパンチの形状に厳密に一致しているが、膜厚が厚いシート材料に比べ、膜厚が薄いシート材料は、極微針の外面において、その形状がパンチの形状と一致するように改善されることが観察された。一般的に、材料シートの膜厚がパンチの高さより約5〜10倍小さい場合は、材料シートは薄膜であるとみなされる。
【0061】
微細成形中の材料シートに対する一定の反作用支持は、例えば、図6(a)〜図6(e)、図7(a)〜図7(e)の実施形態に示すように、変形可能なダイ630、730によって与えられてもよい。図8(a)は、アスペクト比がほぼ3(パンチの後退なし)に等しいパンチ(図示せず)を使って、約0.2mmの膜厚を有するアルミニウムシート(1100)から成形した極微針850の実施例を示すSEM写真を示す。図8(b)は、極微針850の拡大写真であり、寸法を概寸で示している。ダイアモンド状炭素コーティング、例えば、テトラヘデラルアモルファスカーボンコーティング等の固体潤滑剤でパンチ上を被い、極微針850がパンチの後退の際にダメージを受ける原因である摩擦を減らすようにしてもよい。また、パンチの表面粗さを改善し、パンチと材料シート間の摩擦と接触を減らし、材料とパンチ間の界面接着を最小限に抑えるようにしてもよい。本実施形態では、パンチは硬化工具鋼から成り、極微針850を成形するシート材料はアルミニウムから成る。パンチが後退する際に起こる極微針850の不具合の原因の一つとして、微細成形中に材料シートが晒されていた高度の変形が考えられる。
【0062】
さらに、変形可能なダイを使用することの利点として、僅かに上昇した圧力、例えば、成形圧力の約10%−50%の圧力でプレス加工する目的で、変形可能なダイを汎用のダイとして使用することができる。図9(a)と図9(b)は、可変ポリマーダイ(図示せず)を使って、約0.15mmの膜厚を有するアルミニウムシートからプレス加工して成形した極微針920、930の極微針列の一例の写真を示す。極微針920、930の配列は、特に、複雑な表面形状を持つそのような単位ダイの大きな配列が必要な場合には高い製造コストが必要となる剛性ダイと比べて、より優れた変形可能なダイの性能を示している。
【0063】
サイズ効果は、加工製品のサイズを小型化したときに、材料の微細構造は変化しないという事実に由来する。極微針の極微成形に使用する材料シートの微細構造を、それぞれ試料の異なる位置、すなわち、集中的な伸張が起こった極微針のウエスト(高さの中間点)、変形が起こっていない極微針から離れた底面領域において分析した。変形した領域と変形していない領域の粒径を観察することで、材料の微細構造の大きな変化を引き起こすことなく、そのような変形が起こることがわかり、数10nmの領域における粒径は、典型的な標準粒径である。極微針の成形に使用する材料の膜厚は、高アスペクト比の極微針を得る際に、重要な役割を果たす。例えば、材料の膜厚に対するパンチの高さの比が約4よりも小さいような膜厚が厚い材料シートを使用すると、はっきりとした針は成形できず、また、例えば、材料の膜厚に対するパンチの高さの比が約20よりも大きいような膜厚がパンチのサイズに比べて薄すぎる材料シートを使用すると、穴あけプロセス又は打ち抜きプロセスを行う場所で平面応力がかかり、極微針の代わりに、穴だけが成形されてしまう。パンチサイズの減少に伴い、材料シートの膜厚も減らす必要があるが、この縮小は線形である。材料の膜厚には最適な範囲があり、その最適な範囲では、変形ダイのサポートを伴う、特定の表面形状を有するパンチを使って、満足のいく極微針を成形できることが観察された。
【0064】
図10(a)、図10(b)、図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)は、約50ミクロンの膜厚を有するアルミニウムシートから得た極微針の実施例を示している。図10(a)と図10(b)は、それぞれ、極微針1020の斜視図と断面図を示す写真であり、極微針1020は、底面直径が1mmで、高さが1.5mm(アスペクト比は1.5)のパンチ(図示せず)を使って成形した。極微針1020の壁厚1022は、元のシート膜厚1024の約半分より大きい程度の膜厚に減少したことが観察された。図11(a)と図11(b)は、それぞれ、アスペクト比が約2で底面が約1mmのパンチ(図示せず)によって成形した極微針1120の斜視図と断面図を示している。断面の下部にある、ばり状のひれ1125は、研削の結果できたものである。図12(a)と図12(b)は、それぞれ、底面直径が約0.5mm、高さが約1mm(アスペクト比は約2)のパンチ(図示せず)で成形した極微針1120の斜視図と断面図を示している。極微針1220の先端(頂点)と平均壁厚はそれぞれ、大体20〜30ミクロンと、15〜30ミクロンの範囲である。
【0065】
より小さい極微針を作るためにより膜厚の薄い材料シートが必要となることから、作成される極微針の壁厚の下限は、成形した針の壁厚を元の膜厚の半分から5分の1の間の厚さまで減らしてもよいというように決められる。この下限は、実用的には適さない針を作ってしまう値である。極微針のサイズが極めて小さい場合、例えば、底面寸法で約150ミクロより小さい場合は、求められる最適な材料膜厚は極めて小さくなる。これにより、曲げ加工や変形加工を施す極微針列のソフトプラットフォームが成形される。このサイズ及び膜厚の縮小によって、極微針が弱くなり、信頼性が低下してしまう。極微針としてニッケルなどの材料でできた層を電鋳法で成形することで極微針の総膜厚を増やして、この問題を克服するようにしてもよく、これによって極微針を強化することができる。また、極微針を陽極酸化処理し、硬質で脆いアルミナの層を成形してもよい。
【0066】
極微針列の列を製造する方法の一つとして、一つのパンチ(図示せず)を繰り返し使って材料シート上の各列内の各針を成形してもよい。図13(a)と13(b)に、それぞれ、一つのパンチ(図示せず)を使って成形した極微針1320の実施例の平面図と等角図の写真を示す。極微針の周りでは大きな変形は起こらないことが観察され、したがって、隣接する極微針1325は、互いに接近して成形されてもよい。
【0067】
図14(a)と図14(b)は、アスペクト比が1〜1.5のワイヤ切断パンチ列(図示せず)によって成形した極微針列1420、1430の例を示す。これらのパンチ列は、十分な表面仕上がりを確実に得るために3つのパスでワイヤ切断されており、約2ミクロの膜厚を有する固体潤滑剤で覆われている。極微針1420、1430は、底面直径が約0.5mmで、2×2列の極微針列1420では、高さが約0.5mmで(図16(a))、3×3列の極微針列1430では、高さが約0.75mmである。極微針列1420、1430の成形に使用したアルミニウムシート(1100)の膜厚は、約50ミクロだった。極微針1425、1435の最終的な壁厚は、約8−20ミクロの間である。最終的な壁厚は、陽極酸化処理、又は、極微針1425、1435の外表面をニッケル、又は、例えば、ポリマー材料等の他の金属/非金属材料で電気めっき/堆積してさらに大きくしてもよい。さらに、極微針1420、1430の両面は、極微針列1420、1430を硬化するために、酸化アルミニウムの層で陽酸化処理してもよい。極微針1420、1430を5%シュウ酸中で、3分間、45Vの一定の電圧(おおよそ10×10mm2の有効領域)で陽酸化処理した後、極微針1425、1435の壁厚は約20ミクロンから約30ミクロンへ増加した。図15(a)〜図15(c)は、他の実施形態にしたがった極微針1550全体、極微針1550の底面部、極微針1550の先端(頂点)それぞれの断面を示すSEM写真である。極微針1550の例は、3×3列の極微針列(図示せず)の一部を示している。極微針底面部が最も変形しており、微細成形後、極微針1550の頂点が最も移動させられている。
【0068】
他の実施形態において、膜厚が約0.2mmのアルミニウムシートを、過塩素酸(30%)と(純)メタノールを1:4の比で混合した混合液中で電解研磨した。12.5Vの一定の電圧を一定の時間印加し、アルミニウムシートを望ましい膜厚にする。電解研磨を9分間行った後と、14分間行った後には、それぞれ、膜厚85ミクロンと、膜厚130ミクロンとが得られた。その後、アルミニウムシートに穴をあけ、陽酸化処理を行い、図16(a)と図16(b)に示すように、それぞれ、1.0と0.6のアスペクト比が得られた。これらの実施例両方において、極微針1620、1630は、極微針列のプラットフォーム(図示せず)を含め、皮膚浸透の間の取り扱いや歪み力に持ちこたえるのに十分に強くなる。なお、図16(b)の極微針1630は、図16(a)の極微針1620よりもかなり大きな底面外半径を有する。これは、図16(b)の極微針1630の成形に使うアルミニウムシート(130ミクロン)の膜厚のほうが大きいからであり、これにより、極微針1630のアスペクト比は約40%の減少となる。
【0069】
ほぼ同様の実験設定及び上記の実施形態に記載した材料を使って、非中空及び中空極微針の両方を製造してもよい。パンチの鋭さを頂上部で制御することによって、極微針を非中空状(パンチのストロークの際に穴を成形せず)や中空状(パンチストローク際にパンチの頂上部で穴を成形・拡大)に成形してもよい。非中空極微針及び中空極微針を成形する際の唯一のプロセスの違いは、パンチの頂上部の鋭さである。パンチ頂上部の鋭さは、金属シートの相対厚さに厳密に依存している。したがって、ある特定のパンチ頂上部は、比較的厚い金属シートにとっては十分に鋭くても、同じ材料でより薄いシートに対しては全く尖っていないかもしれない。頂上部を丸くすることで、成形ストローク中に材料シート上にひびが生じることや不具合が生じることがなくなり、これにより非中空の極微針を成形できることは容易に想像できる。逆に、中空極微針には、成形ストローク中の初期段階で穴やひびを生じる鋭い頂上部が必要であり、この穴やひびはパンチのストロークにしたがって適度に広がり、結果的に頂上部で均一な開口となる。この穴の作成・拡大メカニズムは、第3の欠陥モード、又はクレーターモードに従うものである。図17(a)〜図17(c)は、異なるアルミニウムシートの膜厚とパンチの表面形状とを利用して製造した中空極微針の一例を示すSEM写真である。図17(a)は、アスペクト比が1.5のパンチと膜厚が0.2mmのアルミニウムシートを使って成形された中空極微針1750を示す。図17(b)は、50ミクロンの中空頂上部1765を有する極微針1760の平面図である。図17(c)と図17(d)は、それぞれ、アスペクト比が2のパンチ(図示せず)で成形した中空極微針1770の平面図と等角図である。
【0070】
図18(a)〜図18(d)は、他の実施形態にしたがって極微針1850を製造する工程を示した概略図である。極微針1850は、膜厚が50ミクロンの4×4のパンチ列1820でアルミニウムシート1840に穴をあけることで得られる。各極微針1850の内面は、ニッケルめっき等の電子めっきによってコーティングされる。突起表面1860は、エポキシ1855でコーティングされ、極微針1850の外表面上のニッケルめっきを防ぐ。穴をあけた極微針列1840は塩化ニッケル溶液内で、12時間、0.08Aの一定の電流で電気めっきが施され、これにより、図18(c)と図18(d)に示すように、ニッケルめっき1858の層を極微針1850の内表面上に成形する。図19(a)は、図18(a)〜図18(d)の実施形態に従って成形した、凹凸のはっきりとした極微針列1920を示す。極微針1920は、軽く外向きに屈曲しており、皮膚を引っ掻きやすくしている。図19(b)は、陽酸化処理を施した極微針列の膜厚の異なる様々な例、例えば1922を示している。ここで、色の濃い部分は膜厚が増加したことを示す。
【0071】
図20(a)〜図20(c)は、微細成形で製造した極微針の3つの欠陥モード、すなわち、キャップモード、クラウンモード、クレーターモードをそれぞれ示す。これらの種類の欠陥モードは、ネッキングが生じる(酷使された)材料内の位置に依存する。キャップモード欠陥は、成形された極微針の側壁でネッキングが起こる場合に生じ、その後、図20(a)に示すように、ひびが周囲に広がって、半球形の蓋が円錐形の極微針に取り付けられるように成形される。一方、クラウンモード欠陥は、パンチ(図示せず)の頂上部があたった領域に生じたひびが放射状に広がることによって起こり、その材料シートは、通常、パンチサイズ(底面直径)に比べて十分に薄い。クラウンモード欠陥が起こるパンチサイズに対する材料シートの膜厚の一般的な比は、約10以上である。多くの場合、ひびが広がるにつれて、極微針の寸断面が反り返り、引っ掻くのに都合のよい鋭利な先端(2020)(図20(b))が成形される。最後に、クレーターモード欠陥とは、穴拡大プロセスであって、パンチによって穴を作り、その後、パンチが進むにつれて穴が拡大される。図20(c)に示すように、このモードでは、極微針の頂上部に、比較的鋭利でスムーズな円周2030が作成される。クレーターモード欠陥は、上記のように、中空極微針の成形に使用される。
【0072】
上記の実施形態において、微細成形を使って、極微針を成形する。他の形状の微細構造を他の実施形態で製造してもよい。
【0073】
微細成形を使って極微針を成形することで、このような極微針列の製造時間とコストを実質的に削減でき、この技術を商業的にも実現可能にすることができる。
【0074】
さらに、上記の実施形態によって、広い範囲の長さやアスペクト比の中空微細構造、又は、非中空微細構造を、現在、特定の技術、例えば、シリコン技術にとって制限要因である微細成形で成形することができるようになる。例えば、適切な膜厚の金属シートを使用すると共に、パンチのテーパーを大きくすることによって、様々なアスペクト比の微細構造を得ることができる。
【0075】
微細成形は、また、成形、トリミング、カービング、研削、穴掘削、電子成形等の製造後プロセスによって、複雑な表面形状を有する極微針列の製造を可能にする。
【0076】
追加工程を組み込んで、さらに成形された極微針の機械特性を操作/最適化してもよいし、極微針の表面形状をさらに改善してもよい。
【0077】
本発明は、ICキャリアや、微細ドライバー、締め具、支持構造体、バネ、パッドやピン等の接続素子等を含むマイクロシステム技術(MST)や電気・電子モジュールにおいて使用する他の微細構造にも適用してもよい。
【0078】
上記特定の実施形態に示すように、広義に定義される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明に対して、様々な変形及び/又は変更をしてもよいことは、当業者に認識されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる意味において、例示目的であって、限定的なものではないと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の実施形態は、図面と共に、例示目的で示される以下の記載によって、当業者によりよく、容易に理解される。
【図1】図1(a)は、実施形態に係る極微針を成形するための装置の分解斜視図である。図1(b)は、図1の装置の透視図である。
【図2】図2(a)は、他の実施形態にしたがって、フライス加工法で製造したパンチを示す。
【0080】
図2(b)は、図2(a)の複数のパンチを示す。
【0081】
図2(c)は、他の実施形態にしたがって、EDMで製造したパンチを示す。
【0082】
図2(d)は、他の実施形態にしたがって、精密ワイヤ切断によって成形された6×6のパンチ配列の立体視図である。
【0083】
図2(e)は、図2(d)のパンチ配列の側面図である。
【図3】図3(a)〜図3(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形によって極微針を製造する工程の流れを示す概略図である。
【図4】図4は、他の実施形態にしたがって成形した、アスペクト比が約1.2の極微針の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図5】図5は、他の実施形態にしたがって成形した極微針のSEM写真を示す。
【図6】図6(a)〜図6(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。
【図7】図7(a)〜図7(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。
【図8】図8(a)は、他の実施形態に係る極微針のSEM写真を示す。図8(b)は、図8(a)の極微針の拡大写真を示す。
【図9】図9(a)は、他の実施形態にしたがって成形した極微針配列の写真を示す。図9(b)は、他の実施形態にしたがって成形した極微針配列の写真を示す。
【図10】図10(a)と図10(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の斜視図と断面図を示す写真である。
【図11】図11(a)と図11(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の斜視図と断面図を示す。
【図12】図12(a)と図12(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の斜視図と断面図を示す。
【図13】図13(a)と13(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の平面図と等角図の写真を示す。
【図14】図14(a)と図14(b)は、アスペクト比が1〜1.5のワイヤ切断パンチ配列によって成形した極微針配列の例を示す。
【図15】図15(a)〜図15(c)は、他の実施形態に係る極微針全体、極微針の底面部、極微針の先端(頂点)それぞれの断面を示すSEM写真である。
【図16】図16(a)は、他の実施形態に係る極微針の断面のSEM写真を示す。図16(b)は、他の実施形態に係る極微針の断面のSEM写真を示す。
【図17】図17(a)〜図17(c)は、アルミニウムシートの異なる膜厚とパンチの表面形状を使って製造した空洞極微針の例を示すSEM写真である。図17(d)は、それぞれ、図19(c)の空洞極微針の等角図である。
【図18】図18(a)〜図18(d)は、他の実施形態にしたがって極微針を製造する工程を示した概略図である。
【図19】19(a)は、図18(a)〜図18(d)の実施形態にしたがって成形した極微針配列を示す。極微針1920は、軽く外向きに屈曲しており、皮膚を引っ掻きやすくしている。
【図20】図20(a)〜図20(c)は、微細成形で製造した極微針の3つの欠陥モード、すなわち、キャップモード、クラウンモード、クレーターモードをそれぞれ示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、微細構造の配列の微細成形方法及び微細構造の配列の微細成形装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
極微針等の微細構造は、多くの異なる技術分野において利用されている。例えば、皮下注射や経口投与は、その即効性、有効性、直接性から、人間の体に薬剤を投与するために最も一般的に使用されている方法である。これらの方法にも、スパイク濃度や皮下注射によるトラウマ、薬剤を経口投与した際に消化管が受ける薬剤によるダメージや薬剤使用目的の臓器以外で起こる合併症等、いくつか不利な点もある。一方、経口投与や静脈内注射を代替する方法である経皮薬剤輸送は、痛みを生じずに人間の体に薬剤を投与する手段であり、これらの薬剤輸送手段は、薬剤が消化管内でダメージを受けることや、薬剤が肝臓にすぐに吸収されてしまうことを防ぐ。従来の経皮薬剤輸送用の製品は、患者の動きを制限せずに長時間の薬物輸送ができるよう、通常、人間の体に吸着できるパッチ形状とする。これらの製品は、通常、不浸透性の裏当てと定常状態の薬剤輸送率を制御する膜表面に挟まれた薬剤用のリザーバを有する。既存の経皮性薬剤輸送の応用例としては、乗り物酔い防止薬のスコポラミンや、禁煙用ニコチンパッチ、狭心痛治療用のニトログリセリン、ホルモン置換治療用のエストロゲンがある。
【0003】
経皮性薬剤輸送システムは、一般的に、能動輸送システムと受動拡散システムに分類される。能動輸送システムは、イオン注入法、電気穿孔法、超音波等の外的方法を使用し、皮膚バリアを超えた人間の体内への薬剤の侵入を増加させる。これらの方法は、電気的手段又は高周波数電気パルスや音波の適用することによって薬物の皮膚への拡散を増進させて、薬剤の吸収を改善する。上記の方法を行う従来の装置は、機器費用及び作業費用が高いことや、持ち運び可能な電気機器が必要になる等の不都合があり、未だ商業的な成功には至っていない。
【0004】
上記の経皮パッチは、受動拡散システムの例であり、その機能性は、皮膚内への薬剤の拡散に基づくもので、皮膚の多孔性、薬剤分子の大きさ及び多孔性、角質層(ヒトの皮膚の最も外側にある層)の濃度勾配等のパラメータに依存する。一般的に、従来の経皮パッチでは、薬剤から皮膚への薬剤の拡散率が低いことが問題であった。
【0005】
この低拡散率を改善する方法として、皮膚(角質層)の破壊によって拡散バリアを壊す方法がある。これは、非中空又は中空の突起、例えば、極微針列を使用して、引っ掻いたり、皮膚に直接浸透させて行ってもよい。これは、経皮薬剤輸送で一般的な問題である低拡散を克服するための、効果的、かつ、低費用の方法である。
【0006】
従来の極微針列を製造する方法としては、例えば、金属堆積法や射出成形法に伴ってシリコン基板を使った方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの方法は、製造コスト及び時間が多くかかり、大量生産には向いていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様にしたがって、微細構造の配列を微細成形する方法であって、材料シートを対応する微細構造に変形させるためにそれぞれ形成された突起部の配列を有するパンチを、該パンチとダイの間に配置された材料シートに向かって前進させる工程と、材料シートを定位置に保持するためのホルダを設ける工程と、材料シートにパンチの突起部で穴を開けて、材料シート上に前記微細構造の配列を成形する工程とを備える方法を提供する。
【0009】
前記微細構造は、極微針からなっていてもよい。
【0010】
本発明による微細構造の配列を微細成形する方法は、微細成形中に、前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与える工程をさらに備えていてもよい。
【0011】
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられてもよい。
【0012】
前記ダイは、変形可能なダイであってもよい。
【0013】
前記微細構造の成形中に、材料シート内で平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比を選択してもよい。
【0014】
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0015】
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0016】
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されていてもよく、前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる。
【0017】
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなってもよい。
【0018】
前記材料は、半結晶高分子材料からなっていてもよい。
【0019】
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなってもよい。
【0020】
固体潤滑剤をパンチに塗布する工程をさらに備えていてもよい。
【0021】
固体潤滑剤は、Ta−Cコーティングからなってもよい。
【0022】
本発明の微細成形方法は、前記微細構造を強化するために、前記微細構造それぞれの内面をコーティングする工程をさらに備えていてもよい。
【0023】
前記コーティング工程は、電気めっき工程を含んでもよい。
【0024】
記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含んでいてもよい。
【0025】
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなっていてもよい。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、微細構造の配列を微細成形する装置であって、突起部の配列を有するパンチと、ダイと、微細成形中に材料シートを定位置に保持するためのホルダとを備え、各突起部は、材料シートを対応する微細構造に変形させるために形成されており、材料シートに前記突起部の配列で穴を開けて、前記微細構造の配列を成形する装置を提供する。
【0027】
前記微細構造は、極微針であってもよい。
【0028】
微細成形中に前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与えてもよい。
【0029】
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられてもよい。
【0030】
前記ダイは、変形可能なダイであってもよい。
【0031】
前記微細構造の成形中に材料シート内における平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比が選択されていてもよい。
【0032】
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0033】
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形してもよい。
【0034】
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されていてもよく、前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる。
【0035】
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなってもよい。
【0036】
前記材料は、半結晶高分子材料からなっていてもよい。
【0037】
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなっていてもよい。
【0038】
固体潤滑剤がパンチに塗布されていてもよい。
【0039】
固体潤滑剤はTa−Cコーティングからなっていてもよい。
【0040】
本発明の微細成形装置は、前記微細構造を硬化するために、前記微細構造それぞれの内面をコーティングする手段をさらに備えていてもよい。
【0041】
前記コーティング工程は、電気めっき工程を含んでいてもよい。
【0042】
前記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含んでいてもよい。
【0043】
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなっていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本明細書に記載の実施形態は、一般的に、微細成形を用いた、例えば極微針等の微細構造の製造に関する。極微針は、列状に成形してもよく、生体に薬剤を投与するため又は生体から体液を抽出するための経皮性薬剤輸送システムにおいて使用してもよい。
【0045】
微細成形とは、1mm以下の少なくとも二次元の金属成形による構造体の一部又は構造体を製造することである。一般的に、微細成形は、従来の金属成形プロセスを小型化したものとして考えられ、微細成形及び金属成形は、用いられる材料、使用手段、使用プロセス、使用機械の4つの主要要素で構成されることを特徴とする。用いられる材料は、重要な要素である。従来の金属成形の小型化に伴う問題に関連する材料は、材料自身の小型化と強く結びついている。(a)微細構造は、例えば、プロセスの寸法には依存せず、(b)表面トポグラフィーは不変である。これらの要素によって、例えば、結晶粒径等の微細構造や表面のパラメータに対するある部分の寸法の割合が小型化に伴って変化する所謂サイズ効果が起こる。これらの要素すべてによって、従来の金属成形プロセスのノウハウを微細成形の分野で応用することが妨げられている。
【0046】
技術的には、微細成形では、流動応力や垂直平均異方性、延性が低下して、成形性の限界が徐々に低下することが示唆される。乾式成形法の場合は摩擦が寸法に依存しないのに対し、油で潤滑する場合は小型化に伴い摩擦が増加する。
【0047】
微細成形用に使用される装置10の一実施形態を図1(a)と図1(b)に示す。図1(a)は、装置10の分解斜視図を示す。装置10は、パンチ20とホルダ30とダイ40とを有する。本実施形態では、パンチ20とホルダ30とダイ40とは、円筒形の形状を有する。しかし、これらは他のいかなる形状に成形されてもよい。図1(b)は、パンチ20とホルダ30とダイ40とを組立てた際の装置10の透視断面を示す。装置10は、例えば、プレス機等、様々な手段によって作動させてもよく、手動で作動させてもよい。また、サーボプレス機を使用して、装置10を作動させ、より精密に製造工程を進めてもよい。サーボプレス機の動作範囲の例としては、穿孔負荷が5N〜500N、穿孔スピードが0.1mm/s〜35mm/sとしてもよい。望ましい極微針列の大きさに応じて、穿孔負荷と穿孔スピードを増加してもよい。
【0048】
パンチ20とダイ30とは、例えば、フライス加工法や、放電加工法(EDM)、精密ワイヤ切断法等の様々な方法で製造してもよい。ダイ30は、例えば、ワイヤ切断法で成形し、ダイに貫通孔を製造してもよい。一方、ダイの貫通孔が必要でない場合は、ダイは、EDMで製造してもよい。
【0049】
図2(a)は、他の実施形態にしたがって、フライス加工法で製造した、円錐形状の突起部225を有するパンチ220を示す。パンチ220の表面仕上げは、一貫した結果を得るために十分とみなされ、典型的に、極微針(又は、微細構造)成形後のパンチの後退に大きく依存している。従来のCNCフライスによる仕上がり表面の表面粗さ(表面仕上げ)は、例えば、寸法が約500ミクロンよりも大きい応用例のほとんどに対して十分である。例えば、寸法が、約100ミクロンより小さい構造を作成するには、求められる平均表面粗さは、約0.1ミクロンよりも小さいものであることがわかる。さらに、固体潤滑剤を使用する場合、表面粗さの要件は、0.1ミクロンから0.5ミクロンまで緩和されてもよい。図2(b)に示すように、パンチ220を穿孔ホルダ230に装着する前に、各パンチ220に、それぞれ別々にフライス加工とトリミング加工とを施して、パンチ220の列を得てもよい。本実施形態では、4つのパンチ220は、パンチホルダ230に装着され、2×2列のパンチ220を成形する。
【0050】
図2(c)は、他の実施形態にしたがって、EDMによって成形されたパンチ250を示す。EDMより成形したパンチ250の仕上がり表面は、ミリングや精密ワイヤ切断に比べてなだらかである。
【0051】
図2(d)と図2(e)は、他の実施形態にしたがって、精密ワイヤ切断によって成形された6×6列のパンチ列260の立体視図と側面図をそれぞれ示している。パンチ265は、3つの切断パスを有するように成形されており、各パンチ265の寸法は、底面の幅が0.25mm、高さが0.75mmである。パンチ265の底部、したがって、極微針(図2(a)〜図2(e)には図示せず)の底部には、ワイヤ切断プロセスによって使用するワイヤの半径に応じて、固有の有限湾曲が生じる。そうではあっても、図21(b)に見られるように、極微針の底部の外側におけるワイヤの半径によって、該底部の外側が鋭い端縁となることが回避され、パンチ構造を強化している。実施形態において、パンチ(及び、ダイ)はテーパー加工された壁を有し、微細成形中のパンチの後退を可能にしている。さらに、微細成形と共に打ち抜きプロセス又は穴あけプロセスを行うときには、材料を塑性的に変形させてパンチの形状に一致させるように、パンチの壁をある程度テーパー加工することが必要となる。
【0052】
上記の実施形態では、パンチは、ほぼ円形の断面を有しているが、用途によっては、例えば、三角形状、矩形状、八角形状等、様々な形状とすることができる。
【0053】
図3(a)〜図3(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形によって極微針を製造する工程の流れを示す概略図である。金属シート340をパンチ列320と固定ダイ330の間に配置する。ホルダ310を金属シート340の上面上に配置し、金属シート340が微細成形プロセス中に動かないように、また、金属シート340のしわを防ぐようにする。反りやしわが生じないよう金属シート340を拘束するために、金属シート340の固定ダイ330へのさらなる固定(図示せず)が必要となる場合がある。金属シート340は、304鋼、1100アルミニウム、銅(99%)等の金属材料で構成してもよい。金属シート340は、金属シート340の最小の長さがダイ330の直径の約5倍を超えるように、影響を受ける領域(ダイ330の直径)を十分に被う必要がある。
【0054】
ラム350を設定し、適切なスピードでパンチ列を落下させ、続いて、図3(b)に示すように、極微針345の列を金属シード340に作成する。本実施形態において、パンチ320は、円錐形状の突起部325を有しており、ダイ330は、パンチ320上の円錐形突起部325に対応する凹形状を持つ。極微針345の表面形状は、パンチ320とダイ330とに対応するように成形される。極微針345を金属シート340に成形した後、パンチ320をラム350によって後退させる。パンチ320は、図3(c)に示すように、極微針345の列が成形された金属シート340がダイ上に残るように後退させてもよい。また、パンチ320は、図3(d)に示すように、ホルダ310と極微針345の列が成形された金属シート340とがパンチ320上に残るように後退させてもよい。最終的に、装置のデザインや違いに応じて、作成した極微針345をパンチ列320又は固定ダイ330から取り外すことができる(図3(e))。なお、極微針列が大きいほど、大きいパンチ負荷が必要となる場合がある。パンチ負荷は、作成される極微針列の極微針の数にほぼ比例して増加することがわかっている。
【0055】
作成された極微針345がパンチの後退ストローク中にダメージを受ける得るパンチの後退においては、摩擦の作用が大きい。パンチ後退による極微針のダメージを防ぐため、潤滑剤コーティングをパンチに適用してもよい(図示せず)。
【0056】
他の実施形態において、Ta−C等の固体潤滑剤をパンチに塗布する。Ta−Cは、約2ミクロンの膜厚を有するダイアモンド状炭素コーティングである。図4には、約6mmの高密度ポリエチレン(HOPE)パッドをダイ(図示せず)として使用して、0.15mmの膜厚を有するアルミニウムシート(純度99%)上に微細成形した、アスペクト比が約1.2の極微針410の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。パンチ(図示せず)は底面直径が1mm、高さが1.5mm、約1.5のアスペクト比であった(パンチの先端を切り取った後の実際の高さは、およそ1.45mm)。パンチの先端を切り取ることで、非中空の極微針を開口なしで成形することができ、また、裂け目や穴の拡張を遅らせることもできる。
【0057】
図5は、他の実施形態にしたがって成形した極微針510のSEM写真であり、極微針510の底面半径へのレトロパンチング効果を示している。極微針510は強く削られ、オーバーエッチ効果が残った。極微針510は、底面の直径が約0.5mm、高さが約1mmの寸法を持つパンチ(図示せず)によって、膜厚が約0.15mmのアルミニウムシート(純性99%)を使用して作成された。極微針510の内表面の底面に亘るストリップは、研削プロセス中に作られて蓄積していったばりのような人工物である。そして、極微針510を、本質的にテーパー穴である雌パンチ(図示せず)によってレトロパンチした。このレトロパンチ工程によって、極微針510の底面半径はかなり小さくなり、アスペクト比が約1.4の極微針510が得られる。このような寸法の大幅な縮小にも関わらず、極微針510のは、取り扱い時や皮膚浸透中の機械負荷を維持するのに十分な膜厚を有する。また、ここでは、皮膚浸透を促進するために、微細成形された極微針の側面にどのようなパターンが成形されるのかが示されている。例えば、各極微針の外側表面に、極微針を鋭利にする波形の細い線や他の模様を成形すること、又は、刻むことで皮膚浸透を促進してもよい。
【0058】
図6(a)〜図6(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。本実施形態では、図3(a)〜図3(e)に示す固定ダイ330を変形可能なダイ630に置き換える。変形可能なダイ630は、例えば、高密度ポリエチレン(HOPE)やポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ポリエチレテレフタレート(PET)等の変形可能な半結晶性高分子である軟質材料から成るシート状に成形してもよい。これらの材料は、通常、非結晶性高分子に比べて、強度が高く、熱による分解や軟化に対してもより耐性が高い。変形可能なダイ630に使用する材料は、パンチ620によって穴をあけた後、部分的又は実質的に回復し、変形可能なダイ630が再利用できるような材料であることが好ましい。変形可能なダイ630によって、パンチ620が前進している間の材料の流れを継続でき、したがって、微細成形プロセス中の引き伸ばしによって、極微針のネッキングを防ぐことができる。図3(a)〜図3(e)の固定ダイ330に比べ、微細成形の前に、パンチ620の突起部625の形状の凹形状を変形可能なダイ630に成形する必要はない。パンチ620は、例えば、Ta−C等の固体潤滑剤で覆われていてもよい。パンチ620を下げ、図6(b)に示すように、変形可能なダイ630上に配置した金属シート640に押し付ける。同時に、パンチ620によって、変形可能なダイ630に穴をあけ、パンチ620上の突起部625の形状の凹形状に相当するキャビティ635を成形する。極微針645の長さ分に到達したら、パンチ620の動きを止める。同様に、成形した極微針645は、プロセスのデザインや違いに応じて、パンチ620又は変形可能なダイ630から取り外すことができる。成形された極微針645の取り外しの簡便さは、成形圧力と変形可能なダイ630と金属シート640に使用した高分子材料の性質による。キャビティ635は変形可能なダイ630に永久的に設けられるが、キャビティ635は縮んだり、元の形状に戻ることができるので、変形可能なダイ630は十分に再利用できる。
【0059】
図7(a)〜図7(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。本実施形態では、固体潤滑パンチ720を、変形可能な高分子ダイ730上に配置した金属シート740に押し付ける。極微針745の長さ分に到達した後、図7(c)と図7(d)に示すように、追加圧力をかけパンチ720をさらに前進させ、成形した極微針列748を金属シート740の残りの部分から打ち抜く。成形した極微針列748は、プロセスのデザインや違いに応じて、後退したパンチ720(図7(c))に付着させてもよいし、変形可能なダイ730(図7(d))上に残してもよく、その後、極微針列748を取り除いて、図7(e)に示すような極微針列748が得られる。
【0060】
ダイが従来の金属成形において一般的に果たす2つの役割、すなわち、加工品を特にダイの肩の部分で三次元構造に変形させる役割、及び/又は、アイアニング効果による材料の精密な薄膜化を確実に行う成形プロセス中に三次元構造の側体において「アイロン・ボード」として働く役割は、一般的に、微細成形には適応できないことがわかる。極微針の成形は、パンチのデザイン、特にパンチのアスペクト比と、極微針の成形に使用する材料から成るシートの膜厚とに依存することがわかる。また、材料シートに対する反作用支持によって、成形プロセス中の極微針の初期不具合を遅らせることができることもわかる。一般的には、パンチと材料シート間の接触面では、微細成形中は、膜厚が厚いシートも薄いシートもパンチの形状に厳密に一致しているが、膜厚が厚いシート材料に比べ、膜厚が薄いシート材料は、極微針の外面において、その形状がパンチの形状と一致するように改善されることが観察された。一般的に、材料シートの膜厚がパンチの高さより約5〜10倍小さい場合は、材料シートは薄膜であるとみなされる。
【0061】
微細成形中の材料シートに対する一定の反作用支持は、例えば、図6(a)〜図6(e)、図7(a)〜図7(e)の実施形態に示すように、変形可能なダイ630、730によって与えられてもよい。図8(a)は、アスペクト比がほぼ3(パンチの後退なし)に等しいパンチ(図示せず)を使って、約0.2mmの膜厚を有するアルミニウムシート(1100)から成形した極微針850の実施例を示すSEM写真を示す。図8(b)は、極微針850の拡大写真であり、寸法を概寸で示している。ダイアモンド状炭素コーティング、例えば、テトラヘデラルアモルファスカーボンコーティング等の固体潤滑剤でパンチ上を被い、極微針850がパンチの後退の際にダメージを受ける原因である摩擦を減らすようにしてもよい。また、パンチの表面粗さを改善し、パンチと材料シート間の摩擦と接触を減らし、材料とパンチ間の界面接着を最小限に抑えるようにしてもよい。本実施形態では、パンチは硬化工具鋼から成り、極微針850を成形するシート材料はアルミニウムから成る。パンチが後退する際に起こる極微針850の不具合の原因の一つとして、微細成形中に材料シートが晒されていた高度の変形が考えられる。
【0062】
さらに、変形可能なダイを使用することの利点として、僅かに上昇した圧力、例えば、成形圧力の約10%−50%の圧力でプレス加工する目的で、変形可能なダイを汎用のダイとして使用することができる。図9(a)と図9(b)は、可変ポリマーダイ(図示せず)を使って、約0.15mmの膜厚を有するアルミニウムシートからプレス加工して成形した極微針920、930の極微針列の一例の写真を示す。極微針920、930の配列は、特に、複雑な表面形状を持つそのような単位ダイの大きな配列が必要な場合には高い製造コストが必要となる剛性ダイと比べて、より優れた変形可能なダイの性能を示している。
【0063】
サイズ効果は、加工製品のサイズを小型化したときに、材料の微細構造は変化しないという事実に由来する。極微針の極微成形に使用する材料シートの微細構造を、それぞれ試料の異なる位置、すなわち、集中的な伸張が起こった極微針のウエスト(高さの中間点)、変形が起こっていない極微針から離れた底面領域において分析した。変形した領域と変形していない領域の粒径を観察することで、材料の微細構造の大きな変化を引き起こすことなく、そのような変形が起こることがわかり、数10nmの領域における粒径は、典型的な標準粒径である。極微針の成形に使用する材料の膜厚は、高アスペクト比の極微針を得る際に、重要な役割を果たす。例えば、材料の膜厚に対するパンチの高さの比が約4よりも小さいような膜厚が厚い材料シートを使用すると、はっきりとした針は成形できず、また、例えば、材料の膜厚に対するパンチの高さの比が約20よりも大きいような膜厚がパンチのサイズに比べて薄すぎる材料シートを使用すると、穴あけプロセス又は打ち抜きプロセスを行う場所で平面応力がかかり、極微針の代わりに、穴だけが成形されてしまう。パンチサイズの減少に伴い、材料シートの膜厚も減らす必要があるが、この縮小は線形である。材料の膜厚には最適な範囲があり、その最適な範囲では、変形ダイのサポートを伴う、特定の表面形状を有するパンチを使って、満足のいく極微針を成形できることが観察された。
【0064】
図10(a)、図10(b)、図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)は、約50ミクロンの膜厚を有するアルミニウムシートから得た極微針の実施例を示している。図10(a)と図10(b)は、それぞれ、極微針1020の斜視図と断面図を示す写真であり、極微針1020は、底面直径が1mmで、高さが1.5mm(アスペクト比は1.5)のパンチ(図示せず)を使って成形した。極微針1020の壁厚1022は、元のシート膜厚1024の約半分より大きい程度の膜厚に減少したことが観察された。図11(a)と図11(b)は、それぞれ、アスペクト比が約2で底面が約1mmのパンチ(図示せず)によって成形した極微針1120の斜視図と断面図を示している。断面の下部にある、ばり状のひれ1125は、研削の結果できたものである。図12(a)と図12(b)は、それぞれ、底面直径が約0.5mm、高さが約1mm(アスペクト比は約2)のパンチ(図示せず)で成形した極微針1120の斜視図と断面図を示している。極微針1220の先端(頂点)と平均壁厚はそれぞれ、大体20〜30ミクロンと、15〜30ミクロンの範囲である。
【0065】
より小さい極微針を作るためにより膜厚の薄い材料シートが必要となることから、作成される極微針の壁厚の下限は、成形した針の壁厚を元の膜厚の半分から5分の1の間の厚さまで減らしてもよいというように決められる。この下限は、実用的には適さない針を作ってしまう値である。極微針のサイズが極めて小さい場合、例えば、底面寸法で約150ミクロより小さい場合は、求められる最適な材料膜厚は極めて小さくなる。これにより、曲げ加工や変形加工を施す極微針列のソフトプラットフォームが成形される。このサイズ及び膜厚の縮小によって、極微針が弱くなり、信頼性が低下してしまう。極微針としてニッケルなどの材料でできた層を電鋳法で成形することで極微針の総膜厚を増やして、この問題を克服するようにしてもよく、これによって極微針を強化することができる。また、極微針を陽極酸化処理し、硬質で脆いアルミナの層を成形してもよい。
【0066】
極微針列の列を製造する方法の一つとして、一つのパンチ(図示せず)を繰り返し使って材料シート上の各列内の各針を成形してもよい。図13(a)と13(b)に、それぞれ、一つのパンチ(図示せず)を使って成形した極微針1320の実施例の平面図と等角図の写真を示す。極微針の周りでは大きな変形は起こらないことが観察され、したがって、隣接する極微針1325は、互いに接近して成形されてもよい。
【0067】
図14(a)と図14(b)は、アスペクト比が1〜1.5のワイヤ切断パンチ列(図示せず)によって成形した極微針列1420、1430の例を示す。これらのパンチ列は、十分な表面仕上がりを確実に得るために3つのパスでワイヤ切断されており、約2ミクロの膜厚を有する固体潤滑剤で覆われている。極微針1420、1430は、底面直径が約0.5mmで、2×2列の極微針列1420では、高さが約0.5mmで(図16(a))、3×3列の極微針列1430では、高さが約0.75mmである。極微針列1420、1430の成形に使用したアルミニウムシート(1100)の膜厚は、約50ミクロだった。極微針1425、1435の最終的な壁厚は、約8−20ミクロの間である。最終的な壁厚は、陽極酸化処理、又は、極微針1425、1435の外表面をニッケル、又は、例えば、ポリマー材料等の他の金属/非金属材料で電気めっき/堆積してさらに大きくしてもよい。さらに、極微針1420、1430の両面は、極微針列1420、1430を硬化するために、酸化アルミニウムの層で陽酸化処理してもよい。極微針1420、1430を5%シュウ酸中で、3分間、45Vの一定の電圧(おおよそ10×10mm2の有効領域)で陽酸化処理した後、極微針1425、1435の壁厚は約20ミクロンから約30ミクロンへ増加した。図15(a)〜図15(c)は、他の実施形態にしたがった極微針1550全体、極微針1550の底面部、極微針1550の先端(頂点)それぞれの断面を示すSEM写真である。極微針1550の例は、3×3列の極微針列(図示せず)の一部を示している。極微針底面部が最も変形しており、微細成形後、極微針1550の頂点が最も移動させられている。
【0068】
他の実施形態において、膜厚が約0.2mmのアルミニウムシートを、過塩素酸(30%)と(純)メタノールを1:4の比で混合した混合液中で電解研磨した。12.5Vの一定の電圧を一定の時間印加し、アルミニウムシートを望ましい膜厚にする。電解研磨を9分間行った後と、14分間行った後には、それぞれ、膜厚85ミクロンと、膜厚130ミクロンとが得られた。その後、アルミニウムシートに穴をあけ、陽酸化処理を行い、図16(a)と図16(b)に示すように、それぞれ、1.0と0.6のアスペクト比が得られた。これらの実施例両方において、極微針1620、1630は、極微針列のプラットフォーム(図示せず)を含め、皮膚浸透の間の取り扱いや歪み力に持ちこたえるのに十分に強くなる。なお、図16(b)の極微針1630は、図16(a)の極微針1620よりもかなり大きな底面外半径を有する。これは、図16(b)の極微針1630の成形に使うアルミニウムシート(130ミクロン)の膜厚のほうが大きいからであり、これにより、極微針1630のアスペクト比は約40%の減少となる。
【0069】
ほぼ同様の実験設定及び上記の実施形態に記載した材料を使って、非中空及び中空極微針の両方を製造してもよい。パンチの鋭さを頂上部で制御することによって、極微針を非中空状(パンチのストロークの際に穴を成形せず)や中空状(パンチストローク際にパンチの頂上部で穴を成形・拡大)に成形してもよい。非中空極微針及び中空極微針を成形する際の唯一のプロセスの違いは、パンチの頂上部の鋭さである。パンチ頂上部の鋭さは、金属シートの相対厚さに厳密に依存している。したがって、ある特定のパンチ頂上部は、比較的厚い金属シートにとっては十分に鋭くても、同じ材料でより薄いシートに対しては全く尖っていないかもしれない。頂上部を丸くすることで、成形ストローク中に材料シート上にひびが生じることや不具合が生じることがなくなり、これにより非中空の極微針を成形できることは容易に想像できる。逆に、中空極微針には、成形ストローク中の初期段階で穴やひびを生じる鋭い頂上部が必要であり、この穴やひびはパンチのストロークにしたがって適度に広がり、結果的に頂上部で均一な開口となる。この穴の作成・拡大メカニズムは、第3の欠陥モード、又はクレーターモードに従うものである。図17(a)〜図17(c)は、異なるアルミニウムシートの膜厚とパンチの表面形状とを利用して製造した中空極微針の一例を示すSEM写真である。図17(a)は、アスペクト比が1.5のパンチと膜厚が0.2mmのアルミニウムシートを使って成形された中空極微針1750を示す。図17(b)は、50ミクロンの中空頂上部1765を有する極微針1760の平面図である。図17(c)と図17(d)は、それぞれ、アスペクト比が2のパンチ(図示せず)で成形した中空極微針1770の平面図と等角図である。
【0070】
図18(a)〜図18(d)は、他の実施形態にしたがって極微針1850を製造する工程を示した概略図である。極微針1850は、膜厚が50ミクロンの4×4のパンチ列1820でアルミニウムシート1840に穴をあけることで得られる。各極微針1850の内面は、ニッケルめっき等の電子めっきによってコーティングされる。突起表面1860は、エポキシ1855でコーティングされ、極微針1850の外表面上のニッケルめっきを防ぐ。穴をあけた極微針列1840は塩化ニッケル溶液内で、12時間、0.08Aの一定の電流で電気めっきが施され、これにより、図18(c)と図18(d)に示すように、ニッケルめっき1858の層を極微針1850の内表面上に成形する。図19(a)は、図18(a)〜図18(d)の実施形態に従って成形した、凹凸のはっきりとした極微針列1920を示す。極微針1920は、軽く外向きに屈曲しており、皮膚を引っ掻きやすくしている。図19(b)は、陽酸化処理を施した極微針列の膜厚の異なる様々な例、例えば1922を示している。ここで、色の濃い部分は膜厚が増加したことを示す。
【0071】
図20(a)〜図20(c)は、微細成形で製造した極微針の3つの欠陥モード、すなわち、キャップモード、クラウンモード、クレーターモードをそれぞれ示す。これらの種類の欠陥モードは、ネッキングが生じる(酷使された)材料内の位置に依存する。キャップモード欠陥は、成形された極微針の側壁でネッキングが起こる場合に生じ、その後、図20(a)に示すように、ひびが周囲に広がって、半球形の蓋が円錐形の極微針に取り付けられるように成形される。一方、クラウンモード欠陥は、パンチ(図示せず)の頂上部があたった領域に生じたひびが放射状に広がることによって起こり、その材料シートは、通常、パンチサイズ(底面直径)に比べて十分に薄い。クラウンモード欠陥が起こるパンチサイズに対する材料シートの膜厚の一般的な比は、約10以上である。多くの場合、ひびが広がるにつれて、極微針の寸断面が反り返り、引っ掻くのに都合のよい鋭利な先端(2020)(図20(b))が成形される。最後に、クレーターモード欠陥とは、穴拡大プロセスであって、パンチによって穴を作り、その後、パンチが進むにつれて穴が拡大される。図20(c)に示すように、このモードでは、極微針の頂上部に、比較的鋭利でスムーズな円周2030が作成される。クレーターモード欠陥は、上記のように、中空極微針の成形に使用される。
【0072】
上記の実施形態において、微細成形を使って、極微針を成形する。他の形状の微細構造を他の実施形態で製造してもよい。
【0073】
微細成形を使って極微針を成形することで、このような極微針列の製造時間とコストを実質的に削減でき、この技術を商業的にも実現可能にすることができる。
【0074】
さらに、上記の実施形態によって、広い範囲の長さやアスペクト比の中空微細構造、又は、非中空微細構造を、現在、特定の技術、例えば、シリコン技術にとって制限要因である微細成形で成形することができるようになる。例えば、適切な膜厚の金属シートを使用すると共に、パンチのテーパーを大きくすることによって、様々なアスペクト比の微細構造を得ることができる。
【0075】
微細成形は、また、成形、トリミング、カービング、研削、穴掘削、電子成形等の製造後プロセスによって、複雑な表面形状を有する極微針列の製造を可能にする。
【0076】
追加工程を組み込んで、さらに成形された極微針の機械特性を操作/最適化してもよいし、極微針の表面形状をさらに改善してもよい。
【0077】
本発明は、ICキャリアや、微細ドライバー、締め具、支持構造体、バネ、パッドやピン等の接続素子等を含むマイクロシステム技術(MST)や電気・電子モジュールにおいて使用する他の微細構造にも適用してもよい。
【0078】
上記特定の実施形態に示すように、広義に定義される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明に対して、様々な変形及び/又は変更をしてもよいことは、当業者に認識されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる意味において、例示目的であって、限定的なものではないと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の実施形態は、図面と共に、例示目的で示される以下の記載によって、当業者によりよく、容易に理解される。
【図1】図1(a)は、実施形態に係る極微針を成形するための装置の分解斜視図である。図1(b)は、図1の装置の透視図である。
【図2】図2(a)は、他の実施形態にしたがって、フライス加工法で製造したパンチを示す。
【0080】
図2(b)は、図2(a)の複数のパンチを示す。
【0081】
図2(c)は、他の実施形態にしたがって、EDMで製造したパンチを示す。
【0082】
図2(d)は、他の実施形態にしたがって、精密ワイヤ切断によって成形された6×6のパンチ配列の立体視図である。
【0083】
図2(e)は、図2(d)のパンチ配列の側面図である。
【図3】図3(a)〜図3(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形によって極微針を製造する工程の流れを示す概略図である。
【図4】図4は、他の実施形態にしたがって成形した、アスペクト比が約1.2の極微針の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図5】図5は、他の実施形態にしたがって成形した極微針のSEM写真を示す。
【図6】図6(a)〜図6(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。
【図7】図7(a)〜図7(e)は、他の実施形態にしたがって、微細成形で極微針を製造する工程の概略図である。
【図8】図8(a)は、他の実施形態に係る極微針のSEM写真を示す。図8(b)は、図8(a)の極微針の拡大写真を示す。
【図9】図9(a)は、他の実施形態にしたがって成形した極微針配列の写真を示す。図9(b)は、他の実施形態にしたがって成形した極微針配列の写真を示す。
【図10】図10(a)と図10(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の斜視図と断面図を示す写真である。
【図11】図11(a)と図11(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の斜視図と断面図を示す。
【図12】図12(a)と図12(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の斜視図と断面図を示す。
【図13】図13(a)と13(b)は、それぞれ、他の実施形態に係る極微針の平面図と等角図の写真を示す。
【図14】図14(a)と図14(b)は、アスペクト比が1〜1.5のワイヤ切断パンチ配列によって成形した極微針配列の例を示す。
【図15】図15(a)〜図15(c)は、他の実施形態に係る極微針全体、極微針の底面部、極微針の先端(頂点)それぞれの断面を示すSEM写真である。
【図16】図16(a)は、他の実施形態に係る極微針の断面のSEM写真を示す。図16(b)は、他の実施形態に係る極微針の断面のSEM写真を示す。
【図17】図17(a)〜図17(c)は、アルミニウムシートの異なる膜厚とパンチの表面形状を使って製造した空洞極微針の例を示すSEM写真である。図17(d)は、それぞれ、図19(c)の空洞極微針の等角図である。
【図18】図18(a)〜図18(d)は、他の実施形態にしたがって極微針を製造する工程を示した概略図である。
【図19】19(a)は、図18(a)〜図18(d)の実施形態にしたがって成形した極微針配列を示す。極微針1920は、軽く外向きに屈曲しており、皮膚を引っ掻きやすくしている。
【図20】図20(a)〜図20(c)は、微細成形で製造した極微針の3つの欠陥モード、すなわち、キャップモード、クラウンモード、クレーターモードをそれぞれ示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造の配列を微細成形する方法であって、
材料シートを対応する微細構造に変形させるために形成された突起部の配列を有するパンチを、該パンチとダイの間に配置された材料シートに向かって前進させる工程と、
材料シートを定位置に保持するためのホルダを設ける工程と、
材料シートに前記パンチの突起部で穴を開けて、材料シート上に前記微細構造の配列を成形する工程とを備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記微細構造は、極微針からなる方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
微細成形中に前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与える工程をさらに備える方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられる方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記ダイは、変形可能なダイである方法。
【請求項6】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
前記微細構造の成形中に材料シート内における平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比が選択されている方法。
【請求項7】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形する方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の方法であって、
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されており、
前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法であって、
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなる方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記材料は、半結晶高分子材料からなる方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の方法であって、
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなる方法。
【請求項13】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
固体潤滑剤を前記パンチに塗布する工程をさらに備えた方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
固体潤滑剤は、Ta−Cコーティングからなる方法。
【請求項15】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
前記微細構造を強化するために前記微細構造それぞれの内面をコーティングする工程をさらに備える方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記コーティング工程は、電気めっき工程を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含む方法。
【請求項18】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなる方法。
【請求項19】
微細構造の配列を微細成形する装置であって、
突起部の配列を有するパンチと、
ダイと、
微細成形中に材料シートを定位置に保持するためのホルダとを備え、
各突起部は、材料シートを対応する微細構造に変形させるために形成されており、材料シートに該突起部の配列で穴を開けて、前記微細構造の配列を成形する装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、
前記微細構造は、極微針である方法。
【請求項21】
請求項19又は請求項20に記載の装置であって、
微細成形中に前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与える装置。
【請求項22】
請求項16に記載の装置であって、
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられる装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置であって、
前記ダイは、変形可能なダイである装置。
【請求項24】
請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の装置であって、
前記微細構造の成形中に材料シート内における平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比が選択されている装置。
【請求項25】
請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の装置であって、
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形する装置。
【請求項26】
請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の装置であって、
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形する装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置であって、
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されており、
前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる装置。
【請求項28】
請求項23に記載の装置であって、
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなる装置。
【請求項29】
請求項28に記載の装置であって、
前記材料は半結晶ポリマー材料からなる装置。
【請求項30】
請求項28又は請求項29に記載の装置であって、
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなる装置。
【請求項31】
請求項19から請求項30のいずれか一つに記載の装置であって、
固体潤滑剤が前記パンチに塗布されている装置。
【請求項32】
請求項31に記載の装置であって、
固体潤滑剤は、Ta−Cコーティングからなる装置。
【請求項33】
請求項19から請求項32のいずれか一つに記載の装置であって、
前記微細構造を強化するために前記微細構造それぞれの内面をコーティングする手段をさらに備える装置。
【請求項34】
請求項33に記載の装置であって、
前記コーティングは、電気めっき工程を含む装置。
【請求項35】
請求項34に記載の装置であって、
前記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含む微細成形方法。
【請求項36】
請求項19から請求項35のいずれか一つに記載の装置であって、
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなる装置。
【請求項1】
微細構造の配列を微細成形する方法であって、
材料シートを対応する微細構造に変形させるために形成された突起部の配列を有するパンチを、該パンチとダイの間に配置された材料シートに向かって前進させる工程と、
材料シートを定位置に保持するためのホルダを設ける工程と、
材料シートに前記パンチの突起部で穴を開けて、材料シート上に前記微細構造の配列を成形する工程とを備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記微細構造は、極微針からなる方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
微細成形中に前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与える工程をさらに備える方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられる方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記ダイは、変形可能なダイである方法。
【請求項6】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
前記微細構造の成形中に材料シート内における平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比が選択されている方法。
【請求項7】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形する方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の方法であって、
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されており、
前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法であって、
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなる方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記材料は、半結晶高分子材料からなる方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の方法であって、
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなる方法。
【請求項13】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
固体潤滑剤を前記パンチに塗布する工程をさらに備えた方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
固体潤滑剤は、Ta−Cコーティングからなる方法。
【請求項15】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
前記微細構造を強化するために前記微細構造それぞれの内面をコーティングする工程をさらに備える方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記コーティング工程は、電気めっき工程を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含む方法。
【請求項18】
前記の請求項のいずれか一つに記載の方法であって、
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなる方法。
【請求項19】
微細構造の配列を微細成形する装置であって、
突起部の配列を有するパンチと、
ダイと、
微細成形中に材料シートを定位置に保持するためのホルダとを備え、
各突起部は、材料シートを対応する微細構造に変形させるために形成されており、材料シートに該突起部の配列で穴を開けて、前記微細構造の配列を成形する装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、
前記微細構造は、極微針である方法。
【請求項21】
請求項19又は請求項20に記載の装置であって、
微細成形中に前記微細構造それぞれの領域内の材料シートにほぼ一定の反作用支持を与える装置。
【請求項22】
請求項16に記載の装置であって、
前記ほぼ一定の反作用支持は、前記ダイによって与えられる装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置であって、
前記ダイは、変形可能なダイである装置。
【請求項24】
請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の装置であって、
前記微細構造の成形中に材料シート内における平面応力を減らす又は避けるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチのアスペクト比が選択されている装置。
【請求項25】
請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の装置であって、
非中空の頂上部を有するように各微細構造を成形する装置。
【請求項26】
請求項19から請求項23のいずれか一つに記載の装置であって、
頂上部に穴を有するように各微細構造を成形する装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置であって、
微細成形の初期段階で穴やひびが成形されるように材料シートの特定の厚さに対して前記パンチの各突起部の頂上部の曲率が選択されており、
前記穴やひびは、微細成形中に実質的に拡大し、前記微細構造それぞれの頂上部で開口となる装置。
【請求項28】
請求項23に記載の装置であって、
前記変形可能なダイは、変形後少なくとも一部が回復する材料からなる装置。
【請求項29】
請求項28に記載の装置であって、
前記材料は半結晶ポリマー材料からなる装置。
【請求項30】
請求項28又は請求項29に記載の装置であって、
前記変形可能なダイは、高密度ポリエチレン(HOPE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)及びポリエチレテレフタレート(PET)のうちいずれか一つの材料からなる装置。
【請求項31】
請求項19から請求項30のいずれか一つに記載の装置であって、
固体潤滑剤が前記パンチに塗布されている装置。
【請求項32】
請求項31に記載の装置であって、
固体潤滑剤は、Ta−Cコーティングからなる装置。
【請求項33】
請求項19から請求項32のいずれか一つに記載の装置であって、
前記微細構造を強化するために前記微細構造それぞれの内面をコーティングする手段をさらに備える装置。
【請求項34】
請求項33に記載の装置であって、
前記コーティングは、電気めっき工程を含む装置。
【請求項35】
請求項34に記載の装置であって、
前記電気めっき工程は、ニッケルめっきを含む微細成形方法。
【請求項36】
請求項19から請求項35のいずれか一つに記載の装置であって、
材料シートは、鉄鋼、1100アルミニウム及び銅(99%)のうちいずれか一つの金属材料からなる装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−521610(P2008−521610A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542991(P2007−542991)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000374
【国際公開番号】WO2006/057619
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000374
【国際公開番号】WO2006/057619
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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