説明

情報表示装置および情報表示方法

【課題】表示面が着雪状態であってもそれに応じた表示項目を表示することができる情報表示装置および情報表示方法を提供する。
【解決手段】情報表示装置1は、表示面を複数に分割した各表示エリアについて、着雪の有無を検出する着雪検出手段(着雪検出器30)と、着雪検出手段の検出結果に基づいて各表示エリアについての着雪状態を特定し、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための回避表示項目が表示可能か否かを判定する表示可否判定手段(着雪状態特定部M2,表示可否判定部M3)と、表示面への表示の制御を実行する表示制御手段(表示制御部M1)と、を備える。表示制御手段は、着雪検出手段による検出の有無および/または表示可否判定手段による判定結果に応じて、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行したり、回避表示項目を表示するように表示制御を実行したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置および情報表示方法に関し、更に詳しくは、表示面が着雪状態であってもそれに応じた表示項目を表示することができる情報表示装置および情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の発光ダイオード等の表示素子をマトリクス状に配列した表示板を備え、表示素子を点灯することにより文字や図形を表示する情報表示装置が広く知られている。このような情報表示装置は、高速道路や一般道路の渋滞・事故・気象などの情報をドライバーに提供する道路情報板システム、ダム放流による増水などを河川敷利用者などに知らせる河川情報提供システム、行政情報などを広報伝達するための公共情報提供システムなど、多様な目的で使用されている。この種の情報表示装置に対する着雪対策としては、ヒーターによって表示面を全体的に加熱することにより、雪が付着するのを防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、表示面の着雪箇所を検出して、着雪箇所のみを部分的に加熱して融雪することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−38430号公報
【特許文献2】特開2006−169884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の場合、表示面が雪によって遮られることを防止でき、降雪時においても視認可能な表示を行うことが可能である。しかしながら、表示項目を表示可能な状態を維持するために表示面の全体を加熱するため、大量の電力消費を伴う、といった問題があった。また、上記特許文献2の場合も、表示面全体に着雪している場合には、表示項目を表示可能な状態にするために着雪箇所全体を加熱する必要があり、特許文献1と同様に、大量の電力が消費されてしまう、といった問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑み、着雪の状態を監視し、表示面が着雪状態であっても着雪していない表示面に応じた表示方法で表示項目を最初に表示するとともに、表示面の融雪を行うことにより全表示面を用いた通常の表示を行うことができる情報表示装置および情報表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.複数の表示素子を備える表示ユニットを縦横に配置した表示面に表示項目を表示する情報表示装置であって、
前記表示面を複数に分割した各表示エリアについて、着雪の有無を検出する着雪検出手段と、
前記着雪検出手段の検出結果に基づいて前記各表示エリアについての着雪状態を特定し、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための回避表示項目が表示可能か否かを判定する表示可否判定手段と、
前記表示面への表示の制御を実行する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、
前記着雪検出手段により着雪が検出されなかったときには、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行し、
前記着雪検出手段により着雪が検出され、かつ前記表示可否判定手段により前記回避表示項目を表示可能と判定されたときには、前記回避表示項目を表示するように表示制御を実行することを特徴とする。
2.上記1.において、前記回避表示項目は、
着雪していると特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素を、着雪していないと特定された表示エリアで、当該着雪してないと特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素と交互に表示する形態の表示項目であることを特徴とする。
3.上記1.または2.において、前記表示エリア毎の分割加熱が可能な分割加熱手段と、
着雪していると特定された前記表示エリアのうち、所定の処理により融雪の必要性がある表示エリアを特定する融雪表示エリア特定手段と、
前記融雪表示エリア特定手段により融雪の必要性があると特定された前記表示エリアを加熱するように、前記分割加熱手段の制御を実行する加熱制御手段と、をさらに備えることを特徴とする。
4.複数の表示素子を備える表示ユニットを縦横に配置した表示面に表示項目を表示する情報表示方法であって、
前記表示面を複数に分割した各表示エリアについて、着雪の有無を検出する着雪検出工程と、
前記着雪検出工程での検出結果に基づいて前記各表示エリアについての着雪状態を特定し、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための回避表示項目が表示可能か否かを判定する表示可否判定工程と、
前記表示面への表示の制御を実行する表示制御工程と、を備え、
前記表示制御工程は、
前記着雪検出工程により着雪が検出されなかったときには、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行し、
前記着雪検出工程により着雪が検出され、かつ前記表示可否判定工程により前記回避表示項目を表示可能と判定されたときには、前記回避表示項目を表示するように表示制御を実行することを特徴とする。
5.上記4.において、前記回避表示項目は、
着雪していると特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素を、着雪していないと特定された表示エリアで、当該着雪してないと特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素と交互に表示する形態、
の表示項目であることを特徴とする。
6.上記4.または5.において、着雪していると特定された前記表示エリアのうち、所定の処理により融雪の必要性がある表示エリアを特定する融雪表示エリア特定工程と、
前記融雪表示エリア特定工程により融雪の必要性があると特定された前記表示エリアを加熱するように、前記表示エリア毎の分割加熱が可能な分割加熱手段の制御を実行する加熱制御工程と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の情報表示装置によれば、表示面を複数に分割した各表示エリアについての着雪の有無を検出する着雪検出手段と、着雪検出手段の検出結果に基づいて各表示エリアについての着雪状態を特定し、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための回避表示項目が表示可能か否かを判定する表示可否判定手段と、表示面への表示の制御を実行する表示制御手段と、を備えている。そして、表示制御手段は、着雪検出手段により着雪が検出されなかったときには、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行し、着雪検出手段により着雪が検出され、かつ表示可否判定手段により回避表示項目を表示可能と判定されたときには、当該回避表示項目を表示するように表示制御を実行することを特徴としている。このような構成により、表示面が着雪状態であっても、着雪していない表示エリアを利用して、それに応じた表示項目を表示することが可能となり、表示すべき情報が表示不能である状態を極力避けることができる。また、融雪を行うことなく表示項目を表示可能であるので、ヒーターによって表示面全体を加熱して雪が付着するのを防止して表示項目を表示可能とするか、あるいは着雪箇所が発生したときには表示面全体を加熱融雪して表示項目を表示可能な状態とする従来の方法と比較して、電力消費を大幅に抑制することができる。
【0008】
また、前記回避表示項目が、着雪していると特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素を、着雪していないと特定された表示エリアで、当該着雪してないと特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素と交互に表示する形態の表示項目である場合は、表示面の着雪した箇所を回避しつつ、表示すべき情報を適切に表示することができる。
【0009】
さらに、前記表示エリア毎の分割加熱が可能な分割加熱手段と、着雪していると特定された前記表示エリアのうち、所定の処理により融雪の必要性がある表示エリアを特定する融雪表示エリア特定手段と、前記融雪表示エリア特定手段により融雪の必要性があると特定された前記表示エリアを加熱するように、前記分割加熱手段の制御を実行する加熱制御手段と、を備える場合は、着雪により表示不能である場合であっても、融雪して最低限の表示スペースを確保することにより、融雪のために大量の電力を消費することなく回避表示項目を速やかに表示可能な状態とすることができる。
【0010】
本発明の情報表示方法によれば、上記の情報表示装置の効果と同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態にかかる情報表示装置を模式的に示す正面図である。
【図2】本実施形態にかかる情報表示装置の概略ブロック図である。
【図3】本実施形態にかかる情報表示装置を模式的に示す断面図である。
【図4】回避表示項目の表示例を説明するための説明図である。
【図5】回避表示項目の表示例を説明するための説明図である。
【図6】本実施形態にかかる情報表示処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)情報表示装置の構成
(2)情報表示処理(情報表示方法)
【0013】
(1)情報表示装置の構成
図1は、本実施形態にかかる情報表示装置1の外観を示している。情報表示装置1は、表示すべき情報を管理する中央制御装置(図示せず)からの指示に応じて、後述する表示ユニットを縦横に配列してなる表示面2に道路情報等を表示する。表示面2は複数(図1中3つ)の表示エリアに分割されており、表示エリア毎の表示制御を行うことができる。表示ユニットには、表示素子として複数のLED(発光ダイオード)が配設されている。各LEDは筐体3の前面に露出して表示面2をなしている。そして、情報表示装置1は、これらLEDのいずれかを点灯させることにより表示面2に文字や図柄を表示させる。なお、LEDは単色であってもよいし、赤色、黄緑色、青色などの発光色の異なるLEDを組み合わせるようにしてもよい。
【0014】
また、筐体3の前面側には、表示面2の着雪状態を検出する複数の着雪検出器30a、30b、・・・、30fが設けられている。各着雪検出器30a〜30fは、表示面2の各表示エリア毎の着雪状態を検出可能に設けられている。また、筐体3の外部には、外気温を検出する外気温センサ40が設けられている。
【0015】
本実施形態では、図1に示すように、表示面2が上下に多段構成され、段単位で複数の表示エリアに分割されている場合を例示する。同図において、表示面2は上段、中段および下段の3つの表示エリア2a、2b、2cに分割されている。着雪検出器30a〜30fはそれぞれ表示エリア2a〜2cの両側方に設けられている。そして、各表示エリア2a〜2cに対応する各着雪検出器30a〜30fのうちの少なくとも一方の着雪検出器が着雪を検出した場合に、当該表示エリアは着雪していると特定される。着雪検出器30a〜30fは、ヒーターを備え、付着した雪を溶かして生じた水分を検出するものを利用している。この検出器は、水分による電極間の電気伝導度の変化を検出することにより着雪を検出する。なお、着雪検出器としては、着雪を検出可能であればこれに限定されるものではない。また、外気温センサ40としては、例えば、サーミスタや熱電対等を利用することができる。
【0016】
図2は、本実施形態にかかる情報表示装置1の概略ブロック図である。同図に示すように、情報表示装置1は、表示部10と制御部20とを備えている。制御部20は、表示部10の各表示ユニット11と接続しているとともに、各着雪検出器30a〜30fおよび外気温センサ40と接続している。
表示部10は、樹脂により形成される複数の表示ユニット11を備えている。図3に示すように、各表示ユニット11は図示しない配線用穴を有する筺体3に固定されるとともにその外周が化粧カバー31によって覆われている。また、各表示ユニット11は、道路情報等が表示される表示面2をなすように、複数のLED111をマトリックス状に配置してなる。各表示ユニット11には図示しないシフトレジスタやLED駆動回路等が設けられており、これらを介して、制御部20による各LED111の点灯制御が実行される。なお、LED111と表示ユニット11との間および表示ユニット11と筺体3との間には防水処理が施されており、融雪した水や雨水、塵等が表示ユニット11内および筺体3内にそれぞれ侵入するのを防止するようにしている。
【0017】
また、図3に示すように、各表示ユニット11の前面側にはヒーター線12が配索されている。ヒーター線12は、制御部20による加熱制御の際に通電されることにより発熱し、表示面2に付着した雪を溶かすことができる。ヒーター線12は表示面2の各表示エリア2a〜2c毎に分割して配索されており、これにより各表示エリア2a〜2c毎の加熱制御が可能となっている。ヒーター線12としては、例えば、ニクロムやカンタル等、種々の電熱性導電金属を採用することができる。なお、本実施形態においては、ヒーター線12は、太陽光を遮光するための遮光フード13に取り付けられている。遮光フード13はアルミニウム等の熱伝導性材料からなり、各LED111の上方に庇状にもうけられている。この遮光フード13には複数の貫通孔が形成されており、遮光フード13を表示ユニット11に取り付けたときに、各LED111が貫通して表示面2の前面に露出するようになっている。また、遮光フード13と表示ユニット11との間には空隙112が形成されており、融雪した水や雨水等を下方に通過させることができる。また、図3に示すように、表示面2は、ドライバーからの視認性をよくするために、下方にやや傾けられている。
【0018】
なお、ヒーター線12の配索形態等は特に限定されない。ヒーター線の取付位置、取付形態等も特に限定されないが、例えば、遮光フード13に貼り付けたり、遮光フード13の裏面に溝を形成して収納したりなど、遮光フード13と一体化するように取り付けられている形態であることができる。これにより、遮光フード13への熱伝導性が良好となり、効率よく融雪することができる。また、ヒーター線12を表示ユニット11側に配索するようにしてもよい。
【0019】
制御部20は、情報表示装置1の制御を実行する。図2に示すように、制御部20は、CPU21と制御プログラムメモリ22と表示データメモリ23と表示項目データメモリ24とタイマ25とを備えている。制御プログラムメモリ22は情報表示装置1の制御を行うための制御プログラムMを記憶した記憶媒体であり、CPU21は表示データメモリ23をワークエリアとして利用しながら当該制御プログラムMを実行する。制御プログラムMは、表示制御部M1と着雪状態特定部M2と表示可否判定部M3と加熱制御部M4と融雪表示エリア特定部M5とから構成されている。また、表示項目データメモリ24には表示項目のデータが格納されている。
【0020】
表示制御部M1は表示面2に表示項目を表示する制御を実行する。表示される表示項目には、1種類の表示項目について、表示面2に着雪していない状態で表示される通常の表示項目と、着雪している状態で着雪箇所を回避して表示される回避表示項目と、があり、表示制御部M1は表示面2の着雪状態に応じた表示項目を表示する。
【0021】
着雪状態特定部M2は、各着雪検出器30a〜30fの検出結果に基づいて、表示面2の各表示エリアについての着雪状態を特定する。すなわち、着雪状態特定部M2は、各着雪検出器30a〜30fのいずれかが着雪を検出した場合、当該着雪検出器が担当する表示エリアを着雪している表示エリアとして特定する。
表示可否判定部M3は、着雪状態特定部M2により特定された着雪状態において、回避表示項目の表示が可能か否かを判定する。
【0022】
加熱制御部M4は、ヒーター線12により遮光フード13を介して表示面2の加熱制御を行う。上述のように、ヒーター線12は、表示エリア2a〜2cに対応するように分割されており、各表示エリア2a〜2cのヒーター線12毎に通電可能である。そして、加熱制御部M4は、着雪していると特定された表示エリアのうち、融雪表示エリア特定部M5により融雪の必要性がある表示エリアとして特定された表示エリアを加熱するようにヒーター線12を制御する。
【0023】
融雪表示エリア特定部M5は、着雪状態特定部M2により着雪していると特定された表示エリアのうち、融雪の必要性がある表示エリアを特定する。融雪の必要性がある表示エリアを特定する形態は特に限定されないが、例えば、融雪することにより回避表示項目または通常の表示項目を表示可能となる表示エリアを融雪の必要性がある表示エリアとして特定することができる。
【0024】
タイマ25は、所定間隔で実行される外気温センサ40による外気温の測定間隔を計時したり、所定時間実行される加熱制御部M4による加熱制御の時間を計測したりする。
【0025】
上記表示制御部M1は、着雪検出器30a〜30fにより着雪が検出されなかった場合には、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行する。また、着雪検出器30a〜30fにより着雪が検出され、かつ表示可否判定部M3により回避表示項目を表示可能と判定された場合には、回避表示項目を表示するように表示制御を実行する。さらに、着雪検出器30a〜30fにより着雪が検出され、表示可否判定部M3により回避表示項目が表示不可と判定された場合には、融雪することにより回避表示項目が表示可能となる表示エリアを融雪の必要性がある表示エリアとして特定する。
【0026】
回避表示項目は、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための表示項目である。本実施形態では、回避表示項目の着雪箇所を回避する形態として、(1)着雪している表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素を着雪していない表示エリアで交互に表示することにより着雪箇所を回避する形態を採用している。すなわち、図4および5に示すように、回避表示項目として、着雪していると特定された表示エリアに表示されるべき表示要素を他の表示エリアで交互に表示するようにしている。そして、これらの回避表示項目は、表示項目データメモリ24に予め格納されている。したがって、本実施形態1では、表示面2の表示エリア2a〜2cのうちいずれか1つまたは2つが着雪していると特定された場合、表示可否判定部M3は、各回避表示項目についての表示の可否を判定する。
【0027】
また、本実施形態では、回避表示項目は予め複数設定されており、各回避表示項目に表示の優先順位が設定されている。表示可否判定部M3は、各回避表示項目のそれぞれについての表示の可否を判定し、融雪表示エリア特定部M5は、着雪していると特定された表示エリアであって、融雪することによって現在表示されている表示項目よりも表示の優先順位の高い回避表示項目を表示可能となる表示エリアを融雪の必要性がある表示エリアとして特定する。「表示の優先順位」とは、複数の回避表示項目が表示可能と判定された場合に、どの回避表示項目を表示するかを予め定めたものである。回避表示項目の表示の優先順位は、例えば、表示に用いる表示エリアの数を勘案して設定するようにすることができるが、本実施形態では、より多くの表示エリアを用いて表示される回避表示項目を表示の優先順位の上位としている。すなわち、本実施形態では、表示可否判定部M3により、2つの表示エリアを用いて表示される回避表示項目、および1つの表示エリアを用いて表示される回避表示項目、の2種類の回避表示項目が表示可能であると判定された場合、これらのうち表示の優先順位のより高い2つの表示エリアを用いて表示される回避表示項目が表示される。
【0028】
(2)情報表示処理(情報表示方法)
本実施形態にかかる情報表示処理では、表示面の各表示エリアについての着雪状態を検出し、着雪していない表示エリアのみを利用して表示項目を表示する処理を行う。また、着雪状態の検出結果に基づいて、表示エリアを単位として段階的に融雪を実行し、着雪していない表示エリアと、融雪が完了した表示エリアと、を用いた表示項目に順次変更する処理を行う。図6は情報表示処理のフローチャートを示しており、同図の各処理は、制御プログラムメモリ22に記憶された制御プログラムMに従って、CPU21が各種演算処理を実行することにより実現される。
【0029】
なお、本実施形態では、表示項目の表現方法として、
(i)「ここから先」、「積雪」および「走行注意」という各表示要素を3つの表示エリア2a,2b,2cにそれぞれ表示する通常の表示項目(図1参照)、
(ii)「ここから先」および「積雪」の各表示要素を1つの表示エリアに交互に表示するとともに、「走行注意」の表示要素を他の1つの表示エリアに表示する回避表示項目(図4(a)および(b)参照)、
(iii)「ここから先」、「積雪」および「走行注意」の各表示要素を1つの表示エリアに交互に表示する回避表示項目(図5(a)(b)および(c)参照)、を例示する。
【0030】
これら(i)〜(iii)の各表示項目のうち、通常の表示項目(i)は、外気温が所定温度以下でない場合、および着雪検出した検出器がない場合に表示可能な通常の表示項目であり、回避表示項目(ii)および(iii)は、着雪検出された表示エリアがある場合でもそれを回避して表示可能な表示項目である。また、上述のように、回避表示項目の表示の優先順位は、より多くの表示エリアを用いて表示する回避表示項目を上位として設定されている。すなわち、表示の優先順位は、(ii)、(iii)の順に設定されている。したがって、(ii)および(iii)の2つの回避表示項目が表示可能であると判定された場合には、これらのうちで、表示の優先順位のより高い(ii)の表示項目が表示される。
なお、図4および5、ならびに以下で参照する図面において、網掛で示される表示エリアはそれぞれ着雪していると特定されている表示エリアを示している。
【0031】
最初に、ステップS100にて、外気温センサ40による外気温の検出を行う。そして、ステップS105にて、外気温が2℃以下であることを確認する。すなわち、検出した外気温に基づいて、着雪が発生しうる条件であるか否かを判定する。なお、ステップS100は、タイマ25により、冬期間において15分毎に実行される。また、後述するステップS105〜S145の実行中であっても、強制的にステップS100がスタートするようになっている。
【0032】
ステップS105において外気温が2℃以下でない場合には、ステップS145にて通常の表示項目(i)を表示する。すなわち、気温が高く表示面2に着雪している可能性が低いとして、以降の処理を行わず、表示面2の全体を使用した通常の表示項目を表示する。外気温が2℃以下である場合には、ステップS110に移行する。なお、着雪の可能性が低いと判定する外気温は2℃に限られず、雪質等、条件の違いにより変更してもよい。
ステップS110では、着雪検出器30a〜30fにより着雪の検出を行う。上述のように、本実施形態1では、付着した雪を溶かして水分を検出することにより着雪を検出する検出器を用いている。このため、外気温が所定温度以下であり、この状態で水分が検出された場合に着雪有りと判定する。
【0033】
ステップS115では着雪を検出した着雪検出器があるか否かが判定され、着雪を検出した着雪検出器がない場合には、ステップS145にて通常の表示項目(i)を表示する。すなわち、表示面2には着雪がなく視認性に問題がないとして、表示面2の全体を使用する通常の表示項目を表示する。むろん、ステップS100は15分毎に実行されるので、その後の着雪には随時対応できる。一方、ステップS115にて着雪を検出した着雪検出器があると判定された場合には、ステップS120にて、その検出結果に基づいて、表示面2の着雪状態を特定する。すなわち、着雪状態特定部M2は、表示面2の各表示エリア2a〜2cについて、着雪を検出した着雪検出器が担当する表示エリアを着雪していると特定し、着雪を検出しなかった着雪検出器が担当する表示エリアを着雪していないと特定する。
【0034】
ステップS125では、ステップS120における着雪状態の特定結果に基づいて、この状態の表示面2に回避表示項目の表示が可能か否かを判定する。すなわち、各回避表示項目(ii)および(iii)について、それぞれの表示要素を表示するために必要な表示エリアが着雪有りと特定されていれば表示不可と判定し、着雪なしと特定されていれば表示可能と判定する。例えば、表示面2の各表示エリア2a〜2cのうち、1つの表示エリアのみが着雪している表示エリアとして特定されている場合、図1に示すような3つの表示エリアを用いる表示項目は表示することができないが、図4に示すような2つの表示エリアを用いる回避表示項目(ii)、および、図5に示すような1つの表示エリアを用いる回避表示項目(iii)はいずれも表示可能である。したがって、表示可否判定部M3は、回避表示項目の表示が可能と判定する。
一方、ステップS125において、表示項目の表示不可と判定された場合は、何も表示せず、ステップS135に移行する。
【0035】
ステップS125において回避表示項目を表示可能と判定されたら、ステップS130では、表示制御部M1により、表示可能とされた回避表示項目を表示する。このとき、表示可能な回避表示項目が複数ある場合には、それらのうちでより多くの表示エリアを用いる回避表示項目を表示の優先順位の上位としているので、回避表示項目(ii)と回避表示項目(iii)の2つの回避表示項目が表示可能と判定された場合には、表示制御部M1は、2つの表示エリアを用いて表示する優先順位が高い回避表示項目(ii)を表示する。なお、本実施形態において、回避表示項目(ii)は、図4(a)および(b)のように2つの表示エリアで表示項目を所定間隔で切り替えて表示する。また、回避表示項目(iii)は、図5(a)、(b)および(c)のように1つの表示エリアで3つの表示項目を順に所定間隔で切り替えて表示する。
【0036】
ステップS135では、融雪表示エリア特定部M5により、着雪していると特定された表示エリアのうち、融雪の必要性がある表示エリアを特定する。本実施形態において、融雪の必要性がある表示エリアの特定は、3つの表示エリア2a〜2cのいずれかに着雪しており、2つの回避表示項目(ii)および(iii)のいずれも表示不可と判定された場合は、融雪することにより、回避表示項目(iii)が表示可能となる1つの表示エリアを融雪の必要性がある表示エリアとして特定する。この場合、着雪していると特定されている表示エリアは複数あるので、本実施形態では、それらのうち、最も上段に位置する表示エリアを融雪の必要性がある表示エリアとして特定する。また、図5のように2つの表示エリアに着雪し、回避表示項目(ii)が表示不可と判定された場合は、融雪することにより、回避表示項目(ii)が表示可能となる表示中の表示エリアに隣接する表示エリアである表示エリア2bを融雪の必要性がある表示エリアとして特定する。また、図4のように1つの表示エリアに着雪し、通常の表示項目が表示不可と判定された場合は、融雪することにより通常の表示項目(i)が表示可能となる着雪した表示エリアを融雪の必要性がある表示エリアとして特定する。すなわち、図4の場合、着雪していると特定されている1つの表示エリア2cを融雪の必要性がある表示エリアとして特定することにより、融雪のために大きな電力が一度に掛かることを防止している。
【0037】
なお、着雪していると特定された表示エリアが複数ある場合、融雪の必要性がある表示エリアの特定は、ドライバーからの視認性等を勘案して、例えば、上述のように、着雪していると特定された表示エリアのうちで最も上段に位置する表示エリアを特定するようにしたり、表示可能な表示エリアに隣接する表示エリアを特定するようにしたりしてもよい。すなわち、融雪表示エリア特定部M5は、所定の処理として、着雪していると特定された表示エリアのうちで最も上段に位置する表示エリア、表示可能な表示エリアに隣接する表示エリア等を、融雪の必要性がある表示エリアとして特定する処理を実行するようにしてもよい。
【0038】
ステップS140では、加熱制御部M4により、融雪の必要性があると特定された表示エリアを所定時間(例えば、5分毎)加熱し、融雪を実行する。その後、通常の表示項目(i)が表示されるようになるまでステップS110以降を繰り返す。
【0039】
なお、加熱時間を5分とするために、以下のようにして表示エリア当たりのヒーター線12の電力を定めるようにした。なお、加熱時間は適宜変更可能であり、その場合には、遮光フードの大きさ、形状等を考慮して、ヒーター電力を適宜変更すればよい。
【0040】
アルミ材から形成され、ヒーター線12を貼付けた遮光フード13(高さH約0.5m×幅W約2m×厚さt約0.003m)を、外気温−10℃の下で+40℃までM分で加熱するために必要なヒーター線12の電力W1の計算式は、以下の数式(1)で表される。
【0041】
W1=0.278×60×C×d×V×Δt/M・・・(1)
但し、Cは比熱(アルミニウムの場合、0.9kJ/(kg×℃))、dは密度(アルミニウムの場合、2.71kg/m)、Vは体積(0.5×2.0×0.003m)、Δtは温度差(40−(−10)℃)であり、加熱時間Mを5分としているので、これらを上記(1)の数式に当てはめると、W1は1220Wとなる。
【0042】
一方、遮光フード13の表面が融雪による水と接触しているとした場合の遮光フードのM分当たりの放熱を補うための電力W2の計算式は、以下の数式(2)で表される。
【0043】
W2=A×Q×60/M・・・(2)
但し、Aは放熱面の表面積(m)であり、上述の遮光フード13の場合、0.5(H)×2.0(W)×2(面(上下2面))である。また、Qは放熱損失係数(W/m)であり、温度差50℃の水表面の場合は3000である。また、加熱時間を5分としているので、これらを上記(2)の数式に当てはめると、W2は500Wとなる。
以上から、5分間に必要とする総電力W3はW1+W2となり、1720Wとなる。この値に15%の安全率を考慮し、ヒーター線12の表示エリア当たりの電力容量を2000Wとした。
【0044】
上記のように設定したヒーター線12による融雪実験では、同一の形状を持つ情報表示装置1を、外気温が−10℃の近傍で全ての表示エリア2a〜2cが着雪した状態で、表示エリア2aを2000Wのヒーター線で遮光フード13を5分間加熱したところ、5分間で表示エリア2aと表示エリア2bの上部が完全に融雪することが繰返し観察された。
なお、降雪の状況下で融雪後の表示エリアへの再着雪の実験を行ったところ、1000Wの電力で各表示エリアを間欠加熱することで再着雪が見られないことが確認された。
【0045】
以上のように、本実施形態では、表示面2が着雪状態であっても、着雪していない箇所を利用して表示項目を表示することができるので、表示すべき情報が表示不能である状態を極力避けることができる。
【0046】
また、本実施形態では、ヒーター線12により表示エリア2a〜2c毎を分割加熱し、着雪していると特定された表示エリアのうち、融雪の必要性がある表示エリアを特定する融雪表示エリア特定部M5と、融雪表示エリア特定部M5により融雪の必要性があると特定された表示エリアを加熱するように、ヒーター線12の制御を実行する加熱制御部M4と、を備えるようにしたので、着雪により表示不能である場合であっても、融雪して最低限の表示スペースを確保するとともに、表示可能な表示エリアを、表示エリアを単位として拡大することにより、大量の電力を一度に消費することなく速やかに通常の表示が可能な状態とすることができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、着雪検出器を各表示エリアの両側方に配置する方法を提案したが、表示エリアの上下に配置したり、表示エリア内、より具体的には各遮光フードと各表示ユニットの間に配置し、融雪を表示ユニット単位で直接に監視することにより、より高い精度で融雪の制御を実行するようにしてもよい。
また、本実施形態では、回避表示項目(iii)を表示エリア2aで表示する場合を例示したが、着雪していない表示エリアが表示エリア2bまたは2cの場合には、表示エリア2bまたは2cで同様の表示を実行してもよい。
さらに、回避表示項目(ii)の表示を行う場合に表示エリア2bと2cで表示を行う場合を例示したが、表示エリア2aと2c、あるいは表示エリア2bと2cを使用する表示項目をそれぞれ記憶し、各表示エリアに「ここから先」と「積雪」の交互表示と「走行注意」の連続表示を最初に実行し、次に着雪している残りの表示エリアを融雪し通常の表示に移行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1;情報表示装置、2;表示面、2a〜2c;表示エリア、3;筐体、10;表示部、11;表示ユニット、111;LED(表示素子)、112;空隙、12;ヒーター線、13;遮光フード、20;制御部、21;CPU、22;制御プログラムメモリ、23;表示データメモリ、24;表示項目データメモリ、25;タイマ、30a〜30f;着雪検出器、31;化粧カバー、40;外気温センサ、M;制御プログラム、M1;表示制御部、M2;着雪状態特定部、M3;表示可否判定部、M4;加熱制御部、M5;融雪表示エリア特定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子を備える表示ユニットを縦横に配置した表示面に表示項目を表示する情報表示装置であって、
前記表示面を複数に分割した各表示エリアについて、着雪の有無を検出する着雪検出手段と、
前記着雪検出手段の検出結果に基づいて前記各表示エリアについての着雪状態を特定し、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための回避表示項目が表示可能か否かを判定する表示可否判定手段と、
前記表示面への表示の制御を実行する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、
前記着雪検出手段により着雪が検出されなかったときには、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行し、
前記着雪検出手段により着雪が検出され、かつ前記表示可否判定手段により前記回避表示項目を表示可能と判定されたときには、前記回避表示項目を表示するように表示制御を実行することを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
前記回避表示項目は、着雪していると特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素を、着雪していないと特定された表示エリアで、当該着雪してないと特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素と交互に表示する形態の表示項目である請求項1記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記表示エリア毎の分割加熱が可能な分割加熱手段と、
着雪していると特定された前記表示エリアのうち、所定の処理により融雪の必要性がある表示エリアを特定する融雪表示エリア特定手段と、
前記融雪表示エリア特定手段により融雪の必要性があると特定された前記表示エリアを加熱するように、前記分割加熱手段の制御を実行する加熱制御手段と、をさらに備える請求項1または2記載の情報表示装置。
【請求項4】
複数の表示素子を備える表示ユニットを縦横に配置した表示面に表示項目を表示する情報表示方法であって、
前記表示面を複数に分割した各表示エリアについて、着雪の有無を検出する着雪検出工程と、
前記着雪検出工程での検出結果に基づいて前記各表示エリアについての着雪状態を特定し、着雪していると特定された表示エリアを回避して表示するための回避表示項目が表示可能か否かを判定する表示可否判定工程と、
前記表示面への表示の制御を実行する表示制御工程と、を備え、
前記表示制御工程は、
前記着雪検出工程により着雪が検出されなかったときには、通常の表示項目を表示するように表示制御を実行し、
前記着雪検出工程により着雪が検出され、かつ前記表示可否判定工程により前記回避表示項目を表示可能と判定されたときには、前記回避表示項目を表示するように表示制御を実行することを特徴とする情報表示方法。
【請求項5】
前記回避表示項目は、着雪していると特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素を、着雪していないと特定された表示エリアで、当該着雪してないと特定された表示エリアに表示されるべき通常の表示項目の表示要素と交互に表示する形態、の表示項目である請求項4記載の情報表示方法。
【請求項6】
着雪していると特定された前記表示エリアのうち、所定の処理により融雪の必要性がある表示エリアを特定する融雪表示エリア特定工程と、
前記融雪表示エリア特定工程により融雪の必要性があると特定された前記表示エリアを加熱するように、前記表示エリア毎の分割加熱が可能な分割加熱手段の制御を実行する加熱制御工程と、をさらに備える請求項4または5記載の情報表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136892(P2012−136892A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290938(P2010−290938)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】