情報記録媒体、磁気記録再生装置及び光記録再生装置
【課題】高密度情報記録媒体において、ユーザデータの記憶容量を低下させることなく、情報記録再生装置に対してトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な情報記録媒体を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体1は、ユーザデータ領域10には、磁気記録媒体1の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13を備え、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13にそれぞれ含まれる磁気記録セル11は、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配置されており、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径方向における半径位置は、第1の情報記録セル群12の各トラックの半径方向における半径位置と異なる構成である。
【解決手段】磁気記録媒体1は、ユーザデータ領域10には、磁気記録媒体1の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13を備え、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13にそれぞれ含まれる磁気記録セル11は、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配置されており、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径方向における半径位置は、第1の情報記録セル群12の各トラックの半径方向における半径位置と異なる構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンドメディアのような高密度に情報を記録可能な情報記録媒体に関する。また、本発明は、上記情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことが可能な磁気記録再生装置及び光記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像又は映像の高画質化が進み、ユーザが扱う情報量は益々増加している。このため、HDD(Hard Disk Drive)と呼ばれる磁気記録装置の大容量化に向けて、面記録密度の高密度化検討が広く行われている。この検討において、高密度磁気記録における有望な技術の一つとして、孤立した磁気記録セルを配列した磁気記録媒体(すなわち、非磁性材料の中に磁性粒子を等間隔で規則正しく並べた磁気記録媒体)であるパターンドメディアが挙げられる。このパターンドメディアの構成によれば、粒子間の磁気的な相互作用が少なくなるため、媒体雑音が低減し、記録密度の大幅な向上を図ることが可能である。
【0003】
従来の磁気記録媒体では、媒体面内方向に一様に(連続的に)形成された磁性層においては、記録マークのエッジが結晶粒の粒界位置となる。このため、微小な記録マークで高いS/N比(Signal to Noise Ratio)を確保するためには、結晶粒の大きさを小さくする必要がある。しかしながら、結晶粒の大きさを小さくすることに伴って磁化の最小単位体積が減少することにより、結晶粒内での磁化量が小さくなってしまう。この結果、従来の磁気記録媒体では、物性的な限界を示す熱揺らぎ等による磁化反転が生じやすくなるため、磁気情報が消失しやすくなってしまうという問題があった。すなわち、従来の磁気記録媒体では、記録された情報を安定状態に保つことが困難であった。
【0004】
一方、パターンドメディアでは、互いに磁気的に分離された磁気記録セルに磁気情報が記録されており、記録マークのエッジが磁気記録セルのエッジとなる。従って、上述した従来の磁気記録媒体とは異なり、高いS/N比を確保するために、磁化の最小単位体積を特別に小さくする必要がない。このため、パターンドメディアでは、熱揺らぎ等を回避しやすくなる(すなわち、熱揺らぎ等による磁化反転が生じにくくなる)ため、従来の磁気記録媒体よりも高い記録密度を実現できる。
【0005】
このようなパターンドメディアの技術として、例えば特許文献1、2が挙げられる。特許文献1には、データ信号記憶領域とトラッキングサーボ信号記憶領域とを含むパターンドメディアが開示されている。また、特許文献2には、ナノホールの規則配列の複数が交互に隣接してなり、隣接する該規則配列が互いに異なる構成を有するパターンドメディアが開示されている。
【0006】
特に、特許文献2の技術では、上記のようにナノホールを配列されたパターンドメディアに記録する磁気記録装置が、該パターンドメディアに対して容易にトラッキング制御を行うことができる。また、特許文献2では、上記磁気記録装置がトラッキング制御をより容易に行うことを可能とするために、任意の規則配列をデータ領域とし、該規則配列に隣接する他の規則配列をガードバンド領域とした構成を有するパターンドメディアについても開示している。この構成の場合、ガードバンド領域がトラッキング制御用の領域として機能している。
【特許文献1】特開2003−196815号公報(平成15年7月11日公開)
【特許文献2】特開2006−346820号公報(平成18年12月28日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パターンドメディアのような微小な磁気記録セルを有した高密度磁気記録媒体に形成された各トラック間のトラックピッチは、例えば50nm程度と非常に狭い。このため、パターンドメディアに記録再生を行う磁気記録再生装置に備えられた記録再生ヘッド(記録素子又は再生素子)が、所望のトラックに対してわずかなズレを生じただけで、記録エラー又は再生エラーが発生しやすくなってしまうという虞がある。
【0008】
一般に、磁気記録再生装置が磁気記録媒体に対してトラッキング制御を行うときの、磁気記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの位置決め要求精度は、トラックピッチの10%以下とされている。このため、パターンドメディアのように面記録密度が1Tb/in2 程度のとき、上記位置決め要求精度として、数nm程度の精度が要求されると考えられる。
【0009】
この要求を実現するために、上記磁気記録再生装置においてより正確なトラッキング制御を行う方法として、トラッキング用サーボパターンでの信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、上記信号検出頻度を高くするために、磁気記録媒体に単純にサーボパターンを形成する領域を増加させることは、ユーザデータの記憶容量(磁気記録媒体に記録される情報量)を低下させてしまう虞がある。
【0010】
また、パターンドメディアのような孤立した磁気記録セルを配列した磁気記録媒体においては、従来の磁気記録媒体とは異なり、予め形成される磁気記録セルが非常に小さい。一方で、磁気記録再生装置がこの磁気記録セルに情報の記録を行う場合には、磁気記録セルとタイミングを合わせる必要がある。つまり、非常に小さい磁気記録セルに情報の記録を行う場合には、従来の磁気記録再生装置よりもさらに高い精度で、磁気記録セルとの記録タイミングを合わせることが要求されると考えられる。
【0011】
この要求を実現するために、上記磁気記録再生装置において磁気記録セルとの記録タイミングの精度をより高める方法として、記録タイミング制御用の信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、単純に記録タイミング制御用の信号を検出するための領域を磁気記録媒体に増加させることは、上記と同様に、ユーザデータの記録容量を低下させてしまう虞がある。
【0012】
なお、上記特許文献1の技術では、トラッキングサーボ信号記憶領域がデータ信号記憶領域とは別途設けられている。すなわち、特許文献1の技術では、上述のように、ユーザデータの記憶容量を低下させてしまう虞がある。
【0013】
一方、上記特許文献2の技術では、磁気記録装置がより容易にトラッキング制御を行うためには、トラッキング制御用の領域としてガードバンド領域を設ける必要がある。すなわち、この場合にも特許文献1と同様、ユーザデータの記憶容量を低下させてしまう虞がある。また、特許文献2の技術においてガードバンド領域を設けない構成の場合、磁気記録装置によるトラッキング制御の精度は、ガードバンド領域を設けた構成の場合よりも低下してしまう。このため、特許文献2の技術では、ガードバンド領域を設けずにトラッキング制御の精度をより向上させることは困難である。
【0014】
また、上記では磁気記録媒体について説明したが、光を照射することによって情報の記録再生が行われる光記録媒体についても、面記録密度の高密度化を検討する場合には、磁気記録媒体と同様の問題が生じる。また、この光記録媒体に対しては、光記録再生装置が情報の記録再生を行っているものとする。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターンドメディアのような高密度情報記録媒体において、ユーザデータの記憶容量を低下させることなく、情報記録再生装置に対してトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な情報記録媒体を提供することにある。また、本発明の目的は、この情報記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度及び記録タイミング精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)磁気記録再生装置又は光記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る情報記録媒体は、上記課題を解決するため、互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ領域を有する情報記録媒体であって、上記データ領域は、上記情報記録媒体の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を備え、上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群にそれぞれ含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、情報記録媒体は、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群をデータ領域に備えている。上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群に含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されている。また、上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群は、情報記録媒体の円周方向において交互に、かつ、第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置が、第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なるように配置されている。
【0018】
ここで、情報記録セルが「隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されて」いるとは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、情報記録セルの円周方向における周方向位置と、該情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された情報記録セルの周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラック上で隣り合った2つの情報記録セル間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックに形成された情報記録セルが1つ存在することである。
【0019】
なお、「円周方向における周方向位置」とは、情報記録媒体の周方向における位置を指し、「半径方向における半径位置」とは、磁気記録媒体1の半径方向における半径位置を指す。
【0020】
これにより、情報記録媒体は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群のパターンから検出される信号を、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う情報記録再生装置に対して、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させることができる。よって、情報記録媒体は、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、データ領域を減少させることなく、情報記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを高精度に行わせることができる。また、情報記録媒体は、上述のように、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を交互に備えているため、情報記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0021】
従って、情報記録媒体は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【0022】
なお、上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅は任意に設定されてもよい。これにより、情報記録媒体は、情報記録再生装置に、任意の頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なってもよい。
【0024】
上記構成によれば、情報記録媒体は、記憶領域を低下させることなく、情報記録再生装置に対して、より高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。
【0025】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであってもよい。
【0026】
上記構成によれば、情報記録媒体は、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルを備えた磁気記録媒体である。情報記録媒体は、磁気記録媒体であっても、上記と同様、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。ここでの情報記録再生装置とは、磁気記録セルに対して情報の記録再生を行うことが可能な、例えば磁気記録再生装置である。
【0027】
なお、上記と同様、上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅は任意に設定されてもよい。これにより、情報記録媒体は、情報記録再生装置に、任意の頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0028】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えてもよい。
【0029】
上記構成によれば、アドレス領域を備えることにより、情報記録再生装置の記録再生ヘッドが情報記録媒体のどのトラック上にあるのか(すなわち、どのトラック上の情報記録セルから信号検出を行っているのか)を、該情報記録再生装置に特定させることができる。これにより、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0030】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、上記第1の情報記録セルの円周方向における周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なってもよい。
【0031】
上記構成によれば、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離と、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離とが異なる。また、第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックに形成された2つの情報記録セルとの円周方向における距離についても、同様の関係にある。そして、第1の情報記録セルの周方向位置は、第3の情報記録セルの周方向位置と異なっている。
【0032】
このため、情報記録再生装置によってトラッキング制御が行われるときに検出される信号の波形は、トラックの内周側の情報記録セルと外周側の情報記録セルとで異なることとなる。従って、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、上記信号の波形の違いによって、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を備えた記録再生ヘッドと、を備えた磁気記録再生装置であって、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行ってもよい。
【0034】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、磁気再生素子及び磁気記録素子を備えた記録再生ヘッドを備えており、この記録再生ヘッドを上述の情報記録媒体の半径方向に移動させることにより、該情報記録媒体の所定の位置に対して情報の記録再生を行う。このとき、磁気記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録再生を行うかによって、磁気再生素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。そして、磁気記録再生装置は、トラッキング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対してトラッキング制御を行う。
【0035】
これにより、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、該情報記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。また、磁気記録再生装置が上述の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことにより、磁気再生素子は、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0036】
従って、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度にトラッキング制御を行うことができ、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができる。
【0037】
なお、上述の情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、磁気記録再生装置は、任意の頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0038】
また、磁気再生素子は、情報の記録再生を行うパターンとは別のパターンの情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。すなわち、磁気記録再生装置が例えば第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うときには、磁気再生素子は、第1の情報記録セル群の情報記録セルからトラッキング制御用の信号を検出する。
【0039】
これにより、磁気再生素子は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、磁気記録再生装置は、検出した信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0040】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行ってもよい。
【0041】
上記構成によれば、磁気記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録を行うかによって、磁気再生素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、記録タイミング制御用の信号を検出する。そして、磁気記録再生装置は、記録タイミング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対して記録タイミング制御(記録タイミングの調整)を行う。
【0042】
従って、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度に記録タイミング制御を行うことができ、記録エラーを少なくすることができる。
【0043】
なお、上述の情報記録媒体の上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、磁気記録再生装置は、任意の頻度で記録タイミング制御用の信号を検出することができる。
【0044】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、を含み、上記磁気再生素子の円周方向における空間分解可能幅Swとし、上記第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離Dとするとき、Sw<Dであってもよい。
【0045】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出するときに、各々の情報記録セルから検出される信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーが生じにくくすることができる。
【0046】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行ってもよい。
【0047】
上記構成よれば、磁気記録再生装置は、磁気記録素子と磁気再生素子との半径方向における距離が、所定の値(例えば、磁気記録素子と磁気再生素子との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0048】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、該磁気記録素子と該磁気再生素子との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含んでもよい。
【0049】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0050】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであってもよい。
【0051】
上記構成によれば、情報記録媒体は、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルを備えた光記録媒体である。情報記録媒体は、光記録媒体であっても、上記と同様、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。ここでの情報記録再生装置とは、光記録セルに対して情報の記録再生を行うことが可能な、例えば光記録再生装置である。
【0052】
なお、上記と同様、上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅は任意に設定されてもよい。これにより、情報記録媒体は、情報記録再生装置に、任意の頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0053】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えてもよい。
【0054】
上記構成によれば、アドレス領域を備えることにより、情報記録再生装置の記録再生ヘッドが情報記録媒体のどのトラック上にあるのか(すなわち、どのトラック上の情報記録セルから信号検出を行っているのか)を、該情報記録再生装置に特定させることができる。これにより、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0055】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、上記第1の情報記録セルの周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なってもよい。
【0056】
上記構成によれば、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離と、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離とが異なる。また、第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックに形成された2つの情報記録セルとの円周方向における距離についても、同様の関係にある。そして、第1の情報記録セルの周方向位置は、第3の情報記録セルの周方向位置と異なっている。
【0057】
このため、情報記録再生装置によってトラッキング制御が行われるときに検出される信号の波形は、トラックの内周側の情報記録セルと外周側の情報記録セルとで異なることとなる。従って、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、上記信号の波形の違いによって、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0058】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う発光素子及び受光素子と備えた記録再生ヘッドと、を備えた光記録再生装置であって、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行ってもよい。
【0059】
上記構成によれば、光記録再生装置は、発光素子及び受光素子を備えた記録再生ヘッドを備えており、この記録再生ヘッドを上述の情報記録媒体の半径方向に移動させることにより、該情報記録媒体の所定の位置に対して情報の記録再生を行う。このとき、光記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録再生を行うかによって、受光素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。そして、光記録再生装置は、トラッキング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対してトラッキング制御を行う。
【0060】
これにより、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、該情報記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。また、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことにより、受光素子は、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0061】
従って、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度にトラッキング制御を行うことができ、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができる。
【0062】
なお、上述の情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、光記録再生装置は、任意の頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0063】
また、受光素子は、情報の記録再生を行うパターンとは別のパターンの情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。すなわち、光記録再生装置が例えば第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うときには、受光素子は、第1の情報記録セル群の情報記録セルからトラッキング制御用の信号を検出する。
【0064】
これにより、受光素子は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、光記録再生装置は、検出した信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がない必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0065】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行ってもよい。
【0066】
上記構成によれば、光記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録を行うかによって、受光素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、記録タイミング制御用の信号を検出する。そして、光記録再生装置は、記録タイミング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対して記録タイミング制御(記録タイミングの調整)を行う。
【0067】
従って、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度に記録タイミング制御を行うことができ、記録エラーを少なくすることができる。
【0068】
なお、上述の情報記録媒体の上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、光記録再生装置は、任意の頻度で記録タイミング制御用の信号を検出することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明に係る情報記録媒体は、以上のように、上記データ領域は、上記情報記録媒体の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を備え、上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群にそれぞれ含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なる構成である。
【0070】
それゆえ、情報記録媒体は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すると以下の通りである。
【0072】
〔磁気記録再生装置2の概略構成〕
図2は、本発明に係る磁気記録媒体(情報記録媒体)1に対して記録再生を行う磁気記録再生装置2の概略構成を示す図である。磁気記録再生装置2は、図2に示すように、サスペンション3と、スピンドル4と、ボイスコイルモーター5と、ランプ機構6と、記録再生ヘッド7とを備えている。また、図2では、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を備えた構成となっている。なお、磁気記録媒体1の構造、及び磁気記録再生装置2による磁気記録媒体1の記録再生方法については、後に詳述する。
【0073】
サスペンション3は、後述のボイスコイルモーター5に固定されており、ボイスコイルモーター5と反対側の先端に、磁気記録媒体1に対して磁界を印加する記録再生ヘッド7を備えている。
【0074】
スピンドル4は、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体1を反時計周り(図2の矢印方向)に回転させるものである。なお、磁気記録媒体1の中心部にはスピンドル4と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0075】
ボイスコイルモーター5は、サスペンション3に備えられた記録再生ヘッド7が磁気記録媒体1の半径方向に磁気記録媒体1上を移動できるように、サスペンション3を移動させるものである。すなわち、記録再生ヘッド7は、ボイスコイルモーター5の作動に応じて、磁気記録媒体1に対する半径方向における半径位置を変更させることができる。
【0076】
ランプ機構6は、磁気記録媒体1に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド7が退避する場所(すなわち、記録再生ヘッド7を固定される場所)である。
【0077】
記録再生ヘッド7は、磁気記録媒体1に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体1に対して磁界を印加するものである。これにより、例えば、磁気記録媒体1の磁気記録セル11(後述)の磁化方向を決定することができる。具体的には、記録再生ヘッド7は、図3に示すように、磁気記録媒体1に近い面に、垂直磁気記録媒体用の磁気記録素子8と磁気再生素子9とを備えている。図3は、磁気記録再生装置2の記録再生ヘッド7の概略構成を示す図である。
【0078】
磁気記録素子8は、磁気記録媒体1に情報を記録するときに記録可能な強度の磁界を、該磁気記録媒体1に印加するものである。同様に、磁気再生素子9は、磁気記録媒体1から情報を読み出して再生するときに再生可能な強度の磁界を、該磁気記録媒体1に印加するものである。
【0079】
なお、磁気記録素子8と磁気再生素子9との磁気記録媒体1から見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド7が回転する磁気記録媒体1の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子9が先に通過し、磁気記録素子8がその後に通過するような位置関係となっている。
【0080】
以上のように、磁気記録再生装置2は、スピンドル4及びサスペンション3の動作と、記録再生ヘッド7による磁界の印加とを制御することにより、磁気記録媒体1の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0081】
〔磁気記録媒体1の概略構成及び製造方法〕
次に、図2に示す磁気記録再生装置2に備えられた磁気記録媒体1について図1及び図4を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体1の概略構成を示す図である。また、図4は、磁気記録媒体1に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。
【0082】
磁気記録媒体1は、孤立した磁気記録セルを配列したパターンドメディアであり、図1に示すように、ユーザデータ領域(データ領域)10と、磁気記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)11と、第1の情報記録セル群12と、第2の情報記録セル群13とを備えている。また、図1に示す12w、13wは、それぞれ第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13の、磁気記録媒体1の円周方向に対する幅を示している。
【0083】
磁気記録セル11は、ユーザデータ領域10に孤立して配列された円柱状のセルであり、磁気記録再生装置2によって磁気情報が記録再生されるものである。また、磁気記録セル11は、所定のトラックピッチ(例えば、50nm)で隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配置されている。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1の磁気記録セル11の大きさは、直径25nm及び高さ40nmとなっているが、これに限らず、直径5nm〜45nm及び高さが10nm〜60nmとなっていればよい。
【0084】
ここで、磁気記録セル11が「隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配置されている」とは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、磁気記録セル11の円周方向における周方向位置(磁気記録媒体1の円周方向における位置)と、該磁気記録セル11が形成されたトラックと隣接するトラックに形成された磁気記録セル11の周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラック上で隣り合った2つの磁気記録セル11間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックに形成された磁気記録セル11が1つ存在することである。但し、磁気記録媒体1の最外周及び最内周のトラックに関しては、このトラックの外側又は内側に隣接するトラックが存在しない。また、ユーザデータ領域10において、磁気記録セル11が形成されていない領域は、非磁性体によって形成されている。
【0085】
上記のように配置された複数の磁気記録セル11は、図1に示すように、磁気記録媒体1の円周方向に対する幅12wを有する第1の情報記録セル群12と、磁気記録媒体1の円周方向に対する幅13wを有する第2の情報記録セル群13とを形成している。そして、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とは、磁気記録媒体1の円周方向に対して交互になるように配置されている。また、複数の磁気記録セル11が形成される各トラック間のトラックピッチは、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群の各トラックにおいて等しくなるように形成されている。
【0086】
さらに、交互に配置された第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13において、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径方向における半径位置は、図3に示すように、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なっている。本実施形態に係る磁気記録媒体1では、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置は、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11が形成される各トラック位置の半径位置より半分だけ外周側に配置されている。ここで、「半径方向における半径位置」とは、磁気記録媒体1の半径方向における半径位置を指す。
【0087】
なお、磁気記録セル11の形状は、円柱状に限られるものではなく、例えば四角柱状、楕円柱状、球状等であってもよく、孤立した磁気記録セル11に磁気情報が記録できれば形状であればどのような形状であってもよい。また、磁気記録媒体1では、任意の磁気記録セル11は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置となるように形成されている。
【0088】
また、磁気記録媒体1の回転方向は、図1及び図4に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1に配列された磁気記録セル11に対して紙面左から順に信号検出していく。また、磁気記録媒体1は、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで、情報が記録されるタイプの媒体である。
【0089】
以下、磁気記録媒体1の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上に軟磁性層を形成した後、この軟磁性層上にレジストを塗布する。次に、電子線リソグラフィー法によって、レジストに微細パターンを形成した後、磁気記録セル11を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した磁気記録セル11を形成する材料とを除去した後、この基板上に非磁性層を成膜する。そして、この基板の非磁性層側から研磨を行うことで、磁気記録セル11を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、磁気記録セル11が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0090】
上記磁気記録媒体1の製造方法では、磁気記録セル11を形成する材料としては、例えば、Co、Pt、Fe、Ni、Cr、Mn又はこれらの金属からなる合金が挙げられる。また、上記合金としては、例えば、CoPt、SmCo、CoCr又はTbFeCo合金を用いることができる。さらに、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば、陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。
【0091】
また、上記磁気記録媒体1の製造方法では、磁気記録媒体1の片面にのみ磁気記録面(すなわち、磁気記録セル11を有する面)を形成しているが、これに限らず、磁気記録媒体1の両面に磁気記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、磁気記録媒体1の両面に対して実施されればよい。なお、磁気記録媒体1の両面に形成される磁気記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0092】
なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1では、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とが同じ幅となるように形成されており、それぞれの円周方向の幅12w、13wは、50μmとなっている。なお、これら円周方向の幅12w、13wが10μm〜100μmとなるように、磁気記録媒体1が形成されていればよい。なお、実施形態2、3に係る磁気記録媒体1a、1b、1cについても、同様に構成されている。
【0093】
〔磁気記録媒体1の記録再生方法〕
以下、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して磁気情報を記録再生する方法について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、磁気記録媒体1に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。なお、図4(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、磁気記録再生装置2が、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル12Aから第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr1に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。また、図4(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、磁気記録再生装置2が、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル13Aから第1の情報記録セル群12の方向に向かって、トラックTr2に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【0094】
図4(a)に示すように、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を紙面右から左に回転させる。このため、磁気再生素子9は、磁気記録セル12Aのような、トラックTr1に対して内周側(紙面の下側)にある磁気記録セル11と、磁気記録セル12Bのような、トラックTr1に対して外周側(紙面の上側)にある磁気記録セル11とを交互に検出していく。すなわち、本実施形態では、磁気再生素子9は、磁気記録セル12Aから第2の情報記録セル群13に進入する直前までに、第1の情報記録セル群12における8個の磁気記録セル11(12A、12Bを含む)からの信号を検出する。なお、この8個の磁気記録セル11は、磁気再生素子9によって検出される順に、磁気記録セル12Aから、下(紙面手前から奥方向)、上(紙面奥から手前方向)、上、下、上、上、上、下の方向に磁化しているものとする。
【0095】
このように、磁気再生素子9が、図4(a)に示す磁気記録媒体1のトラックTr1に沿って検出したときの信号の模式図を図5に示す。図5は、磁気再生素子9が、図4(a)に示す磁気記録媒体1のトラックTr1に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図である。なお、図5(a)は、第2の情報記録セル群13においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出された検出信号Tr1sを示す模式図である。また、図5(b)は、記録再生ヘッド7が、図4(a)に示すトラックTr1から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図であり、図5(c)は、記録再生ヘッド7が、図4(a)のトラックTr1から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【0096】
図5(a)では、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出される信号をそれぞれ、12s及び13sで示しており、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sについては、1つ目の磁気記録セル11に対応する検出信号のみを図示している。すなわち、検出信号13sについては、それ以降の磁気記録セル11から検出される信号についての図示を省略している。また、図5(a)において、検出信号12sが上に凸及び下に凸を示す波形はそれぞれ、磁気記録セル11が上方向及び下方向に磁化していることを示している。
【0097】
まず、記録再生ヘッド7が磁気記録媒体1のトラックTr1に対してオントラックである場合、検出信号12sのスライスレベル14からの振幅h1は、トラックTr1に対して内周側にある磁気記録セル11と外周側にある磁気記録セル11とで等しくなる。この場合、磁気記録再生装置2では、磁気記録媒体1に対する記録再生ヘッド7の半径位置を調整することなく、第1の情報記録セル群12から第2の情報記録セル群13に進入して検出信号13sを検出することにより、磁気記録セル11に記録された情報の再生を開始することが可能である。
【0098】
すなわち、図5(a)からわかるように、再生すべき領域(ここでは、第2の情報記録セル群13)に進入したときは、磁気再生素子9が磁気記録セル11の直上を通過するため、検出信号13sの振幅h2が検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。このため、磁気記録再生装置2は、大きな振幅h2の検出信号13sをトリガーとして、この検出信号13sに対応する磁気記録セル11に記録された情報の再生を開始することができる。従って、第2の情報記録セル群13においては、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御を行うことなく、磁気記録セル11に記録された情報の再生だけを行うことが可能である。
【0099】
なお、上記のスライスレベル14とは、磁気記録セル11の磁化上向きのときに検出される信号と、磁気記録セル11の磁化下向きのときに検出される信号との中心値を指すものである。また、オントラックとは、記録再生ヘッド7の半径位置がトラックの半径位置の中心とほぼ一致して、磁気記録再生装置2が所定の磁気記録セル11から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。一方、後述のオフトラックとは、記録再生ヘッド7の半径位置がトラックの半径位置の中心からずれて、磁気記録再生装置2が所定の磁気記録セル11から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0100】
次に、記録再生ヘッド7が磁気記録媒体1のトラックTr1に対してオフトラックである場合、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sは、図5(a)に示す場合と異なり、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11に対応する検出信号12sのピーク値がひとつおきに大きく又は小さくなる。
【0101】
すなわち、図5(b)に示すように、記録再生ヘッド7が、トラックTr1から内周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr1の内周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h3は、図5(a)に示す振幅h1よりも大きくなる。一方で、トラックTr1の外周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h4は、図5(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも小さくなる。従って、磁気記録再生装置2は、この検出信号12sの振幅差(h3−h4)を検出して、振幅h3と振幅h4とが等しく(すなわち、h3−h4=0)なるように、記録再生ヘッド7の半径位置を外周側にずらしてトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0102】
一方、図5(c)に示すように、記録再生ヘッド7が、トラックTr1から外周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr1の内周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h6は、図5(a)に示す振幅h1よりも小さくなる。一方で、トラックTr1の外周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h5は、図5(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。従って、磁気記録再生装置2は、この検出信号12sの振幅差(h5−h6)を検出して、振幅h5と振幅h6とが等しくなる(すなわち、h5−h6=0)ように、記録再生ヘッド7の半径位置を内周側にずらしてトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0103】
つまり、磁気記録再生装置2は、トラックTr1に対してオフトラックである場合であっても、第1の情報記録セル群12を通過する間にトラックTr1に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行う。そして、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13に進入すると、磁気再生素子9が検出する信号のピーク値が大きくなることをトリガーとして、トラックTr1の第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に記録された情報を再生する。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気再生素子9が第2の情報記録セル群13に進入して、検出信号12sよりもピーク値の大きい検出信号13sを検出したことをトリガーとして、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に記録された情報を再生する。
【0104】
一方、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が再び第1の情報記録セル群12に進入すると、磁気再生素子9が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、再びトラッキング制御を行う。すなわち、磁気記録再生装置2は、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、上述のように、磁気再生素子9が検出する検出信号12sのピーク値が一定となるように、フィードバック制御を行う。
【0105】
従って、記録再生ヘッド7が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、磁気記録再生装置2は、よりオフトラック量の少ない状態で、所定トラックの第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に記録された情報を再生する。これにより、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1にサーボパターン用の領域を形成することなく、磁気記録媒体1の磁気記録セル11に記録された情報を正確に再生することが可能となり、再生エラーを少なくすることができる。
【0106】
次に、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1の磁気記録セル11に情報を記録する場合について説明する。磁気記録再生装置2が記録時にトラッキング制御を行う場合については、上述した再生時の場合と同様に行うことができる。
【0107】
但し、記録時には、磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12からの検出信号12sをもとに、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に情報を記録させるタイミングを求め、このタイミングでこの磁気記録セル11に情報を記録する必要がある。このタイミングを求める方法については、例えば以下に示す方法がある。
【0108】
上述したように、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1を回転させているとき、記録再生ヘッド7の磁気記録素子8は、磁気再生素子9が磁気記録媒体1の任意の位置を通過した後に、その位置を通過する構成となっている。従って、例えば磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13に磁気再生素子9が進入して、検出信号12sよりもピーク値の大きい検出信号13sを検出したことをトリガーとして、所定の時間経過後に、磁気記録素子8が記録磁界を印加する構成としてもよい。
【0109】
ここで、所定の時間とは、磁気再生素子9が第2の情報記録セル群13に進入して、最初の磁気記録セル11のピーク値を検出してから、磁気記録素子8がこの磁気記録セル11を通過するときまでの時間を示している。この所定の時間は、例えば磁気記録媒体1の回転速度と、磁気記録素子8及び磁気再生素子9の距離とから算出される。
【0110】
また、例えば磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12で検出した検出信号12sのピーク値をカウントしておくことによって、磁気記録素子8が第2の情報記録セル群13に進入するタイミングを求める構成であってもよい。
【0111】
なお、記録時において、磁気記録素子8は、例えば同一方向(任意の方向でよい)への記録磁界を連続して発生させる構成であってもよい。また、この構成において、磁気記録素子8がスペース領域(ユーザデータ領域10における磁気記録セル11が存在しない非磁性層)に進入した場合には、磁界を発生させないようにしてもよい。一方、磁気記録素子8は、異なる方向への記録磁界を発生させる構成であってもよい。この場合、磁気記録素子8は、スペース領域において一旦発生磁界を0にすると共に、次に進入する磁気記録セル11において所定の方向に磁界を発生させるようにしてもよい。また、磁気記録素子8は、発生する磁界の方向を瞬間的に変化させる構成であってもよい。
【0112】
磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13から再び第1の情報記録セル群12に進入すると、磁気記録素子8が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、トラッキング制御(上述したフィードバック制御)と記録タイミングの調整とを行う。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気再生素子9が再び第1の情報記録セル群12に進入して、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、第1の情報記録セル群12においてトラッキング制御と記録タイミング制御とを行う。
【0113】
従って、記録再生ヘッド7が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、磁気記録再生装置2は、オフトラック量(すなわち、記録したい磁気記録セル11との位置ずれ)がより少ない状態で、この磁気記録セル11に記録を行うことができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、記録タイミング制御用の信号を検出するための領域を磁気記録媒体1に形成することなく、所望の磁気記録セル11への記録を正確に行うことが可能となり、記録エラーを少なくすることができる。
【0114】
なお、磁気記録再生装置2は、検出信号13sを検出することによって、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11への記録タイミング(すなわち、磁気記録素子8の記録磁界発生のタイミング)を求めてもよい。しかしながら、磁気記録再生装置2は、上述のように、検出信号12sを検出することによって記録タイミングを求める構成であれば、記録時にフィードバック制御を行う必要がない。
【0115】
また、上述のように、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に対して情報の記録再生を行うときには、磁気再生素子9は、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11からトラッキング制御用の信号(すなわち、検出信号12s)を検出する。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1に2つの情報記録セル群が備えられているため、情報の記録再生を行うパターンとトラッキング制御用のパターンとを分けて信号検出を行う。
【0116】
これにより、磁気再生素子9は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、磁気記録再生装置2は、検出される信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0117】
ここで、上記では、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13に対して記録再生を行う場合について説明したが、磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12に対して記録再生を行う場合も同様の制御を行う。この場合について、図4(b)を用いて説明する。
【0118】
すなわち、第1の情報記録セル群12に対する記録再生の場合、第2の情報記録セル群13に対する記録再生の場合とは逆に、第2の情報記録セル群13が、第1の情報記録セル群12のトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号が検出されるパターンとなる。
【0119】
図4(b)に示すように、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を紙面右から左に回転させる。このため、記録再生ヘッド7は、トラックTr2に沿って、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル13A、13Bの順に、第1の情報記録セル群12の方向に磁気記録セル11からの信号を検出する。そして、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が検出した各信号の振幅の偏差をなくすようにフィードバック制御を行うことによって、磁気記録媒体1の再生を行う。また、記録時には、磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13で検出される信号をもとに、トラッキング制御及び記録タイミング制御を行う。
【0120】
以上のように、磁気記録媒体1は、磁気記録再生装置2に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、記憶容量を低下させることなく、記録再生ヘッド7の位置合わせを高精度に行わせることができる。一方、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1に対して記録再生を行う場合には、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができるため、従来の磁気記録媒体に対して記録再生を行う場合よりも、正確に記録再生を行うことができる。すなわち、磁気記録媒体1のユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0121】
また、磁気記録媒体1は、上述のように、記録再生ヘッド7が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対して交互に進入を繰り返すため、磁気記録再生装置2に対して、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0122】
なお、第1の情報記録セル群12の円周方向に対する幅12wと第2の情報記録セル群13の円周方向に対する幅13wとの変更にあわせて、トラッキング制御及び記録タイミング制御の検出頻度を任意に設定してもよい。例えば、上記幅12wと13wとをより狭く形成することによって、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号の検出頻度を上げて記録再生を行うことができるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを発生しにくくなる。従って、この場合には、磁気記録媒体1のユーザデータ領域10の記憶容量をより低下させることなく、記録エラー及び再生エラーをより少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0123】
ここで、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して再生を行う順番については、様々な方法が考えられるが、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0124】
1つの方法として、第1の情報記録セル群12に含まれるトラックと、第2の情報記録セル群13に含まれるトラックとを、交互に再生する場合が考えられる。この場合、磁気記録再生装置2は、次のトラックの再生に移行するときに、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13のトラックピッチの半分だけ、記録再生ヘッド7を内周側又は外周側に移動させるように対応する。
【0125】
また、もう1つの方法としては、磁気記録媒体1の任意の半径方向の範囲及び/又は円周方向の範囲において、第1の情報記録セル群12に含まれるトラックを連続して再生した後、第2の情報記録セル群13に含まれるトラックを連続して再生する場合が考えられる。この場合、磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12におけるトラックピッチ分だけ、記録再生ヘッド7を内周側又は外周側に移動させた後、第2の情報記録セル群13を第1の情報記録セル群12と同様に制御して、磁気記録媒体1の再生を行うように対応する。
【0126】
なお、上記では、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して再生を行う順番についての一例を説明したが、この方法は、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して記録を行う場合にも適用することができる。
【0127】
上記では、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径位置が、第1の情報記録セル群12の各トラックの半径位置に対して、トラックピッチの半分だけ異なるように配置されている磁気記録媒体1の構成について説明した。しかしながら、磁気記録媒体1の構成はこれに限られたものではなく、上記第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との配置関係がトラックピッチの半分から僅かにずれている構成であってもよい。この構成の場合、磁気記録再生装置2は、例えば以下のように動作することによって、トラッキング制御を行うことが考えられる。
【0128】
まず、磁気記録再生装置2は、任意の記録再生ヘッド7の位置(磁気記録媒体1の半径位置)において、磁気記録素子8による記録動作と磁気再生素子9による再生動作とを行い、磁気再生素子9が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置2は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド7の半径位置毎に繰り返し行う。
【0129】
すなわち、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7を磁気記録媒体1の任意の半径位置に移動させ、上記記録動作を行った後に上記再生動作を行い、このとき検出される再生信号のエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置2は、同様の動作を、磁気記録媒体1の各半径位置に対して繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置2は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置とを記憶する。また、磁気記録再生装置2には、備えられる磁気記録媒体1のトラックピッチTPが予め記憶されている。
【0130】
次に、磁気記録再生装置2は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小エラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r1と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r2とを決定する。すなわち、磁気記録再生装置2は、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r2とする。磁気記録再生装置2は、決定した半径位置r1、r2及び記憶しているトラックピッチTPから、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との半径方向における距離を(TP/2−(r1−r2))と決定する。
【0131】
そして、磁気記録再生装置2は、決定した上記距離(TP/2−(r1−r2))を記憶した後、磁気再生素子9がこの距離分だけオフトラックした状態のときの、奇数番目と偶数番目の磁気記録セル11からの信号振幅の差を求めて記憶する。磁気記録再生装置2は、この記録した信号振幅の差をもとに、記録再生時のトラッキング制御を行う。
【0132】
つまり、磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13から検出される信号を用いて、第1の情報記録セル群12における記録再生時のトラッキング制御を行う場合、第2の情報記録セル群13で検出される信号から得られる奇数番目と偶数番目との磁気記録セル11からの信号振幅の差が、上記信号振幅の差となるように記録再生ヘッド7の位置に対するフィードバック制御を行う。
【0133】
従って、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との配置関係がトラックピッチの半分から僅かにずれている構成であっても、記録エラー及び再生エラーを少なくすることができ、正確に記録再生を行うことができる。すなわち、磁気記録媒体1は、上記構成であっても、ユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することができる。
【0134】
〔磁気記録媒体1の変形例〕
ここで、上記磁気記録媒体1の変形例について図6を用いて説明する。図6は、セクタ分離パターン15が設けられた磁気記録媒体1の概略構成を示す図であり、同図(a)は、セクタ分離パターン15を第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との間に設けたときの磁気記録媒体1の概略構成を示す図あり、同図(b)は、セクタ分離パターン15を第2の情報記録セル群13の任意の位置に設けたときの磁気記録媒体1の概略構成を示す図ある。
【0135】
図6(a)に示すように、磁気記録媒体1は、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、磁気記録媒体1は、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、図示しないが、磁気記録媒体1は、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。なお、図6(a)及び図6(b)では、磁気記録セル11の形状が円柱状となっているが、これに限らず、例えば四角柱状、楕円柱状及び球状等、孤立した磁気記録セル11に磁気情報が記録できれば形状であればどのような形状であってもよい。
【0136】
なお、磁気記録媒体1にセクタ分離パターン15が設けられた構成の場合であっても、上述した記録再生方法を適用可能である。また、上述した記録再生を行う順番による磁気記録再生装置2の制御方法についても、何れかのセクタ領域内に連続して記録再生が行われるときに適用される。
【0137】
また、本発明は、上記のような磁気記録媒体1及び磁気記録再生装置2に限られるものではなく、例えば、誘電体記録媒体及び誘電体記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては誘電体記録セルを備えた誘電体記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、分極方向を検出する素子(再生素子)及び分極方向を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【0138】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について図7〜図10に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0139】
〔磁気記録媒体1aの概略構成〕
本実施形態に係る磁気記録媒体1aは、図7に示すように、トラック識別情報が記録されたアドレス領域16が備えている点で、実施形態1に係る磁気記録媒体1とは異なる。また、図7に示す磁気記録媒体1aでは、磁気記録セル11の形状が四角柱状となっている。図7は、ユーザデータ領域10に磁気記録セル11とアドレス領域16とが形成された磁気記録媒体1aの概略構成を示す図である。
【0140】
まず、実施形態1と同様、磁気記録媒体1aのユーザデータ領域10には、孤立した四角柱状の磁気記録セル11が、隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配列されている。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1aの磁気記録セル11の大きさは、一辺の長さ30nm及び高さ30nmとなっているが、これに限らず、一辺の長さ5nm〜45nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。
【0141】
そして、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とは、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置が、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置に対して、トラックピッチの半分だけ異なるように配置されている。本実施形態に係る磁気記録媒体1aでは、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置は、第2の情報記録セル群13が形成される各トラック位置の半径位置より半分だけ内周側に配置されている。
【0142】
また、実施形態1と同様、磁気記録媒体1aの任意の磁気記録セル11は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置となるように形成されている。さらに、磁気記録媒体1aにおいても、磁気記録セル11が形成されていない領域には、非磁性体層が形成されている。
【0143】
なお、磁気記録媒体1aの回転方向は、図7に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1aに配列された磁気記録セル11に対して紙面左から順に信号検出していく。また、磁気記録媒体1aは、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで、情報が記録されるタイプの媒体である。
【0144】
また、磁気記録素子8と磁気再生素子9との磁気記録媒体1aから見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド7が回転する磁気記録媒体1aの任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子9が先に通過し、磁気記録素子8がその後に通過するような位置関係となっている。
【0145】
さらに、磁気記録媒体1aは、図7に示すように、実施形態1に係る磁気記録媒体1とは異なり、第1の情報記録セル群12の各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域16を備えている。本実施形態では、アドレス領域16には、第1の情報記録セル群12の各トラックを識別するために、磁気情報を有する識別パターン17が形成されている。
【0146】
〔磁気記録媒体1aの記録再生方法〕
以下、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1aに対して磁気情報を記録再生する方法について、図7及び図8を用いて説明する。ここでは、磁気記録再生装置2が、再生時のトラッキング制御に関し、アドレス領域16から第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、信号を検出していく場合を考える。
【0147】
図7に示すように、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を回転させると、トラックTr3(又はトラックTr4)に対して第2の情報記録セル群13の内周側(紙面の下側)にある磁気記録セル11と、トラックTr3に対して外周側(紙面の上側)にある磁気記録セル11とを交互に検出していく。そして、磁気記録再生装置2は、磁気再生素子9が、第2の情報記録セル群13に進入したときの奇数番目及び偶数番目の磁気記録セル11から検出される各信号の、スライスレベル14からの振幅を比較することによって、実施形態1と同様、トラッキング制御を行う。
【0148】
なお、第2の情報記録セル群13に進入したときの奇数番目の磁気記録セル11とは、磁気再生素子9がトラックTr3上にある場合には、トラックTr3に対して外周側にある磁気記録セル11を指す。一方で、磁気再生素子9がトラックTr4上にある場合には、奇数番目の磁気記録セル11とは、トラックTr4に対して内周側にある磁気記録セル11を指す。また、第2の情報記録セル群13に進入したときの偶数番目の磁気記録セル11については、上記の関係が反対になる。
【0149】
ここで、磁気記録媒体1にアドレス領域16が備えられておらず、奇数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅が、偶数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅よりも大きい場合を考える。この場合、トラックTr3では、記録再生ヘッド7が外周側にオフトラックが生じている一方、トラックTr4では、記録再生ヘッド7が内周側にオフトラックを生じている。すなわち、奇数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅が、偶数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅よりも大きい場合であっても、トラックTr3とトラックTr4とでは、記録再生ヘッド7のオフトラック方向が異なることがわかる。
【0150】
本実施形態に係る磁気記録媒体1aは、磁気情報を有する識別パターン17が形成されたアドレス領域16を備えている。すなわち、磁気記録媒体1aは、第1の情報記録セル群12の各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域16を備えている。このため、磁気記録再生装置2は、どちらのトラック上に記録再生ヘッド7があるかを明確に区別することができる。
【0151】
すなわち、記録再生ヘッド7がトラックTr3上にある場合には、アドレス領域16の識別パターン17から検出する信号は、図8(a)に示す検出信号Tr3s(16s)のようになる。一方、記録再生ヘッド7がトラックTr4上にある場合には、アドレス領域16の識別パターン17から検出する信号は、図8(b)に示す検出信号Tr4s(16s)のようになる。つまり、記録再生ヘッド7がトラックTr3上にある場合とトラックTr4上にある場合とでは、記録再生ヘッド7によって検出される信号が異なる。
【0152】
このように、磁気記録媒体1aがアドレス領域16を備え、各トラックに対応するように、アドレス領域16の識別パターン17を配列することで、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7がどのトラック上にあるのかを特定することができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が信号検出を行っているトラックを識別することができる。
【0153】
つまり、磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sの、スライスレベル14からの振幅の差を比較することによって、オフトラック量を検出する。また、磁気記録再生装置2は、識別パターン17からの識別情報をもとに、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を順次検出していくときに、奇数番目及び偶数番目に検出する磁気記録セル11が、磁気記録媒体1aにおける任意のトラックの内周側であるか外周側であるかを特定する。なお、上記トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号とは、ここでは、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13から検出する検出信号を指す。
【0154】
これにより、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1aに対して情報を記録再生する場合には、記録再生ヘッド7のオフトラック量と共にオフトラック方向も特定することができるため、フィードバック制御を確実に行うことができる。
【0155】
なお、図8は、記録再生ヘッド7が、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域16の識別パターン17から信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、記録再生ヘッド7がトラックTr3を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr3s(16s)を示す模式図であり、同図(b)は、記録再生ヘッド7がトラックTr4を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr4s(16s)を示す模式図である。
【0156】
ここで、再生時における磁気再生素子9又は記録時における磁気記録素子8のトラッキング制御に関しては、実施形態1と同様に行うことができる。すなわち、磁気記録再生装置2が第1の情報記録セル群12の再生又は記録する場合には、第2の情報記録セル群13がトラッキング制御及び/又は記録タイミング調整(すなわち記録タイミング制御)用のパターンとなる。一方、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13の再生又は記録する場合には、第1の情報記録セル群12がトラッキング及び/又は記録タイミング制御用のパターンとなる。
【0157】
これにより、実施形態1と同様、磁気記録媒体1aは、磁気記録再生装置2に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、記憶容量を低下させることなく、高精度な記録再生ヘッド7の位置合わせを行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体1aは、ユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0158】
なお、実施形態1と同様、第1の情報記録セル群12の円周方向に対する幅12wと第2の情報記録セル群13の円周方向に対する幅13wの変更にあわせて、トラッキング制御及び記録タイミング制御の検出頻度を任意に設定してもよい。例えば、上記幅12wと13wとをより狭く形成することによって、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号の検出頻度を上げて記録再生を行うことができるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを発生しにくくなる。従って、この場合には、磁気記録媒体1aのユーザデータ領域10の記憶容量をより低下させることなく、記録エラー及び再生エラーをより少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0159】
なお、識別パターン17は、ユーザデータ領域10の磁気記録セル11のように、均一な形状をしている必要はなく、図7に示すように、いくつかのトラックに渡って連続した形状であってもよい。すなわち、アドレス領域16は、様々な形状の識別パターン17を含む構成であってよい。
【0160】
また、アドレス領域16には、識別パターン17の配列が示すように、第1の情報記録セル群12におけるトラックの識別情報が記録されていたが、第2の情報記録セル群13におけるトラックの識別情報を記録するためのアドレス領域が新たに設けられていてもよい。さらに、アドレス領域16の中に、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13におけるトラックの識別情報が記録されていてもよい。なお、アドレス領域16の形態は、上記構成に限られるものではなく、トラックを識別することができる形態であればどのような形態であってもよい。
【0161】
また、本実施形態からもわかるように、アドレス領域には、少なくとも、第1の情報記録セル群12(又は第2の情報記録セル群13)の任意のトラックが、磁気記録媒体1aの内周側から奇数番目のトラックであるか、偶数番目のトラックであるかを示す情報が記録されていればよい。以下、この構成のアドレス領域16bを有する磁気記録媒体1bについて、図9及び図10を用いて説明する。
【0162】
図9は、アドレス領域16bを有する磁気記録媒体1bの概略構成を示す図である。例えば図9では、アドレス領域16bには、磁気記録媒体1bの内周側から奇数番目のトラックTr5と偶数番目のトラックTr6とを区別するような情報が記録されている。すなわち、アドレス領域16b内の奇数番目のトラック(例えばトラックTr5)には四角柱状の識別パターン17が形成されているが、アドレス領域16内の偶数番目のトラック(例えばトラックTr6)には四角柱状の識別パターン17は形成されていない。
【0163】
次に、磁気記録再生装置2が図9に示す磁気記録媒体1bのトラックTr5及びトラックTr6に沿って検出する信号を、それぞれ図10(a)及び図10(b)に示す。なお、図10は、記録再生ヘッド7が、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域16bの識別パターン17及び第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11から信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、記録再生ヘッド7がトラックTr5を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr5sを示す模式図であり、同図(b)は、記録再生ヘッド7がトラックTr6を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr6sを示す模式図である。
【0164】
図10(a)及び図10(b)に示すように、記録再生ヘッド7がアドレス領域16bで検出する信号16sが、磁気記録媒体1aの内周側から奇数番目のトラックTr5と偶数番目のトラックTr6とで異なっている。ここで、図9に示すように、トラックTr5では、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13に進入すると、奇数番目に検出する磁気記録セル11が外周側となり、偶数番目に検出する磁気記録セル11が内周側となる。一方、トラックTr6では、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13に進入すると、奇数番目に検出する磁気記録セル11が内周側となり、偶数番目に検出する磁気記録セル11が外周側となる。
【0165】
すなわち、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1bの内周側から奇数番目のトラックであるか、偶数番目のトラックであるかを識別することによって、図7に示す磁気記録媒体1aを用いて説明した場合と同様の効果を得ることができる。つまり、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を順次検出していくときに、奇数番目及び偶数番目に検出する磁気記録セル11が、磁気記録媒体1bの第2の情報記録セル群13の内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。
【0166】
従って、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1bに対して記録再生を行う場合であっても、記録再生ヘッド7のオフトラック方向が、磁気記録媒体1に対して内周方向であるか外周方向であるかを特定することが可能である。すなわち、磁気記録再生装置2は、アドレス領域16bに少なくとも、磁気記録媒体1bの内周側から奇数番目のトラックであるか、偶数番目のトラックであるかを示す情報について記録されていれば、記録再生ヘッド7のオフトラック方向を特定することができる。
【0167】
なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1a、1bは、上述の実施形態1と同様、図6(a)に示すように、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、磁気記録媒体1a、1bは、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、磁気記録媒体1a、1bは、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。
【0168】
また、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1a、1bに対して再生を行う順番についても、上述の実施形態1で説明した方法を適用することができる。また、磁気記録媒体1a、1bの製造方法についても、磁気記録媒体1の製造方法を適用することができる。すなわち、磁気記録セル11を形成する材料、微細パターンの形成方法についても、上述の実施形態1と同様の材料、方法を用いることができる。さらに、実施形態1でも説明したように、磁気記録媒体1a、1bについても、その両面に磁気記録面を設ける構成としてもよい。
【0169】
さらに、アドレス領域16、16bにおける識別パターン17が保有している磁気情報は、磁気記録セル11と同様、磁化の向きが揃っていてもよいし、ランダムに上下方向を向いていてもよい。
【0170】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について図11及び図12に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1、2と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0171】
〔磁気記録媒体1cの概略構成〕
本実施形態に係る磁気記録媒体1cは、図11に示すように、磁気記録セル11の形状が楕円柱状である点で、実施形態1、2とは異なる。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1cの磁気記録セル11の大きさは、楕円の長径40nm及び高さ30nmとなっているが、これに限らず、楕円の長径10nm〜50nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。
【0172】
また、本実施形態に係る磁気記録媒体1cは、任意の磁気記録セル11のその周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置とは異なる位置に形成されている点においても、実施形態1、2とは異なる。なお、図11は、磁気記録媒体1cの第2の情報記録セル群13の概略構成を示す図である。
【0173】
図11に示すように、トラックTr7は、トラックTr8と隣接しており、トラックTr7には磁気記録セル11Aがあり、トラックTr8には磁気記録セル11B、11Cがある。そして、トラックTr7の磁気記録セル11Aの周方向位置は、トラックTr8において磁気記録セル11Aと最も近接した位置にある磁気記録セル11Bの周方向位置と、磁気記録セル11Aと2番目に近接した磁気記録セル11Cの周方向位置との中心位置とはなっていない。
【0174】
つまり、実施形態1、2とは異なり、磁気記録セル11Aと磁気記録セル11Bとの円周方向における距離p1と、磁気記録セル11Aと磁気記録セル11Cとの円周方向における距離p2とが等しくない(なお、本実施形態ではp1<p2)。
【0175】
また、磁気記録セル11Aと、トラックTr7の内周側で隣接するトラックTr9において磁気記録セル11Aに最も近接した磁気記録セル11Dとの円周方向における距離は、上記距離p1と等しい。同様に、磁気記録セル11Aと、トラックTr7の内周側で隣接するトラックTr9において磁気記録セル11Aに2番目に近接した磁気記録セル11Eとの円周方向における距離は、上記距離p2と等しい。
【0176】
さらに、実施形態1、2とは異なり、磁気記録媒体1cでは、トラックTr7の磁気記録セル11の周方向位置と、トラックTr7に対して2番目に近いトラックTr10における磁気記録セル11の周方向位置とが異なっている。なお、磁気記録媒体1cでは、どの磁気記録セル11を見ても、上述したような位置関係となっている。
【0177】
以上のように、図11に示すように磁気記録セル11を配置することで、第2の情報記録セル群13をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用のパターンとして利用する場合、磁気再生素子9がオフトラックとなったときのオフトラック方向が内周方向であるか、外周方向であるかを特定することができる。本実施形態3においても、磁気記録再生装置2がオフトラック方向を特定できることについては、後に詳述する。
【0178】
〔磁気記録媒体1cの記録再生方法〕
以下、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1cに対して磁気情報を記録再生する方法について、図11及び図12を用いて説明する。ここでは、記録再生ヘッド7が、第2の情報記録セル群13において、トラックTr11に沿って、第2の情報記録セル群13においてトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出していく場合を考える。
【0179】
図11に示すように、磁気記録媒体1cの回転方向が紙面右から左へ向かう方向(図11に示す矢印方向)であるため、磁気再生素子9は、トラックTr11に沿って第2の情報記録セル群13を紙面左側から順次検出していく。
【0180】
上述したように、トラッキング制御に際しては、磁気再生素子9は、トラックTr11の内周側(紙面の下側)にある磁気記録セル11と、外周側(紙面の上側)にある磁気記録セル11とから交互に信号を検出する。そして、トラックTr11の内周側及び外周側の磁気記録セル11から検出される信号の、スライスレベル14からの振幅を比較することによってトラッキング制御を行う。
【0181】
本実施形態に係る磁気記録媒体1cにおいては、上述したように、距離p1と距離p2とが異なると共に、どの磁気記録セル11を見ても図11に示すような位置関係になっているため、記録再生ヘッド7のオフトラック方向を特定できる。以下、この点について図12を用いて詳しく説明する。
【0182】
図12は、記録再生ヘッド7が、トラックTr11に沿って、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11から信号を検出したときの検出信号13sを示す模式図である。ここで、磁気記録セル11Aを検出してから磁気記録セル11Bを検出するまでの時間(「任意の磁気記録セル」を検出した後、該「任意の磁気記録セル」に隣接したトラックにおいて最も近接した磁気記録セルを検出するまでの時間)をt1で示している。一方、磁気記録セル11Cを検出してから磁気記録セル11Aを検出するまでの時間(「任意の磁気記録セル」に隣接したトラックにおいて2番目に近接した磁気記録セルを検出した後、該「任意の磁気記録セル」を検出するまでの時間)をt2で示している。
【0183】
図11に示すように、磁気記録媒体1cにおいては距離p1<p2の関係にあるため、図12に示す時間t1、t2の関係は、t1<t2となる。このため、磁気記録再生装置2は、信号を検出するときの時間を計測することによって、記録再生ヘッド7が沿うトラックの内周側の磁気記録セル11からの検出信号13sであるか、外周側の磁気記録セル11からの検出信号13sであるかを特定することができる。
【0184】
具体的に、記録再生ヘッド7が任意の磁気記録セル11からの信号を検出したt1後に、次の磁気記録セル11からの信号を検出した場合を考える。この場合、磁気記録再生装置2は、最初に検出した信号が、トラックTr11に対して内周側のトラックTr7における磁気記録セル11からの検出信号13sであると特定することができる。一方、磁気記録再生装置2は、次に検出した信号が、トラックTr11に対して外周側のトラックTr8における磁気記録セル11からの検出信号13sであることが特定することができる。
【0185】
また、記録再生ヘッド7が任意の磁気記録セル11からの信号を検出したt2後に、次の磁気記録セル11からの信号を検出した場合を考える。この場合、磁気記録再生装置2は、最初に検出した信号が、トラックTr11に対して外周側のトラックTr8における磁気記録セル11からの検出信号13sであると特定することができる。一方、磁気記録再生装置2は、次に検出した信号が、トラックTr11に対して内周側のトラックTr7における磁気記録セル11からの検出信号13sであることが特定することができる。
【0186】
つまり、磁気記録再生装置2は、上述のように、検出信号13sを検出したときの磁気記録セル11が、記録再生ヘッド7が沿うトラックの内周側にあるか、外周側にあるかを特定することができる。このため、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7がオフトラックを生じた場合であっても、オフトラック方向を特定することができる。また、磁気記録再生装置2は、上述のように、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sの、スライスレベル14からの振幅の差を比較することによって、オフトラック量を検出することができる。
【0187】
従って、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1cに対して情報を記録再生する場合には、記録再生ヘッド7のオフトラック量と共にオフトラック方向も特定することができるため、フィードバック制御を確実に行うことができる。
【0188】
ここで、上記実施形態1と同様、磁気記録再生装置2が第1の情報記録セル群12の再生又は記録する場合には、第2の情報記録セル群13がトラッキング制御及び/又は記録タイミング制御用のパターンとなる。一方、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13の再生又は記録する場合には、第1の情報記録セル群12がトラッキング及び/又は記録タイミング制御用のパターンとなる。
【0189】
これにより、実施形態1と同様、磁気記録媒体1cは、磁気記録再生装置2に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。つまり、磁気記録媒体1cは、記憶容量を低下させることなく、高精度な記録再生ヘッド7の位置合わせが可能な、すなわち再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0190】
また、実施形態1と同様、第1の情報記録セル群12の円周方向に対する幅12wと第2の情報記録セル群13の円周方向に対する幅13wの変更にあわせて、トラッキング制御及び記録タイミング制御の検出頻度を任意に設定してもよい。例えば、上記幅12wと13wとをより狭く形成することによって、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号の検出頻度を上げて記録再生を行うことができるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを発生しにくくなる。従って、この場合には、磁気記録媒体1cのユーザデータ領域10の記憶容量をより低下させることなく、記録エラー及び再生エラーをより少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0191】
なお、本実施形態3に係る磁気記録媒体1cにおいても、上述の実施形態1と同様、図6(a)に示すように、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、磁気記録媒体1cは、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、磁気記録媒体1cは、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。
【0192】
また、上述の実施形態2と同様、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1cに対して再生を行う順番、及び、磁気記録媒体1cの製造方法についても、実施形態1での方法を適用することができる。
【0193】
ここで、本実施形態に係る記録再生ヘッド7の磁気再生素子9において、該磁気再生素子9の円周方向における空間分解可能幅Swであるとき、上述した距離p1との関係が、Sw<p1であることが好ましい。なお、本明細書における磁気再生素子9の空間分解可能幅Swとは、磁気再生素子9が単一の磁気記録セル11上を走査したときに得られる信号の半値幅(時間軸)をt、走査時の線速度をvとしたとき、「t×v」で表される値を指す。また、上述した距離p1とは、任意の磁気記録セル11と、隣接するトラックにおいて該磁気記録セル11に最も近接する磁気記録セル11との円周方向における距離を指す。
【0194】
上記関係の場合、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出するときに、各々の磁気記録セル11からの検出信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーが生じにくくすることができる。これは、この構成によれば、隣接する磁気記録セル11からの信号に起因した検出信号の歪みが小さくなるためである。
【0195】
なお、上記構成は、本実施形態に限られるものではなく、上記実施形態1、2についても同様の効果を奏する。すなわち、実施形態1、2に係る磁気記録媒体1、1a、1bでは、任意の磁気記録セル11の周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置となるように形成されている。
【0196】
この場合、磁気再生素子9の空間分解可能幅Swが、任意の磁気記録セル11と、隣接するトラックにおける磁気記録セル11との距離よりも小さい場合、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出するときに、各々の磁気記録セル11からの検出信号を分離しやすくすることができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1、1a、1bから上記信号を検出するときに、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを生じにくくすることができる。
【0197】
従って、上記空間分解可能幅Swとし、任意の磁気記録セル11と、該磁気記録セル11と最も近接した周方向位置にある磁気記録セル11との距離Dとするとき、これらの関係がSw<Dとなる場合には、磁気記録再生装置2は上述のような効果を奏する。
【0198】
また、磁気記録再生装置2は、その初期動作(例えば、磁気記録再生装置2の起動)において、記録再生ヘッド7の磁気記録素子8と磁気再生素子9との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。磁気記録再生装置2の記録再生ヘッド7には個体差があるため、該記録再生ヘッド7の磁気記録素子8と磁気再生素子9との半径方向における距離についても、記録再生ヘッド7毎に異なる可能性が高い。
【0199】
従って、磁気記録再生装置2の初期動作において上記距離を検出することにより、磁気記録再生装置2は、この距離が所定の値(例えば、磁気記録素子8と磁気再生素子9との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子8がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7の個体差に起因した磁気記録素子8のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。ここで、上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置2の初期動作としては、例えば、以下の動作が考えられる。
【0200】
まず、磁気記録再生装置2は、任意の記録再生ヘッド7の位置(磁気記録媒体1の半径位置)において、磁気記録素子8による記録動作と磁気再生素子9による再生動作とを行い、磁気再生素子9が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置2は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド7の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置2は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置とを記憶する。
【0201】
次に、磁気記録再生装置2は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r1と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r2とを決定する。すなわち、磁気記録再生装置2は、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r2とする。磁気記録再生装置2は、決定した半径位置r1、r2から、磁気記録素子8と磁気再生素子9との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する。
【0202】
そして、磁気記録再生装置2は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子9がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。
【0203】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について図13〜図17に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1〜3と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0204】
〔光記録再生装置19の概略構成〕
図13は、本発明に係る光記録媒体(情報記録媒体)18に対して記録再生を行う光記録再生装置19の概略構成を示す図である。光記録再生装置19は、図13に示すように、サスペンション3と、スピンドル4と、ボイスコイルモーター5と、ランプ機構6と、記録再生ヘッド20とを備えている。また、図13では、光記録再生装置19は、光記録媒体18を備えた構成となっている。光記録再生装置19は、サスペンション3に備えられた記録再生ヘッド7の代わりに記録再生ヘッド20が備えられていること、及び光記録媒体18に対して光情報を記録再生する点で磁気記録再生装置2とは異なる。
【0205】
すなわち、磁気記録再生装置2と同様、スピンドル4は、光記録再生装置19が光記録媒体18に情報の記録再生を行うときに、光記録媒体18を反時計周り(図13の矢印方向)に回転させるものである。なお、光記録媒体18の中心部にはスピンドル4と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0206】
また、サスペンション3は、サスペンション3に備えられた記録再生ヘッド20を光記録媒体18の半径方向に移動させるボイスコイルモーター5に固定され、その反対側の先端に、光記録媒体18に対して情報の記録再生を行う記録再生ヘッド20を備えている。すなわち、記録再生ヘッド20は、ボイスコイルモーター5の作動に応じて、光記録媒体18に対する半径位置を変更させることができる。さらに、ランプ機構6は、光記録媒体18に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド20が退避する場所である。
【0207】
なお、光記録媒体18の構造、及び光記録再生装置19による光記録媒体18の記録再生方法については、後に詳述する。
【0208】
次に、図14を用いて、記録再生ヘッド20の概略構成について説明する。図14は、記録再生ヘッド20の概略構成を示す説明図である。
【0209】
図14に示すように、記録再生ヘッド20は、受光素子21及び近接場光発生部(発光素子)22を備えている。受光素子21は、光記録媒体18に記憶された情報を再生するときに、光記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)27からの散乱光を受光するものである。また、受光素子21は、トラッキング制御用及び記録タイミング用の信号を検出する。
【0210】
近接場光発生部22は、半導体レーザ光源26(図15(a)にて図示)から光が照射されることによって、近接場光を発生させるものである。具体的には、近接場光発生部22は、微小開口部23を備えており、半導体レーザ光源26から出射された光が該微小開口部23に照射されることにより、微小開口部23付近に近接場光が発生する。なお、近接場光とは、物質に光を照射したときに物質表面に生じる光であって、伝播せず物質表面のごく限られた近傍にのみ局在する光である。
【0211】
また、受光素子21と近接場光発生部22との光記録媒体18から見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド20が回転する光記録媒体18の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を受光素子21が先に通過し、近接場光発生部22がその後に通過するような位置関係となっている。
【0212】
なお、本実施形態に係る記録再生ヘッド20では、近接場光発生部22が、例えば金薄膜からなっている。また、微小開口部23の平面サイズは、200nm×300nmとなるように形成されている。
【0213】
以上のように、光記録再生装置19は、スピンドル4及びサスペンション3の動作と、記録再生ヘッド20による近接場光の発生及び散乱光の受光とを制御することにより、光記録媒体18の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0214】
次に、図15を用いて、記録再生ヘッド20の製造方法について説明する。図15は、記録再生ヘッド20の製造方法を示す説明図であり、同図(a)は、半導体レーザ光源26が形成された様子を示す図であり、同図(b)は、受光素子21と近接場光発生部22とが形成された様子を示す図である。
【0215】
まず、図15(a)に示すように、GaAs基板24上に、波長650nmの光を出射可能な半導体レーザ光源26を形成する。その後、図15(b)に示すように、半導体レーザ光源26が形成されたGaAs基板24上に、例えばSiN(窒化シリコン)またはAlN(窒化アルミニウム)からなる透明薄膜層25を形成すると共に、透明薄膜層25上に、受光素子21と、微小開口部23を有した近接場光発生部22とを形成する。このとき、微小開口部23を有した近接場光発生部22は、半導体レーザ光源26から出射された光が照射される位置となるように形成されている。
【0216】
なお、図15(b)では、近接場光発生部22における微小開口部23の形状は、四角形となっているが、これに限らず、円形、三角形等、微小開口部23付近に近接場光を発生させる構成であればどのような構成であってもよい。
【0217】
また、近接場光を発生させる構成についても、上記記録再生ヘッド20に限らず、光ファイバー等を用いて近接場光を発生させてもよい。さらに、半導体レーザ光源26、受光素子21及び近接場光発生部22を備えた記録再生ヘッド20を、例えば半導体レーザ光源26、受光素子21及びSIL(Solid Immersion Lens)型の近接場光発生素子を具備した、光ピックアップタイプの記録再生ヘッドに置き換えてもよい。
【0218】
〔光記録媒体18の概略構成及び製造方法〕
次に、図16を用いて、光記録媒体18の概略構成及び製造方法について説明する。図16は、光記録媒体18の概略構成を示すものであり、光記録媒体18に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。
【0219】
光記録媒体18は、実施形態1と同様、孤立した光記録セルを配列したパターンドメディアであり、図16に示すように、ユーザデータ領域10と、光記録セル27と、第1の情報記録セル群12と、第2の情報記録セル群13とを備えている。また、図16に示す12w、13wは、それぞれ第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13の、光記録媒体18の円周方向に対する幅を示している。
【0220】
光記録セル27(後述の光記録セル28A、28B、29A及び29Bを含む)は、ユーザデータ領域10に孤立して配列された円柱状のセルであり、光記録再生装置19によって光情報が記録再生されるものである。また、光記録セル27は、所定のトラックピッチ(例えば、70nm)で隣接するトラックに形成された光記録セル27と互い違いになるように配置されている。なお、本実施形態に係る光記録媒体18の光記録セル27の大きさは、直径40nm及び高さ40nmとなっているが、これに限らず、直径5nm〜100nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。
【0221】
ここで、光記録セル27が「隣接するトラックに形成された光記録セル27と互い違いになるように配置されている」とは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、光記録セル27の円周方向における周方向位置(光記録媒体18の円周方向における位置)と、該光記録セル27が形成されたトラックと隣接するトラックに形成された光記録セル27の周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラック上で隣り合った2つの光記録セル27間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックに形成された光記録セル27が1つ存在することである。
【0222】
上記のように配置された複数の光記録セル27は、図16に示すように、光記録媒体18の円周方向に対する幅12wを有する第1の情報記録セル群12と、光記録媒体18の円周方向に対する幅13wを有する第2の情報記録セル群13とを形成している。そして、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とは、光記録媒体18の円周方向に対して交互になるように配置されている。また、複数の磁気記録セル11が形成される各トラック間のトラックピッチは、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群の各トラックにおいて等しくなるように形成されている。
【0223】
さらに、交互に配置された第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13において、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径方向における半径位置は、図16に示すように、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なっている。図16(a)に示す光記録媒体18では、第1の情報記録セル群12の光記録セル27が形成される各トラックの半径位置は、第2の情報記録セル群13の光記録セル27が形成される各トラック位置の半径位置より半分だけ外周側に配置されている。ここで、「半径方向における半径位置」とは、光記録媒体18の半径方向における半径位置を指す。
【0224】
上記光記録媒体18では、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径位置が、第1の情報記録セル群12の各トラックの半径位置に対して、トラックピッチの半分だけ異なるように配置された構成となっているが、これに限られたものではない。すなわち、実施形態1でも述べたように、光記録媒体18の構成が、上記第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との配置関係がトラックピッチの半分から僅かにずれている構成であってもよい。
【0225】
なお、光記録セル27の形状は、円柱状に限られるものではなく、例えば四角柱状、楕円柱状、球状等であってもよく、孤立した光記録セル27に光情報が記録できればどのような形状であってもよい。また、光記録媒体18では、任意の光記録セル27は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの光記録セル27の中心位置となるように形成されている。なお、光記録媒体18においても、実施形態3に係る磁気記録媒体1cと同様、任意の光記録セル27のその周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの光記録セル27の中心位置とは異なる位置に形成されていてもよい。
【0226】
また、光記録媒体18の回転方向は、図16に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、光記録再生装置19は、光記録媒体18に配列された光記録セル27に対して紙面左から順に信号検出していく。また、光記録媒体18は、照射されるレーザ光によって光記録セル27の結晶性を変化させることで、光記録再生装置19の近接場光発生部22で発生した再生時の近接場光による散乱光の強度が変化するタイプの媒体である。
【0227】
以下、光記録媒体18の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上にレジストを塗布し、電子線リソグラフィー法によって、レジストに微細パターンを形成した後、光記録セル27を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した光記録セル27を形成する材料とを除去した後、この基板上に誘電体層を成膜する。そして、この基板の誘電体層側から研磨を行うことで、光記録セル27を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、光記録セル27が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0228】
なお、光記録セル27を形成する材料としては、光記録再生装置19から光が照射されることによって(熱を加えられることによって)、その結晶性が変化する材料であればどのような材料であってもよい。例えば、光記録セル27を形成する材料としては、GeSb、GeSbTe、AgInSbTe合金等を用いることができる。また、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば、陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。
【0229】
また、上記光記録媒体18の製造方法では、光記録媒体18の片面にのみ光記録面(すなわち、光記録セル27を有する面)を形成しているが、これに限らず、光記録媒体18の両面に光記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、光記録媒体18の両面に対して実施されればよい。なお、光記録媒体18の両面に形成される光記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0230】
なお、本実施形態に係る光記録媒体18では、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とが同じ幅となるように形成されており、それぞれの円周方向の幅12w、13wは、60μmとなっている。なお、これら円周方向の幅12w、13wが20μm〜150μm程度となるように、光記録媒体18が形成されていればよい。
【0231】
〔光記録媒体18の記録再生方法〕
以下、光記録再生装置19が光記録媒体18に対して光情報を記録再生する方法について、図16及び図17を用いて説明する。図16は、光記録媒体18に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。なお、図16(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、光記録再生装置19が、第1の情報記録セル群12の光記録セル28Aから第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr12に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。また、図16(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、光記録再生装置19が、第2の情報記録セル群13の光記録セル29Aから第1の情報記録セル群12の方向に向かって、トラックTr13に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【0232】
光記録再生装置19は、光記録媒体18に記録された情報を再生するときには、記録再生ヘッド20の半導体レーザ光源26が、近接場光発生部22に対して、比較的弱いパワー(例えば、0.5mW)のレーザ光を照射する。そして、記録再生ヘッド20の受光素子21は、近接場光発生部22において発生した近接場光による、光記録媒体18の光記録セル27からの散乱光を検出する。光記録再生装置19は、受光素子21が検出する、光記録媒体18からの散乱光の強度を検出することで、光記録媒体18に記録された情報を再生することができる。
【0233】
また、光記録再生装置19は、光記録媒体18に情報を記録するときには、半導体レーザ光源26は、近接場光発生部22に対して、上記再生時におけるレーザ光のパワーよりも強いパワー(例えば、5mW)のレーザ光を照射する。このレーザ光が光記録媒体18の光記録セル27に照射されることにより、光記録セル27を形成する材料の結晶性が変化する。これにより、光記録再生装置19は、光記録セル27に情報を記録することができる。そして、光記録媒体18は、光記録セル27の結晶性を変化させることで、光記録再生装置19の近接場光発生部22で発生した再生時の近接場光による散乱光の強度を、光記録セル27毎に変化させることができる。
【0234】
まず、図16(a)に示す場合、すなわち、再生時におけるトラッキング制御に関し、光記録再生装置19が、光記録セル28Aから第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr12に沿って、信号を検出していく場合について考える。
【0235】
この場合、光記録再生装置19は、光記録媒体18を紙面右から左に回転させる。このため、受光素子21は、光記録セル28Aのような、トラックTr12に対して内周側(紙面の下側)にある光記録セル27と、光記録セル28Bのような、トラックTr12に対して外周側(紙面の上側)にある光記録セル27とを交互に検出していく。すなわち、本実施形態では、受光素子21は、光記録セル28Aから第2の情報記録セル群13に進入する直前までに、第1の情報記録セル群12における8個の光記録セル27からの信号を検出する。なお、この8個の光記録セル27には、受光素子21によって検出される順に、光記録セル28Aから、再生時の近接場光による散乱光の強度が弱、強、強、弱、強、強、強、弱となるように記録されているものとする。
【0236】
このように、受光素子21が、図16(a)に示す光記録媒体18のトラックTr12に沿って検出したときの信号の模式図を図17に示す。図17は、受光素子21が、図16(a)に示す光記録媒体18のトラックTr12に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図である。なお、図17(a)は、第2の情報記録セル群13においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出された検出信号Tr12sを示す模式図である。また、図17(b)は、記録再生ヘッド20が図16(a)に示すトラックTr12から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図であり、図17(c)は、記録再生ヘッド20が、図16(a)のトラックTr12から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【0237】
図17(a)では、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出される信号をそれぞれ、12s及び13sで示しており、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sについては、1つ目の光記録セル27に対応する検出信号のみを図示している。すなわち、検出信号13sについては、それ以降の光記録セル27から検出される信号についての図示を省略している。また、図17(a)において、検出信号12sが上に凸及び下に凸を示す波形はそれぞれ、光記録セル27に対して近接場光が照射されたときの散乱光の強度が強い場合及び弱い場合を示している。
【0238】
まず、記録再生ヘッド20が光記録媒体18のトラックTr12に対してオントラックである場合、検出信号12sのスライスレベル14からの振幅h1は、トラックTr12に対して内周側にある光記録セル27と外周側にある光記録セル27とで等しくなる。この場合、光記録再生装置19では、光記録媒体18に対する記録再生ヘッド20の半径位置を調整することなく、第1の情報記録セル群12から第2の情報記録セル群13に進入して検出信号13sを検出することにより、磁気記録セル11に記録された情報の再生を開始することが可能である。
【0239】
すなわち、図17(a)からわかるように、再生すべき領域(ここでは、第2の情報記録セル群13)に進入したときは、受光素子21が光記録セル27の直上を通過するため、検出信号13sの振幅h2が検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。このため、光記録再生装置19は、大きな振幅h2の検出信号13sをトリガーとして、この検出信号13sに対応する光記録セル27に記録された情報の再生を開始することができる。従って、第2の情報記録セル群13においては、光記録再生装置19は、トラッキング制御を行うことなく、光記録セル27に記録された情報の再生だけを行うことが可能である。
【0240】
なお、上記のスライスレベル14とは、光記録セル27での近接場光による散乱光の強度が強いときに検出される信号と、該強度が弱いときに検出される信号との中心値であって、誘電体層での近接場光による散乱光の強度を示す値を指す。
【0241】
次に、記録再生ヘッド20が光記録媒体18のトラックTr12に対してオフトラックである場合、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sは、図17(a)に示す場合と異なり、第1の情報記録セル群12の光記録セル27に対応する検出信号12sのピーク値がひとつおきに大きく又は小さくなる。
【0242】
すなわち、図17(b)に示すように、記録再生ヘッド20が、トラックTr12から内周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr12の内周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h3は、図17(a)に示す振幅h1よりも大きくなる。一方で、トラックTr12の外周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h4は、図17(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも小さくなる。従って、光記録再生装置19は、この検出信号12sの振幅差(h3−h4)を検出して、振幅h3と振幅h4とが等しく(すなわち、h3−h4=0)なるように、記録再生ヘッド20の半径位置を外周側にずらしてトラックTr12に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0243】
一方、図17(c)に示すように、記録再生ヘッド20が、トラックTr12から外周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr12の内周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h6は、図17(a)に示す振幅h1よりも小さくなる。一方で、トラックTr12の外周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h5は、図17(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。従って、光記録再生装置19は、この検出信号12sの振幅差(h5−h6)を検出して、振幅h5と振幅h6とが等しくなる(すなわち、h5−h6=0)ように、記録再生ヘッド20の半径位置を内周側にずらしてトラックTr12に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0244】
つまり、光記録再生装置19は、トラックTr12に対してオフトラックである場合であっても、第1の情報記録セル群12を通過する間にトラックTr12に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行う。このため、光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が第2の情報記録セル群13に進入すると、検出信号12sのピーク値よりも検出信号13sのピーク値が大きくなることをトリガーとして、トラックTr12の第2の情報記録セル群13の光記録セル27に記録された情報を再生する。そして、光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が再び第1の情報記録セル群12に進入すると、受光素子21が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、トラッキング制御用の信号検出を行う。すなわち、光記録再生装置19は、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、上述のように、受光素子21が検出する検出信号12sのピーク値が一定となるように、フィードバック制御を行う。
【0245】
従って、記録再生ヘッド20が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、光記録再生装置19は、よりオフトラック量の少ない状態で、所定トラックの第2の情報記録セル群13の光記録セル27に記録された情報を再生する。これにより、光記録再生装置19は、光記録媒体18にサーボパターン用の領域を形成することなく、光記録媒体18の光記録セル27に記録された情報を正確に再生することが可能となり、再生エラーを少なくすることができる。
【0246】
次に、光記録再生装置19が光記録媒体18の光記録セル27に情報を記録する場合について説明する。光記録再生装置19が記録時にトラッキング制御を行う場合については、上述した再生時の場合と同様に行うことができる。
【0247】
但し、記録時には、光記録再生装置19は、第1の情報記録セル群12からの検出信号12sをもとに、第2の情報記録セル群13の光記録セル27に情報を記録させるタイミングを求め、このタイミングでこの光記録セル27に情報を記録する必要がある。このタイミングを求め方については、例えば以下に示す方法がある。
【0248】
上述したように、光記録再生装置19が光記録媒体18を回転させているとき、記録再生ヘッド20の近接場光発生部22は、受光素子21が光記録媒体18の任意の位置を通過した後に、その位置を通過する構成となっている。従って、例えば光記録再生装置19は、第2の情報記録セル群13に記録再生ヘッド20が進入して、検出信号12sよりもピーク値の大きい検出信号13sを検出したことをトリガーとして、所定の時間経過後に、近接場光発生部22が情報記録用の近接場光を発生させる構成としてもよい。すなわち、光記録再生装置19は、検出信号13sを検出したときに、半導体レーザ光源26から照射されるレーザ光パワーを再生時よりも強いレーザ光パワーに切り替え、近接場光発生部22において再生時よりも強い近接場光を発生させる構成としてもよい。
【0249】
ここで、所定の時間とは、受光素子21が第2の情報記録セル群13に進入して、最初の光記録セル27のピーク値を検出してから、近接場光発生部22がこの光記録セル27を通過するときまでの時間を示している。この所定の時間は、例えば光記録媒体18の回転速度と、受光素子21及び近接場光発生部22の距離とから算出される。
【0250】
また、例えば光記録再生装置19は、第1の情報記録セル群12で検出した検出信号12sのピーク値をカウントしておくことによって、近接場光発生部22が第2の情報記録セル群13に進入するタイミングを求める構成であってもよい。
【0251】
光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が第2の情報記録セル群13から再び第1の情報記録セル群12に進入すると、受光素子21が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、トラッキング制御(上述したフィードバック制御)と記録タイミングの調整とを行う。すなわち、光記録再生装置19は、近接場光発生部22が再び第1の情報記録セル群12に進入して、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、第1の情報記録セル群12においてトラッキング制御と記録タイミング制御とを行う。
【0252】
従って、記録再生ヘッド20が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、光記録再生装置19は、オフトラック量(すなわち、記録したい光記録セル27との位置ずれ)がより少ない状態で、この光記録セル27に記録を行うことができる。すなわち、光記録再生装置19は、記録タイミング制御用の信号を検出するための領域を光記録媒体18に形成することなく、所望の光記録セル27への記録を正確に行うことが可能となり、記録エラーを少なくすることができる。
【0253】
なお、光記録再生装置19が第2の情報記録セル群13の光記録セル27に対して情報の記録再生を行うときには、受光素子21は、第1の情報記録セル群12の光記録セル27からトラッキング制御用の信号(すなわち、検出信号12s)を検出する。すなわち、光記録再生装置19は、光記録媒体18に2つの情報記録セル群が備えられているため、情報の記録再生を行うパターンとトラッキング制御用のパターンとを分けて信号検出を行う。
【0254】
これにより、受光素子21は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、光記録再生装置19は、検出される信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0255】
ここで、上記では、光記録再生装置19が第2の情報記録セル群13に対して記録再生を行う場合について説明したが、光記録再生装置19は、第1の情報記録セル群12に対して記録再生を行う場合も同様の制御を行う。この場合について、図16(b)を用いて説明する。
【0256】
すなわち、第1の情報記録セル群12に対する記録再生の場合、第2の情報記録セル群13に対する記録再生の場合とは逆に、第2の情報記録セル群13が、第1の情報記録セル群12のトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号が検出されるパターンとなる。
【0257】
図16(b)に示すように、光記録再生装置19は、光記録媒体18を紙面右から左に回転させる。このため、記録再生ヘッド20は、トラックTr13に沿って、第2の情報記録セル群13の光記録セル29A、29Bの順に、第1の情報記録セル群12の方向に光記録セル27からの信号を検出する。そして、光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が検出した各信号の振幅の偏差をなくすようにフィードバック制御を行うことによって、光記録媒体18の再生を行う。また、記録時には、光記録再生装置19は、第2の情報記録セル群13で検出される信号をもとに、トラッキング制御及び記録タイミング制御を行う。
【0258】
以上のように、光記録媒体18は、光記録再生装置19に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、記憶容量を低下させることなく、記録再生ヘッド20の位置合わせを高精度に行わせることができる。一方、光記録再生装置19は、光記録媒体18に対して記録再生を行う場合には、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができるため、従来の光記録媒体に対して記録再生を行う場合よりも、正確に記録再生を行うことができる。すなわち、光記録媒体18のユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーを少ない光記録再生装置19を提供することが可能となる。
【0259】
また、光記録媒体18は、上述のように、記録再生ヘッド20が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対して交互に進入を繰り返すため、光記録再生装置19に対して、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0260】
なお、本実施形態に係る光記録媒体18は、上述の実施形態1と同様、図6(a)に示すように、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、光記録媒体18は、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、光記録媒体18は、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。
【0261】
また、光記録媒体18は、上述の磁気記録媒体1a、1bと同様、ユーザデータ領域10に、情報の記録再生が行われるパターン(図16(a)では第2の情報記録セル群13)の各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えていてもよい。
【0262】
また、光記録再生装置19が光記録媒体18に対して再生を行う順番についても、様々な方法が考えられるが、例えば上述の実施形態1で説明した方法を適用することによって実現することができる。
【0263】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0264】
本発明に係る情報記録媒体は、例えばパターンドメディアのような高密度情報記録媒体に好適に利用できる。また、本発明に係る磁気記録再生装置及び光記録再生装置は、上記情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す磁気記録媒体に対して記録再生を行う磁気記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示す磁気記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す図である。
【図4】図1に示す磁気記録媒体に備えられた第1の情報記録セル群と第2の情報記録セル群との境界部分を示す図であり、同図(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図2に示す磁気記録再生装置が、第1の情報記録セル群の磁気記録セルから第2の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr1に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図であり、同図(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図2に示す磁気記録再生装置が、第2の情報記録セル群の磁気記録セルから第1の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr2に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【図5】図3に示す磁気再生素子が、図4(a)に示す磁気記録媒体のトラックTr1に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図であり、同図(a)は、第2の情報記録セル群においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群から検出された検出信号Tr1sを示す模式図であり、同図(b)は、図2に示す記録再生ヘッドが、図4(a)に示すトラックTr1から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図であり、同図(c)は、記録再生ヘッドが、図4(a)のトラックTr1から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【図6】図1に示す磁気記録媒体にセクタ分離パターンが設けられた場合の概略構成を示す図であり、同図(a)は、セクタ分離パターンを第1の情報記録セル群と第2の情報記録セル群との間に設けたときの磁気記録媒体の概略構成を示す図あり、同図(b)は、セクタ分離パターンを第2の情報記録セル群の任意の位置に設けたときの磁気記録媒体の概略構成を示す図ある。
【図7】本発明に係る他の実施形態に係る磁気記録媒体を示すものであり、ユーザデータ領域に磁気記録セルとアドレス領域とが形成された磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図8】図3に示す記録再生ヘッドが、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域の識別パターンから信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr3を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr3s(16s)を示す模式図であり、同図(b)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr4を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr4s(16s)を示す模式図である。
【図9】図7に示す磁気記録媒体の変形例を示すものであり、アドレス領域を有する磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図10】図3に示す記録再生ヘッドが、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域の識別パターン及び第2の情報記録セル群の磁気記録セルから信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr5を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr5sを示す模式図であり、同図(b)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr6を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr6sを示す模式図である。
【図11】本発明に係るさらに他の実施形態に係る磁気記録媒体を示すものであり、該磁気記録媒体の第2の情報記録セル群の概略構成を示す図である。
【図12】図3に示す記録再生ヘッドが、トラックTr11に沿って、図11に示す磁気記録媒体の第2の情報記録セル群の磁気記録セルから信号を検出したときの検出信号13sを示す模式図である。
【図13】図16に示す光記録媒体に対して記録再生を行う光記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図14】図13に示す光記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す説明図である。
【図15】図14に示す記録再生ヘッドの製造方法を示す説明図であり、同図(a)は、半導体レーザ光源が形成された様子を示す図であり、同図(b)は、受光素子と近接場光発生部とが形成された様子を示す図である。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る光記録媒体の概略構成を示すものであり、光記録媒体に備えられた第1の情報記録セル群と第2の情報記録セル群との境界部分を示す図であり、同図(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図13に示す光記録再生装置が、第1の情報記録セル群の磁気記録セルから第2の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr12に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図であり、同図(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図13に示す光記録再生装置が、第2の情報記録セル群の磁気記録セルから第1の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr13に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【図17】図14に示す受光素子が、図16(a)に示す光記録媒体のトラックTr12に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図であり、同図(a)は、第2の情報記録セル群においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群から検出された検出信号Tr12sを示す模式図であり、同図(b)は、図14に示す記録再生ヘッドが図16(a)に示すトラックTr12から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図であり、同図(c)は、図14に示す記録再生ヘッドが、図16(a)のトラックTr12から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【符号の説明】
【0266】
1、1a〜1c 磁気記録媒体(情報記録媒体)
2 磁気記録再生装置
7、20 記録再生ヘッド
8 磁気記録素子
9 磁気再生素子
10 ユーザデータ領域(データ領域)
11 磁気記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)
12 第1の情報記録セル群
13 第2の情報記録セル群
16、16b アドレス領域
18 光記録媒体(情報記録媒体)
19 光記録再生装置
21 受光素子
22 近接場光発生部(発光素子)
27 光記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)
Tr1〜Tr13 トラック
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンドメディアのような高密度に情報を記録可能な情報記録媒体に関する。また、本発明は、上記情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことが可能な磁気記録再生装置及び光記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像又は映像の高画質化が進み、ユーザが扱う情報量は益々増加している。このため、HDD(Hard Disk Drive)と呼ばれる磁気記録装置の大容量化に向けて、面記録密度の高密度化検討が広く行われている。この検討において、高密度磁気記録における有望な技術の一つとして、孤立した磁気記録セルを配列した磁気記録媒体(すなわち、非磁性材料の中に磁性粒子を等間隔で規則正しく並べた磁気記録媒体)であるパターンドメディアが挙げられる。このパターンドメディアの構成によれば、粒子間の磁気的な相互作用が少なくなるため、媒体雑音が低減し、記録密度の大幅な向上を図ることが可能である。
【0003】
従来の磁気記録媒体では、媒体面内方向に一様に(連続的に)形成された磁性層においては、記録マークのエッジが結晶粒の粒界位置となる。このため、微小な記録マークで高いS/N比(Signal to Noise Ratio)を確保するためには、結晶粒の大きさを小さくする必要がある。しかしながら、結晶粒の大きさを小さくすることに伴って磁化の最小単位体積が減少することにより、結晶粒内での磁化量が小さくなってしまう。この結果、従来の磁気記録媒体では、物性的な限界を示す熱揺らぎ等による磁化反転が生じやすくなるため、磁気情報が消失しやすくなってしまうという問題があった。すなわち、従来の磁気記録媒体では、記録された情報を安定状態に保つことが困難であった。
【0004】
一方、パターンドメディアでは、互いに磁気的に分離された磁気記録セルに磁気情報が記録されており、記録マークのエッジが磁気記録セルのエッジとなる。従って、上述した従来の磁気記録媒体とは異なり、高いS/N比を確保するために、磁化の最小単位体積を特別に小さくする必要がない。このため、パターンドメディアでは、熱揺らぎ等を回避しやすくなる(すなわち、熱揺らぎ等による磁化反転が生じにくくなる)ため、従来の磁気記録媒体よりも高い記録密度を実現できる。
【0005】
このようなパターンドメディアの技術として、例えば特許文献1、2が挙げられる。特許文献1には、データ信号記憶領域とトラッキングサーボ信号記憶領域とを含むパターンドメディアが開示されている。また、特許文献2には、ナノホールの規則配列の複数が交互に隣接してなり、隣接する該規則配列が互いに異なる構成を有するパターンドメディアが開示されている。
【0006】
特に、特許文献2の技術では、上記のようにナノホールを配列されたパターンドメディアに記録する磁気記録装置が、該パターンドメディアに対して容易にトラッキング制御を行うことができる。また、特許文献2では、上記磁気記録装置がトラッキング制御をより容易に行うことを可能とするために、任意の規則配列をデータ領域とし、該規則配列に隣接する他の規則配列をガードバンド領域とした構成を有するパターンドメディアについても開示している。この構成の場合、ガードバンド領域がトラッキング制御用の領域として機能している。
【特許文献1】特開2003−196815号公報(平成15年7月11日公開)
【特許文献2】特開2006−346820号公報(平成18年12月28日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パターンドメディアのような微小な磁気記録セルを有した高密度磁気記録媒体に形成された各トラック間のトラックピッチは、例えば50nm程度と非常に狭い。このため、パターンドメディアに記録再生を行う磁気記録再生装置に備えられた記録再生ヘッド(記録素子又は再生素子)が、所望のトラックに対してわずかなズレを生じただけで、記録エラー又は再生エラーが発生しやすくなってしまうという虞がある。
【0008】
一般に、磁気記録再生装置が磁気記録媒体に対してトラッキング制御を行うときの、磁気記録媒体の半径方向における記録再生ヘッドの位置決め要求精度は、トラックピッチの10%以下とされている。このため、パターンドメディアのように面記録密度が1Tb/in2 程度のとき、上記位置決め要求精度として、数nm程度の精度が要求されると考えられる。
【0009】
この要求を実現するために、上記磁気記録再生装置においてより正確なトラッキング制御を行う方法として、トラッキング用サーボパターンでの信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、上記信号検出頻度を高くするために、磁気記録媒体に単純にサーボパターンを形成する領域を増加させることは、ユーザデータの記憶容量(磁気記録媒体に記録される情報量)を低下させてしまう虞がある。
【0010】
また、パターンドメディアのような孤立した磁気記録セルを配列した磁気記録媒体においては、従来の磁気記録媒体とは異なり、予め形成される磁気記録セルが非常に小さい。一方で、磁気記録再生装置がこの磁気記録セルに情報の記録を行う場合には、磁気記録セルとタイミングを合わせる必要がある。つまり、非常に小さい磁気記録セルに情報の記録を行う場合には、従来の磁気記録再生装置よりもさらに高い精度で、磁気記録セルとの記録タイミングを合わせることが要求されると考えられる。
【0011】
この要求を実現するために、上記磁気記録再生装置において磁気記録セルとの記録タイミングの精度をより高める方法として、記録タイミング制御用の信号検出頻度を高くすることが考えられる。しかしながら、単純に記録タイミング制御用の信号を検出するための領域を磁気記録媒体に増加させることは、上記と同様に、ユーザデータの記録容量を低下させてしまう虞がある。
【0012】
なお、上記特許文献1の技術では、トラッキングサーボ信号記憶領域がデータ信号記憶領域とは別途設けられている。すなわち、特許文献1の技術では、上述のように、ユーザデータの記憶容量を低下させてしまう虞がある。
【0013】
一方、上記特許文献2の技術では、磁気記録装置がより容易にトラッキング制御を行うためには、トラッキング制御用の領域としてガードバンド領域を設ける必要がある。すなわち、この場合にも特許文献1と同様、ユーザデータの記憶容量を低下させてしまう虞がある。また、特許文献2の技術においてガードバンド領域を設けない構成の場合、磁気記録装置によるトラッキング制御の精度は、ガードバンド領域を設けた構成の場合よりも低下してしまう。このため、特許文献2の技術では、ガードバンド領域を設けずにトラッキング制御の精度をより向上させることは困難である。
【0014】
また、上記では磁気記録媒体について説明したが、光を照射することによって情報の記録再生が行われる光記録媒体についても、面記録密度の高密度化を検討する場合には、磁気記録媒体と同様の問題が生じる。また、この光記録媒体に対しては、光記録再生装置が情報の記録再生を行っているものとする。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターンドメディアのような高密度情報記録媒体において、ユーザデータの記憶容量を低下させることなく、情報記録再生装置に対してトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を高精度に検出させることが可能な情報記録媒体を提供することにある。また、本発明の目的は、この情報記録媒体に記録再生を行うことにより、記録再生ヘッドの位置決め精度及び記録タイミング精度を向上させることが可能な(すなわち、記録エラー及び再生エラーの少ない)磁気記録再生装置又は光記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る情報記録媒体は、上記課題を解決するため、互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ領域を有する情報記録媒体であって、上記データ領域は、上記情報記録媒体の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を備え、上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群にそれぞれ含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、情報記録媒体は、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群をデータ領域に備えている。上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群に含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されている。また、上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群は、情報記録媒体の円周方向において交互に、かつ、第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置が、第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なるように配置されている。
【0018】
ここで、情報記録セルが「隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されて」いるとは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、情報記録セルの円周方向における周方向位置と、該情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された情報記録セルの周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラック上で隣り合った2つの情報記録セル間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックに形成された情報記録セルが1つ存在することである。
【0019】
なお、「円周方向における周方向位置」とは、情報記録媒体の周方向における位置を指し、「半径方向における半径位置」とは、磁気記録媒体1の半径方向における半径位置を指す。
【0020】
これにより、情報記録媒体は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群のパターンから検出される信号を、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う情報記録再生装置に対して、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させることができる。よって、情報記録媒体は、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、データ領域を減少させることなく、情報記録再生装置に記録再生ヘッドの位置合わせを高精度に行わせることができる。また、情報記録媒体は、上述のように、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を交互に備えているため、情報記録再生装置に対して、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0021】
従って、情報記録媒体は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【0022】
なお、上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅は任意に設定されてもよい。これにより、情報記録媒体は、情報記録再生装置に、任意の頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0023】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なってもよい。
【0024】
上記構成によれば、情報記録媒体は、記憶領域を低下させることなく、情報記録再生装置に対して、より高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。
【0025】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであってもよい。
【0026】
上記構成によれば、情報記録媒体は、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルを備えた磁気記録媒体である。情報記録媒体は、磁気記録媒体であっても、上記と同様、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。ここでの情報記録再生装置とは、磁気記録セルに対して情報の記録再生を行うことが可能な、例えば磁気記録再生装置である。
【0027】
なお、上記と同様、上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅は任意に設定されてもよい。これにより、情報記録媒体は、情報記録再生装置に、任意の頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0028】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えてもよい。
【0029】
上記構成によれば、アドレス領域を備えることにより、情報記録再生装置の記録再生ヘッドが情報記録媒体のどのトラック上にあるのか(すなわち、どのトラック上の情報記録セルから信号検出を行っているのか)を、該情報記録再生装置に特定させることができる。これにより、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0030】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、上記第1の情報記録セルの円周方向における周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なってもよい。
【0031】
上記構成によれば、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離と、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離とが異なる。また、第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックに形成された2つの情報記録セルとの円周方向における距離についても、同様の関係にある。そして、第1の情報記録セルの周方向位置は、第3の情報記録セルの周方向位置と異なっている。
【0032】
このため、情報記録再生装置によってトラッキング制御が行われるときに検出される信号の波形は、トラックの内周側の情報記録セルと外周側の情報記録セルとで異なることとなる。従って、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、上記信号の波形の違いによって、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を備えた記録再生ヘッドと、を備えた磁気記録再生装置であって、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行ってもよい。
【0034】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、磁気再生素子及び磁気記録素子を備えた記録再生ヘッドを備えており、この記録再生ヘッドを上述の情報記録媒体の半径方向に移動させることにより、該情報記録媒体の所定の位置に対して情報の記録再生を行う。このとき、磁気記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録再生を行うかによって、磁気再生素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。そして、磁気記録再生装置は、トラッキング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対してトラッキング制御を行う。
【0035】
これにより、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、該情報記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。また、磁気記録再生装置が上述の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことにより、磁気再生素子は、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0036】
従って、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度にトラッキング制御を行うことができ、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができる。
【0037】
なお、上述の情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、磁気記録再生装置は、任意の頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0038】
また、磁気再生素子は、情報の記録再生を行うパターンとは別のパターンの情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。すなわち、磁気記録再生装置が例えば第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うときには、磁気再生素子は、第1の情報記録セル群の情報記録セルからトラッキング制御用の信号を検出する。
【0039】
これにより、磁気再生素子は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、磁気記録再生装置は、検出した信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0040】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行ってもよい。
【0041】
上記構成によれば、磁気記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録を行うかによって、磁気再生素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、記録タイミング制御用の信号を検出する。そして、磁気記録再生装置は、記録タイミング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対して記録タイミング制御(記録タイミングの調整)を行う。
【0042】
従って、磁気記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度に記録タイミング制御を行うことができ、記録エラーを少なくすることができる。
【0043】
なお、上述の情報記録媒体の上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、磁気記録再生装置は、任意の頻度で記録タイミング制御用の信号を検出することができる。
【0044】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、を含み、上記磁気再生素子の円周方向における空間分解可能幅Swとし、上記第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離Dとするとき、Sw<Dであってもよい。
【0045】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出するときに、各々の情報記録セルから検出される信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーが生じにくくすることができる。
【0046】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行ってもよい。
【0047】
上記構成よれば、磁気記録再生装置は、磁気記録素子と磁気再生素子との半径方向における距離が、所定の値(例えば、磁気記録素子と磁気再生素子との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0048】
さらに、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記距離検出動作は、上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、該磁気記録素子と該磁気再生素子との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含んでもよい。
【0049】
上記構成によれば、磁気記録再生装置は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。これにより、磁気記録再生装置は、記録再生ヘッドの個体差に起因した磁気記録素子のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。
【0050】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであってもよい。
【0051】
上記構成によれば、情報記録媒体は、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルを備えた光記録媒体である。情報記録媒体は、光記録媒体であっても、上記と同様、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、上記情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。ここでの情報記録再生装置とは、光記録セルに対して情報の記録再生を行うことが可能な、例えば光記録再生装置である。
【0052】
なお、上記と同様、上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅は任意に設定されてもよい。これにより、情報記録媒体は、情報記録再生装置に、任意の頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0053】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えてもよい。
【0054】
上記構成によれば、アドレス領域を備えることにより、情報記録再生装置の記録再生ヘッドが情報記録媒体のどのトラック上にあるのか(すなわち、どのトラック上の情報記録セルから信号検出を行っているのか)を、該情報記録再生装置に特定させることができる。これにより、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0055】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、上記第1の情報記録セルの周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なってもよい。
【0056】
上記構成によれば、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離と、第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある第2の情報記録セルとの円周方向における距離とが異なる。また、第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックに形成された2つの情報記録セルとの円周方向における距離についても、同様の関係にある。そして、第1の情報記録セルの周方向位置は、第3の情報記録セルの周方向位置と異なっている。
【0057】
このため、情報記録再生装置によってトラッキング制御が行われるときに検出される信号の波形は、トラックの内周側の情報記録セルと外周側の情報記録セルとで異なることとなる。従って、情報記録媒体は、上記記録再生ヘッドがオフトラックである場合であっても、上記信号の波形の違いによって、情報記録再生装置にそのオフトラックの方向を特定させることができる。
【0058】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う発光素子及び受光素子と備えた記録再生ヘッドと、を備えた光記録再生装置であって、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行ってもよい。
【0059】
上記構成によれば、光記録再生装置は、発光素子及び受光素子を備えた記録再生ヘッドを備えており、この記録再生ヘッドを上述の情報記録媒体の半径方向に移動させることにより、該情報記録媒体の所定の位置に対して情報の記録再生を行う。このとき、光記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録再生を行うかによって、受光素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。そして、光記録再生装置は、トラッキング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対してトラッキング制御を行う。
【0060】
これにより、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体がトラッキング制御用の信号検出のみのためのパターンを設ける必要がないため、該情報記録媒体に対して、高精度に記録再生ヘッドの位置合わせを行うことができる。また、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行うことにより、受光素子は、高い頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0061】
従って、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度にトラッキング制御を行うことができ、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができる。
【0062】
なお、上述の情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、光記録再生装置は、任意の頻度でトラッキング制御用の信号を検出することができる。
【0063】
また、受光素子は、情報の記録再生を行うパターンとは別のパターンの情報記録セルから、トラッキング制御用の信号を検出する。すなわち、光記録再生装置が例えば第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うときには、受光素子は、第1の情報記録セル群の情報記録セルからトラッキング制御用の信号を検出する。
【0064】
これにより、受光素子は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、光記録再生装置は、検出した信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がない必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0065】
さらに、本発明に係る光記録再生装置は、上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、又は、上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行ってもよい。
【0066】
上記構成によれば、光記録再生装置が、情報記録媒体の第1の情報記録セル群及び第2情報記録セル群の何れに対して情報の記録を行うかによって、受光素子は、第1の情報記録セル群又は第2の情報記録セル群の情報記録セルから、記録タイミング制御用の信号を検出する。そして、光記録再生装置は、記録タイミング制御用の信号の波形をもとに、例えば記録再生ヘッドがオフトラックである場合にはフィードバック制御を行うことにより、情報記録媒体に対して記録タイミング制御(記録タイミングの調整)を行う。
【0067】
従って、光記録再生装置は、上述の情報記録媒体に対して、高精度に記録タイミング制御を行うことができ、記録エラーを少なくすることができる。
【0068】
なお、上述の情報記録媒体の上記第1の情報記録セル群及び第2記録セル群の円周方向に対する幅が任意に設定されている場合には、光記録再生装置は、任意の頻度で記録タイミング制御用の信号を検出することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明に係る情報記録媒体は、以上のように、上記データ領域は、上記情報記録媒体の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を備え、上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群にそれぞれ含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なる構成である。
【0070】
それゆえ、情報記録媒体は、狭トラックピッチ及び高線記録密度であっても記憶領域を低下させることなく、情報記録再生装置に対して、高精度にトラッキング制御及び記録タイミング制御を行わせることができる。すなわち、情報記録媒体は、再生エラー及び記録エラーの少ない情報記録再生装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すると以下の通りである。
【0072】
〔磁気記録再生装置2の概略構成〕
図2は、本発明に係る磁気記録媒体(情報記録媒体)1に対して記録再生を行う磁気記録再生装置2の概略構成を示す図である。磁気記録再生装置2は、図2に示すように、サスペンション3と、スピンドル4と、ボイスコイルモーター5と、ランプ機構6と、記録再生ヘッド7とを備えている。また、図2では、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を備えた構成となっている。なお、磁気記録媒体1の構造、及び磁気記録再生装置2による磁気記録媒体1の記録再生方法については、後に詳述する。
【0073】
サスペンション3は、後述のボイスコイルモーター5に固定されており、ボイスコイルモーター5と反対側の先端に、磁気記録媒体1に対して磁界を印加する記録再生ヘッド7を備えている。
【0074】
スピンドル4は、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体1を反時計周り(図2の矢印方向)に回転させるものである。なお、磁気記録媒体1の中心部にはスピンドル4と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0075】
ボイスコイルモーター5は、サスペンション3に備えられた記録再生ヘッド7が磁気記録媒体1の半径方向に磁気記録媒体1上を移動できるように、サスペンション3を移動させるものである。すなわち、記録再生ヘッド7は、ボイスコイルモーター5の作動に応じて、磁気記録媒体1に対する半径方向における半径位置を変更させることができる。
【0076】
ランプ機構6は、磁気記録媒体1に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド7が退避する場所(すなわち、記録再生ヘッド7を固定される場所)である。
【0077】
記録再生ヘッド7は、磁気記録媒体1に情報の記録再生を行うときに、磁気記録媒体1に対して磁界を印加するものである。これにより、例えば、磁気記録媒体1の磁気記録セル11(後述)の磁化方向を決定することができる。具体的には、記録再生ヘッド7は、図3に示すように、磁気記録媒体1に近い面に、垂直磁気記録媒体用の磁気記録素子8と磁気再生素子9とを備えている。図3は、磁気記録再生装置2の記録再生ヘッド7の概略構成を示す図である。
【0078】
磁気記録素子8は、磁気記録媒体1に情報を記録するときに記録可能な強度の磁界を、該磁気記録媒体1に印加するものである。同様に、磁気再生素子9は、磁気記録媒体1から情報を読み出して再生するときに再生可能な強度の磁界を、該磁気記録媒体1に印加するものである。
【0079】
なお、磁気記録素子8と磁気再生素子9との磁気記録媒体1から見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド7が回転する磁気記録媒体1の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子9が先に通過し、磁気記録素子8がその後に通過するような位置関係となっている。
【0080】
以上のように、磁気記録再生装置2は、スピンドル4及びサスペンション3の動作と、記録再生ヘッド7による磁界の印加とを制御することにより、磁気記録媒体1の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0081】
〔磁気記録媒体1の概略構成及び製造方法〕
次に、図2に示す磁気記録再生装置2に備えられた磁気記録媒体1について図1及び図4を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体1の概略構成を示す図である。また、図4は、磁気記録媒体1に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。
【0082】
磁気記録媒体1は、孤立した磁気記録セルを配列したパターンドメディアであり、図1に示すように、ユーザデータ領域(データ領域)10と、磁気記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)11と、第1の情報記録セル群12と、第2の情報記録セル群13とを備えている。また、図1に示す12w、13wは、それぞれ第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13の、磁気記録媒体1の円周方向に対する幅を示している。
【0083】
磁気記録セル11は、ユーザデータ領域10に孤立して配列された円柱状のセルであり、磁気記録再生装置2によって磁気情報が記録再生されるものである。また、磁気記録セル11は、所定のトラックピッチ(例えば、50nm)で隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配置されている。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1の磁気記録セル11の大きさは、直径25nm及び高さ40nmとなっているが、これに限らず、直径5nm〜45nm及び高さが10nm〜60nmとなっていればよい。
【0084】
ここで、磁気記録セル11が「隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配置されている」とは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、磁気記録セル11の円周方向における周方向位置(磁気記録媒体1の円周方向における位置)と、該磁気記録セル11が形成されたトラックと隣接するトラックに形成された磁気記録セル11の周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラック上で隣り合った2つの磁気記録セル11間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックに形成された磁気記録セル11が1つ存在することである。但し、磁気記録媒体1の最外周及び最内周のトラックに関しては、このトラックの外側又は内側に隣接するトラックが存在しない。また、ユーザデータ領域10において、磁気記録セル11が形成されていない領域は、非磁性体によって形成されている。
【0085】
上記のように配置された複数の磁気記録セル11は、図1に示すように、磁気記録媒体1の円周方向に対する幅12wを有する第1の情報記録セル群12と、磁気記録媒体1の円周方向に対する幅13wを有する第2の情報記録セル群13とを形成している。そして、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とは、磁気記録媒体1の円周方向に対して交互になるように配置されている。また、複数の磁気記録セル11が形成される各トラック間のトラックピッチは、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群の各トラックにおいて等しくなるように形成されている。
【0086】
さらに、交互に配置された第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13において、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径方向における半径位置は、図3に示すように、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なっている。本実施形態に係る磁気記録媒体1では、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置は、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11が形成される各トラック位置の半径位置より半分だけ外周側に配置されている。ここで、「半径方向における半径位置」とは、磁気記録媒体1の半径方向における半径位置を指す。
【0087】
なお、磁気記録セル11の形状は、円柱状に限られるものではなく、例えば四角柱状、楕円柱状、球状等であってもよく、孤立した磁気記録セル11に磁気情報が記録できれば形状であればどのような形状であってもよい。また、磁気記録媒体1では、任意の磁気記録セル11は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置となるように形成されている。
【0088】
また、磁気記録媒体1の回転方向は、図1及び図4に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1に配列された磁気記録セル11に対して紙面左から順に信号検出していく。また、磁気記録媒体1は、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで、情報が記録されるタイプの媒体である。
【0089】
以下、磁気記録媒体1の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上に軟磁性層を形成した後、この軟磁性層上にレジストを塗布する。次に、電子線リソグラフィー法によって、レジストに微細パターンを形成した後、磁気記録セル11を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した磁気記録セル11を形成する材料とを除去した後、この基板上に非磁性層を成膜する。そして、この基板の非磁性層側から研磨を行うことで、磁気記録セル11を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、磁気記録セル11が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0090】
上記磁気記録媒体1の製造方法では、磁気記録セル11を形成する材料としては、例えば、Co、Pt、Fe、Ni、Cr、Mn又はこれらの金属からなる合金が挙げられる。また、上記合金としては、例えば、CoPt、SmCo、CoCr又はTbFeCo合金を用いることができる。さらに、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば、陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。
【0091】
また、上記磁気記録媒体1の製造方法では、磁気記録媒体1の片面にのみ磁気記録面(すなわち、磁気記録セル11を有する面)を形成しているが、これに限らず、磁気記録媒体1の両面に磁気記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、磁気記録媒体1の両面に対して実施されればよい。なお、磁気記録媒体1の両面に形成される磁気記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0092】
なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1では、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とが同じ幅となるように形成されており、それぞれの円周方向の幅12w、13wは、50μmとなっている。なお、これら円周方向の幅12w、13wが10μm〜100μmとなるように、磁気記録媒体1が形成されていればよい。なお、実施形態2、3に係る磁気記録媒体1a、1b、1cについても、同様に構成されている。
【0093】
〔磁気記録媒体1の記録再生方法〕
以下、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して磁気情報を記録再生する方法について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、磁気記録媒体1に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。なお、図4(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、磁気記録再生装置2が、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル12Aから第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr1に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。また、図4(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、磁気記録再生装置2が、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル13Aから第1の情報記録セル群12の方向に向かって、トラックTr2に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【0094】
図4(a)に示すように、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を紙面右から左に回転させる。このため、磁気再生素子9は、磁気記録セル12Aのような、トラックTr1に対して内周側(紙面の下側)にある磁気記録セル11と、磁気記録セル12Bのような、トラックTr1に対して外周側(紙面の上側)にある磁気記録セル11とを交互に検出していく。すなわち、本実施形態では、磁気再生素子9は、磁気記録セル12Aから第2の情報記録セル群13に進入する直前までに、第1の情報記録セル群12における8個の磁気記録セル11(12A、12Bを含む)からの信号を検出する。なお、この8個の磁気記録セル11は、磁気再生素子9によって検出される順に、磁気記録セル12Aから、下(紙面手前から奥方向)、上(紙面奥から手前方向)、上、下、上、上、上、下の方向に磁化しているものとする。
【0095】
このように、磁気再生素子9が、図4(a)に示す磁気記録媒体1のトラックTr1に沿って検出したときの信号の模式図を図5に示す。図5は、磁気再生素子9が、図4(a)に示す磁気記録媒体1のトラックTr1に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図である。なお、図5(a)は、第2の情報記録セル群13においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出された検出信号Tr1sを示す模式図である。また、図5(b)は、記録再生ヘッド7が、図4(a)に示すトラックTr1から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図であり、図5(c)は、記録再生ヘッド7が、図4(a)のトラックTr1から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【0096】
図5(a)では、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出される信号をそれぞれ、12s及び13sで示しており、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sについては、1つ目の磁気記録セル11に対応する検出信号のみを図示している。すなわち、検出信号13sについては、それ以降の磁気記録セル11から検出される信号についての図示を省略している。また、図5(a)において、検出信号12sが上に凸及び下に凸を示す波形はそれぞれ、磁気記録セル11が上方向及び下方向に磁化していることを示している。
【0097】
まず、記録再生ヘッド7が磁気記録媒体1のトラックTr1に対してオントラックである場合、検出信号12sのスライスレベル14からの振幅h1は、トラックTr1に対して内周側にある磁気記録セル11と外周側にある磁気記録セル11とで等しくなる。この場合、磁気記録再生装置2では、磁気記録媒体1に対する記録再生ヘッド7の半径位置を調整することなく、第1の情報記録セル群12から第2の情報記録セル群13に進入して検出信号13sを検出することにより、磁気記録セル11に記録された情報の再生を開始することが可能である。
【0098】
すなわち、図5(a)からわかるように、再生すべき領域(ここでは、第2の情報記録セル群13)に進入したときは、磁気再生素子9が磁気記録セル11の直上を通過するため、検出信号13sの振幅h2が検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。このため、磁気記録再生装置2は、大きな振幅h2の検出信号13sをトリガーとして、この検出信号13sに対応する磁気記録セル11に記録された情報の再生を開始することができる。従って、第2の情報記録セル群13においては、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御を行うことなく、磁気記録セル11に記録された情報の再生だけを行うことが可能である。
【0099】
なお、上記のスライスレベル14とは、磁気記録セル11の磁化上向きのときに検出される信号と、磁気記録セル11の磁化下向きのときに検出される信号との中心値を指すものである。また、オントラックとは、記録再生ヘッド7の半径位置がトラックの半径位置の中心とほぼ一致して、磁気記録再生装置2が所定の磁気記録セル11から記録された情報を読み出すことが可能な状態を指す。一方、後述のオフトラックとは、記録再生ヘッド7の半径位置がトラックの半径位置の中心からずれて、磁気記録再生装置2が所定の磁気記録セル11から記録された情報を正しく読み出すことが難しい状態を指す。
【0100】
次に、記録再生ヘッド7が磁気記録媒体1のトラックTr1に対してオフトラックである場合、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sは、図5(a)に示す場合と異なり、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11に対応する検出信号12sのピーク値がひとつおきに大きく又は小さくなる。
【0101】
すなわち、図5(b)に示すように、記録再生ヘッド7が、トラックTr1から内周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr1の内周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h3は、図5(a)に示す振幅h1よりも大きくなる。一方で、トラックTr1の外周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h4は、図5(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも小さくなる。従って、磁気記録再生装置2は、この検出信号12sの振幅差(h3−h4)を検出して、振幅h3と振幅h4とが等しく(すなわち、h3−h4=0)なるように、記録再生ヘッド7の半径位置を外周側にずらしてトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0102】
一方、図5(c)に示すように、記録再生ヘッド7が、トラックTr1から外周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr1の内周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h6は、図5(a)に示す振幅h1よりも小さくなる。一方で、トラックTr1の外周側にある磁気記録セル11に対応する検出信号12sの振幅h5は、図5(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。従って、磁気記録再生装置2は、この検出信号12sの振幅差(h5−h6)を検出して、振幅h5と振幅h6とが等しくなる(すなわち、h5−h6=0)ように、記録再生ヘッド7の半径位置を内周側にずらしてトラックTr1に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0103】
つまり、磁気記録再生装置2は、トラックTr1に対してオフトラックである場合であっても、第1の情報記録セル群12を通過する間にトラックTr1に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行う。そして、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13に進入すると、磁気再生素子9が検出する信号のピーク値が大きくなることをトリガーとして、トラックTr1の第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に記録された情報を再生する。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気再生素子9が第2の情報記録セル群13に進入して、検出信号12sよりもピーク値の大きい検出信号13sを検出したことをトリガーとして、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に記録された情報を再生する。
【0104】
一方、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が再び第1の情報記録セル群12に進入すると、磁気再生素子9が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、再びトラッキング制御を行う。すなわち、磁気記録再生装置2は、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、上述のように、磁気再生素子9が検出する検出信号12sのピーク値が一定となるように、フィードバック制御を行う。
【0105】
従って、記録再生ヘッド7が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、磁気記録再生装置2は、よりオフトラック量の少ない状態で、所定トラックの第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に記録された情報を再生する。これにより、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1にサーボパターン用の領域を形成することなく、磁気記録媒体1の磁気記録セル11に記録された情報を正確に再生することが可能となり、再生エラーを少なくすることができる。
【0106】
次に、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1の磁気記録セル11に情報を記録する場合について説明する。磁気記録再生装置2が記録時にトラッキング制御を行う場合については、上述した再生時の場合と同様に行うことができる。
【0107】
但し、記録時には、磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12からの検出信号12sをもとに、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に情報を記録させるタイミングを求め、このタイミングでこの磁気記録セル11に情報を記録する必要がある。このタイミングを求める方法については、例えば以下に示す方法がある。
【0108】
上述したように、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1を回転させているとき、記録再生ヘッド7の磁気記録素子8は、磁気再生素子9が磁気記録媒体1の任意の位置を通過した後に、その位置を通過する構成となっている。従って、例えば磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13に磁気再生素子9が進入して、検出信号12sよりもピーク値の大きい検出信号13sを検出したことをトリガーとして、所定の時間経過後に、磁気記録素子8が記録磁界を印加する構成としてもよい。
【0109】
ここで、所定の時間とは、磁気再生素子9が第2の情報記録セル群13に進入して、最初の磁気記録セル11のピーク値を検出してから、磁気記録素子8がこの磁気記録セル11を通過するときまでの時間を示している。この所定の時間は、例えば磁気記録媒体1の回転速度と、磁気記録素子8及び磁気再生素子9の距離とから算出される。
【0110】
また、例えば磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12で検出した検出信号12sのピーク値をカウントしておくことによって、磁気記録素子8が第2の情報記録セル群13に進入するタイミングを求める構成であってもよい。
【0111】
なお、記録時において、磁気記録素子8は、例えば同一方向(任意の方向でよい)への記録磁界を連続して発生させる構成であってもよい。また、この構成において、磁気記録素子8がスペース領域(ユーザデータ領域10における磁気記録セル11が存在しない非磁性層)に進入した場合には、磁界を発生させないようにしてもよい。一方、磁気記録素子8は、異なる方向への記録磁界を発生させる構成であってもよい。この場合、磁気記録素子8は、スペース領域において一旦発生磁界を0にすると共に、次に進入する磁気記録セル11において所定の方向に磁界を発生させるようにしてもよい。また、磁気記録素子8は、発生する磁界の方向を瞬間的に変化させる構成であってもよい。
【0112】
磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13から再び第1の情報記録セル群12に進入すると、磁気記録素子8が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、トラッキング制御(上述したフィードバック制御)と記録タイミングの調整とを行う。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気再生素子9が再び第1の情報記録セル群12に進入して、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、第1の情報記録セル群12においてトラッキング制御と記録タイミング制御とを行う。
【0113】
従って、記録再生ヘッド7が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、磁気記録再生装置2は、オフトラック量(すなわち、記録したい磁気記録セル11との位置ずれ)がより少ない状態で、この磁気記録セル11に記録を行うことができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、記録タイミング制御用の信号を検出するための領域を磁気記録媒体1に形成することなく、所望の磁気記録セル11への記録を正確に行うことが可能となり、記録エラーを少なくすることができる。
【0114】
なお、磁気記録再生装置2は、検出信号13sを検出することによって、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11への記録タイミング(すなわち、磁気記録素子8の記録磁界発生のタイミング)を求めてもよい。しかしながら、磁気記録再生装置2は、上述のように、検出信号12sを検出することによって記録タイミングを求める構成であれば、記録時にフィードバック制御を行う必要がない。
【0115】
また、上述のように、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11に対して情報の記録再生を行うときには、磁気再生素子9は、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11からトラッキング制御用の信号(すなわち、検出信号12s)を検出する。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1に2つの情報記録セル群が備えられているため、情報の記録再生を行うパターンとトラッキング制御用のパターンとを分けて信号検出を行う。
【0116】
これにより、磁気再生素子9は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、磁気記録再生装置2は、検出される信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0117】
ここで、上記では、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13に対して記録再生を行う場合について説明したが、磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12に対して記録再生を行う場合も同様の制御を行う。この場合について、図4(b)を用いて説明する。
【0118】
すなわち、第1の情報記録セル群12に対する記録再生の場合、第2の情報記録セル群13に対する記録再生の場合とは逆に、第2の情報記録セル群13が、第1の情報記録セル群12のトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号が検出されるパターンとなる。
【0119】
図4(b)に示すように、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を紙面右から左に回転させる。このため、記録再生ヘッド7は、トラックTr2に沿って、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル13A、13Bの順に、第1の情報記録セル群12の方向に磁気記録セル11からの信号を検出する。そして、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が検出した各信号の振幅の偏差をなくすようにフィードバック制御を行うことによって、磁気記録媒体1の再生を行う。また、記録時には、磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13で検出される信号をもとに、トラッキング制御及び記録タイミング制御を行う。
【0120】
以上のように、磁気記録媒体1は、磁気記録再生装置2に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、記憶容量を低下させることなく、記録再生ヘッド7の位置合わせを高精度に行わせることができる。一方、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1に対して記録再生を行う場合には、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができるため、従来の磁気記録媒体に対して記録再生を行う場合よりも、正確に記録再生を行うことができる。すなわち、磁気記録媒体1のユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0121】
また、磁気記録媒体1は、上述のように、記録再生ヘッド7が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対して交互に進入を繰り返すため、磁気記録再生装置2に対して、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0122】
なお、第1の情報記録セル群12の円周方向に対する幅12wと第2の情報記録セル群13の円周方向に対する幅13wとの変更にあわせて、トラッキング制御及び記録タイミング制御の検出頻度を任意に設定してもよい。例えば、上記幅12wと13wとをより狭く形成することによって、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号の検出頻度を上げて記録再生を行うことができるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを発生しにくくなる。従って、この場合には、磁気記録媒体1のユーザデータ領域10の記憶容量をより低下させることなく、記録エラー及び再生エラーをより少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0123】
ここで、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して再生を行う順番については、様々な方法が考えられるが、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0124】
1つの方法として、第1の情報記録セル群12に含まれるトラックと、第2の情報記録セル群13に含まれるトラックとを、交互に再生する場合が考えられる。この場合、磁気記録再生装置2は、次のトラックの再生に移行するときに、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13のトラックピッチの半分だけ、記録再生ヘッド7を内周側又は外周側に移動させるように対応する。
【0125】
また、もう1つの方法としては、磁気記録媒体1の任意の半径方向の範囲及び/又は円周方向の範囲において、第1の情報記録セル群12に含まれるトラックを連続して再生した後、第2の情報記録セル群13に含まれるトラックを連続して再生する場合が考えられる。この場合、磁気記録再生装置2は、第1の情報記録セル群12におけるトラックピッチ分だけ、記録再生ヘッド7を内周側又は外周側に移動させた後、第2の情報記録セル群13を第1の情報記録セル群12と同様に制御して、磁気記録媒体1の再生を行うように対応する。
【0126】
なお、上記では、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して再生を行う順番についての一例を説明したが、この方法は、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1に対して記録を行う場合にも適用することができる。
【0127】
上記では、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径位置が、第1の情報記録セル群12の各トラックの半径位置に対して、トラックピッチの半分だけ異なるように配置されている磁気記録媒体1の構成について説明した。しかしながら、磁気記録媒体1の構成はこれに限られたものではなく、上記第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との配置関係がトラックピッチの半分から僅かにずれている構成であってもよい。この構成の場合、磁気記録再生装置2は、例えば以下のように動作することによって、トラッキング制御を行うことが考えられる。
【0128】
まず、磁気記録再生装置2は、任意の記録再生ヘッド7の位置(磁気記録媒体1の半径位置)において、磁気記録素子8による記録動作と磁気再生素子9による再生動作とを行い、磁気再生素子9が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置2は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド7の半径位置毎に繰り返し行う。
【0129】
すなわち、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7を磁気記録媒体1の任意の半径位置に移動させ、上記記録動作を行った後に上記再生動作を行い、このとき検出される再生信号のエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置2は、同様の動作を、磁気記録媒体1の各半径位置に対して繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置2は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置とを記憶する。また、磁気記録再生装置2には、備えられる磁気記録媒体1のトラックピッチTPが予め記憶されている。
【0130】
次に、磁気記録再生装置2は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小エラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r1と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r2とを決定する。すなわち、磁気記録再生装置2は、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r2とする。磁気記録再生装置2は、決定した半径位置r1、r2及び記憶しているトラックピッチTPから、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との半径方向における距離を(TP/2−(r1−r2))と決定する。
【0131】
そして、磁気記録再生装置2は、決定した上記距離(TP/2−(r1−r2))を記憶した後、磁気再生素子9がこの距離分だけオフトラックした状態のときの、奇数番目と偶数番目の磁気記録セル11からの信号振幅の差を求めて記憶する。磁気記録再生装置2は、この記録した信号振幅の差をもとに、記録再生時のトラッキング制御を行う。
【0132】
つまり、磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13から検出される信号を用いて、第1の情報記録セル群12における記録再生時のトラッキング制御を行う場合、第2の情報記録セル群13で検出される信号から得られる奇数番目と偶数番目との磁気記録セル11からの信号振幅の差が、上記信号振幅の差となるように記録再生ヘッド7の位置に対するフィードバック制御を行う。
【0133】
従って、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との配置関係がトラックピッチの半分から僅かにずれている構成であっても、記録エラー及び再生エラーを少なくすることができ、正確に記録再生を行うことができる。すなわち、磁気記録媒体1は、上記構成であっても、ユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することができる。
【0134】
〔磁気記録媒体1の変形例〕
ここで、上記磁気記録媒体1の変形例について図6を用いて説明する。図6は、セクタ分離パターン15が設けられた磁気記録媒体1の概略構成を示す図であり、同図(a)は、セクタ分離パターン15を第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との間に設けたときの磁気記録媒体1の概略構成を示す図あり、同図(b)は、セクタ分離パターン15を第2の情報記録セル群13の任意の位置に設けたときの磁気記録媒体1の概略構成を示す図ある。
【0135】
図6(a)に示すように、磁気記録媒体1は、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、磁気記録媒体1は、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、図示しないが、磁気記録媒体1は、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。なお、図6(a)及び図6(b)では、磁気記録セル11の形状が円柱状となっているが、これに限らず、例えば四角柱状、楕円柱状及び球状等、孤立した磁気記録セル11に磁気情報が記録できれば形状であればどのような形状であってもよい。
【0136】
なお、磁気記録媒体1にセクタ分離パターン15が設けられた構成の場合であっても、上述した記録再生方法を適用可能である。また、上述した記録再生を行う順番による磁気記録再生装置2の制御方法についても、何れかのセクタ領域内に連続して記録再生が行われるときに適用される。
【0137】
また、本発明は、上記のような磁気記録媒体1及び磁気記録再生装置2に限られるものではなく、例えば、誘電体記録媒体及び誘電体記録再生装置についても同様に提供することができる。この場合、記録媒体としては誘電体記録セルを備えた誘電体記録媒体を用いればよく、記録再生装置は、分極方向を検出する素子(再生素子)及び分極方向を変化させる素子(記録素子)を備えた記録再生ヘッドを具備していればよい。
【0138】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について図7〜図10に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0139】
〔磁気記録媒体1aの概略構成〕
本実施形態に係る磁気記録媒体1aは、図7に示すように、トラック識別情報が記録されたアドレス領域16が備えている点で、実施形態1に係る磁気記録媒体1とは異なる。また、図7に示す磁気記録媒体1aでは、磁気記録セル11の形状が四角柱状となっている。図7は、ユーザデータ領域10に磁気記録セル11とアドレス領域16とが形成された磁気記録媒体1aの概略構成を示す図である。
【0140】
まず、実施形態1と同様、磁気記録媒体1aのユーザデータ領域10には、孤立した四角柱状の磁気記録セル11が、隣接するトラックに形成された磁気記録セル11と互い違いになるように配列されている。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1aの磁気記録セル11の大きさは、一辺の長さ30nm及び高さ30nmとなっているが、これに限らず、一辺の長さ5nm〜45nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。
【0141】
そして、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とは、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置が、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置に対して、トラックピッチの半分だけ異なるように配置されている。本実施形態に係る磁気記録媒体1aでは、第1の情報記録セル群12の磁気記録セル11が形成される各トラックの半径位置は、第2の情報記録セル群13が形成される各トラック位置の半径位置より半分だけ内周側に配置されている。
【0142】
また、実施形態1と同様、磁気記録媒体1aの任意の磁気記録セル11は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置となるように形成されている。さらに、磁気記録媒体1aにおいても、磁気記録セル11が形成されていない領域には、非磁性体層が形成されている。
【0143】
なお、磁気記録媒体1aの回転方向は、図7に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1aに配列された磁気記録セル11に対して紙面左から順に信号検出していく。また、磁気記録媒体1aは、例えば媒体面内方向に対して垂直方向に磁化されることで、情報が記録されるタイプの媒体である。
【0144】
また、磁気記録素子8と磁気再生素子9との磁気記録媒体1aから見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド7が回転する磁気記録媒体1aの任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を磁気再生素子9が先に通過し、磁気記録素子8がその後に通過するような位置関係となっている。
【0145】
さらに、磁気記録媒体1aは、図7に示すように、実施形態1に係る磁気記録媒体1とは異なり、第1の情報記録セル群12の各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域16を備えている。本実施形態では、アドレス領域16には、第1の情報記録セル群12の各トラックを識別するために、磁気情報を有する識別パターン17が形成されている。
【0146】
〔磁気記録媒体1aの記録再生方法〕
以下、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1aに対して磁気情報を記録再生する方法について、図7及び図8を用いて説明する。ここでは、磁気記録再生装置2が、再生時のトラッキング制御に関し、アドレス領域16から第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、信号を検出していく場合を考える。
【0147】
図7に示すように、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1を回転させると、トラックTr3(又はトラックTr4)に対して第2の情報記録セル群13の内周側(紙面の下側)にある磁気記録セル11と、トラックTr3に対して外周側(紙面の上側)にある磁気記録セル11とを交互に検出していく。そして、磁気記録再生装置2は、磁気再生素子9が、第2の情報記録セル群13に進入したときの奇数番目及び偶数番目の磁気記録セル11から検出される各信号の、スライスレベル14からの振幅を比較することによって、実施形態1と同様、トラッキング制御を行う。
【0148】
なお、第2の情報記録セル群13に進入したときの奇数番目の磁気記録セル11とは、磁気再生素子9がトラックTr3上にある場合には、トラックTr3に対して外周側にある磁気記録セル11を指す。一方で、磁気再生素子9がトラックTr4上にある場合には、奇数番目の磁気記録セル11とは、トラックTr4に対して内周側にある磁気記録セル11を指す。また、第2の情報記録セル群13に進入したときの偶数番目の磁気記録セル11については、上記の関係が反対になる。
【0149】
ここで、磁気記録媒体1にアドレス領域16が備えられておらず、奇数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅が、偶数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅よりも大きい場合を考える。この場合、トラックTr3では、記録再生ヘッド7が外周側にオフトラックが生じている一方、トラックTr4では、記録再生ヘッド7が内周側にオフトラックを生じている。すなわち、奇数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅が、偶数番目の磁気記録セル11から検出された信号の振幅よりも大きい場合であっても、トラックTr3とトラックTr4とでは、記録再生ヘッド7のオフトラック方向が異なることがわかる。
【0150】
本実施形態に係る磁気記録媒体1aは、磁気情報を有する識別パターン17が形成されたアドレス領域16を備えている。すなわち、磁気記録媒体1aは、第1の情報記録セル群12の各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域16を備えている。このため、磁気記録再生装置2は、どちらのトラック上に記録再生ヘッド7があるかを明確に区別することができる。
【0151】
すなわち、記録再生ヘッド7がトラックTr3上にある場合には、アドレス領域16の識別パターン17から検出する信号は、図8(a)に示す検出信号Tr3s(16s)のようになる。一方、記録再生ヘッド7がトラックTr4上にある場合には、アドレス領域16の識別パターン17から検出する信号は、図8(b)に示す検出信号Tr4s(16s)のようになる。つまり、記録再生ヘッド7がトラックTr3上にある場合とトラックTr4上にある場合とでは、記録再生ヘッド7によって検出される信号が異なる。
【0152】
このように、磁気記録媒体1aがアドレス領域16を備え、各トラックに対応するように、アドレス領域16の識別パターン17を配列することで、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7がどのトラック上にあるのかを特定することができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7が信号検出を行っているトラックを識別することができる。
【0153】
つまり、磁気記録再生装置2は、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sの、スライスレベル14からの振幅の差を比較することによって、オフトラック量を検出する。また、磁気記録再生装置2は、識別パターン17からの識別情報をもとに、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を順次検出していくときに、奇数番目及び偶数番目に検出する磁気記録セル11が、磁気記録媒体1aにおける任意のトラックの内周側であるか外周側であるかを特定する。なお、上記トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号とは、ここでは、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13から検出する検出信号を指す。
【0154】
これにより、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1aに対して情報を記録再生する場合には、記録再生ヘッド7のオフトラック量と共にオフトラック方向も特定することができるため、フィードバック制御を確実に行うことができる。
【0155】
なお、図8は、記録再生ヘッド7が、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域16の識別パターン17から信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、記録再生ヘッド7がトラックTr3を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr3s(16s)を示す模式図であり、同図(b)は、記録再生ヘッド7がトラックTr4を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr4s(16s)を示す模式図である。
【0156】
ここで、再生時における磁気再生素子9又は記録時における磁気記録素子8のトラッキング制御に関しては、実施形態1と同様に行うことができる。すなわち、磁気記録再生装置2が第1の情報記録セル群12の再生又は記録する場合には、第2の情報記録セル群13がトラッキング制御及び/又は記録タイミング調整(すなわち記録タイミング制御)用のパターンとなる。一方、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13の再生又は記録する場合には、第1の情報記録セル群12がトラッキング及び/又は記録タイミング制御用のパターンとなる。
【0157】
これにより、実施形態1と同様、磁気記録媒体1aは、磁気記録再生装置2に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、記憶容量を低下させることなく、高精度な記録再生ヘッド7の位置合わせを行わせることができる。すなわち、磁気記録媒体1aは、ユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0158】
なお、実施形態1と同様、第1の情報記録セル群12の円周方向に対する幅12wと第2の情報記録セル群13の円周方向に対する幅13wの変更にあわせて、トラッキング制御及び記録タイミング制御の検出頻度を任意に設定してもよい。例えば、上記幅12wと13wとをより狭く形成することによって、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号の検出頻度を上げて記録再生を行うことができるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを発生しにくくなる。従って、この場合には、磁気記録媒体1aのユーザデータ領域10の記憶容量をより低下させることなく、記録エラー及び再生エラーをより少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0159】
なお、識別パターン17は、ユーザデータ領域10の磁気記録セル11のように、均一な形状をしている必要はなく、図7に示すように、いくつかのトラックに渡って連続した形状であってもよい。すなわち、アドレス領域16は、様々な形状の識別パターン17を含む構成であってよい。
【0160】
また、アドレス領域16には、識別パターン17の配列が示すように、第1の情報記録セル群12におけるトラックの識別情報が記録されていたが、第2の情報記録セル群13におけるトラックの識別情報を記録するためのアドレス領域が新たに設けられていてもよい。さらに、アドレス領域16の中に、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13におけるトラックの識別情報が記録されていてもよい。なお、アドレス領域16の形態は、上記構成に限られるものではなく、トラックを識別することができる形態であればどのような形態であってもよい。
【0161】
また、本実施形態からもわかるように、アドレス領域には、少なくとも、第1の情報記録セル群12(又は第2の情報記録セル群13)の任意のトラックが、磁気記録媒体1aの内周側から奇数番目のトラックであるか、偶数番目のトラックであるかを示す情報が記録されていればよい。以下、この構成のアドレス領域16bを有する磁気記録媒体1bについて、図9及び図10を用いて説明する。
【0162】
図9は、アドレス領域16bを有する磁気記録媒体1bの概略構成を示す図である。例えば図9では、アドレス領域16bには、磁気記録媒体1bの内周側から奇数番目のトラックTr5と偶数番目のトラックTr6とを区別するような情報が記録されている。すなわち、アドレス領域16b内の奇数番目のトラック(例えばトラックTr5)には四角柱状の識別パターン17が形成されているが、アドレス領域16内の偶数番目のトラック(例えばトラックTr6)には四角柱状の識別パターン17は形成されていない。
【0163】
次に、磁気記録再生装置2が図9に示す磁気記録媒体1bのトラックTr5及びトラックTr6に沿って検出する信号を、それぞれ図10(a)及び図10(b)に示す。なお、図10は、記録再生ヘッド7が、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域16bの識別パターン17及び第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11から信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、記録再生ヘッド7がトラックTr5を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr5sを示す模式図であり、同図(b)は、記録再生ヘッド7がトラックTr6を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr6sを示す模式図である。
【0164】
図10(a)及び図10(b)に示すように、記録再生ヘッド7がアドレス領域16bで検出する信号16sが、磁気記録媒体1aの内周側から奇数番目のトラックTr5と偶数番目のトラックTr6とで異なっている。ここで、図9に示すように、トラックTr5では、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13に進入すると、奇数番目に検出する磁気記録セル11が外周側となり、偶数番目に検出する磁気記録セル11が内周側となる。一方、トラックTr6では、記録再生ヘッド7が第2の情報記録セル群13に進入すると、奇数番目に検出する磁気記録セル11が内周側となり、偶数番目に検出する磁気記録セル11が外周側となる。
【0165】
すなわち、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1bの内周側から奇数番目のトラックであるか、偶数番目のトラックであるかを識別することによって、図7に示す磁気記録媒体1aを用いて説明した場合と同様の効果を得ることができる。つまり、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を順次検出していくときに、奇数番目及び偶数番目に検出する磁気記録セル11が、磁気記録媒体1bの第2の情報記録セル群13の内周側であるか外周側であるかを特定することが可能となる。
【0166】
従って、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1bに対して記録再生を行う場合であっても、記録再生ヘッド7のオフトラック方向が、磁気記録媒体1に対して内周方向であるか外周方向であるかを特定することが可能である。すなわち、磁気記録再生装置2は、アドレス領域16bに少なくとも、磁気記録媒体1bの内周側から奇数番目のトラックであるか、偶数番目のトラックであるかを示す情報について記録されていれば、記録再生ヘッド7のオフトラック方向を特定することができる。
【0167】
なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1a、1bは、上述の実施形態1と同様、図6(a)に示すように、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、磁気記録媒体1a、1bは、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、磁気記録媒体1a、1bは、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。
【0168】
また、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1a、1bに対して再生を行う順番についても、上述の実施形態1で説明した方法を適用することができる。また、磁気記録媒体1a、1bの製造方法についても、磁気記録媒体1の製造方法を適用することができる。すなわち、磁気記録セル11を形成する材料、微細パターンの形成方法についても、上述の実施形態1と同様の材料、方法を用いることができる。さらに、実施形態1でも説明したように、磁気記録媒体1a、1bについても、その両面に磁気記録面を設ける構成としてもよい。
【0169】
さらに、アドレス領域16、16bにおける識別パターン17が保有している磁気情報は、磁気記録セル11と同様、磁化の向きが揃っていてもよいし、ランダムに上下方向を向いていてもよい。
【0170】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について図11及び図12に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1、2と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0171】
〔磁気記録媒体1cの概略構成〕
本実施形態に係る磁気記録媒体1cは、図11に示すように、磁気記録セル11の形状が楕円柱状である点で、実施形態1、2とは異なる。なお、本実施形態に係る磁気記録媒体1cの磁気記録セル11の大きさは、楕円の長径40nm及び高さ30nmとなっているが、これに限らず、楕円の長径10nm〜50nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。
【0172】
また、本実施形態に係る磁気記録媒体1cは、任意の磁気記録セル11のその周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置とは異なる位置に形成されている点においても、実施形態1、2とは異なる。なお、図11は、磁気記録媒体1cの第2の情報記録セル群13の概略構成を示す図である。
【0173】
図11に示すように、トラックTr7は、トラックTr8と隣接しており、トラックTr7には磁気記録セル11Aがあり、トラックTr8には磁気記録セル11B、11Cがある。そして、トラックTr7の磁気記録セル11Aの周方向位置は、トラックTr8において磁気記録セル11Aと最も近接した位置にある磁気記録セル11Bの周方向位置と、磁気記録セル11Aと2番目に近接した磁気記録セル11Cの周方向位置との中心位置とはなっていない。
【0174】
つまり、実施形態1、2とは異なり、磁気記録セル11Aと磁気記録セル11Bとの円周方向における距離p1と、磁気記録セル11Aと磁気記録セル11Cとの円周方向における距離p2とが等しくない(なお、本実施形態ではp1<p2)。
【0175】
また、磁気記録セル11Aと、トラックTr7の内周側で隣接するトラックTr9において磁気記録セル11Aに最も近接した磁気記録セル11Dとの円周方向における距離は、上記距離p1と等しい。同様に、磁気記録セル11Aと、トラックTr7の内周側で隣接するトラックTr9において磁気記録セル11Aに2番目に近接した磁気記録セル11Eとの円周方向における距離は、上記距離p2と等しい。
【0176】
さらに、実施形態1、2とは異なり、磁気記録媒体1cでは、トラックTr7の磁気記録セル11の周方向位置と、トラックTr7に対して2番目に近いトラックTr10における磁気記録セル11の周方向位置とが異なっている。なお、磁気記録媒体1cでは、どの磁気記録セル11を見ても、上述したような位置関係となっている。
【0177】
以上のように、図11に示すように磁気記録セル11を配置することで、第2の情報記録セル群13をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用のパターンとして利用する場合、磁気再生素子9がオフトラックとなったときのオフトラック方向が内周方向であるか、外周方向であるかを特定することができる。本実施形態3においても、磁気記録再生装置2がオフトラック方向を特定できることについては、後に詳述する。
【0178】
〔磁気記録媒体1cの記録再生方法〕
以下、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1cに対して磁気情報を記録再生する方法について、図11及び図12を用いて説明する。ここでは、記録再生ヘッド7が、第2の情報記録セル群13において、トラックTr11に沿って、第2の情報記録セル群13においてトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出していく場合を考える。
【0179】
図11に示すように、磁気記録媒体1cの回転方向が紙面右から左へ向かう方向(図11に示す矢印方向)であるため、磁気再生素子9は、トラックTr11に沿って第2の情報記録セル群13を紙面左側から順次検出していく。
【0180】
上述したように、トラッキング制御に際しては、磁気再生素子9は、トラックTr11の内周側(紙面の下側)にある磁気記録セル11と、外周側(紙面の上側)にある磁気記録セル11とから交互に信号を検出する。そして、トラックTr11の内周側及び外周側の磁気記録セル11から検出される信号の、スライスレベル14からの振幅を比較することによってトラッキング制御を行う。
【0181】
本実施形態に係る磁気記録媒体1cにおいては、上述したように、距離p1と距離p2とが異なると共に、どの磁気記録セル11を見ても図11に示すような位置関係になっているため、記録再生ヘッド7のオフトラック方向を特定できる。以下、この点について図12を用いて詳しく説明する。
【0182】
図12は、記録再生ヘッド7が、トラックTr11に沿って、第2の情報記録セル群13の磁気記録セル11から信号を検出したときの検出信号13sを示す模式図である。ここで、磁気記録セル11Aを検出してから磁気記録セル11Bを検出するまでの時間(「任意の磁気記録セル」を検出した後、該「任意の磁気記録セル」に隣接したトラックにおいて最も近接した磁気記録セルを検出するまでの時間)をt1で示している。一方、磁気記録セル11Cを検出してから磁気記録セル11Aを検出するまでの時間(「任意の磁気記録セル」に隣接したトラックにおいて2番目に近接した磁気記録セルを検出した後、該「任意の磁気記録セル」を検出するまでの時間)をt2で示している。
【0183】
図11に示すように、磁気記録媒体1cにおいては距離p1<p2の関係にあるため、図12に示す時間t1、t2の関係は、t1<t2となる。このため、磁気記録再生装置2は、信号を検出するときの時間を計測することによって、記録再生ヘッド7が沿うトラックの内周側の磁気記録セル11からの検出信号13sであるか、外周側の磁気記録セル11からの検出信号13sであるかを特定することができる。
【0184】
具体的に、記録再生ヘッド7が任意の磁気記録セル11からの信号を検出したt1後に、次の磁気記録セル11からの信号を検出した場合を考える。この場合、磁気記録再生装置2は、最初に検出した信号が、トラックTr11に対して内周側のトラックTr7における磁気記録セル11からの検出信号13sであると特定することができる。一方、磁気記録再生装置2は、次に検出した信号が、トラックTr11に対して外周側のトラックTr8における磁気記録セル11からの検出信号13sであることが特定することができる。
【0185】
また、記録再生ヘッド7が任意の磁気記録セル11からの信号を検出したt2後に、次の磁気記録セル11からの信号を検出した場合を考える。この場合、磁気記録再生装置2は、最初に検出した信号が、トラックTr11に対して外周側のトラックTr8における磁気記録セル11からの検出信号13sであると特定することができる。一方、磁気記録再生装置2は、次に検出した信号が、トラックTr11に対して内周側のトラックTr7における磁気記録セル11からの検出信号13sであることが特定することができる。
【0186】
つまり、磁気記録再生装置2は、上述のように、検出信号13sを検出したときの磁気記録セル11が、記録再生ヘッド7が沿うトラックの内周側にあるか、外周側にあるかを特定することができる。このため、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7がオフトラックを生じた場合であっても、オフトラック方向を特定することができる。また、磁気記録再生装置2は、上述のように、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sの、スライスレベル14からの振幅の差を比較することによって、オフトラック量を検出することができる。
【0187】
従って、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1cに対して情報を記録再生する場合には、記録再生ヘッド7のオフトラック量と共にオフトラック方向も特定することができるため、フィードバック制御を確実に行うことができる。
【0188】
ここで、上記実施形態1と同様、磁気記録再生装置2が第1の情報記録セル群12の再生又は記録する場合には、第2の情報記録セル群13がトラッキング制御及び/又は記録タイミング制御用のパターンとなる。一方、磁気記録再生装置2が第2の情報記録セル群13の再生又は記録する場合には、第1の情報記録セル群12がトラッキング及び/又は記録タイミング制御用のパターンとなる。
【0189】
これにより、実施形態1と同様、磁気記録媒体1cは、磁気記録再生装置2に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。つまり、磁気記録媒体1cは、記憶容量を低下させることなく、高精度な記録再生ヘッド7の位置合わせが可能な、すなわち再生エラー及び記録エラーの少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0190】
また、実施形態1と同様、第1の情報記録セル群12の円周方向に対する幅12wと第2の情報記録セル群13の円周方向に対する幅13wの変更にあわせて、トラッキング制御及び記録タイミング制御の検出頻度を任意に設定してもよい。例えば、上記幅12wと13wとをより狭く形成することによって、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号の検出頻度を上げて記録再生を行うことができるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを発生しにくくなる。従って、この場合には、磁気記録媒体1cのユーザデータ領域10の記憶容量をより低下させることなく、記録エラー及び再生エラーをより少ない磁気記録再生装置2を提供することが可能となる。
【0191】
なお、本実施形態3に係る磁気記録媒体1cにおいても、上述の実施形態1と同様、図6(a)に示すように、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、磁気記録媒体1cは、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、磁気記録媒体1cは、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。
【0192】
また、上述の実施形態2と同様、磁気記録再生装置2が磁気記録媒体1cに対して再生を行う順番、及び、磁気記録媒体1cの製造方法についても、実施形態1での方法を適用することができる。
【0193】
ここで、本実施形態に係る記録再生ヘッド7の磁気再生素子9において、該磁気再生素子9の円周方向における空間分解可能幅Swであるとき、上述した距離p1との関係が、Sw<p1であることが好ましい。なお、本明細書における磁気再生素子9の空間分解可能幅Swとは、磁気再生素子9が単一の磁気記録セル11上を走査したときに得られる信号の半値幅(時間軸)をt、走査時の線速度をvとしたとき、「t×v」で表される値を指す。また、上述した距離p1とは、任意の磁気記録セル11と、隣接するトラックにおいて該磁気記録セル11に最も近接する磁気記録セル11との円周方向における距離を指す。
【0194】
上記関係の場合、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出するときに、各々の磁気記録セル11からの検出信号を分離しやすくなるため、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーが生じにくくすることができる。これは、この構成によれば、隣接する磁気記録セル11からの信号に起因した検出信号の歪みが小さくなるためである。
【0195】
なお、上記構成は、本実施形態に限られるものではなく、上記実施形態1、2についても同様の効果を奏する。すなわち、実施形態1、2に係る磁気記録媒体1、1a、1bでは、任意の磁気記録セル11の周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの磁気記録セル11の中心位置となるように形成されている。
【0196】
この場合、磁気再生素子9の空間分解可能幅Swが、任意の磁気記録セル11と、隣接するトラックにおける磁気記録セル11との距離よりも小さい場合、磁気記録再生装置2は、トラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号を検出するときに、各々の磁気記録セル11からの検出信号を分離しやすくすることができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体1、1a、1bから上記信号を検出するときに、トラッキングエラー及び記録タイミングエラーを生じにくくすることができる。
【0197】
従って、上記空間分解可能幅Swとし、任意の磁気記録セル11と、該磁気記録セル11と最も近接した周方向位置にある磁気記録セル11との距離Dとするとき、これらの関係がSw<Dとなる場合には、磁気記録再生装置2は上述のような効果を奏する。
【0198】
また、磁気記録再生装置2は、その初期動作(例えば、磁気記録再生装置2の起動)において、記録再生ヘッド7の磁気記録素子8と磁気再生素子9との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことが好ましい。磁気記録再生装置2の記録再生ヘッド7には個体差があるため、該記録再生ヘッド7の磁気記録素子8と磁気再生素子9との半径方向における距離についても、記録再生ヘッド7毎に異なる可能性が高い。
【0199】
従って、磁気記録再生装置2の初期動作において上記距離を検出することにより、磁気記録再生装置2は、この距離が所定の値(例えば、磁気記録素子8と磁気再生素子9との距離が0)とは異なる場合であっても、記録時に磁気記録素子8がオフトラックになること防ぐことができる。すなわち、磁気記録再生装置2は、記録再生ヘッド7の個体差に起因した磁気記録素子8のオフトラックによる記録エラー、及び記録エラーに伴う再生エラーの増加を抑制することができる。ここで、上記距離を検出する場合の磁気記録再生装置2の初期動作としては、例えば、以下の動作が考えられる。
【0200】
まず、磁気記録再生装置2は、任意の記録再生ヘッド7の位置(磁気記録媒体1の半径位置)において、磁気記録素子8による記録動作と磁気再生素子9による再生動作とを行い、磁気再生素子9が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する。そして、磁気記録再生装置2は、上記記録動作、再生動作及びエラーレートの記憶動作を、記録再生ヘッド7の半径位置毎に繰り返し行う。なお、磁気記録再生装置2は、再生信号のエラーレートを記憶すると共に、このエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置とを記憶する。
【0201】
次に、磁気記録再生装置2は、記憶したエラーレートから最小のエラーレートを検出することにより、該最小のエラーレートに対応する、記録動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r1と、再生動作時の記録再生ヘッド7の半径位置r2とを決定する。すなわち、磁気記録再生装置2は、上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの記録再生ヘッド7の半径位置r2とする。磁気記録再生装置2は、決定した半径位置r1、r2から、磁気記録素子8と磁気再生素子9との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する。
【0202】
そして、磁気記録再生装置2は、決定した上記距離(r1−r2)を記憶しておくことにより、磁気再生素子9がこの距離分だけオフトラックした状態で、記録時のトラッキング制御を行う。
【0203】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について図13〜図17に基づいて説明すると以下の通りである。なお、実施形態1〜3と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、その説明は省略する。
【0204】
〔光記録再生装置19の概略構成〕
図13は、本発明に係る光記録媒体(情報記録媒体)18に対して記録再生を行う光記録再生装置19の概略構成を示す図である。光記録再生装置19は、図13に示すように、サスペンション3と、スピンドル4と、ボイスコイルモーター5と、ランプ機構6と、記録再生ヘッド20とを備えている。また、図13では、光記録再生装置19は、光記録媒体18を備えた構成となっている。光記録再生装置19は、サスペンション3に備えられた記録再生ヘッド7の代わりに記録再生ヘッド20が備えられていること、及び光記録媒体18に対して光情報を記録再生する点で磁気記録再生装置2とは異なる。
【0205】
すなわち、磁気記録再生装置2と同様、スピンドル4は、光記録再生装置19が光記録媒体18に情報の記録再生を行うときに、光記録媒体18を反時計周り(図13の矢印方向)に回転させるものである。なお、光記録媒体18の中心部にはスピンドル4と嵌合可能なように穴部が形成されている。
【0206】
また、サスペンション3は、サスペンション3に備えられた記録再生ヘッド20を光記録媒体18の半径方向に移動させるボイスコイルモーター5に固定され、その反対側の先端に、光記録媒体18に対して情報の記録再生を行う記録再生ヘッド20を備えている。すなわち、記録再生ヘッド20は、ボイスコイルモーター5の作動に応じて、光記録媒体18に対する半径位置を変更させることができる。さらに、ランプ機構6は、光記録媒体18に情報の記録再生を行わないときに、記録再生ヘッド20が退避する場所である。
【0207】
なお、光記録媒体18の構造、及び光記録再生装置19による光記録媒体18の記録再生方法については、後に詳述する。
【0208】
次に、図14を用いて、記録再生ヘッド20の概略構成について説明する。図14は、記録再生ヘッド20の概略構成を示す説明図である。
【0209】
図14に示すように、記録再生ヘッド20は、受光素子21及び近接場光発生部(発光素子)22を備えている。受光素子21は、光記録媒体18に記憶された情報を再生するときに、光記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)27からの散乱光を受光するものである。また、受光素子21は、トラッキング制御用及び記録タイミング用の信号を検出する。
【0210】
近接場光発生部22は、半導体レーザ光源26(図15(a)にて図示)から光が照射されることによって、近接場光を発生させるものである。具体的には、近接場光発生部22は、微小開口部23を備えており、半導体レーザ光源26から出射された光が該微小開口部23に照射されることにより、微小開口部23付近に近接場光が発生する。なお、近接場光とは、物質に光を照射したときに物質表面に生じる光であって、伝播せず物質表面のごく限られた近傍にのみ局在する光である。
【0211】
また、受光素子21と近接場光発生部22との光記録媒体18から見た円周方向における位置関係は、記録再生ヘッド20が回転する光記録媒体18の任意の位置を通過するとき、この任意の位置上を受光素子21が先に通過し、近接場光発生部22がその後に通過するような位置関係となっている。
【0212】
なお、本実施形態に係る記録再生ヘッド20では、近接場光発生部22が、例えば金薄膜からなっている。また、微小開口部23の平面サイズは、200nm×300nmとなるように形成されている。
【0213】
以上のように、光記録再生装置19は、スピンドル4及びサスペンション3の動作と、記録再生ヘッド20による近接場光の発生及び散乱光の受光とを制御することにより、光記録媒体18の所定の位置に記録再生を行うことができる。
【0214】
次に、図15を用いて、記録再生ヘッド20の製造方法について説明する。図15は、記録再生ヘッド20の製造方法を示す説明図であり、同図(a)は、半導体レーザ光源26が形成された様子を示す図であり、同図(b)は、受光素子21と近接場光発生部22とが形成された様子を示す図である。
【0215】
まず、図15(a)に示すように、GaAs基板24上に、波長650nmの光を出射可能な半導体レーザ光源26を形成する。その後、図15(b)に示すように、半導体レーザ光源26が形成されたGaAs基板24上に、例えばSiN(窒化シリコン)またはAlN(窒化アルミニウム)からなる透明薄膜層25を形成すると共に、透明薄膜層25上に、受光素子21と、微小開口部23を有した近接場光発生部22とを形成する。このとき、微小開口部23を有した近接場光発生部22は、半導体レーザ光源26から出射された光が照射される位置となるように形成されている。
【0216】
なお、図15(b)では、近接場光発生部22における微小開口部23の形状は、四角形となっているが、これに限らず、円形、三角形等、微小開口部23付近に近接場光を発生させる構成であればどのような構成であってもよい。
【0217】
また、近接場光を発生させる構成についても、上記記録再生ヘッド20に限らず、光ファイバー等を用いて近接場光を発生させてもよい。さらに、半導体レーザ光源26、受光素子21及び近接場光発生部22を備えた記録再生ヘッド20を、例えば半導体レーザ光源26、受光素子21及びSIL(Solid Immersion Lens)型の近接場光発生素子を具備した、光ピックアップタイプの記録再生ヘッドに置き換えてもよい。
【0218】
〔光記録媒体18の概略構成及び製造方法〕
次に、図16を用いて、光記録媒体18の概略構成及び製造方法について説明する。図16は、光記録媒体18の概略構成を示すものであり、光記録媒体18に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。
【0219】
光記録媒体18は、実施形態1と同様、孤立した光記録セルを配列したパターンドメディアであり、図16に示すように、ユーザデータ領域10と、光記録セル27と、第1の情報記録セル群12と、第2の情報記録セル群13とを備えている。また、図16に示す12w、13wは、それぞれ第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13の、光記録媒体18の円周方向に対する幅を示している。
【0220】
光記録セル27(後述の光記録セル28A、28B、29A及び29Bを含む)は、ユーザデータ領域10に孤立して配列された円柱状のセルであり、光記録再生装置19によって光情報が記録再生されるものである。また、光記録セル27は、所定のトラックピッチ(例えば、70nm)で隣接するトラックに形成された光記録セル27と互い違いになるように配置されている。なお、本実施形態に係る光記録媒体18の光記録セル27の大きさは、直径40nm及び高さ40nmとなっているが、これに限らず、直径5nm〜100nm及び高さ10nm〜60nmとなっていればよい。
【0221】
ここで、光記録セル27が「隣接するトラックに形成された光記録セル27と互い違いになるように配置されている」とは、以下の2つの条件を示すことを意味する。1つの条件としては、光記録セル27の円周方向における周方向位置(光記録媒体18の円周方向における位置)と、該光記録セル27が形成されたトラックと隣接するトラックに形成された光記録セル27の周方向位置とが同じ位置ではないことである。もう1つの条件としては、同じトラック上で隣り合った2つの光記録セル27間の任意の周方向位置に、該トラックと隣接するトラックに形成された光記録セル27が1つ存在することである。
【0222】
上記のように配置された複数の光記録セル27は、図16に示すように、光記録媒体18の円周方向に対する幅12wを有する第1の情報記録セル群12と、光記録媒体18の円周方向に対する幅13wを有する第2の情報記録セル群13とを形成している。そして、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とは、光記録媒体18の円周方向に対して交互になるように配置されている。また、複数の磁気記録セル11が形成される各トラック間のトラックピッチは、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群の各トラックにおいて等しくなるように形成されている。
【0223】
さらに、交互に配置された第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13において、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径方向における半径位置は、図16に示すように、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なっている。図16(a)に示す光記録媒体18では、第1の情報記録セル群12の光記録セル27が形成される各トラックの半径位置は、第2の情報記録セル群13の光記録セル27が形成される各トラック位置の半径位置より半分だけ外周側に配置されている。ここで、「半径方向における半径位置」とは、光記録媒体18の半径方向における半径位置を指す。
【0224】
上記光記録媒体18では、第2の情報記録セル群13の各トラックの半径位置が、第1の情報記録セル群12の各トラックの半径位置に対して、トラックピッチの半分だけ異なるように配置された構成となっているが、これに限られたものではない。すなわち、実施形態1でも述べたように、光記録媒体18の構成が、上記第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との配置関係がトラックピッチの半分から僅かにずれている構成であってもよい。
【0225】
なお、光記録セル27の形状は、円柱状に限られるものではなく、例えば四角柱状、楕円柱状、球状等であってもよく、孤立した光記録セル27に光情報が記録できればどのような形状であってもよい。また、光記録媒体18では、任意の光記録セル27は、その周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの光記録セル27の中心位置となるように形成されている。なお、光記録媒体18においても、実施形態3に係る磁気記録媒体1cと同様、任意の光記録セル27のその周方向位置が、隣接するトラックにおいて隣り合った2つの光記録セル27の中心位置とは異なる位置に形成されていてもよい。
【0226】
また、光記録媒体18の回転方向は、図16に示すように、紙面右から左(矢印方向)となっているため、光記録再生装置19は、光記録媒体18に配列された光記録セル27に対して紙面左から順に信号検出していく。また、光記録媒体18は、照射されるレーザ光によって光記録セル27の結晶性を変化させることで、光記録再生装置19の近接場光発生部22で発生した再生時の近接場光による散乱光の強度が変化するタイプの媒体である。
【0227】
以下、光記録媒体18の製造方法の一例を示す。まず、ガラス基板上にレジストを塗布し、電子線リソグラフィー法によって、レジストに微細パターンを形成した後、光記録セル27を形成する材料を、この微細パターンが形成されたレジスト上に成膜する。その後、有機溶剤を用いて、レジストとレジスト上に堆積した光記録セル27を形成する材料とを除去した後、この基板上に誘電体層を成膜する。そして、この基板の誘電体層側から研磨を行うことで、光記録セル27を表面に露出させると共に、基板表面を平滑にする。最後に、光記録セル27が形成された基板に対して潤滑剤を塗布する。
【0228】
なお、光記録セル27を形成する材料としては、光記録再生装置19から光が照射されることによって(熱を加えられることによって)、その結晶性が変化する材料であればどのような材料であってもよい。例えば、光記録セル27を形成する材料としては、GeSb、GeSbTe、AgInSbTe合金等を用いることができる。また、レジストへの微細パターンの形成方法としては、例えば、陽極酸化法、フォトリソグラフィー法、ナノインプリント法等を用いることが可能である。
【0229】
また、上記光記録媒体18の製造方法では、光記録媒体18の片面にのみ光記録面(すなわち、光記録セル27を有する面)を形成しているが、これに限らず、光記録媒体18の両面に光記録面を形成してもよい。この場合には、上記製造方法に示す工程が、光記録媒体18の両面に対して実施されればよい。なお、光記録媒体18の両面に形成される光記録面への潤滑剤の塗布については、同時に行うことも可能である。
【0230】
なお、本実施形態に係る光記録媒体18では、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とが同じ幅となるように形成されており、それぞれの円周方向の幅12w、13wは、60μmとなっている。なお、これら円周方向の幅12w、13wが20μm〜150μm程度となるように、光記録媒体18が形成されていればよい。
【0231】
〔光記録媒体18の記録再生方法〕
以下、光記録再生装置19が光記録媒体18に対して光情報を記録再生する方法について、図16及び図17を用いて説明する。図16は、光記録媒体18に備えられた第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部分を示す図である。なお、図16(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、光記録再生装置19が、第1の情報記録セル群12の光記録セル28Aから第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr12に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。また、図16(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、光記録再生装置19が、第2の情報記録セル群13の光記録セル29Aから第1の情報記録セル群12の方向に向かって、トラックTr13に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【0232】
光記録再生装置19は、光記録媒体18に記録された情報を再生するときには、記録再生ヘッド20の半導体レーザ光源26が、近接場光発生部22に対して、比較的弱いパワー(例えば、0.5mW)のレーザ光を照射する。そして、記録再生ヘッド20の受光素子21は、近接場光発生部22において発生した近接場光による、光記録媒体18の光記録セル27からの散乱光を検出する。光記録再生装置19は、受光素子21が検出する、光記録媒体18からの散乱光の強度を検出することで、光記録媒体18に記録された情報を再生することができる。
【0233】
また、光記録再生装置19は、光記録媒体18に情報を記録するときには、半導体レーザ光源26は、近接場光発生部22に対して、上記再生時におけるレーザ光のパワーよりも強いパワー(例えば、5mW)のレーザ光を照射する。このレーザ光が光記録媒体18の光記録セル27に照射されることにより、光記録セル27を形成する材料の結晶性が変化する。これにより、光記録再生装置19は、光記録セル27に情報を記録することができる。そして、光記録媒体18は、光記録セル27の結晶性を変化させることで、光記録再生装置19の近接場光発生部22で発生した再生時の近接場光による散乱光の強度を、光記録セル27毎に変化させることができる。
【0234】
まず、図16(a)に示す場合、すなわち、再生時におけるトラッキング制御に関し、光記録再生装置19が、光記録セル28Aから第2の情報記録セル群13の方向に向かって、トラックTr12に沿って、信号を検出していく場合について考える。
【0235】
この場合、光記録再生装置19は、光記録媒体18を紙面右から左に回転させる。このため、受光素子21は、光記録セル28Aのような、トラックTr12に対して内周側(紙面の下側)にある光記録セル27と、光記録セル28Bのような、トラックTr12に対して外周側(紙面の上側)にある光記録セル27とを交互に検出していく。すなわち、本実施形態では、受光素子21は、光記録セル28Aから第2の情報記録セル群13に進入する直前までに、第1の情報記録セル群12における8個の光記録セル27からの信号を検出する。なお、この8個の光記録セル27には、受光素子21によって検出される順に、光記録セル28Aから、再生時の近接場光による散乱光の強度が弱、強、強、弱、強、強、強、弱となるように記録されているものとする。
【0236】
このように、受光素子21が、図16(a)に示す光記録媒体18のトラックTr12に沿って検出したときの信号の模式図を図17に示す。図17は、受光素子21が、図16(a)に示す光記録媒体18のトラックTr12に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図である。なお、図17(a)は、第2の情報記録セル群13においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出された検出信号Tr12sを示す模式図である。また、図17(b)は、記録再生ヘッド20が図16(a)に示すトラックTr12から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図であり、図17(c)は、記録再生ヘッド20が、図16(a)のトラックTr12から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【0237】
図17(a)では、第1の情報記録セル群12及び第2の情報記録セル群13から検出される信号をそれぞれ、12s及び13sで示しており、第2の情報記録セル群13からの検出信号13sについては、1つ目の光記録セル27に対応する検出信号のみを図示している。すなわち、検出信号13sについては、それ以降の光記録セル27から検出される信号についての図示を省略している。また、図17(a)において、検出信号12sが上に凸及び下に凸を示す波形はそれぞれ、光記録セル27に対して近接場光が照射されたときの散乱光の強度が強い場合及び弱い場合を示している。
【0238】
まず、記録再生ヘッド20が光記録媒体18のトラックTr12に対してオントラックである場合、検出信号12sのスライスレベル14からの振幅h1は、トラックTr12に対して内周側にある光記録セル27と外周側にある光記録セル27とで等しくなる。この場合、光記録再生装置19では、光記録媒体18に対する記録再生ヘッド20の半径位置を調整することなく、第1の情報記録セル群12から第2の情報記録セル群13に進入して検出信号13sを検出することにより、磁気記録セル11に記録された情報の再生を開始することが可能である。
【0239】
すなわち、図17(a)からわかるように、再生すべき領域(ここでは、第2の情報記録セル群13)に進入したときは、受光素子21が光記録セル27の直上を通過するため、検出信号13sの振幅h2が検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。このため、光記録再生装置19は、大きな振幅h2の検出信号13sをトリガーとして、この検出信号13sに対応する光記録セル27に記録された情報の再生を開始することができる。従って、第2の情報記録セル群13においては、光記録再生装置19は、トラッキング制御を行うことなく、光記録セル27に記録された情報の再生だけを行うことが可能である。
【0240】
なお、上記のスライスレベル14とは、光記録セル27での近接場光による散乱光の強度が強いときに検出される信号と、該強度が弱いときに検出される信号との中心値であって、誘電体層での近接場光による散乱光の強度を示す値を指す。
【0241】
次に、記録再生ヘッド20が光記録媒体18のトラックTr12に対してオフトラックである場合、第1の情報記録セル群12から検出される検出信号12sは、図17(a)に示す場合と異なり、第1の情報記録セル群12の光記録セル27に対応する検出信号12sのピーク値がひとつおきに大きく又は小さくなる。
【0242】
すなわち、図17(b)に示すように、記録再生ヘッド20が、トラックTr12から内周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr12の内周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h3は、図17(a)に示す振幅h1よりも大きくなる。一方で、トラックTr12の外周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h4は、図17(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも小さくなる。従って、光記録再生装置19は、この検出信号12sの振幅差(h3−h4)を検出して、振幅h3と振幅h4とが等しく(すなわち、h3−h4=0)なるように、記録再生ヘッド20の半径位置を外周側にずらしてトラックTr12に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0243】
一方、図17(c)に示すように、記録再生ヘッド20が、トラックTr12から外周側に僅かに位置ずれを起こした場合には、トラックTr12の内周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h6は、図17(a)に示す振幅h1よりも小さくなる。一方で、トラックTr12の外周側にある光記録セル27に対応する検出信号12sの振幅h5は、図17(a)に示す検出信号12sの振幅h1よりも大きくなる。従って、光記録再生装置19は、この検出信号12sの振幅差(h5−h6)を検出して、振幅h5と振幅h6とが等しくなる(すなわち、h5−h6=0)ように、記録再生ヘッド20の半径位置を内周側にずらしてトラックTr12に戻るようにフィードバック制御を行う。
【0244】
つまり、光記録再生装置19は、トラックTr12に対してオフトラックである場合であっても、第1の情報記録セル群12を通過する間にトラックTr12に対してオントラックになるようにフィードバック制御を行う。このため、光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が第2の情報記録セル群13に進入すると、検出信号12sのピーク値よりも検出信号13sのピーク値が大きくなることをトリガーとして、トラックTr12の第2の情報記録セル群13の光記録セル27に記録された情報を再生する。そして、光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が再び第1の情報記録セル群12に進入すると、受光素子21が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、トラッキング制御用の信号検出を行う。すなわち、光記録再生装置19は、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、上述のように、受光素子21が検出する検出信号12sのピーク値が一定となるように、フィードバック制御を行う。
【0245】
従って、記録再生ヘッド20が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、光記録再生装置19は、よりオフトラック量の少ない状態で、所定トラックの第2の情報記録セル群13の光記録セル27に記録された情報を再生する。これにより、光記録再生装置19は、光記録媒体18にサーボパターン用の領域を形成することなく、光記録媒体18の光記録セル27に記録された情報を正確に再生することが可能となり、再生エラーを少なくすることができる。
【0246】
次に、光記録再生装置19が光記録媒体18の光記録セル27に情報を記録する場合について説明する。光記録再生装置19が記録時にトラッキング制御を行う場合については、上述した再生時の場合と同様に行うことができる。
【0247】
但し、記録時には、光記録再生装置19は、第1の情報記録セル群12からの検出信号12sをもとに、第2の情報記録セル群13の光記録セル27に情報を記録させるタイミングを求め、このタイミングでこの光記録セル27に情報を記録する必要がある。このタイミングを求め方については、例えば以下に示す方法がある。
【0248】
上述したように、光記録再生装置19が光記録媒体18を回転させているとき、記録再生ヘッド20の近接場光発生部22は、受光素子21が光記録媒体18の任意の位置を通過した後に、その位置を通過する構成となっている。従って、例えば光記録再生装置19は、第2の情報記録セル群13に記録再生ヘッド20が進入して、検出信号12sよりもピーク値の大きい検出信号13sを検出したことをトリガーとして、所定の時間経過後に、近接場光発生部22が情報記録用の近接場光を発生させる構成としてもよい。すなわち、光記録再生装置19は、検出信号13sを検出したときに、半導体レーザ光源26から照射されるレーザ光パワーを再生時よりも強いレーザ光パワーに切り替え、近接場光発生部22において再生時よりも強い近接場光を発生させる構成としてもよい。
【0249】
ここで、所定の時間とは、受光素子21が第2の情報記録セル群13に進入して、最初の光記録セル27のピーク値を検出してから、近接場光発生部22がこの光記録セル27を通過するときまでの時間を示している。この所定の時間は、例えば光記録媒体18の回転速度と、受光素子21及び近接場光発生部22の距離とから算出される。
【0250】
また、例えば光記録再生装置19は、第1の情報記録セル群12で検出した検出信号12sのピーク値をカウントしておくことによって、近接場光発生部22が第2の情報記録セル群13に進入するタイミングを求める構成であってもよい。
【0251】
光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が第2の情報記録セル群13から再び第1の情報記録セル群12に進入すると、受光素子21が検出する信号のピーク値が小さくなることをトリガーとして、トラッキング制御(上述したフィードバック制御)と記録タイミングの調整とを行う。すなわち、光記録再生装置19は、近接場光発生部22が再び第1の情報記録セル群12に進入して、検出信号13sよりもピーク値の小さい検出信号12sを検出したことをトリガーとして、第1の情報記録セル群12においてトラッキング制御と記録タイミング制御とを行う。
【0252】
従って、記録再生ヘッド20が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対する進入を繰り返すことにより、光記録再生装置19は、オフトラック量(すなわち、記録したい光記録セル27との位置ずれ)がより少ない状態で、この光記録セル27に記録を行うことができる。すなわち、光記録再生装置19は、記録タイミング制御用の信号を検出するための領域を光記録媒体18に形成することなく、所望の光記録セル27への記録を正確に行うことが可能となり、記録エラーを少なくすることができる。
【0253】
なお、光記録再生装置19が第2の情報記録セル群13の光記録セル27に対して情報の記録再生を行うときには、受光素子21は、第1の情報記録セル群12の光記録セル27からトラッキング制御用の信号(すなわち、検出信号12s)を検出する。すなわち、光記録再生装置19は、光記録媒体18に2つの情報記録セル群が備えられているため、情報の記録再生を行うパターンとトラッキング制御用のパターンとを分けて信号検出を行う。
【0254】
これにより、受光素子21は、トラッキング制御用の信号と再生信号とを時間的に分離して検出することができる。従って、光記録再生装置19は、検出される信号から、トラッキング制御用の信号と再生信号とを分離する必要がないため、これらの信号を分離するための回路を必要としないという効果を奏する。
【0255】
ここで、上記では、光記録再生装置19が第2の情報記録セル群13に対して記録再生を行う場合について説明したが、光記録再生装置19は、第1の情報記録セル群12に対して記録再生を行う場合も同様の制御を行う。この場合について、図16(b)を用いて説明する。
【0256】
すなわち、第1の情報記録セル群12に対する記録再生の場合、第2の情報記録セル群13に対する記録再生の場合とは逆に、第2の情報記録セル群13が、第1の情報記録セル群12のトラッキング制御用及び記録タイミング制御用の信号が検出されるパターンとなる。
【0257】
図16(b)に示すように、光記録再生装置19は、光記録媒体18を紙面右から左に回転させる。このため、記録再生ヘッド20は、トラックTr13に沿って、第2の情報記録セル群13の光記録セル29A、29Bの順に、第1の情報記録セル群12の方向に光記録セル27からの信号を検出する。そして、光記録再生装置19は、記録再生ヘッド20が検出した各信号の振幅の偏差をなくすようにフィードバック制御を行うことによって、光記録媒体18の再生を行う。また、記録時には、光記録再生装置19は、第2の情報記録セル群13で検出される信号をもとに、トラッキング制御及び記録タイミング制御を行う。
【0258】
以上のように、光記録媒体18は、光記録再生装置19に対して、ユーザデータ領域10からの検出信号をトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号として利用させるため、記憶容量を低下させることなく、記録再生ヘッド20の位置合わせを高精度に行わせることができる。一方、光記録再生装置19は、光記録媒体18に対して記録再生を行う場合には、再生エラー及び記録エラーを少なくすることができるため、従来の光記録媒体に対して記録再生を行う場合よりも、正確に記録再生を行うことができる。すなわち、光記録媒体18のユーザデータ領域10の記憶容量を低下させることなく、記録エラー及び再生エラーを少ない光記録再生装置19を提供することが可能となる。
【0259】
また、光記録媒体18は、上述のように、記録再生ヘッド20が第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13とに対して交互に進入を繰り返すため、光記録再生装置19に対して、高い頻度でトラッキング制御用又は記録タイミング制御用の信号を検出させることができる。
【0260】
なお、本実施形態に係る光記録媒体18は、上述の実施形態1と同様、図6(a)に示すように、第1の情報記録セル群12と第2の情報記録セル群13との境界部に、セクタを分けるためのセクタ分離パターン15を設けていてもよい。また、光記録媒体18は、図6(b)に示すように、第2の情報記録セル群13の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。同様に、光記録媒体18は、第1の情報記録セル群12の任意の位置に、セクタ分離パターン15を設けていてもよい。
【0261】
また、光記録媒体18は、上述の磁気記録媒体1a、1bと同様、ユーザデータ領域10に、情報の記録再生が行われるパターン(図16(a)では第2の情報記録セル群13)の各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えていてもよい。
【0262】
また、光記録再生装置19が光記録媒体18に対して再生を行う順番についても、様々な方法が考えられるが、例えば上述の実施形態1で説明した方法を適用することによって実現することができる。
【0263】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0264】
本発明に係る情報記録媒体は、例えばパターンドメディアのような高密度情報記録媒体に好適に利用できる。また、本発明に係る磁気記録再生装置及び光記録再生装置は、上記情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す磁気記録媒体に対して記録再生を行う磁気記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示す磁気記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す図である。
【図4】図1に示す磁気記録媒体に備えられた第1の情報記録セル群と第2の情報記録セル群との境界部分を示す図であり、同図(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図2に示す磁気記録再生装置が、第1の情報記録セル群の磁気記録セルから第2の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr1に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図であり、同図(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図2に示す磁気記録再生装置が、第2の情報記録セル群の磁気記録セルから第1の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr2に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【図5】図3に示す磁気再生素子が、図4(a)に示す磁気記録媒体のトラックTr1に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図であり、同図(a)は、第2の情報記録セル群においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群から検出された検出信号Tr1sを示す模式図であり、同図(b)は、図2に示す記録再生ヘッドが、図4(a)に示すトラックTr1から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図であり、同図(c)は、記録再生ヘッドが、図4(a)のトラックTr1から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【図6】図1に示す磁気記録媒体にセクタ分離パターンが設けられた場合の概略構成を示す図であり、同図(a)は、セクタ分離パターンを第1の情報記録セル群と第2の情報記録セル群との間に設けたときの磁気記録媒体の概略構成を示す図あり、同図(b)は、セクタ分離パターンを第2の情報記録セル群の任意の位置に設けたときの磁気記録媒体の概略構成を示す図ある。
【図7】本発明に係る他の実施形態に係る磁気記録媒体を示すものであり、ユーザデータ領域に磁気記録セルとアドレス領域とが形成された磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図8】図3に示す記録再生ヘッドが、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域の識別パターンから信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr3を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr3s(16s)を示す模式図であり、同図(b)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr4を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr4s(16s)を示す模式図である。
【図9】図7に示す磁気記録媒体の変形例を示すものであり、アドレス領域を有する磁気記録媒体の概略構成を示す図である。
【図10】図3に示す記録再生ヘッドが、トラックTr3又はトラックTr4に沿って、アドレス領域の識別パターン及び第2の情報記録セル群の磁気記録セルから信号を検出したときの検出信号を示す模式図あり、同図(a)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr5を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr5sを示す模式図であり、同図(b)は、図3に示す記録再生ヘッドがトラックTr6を沿って信号を検出した場合の検出信号Tr6sを示す模式図である。
【図11】本発明に係るさらに他の実施形態に係る磁気記録媒体を示すものであり、該磁気記録媒体の第2の情報記録セル群の概略構成を示す図である。
【図12】図3に示す記録再生ヘッドが、トラックTr11に沿って、図11に示す磁気記録媒体の第2の情報記録セル群の磁気記録セルから信号を検出したときの検出信号13sを示す模式図である。
【図13】図16に示す光記録媒体に対して記録再生を行う光記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図14】図13に示す光記録再生装置の記録再生ヘッドの概略構成を示す説明図である。
【図15】図14に示す記録再生ヘッドの製造方法を示す説明図であり、同図(a)は、半導体レーザ光源が形成された様子を示す図であり、同図(b)は、受光素子と近接場光発生部とが形成された様子を示す図である。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る光記録媒体の概略構成を示すものであり、光記録媒体に備えられた第1の情報記録セル群と第2の情報記録セル群との境界部分を示す図であり、同図(a)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図13に示す光記録再生装置が、第1の情報記録セル群の磁気記録セルから第2の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr12に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図であり、同図(b)は、再生時におけるトラッキング制御に関し、図13に示す光記録再生装置が、第2の情報記録セル群の磁気記録セルから第1の情報記録セル群の方向に向かって、トラックTr13に沿って、信号を検出していく場合を示す説明図である。
【図17】図14に示す受光素子が、図16(a)に示す光記録媒体のトラックTr12に沿って信号を検出したときの検出信号を示す模式図であり、同図(a)は、第2の情報記録セル群においてオントラックである時の、第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群から検出された検出信号Tr12sを示す模式図であり、同図(b)は、図14に示す記録再生ヘッドが図16(a)に示すトラックTr12から内周側(紙面の下側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図であり、同図(c)は、図14に示す記録再生ヘッドが、図16(a)のトラックTr12から外周側(紙面の上側)に僅かに位置ずれを起こしている場合に、第1の情報記録セル群から検出される検出信号12sを示す模式図である。
【符号の説明】
【0266】
1、1a〜1c 磁気記録媒体(情報記録媒体)
2 磁気記録再生装置
7、20 記録再生ヘッド
8 磁気記録素子
9 磁気再生素子
10 ユーザデータ領域(データ領域)
11 磁気記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)
12 第1の情報記録セル群
13 第2の情報記録セル群
16、16b アドレス領域
18 光記録媒体(情報記録媒体)
19 光記録再生装置
21 受光素子
22 近接場光発生部(発光素子)
27 光記録セル(情報記録セル、第1〜第3の情報記録セル)
Tr1〜Tr13 トラック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ領域を有する情報記録媒体であって、
上記データ領域は、上記情報記録媒体の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を備え、
上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群にそれぞれ含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、
上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えたことを特徴とする請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、
上記第1の情報記録セルの円周方向における周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なることを特徴とする請求項3又は4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか1項に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を備えた記録再生ヘッドと、を備えた磁気記録再生装置であって、
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、を含み、
上記磁気再生素子の円周方向における空間分解可能幅Swとし、上記第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離Dとするとき、Sw<Dであることを特徴とする請求項6又は7に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項10】
上記距離検出動作は、
上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、
上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、該磁気記録素子と該磁気再生素子との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生装置。
【請求項11】
上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えたことを特徴とする請求項11に記載の情報記録媒体。
【請求項13】
上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、
上記第1の情報記録セルの周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なることを特徴とする請求項11又は12に記載の情報記録媒体。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか1項に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う発光素子及び受光素子と備えた記録再生ヘッドと、を備えた光記録再生装置であって、
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うことを特徴とする光記録再生装置。
【請求項15】
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うことを特徴とする請求項14に記載の光記録再生装置。
【請求項1】
互いに孤立した複数の情報記録セルが配列されたデータ領域を有する情報記録媒体であって、
上記データ領域は、上記情報記録媒体の円周方向において交互に配置された第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群を備え、
上記第1の情報記録セル群及び第2の情報記録セル群にそれぞれ含まれる情報記録セルは、トラックピッチが等しい複数のトラックに形成されていると共に、隣接するトラックに形成された情報記録セルと互い違いになるように配置されており、
上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置と異なることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
上記第2の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置は、上記第1の情報記録セル群の各トラックの半径方向における半径位置とトラックピッチの半分だけ異なることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
上記情報記録セルは、磁化方向の違いによって情報が記録される磁気記録セルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えたことを特徴とする請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、
上記第1の情報記録セルの円周方向における周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なることを特徴とする請求項3又は4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか1項に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気記録素子及び磁気再生素子を備えた記録再生ヘッドと、を備えた磁気記録再生装置であって、
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記磁気再生素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、を含み、
上記磁気再生素子の円周方向における空間分解可能幅Swとし、上記第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離Dとするとき、Sw<Dであることを特徴とする請求項6又は7に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
上記磁気記録素子と上記磁気再生素子との半径方向における距離を検出する距離検出動作を行うことを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項10】
上記距離検出動作は、
上記磁気記録素子による記録動作、上記磁気再生素子による再生動作、及び該磁気再生素子が検出する再生信号から得られるエラーレートを記憶する記憶動作を、上記記録再生ヘッドの、上記情報記録媒体の半径方向における半径位置毎に繰り返し行う動作と、
上記記憶動作時に記憶したエラーレートのうち、最小のエラーレートとなる上記記録動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r1とし、該最小のエラーレートとなる上記再生動作を行ったときの上記記録再生ヘッドの上記情報記録媒体における半径位置r2とするとき、該磁気記録素子と該磁気再生素子との半径方向における距離を(r1−r2)と決定する動作と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生装置。
【請求項11】
上記情報記録セルは、光が照射されることによって情報が記録される光記録セルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
各トラックを識別するトラック識別情報が記録されたアドレス領域を備えたことを特徴とする請求項11に記載の情報記録媒体。
【請求項13】
上記情報記録セルは、第1の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと隣接するトラックに形成された第2の情報記録セルと、該第1の情報記録セルが形成されたトラックと2番目に隣接するトラックに形成された第3の情報記録セルと、を含み、
上記第1の情報記録セルの周方向位置は、隣り合った2つの上記第2の情報記録セルの円周方向における中心位置と異なり、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと最も近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルと、内周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離は、該第1の情報記録セルと、外周側に隣接するトラックにおいて該第1の情報記録セルと2番目に近接した周方向位置にある上記第2の情報記録セルとの円周方向における距離と等しく、
上記第1の情報記録セルの周方向位置は、上記第3の情報記録セルの周方向位置と異なることを特徴とする請求項11又は12に記載の情報記録媒体。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか1項に記載の情報記録媒体と、該情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う発光素子及び受光素子と備えた記録再生ヘッドと、を備えた光記録再生装置であって、
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録再生を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対するトラッキング制御を行うことを特徴とする光記録再生装置。
【請求項15】
上記第1の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第2の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第1の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うか、
又は、
上記第2の情報記録セル群の情報記録セルに対して情報の記録を行うとき、上記受光素子が上記第1の情報記録セル群の情報記録セルから検出する信号の信号波形をもとに、該第2の情報記録セル群の情報記録セルに対する記録タイミング制御を行うことを特徴とする請求項14に記載の光記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−158013(P2009−158013A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335225(P2007−335225)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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