説明

情報処理端末のロック解除方法

【課題】タッチパネルを利用したパターンロックを行う情報処理端末において、タッチパネル上に残る指紋跡からロックパターンが第三者に推測される危険性を低減させる情報処理端末のロック解除方法を提供する。
【解決手段】タッチパネル11を有し、予め登録されたロックパターン20と合致する軌跡をユーザがタッチパネル11上で指定することでロックを解除するパターンロックを行う情報処理端末のロック解除方法であって、ユーザがパターンロックを解除しようとする毎に、携帯端末1は、ユーザがロックパターン20を指定する際にタッチパネル11上で毎回同じ位置をなぞることがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末のセキュリティ技術に関し、特に、携帯端末を始めとする情報処理端末の第三者による利用を防止する情報処理端末のロック解除方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT技術の進展により、例えば、タッチパネルを有するいわゆるスマートフォンやタブレット型端末などの携帯端末が、PC(Personal Computer)に匹敵する性能や機能を有するようになり、このような端末を社外等に携帯してビジネスに用いるという場面が増えている。これに伴い、携帯端末の紛失や盗難に対する対策として、第三者に端末が操作された際に端末内部もしくは端末からアクセス可能なネットワーク上の機密情報や重要情報が漏洩等することを防止するためのセキュリティの必要性も高まっている。
【0003】
このような携帯端末では、上記のようなセキュリティを考慮して、例えば一定時間以上操作されなかった場合に画面ロックがかかり、使用を再開するには所定の操作を行ってロックを解除することを必要とするのが一般的である。この画面ロックには、例えば、タッチパネルをタッチしたり、所定のボタンを押下したり等の操作要求に対して、画面上にパスワードやパスコードを入力する画面を表示し、タッチパネルを介して入力されたパスワードやパスコード(例えば数桁の数字等)が予め登録されているものと合致した場合に画面ロックを解除するというものがある。
【0004】
また、パスワードやパスコードを用いずに、タッチパネルの利点を活かしたものとして、例えば、特表2009−521753号公報(特許文献1)に記載されているように、タッチパネル上で操作したジェスチャが所定のジェスチャに対応する場合に機器のロックを解除するという技術も提案されている。また、例えば、Google(登録商標)社の携帯端末向けOS(Operating System)であるAndroid(登録商標)を搭載した携帯端末では、タッチパネル上に格子状に表示された9つのポイントをなぞることで得られる軌跡によるパターンが、予め登録されているものと合致した場合に画面ロックを解除するというものがある(以下ではこれらの仕組みを総称して「パターンロック」と記載する場合がある)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−521753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、上記のようなパスワードやパスコード、パターンロックを用いた画面ロックの機能では、ロックのパターンが有限であることから、セキュリティの手段としては完全とは言えない。そこで、例えば、携帯端末を紛失等した場合に、遠隔から当該端末に対して所定のメッセージを送信することにより、当該メッセージを受信した端末が、自身の操作を一切できないようにロックし、さらに内部の情報を削除(ワイプ)することで、当該端末を取得した第三者が当該携帯端末を操作することにより情報が漏洩等することを確実に防止するようなサービスや機能も提供されている。
【0007】
しかしながら、携帯端末を紛失等してから、ユーザがそれに気づいて遠隔から上記のようなロックを行い、実際に端末がロックされワイプが実行されるまでにはタイムラグが生じる。その間に、悪意を持った第三者は、当該端末の画面ロックを解除することを試みることができる。
【0008】
このとき、特にパターンロックによって画面ロックを行う携帯端末においては、タッチパネル上を指でなぞる際の軌跡によりパターンを指定することから、通常時にユーザが何度も画面ロックの解除を繰り返してタッチパネル上の同じ箇所をなぞることにより、指紋や皮脂などによる跡(以下では「指紋跡」と記載する場合がある)が残る場合がある。携帯端末を取得した第三者がこの指紋跡を参照することにより、画面ロックを解除するためのパターン(以下では「ロックパターン」と記載する場合がある)をある程度推測できる場合があるという危険性が指摘されている(例えば、WOOT '10 4th USENIX Workshop on Offensive Technologies, August 9,2010, Smudge Attacks on Smartphone Touch Screens, Adam J. Aviv, Katherine Gibson, Evan Mossop, Matt Blaze, and Jonathan M. Smith, University of Pennsylvania, http://www.usenix.org/events/woot10/tech/full_papers/Aviv.pdfなどを参照)。
【0009】
この点、パスワードやパスコードによる画面ロックの場合は、画面ロックを解除しようとする際に、例えば、銀行等のATM(Automated Teller Machine)などで多く用いられているように、タッチパネル上に表示するパスワードやパスコードとして入力する数字等の配列(ソフトウェアキーボードの配列)を毎回並び替えることでセキュリティを向上させることができる。これにより、通常時にユーザが指でタッチパネル上をタッチする際の動きを第三者が観察することによりパスワードやパスコード等の数字等を推測することを困難にするとともに、ユーザが指でタッチする位置が毎回ランダムに変わるようにし、当該端末を取得した第三者が指紋跡によりどの数字等がパスワードやパスコードとして多く選択(タッチ)されたかを推測することを困難にすることが考えられる。
【0010】
これに対し、パターンロックの場合は、ロックパターンの軌跡を毎回変更することができないため、指でなぞる軌跡は毎回同じものとなってしまう。従って、上述したように、通常時にユーザが何度も画面ロックの解除を繰り返してタッチパネル上の同じ箇所をなぞるうちに指紋跡が残り、これに基づいてロックパターンがある程度推測されてしまうという危険性を有する。
【0011】
そこで本発明の目的は、タッチパネルを利用したパターンロックを行う情報処理端末において、タッチパネル上に残る指紋跡からロックパターンが第三者に推測される危険性を低減させる情報処理端末のロック解除方法を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態による情報処理端末のロック解除方法は、タッチパネルを有し、予め登録されたロックパターンと合致する軌跡をユーザが前記タッチパネル上で指定することでロックを解除するパターンロックを行う情報処理端末のロック解除方法であって、前記ユーザが前記パターンロックを解除しようとする毎に、前記情報処理端末は、前記ユーザが前記ロックパターンを指定する際に前記タッチパネル上で毎回同じ位置をなぞることがないようにすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態によれば、タッチパネルを利用したパターンロックを行う情報処理端末において、タッチパネル上に残る指紋跡からロックパターンが第三者に推測される危険性を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるロックパターンを指定する際の上方向を毎回切り替えた場合の指紋跡の例について概要を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態1である携帯端末の構成例について概要を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態2である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態3である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態3である情報処理端末のロック解除方法の別の例について概要を示した図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の実施の形態4である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。
【図8】従来技術におけるロックパターンと指紋跡の関係の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
<概要>
本発明の一実施の形態である情報処理端末のロック解除方法は、携帯端末を始めとするタッチパネルを有する情報処理端末における、パターンロックの解除方法に係るものである。本実施の形態では、ユーザが情報処理端末を一定時間以上操作しなかった場合に、パターンロックにより画面を一時的にロックして操作や機能の利用などができないようにする(画面ロック)場合を例として説明する。すなわち、ユーザが予め登録された所定のロックパターンと合致する軌跡をタッチパネル上で指等でなぞることで画面ロックを解除することができる情報処理端末において、ユーザが過去に画面ロックの解除を繰り返したことによりタッチパネル上に残る指紋跡から、第三者がロックパターンを推測することを困難とするようなパターンロックの解除の手法について説明する。
【0020】
図8は、従来技術におけるロックパターンと指紋跡の関係の例について概要を示した図である。図8の左側の図では、例えば、Android(登録商標)におけるパターンロックのように、携帯端末1のタッチパネル11上に格子状に表示された9つのポイントを指等でなぞることによりロックパターン20を指定する場合の例を示している。なお、以下の例ではこれと同様な手法によりロックパターン20を指定する場合を例として説明するが、例えば、格子状のポイントの数は9つに限るものではないし、また格子状のポイント等を有さずに他のガイド表示によるものであってもよい。すなわち、本発明は、タッチパネル上で所定のロックパターン20をジェスチャ等により指定する場合を広く含む。
【0021】
ここで、例えば、ユーザが図8の左側の図に示すようなロックパターン20を指等でなぞることにより携帯端末1の画面ロックの解除を繰り返した場合、図8の右側の図に示すように、タッチパネル11上にはロックパターン20の軌跡と同じような指紋跡21が残る場合が生じる。当該携帯端末1を取得した第三者がこの指紋跡21を検知することによって、ロックパターン20を推測し、もしくはいくつかの種類のパターンに絞り込むことが可能となる。
【0022】
そこで、本発明の一実施の形態である情報処理端末のロック解除方法は、通常時にユーザが画面ロックを解除しようとする際に、ユーザが毎回タッチパネル11上の同じ位置でロックパターン20の軌跡を指等でなぞることがないようにすることで、ロックパターン20を推測もしくは絞り込むことができるような指紋跡21を残さないようにする。
【0023】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。図1の上段の図では、図8の左側の図において示した例と同様に、携帯端末1のタッチパネル11上で、ユーザが画面ロックを解除するためにロックパターン20を指定する場合の例を示している。ここで、タッチパネル11(タッチパネル11により構成される画面)の上辺部分には、上方向インジケータ30が表示されている。この上方向インジケータ30は、ユーザがロックパターン20を指定する際の上方向を指示する表示である。
【0024】
本実施の形態では、ユーザが画面ロックの解除を行おうとする毎に、携帯端末1が、ロックパターン20を指定する際の上方向を順次もしくはランダムに切り替える。例えば、図1の例では、上段の図に示した例において画面ロックを解除して以降に、ユーザが画面ロックを解除する毎に、下段の図に示すように、上方向インジケータ30の表示位置が、タッチパネル11の左辺部分→下辺部分→右辺部分と順次切り替わり、その後、上辺部分に戻るように順次ローテーションする。
【0025】
ユーザは、画面ロックを解除する際に、上方向インジケータ30の表示位置を上方向として、ロックパターン20を適宜回転した状態で指等によりなぞって指定することで画面ロックを解除する。換言すれば、携帯端末1は、ユーザがタッチパネル11上で指等によりなぞった軌跡を、上方向インジケータ30を表示した部分(タッチパネル11の辺)を上方向とした状態でロックパターン20として認識し、予め登録されたロックパターンと比較することで画面ロックの解除を行う。
【0026】
このように、ユーザがロックパターン20を指定して画面ロックを解除しようとする毎に、上方向を切り替えることで、指定されるロックパターン20を回転させ、タッチパネル11上で指等によりなぞられる位置が毎回同じにならないようにする。これにより、タッチパネル11上に残る指紋跡21からロックパターン20の形状を推測等することを困難とすることができる。図2は、ロックパターン20を指定する際の上方向を毎回切り替えた場合の指紋跡21の例について概要を示した図である。図示するように、指紋跡21は、例えば、図1の各図に示される回転されたロックパターン20をそれぞれ重ね合わせたような形状となるため、当該形状からロックパターン20の形状を推測等することは困難であることが分かる。
【0027】
図3は、携帯端末1の構成例について概要を示した図である。携帯端末1は、上述したように、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット型端末、ノート型PC(Personal Computer)などからなり、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置13、および不揮発性メモリやHDD(Hard Disk Drive)等からなる記憶装置14を有する。また、ディスプレイおよびキーボードやマウスの機能を兼ねる入出力装置としてタッチパネル11を有する。また、携帯端末1の傾きや動きを検知するための加速度センサ12を有していてもよい。また、ソフトウェアとして、Android(登録商標)等のOS(Operating System)17、およびOS17上で稼働する各種のソフトウェアプログラムであるアプリケーション19を有する。
【0028】
OS17は、OSとして有する基本的な機能として、例えば、所定の時間ユーザによる操作がされなかった場合にパターンロックにより画面をロックするとともに、ユーザによるタッチパネル11上でのジェスチャ等により指定されたロックパターン20を検知して、その軌跡を、記憶装置14に予め登録・保管されているロックパターン15と比較することで、これらが一致した場合に画面ロックを解除する処理を行うロック処理部18を有する。なお、本実施の形態では、ロック処理部18をOS17の機能として実装しているが、OS17が提供するライブラリ等を利用してアプリケーション19の1つとして実装してもよい。
【0029】
本実施の形態のロック処理部18は、図1の例に示したように、ユーザがロックパターン20を指定して画面ロックを解除しようとする毎に、上方向をタッチパネル11上の上辺→左辺→下辺→右辺→上辺→…と順次ローテーションさせる。その際、いずれの辺が上方向となっているかの情報を、例えば、タッチパネル11における該当する辺の部分に上方向インジケータ30を表示することでユーザに通知する。
【0030】
なお、画面ロックを解除しようとする毎にロックパターン20を指定する際の上方向をタッチパネル11の各辺で切り替える手法としては、例えば上記のようなローテーションのように、各辺が上方向となる回数が可能な限り均等に分散するものであるのが望ましいが、毎回同じ辺が上方向となることがないよう切り替えることができるものであれば、これに限らない。例えば、ローテーションの順序が図1の例と逆方向であってもよいし、その他所定のルールにより上方向として指定する辺を毎回決定するものであってもよい。
【0031】
このような上方向の切り替えを行うために、ロック処理部18は、画面ロックの解除時に、タッチパネル11のいずれの辺を上方向として指定したか(タッチパネル11のいずれの辺に上方向インジケータ30を表示したか)に係る情報を、少なくとも直近の画面ロックの解除時のものについて、記憶装置14上のデータストア(例えばデータベースやファイル、メモリテーブル等)であるロック履歴16に履歴として記録するようにしてもよい。
【0032】
このロック履歴16に蓄積された情報に基づいて、例えば、図1の例に示すように、前回の画面ロック解除時に上方向として指定した辺と隣接する辺に順次ローテーションさせるようにしてもよいし、逆に、ロック履歴16の情報を利用せずに、毎回ランダムに上方向として指定する辺を決定するようにしてもよい。また、ロック履歴16に蓄積された情報に基づいて統計処理や機械学習処理等を行うことにより、各辺が上方向となる回数が均等となるように、上方向となる辺を決定するようにしてもよい。
【0033】
なお、図1の例では、携帯端末1自体の方向は毎回同じにした状態でロックパターン20を指定する場合を示しているが、この場合は、ロックパターン20の軌跡をユーザ自身が頭の中で回転等させたイメージに基づいて入力することになる。これにより、外部から見た場合には画面ロックの解除時毎に毎回指等でなぞる動作が異なって見えることから、他人がのぞき見をしているような場合にロックパターン20が推測される危険性を低減させることができる。一方で、上方向インジケータ30が表示されたタッチパネル11の辺が上部となるように携帯端末1自体を移動、回転等させてロックパターン20を指定するようにしてもよい。これにより、ユーザは毎回同じジェスチャによりロックパターン20を指定することができるため、ユーザの負担が増えるのを回避することができる。
【0034】
また、図1の例では、ロックパターン20を指定する際の上方向となるタッチパネル11での辺の部分に黒色のバー(線や枠など)を表示することにより上方向インジケータ30としているが、上方向を指示する手法はこれに限らず、ユーザが上方向を認識可能なものであれば各種の指示手法をとることができる。例えば、特定の画像やテキストを表示して指示したり、音声の出力によって指示したり、背景画像のグラデーションにより指示したりなど、指示情報をユーザに通知することが可能な各種の手法が利用可能である。
【0035】
また、本実施の形態では、タッチパネル11のいずれかの辺の部分がロックパターン20を指定する際の上方向となるよう切り替える。すなわち、上方向を90°単位でローテーションや回転等させて切り替えているが、これに限らず、上方向を任意の角度で回転させるようにしてもよい。このとき、必要に応じて、タッチパネル11上に表示する格子状のポイントなどのガイドも合わせて回転させるのが望ましい。
【0036】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2である情報処理端末のロック解除方法は、実施の形態1の図1において示したような、ロックパターン20を指定する際の上方向のローテーションや回転に対する変形例として、画面ロックの解除時に、ユーザが携帯端末1を垂直方向(z軸方向)に対して任意に回転等させることで、ユーザ自身がロックパターン20を指定する際の上方向を能動的に変更する、換言すれば、ユーザによる携帯端末1の持ち方に合わせて携帯端末1のロック処理部18が上方向を変更することを可能とするものである。
【0037】
本実施の形態における携帯端末1のシステム構成は、実施の形態1の図3に示したものと同様であるため、説明は省略する。なお、本実施の形態では、携帯端末1は、自身の傾きや動きを検知するため加速度センサ12を有するものとする。
【0038】
図4は、本発明の実施の形態2である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。図示するように、ユーザは、携帯端末1を傾けたり回転させたりすることで、タッチパネル11面に投影したz軸(垂直上方向)の方向(図中の一点鎖線矢印)が、携帯端末1(タッチパネル11面上)における上部の方向(図中の点線矢印)と異なるようにする。携帯端末1のロック処理部18は、加速度センサ12により自身の傾きを検知し、タッチパネル11面に投影したz軸の方向を上方向として設定する。
【0039】
このとき、図示するように、タッチパネル11上に表示する格子状のポイントなどのガイド表示も合わせてタッチパネル11面に投影したz軸の方向が上方向となるよう回転させるのが望ましい。また、実施の形態1と同様に上方向インジケータ30を表示してもよい。ユーザは、これらの表示等に基づいて、タッチパネル11面に投影したz軸の方向を上方向として、ロックパターン20をジェスチャ等により指定することにより画面ロックを解除する。
【0040】
なお、本実施の形態では、タッチパネル11面に投影したz軸の方向がそのままロックパターン20を指定する際の上方向となるようにしているが、実施の形態1の図1に示した例のように、タッチパネル11のいずれかの辺の部分が上方向となるように、タッチパネル11面に投影したz軸の方向と、携帯端末1(タッチパネル11面上)における上部の方向とのなす角の範囲によって上方向となる辺を90°単位で適宜切り替えるようにしてもよい。
【0041】
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3である情報処理端末のロック解除方法は、実施の形態1、2に示したような、ロックパターン20を指定する際の上方向を画面ロックの解除毎に回転等させるものとは異なり、携帯端末1のロック処理部18が、ロックパターン20を指定する大きさや位置を毎回変更することで、同様に、タッチパネル11上で毎回同じ位置が指等でなぞられることを防止するものである。
【0042】
本実施の形態における携帯端末1のシステム構成は、実施の形態1の図3に示したものと同様であるため、説明は省略する。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態3である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。図5の左側の図では、図1の上段の図において示した例と同様に、携帯端末1のタッチパネル11上で、ユーザが画面ロックを解除するためにロックパターン20を指定する場合の例を示している。タッチパネル11の上辺部分には、実施の形態1の場合と同様に上方向インジケータ30が表示されている。
【0044】
図5の例では、ユーザが画面ロックの解除を行おうとする毎に、携帯端末1が、ロックパターン20を指定する際の大きさを順次もしくはランダムに切り替える。例えば、図5の右側の図では、左側の図におけるロックパターン20よりも小さいロックパターン20となるよう、格子状のポイントからなるガイド表示を小さく表示している。ロックパターン20を指定する際の大きさをこれらの2種類の間で交互に切り替えることで、画面ロックの解除時にタッチパネル11上で毎回同じ位置が指等でなぞられることがないようにすることができる。
【0045】
図5の例では、ロックパターン20を指定する際の大きさを画面ロックの解除毎に切り替えるものとしているが、これとは異なり、もしくはこれと合わせて、ロックパターン20を指定する際の位置を毎回切り替えるようにしてもよい。図6は、本実施の形態の情報処理端末のロック解除方法の別の例について概要を示した図である。図6の例は、図5に示した例と同様であるが、ここでは、左側の図と右側の図でロックパターン20を指定する位置が異なるよう、格子状のポイントからなるガイド表示の位置を切り替えている。このようにすることでも同様に、画面ロックの解除時にタッチパネル11上で毎回同じ位置が指等でなぞられることがないようにすることができる。
【0046】
なお、図5および図6の例では、予め決められた2種類の大きさや位置の間で交互に切り替えるものとしているが、これに限らず、さらに多くの種類の大きさや位置の間で順次ローテーションする等の所定のルールにより切り替えるようにしてもよい。また、毎回ランダムに大きさや位置を変更するものとしてもよい。また、上記では、携帯端末1のロック処理部18がロックパターン20を指定する際のガイド表示の大きさや位置を決定し、これに合わせた大きさや位置でユーザがロックパターン20を指定するものとしているが、例えばガイド表示を行わずに、ユーザ自身が指定するロックパターン20の大きさや位置を能動的に変更し、これに応じてロック処理部18がロックパターン20の軌跡を適宜取得するようにしてもよい。
【0047】
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4である情報処理端末のロック解除方法は、実施の形態1〜3に示したような、ユーザがロックパターン20を指定する際にタッチパネル11上を指等でなぞる位置が変更されるようにすることで、毎回同じ位置がなぞられることがないようにするものとは異なり、ユーザがロックパターン20を指定する際にタッチパネル11上を指等でなぞらないようにすることで、画面ロック解除を繰り返した際に残る指紋跡21がそもそも残らないようにするものである。
【0048】
本実施の形態における携帯端末1のシステム構成は、実施の形態1の図3に示したものと同様であるため、説明は省略する。なお、本実施の形態では、携帯端末1は、自身の傾きや動きを検知するため加速度センサ12を有するものとする。
【0049】
図7は、本発明の実施の形態4である情報処理端末のロック解除方法の例について概要を示した図である。図7(a)では、ロックパターン20の軌跡を描きたい方向にユーザが携帯端末1自体を傾けることで、タッチパネル11上を指等でなぞることなくロックパターン20を指定する場合の例を示している。ここでは、携帯端末1のロック処理部18が、加速度センサ12により自身の傾きを検知し、タッチパネル11の面上における当該傾きの方向にユーザが指等でなぞって軌跡を指定したものとして取り扱う。すなわち、携帯端末1(タッチパネル11の面)の傾きによってあたかもタッチパネル11上に置かれた仮想の物体(例えば図中の点線で示された仮想円柱体22)がタッチパネル11上で滑り落ちたり転がったりする際に描くと思われる計算上の軌跡を、ユーザが指等でなぞって指定した軌跡と同様に取り扱う。
【0050】
また、別の例として、図7(b)では、ロックパターン20の軌跡を描きたい方向にユーザが携帯端末1を振る(シェイクする)ことで、タッチパネル11上を指等でなぞることなくロックパターン20を指定する場合の例を示している。ここでは、携帯端末1のロック処理部18が、加速度センサ12により自身の動きの方向を検知し、この方向のタッチパネル11の面上における成分と同じ方向に、ユーザが指等でなぞって軌跡を指定したものとして取り扱う。このとき、例えば、ユーザが携帯端末1を振った強さ(加速度の大きさ)に応じて軌跡の長さを適宜決定することができる。
【0051】
なお、図7(a)、(b)いずれの例でも、ロックパターン20を指定する軌跡の始点については、例えば、ユーザがタッチパネル11上をタッチすることで指定するか、もしくは予め設定できるようにしておく。上記のような手法により、ユーザは、タッチパネル11上を指等でなぞることなくロックパターン20を指定することができる。
【0052】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である情報処理端末のロック解除方法によれば、ユーザが、パターンロックによる画面ロックを解除するためにロックパターン20を指定する際に、タッチパネル11上で毎回同じ位置が指等でなぞられるのを防止するよう異ならせることが可能となる。もしくは、指等でタッチパネル11上をなぞることなくロックパターン20を指定することが可能となる。これらにより、タッチパネル11上に残る指紋跡21の形状から第三者がロックパターン20を推測するのを困難とすることができる。もしくは、ロックパターン20を推測できるような指紋跡21がタッチパネル11上に残らないようにすることができる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0054】
例えば、上記の各実施の形態で説明したロック解除の手法は、それぞれ単独で適用するだけでなく、適宜組み合わせて適用することが可能である。例えば、実施の形態1の図1に示したような、ロックパターン20を指定する際の上方向を順次切り替える手法と、実施の形態3の図5や図6に示したような、ロックパターン20を指定する際の大きさや位置を変更する手法とを組み合わせて、ロックパターン20を指定する際の上方向を切り替えつつ、指定する際の位置や大きさも変更するということも可能である。また、ロックパターン20を指定する際の上方向や、位置、大きさを変更するとともに、実施の形態4の図7に示したような、携帯端末1を傾ける等によりタッチパネル11をタッチすることなくロックパターン20を指定する手法を組み合わせることも可能である。
【0055】
また、上記の各実施の形態では、携帯端末の画面ロックを解除する際のパターンロックを例として説明したが、これに限らず、PC等の各種情報処理端末におけるログイン処理や本人確認処理など、パターンロックによって所定の機能やサービス等の利用を制限する(ロックする)ような情報処理端末におけるロック解除方法一般に適宜利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、携帯端末を始めとする情報処理端末の第三者による利用を防止する情報処理端末のロック解除方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…携帯端末、
11…タッチパネル、12…加速度センサ、13…演算措置、14…記憶装置、15…ロックパターン、16…ロック履歴、17…OS、18…ロック処理部、19…アプリケーション、
20…ロックパターン、21…指紋跡、22…仮想円柱体、
30…上方向インジケータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを有し、予め登録されたロックパターンと合致する軌跡をユーザが前記タッチパネル上で指定することでロックを解除するパターンロックを行う情報処理端末のロック解除方法であって、
前記ユーザが前記パターンロックを解除しようとする毎に、前記情報処理端末は、前記ユーザが前記ロックパターンを指定する際に前記タッチパネル上で毎回同じ位置をなぞることがないようにすることを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、所定のルールに基づいて、前記ユーザが前記ロックパターンを指定する際の前記タッチパネル上での上方向を変更することを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、加速度センサにより検知した前記情報処理端末の傾きに基づいて得た、垂直上方向の軸を前記タッチパネルの面上に投影した方向に基づいて、前記上方向を変更することを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、前記タッチパネルのいずれかの辺の部分が、前記上方向となるように決定することを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、前記ユーザが前記パターンロックを解除しようとする毎に、前記上方向となる前記タッチパネルの辺を順次ローテーションさせて切り替えることを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項6】
請求項4に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、前記ユーザが前記パターンロックを解除しようとする毎に、前記上方向となる前記タッチパネルの辺をランダムに切り替えることを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、前記ユーザが前記上方向を識別可能とするための指示情報を出力することを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、所定のルールに基づいて、前記ユーザが前記ロックパターンを指定する際の前記タッチパネル上での位置もしくは大きさの少なくとも一方を変更することを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、前記ユーザが前記パターンロックを解除しようとする毎に、前記ユーザが前記タッチパネル上で前記ロックパターンを指定する際の位置もしくは大きさを、予め決められた中から順次ローテーションさせて切り替えることを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項10】
請求項8に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、前記ユーザが前記パターンロックを解除しようとする毎に、前記ユーザが前記タッチパネル上で前記ロックパターンを指定する際の位置もしくは大きさをランダムに切り替えることを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、加速度センサにより検知した前記情報処理端末の前記タッチパネルの面上における傾きの方向に、前記ユーザが前記ロックパターンの軌跡をなぞって指定したものとして取り扱うことを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の情報処理端末のロック解除方法において、
前記情報処理端末は、加速度センサにより検知した前記情報処理端末が振られた方向の前記タッチパネルの面上での成分の方向に、前記ユーザが前記ロックパターンの軌跡をなぞって指定したものとして取り扱うことを特徴とする情報処理端末のロック解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16115(P2013−16115A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150073(P2011−150073)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】