説明

心臓血管系および中枢神経系の特定疾病を治療するための縮合(ヘタリール置換)1−ベンジル−3−ピラゾール誘導体の使用

【課題】 心臓血管系および中枢神経系の特定の疾病を効果的に治療できる製薬学的製剤の提供。
【解決手段】 1−ベンジル−3−(置換ヘタリール)−縮合ピラゾール誘導体の製薬学的製剤としての使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その幾つかは既知である1−ベンジル−3−(置換ヘタリール)−縮合ピラゾール誘導体の医薬としての新規な使用、および新規な活性化合物、特に適当であれば有機硝酸エステルおよびNO供与体との組み合わせおよび適当であればcGMPの分解を阻害する化合物との組み合わせでの血管拡張薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1−ベンジル−3−(置換ヘタリール)−縮合ピラゾール誘導体が刺激された血小板凝集を試験管内で阻害することは既に知られている(特許文献1;非特許文献1;非特許文献2および非特許文献3、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第667345号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.−C.Wu等,Br.J.Pharmacol.1995;116:1973−1978
【非特許文献2】F.−N.Ko等,Blood 1994;84:4226−4233
【非特許文献3】S.−U.Yu等,Blood 1996,87:3758−3767
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、一般式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
式中、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシルまたはC−C−アルキルもしくはC−C−アルコキシを表し、
は式
【0008】
【化2】

【0009】
で示される基を表し、
ここで、
は水素、ハロゲン、カルボキシル、C−C−アルキル、C−C−アルコ
キシカルボニルまたは式−CH−ORの基を表し、
ここで、
は水素またはC−C−アルキルを表し、
およびRは一緒になって式
【0010】
【化3】

【0011】
で示される基を形成し、
ここで、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C−アルキルまたはC−C−ア
ルコキシを表す、
で示される1−ベンジル−3−(置換ヘタリール)−縮合ピラゾール誘導体またはその異性体型もしくは塩は、それらの弱い抗凝集特性の外に、顕著な血管拡張作用、特に血圧の低下を示すことが今回見出された。
【0012】
従って、上記一般式(I)で表される化合物は心臓血管系の特定の障害の治療、特に狭心症、心筋梗塞、心不全、動脈硬化、発作および高血圧の種々の形態の治療に適する。一般式(I)の化合物はまたそれらの塩の形態で存在することもできる。一般的に、有機もしくは無機塩基または酸との塩を本明細書では挙げることができる。
【0013】
本発明の文脈では、生理学的に許容しうる塩が好適である。生理学的に許容しうる塩は、本発明による物質の、鉱酸、カルボン酸またはスルホン酸との塩であることができる。特に好適な塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタン
スルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸または安息香酸との塩である。
【0014】
生理学的に許容しうる塩は同様に、それらが遊離カルボキシル基を有する場合、本発明による化合物の金属またはアンモニウム塩であることができる。特に好適な塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩、および/またはアンモニアから誘導されるアンモニウム塩、或いは、例えば、エチルアミン、ジ−もしくはトリエチルアミン、ジ−もしくはトリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、アルギニン、リジンまたはエチレンジアミンのような有機アミンである。
【0015】
本発明の文脈では、C−C−アルキルは1〜3個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。挙げることのできる例は:メチル、エチル、ピロピルおよびイソプロピルである。
【0016】
本発明の文脈では、C−C−アルコキシは1〜3個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基を表す。挙げることのできる例は:メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシである。
【0017】
本発明の文脈では、C−C−アルコキシカルボニルは1〜3個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を表す。挙げることのできる例は:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニルおよびイソプロポキシカルボニルである。
【0018】
好適には、
が水素、フッ素、塩素、C−C−アルキルまたはC−C−アルコキシを表し、
が式
【0019】
【化4】

【0020】
で示される基を表し、
ここで、
が水素、塩素、カルボキシル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ
カルボニルまたは式−CH−ORの基を表し、
ここで、
が水素またはメチルを表し、
およびRが一緒になって式
【0021】
【化5】

【0022】
で示される基を形成し、
ここで、
が水素、フッ素、塩素、C−C−アルキルまたはC−C−アルコキシを
表す、
で示される本発明による一般式(I)の化合物またはその異性体型もしくは塩は特定の心臓血管障害の治療のために使用される。
【0023】
特に好適には、
が水素、フッ素、塩素またはメトキシを表し、
が式
【0024】
【化6】

【0025】
で示される基を表し、
ここで、
が水素、C−C−アルキルまたは式−CH−ORの基を表し、
ここで、
が水素またはメチルを表し、
およびRが一緒になって式
【0026】
【化7】

【0027】
で示される基を形成し、
ここで、
が水素、塩素、フッ素、メチルまたはメトキシを表す、
で示される本発明による一般式(I)の化合物またはその異性体型もしくは塩は特定の心臓血管障害の治療のために使用される。
【0028】
本発明はさらに下記に掲げる新規な物質に関する。
【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
本発明による一般式(I)の既知または新規な化合物は、例えば、欧州特許出願公開第
667345号明細書による常法によって製造することができる。
【0034】
さらに、本発明はまた好適には、有機硝酸エステルおよびNO供与体と、本発明による一般式(I)の化合物との組み合わせおよび新規な化合物との組み合わせを含む。
【0035】
本発明の文脈中での有機硝酸エステルおよびNO供与体は一般的に、NOまたはNO種の放出によってそれらの治療作用を示す物質である。ナトリウムニトロプルシド(SNP)、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、モルシドミンおよびSIN−1並びに同様な物質は好適である。
【0036】
本発明は追加的に、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物との組み合わせを含む。これらは特にホスホジエステラーゼ1,2および5の阻害剤である;Beavo and Reifsnyder(1990)TIPS11第150〜155頁による命名法。これらの阻害剤によって、本発明による化合物の作用は強化されそして所望の薬理学的効果は増加する。
【0037】
本発明に従って使用される一般式(I)の新規で既知の化合物は、意外に貴重なスペクトルの薬理学的作用を示す。それらは、例えば、血管緊張低下を誘導し、そして血圧の低下および冠状血流の増加をもたらす。
【0038】
従って、これらの化合物は、例えば、狭心症、心筋梗塞、心不全、動脈硬化、発作および高血圧の種々の形態如き心臓血管系の特定の障害の治療での使用に適する。
【0039】
心臓血管作用を決定するために、以下の研究を行った:血管起源の細胞についての生体外研究では、グアニル酸シクラーゼ依存性cGMP生成に及ぼす影響をNO供与体有りおよび無しで試験した。血管緊張低下作用を、フェニレフリンで前収縮させたラビット大動脈輪について決定した。低血圧作用を麻酔ラットで研究した。
【0040】
<始原性内皮細胞中での可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激>
始原性内皮細胞をブタ大動脈からコラゲナーゼ溶液による処理によって単離した。次いで、細胞を培地中で集密に達するまで培養した。研究の場合、細胞を継代し、細胞培養プレート中に接種し、集密に達するまで継代培養した。内皮グアニル酸シクラーゼを刺激するために、培養液を吸引し、細胞をリンガー液で1回洗浄し、NO供与体有りまたは無しの刺激緩衝液中でインキュベートした(ナトリウムニトロプルシド、SNP、1μM)。次いで、試験物質(最終濃度1μM)を細胞中にピペットした。10分のインキュベーション時間の終了後、緩衝液を吸引し、細胞を−20℃で16時間溶菌した。次いで、細胞内cGMPを放射性免疫学的に決定した。
【0041】
【表1】

【0042】
<試験管内の血管緊張低下作用>
単離ラビット大動脈の1.5mm幅の輪を、個々に前伸張下で、carbogen通気したKrebs−Henseleit液を含有する37℃の5mlの器官浴中に入れる。収縮力を増幅し、デジタル化し、線形記録計に並行して記録する。収縮を起こさせるために、フェニレフリンを漸増濃度で集積的に浴に添加する。
【0043】
数回の対照サイクルの後、研究する物質をさらなる各継代中で各場合漸増用量で研究し、そして収縮を最後の継代中で達成された収縮の高さと比較する。これから、対照値の高さを50%減少させるのに必要な濃度(IC50)を算出する。標準投与容積は5μlである。
【0044】
【表2】

【0045】
<麻酔ラットでの血圧測定>
300−350gの体重を有する雄性ウイスターラットをチオペンタール(100mg/kg i.p.)で麻酔する。気管切開後、カテーテルを血圧測定のために大腿動脈中に挿入する。試験する物質を、種々の用量でTylose溶液中の懸濁液として胃チューブによって経口的に投与する。
【0046】
【表3】

【0047】
本発明中に記載の化合物はまた、NO/cGMP系の障害を特徴とする中枢神経系の疾患の制御のための活性化合物である。特に、それらは、認知欠損の排除、学習および記憶障害の改善およびアルツハイマー病の治療に適する。それらはまた、中枢神経系に起因する不安、緊張と抑うつ状態、性的機能障害および睡眠障害のような中枢神経系の障害の治療、並びに食品、半高級食品および添加薬の摂取での病理学的障害の調整に適する。
【0048】
さらに、これらの活性化合物はまた脳循環の調整に適し、従って片頭痛の制御のための有効な作用薬である。
【0049】
それらはまた、発作のような脳梗塞(脳出血)、脳虚血の後遺症および頭蓋脳損傷の予
防および制御に適する。本発明による化合物は同様に疼痛の状態の制御に使用することができる。
【0050】
本発明は、非毒性で不活性な薬学的に適する賦形剤の外に、本発明による一種またはそれ以上の化合物を含有するか或いは本発明による一種またはそれ以上の活性化合物よりなる医薬製剤、並びにそれらの製剤の製造方法を含む。
【0051】
活性化合物はまた場合により上記の一種またはそれ以上の賦形剤中のマイクロカプセル化形態で存在することができる。
【0052】
治療的活性化合物は、上記の医薬製剤中に、全混合物の約0.1〜99.5、好適には約0.5〜95重量%の濃度で存在するべきである。
【0053】
本発明による化合物の他に、上記の医薬製剤はまたさらなる医薬的活性化合物を含有することができる。
【0054】
一般的に、所望の結果を達成するためには、本発明による活性化合物を、24時間毎に約0.5〜約500、好適には5〜100mg/kg体重の全量で、適当であれば数個の個別用量の形態で、投与することが医学および獣医学で有利であった。個別用量は、本発明による活性化合物を好適には約1〜約80、特に3〜30mg/kg体重の量で含有する。
【0055】
<製造実施例>
【実施例1】
【0056】
1−(2−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール
【0057】
【化12】

【0058】
0.8g(2.5ミリモル)の1−(2−フルオロベンジル)−3−(5−ホルミル−2−フラニル)−インダゾールを40mlのプロパノール中に懸濁させ、0.8gのNaBHを0℃で徐々に添加する。室温で1時間撹拌した後、透明な溶液を水に添加し、混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で蒸発させ、残留物を、溶離剤としてトルエン/酢酸エチル混合物を使用してシリカゲル上でクロマトグラフィー処理した。
620mg(理論値の77%)の結晶を得た。
M.p.(融点):83℃
Rf(SiO、トルエン/酢酸エチル2:1):0.50
【0059】
表1、2および3中の例を同様に製造した:
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

式中、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシルまたはC−C−アルキルもしくはC−C−アルコキシを表し、
は式
【化2】

で示される基を表し、
ここで、
は水素、ハロゲン、カルボキシル、C−C−アルキル、C−C−アルコ
キシカルボニルまたは式−CH−ORの基を表し、
ここで、
は水素またはC−C−アルキルを表し、
およびRは一緒になって式
【化3】

で示される基を形成し、
ここで、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C−アルキルまたはC−C−ア
ルコキシを表す、
で示される1−ベンジル−3−(置換ヘタリール)−縮合ピラゾール誘導体またはその異
性体もしくは塩を有効成分として含んでなる、血管拡張作用により治療できる疾患の治療用の製薬学的製剤。
【請求項2】
血管拡張作用により治療できる疾患が狭心症、心筋梗塞、心不全、動脈硬化、発作または高血圧である、請求項1に記載の製薬学的製剤。
【請求項3】
血管拡張作用により治療できる疾患が高血圧である、請求項2に記載の製薬学的製剤。
【請求項4】
有機硝酸エステルまたはNO供与体と組み合わさった請求項1に記載の一般式(I)の化合物を含有する薬剤。
【請求項5】
有効成分として、有機硝酸エステルまたはNO供与体と組み合わさった請求項1に記載の一般式(I)の化合物を含んでなる、心臓血管障害を治療するための薬剤。
【請求項6】
有効成分として、cGMPの分解を阻害する化合物と組み合わさった請求項1に記載の一般式(I)の化合物を含んでなる、心臓血管障害を治療するための薬剤。
【請求項7】
1−(2−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール、
1−(4−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール、
3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−1−(3−メトキシベンジル)−インダゾール、
1−(3−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール、
3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−1−(2−メトキシベンジル)−インダゾール、
1−(3−クロロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール、
6−フルオロ−1−(2−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール、
6−フルオロ−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−1−(3−メトキシベンジル)−インダゾール、
1−(3−クロロベンジル)−6−フルオロ−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール、
1−ベンジル−3−(5−メチルフラン−2−イル)−インダゾール、1−ベンジル−3−(5−ヒドロキシメチルチエン−2−イル)−インダゾール、
4−フルオロ−1−(2−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾールおよび
5−フルオロ−1−(2−フルオロベンジル)−3−(5−ヒドロキシメチルフラン−2−イル)−インダゾール
よりなる群から選ばれる化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物を有効成分として含有する製薬学的製剤。
【請求項9】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物を有効成分として含んでなる中枢神経系の障害の治療用の製薬学的製剤。
【請求項10】
中枢神経系の障害が脳梗塞である請求項9に記載の製薬学的製剤。

【公開番号】特開2009−114205(P2009−114205A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42383(P2009−42383)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願平10−517966の分割
【原出願日】平成9年10月1日(1997.10.1)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany
【Fターム(参考)】