説明

心拍出量の低下、心臓停止、循環停止、又は卒中発作を起こした個体を処置するための装置

本発明は、個体から血液の少なくとも一部を取り出すための、個体(P)に適用可能な血液取出手段(BE)と、血液分析結果(BAE)の形で、血液の少なくとも一つの特性を捕捉して提供するための、間接的又は直接的に血液取出手段と連結された分析ユニット(BA)と、個体(P)に適用可能な還流手段(BR)と間接的又は直接的に連結されており、還流手段(BR)を介して個体に物質を放出するために形成された作用ユニット(KE)とを備えた、心臓停止又は循環停止又は卒中発作を起こした個体を処置するための装置に関する。本発明は、作用ユニット(KE)が少なくとも一つの貯蔵ユニット(R)を含んでおり、この貯蔵ユニットが少なくとも二種の物質(S1、S2、…)を備蓄すること、貯蔵ユニット(R)と組み合わされた配量ユニット(D)が設けられており、この配量ユニットが、少なくとも分析ユニット(BA)によって確定された血液分析結果(BAE)を考慮して、少なくとも二種の物質(S1、S2、…)から少なくとも一種の物質を選択するか、又は物質(S1、S2、…)の少なくとも二種から成る混合物を調製すること、並びにこの少なくとも一種の選択された物質又は混合物が、間接的又は直接的に、還流手段(BR)を介して個体内に送り込まれ得ることを特色とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍出量の低下、心臓停止、循環停止、又は卒中発作を起こした個体を処置するための装置に関する。
【0002】
現在の知識水準並びに一般に行われている治療方法では、心臓停止に陥った個体、特に患者は、心臓停止から3〜5分以内に心肺蘇生を適切に実施しなければ、脳並びに心臓機能に障害のない状態で蘇生させることはできない。蘇生の実施がそれより遅れた場合には、重度の脳障害をもたらし、この障害は、虚血組織を極めて不可逆的に損傷させる普通の血液による再潅流に起因している。
【0003】
とりわけ心臓外科においては、組織領域内での虚血及び再潅流を変化させることが主要な任務となっている。つまり、例えば心筋虚血が外科医自身によって誘導され、これは例えば広範囲な虚血の枠内では大動脈クランプにより、若しくは心臓移植の際にも行われ、或いは局所的には冠動脈バイパス術のための「オフポンプ手術」において行われる。しかしそれだけでなく、例えば心原性ショック、急性冠閉塞、又は蘇生直後の状態にあって心筋虚血を起こしている患者にも緊急手術が行われる。これらの理由から、心臓外科医は既に数十年前から虚血現象及び再潅流現象に集中的に取り組んできた。
【0004】
今日の知識水準に基づき、虚血は、自ら長時間持続する虚血でさえ、心筋での構造上の障害を比較的少ししか引き起こさないと推測できる。しかしながらこのような虚血発作後に、心筋に「生理的」条件下で普通の血液が再潅流すると、いまでは「再潅流障害」としてよく研究されている追加的な障害メカニズムが爆発的に開始される。虚血により損傷した心筋に普通の血液が再潅流すると、既に損傷した組織を決定的に破壊し得るプロセスが急激に開始される。
【背景技術】
【0005】
普通の血液が再潅流することで発生する再潅流障害を回避或いは完全に防止するため、初期の再潅流液の組成も、初期の再潅流の条件も、虚血中に生じた障害を治療するか或いは発生するかもしれない再潅流障害を最初から生じさせないように適応させることで、血管再生術後にまずは虚血により損傷した心筋の処置を目指すというコンセプトが示された。
【0006】
管理された再潅流というコンセプトは、一つには初期の再潅流液を、生体固有の血液から離れるように変化させること、並びに初期の再潅流の条件を改変することを基礎とする。
【0007】
これに関しDE 696 31 046 T2からは、既知の技術、いわゆる選択的大動脈弓潅流、略してSAAPを用いた、心臓が停止した患者を処置するための装置が明らかであり、この既知の技術によれば、心臓及び脳の比較的隔離された潅流を実施するため、患者にはたいてい大腿動脈を経由して下行大動脈弓のところに血管閉塞用バルーンカテーテルを配置し、次に拡げ、その後SAAPカテーテルの内腔を経由して、酸素化された代替血液、例えばパーフルオロカーボンエマルジョン又は重合ヘモグロビン溶液が注入される。保護液とも呼ばれる代替血液は、パルス発生手段の補助により、拍動するリズムで体内に投与される。一変形形態では、既知の装置が、患者から血液を取り出す血液取出手段を備えており、血液は、酸素補給のため血液酸素化手段に送られ、酸素化された血液に投与された保護液と一緒に血液還流手段により患者に注入される。これに関し、選択的大動脈弓潅流を実施するには、つまり上述の装置を適用するには、外科手術とそれに関連する臨床インフラが必要なことを補足しておく。
【0008】
米国特許第5,195,942号からも、ヒトを蘇生させるための同等の手順を読み取ることができ、この手順では、冠状動脈内への血流を上昇させるため、上行大動脈の領域内でバルーンカテーテルを膨らませることにより、更なる貫流のための、血液適合性があり酸素豊富な液体が、冠状動脈内に注射される。
【0009】
米国特許第7,387,798 B2号は、心臓が停止した患者を蘇生させるための属概念の方法を説明しており、この方法では、患者の中枢神経系のくも膜下領域から髄液が取り出される。続いて、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、水、ポリペプチド、インスリン、並びにATPなどの多種の成分を含む人工的に組成された脳脊髄液が注入され、その後従来の心肺蘇生が行われる。
【0010】
米国特許第5,416,078号からは、ヒト或いは動物を蘇生させるため、水溶性バイオポリマーを有するデフェロキサミンから成る溶液を、処置すべき患者に投与するという技術的な教示を読み取ることができる。
【0011】
WO 94/21195には、虚血障害に対して臓器を保護するための臓器の準備について、それぞれの臓器にA3アデノシン受容体作動薬を投与することが記載されている。
【0012】
EP 1 021 084 B1からは、臓器での虚血障害を除去又は軽減するための方法を読み取ることができる。この場合、酸欠中に臓器内に蓄えられた酸性生成物を取り除くため、損傷した臓器を緩衝生理溶液で洗浄する。
【0013】
米国特許出願公開第2005/0101907 A1号からは、患者を蘇生させるための自動システムを読み取ることができ、このシステムでは、一種類の液体の供給が、患者に関して取得された生理的量に応じた液体流入量で患者に対して注入される。
【0014】
同等の、外傷患者を処置するための自動注入システムを米国特許第5,938,636号から読み取ることができ、この場合、注入圧力及び注入流量をセンサで捕捉しながら、またコンピュータで監視しながら注入液を患者に対して投与する。
【0015】
DE 10 2008 024 471 A1からは、患者の動脈並びに静脈の血管領域とそれぞれ一本の管を介して連結可能な心臓肺バイパス機構を読み取ることができる。体外ではこれらの管の間に血液流路が設けられており、この血液流路に沿って、双方向に運転可能なポンプ並びに流体貯蔵器が設けられている。これに加え、制御可能でセンサを備えた流体制御弁が、血液流路に沿って配置されている。ポンプ運転が双方向であることにより、心臓肺バイパス機構のオキシジェネレータの機能は肺が担っている。
【0016】
米国特許第5,308,320号は、患者の心臓が停止した場合の携帯可能な蘇生機器を説明しており、この蘇生機器は、血液取出手段と、機器内の血液を移動させるためのポンプと、血液に酸素補給するための手段、並びに酸素を補給した血液を再び血路内に還流させるための手段とを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
虚血障害が発生するリスクなく患者を総体的に蘇生させることを可能にし、且つこれを、心臓停止の発生から蘇生措置の開始までの時間間隔が、これまでの臨床的な時間ウィンドウである3〜5分より明らかに大きい場合でも可能にする装置を提供するという課題がある。この装置は、蘇生をできるだけ全自動で可能にするべきであり、これにより現場での複雑な治療の準備措置は必要ない。またこの装置は、救急医療用の機器の用途としても現場で使用できるようにするために、できるだけ軽量に、ポータブルに、且つ自立的に取り扱えるように形成されるべきである。さらにこの装置は、心臓停止の場合だけでなく、心拍出量の低下又は卒中発作の場合にも、同じ作用原理に基づいて使用できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の基礎となる課題は、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。発明思想をさらに発展させる特徴は、従属請求項の対象であり、且つ特に例示的実施形態に関する更なる説明から読み取ることができる。
【0019】
本発明は、いわゆる改変血液を得るため、個体から取り出した血液に、個別に選択された物質又は個別に調製された物質混合物を添加即ち混入させるという趣旨で、個体の血液の少なくとも一つのセンサに支援された血液分析に基づき、個体から取り出した血液に対し、個別に血液分析結果に応じた影響を及ぼすという思想が基礎になっている。こうして得られた改変血液を再潅流液として個体内に再潅流させるようにすることで、天然の、若しくは人工的に支援された血液循環系を活性化させる際に、又は短期的若しくは長期的に天然の血液循環系から切り離された組織領域の、血液による初期の貫流の際に、さもなければ発生するであろう、虚血に起因する組織障害が、部分的又は完全に回避される。
【0020】
個体から血液の少なくとも一部を取り出すための、個体に適用可能な血液取出手段と、血液分析結果の形で、血液の少なくとも一つの特性を捕捉して提供するための、間接的又は直接的に血液取出手段と連結された分析ユニットと、個体に適用可能な還流手段と間接的又は直接的に連結されており、還流手段を介して個体に物質を放出するために形成された作用ユニットとを備えた、心臓停止又は卒中発作を起こした個体を処置するための装置を基礎とし、本解決策による装置は、作用ユニットが少なくとも一つの貯蔵ユニットを含んでおり、この貯蔵ユニットが少なくとも二種の物質を備蓄することを特色とする。貯蔵ユニットは配量ユニットと組み合わされており、この配量ユニットは、少なくとも分析ユニットによって確定された血液分析結果を考慮して、少なくとも二種の物質から少なくとも一種の物質を選択するか、又は少なくとも二種の物質から成る混合物を調製する。その後、この少なくとも一種の選択された物質又は混合物は、間接的又は直接的に、還流手段を介して個体内に送り込むことができる。
【0021】
個体とは、特にヒト又は動物の患者である。「患者」及び「個体」の概念は、本明細書では同義的に使用されている。心拍出量の低下とは、例えば外傷性の又は疾患に由来する心臓の拍出量の低下を意味しており、例えば心筋梗塞、心原性ショック、又は心不全によって引き起こされ得る。
【0022】
一変形形態では、装置はさらに、個体の血液の少なくとも一つの特性を捕捉するセンサユニットを備えており、このセンサユニットはセンサ信号を発信し、この信号はその後、分析ユニットにより評価され、且つ血液分析結果として提供される。分析ユニットは、原理的には、センサユニットによって確定即ち発信されたセンサ信号をセンサユニットから分析ユニットに伝送可能であるような、センサユニットとの協働に適している。この装置は、原理的には既に既知のセンサによって実現することができる。
【0023】
センサユニットは多数のセンサを含むことができ、そのセンサの各々が、血液の少なくとも一つのパラメータ即ち特性を捕捉する。
【0024】
一変形形態では、センサユニットが、非侵襲性で、間接的又は直接的に個体に取り付け可能な構造ユニットの形で形成されている。
【0025】
血液を取り出すために必要な取出手段は、作用ユニットにより血液に影響を及ぼす前に、個体から血液の少なくとも一部を取り出すために設けられており、且つ構成されている。このため取出手段は、例えば侵襲的に個体に適用できるように形成されている。その際、個体の血管内にある血液の少なくとも2リットル、特に少なくとも3リットル、特に少なくとも4リットル、特に全てを取り出すことができる。
【0026】
同様に設けられた還流手段により、取り出され且つ処置され若しくは影響を及ぼされた血液、つまり改変血液を、再び個体の体内に還流させることができる。還流手段も侵襲的に個体に適用できるように形成されている。
【0027】
一つには、例えば注射若しくは注入といったやり方で患者の体内にある血液に添加する形で、少なくとも一種の物質を添加すること、又は患者の体内にある血液を取出手段を用いて患者から取り出し、体外で少なくとも一種の物質を補給し、即ち処置し、その後すぐに、改変血液の形で再び患者の体内に再潅流させることが考えられる。同様に、その後の蘇生のプロセスを組織障害なく開始できるように、血液を実質的に完全に患者から取り出し、その血液の代わりに、改変血液か又は少なくとも一種の物質を含む個別に患者に合わせた溶液を、患者にすぐに供給することも考えられる。
【0028】
一形態では、センサユニットが間接的又は直接的に取出手段と連結している。
【0029】
患者自身の血液を個別に患者の状況に合わせて改変即ち操作するため、一変形形態での作用ユニットは、評価ユニット及び管理ユニットにより、その時々の患者の状態を表す分析結果に基づいて相応に制御即ち調節される。
【0030】
有利には、分析ユニット、作用ユニット、並びに評価ユニット及び管理ユニットが、ポータブルで統一的な構造ユニットとして実施されており、この場合、センサユニットはこの統一的な構造ユニットの一部であることが好ましい。
【0031】
センサユニットは、患者から取り出した血液の少なくとも一つの特性を表すセンサ信号を発信し、この信号は、有線又は無線で分析ユニットに伝えることができ、その際、評価ユニット及び管理ユニットは、分析結果に基づいて制御信号又は調節信号を発信する。この信号は、例えば添加すべき物質又は物質混合物の種類及び/又は量をそれぞれ選択又は配量するために用いることができる。これに関しセンサユニットは、以下の血液パラメータ、即ちpH値、酸素分圧(pO2)、二酸化炭素分圧(pCO2)、カリウム含有量(K)、ナトリウム含有量(Na)、カルシウム含有量(Ca)、塩基過剰(BE)、乳酸値(La)、及びグルコース含有量(Gu)の少なくとも一つを捕捉する。
【0032】
この装置は好ましくは、ポータブルで、簡単に取り扱うことができ、特に完全に自立して機能するユニットとして形成されており、したがってこの装置は、必ずしも医療の専門家にしか取り扱えないものとは限らない。一つの実施形態は、患者側で血管系とつなぐことができる二本の導管が出ているだけの、ポータブルに用いることができる構造ユニットから成る。片方の導管は、患者から血液を取り出すために用いられ、この導管を介して自動的に患者の血液が構造ユニット内に流れ込み、構造ユニット内では、血液の分析並びに血液の相応の改変が行われる。相応に改変された血液は、もう片方の導管を介して再び患者の体内に再潅流される。ただしこの装置はその代わりに、改変血液を患者の体内に還流させる前に、患者自身の血液の分析結果に応じて個別に組成された潅流溶液を患者に投与することも可能にする。つまり、処置を成功させるため、第1のステップでは血液をほぼ完全に、個別に組成された潅流溶液に置換することが考えられる。その後、処置がさらに進行して初めて、場合によっては更なる蘇生措置が順調に実施された後で、上述の改変血液を患者に投与する。
【0033】
一変形形態では、作用ユニットが、少なくとも一種の物質を、配量し、温度調節し、且つ/又は加圧して、個体内又は血液中に放出するために設けられており、且つ構成されている。
【0034】
好ましくは、さらにモニタユニット即ち監視ユニットが設けられており、このユニットは、個体の少なくとも一つのパラメータを捕捉するための少なくとも一つの測定手段を備えており、このパラメータは、平均動脈圧、中心静脈圧、肺動脈圧、酸素飽和度、及び血液温度を含む個体の生理的パラメータの群から選択され、その際、モニタユニットは、評価ユニット及び管理ユニットと、それぞれ少なくとも一つの一方的な情報交換のために接続されている。
【0035】
原則的には、患者から体液として血液が取り出される。ただし、体液として血液を指定している装置の形態は、別の体液にも類似のやり方で転用することができる。
【0036】
患者に適用可能な血液取出手段は、好ましくは、最も簡単な場合には滅菌した中空管の形である血液流路を介して、患者に適用可能な血液還流手段と連結されており、特に、この血液流路に沿って作用ユニットの貯蔵ユニットが設けられており、貯蔵ユニットは少なくとも二種の物質を備蓄しており、これらの物質から少なくとも一種の選択すべき物質又は物質混合物を、血液流路又は還流手段内に添加することができる。
【0037】
これに加え、還流手段と間接的又は直接的に連結している熱交換ユニットを血液流路に沿って設けることができる。さらに、個体の体から血液が、及び個体の体内に改変血液が簡単に輸送されることを保証するため、血液流路に沿って組み込まれた少なくとも一つの搬送手段が、血液流路に沿った血液流量を調整可能にするために用いられる。好ましくは、体内に血液を還流させるために、拍動性、流圧、及び流速に関する個別に、且つとりわけ独立している搬送特性を調整できる少なくとも一つの更なる別の搬送手段が設けられている。
【0038】
存在する全ての搬送手段並びに熱交換手段を制御するため、評価ユニット及び管理ユニットが更なる制御信号を発信し、つまり最終的に、患者の体内に供給される少なくとも一種の物質又は改変血液の流圧、流速、及び/又は温度を、予め設定可能に調整することができる。
【0039】
センサユニットを備えた分析ユニットも血液流路に沿って配置されており、したがって血液を、個別の血液パラメータに関して、特に多数の血液パラメータに関して分析することができ、血液分析結果をその後の判定のために提供することができる。分析は、好ましくはオンラインで、つまりその場で、血液取出手段により患者から血液を取り出しながら行われる。
【0040】
貯蔵ユニットと連結された配量ユニットは、少なくとも分析ユニットによって確定された血液分析結果を考慮し、予め決定可能な量で少なくとも一種の物質を貯蔵ユニットから血液流路又は還流手段内に送り込む。つまり、配量ユニットの補助により、処置すべき患者のその時々の状態に応じて個別に組成された再潅流液が生成され、その後、この再潅流液が、適用された血液還流手段を介して患者に再潅流される。
【0041】
特に患者の体内に改変血液を再潅流させる際、それにまた潅流液をただ投与する際には、患者自身の血液又は潅流溶液中への少なくとも一種の物質、特に多種の物質の混合も、再潅流圧力、流速、再潅流時間、並びに再潅流液の温度の選択に関して再潅流自体も、その時々にセンサにより捕捉された患者の血液像を考慮し且つそれに対応させて行われる。このために、例えば既に説明したモニタユニットを用いることができる。つまり生理的再潅流条件の選択及び調整を、モニタユニットによって捕捉された生理的パラメータを考慮して行うこともできる。
【0042】
分析ユニットの側で確定された血液分析結果を判定するため、並びに患者自身の血液若しくは潅流溶液に添加すべき物質の種類及びそれぞれの量を決定するためには、既に述べた評価ユニット及び管理ユニットが用いられ、この評価ユニット及び管理ユニットは、例えば分析ユニットとも配量ユニットとも、それぞれ少なくとも一つの一方的な情報交換のために接続されている。評価ユニット及び管理ユニット内では、血液分析結果が、特定の予め設定された判定基準の下で査定され、この判定基準では、モニタユニットによって捕捉された生理的な患者パラメータも考慮され得る。
【0043】
個々の装置コンポーネントの間の少なくとも一方的な情報交換のためには、従来のデータ伝送線の形でのデータ伝送接続か、又は無線伝送技術が用いられる。
【0044】
血液分析結果の査定結果として、評価ユニット及び管理ユニットが制御信号を発信し、この制御信号は、血液流路内に送り込むべき物質の種類及び量を選択するために配量ユニットに伝送される。これに関し「配量ユニット」の概念は、それぞれの物質の選択並びにそれぞれ供給すべき物質の量を定めた規定の混合プランの設定を基に、貯蔵ユニット内のそれぞれ隔てられた貯蔵チャンバ内に備蓄されている多種の物質から、最終的には患者自身の血液と混合させる混合物を生成することを可能にする技術的手段と理解することができる。それぞれ選択された物質を、患者自身の血液に添加する前に予め混合することは必ずしも必要ではなく、それぞれ個々に選択された物質を、血液流路内に別々に、配量して供給することも考えられる。
【0045】
好ましくは、配量ユニットが少なくとも一つの混合容器を備えており、この混合容器が個々に制御可能な配量手段を備えており、この配量手段が個々の貯蔵チャンバと連結されている。混合容器内では、個体の体液に添加すべき物質混合物の製造が行われ、この物質混合物は、溶液、懸濁液、又はエマルジョンの形で存在することができる。つまり貯蔵チャンバ内にそれぞれ備蓄されている物質は、必ずしも液状である必要はなく、むしろ個々の物質は固体の形で、即ち粉末の形で、及び気相においても存在することができる。個々の貯蔵チャンバ内での備蓄については、例えば以下の物質又は物質クラス、即ちアルカリ性又は酸性の緩衝液、体液のナトリウム含有量、カリウム含有量、及び/又はカルシウム含有量に影響を及ぼす物質、血液希釈物質、フリーラジカルスカベンジャー、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、心臓リズムを安定化する物質、例えばリドカイン、白血球数に影響を及ぼす薬剤、塩、グルコース、及び/又はタンパク質の形の浸透活性物質のような物質が提案され、この物質又は物質クラスから、個体の体液に混合すべき物質混合物を製造するための個別の選択をすることができる。
【0046】
一変形形態では、特に血液流路に沿って、血液取出手段と還流手段の間に、血液を濾過するためのフィルタユニットが設けられている。このフィルタユニットは、例えば白血球フィルタを備えることができる。
【0047】
一変形形態では、血液流路に沿って、血液取出手段と還流手段の間にバイパス管が設けられており、このバイパス管は還流手段の直前に配置されている。このバイパス管により、個体内に還流させるべき血液、及び改変血液の一部を分析ユニット内に送ることができる。少なくとも一つの捕捉可能な血液パラメータに関して目標値と実際値を比較し、予め設定可能な許容限界を超える相違がある場合には、その後、配量ユニットが、少なくとも一種の物質の血液流路内への添加量を変更することができる。
【0048】
一変形形態では、装置の個々のコンポーネントは、この装置がポータブルであるようにコンパクト且つ軽量に形成されている。
【0049】
一変形形態では、還流させる改変血液の酸素含有量を、その時々の要求に対応して適合させ得るように、血液流路に沿って、血液取出手段と還流手段の間に、血液に対する酸素補給ユニット及び低減化ユニットが配置されている。
【0050】
本解決策による装置の一実施形態は、ポータブルの基本モジュールを備えており、この基本モジュールを以下では、(「管理され、統合制御された蘇生装置」という概念の英訳“Controlled Integrated Resuscitation Device”の頭文字として)CIRDと言う。CIRD基本モジュールは体外の血液流路を備えており、この血液流路は適切な血液取出手段及び(血液)還流手段を介して患者自身の血液循環に、特に大腿動脈並びに大腿静脈の領域内で適用可能である。CIRD基本モジュールは、体外の血液流路に沿って、血液流量を維持するための搬送手段と、血液に酸素補給するためのオキシジェネレータと、CO2を低減させるためのユニットと、最後に白血球フィルタとを備えており、モジュールを増設することで、上で説明した血液分析ユニット並びに上述の貯蔵ユニット及び配量ユニットを付加することができる。
【0051】
自動運転及び管理のために、同様に上で述べた評価ユニット及び管理ユニットがたいていは計算ユニットの形成において設けられているこのような装置の補助により、特に心臓停止を起こした患者から導出された血液を、迅速且つ自動的に分析して、患者自身の血液に混合すべき追加的な物質の精密な組成を突きとめることが可能である。つまり、血液分析の結果から、並びに場合によってはセンサにより捕捉された生理的な患者パラメータを考慮して、最終的に個別に患者に合わせた再潅流液を自動的に製造し、拍動性、流圧、流速、及び/又は温度の条件を最適化して患者に供給する。これにより、再潅流圧力、再潅流流量、再潅流温度、並びに再潅流時間に関し、初期の再潅流に理想的な条件が提供される。
【0052】
本解決策による装置が、患者自身の血液の連続監視を可能にするので、その場で、即ちオンラインで、つまり連続的に、再潅流の条件並びに再潅流液の組成を、再潅流中の患者のその時々の状態に適合させることができる。特に、例えばカリウムイオン、乳酸塩、グルコースの濃度、若しくはpH値などのような特定の血液の値をその場で、即ちオンラインで測定することにより、並びに血液流路内の流動抵抗、温度、流量、並びに流圧などを捕捉する適切なモニタセンサの補助を用いた血行動態パラメータの測定を組み合わせることにより、管理された全身再潅流の枠内で、自動的な適合を行うことができる。
【0053】
本解決策による装置は、ブタの実験の枠内では、体外循環による管理された全身再潅流を大成功させた。つまり、動物を管理下で起こした心臓停止から15分後に、通常温度の条件下で、順調に、認識可能な又は測定可能な臓器障害又は神経障害なく蘇生させることができた。この実験は、心臓停止が発生してから15分後にも、完全な機能的な神経の回復を得ることが可能であるという、今日において一般的な従来の処置法及び限界のパラダイムに対して鮮明なコントラストを示す事実を初めて証明した。特に、本解決策による装置の軽量でポータブルな形成により、救急医療に対し、今日の見解では蘇生及び/又は完全な回復のチャンスがない非常に多くの患者を将来的には救命できるのみならず神経障害なく回復させることも可能になるという完全に新たな展望が開かれる。
【0054】
心拍出量の低下、心臓停止、又は卒中発作を起こした個体を処置するための方法も本発明の対象であり、本方法では、個体から血液を取り出し、この血液を血液分析にかけ、その際、少なくとも分析ユニットによって確定された血液分析結果及び少なくとも一つの判定基準を考慮して、備蓄されている少なくとも二種の物質から少なくとも一種の物質又は物質混合物の種類及び量を決定し、この物質又は物質混合物を、配量した形で、改変血液を得るため、取り出された血液に添加し、この改変血液を体内に再潅流させるか、又はこの物質又は物質混合物を潅流溶液の形で、取り出された血液の代わりに個体内に再潅流させる。
【0055】
本方法の一変形形態では、個体から血液を、特性を捕捉する前に取り出し、少なくとも一種の選択された物質が血液中に放出された後で還流させる。
【0056】
本方法の一変形形態では、捕捉、判定、及び影響を及ぼすことが、閉じた調節用循環路内で行われる。
【0057】
本方法の一変形形態では、分析結果を目標値と比較し、目標値からの、量的に予め設定可能な相違がある場合は、分析結果の根底にある血液特性に影響を及ぼす物質を選択し、且つ量的な相違に応じた量で個体内又は血液中に放出する。
【0058】
本方法の一変形形態では、改変血液の再潅流を行う前に、個体から、個体の血管内にある血液の少なくとも2リットル、特に3リットル、特に4リットル、特に実質的に全てを取り出す。
【0059】
本方法の一変形形態では、10秒〜3分、特に20秒〜2分、特に30秒〜1分の時間で患者から血液が取り出される。
【0060】
本方法の一変形形態では、改変血液から、一部が再度の血液分析のために分岐され、少なくとも一つの捕捉された血液特性としての血液パラメータにおいて目標値から逸脱していることが確認されると、少なくとも一種の添加される物質の種類及び/又は量の修正が行われる。
【0061】
本方法の一変形形態では、血液取出工程、血液分析工程、血液又は潅流溶液に少なくとも一種の物質を添加する工程、並びに改変血液又は潅流溶液を再潅流させる工程が、その場で行われる。
【0062】
本方法の一変形形態では、血液特性の分析に加え、個体の少なくとも一つの生理的パラメータが捕捉され、この場合、少なくとも一種の放出すべき物質の種類及び量、並びに/又は個体内に再潅流させる改変血液の圧力、流速、及び/若しくは温度は、血液特性の分析結果及び個体の生理的パラメータを考慮して選択される。
【0063】
本方法の一変形形態では、個体内への改変血液又は潅流溶液の再潅流が、少なくとも二つの異なる身体領域で、それぞれ異なる再潅流パラメータ、即ち圧力、流速、温度、及び/又は再潅流時間で実施される。
【0064】
本方法の一変形形態では、血液取出が、少なくとも1リットル/分、特に6〜8リットル/分の管理された流速で行われる。
【0065】
前述の全ての方法の変形形態は、任意のやり方及び順序で相互に組み合わせることができる。
【0066】
以下に本発明を、包括的な発明思想を制限することなく、例示的実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】一つの例示的実施形態の個々のコンポーネントの図解ブロック図である。
【図2】分析ユニットの概略図である。
【図3】貯蔵ユニット及び配量ユニットの概略図である。
【図4】一つの例示的実施形態の一般化されたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1には、本解決策による装置の一実施形態の全てのコンポーネントを図解するためのブロック図を示している。心臓停止に陥った個体としてのヒトの患者Pを例に、装置の使用を詳しく説明する。患者Pの大腿静脈の領域内で、血液を取り出すために血液取出手段BEが適用されており、血液取出手段から体外に血液流路BLが延びており、この血液流路は様々な技術的コンポーネントを通過しており、血液流路からは様々な部位で相応の分岐管が出ており、血液流路の様々な部位で血液流路内に相応の引込管が合流している。これについては以下で詳しく論じる。血液流路BLは最終的に再び患者の体内に、特に大腿動脈の領域内に流れ込み、大腿動脈の表面又は中には、還流手段としての血液還流手段BRが適用されている。
【0069】
患者Pから血液を管理して取り出すために、並びに説明する装置が改変血液又は再潅流液を患者の血液循環内に(再び)還流させる再潅流条件を調整するために、血液流路BLに沿って搬送手段Fが設けられており、この搬送手段は、特に遠心ポンプの形で形成されており、軽量且つポータブルに形成されたCIRDの構成要素とみなすことができる。搬送手段Fは、以下でより正確に説明する評価ユニット及び管理ユニットA/Kにより、搬送能力、搬送特性、及び搬送時間、つまり圧力、流量、時間、並びに拍動性を可変に調整することができる。さらに、ポータブルCIRDはオキシジェネレータOを含んでおり、このオキシジェネレータにより、患者から取り出した血液に酸素が補給される。特定の場合には、オキシジェネレータの補助により、患者自身の血液から酸素を奪うことも同様に可能である。さらに、通常は患者自身の血液中のCO2含有量を減らす形で血液のCO2含有量に影響を及ぼすガスブレンダGが設けられている。それだけでなくオキシジェネレータOは、血液流路BL内を案内される血流を個別に温度調節するために熱交換ユニットWTと連結されており、この熱交換ユニットの熱交換特性には、既に述べた評価ユニット及び管理ユニットA/Kによる管理の下、影響を及ぼすことができる。最後に、ポータブルユニットCIRDは、患者自身の血液の白血球含有量に影響を及ぼすことができる白血球フィルタを含んでいる。
【0070】
患者Pから直接的に導き出された血液流路BL内には、患者自身の血液の一部を分析ユニットBA内へと分岐させる第1のバイパス管A1が設けられており、分析ユニット内では患者自身の血液が、センサにより様々な血液パラメータに関して検査される。
【0071】
一つの拡張された実施形態では、図1で説明した装置に、患者自身の血液の改変即ち操作を以下のやり方で行うことができる更なる機能ユニットを付加することが考えられる。
【0072】
つまり、患者に対し体外で加圧することにより患者自身の血液に機械的影響を及ぼすための手段が、患者に対する加圧が時間的及び空間的に均一に、又は時間的に可変で空間的に選択的に、予め設定可能に行われるように設けられる。その代わりに、患者自身の血液に機械的影響を及ぼすためのこのような手段は侵襲的に適用可能であってもよく、患者自身の血液を体内で加圧するために形成されてもよい。
【0073】
さらに、患者に対し体外で温度調節するための、患者自身の血液に熱的影響を及ぼすための手段を、患者に対する温度調節が時間的及び空間的に均一に、又は時間的に可変で空間的に選択的に、予め設定可能に行われるように設けることができ、且つ形成することができる。その代わりに、患者自身の血液に熱的影響を及ぼすためのこの手段を、患者自身の血液を体内で温度調節するために侵襲的に適用可能に形成することができ、これにより温度調節は、患者の体内で時間的及び空間的に均一に、又は時間的に可変で空間的に選択的に、予め設定可能に行われる。
【0074】
好ましくは、患者Pの体内に血液を還流させるために、拍動性、流圧、及び流速に関して個別の、且つとりわけ独立した搬送特性を調整し得る少なくとも一つの更なる別の搬送手段(図示されていない)を、血液流路に沿って白血球フィルタLFの前又は後ろに設けることができる。
【0075】
図2には、より詳しい説明のため、本実施形態に関する分析ユニットBAを概略的に示している。引込管A1を介し、患者自身の血液の一部が、血液を分析する分析ユニットBA内に達すると想定する。分析ユニットBA内では、n個の異なる血液パラメータに関して血液を測定する多数の個々のセンサSE1〜SEnが、特にセンサユニットの形で設けられている。分析ユニット内或いはセンサユニット内には、有利にはそれ自体既知のセンサがまとめられており、これらセンサのそれぞれ個々のセンサが、以下にその一部を列挙する血液パラメータの少なくとも一つを捕捉することができる。この血液パラメータとは即ち、pH値、酸素分圧(pO2)、二酸化炭素分圧(pCO2)、カリウム含有量(K)、ナトリウム含有量(NA)、カルシウム含有量(Ca)、BEと称される塩基異常(塩基過剰又は塩基欠乏とも言い、これに基づいて代謝性の酸塩基平衡障害が認知可能である)、乳酸値(La)、グルコース含有量(Gu)などである。
【0076】
それぞれ個々のセンサSE1…nが、患者自身の血液を特徴づける血液パラメータSEE1…nを確定し、これらの血液パラメータをまとめて、患者自身の血液のその時々の性質を反映するいわゆる血液分析結果BAEが出される。血液分析結果BAEは、特に、相応のデータ伝送線を介して評価ユニット及び管理ユニットA/Kに伝えられ、評価ユニット及び管理ユニットA/Kでは、血液分析結果BAEに、医療的な判定基準に基づく個別の評価及び判定がくだされる。
【0077】
この装置の最終的な目的は、患者自身の血液を、特定の物質を添加することで改変された状態に変えることであり、改変された状態とは、蘇生のための患者の体内への初期の再潅流の際に、個別に改変された血液又は再潅流液が如何なる組織障害も引き起こさないことと特色づけることができる。そのうえ、特定の組織領域で既に発生したかもしれない虚血障害を消退或いは治癒させることが重要である。
【0078】
患者自身の血液を改変するという枠内で作製された評価ユニット及び管理ユニットA/Kでは、その時々にセンサにより捕捉された患者自身の血液の個々の血液パラメータSEE1…nを、それぞれ、血液パラメータ固有の参照値或いは目標値に対応させる。このような評価に基づき、それぞれ患者自身の血液に添加すべき物質の種類及び量が確定される。評価ユニット/管理ユニットは、貯蔵ユニットR並びにそれと組み合わされた配量ユニットDと内部で通信している。この貯蔵ユニットと配量ユニットの両方を、概略的な表示形式で図3に示している。貯蔵ユニットRは、図3によれば四種の異なる物質S1、S2、S3、及びS4を備蓄している四つの個々の貯蔵チャンバを含んでいる。もちろん、このような貯蔵チャンバをより多く設けることもでき、つまり、包括的にはn種の異なる物質を備蓄するための貯蔵チャンバを設けることができる。個々の貯蔵チャンバは、個々に連結管を介して混合容器MBと連結されており、この連結管に沿って配量手段が遮断弁V1、V2、V3、及びV4の形で取り付けられている。その時々の血液分析結果BAEと、評価ユニット/管理ユニットの枠内で確定された患者自身の血液に混合すべき物質の添加要件とに基づき、評価ユニット/管理ユニットの側から、配量手段V1〜V4を作動させる制御信号Si1、Si2、Si3、Si4が発信される。最後に、混合容器MB内に準備された、個々の物質から成る混合物が、血液導管BL内に送り込まれる。
【0079】
一変形形態では、モニタユニットM(図1を参照)が設けられており、モニタユニットは、患者Pに適切に取り付けられたセンサにより、生理的な患者データ、例えば平均動脈圧、中心静脈圧、肺動脈圧、血中酸素飽和度、並びに体温などを捕捉する。生理的な患者パラメータも、更なる考慮のためにモニタユニットMの側から評価ユニット及び管理ユニットA/Kに伝送され、評価ユニット及び管理ユニットは、この生理的な患者パラメータを考慮して、配量ユニットDのために決定された制御信号Si1…nを発信する。
【0080】
正しく組成又は改変された再潅流液が患者に供給されることを保証するため、再潅流液が血液流路BLを介して患者Pに再び供給される前に、分析ユニットBAの補助により、改変血液又は再潅流液の分析が行われる。このために、血液還流手段BRのすぐ上流に、改変血液の一部又は再潅流液の一部を分析ユニットBA内に導く第2のバイパス管A2が設けられている。分析ユニットBAの枠内でセンサによる個々の血液パラメータSEE1…nの捕捉が再度行われ、この血液パラメータは、評価ユニット/管理ユニットA/Kの枠内で目標値/実際値分析にかけられる。相違があれば、配量ユニットV1〜V4に影響を及ぼすために発信される制御信号Si1、Si2、Si3、Si4の修正が行われる。
【0081】
そのうえ評価ユニット及び管理ユニットは、最終的には改変血液を患者の血液循環内に組織を傷めずに再潅流させることを目的として、血液分析結果BAEと、モニタユニットMの側で捕捉された生理的な患者パラメータとに基づき、血液流路BL内の流動特性を決定する搬送手段Fを制御するための制御信号も、患者の体内に注入する再潅流液の温度レベルを決定する熱交換器WTを制御するための制御信号も発信する。これに関しては、特に、再潅流液の流圧、流量、拍動性、流動時間、及び温度が、個別に患者に適合させて定められる。
【0082】
図4は、概略的なブロック図において装置の更なる一実施形態を図解している。センサユニットSEHの補助により、体液、特に血液の情報が患者Pから読み取られる。センサユニットSEHから発信されたセンサ信号は分析ユニットAに達し、分析ユニットは、体液即ち血液のその時々の状態を表す分析結果を発信する。分析結果は、評価ユニット及び管理ユニットA/Kにより、例えば少なくとも一つの判定基準に基づいて判断される。その後、評価ユニット及び管理ユニットが、体液に影響を及ぼす特に以下のサブユニットの少なくとも一つから構成され得る作用ユニットKEを管理下でアクティブ化するための制御信号即ち調節信号を発信する。このサブユニットとは即ち、体液に少なくとも一種の物質を放出するための手段MS、体液に機械的影響を及ぼすための手段MM、及び体液に熱的影響を及ぼすための手段である。これら個々の手段を、共通の手段において組み合わせることもできる。評価ユニット及び管理ユニットA/Kの側でアクティブ化し得る手段に応じて、患者Pの体液に、虚血による組織障害を回避するための治療的な操作即ち改変を施す。
【0083】
本解決策による装置は、できるだけ簡単で全自動の取扱いを保証するため、特にコンパクトに、できるだけ一つのハウジング内で形成されている。血液取出工程、血液分析工程、改変血液を得るために患者自身の血液に少なくとも一種の物質を添加する工程、並びに改変血液を再潅流させる工程は、蘇生すべき患者についての更なる知識を必要とせず、自動的に、その場で行われる。順調に再潅流させるための全ての情報は、装置が、自動的な血液スクリーニングと、患者からセンサにより入手可能な生理的データとから生じる上述のセンサデータから取得する。
【0084】
本解決策による装置の補助により、個々の臓器及びそれどころか全身が不可逆的な障害に至るまでの虚血時間を、現在の狭い時間制限より明らかに延長させ得る管理された全身潅流を実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
BE 血液取出手段
BR 血液還流手段
BL 血液流路
BA 分析ユニット
R 貯蔵ユニット
D 配量ユニット
A1 誘導管
A2 バイパス管
CIRD 管理され、統合制御された蘇生装置の基本モジュール
F 搬送手段
O オキシジェネレータ
G ガスブレンダ
LF 白血球フィルタ
A/K 評価ユニット/管理ユニット
WT 熱交換器
M モニタユニット
S1、S2… 物質
Si1… 制御信号
V1、V2… 配量手段、弁
MB 混合容器
SE1、SE2… センサ
SEE1、SEE2… センサ結果
BAE 血液分析結果
A 分析ユニット
SEH センサユニット
KE 作用ユニット
MS 体液に少なくとも一種の物質を放出するための手段
MM 体液に機械的影響を及ぼすための手段
MT 体液に熱的影響を及ぼすための手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体から血液の少なくとも一部を取り出すための、個体(P)に適用可能な血液取出手段(BE)と、血液分析結果(BAE)の形で、血液の少なくとも一つの特性を捕捉して提供するための、間接的又は直接的に血液取出手段と連結された分析ユニット(BA)と、個体(P)に適用可能な還流手段(BR)と間接的又は直接的に連結されており、還流手段(BR)を介して個体に物質を放出するために形成された作用ユニット(KE)とを備えた、心臓停止又は循環停止又は卒中発作を起こした個体を処置するための装置において、
作用ユニット(KE)が少なくとも一つの貯蔵ユニット(R)を含んでおり、前記貯蔵ユニットが少なくとも二種の物質(S1、S2、…)を備蓄すること、
貯蔵ユニット(R)と組み合わされた配量ユニット(D)が設けられており、前記配量ユニットが、少なくとも分析ユニット(BA)によって確定された血液分析結果(BAE)を考慮して、少なくとも二種の物質(S1、S2、…)から少なくとも一種の物質を選択するか、又は物質(S1、S2、…)の少なくとも二種から成る混合物を調製すること、並びに
前記少なくとも一種の選択された物質又は前記混合物が、間接的又は直接的に、還流手段(BR)を介して個体内に送り込まれ得ることを特徴とする装置。
【請求項2】
個体(P)に適用可能な血液取出手段(BE)が、血液流路(BL)を介して、個体(P)に適用可能な還流手段(BR)と連結されていること、
血液流路(BL)に沿って、分析ユニット(BA)並びに貯蔵ユニット(R)及び配量ユニット(D)が設けられていること、及び
少なくとも一種の選択された物質又は混合物が、改変血液を得るため、個体から取り出した血液と、還流手段(BR)を介して個体に放出される前に混合可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
血液流路(BL)に沿って、少なくとも一つの搬送手段(F)が流量を調整するために設けられていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
分析ユニット(BA)が多数のセンサ(SE1、…SEn)を含んでおり、前記センサの各々が、少なくとも一つの血液パラメータを捕捉することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
分析ユニット(BA)が、以下の血液パラメータ、即ちpH値、酸素分圧(pO2)、二酸化炭素分圧(pCO2)、カリウム含有量(K)、ナトリウム含有量(Na)、カルシウム含有量(Ca)、塩基過剰(BE)、乳酸値(La)、グルコース含有量(Gu)の少なくとも一つをセンサにより捕捉することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
貯蔵ユニット(R)が多種の物質(S1、S2、…)を備蓄しており、前記物質が、固体、液体、又は気体の形で存在し、且つ隔てられた貯蔵チャンバ内に備蓄されており、前記物質が、別々に、又は組み合わされて、配量ユニット(D)により配量されて添加され得ることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
配量ユニット(D)が、少なくとも一つの混合容器(MB)を備えており、前記混合容器が、個々に制御可能な配量手段(V1、V2、…)を介し、個々の貯蔵チャンバと連結されていること、及び
前記少なくとも一つの混合容器(MB)が、更なる制御可能な配量手段を介し、間接的又は直接的に還流手段(BR)と連結されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも一種の備蓄された物質(S1、S2、…)が、以下の物質又は物質クラス、即ちアルカリ性又は酸性の緩衝液、ナトリウム含有量、カリウム含有量、及び/又はカルシウム含有量に影響を及ぼす物質、血液希釈物質、フリーラジカルスカベンジャー、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、心臓リズムを安定化する物質(リドカイン)、白血球数、浸透活性物質、つまり塩、グルコース、タンパク質から選択されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
評価ユニット及び管理ユニット(A/K)が設けられており、前記評価ユニット及び管理ユニットが、少なくとも分析ユニット(BA)並びに配量ユニット(D)と有線又は無線で情報交換しており、少なくとも血液分析結果(BAE)に基づいて、配量ユニット(D)を制御するための制御信号(Si1、Si2、…)を発信することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
モニタユニット(M)が設けられており、前記モニタユニットが、個体の少なくとも一つのパラメータを捕捉するための少なくとも一つの測定手段を備えており、前記パラメータが、平均動脈圧、中心静脈圧、肺動脈圧、酸素飽和度、及び血液温度を含む個体の生理的パラメータの群から選択されており、その際、モニタユニット(M)が、評価ユニット及び管理ユニット(A/K)と、それぞれ少なくとも一つの一方的な情報交換のために接続されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
分析ユニット(BA)が、個体(P)の血液の少なくとも一つの特性を捕捉するセンサユニット(SEH)を含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
センサユニット(SEH)が、間接的又は直接的に血液取出手段(BE)と連結していることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
センサユニット(SEH)が、以下の血液のパラメータ、即ちpH値、酸素分圧、二酸化炭素分圧、カリウム含有量、ナトリウム含有量、カルシウム含有量、塩基過剰、乳酸値、グルコース含有量の少なくとも一つを捕捉することを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
分析ユニット(A)、作用ユニット(KE)、並びに評価ユニット及び管理ユニット(A/K)が、ポータブルで統一的な構造ユニットとして実施されていることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
センサユニット(SEH)が、前記統一的な構造ユニットの一部であることを特徴とする請求項11及び14に記載の装置。
【請求項16】
血液流路(BL)に沿って、血液取出手段(BE)と還流手段(BR)の間に、還流手段(BR)の直前に配置されたバイパス管(A2)が設けられており、前記バイパス管により、個体内に還流させるべき改変血液の一部を分析ユニット(BA)内に送ることができ、少なくとも一つの捕捉可能な血液パラメータに関して目標値と実際値を比較し、相違がある場合には、配量ユニット(D)が、少なくとも一種の物質の血液流路(BL)内への添加量を変更することを特徴とする請求項2ないし15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
還流手段(BR)と間接的又は直接的に連結している熱交換ユニット(WT)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
評価ユニット及び管理ユニット(A/K)が、制御信号(Si1、Si2、…)を発信し、且つ搬送手段(F)及び熱交換ユニット(WT)に送り、したがって個体内に供給される少なくとも一種の物質の圧力、流速、及び温度を選択できることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
血液流路(BL)に沿って、血液取出手段(BE)と還流手段(BR)の間に、血液に対する酸素補給及び低減化ユニットが設けられていることを特徴とする請求項2ないし18のいずれか一項に記載の装置。

治療方法クレームが特許保護から除外されていない例えば米国などの国々に対してのみ:
【請求項20】
心臓停止又は卒中発作を起こした個体を処置するための方法であって、個体から血液を取り出し、前記血液を血液分析にかけ、その際、少なくとも分析ユニットによって確定された血液分析結果及び少なくとも一つの判定基準を考慮して、備蓄されている少なくとも二種の物質から少なくとも一種の物質又は物質混合物の種類及び量を決定し、前記物質又は前記物質混合物が、
a)配量された形で、改変血液を得るため、取り出された血液に添加され、前記改変血液が個体内に再潅流されるか、又は
b)前記物質又は前記物質混合物が潅流溶液の形で、取り出された血液の代わりに個体内に再潅流される方法。
【請求項21】
血液分析の枠内で、少なくとも一つの捕捉された血液パラメータが目標値と比較され、目標値からの、量的に予め設定可能な相違がある場合は、血液パラメータに影響を及ぼす物質が選択され、且つ量的な相違に応じた量で、取り出された血液又は潅流溶液に添加されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
改変血液から、一部が再度の血液分析のために分岐されること、及び
少なくとも一つの捕捉された血液パラメータが目標値から逸脱している場合には、少なくとも一種の添加される物質の種類及び/又は量の修正が行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
血液取出工程、血液分析工程、患者自身の血液又は潅流溶液に少なくとも一種の物質を添加する工程、並びに改変血液又は潅流溶液を再潅流させる工程が、その場で行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
血液分析に加え、個体の少なくとも一つの生理的パラメータの捕捉が実施されること、及び血液分析結果も、個体の少なくとも一つの生理的パラメータも考慮して、取り出された血液又は潅流溶液に混合すべき少なくとも一種の物質の種類及び量、並びに個体内に再潅流させる改変血液流又は溶液の圧力、流速、及び温度が選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
患者の体内への改変血液又は潅流溶液の再潅流が、少なくとも二つの異なる身体領域で、それぞれ異なる再潅流パラメータ、即ち圧力、流速、温度、及び/又は再潅流時間で実施されることを特徴とする請求項20ないし24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
血液取出が、少なくとも1リットル/分、好ましくは6〜8リットル/分の管理された流速で行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507153(P2013−507153A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532500(P2012−532500)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006199
【国際公開番号】WO2011/045011
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501163750)ウニベルジテートスクリニクム フライブルク (3)
【Fターム(参考)】