説明

患者の状態及びその状態に基づく治療を監視するための装置

本発明は、薬物を投与する及び/又は患者の状態を監視するための装置に関する。この装置は、少なくとも1測定サイクル以上の間、患者の少なくとも1つの身体パラメタを測定する少なくとも1つの測定手段を有する。この測定手段は、生体埋め込み可能及び/又は生体実施可能ニードルに置かれる又はその近傍に置かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物の投与及び/又は放射線治療のための装置の分野に関する。
【0002】
大多数の生物機能及び処理は決して一定ではない。それよりむしろ、リズムからなる顕著な一般的に基づく時間構造が観察される。
【背景技術】
【0003】
恒常性(ホメオスタシス)の概念は、血液中に内因性化合物(endogenous compounds)の恒常性があると規定している。これは生物学において最も強力な構造であり、この構造は医学の教育及び理解だけでなく、臨床医学の実務にも影響を及ぼす。この概念に従って、病気の発生及び悪化の危険性は、診断テスト及び薬物に対する患者の反応であるように、時刻、日付及び年月とは無関係である。しかしながら、生体リズムの研究の分野(時間生物学)から分かることは、臨床医学の多くの仮定及び手順と同様に、恒常性の概念に挑戦している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの生物機能は、毎日、毎月又は毎年で繰り返すサイクルにおいて盛衰している。
【0005】
このようなパターンは、環境の変化、例えば昼と夜とからなる毎日のサイクルに対する生物の受動的応答を単純に反映しない。むしろ、これらパターンは、生物の生体リズム、すなわち時間の経過を追う及びそれに応じて機能の変更を指示する能力を反映している。
【0006】
しかしながら、幾つかの分野において、この生物機能の変動が極めて小さく、これらパターンを適切に使用するために、かなり正確に測定されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的はこれにより、患者の状態を監視するための装置を提供することであり、この装置は正確且つ信頼性のある方法で患者の身体パラメタの変化を測定することが可能である。
【0008】
この目的は、本発明の請求項1による装置により解決される。従って、薬物を投与する及び/又は患者の状態を監視するための装置が提供され、この装置は、少なくとも1測定サイクル以上の間、患者の少なくとも1つの身体パラメタを測定する少なくとも1つの測定手段を有する。この測定手段は、生体埋め込み可能(bioimplantable)及び/又は生体実施可能(bioimplementable)ニードルに置かれる又はその近傍に置かれる。
【0009】
結果として、本発明内における応用の殆どに対し、
−温度及び/又は圧力を測定することにより、腫瘍のリズムをリアルタイムで監視することが可能であり、より良い治療を可能にすると共に、治療/薬剤を施すのに最適な時間を選択する、
−例えば腫瘍の内側及び外側の温度又は圧力を同時に別々に測定することが可能なセンサが幾つかその長さに沿って存在し、この腫瘍の境界も同様に規定され得る、
−温度及び/又は圧力を測定することにより、腫瘍の成長又は進行をリアルタイムで監視することができ、処置の頻度がそれに基づいて調節可能である、
−前記装置が生体埋め込み可能及び/又は生体実施可能ニードルを有する事実により、前記装置は、例えば患者の内部にある腫瘍のかなり近くに持っていくことができ、これにより例えば腫瘍の温度の測定に関しかなり高い効率を可能にする、
−治療及び監視目的の両方のために、全く同じ装置が別々に又は同時に使用されることができる、
の少なくとも1つが達成される。
【0010】
"測定サイクル"の用語は特に、周期的及び/又は定期的な方法で行うことで知られている患者の身体パラメタ、例えば体温が測定されることを意味及び/又は含んでいる。本発明の意味における測定サイクルは、1日(24時間周期)続くが、しかしながら、より長いサイクル(例えば1日1回未満の周期)及び/又はより短いサイクル(24時間未満の周期)も本発明の実施例と同様に実施可能である。
【0011】
"生体埋め込み可能及び/又は生体実施可能ニードル"の用語は特に、ニードルが生体内環境(生きている組織内)に存在し、患者に悪影響を及ぼさずにある期間、目的の機能を行うことができることを意味及び/又は含んでいる。
【0012】
本発明に実施例によれば、前記測定手段は、前記生体埋め込み可能及び/又は生体実施可能ニードルの先端に置かれる又はその先端の近傍に置かれる。
【0013】
本発明の実施例によれば、少なくとも1つの身体パラメタは、体温、中心体温、皮膚表面温度、腫瘍の温度、腫瘍の間質液圧、血圧、間質液圧、メラトニンレベル、トリアシルグリセロールレベル、コルチゾールレベルを含む。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記少なくとも1つの測定手段は、前記ニードルの一体化した部分を形成する。
【0015】
"一体化した部分"の用語は特に、少なくとも1つの測定手段がニードル内、好ましくは前記先端の近くに完全に埋め込まれ、さらに前記ニードルの先端を形成することを意味する及び/又は含んでいる。別の実施例によれば、前記ニードルは、そこに前記測定手段を埋め込むために1つ以上の窪みを装備している。
【0016】
本発明の別の実施例によれば、幾つかの測定手段は前記ニードルに沿って別々の位置に設けられる。
【0017】
本発明の別の実施例によれば、各測定手段間の平均距離は0.1mm以上、10mm以下である。
【0018】
前記測定手段は、互いに長軸方向及び/又は半径方向に離間している。
【0019】
本発明の別の実施例によれば、各測定手段間の平均距離は0.5mm以上、2mm以下である。
【0020】
本発明の別の実施例によれば、各測定手段間の平均距離か1mm以上、1.5mm以下である。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの長さ:幅の比は、8:1以上、200:1以下である。
【0022】
前記ニードルが少しも円筒形ではない又は一様な断面を持たない場合、"幅"という用語は、断面を見たときの最大寸法と理解されるべきであることに注意すべきである。
【0023】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの長さ:幅の比は、10:1以上、100:1以下である。
【0024】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの長さ:幅の比は、15:1以上、60:1以下である。
【0025】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの長さ:幅の比は、25:1以上、50:1以下である。
【0026】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは、
−チタン、チタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、コバルトクロム合金、コバルト合金、金、プラチナ及びこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択される材料、
−アルミナ及びジルコニアガラス、並びにこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択されるセラミック及びガラス、
−マクロローン(macrolone)、ポリスチレン、PMMA及びこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択される成形プラスチック、
−ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル及びこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択されるポリマー、
を有する集合並びにこれらの混合物から選択される材料から基本的に作られる。
【0027】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは、生体適合性材料から作られた被膜で少なくとも一部又は完全に覆われている。
【0028】
本発明の実施例によれば、前記生体適合性材料は、シリコーン及びパリレン、好ましくはポリエチレングリコールであるポリマー、金属、最新のセラミック、天然物質、熱分解カーボン並びにこれらの混合物を有する集合から選択される。
【0029】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは、無線通信用の手段を少なくとも1つ装備している。本発明の実施例によれば、前記ニードルは、患者の身体内に埋め込まれるのに適している。
【0030】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは無線通信用のアンテナとして利用する。
【0031】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは7cm以上、25cm以下の最小長を持つ。
【0032】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは17cm以上、20cm以下の最小長を持つ。
【0033】
本発明の実施例によれば、前記装置は、前記ニードルを介して薬物を放出するのに適した少なくとも1つの薬物送達手段を有する。
【0034】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは、それを通り薬物を送達するための少なくとも1つの導管を有する。
【0035】
本発明の実施例によれば、前記導管は、前記ニードルの外側につながっている。別の実施例によれば、前記導管は、前記ニードルの内側で閉じられている。
【0036】
本発明の実施例によれば、前記装置は、前記ニードルを介して放射線(radioactive wave)を送るのに適した少なくとも1つの放射性シード−ホールディング手段を有する。
【0037】
本発明の実施例によれば、前記ニードルは、そこに放射性シードを送達するための少なくとも1つの導管を有する。
【0038】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの少なくとも1つの導管は、1mm以上、5mm以下の直径を持つ。
【0039】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの少なくとも1つの導管は、0.5mm以上、2mm以下の直径を持つ。
【0040】
本発明の実施例によれば、前記ニードルの少なくとも1つの導管は、0.01mm以上、1mm以下の直径を持つ。
【0041】
本発明による装置は、広範囲にわたるシステム及び/又はアプリケーションに利用され、これらシステム及び/又はアプリケーションにおいて、
−薬物の投与又は放射線療法のための医用装置、
−慢性病の治療のための医用装置
の1つ以上を使用している。
【0042】
請求項に述べた構成要素及び記載された実施例において本発明に従って使用される構成要素と同様に前述した構成要素は、これら構成要素のサイズ、形状、材料選択及び技術概念に関して如何なる特例にも制約されないので、関連分野において知られる選択基準は制限なく利用されることができる。
【0043】
本発明の目的の追加の詳細、特性、特徴及び利点は、下位請求項、図面並びに夫々の図、表及び実施例の以下の説明に開示される。これは本発明による装置と同様に幾つかの装置の実施例を例示的な方法で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は、本発明の第1の実施例による装置のためのニードル1の概略図を示す。本実施例において、前記ニードルは患者の体内に埋め込まれる。これにより、このニードルは前記装置(図示せず)の他の部分と通信し、データを送信するためのアンテナとして働くために、上述したように7cm以上、25cm以下の長さを持つ。2つの他の通信手段10及び12は、前記ニードルの後方部分に設けられる。前記ニードルはさらに、幾つかの温度センサ30、40、50及び60を備え、これらセンサは先端の近く(温度センサ30)及び前記ニードルに沿って(温度センサ40から60)設けられる。センサ間の距離は、上述したように0.1mm以上、10mm以下である。
【0045】
図2は、本発明の第2の実施例による装置のためのニードルの先端部分の非常に概略的な長軸方向の断面図を示す。ニードルの本体110に3つの導管90、120a及び120bが存在し、これら導管120a及び120bは、細いワイヤーの先端に示される温度センサ80a及び80bのための送達手段として利用する。本実施例において導管120a及び120bは、温度データをできるだけ正確に集めるために、前記ニードルの先端70の非常に近くまで延在する。導管90は、例えば悪性腫瘍を治療するために利用する幾つかの放射性シード100で充填されることができる。
【0046】
図3は、本発明の第3の実施例による装置のためのニードルの先端部分の非常に概略的な長手方向の断面図を示す。ここに導管95が示され、この導管は圧力センサへの通路として利用する。
【0047】
図4は、本発明の第4の実施例による装置のためのニードル1'の非常に概略的な断面図を示す。このニードル1'の本体110'において、幾つか導管80'a、85a、85b、90'、95'が示される。導管80'aは、図2に示されるニードルに類似して、温度センサ用の導管として利用し、導管95'は、図3に示されるニードルに類似して、圧力センサ用の導管として利用する。導管90'は、図2に類似して、放射性シード(図示せず)を備える。しかしながら、本実施例において、2つより多くの導管85a、85bが示され、これらは他の薬物を外側、例えば腫瘍へ送達するのに利用する。
【0048】
上述した実施例の要素及び特徴の特定の組み合わせは単なる例に過ぎず、これら教授を本出願及び参照することにより盛り込まれる特許出願において他の教授と交換及び置換することも特に考えられる。当業者が理解するように、ここに記載されたことの変形、修正及び他の実施は、主張している本発明の意図及び範囲から外れることなく当業者に思い浮かぶことがある。それ故に、上述した説明は単なる例であり、限定する意味と解釈されることを意図していない。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれに同等なものにおいて規定される。その上、説明及び請求項において使用される参照符号は主張している本発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施例による装置のためのニードルの概略的な側面図。
【図2】本発明の第2の実施例による装置のためのニードルの先端部分の非常に概略的な長軸方向の断面図を示す。
【図3】本発明の第3の実施例による装置のためのニードルの先端部分の非常に概略的な長手方向の断面図を示す。
【図4】本発明の第4の実施例による装置のためのニードルの非常に概略的な断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1測定サイクル以上の間、患者の少なくとも1つの身体パラメタを測定する少なくとも1つの測定手段を有し、薬物を投与する及び/又は患者の状態を監視するための装置において、前記測定手段は、生体埋め込み可能及び/又は生体実施可能ニードルに置かれる又はその近傍に置かれる装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの身体パラメタは、体温、中心体温、皮膚表面温度、腫瘍の温度、腫瘍の間質液圧、血圧、間質液圧、メラトニンレベル、トリアシルグリセロールレベル、コルチゾールレベルを含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの測定手段は、前記ニードルの一体化した部分を形成する請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ニードルの長さ:幅の比は、4:1以上、50:1以下である請求項1、2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記ニードルは、
−チタン、チタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、コバルトクロム合金、コバルト合金、金、プラチナ及びこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択される材料、
−アルミナ及びジルコニアガラス、並びにこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択されるセラミック及びガラス、
−マクロローン、ポリスチレン、PMMA及びこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択される成形プラスチック、
−ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル及びこれらの混合物を有する集合から好ましくは選択されるポリマー、
を有する集合並びにこれらの混合物から選択される材料から基本的に作られる請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ニードルは、好ましくはシリコーン及びパリレン、好ましくはポリエチレングリコールであるポリマー、金属、最新のセラミック、天然物質、熱分解カーボン並びにこれらの混合物を有する集合から選択される材料である、生体適合性材料から作られる被膜で少なくとも一部又は完全に覆われている請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ニードルは、無線通信用の手段を少なくとも1つ装備している請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ニードルは、無線通信用のアンテナとして利用する請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記ニードルを介して薬物を放出するのに適した少なくとも1つの薬物送達手段を有する及び/又は前記装置は、前記ニードルを介して放射線を送るのに適した少なくとも1つの放射性シード−ホールディング手段を有する請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の装置を内蔵しているシステムにおいて、
−薬物の投与又は放射線療法のための医用装置、
−慢性病の治療のための医用装置
の1つ以上を使用しているシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−525801(P2009−525801A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553866(P2008−553866)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050328
【国際公開番号】WO2007/091193
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】