説明

情報記録媒体および情報記録媒体の製造方法

【課題】高線速度記録が可能で、広い線速度範囲で高品質の信号が得られ、かつ信号保存性に優れた情報記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明の情報記録媒体は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層15を有する情報記録媒体1である。前記記録層15は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層15の厚み方向に順に配置することによって形成されている。前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)が、Ge−SbまたはTeを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手段または電気的手段によって情報を記録または再生する情報記録媒体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学的情報記録媒体の一例として、レーザビームを用いて光学的手段により情報を記録、書換え、消去する相変化形情報記録媒体がある。相変化形情報記録媒体の記録、消去、書換えは、その記録層において相変化材料が結晶と非晶質の間で可逆変化を起こすことにより行われる。一般に、情報の記録は高パワーのレーザビームを照射させ記録層を融点より高温まで加熱させ、照射部を溶融させた後、急冷させることにより、非晶質相を形成することにより行われる。一方、情報の消去は、記録時より低パワーのレーザビームを照射させて、記録層をその結晶化温度よりは高く、融点より低い温度に加熱することによって記録層を昇温した後、徐冷することによって結晶相を形成し、情報を消去する。これらの形成された結晶部と非晶質部で反射率差が生じ、情報を再生することができる。したがって、良好な再生信号品質を得るためには、この反射率差を大きくする必要がある。
【0003】
相変化形情報記録媒体の一例としては、現在商品化されているBlu−ray Discメディアがある。このBlu−ray Discはデジタルハイビジョン放送に対応したメディアとして、記録容量は25GB(1層)および50GB(片面2層)を有し、転送速度も36Mbps(1倍速)である。この1倍速書換え形Blu−ray Discメディアへ搭載されている記録層材料は、例えばGe50Te50とSb40Te60を結ぶライン上の組成を有するもの(特許文献1参照)やSbをBiに置き換えたGe50Te50とBi40Te60を結ぶライン上の組成を有するもの(特許文献2参照)がある。
【0004】
今後はさらなる大容量化、高転送速度化が望まれており、それに応じた様々な技術の検討がなされている。大容量化の技術の1つとして、片面2層以上の情報層を備えることが考えられている。この技術を用いる場合、情報記録媒体の片面側から入射するレーザビームにより各記録層の反射率変化を再生するため、レーザビーム入射側になるほどその情報層にはレーザビームを透過する高透過性が求められる。このため、レーザビーム入射側の情報層では記録層を薄くし、透過性を高めなければならない。しかしながら、記録層の膜厚を薄くすると、原子の移動が行われにくくなるため、記録層の結晶化速度が低下する。よって、記録層を薄くした場合には、それに応じ結晶化速度を向上させた相変化材料を適用しなければならない。
【0005】
また高転送速度になることで、記録層へのレーザビーム照射時間が短くなるため、記録層が結晶化に要する時間を短くしなければならない。このためさらなる結晶化速度を向上させた相変化材料が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−225934号公報
【特許文献2】特開昭63−225935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように情報記録媒体の高速化には、その記録層の結晶化速度を向上させなければならない。そのためGe50Te50とSb40Te60を結ぶライン上の組成においてはSb40Te60の組成比を、Ge50Te50とBi40Te60を結ぶライン上の組成においてはBi40Te60の組成比を、それぞれ増やさなければならない。本発明者の実験によれば、それらのライン上の組成を適用した場合、高線速度記録に応じ結晶化速度を向上させた組成を用いても、記録マークの消去率が低いことを確認した。
【0008】
消去率が低い要因としては、結晶部と非晶質部の光の吸収率の差によるマークのひずみ(吸収ひずみ)が考えられる。現在のHigh−to−Low構成(未記録部に記録した際、記録部の反射率が未記録部より下がる構成)においては、結晶部の吸収率が非晶質部の吸収率よりも小さい。そのため情報記録媒体の同一トラックにおいて結晶部と非晶質部で溶解しやすさが異なり、マーク形成に差が生じるため、消去率が低下する。このような吸収ひずみは、レーザビーム照射時間が短くなる高速記録時ほど顕著に現れる。青紫色レーザを用いて記録する情報記録媒体においては、この吸収ひずみの影響を低減するように結晶部と非晶質部との吸収率差を小さく設計することは困難であることも、本発明者により確認されている。よって高速記録においては、別の結晶化メカニズムを有する記録層材料が必要となる。
【0009】
また、前述したGe50Te50とSb40Te60とを結ぶライン上およびGe50Te50とBi40Te60とを結ぶライン上で結晶化速度を向上させた組成の場合、その結晶部と非晶質部での屈折率および消衰係数の光学変化小さくなり、情報記録媒体の結晶部と非晶質部での反射率差が小さくなる。このため再生信号品質が悪化する。さらに、このように結晶化速度を向上させた組成においては、結晶化温度も低下する。つまりこれは、信号の保存性が悪化することつながる。以上のことも、本発明者の実験により確認された。
【0010】
一方、大容量化に伴う情報層の多層化においては、前述のように各層に求められる結晶化速度に応じた記録層材料が必要となる。そのため記録層を1つのターゲットから形成する場合、例えば、4つの情報層を有する情報記録媒体においては、多ければ4種類のターゲットが必要となる。このためターゲットの購入コストがかがり、また成膜室の増加に伴う費用が生じるため情報記録媒体の低コスト化が困難となる。
【0011】
本発明は、記録層の膜厚が薄くても高速記録が可能で信号保存性も良好な情報記録媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、限られたターゲットから、期待する結晶化速度を有する記録層を形成することによって、記録層の膜厚が薄くても高速記録が可能で信号保存性も良好な情報記録媒体を低コストで提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、記録層の膜厚が薄くても高速記録が可能で信号保存性も良好な情報記録媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、限られたターゲットから、期待する結晶化速度を有する記録層を形成することによって、記録層の膜厚が薄くても高速記録が可能で信号保存性も良好な情報記録媒体を低コストで提供することも目的とする。
【0013】
本発明の第1の情報記録媒体は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体において、前記記録層は、必須成分であるGeおよびSbと任意成分であるTeとからなる組成物を主成分として含み、前記組成物は、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する。
【0014】
ここで、例えば「Ge60Te40−Ge35Sb65上」とは、図1に示す三角座標上で、点Ge60Te40と点Ge35Sb65とを結ぶライン上のことである。以下、本明細書においては、同様の表現を同様の趣旨で用いる。また、「必須成分であるGeおよびSbと任意成分であるTeとからなる組成物」とは、GeおよびSbからなる2元系組成物と、Ge、SbおよびTeからなる3元系組成物との両方を含むものである。さらに、本明細書において、「記録層が組成物を主成分として含む」とは、記録層に含まれる全ての原子の合計を100原子%とした場合に、前記組成物に含まれる全ての原子の合計が85原子%以上、好ましくは90原子%以上であることをいう。
【0015】
本発明の第2の情報記録媒体は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体において、前記記録層は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層の厚み方向に順に配置することによって形成されており、前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)が、Ge−SbまたはTeを含む。
【0016】
本発明の第1の情報記録媒体の製造方法は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体の製造方法であって、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する組成物を主成分として含む前記記録層を、前記本発明のターゲットを用いて成膜する工程を含む。
【0017】
本発明の第2の情報記録媒体の製造方法は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体の製造方法であって、前記記録層は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層の厚み方向に順に配置することによって形成されており、前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)を、Ge−SbまたはTeを含むターゲットを用いて成膜する工程を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1および第2の情報記録媒体の記録層に用いられる相変化材料(記録層材料)は、結晶化速度が速く、その膜厚が薄くても高線速度において記録が可能である。また、低線速度においても安定してマークを形成でき、従来よりも広い線速度マージンを有する。またその信号保存性も良好である。
【0019】
上記の効果は、記録層が主成分として含む組成物にSbが60%以上含まれることによって記録層に高結晶化能をもたせ、そこにGeを含有させることによって非晶質マークを安定化できるので、得られると考えられる。またTeを含有させることで、より大きな光学変化が得られ、情報記録媒体の信号特性も良好となると考えられる。
【0020】
また、本発明の第2の情報記録媒体のように、記録層が複数の構成層によって形成されることによって、記録層が複数層設けられた構成にする場合(情報層が多層化された構成の場合)でも、上記と同様の記録特性を得ることができる。さらに、複数の記録層が互いに異なる組成比を有するときでも、その積層膜厚比を変えることによって同じターゲットを用いて形成できる。よって、本発明の第2の情報記録媒体では、1つの情報記録媒体において記録層組成の数に応じたターゲットを用意する必要がなくなり、情報記録媒体の低コスト化が可能である。
【0021】
また、本発明の第1および第2の情報記録媒体の製造方法によれば、上記のような効果を有する第1および第2の情報記録媒体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Ge−Sb−Teの三角図である。
【図2】本発明の実施の形態1における情報記録媒体の一部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における情報記録媒体の一部断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3における情報記録媒体の一部断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4における情報記録媒体の一部断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5における情報記録媒体の一部断面図である。
【図7】本発明の情報記録媒体に対して情報の記録再生を行う記録再生装置の一部構成の概略図である。
【図8】本発明の情報記録媒体および電気的情報記録再生装置について構成の一部を示す概略図である。
【図9】本発明の大容量の電気的情報記録媒体について構成の一部を示す概略図である。
【図10】本発明の電気的情報記録媒体とその記録再生システムについて構成の一部を示す模式図である。
【図11】実施例で適用した組成を示すGe−Sb−Teの三角図の一部拡大図である。
【図12】実施例より示される最適な組成領域を示すGe−Sb−Teの三角図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の第1の情報記録媒体について説明する。
【0024】
本発明の第1の情報記録媒体は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体である。前記記録層は、必須成分であるGeおよびSbと任意成分であるTeとからなる組成物を主成分として含む。前記組成物は、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する。
【0025】
このような組成物を用いて記録層が作製されることにより、例えば記録層の膜厚を薄くした場合(例えば膜厚を2〜7nm程度に薄くした場合)でも、青紫色レーザを用いて高速記録が可能であり、さらに信号保存性も良好な情報記録媒体を提供することができる。
【0026】
前記組成物は、図1に示す三角座標上で、
点(e)(25,75,0)、
点(f)(25,65,10)、
点(g)(7.2,65,27.8)および
点(h)(10,90,0)
で囲まれる領域内(但し、点(g)はTe−Ge10Sb90上のSb=65の点に相当し、点(e)−点(f)、点(f)−点(g)、点(g)−点(h)および点(h)−点(e)の各ライン上を含む。)の組成を有することが好ましい。このような組成物を記録層に適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0027】
さらに、前記組成物は、図1に示す三角座標上で、
点(j)(20.9,70,9.1)、
点(k)(11.8,70,18.2)、
点(m)(14.5,85.5,0)および
点(n)(20,80,0)
で囲まれる領域内(但し、点(j)はGe50Te50−Ge14.5Sb85.5上のSb=70の点、点(k)はTe−Ge14.5Sb85.5上のSb=70の点に相当し、点(j)−点(k)、点(k)−点(m)、点(m)−点(n)および点(n)−点(j)の各ライン上を含む。)の組成を有することが、より好ましい。このような組成物を記録層に適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0028】
また、前記記録層が、さらに元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)を含んでいてもよい。
【0029】
この場合、前記記録層において、前記元素Mの含有量が15原子%以下であることが好ましい。この組成物を適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0030】
さらに、前記元素Mが、C、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも何れか1つの元素であることが好ましい。これらの元素を適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0031】
また、本発明の第1の情報記録媒体は、レーザビーム入射側と反対側から順に配置された第1情報層〜第N情報層を備えており、前記第1情報層〜前記第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含んでいてもよい。
【0032】
この場合、前記第1情報層が前記記録層を有し、前記記録層の膜厚が30nm以下であることが好ましい。
【0033】
さらに、前記第2情報層および第3情報層の少なくとも何れか一方が前記記録層を有し、前記記録層の膜厚が15nm以下であることが好ましい。
【0034】
さらに、前記Nが4以上であり、第4情報層〜第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含み、前前記記録層の膜厚が4nm以下であることが好ましい。
【0035】
また、本発明の第1の情報記録媒体が、前記記録層に隣接して配置される第1の隣接層および第2の隣接層をさらに含み、前記第1の隣接層および前記第2の隣接層の少なくとも何れか一方が、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素の酸化物を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の第1の情報記録媒体は、記録層が上記に示した組成を有する組成物を主成分として含むことが特徴であり、この記録層が実質的に前記組成物からなるものであってもよい。なお、本明細書において、「実質的に、ある組成物からなる」とは、他の成分が含まれないか、または、他の成分が含まれている場合でもその含有量が不純物として混入する程度であり、具体的には1原子%未満であることをいう。
【0037】
また、前記組成物には、GeおよびSbからなる2元系組成物と、Ge、SbおよびTeからなる3元系組成物との両方が含まれる。これらの組成物を用いて作製された記録層は、Sbリッチであるため高結晶化能を有し、Geが含まれているため非晶質マークを安定化できる。SbおよびGeにさらにTeが含まれた3元系組成物を用いて作製される記録層では、結晶状態と非晶質状態との間の光学変化量がより大きくなるので、2元系組成物を用いた場合よりも良好な信号品質を得ることができる。したがって、Ge、SbおよびTeからなる3元系組成物を用いることによって、より大きな光学変化を得ることができ、情報記録媒体の信号品質をより向上させることが可能となる。
【0038】
次に、本発明の第2の情報記録媒体について説明する。
【0039】
本発明の第2の情報記録媒体は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体において、前記記録層は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層の厚み方向に順に配置することによって形成されており、前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)が、Ge−SbまたはTeを含む。
【0040】
Xが3以上、すなわち前記記録層が3層以上の構成層を含む場合、第1構成層と第X構成層が同じ材料であってもよい。また、第1構成層と第X構成層が異なる材料であってもよい。
【0041】
前記第1構成層〜前記第X構成層の各膜厚dm(nm)は、0.05≦dm≦25を満たすことが好ましい。
【0042】
また、前記第m構成層は、元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)をさらに含んでいてもよい。
【0043】
前記m構成層における前記元素Mの含有量は、15原子%以下であることが好ましい。この組成を適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0044】
さらに前記元素Mが、C、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも何れか1つの元素であることが好ましい。これらの元素を適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0045】
前記第m構成層が、GepSb100-p(原子%)(pは、0<p<100を満たす)またはGeqTe100-q(原子%)(qは、0≦q<100を満たす)の組成式で表される材料を含んでいてもよい。
【0046】
さらに、pが5≦p≦35を満たす、または、qが0≦q≦60を満たすことが好ましい。これらの組成を適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0047】
さらに、pが10≦p≦20を満たす、または、qが0≦q≦60を満たすことがより好ましい。これらの組成を適用することで、より高速記録に適し、再生信号品質も良好となる。
【0048】
本発明の第2の情報記録媒体は、レーザビーム入射側と反対側から順に配置された第1情報層〜第N情報層を備えており、前記第1情報層〜前記第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の第2の情報記録媒体は、前記記録層に隣接して配置される第1の隣接層および第2の隣接層をさらに含み、前記第1の隣接層および第2の隣接層の少なくとも何れか一方が、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素の酸化物を含んでいてもよい。
【0050】
次に、本発明の第1の情報記録媒体の製造方法(以下、単に第1の製造方法と記載する。)について説明する。本発明において、情報記録媒体の記録層はスパッタリング法により形成できる。
【0051】
本発明のターゲットは、本発明の第1の製造方法に用いることができるものであり、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する組成物を主成分として含む。
【0052】
本発明の第1の製造方法は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体の製造方法であって、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する組成物を主成分として含む前記記録層を、前記本発明のターゲットを用いて成膜する工程を含む。
【0053】
さらに、前記工程において、図1に示す三角座標上で、
点(e)(25,75,0)、
点(f)(25,65,10)、
点(g)(7.2,65,27.8)および
点(h)(10,90,0)
で囲まれる領域内(但し、点(g)はTe−Ge10Sb90上のSb=65の点に相当し、点(e)−点(f)、点(f)−点(g)、点(g)−点(h)および点(h)−点(e)の各ライン上を含む。)の組成を有する組成物を主成分として含む前記記録層を、前記ターゲットを用いて成膜してもよい。
【0054】
さらに、前記工程において、図1に示す三角座標上で、
点(j)(20.9,70,9.1)、
点(k)(11.8,70,18.2)、
点(m)(14.5,85.5,0)および
点(n)(20,80,0)
で囲まれる領域内(但し、点(j)はGe50Te50−Ge14.5Sb85.5上のSb=70の点、点(k)はTe−Ge14.5Sb85.5上のSb=70の点に相当し、点(j)−点(k)、点(k)−点(m)、点(m)−点(n)および点(n)−点(j)の各ライン上を含む。)の組成を有する組成物を主成分として含む前記記録層を、前記ターゲットを用いて成膜してもよい。
【0055】
また、前記ターゲットが、さらに元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)を含み、前記工程において、前記ターゲットを用いて前記記録層を成膜してもよい。
【0056】
また、前記ターゲットが、さらに元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)を含んでいてもよい。
【0057】
この場合、前記ターゲットにおいて、前記元素Mの含有量が15原子%以下であることが好ましい。
【0058】
さらに、前記元素Mが、C、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも何れか1つの元素であることが好ましい。
【0059】
また、前記情報記録媒体が、レーザビーム入射側と反対側から順に配置された第1情報層〜第N情報層を備え、前記第1情報層〜前記第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含んでいる場合、前記工程において、前記ターゲットを用いて前記記録層を成膜してもよい。
【0060】
また、本発明の第1の製造方法は、前記情報記録媒体が前記記録層に隣接して配置される第1の隣接層および第2の隣接層をさらに含んでいる場合、前記第1の隣接層および前記第2の隣接層の少なくとも何れか一方を、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素の酸化物を含むターゲットを用いて成膜する工程をさらに含んでいてもよい。
【0061】
次に、本発明の第2の情報記録媒体の製造方法(以下、単に第2の製造方法と記載する。)について説明する。本発明において、情報記録媒体の記録層はスパッタリング法により形成される。
【0062】
本発明の第2の製造方法は、レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体の製造方法であって、前記記録層は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層の厚み方向に順に配置することによって形成されており、前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)を、Ge−SbまたはTeを含むターゲットを用いて成膜する工程を含む。
【0063】
前記ターゲットが、さらに元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)を含み、前記工程において、前記ターゲットを用いて前記第m構成層を成膜してもよい。
【0064】
この場合、前記ターゲットにおいて、前記元素Mの含有量が15原子%以下であることが好ましい。
【0065】
さらに、前記元素Mが、C、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも何れか1つの元素であることが好ましい。
【0066】
また、前記工程において、前記ターゲットを用いて、GepSb100-p(原子%)(pは、0<p<100を満たす)またはGeqTe100-q(原子%)(qは、0≦q<100を満たす)の組成式で表される材料を含む前記第m構成層を成膜してもよい。
【0067】
さらに、前記第m構成層において、pが5≦p≦35を満たす、または、qが0≦q≦60を満たすことが好ましい。
【0068】
さらに、前記第m構成層において、pが10≦p≦20を満たす、または、qが0≦q≦60を満たすことがより好ましい。
【0069】
前記情報記録媒体が、レーザビーム入射側と反対側から順に配置された第1情報層〜第N情報層を備えており、前記第1情報層〜前記第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含む場合、前記工程において、前記ターゲットを用いて前記記録層における前記第m構成層を成膜してもよい。
【0070】
本発明の第2の製造方法において、前記情報記録媒体が前記記録層に隣接して配置される第1の隣接層および第2の隣接層をさらに含んでいる場合、前記第1の隣接層および前記第2の隣接層の少なくとも何れか一方を、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素の酸化物を含むターゲットを用いて成膜する工程をさらに含んでいてもよい。
【0071】
以下に、本発明の第1および第2の情報記録媒体、さらに本発明の第1および第2の製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態では、同一の部材については同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0072】
(実施の形態1)*シングル6層
本発明の実施の形態1として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を行う情報記録媒体の一例(本発明の第1の情報記録媒体の一例)を説明する。図2に、その光学的情報記録媒体の一部断面を示す。
【0073】
図2に示す情報記録媒体1は、基板11の表面上に、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17、カバー層18がこの順に配置されることにより形成されている。この情報記録媒体1には、第1の誘電体層17側から記録・再生用のエネルギービーム(一般的には、レーザ光)19が照射される。
【0074】
カバー層18は、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等からなり、使用するレーザ光に対して光吸収が小さいことが好ましい。カバー層18には、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。これらの材料を使用する場合は、カバー層18を、例えば、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂によって第1の誘電体層17に貼り合わせることにより形成する。
【0075】
基板11は円盤状の透明な基板である。基板11の材料には、例えばポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMA等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。基板11の記録層15側の表面には、必要に応じてレーザ光を導くための案内溝(トラックピッチ0.32μm)が形成されていてもよい。基板11における記録層15と反対側の面は、平滑であることが好ましい。なお、基板11の厚さは500μm〜1300μm程度であるが、特にカバー層18の厚みが100μm程度(開口数(NA)=0.85で良好な記録・再生が可能な厚みである。)の場合、基板11の厚みは1050μm〜1150μmの範囲にあることが好ましい。
【0076】
反射層12は、記録層15に吸収される光量を増大させるという光学的な機能を有する。また、反射層12は、記録層15で生じた熱を速やかに拡散させ、記録層15を非晶質化しやすくするという熱的な機能も有する。さらに、反射層12は、使用する環境から多層膜を保護するという機能も有する。
【0077】
反射層12の材料には、例えばAg、Au、Cu、Al、Pt、TiおよびWといった熱伝導率が高い単体金属を用いることができる。また、AlにCr、Ni、Tiなどを添加したAl合金、AuにCu、Cr、Ndなどを添加したAu合金、AgにCu、Pd、Ga、In、Ndなどを添加したAg合金、Ag−CuにPd、Ti、Ru、Al、Au、Ni、Nd、Ga、Ca、In、Gd、Yなどを添加したAg合金、またはAg−NdにAuやPdなどを添加したAg合金、Ag−InにSnやGaなどを添加したAg合金、またAg−Ga−Sn、Ag−Ga−Y、Ag−Ga−Al、Ag−Zn−Al、Cu−Siといった合金を用いることもできる。特にAg合金は熱伝導率が大きいため、反射層12の材料として好ましい。なお、Ag合金に添加する金属の添加濃度は、3原子%以下が好ましい。反射層12の膜厚は、熱拡散機能が十分となる30nm以上であることが好ましい。この範囲内においても、反射層12が240nmより厚い場合には、その熱拡散機能が大きくなりすぎて記録感度が低下する場合がある。したがって、反射層12の膜厚は30nm〜240nmの範囲内であることがより好ましい。
【0078】
第2の誘電体層13は、光学的距離を調節して記録層15の光吸収率を高める働きと、記録前後での反射光量の変化率を大きくして信号振幅を大きくする働きとを有する。また記録層15において発生した熱を速やかに反射層12へ拡散させ、記録層15を冷却する働きも有する。この熱拡散効果が優れている場合、記録層15への熱的負荷が軽減されて、良好な繰り返し書き換え特性が得られる。第2の誘電体層13の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2、ZrSiO4、ZnO、SnO2、Bi23、HfO2、Cr23、In23、Ga23、Al23、TiO2、Nb25、Ta25、Y23およびDy23等の酸化物、C−N、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−NおよびGe−Cr−N等の窒化物、SiC等の炭化物、ZnS等の硫化物およびLaF3、CeF3およびYF3等のフッ化物を用いることができる。またそれらより2種以上が選ばれた混合物でもよい。具体的な例として、ZrO2−Y23(安定化ジルコニアもしくは部分安定化ジルコニア)、ZrO2−Cr23、ZrO2−SiO2−Cr23、ZrO2−Y23−Cr23、ZrSiO4−Cr23、ZrO2−SiO2−ZnO、ZrO2−In23、ZrO2−SiO2−In23、ZrO2−Y23−In23、ZrO2−SiO2−In23−Cr23、HfO2−Cr23、HfO2−SiO2−Cr23、ZrO2−Ga23、ZrO2−SiO2−Ga23、ZrO2−Al23、ZrO2−Ti23、SiO2−TiO2、TiO2−Nb25、ZrO2−Nb25、ZrO2−Ta25、ZrO2−SiO2−Al23、ZrO2−Dy23、ZrO2−SiO2−Dy23、Bi23−SiO2、ZrO2−AlN、Al23−AlN、ZrO2−Cr23−SiC、SnO2−SiC、ZrO2−SiO2−ZnS、SiO2−ZnS、ZrO2−SiO2−LaF3、ZrO2−SiO2−Cr23−LaF3、ZrO2−CeF3、ZrO2−SiO2−CeF3、ZrO2−SiO2−Cr23−CeF3、Dy23−CeF3およびZrO2−Dy23−CeF3等が挙げられる。第2の誘電体層13の膜厚として、2nm〜50nmであることが好ましく、より反射光量の変化率を大きくするためには3nm〜35nmであることがより好ましい。
【0079】
第1の界面層16および第2の界面層14は、記録層15に隣接して配置されている層であり、本発明の第1の情報記録媒体における第1の隣接層および第2の隣接層に該当する。第2の界面層14および第1の界面層16は、記録層15への元素の拡散や水分の混入を防止するバリアとしての働きを有する。また、記録層15と接して設けられているため記録層15の結晶化速度を促進または抑制する効果があり、カルコゲナイド材料からなる記録層15と密着性に優れていることが望まれる。これらの界面層には光吸収の少ない材料を適用することが好ましく、界面層14および16の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2、ZrSiO4、ZnO、SnO2、Bi23、HfO2、Cr23、In23、Ga23、Al23、TiO2、Nb25、Y23およびDy23等の酸化物、C−N、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−NおよびGe−Cr−N等の窒化物、SiC等の炭化物、ZnS等の硫化物およびLaF3、CeF3およびYF3等のフッ化物を用いることができる。またそれらより2種以上が選ばれた混合物でもよい。また、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも1つの酸化物を含んでいることが好ましく、具体的には、ZrO2−Y23(安定化ジルコニアもしくは部分安定化ジルコニア)、ZrO2−Cr23、ZrO2−SiO2−Cr23、ZrO2−Y23−Cr23、ZrSiO4−Cr23、ZrO2−In23、ZrO2−SiO2−In23、ZrO2−Y23−In23、ZrO2−SiO2−In23−Cr23、HfO2−Cr23、HfO2−SiO2−Cr23、ZrO2−Ga23、ZrO2−SiO2−Ga23、ZrO2−Al23、ZrO2−Ti23、SiO2−TiO2、TiO2−Nb25、ZrO2−Nb25、ZrO2−SiO2−Al23、ZrO2−Dy23、ZrO2−SiO2−Dy23、ZrO2−Cr23−SiC、SnO2−SiC、ZrO2−SiO2−ZnS、SiO2−ZnS、ZrO2−SiO2−LaF3、ZrO2−SiO2−Cr23−LaF3、ZrO2−CeF3、ZrO2−SiO2−CeF3、ZrO2−SiO2−Cr23−CeF3、Dy23−CeF3およびZrO2−Dy23−CeF3等が挙げられる。界面層14および16の膜厚は1nm〜12nmであることが好ましい。界面層の膜厚が薄すぎると、バリアとしての十分な効果が得られず、記録層15への元素の拡散や水分の混入を招き、信号品質が悪化する。また、膜厚が厚すぎると記録層15に対する結晶化促進または抑制効果が大きくなりすぎ、記録・再生特性が悪化する。このため膜厚はさらに3nm〜10nmであることが好ましい。
【0080】
第1の誘電体層17は、記録層15を水分等から保護する働きに加え、第2の誘電体層13と同様に、光学的距離を調節して記録層15の光吸収率を高める働きと、記録前後での反射光量の変化率を大きくして信号振幅を大きくする働きとを有する。第1の誘電体層17には、例えば、TiO2、ZrO2、HfO2、SiO2、MgO、ZnO、Nb22、Ta25およびAl23等の酸化物やC−N、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−NおよびGe−Cr−N等の窒化物を用いることができる。また、ZnS等の硫化物やSiC等の炭化物も用いることができる。また、上記材料の混合物も用いることができる。また、第2の誘電体層13で説明した酸化物−フッ化物誘電体を用いることもできる。これらの材料において、例えば、ZnSとSiO2の混合物は非晶質材料で、成膜速度が速く、屈折率が高く、機械的強度や耐湿性が良好であるため、第1の誘電体層17に適用する材料として特に優れている。第1の誘電体層17の膜厚は、マトリクス法(例えば、久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年、第3章参照。)に基づく計算により、記録層15が結晶相の場合と非晶質相の場合との反射光量の変化率を大きくし、また記録層15での光吸収が大きくなる条件により、決定することができる。具体的な膜厚としては、10nm〜150nmの範囲内にあることが望ましく、25nm〜80nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0081】
記録層15は本発明の特徴を成す部分である。記録層15の材料には、レーザビーム19の入射により相変化を起こす材料を用いることができる。記録層15は、必須成分であるGeおよびSbと任意成分であるTeとからなる組成物を主成分として含む。この組成物は、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する。この範囲内の組成を適用することで、結晶化温度が高く熱的安定性があり、結晶部と非晶質部(記録部と未記録部)の間の光学変化も大きく、且つ高線速度で書換え可能な情報記録媒体を得ることができる。本実施の形態では、記録層15が実質的に上記組成物からなる場合について説明する。
【0082】
またこの範囲内の組成において、Sb量が増えるほど結晶化が促進され、結晶化速度が速くなる。このため高線速度記録においては、記録層15が、図1に示す三角座標上で、
点(e)(25,75,0)、
点(f)(25,65,10)、
点(g)(7.2,65,27.8)および
点(h)(10,90,0)
で囲まれる領域内(但し、点(g)はTe−Ge10Sb90上のSb=65の点に相当し、点(e)−点(f)、点(f)−点(g)、点(g)−点(h)および点(h)−点(e)の各ライン上を含む。)の組成を有することが好ましく、さらに、
点(j)(20.9,70,9.1)、
点(k)(11.8,70,18.2)、
点(m)(14.5,85.5,0)および
点(n)(20,80,0)
で囲まれる領域内(但し、点(j)はGe50Te50−Ge14.5Sb85.5上のSb=70の点、点(k)はTe−Ge14.5Sb85.5上のSb=70の点に相当し、点(j)−点(k)、点(k)−点(m)、点(m)−点(n)および点(n)−点(j)の各ライン上を含む。)の組成を有することがより好ましい。
【0083】
また、記録層15が元素M(但し、MはN、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)をさらに含むことで、結晶部と非晶質部の光学変化を大きくすることができ、再生信号品質を向上させることができる。ただし、過剰添加により結晶化速度の低下も考えられるので、元素Mの添加量としては15%以下が好ましい。また元素MをC、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも何れか1つの元素とする場合、より再生信号品質を向上することができる。
【0084】
また、記録層15の膜厚としては、厚くしすぎると熱容量が大きくなり、より大きな記録パワーが必要となるため、30nm以下であることが好ましい。
【0085】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体1の製造方法(本発明の第1の製造方法の一例)について説明する。
【0086】
反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15、第1の界面層16および第1の誘電体層17は、気相成膜法の1つであるスパッタリング法により形成できる。まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0087】
続けて、まず、反射層12を成膜する。このとき、基板11に案内溝が形成されているときは、この案内溝側に反射層12を成膜する。反射層12は、反射層12を構成する金属または合金からなるターゲットを、希ガス(例えば、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。なかでも低コストであるArガスが好ましく用いられる。これ以下に述べる希ガスについても同様である。)雰囲気中、または希ガスと反応ガス(例えば、酸素ガスや窒素ガス)との混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより形成される。
【0088】
続いて、反射層12上に第2の誘電体層13を成膜する。第2の誘電体層13は第2の誘電体層13を構成する混合物からなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。
【0089】
続いて、第2の誘電体層13上に第2の界面層14を成膜する。第2の界面層14は、第2の界面層14を構成する誘電体の混合物からなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。また、第2の界面層14を構成する金属元素を含むターゲットを用いて、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中における反応性スパッタリングによっても、第2の界面層14を形成できる。
【0090】
続いて、第2の界面層14上に記録層15を成膜する。記録層15は、その組成に応じて、Ge−Sb−Te合金またはGe−Sb−Te−M合金などからなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中またはKrと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。また、記録層15は、Ge、Sb、Te、または元素Mの各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。また、記録層15は、Ge、Sb、Te、またはMのうちいずれかの元素を組み合わせた2元ターゲットや3元ターゲットなどを、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらの場合でも、希ガス雰囲気中、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中またはKrと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。本実施の形態で用いる記録層15用のターゲットには、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)で表した場合、
点(a)(35,65,0)、
点(b)(36.9,60,3.1)、
点(c)(3.2,60,36.8)および
点(d)(5,95,0)
で囲まれる領域内(但し、点(b)はGe60Te40−Ge35Sb65上のSb=60の点、点(c)はTe−Ge5Sb95上のSb=60の点に相当し、点(a)−点(b)、点(b)−点(c)、点(c)−点(d)および点(d)−点(a)の各ライン上を含む。)の組成を有する組成物を主成分として含むターゲットを用いることができる。
【0091】
続いて、記録層15上に第1の界面層16を成膜する。第1の界面層16は、第1の界面層16を構成する混合物からなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。また、第1の界面層16を構成する金属元素を含むターゲットを用いて、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中における反応性スパッタリングによっても、第1の界面層16を形成できる。
【0092】
続いて、第1の界面層16上に第1の誘電体層17を成膜する。第1の誘電体層17は、第1の誘電体層17を構成する混合物からなるスパタリングターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。また、第1の誘電体層17を構成する金属元素を含むターゲットを用いて、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中における反応性スパッタリングによっても、第1の誘電体層17を形成できる。
【0093】
上記各スパッタリング工程における電源は、直流(DC:Direct Current)電源および高周波(RF:Radio Frequency)電源を用いることができ、供給電力はともに1W〜10kWとしてよい。なお、DC電源を用いて行うスパッタリングをDCスパッタリング、RF電源を用いて行うスパッタリングをRFスパッタリングと呼ぶ。
【0094】
また、スパッタリング中における成膜室の圧力は、例えば0.01Pa〜100Paとできる。
【0095】
最後に、第1の誘電体層17上にカバー層18を形成する。カバー層18は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を第1の誘電体層17上に塗布しスピンコートとした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。またカバー層18には、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスの円盤状の基板を用いてもよい。この場合は、第1の誘電体層17に光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を塗布し、これらの基板を密着させ、スピンコートにより均一に延ばし、樹脂を硬化させることで形成できる。
【0096】
なお、各層の成膜方法として、スパッタリング法以外に、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相堆積法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)および分子線エピタキシー法(MBE法:Molecular Beam Epitaxy)を用いることも可能である。
【0097】
なお、第1の誘電体層17を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層15の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。この初期化は、レーザ光の照射により行うことができる。
【0098】
(実施の形態2)*シングル5層
本発明の実施の形態2として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を行う情報記録媒体のさらに別の一例(本発明の第1の情報記録媒体の別の例)を説明する。図3に、その光学的情報記録媒体の一部断面を示す。
【0099】
図3に示す情報記録媒体2は、基板11の表面上に、反射層12、第2の誘電体層13、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17、カバー層18がこの順に積層されることにより形成されている。この情報記録媒体2には、第1の誘電体層17側から記録・再生用のエネルギービーム(一般的には、レーザ光)19が照射される。なお、情報記録媒体2では、第2の誘電体層13および第1の界面層16が記録層15に隣接する層(第1の隣接層および第2の隣接層)である。
【0100】
基板11、反射層12、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17およびカバー層18は、それぞれ実施の形態1で示したものと材料、機能および形状も同様である。
【0101】
第2の誘電体層13の材料は、実施の形態1で示したものと同様である。機能は、実施の形態1の場合に加え、記録層15と接して設けられているため記録層15の結晶化速度を促進または抑制する効果がある。また、カルコゲナイド材料からなる記録層15と密着性に優れていることが望まれる。よって、材料として実施の形態1における第2の界面層14と同様であることがより好ましい。第2の誘電体層13の膜厚は実施の形態1同様、マトリクス法に基づく計算により、決定することができる。具体的な膜厚としては、2nm〜80nmの範囲内にあることが望ましく、4nm〜45nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0102】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体2の製造方法(本発明の第1の製造方法の別の例)について説明する。
【0103】
まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0104】
続けて、反射層12、第2の誘電体層13、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態1で示したものと同様である。最後にカバー層18を実施の形態1と同様の方法で形成する。
【0105】
なお、第1の誘電体層17を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層15の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。この初期化は、レーザ光の照射により行うことができる。
【0106】
(実施の形態3)*多層N層
本発明の実施の形態3として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を行う情報記録媒体のさらに別の一例(本発明の第1の情報記録媒体の別の例)を説明する。図4に、その光学的情報記録媒体の一部断面を示す。本実施の形態の情報記録媒体3は、情報を記録再生する情報層をN層(Nは2以上の整数)含んでおり、片面からのエネルギービーム(一般的には、レーザ光)19の照射により、各情報層に対して情報を記録再生できる多層光学的情報記録媒体である。情報記録媒体3には、光学分離層32、34、35、37などを介して順次情報層が積層されることによって、第1情報層31〜第N情報層38が設けられている。
【0107】
基板11およびカバー層18はそれぞれ実施の形態1で示したものと材料、機能および形状も同様である。
【0108】
光学分離層32、34、35、37などは、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等からなり、使用するレーザ光に対して光吸収が小さいことが好ましい。光学分離層32、34、35、37などは、第1情報層31、第2情報層33、第n情報層36(nは2≦n≦Nなる整数)および第N情報層38のフォーカス位置を区別するために用いられ、厚さは対物レンズの開口数(NA)とレーザ光の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上であることが必要である。焦点の光強度の基準を無収差の場合の80%と仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。また、光学分離層32、34、35、37などにおいてレーザ光の入射側に案内溝が形成されていてもよい。
【0109】
まず、第1情報層31の構成について説明する。第1情報層31は基板11の表面上に、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17がこの順に配置されることにより形成されている。基板11、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15、第1の界面層16および第1の誘電体層17は、それぞれ実施の形態1で示したものと材料、機能および形状も同様である。すなわち、本実施の形態の情報記録媒体3では、第1情報層31に含まれる記録層15が、本発明の第1の情報記録媒体における記録層に相当する。なお、第1情報層31において、第2の界面層14は必ずしも設ける必要はない。
【0110】
次に第n情報層36の構成について説明する。第n情報層36の構成を図4に示す。第n情報層36は光学分離層35の表面上に、透過率調整層301、反射層302、第2の誘電体層303、記録層304、第1の界面層305、第1の誘電体層306がこの順に配置されることにより形成されている。
【0111】
透過率調整層301は、第n情報層36の透過率を調整する働きを有する。この層を設けることにより、記録層が結晶状態における第n情報層36の透過率Tc(%)と、記録層304が非晶質状態における第n情報層36の透過率Ta(%)を共に高くすることができる。具体的には、透過率調整層301を設けた場合、透過率調整層301が無い場合に比べ、TcおよびTaを2〜10%向上させることができる。また、記録層304において発生した熱を速やかに反射層302へ拡散させ、記録層35を冷却する働きも有する。透過率をより高めるため、透過率調整層301の屈折率n1および減衰係数k1は、n1≧2.0およびn1≦0.1を満たすことが好ましく、さらに2.0≦n1≦3.0およびk1≦0.05を満たすことがより好ましい。透過率調整層301には、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb25、Ta25、Al23、Bi23、Y23およびCeO2等の酸化物や、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ta−N、Si−N、Ge−N、Cr−N、Al−N、Ge−Si−NおよびGe−Cr−N等の窒化物を用いることができ、その膜厚d1は、(1/16)λ/n1≦d1≦(7/32)λ/n1または(9/16)λ/n1≦d1≦(21/32)λ/n1を満たすことが好ましい。
【0112】
反射層302には、実施の形態1で示した反射層12と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。膜厚は、情報層に透過性を持たせるため、20nm以下であることが好ましい。
【0113】
第2の誘電体層303の材料には、実施の形態1における第2の誘電体層13や第2の界面層14の材料を用いることができる。第2の誘電体層303は、光学的距離を調節して記録層304の光吸収率を高める働きや、記録前後での反射光量の変化率を大きくして信号振幅を大きくする働きを有する。また、記録層304において発生した熱を速やかに反射層302へ拡散させ、記録層304を冷却する働きも有する。また、記録層304と接して設けられているため記録層の結晶化速度を促進または抑制する効果もある。膜厚はマトリクス法に基づく計算により、決定することができる。
【0114】
記録層304は、実施の形態1で示した記録層15と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様であるが、膜厚はレーザ光の透過率を上げるため、なるべく薄くすることが好ましい。第n情報層36が第2および第3情報層の場合は、記録層304の膜厚は15nm以下であることが好ましく、第4情報層以上(第4情報層〜第N情報層)の場合は、記録層304の膜厚は4nm以下が好ましい。
【0115】
N層の情報層を有する多層光学的情報記録媒体において、少なくとも1つの情報層の記録層で本発明における相変化材料(実施の形態1における記録層15の材料)を適用した場合、他の情報層の記録層は本発明における相変化材料に限らない。例えば、組成式:GerM1sM2tTe100-(r+s+t)(原子%)で表される材料を用いることができる。M1はSb、BiおよびSnより選ばれる元素である。M2はSi、Ti、V、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Se、Ru、Rs、Pd、Mn、Ag、Al、Cr、Sn、Ga、In、Ta、Dy、Gd、Td、Os、Ir、W、PtおよびAuより選ばれる元素である。rは30≦r≦50を満たすことが好ましく、さらにsは35≦s≦60を満たすことが好ましい。また、tは0<t≦20を満たすことが好ましい。また、他にも、例えばSbと元素M3(但し、M3はAl、V、Mn、Ga、Ge、Se、Ag、In、Sn、Te、Pb、Bi、C、Si、ZnおよびAuから選ばれる少なくとも1つの元素)を含む材料で形成することもできる。具体的には、SbuM3100-u(原子%)で表される材料で形成できる。uが、50≦u≦95を満たす場合には、記録層が結晶相の場合と非晶質相の場合との間の情報記録媒体の反射率差を大きくでき、良好な記録再生特性が得られる。その中でも、75≦u≦95の場合には、結晶化速度が特に速く、高い転送レートにおいて良好な書き換え性能が得られる。また、50≦u≦75の場合には、非晶質相が特に安定で、低い転送レートにおいて良好な記録性能が得られる。
【0116】
また、非可逆的相変化材料で形成することができる。非可逆的相変化材料としては、例えば特開平7−25209号公報(特許第2006849号)に開示されるように、TeOx+M4(但し、M4はPd、Ge、Si、Biなどの元素。)を用いることが好ましい。記録層が非可逆的相変化材料の場合、1回のみ書き込み可能な追記型の情報記録媒体となるが、そのような情報記録媒体においても、記録感度、信号保存性の課題を改善するため、本発明が好ましく適用される。
【0117】
第1の界面層305は、実施の形態1で示した第1の界面層16と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。
【0118】
第1の誘電体層306は、実施の形態1で示した第1の誘電体層17と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。膜厚はマトリクス法に基づく計算により、決定することができる。
【0119】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体3の製造方法(本発明の第1の製造方法の別の例)について説明する。
【0120】
まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0121】
続けて第1情報層31を形成のため、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態1で示したものと同様である。
【0122】
続いて、第1の誘電体層17上に光学分離層32を形成する。光学分離層32は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を第1情報層31上に塗布しスピンコートとした後に、樹脂を硬化させることにより形成できる。なお、光学分離層32に案内溝を設ける場合は、表面に所定の形状の溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂上に設置した後、基板11と転写用基板とをスピンコートすることにより密着させる。その後、樹脂を硬化させる。さらにその後、転写用基板を硬化した樹脂から剥がすことにより、所定の案内溝が形成された光学分離層32が形成できる。
【0123】
続けて第2情報層33を形成し、続けて光学分離層32同様に光学分離層34を形成する。第2情報層33の形成方法は、下記に示す第n情報層と同様である。
【0124】
光学分離層32と同様の方法で光学分離層35を形成し、続けて第n情報層36を形成する。第n情報層36を形成する際、まず透過率調整層301を形成する。透過率調整層301は、透過率調整層301を構成する誘電体からなるターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、または希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。また、透過率調整層32は、構成する金属元素を含むターゲットを用いて、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中における反応性スパッタリングによっても形成できる。
【0125】
続けて、透過率調整層301上に反射層302を形成する。反射層302は、実施の形態1で説明した反射層12と同様の方法で形成できる。
【0126】
続けて、反射層302上に第2の誘電体層303を形成する。第2の誘電体層303は、実施の形態1で説明した第2の誘電体層13または第2の界面層14と同様の方法で形成できる。
【0127】
続けて、第2の誘電体層303上に記録層304を形成する。記録層304は、実施の形態1で説明した記録層15と同様の方法で形成できる。
【0128】
続けて、記録層304上に第1の界面層305を形成する。第1の界面層36は、実施の形態1で説明した第1の界面層16と同様の方法で形成できる。
【0129】
続けて、第1の界面層305上に第1の誘電体層306を形成する。第1の誘電体層306は、実施の形態1で説明した第1の誘電体層17と同様の方法で形成できる。
【0130】
続けて、光学分離層を介して第n+1〜第N−1情報層を作製した後、光学分離層32と同様の方法で光学分離層37を形成し、第N情報層38を形成する。最後に、第N情報層38上にカバー層18を実施の形態1と同様の方法で形成する。
【0131】
なお、各々の情報層を形成した後またはカバー層18を形成した後、必要に応じて各々の情報層の記録層の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。いずれの場合の初期化も、レーザ光の照射により行うことができる。
【0132】
(実施の形態4)*2層
本発明の実施の形態4として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を行う情報記録媒体のさらに別の一例(本発明の第1の情報記録媒体の別の例)を説明する。図5に、その光学的情報記録媒体の一部断面を示す。本実施の形態の情報記録媒体4は、情報を記録再生する情報層を2つ(第1情報層31および第2情報層42)含んでおり、片面からのエネルギービーム(一般的には、レーザ光)19の照射により、各情報層に対して情報を記録再生できる情報記録媒体である。
【0133】
基板11、第1情報層31、光学分離層32およびカバー層18は、実施の形態3で示したものと同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。
【0134】
第2情報層42の構成について説明する。第2情報層42は光学分離層32の表面上に、透過率調整層401、反射層402、第2の誘電体層403、記録層404、第1の界面層405、第1の誘電体層406がこの順に積層されることにより形成されている。
【0135】
透過率調整層401には、実施の形態3で示した透過率調整層301と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。具体的な膜厚としては、8nm〜50nmであることが好ましい。
【0136】
反射層402には、実施の形態3で示した反射層301と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。具体的な膜厚としては、3nm〜20nmであることが好ましい。
【0137】
第2の誘電体層403の材料には、実施の形態3における第2の誘電体層303の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。具体的な膜厚としては、3nm〜45nmの範囲内にあることが望ましく、5nm〜30nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0138】
記録層404は、実施の形態3で示した記録層403と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。具体的な膜厚としては、15nm以下であることが好ましい。
【0139】
第1の界面層405は、実施の形態3で示した第1の界面層305と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。具体的な膜厚としては、2nm〜10nmであることが好ましい。
【0140】
第1の誘電体層406は、実施の形態3で示した第1の誘電体層306と同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。膜厚としては、10nm〜80nmの範囲内にあることが望ましく、20nm〜60nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0141】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体4の製造方法(本発明の第1の製造方法の別の例)について説明する。
【0142】
まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0143】
続けて第1情報層31を形成のため、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15、第1の界面層16、第1の誘電体層17を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態1で示したものと同様である。
【0144】
続いて、第1の誘電体層17上に光学分離層32を形成する。形成方法は実施の形態3で示したものと同様である。
【0145】
続けて第2情報層42を形成する。第2情報層42を形成する際には、まず透過率調整層401を形成する。透過率調整層401は、実施の形態3で説明した透過率調整層301と同様の方法で形成できる。
【0146】
続けて、透過率調整層401上に反射層402を形成する。反射層402は、実施の形態3で説明した反射層302と同様の方法で形成できる。
【0147】
続けて、反射層402上に第2の誘電体層403を形成する。第2の誘電体層403は、実施の形態3で説明した第2の誘電体層303と同様の方法で形成できる。
【0148】
続けて、第2の誘電体層403上に記録層404を形成する。記録層404は、実施の形態3で説明した記録層304と同様の方法で形成できる。
【0149】
続けて、記録層404上に第1の界面層405を形成する。第1の界面層405は、実施の形態3で説明した第1の界面層305と同様の方法で形成できる。
【0150】
続けて、第1の界面層405上に第1の誘電体層406を形成する。第1の誘電体層406は、実施の形態3で説明した第1の誘電体層306と同様の方法で形成できる。
【0151】
最後に、第1の誘電体層406上に、カバー層18を実施の形態1と同様の方法で形成する。
【0152】
なお、第1の誘電体層17を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層15の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。また、第1の誘電体層406を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層404の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。いずれの場合の初期化も、レーザ光の照射により行うことができる。
【0153】
(実施の形態5)*RAM
本発明の実施の形態5として、レーザ光を用いて情報の記録および再生を行う情報記録媒体のさらに別の一例(本発明の第1の情報記録媒体の別の例)を説明する。図6に、その光学的情報記録媒体の一部断面を示す。
【0154】
図6に示す情報記録媒体5は、基板53の表面上に、第1の誘電体層17、第1の界面層16、記録層15、第2の界面層14、第2の誘電体層13、反射層12、接着層52、ダミー基板51がこの順に配置されることにより形成されている。この情報記録媒体には、第1の誘電体層17側から記録・再生用のエネルギービーム(一般的には、レーザ光)19が照射される。
【0155】
基板53およびダミー基板51は、透明で円盤状の基板である。基板53およびダミー基板51には、実施の形態1の基板11と同様に、例えば、ポリカーボネートやアモルファスポリオレフィンやPMMA等の樹脂、またはガラスを用いることができる。基板53の第1誘電体層17側の表面には、必要に応じてレーザビームを導くための案内溝(トラックピッチ0.615μm)が形成されていてもよい。基板53の第1誘電体層17側と反対側の表面およびダミー基板51の接着層52側と反対側の表面は、平滑であることが好ましい。なお、基板53およびダミー基板51の厚さは、十分な強度があり、且つ情報記録媒体5の厚さが1.2mm程度となるよう、0.3mm〜0.9mmの範囲内であることが好ましい。
【0156】
接着層52は、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂からなり、使用するレーザビーム19に対して光吸収が小さいことが好ましく、短波長域において光学的に複屈折が小さいことが好ましい。なお、接着層52の厚さは、0.2μm〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
【0157】
反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14、記録層15および第1の界面層16および第1の誘電体層17はそれぞれ実施の形態1で示したものと材料、機能および形状も同様である。記録層15の膜厚としては、具体的には30nm以下であることが好ましい。
【0158】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体5の製造方法(本発明の第1の製造方法の別の例)について説明する。
【0159】
まず、基板53(例えば、厚み600μm)を成膜装置内に配置する。
【0160】
続けて、第1の誘電体層17、第1の界面層16、記録層15、第2の界面層14、第2の誘電体層13、反射層12を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態1で示したものと同様である。次に、情報層が積層された基板53およびダミー基板51(例えば、厚み600μm)を、接着層52を用いて貼り合わせる。具体的には、光硬化型樹脂(特に紫外線硬化型樹脂)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂をダミー基板51上に塗布して、情報層が積層された基板53をダミー基板51上に密着させてスピンコートしたのち、樹脂を硬化させるとよい。また、ダミー基板51上に予め粘着性の樹脂を均一に塗布し、それを情報層が積層された基板53に密着させることもできる。
【0161】
なお、基板53およびダミー基板51を密着させた後、必要に応じて記録層15の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。この初期化は、レーザ光の照射により行うことができる。
【0162】
(実施の形態6)*Super−Lattice シングル
本発明の実施の形態6として、実施の形態1および2で示した情報記録媒体1または2の記録層15の異なる構成(本発明の第2の情報記録媒体の一例)について説明する。なお、便宜上、図2または図3を参照しながら、本実施の形態の情報記録媒体を説明する。
【0163】
基板11、反射層12、第2の誘電体層13、第2界面層14、第1の界面層16、第1の誘電体層17、カバー層18は実施の形態1および2で示したものと同様の材料を用いることができ、また、機能および形状も同様である。
【0164】
本実施の形態における記録層15は、相変化を起こす材料で、厚み方向に1番目からX番目(Xは2以上の整数)まで順に配置された構成層(第1構成層〜第X構成層)からなる。第1構成層〜第X構成層のうち少なくとも1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)が、Ge−SbまたはTeを含んでいる。このように、記録層を複数の構成層によって形成して各構成層の組成や膜厚を適宜調整することによって、記録層全体としてみれば、例えば実施の形態1および2で示した記録層材料と同様の機能を備えた記録層材料を実現できる。したがって、限られた枚数のターゲット(例えば、第1〜第X構成層がGe−Sbを含む層とTeを含む層とで形成されている場合は、Ge−Sbを含むターゲットとTeを含むターゲットの2種類のターゲット)から記録層15を形成でき、情報記録媒体の低コスト化が可能となる。また、第1構成層と第X構成層(Xは3以上)が同じ材料を含んでいてもよいし、第1構成層と第X構成層が異なる材料を含でいてもよい。各構成層の膜厚dm(nm)は0.05≦dm≦25であることが好ましく、また記録層15の膜厚としては30nm以下であることが好ましい。
【0165】
また、第m構成層が元素M(但し、MはN、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも1つの元素)を含むことで、結晶部と非晶質部の光学変化を大きくすることができ、再生信号品質を向上させることができる。ただし、過剰添加により結晶化速度の低下も考えられるため、元素Mの添加量としては15原子%以下が好ましい。また、元素MがC、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも1つであるとき、より再生信号品質を向上させることができる。
【0166】
また、第m構成層が、GepSb100-p(0<p<100)(原子%)またはGeqTe100-q(0≦q<100)(原子%)の組成式で表される材料を含むことで、より再生信号品質を向上させることができる。このとき、高線速度記録に対して、5≦p≦35または0≦q≦60の範囲であることが好ましく、10≦p≦20または0≦q≦60の範囲であることがより好ましい。
【0167】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体の製造方法(本発明の第2の製造方法の一例)について説明する。
【0168】
まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0169】
続いて、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14を順次形成する。形成方法は、実施の形態1で説明した方法と同様である。
【0170】
続けて、第2の界面層14上に記録層15を形成する。本実施の形態における記録層15は、第1構成層から第X構成層までを順次スパッタリング法により成膜してくことにより形成できる。第m構成層の形成方法は、その組成に応じて、Ge−Sb合金、Te、元素Mなどからなるスパッタリングターゲットを用いて、希ガス雰囲気中、希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中またはKrと反応ガスとの混合ガス雰囲気中におけるスパッタリングにより形成できる。
【0171】
続けて、記録層15上に第1の界面層16、第1の誘電体層17を順次形成する。形成方法は、実施の形態1で説明した方法と同様である。
【0172】
最後に、第1の誘電体層17上にカバー層18を実施の形態1と同様の方法で形成する。
【0173】
なお、第1の誘電体層17を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層15の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。
【0174】
(実施の形態7)*Super−Lattice 多層N層
本発明の実施の形態7として、実施の形態3で示した情報記録媒体3の記録層15および304の異なる構成(本発明の第2の情報記録媒体の別の例)について説明する。なお、便宜上、図4を参照しながら、本実施の形態の情報記録媒体を説明する。
【0175】
記録層15および304を除く他の層の材料、また機能および形状は実施の形態3と同様である。
【0176】
記録層15および304の少なくとも1つに、実施の形態6で示す記録層15の構成(厚み方向に1番目からX番目(Xは2以上の整数)まで積層された構成層からなる構成)を適用する。第m構成層に適用される材料は、実施の形態6で示すものと同様である。各構成層の膜厚dm(nm)としは0.05≦dm≦25であることが好ましい。また記録層15の膜厚としては30nm以下が好ましい。記録層304の膜厚としては、透過率を上げるため、なるべく薄くすることが好ましく、15nm以下が好ましい。なお、記録層304が第2および第3情報層の記録層の場合は、その膜厚は15nm以下であることが好ましく、第4情報層以上(第4情報層〜第N情報層)の記録層の場合は、その膜厚は4nm以下が好ましい。
【0177】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体の製造方法について説明する。
【0178】
まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0179】
続けて第1情報層31を形成するため、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態3で示したものと同様である。
【0180】
続けて第2の界面層14上に記録層15を形成する。形成方法は実施の形態6で示した記録層15の形成方法と同様である。
【0181】
続けて記録層15上に第1の界面層16、第1の誘電体層17を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態3で示したものと同様である。
【0182】
続いて、第1の誘電体層17上に光学分離層32を形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態3で示したものと同様である。
【0183】
続けて第2情報層33を形成し、続けて光学分離層32同様に光学分離層34を形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態3で示したものと同様である。
【0184】
同様にして光学分離層35を形成し、続けて第n情報層36を形成する。第n報層36の形成にはまず透過率調整層301を形成する。続けて、反射層302、第2の誘電体層303を順次形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態3で示したものと同様である。
【0185】
続けて第2の誘電体303上に記録層304を形成する。形成方法は実施の形態6で示した記録層15の形成方法と同様である。
【0186】
続けて、記録層304上に第1の界面層305、第1の誘電体層306を形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態3で示したものと同様である。
【0187】
続けて、光学分離層を介して第n+1〜第N−1情報層を作製した後、光学分離層32と同様の方法で光学分離層37を形成し、第N情報層38を形成する。最後に、第N情報層38上にカバー層18を実施の形態3と同様の方法で形成する。
【0188】
なお、各々の情報層を形成した後、必要に応じて各々の情報層の記録層の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。いずれの場合の初期化も、レーザ光の照射により行うことができる。
【0189】
(実施の形態8)*Super−Lattice 2層
本発明の実施の形態8として、実施の形態4で示した情報記録媒体4の記録層15および404の異なる構成(本発明の第2の情報記録媒体の別の例)について説明する。なお、便宜上、図5を参照しながら、本実施の形態の情報記録媒体を説明する。
【0190】
記録層15および404を除く他の層の材料、また機能および形状は実施の形態4と同様である。
【0191】
記録層15および404の少なくとも1つに、実施の形態6で示す記録層15の構成(厚み方向に1番目からX番目(Xは2以上の整数)まで積層された構成層からなる構成)を適用する。第m構成層に適用される材料は、実施の形態6で示すものと同様である。各構成層の膜厚dm(nm)としは0.05≦dm≦25であることが好ましく、また記録層15の膜厚としては30nm以下が好ましい。また、第2情報層の記録層404の膜厚としては、透過率を上げるため、なるべく薄くすることが好ましく、15nm以下が好ましい。
【0192】
次に、本実施の形態で説明した情報記録媒体の製造方法(本発明の第2の製造方法の別の例)について説明する。
【0193】
まず、基板11(例えば、厚み1100μm)を成膜装置内に配置する。
【0194】
続けて第1情報層31を形成のため、反射層12、第2の誘電体層13、第2の界面層14を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態4で示したものと同様である。
【0195】
続けて第2の界面層14上に記録層15を形成する。形成方法は実施の形態6で示した記録層15の形成方法と同様である。
【0196】
続けて記録層15上に、第1の界面層16、第1の誘電体層17を順次成膜する。形成方法はそれぞれ実施の形態4で示したものと同様である。
【0197】
続いて、第1の誘電体層17上に光学分離層32を形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態4で示したものと同様である。
【0198】
続けて第2情報層42を形成する。第2情報層42の形成にはまず透過率調整層401を形成する。続けて、反射層402、第2の誘電体層403を順次形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態4で示したものと同様である。
【0199】
続けて第2の誘電体層403上に記録層404を形成する。形成方法は実施の形態6で示した記録層15の形成方法と同様である。
【0200】
続けて、記録層404上に第1の界面層405、第1の誘電体層406を形成する。形成方法はそれぞれ実施の形態4で示したものと同様である。
【0201】
最後に、第1の誘電体層406上にカバー層18を実施の形態4と同様の方法で形成する。
【0202】
なお、第1の誘電体層17を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層15の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。また、第1の誘電体層406を成膜した後、またはカバー層18を形成した後、必要に応じて記録層404の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。いずれの場合の初期化も、レーザ光の照射により行うことができる。
【0203】
(実施の形態9)*記録再生
本発明の実施の形態9として、実施の形態1、2、3、4、6、7および8で説明した情報記録媒体1、2、3および4に対して、情報の記録再生を行う方法について説明する。図7に、本実施の形態の記録再生方法に用いられる記録再生装置9の一部の構成を模式的に示している。記録再生装置9は、情報記録媒体75を回転させるスピンドルモータ71と、半導体レーザ72を備える光学ヘッド73と、半導体レーザ72から出射されるレーザ光76を集光する対物レンズ74とを備える。
【0204】
対物レンズ74の開口数(NA)は、レーザ光76のスポット径を0.4μm〜0.7μmの範囲内に調整するため、0.5〜1.0の範囲内であることが好ましい。レーザ光76の波長は450nm以下(より好ましくは350nm〜450nmの青紫領域)であることが好ましい。情報を記録再生する際の線速度は、再生光による結晶化が起こりにくく、且つ十分な消去率が得られる3m/秒〜20m/秒の範囲内であることが好ましい。
【0205】
情報記録媒体への情報の記録、消去および上書き記録は、レーザ光のパワーを高パワーのピークパワーと低パワーのバイアスパワーとの変調により行う。ピークパワーのレーザ光を照射することにより、情報記録媒体の記録膜の局所的な一部に非晶質相が形成され、その非晶質相が記録部(記録マーク)となる。記録マーク間ではバイアスパワーのレーザ光が照射され、結晶相が形成され、その結晶相が消去部となる。ピークパワーのレーザ光を照射するときには、パルス列で形成するマルチパルスとするのが一般的である。マルチパルスはピークパワーとバイアスパワーのパワーレベルで変調させてもよいし、0mWからピークパワーの任意のパワーレベルで変調されてよい。
【0206】
なお、基板に案内溝が設けられている場合、情報は、レーザ光の入射側から遠い溝面(グルーブ)、またはレーザ光の入射側から近い溝面(ランド)、またはその両方に記録してもよい。
【0207】
また、情報の再生はレーザ光を情報記録媒体に照射し、情報記録媒体からの信号を検出器で読み取ることにより行われる。再生時におけるレーザ光パワーは、記録マークの光学的な状態が影響を受けず、且つ情報記録媒体の記録マーク検出のための十分な反射光量が得られるパワーとする。
【0208】
(実施の形態10)*RAM再生
本発明の実施の形態10として、実施の形態5で説明した情報記録媒体5に対して、情報の記録再生を行う方法について説明する。本発明の記録再生方法に用いられる記録再生装置5の一部の構成は実施の形態9と同様であり図7に示す。ここで、実施の形態9と重複する箇所についてはその説明を省略する。
【0209】
対物レンズ74の開口数(NA)は、レーザ光のスポット径を0.4μm〜0.7μmの範囲内に調整するため、0.5〜1.0の範囲内であることが好ましい。レーザ光の波長は700nm以下(より好ましくは、700nm〜600nmの範囲内)であることが好ましい。再生光による結晶化が起こりにくく、且つ十分な消去率が得られる3m/秒〜20m/秒の範囲内であることが好ましい。
【0210】
(実施の形態11)*電気メモリ
本発明の実施の形態11として、電気的エネルギーの印加による情報の記録および再生を実施する情報記録媒体の一例を示す。図8に、その電気的情報記録媒体(メモリ)86の一部断面を示す。
【0211】
基板81の材料としては、ポリカーボネート等の樹脂基板、ガラス基板、Al23等のセラミック基板、Si等の各種半導体基板、Cu等の各種金属基板を用いることができる。ここでは、基板としてSi基板を用いた場合について説明する。電気的情報記録媒体86は、基板81上に下部電極82、第1の界面層801、第1の記録層83、第2の界面層802、第3の界面層803、第2の記録層84、第4の界面層804、上部電極85を順に配置した構造である。下部電極82および上部電極85は、第1の記録層83および第2の記録層84に電流を印加するために形成される。なお、第1の界面層801および第2の界面層802は第1の記録層83の結晶化時間を調整し、第3の界面層803および第4の界面層804は第2の記録層84の結晶化時間を調整するために設置される。
【0212】
第1の界面層801、第2の界面層802、第3の界面層803、第4の界面層804の材料は、実施の形態1の第1の界面層16と同様の材料を用いることができる。
【0213】
第1の記録層83および第2の記録層84は、電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料であり、結晶相と非晶質相との間で抵抗率が変化する現象を情報の記録に利用し、実施の形態1の記録層15と同様の材料を用いることができる。
【0214】
第1の記録層83および第2の記録層84は、実施の形態1の記録層15と同様の方法で形成できる。
【0215】
また、下部電極82および上部電極85には、Al、Au、Ag、Cu、Pt等の単体金属材料、あるいはこれらのうちの1つまたは複数の元素を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整等のために適宜1つまたは複数の他の元素を添加した合金材料を用いることができる。下部電極82および上部電極85は、希ガス雰囲気中で材料となる金属母材または合金母材をスパッタリングすることによって形成できる。なお、各層の成膜方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、MBE法等を用いることも可能である。
【0216】
(実施の形態12)*電気メモリ
本発明の実施の形態12として、実施の形態11で説明した電気的情報記録媒体(メモリ)86を使用するシステムの一例を示す。図8にそのシステムの模式図を示す。
【0217】
電気的情報記録媒体86に、印加部87を介して電気的情報記録再生装置92を電気的に接続する。この電気的情報記録再生装置92により、下部電極82と上部電極85の間には、第1の記録層83および第2の記録層84に電流パルスを印加するためにパルス電源90がスイッチ89を介して接続される。また、第1の記録層83および第2の記録層84の相変化による抵抗値の変化を検出するために、下部電極82と上部電極85の間にスイッチ91を介して抵抗測定器88が接続される。非晶質相(高抵抗状態)にある第1の記録層83または第2の記録層84を結晶相(低抵抗状態)に変化させるためには、スイッチ89を閉じて(スイッチ91は開く)電極間に電流パルスを印加し、電流パルスが印加される部分の温度が、材料の結晶化温度より高く、且つ融点より低い温度で、結晶化時間の間保持されるようにする。結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い電流パルスをより短い時間で印加し、記録層を融点より高い温度にして溶融した後、急激に冷却する。なお、電気的情報記録再生装置92のパルス電源90は記録・消去パルス波形を出力する電源である。
【0218】
この電気的情報記録媒体86をマトリクス的に多数配置することによって、図9に示すような大容量の電気的情報記録媒体93を構成することができる。各メモリセル96には、微小領域に電気的情報記録媒体86と同様の構成が形成されている。各々のメモリセル96への情報の記録再生は、ワード線94およびビット線95をそれぞれ1つ指定することによって行う。
【0219】
図10は電気的情報記録媒体93を用いた、情報記録システムの一構成例を示したものである。記憶装置98は、電気的情報記録媒体93と、アドレス指定回路97によって構成される。アドレス指定回路97により、電気的情報記録媒体93のワード線94およびビット線95がそれぞれ指定され、各々のメモリセル96への情報の記録再生を行うことができる。また、記憶装置98を、少なくともパルス電源100と抵抗測定器101から構成される外部回路99に電気的に接続することにより、電気的情報記録媒体93への情報の記録再生を行うことができる。
【実施例】
【0220】
(実施例1) *シングル6層組成依存
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0221】
本実施例では図2に示す情報記録媒体1の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体1の製造方法である。
【0222】
まず、基板11として、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板を用意した。その基板上に、反射層12としてAg−Pd−Cu膜を100nm、第2の誘電体層13としてTiO2を6nm、第2の界面層14として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、記録層15を10nm、第1の界面層16として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、第1の誘電体層17として、(ZnS)80(SiO220(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。その後に紫外線硬化型樹脂を第1の誘電体層17に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ70μm)を密着させ、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層18を形成し、情報記録媒体1を作製した。最後に、記録層15の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0223】
第1の誘電体層17の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、405nmのレーザ光を入射したとき、記録層15が結晶状態の情報記録媒体の反射率(基板鏡面部)が15%〜25%、記録層15が非晶質状態の情報記録媒体の反射率(基板鏡面部)が1%〜7%となるように決定した。
【0224】
記録層15の材料を変化させて以上のように作製された情報記録媒体1および従来例(比較例)の情報記録媒体について、4倍速および2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。評価方法の詳細を以下に述べる。
【0225】
いずれの評価も、図7で示した記録再生装置9を用いて行った。レーザ光の波長は405nm、対物レンズの開口数NAは0.85、1倍速の線速度は4.9m/s、最短マーク長(2T)は0.149μmであり、グルーブに情報の記録を行った。再生はいずれの評価においても1倍速、0.35mWで行った。また、加速試験は80℃、20%RH、50時間の条件の恒温槽にて行った。
【0226】
9Tマークの変調度の評価は、オシロスコープで再生信号を取り込み、結晶(未記録)レベルと非晶質(記録)レベルの差を読み取り、計算することで行った。変調度が45%以上を◎、40%以上を○、35%以上を△、35%より低いものを×とした。
【0227】
9Tマークの消去率とは、9Tマークを10回記録し、その上に2Tマークを1回記録することでの9Tマークの消去度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用いることで行った。消去率が30dB以上を◎、25dB以上を○、20dB以上を△、20dBより低いものを×とした。
【0228】
9Tマークの保存性とは、加速試験における10回記録した9Tマークの劣化度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用い、加速試験前後でのCNRの差を測定することで行った。CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0229】
2TマークのCNRの評価は、スペクトラムアナライザを用いることで行った。CNRが43dB以上を◎、40dB以上を○、37dB以上を△、37dBより低いものを×とした。
【0230】
2Tマークの消去率とは、2Tマークを10回記録し、その上に9Tマークを1回記録することでの2Tマークの消去度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用いることで行った。消去率が30dB以上を◎、25dB以上を○、20dB以上を△、20dBより低いものを×とした。
【0231】
2Tマークの保存性とは、加速試験における10回記録した2Tマークの劣化度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用い、加速試験前後でのCNRの差を測定することで行った。CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0232】
本実施例の情報記録媒体1の一例として、記録層15に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ1−101〜1−130とする。なお、上記の組成について、図11の三角図の拡大図に示す。
【0233】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における、記録層15として、Ge35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を1−001〜1−003とする。)と、Ge30Sb55Te15、Ge20Sb57Te23およびGe5Bi58Te37を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を1−011〜1−013とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0234】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表1に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表2に示す。
【0235】
【表1】

【0236】
【表2】

【0237】
表1、表2に示すように4倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体1(ディスクNo.1−101〜1−130)において、従来例1−001〜1−003、1−011〜1−013よりも大きく改善した結果が得られた。また図12における組成範囲(I)(組成範囲(I)は点(a)、点(b)、点(c)、点(d)、点(h)、点(g)、点(f)および点(e)で囲まれる領域の組成。)内の組成では、9Tマークの変調度、消去率および保存性、または2TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、評価結果が△となり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)(組成範囲(II)は点(e)、点(f)、点(g)、点(h)、点(m)、点(k)、点(j)および点(n)で囲まれる領域の組成。)内の組成では、評価結果が△の特性がなくなり、4倍速記録により適した組成範囲であることが示された。さらに、組成範囲(III)(組成範囲(III)は点(j)、点(k)、点(m)および点(n)で囲まれる領域の組成。)内の組成では、◎と評価される特性が2つ有し、組成範囲(III)は組成範囲(II)よりもより4倍速記録に適した組成範囲であることが示された。
【0238】
次に、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表3に示す。また2倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表4に示す。
【0239】
【表3】

【0240】
【表4】

【0241】
表3、表4に示すように2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体1(ディスクNo.1−101〜1−130)において、従来例1−001〜1−003、1−011〜1−013よりも大きく改善した結果が得られた。
【0242】
以上のように、本発明において、従来を上回る特性を有する情報記録媒体が得られた。
【0243】
(実施例2) *シングル5層組成依存
本実施例では図3に示す情報記録媒体2の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体2の製造方法である。
【0244】
まず、基板11として、案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板を用意した。その基板上に、反射層12としてAg−Pd−Cu膜を100nm、第2の誘電体層13として、(ZrO235(SiO215(Cr2340(In2310(mol%)を12nm、記録層15を10nm、第1の界面層16として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、第1の誘電体層17して、(ZnS)80(SiO220(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。その後に紫外線硬化型樹脂を第1の誘電体層17に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ70μm)を密着させ、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層18を形成し、情報記録媒体1を作製した。最後に、記録層15の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0245】
第1の誘電体層17の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、405nmのレーザ光を入射したとき、記録層15が結晶状態の情報記録媒体の反射率(基板鏡面部)が15%〜25%、記録層15が非晶質状態の情報記録媒体の反射率(基板鏡面部)1%〜7%となるように決定した。
【0246】
以上のように作製された情報記録媒体2および従来例の情報記録媒体について、実施例1同様に、2倍速および4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0247】
本実施例の情報記録媒体2の一例として、記録層15に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ2−101〜2−130とする。
【0248】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における記録層15として、Ge35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を2−001〜2−003とする。)およびGe30Sb55Te15、Ge20Sb57Te23およびGe5Bi58Te37を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を2−011〜2−013とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0249】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表5に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表6に示す。
【0250】
また、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表7に示す。また2倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表8に示す。
【0251】
【表5】

【0252】
【表6】

【0253】
【表7】

【0254】
【表8】

【0255】
表5〜8に示すように4倍速および2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体2(ディスクNo.2−101〜2−130)において、従来例2−001〜2−003、2−011〜2−013よりも大きく改善した結果が得られた。また実施例1同様、4倍速記録時において、図12における組成範囲(I)内の組成では、9Tマークの変調度、消去率および保存性、または2TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、評価結果が△となり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)内の組成では、評価結果が△の特性がなくなり、4倍速記録により適した組成範囲であり、組成範囲(III)内の組成では、◎と評価される特性が2つ有し、組成範囲(III)は組成範囲(II)よりもより4倍速記録に適した組成範囲であることが示された。
【0256】
(実施例3) *4層L2組成依存
本実施例では図4に示す情報記録媒体3の一例を説明する。本実施例では、4つの情報層を有し、第3情報層の記録層に本発明における記録層材料を適用した例(N=4、n=3)を示す。以下、本実施例の情報記録媒体3の製造方法である。
【0257】
情報記録媒体3の第1情報層31の形成方法は実施例1と同様である。記録層15には、Ge5Sb79Te16を適用した。また他の情報層がない場合に、記録層15が結晶状態における第1情報層31の反射率(基板鏡面部)が25%〜35%となるように、第1の誘電体層17の膜厚を調整した。
【0258】
続けて、第1情報層31上に案内溝の設けられた光学分離層32を形成し、その後、記録層15の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0259】
続けて、光学分離層32上に第2情報層33を形成する。他の情報層がない場合に、記録層が結晶状態における第2情報層33の反射率(基板鏡面部)が10%〜20%、透過率(基板鏡面部)が60%〜70%となるように設定した。
【0260】
続けて、第2情報層33上に案内溝の設けられた光学分離層35を形成し、その後、第2情報層33の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0261】
続けて、光学分離層35上に第3情報層36を形成する。第3情報層36は、透過率調整層301としてTiO2を18nm、反射層302としてAg−Pd−Cu膜を5nm、第2の誘電体層303として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、記録層304を5nm、第1の界面層305として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、第1の誘電体層306として、(ZnS)80(SiO220(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
【0262】
第1の誘電体層306の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、405nmのレーザ光を入射したとき、他の情報層がない場合に、記録層304が結晶状態における第3情報層の反射率(基板鏡面部)が5%〜12%、透過率(基板鏡面部)が70%〜75%となるように設定した。
【0263】
続けて、第3情報層36上に案内溝の設けられた光学分離層37を形成し、その後、第3情報層36の記録層304の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0264】
続けて、光学分離層37上に第4情報層38を形成する。他の情報層がない場合に、記録層が結晶状態における第4情報層38の反射率(基板鏡面部)が3%〜7%、透過率(基板鏡面部)が70%〜80%となるように設定した。
【0265】
その後に、紫外線硬化型樹脂を第4情報層38上に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ70μm)を密着させ、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層18を形成し、情報記録媒体3を作製した。最後に、第4情報層38の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0266】
以上のように作製された情報記録媒体3および従来例の情報記録媒体について、第3情報層36に対して記録・再生動作を行い、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。本実施例においては、再生はいずれの評価においても1倍速、0.70mWで行った。
【0267】
9Tマークの変調度の評価は、実施例1同様に行い、変調度が35%以上を○、30%以上を△、30%より低いものを×とした。
【0268】
9Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が20dB以上を○、15dB以上を△、15dBより低いものを×とした。
【0269】
9Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0270】
2TマークのCNRの評価は、実施例1同様に行い、CNRが35dB以上を○、30dB以上を△、30dBより低いものを×とした。
【0271】
2Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が20dB以上を○、15dB以上を△、15dBより低いものを×とした。
【0272】
2Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0273】
本実施例の情報記録媒体3の一例として、記録層304に図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ3−101〜3−130とする。
【0274】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における、記録層304としてGe35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を3−001〜3−003とする。)およびGe30Sb55Te15、Ge20Sb57Te23およびGe5Bi58Te37を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を3−011〜3−013とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0275】
2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表9に示す。また2倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表10に示す。
【0276】
【表9】

【0277】
【表10】

【0278】
表9、10に示すように2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体3(ディスクNo.3−101〜3−130)において、従来例3−001〜3−003、3−011〜3−013よりも大きく改善した結果が得られた。図12における組成範囲(I)内の組成では、9Tマークの変調度、消去率および保存性、または2TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、△の評価結果が2つとなり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)および組成範囲(III)内の組成では、△の評価結果が1つ以下となり、第3情報層36の記録層としてより適した組成範囲であることが示された。
【0279】
(実施例4) *4層L3組成依存
本実施例では図4に示す情報記録媒体3の一例を説明する。本実施例では、4つの情報層を有し、第4情報層の記録層に本発明における記録層材料を適用した例(N=4、n=4)を示す。以下、本実施例の情報記録媒体3の製造方法である。
【0280】
情報記録媒体3の第1情報層31から第3情報層までの形成方法は実施例3と同様である。
【0281】
第3情報層上に案内溝の設けられた光学分離層35を形成し、その後、第3情報層の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0282】
続けて、光学分離層35上に第4情報層36を形成する。第4情報層36は、透過率調整層301としてTiO2を18nm、反射層302としてAg−Pd−Cu膜を3nm、第2の誘電体層303として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、記録層304を3nm、第1の界面層305として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、第1の誘電体層306として、(ZnS)80(SiO220(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
【0283】
第1の誘電体層306の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、405nmのレーザ光を入射したとき、他の情報層がない場合に、記録層304が結晶状態における第3情報層の反射率(基板鏡面部)が3%〜7%、透過率(基板鏡面部)が70%〜80%となるように設定した。
【0284】
その後に紫外線硬化型樹脂を第4情報層36上に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ70μm)を密着させ、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層18を形成し、情報記録媒体3を作製した。最後に、第4情報層の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0285】
以上のように作製された情報記録媒体3および従来例の情報記録媒体について、第4情報層36に対して記録・再生動作を行い、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。本実施例においては、再生はいずれの評価においても1倍速、0.70mWで行った。
【0286】
9Tマークの変調度の評価は、実施例1同様に行い、変調度が30%以上を○、25%以上を△、25%より低いものを×とした。
【0287】
9Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が20dB以上を○、15dB以上を△、15dBより低いものを×とした。
【0288】
9Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0289】
2TマークのCNRの評価は、実施例1同様に行い、CNRが32dB以上を○、27dB以上を△、27dBより低いものを×とした。
【0290】
2Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が20dB以上を○、15dB以上を△、15dBより低いものを×とした。
【0291】
2Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0292】
本実施例の情報記録媒体3の一例として、記録層304に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ3−201〜3−230とする。
【0293】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における、記録層304としてGe35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を3−004〜3−006とする。)およびGe30Sb55Te15、Ge20Sb57Te23およびGe5Bi58Te37を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を3−014〜3−016とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0294】
2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表11に示す。また2倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表12に示す。
【0295】
【表11】

【0296】
【表12】

【0297】
表11、12に示すように2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体3(ディスクNo.3−201〜3−230)において、従来例3−004〜3−006、3−014〜3−016よりも大きく改善した結果が得られた。図12における組成範囲(I)内の組成では、9Tマークの変調度、消去率および保存性、または2TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、△の評価結果が2つとなり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)および組成範囲(III)内の組成では、△の評価結果が1つ以下となり、第4情報層36の記録層としてより適した組成範囲であることが示された。
【0298】
(実施例5) *2層L0組成依存
本実施例では図5に示す情報記録媒体4の一例を説明する。本実施例では、第1情報層31の記録層15に本発明における記録層材料を適用した例を示す。以下、本実施例の情報記録媒体4の製造方法である。
【0299】
情報記録媒体4の第1情報層31の形成方法は実施例1と同様である。他の情報層がない場合に、記録層15が結晶状態おける第1情報層31の反射率(基板鏡面部)が15%〜30%となるように、第1の誘電体層17の膜厚を調整した。
【0300】
続けて、第1情報層31上に案内溝の設けられた光学分離層32を形成し、その後、第1情報層31の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0301】
続けて、光学分離層32上に第2情報層42を形成する。第2情報層42は、透過率調整層401としてTiO2を18nm、反射層402としてAg−Pd−Cu膜を10nm、第2の誘電体層403として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を12nm、記録層404としてGe16Sb77Te7を6nm、第1の界面層405として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、第1の誘電体層406として、(ZnS)80(SiO220(mol%)を、順次スパッタリング法により成膜した。
【0302】
第1の誘電体層406の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、405nmのレーザ光を入射したとき、他の情報層がない場合に、記録層404が結晶状態における第2情報層42の反射率(基板鏡面部)が3%〜8%、透過率(基板鏡面部)が40%〜55%となるように設定した。
【0303】
その後に紫外線硬化型樹脂を第1の誘電体層406上に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ70μm)を密着させ、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層18を形成し、情報記録媒体4を作製した。最後に、第2情報層42の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0304】
以上のように作製された情報記録媒体4および従来例の情報記録媒体について、第1情報層31に対して記録・再生動作を行い、4倍速および2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。本実施例においては、再生はいずれの評価においても1倍速、0.70mWで行った。
【0305】
9Tマークの変調度の評価は、実施例1同様に行い、変調度が45%以上を◎、40%以上を○、35%以上を△、35%より低いものを×とした。
【0306】
9Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が30dB以上を◎、25dB以上を○、20dB以上を△、20dBより低いものを×とした。
【0307】
9Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0308】
2TマークのCNRの評価は、実施例1同様に行い、CNRが43dB以上を◎、40dB以上を○、37dB以上を△、37dBより低いものを×とした。
【0309】
2Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が30dB以上を◎、25dB以上を○、20dB以上を△、20dBより低いものを×とした。
【0310】
2Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0311】
本実施例の情報記録媒体4の一例として、記録層15に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ4−101〜4−130とする。
【0312】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における、記録層304としてGe35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を4−001〜4−003とする。)およびGe30Sb55Te15、Ge20Sb57Te23およびGe5Bi58Te37を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を4−011〜4−013とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0313】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表13に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表14に示す。
【0314】
また、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表15に示す。また2倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表16に示す。
【0315】
【表13】

【0316】
【表14】

【0317】
【表15】

【0318】
【表16】

【0319】
表13〜16に示すように4倍速および2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体4(ディスクNo.4−101〜4−130)において、従来例4−001〜4−003、4−011〜4−013よりも大きく改善した結果が得られた。また実施例1同様、4倍速記録時において、図12における組成範囲(I)内の組成では、9Tマークの変調度、消去率および保存性、または2TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、評価結果が△となり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)内の組成では、評価結果が△の特性がなくなり、4倍速記録により適した組成範囲であり、組成範囲(III)内の組成では、◎と評価される特性が2つ有し、組成範囲(III)は組成範囲(II)よりもより4倍速記録に適した組成範囲であることが示された。
【0320】
(実施例6) *2層L1組成依存
本実施例では図5に示す情報記録媒体4の一例を説明する。本実施例では、第2情報層42の記録層404に本発明における記録層材料を適用した例を示す。以下、本実施例の情報記録媒体4の製造方法である。
【0321】
情報記録媒体4の第1情報層31の形成方法は実施例1と同様である。記録層15には、Ge5Sb79Te16を適用した。また他の情報層がない場合に、記録層15が結晶状態における第1情報層31の反射率(基板鏡面部)が15%〜30%となるように、第1の誘電体層17の膜厚を調整した。続けて、第1情報層31上に案内溝の設けられた光学分離層32を形成し、その後、第1情報層31の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0322】
続けて、光学分離層32上に第2情報層42を形成する。第2情報層42の形成方法は実施例5と同様である。
【0323】
第1の誘電体層406の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、405nmのレーザ光を入射したとき、他の情報層がない場合に、記録層404が結晶状態における第2情報層42の反射率(基板鏡面部)が3%〜8%、透過率(基板鏡面部)が40%〜55%となるように設定した。
【0324】
その後に紫外線硬化型樹脂を第1の誘電体層406上に塗布し、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ70μm)を密着させ、スピンコートした後に、紫外線により樹脂を硬化させ、カバー層18を形成し、情報記録媒体4を作製した。最後に、第2情報層42の記録層の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0325】
以上のように作製された情報記録媒体4および従来例の情報記録媒体について、第2情報層42に対して記録・再生動作を行い、4倍速および2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。本実施例においては、再生はいずれの評価においても1倍速、0.70mWで行った。
【0326】
9Tマークの変調度の評価は、実施例1同様に行い、変調度が40%以上を◎、35%以上を○、30%以上を△、30%より低いものを×とした。
【0327】
9Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が28dB以上を◎、23dB以上を○、18dB以上を△、18dBより低いものを×とした。
【0328】
9Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0329】
2TマークのCNRの評価は、実施例1同様に行い、CNRが40dB以上を◎、37dB以上を○、34dB以上を△、34dBより低いものを×とした。
【0330】
2Tマークの消去率の評価は、実施例1同様に行い、消去率が28dB以上を◎、23dB以上を○、18dB以上を△、18dBより低いものを×とした。
【0331】
2Tマークの保存性の評価は、実施例1同様に行い、CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0332】
本実施例の情報記録媒体4の一例として、記録層404に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ4−201〜4−230とする。
【0333】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における、記録層304としてGe35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を4−004〜4−006とする。)およびGe30Sb55Te15、Ge20Sb57Te23およびGe5Bi58Te37を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を4−014〜4−016とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0334】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表17に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表18に示す。
【0335】
また、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表19に示す。また2倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表20に示す。
【0336】
【表17】

【0337】
【表18】

【0338】
【表19】

【0339】
【表20】

【0340】
表17〜20に示すように4倍速および2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体4(ディスクNo.4−201〜4−230)においても、従来例4−004〜4−006、4−014〜4−016よりも大きく改善した結果が得られた。また実施例1同様、4倍速記録時において、図12における組成範囲(I)内の組成では、9Tマークの変調度、消去率および保存性、または2TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、評価結果が△となり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)内の組成では、評価結果が△の特性がなくなり、4倍速記録により適した組成範囲であり、組成範囲(III)内の組成では、◎と評価される特性が2つ有し、組成範囲(III)は組成範囲(II)よりもより4倍速記録に適した組成範囲であることが示された。
【0341】
(実施例7) *2層L1 記録層元素添加
本実施例では実施例6に記述の情報記録媒体4において、第2情報層42の記録層404として、Ge16Sb79Te5に対しさらに元素M(但し、MはN、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも1つの元素)を添加した例を示す。本実施例の情報記録媒体4の製造方法は実施例6と同様であり、記録層404の膜厚は6nmである。
【0342】
本実施例の情報記録媒体4の一例として、記録層404に、C、Si、Sn、Bi、In、Mn、Zn、Ag、Au、Pd、Cr、W、Ta、ZrおよびTbを、いずれの元素についても7原子%添加したものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ4−301〜4−315とした。また、Mn、ZnおよびTbについては、さらに15原子%添加したものを作製し、ディスクNo.をそれぞれ4−316〜4−318、さらに20原子%添加したものを作製し、ディスクNo.をそれぞれ4−319〜4−321とした。これらの情報記録媒体4と比較するため、CaおよびIrをそれぞれ15原子%添加したもの(ディスクNo.4−007および4−008)を従来例(比較例)の情報記録媒体として作製した。
【0343】
以上のように作製された情報記録媒体4および従来例の情報記録媒体について、実施例6同様、第2情報層42に対して記録・再生動作を行い、4倍速における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0344】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表21に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表22に示す。
【0345】
【表21】

【0346】
【表22】

【0347】
表21、22に示すように、本実施例におけるいずれの情報記録媒体4(ディスクNo.4−301〜4−321)においても、比較例4−007および4−008よりも良好な特性が得られた。また添加元素としては、C、Si、Sn、Bi、InおよびMnがより好ましく、また添加量としては、いずれの元素Mにおいても15原子%以下がより好ましいことが示された。
【0348】
また同様に2倍速記録の評価も行ったが、4倍速記録時と同様、比較例よりも良好な特性が得られた。
【0349】
(実施例8) *2層L1 誘電体層材料
本実施例では実施例6に記述の情報記録媒体4において、第2情報層42の記録層404として、Ge16Sb79Te5を適用し、第1の界面層405および第2の誘電体層403のいくつかの誘電体材料を適用した例を示す。本実施例の情報記録媒体4の製造方法は実施例6と同様である。
【0350】
本実施例の情報記録媒体4の一例として、記録層に隣接して配置される第1の界面層405および第2の誘電体層403に、[第1の界面層405,第2の誘電体層403]=[(ZrO250(Cr2350,(ZrO250(Cr2350]、[(ZrO250(Cr2350,(HfO250(Cr2350]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO250(TiO250]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO250(Nb2550]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO250(Dy2350]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO265(In2335]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO265(Ga2335]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO265(Al2335]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO235(SiO215(Cr2350]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO250(SiO215(In2335]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO250(SiO215(Ga2335]、[(ZrO250(Cr2350,(ZrO230(SiO210(In2320(Cr2340]、[(ZrO235(SiO215(Cr2350,(ZrO250(Cr2350]、[(ZrO235(SiO215(Cr2350,(ZrO250(TiO250]、[(ZrO235(SiO215(Cr2350,(ZrO250(Dy2350]、[(ZrO235(SiO215(Cr2350,(ZrO235(SiO215(Cr2350]、[(ZrO235(SiO215(Cr2350,(ZrO230(SiO210(In2320(Cr2340]、[(ZrO245(Y235(Cr2350,(ZrO250(Cr2350]、[(ZrO245(Y235(Cr2350,(ZrO250(TiO250]、[(ZrO245(Y235(Cr2350,(ZrO250(Dy2350]、[(ZrO245(Y235(Cr2350,(ZrO235(SiO215(Cr2350]、[(ZrO245(Y235(Cr2350,(ZrO230(SiO210(In2320(Cr2340]、[(ZrO250(Cr2350,(ZnS)80(SiO220]、[(ZnS)80(SiO220,(ZrO250(Cr2350]および[(ZnS)80(SiO220,(ZnS)80(SiO220]を適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ4−401〜4−425とした。これらの情報記録媒体4を、従来例4−004〜4−006と比較した。
【0351】
以上のように作製された情報記録媒体4および従来例の情報記録媒体について、実施例6同様、第2情報層42に対して記録・再生動作を行い、4倍速における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0352】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表23に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表24に示す。
【0353】
【表23】

【0354】
【表24】

【0355】
表23、24に示すように、本実施例におけるいずれの情報記録媒体4(ディスクNo.4−401〜4−425)において、従来例4−004〜4−006より大きく改善した結果が得られた。またディスクNo.4−401〜4−422の特性がディスクNo.4−423〜4−425の特性よりも優れており、第1の界面層405および第2の誘電体層403がSi、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも1つの酸化物であることがより好ましいことが示された。
【0356】
(実施例9) *RAM
本実施例では図6に示す情報記録媒体5の一例を説明する。
【0357】
以下、本実施例の情報記録媒体の製造方法である。
【0358】
まず、基板53として、案内溝(深さ40nm、トラックピッチ0.62μm)が形成されたポリカーボネート基板を用意した。その基板上に、第1の誘電体層17して、(ZnS)80(SiO220(mol%)、第1の界面層16として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、記録層15を10nm、第2の界面層14として、(ZrO235(SiO215(Cr2350(mol%)を5nm、第2の誘電体層13としてTiO2を20nm、反射層12としてAg−Pd−Cu膜を120nm、を順次スパッタリング法により成膜した。その後、紫外線硬化型樹脂をダミー基板51上に塗布し、基板53の反射層12をダミー基板51に密着し回転させることによって均一な樹脂層(厚さ20μm)を形成したのち、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、接着層52を介して基板53とダミー基板51を接着させた。最後に、記録層15の全面をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。
【0359】
第1の誘電体層17の膜厚は、マトリクス法に基づく計算により決定した。具体的には、660nmのレーザ光を入射したとき、記録層15が結晶状態の情報記録媒体の反射率(基板鏡面部)が13%〜20%、記録層15が非晶質状態の情報記録媒体の反射率(基板鏡面部)が0.5%〜4%となるように決定した。
【0360】
以上のように作製された情報記録媒体5および従来例の情報記録媒体について、8倍速における11Tマークの変調度、11Tマークの消去率、3Tマークの保存性、3TマークのCNR、3Tマークの消去率および3Tマークの保存性を評価した。評価方法の詳細を以下に述べる。
【0361】
いずれの評価も、図7で示した記録再生装置9を用いて行った。レーザ光の波長は660nm、対物レンズの開口数NAは0.65、1倍速の線速度は4.1m/s、最短マーク長(3T)は0.42μmであり、グルーブおよびランドに情報の記録を行った。再生はいずれの評価においても2倍速8.2m/s、1.0mWで行った。また、加速試験は80℃、20%RH、50時間の条件の恒温槽にて行った。
【0362】
11Tマークの変調度の評価は、オシロスコープで再生信号を取り込み、結晶(未記録)レベルと非晶質(記録)レベルの差を読み取り、計算することで行った。変調度が50%以上を◎、45%以上を○、40%以上を△、40%より低いものを×とした。
【0363】
11Tマークの消去率とは、11Tマークを10回記録し、その上に3Tマークを1回記録することでの11Tマークの消去度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用いることで行った。消去率が30dB以上を◎、25dB以上を○、20dB以上を△、20dBより低いものを×とした。
【0364】
11Tマークの保存性とは、加速試験における10回記録した11Tマークの劣化度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用い、加速試験前後でのCNRの差を測定することで行った。CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0365】
3TマークのCNRの評価は、スペクトラムアナライザを用いることで行った。CNRが50dB以上を◎、47dB以上を○、44dB以上を△、44dBより低いものを×とした。
【0366】
3Tマークの消去率とは、3Tマークを10回記録し、その上に11Tマークを1回記録することでの3Tマークの消去度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用いることで行った。消去率が30dB以上を◎、25dB以上を○、20dB以上を△、20dBより低いものを×とした。
【0367】
3Tマークの保存性とは、加速試験における10回記録した3Tマークの劣化度合いを意味する。評価はスペクトラムアナライザを用い、加速試験前後でのCNRの差を測定することで行った。CNR低下量(加速前のCNR−加速後のCNR)が0.0dB以下を◎、1.0dB以下を○、3.0dB以下を△、3.0dBより大きいものを×とした。
【0368】
本実施例の情報記録媒体5の一例として、記録層15に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ5−101〜5−130とする。
【0369】
また、従来の記録層と比較するため、上記記載の構成の情報記録媒体における記録層15として、Ge35.3Sb11.8Te52.9、Ge38.1Sb9.5Te52.4およびGe38.1Bi9.5Te52.4を適用した情報記録媒体(ディスクNo.を5−001〜5−003とする。)を作製し、同様の評価を行った。
【0370】
本実施例の評価において、グルーブ記録とランド記録では同様の結果が得られたので、これらの評価結果は1つの表にまとめて示す。8倍速記録における11Tマークの変調度、11Tマークの消去率および11Tマークの保存性の評価結果を表25に示す。また8倍速記録における3TマークのCNR、3Tマークの消去率および3Tマークの保存性の評価結果を表26に示す。
【0371】
【表25】

【0372】
【表26】

【0373】
表25、26に示すように8倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例におけるいずれの情報記録媒体5(ディスクNo.5−101〜5−130)においても、従来例5−001〜5−003よりも大きく改善した結果が得られた。また、図12における組成範囲(I)内の組成では、11Tマークの変調度、消去率および保存性、または3TマークのCNR、消去率および保存性のいずれかの特性において、評価結果が△となり、情報記録媒体としてやや不足している特性があるが、組成範囲(II)内の組成では、評価結果が△の特性がなくなり、より適した組成範囲であり、組成範囲(III)内の組成では、◎と評価される特性が2つ有し、組成範囲(III)は組成範囲(II)よりもより適した組成範囲であることが示された。
【0374】
以上のように、本発明において、従来を上回る特性を有する情報記録媒体が得られた。
【0375】
(実施例10) *Super−Latticeシングル
本実施例では実施の形態6で説明した情報記録媒体(図2、3参照)の一例を説明する。以下、本実施例の情報記録媒体の製造方法について説明する。
【0376】
記録層15を成膜する工程を除き、製造方法は実施例1と同様である。
【0377】
記録層15については、実施の形態6で記載した方法により形成した。
【0378】
以上のように作製された本発明の実施例の情報記録媒体と従来例の情報記録媒体とについて、実施例1と同様の手法により、4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0379】
本実施例の記録層15は、Ge17Sb83とTeが交互にX番目まで積層された構成とした。第1構成層がGe17Sb83であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと記録層15を構成するGe17Sb83とTeの膜厚の関係が以下の通りとなる情報記録媒体の作製を行った。
【0380】
(X,Ge17Sb83,Te)=(2,9.5nm,0.5nm)、(2,9.0nm,1.0nm)、(3,4.8nm,0.5nm)、(3,4.5nm,1.0nm)、(5,3.2nm,0.25nm)、(5,3.0nm,0.5nm)、(7,2.4nm,0.17nm)および(7,2.3nm,0.34nm)。
【0381】
これらのディスクNo.をそれぞれ6−101〜6−108とする。
【0382】
ここで、上記のディスクのうち6−101、6−103および6−105について基板側より記録層15の構成を明記すると、以下のようである。
【0383】
6−101(2,9.5nm,0.5nm):Ge17Sb83(9.5nm)/Te(0.5nm)、
6−103(3,4.8nm,0.5nm):Ge17Sb83(4.8nm)/Te(0.5nm)/Ge17Sb83(4.8nm)、
6−105(5,3.2nm,0.25nm):Ge17Sb83(3.2nm)/Te(0.25nm)/Ge17Sb83(3.2nm)/Te(0.25nm)/Ge17Sb83(3.2nm)。
【0384】
また同様に、記録層15が、Ge17Sb83からなる構成層とGe50Te50からなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe17Sb83であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層15を構成するGe17Sb83からなる構成層およびGe50Te50からなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0385】
(X,Ge17Sb83,Ge50Te50)=(2,9.0nm,1.0nm)、(2,8.0nm,2.0nm)、(3,4.5nm,1.0nm)、(3,4.0nm,2.0nm)、(5,3.0nm,0.5nm)、(5,2.7nm,1.0nm)、(7,2.3nm,0.33nm)および(7,2.0nm,0.67nm)。
【0386】
これらのディスクNo.をそれぞれ6−109〜6−116とする。
【0387】
また同様に、記録層15がGe50Te50からなる構成層とGe17Sb83からなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe50Te50であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層15を構成するGe50Te50からなる構成およびGe17Sb83からなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0388】
(X,Ge50Te50,Ge17Sb83)=(2,1.0nm,9.0nm)、(2,2.0nm,8.0nm)、(3,0.5nm,9.0nm)、(3,1.0nm,8.0nm)、(5,0.33nm,4.5nm)、(5,0.67nm,4.0nm)、(7,0.25nm,3.0nm)および(7,0.5nm,2.7nm)。
【0389】
これらのディスクNo.をそれぞれ6−117〜6−124とする。
【0390】
上記の本発明の実施例である情報記録媒体と、従来例1−001〜1−003の情報記録媒体と比較した。
【0391】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表27に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表28に示す。
【0392】
【表27】

【0393】
【表28】

【0394】
表27、28に示すように4倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例の全ての情報記録媒体(ディスクNo.6−101〜6−124)で、従来例1−001〜1−003よりも大きく改善した結果が得られた。同様に2倍速記録の評価も行ったが、4倍速記録時と同様、従来例を上回る良好な結果が得られた。
【0395】
以上のように、本発明において、従来を上回る特性を有する情報記録媒体が得られた。
【0396】
(実施例11) *Super−Lattice L3
本実施例では実施の形態7で説明した情報記録媒体(図4参照)の一例を説明する。本実施例では、4つの情報層を有する情報記録媒体において、第4情報層の記録層を実施の形態7に記載の方法で形成した例を示す。以下、本実施例の情報記録媒体の製造方法を説明する。
【0397】
第4情報層の記録層304を成膜する工程を除き、製造方法は実施例4と同様である。
【0398】
記録層304については、実施の形態7に記載した方法により形成した。
【0399】
以上のように作製された本発明の実施例の情報記録媒体および従来例の情報記録媒体について、実施例4と同様の手法により、2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0400】
本実施例の情報記録媒体の一例として、記録層304がGe17Sb83からなる構成層とTeからなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe17Sb83であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層304を構成するGe17Sb83からなる構成層およびTeからなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0401】
(X,Ge17Sb83 ,Te)=(2,2.8nm,0.2nm)、(3,1.4nm,0.2nm)、(5,0.9nm,0.1nm)および(7,0.7nm,0.067nm)。
【0402】
これらのディスクNo.をそれぞれ7−101〜7−104とする。
【0403】
また同様に、記録層304がGe17Sb83からなる構成層とGe50Te50からなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe17Sb83であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層304を構成するGe17Sb83からなる構成層およびGe50Te50からなる構成層との膜厚の関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0404】
(X,Ge17Sb83 ,Te)=(2,2.6nm,0.4nm)、(3,1.3nm,0.4nm)、(5,0.9nm,0.2nm)および(7,0.65nm,0.13nm)。
【0405】
これらのディスクNo.をそれぞれ7−105〜7−108とする。
【0406】
また同様に、記録層15がGe50Te50からなる構成層とGe17Sb83からなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe50Te50であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層304を構成するGe50Te50からなる構成層およびGe17Sb83からなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体の作製を行った。
【0407】
(X,Ge50Te50 ,Ge17Sb83)=(2,0.4nm,2.6nm)、(3,0.2nm,2.6nm)、(5,0.13nm,1.3nm)および(7,0.1nm,0.9nm)。
【0408】
これらのディスクNo.をそれぞれ7−109〜7−112とする。
【0409】
上記の本実施例の情報記録媒体と従来例3−004〜3−006の情報記録媒体と比較した。
【0410】
2倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表29に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表30に示す。
【0411】
【表29】

【0412】
【表30】

【0413】
表29、30に示すように2倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例の全ての情報記録媒体(ディスクNo.7−101〜7−112)で、従来例3−004〜3−006よりも大きく改善した結果が得られた。
【0414】
以上のように、本発明において、従来を上回る特性を有する情報記録媒体が得られた。
【0415】
(実施例12) *Super−Lattice L1
本実施例では実施の形態8で説明した情報記録媒体(図5参照)の一例を説明する。本実施例では、実施の形態8の情報記録媒体において、第2情報層42の記録層404を実施の形態8に記載の方法で形成した例を示す。以下、本実施例の情報記録媒体の製造方法について説明する。
【0416】
第2情報層42の記録層404を成膜する工程を除き、製造方法は実施例6と同様である。
【0417】
記録層404については、実施の形態8で記載した方法により形成した。
【0418】
以上のように作製された本実施例の情報記録媒体および従来例の情報記録媒体について、実施例6と同様の手法により、4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0419】
本実施例の情報記録媒体の一例として、記録層404がGe17Sb83からなる構成層とTeからなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe17Sb83であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層404を構成するGe17Sb83からなる構成層およびTeからなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0420】
(X,Ge17Sb83 ,Te)=(2,5.7nm,0.3nm)、(2,5.4nm,0.6nm)、(3,2.9nm,0.3nm)、(3,2.7nm,0.6nm)、(5,1.9nm,0.15nm)、(5,1.8nm,0.3nm)、(7,1.43nm,0.1nm)および(7,1.35nm,0.2nm)。
【0421】
これらのディスクNo.をそれぞれ8−101〜8−108とする。
【0422】
また同様に、記録層404がGe17Sb83からなる構成層とGe50Te50からなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe17Sb83であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層404を構成するGe17Sb83からなる構成層およびGe50Te50からなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0423】
(X,Ge17Sb83 ,Ge50Te50)=(2,5.5nm,0.5nm)、(2,5.0nm,1.0nm)、(3,2.8nm,0.5nm)、(3,2.5nm,1.0nm)、(5,1.8nm,0.25nm)、(5,1.7nm,0.5nm)、(7,1.38nm,0.17nm)および(7,1.25nm,0.33nm)。
【0424】
これらのディスクNo.をそれぞれ8−109〜8−116とする。
【0425】
また同様に、記録層404がGe50Te50からなる構成層とGe17Sb83からなる構成層とが交互にX番目まで積層された構成で、第1構成層がGe50Te50であり、X=2、3、5および7の場合について、情報記録媒体の作製を行った。Xと、記録層404を構成するGe50Te50からなる構成層およびGe17Sb83からなる構成層の膜厚との関係が以下の通りとなる情報記録媒体を作製した。
【0426】
(X,Ge50Te50 ,Ge17Sb83)=(2,0.5nm,5.5nm)、(2,1.0nm,5.0nm)、(3,0.25nm,5.5nm)、(3,1.0nm,5.0nm)、(5,0.17nm,2.8nm)、(5,0.33nm,2.5nm)、(7,0.13nm,1.83nm)および(7,0.25nm,1.67nm)。
【0427】
これらのディスクNo.をそれぞれ8−117〜8−124とする。
【0428】
上記の情報記録媒体8と従来例4−004〜4−006と比較した。
【0429】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表31に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表32に示す。
【0430】
【表31】

【0431】
【表32】

【0432】
表31、32に示すように4倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例にの全ての情報記録媒体(ディスクNo.8−101〜8−124)で、従来例4−004〜4−006よりも大きく改善した結果が得られた。同様に2倍速記録の評価も行ったが、4倍速記録時と同様、従来例を上回る良好な結果が得られた。
【0433】
以上のように、本発明において、従来を上回る特性を有する情報記録媒体が得られた。
【0434】
(実施例13) *Super−Lattice L1 M挿入
本実施例では実施の形態8で説明した情報記録媒体(図5参照)の一例を説明する。本実施例では、第2情報層42の記録層404の第3構成層が、元素M(但し、MはN、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも1つの元素)を含む情報記録媒体を、実施の形態8に記載の方法で作製した。以下、本実施例の情報記録媒体の製造方法について説明する。
【0435】
情報記録媒体の第2情報層42の記録層404を成膜する工程を除き、製造方法は実施例6と同様である。
【0436】
記録層404については、実施の形態8で記載した方法により形成した。
【0437】
以上のように作製された本実施例の情報記録媒体および従来例の情報記録媒体について、実施例6と同様の手法により、4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率、9Tマークの保存性、2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性を評価した。
【0438】
本実施例の情報記録媒体の一例として、記録層404が、Ge17Sb83からなる構成層、Teからなる構成層、元素Mを含む金属・半導体からなる構成層が、この順に第1構成層から積層された情報記録媒体の作製を行った。第1構成層および第4構成層のGe17Sb83の膜厚は2.8nm、第2構成層および第5構成層のTeの膜厚は0.1nm、第3構成層の膜厚は0.3nmとした。第3構成層として、Bi、C、Si、Sn50Te50、In40Te60、Ag、Au、Pd、Mn、Cr、W、V、Ta、Ti、Zr、TbおよびDyを適用した。これらのディスクNo.をそれぞれ8−201〜8−217とする。これらの情報記録媒体と比較するため、CaおよびIrを適用したもの(ディスクNo.8−001および8−002)を作製した。
【0439】
4倍速記録における9Tマークの変調度、9Tマークの消去率および9Tマークの保存性の評価結果を表33に示す。また4倍速記録における2TマークのCNR、2Tマークの消去率および2Tマークの保存性の評価結果を表34に示す。
【0440】
【表33】

【0441】
【表34】

【0442】
表33、34に示すように4倍速記録時におけるいずれの特性に関しても、本実施例の全ての情報記録媒体(ディスクNo.8−201〜8−217)で、比較例8−001および8−002よりも良好な特性が得られた。同様に2倍速記録の評価も行ったが、4倍速記録時と同様、比較例より良好な特性が得られた。
【0443】
以上のように、本発明において、良好な特性を有する情報記録媒体が得られた。
【0444】
(実施例14) *電気メモリ
本実施例では図8に示す電気的情報記録媒体(メモリ)86の一例を説明する。
【0445】
以下、本実施例の情報記録媒体の作製方法である。
【0446】
基板81として、表面を窒化処理したSi基板を準備し、その上に下部電極82としてPtを面積6μm×6μmで厚さ0.1μm、第1の界面層801として(ZrO235(SiO215(Cr2350を4.5μm×5μmで厚さ0.01μm、第1の記録層83を面積5μm×5μmで厚さ0.1μm、第2の界面層802として(ZrO235(SiO215(Cr2350を4.5μm×5μmで厚さ0.01μm、第3の界面層803として(ZrO235(SiO215(Cr2350を4.5μm×5μmで厚さ0.01μm、第2の記録層84を面積5μm×5μmで厚さ0.1μm、第4の界面層804として(ZrO235(SiO215(Cr2350を4.5μm×5μmで厚さ0.01μm、上部電極85としてPtを面積5μm×5μmで厚さ0.1μmに順次スパッタリング法により積層した。第1の界面層801、第2の界面層802、第3の界面層803および第4の界面層804は絶縁体である。従って、第1の記録層83および第2の記録層84に電流を流すため、第1の界面層801、第2の界面層802、第3の界面層803および第4の界面層804を第1の記録層83および第2の記録層84より小さい面積で成膜し、下部電極82、第1の記録層83、第2の記録層84および上部電極85が接する部分を設けている。
【0447】
その後、下部電極82および上部電極85にAuリード線をボンディングし、印加部87を介して電気的情報記録再生装置92を電気的情報記録媒体86に接続した。この電気的情報記録再生装置92により、下部電極82と上部電極85の間には、パルス電源90がスイッチ89を介して接続され、さらに、第1の記録層83および第2の記録層84の相変化による抵抗値の変化が、下部電極82と上部電極85の間にスイッチ91を介して接続された抵抗測定器88によって検出される。
【0448】
ここで、本実施例の情報記録媒体86の一例として、第1の記録層83および第2の記録層84に、図1に示す三角座標上で、座標(Ge,Sb,Te)=(x,y,z)おいて、(x,y,z)=a(35,65,0)、b(36.9,60,3.1)、c(3.2,60,36.8)、d(5,95,0)、(1)(30,70,0)、(2)(30,65,5)、(3)(19,62,19)、(4)(11,62,27)、(5)(5,75,20)、(6)(7.5,90,2.5)、e(25,75,0)、f(25,65,10)、g(7.2,65,27.8)、h(10,90,0)、(7)(22.5,77.5,0)、(8)(23,70,7)、(9)(16,68,16)、(10)(12,68,20)、(11)(12.5,75,12.5)、(12)(12,81,7)、(13)(13,87,0)、j(20.9,70,9.1)、k(11.8,70,18.2)、m(14.5,85.5,0)、n(20,80,0)、(14)(18,82,0)、(15)(20,75,5)、(16)(15,70,15)、(17)(14,79,7)、(18)(17,78,5)としたものをそれぞれに適用した。
【0449】
結果として、第1の記録層83および第2の記録層84のいずれにおいても、それぞれを結晶状態と非晶質状態との間で電気的に可逆変化させることができた。また、電気的情報記録媒体86の繰り返し書換え回数を測定したところ、第1の記録層83および第2の記録層84のいずれにおいても、書換え回数1010回以上の結果が得られ、電気的情報記録媒体として、良好な特性を有していることがわかった。
【0450】
以上、本発明の実施の形態について例を取り上げ説明したが、前述したように本発明は上記の実施の形態に限定されず本発明の技術発想に基づいて他の実施の形態にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0451】
本発明の情報記録媒体とその製造方法は、優れた記録層材料を有し、高速記録可能で大容量な光学的情報記録媒体として、例えばBlu−ray DiscやDVD−RAMのようなDVD(Digital Versatile Disc)に有用である。また、直径6cmや8cmのような小径ディスクに応用することもできる。さらに、電気的情報記録媒体として、電気的なスイッチング素子としても有用である。
【符号の説明】
【0452】
1、2、3、4、5、75 光学的情報記録媒体
11、53、81 基板
12、302、402 反射層
13、303、403 第2の誘電体層
14、802 第2の界面層
15、304、404 記録層
16、305、405、801 第1の界面層
17、306、406 第1の誘電体層
18 カバー層
19 エネルギービーム(レーザ光)
31、33、36、38 情報層
32、34、35、37 光学分離層
301、401 透過率調整層
51 ダミー基板
52 接着層
9 記録再生装置
71 スピンドルモータ
72 半導体レーザ
73 光学ヘッド
74 対物レンズ
76 レーザ光
82 下部電極
83 第1の記録層
84 第2の記録層
85 上部電極
801 第1の界面層
802 第2の界面層
803 第3の界面層
804 第4の界面層
86、93 電気的情報記録媒体
87 印加部
88、101 抵抗測定器
89、91 スイッチ
90、100 パルス電源
92 電気的情報記録再生装置
94 ワード線
95 ビット線
96 メモリセル
97 アドレス指定回路
98 記憶装置
99 外部回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体において、
前記記録層は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層の厚み方向に順に配置することによって形成されており、
前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)が、Ge−SbまたはTeを含む、情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1構成層〜前記第X構成層の各膜厚dm(nm)が、0.05≦dm≦25を満たす、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記第m構成層が、元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)をさらに含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記m構成層における前記元素Mの含有量が15原子%以下である、請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記元素Mが、C、Si、Sn、Bi、InおよびMnより選ばれる少なくとも何れか1つの元素である、請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記第m構成層が、GepSb100-p(原子%)(pは、0<p<100を満たす)またはGeqTe100-q(原子%)(qは、0≦q<100を満たす)の組成式で表される材料を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
pが5≦p≦35を満たす、または、qが0≦q≦60を満たす、請求項6に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
pが10≦p≦20を満たす、または、qが0≦q≦60を満たす、請求項6に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
レーザビーム入射側と反対側から順に配置された第1情報層〜第N情報層を備えており、前記第1情報層〜前記第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記記録層に隣接して配置される第1の隣接層および第2の隣接層をさらに含み、
前記第1の隣接層および第2の隣接層の少なくとも何れか一方が、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素の酸化物を含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
レーザビームの照射または電流の印加によって、相変化を起こす記録層を有する情報記録媒体の製造方法であって、
前記記録層は、第1構成層〜第X構成層(Xは2以上の整数)を、前記記録層の厚み方向に順に配置することによって形成されており、
前記第1構成層〜前記第X構成層のうち少なくとも何れか1つの構成層である第m構成層(mは1≦m≦Xを満たす整数)を、Ge−SbまたはTeを含むターゲットを用いて成膜する工程を含む、情報記録媒体の製造方法。
【請求項12】
前記ターゲットが、さらに元素M(但し、Mは、N、Bi、C、Si、Sn、Ga、In、Zn、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Ru、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、TbおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素)を含み、
前記工程において、前記ターゲットを用いて前記第m構成層を成膜する、請求項11に記載の情報記録媒体の製造方法。
【請求項13】
前記工程において、
前記ターゲットを用いて、GepSb100-p(原子%)(pは、0<p<100を満たす)またはGeqTe100-q(原子%)(qは、0≦q<100を満たす)の組成式で表される材料を含む前記第m構成層を成膜する、請求項11に記載の情報記録媒体の製造方法。
【請求項14】
前記情報記録媒体は、レーザビーム入射側と反対側から順に配置された第1情報層〜第N情報層を備えており、前記第1情報層〜前記第N情報層のうち少なくとも何れか1つの情報層が前記記録層を含み、
前記工程において、前記ターゲットを用いて前記記録層における前記第m構成層を成膜する、請求項11に記載の情報記録媒体の製造方法。
【請求項15】
前記情報記録媒体は、前記記録層に隣接して配置される第1の隣接層および第2の隣接層をさらに含んでおり、
前記第1の隣接層および前記第2の隣接層の少なくとも何れか一方を、Si、Zr、Hf、Cr、In、Ga、Al、Ti、Nb、YおよびDyより選ばれる少なくとも何れか1つの元素の酸化物を含むターゲットを用いて成膜する工程をさらに含む、請求項11に記載の情報記録媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−154781(P2011−154781A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102950(P2011−102950)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−284401(P2007−284401)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】