説明

情報通信システム、情報通信方法

【課題】UDP通信におけるパケットロスを救済する。
【解決手段】送信制御装置は、ネットワークを構成する複数の監視対象装置から監視装置を宛先としてUDPに基づいて送信されるパケットを受信して記憶し、監視装置からパケットの突合処理要求を受信すると、監視対象装置から送信され監視装置に受信されたパケットと、記憶したパケットとを比較して、記憶されているが監視装置に受信されていないロスパケットを検出し、検出されたロスパケットを、監視装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UDPにおけるパケットロスを救済する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パケットの送達確認を行なわないコネクションレス型のプロトコルであるUDP(User Datagram Protocol)に基づくIP(Internet Protocol)通信(UDP/IP通信)においては、送達確認を行なうTCP(Transmission Control Protocol)/IP通信に比べて少ない通信負荷により効率良くデータ通信が行えるものである。このような特性上、UDP通信においては通信経路上でパケットロスが発生した場合にパケットの再送信は行われない。
【0003】
特許文献1には、このようなUDP通信において、他層であるRTP(Real-time Transport Protocol)のヘッダ情報に付与されたシーケンス番号に基づいてパケットロスを検出し、パケットを再送することによりパケットロスを救済する技術が記載されている。特許文献2には、IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)のヘッダ情報に付与されたシーケンス番号に基づいてパケットロスを検出し、パケットを再送する技術が記載されている。特許文献3には、SNMP(Simple Network Management Protocol)トラップを送信するエージェントが送信するパケットにシーケンス番号を付与し、トラップを受信したマネージャは、送信されたパケットに付与されたシーケンス番号に基づいてパケットロスを検出し、パケットを再送する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−208635号公報
【特許文献2】特開2008−060817号公報
【特許文献3】特開平11−177552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような技術においては、UDPに基づくパケットを送信する送信側の装置に、送信するパケットのヘッダにシーケンス番号を付与する機能が必要になる。ここで、例えばUDPに基づいて送信されるSNMPパケットのパケットロスを救済したい場合、SNMPエージェントを備えた監視対象装置は大量に存在する場合があることが考えられ、このような監視対象となる全ての装置に、シーケンス番号を付与するための機能を備えるようにすることは現実的には困難な場合がある。また、上述の技術では、RTPやIPSecのように、UDPとは異なる層のプロトコルに依存することになる。すなわち、従来技術によってUDPのパケットロスを救済する方法が適用可能なのは、このように限定された通信環境においてのみである。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、UDPパケットの送信元に特殊な機能を加えることなく、また他層に依存することもなく、効率的にUDP通信のパケットロスを救済する情報通信システム、情報通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、ネットワークを構成する複数の監視対象装置からUDPに基づいて送信されるパケットを受信する監視装置と、監視対象装置と監視装置とに接続された送信制御装置とを備える情報通信システムであって、送信制御装置は、パケットが記憶される送信パケット記憶部と、監視対象装置から監視装置を宛先として送信されるパケットを受信し、送信パケット記憶部に記憶させるパケット受信部と、監視装置から、パケットの突合処理要求を受信すると、監視対象装置から送信され監視装置に受信されたパケットと、送信パケット記憶部に記憶されたパケットとを比較して、パケット送信記憶部に記憶されているが監視装置に受信されていないパケットであるロスパケットを検出する突合処理部と、突合処理部によって検出されたロスパケットを、監視装置に送信するパケット送信部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述の監視装置は、ネットワークに接続され主系と従系とによって構成される中継装置が、系切替を行なったことを示す系切替情報を受信する系切替情報受信部と、系切替情報受信部が系切替情報を受信すると、送信制御装置に突合処理要求を送信する突合処理要求送信部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の監視装置が、監視対象装置から送信されたパケットが記憶される受信パケット記憶部を備え、送信制御装置の突合処理部は、送信パケット記憶部に記憶されたパケットと、監視装置の受信パケット記憶部に記憶されたパケットとを比較して、送信パケット記憶部に記憶されているが監視装置の受信パケット記憶部に記憶されていないパケットをロスパケットとして検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、ネットワークを構成する複数の監視対象装置からUDPに基づいて送信されるパケットを受信する監視装置と、パケットが記憶される送信パケット記憶部を有し、監視対象装置と監視装置とに接続された送信制御装置とを備える情報通信システムの情報通信方法であって、送信制御装置が、監視対象装置から監視装置を宛先として送信されるパケットを受信して送信パケット記憶部に記憶させるステップと、監視装置から、パケットの突合処理要求を受信すると、監視対象装置から送信され監視装置に受信されたパケットと、送信パケット記憶部に記憶されたパケットとを比較して、パケット送信記憶部に記憶されているが監視装置に受信されていないパケットであるロスパケットを検出するステップと、突合処理部によって検出されたロスパケットを、監視装置に送信するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、送信制御装置は、ネットワークを構成する複数の監視対象装置から監視装置を宛先としてUDPに基づいて送信されるパケットを受信して記憶し、監視装置からパケットの突合処理要求を受信すると、監視対象装置から送信され監視装置に受信されたパケットと、記憶したパケットとを比較して、記憶されているが監視装置に受信されていないロスパケットを検出し、検出されたロスパケットを監視装置に送信するようにしたので、効率的にUDP通信のパケットロスを救済することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による情報通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態により送信制御装置の送信パケット記憶部に記憶されるデータ例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による情報通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の一実施形態による情報通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の一実施形態による突合処理の動作例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による突合処理の概念を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態により記憶されたパケットの削除処理の動作例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による情報通信システムの正常時の例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による情報通信システムの異常時の例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による情報通信システムの他の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による情報通信システムの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による情報通信システム1の構成を示すブロック図である。情報通信システム1は、監視対象装置10と、送信制御装置30と、中継装置40(中継装置40−1、中継装置40−2)と、監視装置50と備えており、これらのコンピュータ装置がネットワーク20を介して接続される。
【0014】
監視対象装置10は、ネットワーク20を構成し、IP通信を行う通信装置である。監視対象装置10は、具体的には、ルータやホストなどが適用できる。監視対象装置10は、通信状態等の状態を示す状態情報を、ネットワーク20を介して自身を監視する監視装置50に送信する。例えば、ネットワーク20は、SNMPマネージャである監視装置50に対するSNMPエージェントの機能を有し、監視装置50から送信されるポーリングに応答してSNMPパケットを送信する。また、監視対象装置10は、自身の通信状態に変化があった場合などには、自身の状態の変化を示すSNMPトラップを送信する。
ネットワーク20は、複数のIP通信装置によって構成されるIPネットワークである。
【0015】
送信制御装置30は、監視対象装置10と監視装置50とに接続されたコンピュータ装置であり、パケット受信部31と、送信パケット記憶部32と、突合処理部33と、パケット送信部34とを備えている。
パケット受信部31は、ネットワークを構成する複数の監視対象装置10から監視装置50を宛先として送信されるパケットを受信し、送信パケット記憶部32に記憶させる。ここで、パケット受信部31は、監視対象装置10から監視装置50を宛先として送信されるパケットのうち、定められたパケットを、送信パケット記憶部32に記憶させる。例えば、パケット受信部31は、受信したパケットが定められたプロトコル(UDP162番:トラップ(Trap))のパケットであるか否かを判定し、定められたパケットであると判定すると、そのパケットを送信パケット記憶部32に記憶させる。
【0016】
送信パケット記憶部32には、パケット受信部31によって受信されたパケットが記憶される。図2は、送信パケット記憶部32に記憶されるデータ例を示す図である。送信パケット記憶部32には、監視対象装置10から送信されたパケット(IPヘッダ部分、UDPヘッダ部分、UDPデータ部分を含む)に、識別情報(Key)と、パケット受信部31がパケットを受信した日時を示す情報(例えば、yyyymmddhhmmss形式)とが対応付けられて記憶される。また、送信パケット記憶部32に記憶されたパケットは、送信制御置30によって一定間隔(例えば、5分)毎に削除される。
【0017】
突合処理部33は、監視装置50から送信されるパケットの突合処理要求を受信すると、監視対象装置10から送信され監視装置50に受信されたパケットと、送信パケット記憶部32に記憶されたパケットとを比較して、送信パケット記憶部32に記憶されているが監視装置50に受信されていないパケットであるロスパケットを検出する。ここで、突合処理部33は、監視装置50の受信パケット記憶部52に記憶されたパケットを読み出し、読み出したパケットと、送信パケット記憶部32に記憶されたパケットとを比較して、送信パケット記憶部32に記憶されているが監視装置50の受信パケット記憶部52から読み出したパケットに含まれないパケットを、ロスパケットとして検出する。
パケット送信部34は、突合処理部33によって検出されたロスパケットを送信パケット記憶部32から読み出し、監視装置50に送信する。
【0018】
中継装置40は、ネットワーク20に接続され主系(運用系、中継装置40−1)と従系(待機系、中継装置40−2)とによって構成されるパケット転送装置である。ここで、中継装置40−1および中継装置40−2は、SNMPエージェントの機能を備えており、中継装置40−1が故障したこと等により転送処理が中継装置40−2に切り替わると、系切替を行なったことを示すSNMPトラップ(系切替情報)を監視装置50を宛先として送信する。
【0019】
監視装置50は、ネットワーク20を構成する複数の監視対象装置10からUDPに基づいて送信されるパケットを受信するコンピュータ装置であり、パケット受信部51と、受信パケット記憶部52と、系切替情報受信部53と、突合処理要求送信部54とを備えている。
【0020】
パケット受信部51は、監視対象装置10から送信されたパケットを受信し、受信したパケットのうち、定められたパケットを受信パケット記憶部52に記憶させる。ここで、パケット受信部51は、例えば、受信したパケットが定められたプロトコル(UDP162番:トラップ(Trap))のパケットであるか否かを判定し、定められたパケットであると判定すると、そのパケットを受信パケット記憶部52に記憶させる。
【0021】
受信パケット記憶部52には、監視対象装置10から送信されたパケットが記憶される。受信パケット記憶部52に記憶されるデータは、送信制御装置30の送信パケット記憶部32に記憶されるデータと同様であり、監視対象装置10から送信されたパケットに、識別情報と、パケット受信部51がパケットを受信した日時を示す情報とが対応付けられて記憶される。
【0022】
系切替情報受信部53は、中継装置40から、系切替を行なったことを示す系切替情報(SNMPトラップ)を受信する。
突合処理要求送信部54は、系切替情報受信部53が中継装置40から系切替情報を受信すると、系切替情報を送信した中継装置40に対してポーリングを行い、中継装置40からポーリングの応答を受信して中継装置40の正当性を確認すると、送信制御装置30に突合処理要求を送信する。
【0023】
次に、本実施形態による情報通信システム1の動作例を説明する。図3は、監視対象装置10から送信されたパケットが監視装置50に送信される例を示すシーケンス図である。
監視対象装置10は、例えば自身が備えるSNMPエージェントが、自身の通信状態の変化を検知すると、監視装置50を宛先としてパケット(SNMPトラップ)を送信する(ステップS1)。監視対象装置10と監視装置50との経路上に接続された送信制御装置30のパケット受信部31は、監視対象装置10から送信されたパケットを受信すると、受信したパケットが定められたパケットであるか否かを判定する(ステップS2)。
【0024】
パケット受信部31は、受信したパケットが定められたパケットであると判定すると(ステップS2:YES)、受信したパケットを送信パケット記憶部32に記憶させる。一方、受信したパケットが定められたパケットでないと判定すると(ステップS2:NO)、ステップS4に進む。パケット送信部34は、パケット受信部31が受信したパケットを、そのパケットの宛先である監視装置50に送信する(ステップS4)。監視装置50のパケット受信部51は、監視対象装置10から送信され送信制御装置30に転送されたパケットを受信すると、受信したパケットを受信パケット記憶部52に記憶させる(ステップS5)。
【0025】
図4は、監視装置50がトラップを受信した場合に、パケットロスが救済される例を示すシーケンス図である。
中継装置40−1が故障して中継装置40−2への系切替(経路切替)が行なわれると、中継装置40−1は、系切替が行なわれたことを示すパケット(SNMPトラップ)を、監視装置50に送信する(ステップS11)。監視装置50のパケット受信部51は、中継装置40から送信されたパケットを受信すると、受信したパケットが、定められたトラップ(例えば、系切替)を示すパケットであるか否かを判定する(ステップS12)。
【0026】
監視装置50のパケット受信部51は、受信したパケットが、定められたトラップを示すパケットでないと判定すると(ステップS12:NO)、パケットの救済を行なわずに処理を終了する。一方、パケット受信部51は、受信したパケットが、定められたトラップを示すパケットであると判定すると(ステップS12:YES)、パケットロスの判定と、その救済処理を行う。このように、本実施形態では、監視装置50が受信したトラップがパケットロス発生の可能性が高いものである場合にのみ、パケットロスの判定と、その救済処理を行うようにしたので、一定期間毎にパケットロスの判定を行なう場合や、種類に関わらずトラップを受信する毎にパケットロスの判定を行なう場合に比べて、パケットロス救済のための処理負荷を低減することができる。
【0027】
監視装置50は、トラップを送信した中継装置40に対するポーリングを行なう(ステップS13)。監視装置50は、中継装置40に送信したポーリングに対する応答を中継装置40から受信し、中継装置40が正常に動作しているか否かを判定する(ステップS14)。監視装置50は、中継装置40が正常に動作していないと判定すると(ステップS14:NO)、ステップS13に戻り、再度のポーリングを行なう。監視装置50は、中継装置40が正常に動作していると判定すると(ステップS14:YES)、突合処理要求送信部54は、送信制御装置30に対してパケットの突合処理を行なうことを要求する情報であるパケット統合要求を送信する(ステップS15)。ここで、突合処理要求送信部54は、例えば、受信パケット記憶部52に記憶されたパケットを読み出して、送信制御装置30に対して送信するパケット突合要求に含ませるようにしても良い。
【0028】
送信制御装置30が、監視装置50から送信されたパケット突合要求を受信すると、送信制御装置30の突合処理部33は、パケット要求に含まれるパケットと、送信制御装置30の送信パケット記憶部32に記憶されたパケットとを比較して、送信制御装置30から送信したパケットと監視装置50が受信したパケットとが同一であるか否かを判定する(ステップS16)。ここで、突合処理部33が、送信制御装置30から送信したパケットと監視装置50が受信したパケットとが同一であると判定すると(ステップS16:YES)、パケットの再送は行わない。
【0029】
一方、突合処理部33が、送信制御装置30から送信したパケットと監視装置50が受信したパケットとが同一でないと判定すると、パケット送信部34は、送信制御装置30から送信したが監視装置50が受信していないパケットであるロスパケットを送信パケット記憶部32から読み出し、読み出したロスパケットを監視装置50に送信する(ステップS17)。監視装置50のパケット受信部51は、受信したパケットを受信パケット記憶部52に記憶させる(ステップS18)。このようにすれば、中継装置40の系切替などにより発生するパケットロスを救済することができ、監視対象装置10が送信したSNMPトラップが紛失することを防ぐことが可能となる。これにより、ネットワーク20を構成する複数の監視対象装置10を監視する監視者は、監視対象装置10に起こった通信状態の変化を漏れなく知ることができる。
【0030】
次に、送信制御装置30の送信パケット記憶部32に記憶されたパケットと、監視装置50の受信パケット記憶部52に記憶されたパケットとの突合処理をより詳細に説明する。図5は、送信制御装置30と監視装置50とによって行なわれる突合処理を詳細に示すフローチャートであり、図6は、突合処理の概念を示す図である。図6の符号aは、送信制御装置30の送信パケット記憶部32に記憶されたパケットのデータ例を示しており、図6の符号bは、監視装置50の受信パケット記憶部52に記憶されたパケットのデータ例を示している。
【0031】
まず、図6の符号bに示される時刻1:06の時点において、中継装置40に系切替が発生し、トラップが送信されたとする。ここで、監視装置50は中継装置40に対するポーリングを開始し、1:07の時点において正常性が確認されると、図5に示すように、突合処理要求送信部54は突合開始位置の確定処理を行う(ステップS20)。ここでは、突合処理要求送信部54は、例えば、トラップ受信から3分前までの間に記憶されたパケットを、パケットロスのチェックを行う突合範囲として確定する。
【0032】
監視装置50の突合処理要求送信部54は、突合範囲内のパケットを受信パケット記憶部52から読み出して、読み出したパケットが含まれるパケット突合要求を、送信制御装置30に送信する(ステップS21)。送信制御装置30の突合処理部33は、監視装置50から送信されたパケット突合要求を受信すると、パケット突合要求を受信した時点までに送信パケット記憶部32に記憶されたパケットを、突合範囲として確定する(ステップS22)。そして、送信制御装置30の突合処理部33は、突合処理を開始する(ステップS23)。突合処理部33は、突合範囲内のパケットに差分があると判定すると(ステップS24:YES)、その差分についてのパケットを再送し、突合範囲内のパケットに差分がないと判定すると(ステップS24:NO)、パケットの再送処理を行わない。ここでは、図6に示すように、符号aに示される送信制御装置30の送信パケット記憶部32に記憶されたパケットのうち、1:02に送信されたBのパケットと、1:05以降に送信されたE、F、Gのパケットが、監視装置50の受信パケット記憶部52に記憶されていないパケット(ロスパケット)として検出され、再送される。
【0033】
ここで、送信制御装置30の送信パケット記憶部32に記憶された送信パケットは、30によって一定時間毎に削除されるようにしても良い。図7は、送信制御装置30によるパケットの削除処理の例を示すフローチャートである。送信制御装置30は、一定時間が経過しているか否かを判定し(ステップS30、31)、一定時間が経過していると判定すると(ステップS31:YES)、送信パケット記憶部32に記憶されたパケットを削除して破棄する(ステップS32)。一定時間が経過していないと判定するとパケットを破棄せず、パケットの記憶を継続する(ステップS33)。
【0034】
このように、本実施形態によれば、監視対象装置10と監視装置50との間にSNMPトラップのパケットロスが発生した場合にも、ロスしたパケットを監視装置50に再送することが可能となる。図8、図9は、本実施形態の情報通信システム1によるパケット救済の概要を示す図である。図8は、中継装置40の故障が発生していない状態での情報通信システム1におけるパケットの流れを示す図である。監視対象装置10から送信されたパケット(監視アラーム)は、送信制御装置30によって受信されて記憶され、ネットワーク20と中継装置40−1とを介して監視装置50に送信される。監視装置50に送信されたパケットは、情報通信システム10を監視する監視者のクライアント端末60によって読み出され、表示される。監視者は、クライアント端末60に表示されたパケットの情報を視認することにより、監視対象装置10の通信状態を知ることができる。
【0035】
図9は、図8に示した状態から中継装置40の故障が発生した場合の情報通信システム1のパケットの流れを示す図である。監視対象装置10から送信されたトラップは、送信制御装置30に記憶され中継装置40−1に転送されるが、中継装置40−1から中継装置40−2への系切替が発生し、監視対象装置10から送信されたパケットがロスしたとする。ここで、系切替を行った中継装置40−1は、自身が系切替を行なったことを示すトラップを監視装置50に送信する。監視装置50が、中継装置40−1から送信されたトラップを受信すると、送信制御装置30に対してパケットの突合要求を送信する。送信制御装置30は、送信制御装置30から送信したパケットと監視装置50によって受信されたパケットとの突合処理を行い、パケットロスを検出した場合には、ロスしたパケットを監視装置50に再送する。
【0036】
以上の説明では、監視装置50は、中継装置40から送信された系切替のトラップを受信した場合に送信制御装置30に対してパケットの突合要求を送信し、パケットロスの救済処理を行うようにしたが、系切替のトラップを受信する以外の任意の契機に応じてパケットロスの救済処理を行うようにしても良い。例えば、図10は、監視装置50が、ネットワーク20を構成する装置から系切替以外のメッセージを受信したことを契機としてパケットロスの救済処理を行う情報通信システム1の概要を示す図である。まず、監視装置50には、予め、パケットの突合処理を開始する契機であるアラームメッセージを記憶させる(ステップS51)。ここで、アラームメッセージは、UDPパケットロスが発生する可能性が高い故障等に基づいて送信されるメッセージである。ネットワーク20に接続されたA装置は、自身が故障すると、監視装置50に対してアラームを送信する。監視装置50は、A装置から送信されたアラームを受信し、予め定められたアラームメッセージであると判定すると、送信制御装置30に対して突合要求を送信する。送信制御装置30の突合処理部33は、パケットの突合処理を行なって、パケットロスが検出された場合にはロスしたパケットの再送を行う。ここで、監視装置50がパケットロスの救済処理を行う契機として、例えば、監視対象装置10に対するポーリングの応答として送信されたメッセージに基づいて、ポーリング対象の監視対象装置10のCPU使用率が、予め定められた閾値を超える一定時間の間、一定以上の値(例えば、95%以上)である場合に、パケットロスの救済処理を行うようにしても良い。
【0037】
図11は、1対1通信(PtoP通信)におけるネットワークにおけるパケットロスの救済を行なう例を示す図である。符号aに示すように、ここでは、送信元の通信装置70−1と、送信先の送信元の通信装置70−2とが、ネットワーク20を介して接続されている。符号bに示すように、ネットワーク20には送信制御装置30が接続されており、通信装置70−2は、通信装置70−1から送信されたパケットを、受信が備える記憶部(DB(データベース))に記憶させている。通信装置70−1から送信されたパケットは、送信制御装置30に受信され、記憶される(ステップS60)。ネットワーク20内における通信装置の故障が発生し、ネットワーク20において通信装置70−1から送信されたUDPパケットが紛失したとする。ここで、ネットワーク20内において故障した通信装置から、送信制御装置30に対してトラップが通知される(ステップS62)。
【0038】
送信制御装置30は、トラップを受信すると(ステップS63)、通信装置70−2に記憶されたパケットを読み出してパケットの突合処理を行う(ステップS64)。送信制御装置30は、ネットワーク20内の通信装置が回復したことを示すアラームを受信すると(ステップS65)、ステップS64における突合処理によって検出したロスパケットを、通信装置70−2に送信する(ステップS66)。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、監視対象装置10から送信されたパケットを送信制御装置30にバッファリングし、その後、パケットの宛先である監視装置50に転送する。冗長化された中継装置の系切替が行なわれた場合、送信制御装置30に記憶された送信パケットと、監視装置50に記憶された受信パケットとの突合処理を行い、差分があれば、その差分を送信制御装置30から監視装置50に再送することで、パケットロスを救済することが可能となる。
【0040】
ここで、ネットワークを構成する通信装置を監視するSNMPは、UDPに基づいて行なわれるが、通信装置が自身の通信状態の変化を知らせるSNMPトラップは、監視装置に対して確実に送信されることが望ましい。本実施形態によれば、このようなSNMPトラップを、より確実に監視装置に送達することが可能である。本実施形態によれば、SNMPトラップを送信する監視対象装置側に新たな機能を追加する必要もないし、UDPとは異なる層のプロトコルに依存することもない。
【0041】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりパケットロスの救済を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0042】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 情報通信システム
10 監視対象装置
20 ネットワーク
30 送信制御装置
31 パケット受信部
32 送信パケット記憶部
33 突合処理部
34 パケット送信部
40 中継装置
50 監視装置
51 パケット受信部
52 受信パケット記憶部
53 系切替情報受信部
54 突合処理要求送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを構成する複数の監視対象装置からUDPに基づいて送信されるパケットを受信する監視装置と、前記監視対象装置と前記監視装置とに接続された送信制御装置とを備える情報通信システムであって、
前記送信制御装置は、
前記パケットが記憶される送信パケット記憶部と、
前記監視対象装置から前記監視装置を宛先として送信される前記パケットを受信し、前記送信パケット記憶部に記憶させるパケット受信部と、
前記監視装置から、前記パケットの突合処理要求を受信すると、前記監視対象装置から送信され前記監視装置に受信された前記パケットと、前記送信パケット記憶部に記憶された前記パケットとを比較して、前記パケット送信記憶部に記憶されているが前記監視装置に受信されていないパケットであるロスパケットを検出する突合処理部と、
前記突合処理部によって検出された前記ロスパケットを、前記監視装置に送信するパケット送信部と、を備える
ことを特徴とする情報通信システム。
【請求項2】
前記監視装置は、
前記ネットワークに接続され主系と従系とによって構成される中継装置が、系切替を行なったことを示す系切替情報を受信する系切替情報受信部と、
前記系切替情報受信部が前記系切替情報を受信すると、前記送信制御装置に前記突合処理要求を送信する突合処理要求送信部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項3】
前記監視装置は、
前記監視対象装置から送信された前記パケットが記憶される受信パケット記憶部を備え、
前記送信制御装置の前記突合処理部は、
前記送信パケット記憶部に記憶された前記パケットと、前記監視装置の前記受信パケット記憶部に記憶された前記パケットとを比較して、前記送信パケット記憶部に記憶されているが前記監視装置の前記受信パケット記憶部に記憶されていないパケットを前記ロスパケットとして検出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報通信システム。
【請求項4】
ネットワークを構成する複数の監視対象装置からUDPに基づいて送信されるパケットを受信する監視装置と、前記パケットが記憶される送信パケット記憶部を有し、前記監視対象装置と前記監視装置とに接続された送信制御装置とを備える情報通信システムの情報通信方法であって、
前記送信制御装置が、
前記監視対象装置から前記監視装置を宛先として送信される前記パケットを受信して前記送信パケット記憶部に記憶させるステップと、
前記監視装置から、前記パケットの突合処理要求を受信すると、前記監視対象装置から送信され前記監視装置に受信された前記パケットと、前記送信パケット記憶部に記憶された前記パケットとを比較して、前記パケット送信記憶部に記憶されているが前記監視装置に受信されていないパケットであるロスパケットを検出するステップと、
前記突合処理部によって検出された前記ロスパケットを、前記監視装置に送信するステップと、を備える
ことを特徴とする情報通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−109263(P2011−109263A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260201(P2009−260201)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】