説明

患者の生理学的パラメータの測定

患者の1つ以上の生理学的パラメータを決定する方法。この方法は、患者の血管に隣接して複数の植込型の電極を植え込むことと、既知のパラメータを有する測定信号を、該複数の電極を通じて印加することと、結果のパラメータを有する結果の信号を、該複数の電極を通じて取得することと、測定信号および結果の信号に基づき血管のインピーダンスを算出することと、血管のインピーダンスに基づき生理学的パラメータを算出することと、による。一部の実施形態では、生理学的パラメータは、患者に送達される治療を制御する治療信号を変更するために利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に患者の生理学的なパラメータの監視に関する。より詳細には、本発明は、血管のインピーダンス測定から患者の生理学的パラメータを決定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の疾患および障害は、患者の病気および死亡に対し大きく寄与している。それらはまた、保健支出を最も駆動するものでもあり、米国では各年に数十億ドルを要する。一般的な心疾患および障害には、高血圧症、虚血性心疾患、心不全その他が含まれる。高血圧症(すなわち、高い血圧)は主要な心臓血管疾患であり、米国だけでも6500万人に影響を与えていると推定されている。高血圧症の人々のうち、血圧が管理されているのは30%未満であると報告されている。高血圧症は、心不全および卒中の主要原因である。それは、米国において、年間何万人もの患者の死の主要な原因であり、年間何十万人もの患者の死の主要な原因または補助的な原因として挙げられる。したがって、高血圧症は、その治療の充分な研究開発が要求されている深刻な健康問題である。
【0003】
高血圧症は、身体のより小さな血管(小動脈)が収縮する結果、血圧の上昇を引き起こすときに発生する。血管が収縮するので、心臓はより高い圧力で血流を維持するために、より激しく働く必要がある。身体は上昇した血圧を短期間許容することはできるが、持続性の高血圧症は、最終的には、腎臓、脳、眼、および他の組織を含む複数の身体器官に対する損傷を生じ、それに関連した様々な疾患を生じる場合がある。上昇した血圧によって血管の内側が損傷を受けることで、アテローム性動脈硬化症の進行を加速させ、血栓が生じる可能性を増加させる場合もある。これによって、心臓発作および/または卒中が導かれることがある。持続性の高血圧は、やがて拡大し損傷した心臓(肥大)を生じ、これが心不全を導く場合がある。
【0004】
一般に、虚血性心疾患を含む様々な心臓血管疾患は、最終的には心不全として現れる。心不全は、身体の必要を満たすのに十分な血液を心臓が送り出せないことを特徴としており、疲労、運動能力の低下、および生存率の低下を生じる。心不全によって、心臓の機能不全を補償して充分な血液を拍出するように、数々の身体系の活性化が生じる。これらの反応の多くは、交感神経系の活性化レベルの上昇や、複数の他の神経ホルモンの反応の活性化によって仲介される。一般的には、この交感神経系の活性化によって、心拍数および収縮の力を増加させて心拍出量を増加させるように、心臓に対し信号が送られる。これによって、腎臓に対し、ナトリウムおよび水を保持することによって血液量を増やすように信号が送られる。そして、小動脈に対し、収縮して血圧を上昇させるように信号が送られる。この心臓、腎臓、および血管の反応は、心臓の作業負荷を増加させ、さらに心筋の損傷を加速させ、心不全の状態を悪化させる。したがって、この悪循環を停止させるか少なくとも最小化することによって心不全を治療または管理するために、交感神経系活性化のレベルを低下させることが望ましい。
【0005】
数々の薬物治療が、高血圧症、心不全、および他の心臓血管疾患の管理のために提案されている。それらには、血圧を減少させて心臓の負荷を緩和するための血管拡張剤、体液過剰を減少させる利尿薬、身体の神経ホルモン応答の阻害剤および遮断薬、および他の医薬が含まれる。
【0006】
様々な外科的処置も、これらの疾患用に提案されている。例えば、心臓移植は、重症の難治性心不全を患う患者のために提案されている。これに代えて、心臓のポンプ作用を増
加させるために、補助心臓(VAD)など植込型医療装置が胸部に移植される場合もある。これに代えて、短期間(通常、1ヶ月以内)の心機能の維持のため、大動脈内バルーンポンプ(IABP)が用いられる場合もある。心臓再同期療法(CRT)が、心臓の収縮の調和を改良するために用いられる場合もある。他の外科的処置も利用可能である。
【0007】
頚動脈洞の壁は、総頸動脈の分岐部の構造であり、血圧の影響を受けやすい伸展受容器(圧受容器)を含むことが知られている。それらの受容器が頸動脈洞枝を介して脳に信号を送ると、次いで脳は、部分的には交感神経系の活性化を通じて、正常血圧(圧反射)を維持するように循環系を調節する。頸動脈洞枝の電気刺激(圧ペーシング;baropacing)が、高血圧および狭心症の治療において血圧および心臓の作業負荷を減少させるために、従来提案されている。キーバル(Kieval)らによる特許文献1には、様々な心臓血管および肺のパラメータに基づき圧反射アークを促すための圧反射調整システムおよび方法について記載されている。身体において様々な神経および組織を刺激することによって高い血圧または高血圧症を治療するための植込型装置は知られており、例えば、特許文献2(頸動脈洞枝の刺激)、特許文献3(迷走神経の刺激)、および特許文献4(圧受容器の刺激)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,073,048号明細書
【特許文献2】米国特許第3,650,277号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,400号明細書
【特許文献4】米国特許第6,522,926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
患者に対し与えられる治療にかかわらず、多くの場合、特に、送達される治療に関連して、患者の様々な生理学的パラメータを監視することが望ましい。植込型装置では、生理学的な測定値および診断データの収集は、治療刺激から独立して行われる場合がある。例えば、心臓リズム管理装置では、多くの場合、刺激出力チャネルとは別に専用のセンスアンプチャネルが実装されているので、心拍数、P波振幅、R波振幅、およびQRS間隔に関する生理学的な測定は、装置刺激から独立して行われる。また、刺激出力は分時換気量(通常、刺激に直接用いられるのではなく、経胸測定用に適切な距離に配置された、1対の電極の間でインピーダンス測定が行われる)などの生理学的パラメータの監視から独立している。この専用の感知電極は、実際の治療には用いられない信号源を用いて励起される。この種類の感知用の信号源は、通常、振幅が非常に小さく、大きな刺激ベクトルを覆うことが可能である。
【0010】
血圧などの患者の生理学的パラメータを測定する他の現行の方法には、血管内または外の直接血液測定用カフ決定が含まれる。血管内の直接測定は、身体内に別々に配置された複雑な個別のセンサを用いて行われる。これには、追加の回路が身体へ植え込まれることが必要であり、実時間でパラメータを測定することに困難が生じる場合がある。血圧計など外部カフによる血圧測定では、散発的な監視のみが可能となる。
【0011】
上述の方法は各々、欠点を有する。したがって、独立型の装置として、または送達される治療と組み合わせられる、患者の生理学的パラメータを監視するための改良された装置および方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、本発明は、患者の生理学的パラメータを決定する方法を含む。この方
法は、患者の血管に隣接して複数の植込型の電極を植え込むことと、既知のパラメータを有する測定信号を、該複数の電極を通じて印加することと、結果のパラメータを有する結果の信号を、該複数の電極を通じて取得することと、測定信号および結果の信号に基づき血管のインピーダンスを算出することと、血管のインピーダンスに基づき生理学的パラメータを算出することと、を含む。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、血圧を測定する方法を含む。この方法は、患者の血管に隣接して複数の植込型電極を提供することと、血管のインピーダンスを決定することと、決定した血管インピーダンスに基づき血圧を算出することと、を含む。
【0014】
さらなる一実施形態では、本発明は、治療装置と、患者の血管に隣接した1対以上の植込型電極と、該治療装置および該電極に対し通信可能に結合されたコントローラと、を備えるシステムに関する。該コントローラは、血管のインピーダンスを算出し、該インピーダンスに基づき患者の生理学的パラメータを決定するように構成されている。
【0015】
一実施形態では、本発明は、実時間のフィードバックを有する治療を提供するための方法を含む。この方法は、1つ以上の既知のパラメータを有する治療信号を、血管上または血管の周りの1つ以上の電極を有する治療装置に送信することと、結果のパラメータを有する結果の信号を、治療装置を用いて監視することと、既知のパラメータおよび結果のパラメータに基づき血管のインピーダンスを算出することと、血管のインピーダンスに基づき1つ以上の生理学的パラメータを決定することと、該1つ以上の生理学的パラメータに基づき治療を調節することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】主要な動脈および静脈ならびに関連する組織を示す人体の胴体上部の概略図。
【図2A】頚動脈洞および血管壁内の圧受容器の概略的な断面図。
【図2B】血管壁内の圧受容器および圧反射系の概略図。
【図3】本発明による圧反射調整システムの概略図。
【図4】本発明の一実施形態による血管外の測定装置の一実施形態の図。
【図5】本発明の一実施形態による、頚動脈に植え込まれた血管外の測定装置の一実施形態の図。
【図6】本発明の一実施形態による、血管のインピーダンスと血圧との間の相関を示すグラフ。
【図7A】本発明の一実施形態による、測定された血管のインピーダンスを示すグラフ。
【図7B】本発明の一実施形態による、測定された血圧を示すグラフ。
【図8】本発明による電流デジタル−アナログ変換器入力のブロック図。
【図9】本発明による電流デジタル−アナログ変換器入力の概略図。
【図10】本発明によるH−ブリッジ出力のブロック図。
【図11】本発明によるH−ブリッジ出力の概略図。
【図12】本発明による圧反射治療キットの図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明をより理解するために、循環系に関連した基本的な血管組織の一部について説明することは有用であり得る。図1に示すのは、循環系の主要な動脈および静脈の一部を示す人体10の胴体上部の概略図である。心臓11の左心室は、酸素化された血液を大動脈弓12に拍出する。右鎖骨下動脈13、右総頸動脈14、左総頸動脈15、および左鎖骨下動脈16は、下降する胸大動脈17の近くで大動脈弓12から分岐する。比較的短いが、腕頭動脈22と呼ばれる別の血管部分は、右鎖骨下動脈13および右総頸動脈14を大
動脈弓12に接続する。右頚動脈14は、右頚動脈洞20にて、右外頸動脈18と右内頸動脈19とに分岐する。単に明瞭さを目的として図示していないが、左頚動脈15は、同様に、左頚動脈洞にて、左外頸動脈と左内頸動脈とに分岐する。
【0018】
大動脈弓12から、酸素化された血液は、頚動脈15、18/19および鎖骨下動脈13/16へ流れる。頚動脈18/19から、酸素化された血液は、頭部および大脳の血管を通じて循環し、酸素を失った血液は、頚静脈を経由して心臓11に戻る(明瞭さのため、右内頚静脈21のみを示している)。鎖骨下動脈13/16から、酸素化された血液は、上側末梢血管系を通じて循環し、酸素を失った血液は鎖骨下静脈を経由して心臓に戻る(明瞭さのため、右鎖骨下静脈23のみを示している)。心臓11は、酸素を失った血液を、肺系を通じて拍出し、血液は肺系で再び酸素化される。再酸素化された血液は心臓11に戻り、心臓11は、再酸素化された血液を上述のように大動脈弓へ拍出し、このサイクルが繰り返される。
【0019】
大動脈弓12、総頸動脈14/15(右頚動脈洞20および左頚動脈洞の近傍)、鎖骨下動脈13/16、腕頭動脈22、および他の動脈の動脈壁、ならびに静脈および心臓の構造内には、圧受容器30が存在する。例えば、図2Aにおいて最もよく分かるように、多くの静脈、肺血管、および心腔の壁内には、頚動脈洞、大動脈、および他の動脈構造の壁におけるように、圧受容器30が存在する。圧受容器30は、身体が血圧および血液量を感知するために用いる、一種の伸展受容器である。血圧または血量の増加は血管壁を伸展させ、血圧または血量の減少は血管壁をその元の寸法に復帰させる。多くの血管では、そのようなサイクルが各心拍とともに繰り返される。他の場合、特に身体の静脈の一部では、血圧および血量はよりゆっくりと変化する。圧受容器30は血管壁内にあるので、血圧または血量における変化を表す、隣接した組織の変形を感知することができる。
【0020】
ここで図2Bを参照すると、概略図には、一般的な血管壁40に配置された圧受容器30と、圧反射系50の概略的なフローチャートとが示されている。圧受容器30は、上述の血管壁内に豊富に分布しており、一般にアーバ32を形成する。この圧受容器アーバ32は複数の圧受容器30を含み、圧受容器30は各々、神経38を介して脳52へ圧受容器信号を送る。圧受容器30が非常に豊富に分布され、血管壁40内で樹枝状となっているので、個々の圧受容器アーバ32は容易に区別できない。この目的のため、図2Bに示す圧受容器30は図示および説明のために主として概略的であることが、当業者には認められる。
【0021】
圧反射調整治療では、身体の自律神経系に影響を与えることによって、血圧、心拍数、呼吸、および他の系が調節されることが知られている。BATを用いて圧受容器を作動させ、血圧の上昇を示す信号を脳に提供することもできる。これらの信号は、脳に身体の血圧と交感神経系および神経ホルモン活性化のレベルとを減少させ、副交感神経系活性化を増加させる。圧反射調整治療の効率または有効性は、心臓、呼吸、および他の呼吸のサイクルに対する、それが送達される時間による影響を受ける場合がある。例えば、圧反射調整治療は、心臓の収縮対緩和相または呼吸の呼気対吸気相において送達されるとき、多少有効な場合がある。したがって、動脈圧または心拍数の絶対的な測定値は、圧受容器刺激の全ての影響を完全に反映しているとは限らない。
【0022】
副交感神経系は、交感神経系に対し相補的な関係を有する。身体は、これら2つの系を用いて血圧を調節する。副交感神経系の刺激または強化は、一般に血圧を低下させる。一方、交感神経系の刺激または強化は、一般に血圧を上昇させる。心拍出量が要求を満たすのに不十分な場合(すなわち、心臓が充分な血液を拍出することが不可能である場合)、脳は、心臓、腎臓、血管、および他の器官/組織を含む、数々の身体系を活性化させ、これを補正する。
【0023】
動脈管における圧受容器信号は、数々の身体系(集合的に圧反射系と呼ばれる)を活性化するために用いられる。本発明の目的では、静脈および心肺血管ならびに心腔における「受容器」は動脈管における圧受容器と同様に機能すると仮定するが、そのような仮定によって本発明が如何様にも限定されることを意図するものではない。詳細には、本明細書に記載の方法は、その結果の原因となる正確な実際の機構にかかわらず、記載の治療目的のうちの少なくとも一部を達成するように機能する。さらに本発明は、圧受容器、伸展受容器、化学受容器、機械的刺激受容器、圧力受容器、または動脈管における圧受容器に類似した手法により、血圧、神経系活動および神経ホルモンの活動に影響を与える他の静脈心もしくは心肺受容器を活性化することができる。簡単のため、他に明確な記載のない限り、そのような静脈の受容器全てを、本明細書では集合的に「圧受容器」または「受容器」と呼ぶ。
【0024】
血管の様々な受容器間に小さな構造的または解剖学的な差が存在する場合があるが、本発明の一部の実施形態の目的では、それらの受容器が所望の効果を提供する限り、活性化は、それらの受容器から、それらの受容器および/または神経および/または神経終末のいずれに案内されてもよい。詳細には、そのような受容器は求心性の信号(すなわち、脳への信号)を提供し、この信号が脳に対し血圧および/または血量の情報を提供する。これによって脳が自律神経系において「反射」変化を引き起こすことが可能となり、それによって、所望の血行動態および器官潅流を維持するように器官活性が調整される。圧反射系の刺激は、そのような受容器、神経、神経繊維、もしくは神経終末、またはそれらの組み合わせを刺激することによって行われる場合がある。
【0025】
ここで図3を参照すると、制御システム60と、圧反射調整装置70と、1つ以上のセンサ81とを含む、圧反射治療用のシステムの一実施形態が示されている。制御システム60は、プロセッサ63およびメモリ62を備える、治療ブロック61を含み得る。制御システム60は、電気制御ケーブル72を介して、またはRFなどの無線手段によってなど、圧反射調整装置70に対し通信可能に結合されている。センサ81は圧反射調整装置70と組み合わされてもよく、圧反射調整装置70と一体されてもよく、その両方であってもよい。また、センサ81が圧反射調整装置70から分離しており、制御システム60に対し通信可能に結合されてもよい。
【0026】
制御システムのメモリ62は、センサ信号と、治療信号と、入力装置64によって提供される値およびコマンドとのうちの1つ以上に関連したデータを含んでよい。また、メモリ62は、治療信号とセンサ信号との間の1つ以上の機能または関係を規定する1つ以上のアルゴリズムを含むソフトウェアを含んでもよい。このアルゴリズムは、センサ信号またはその数学的誘導に応じて、活性化または非活性化の治療信号を記述することができる。このアルゴリズムは、センサ信号が所定の下方閾値未満に低下するとき、所定の上方閾値を超えるとき、または、センサ信号が特定の生理学的なイベントを示すとき、活性化または非活性化の治療信号を記述してもよい。また、メモリ62は、測定されたパラメータに基づき患者の生理学的なパラメータを決定するための1つ以上のアルゴリズムを含むソフトウェアを含んでもよい。
【0027】
一実施形態では、センサ81はパラメータを感知および/または監視し、そのパラメータを表す信号を生成する。このパラメータは、循環器機能に関連してもよく、圧反射系を変更する必要を表してもよく、血管のインピーダンスなどの物理的なパラメータを表してもよく、それらのうちの1つ以上であってもよい。制御システム60は、センサ81からセンサ信号を受信し、制御ケーブル72を介して圧反射調整装置70に治療信号を送信する。
【0028】
制御システム60は、圧反射調整装置70の活性化、不活性化、その他の調整または制御を行う、制御信号(治療信号とも呼ばれる)を生成する。一実施形態では、治療信号は約1〜10ボルト、5Hz〜200Hzのレートの範囲にある。通常、装置70の活性化によって圧受容器30の活性化が生じる。これに代えて、圧反射調整装置70の不活性化、調整、その他の調節によって、圧受容器30の活性化が引き起こされてもよく、変更されてもよい。圧反射調整装置70は、電極などの電気的な手段を利用して圧受容器30を活性化する様々な装置を含んでよい。
【0029】
制御システム60は、センサ81からのおよび/または随意では組込可能な心拍数センサなど他のセンサからのフィードバックを利用する、閉ループとして動作し得る。また、制御システム60は、入力装置64によって受信された再プログラムコマンドを利用する開ループとしても動作し得る。制御システム60の閉ループ動作では、好適には、センサからの一部のフィードバックを利用するが、フィードバックのない開ループモードで動作することもできる。閉ループの一実施形態では、制御システム60は、センサ81または他のセンサから受信される信号の関数として、制御信号を生成する。したがって、一実施形態では、センサ81が圧反射系活性を変更する必要(例えば、過剰な血圧)を表すパラメータを検出すると、制御システム60は、圧反射調整装置70を調整する(例えば、活性化する)治療信号を生成することによって、脳52によって明らかに過剰な血圧であると知覚される圧受容器30の信号を誘発する。センサ81が正常な身体機能(例えば、正常血圧)を表すパラメータを検出すると、制御システム60は圧反射調整装置70を調整する(例えば、不活性化する)治療信号を生成する。
【0030】
入力装置64によって受信されたコマンドをプログラムすることによって、治療信号、出力活性化パラメータに対し直接的に影響を与えてもよく、メモリ62に含まれるソフトウェアおよび関連するアルゴリズムを変更してもよい。治療する医師および/または患者が入力装置64にコマンドを提供してもよい。一実施形態では、表示装置65は、センサ信号、治療信号、および/またはメモリ62に含まれるソフトウェア/データを閲覧するために用いられてもよい。制御システム60は、全体が植え込まれてもよく、部分的に植え込まれてもよい。
【0031】
圧反射調整装置70は、装置70が、血管壁40内において、血管内に、血管外に、経血管的に配置されるか、または動脈および静脈の両方を包囲する血管鞘の周りに配置されるかに応じて、最小侵襲性の経腔的アプローチおよび/または最小侵襲性の外科的アプローチの場合など、植込みに適切である。圧反射調整装置70は、心臓11、大動脈弓12、頚動脈洞20近傍の総頸動脈18/19、鎖骨下動脈13/16、腕頭動脈22、もしくは肺動脈、静脈、または心臓もしくは心臓の周囲など、圧反射系50に影響を与える圧受容器30が多い任意の場所に配置されてよい。圧反射調整装置70は、装置70が圧受容器30の直近に配置されるように植え込まれてよい。一実施形態では、圧反射調整装置70は、右頚動脈洞20および/または左頚動脈洞の近傍(総頸動脈の分岐部の近傍)、または大動脈弓12(この場合、圧受容器30が圧反射系50に対し相当な影響を与える)に植え込まれる。単に例示を目的として、本発明は、頚動脈洞20の近傍に配置された圧反射調整装置70として記載されている。
【0032】
一実施形態では、圧反射調整装置70は血管外の装置として構成される。しかしながら、圧反射調整装置70は、血管内および経血管的な用途において利用されるように、また、動脈および静脈の両方を包囲する血管鞘の周りであっても利用されるように、構成または適合されることができる。血管内の圧反射調整装置70は、複数の電極71がその上に配置されたステント様の構造を含んでもよい。経血管的な圧反射調整装置70は、ほぼ頚静脈などの静脈内に配置されることができ、1つ以上の電気リード線が静脈から隣接した動脈(頚動脈洞など)へ通過するか、または単に静脈の壁を通じて隣接した動脈壁にエネ
ルギーを送る。この1つ以上のリード線は、隣接した動脈の壁へ突出してもよく、動脈の外部上に留まっていてもよい。また、圧反射調整装置70は、1つ以上の静脈、1つの動脈、および関連する神経構造を包囲する、血管鞘構造の一部または全部の周囲に配置されるように構成されてもよい。そのような実施形態では、圧反射調整装置は、血管外の実施形態について記載した構成のうちのいずれかを取ってもよいが、鞘の直径と調和する対応する直径を有する。
【0033】
センサ81から患者の生理学的なパラメータを決定することに加えて、血管壁に沿ってまたは血管壁を通じて離間して配置された複数の電極を使用して血管の電気インピーダンスを測定することによって、複数の患者の生理学的なパラメータが決定されてよい。血管の電気インピーダンスは、既知の一定なパラメータを有する測定信号を印可し、結果のパラメータを有する結果の信号を監視することによって、決定可能である。測定信号は、交流(AC)信号を含んでもよく、直流(DC)信号(二相パルス化されたDC信号など)を含んでもよい。一実施形態では、測定信号の既知のパラメータは一定な電圧を含み、結果の信号の結果のパラメータは電流を含む。別の実施形態では、測定信号の既知のパラメータは一定な電流を含み、結果のパラメータは電圧を含む。
【0034】
測定信号は、1つ以上の植込型電極を通じて送信され、監視される信号は1つ以上の植込型電極を用いて測定されることが可能である。電極は、環状型、単極点型、多極型その他、適切な種類であってよい。図4に示す一実施形態では、2つの診断電極210が、血管の少なくとも一部の周囲を包むように構成されている血管外ラップ220上に提供される。図5を参照すると、血管外ラップ220は、血管の長さ方向に沿って電極210が互いから長手方向に離間するように、頚動脈洞に隣接して総頸動脈14上に植え込まれている。この実施形態では、インピーダンスは、血管の一部の長さに沿って、すなわち、血管の周囲において(pervascularly)測定される。代替の一実施形態(図示せず)では、電極210は、血管の周囲において同じ面に離間して配置される。そのような実施形態の一例では、電極は、血管の周囲に180度離れて電極が配置されるように、互いに対し直接対向していてもよい。インピーダンスは、次いで、経血管的に(すなわち、血管の内部の少なくとも一部を通じて)測定される。さらなる一実施形態では、電極210は、血管の長手方向に沿って離間して、また、血管の周辺に配置されてよい。別の実施形態では、2つ以上の測定電極210が、血管内ステント上に、または血管内ステントを用いて提供される。電極は、血管内ステントに対し直接結合されてもよく(その場合、ステントは非導電性である必要がある)、測定電極は、血管内ステントと共に用いられる電気絶縁性のスリーブまたはラップの一部として提供されてもよい。
【0035】
インピーダンス測定値を取得するのに適切な1つの場所は頚動脈洞近傍の頚動脈上であるが、他の適切な場所には、大腿静脈および動脈、肺動脈、ならびに一般に胴体内に位置する血管が含まれ得る。また、他の動脈および静脈も、インピーダンス測定値を取得するのに適切な場所を提供し得る。
【0036】
一実施形態では、1対の電極を用いて、測定信号を送信するとともに結果の信号を取得する。別の実施形態では、電極構成は4点のケルビン構成を含み、測定信号は血管上の第1の電極対を通じて送信され、結果の信号は第2の電極対によって取得される。
【0037】
測定信号は、連続的、周期的、エピソード的、ランダム、またはそれらの組み合わせであってよい。連続的な信号には、一定なパルス、一連の一定なパルス、トリガパルス、および一連のトリガパルスが含まれる。また、測定信号は、単相、二相、多相、または交流の波形を含んでもよい。監視される結果の信号は、増幅、濾波、および復号されてから、1つ以上の測定値を得るようにデジタル処理されることが可能である。一実施形態では、経血管的なインピーダンスは電圧および電流の値からオームの法則(電圧は電流にインピ
ーダンスを乗じたものに比例する)を用いて決定される。インピーダンスは、次いで、血管の容積に関連付けられる。監視されている血管部分は、電極間の長さLを有し、断面積Aを有する。血管の容積は、その長さLにその断面積Aを掛けたものに等しい。しかしながら、血管の断面積を正確に測定することは困難である。R=p×(L/A)の関係を用いて、この面積を算出することが可能である。ここで、Rはインピーダンスであり、pは血液の抵抗率(既知の定数)である。これによって、血管部分の容積をp×(L/R)として算出することが可能となる。血圧は、血管部分の容積に比例するので、取得可能である。
【0038】
血管のインピーダンスと、血圧、心拍数、および呼吸などの患者の生理学的なパラメータとの間の相関を確認するために、多数の実験を行った。
1つの実験では、頚動脈洞上の1対の電極に結合された精密LCRメータを用いて、インピーダンス測定値を取得した。電極は、頚動脈洞の周辺に120度間隔で配置し、1つの電極はカソードを含み、他の電極はアノードを含んでいた。血圧は、大腿動脈に一時的に埋め込まれたトランスデューサによって測定した。実験中、測定信号の周波数は20Hz〜2MHzの範囲であり、振幅は50mV〜1Vの範囲であった。この実験の結果を図6に示す。分かるように、電極を通じて測定された血管インピーダンス250は、植え込まれた圧力トランスデューサによって測定された血圧260に対し密接な相関を有する。図6に示した結果について、インピーダンスは、2kHzの試験周波数および100mVの定電圧において測定した。
【0039】
さらなる一実験では、1対の電極210を、頚動脈洞に隣接した頚動脈上に植え込んだ。電極は、血管に沿って互いから約1.04センチメートル(約0.41インチ)離間させて配置した。圧力トランスデューサを、実際の血圧を測定するために、大腿動脈内に一時的に植え込んだ。電極210に対し印加された測定信号は、125Hzで約200μA程度、パルス幅は60マイクロ秒であった。実験結果を、測定された血管インピーダンス250と測定された血圧260との間の相関を示す、図7Aおよび7Bに示す。一部の実験では、測定されたインピーダンスが測定された血圧と異相に現れることが観察されている。インピーダンスプロットの縦軸の反転、または測定されたインピーダンスのコンダクタンスへの変換によって、測定された血圧と測定された信号とが同相となる。コンダクタンスは、交流インピーダンスおよび直流インピーダンスの和の逆数である。直流インピーダンスは、平均血圧に相関することが分かった。図7Aを再び参照すると、血管インピーダンス250のグラフの縦軸は、インピーダンスと血圧との間の相関をより明確に示すように反転されている。
【0040】
一実施形態では、測定信号に適切なパラメータは、10Hz〜200Hzの周波数で、ほぼ数百マイクロアンペアまたは数十ミリボルト〜2ボルト程度であり、パルス幅は数百〜数十マイクロ秒である。少なくとも60mmHg〜300mmHgの広範囲の血圧を正確に監視することが可能である。
【0041】
長期用途で使用される植え込み時には、患者毎に特異的な血管インピーダンスと血圧との間の相関を確立させるために、上述の実験と同様に試験が行われる場合がある。外部血圧カフ、または一時的に植え込まれる圧力トランスデューサを用いて、記録され、測定されたインピーダンスに関連づけられることの可能な血圧測定値を提供することが可能である。この相関は制御システム内に記憶され、長期のインピーダンス測定に用いられる。
【0042】
さらに、本明細書に記載の全ての実施形態において、初期のベースライン圧力測定値など、絶対圧力の読取値を取得することが望ましい場合がある。このベースライン圧力測定値は、外部血圧カフ、内部的なトランスデューサセンサ、血圧カテーテル、または他の同様の装置を用いて取得されてよい。定期的な圧力測定値は、ドリフトを補償するように、
ベースライン測定の後に取得されてよい。大気圧変化を補償するための手段も含まれてよい。
【0043】
血圧に加えて、他の生理学的パラメータがインピーダンス測定値から決定されることが可能である。例えば、図6および図7A〜7Bを再び参照すると、監視される信号の圧力ピーク間の時間は被験対象の心拍数に相当し、信号の低周波成分は被験対象の呼吸に相当する。
【0044】
活動レベル、姿勢、および睡眠状態など、患者に関する追加情報も、インピーダンス測定から決定される場合がある。一実施形態では、患者の活動レベルはインピーダンス測定から決定される場合がある。患者の血行動態系は、活動増大(例えば、血圧の上昇および心拍数の増加)の期間における変化を示す。血圧、心拍数、および/または他のパラメータを監視し、それらのパラメータにおける短期変化を検出することによって、患者の活動レベルを決定することが可能である。短期変化は、数秒間または数分間に測定され得る。
【0045】
別の実施形態では、インピーダンス測定値から患者の姿勢または向きが決定されてもよい。姿勢を参照すると、患者が仰臥位から立位へと動くとき、患者の身体は、患者の血行動態平衡における変化に順応するように、頚動脈において一定の血圧を維持するように患者の圧反射系の活性化または調整を行うことなどによって、心臓および/または血管の機能の1つ以上の特性を変更する。本発明のインピーダンス測定システムを単独でまたは他のセンサと組み合わせて利用することによって、血圧、圧力波、反射波、脈波増大係数(augmentation index)、脈波伝播速度、心拍数、または心拍数の変動などの心臓および/または血管の機能における変化を検出および測定し、患者の姿勢を決定することが可能である。
【0046】
さらなる一実施形態では、患者の睡眠状態を決定するために、患者の姿勢を他の患者の情報と組み合わせて用いることができる。例えば、水平から垂直までの姿勢変化の伴う血圧の上昇は、患者が睡眠から目覚めたことを示し得る。
【0047】
ここで別の実施形態を参照すると、インピーダンス測定システムは、専用の刺激電極を有する圧反射治療装置と結合されてもよく、そうした圧反射治療装置と共に用いられてもよい。一実施形態では、2つ以上の測定電極が血管上、または血管の周りに埋め込まれ、コントローラ、好適には、圧反射治療装置によって利用されるのと同じコントローラに対し、通信可能に結合される。別の実施形態では、測定電極は圧反射治療装置に対し結合される。
【0048】
一実施形態では、治療装置の刺激電極は、送達された治療信号が治療源および駆動測定源の両方として働くように、インピーダンス測定を行うとともに治療を提供するように構成されてよい。したがって、同じ電極を用いて、治療信号(測定信号としても機能する)を送信するとともに、治療が送達されるときに結果の信号を監視する。したがって、測定値のサンプリングレートは治療レートと同じである。電極は、頚動脈洞などの血管(圧反射調整装置が植え込まれる、またはその周りに圧反射調整装置が植え込まれる)の周りにおいて側方に離間して配置された2つのアニュラリングとして配置されることが可能である。これに代えて、電極は、血管の長手方向軸に沿って離間して配置されることが可能である。
【0049】
一実施形態では、圧反射調整装置は定電流治療信号を利用する。連続的な治療信号には、一定なパルス、一連の一定なパルス、トリガパルス、および一連のトリガパルスが含まれる。治療中、出力に対し定電流治療信号が供給されているとき、電極と組織との界面を通じて課される、結果の電圧が監視される。電圧の変化は、その面積の血管容積の変化を
表す。監視される信号は、増幅、濾波、および復号されてから、測定値を得るように制御システム60によってデジタル処理される。これに代えて、治療信号電圧が一定であってもよく、結果の信号の電流が監視されることが可能である。インピーダンスは、次いで、電圧および電流の値から決定されることが可能であり、これから、血圧や、心拍数および呼吸など他の生理学的パラメータを算出することが可能である。一実施形態では、制御システム60は、測定値から自動的に生理学的パラメータを算出し、処理する医師その他の使用者に表示することが可能である。
【0050】
測定されている生理学的パラメータに対する増大した感度は、測定信号のレートを調節することによって達成可能である。測定信号は、意図された信号のサンプリングを効果的に行うのに十分高い周波数を有する必要がある。測定信号は、血圧のより高い周波数の必要に対しサンプリングレートを最適化するように、所望の通りに変更可能であり、呼吸などより遅い動きの信号に対し低下させることも可能である。一実施形態では、測定信号は、短いパルス幅および10〜50Hzの適度な周波数に設定される。一実施形態では、10Hzの測定値周波数は呼吸の監視に適切であり、20Hzは心拍数を監視するために適切であり、20〜50Hzは血圧を監視するために適切である
一実施形態では、圧反射調整装置は、電流デジタル−アナログ変換器83の入力にH−ブリッジ出力85が続く、定電流出力回路を利用する。デジタル−アナログ変換器83のブロック図および概略図を、それぞれ図8および図9に示し、H−ブリッジ85のブロック図および概略図を、それぞれ図10および図11に示す。
【0051】
治療源および駆動測定源の両方として治療信号を用いることによって、治療信号を拍毎にまたはペース毎に測定することが可能となる。実時間またはほぼ実時間で治療を監視することが可能である。患者の生理学的応答を実時間で監視することには、治療の連続的な最適化を可能とするという利点が存在する。
【0052】
一実施形態では、本明細書に記載の様々な実施形態による測定システムおよび/または治療システムを植え込むための命令は、印刷された、もしくは電子的、光学的、または磁気的に記憶された表示される情報の形態であり、例えば、システムの外科的な植込の前に、物品のキットまたは組立品の一部として提供される。図12を参照すると、一実施形態では、圧反射治療システムは、キット110により使用者に提供されることが可能である。キット110は、1つ以上の電極を有する圧反射調整装置70と、圧反射調整装置70に対し動作可能に接続可能である制御システム60と、システムを動作させるための有形媒体上に記録された1組の命令90とを含んでよい。圧反射調整装置70は、インピーダンス測定を行うように構成されてもよく、キット110の一部として提供される1組の測定電極に対し動作可能に結合されてもよい。キット110は、1つ以上の気密封止され滅菌された包装から構成されてもよい。命令90はキット110の一部として提供されてもよく、指示が提供され、使用者を電気的にアクセス可能な命令90にリンクさせてもよい。別の実施形態では、本明細書に記載の様々な実施形態によるシステムを植え込むための命令は、例えば、システムの製造者または供給者によって、システムを提供するのとは別に、インターネットを用いてアクセス可能な情報を介して、またはセミナー、講義、訓練セッションなどを介して、提供される。
【0053】
一実施形態では、患者の循環系の健康は、血管のインピーダンス測定に基づき患者の1つ以上の生理学的パラメータを監視することによって決定可能である。例えば、血管のインピーダンス測定に関するデータが捕捉され、医師による後の検証のために記憶されてよい。また、データは、捕捉され、医師に対し送信されるまで、もしくは医師によってダウンロードされるまで、または医師によってアクセス可能な自動受信機に送信されるまで、所定の時間、記憶されてもよい。当業者に知られている無線テレメトリシステムは、血管インピーダンスのデータの通信を行うために利用されてもよい。
【0054】
別の実施形態では、所与の治療の有効性は、血管のインピーダンス測定に基づき患者の1つ以上の生理学的パラメータを監視することによって、評価されてよい。送達される治療は、心臓リズム管理(CRM)治療を含んでもよい。そのような一実施形態では、植込型パルス発生器は、2つ以上のリード線を有して提供される。第1のリード線は血管内に植え込まれ、CRM治療を提供するように構成される。第2のリード線は、本発明の一態様では、1つ以上の電極を有し血管インピーダンスを測定するように構成された監視装置に対し結合される。監視装置は、所望の用途に応じて、血管内、血管外、または経血管的に配置されてよい。測定された血管のインピーダンスを用いて1つ以上の患者のパラメータを提供し、それに応じてCRM治療が調節または変更されてよい。他の送達される治療には、神経刺激および/または調整治療、腎臓の治療、薬剤送達治療、左心補助循環装置、心臓ラップ、他の機械的治療、熱治療、または治療成分に加えて測定成分を有する他の治療が含まれてよい。
【0055】
一実施形態では、血管外測定ラップは鎖骨下静脈上、または心臓リズム管理(CRM)装置にもしくは神経刺激装置に関連した植込型パルス発生器(IPG)の植込中に形成される切開部の場所に隣接した別の適切な血管上に植え込まれてよい。CRM装置の植込には、通常、患者の胴体に小さな皮下ポケットを作成することと、IPG用のポケットに隣接した場所にて連絡される患者の血管を介し、心臓にリード線を植え込むこととが含まれる。IPGの植込中、施術中に連絡可能な鎖骨下静脈などの場所に血管外ラップを植え込むことによって、植込時間が減少するとともに、患者の外傷が減少する。血管外ラップは、必要な計算および機能を実行するためにCRM装置のIPGと動作可能に通信を行う専用のコントローラに対し動作可能に結合されてもよく、血管外のラップは、CRM装置のIPGに対し通信可能に直接結合されてもよい。CRMまたは神経刺激治療は、血管外ラップによって取得されるインピーダンス測定から受信される情報に基づき、調節または調整されてよい。
【0056】
別の実施形態では、複数の圧反射調整装置が、圧反射調整治療システムの一部として提供されることが可能である。一実施形態では、感知構成は、CRMを送達可能な別個の圧反射調整装置を含んでよい。BAT装置および治療と本発明に関連するCRM装置および治療との組み合わせに関するさらなる開示は、ロッシング(Rossing)らによる米国特許出願公開第2006/0004417号明細書およびキーバル(Kieval)らによる米国特許出願公開第2006/0074453号明細書に見られる。それらの開示をその全体の引用によって本明細書に援用する。
【0057】
本発明の精神および範囲内の実施形態の範囲の他の特徴および機能の少なくとも一部を例示するさらなる開示の材料は、キーバルらによる米国特許出願公開第2005/0154418号明細書、キーバルらによる米国特許出願公開第2005/0251212号明細書、およびキーバルらによる米国特許出願公開第2006/0293712号明細書に見られる。それらの開示をその全体の引用によって本明細書に援用する。本発明に関連する血管組織および循環系に関するさらなる開示の材料は、キーバルらによる米国特許第6,522,926号明細書に見られる。これを引用によって本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生理学的パラメータを決定する方法であって、
複数の電極を提供する工程と、
次の命令、すなわち、
患者の血管に隣接して前記複数の電極を植え込むことと、
既知のパラメータを有する測定信号を、前記複数の電極を通じて印加することと、
結果のパラメータを有する結果の信号を、前記複数の電極を通じて取得することと、
測定信号および結果の信号に基づき血管のインピーダンスを算出することと、
血管のインピーダンスに基づき生理学的パラメータを算出することと、を含む複数の命令を提供する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記複数の電極を植え込むことは、電極を血管内に植え込むことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の電極を植え込むことは、電極を血管外に植え込むことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生理学的パラメータを算出することは、血圧、心拍数、呼吸、活動、姿勢、および睡眠状態から選択されるパラメータを算出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の複数の電極を提供する工程と、患者の血管に隣接して第2の複数の電極を植え込むことと、を含み、第2の複数の電極は、第1の複数の電極に印加される測定信号から結果の信号を取得するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の電極を配置することは、血管の長手方向軸に沿って互いから離間させて電極を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の電極を配置することは、血管の周囲の異なる場所に電極を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
測定信号を印加し、血管インピーダンスおよび生理学的パラメータを算出するように構成されたコントローラを提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
患者の血管に隣接して植え込まれるように適合された1対以上の測定電極と、
前記電極に対し通信可能に結合されており、前記電極からの測定された信号に基づき血管のインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスに基づき患者の生理学的パラメータを決定するように構成されているコントローラと、を含むシステム。
【請求項10】
圧反射調整装置を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記測定電極は圧反射調整装置と一体化されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
コントローラは、前記電極を通じて既知のパラメータを有する測定信号を印加することによって血管のインピーダンスを算出し、前記電極を通じて結果のパラメータを有する結果の信号を受信するように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
血管に隣接して植え込まれるように適合されている第2の1対の電極を含み、1対の電極は測定信号を送信するように構成されており、1対の電極は結果の信号を受信するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
生理学的パラメータの実時間フィードバックを行うための植込型圧反射治療システムであって、
血管に隣接して配置される1つ以上の治療電極を備える植込型圧反射調整装置と、
前記圧反射調整装置に対し動作可能に結合されており、前記圧反射調整装置に対し既知のパラメータを有する治療信号を送信するように構成されている制御システムと、を含み、
前記1つ以上の治療電極は、前記治療信号の既知のパラメータに相関するパラメータを表す結果の信号を監視するように構成されており、前記制御システムは、前記既知のパラメータおよび結果のパラメータに基づき血管のインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスに基づき1つ以上の患者の生理学的パラメータを決定し、前記1つ以上の患者の生理学的パラメータに基づき前記治療信号を変更するように構成されている、植込型圧反射治療システム。
【請求項15】
前記圧反射調整装置と制御システムとに対し動作可能に結合されており、前記結果の信号を監視するように構成されている複数の測定電極を含む、請求項14に記載の植込型圧反射治療システム。
【請求項16】
前記複数の測定電極は前記圧反射調整装置に隣接し、かつ、前記圧反射調整装置から分離して配置されている、請求項15に記載の植込型圧反射治療システム。
【請求項17】
前記治療信号の既知のパラメータは一定な電流であり、前記結果のパラメータは電圧である、請求項14に記載の植込型圧反射治療システム。
【請求項18】
前記治療信号の既知のパラメータは一定な電圧であり、前記結果のパラメータは電流である、請求項14に記載の植込型圧反射治療システム。
【請求項19】
前記圧反射調整装置は、圧反射調整装置が植え込まれる血管の長手方向軸に沿って互いから約180度離れて配向されるように構成されている2つの電極を含む、請求項14に記載の植込型圧反射治療システム。
【請求項20】
実時間のフィードバックを有する治療を提供する方法であって、
1つ以上の治療電極を備える圧反射調整装置を提供する工程と、
1つ以上の測定電極を提供する工程と、
次の命令、すなわち、
血管上または血管の周りに圧反射調整装置を植え込むことと、
1つ以上の測定電極を植え込むことと、
1つ以上の既知のパラメータを有する治療信号を制御システムから圧反射調整装置に送信することと、
結果のパラメータを有する結果の信号を、1つ以上の測定電極を用いて監視することと、
前記既知のパラメータおよび前記結果のパラメータに基づき血管のインピーダンスを算出することと、
血管のインピーダンスに基づき1つ以上の生理学的パラメータを決定することと、
前記1つ以上の生理学的パラメータに基づき治療信号を調節することと、を含む複数の命令を提供する工程と、を含む方法。
【請求項21】
前記1つ以上の測定電極は治療装置と一体化されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の治療電極は前記1つ以上の測定電極を含み、治療電極は治療を送達し、
結果の信号を監視するように構成されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
生理学的パラメータは、血圧、心拍数、呼吸、活動、姿勢、および睡眠状態から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
1つ以上の電極を備える圧反射調整装置を提供する工程と、
圧反射調整装置に対し動作可能に結合されている制御システムを提供する工程と、
圧反射治療を受ける患者の生理学的パラメータに関する実時間のフィードバックを提供するための、有形の媒体に記録された命令を提供する工程と、を含み、前記命令は、
血管上または血管の周りに圧反射調整装置を植え込むことと、
既知のパラメータを有する治療信号を圧反射調整装置の前記1つ以上の電極に送達することと、
治療信号が送達されているときに、結果のパラメータを有する結果の信号を、測定電極を用いて監視することと、
制御システムを用いて、前記既知のパラメータおよび前記結果のパラメータに基づき血管のインピーダンスを算出することと、
算出したインピーダンスに基づき1つ以上の患者のパラメータを決定することと、
前記1つ以上の患者のパラメータに基づき治療信号を変更することと、を含む、方法。
【請求項25】
圧反射治療システム用のキットであって、
1つ以上の電極を備える圧反射調整装置と、
圧反射調整装置に動作可能に結合可能な制御システムと、
圧反射治療を受ける患者の生理学的パラメータに関する実時間のフィードバックを提供するように前記システムを動作させるための、有形の媒体に記録された命令と、を含み、
前記命令は、既知のパラメータを有する治療信号を圧反射調整装置の前記1つ以上の電極を通じて患者に送達し、前記1つ以上の電極を用いて、結果のパラメータを有する結果の信号を制御システムに監視させ、算出されるインピーダンスに基づき1つ以上の患者のパラメータを決定するとともに、前記1つ以上の患者のパラメータに基づき治療信号を変更するように前記制御システムをプログラムする命令を含む、キット。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2011−507667(P2011−507667A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540934(P2010−540934)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/088488
【国際公開番号】WO2009/086536
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508343467)シーブイレクス インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】CVRX,INC.
【Fターム(参考)】