説明

心臓内の血圧/温度の遠隔計測用植込み型装置

特に心臓又は大血管内の血圧の体内遠隔計測用システム及び方法は、ホルダに取り付けられる略剛性センサチップとアンテナとを備える。ホルダが心血管系の然るべき部位内、例えば心中隔に、カテーテル又は他の最小侵襲手術によって固定されることで、少なくとも1つの容量式圧力センサが感知対象の血流中のチップ上に設置される。計測値は、チップから体外のモニタリング装置に遠隔的に伝送される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2005年11月23日付けで出願された米国仮特許出願第60/738,980号明細書、及び2006年2月15日付けで出願された米国仮特許出願第60/773,344号明細書に対する優先権を主張し、それらの開示は全体として参照により本明細書に明示的に援用されるものとする。本願はまた、米国特許法第120条に基づき、2006年6月15日付けで出願された米国特許出願第11/452,920号明細書に対しても一部継続として優先権を主張し、その開示は全体として参照により本明細書に援用されるものとする。
【技術分野】
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は概して、患者の特性、例えば血圧及び/又は温度を感知するための方法及び器具に関し、及びより詳細には、カテーテルを介して心血管系内及び特に心臓内に植え込まれる装置による血圧の遠隔計測に特に適する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)は、心不全が米国における「新しい流行病」であるとの判断を示している。心不全は、慢性的で進行性の不治の疾患であり、世界中で2千万人を超える人々が罹患している。米国内だけでも、およそ5百万人が心不全の診断を受けている。今日の米国経済は年間400億ドルを超える費用を心不全のために負担していると推定される。
【0004】
心内圧管理は心不全処置の重要な側面である。例えば、左心房などにおける心内圧の上昇は、疾患進行の重要な初期徴候であり、且つ治療介入の最初の契機となる。現行の血圧計測方法は冠疾患集中治療室(CCU)又は集中治療室(ICU)においてのみ適用可能であり、患者が既に差し迫った危篤状態にあるときの心内圧の散発的なスナップショットを提供するに過ぎない。現行の心内圧計測方法の限界は、初期の最適な処置にとって深刻な障害となる。現行の処置方法では入院が必要とされ、多大な費用がかかり得る(平均して、受け入れ患者1人につき16,000ドルを超える)。診療施設外から患者をモニタし、且つ介入することが可能であれば、入院数が大幅に減少するとともに、診断によって罹患者の寿命が延びるであろう。
【0005】
患者の血圧及び/又は温度を計測及び分析するため、種々のセンサ及び装置が使用又は提案されているが、その成否は入り交じっている。現在企図されるセンサは一定の欠点を有する。例えば、米国特許第6,855,115号明細書に記載されるテレメトリセンサは、カテーテルによって心臓に植え込むことができる。そのうえ、植込み手術中に巻き上げられるこのセンサは、心臓内部でのいかなる血圧変化によってもセンサの高さ方向の距離、すなわちセンサで使用される2枚のコンデンサプレート間の距離に変化が生じるよう、特定の形状の可撓性材料で作製されなければならない。この可撓性センサはカテーテルを介して送達するため折り畳まれ、次に植込み箇所で展開される。しかしながら、かかる構成の欠点はその求められる可撓性にあり、これはセンサが心筋上又はその近傍に留置され、従って心臓の動きにさらされると、的確な圧力の読取りに影響が生じ得ることから、一定の正確な計測データを取得できない可能性があるためである。加えて、米国特許第6,855,115号明細書に従い作製されるセンサの可撓性材料は、流動する体液、特に心臓内部で遭遇し得る乱血流に絶えずさらされるため、変形し得る。結果として、コンデンサの静電容量が変化し得るとともに計測値は真値から乖離及び/又は逸脱し得る。このタイプのセンサの別の欠点は、それが圧力依存性LC発振器を使用することに起因する。この発振器の共振周波数は、遠隔的に分析され得る。原則的に、この種類の装置は、計測用コンデンサに作用する圧力の計測に適用可能なものである。従って、材料上の少しの損傷も、得られる圧力計測値に影響し得る。さらに、センサはセンサの周囲の媒質から影響を受けるため、計測値の乱れが起こり得る。加えて、このタイプのセンサには、取得される圧力計測値をデジタル化するための回路がない。アナログ信号を使用する結果、データの取得及び伝送中に外部干渉が起こり、読取りに誤差が生じ得る。
【0006】
米国特許第6,409,674号明細書に記載される別の例示的植込み型装置は、圧力伝達液又はゲル様材料で充填されるカテーテルを使用する。カテーテルは圧力を筺体内の圧力変換器に伝達する。次に感知された圧力が遠隔的に外部読取機に伝送される。しかしながら、かかる装置は電子信号処理回路用の筺体を必要とし、結果としてセンサ構造はより大きく、且つより重くなり、心臓壁内に植え込まれると心臓にひずみが生じる。そのうえ、カテーテル及び筺体の構成から機械的構造が一層複雑となり、機械故障のリスクが高まり得るとともに、従って長期の植込みには好適でない。
【0007】
米国特許第6,970,742号明細書に記載される別の装置は、心臓内に留置される圧力センサを有する。圧力センサからの信号は、電子処理回路を含む心臓外部の筺体に伝送される。信号は電子処理回路により処理され、例えばアナログからデジタルに変換されるなどした後、遠隔的に外部読取機に伝送される。しかしながら、電子処理回路を筺体に収納するには追加的な構成要素が必要であり、植え込まれる装置は比較的大型となる。そのうえ、信号は心臓外に出てからデジタル化されるため、外部源によってアナログ干渉が生じ得ることに伴い、センサと電子処理回路とを接続する配線が干渉するリスクがある。
【0008】
他の適用においては、電子処理回路を備える小型圧力センサチップが使用されている。例えば、圧力センサを有する集積チップが、光学及び頭蓋適用における圧力計測に使用されている。これらのセンサはコンパクトで機械的構成要素が少ない。かかる圧力センサチップの例が、本発明の発明者らが関わった欧州特許出願公開第1312302A2号明細書及び独国特許出願公開第102004055220.7号明細書に記載されている。しかしながら、これらの集積チップは、流体の動きが少ない眼又は脳内の比較的安定した環境で使用される。これらの圧力センサはまた、心臓において見られる循環的で動的な流動を受けることもない。かかる流動は、接続、例えばワイヤと圧力感知チップとの間の接続などに損害を与え得る。従って、かかる圧力センサチップの使用は、圧力センサの周囲に循環的で動的な流動があり、且つ継続的に乱流状の流動がある心臓の環境には適していない。
【0009】
かかる公知の圧力感知チップに対し安定性及び支持を提供して、それを心血管圧力センサとして使用可能にする従来技術は、成功しないように思われる。配線を圧力感知チップに直接装着すると、チップの機能性に悪影響が生じ得る。例えば、接続にはんだ付けが使用される場合、熱によりチップが損傷し得る。この問題を回避する既知の一方法は、基板を圧力感知チップの背面に接着し、配線を基板上の接着タックにはんだ付けしてから、配線をチップに接続することである。しかしながら、かかる基板の熱膨張係数はチップと異なる。従って、温度変化に伴い基板は圧力センサチップと異なる比率で膨張及び収縮するため、圧力感知チップに応力及びひずみが生じ、損傷するか、及び/又は動作不能となるリスクが高まる。
【0010】
他の既知の圧力センサは、心臓内部の圧力センサと外部の身体モニタ装置との間にケーブル接続を必要とする。しかしながら、かかるケーブルは明らかに身体への侵入を必要とする。侵入は不便であり得るとともに装置及び侵入部の双方を植え込む必要があり、同時に患者への感染リスクが高まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、心臓への植え込み時に生じる刺激作用が少なく、動く心臓において遭遇する動的条件に対しより適合性の高い、信頼性が高く且つ精密な心内圧センサが必要とされている。また、かかるセンサを、ほとんど又は全く改良を加えることなしに心血管系内の他の部位で使用できることも必要である。
【0012】
さらに、本発明の略剛性センサチップを心臓の任意の部分又は心血管系の他の部分、例えば大血管などに送達し、且つ確実に固定することが可能なセンサ用送達機構が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、少なくとも1つの圧力センサ及び必要な全ての電気回路を含む、極めて小型且つ軽量のチップをカテーテル又は他の最小侵襲手術を介して心臓又は心血管系の他の部分に留置することで血圧及び/又は温度をモニタし得る、略剛性のチップベーステレメトリセンサ及びシステムを提供することにより、上記の必要性を満たすとともに先行技術の欠点及び難点を回避する。
【0014】
この方式では、圧力信号は心臓又は心血管系の他の部位における感知部位又はその近傍でデジタル化され得るとともに、データはデータ収集場所に向けてテレメトリセンサに送られるため、外部源からのデータ伝送干渉が低減又は除去され得る。
【0015】
特にチップは、耐久性、長期にわたる安定性、及び長期にわたる正確さ、及び血流内の乱流などに起因する血流からの膜特性の損傷又は変化に対する抵抗性の向上を提供する略剛性構造であり得る。例えばチップは、全ての必要な感知素子及びデジタル信号処理電子部品を備える特定用途向け集積チップ(ASIC)であってもよい。ASICは好ましくは、非常に小型且つ軽量であることにより心臓に対する過度の応力を回避するとともに、体内で乱流及び反動力を最小化する位置に適切に置かれる。ASICは、非常に小さい寸法で作製されるコイル形状のアンテナと共に使用されてもよい。このASIC及びコイルの最小構成により、ASICとコイルとの間の接続に作用する機械的張力が低減及び/又は除去され得る。
【0016】
ASIC及びコイルは、シリコーン又は類似の材料などの、生体適合性且つ可撓性のシームレスシース内に封入されることで、一体型センサユニットを形成し得る。シームレスシースは、体液、例えば血液などに対するセンサの曝露を低減又は除去してセンサの完全性を維持し得る。これはまた、乱流を低減するような形状及び/又は位置とされてもよい。
【0017】
液体又はゲルを圧力感知素子間、例えばセンサの容量式膜センサとシースとの間に置くことで、センサの表面に対する内皮化の作用を低減又は除去し得る。液体又はゲルによりセンサの圧力感知部分の全域にわたり圧力が統合され、限局的なプラーク又は内皮化の作用が最小限に抑えられる。液体又はゲルの代わりにシース材料自体が圧力伝達材料として機能してもよい。当然ながら、ヘパリン及び当該技術分野において周知の他の予防被膜もまた内皮化の予防又は低減に使用され得る。
【0018】
ASIC及び特に膜センサ素子を、植込み手術中の損傷、例えばアンテナを挿入及び/又は展開する間のカテーテル先端の屈曲に起因するひずみ及び応力などから保護するため、センサ設計は特有の幾何形状を有し得る。例えば、ASICの略剛性基板との接続は、基板がASICと離間された関係でセンサチップの圧力感知素子と反対側にあり、基板の開口部が圧力素子へのアクセスを提供して圧力素子を感知対象の流体圧力に曝露するようにされ得る。シリコーン又は他の類似の可撓性材料がASICと基板との間に配置されてもよい。さらに、圧力伝達材料がASICと剛性基板との間の間隙内に置かれ得るため、当該材料を介して血液からの圧力を圧力素子に伝達できる。
【0019】
ASICはロバストシステムを組み込んでセンサの経年及び使用に起因するドリフトを補償し得る。例えばASICは、経年及び利用に起因するセンサの計測値の変化を測定する受動型圧力感知素子を備え得るとともに、能動型圧力感知素子が圧力を測定するときこの変化を考慮してもよい。
【0020】
ASICは外部読取機からの無線信号による誘導を電源とするため、内部電源の必要がない。外部読取機でトランスポンダ電源を使用することにより、略剛性センサチップの寿命を延ばすことが可能である。外部読取機は略剛性センサに電力を供給するとともに略剛性センサから圧力及び温度情報を受信する。外部読取機は、計測及びパラメータデータを格納及び表示し、特定の値を計算する。外部読取機は、計測及びパラメータデータを格納及び表示するとともに、そのデータをさらに処理するためコンピュータ又は他の装置に伝送してもよい。外部読取機は別個のアンテナコイルを有するため容易に患者の身体に長期間留まる。外部読取機は、異なるセンサ用に1つ又は複数の較正曲線を格納し得る。外部読取機はまた圧力センサを有して周囲の空気圧を計測し、心臓内の絶対圧力と患者を取り巻く空気の絶対圧力との間の差を計算してもよい。
【0021】
ASIC、アンテナコイル及びアンカーは、カテーテルを介して患者の心血管系内に送達され、植え込まれ得る。ASIC、コイル及びアンカーは、カテーテルのルーメン内に適合するサイズとされる。アンカーはカテーテルから拡張可能で、ASIC及びコイルを心血管系内、例えば心臓又は大血管内などに取り付けられる。
【0022】
本発明のテレメトリ圧力及び/又は温度センサは、継続的な、又はオンデマンドの感知に使用され得る。1回の計測又は計測サイクルごとに特定の識別番号が伝送され得る。この方法では、連続的な計測値及びセンサ識別、ひいては患者の計測値及びアイデンティティが提供される。識別番号によって単一の外部読取機は、複数のセンサ及びシステムからデータを受信し、それを当該センサシステム及び患者に適合する較正曲線に割り当てることが可能となる。
【0023】
本発明は、多くの方法で実施され得る。本発明の一態様に従えば、患者の心血管系内部の血圧を計測するための心内圧計測システムは、アンテナと、第1の略剛性基板、感知された圧力を示す信号を生成するための基板内に配置される少なくとも1つの圧力センサ、及び少なくとも1つの圧力センサにより生成される信号を処理するための電子信号処理部品を含む集積チップとを備える。電子信号処理部品はアンテナと動作可能に接続されるとともに、集積チップはアンテナの受信する信号を電源とする。少なくとも1つの圧力センサが血液に曝露されるようにして、アンカー構造が集積チップを心血管系の壁に取り付ける。遠隔受信器が提供されることにより、集積チップは心臓で感知される圧力を示すデジタル信号を遠隔的にアンテナを介して遠隔受信器に送信する機能を有する。アンテナ、集積チップ及びアンカー構造は、心血管系への植え込み用送達カテーテル内に適合するサイズとされる。
【0024】
本システムは、少なくとも1つの心腔内又は大血管のうちの1本の中で血圧を計測し得る。少なくとも1つの圧力センサが、基板に内蔵される容量型圧力感受性膜を備え得る。少なくとも1つの圧力センサは感知された圧力に応答してアナログ信号を生成し得るとともに電子信号処理部品が少なくとも1つのアナログ/デジタル(A/D)変換器を備えることにより、少なくとも1つの圧力センサからのアナログ信号を心臓内でデジタル化し得る。システムの集積チップは、重量が約1グラム未満、1つの側面の表面積が約25mm以下で、且つ厚さが約1mm未満であり得る。
【0025】
アンテナ、チップ、及びアンカー構造は、ワンピースの生体適合性シームレスシースに封入され得る。圧力伝達媒質が生体適合性シースと少なくとも1つの圧力センサとの間に介在し得る。生体適合性シースは前記少なくとも1つの圧力センサに対する圧力伝達媒質として働き得る。シースは、心臓内の血流の乱流を最小化するような形状とされ得る。
【0026】
集積チップはさらに、固有のデジタル識別情報を備えてもよく、ここで固有のデジタル識別情報は遠隔的に受信器へと送信される。受信器は固有のデジタル識別情報に基づき集積チップに関連する較正情報を取得し得る。受信器は格納パラメータを備え得るとともに、心臓で感知される圧力及び格納パラメータを示す信号に基づきアラートを発行し得る。
【0027】
集積チップは第1の集積チップ及び第2の集積チップを備えてもよく、ここで第1の集積チップ及び第2の集積チップは、例えば張力緩和接続を介して、物理的及び/又は動作可能に接続される。第1の集積チップは少なくとも1つの圧力センサ及び少なくとも1つのアナログ/デジタル(A/D)変換器を備え得るとともに、第2の集積チップはアンテナと動作可能に接続される。第1の集積チップは、第2の集積チップとは異なる心室腔に位置し得る。
【0028】
少なくとも1つの圧力センサは、心臓内の圧力変化に応答する少なくとも1つの能動型センサ及び心臓内の圧力変化から隔離される少なくとも1つの受動型センサを含む複数の圧力センサを含んでもよく、ここで電子信号処理部品は、少なくともある部分、少なくとも1つの能動型圧力センサからの信号及び少なくとも1つの受動型圧力センサからの信号に基づいて信号を提供し得る。圧力信号は少なくとも1つの能動型圧力センサからの信号を少なくとも1つの受動型圧力センサからの信号で補正した結果であり得る。能動型圧力センサの構造は、受動型圧力センサの構造と実質的に同じであり得る。複数の圧力センサは、可撓性可動膜を各々有する容量式圧力センサを備え得る。受動型圧力センサ信号は受動型圧力センサの膜の位置変化に応答し得るとともに、受動型圧力センサの膜の位置変化は膜のたわみを含んでなるドリフト効果に起因し得る。能動型圧力センサの膜の位置変化は、心臓内の圧力変化又は膜のたわみを含んでなるドリフト効果に起因し得る。
【0029】
略剛性センサはアンカー構造と協働する表面を備えて、アンテナ及び略剛性センサチップを心臓内に取り付け得る。アンカー構造はアンテナ及び略剛性センサチップを心中隔に取り付け得る。アンテナが心中隔の片側に取り付けられ得るとともに、略剛性センサが中隔の逆側に取り付けられ得る。あるいは、アンテナ及び略剛性センサは中隔の同じ側に取り付けられてもよい。アンテナは、心中隔に隣接する第1の表面及びアンカー構造の少なくとも一部に隣接する第2の表面を備え得る。アンカー構造は弾性部材を備えてもよく、これによりアンカー構造は送達カテーテルのルーメン内に適合する圧縮位置形状から拡張位置に拡張することが可能となる。弾性部材はワイヤループを備え得る。アンテナは送達カテーテルのルーメン内に適合するよう可撓性且つ折り畳み式であり得る。略剛性センサはさらに温度センサを備え得る。
【0030】
圧力計測システムはカテーテルにより送達され得る。カテーテルは、中空部及び第1の開口を有するカテーテルルーメンと、圧力計測システムを中空部内で側方向に動かすとともに前記カテーテルルーメンの第1の開口から出すよう機能するシステムガイドとを備える。集積チップは円錐形状を有して患者の壁又は器官に刺入するよう機能し得る。
【0031】
本発明の別の態様に従えば、対象者の心血管系内の血圧を感知する方法は、少なくとも1本のカテーテルを最小侵襲で使用して略剛性集積チップを対象者の体内に植え込むステップであって、集積チップが略剛性基板と、基板内で心血管系内の血圧を感知できる位置に配置される少なくとも1つの容量型圧力センサとを備えるステップ、対象者の体外に位置する電源を作動させることにより遠隔的に集積チップに電源投入するステップ、心血管系位置における圧力を示す少なくとも1つの圧力センサからの1つ又は複数のアナログ信号を取得するステップ、及び感知が行われる心血管系位置又はそこに直ちに隣接する位置でアナログ信号をデジタル信号に変換するステップを含む。
【0032】
植込みステップは、心臓又は大血管のうちの1本に容量型圧力センサを有するASICを植え込むステップを含み得る。植込みステップはまた、容量型圧力センサを心血管系位置に送達するステップ、及び容量型圧力センサをアンカー構造によりその位置に取り付けるステップも含み得る。植込みステップはさらに、アンカー構造を心血管系内の容量型圧力センサの取り付け位置に送達するステップ、及びアンカー構造の少なくとも一部を拡張するステップも含み得る。本方法はまた、カテーテルを使用して集積チップと動作可能に接続される折り畳み式アンテナを対象者の体内に植え込むステップも含み得る。本方法はさらに、感知された血圧に基づき心拍の波形を計算するステップを含み得る。
【0033】
本発明の別の態様に従えば、患者の体内の心内血圧計測用集積チップは、第1の略剛性基板、感知された圧力を示す信号を生成するための基板内に配置される少なくとも1つの圧力センサ、及び少なくとも1つの圧力センサにより生成される信号を処理するための電子信号処理部品を備え、電子信号処理部品はアンテナと動作可能に接続されるとともに、集積チップはアンテナで受信される信号を電源とする。集積チップは患者において感知される圧力を示すデジタル信号を、遠隔的にアンテナを介して遠隔受信器に送信する機能を有するとともに、集積チップは植込み用送達カテーテル内に適合するサイズとされる。
【0034】
少なくとも1つの圧力センサはアナログ信号を生成し得るとともに、電子信号処理部品が少なくとも1つのアナログ/デジタル(A/D)変換器を備え、患者の体内のチップが植え込まれている場所において少なくとも1つの圧力センサからのアナログ信号をデジタル化し得る。集積チップは、重量が約1グラム未満、1つの側面の表面積が約25mm以下、且つ厚さが約1mm未満であり得る。略剛性集積回路は折り畳み式でなくともよい。集積チップはさらに、電子信号処理部品と動作可能に接続される拡張可能アンテナを備えてもよく、ここでアンテナは、カテーテルを介して送達するための圧縮位置と植込み後に使用するための拡張位置とを備え得る。
【0035】
本発明のさらなる特徴、利点、及び実施形態が、以下の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載され得るか、又はそれらの考察から明らかとなり得る。さらに、前述の発明の要約及び以下の詳細な説明はいずれも例示的であるとともに、主張されるとおりの本発明の範囲を限定することなくさらなる説明を提供するべく意図したものであることは理解されたい。
【0036】
添付の図面は、本発明のさらなる理解の提供を含むもので、本明細書に組み込まれるとともにその一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、且つ詳細な説明と共に本発明の原理を説明する役割を有する。本発明の基本的な理解及び本発明を実践し得る様々な方法に必要とされ得るよりも詳細に本発明の構造的詳細を示そうとするものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態並びにそれらの様々な特徴及び有利な詳細が、添付の図面に記載及び/又は説明されるととともに以下の発明の詳細な説明に詳述される非限定的な実施形態及び例を参照してより十全に説明される。図面に示される特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らず、及び当業者であれば認識し得るとおり、本明細書に明示的に指定されなくとも、一実施形態の特徴は他の実施形態で用いられ得ることに留意されたい。周知の構成部品及び処理技術についての記載は、本発明の実施形態を不必要に分かり難くしないよう省略され得る。本明細書で使用される例は単に、本発明を実践し得る方法の理解を促進するとともに、さらに当業者が本発明の実施形態を実践できるようにすることを意図したものに過ぎない。従って、本明細書の例及び実施形態は、添付の特許請求の範囲及び適用法によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。さらに、図面のいくつかの図にわたって同様の参照符号は類似の部品を参照していることに留意されたい。
【0038】
図1は、継続的又は定期的な心内圧モニタリングを提供する、本発明の原理に従い構築される植込み型遠隔計測装置及び読取機の実施形態を概略的に示す。外部読取機12と接続されるコイル又はアンテナ14は、当該技術分野において周知の方式で無線周波数(RF)電磁界を生成する。コイル14及び外部読取機12は、患者に巻回されるとともに標準的なケーブルを介して互いに接続している個々のベルトに固定され得る。RF電磁界により電流を誘導されるコイル18は、本明細書に記載されるような、患者10の心臓16内、例えば中隔又は左心房の壁などに植え込まれて左心房の圧力を感知する略剛性センサチップ20と接続される。センサチップ20は本明細書に記載されるような特定用途向け集積回路(ASIC)からなってもよく、これはいつ適切な電力が供給されているかを検出するとともに、感知回路、アナログ/デジタル回路、及びデータ処理回路のスイッチを入れる電力調整回路を有する。データ処理回路は、コイル18をアンテナとして使用するASIC伝送器にセンサデータを送信する。コイル18は信号22を介してデータを外部読取機12のアンテナ14に遠隔的に伝送する。外部読取機12は、圧力値及び温度値の確実な受信及び格納を提供し、植込み装置20の圧力読取り値を読取機の内部センサ経由の周囲圧力と比較し、及び心内データを、標準プロトコルを介して他の装置、例えばコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等に配信し得る。
【0039】
本実施形態において、外部読取機12はセンサチップ20から継続的に、又は定期的な間隔でデータを取得し得る。例として、外部読取機12は継続的にRF信号を生成してセンサチップ20を作動させ、圧力及び/又は温度読取り値を取得し得る(医師が所望する場合には血圧の波形までも記述するためであり、センサチップは1秒間に最高100回又はそれ以上の計測をとらなければならない)。あるいは、外部読取機12は一定の間隔で(例えば、30分毎、4時間に1回、1日1回)RF信号を生成して植込み剛性センサチップ20を作動させ、圧力及び/又は温度読取り値を取得し得る。
【0040】
図2は、植込み型遠隔計測装置及び読取機の別の実施形態を概略的に示し、これは図1の実施形態と同様に動作し得るが、本発明の原理に従うオンデマンドの心内圧モニタリングを提供する。本実施形態において、携帯用読取機26のコイル28はRF電磁界を生成し、図1の実施形態と同じく、これが患者10の心臓16内に植え込まれる略剛性センサチップ20のコイル18に電流を誘導する。上記のとおり、センサチップ20は、図1の実施形態と同様に動作するASICを備え得る。従って、センサチップ20の電力調整回路がいつ適切な電力が供給されているかを検出するとともに、感知回路、アナログ/デジタル回路、及びデータ処理回路をオンにする。データ処理回路はセンサデータを、コイル18をアンテナとして使用するASIC伝送器に送信する。コイル18は信号24を介してデータを携帯用読取機26のアンテナ28に伝送する。携帯用読取機26は拡張可能でアンテナ28を露出させ得るとともに圧力値及び温度値の受信部及び格納部を提供し、及び植込み体の圧力読取り値を読み出し装置の内部センサ経由の周囲圧力と比較する。携帯用装置26は心内データを、標準プロトコルを介して他の装置、例えばコンピュータ、PDA、携帯電話等に配信し得る。
【0041】
本実施形態において、読取機ユニット26は植え込まれたセンサチップ20からオンデマンドでデータを取得し得る。例として、ユーザは読取機ユニット20を作動させるとともに読取機ユニット筺体の下部からアンテナを含む上部を伸張させることにより読取機ユニット20にRF信号を生成させて、植込み剛性センサチップ20を作動させ、圧力及び/又は温度読取り値を取得してもよい。
【0042】
図3は、植込み装置が用いられ得る患者の心臓領域の断面図を示し、左右心房及び後中隔における静脈の交差部を含む。心臓30は右心房32及び左心房34を有し、これらは中隔36により分割される。ここでさらに詳細に記載されるとおり、植込み型センサチップ20を、右心房32と左心房34とを分離する中隔36に設置及び/又は固定して、センサ20の一部を感知対象の室腔内、例えば、左心房34内まで延在させることが有利であり得る。植込み型装置は、短期用植込み体としても、並びに長期用植込み体としても機能し得る。さらに、本発明の実施形態は、肺静脈のアクセス近傍の「ホワッタストーン溝(Whaterstone’s groove)」若しくは心臓の他のいずれかの部位に、又は医師により選択される心臓近傍のより太い血管中に植え込まれ得る。植込み型センサチップ20はまた、医学的に必要な場合に、装置を容易に即刻取り外せるようにも設計され得る。
【0043】
図4は、本発明の任意の実施形態において心内圧及び温度を感知するための、本発明の原理に従い構築される略剛性センサASICを示す。ASIC400は、8個の受動型センサ404及び8個の能動型センサ406などの圧力感知素子402、温度センサ408、アナログ/デジタル(A/D)変換器410、データ伝送回路412、平滑コンデンサ及び共鳴コンデンサ(図示せず)などの構成要素を備える電力調整回路、確実なデータ伝送のためコードの冗長性チェックを備えるデジタルステート制御414、及びユニット識別のための電気的に消去可能なリードオンリメモリ(EEPROM)セルなどのメモリ416を含み、これらは当該技術分野において周知の構成要素である。好適なASIC構造の例が米国特許第5,321,989号明細書及び同第5,431,057号明細書に記載され、それらの内容は全体として参照により明示的に援用される。
【0044】
本発明の原理に従えば、ASIC400は極めて小型且つ軽量のチップとされ、心臓に過度の応力がかかること、及び/又は心腔に乱流を生じさせることを回避しなければならない。例えば、特に開放性カテーテル手術中に植え込まれるような、本明細書に記載される実施形態における使用に適するASICは、重量が数分の1グラム未満、表面積が1側面につき約10mm以下、及び厚さが約1/4mm〜約1mmでなければならない。有利な一実施形態において、ASICは幅約2mm×長さ5mm〜8mm×厚さ約250〜800ミクロンであり得る。本発明の実施形態に従えば、ASIC400を含むセンサシステムのカテーテルを介した送達を促進するため、ASIC400の幅は約2mm以下とすることが有利であり得る。さらには、後に記載されるとおり、チップを2個以上の部分に分割することが望ましくあり得る。特定の用途又は感知が行われるであろう心血管系部位に応じて、及び送達方法に応じて、他の寸法もまた用いられ得る。一般に、ASIC400の寸法は、長さ約1.5mm〜約8mm、幅約0.6mm〜約2.5mm、及び高さ約0.2mm〜約1.3mmの範囲であり得る。他の寸法、例えば略正方形のASICなどもまた使用され得る。
【0045】
図4に示される本発明の実施形態において、ASIC400は16個の容量式圧力センサセル402を備え、そのうち8個は能動型圧力センサ406であって圧力データを提供し、及びそのうち8個は受動型圧力センサ404であって内部基準として働く。圧力センサセル402は、図5に概略的に示されるとおり略剛性ASIC構造に内蔵される微小な可撓性膜を備え得る。具体的には、能動型圧力センサ406は可撓性膜424を有するとともに受動型圧力センサ404は可撓性膜426を有する。能動型圧力センサ406の膜424は心血圧のレベルに基づき歪曲可能である。歪曲は主に、ASIC400の平面状上表面とほぼ垂直な方向であり得る。歪曲は、静電容量計測に基づき、又は膨張計測テープの使用により測定され得る。特定の一例示的実施形態として、ASIC400の16個の容量式圧力感知素子402の直径は、各々約96ミクロンであり得る。
【0046】
心臓の圧力が変化すると、圧力センサ402で計測される静電容量が変化する。圧力センサ402は静電容量の変化に基づき信号を生成するとともに、ひいては心臓の圧力を示す。以下に記載されるであろうとおり、信号は好ましくは、ASIC400内又はその上に位置する構成要素により処理され、外部読取機に伝送される。
【0047】
従って、血圧計測プロセスは、図5に示されるとおりチップの平面状上表面などのASIC400に組み込まれる計測膜424、426を介した容量式圧力計測プロセスであり得る。ASIC400は、折畳み又は巻上げ不可能なシリコン製の略非可撓性基板を有し得る。薄いながらも機械的に非可撓性の基板は装置に機械的な安定性をもたらし、図5に示されるとおり計測膜424、426を内蔵する略剛性構造を提供する。ASIC400の幾何形状の変化、例えば血液乱流に起因するねじれは、ASIC400が乱流状の血流に曝露されたとしても、この略剛性のチップベース構成により回避され得る。従って、植え込まれたASIC400は、心臓に危険な応力を生じさせることなく心臓及び心血管系の他の部位の内部環境に耐える能力を有する、耐久性のある装置を提供する。
【0048】
寸法が比較的小さい(例えば、直径0.2mm未満)多数の小膜424、426が、容量式圧力センサとして使用され得る。かかる小さい寸法は結果として、心臓内の血流の力などの機械的な力に対しそれほど脆弱でない、従ってより信頼性の高い膜424をもたらし得る。
【0049】
ASIC400が含む機械的及び電気的要素は磨耗しやすく、且つそれらの対象とする心血管での使用に好適な質及び信頼性を有する計測値を得るためにドリフト補償が必要である。センサにおけるドリフトは、時間の経過及び構造体の物理的特性の変化に伴い生じ得る。長期にわたり利用すると、チップの電子部品の変化が計測に影響し得る。さらに、圧力センサが膜を使用する場合に、膜は古くなると中央がたわむことがある。圧力センサ膜における静電容量は、圧力センサ膜の位置変化に基づき変動する。これらの血圧変化とは無関係な変化が、感知されている計測の真値を変化させ得る。ドリフト補償は長期用心内圧力センサにおいて特に重要である。
【0050】
ASIC400に用いられるドリフト補償スキームは、ASIC400の物理的特性の変化の作用を低減又は除去するものでなければならない。本発明の原理に従えば、センサチップ400から得られる圧力値のドリフトは、約5.0mmHg/年〜約2.5mmHg/年、又はさらに1mmHg/年未満といった値まで最小化され得る。
【0051】
本発明のドリフト補償原理に従えば、複数の能動型センサ406及び複数の受動型センサ404が、例えば各8個ずつ提供される。本発明の実施形態に従えば、能動型センサ406の構造と受動型センサ404の構造とは同一である。しかしながら、図5に示されるとおり、能動型センサ406の膜424は圧力を感知するため感知環境(例えば、心腔)に対し開放されている一方、受動型センサ404の膜426は環境から隔離されており、例えば、膜426の表面を覆ってガラス層428又は他の好適な材料を設置することにより心臓の圧力が受動型センサ404に影響しないようにされている。能動型センサ406及び受動型センサ404の双方が、経年、使用及びたわみ並びに任意の他の環境作用により受ける影響は、実質的に等しい。受動型センサ404を使用して、ASIC400は、圧力センサ膜426の位置変化がどの程度経年及びたわみによって影響されたものかについて測定し得る。受動型圧力センサ膜426の位置変化に基づく静電容量変化が測定される。次にこの量を使用して、能動型圧力センサ膜424で計測される静電容量変化が補正される。このシステムにより心臓内の圧力に起因する静電容量変化のより正確な測定が可能となる。ドリフト補償により、医師又は患者は、患者の体内、例えば心臓内の圧力の短期的な(例えば、日、週)傾向をより良好に測定することが可能となる。
【0052】
ASIC400、コネクタ及びアンテナを備え得る植込み型センサチップは、生体適合性シームレスシース(図5〜6には図示せず)内に完全に封入され得る。計測膜424の周囲の材料領域が封入後もその可撓性を維持することにより圧力の計測膜424への伝達を可能にする。生体適合性シースについては、以下でさらに詳細に記載されることとなる。
【0053】
図6は、シースと能動型圧力センサ406との間にゲル又は流体を伴う本発明のASIC402の断面図である。上記のとおり、ガラス基板428又は他の好適な材料が受動型圧力センサ404を隔離する。液状又はゼラチン状の圧力伝達媒質432がシース430と能動型圧力センサ406との間に使用される。以下に記載されるであろうとおり、この液状又はゼラチン状の媒質432は、感知対象の室腔、例えば、左心房内の血圧値の計測又は受信を改善し得る。時間が経過して(例えば、植込みの数ヶ月後又は数年後)線維性組織又はプラークが植込み体の領域に成長したとしても、別個のゲル充填膜内への圧力センサの封入により、なお信頼性のある計測値を得ることが可能であり得る。
【0054】
例えば、内皮化の結果としてセンサチップの表面上に内皮が堆積し得る。内皮及び/又はプラークが、能動型圧力センサの1つの表面上、又は能動型圧力センサの1つの表面における生体適合性シース上に堆積すると、圧力計測値の読取りに悪影響が生じ得る。かかる作用を低減する一方法は、シース及び/又はセンサを薬剤、例えばヘパリンで被膜して内皮を低減又は除去することである。しかしながら、かかる処理は必ずしも有効とは限らない。
【0055】
従って、図6に示されるとおり、能動型圧力センサ406の表面はゲル又は流体432で被膜されるとともに膜430に封入される。この方法では、能動型圧力センサ406の1つの表面を直接覆う膜430上の内皮の成長又はプラークが圧力センサ計測に与える作用は、圧力が内皮成長物及び膜430を介してゲル/流体432を通じ能動型圧力センサ406に伝達されるため、低減されるか、又は無視できる程度であろう。さらに、表面全体にプラーク成長及び/又は内皮化しても、内皮上に及ぼされる圧力はゲル/流体432を介して能動型圧力センサ406に伝達されるため、なお圧力感知計測値の取得は可能であり得るだろう。特に、ゲル/流体充填膜430は、個々の能動型圧力センサ406のみの場合より広い領域にわたって圧力変化を組み込むよう機能し得る。これはシース430に対する内皮化及び/又はプラーク付着の作用を最小化する。シース430はゲル/流体432のみを被覆するものとして示されるが、以下に記載されるとおり、シース430又は他のシースがセンサチップ400の一部又は全部を被覆し得るであろうことは理解されたい。
【0056】
ASIC400はまた、心拍の波形も決定し得る。心拍の波形は、心血管系位置、例えば心臓などにおいて多数の計測値、例えば毎秒50〜100回、圧力をとることにより計測され得る。時間の関数としての圧力値のグラフがプロットされる。当該技術分野において周知の数学的アルゴリズムを使用して、グラフに基づき心臓の波形が計算され得る。
【0057】
上記のとおり、ASIC400はA/D変換器410を備える。当該技術分野において周知のとおり、圧力センサ402は心臓の圧力を示すアナログ信号を提供する。A/D変換器410は、圧力センサ402からの信号をデジタル信号に変換する。
【0058】
従って、本発明における計測値の伝送及び然るべき信号へのデジタル化は好ましくは、感知対象の1つ又は複数の心腔内で、又はそれらに極めて緊密に隣接して、例えば左心房及び/又は右心房及び/又は左心室又は右心室などで実行されるとともに、最も好ましくはASIC400内部で処理される。完全デジタルシステムを使用する結果、読出しが一層正確になる。アナログシステムにおいては、信号の振幅はセンサにより提供される圧力読取り値に比例し、外部読取機により記録される圧力の値は、体と読取機との間の距離に依存する。結果として、体から読取機までの距離を非常に厳密に制御しなければならず、さもなければシステムの正確さは崩れる。本発明に従えば、体から読取機までの距離は、デジタル信号の使用及び信号のセンサ又はその極めて近傍での処理により、受信する圧力値計測にほとんど又は全く影響しない。これにより本システムは、アナログシステムと比べよりロバスト且つ正確なものとなり得るとともに、さらには、内部コイルと外部コイルとの間の距離の変化、例えば携帯用読取機の移動などに起因する、計測の正確さに対する負の作用を低減し得る。これはさらに、高齢の患者又は筋肉/運動協調性障害者が日常的に使用するうえで特に重要であり得る。
【0059】
加えて、完全デジタル化データは、外部読取機をコンピュータ、インターネット及び遠隔医療インタフェースと適合させることで、データ伝送システムによる操作が一層容易となり得る。例えば、高度に正確な圧力センサ及び9ビットアナログ/デジタル変換器は検知システムに高分解能を与えることができ、ここでは約±2mmHg以下の正確さが実現され得る。
【0060】
さらに、ASIC400におけるデジタル化は、デジタル化以前のアンテナを介したアナログ信号伝送とは対照的に、他の無関係なRF源からの干渉問題を回避し得る。先行技術の装置において、アナログ信号はワイヤを介してセンサからアンテナ構造に送信され得る。アナログ信号を有線でアンテナに伝送する前にデジタル信号に処理及び変換することにより、システムは外部RF信号及びノイズ、例えば無線放送及び電子機器などによりワイヤに誘導され得るアナログ干渉を回避し得る。
【0061】
ASIC400は圧力感知素子402において圧力を計測するとともに絶対圧力信号を外部読取機に転送する。圧力値は、当該技術分野において周知のとおり、ASIC400で計測される絶対圧力値と患者の周囲の大気圧との差から計算される。この大気圧は、通常患者の周囲環境にある外部読取機内で計測され得る。
【0062】
ASIC400の動作は、トランスポンダ技術の周知の原理に従い、接続されたアンテナと外部読取機との間の相互作用に基づく。従って、内部電源は必要ない。ASIC400及び外部読取機は継続的な計測、例えば最高で毎秒120回の単独計測が処理及び伝送され得るように調整され得る。図1で上述されるとおり、所与の間隔で、又は所定の期間において計測がとられ保存されるような総合的なシステムがプログラムされ得る。データの検索、モニタリング、及び記録は随時可能であり得る。
【0063】
本発明の実施形態に従えば、ASIC400は単一の集積チップからなるが、上記のとおりデュアルチップもまた使用され得る。計測プロセス、デジタル化、識別番号伝送、電源供給、及びテレメトリデータ伝送についての全ての関連機能及び構成要素が、単一の集積チップに統合される。上記のとおり、ASIC400は特有の識別番号、並びにチップに固有の較正ファイル及びさらに回路及び格納構成要素を含み得る。あるいは、回路構成要素はまた、例えば別個の部位における感知が所望される場合には、2個又はそれ以上のチップ上に設置されてもよい。例えば、第1のチップが能動型及び受動型圧力感知膜及びアナログ/デジタル変換回路を有し得るとともに、第2のチップが他の回路を有し得る。
【0064】
ASIC400は単一の相補型金属酸化膜半導体(「CMOS」)チップから形成されることで、他の方法を用いるより小型の植込み型装置を作ることができるとともに、電力の使用を最小化し、且つ計測の正確さに対する信頼性を最大化し得る。電力消費により熱が生じるため、電力の最小化は植込み適用において望ましくあり得る。1チップの解決策において、ASIC400は、複数のチップ間の相互作用がないため、外部からの機械的又は電気的干渉に高い抵抗性を有し得る。
【0065】
チップの電力消費が低いため、誘導/トランスポンダ関連電源挿入の過程で温度上昇が生じた場合の、計測又はデータ伝送の困難性が低減又は回避され得る。最適化された回路設計の結果として、約3ボルトDCでわずか約210マイクロワットなど、非常に低い電力消費がもたらされ得る。サンプリングレートは約20〜約120Hzであり得る。高速のデータ伝送と組み合わされる論理回路の高度集積因子により非常に確実性の高いデータ伝送プロトコルの使用が可能となり、それにより規制当局の懸案事項に対処し得る。
【0066】
集積温度センサ408がASIC400に提供されることにより、図4に示されるとおりの温度感知が可能となり得る。温度センサ408はASIC400の回路を使用するとともに温度計測が回路内の電流特性に基づくことにより、ASIC400内の温度ベースの電流特性に基づき心臓の温度を測定し得る。各ASIC400は個々に較正され、所与の温度(例えば、体温)におけるその電流特性(大きさ、周波数等)を測定し得る。温度変化に伴い、ASIC400内の電流特性が変化する。電流特性についての情報及びASIC400に固有の較正決定を使用して、特定の時刻における温度が当該時刻の電流特性に基づき測定され得る。未加工の圧力データは温度及び他の外部及び/又は内部影響について補正されなければならず、及び較正情報、例えば埋め込まれたチップの較正曲線が各ASIC400又はASIC400を実装するシステムについて構築され得る。各ASICは固有の識別番号を有することにより、以下で考察されるとおり較正及びデータ使用を促進し得る。
【0067】
ASCI400はEEPROMセルなどのデータメモリ416を備え、そこに固有の識別番号が格納され得る。この識別番号は計測値と共に遠隔的に伝送される。識別番号を使用してASIC400についての然るべき較正情報が決定され得る。また、このとき単一の外部読取機を使用して、以下に記載されるとおり、複数の植込みASICを問い合わせてもよい。
【0068】
固有の識別番号がセンサデータと共に外部読取機に伝送されることにより、外部読取機は的確な較正情報を使用して圧力及び/又は温度を計算することが可能となり得る。外部読取機は(以下にさらに詳細に記載されるとおり)メモリを有し、多くのASIC400又はASIC400を実装するシステムについての較正情報を格納し得る。然るべき較正情報が識別番号を介して然るべきASIC400又はシステムに関連付けられる。識別番号、又は他の識別指標を用いて、外部読取機は、特定のASIC400又は特定のASIC400を備えるシステムに関連する較正情報にアクセスする。外部読取機が受信するデータは然るべき較正情報を使用して処理され、より正確な結果が実現される。
【0069】
各ASIC400及び/又はシステムはまた、植込み前にゼロ化され得る。患者の体内にあるとき、システムは計測された圧力を真空内圧力と比較する。患者の体外において、外部読取機は周囲圧力を真空内圧力と比較する。心臓内部の圧力は、医師により定義されるとき、心臓内部で計測される圧力と患者の外部で計測される圧力との差を比較することにより計算される。ASIC400又はシステムのゼロ化は、ASIC400システムを使用して患者の外部で圧力を計測するとともにこの計測値を別の外部装置から得られる圧力と比較することを含む。これらの2つの読取り値間の差はASIC400又はシステムに関連する較正情報と共に格納され、これを使用して植え込み後のASIC400又はシステムによるさらなる圧力計測が調節され、差が考慮され得る。
【0070】
1つ又は複数の体内及び/又は体外トランスポンダコイルを使用して、外部読取機がASICの電源供給に使用され得る。このユニットはまた、テレメトリデータ収集にも使用され得る。テレメトリ電源供給及びデータ伝送の範囲は、約3cm〜約35cm又は当業者により容易に決定され得るとおりの他の範囲であり得る。この範囲はまた、外部読取機と植込みアンテナとの間の距離及びアンテナのサイズにも依存し得る。
【0071】
計測データはASIC400上で処理されるとともに好ましくはデジタル化され、センサチップから内部トランスポンダコイルに伝送される。計測データのASIC400から内部トランスポンダコイルへの伝送は、好ましくは可撓性細線として設計される1つ又は複数の導電体を介して実現され、他の非導電性材料上のシリコーンに埋め込まれ得る。計測データは内部トランスポンダコイルから外部読取機に遠隔的に伝送される。外部読取機の容量は、計測及びデータ伝送を含むASIC400の継続的な動作に必要な全ての電源を外部供給するよう設計され得る。
【0072】
ASIC400はまた双方向電力回路424も備えて、読取機とともに読取機とASIC400との間で送信される信号の強度を評価する働きをする。双方向電力回路424の構成要素は読取機と相互作用することで然るべき信号強度及びデータ伝送が確実に達成されるようにする。双方向電力評価モジュール424と読取機との間の相互作用は、図35に関連して以下にさらに詳細に記載される。
【0073】
図4のASIC400は1個のチップでの解決法として記載されているが、複数のチップを使用して本発明の機能が実施され得ることは理解される。例として、第1のASICが圧力感知膜及びデジタル化回路を備え得る一方、テレメトリ及び伝送回路が第2のASICに位置し得る。さらに、複数のチップが心臓の異なる位置にあることで、心臓内の異なる部位の絶対圧力、並びに異なる部位間の差圧についての情報を提供し得る。例として、第1のASICが左心房に位置し得るとともに第2のASICが右心房に位置し得る。かかるチップ構成は、図34に見られるものと同様であり得る。他の構成もまた使用され得る。
【0074】
図7及び8は、切抜き部を有する略剛性基板708と両端で接続される略剛性センサチップを備える本発明の植込み型センサチップ700の実施形態を概略的に示す。センサチップ702、例えばASCI400は、圧力感知膜704及び4個の離間されたチップ接着パッド706を備える。開口部710と接着パッド706に接続される接着トラック712とを有する略剛性基板708もまた提供される。基板708はセンサチップ702とは離間した関係で構成される。より詳細には、基板708の開口部710はセンサチップ702の容量式圧力膜704と略反対側に位置するため、装置の周囲の血液からの圧力が圧力膜704に容易に伝達され得る。圧力伝達材料(図示せず)が開口部710に位置することで血液からの圧力は確実に圧力膜704に伝達され得る。
【0075】
センサチップ702及び基板708は固定された関係で構成され、センサチップ702と基板708との間の距離、又はオフセットが変化しないようにされ得る。チップ接着パッド706が基板接着パッド712に接続されることでセンサチップ702と基板708との間の距離が固定され得る。図7及び8の実施形態に示されるとおり、センサチップ702及び基板708は双方とも4個の接着パッドを有する。しかしながら、他の数量の接着パッドもまた使用され得ることは理解される。
【0076】
基板接着パッド712の少なくとも1個は細長くトラック形状で、アンテナ(図示せず)に接続する電線714への接続を促進し得る。電線714は、熱及び圧力の使用によるなど、任意の従来の方法により基板接着パッド712に接続される。電線714を基板接着パッド712に接続すると、チップ702に直接接続されるのとは対照的に、接続プロセスに起因するセンサチップの損傷又はそれによる機能不良が低減又は除去され得る。電線714がセンサチップ702に対し、基板接着パッド712とチップ接着パッド706との間の電気的接続を介して電気的に接続される。
【0077】
図9及び10は、切抜き部を有する略剛性基板と一端で接続される略剛性センサチップを備える植込み型センサチップの別の実施形態を概略的に示す。図9及び10の装置900は、図7及び8に示される装置700と同様の構成要素及び動作を有する。しかしながら、装置900は、センサチップ902の一端で互いにほぼ近接して位置するチップ接着パッド906を有する。加えて、基板接着パッド912は概して、基板908上で互いに近接して位置する。チップ接着パッド906と基板接着パッド912とが接続されると、センサチップ902及び基板908は一端で固定され、他の自由端はカンチレバーの方式で支持される。チップ接着パッド906及び基板接着パッド912のこの構成ではセンサチップ902上の応力が低減し得るが、これは、熱膨張に起因するなどの略剛性基板908のサイズ変化のセンサチップ902に対する作用が、センサチップ902上のチップ接着パッド906の位置によって少なくなり得るためである。
【0078】
装置900はさらに、センサチップ902と基板908との間に位置する可撓性充填材916を備え得る。示されるとおり、充填剤916は、容量式圧力膜904と反対側の開口部910を除き、センサチップ902と基板908との間の領域全面にわたり位置し得る。充填剤916は、センサチップ902と基板908との間のオフセット方向の移動を低減又は除去するような支持を提供し得る任意の可撓性材料であり得る。充填剤916は、シリコーン又は他の類似の材料のような生体適合性材料など、植込み装置900を包囲するために使用される材料と同じものであり得る。
【0079】
図11は、図7及び8又は図9及び10の実施形態などの植込み型センサチップの斜視図であり、ASIC及びアンテナとの電線及びコアフィラメント接続を示す。装置1100は、圧力膜1104を有する略剛性センサチップ1102、及び圧力膜1104を露出させる開口部1110を伴う略剛性基板1108を備える。圧力伝達材料1112、例えば液状又はゼラチン状材料が開口部1110内に位置して圧力を血液から圧力膜1104に伝達する。装置1100全体が、シリコーンなどの生体適合性シース1106で封入される。加えて、シース1106はまた、開口部1110内の圧力伝達材料1112としても使用され得る。
【0080】
基板1108はさらにコネクタホール1120を備え、アンテナコネクタ1114の基板1108及びセンサチップ1102への装着を促進する。コネクタ1114は、電線1116及びナイロンなどのフィラメントコア1118を備える。電線1116は、金ケーブル、又は他の然るべき材料で作られ得るもので、センサチップ1102とアンテナ(図示せず)との間の電気的接続を提供する。アンテナからの電力は電線1116を介してセンサチップ1102に伝導され、センサチップ1102に計測値を得るための電力を供給し得る。信号、例えば圧力計測値及び識別指標などは、電線1116によりセンサチップ1102からアンテナに伝送され、読取機に伝送され得る。フィラメントコア1118はコネクタ1114に対し強度を提供し、基板接着パッド(図示せず)と電線1116との間の接続におけるひずみを低減又は除去する。例として、この種類の張力緩和は、2個の植込みチップ間又はチップとコイルとの間の接続で実施され得る。フィラメントコアは、電気を伝導せず熱膨張係数の小さいナイロン又は他の類似の可撓性合成材料で作製されてもよい。この接続はここで、図12〜14の例を参照しながら以下にさらに詳細に記載されることとなる。
【0081】
図12及び13は、切抜き部が略剛性基板の縁部に位置する植込み型センサチップ1200を、ケーブル及びコアフィラメント接続を含めて示す。植込み型装置1200は、圧力膜1204を有する略剛性センサチップ1202を備える。本実施形態において、容量式圧力膜1204は、センサチップ1202の片側の縁部近傍に位置する。装置1200はさらに、コネクタホール1220及び圧力膜1204の反対側の切抜き部1210を有する略剛性基板1208を備える。圧力伝達材料1212が切抜き部1210内に位置して圧力を血液から圧力膜1204に伝達する。装置1200はシリコーンなどの生体適合性シース1206で包囲されている。本発明の好ましい実施形態に従えば、圧力伝達材料1212はシース材料1206と同じであり得る。
【0082】
装置1200はさらに、電線1216及びフィラメントコア1218を含むコネクタ1214を備える。電線1216は、金、又は任意の他の好適な類似の材料で作られ得るもので、基板接着パッド1222に接続されるとともに、基板接着パッド1222がチップ接着パッド1224と接続される。この結果、電線1216とセンサチップ1202との間に電気的接続がもたらされる。フィラメントコア1218は接着剤などにより基板1208に直接装着され得る。図13に示されるとおり、フィラメントコア1218はコネクタホール1220を貫通して基板1208に装着され、このときフィラメントコア1218が真っ直ぐ引かれても電線1216が余分な弛みを有するようにされる。この構成により、コネクタ1214又は基板1208のいずれかが移動したときの電線1216と基板接着パッド1222との間の接続のひずみが低減又は除去され得る。さらに、張力緩和を提供するためのかかる方法は、2個のチップを接続するワイヤを緩和するなど、2個又はそれ以上のチップを用いる実施形態で使用され得る。電線1216の張力緩和を提供するための当該技術分野において周知の任意の他の方法もまた使用され得る。
【0083】
図14及び15は、切抜き部が基板の縁部に位置するとともに保護障壁が基板の一端に位置する植込み型センサチップを概略的に示す。装置1400は、容量式圧力膜1404(図15に図示)を有する略剛性センサチップ1402を有する。装置1400はさらに、圧力膜1404の略反対側に位置する切抜き部1410を有する略剛性基板1408を備える。センサチップ1402上のチップ接着パッド1418は、従来の方式で基板1408の基板接着パッド1420と接続される。装置1400は生体適合性シース1406に封入される。
【0084】
基板1408は、基板1408の平面に略垂直であり得る障壁1414を備える。障壁1414は、それが基板1408に装着されたとき、障壁1414の上部がセンサチップ1402の上部と同じか又はそれ以上の高さとなるようにされ得る。障壁1414はチップセンサ1402の追加的な保護を提供し得るもので、例えばチップ1402の鋭利な端部の磨耗、又はそれによるシース1406の穿刺を防止する。加えて、矢印様の形状をした基板1408の前部1412は障壁1414を超えて位置するとともにテーパ状であり、血液乱流のチップセンサ1402に対する影響を低減又は除去すると同時に、装置1400の心臓内への植込みを補助する。前部1412は、装置1400のカテーテル又は他の最小侵襲手術を介した植込みを特に補助するよう設計され得る。この補助はテーパ部1412、ひいては装置1400が心臓に挿入されるときに行われ得る。障壁の縁部は若干円形化される(この図面には図示せず)ことで、一切の磨耗又はシースの穿刺を回避する。図示されないが、圧力伝達材料及び/又は充填材が装置1400で使用され得ることは理解される。
【0085】
図16は、センサチップの一端で端部キャップとして形成される障壁のさらなる実施形態の横断面図を概略的に示す。装置1600は、容量式圧力膜1604を有するセンサチップ1602を有する。装置1600はさらに、圧力膜1604と略反対側に位置する切抜き部1610を有する基板1608を備える。センサチップ1602上のチップ接着パッド1618は、従来の方式で基板1608の基板接着パッド1620と接続される。装置1600はまた、生体適合性シース(図16には図示せず)に封入されてもよい。
【0086】
基板1608は、前の実施形態と同様、基板1608の平面に略垂直な障壁1614を備え得る。障壁1614は、それが基板1608に装着されるとき、障壁1614の上部がセンサチップ1602の上部と同じか又はそれ以上の高さとなるようにされ得る。加えて、障壁は、障壁1614の上部から内側に基板1608と略並行にセンサチップ1602を覆って延在する上部カバー1616を備えることでセンサチップ1602の上部の保護を提供する。図16にはセンサチップ1602の小さい領域のみを覆って延在するものとして示されるが、障壁上部カバー1616は、センサチップの全長又はそれ以上にわたる場合を含め、さらに延在し得るであろうことは理解される。障壁1614及び障壁上部カバー1616は、上記で考察されるとおり、チップセンサ1602及びシースに追加的な保護を提供し得る。より具体的には、障壁上部カバー1616は、チップセンサ1602の鋭利な縁部がシース材料1606に対し擦れることにより生じ得るであろうシース1606に対する損傷を阻止し得る。加えて、基板1608の前部1612は障壁1614を越えて位置するとともにテーパ状であってもよいことから、同様に上記で考察されるとおり、乱流を低減し得ると同時に、装置1600の心臓内への植込みを補助し得る。
【0087】
図17は、生体適合性シースにケーシングされる本発明のセンサチップを概略的に示す。センサチップ1700は、略剛性基板1702に設置されるとともに生体適合性シース1706に封入されるASIC1704を備える。センサシステム、すなわち、ASIC1704、基板1702、ケーブル(図示せず)及びアンテナ(図示せず)は、シリコーン、ポリウレタン又は他の好適な材料などの生体適合性シースに封入され得る。システムの封入は好ましくはシームレスであり、すなわち、割れ目又は継ぎ目がない。これにより体内の流体によるセンサシステム構造の汚染又は損傷のリスクが低減又は除去される。例として、封入体の厚さは約0.01mm〜約0.8mmの範囲であり得る。シームレスシースはシームレス成形か、又はセンサチップ1700全体(センサASIC、ケーブル及びアンテナ)を生体適合性材料に浸漬することにより得られ得る。
【0088】
植込み装置は心臓に設置されることで心腔内の血流の乱流及び反動力を最小化し得る。図18に示されるとおり、センサチップ1700は、側面1712などのその最短側面が血流路1716の最上流位置に位置決めされ得るよう置かれる。最上流位置は血流が最小となる領域に相当し、植込み装置1700により引き起こされる流れ及び反動力を低減及び/又は最小化する。この位置決めは、チップ上の圧力センサ1708の位置に関わらず行われ得る。図示されるとおり、容量式圧力膜1708の上表面を含むセンサチップ1700のより長い側面1710は、血流1716と平行であり得る。
【0089】
図18に示されるとおり、シース表面1714の形状はまた、湾曲しているか、又は例えば、図18に示されるフットボール形と同様の形状であって、センサチップの周囲の血流1716により引き起こされる乱流をさらに低減してもよい。生体適合性シース1708が植込み装置1700に適用されることで湾曲表面1714が形成され得る。かかる湾曲形又は他の形状は、流体力を最小化するよう設計され得る。
【0090】
シリコーンなどの完全な生体適合性材料に封入する結果、圧力センサの感度変化はほとんど生じないであろう。さらに、封入材料の影響による小さいオフセットは較正中に補償され得る。これにより、例えば、約±2mmHg以下の計測が可能となる。
【0091】
図19は、本発明の二重基板センサの実施形態の側面図であり、いかにシースの形状が心臓における乱流及び反動流体力を最小化するよう構成され得るかを示す。植込み型装置1900は、容量式圧力膜1904を有する略剛性ASIC1902と、圧力膜1904の略反対側に開口部1910を有する基板1908とを備える。図示されるとおり、装置1900はシース1906に封入される。シース1906は生体適合性材料、例えばシリコーンで作製されてもよく、これは可撓性であるため血液からの圧力が圧力膜1904に伝達され得る。圧力伝達材料(図示せず)が開口部1910に置かれ、圧力の伝達を補助し得る。シース1906は楕円形又はフットボール形などの形状であることにより、血流1912からの流体力を低減又は除去し得る。さらに、装置は最小側面が血流の1912の上流位置にくるよう置かれる。
【0092】
図20は、本発明の別の実施形態の側面図であり、いかにシースの形状が心臓における乱流及び反動流体力を最小化するよう構成され得るかを示す。装置2000は図19の実施形態と同一の構成要素を有するとともに同様の番号が付される。しかしながら、本実施形態において、シース2006は丸みを帯びた三角形のような形状であることにより、血流1912からの流体力を低減又は除去し得る。
【0093】
図21は、本発明の原理に従い構築される植込み型遠隔計測装置の実施形態を示し、これは特に、センサチップ及びアンテナが中隔の反対側に位置する場合のカテーテル処置を介した植込みに適している。説明のため、植込み型装置2100は心臓の左心房の圧力を感知する位置で心中隔36に植え込まれるが、任意の心腔又は心血管系の他の部位、例えば肺動脈又は任意の他の大血管などの圧力を感知する位置に植え込まれてもよい。植込み型装置2100は、略剛性センサチップ2102、アンテナ構造2106、及び弾性の固定用構造2108を備える。センサチップ2102はASIC2118であってもよく、上記のASICのいずれかと同様で、圧力センサ2126を伴う。固定用構造2108を使用して植込み型装置2100を心臓、例えば中隔36に取り付ける。固定用構造2108は、接続部品2104、アンカー2110、並びにアンカークリップ2112及び固定装着具2130を備える。植込みプロセスの過程において、接続部品2104を心中隔36の孔40に通してASIC2118及びコイル2106を心臓壁と接続する。接続部品2104は、ポリアミドプラスチック製の矩形要素であり得る。当該技術分野において周知の他の材料もまた使用され得る。図示されるとおり、アンカー構造2108と接続部品2104との間の接続は、アンカークリップ2112によって行われ得る。アンカー2110を備えるアンカー構造2108と接続部品2104との間に機械的及び/又は電気的接続を提供する他の締結具。接続部品2104及びセンサチップ2102は固定装着具2130により接続され得る。接続部品2104は密封された生体適合性シースに埋め込まれ得るとともに、心中隔36の孔40に過不足なく適合し得る。図21及び22に示される接続部品はASICを貫通しているが、アンテナとチップとの間の可撓性ワイヤ又はケーブルなど、ASICを貫通しない接続を含め、センサ及びアンテナを心臓に接続する他の構造的方法もまた使用され得ることは理解される。
【0094】
図21の実施形態に示されるとおり、アンカー2110及びアンカークリップ2112は接続部品2104の一端に接続される。アンカー2110はアンテナ構造2106を弾性的に係合するとともにアンテナ構造2106を中隔36に押圧する。図21には、アンカー構造2108とセンサチップ2102との間の最小距離「d」が示されている。最小距離「d」は、心中隔36の厚さと一致するか、又はそれよりわずかに短いものであり得る。アンテナ構造2106がアンカー構造2108とセンサチップ2102との間に設置されるとき、距離「d」はアンテナ構造2106の幅寸法に基づき拡張され得る。
【0095】
アンテナ構造2106は、2114で概略的に示されるコイル、アンテナベース2122、及び保護シース2124を備え得る。コイル2114は植込み型装置2100にアンテナを提供するもので、金属材料、例えば金又は任意の他の然るべき材料で作製され得る。アンテナベース2122はコイル2114を支持するために提供され得る。例として、アンテナベース2122はプラスチック材料であってもよく、アンテナベース2122の外周にはコイル2114が巻回される。シース2124は、コイル2114及びアンテナベース2124の周囲に提供されることでコイル2114及びアンテナベース2124を保護し得るとともに、コイル2114からアンテナベース2124までを封止することにより協働してコイル2114をアンテナベース2124上に保持するうえで役立つ。シース2124は生体適合性材料、例えばシリコンで作製され得るとともに、連続シームレス被膜として設計され、ひいてはアンテナ構造2106をセンサチップ2102と接続する接続ワイヤ2132を封入し得る。本発明の別の実施形態に従えば、シース2124はまた、アンテナ構造2106、アンカー構造2108及びセンサチップ2102間の接続部品2104を封入してもよい。シースに対し全面的又は部分的に塗布される好適な被膜材料、例えばヘパリン、又は当業者に周知の他の材料を使用して、血栓及び/又はフィブリノゲンの形成を含む内皮化を防止又は低減し得る。
【0096】
本例で使用されるコイル2114は、1つ又は複数の電気伝導性ねじりコイルで作製され得る。コイル2114は、1つ又は複数の層、及び様々な形状で構成され得る。例えば、コイル2114は円形状、楕円状又は任意の他の幾何形状にねじられ得る。コイル2114は可撓性であり得るとともに折り畳み式の、又は巻上げられた絶縁材料上に設置されてもよく、好ましくは合成材料製であり得る。全体のコイル構造は、コイルベース2122と一体化して設計され得る。加えて、細線がねじりコイル用材料として使用され得る。コイル2114は、貴金属、例えば金、白金、イリジウム、ステンレス鋼、ばね鋼、又は当該技術分野において周知のような類似の材料で作製され得る。コイル2114は純金、又は任意の他の好適な材料で作製されることにより、生体適合性及び必要な電気伝導率の双方を提供し得る。本発明の好ましい実施形態に従えば、コイル2114及びワイヤ2132は同じ材料で作製され得るとともに、ワイヤ2132はコイル2114の一部であってもよく、例えば、ワイヤ2132及びコイル2114は一体形成される。植込み型装置2100の全ての構成要素は、コイル2114、ワイヤ2132、及びアンカー構造1408を含め、非常に小型且つ軽量であって、植込み時の心臓のひずみ及び刺激を回避し得る。従って、例として、アンカー構造2108は軽量プラスチック製であり得るとともに、コイル2114及びコネクタのワイヤ2132は比較的細く且つ軽量の電線材料、例えば薄金又は他の好適な材料で作製され得る。
【0097】
アンテナ構造2106の外周上のコイル2114の数及びサイズは、少なくとも45cmの遠隔計測範囲が達成され得るように寸法決定される。これは計測データを体外のエミッタ/受信器ユニットに伝送するうえでの最小範囲であり得る。例として、アンテナが心臓内又はその近傍に固定される場合、範囲は約45cmであり得る。しかしながら、この所要範囲は、心臓内又はその近傍におけるアンテナの位置など、様々な要因に基づき変化し得る。
【0098】
上記のとおり、計測データの収集に必要な全ての電力は、アンテナ構造2106により遠隔的に供給され得る。コイル2114は受動コイルとして設計され得る。好適なコイルの例が、独国特許出願公開第19945879A1号明細書又は同第10156469A1号明細書に説明される。
【0099】
センサチップ2102は、圧力センサ2126が左心房34又は他の心腔又は感知部位の中央に向くように植え込まれ得る。図示されるとおり、例えば後に記載される方法を使用したアンテナ構造2106の植込みに成功すると、シース2124のアンテナ構造2108との接触表面2120は、ばね様アンカー2110によって心中隔36の片側に弾性的に押圧される。この接触を使用してアンカー構造2108の心中隔36への固定を補強し得る。さらに、シース2124のセンサチップ2102に対する接触表面2134もまた、アンカー2110によって心中隔36の反対側に弾性的に押圧される。従って、接触表面2134は支持として使用されるとともに左心房34で心中隔36に固定される一方、接触表面2120は右心房における対抗支持面としての役割を担う。
【0100】
図21〜22に示されるとおり、センサチップ及びアンテナは、受動型トランスポンダコイルとして設計され、別個に配置される。こうすることで、トランスポンダコイルの形状及びサイズがセンサチップの寸法と無関係になり得る。この構成によって、植込み型装置全体が、略剛性センサチップ、可撓性トランスポンダコイル及び電気伝導性接続を含め、直径の著しく小さい構造へと巻き上げられ得る。従って、遠隔計測装置全体が、後に記載されるとおり、狭いルーメンを有する典型的な心臓カテーテルを使用した植込みに好適である。
【0101】
図22は、図21の実施形態と同様の植込み型遠隔計測装置の別の実施形態を示す。図22は、アンテナ構造2106がセンサチップ2102と心中隔36との間に設置される点で図21と異なる。従って、参照及び説明を簡単にするため、同一又は類似の部品には同一の参照符号が使用される。図22において、センサチップ2102及びアンテナ構造2106は左心房34に植え込まれる一方、アンカー構造2108は右心房32に配置される。
【0102】
アンカー構造2108及びセンサチップ2102は、心中隔36の孔40を貫通する接続部品2104により接続される。図21の実施形態と同様に、センサチップ2102と接続部品2104との間の張力から生じる機械的張力が、装置を中隔に確実に取り付けるために使用される密着性を生む。図22において、シース2124のアンテナ構造2106に対する接触表面2120はアンカー構造2108の対抗支持面としての役割を担う。
【0103】
図23は、本発明の原理に従い図21及び22の装置で使用され得る圧力センサの別の実施形態を示す。図23は内部データ伝送用の第2のトランスポンダコイル2128を示し、これはセンサチップ2102とメタライゼーション又は細線などにより機械的及び電気的に固定される。第2のトランスポンダコイルにより、図21及び22に示されるようなコイル2114とセンサチップ2102との間の接続ワイヤ2132は不要となり得るが、これはデータが遠隔的に内部データトランスポンダコイル2128から外部データトランスポンダコイル2114に、及びその後外部読取機に伝送されるためである。あるいは、データは遠隔的に内部データトランスポンダコイル2128から他のチップ(図示せず)に、及びその後外部読取機に伝送され得る。
【0104】
計測値の収集及び伝送に必要な電力は、第2のトランスポンダコイル2128と第1のコイル2114との間に遠隔的に供給される。この場合、第1のコイル2114はセンサチップ2102に固定され得る。データをコイル2114から外部読取機に伝送するため、コイル2114に十分な遠隔計測範囲が必要とされ得るとともに、患者の体内の好適な位置におけるコイル2114の皮下植込みが要求され得る。
【0105】
本発明の一例示的実施形態において、心中隔の両側に1つ又は複数のトランスポンダコイルアンテナが提供されてもよく、これらは有線で直流的に、又はテレメトリを介して無線で接続される。
【0106】
図24、25、及び26は、カテーテル処置器具及び3つの一般的原理−刺入、挿入及び植込み−を概略的に示し、これらが本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための最小侵襲性の植込み方法において用いられ得る。図24は、植込み部位、例えば心臓の中隔36への刺入を示す。従来の心臓カテーテル2400を使用して本発明の植込み型装置2402を患者の心血管系、例えば心臓に送達及び留置し得る。植込み型装置2402は、本発明の略剛性センサチップ2404、接続部品2406及びアンカー構造2408を備え、全てが高度に概略的な様式で示されている。センサチップ2404はアンテナ(図示せず)を備える。本発明の実施形態に従えば、センサチップ2404及びアンカー構造2408の双方が接続部品2406と接続されることにより選択的に長手方向に、及び枢動して、又は横断方向に移動してもよく、すなわち以下に記載されるとおり、センサチップ、アンカー構造及び接続部品はユニットとしてカテーテルにより、又はカテーテルを通じて長手方向に移動し得るとともに、センサチップ及びアンカー構造は選択的に、横断方向に移動し得るか、又は接続部品に対し枢動し得る。
【0107】
図25に示されるとおり、カテーテルは、当初右心房内に位置するカテーテル2400の遠位端により、孔40において中隔36を通じて挿入される。センサチップ2404は中隔36を穿刺するように構成されてもよく、例えば先端が円錐形で、センサチップ2404を遠位に動かすと孔40で中隔36に刺入するようにされ得る。
【0108】
図26に示されるとおり、センサチップ2404が中隔36を穿刺して左心房に進入すると、接続部品2406は中隔36の孔40内に位置する。アンカー構造2408は右心房に留まる。センサチップ2404は、当該技術分野において周知の任意の方式で接続部品2406とのその接続の周りを移動又は旋回することで、中隔36の内表面に対し拡張位置をとることができ、センサチップ2404を固定し得る。具体的には、このときセンサチップ2404は医師に向けて近位方向に引き込まれるため、その表面が中隔36の内側と接触する。接続部品2406の一部は中隔36の孔40内に収まる。アンカー構造2408は当該技術分野において周知の任意の方式で接続部品2406とのその接続の周りを同時に又は後に移動又は旋回することで、接続部品の長手方向軸に対し横断方向となる。次にアンカー構造2408が中隔36に対し位置決めされ、接続部品2406に取り付けられる。アンカー構造2408及び接続部品2406は、例えば図21〜22で上記に開示されるとおり、相互作用してセンサチップ2402を中隔36に装着する。
【0109】
図27、28、29、30、及び31は、カテーテル処置器具の別の実施形態並びにより具体的な操作ステップ及び構造を示し、これは本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための別の最小侵襲方法で用いられ得る。本発明の実施形態に従えば、本発明の遠隔計測装置は折り畳み可能なアンカー構造2712を備え、これはカテーテルの開放遠位端2718から解放されると飛び出して拡張位置をとる弾性アームで形成され得る。このアンカー構造2712を使用することで、センサチップ2708は本明細書に記載されるとおりのASICであってもよく、又は明らかに可撓性や折り畳み式ではない、又は巻き上げられない他の略剛性材料製であってもよい。アンカー構造2712を使用してセンサチップ2708を心中隔36又はその近傍の部位に固定し得る。アンカー構造2712の一部は孔40内、並びに心中隔36の両側に留置される。ワイヤで形成され得るアンカー構造2712の弾性アーム2714は、送達後に心中隔36の両側に配置され(図32に示されるとおり)、植え込まれたセンサチップ2708を支持し得る。ここで器具及び植込みステップについて、以下にさらに詳細に記載されることとなる。
【0110】
図27を参照すると、遠隔計測装置はカテーテル2700のルーメン2706内に位置し、カテーテルは心臓を含む心血管系内に医療装置を留置するために使用される従来の心臓カテーテルであり得る。センサチップ2708は、中隔36などの心臓壁を穿刺するための円錐端部品2704内に位置し得る。センサチップ2708は遠位カテーテル開口2718の近傍に位置する一方、アンカー構造2712はカテーテルルーメン2700内で折り畳み位置に畳まれてから送達され、植え込まれる。
【0111】
一般に、心中隔36の孔40は、中隔を通じてカテーテルの先端2704を挿入することにより人工的に生じさせ得る。カテーテル2700は、遠位カテーテル開口2718が中隔36と対向するように心臓内に留置される。円錐端部品2704は、長手方向に押し通されることで中隔36及び孔40を貫通するように構成され得る。円錐端部品2704は生体適合性シースで封入され得るとともに、開口2718が左心房などの室腔を通過した後、遠位カテーテル開口2718に対し内側に遠位に移動し得る。かかる相対移動をもたらす当該技術分野において周知の任意の手段が用いられ得る。
【0112】
上記で考察されるとおり、アンカー構造2712は、通常は拡張位置をとるが、ルーメン2706内に適合する折り畳み位置に畳むことが可能な1つ又は複数のループ状ワイヤ要素2714で作製され得る。クイル状クリップなどのアンカークリップ2716a、2716b、2716cを使用して、アンカー構造2712のワイヤ要素2714の一部を共に装着し得る。クリップ2716a、2716b、及び2716cは、送達前に装着される。ワイヤ要素2714は、合成材料製の自己拡張型支持ユニットであり得る。例えば、ニチノールなどの形状記憶金属が使用されることにより、ワイヤ要素2714はカテーテルの端部から展開されるとその元の形状に拡張し得る。アンカー構造2712は、送達中はカテーテルルーメン2706内に圧縮されるように設計される。
【0113】
図27及び28に示されるとおり、遠位カテーテル端2718及びセンサチップ2708が中隔36を通じて挿入されると、アンカー構造2712もまた中隔36を通じて挿入されるため、アンカークリップ2716aは中隔36を越えて心腔に位置するが、クリップ2716bはルーメン2706中に留まる。ここでワイヤアーム2714が自由となり、その通常の拡張位置へと展開する。
【0114】
図29及び30に示されるとおり、カテーテルルーメン2706は次に、孔40を通じてそこから近位に引き戻される。これによりセンサ2708及びワイヤアーム2714もまた近位に引かれ、これらは元の形状に拡張して中隔36の内表面と接触する。図29及び30に示される実施形態において、アンテナ2710は3本のワイヤアーム2714のうちの1本に位置し、これが中隔36と接触する、すなわちアンテナ2710は中隔36のセンサチップ2708と同じ側にある。
【0115】
さらに、同様にワイヤ要素2714と係合する植込み型クリップ2716bが孔40に引き込まれる。クリップ2716bと2716cとの間の3本のワイヤアーム2714の近位部もまた、カテーテルがさらに引き込まれるに従いカテーテルルーメン2706から展開されるが、クリップ2716c及びワイヤ要素2714の残り部分はこの時点ではカテーテルルーメン2706内に留まり得る。センサチップ2708と反対側の中隔36の近位外側にあるワイヤ要素2714がここで展開されるとともに図29及び30に示されるようなその元の拡張形状を回復する。
【0116】
図31は、カテーテルが装置から取り外された後、当該技術分野において周知の任意の手段により適所に植え込まれるとともに中隔36に装着される遠隔計測装置を示す。中隔36の両側のワイヤアーム2714はその拡張形状を回復しているとともに中隔36の壁に接触し、孔40内に位置するワイヤ要素2714の中間位置がクリップ2716bにより折り畳み位置で保持されている。ベンド又はエルボなどのセンサ締結具2702がセンサチップ2708を左心房34内に、且つ心臓それ自体、及び特に中隔36からは遠ざけて支持する。従って、アンカー構造2712の設計によりセンサチップ2708の左心房への植込みが可能となる。アンテナ構造2710は、アンカー構造2712のワイヤ要素2714の表面に位置し得る。血圧はセンサチップ2708の圧力センサ(図示せず)に直接作用し得る。従って、アンカー構造2712のセンサ締結具2702は、センサチップ2708をアンカー構造2712に装着するとともにセンサチップ2712を中隔36から遠ざけておく。心臓の動き、特に心中隔の動きによるセンサチップ2708の劣化作用は、低減されるか、又は重大なものではなくなるであろうとともに、従って計測結果の質に対する影響は少ないか、又は重大なものではない。こうした影響はまた、圧力センサが内蔵される上記のようなASICなどの略剛性センサの設計にも起因し得る。以上により、センサチップ2708による実血圧値のみの計測及び取得が可能となる。従来の可撓性圧力計測装置で起こり得る誤計測又はネガティブリポートが回避され得る。
【0117】
図32及び33は、図27、28、29、30、及び31に記載される方法において使用される本発明の植込み型遠隔計測装置の別の実施形態を示す。より具体的には、図32及び33の実施形態は、中隔36に固定されるがアンテナ2710が中隔36のセンサチップ2708と反対側に位置する植込み型装置を示す。本発明の実施形態に従えば、導電性ワイヤ(図示せず)が孔40に位置するとともにアンテナ装置2710をセンサチップ2708と接続する。あるいは、センサチップ2708が、アンテナ2710と遠隔的に通信する内部コイルを有し得る。他の構成もまた当業者が認識するであろうとおり使用され得る。
【0118】
そのほぼ矩形の形状により、センサチップ2708はカテーテル植込み方法に最適であり得る。センサチップ2708の直径は、心中隔36の孔40の典型的サイズに適合させ得る。
【0119】
植込みプロセス中、折り畳まれるか、又は巻き上げられるアンテナ2710は、センサチップ2708の矩形に対し長辺方向に配置され得る。アンテナ2708及びセンサチップ2708もまた、電気伝導性接続部品を介して接続され得る。
【0120】
植込み型装置は、他の種類の物理量、例えば植込み箇所における血液温度などもまた計測できるように設計され得る。血圧及び血液温度の双方の値が、同時に、又は非同期的に計測され得る。
【0121】
本発明の別の実施形態に従えば、本発明の植込み型センサチップは2つ以上の心腔の状態を感知し得る。図34は、本発明の複数心腔感知装置3400の配置を示す。センサチップ3400は、外科的に、又はカテーテル処置を介して、例えば本明細書に記載される技術を使用して、心臓30の中隔36に植え込まれる。ASICなどのセンサチップ3400は、右心房34に位置する圧力センサを有する第1の圧力感知部3402、及び右心房32に位置する圧力センサを有する第2の圧力感知部3404を有する。あるいは、2個以上のチップが配線により接続され、2つ以上の室腔における感知を実現するように設置される。次にデータは、本発明に従い、然るべきプロトコルを使用して外部読取機に伝送され得る。
【0122】
図35は、植え込まれたセンサチップから遠隔的にデータを受信するための本発明の外部読取機3500の主要な電子部品のブロック図である。アンテナ3502は、図1〜2に概略的に示されるとおり、外部読取機3500と一体化され得る。また、図1に示されるとおり、外部読取機12は患者に装着されてもよく、あるいは、図2に示されるとおり、外部読取機26は携帯用装置内部に組み込まれてもよい。他の場合において、アンテナ3502は患者の体に装着されてもよく、又はケーブル接続により外部読取機3500と接続されてもよい。別の方法は外部読取機を患者のベッド又は椅子に装着する。当業者は認識するであろうとおり、特定の適用に適合させるためかかる構成を多数用いてもよい。
【0123】
アンテナ3502を使用して、植え込まれたセンサチップからデジタル信号の形態のデータを受信する。デジタル信号はRF発振器3504を介してRF受信器3506で受信される。RF発振器3504は、アンテナ3502を介して伝送されるRF信号を生成して植込み装置に電力を供給する。
【0124】
RF受信器3506により受信されるデジタルデータ信号は、受信前にフィルタ3508及び復調器3510により処理された後、必要に応じて制御器3512により処理される。以下に詳細に記載される双方向電力モジュール3528がフィルタ3506と復調器3510との間に接続される。別個のメモリ装置、例えば較正メモリ3522、データメモリ3524、及びパラメータメモリ3526などが提供され、制御器3512と通信する。較正メモリ3522は特定のASICセンサシステムに関連する較正情報を格納し、且つ較正メモリ3522は数多くの異なるASICセンサシステムについての較正情報を格納し得る。較正情報は、コンピュータなどの外部源から通信ポート3516を通じて取得され得る。問い合わせされているASICセンサシステムの固有の識別番号に基づく然るべき較正情報が、較正メモリ3522から取得される。従って、医師又は看護師などの医療従事者は1つの読取機を使用して複数の患者からの圧力読取り値を取得することができる。
【0125】
データメモリ3524は、植え込まれたセンサチップのASICから受信される圧力及び/又は温度に関するデータを格納する。データはデータメモリ3524に格納され得るとともに、次にデータメモリモジュール3514を介して、コンピュータなどのデータ通信ポート3516を通じた他の装置に転送され得る。大気圧モジュール3520から取得される情報を用いて、制御器3512はアンテナ3502から受信されるとともにデータメモリ3524に格納されるデータを使用することにより、当該技術分野において周知のとおり心臓内の圧力を決定する。周囲温度モジュール3518からの情報を用いて、制御器3512はこのデータを使用することにより、当該技術分野において周知のとおり心臓内の温度もまた決定する。
【0126】
制御器3512で実行される圧力及び温度計算値、並びに植え込まれたセンサチップからのデータは、データメモリモジュール3514に格納される。これらの計算値及びデータは次に、他の装置、例えばコンピュータに通信ポート3516を通じて通信され得る。
【0127】
圧力センサ読取り値、及び以下に記載されるパラメータアラートが、読取機によりLCDディスプレイなどのディスプレイ(図示せず)上に表示され得る。計測された圧力値及びパラメータアラートはまた外部読取機(図示せず)のモニタ上に表示され得るとともに然るべき記憶装置に記録されてもよい。本システムは遠隔医療を目的として配備されるため、データは外部読取機から医局又はヘルスケア提供者に対し、有線、電話、インターネット又は任意の他の好適な電気通信源により既知の有線又は無線プロトコルを介して伝送することが可能とされ得る。
【0128】
パラメータメモリ3526はパラメータ閾値を格納する。植え込まれたセンサチップから受信されるデータは、制御器3512によりパラメータ閾値と比較される。データが特定の閾値に満たないか、又は特定の閾値を超過する場合、アラームが発行されユーザは警告を受ける。閾値パラメータは医師又は他のヘルスケア専門家により設定され得る。例として、圧力の閾値範囲は、患者に応じて25〜30mmHgに設定され得る。読取機が25mmHgという計測値を受信した場合、これは閾値範囲を上回っているため、読取機はユーザに対し、計測値が閾値を超過した旨の警告を発する。さらに、アラートは時間毎の圧力上昇に基づき発行され得る。他のパラメータもまた使用され得る。
【0129】
パラメータ閾値は、ユーザがパラメータ閾値を手動で入力することなどにより外部読取機3500に提供され得る。あるいは、パラメータ閾値は別の装置、例えばコンピュータなどから通信ポート3516を通じて外部読取機3500に提供され得る。パラメータ閾値は、配線によるなどの直接接続を介して、又はLAN、WANなどの無線接続により提供され得る。
【0130】
較正メモリ3522、データメモリ3524及びパラメータメモリ3526は、外部読取機内の別個のメモリ記憶装置であってもよく、又は各々が単一のメモリ記憶装置の一部であってもよい。読取機は13.56MHz、又は他の既知の周波数の信号を使用し得る。好適な読取機の一例が、公開済み特許出願PCT/EP2004/012670号に開示される。
【0131】
双方向電力評価モジュール3528は、植込み装置からの受信信号の強度の評価を補助して、最低信号強度の受信を保証する。アンテナ3502を介した植込み装置からの受信信号は、双方向電力評価モジュール3528により評価される。評価は様々な方法により実施され得る。本発明の実施形態に従えば、読取機はアンテナ3502を介して植込み装置に送信される信号電力を、小さく増加するインクリメントで増加させ得る。各インクリメントにおいて、双方向電力評価モジュール3528は植込み装置から返される受信信号を評価して信号の質及び強度を判定する。このプロセスは、植込み装置からの受信信号が合格するまで繰り返される。次に読取機は、許容可能な信号を達成するために必要な最小電力を使用し、装置からのデータの読取り、例えば圧力及び温度計測を実行し始める。これは、所定の回数の読取り(例えば、5回の読取り)を連続してとることにより実行され得る。全ての読取り値は、最小電力が決定された後にとられ得る。あるいは、双方向電力評価モジュール3528は、各々の所定の読取り後の最小電力レベルを決定し得る。
【0132】
本発明の別の実施形態として、読取機は、有効な信号が植込み装置から受信されるまで、より大きなインクリメント、例えば4分の1フーリエステップ(FSステップ)で、アンテナ3502により供給される電力レベルを上昇させ得る。有効な信号が得られたら、電力を1/4FSなどの1ステップだけ減少させ、次に有効な信号が受信されるまで1/8FSステップなどのより小さいステップで増加させる。このプロセスは、漸進的に小さくなるステップ(1/16FS、1/32FS)を使用して最小電力レベルが決定されるまで繰り返される。読取機は次に、得られた最小電力レベルを使用して所要の電力設定を計算するとともに所定数の読取り値を取得する。
【0133】
別の方法では、上記の信号状態分析に加え、信号の復調品質レベル(DQL)の評価が関与する。信号のDQLはコイルの幾何形状及び/又は読取機からの距離の変化に伴い変化する。これは所要の始動電力を評価するために増分アルゴリズムを使用せず、最後の計測の最終電力設定を使用する。読取機は以前に使用されたレベルに電力を設定する。読み取りが可能な場合、読取機はDQLに従い次の読取りのために電力を増加又は減少させる。読取りが不可能な場合、読取機は植込み装置から有効な信号が受信されるまでインクリメントして電力を増加させる。所定の回数(例えば、5回)の読取りが成功すると、読取機は計測値の読取りを得る。これらの計測値読取り中、読取機はDQLに従う電力レベルを増加、減少、または維持し続けて、有効な信号を取得する。
【0134】
電力調整の使用により結果として、ASICにおいて使用される電圧制御器/安定器の供給電圧(VDDA)について、様々な有益な特性及び特徴がもたらされ得る。電力調整を使用すると、一般的にVDDAについての同相信号除去比(CMRR)が高く、同時にVDDAについての無線周波数(RF)抑制が良好である。加えて、供給電力が十分でない場合に起こり得る、VDDAが許容限度未満の場合には、速いパワーオンリセット(POR)信号が使用される。PORが「1」でない場合には計測値又は信号伝送がないため、電力調整を使用して適正な電源供給を決定することによりこうした難点が回避され得る。
【0135】
本発明の植込み型センサチップはまた、体内に植え込まれる他の装置に組み込まれるか、又は装着されてもよい。かかる装置の例としては、ペースメーカー、除細動器又は薬剤ディスペンサを挙げることができる。
【0136】
本発明は例示的実施形態に関して記載されているが、当業者は認識するであろうとおり、本発明は添付の特許請求の範囲の精神及び範囲において修正して実施され得る。例えば、上記の実施形態は本発明のテレメトリ感知装置の心臓内への植込みを対象としているが、1つ又は複数のかかる装置が、患者の心血管系の他の位置、例えば大動脈、肺動脈、又は任意の他の大血管内に植え込まれ得る。上記に与えられるこれらの例は単に例示であるとともに、本発明の全ての可能な設計、実施形態、適用又は修正を網羅した列挙であることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図面の簡単な説明
【図1】継続的又は定期的な心内圧モニタリングを提供する、本発明の原理に従い構築される植込み型遠隔計測装置及び読取機の実施形態を概略的に示す。
【図2】オンデマンドの心内圧モニタリングを提供する、本発明の原理に従い構築される植込み型遠隔計測装置及び読取機の別の実施形態を概略的に示す。
【図3】左右心房及び後中隔における静脈の交差部を含む、本発明の植込み装置が用いられ得る患者の心臓領域の断面図を示す。
【図4】能動型及び受動型の容量膜式感知素子、並びにデジタル信号処理及びテレメトリ電源供給のためのオンチップ電子部品を含む、心内圧及び温度を感知するための、本発明の原理に従い構築される略剛性ASICの大きく拡大された平面図を示す。
【図5】能動型圧力センサ及び受動型圧力センサの一部を示す本発明のASICの拡大断面図である。
【図6】シースと能動型圧力センサとの間の圧力伝達ゲル又は流体を示す本発明のASICの拡大断面図である。
【図7】切抜き部を有する略剛性基板と両端で接続される略剛性ASICを備える本発明の植込み型センサチップの一実施形態の断面図を概略的に示す。
【図8】切抜き部を有する略剛性基板と両端で接続される略剛性ASICを備える本発明の植込み型センサチップの一実施形態の上面図を概略的に示す。
【図9】切抜き部を有する基板と一端で接続される略剛性ASICを備える本発明の植込み型センサチップの別の実施形態の断面図を概略的に示す。
【図10】切抜き部を有する基板と一端で接続される略剛性ASICを備える本発明の植込み型センサチップの別の実施形態の上面図を概略的に示す。
【図11】ASICとアンテナとの間の電線及びフィラメントコア接続を示す図7及び8又は9及び10の植込み型装置の斜視図である。
【図12】切抜き部が基板の縁部に位置する本発明の植込み型センサチップの斜視図を示す。
【図13】図12の実施形態の電線及びフィラメントコア接続を示す斜視図である。
【図14】略剛性基板の縁部に位置する切抜き部及び一端に位置する保護障壁を有する本発明の植込み型センサチップのさらに別の実施形態を概略的に示す。
【図15】略剛性基板の縁部に位置する切抜き部及び一端に位置する保護障壁を有する本発明の植込み型センサチップのさらに別の実施形態を概略的に示す。
【図16】本発明の保護障壁のさらなる実施形態の断面図を概略的に示す。
【図17】生体適合性シースにケーシングされる本発明のセンサチップを概略的に示す。
【図18】図17に示される装置の側面図であり、いかにセンサの形状が心臓における乱流及び反動流体力を最小化するようフットボール形状として構成され得るかを説明する。
【図19】本発明の二重基板センサチップの側面図であり、いかにシースの形状が心臓における乱流及び反動流体力を最小化するよう構成され得るかを示す。
【図20】本発明の別の実施形態の側面図であり、いかにシースの形状が心臓における乱流及び反動流体力を最小化するよう構成され得るかを説明する。
【図21】本発明の植込み型遠隔計測装置の実施形態を概略的に示し、これは特にセンサチップとアンテナとを中隔の反対側に位置させるカテーテル処置を介した植込みに適する。
【図22】本発明の遠隔計測装置の別の実施形態を概略的に示し、これはセンサチップ及びアンテナを中隔のモニタされる心腔と同じ側に位置させるカテーテル処置を介して植え込まれ得る。
【図23】図21及び22の遠隔計測装置において使用され得る内部データ伝送コイルを有する略剛性センサチップの別の実施形態を概略的に示す。
【図24】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置の器具及び一般的原理の実施形態を概略的に示す。
【図25】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置の器具及び一般的原理の実施形態を概略的に示す。
【図26】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置の器具及び一般的原理の実施形態を概略的に示す。
【図27】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための別の最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置器具のステップの別の実施形態を概略的に示す。
【図28】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための別の最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置器具のステップの別の実施形態を概略的に示す。
【図29】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための別の最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置器具のステップの別の実施形態を概略的に示す。
【図30】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための別の最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置器具のステップの別の実施形態を概略的に示す。
【図31】本発明の原理に従う遠隔計測装置を植え込むための別の最小侵襲方法において用いられ得るカテーテル処置器具のステップの別の実施形態を概略的に示す。
【図32】図27、28、29、30、及び31に記載されるカテーテル処置方法において使用するための植込み型遠隔計測装置の別の実施形態を示す。
【図33】図27、28、29、30、及び31に記載されるカテーテル処置方法において使用するための植込み型遠隔計測装置の別の実施形態を示す。
【図34】本発明の原理に従い構築される複数の心腔用センサチップの配置を概略的に示す。
【図35】植え込まれたセンサチップから遠隔的にデータを受信するための、本発明の原理に従い構築される外部読取機の主要な電子部品のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心血管系内部の血圧を計測するための心内圧計測システムであって、
アンテナと、
第1の略剛性基板、感知された圧力を示す信号を生成するための前記基板内に配置される少なくとも1つの圧力センサ、及び前記少なくとも1つの圧力センサにより生成される信号を処理するための電子信号処理部品を備える集積チップであって、前記電子信号処理部品が前記アンテナと動作可能に接続され、前記集積チップが前記アンテナで受信される信号を電源とする集積チップと、
前記少なくとも1つの圧力センサが血液に曝露されるように前記集積チップを心血管系の壁に取り付けるためのアンカー構造と、
遠隔受信器と、
を含んでなり、前記集積チップが心臓で感知される圧力を示すデジタル信号を遠隔的にアンテナを介して前記遠隔受信器に送信する機能を有するとともに、前記アンテナ、前記集積チップ及び前記アンカー構造が心血管系への植込み用送達カテーテル内に適合するサイズとされる、システム。
【請求項2】
少なくとも1つの心腔内又は大血管のうちの1本の内部の血圧を計測する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの圧力センサが、前記基板に内蔵される容量型圧力感受性膜を含んでなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの圧力センサが感知された圧力に応答してアナログ信号を生成するとともに前記電子信号処理部品が少なくとも1つのアナログ/デジタル(A/D)変換器を備えることにより心臓内で前記少なくとも1つの圧力センサからのアナログ信号をデジタル化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記集積チップの重量が約1グラム未満、1つの側面の表面積が約25mm以下及び厚さが約1mm未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アンテナ、前記チップ、及び前記アンカー構造がシームレスのワンピース生体適合性シースに封入される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記生体適合性シースと前記少なくとも1つの圧力センサとの間に間置される圧力伝達媒質をさらに含んでなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記生体適合性シースが前記少なくとも1つの圧力センサに対する圧力伝達媒質として働く、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記シースが心臓内の血流の乱流を最小化するような形状とされる、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記集積チップが固有のデジタル識別情報をさらに含むとともに、前記固有のデジタル識別情報が前記受信器に遠隔的に送信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記受信器が前記固有のデジタル識別情報に基づき前記集積チップに関連する較正情報を取得する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記受信器が格納パラメータを含むとともに心臓で感知される圧力及び前記格納パラメータを示す信号に基づきアラートを発行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記集積チップが第1の集積チップ及び第2の集積チップを含んでなり、前記第1の集積チップと前記第2の集積チップとが物理的及び/又は動作可能に接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の集積チップが前記少なくとも1つの圧力センサ及び少なくとも1つのアナログ/デジタル(A/D)変換器を備えるとともに、前記第2の集積チップが前記アンテナと動作可能に接続される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の集積チップが前記第2の集積チップと異なる心室腔に位置する、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの圧力センサが、心臓内の圧力変化に応答する少なくとも1つの能動型センサ及び心臓内の圧力変化から隔離される少なくとも1つの受動型センサを含む複数の圧力センサを含んでなるとともに、
前記電子信号処理部品が、少なくともある部分、前記少なくとも1つの能動型圧力センサからの信号及び前記少なくとも1つの受動型圧力センサからの信号に基づく信号を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記圧力信号が、前記少なくとも1つの能動型圧力センサからの信号を前記少なくとも1つの受動型圧力センサからの信号で補正した結果である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記略剛性センサが、前記アンカー構造と協働して前記アンテナ及び前記略剛性センサチップを心臓内に取り付けるための表面を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記アンカー構造が前記アンテナ及び前記略剛性センサチップを心中隔に取り付ける、請求項2に記載のシステム。
【請求項20】
前記アンテナが心中隔の片側に取り付けられるとともに前記略剛性センサが中隔の逆側に取り付けられる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記アンテナ及び前記略剛性センサが中隔の同じ側に取り付けられる、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記アンテナが心中隔に隣接する第1の表面及び前記アンカー構造の少なくとも一部に隣接する第2の表面を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項23】
前記アンカー構造が弾性部材を含んでなることにより、前記アンカー構造が送達カテーテルのルーメン内に適合する圧縮位置形状から拡張位置に拡張可能となる、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記弾性部材がワイヤループを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記アンテナが可撓性且つ折り畳み式であって送達カテーテルのルーメン内に適合する、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記略剛性センサが温度センサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記能動型圧力センサの構造が前記受動型圧力センサの構造と実質的に同じである、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記複数の圧力センサが、可撓性可動膜を各々有する容量式圧力センサを含んでなる、請求項16に記載のシステム。
【請求項29】
受動型圧力センサ信号が前記受動型圧力センサの前記膜の位置変化に応答するとともに前記受動型圧力センサの前記膜の位置変化が前記膜のたわみを含んでなるドリフト効果に起因する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記能動型圧力センサの前記膜の位置変化が、
心臓内の圧力変化、及び
前記膜のたわみを含んでなるドリフト効果、
に起因する、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
請求項1に記載の圧力計測システムを送達するためのカテーテル。
【請求項32】
中空部及び第1の開口を有するカテーテルルーメン、及び
前記圧力計測システムを前記中空部内で側方向に移動させて前記カテーテルルーメンの前記第1の開口から出す機能を有するシステムガイド、
を備える、請求項31に記載のカテーテル。
【請求項33】
前記集積チップが、患者の壁又は器官を穿刺する機能を有する円錐形状を有する、請求項39に記載のカテーテル。
【請求項34】
対象者の心血管系内の血圧を感知する方法であって、
(a)少なくとも1本のカテーテルを使用して最小侵襲で前記対象者の体内に略剛性集積チップを植え込むステップであって、前記集積チップが略剛性基板と、前記基板内で心血管系の血圧を感知する位置に配置される少なくとも1つの容量型圧力センサとを備えるステップ、
(b)前記対象者の体外に位置する電源を作動させることにより前記集積チップに対し遠隔的に電力を供給するステップ、
(c)心血管系内の前記位置における圧力を示す前記少なくとも1つの圧力センサからの1つ又は複数のアナログ信号を取得するステップ、及び
(d)感知が行われる心血管系内の位置又はそこに直ちに隣接する位置においてアナログ信号をデジタル信号に変換するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項35】
前記植込みステップが心臓又は大血管のうちの1本に容量型圧力センサを有するASICを植え込むステップを含んでなる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記植込みステップが、
心血管系内の前記位置に前記容量型圧力センサを送達するステップ、及び
前記容量型圧力センサを前記位置にアンカー構造で取り付けるステップ、
を含んでなる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記植込みステップがさらに、
心血管系の前記容量型圧力センサを取り付ける位置に前記アンカー構造を送達するステップ、及び
前記アンカー構造の少なくとも一部を拡張するステップ、
を含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記カテーテルを使用して前記集積チップと動作可能に接続される折り畳み式アンテナを前記対象者の体内に植え込むステップをさらに含んでなる、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記感知された血圧に基づき心拍の波形を計算するステップをさらに含んでなる、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
患者の体内での心内血圧計測用集積チップであって、
第1の略剛性基板と、
感知された圧力を示す信号を生成するための前記基板内に配置される少なくとも1つの圧力センサと、
前記少なくとも1つの圧力センサにより生成される信号を処理するための電子信号処理部品であって、前記電子信号処理部品がアンテナと動作可能に接続され、前記集積チップが前記アンテナで受信される信号を電源とする電子信号処理部品と、
を含んでなり、前記集積チップが前記患者において感知される圧力を示すデジタル信号を遠隔的にアンテナを介して遠隔受信器に送信する機能を有するとともに、前記集積チップが植込み用送達カテーテル内に適合するサイズとされる、集積チップ。
【請求項41】
前記少なくとも1つの圧力センサがアナログ信号を生成するとともに前記電子信号処理部品が少なくとも1つのアナログ/デジタル(A/D)変換器を備えることにより患者の体内の前記チップが植え込まれる部位において前記少なくとも1つの圧力センサからのアナログ信号をデジタル化する、請求項40に記載の集積チップ。
【請求項42】
重量が約1グラム未満、1つの側面の表面積が約25mm以下、及び厚さが約1mm未満である、請求項40に記載の集積チップ。
【請求項43】
折り畳み式ではない、請求項40に記載の集積チップ。
【請求項44】
前記電子信号処理部品と動作可能に接続されるアンテナをさらに含んでなり、前記アンテナがカテーテルを介して送達するための圧縮位置及び植込み後に使用するための拡張位置を有する、請求項43に記載の集積チップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公表番号】特表2009−517137(P2009−517137A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542496(P2008−542496)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/060800
【国際公開番号】WO2007/062299
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508154933)バイタル センサーズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】