説明

情報記録媒体、その読取装置及びその読取方法

【課題】目視上目立たない高耐久性かつ安価な情報記録媒体でありながら十分な強度及び高S/N比を有する信号を読み取ることが可能な情報読取システムを提供する。
【解決手段】情報読取システム1であって、ランタノイド系元素を含む窒化物、アクチノイド系元素を含む窒化物及び遷移金属元素を含む窒化物のうち少なくともいずれか1つを発光物質として有する情報記録媒体と、当該情報記録媒体に近赤外光または赤外光を照射する光源31と、当該情報記録媒体から発光した可視光または近赤外光を受光するカメラ34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップコンバージョン過程を用いた発光物質を蛍光材料とした情報記録媒体、それに記録された情報を光学的に読み取る読取装置及び読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードのように、光学的に読み取り可能な情報が記録された情報記録部を有する情報記録媒体が、様々な分野で利用されている。近年では、高密度の情報量を与えることのできる二次元バーコードのパターンを有する情報記録部も開発されており、今後広く普及していくものと予想される。
【0003】
これらのコードパターンの読み取り原理は、基材の下地の部分と白黒で構成されたコードパターンのコントラストとが利用されている。例えば、バーコードパターンについては、発光ダイオードや半導体レーザからの光をバーコードパターンに照射し、下地とバーコードパターンの反射率の相違に基づいて、パターン部分の幅を検出する。この幅に基づいて情報が読み取られる。また、黒色のみならずカラーコードパターンも存在するが、読み取り原理は上記と全く同一である。
【0004】
しかし、このような肉眼で明瞭に視認できるコードパターンの場合、コードパターンが付与される商品によってはコードパターンが視覚上邪魔になることがある。このため、見えないコードパターン(ステルス印刷など)に対する要求が高まってきている。この方式として、コードパターンを光吸収色素で形成し、光をこのコードパターンに照射して反射した反射光を読み取る方式や、コードパターンを蛍光体で形成し、その発光スペクトルを読み取る方式などが提案されている(特許文献1及び2)。
【0005】
上記方式では、目視上、コードパターンが邪魔になることはない。また、光吸収色素で形成されたコードパターンの場合、従来の読取装置の光源を近赤外光源に置換するだけで、それに吸収のある色素で形成されたコードパターンの読み取りも可能である。また、従来の黒色コードパターンも赤外光を吸収するので、赤外光源を用いた読取装置で黒色コードパターンを読み取ることも可能であり、システムの互換性も保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−212944号公報
【特許文献2】特開2006−079466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光吸収色素で形成されたコードパターンは、温度や水分など環境に対する耐久性が一般の蛍光体と比較して著しく低い。
【0008】
また、蛍光体で形成されたコードパターンの場合、発光スペクトルを観測するために、光源として紫外光が広く使われている。この紫外光による励起方式の場合には、製品の素材、例えば、紙やプラスチックそのものが発光するため、蛍光体の発光スペクトルを検知するには添加すべき蛍光体の濃度を上げる必要がある。これは、発光スペクトルを用いて情報を識別する場合、出力信号のS/N比を確保しなければならず、信号レベルを上げて相対的に外乱光や背景雑音などの不要な信号成分を除去するためである。
【0009】
しかし、添加濃度を上げると、素材の変色や劣化が生じ、同時に多量の蛍光体が必要となるので製品の製造コストの上昇をもたらす。
【0010】
さらには、紫外光照射方式の場合、製品の劣化、濃い色を素材としたときの発光の困難性、及び、製品の多くに紫外線遮蔽剤が添加されていること、などの課題を有する。これらにより、スペクトルの検知が困難であり、紫外光励起による発光スペクトルの読み取り方式は実用されるには至っていない。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、高耐久性及び低添加濃度の蛍光体を有し目視上目立たない安価な情報記録媒体、当該情報記録媒体から十分な強度及び高S/N比を有する信号を読み取ることが可能な読取装置及び読取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る情報記録媒体は、光学的に読み取り可能な情報が記録されている情報記録媒体であって、ランタノイド系元素を含む窒化物、アクチノイド系元素を含む窒化物及び遷移金属元素を含む窒化物のうち少なくともいずれか1つを有し、近赤外光または赤外光が照射されることにより励起され、当該励起により可視域から近赤外域までの光を発光する発光物質を備えることを特徴とする。
【0013】
ランタノイド系元素は、4f軌道に電子を持っており、可視光および近赤外光の波長領域に、波長幅の狭い、多くの光吸収帯を持つ。また、アクチノイド系元素及び遷移金属元素は、近赤外域に広い光吸収帯を持つ。よってこれらの元素は、適切な光源からの照射により、2段階あるいは多段階の励起がなされ、励起波長よりも短波長の光を生成でき(アップコンバージョン)、強い光励起が可能であり十分な発光強度が得られる。
【0014】
本構成をとることにより、発光物質の添加濃度が低く、目視上目立たず、かつ、製品の光退色に影響されない高耐久性を有する情報記録媒体を実現することが可能となる。これは、近赤外光または赤外光が、窒化物である当該情報記録媒体に照射されることにより、アップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされることによるものである。このアップコンバージョンによる発光により、高出力かつ高S/N比を有する信号を出力することができる。
【0015】
また、前記ランタノイド系元素は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのいずれかであり、前記アクチノイド系元素は、Uであり、前記遷移金属元素は、Ni、Co、Cu、Fe、Mn、Cr、Re、Os、Ir、Ti、V、Zn、Ru、Mo、W、Pd、Au、Ag及びPtのいずれかであることが好ましい。
【0016】
アップコンバージョン過程は、同種または異種のイオン間のエネルギー伝達と非輻射遷移過程など多くの過程を含んでいる。よって、アップコンバージョン過程は、ランタノイド系元素、アクチノイド系元素及び遷移金属元素であるドーパント(ゲスト材料)並びに窒化物であるホスト材料の種類と濃度などの因子あるいは励起方法によって影響を受ける。
【0017】
本構成をとることにより、ドーパントとして使用可能な元素が多様なので、当該情報記録媒体を用いた読取システム仕様の多様性が向上する。
【0018】
また、前記窒化物は、酸素を含有してもよい。
【0019】
本発明の情報記録媒体は窒化物であり、例えば、安価な金属酸化物および還元剤として粉末炭素を原料とし、高温下で酸化物原料を還元すると共に雰囲気ガスで窒化するという、いわゆる、炭素還元窒化法によって簡便に合成される。炭素還元窒化法により、得られる蛍光体試料中の酸素濃度は効果的に低減され、これにより、蛍光体の発光強度が改善される。この場合、合成した蛍光体中の残留酸素濃度は1%未満とすることが好ましいが、ゲスト材料及びホスト材料の組み合わせにより、窒化物中に酸素が含有されていても所望の発光強度を得ることが可能である。
【0020】
また、前記情報記録媒体は、不可視であることが好ましい。
【0021】
これにより、本発明の情報記録媒体は目視されないので、当該情報記録媒体が付随された製品のデザイン自由度が拡大され、また、情報の秘匿性が向上する。さらに、従来の情報記録媒体の有する情報に加え、蛍光スペクトルパターンが情報として付加されるので、当該情報を利用するシステムの多様性が向上する。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る読取装置は、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載された情報記録媒体に記録されている情報を読み取る読取装置であって、前記情報記録媒体に近赤外光または赤外光を照射する光源と、前記光源からの前記近赤外光または赤外光が照射された前記情報記録媒体の前記発光物質が励起されることにより発光する可視域から近赤外域までの光を受光する光学的読取部とを備えることを特徴とする。
【0023】
本構成をとることにより、光源から近赤外光または赤外光が照射されることにより、情報記録媒体でアップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされるので、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。また、近赤外光または赤外光の光源としては、高出力、小型かつ安価な多種類の半導体レーザや発光ダイオード(LED)が利用できるので装置の低廉化や小型化を実現することが可能となる。
【0024】
また、さらに、前記光学的読取部で受光した可視光または近赤外光によって生成された発光スペクトルパターンと、予め記憶されている発光スペクトルパターンとを照合する照合部を備えてもよい。
【0025】
これにより、バーコードに代表される情報記録媒体の形状パターンによる情報に加え、出力光の発光スペクトルのパターンを暗号として認識させることが可能であるので、情報の秘匿性が向上する。
【0026】
また、前記光源は、1つの光源からなり、1種類のピーク波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射することが好ましい。
【0027】
これにより、ランタノイド系元素の希土類イオン、アクチノイド系元素のイオンまたは遷移金属元素のイオンの有する2段階のエネルギー準位に対し、1種類のピーク波長を有する励起光を情報記録媒体に照射することにより、当該情報記録媒体にてアップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされる。この可視域から近赤外域までの発光により、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。
【0028】
また、前記光源は、2つの異なる光源からなり、それぞれ、異なる波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射することが好ましい。
【0029】
これにより、ランタノイド系元素の希土類イオン、アクチノイド系元素のイオンまたは遷移金属元素のイオンの有する2段階のエネルギー準位に対し、2種類のエネルギーレベルを有する励起光を情報記録媒体に照射できる。本照射によっても、当該情報記録媒体にてアップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされる。この可視域から近赤外域までの発光により、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。
【0030】
また、2つの異なる光源から放射される励起光のパワーを独立に調整することにより、異なる発光スペクトルパターンを得ることが可能となる。よって、1光源照射によるアップコンバージョン方式で得られる発光スペクトルパターンに比べ、発光スペクトルのバリエーションが増加するので、情報識別能力が向上する。
【0031】
また、前記光源は、2つの異なる光源からなり、それぞれ、異なるタイミングで、近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射してもよい。
【0032】
これにより、情報記録媒体に対し、まず第1のタイミングで励起光を照射することにより、当該情報記録媒体の有するイオンを、近赤外光または赤外光を発光できる励起状態へと励起する。その後、第2のタイミングで励起光を照射することにより、上記イオンを更に高い励起状態へと励起し可視域から近赤外域までの光を発光させることが可能となる。この可視域から近赤外域までの発光により、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。
【0033】
また、第1のタイミングと第2のタイミングとの照射タイミングのズレは、ゲスト材料が、最初の励起光照射により励起状態となるのに必要な時間及び励起状態の寿命が考慮される。この照射タイミングのズレにより、同一波長または異なる波長による2光源からの励起でも、アップコンバージョンを効果的に発生させることができ、発光強度を制御することが可能である。
【0034】
なお、本発明は、このような特徴的な手段を備える情報記録媒体及び読取装置を備えた光学的読取システムとして実現できる。
【0035】
また、本発明は、このような特徴的な手段を備える情報記録媒体及び読取装置として実現することができるだけでなく、当該情報記録媒体の読取方法として実現できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、情報記録媒体が備える低濃度の希土類イオン等が多段階励起されることにより可視光及び近赤外光が有効に発生し、光学的な読取装置により十分な強度及び高S/N比を有する信号を有効に検出することが可能となる。また、目視上目立たない情報記録媒体であるので、製品のデザインを損なわず、安価に製造できる。また、読取装置の構成要素として、可視光や近赤外光を扱う簡便な送受信デバイスが適用されるので、読取装置の小型化、簡素化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における情報読取システムの機能構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る二次元バーコードの平面図の一例である。
【図3】アップコンバージョンの過程を説明するエネルギーバンド図の一例である。
【図4】(a)は、蛍光体Ca2Si58:Eu,Dyの発光スペクトルを表すグラフである。(b)は、蛍光体Ca2Si58:Eu,Tmの発光スペクトルを表すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る読み取り方法を説明する動作フローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2における情報読取システムの機能構成図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る、2つの異なる光源からの励起光照射によるアップコンバージョンの概念図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る情報読取システムの応用例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態における情報読取システムは、ランタノイド系元素を含む窒化物、アクチノイド系元素を含む窒化物及び遷移金属元素を含む窒化物のうち少なくともいずれか1つを発光物質として有し光学的に読み取り可能な情報が記録されている情報記録媒体と、当該情報記録媒体に近赤外光または赤外光を照射する1つの光源と、当該情報記録媒体から発光した可視光及び近赤外光を受光する光学的読取部を有する読取装置とを備える。これにより、アップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされるので、高出力かつ高S/N比を有する信号を出力することができる。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は本発明の実施の形態1における情報読取システムの機能構成図である。同図における情報読取システム1は、二次元透明バーコード2と、二次元透明バーコードリーダ3とを備える。
【0041】
二次元透明バーコード2は、商品の表面などに付与され、商品管理のための情報記録媒体としての機能を有する。
【0042】
図2は、本発明の実施の形態に係る二次元バーコードの平面図の一例である。同図に記載されたように、二次元透明バーコード2は、蛍光部21により表された透明な格子状のパターンにより特定の情報を表している。蛍光部21は、製品4の表面上あるいはその内部に目視では透明なコードパターンを有する情報記録部であり、蛍光体211が透明インク212に添加されたものである。
【0043】
蛍光体211は、例えば、ゲスト材料211Aとホスト材料211Bとを有する。
【0044】
ゲスト材料211Aは、光源31から照射された赤外光または近赤外光により、アップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの光を発光する機能を有する。アップコンバージョン過程については後述する。
【0045】
ホスト材料211Bは、例えば、Ca2Si58では、SiN4の正四面体の構造が網目状に連なった緻密な構造を持つために温度変化や湿度変化などに対する耐性が酸化物蛍光体よりも優れている。この耐性を有するホスト材料211Bを構成する元素の一部とゲスト材料211Aの元素とが置換することで、ホスト材料211Bがゲスト材料211Aを含有する構造をとる。よって、ゲスト材料211Aもまた、温度変化や湿度変化などに対する耐性を有することが可能となる。また、ホスト材料211Bは、空間的に広い格子間配置を持っているので、ホスト材料211Bの構成元素の一部がゲスト材料211Aと置換可能となり、また、ホスト材料211Bを構成する格子間にゲスト材料211Aを取り込み易い。
【0046】
なお、蛍光体211を構成するゲスト材料211A及びホスト材料211Bの混合形態は様々であり、図2に記載されたようなゲスト材料211Aを囲むようにホスト材料211Bが存在する混合形態には限られない。
【0047】
例えば、ホスト材料211Bの結晶構造の一部が、ゲスト材料211Aで置換された構造も、上記混合形態に含まれる。
【0048】
また、蛍光体211の形態は、微粒子、粉体、ガラス、固溶体、結晶、またはこれらが複合した材料である。
【0049】
ホスト材料211Bは、窒化物であり、例えば、Sr2Si58、CaSiN2、CaAlSiN3、Ca2Si58などが挙げられる。また、上記の例示材料より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記物質に限定されるものではない。
【0050】
なお、ホスト材料211Bの窒化物は、酸素を含んでいてもよい。
【0051】
ゲスト材料211Aとしては、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuのランタノイド系元素の窒化物、Uなどのアクチノイド系元素の窒化物、及びNi、Co、Cu、Fe、Mn、Cr、Re、Os、Ir、Ti、V、Zn、Ru、Mo、W、Pd、Au、Ag及びPtの遷移金属元素の窒化物を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記物質に限定されるものではない。
【0052】
例えば、ランタノイド系元素は、4f軌道に電子を持っており、可視光および近赤外光の波長領域に、波長幅の狭い、多くの光吸収帯を持つ。また、アクチノイド系元素及び遷移金属元素は、近赤外域に広い光吸収帯を持つ。よってこれらの元素は、適切な光源からの照射により、強い光励起が可能であり十分な発光強度が得られる。
【0053】
本構成をとることにより、蛍光体211の添加濃度が低く、目視上目立たず、かつ、製品の光退色に影響されない高耐久性を有する二次元透明バーコード2を実現することが可能となる。後述するアップコンバージョンによる可視光発光やそれに付随した近赤外光の発光がなされるので、高出力かつ高S/N比を有する信号を出力することができる。
【0054】
ホスト材料211Bに添加するゲスト材料211Aの濃度は、0.001mol%以上50mol%以下が好ましい。さらに好ましくは、0.01mol%以上10mol%以下である。
【0055】
また二次元透明バーコード2に対する蛍光部21に対するホスト材料211Bの濃度は、0.01ppm以上10000ppm以下が好ましい。さらに好ましくは、0.1ppm以上1000ppm以下である。
【0056】
なお、本実施の形態では、蛍光部21は、製品4に直接添付されているが、蛍光部21が塗布または印刷などされた基材が製品4に添付されてもよい。その場合、基材は、例えば、紙、プラスチック、木材、ガラスまたは樹脂、金属などが用いられる。これらの材料は、要求される特性に応じて任意に選択される。また、流通過程前の製品を基材とすることも可能である。
【0057】
また、蛍光部21の表面は、紫外線遮蔽剤などの表面保護層を塗布あるいは接着あるいは蒸着などが施されていてもよい。
【0058】
また、蛍光部21およびその下地から構成されるコードパターンは、1次元バーコードパターンであってもよい。
【0059】
また、二次元透明バーコード2は、製品の一面またはその一部に添付されるだけでなく、製品の二つ以上の面または形状に添付されてもよいし、各面に全面的に添付されてもよい。
【0060】
なお、透明インク212は、二次元透明バーコード2の用途により、透明でなくてもよい。例えば、二次元透明バーコード2が印刷インクやフィルムとして製品へ供される際には、蛍光部21は、蛍光体211と結着剤、分散剤および助剤などとを混合して形成されてもよい。再び図1に戻って、本発明の実施の形態における情報読取システムの説明をする。
【0061】
二次元透明バーコードリーダ3は、情報記録媒体である二次元透明バーコード2の情報を光学的に読み取る読取装置である。二次元透明バーコードリーダ3は、光源31と、分光器33と、カメラ34と、情報処理部35と、制御部36とを備える。
【0062】
光源31は、1種類のピーク波長を有する近赤外光または赤外光を放射する機能を有し、例えば、様々な半導体レーザや発光ダイオード(LED)で構成される。上記近赤外光または赤外光を放射するこれらのデバイスは、紫外光を放射するデバイスと比較して、高出力でありながら小型で安価であるという利点を有する。
【0063】
分光器33は、光源31から二次元透明バーコード2に照射された近赤外光または赤外光により、二次元透明バーコード2から発光した可視域から近赤外域までの光を分光する機能を有する。分光器33は、例えば、ミラーまたはレンズと回折格子とを組み合わせた小型のもので構成される。
【0064】
なお、後述する情報処理部35で、コードパターンのみを読み取る場合には、分光器33は、分光機能を備える必要はなく、バンドパスフィルタまたは他の光学分散素子のみを備えてもよい。
【0065】
カメラ34は、分光器33で分光された可視域から近赤外域までの光を受光する光学的読取部であり、これを画像情報へ変換する機能を有する。カメラ34は、例えば、受光センサとしてCCDを備える。
【0066】
なお、外乱光を除去するため、発光成分の変調または時間分解方式を組み合わせることにより、受光した信号が高S/N化され、コードパターンや発光スペクトルパターンの読み取りの高精度化が図られる。
【0067】
情報処理部35は、カメラ34で変換された画像情報を処理することにより、二次元透明バーコード2のコードパターンを解読し、また、分光器33の分光結果を用いて上記可視域から近赤外域までの光の波長及び強度の分布を表した発光スペクトルを生成し、解析する。スペクトル解析には、重み付き最小二乗法、ニューラルネットワーク、最小二乗平均誤差規範などのアルゴリズムを反映した解析プログラムを用いてスペクトルを評価、分析する。
【0068】
また、情報処理部35は、上記スペクトル解析にて得られた発光スペクトルと、予めメモリ等に記憶している暗号または予め外部入力された暗号とを照合する照合部としての機能を有する。照合された発光スペクトルが上記暗号と一致した場合、情報処理部35は、後述する制御部36に対して、照合完了信号を出力する。
【0069】
制御部36は、外部装置との通信あるいは情報の送受信を行う機能を有する。また、制御部36は、二次元透明バーコードリーダ3の有する各構成要素である光源31、分光器33、カメラ34ならびに情報処理部35を制御する。制御部36は、例えば、情報処理部35から出力された発光パターンやコードパターンの輝度やコントラストなどを評価することにより、光源31の放射強度を調整する。また、制御部36は、情報処理部35から上記照合完了信号を受信することにより、コードパターンから解読した情報をディスプレイに表示するか否かの決定を行う。
【0070】
以上の構成により、本発明の二次元透明バーコード2は目視されないので、二次元透明バーコード2が付与された製品のデザイン自由度が拡大され、また、情報の秘匿性が向上する。さらに、従来の二次元バーコードの有するコードパターン情報に加え、蛍光スペクトルパターンが情報として付加されるので、当該情報を利用するシステムの多様性が向上する。
【0071】
ここで、光源31から二次元透明バーコード2への近赤外光または赤外光の照射により可視光発光が生じる原理について説明する。この赤外光励起により可視発光する原理は、アップコンバージョン過程によるものである。
【0072】
蛍光体の発光波長は、通常、励起波長よりも長波長側に観測されるのに対して、ある種の蛍光材料は励起波長より短い波長、即ち高いエネルギー領域において発光を呈する。発光波長の高いエネルギーへの変換をアップコンバージョンと言う。アップコンバージョンが可能な蛍光材料として、例えば、希土類イオンが挙げられる。
【0073】
ランタノイド系元素の希土類イオン、アクチノイド系元素のイオン及び遷移金属元素のイオンは、複数の離散的なエネルギー準位を有するため、2段階あるいは多段階の励起を行うことによって励起波長よりも短波長の光を生成できる。この短波長の光生成には、量子カウンター作用やイオン間の相互緩和によるエネルギー伝達過程が関連している。つまり、アップコンバージョン過程は、同種または異種のイオン間のエネルギー伝達や非輻射遷移過程など、多くの過程が含まれる。よって、アップコンバージョン過程は、ホスト材料やゲスト材料(ドーパント)の種類と濃度などの因子あるいは励起方法によって影響を受ける。
【0074】
例えば、Er3+イオンにおいて、2段階の赤外光励起によって可視光が得られるが、Er3+イオンだけでは赤外/可視光変換効率は低い。1960年代はじめには、F.AuzelがYb3+イオンとEr3+イオンを共添加することにより上記変換効率の顕著な増感効果を見出している。このとき、赤外光源を励起源として比較的簡単な方法で緑色光が発生できることが明らかになった。つまり、Yb3+イオン(増感剤)によって吸収されたエネルギーがEr3+イオン(活性剤)へエネルギー伝達され、可視光が生じる。Yb3+イオンは励起状態の準位が一つのみであるため波長1μm付近の吸収強度が強い。また、励起子どうしの衝突によりエネルギーが相互変換されてしまう濃度消光の影響も低く、励起状態の寿命が比較的長いので有効な増感作用が起こる。
【0075】
図3は、アップコンバージョンの過程を説明するエネルギーバンド図の一例である。図3に記載されたように、Yb3+イオンA及びYb3+イオンBによって吸収された赤外励起光のエネルギーは、Er3+イオンに2段階の過程でエネルギーが伝達される。まず、Yb3+イオンAからEr3+イオンへエネルギー伝達Aがなされる。これにより、Er3+イオンのエネルギー準位は、赤外発光が可能な励起準位Aへと上昇する。一方、Yb3+イオンAのエネルギー準位は、基底状態に戻る。次に、Yb3+イオンBからEr3+イオンへエネルギー伝達Bがなされる。これにより、既に励起準位AとなっていたEr3+イオンのエネルギー準位は、可視発光が可能な励起準位Bへと上昇する。一方、Yb3+イオンBのエネルギー準位は、基底状態に戻る。このYb3+イオンを増感剤として用いた場合の赤外/可視光変換効率は、Er3+イオン単独の場合に比べて大幅に向上する。
【0076】
なお、活性剤としては、Er3+イオンの代わりにTm3+イオンやHo3+イオンなどが使用される。上記アップコンバージョン過程の応用例としては、希土類イオンを添加したファイバーレーザ、特に弗化物ファイバーの半導体レーザ励起によるものが知られている。
【0077】
また、アップコンバージョンが起こる場合には、同時に、励起エネルギーの一部およびアップコンバージョンエネルギーと発光エネルギーとの差のエネルギーが、フォノン過程としてホスト材料などの外部へ離散する。また、Yb3+イオンやEr3+イオンの赤外発光として励起エネルギーが放出される。これらにより、赤外発光と可視光の両方をバーコードの読み取り信号に利用することが可能である。
【0078】
次に、上述した蛍光体211の作製方法及び蛍光体211のアップコンバージョンによる発光スペクトルの測定結果を実施例1及び実施例2に示す。
【0079】
(実施例1)
蛍光体211としてCa2Si58:Eu,Dyの作製方法を以下に説明する。
【0080】
まず、CaCO3、Si34、Eu23、Dy23の原料を化学量論比で秤量する。
【0081】
次に、メノウ乳鉢で充分に上記原料を混合した後、炭素坩堝に入れる。
【0082】
次に、CaCO3を分解するために1200℃で2時間熱処理を行う。
【0083】
次に、50ml/minの窒素流通下、1500〜1600℃で6時間焼成することにより、混合された上記原料を還元、窒化してCa2Si58:Eu,Dyを合成する。このとき、Euの添加量は2原子%、Dyの添加量は2原子%である。
【0084】
なお、上記合成プロセスでは、Caの供給源として、CaCO3を使用したが、CaCO3以外にCaH2、Ca32であってもよい。
【0085】
合成した上記蛍光体試料の結晶相の同定を、粉末X線回折測定(XRD、Rigaku製RINT−2200)により実行した。また、上記蛍光体試料の組成および酸素・窒素濃度を、それぞれエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX、HORIBA製EMAX EX−220E)及び酸素窒素分析装置(HORIBA製EMGA−550)を用いて評価した。また、上記蛍光体試料中の炭素分析を、分析装置(HORIBA製EMIA−520)を用いて評価した。
【0086】
上述した蛍光体試料の分析評価により、上記蛍光体試料が、Ca2Si58:Eu,Dyであることが同定された。
【0087】
図4(a)は、蛍光体Ca2Si58:Eu,Dyの発光スペクトルを表すグラフである。横軸はアップコンバージョンによる蛍光体の発光波長を表し、縦軸はその強度を表す。蛍光および励起スペクトルの測定を、分光蛍光光度計(日立ハイテク製F−4500)により行った。また、拡散反射スペクトルを、紫外・可視分光光度計(SHIMADZU製UV−2550)により測定した。近赤外光励起による発光スペクトルの評価には、近赤外光源(波長800nm〜1100nmの範囲)を用い、上記蛍光体試料の発光スペクトルを装置(Ocean Optics製USB2000)及び分光蛍光光度計(日立ハイテク製F−4500)を用いて測定した。
【0088】
図4(a)に表された蛍光スペクトルは、1種類のピーク波長1078nmの励起光が上記蛍光体試料に照射されたときのものであり、1078nmの励起光に対し、当該励起光よりも波長の短い600nm付近をピークとした蛍光スペクトルが現れている。
【0089】
なお、本実施例では、1078nmの波長を有する励起光を採用したが、上記蛍光体試料は、当該励起光に限られず、近赤外光または赤外光であれば、アップコンバージョンによる蛍光スペクトルを得ることが可能となる。
【0090】
以上の結果により、作製した蛍光体試料は、蛍光体Ca2Si58:Eu,Dyであり、近赤外光または赤外光の励起光の照射により、可視域から近赤外域までの範囲に属する光を発光することが確認された。
【0091】
(実施例2)
蛍光体211としてCa2Si58:Eu,Tmの作製方法を以下に説明する。
【0092】
まず、CaCO3、Si34、Eu23、Tm23の原料を化学量論比で秤量する。
【0093】
次に、メノウ乳鉢で充分に上記原料を混合した後、炭素坩堝に入れる。
【0094】
次に、CaCO3を分解するために1200℃で2時間熱処理を行う。
【0095】
次に、50ml/minの窒素流通下、1500〜1600℃で4時間焼成することにより、混合された上記原料を還元、窒化してCa2Si58:Eu,Tmを合成する。このとき、Euの添加量は0.5原子%、Dyの添加量は0.5原子%である。
【0096】
合成した上記蛍光体試料の結晶相の同定、上記蛍光体試料の組成および酸素・窒素濃度評価及び上記蛍光体試料中の炭素分析は、実施例1と同様の方法にて行われた。
【0097】
上述した蛍光体試料の分析評価により、上記蛍光体試料が、Ca2Si58:Eu,Tmであることが同定された。
【0098】
図4(b)は、蛍光体Ca2Si58:Eu,Tmの発光スペクトルを表すグラフである。蛍光及び励起スペクトルの測定、拡散反射スペクトルの測定、近赤外光励起による発光スペクトルの評価及び上記蛍光体試料の発光スペクトルの測定は、実施例1と同様の方法にて行われた。
【0099】
図4(b)に表された蛍光スペクトルは、1種類のピーク波長1078nmの励起光が上記蛍光体試料に照射されたときのものであり、1078nmの励起光に対し、当該励起光よりも波長の短い600nm付近をピークとした蛍光スペクトルが現れている。
【0100】
なお、本実施例では、1078nmの波長を有する励起光を採用したが、上記蛍光体試料は、当該励起光に限られず、近赤外光または赤外光であれば、アップコンバージョンによる蛍光スペクトルを得ることが可能となる。
【0101】
以上の結果により、作製した蛍光体試料は、蛍光体Ca2Si58:Eu,Tmであり、近赤外光または赤外光の励起光の照射により、可視域から近赤外域までの範囲に属する光を発光することが確認された。
【0102】
なお、上述した実施例1及び実施例2において、Caの供給源として、CaCO3を使用したが、CaCO3以外にCaCN2であってもよい。つまり、CaCN2、Si34、Eu23及びDy23またはTm23の原料を化学量論比で秤量後、メノウ乳鉢で充分に混合した後、窒化硼素坩堝に入れて1200℃で2時間熱処理を行った後、50ml/minの窒素流通下、1600℃で6時間焼成し、蛍光体を合成しても良い。
【0103】
また、上述した実施例1及び実施例2において、還元剤としての炭素として、及び窒化のための窒素の供給源としてメラミン(C366)を用いても良い。つまり、CaCO3、Si34、Eu23及びDy23またはTm23の原料を化学量論比で秤量後、メノウ乳鉢で充分に混合した後、メラミン(C366)を添加し、窒化硼素坩堝に入れて高周波誘導加熱炉を用いて50ml/minの窒素流通下、1500〜1600℃で6時間焼成し、蛍光体を合成しても良い。
【0104】
また、実施例1及び実施例2において、Caイオンの原料供給及び還元剤の両方の機能として、カルシウム・カルボン酸塩である蟻酸カルシウム(Ca(HCOO)2)または酢酸カルシウム(Ca(CH3COO)2)またはプロピオン酸カルシウム(Ca(C25COO)2)を用い、Si34、Eu23及びDy23またはTm23を原料に用いても良い。これらの原料をメノウ乳鉢で充分に混合した後、窒化硼素坩堝に入れて高周波誘導加熱炉を用いて30ml/minの窒素流通下、1600℃で6時間焼成して蛍光体を合成しても良い。
【0105】
上述した実施例1及び実施例2による蛍光体の作製方法は、安価な金属酸化物および還元剤として粉末炭素を原料とし、高温下で酸化物原料を還元すると共に雰囲気ガスで窒化するという、いわゆる、炭素還元窒化法によって簡便に合成するものである。炭素還元窒化法により、得られる蛍光体試料中の酸素濃度は効果的に低減され、これにより、蛍光体の発光強度が改善される。また、残留する炭素による発光強度への影響を抑えるため、分子性炭素原子を用いることが好ましい。分子性炭素原子は、粉末状の炭素に比べて反応性が高い。また、上述したカルボン酸塩では、分解した際に粉末炭素混合時に比べて炭素が試料中に細かく均等に分散すると考えられることから、還元反応の効率が良く、均一に進み、蛍光強度が向上する。これにより、合成した蛍光体中の残留酸素濃度及び炭素濃度は、それぞれ、1%未満とすることが可能となる。
【0106】
実施例1及び実施例2で例示したような蛍光体を情報記録媒体として、また、図1に記載された情報読取システムにより、発光物質の添加濃度が低く、目視上目立たず、かつ、製品の光退色に影響されない高耐久性を有する情報記録媒体を実現することが可能となる。これは、近赤外光または赤外光が、窒化物である当該情報記録媒体に照射されることにより、アップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされることによるものである。このアップコンバージョンによる発光により、高出力かつ高S/N比を有する信号を出力することができる。
【0107】
なお、上記実施例は例示であり、本願発明は実施例1及び実施例2に記載された物質に限定されるものではない。また、製造方法についても上記実施例は例示であり、本願発明は実施例1及び実施例2に記載された製造方法に制限されるものではない。
【0108】
次に、本発明の実施の形態1に係る読取方法について説明する。
【0109】
図5は、本発明の実施の形態に係る読取方法を説明する動作フローチャートである。
【0110】
まず、制御部36は、光源31から、1種類のピーク波長を有する近赤外光または赤外光を蛍光部21の蛍光体211に照射させる(ステップS10)。
【0111】
次に、蛍光体211は、ステップS10で照射された近赤外光または赤外光により、励起状態となり、可視域から近赤外域までの光を発光する。制御部36は、カメラ34に、発光した可視域から近赤外域までの光を受光させる(ステップS20)。カメラ34は、受光した可視域から近赤外域までの光を画像情報に変換し、コードパターンを生成する。
【0112】
最後に、制御部36は、情報処理部35に、上記可視域から近赤外域までの光の波長及び強度の分布を表した発光スペクトルを生成する。生成された発光スペクトルと、予め記憶されている発光スペクトルパターンまたは暗号とを照合する(ステップS30)。照合された発光スペクトルが上記発光スペクトルパターンまたは暗号と一致した場合、情報処理部35は、制御部36に対して、照合完了信号を出力する。
【0113】
以上の読取ステップにより、窒化物である蛍光体211でアップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされるので、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。また、近赤外光または赤外光の光源としては、高出力、小型かつ安価な多種類の半導体レーザや発光ダイオード(LED)が利用できるので装置の低廉化や小型化を実現することが可能となる。
【0114】
また、バーコードに代表される情報記録媒体の形状パターンによる情報に加え、出力光の発光スペクトルのパターンを暗号として認識させることが可能であるので、情報の秘匿性が向上する。
【0115】
なお、上述した読取ステップにおいて、発光スペクトルの照合を行うステップS30はなくてもよい。この場合においても、カメラ34で生成されたコードパターンにより、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。
【0116】
(実施の形態2)
本実施の形態における情報読取システムは、ランタノイド系元素を含む窒化物、アクチノイド系元素を含む窒化物及び遷移金属元素を含む窒化物のうち少なくともいずれか1つを発光物質として有し光学的に読み取り可能な情報が記録されている情報記録媒体と、当該情報記録媒体に近赤外光または赤外光を照射する2つの異なる光源及び当該情報記録媒体から発光した可視光及び近赤外光を受光する光学的読取部を有する読取装置とを備える。これにより、アップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされるので、高出力かつ高S/N比を有する信号を出力することができる。
【0117】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0118】
図6は、本発明の実施の形態2における情報読取システムの機能構成図である。同図における情報読取システム11は、二次元透明バーコード2と、二次元透明バーコードリーダ13とを備える。
【0119】
本実施の形態に係る情報読取システム11は、図1に記載された実施の形態1に係る情報読取システム1と比較して、二次元透明バーコードリーダ13が2つの異なる光源を有する点のみが異なる。以下、図1に記載された実施の形態1に係る情報読取システムと同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0120】
二次元透明バーコードリーダ13は、情報記録媒体である二次元透明バーコード2の情報を光学的に読み取る読取装置である。二次元透明バーコードリーダ13は、光源32a及び32bと、分光器33と、カメラ34と、情報処理部45と、制御部46とを備える。
【0121】
光源32a及び32bは、特定の波長の近赤外光または赤外光を放射する機能を有し、例えば、様々な半導体レーザや発光ダイオード(LED)で構成される。上記近赤外光または赤外光を放射するこれらのデバイスは、紫外光を放射するデバイスと比較して、高出力でありながら小型で安価であるという利点を有する。また、光源32a及び32bは、それぞれ、異なる波長を有する近赤外光または赤外光を放射する。
【0122】
分光器33は、光源32a及び32bから二次元透明バーコード2に照射された近赤外光または赤外光により、二次元透明バーコード2から発光した可視域から近赤外域までの光を分光する機能を有する。分光器33は、例えば、ミラーまたはレンズと回折格子とを組み合わせた小型のもので構成される。
【0123】
情報処理部45は、カメラ34で変換された画像情報を処理することにより、二次元透明バーコード2のコードパターンを解読し、また、分光器33の分光結果を用いて上記可視域から近赤外域までの光の波長及び強度の分布を表した発光スペクトルを生成し、解析する。スペクトル解析には、重み付き最小二乗法、ニューラルネットワーク、最小二乗平均誤差規範などのアルゴリズムを反映した解析プログラムを用いてスペクトルを評価、分析する。
【0124】
また、情報処理部45は、上記スペクトル解析にて得られた発光スペクトルと、予めメモリ等に記憶している暗号または予め外部入力された暗号とを照合する照合部としての機能を有する。照合された発光スペクトルが上記暗号と一致した場合、情報処理部45は、後述する制御部46に対して、照合完了信号を出力する。
【0125】
制御部46は、外部装置との通信あるいは情報の送受信を行う機能を有する。また、制御部46は、二次元透明バーコードリーダ13の有する各構成要素である光源32a及び32b、分光器33、カメラ34ならびに情報処理部45を制御する。制御部46は、例えば、情報処理部45から出力された発光パターンやコードパターンの輝度やコントラストなどを評価することにより、光源32a及び32bの放射強度を調整する。また、制御部46は、情報処理部45から上記照合完了信号を受信することにより、コードパターンから解読した情報をディスプレイに表示するか否かの決定を行う。
【0126】
以上の構成により、本発明の二次元透明バーコード2は目視されないので、二次元透明バーコード2が付与された製品のデザイン自由度が拡大され、また、情報の秘匿性が向上する。さらに、従来の二次元バーコードの有するコードパターン情報に加え、蛍光スペクトルパターンが情報として付加されるので、当該情報を利用するシステムの多様性が向上する。
【0127】
ここで、光源32a及び32bから二次元透明バーコード2への近赤外光または赤外光の照射により可視光発光が生じる原理について説明する。この赤外光励起により可視発光する原理は、アップコンバージョン過程によるものである。
【0128】
図7は、本発明の実施の形態に係る、2つの異なる光源からの励起光照射によるアップコンバージョンの概念図及びその蛍光スペクトルである。本実施の形態においては、光源32aから、波長λCを有する励起光Cが蛍光体211に照射され、ゲスト材料211Aのエネルギー準位が励起準位Cへと上昇する。一方、光源32bから、波長λDを有する励起光Dが蛍光体211に照射され、励起準位Cに上昇しているゲスト材料211Aのエネルギー準位がさらに励起準位Dへと上昇する。このとき、波長λC及びλDは、ゲスト材料211Aのエネルギー準位を、それぞれ、励起準位C及びDへ効率よく上昇させるのに必要なエネルギーを有する波長が選択されている。これにより、蛍光体211は、励起準位D及びCに対応する励起エネルギーを可視光及び近赤外光として外部へ放射する。
【0129】
情報処理部45は、この放射された可視光及び近赤外光を、分光器33及びカメラ34を介し、蛍光スペクトルパターンおよびコードパターンへと変換する。
【0130】
光源32a及び32bは、例えば、波長が700nmから2000nmの半導体レーザまたはLEDである。2光源32a及び32bの波長として、それぞれ、810nm及び940nm、または、850nm及び980nmなどの組み合わせが挙げられる。
【0131】
本発明の実施の形態に係る情報読取システムによれば、Eu及びTmをゲスト材料とした窒化物にて、励起光が2段階に吸収された後、アップコンバージョン発光が生じる。なお、上記と同様の線幅を有する発光スペクトルは、窒化物中のEuイオン及びTmイオンのみならず、他の希土類イオンにおいても観測される。このとき、ホスト材料とゲスト材料の選択及び組み合わせにより、発光物質の励起波長や発光波長は変化するので、様々な発光スペクトルパターンを実現することが可能となる。
【0132】
また、光源32a及び32bから放射される励起光のパワーを独立に調整することにより、蛍光体211の材料及び組み合わせが同一であっても、上記発光スペクトルパターンの各々の発光強度を変化させることができる。つまり、2つの異なる光源を有する本発明の構成によれば、励起光のパワーを変化させることにより、異なる発光スペクトルパターンを得ることが可能となる。よって、本発明の構成は、1光源照射によるアップコンバージョン方式で得られる発光スペクトルパターンに比べ、発光スペクトルのバリエーションが増加するので、情報識別能力が向上する。
【0133】
本実施の形態は、2つの異なる光源から異なる波長を有する近赤外光または赤外光が同時に照射されることにより発生するアップコンバージョンを利用するものである。
【0134】
これに対し、2つの異なる光源から同一の波長または異なる波長を有する近赤外光または赤外光が、異なるタイミングで照射されることによりアップコンバージョンを発生させることが可能である。例えば、まず、ゲスト材料がEu及びTm、ホスト材料が窒化物である二次元バーコードに対し、光源32aから波長810nmの赤外励起光を照射する。その後0.2ms遅れて光源32bから、光源32aと同じ波長または異なる波長(940nm)を有する赤外励起光を二次元バーコードに照射する。この照射タイミングのズレは、ゲスト材料のEu及びTmが、光源32aによる最初の励起光照射により励起状態となるのに必要な時間及び励起状態の寿命が考慮される。この照射タイミングのズレにより、同一波長または異なる波長による2光源からの励起でも、アップコンバージョンを効果的に発生させることができ、発光強度を制御することが可能である。
【0135】
次に、本発明の実施の形態2に係る読取方法について説明する。
【0136】
図5は、本発明の実施の形態に係る読取方法を説明する動作フローチャートである。
【0137】
まず、制御部46は、2つの異なる光源32a及び32bから、それぞれ、異なる波長を有する近赤外光または赤外光を蛍光部21の蛍光体211に照射させる(ステップS10)。
【0138】
次に、蛍光体211は、ステップS10で照射された、異なる波長を有する近赤外光または赤外光により、励起状態となり、可視域から近赤外域までの光を発光する。制御部46は、カメラ34に、発光した可視域から近赤外域までの光を受光させる(ステップS20)。カメラ34は、受光した可視域から近赤外域までの光を画像情報に変換し、コードパターンを生成する。
【0139】
最後に、制御部46は、情報処理部45に、上記可視域から近赤外域までの光の波長及び強度の分布を表した発光スペクトルを生成する。生成された発光スペクトルと、予め記憶されている発光スペクトルパターンまたは暗号とを照合する(ステップS30)。照合された発光スペクトルが上記発光スペクトルパターンまたは暗号と一致した場合、情報処理部45は、制御部46に対して、照合完了信号を出力する。
【0140】
以上の読取ステップにより、窒化物である蛍光体211でアップコンバージョンによる可視域から近赤外域までの発光がなされるので、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。また、近赤外光または赤外光の光源としては、高出力、小型かつ安価な多種類の半導体レーザや発光ダイオード(LED)が利用できるので装置の低廉化や小型化を実現することが可能となる。
【0141】
また、バーコードに代表される情報記録媒体の形状パターンによる情報に加え、出力光の発光スペクトルのパターンを暗号として認識させることが可能であるので、情報の秘匿性が向上する。
【0142】
また、2つの異なる光源から放射される励起光のパワーを独立に調整することにより、異なる発光スペクトルパターンを得ることが可能となる。よって、1光源照射によるアップコンバージョン方式で得られる発光スペクトルパターンに比べ、発光スペクトルのバリエーションが増加するので、情報識別能力が向上する。
【0143】
なお、上述した読取ステップにおいて、発光スペクトルの照合を行うステップS30はなくてもよい。この場合においても、カメラ34で生成されたコードパターンにより、高出力かつ高S/N比を有する信号を読み取ることが可能となる。
【0144】
なお、ステップS10において、2つの異なる光源から同一の波長または異なる波長を有する近赤外光または赤外光を、異なるタイミングで照射させることによりアップコンバージョンを発生させることが可能である。この照射タイミングのズレにより、同一波長または異なる波長による2光源からの励起でも、アップコンバージョンを効果的に発生させることができ、発光強度を制御することが可能である。
【0145】
図8は、本発明の実施の形態1及び2に係る情報読取システムの応用例を表す図である。同図における情報読取システムは、透明な二次元透明バーコード2と携帯電話5によって構成される。携帯電話5は、二次元透明バーコードリーダ3と表示部51とを備える。二次元透明バーコード2の有する情報が、携帯電話5に内蔵される小型の二次元透明バーコードリーダ3によって読み取られる。携帯電話5を、情報読み取りモードに設定し、二次元透明バーコード2に近づけることにより、光源31(または32a及び32b)から放射された励起光が二次元透明バーコード2に照射される。これにより、二次元透明バーコード2から発光した可視域から近赤外域までの光が、分光器で分光され、カメラで受光され、情報処理部で、発光スペクトルパターン及びコードパターンとして情報処理される。情報処理部は、上記発光スペクトルパターンと、予め取得されている暗号とを照合し、照合完了信号を制御部に出力する。制御部は、照合完了信号により、二次元透明バーコード2が認識されたか否かを表示部51へ表示する。二次元透明バーコード2が認識された場合には、制御部はコードパターンに含まれる情報を表示部51へ表示させる。
【0146】
この構成により、二次元透明バーコード2はICチップと比較すると情報量が限られるものの、コードパターンに加えて発光スペクトルパターンによる情報を提供することが可能である。よって、本発明の情報読取システムは、従来の二次元バーコードの情報量を凌ぐ情報量を処理することが可能である。また、発光スペクトルパターンは、上述したゲスト材料及びホスト材料を含有する蛍光体が微量添加されていれば、情報読み取りが可能であるので、高耐久性及び低コスト化が図られる。また、二次元パターンの破損があっても、発光スペクトルパターンは読み取ることができるので、情報の喪失を防止することが可能である。また、上述したように、発光スペクトルパターンによる暗号化が可能であるので、情報改竄の危険性が低い。
【0147】
また、紫外光励起に対して近赤外光励起の場合は、製品の光退色による影響が著しく低く、素材の発光などの不要な背景雑音信号成分がほとんどない。よって、近赤外光励起のため、微量な蛍光体濃度であっても十分な強度で蛍光体の信号を検知できることが特長である。近赤外光の光源としては、光出力の高い、小型かつ安価な多種類の半導体レーザや発光ダイオード(LED)が利用できるので装置の大きさによる制約が緩和される。
【0148】
また、これらの光源によって励起される蛍光体材料を複数添加することにより、発光スペクトルの多重化が可能であり、情報量を増大させることが可能となる。
【0149】
なお、二次元透明バーコードリーダ3に代表される本発明の読取装置は、簡便な半導体レーザや発光ダイオードを光源として利用でき、また、分光器やカメラも簡易的に構成できるので、携帯電話に内蔵可能な程度の大きさが可能である。さらには、故障の原因を簡易的に調べられるメンテナンス機能を備えていることが望ましい。
【0150】
また、二次元透明バーコードリーダ3は、用途によっては、可視域のみに感度がある安価なCCDを備えても良い。あるいは、可視域のみならず近赤外域にも感度がある高感度なCCDを備えても良く、可視光用と近赤外光用の2種類のカメラ及び分光器を備えることも考えられる。
【0151】
また、本発明の情報読取システムによれば、発光スペクトルの観測波長は、300nm以上2000nm以下が可能である。また、本システムの小型化または高精度化を実現するためには、発光スペクトルの観測波長を、400nm以上1300nm以下に設定することが好ましい。また、発光スペクトルの観測波長を450nm以上800nm以下の可視光に限定することにより、本システムの更なる小型化または高精度化が実現される。
【0152】
以上、本発明の情報記録媒体、その読取装置及び読取方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明に係る情報記録媒体、その読取装置及びその読取方法は、製造、販売、流通、リサイクル及びセキュリティなどの分野における一連の商品管理の手段として有用であり、特に秘匿性の高い情報を有する製品ラベルや商品の外観を損なわない広告宣伝媒体に適正がある。
【符号の説明】
【0154】
1、11 情報読取システム
2 二次元透明バーコード
3、13 二次元透明バーコードリーダ
4 製品
5 携帯電話
21 蛍光部
31、32a、32b 光源
33 分光器
34 カメラ
35、45 情報処理部
36、46 制御部
51 表示部
211 蛍光体
211A ゲスト材料
211B ホスト材料
212 透明インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に読み取り可能な情報が記録されている情報記録媒体であって、
ランタノイド系元素を含む窒化物、アクチノイド系元素を含む窒化物及び遷移金属元素を含む窒化物のうち少なくともいずれか1つを有し、近赤外光または赤外光が照射されることにより励起され、当該励起により可視域から近赤外域までの光を発光する発光物質を備える
情報記録媒体。
【請求項2】
前記ランタノイド系元素は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのいずれかであり、
前記アクチノイド系元素は、Uであり、
前記遷移金属元素は、Ni、Co、Cu、Fe、Mn、Cr、Re、Os、Ir、Ti、V、Zn、Ru、Mo、W、Pd、Au、Ag及びPtのいずれかである
請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記窒化物は、酸素を含有する
請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記情報記録媒体は、不可視である
請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載された情報記録媒体に記録されている情報を読み取る読取装置であって、
前記情報記録媒体に近赤外光または赤外光を照射する光源と、
前記光源からの前記近赤外光または赤外光が照射された前記情報記録媒体の前記発光物質が励起されることにより発光する可視域から近赤外域までの光を受光する光学的読取部とを備える
読取装置。
【請求項6】
さらに、
前記光学的読取部で受光した可視光または近赤外光によって生成された発光スペクトルパターンと、予め記憶されている発光スペクトルパターンとを照合する照合部を備える
請求項5に記載の読取装置。
【請求項7】
前記光源は、1つの光源からなり、1種類のピーク波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する
請求項5に記載の読取装置。
【請求項8】
前記光源は、2つの異なる光源からなり、それぞれ、異なる波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する
請求項5に記載の読取装置。
【請求項9】
前記光源は、2つの異なる光源からなり、それぞれ、異なるタイミングで、近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する
請求項5に記載の読取装置。
【請求項10】
請求項1に記載の情報記録媒体と、請求項5に記載の読取装置とを備える
情報読取システム。
【請求項11】
光学的に情報を読み取る読取方法であって、
光源から近赤外光または赤外光を、ランタノイド系元素を含む窒化物、アクチノイド系元素を含む窒化物及び遷移金属元素を含む窒化物のうち少なくともいずれか1つを発光物質として有する情報記録媒体の表面に照射する照射ステップと、
前記照射ステップでの照射により励起された前記発光物質が発光する可視域から近赤外域までの光を受光する受光ステップとを含む
読取方法。
【請求項12】
前記光源は、1つの光源からなり、
前記照射ステップでは、
前記1つの光源から、1種類のピーク波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する
請求項11に記載の読取方法。
【請求項13】
前記光源は、2つの異なる光源からなり、
前記照射ステップでは、
前記2つの異なる光源から、それぞれ、異なる波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する
請求項11に記載の読取方法。
【請求項14】
前記光源は、2つの異なる光源からなり、
前記照射ステップでは、
前記2つの異なる光源のうち第1の光源から、第1の波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する第1照射ステップと、
前記第1照射ステップの後、所定の時間差をおいて、前記2つの異なる光源のうち第2の光源から、前記第2の波長を有する近赤外光または赤外光を前記情報記録媒体に照射する第2照射ステップとを含む
請求項11に記載の読取方法。
【請求項15】
さらに、
前記受光ステップで受光した可視域から近赤外域までの光により生成された発光スペクトルパターンと、予め記憶されている発光スペクトルパターンとを照合する照合ステップを含む
請求項11に記載の読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−43977(P2011−43977A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191427(P2009−191427)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】