説明

微量金属測定法

ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル共重合させるに際し、ラジカル重合性単量体を選択することにより、得られるポルフィリン核導入ポリマーの金属に対する反応性を制御する方法。ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル共重合させてなるポルフィリン核導入ポリマーと重金属イオンとの錯形成反応による吸光度変化を測定する微量金属測定方法であって、測定対象の金属に対するポルフィリン核導入ポリマーの反応選択性が高くなるように原料ラジカル重合性単量体を選択する微量金属測定方法。
本発明の微量金属測定方法は、測定試薬であるポルフィリン核導入ポリマーの原料のラジカル重合性単量体を選択することにより、測定試薬の水溶性や金属との錯形成における反応性を変化させることができ、目的とする金属種を高感度かつ簡易に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、特定のポルフィリン核導入ポリマーと金属イオンとの錯形成反応による吸光度変化を測定することにより試料中の微量金属濃度を測定する方法に関し、更に詳細には、多種類の重金属濃度を同時に簡易に測定できる方法に関する。
【背景技術】
重金属は特定管理産業廃棄物に属し環境基準値が定められており、河川水、湖沼水、下水、工場排水等に存在する多種類の重金属の濃度を簡易に測定する必要がある。重金属の測定法としては、原子吸光分析又は誘導結合プラズマ分光分析(ICP)による測定が一般的であるが、高価であり、設備に配管、排気等の設備を必要とするなど、汎用性に欠けるという問題がある。これに対し、吸光度法は、安価であり、比較的簡易な装置で測定できる反面、試料中に含まれる数々の共存物の影響を受けやすく、それらを取り除く前処理が必要である。
ポルフィリン化合物は、吸光度法で使用される比色試薬の一つである。ポルフィリン化合物が有するポルフィリン環は、数種の金属が結合し錯体を形成する。このとき結合する金属種は、pH値などの外的影響のほかに、ポルフィリン化合物分子内の置換基、官能基の影響を受ける。
また、ポルフィリン化合物の比色試薬としての問題点として、概して水への溶解性が悪いという点が挙げられる。このため、従来、ポルフィリン化合物の水溶性その他の性状や金属との反応性を変えるために、反応中心や、周辺への置換基、官能基の導入が行われ、多大な成果が上げられてきた。近年、種々の置換基、官能基を有する水溶性ポルフィリンの合成が報告され(J.Amer.Chem.Soc.,94(1972)4511;J.Amer.Chem.Soc.,93(1971)3162;Inorg.Chem.,9(1970)1757;J.Amer.Chem.Soc.,91(1969)607;J.Heterocycl.Chem.,6(1969)927)、これらのポリフィリンが種々の金属と錯体を形成し、その前後の蛍光の変化によるppbレベルの微量金属の分析への応用も報告されている(Analytica Chimica Acta,74(1975)53−60;日本化学会誌,1978,(5),686−690;日本化学会誌,1979,(5),602−606;BUNSEKIKAGAKU vol.25(1976)781;特開平7−082285号公報;特開昭55−054307号公報)。
しかし、これらの技術では、ポルフィリン化合物に水溶性を付与したり金属との反応性を変えるためにはポルフィリン環へ置換基、官能基等を導入する必要がある。
【発明の開示】
そこで本発明は、入手の容易なポルフィリン化合物自体をそのまま利用して所望の性状や反応性を付与することができる技術を開発し、これを応用した重金属の高感度測定方法を提供することを目的とする。
かかる実情において本発明者らは、ビニル基を有するポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体をラジカル共重合することにより種々の側鎖を有するポリマーの主鎖にポルフィリン核を導入し、この際用いるラジカル重合性単量体を選択すれば、ポルフィリン核の周辺に種々の置換基、官能基を導入したポルフィリン誘導体を用いなくとも、ポルフィリン核周辺の立体構造を変えることができ、得られるポルフィリン核導入ポリマーの水溶性や金属との錯形成における反応性を変化させることができることを見出した。そして更に、当該ポリマーを測定試薬として用いれば、目的とする金属種を高感度かつ簡易に測定できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル共重合させるに際し、ラジカル重合性単量体を選択することにより、得られるポルフィリン核導入ポリマーの金属に対する反応性を制御する方法を提供するものである。
また更に、本発明は、ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル共重合させてなるポルフィリン核導入ポリマーと重金属イオンとの錯形成反応による吸光度変化を測定する微量金属測定方法であって、測定対象の金属に対するポルフィリン核導入ポリマーの反応選択性が高くなるように原料ラジカル重合性単量体を選択する微量金属測定方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図a〜gは、TAPPとメタクリル酸の共重合ポリマーの金属塩添加による吸光度差を示す図である(pH5.5)。
第2図a〜gは、TAPPとメタクリル酸の共重合ポリマーの金属塩添加による吸光度差を示す図である(pH11)。
第3図a〜gは、PPDEとアクリルアミドの共重合ポリマーの金属塩添加による吸光度差を示す図である(pH11)。
第4図a〜gは、PPDEとメタクリル酸の共重合ポリマーの金属塩添加による吸光度差を示す図である(pH11)。
第5図は、(a)pH5.5におけるTAPP−MAcidとCu2+、(b)pH5.5におけるPPDE−AAmとZn2+、(c)pH11におけるPPDE−AAmとPb2+との反応曲線である。
第6図a〜gは、PPDE、アクリルアミド及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドの共重合ゲルを金属塩水溶液に浸した場合のゲルの吸光度差を示す図である(pH11)。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明で使用するビニル基を有するポルフィリン化合物としては、特に限定されないが、例えば以下の式(1)〜(5)に示すものが挙げられる。

〔式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
なかでも、式(1)においてR=HであるプロトポルフィリンIX(以下、「PPfacid」と略称する)、式(1)においてR=メチル基であるプロトポルフィリンIXジメチルエステル(以下、「PPDE」と略称する)、式(2)で表される5,10,15,20−テトラキス[4−(アリロキシ)フェニル]−21H,23H−ポルフィリン(以下、「TAPP」と略称する)が好適なものとして挙げられる。これらのポルフィリン化合物は市販品として入手でき、又は市販品の官能基を変換することにより合成できる。
本発明で使用するラジカル重合性単量体としては、特に限定されないが、例えば次の一般式(6)

〔式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−(CHCOOR、−(CHOCOR、−(CHN(R)(R)、−(CHCON(R)(R)、−(CHA(R及びRは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシメチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはフェニルアルキル基を示し、Aはハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、シアノ基又はハロゲン化カルボニル基を示し、nは0〜6の整数を示す)、又は置換基を有してもよいイミダゾリル基、ピリジル基若しくはフェニル基を示す。〕
で表される化合物が挙げられる。
具体的な化合物としては、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、5−ヘキセン酸、アリルアミン、3−ブテン酸、β−メタリルアルコール、アリルアルコール、N,N−ジメチルアクリルアミド、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、塩化アリル、酢酸ビニル、マレアミド、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレインアミド酸、マレイン酸水素メチル、マレイン酸水素エチル、フマルアミド、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸水素エチル、フマロニトリル、塩化フマリル、クロトンアミド、クロトン酸、クロトンアルデヒド、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトノニトリル、臭化クロトノイル、塩化クロトノイル、クロチルアルコール、臭化クロチル、塩化クロチル、イソクロトン酸、トランス−1,2−ジクロロエチレン、シトラコン酸、シトラコン酸ジメチル、メサコン酸、アンゲリカ酸、アンゲリカ酸メチル、チグリン酸、チグリン酸メチル、チグリン酸エチル、塩化チグロイル、チグリックアルデヒド、N−チグロイルグリシン、シンナムアルデヒド、シンナムアミド、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、シンナモニトリル、塩化シンナモイル、臭化シンナミル、塩化シンナミル、3−メチル−2−ブテナール、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ブテンニトリル、3−メチル−2−ブテン−1−オール、シス−1,2−ジクロロエチレン等が挙げられる。
また、ラジカル重合性単量体として、上記のような重合性炭素原子間二重結合を1つ有する化合物に加え、重合性炭素原子間二重結合を2以上有し架橋剤として働く化合物を併用すれば、3次元的に成長したゲル状など性質の異なる重合体が得られる。このような重合性炭素原子間二重結合を2以上有するラジカル重合性単量体としては、例えば次の一般式(7)

〔式中、R、R及びRは、前記と同じ意味を示し、
Yは単結合、−(CHCOO−、−(CHOCO−、−(CHNR−、−(CHCONR−、−(CHO−又は−(CHCO−(R及びnは前記と同じ意味を示す)を示し、
Xは、−(CH−、−(CHS−S(CH−、[−(CH−]CR、[−(CH−]C、−φ−又は−φ<(R及びnは前記と同じ意味を示し、φはベンゼン環を示す)を示し、
mは2〜4の整数を示す。〕
で表される化合物が挙げられる。このような架橋剤の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。

使用するポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体との量比は、ポルフィリン化合物:ラジカル重合性単量体の重量比で、1:100〜1:10,000、特に1:200〜1:1,000が好ましい。
ポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体とのラジカル共重合により得られるポルフィリン核導入ポリマーの分子量は特に限定されないが、測定試薬としての用途であれば、光散乱法による重量平均分子量で5万〜500万、特に10万〜100万が好ましい。
ポルフィリン化合物とラジカル重合性単量体とのラジカル共重合は、有機溶媒中、重合開始剤を添加して行われる。有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられるが、特に、ポルフィリン化合物としてPPfacid又はPPDEを使用するときはDMSO、ポルフィリン化合物としてTAPPを使用するときはTHFが好適に使用される。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
反応時間は、5〜30時間、特に15〜25時間が、反応温度は30〜80℃、特に55〜65℃が好ましい。反応後は、透析等により、ポリマーを単離及び洗浄すればよい。
このようにして得られたポルフィリン核導入ポリマーは、ラジカル共重合に用いたラジカル重合性単量体の種類に応じて、金属に対する反応性が異なる。したがって、ポルフィリン核導入ポリマーを微量金属測定試薬として使用する場合、測定対象とする金属に選択性の高いポリマーを使用し、重金属イオンとの錯形成反応による吸光度変化を測定すれば、高感度かつ簡易な測定が可能となる。また金属に対する反応選択性の異なる2種以上のポリマーを組み合わせて使用すれば、同時に多種類の金属の測定が可能となる。なお、ラジカル重合性単量体として、前述のようにビニレン基を2以上有する化合物を使用すれば、3次元的に成長し、シート状、フィルム状、チューブ状、ビーズ状、ペースト状等の種々の形状に容易に成形可能なポリマー(ゲル)が得られ、様々な測定条件に適応できる。
検体中の微量金属を測定するには、例えば、緩衝溶液にポルフィリン核導入ポリマーを加えて分光光度計で吸光度を測定した後、微量金属を含む検体を添加し、一定時間経過後に再度吸光度を測定し、これらの吸光度差から、別途標準試料の測定値から重回帰分析により得られた回帰式又は検量線に基づき、金属濃度を導出することができる。
ポルフィリン核導入ポリマーを微量金属測定試薬として使用する場合、測定対象となる金属種としては、Ca2+、Cd2+、Co2+、Cr3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+、Mg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+、Pb2+等の重金属イオンが挙げられる。また測定試料としては、例えば、河川水、湖沼水、下水、工場排水、焼却場の浸出水等、その環境基準値が問題となるものすべてに適用できる。
−実施例−
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 ポルフィリン核導入ポリマーの合成
ポルフィリン化合物としては、PPfacid、PPDE及びTAPPを、ラジカル重合性単量体としては、前に挙げたもののうち以下の13種を使用した(以下、カッコ中の略語を使用する)。

0.6mMのポルフィリン溶液を10ml、ラジカル重合性単量体を適量、500mMのAIBNを0.4ml仕込み、有機溶媒を加えて全量を20mlとした。ラジカル重合性単量体はメスアップ後1Mになるように添加した。用いた溶媒は、PPfacid又はPPDE導入ポリマー合成の場合はDMSOを、TAPP導入ポリマー合成の場合はTHFを用いた。
重合液を超音波洗浄器に張られた冷水に浸して30分間脱気した。その後、窒素ガスによるバブリングを2分間行い、すみやかに封栓し、60℃のインキュベータ内に置いて重合を開始した。21時間後、ポリマーを単離及び洗浄するため重合液を透析膜(分画分子量12000〜14000)に封入し、低温室内(4℃)でミリQ水を用いて透析した。このとき水に不溶なポリマーは沈殿又は白濁したためメタノールに溶解させた。最後に0.2μmのフィルターに通して不溶物を取り除き、種々のポルフィリン核導入ポリマー溶液を得た。
得られた各ポルフィリン核導入ポリマーについて、赤外線分光分析、融点測定、分子量測定(光散乱法により測定した重量平均分子量)を行った結果を表1に示す。

実施例2 金属反応性の測定
(1)測定法
緩衝溶液200μlにポルフィリン導入ポリマー溶液及び希釈液を全量が1mlとなるように加えた。緩衝溶液はpH5.5の100mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)とpH11の100mM 3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルホン酸(CAPS)を使用した。また、希釈液は水溶性ポリマーの場合、ミリQ水を、それ以外のポリマーの場合はメタノールを用い、希釈液とポリマー溶液の割合は吸光度の最大値が1付近になるように設定した。
分光光度計を用い、ミリQ水又はメタノールをブランクとして370〜500nmの吸光度を測定した。更に表2に示す200μMの金属塩水溶液を10μl添加し、80℃で15分経過後、同様に吸光度を測定した。このとき金属添加による体積変化は無視できるものとした。

(2)結果
i)pH5.5又はpH11における金属塩添加による吸光度差を第1〜4図に示す。
第1図a〜gはTAPPとメタクリル酸の共重合ポリマー(TAPP−MAcid)のpH5.5における吸光度差、第2図a〜gはTAPP−MAcidのpH11における吸光度差である。大きな吸光度差が生じた金属は、pH5.5ではCu2+及びZn2+、pH11ではCu2+、Zn2+、Cd2+及びCo2+であった。
第3図a〜gはPPDEとアクリルアミドの共重合ポリマー(PPDE−AAm)のpH11における吸光度差である。Cd2+、Zn2+及びPb2+により大きな吸光度差が生じたほか、Cu2+によってもわずかな吸光度差が観察された。
第4図a〜gはPPDEとメタクリル酸の共重合ポリマー(PPDE−MAcid)のpH11における吸光度差である。Zn2+及びCu2+により大きな吸光度差が生じたほか、PPDE−AAmでは見られないCo2+及びMn2+による吸光度差が観察された。
ii)合成したすべてのポルフィリン核導入ポリマーと金属との錯形成による吸光度変化と波長を表3及び4に示す。なお、比較のため、ポルフィリン化合物自体についても、PPDEはDMSO、TAPPはTHFに溶解して同様な方法でpH調整をして吸光度を測定した結果を表3及び4に併せて示す(表中の空欄は、吸光度差のピークが観察されなかったことを示す)。


以上の結果から、ポルフィリン化合物の種類と共重合したラジカル重合性単量体種類によって、反応する金属種、吸光度差、吸収波長が異なることが示された。またポルフィリン核をポリマーに組み込むことで、ポルフィリン化合物自体では結合しない金属と錯体を形成すること、ポリマーによってはより大きな吸光度差が生じることが示された。
実施例3 ポルフィリン核導入ポリマーを用いた重金属濃度測定
pH5.5におけるTAPP−MAcidとCu2+、pH5.5におけるPPDE−AAmとZn2+、pH11におけるPPDE−AAmとPb2+との反応曲線を第5図に示す。いずれの金属とも直線性のある反応性を示した。これらポリマーを用いて、ある焼却場の灰置き場の浸出水を検体として吸光度を測定し、標準試料を用いた重回帰分析により得られた回帰式に従って金属濃度を算定した。この結果を、原子吸光光度計で測定した値と共に表5に示す。原子吸光光度計で測定した値と同等の値を示した。Cu2+の測定に用いた標準試料から得られた回帰式の重相関係数rは0.98937(r=0.97885)であり、Zn2+の測定に用いた標準試料から得られた回帰式の重相関係数rは0.97727(r=0.95505)であった。

実施例4 ポルフィリン核導入ゲルの合成
ポルフィリン化合物としては、PPfacid及びPPDEを、ラジカル重合性単量体としては、アクリルアミド(AAm)、メタクリル酸(MAcid)、アクリル酸(AAcid)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAAm)の4種を、架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を使用した。
0.6mMのポルフィリン溶液を5ml、ラジカル重合性単量体を適量、200mMのN,N’−メチレンビスアクリルアミドを2ml、500mMのAIBNを0.2ml仕込み、DMSOを加えて全量を10mlとした。ゲルの形状保持を考慮して、ラジカル重合性単量体はメスアップ後1.5Mになるように添加した。
重合液を超音波洗浄器に張られた冷水に浸して30分間脱気した。その後、窒素ガスによるバブリングを2分間行った。重合液をガラス板で挟まれた厚さ1mmのスペースに流し込み、60℃のインキュベータ内に置いて重合開始時刻とした。21時間後、ガラス板を取り外して、厚さ1mmのシート状ゲルを取り出し5mm四方の大きさに切った。このゲルを純水でよく洗浄して、種々のポルフィリン導入ゲルを得た。
実施例5 金属反応性の測定
(1)測定法
20mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含むpH5.5の緩衝溶液5ml、及び20mMの3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルホン酸(CAPS)を含むpH11の緩衝溶液5mlに、表2に示した500μMの金属塩水溶液を50μl添加した。各金属塩水溶液にシート状のポルフィリン導入ゲルを60℃で1時間浸した後、ゲルを取り出し、厚さ方向の吸光度(370〜500nm)を測定した。
(2)結果
i)PPDE、アクリルアミド及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドの共重合ゲルをpH11の金属塩水溶液に浸した場合のゲルの吸光度差を第6図a〜gに示す。大きな吸光度差が生じた金属は、Cu2+、Zn2+、Cd2+及びPb2+であった。
ii)合成したすべてのポルフィリン核導入ゲルと金属との錯形成による吸光度変化と波長を表6に示す。なお、比較のため、PPDE自体についても、DMSOに溶解して同様な方法でpH調整をして吸光度を測定した結果を表6に併せて示す(表中の空欄は、吸光度差のピークが観察されなかったことを示す)。

【産業上の利用可能性】
本発明の微量金属測定方法によれば、測定試薬であるポルフィリン核導入ポリマーの原料のラジカル重合性単量体を選択することにより、測定試薬の水溶性や金属との錯形成における反応性を変化させることができ、目的とする金属種を高感度かつ簡易に測定することができる。




























【図5】









【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル共重合させるに際し、ラジカル重合性単量体を選択することにより、得られるポルフィリン核導入ポリマーの金属に対する反応性を制御する方法。
【請求項2】
ビニル基を有するポルフィリン化合物として、次の式(1)〜(5)

〔式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
のいずれかで表される化合物を使用するものである請求項1記載の制御方法。
【請求項3】
ラジカル重合性単量体として、次の一般式(6)

〔式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−(CHCOOR、−(CHOCOR、−(CHN(R)(R)、−(CHCON(R)(R)、−(CHA(R及びRは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシメチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはフェニルアルキル基を示し、Aはハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、シアノ基又はハロゲン化カルボニル基を示し、nは0〜6の整数を示す)、又は置換基を有してもよいイミダゾリル基、ピリジル基若しくはフェニル基を示す。〕
で表される化合物を使用するものである請求項1記載の制御方法。
【請求項4】
ラジカル重合性単量体として、更に重合性炭素原子間二重結合を2以上有し架橋剤として働く化合物を使用するものである請求項3記載の制御方法。
【請求項5】
ビニル基を有するポルフィリン化合物をラジカル重合性単量体とともにラジカル共重合させてなるポルフィリン核導入ポリマーと重金属イオンとの錯形成反応による吸光度変化を測定する微量金属測定方法であって、測定対象の金属に対するポルフィリン核導入ポリマーの反応選択性が高くなるように原料ラジカル重合性単量体を選択することを特徴とする微量金属測定方法。
【請求項6】
ビニル基を有するポルフィリン化合物として、次の式(1)〜(5)

〔式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
のいずれかで表される化合物を使用するものである請求項5記載の微量金属測定方法。
【請求項7】
ラジカル重合性単量体として、次の一般式(6)

〔式中、R、R、R及びRは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−(CHCOOR、−(CHOCOR、−(CHN(R)(R)、−(CHCON(R)(R)、−(CHA(R及びRは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、カルボキシメチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはフェニルアルキル基を示し、Aはハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、シアノ基又はハロゲン化カルボニル基を示し、nは0〜6の整数を示す)、又は置換基を有してもよいイミダゾリル基、ピリジル基若しくはフェニル基を示す。〕
で表される化合物を使用するものである請求項5記載の微量金属測定方法。
【請求項8】
ラジカル重合性単量体として、更に重合性炭素原子間二重結合を2以上有し架橋剤として働く化合物を使用するものである請求項7記載の微量金属測定方法。
【請求項9】
2種以上のポルフィリン核導入ポリマーを組み合わせて用い、同時に多種類の微量金属を測定する請求項5〜8のいずれかに記載の測定法。

【国際公開番号】WO2004/055072
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560584(P2004−560584)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013224
【国際出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】