説明

感光性ペースト組成物およびそれを用いたフラットパネルディスプレイ部材

【課題】本発明はフラットパネルディスプレイの隔壁などの各種部材に用いる感光性ペースト組成物に関して、その感光性ペースト組成物の膜のタック性を制御し、露光時のフォトマスクの汚れなどの問題を生じないことによって、高精細なパターン形成が可能とする感光性ペースト組成物を提供する。
【課題手段】少なくともガラス粉末を含む無機粒子と感光性有機成分を有する感光性ペースト組成物であって、感光性有機成分に含まれるバインダーポリマーのガラス転移温度が30〜100℃であり、酸化物換算表記で70〜95重量%のBi、3〜15重量%のSiO、5〜20重量%のB、1〜10重量%のZnO、0〜3重量%のZrOの組成範囲のガラス粉末を含有する感光性ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイの隔壁などの各種部材に用いる感光性ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管に代わる画像表示装置として、自発光型の放電型ディスプレイである電子放出素子を用いた画像表示装置が提案されている。これは液晶ディスプレイに比べて明暗のコントラストが非常に大きく、また視野角も広く、さらには大画面化、高精細化の要求に応えうることから、そのニーズが高まりつつある。電子放出素子には、熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子がある。冷陰極電子放出型には、電界放出型(フィールドエミッションディスプレイ:FED)、金属/絶縁層/金属型(MIM型)や表面伝導型(SED)などがある。冷陰極電子源を用いたディスプレイは、電子放出素子から放出される電子ビームを蛍光体に照射して蛍光を発光させることで画像を表示するものである。このような電子放出型平面画像表示装置のなかでも、カーボンナノチューブ(CNT)を電子放出素子に用いたCNT−FEDや電子放出素子をバックライト用の光源とするユニットなどが、電子放出特性や大面積化が容易であるという理由から、活発に開発が行われている。この装置の背面ガラス基板には、複数の電子放出素子とそれらの素子の電極を接続するマトリックス状の配線が設けられる。またマトリックス状の配線は、電子放出素子の電極部分で交差することになるので絶縁するための絶縁層が設けられる。さらに背面ガラス基板と前面ガラス基板の間で耐大気圧支持部材としてスペーサが形成されたり、発光領域を区切るため格子状などの隔壁が形成される。隔壁は放電の広がりを一定領域に押さえ、表示を規定のセル内で行わせると同時に、均一な放電空間を確保するために設けられている。
【0003】
一方で、感光性ペーストを用いて、フォトリソグラフィ技術により隔壁を形成する方法が知られている。隔壁は障壁、リブ、バリアリブとも言う。隔壁を形成する方法としては、前面ガラス基板や背面ガラス基板にガラス粉末を含む感光性ペースト組成物を塗布し、乾燥、露光、現像および焼成を行う方法がある。
【0004】
隔壁形成工程で、ガラス基板上に塗布された感光性ペースト組成物の膜を、時間をかけて加熱し、有機溶剤を飛散させるようにするが、実際には完全に飛散させることができないため、その感光性ペーストの膜の表面は多少べたつき(タック性)がある状態となっている。そのため、フォトマスクを接触させて用いるコンタクト露光の場合、フォトマスクにペーストが付着し、フォトマスクを外した際に感光性ペースト組成物の膜にピンホールが生じるという問題があった。さらには、タック性が大きいと、感光性ペースト組成物の膜とフォトマスクの間に、空気が入りこみやすくなり、紫外線を露光したときに、それが感光を阻害させ、また、感光性ペースト組成物の膜の表面にゴミやほこりが付着しやすくなり、それらがパターンを悪化させることも問題であった。これらの問題を解決するために、感光性ペースト組成物中の有機溶媒含有量を6重量%以下にしてから、露光を行うことにより、感光性ペースト組成物から形成される膜のタック性を抑えるという方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、膜厚50μm以上にして用いる場合、膜の基板側の有機成分が飛散しにくくなるために、膜を露光した際に、その膜の基板側の硬化が十分でなく所望のパターン形状を得られない。また、現像後のガラスパターンの強度および形状を維持するために、ポリマーのガラス転移温度を−30〜30℃にするという方法が提案されているが(特許文献2参照)、この方法では、感光性ペースト組成物の膜の表面がべたつくために、コンタクト露光を行う場合にピンホールが発生する。
【特許文献1】特開平11−67076号公報(段落7、20)
【特許文献2】特開2004−118050号公報(段落14、19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はフラットパネルディスプレイの隔壁などの各種部材に用いる感光性ペースト組成物に関して、感光性ペースト組成物から形成される膜のタック性を制御し、露光時のフォトマスクの汚れなどの問題を生じないことによって、高精細なパターン形成が可能となる感光性ペースト組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は少なくともガラス粉末を含む無機粒子と感光性有機成分を有する感光性ペースト組成物であって、感光性有機成分に含まれるバインダーポリマーのガラス転移温度が30〜100℃であり、酸化物換算表記で70〜95重量%のBi、3〜15重量%のSiO、5〜20重量%のB、1〜10重量%のZnO、0〜3重量%のZrOの組成範囲のガラス粉末を含有する感光性ペースト組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、感光性ペースト組成物の膜のタック性を抑制でき、フォトマスクを接触させて用いるコンタクト露光で、フォトマスクに感光性ペースト組成物が接触しても感光性ペースト組成物の膜にピンホールやクラックが生じず、エッチング後の残渣が生じない。さらに、感光性ペースト組成物の膜とフォトマスク間の距離を近づけることができるようになるので、より高精細なパターン形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の感光性ペースト組成物および、それを用いたパターン形成方法およびそれにより作製したフラットパネルディスプレイ部材について説明する。
【0009】
本発明の感光性ペースト組成物に用いるガラス粉末は、酸化物換算表記で70〜95重量%のBi、3〜15重量%のSiO、5〜20重量%のB、1〜10重量%のZnO、0〜3重量%のZrOの組成範囲を満たすガラス粉末であり、低軟化点ガラスが好ましい。低軟化点ガラスは、その成形加工に要するエネルギーやコストを抑えることができる。低軟化点ガラスとしては、SiO、Al、B、ZnO、PbO、Bi、ZrO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物などを含有したものであって、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラスなどが挙げられる。本発明の感光性ペースト組成物を焼成して得られたガラス膜はクロム等の金属をエッチングする工程に用いられることがあり、金属をエッチングする工程においても、溶解しにくいガラス、すなわち酸に対するエッチング耐性が高いガラスが望ましい。このような要求に加え、粒子径の微粒化が求められることから、微粒化が可能なビスマス系ガラスであることが好ましい。
【0010】
ガラスには非晶質ガラスおよび結晶化ガラスが存在するが、本発明は非晶質ガラスおよび結晶化ガラス共に利用可能である。一般に非晶質ガラスは、結晶化温度まで加熱されると結晶化する性質を有している。結晶化したガラス中にはガラスの結晶が数10から90体積%前後まで形成されるので、強度や熱膨張率を改善できる。これを利用して、焼成時における収縮を抑制することが可能である。また、すでに結晶化されたガラスを使用することも可能である。すでに結晶化されたガラスを使用する場合は、結晶化温度が550℃以下であるガラスを使用することが望ましい。低温焼成によるコスト削減と生産性の向上はもちろんのこと、焼成温度が500℃以下であれば、安価なガラス基板を使用できるメリットが生じる。
【0011】
本発明における低軟化点とは、ガラス粉末のガラス軟化点温度が350〜600℃であることを指し、400〜580℃であることがより好ましく、さらに好ましくは450〜500℃が好ましい。また用いるガラスは無アルカリガラスであることが望ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、バリウム、カルシウム等が含まれる場合は、焼成時や焼成後のガラス基板や電極中のガラス成分とイオン交換が起こりやすく、電気特性の低下や熱膨張係数の不整合が発生し、不良の原因となるため好ましくない。以上より、本発明で低軟化点ガラスを用いる場合は、Bi−Zn系およびBi−Zr系ガラスが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0012】
ガラス粉末の作製方法として、例えば原料であるSiOとしては、カリ長石、ソーダ長石、カオリン、けい砂などを、Alとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カリ長石、ソーダ長石、カオリンなどを、Bとしては、ほう酸やほう砂などを、ZnOとしては、亜鉛華などを、それらのいずれかの成分とBiおよびZrOなどを所定の配合組成となるように混合し、900〜1200℃で溶融後、急冷し、ガラスフリットにしてから粉砕して微細な粉末にする。
【0013】
ガラスの粉砕方法としては、ボールミル、ビーズミル、アトラクターやサンドミルなどがあり、そのうち、ボールミルやビーズミルが好ましく用いられる。
【0014】
本発明で用いるガラス粉末の平均粒子径は、0.1〜5μmであることが好ましく、さらには0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。平均粒子径0.1μm以上のガラス粉末を使用することにより分散安定性の良好な感光性ペースト組成物が得られ、平均粒子径5μm以下のガラス粉末を用いることにより、薄膜での微細なフォトリソグラフィによる加工が可能となる。ガラス粉末の平均粒子径はレーザー回折散乱法を用いる場合には、得られた粒度分布の累積度数が50%になる時の粒子径のことを示す。BET法換算値を用いる場合には、窒素ガスなどの不活性ガスを吸着させて比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求める。粒子がナノサイズ以下となる場合、凝集等により正確に測定することは困難となるので、BET法換算値を用いるのが好ましい。
【0015】
感光性ペースト組成物中におけるガラス粉末の含有量としては、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、80〜90重量%がさらに好ましい。50重量%以上とすることで、焼成時のパターン形状を好ましくすることができ、一方、95重量%以下とすることで良好な感光特性が得られる。95重量%を越えるとペースト化自体が困難となる。また、50重量%未満であると、タック性が悪化する。
【0016】
用いるガラス粉末の平均屈折率は1.8以上であることが好ましい。より好ましくは2より大きく2.7より小さいことが好ましい。さらに好ましくは2.0以上2.2以下であることが好ましい。上記ガラス組成を満足すると、平均屈折率の上記の範囲を満足することができる場合がある。
【0017】
ガラス粉末の屈折率についてはベッケ法、Vブロック法、エリプソメーターなどを用いて測定する。屈折率は露光波長で測定することが効果を確認する上で正確である。例えば、高速分光エリプソメーターM−2000回転補償子型(J.A.Woollam社製)を用いて、350〜650nmの波長範囲の光で測定することが好ましい。さらには、i線(365nm)もしくはg線(436nm)での屈折率測定が好ましい。この測定に用いる試料は、感光性ペースト組成物をガラス基板上にスクリーン印刷し、それをガラス粉末のガラス軟化点温度以上で焼成した薄膜であるのが好ましい。
【0018】
また上記ガラス粉末の含有量の範囲内において、ガラスの比重は4以上7以下であることが好ましく、4.5以上6.5以下がより好ましく、5.5以上6.3以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、焼成時の収縮を小さくすることができ、焼成後のパターン形状を好ましくすることができる。ガラス粉末の比重についてはアルキメデス法、比重ビン法、浮遊法などを用いて測定する。
【0019】
ガラス粉末の熱膨張係数は、50〜350℃の範囲の熱膨張係数α50〜350の値が70〜100×10−7/Kが好ましく、72〜90×10−7/Kがより好ましい。この範囲内であればガラス基板の熱膨張係数と整合し、焼成の際にガラス基板にかかる応力を低減できるので好ましい。
【0020】
このような特性を満たすビスマス系ガラス粉末組成として、酸化物換算表記で、Biは70〜95重量%の範囲で配合することが好ましい。さらに好ましくは73〜85重量%である。70重量%未満では酸に対するエッチング耐性が弱く、溶解してしまう。95重量%を越えるとガラスの耐熱温度が低くなりガラス基板上への焼き付けが難しくなる。また、85重量%を超えると、ガラス化しにくくなる。
【0021】
SiOは3〜15重量%の範囲で配合することが好ましい。3重量%未満の場合はガラス化が困難となる。15重量%を越えるとガラス軟化点が高くなり、ガラス基板への焼付けが難しくなる。
【0022】
は5〜20重量%が好ましい。さらに好ましくは、7〜15重量%である。Bを含有させることによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、緻密性などの電気、機械および熱的特性を調整することができる。20重量%を越えるとガラスの酸や水に対する安定性が低下する。
【0023】
ZrOは0〜3重量%の範囲で含むことが好ましく、より好ましくは、0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。ZrOはガラス材料の耐酸性を向上させるが、3重量%を越えると、ガラスが不均一になり、酸によるエッチングによって残渣が生じる。
【0024】
ZnOは1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは、2〜5重量%である。1重量%未満では緻密性向上の効果が少ない、10重量%を越えると、焼付け温度が低くなり制御しにくくなり、また絶縁抵抗も低くなるので好ましくない。
【0025】
酸化物換算表記で70〜95重量%のBi、3〜15重量%のSiO、5〜20重量%のB、1〜10重量%のZnO、0〜3重量%のZrOの組成範囲のガラス粉末を含有する感光性ペースト組成物を用いることで、ガラスの微粒化が可能で、且つ酸に対するエッチング耐性が高くなるため、より高精細なパターンが可能となる。
【0026】
また、上記ガラス粉末などのほかにフィラーを入れてもよい。具体的なフィラーとしては、SiO、Al、ZrO、ムライト、スピネル、マグネシア、ZnO、酸化チタン、ジルコンなどのセラミック粉末が挙げられ、これらは単独種で用いても複数種組み合わせて用いても良い。フィラーの添加量は、感光性ペースト組成物の無機成分全量に対して、15重量%未満が好ましい。それ以上にすると焼結時にひび割れが発生したり、焼結不足になる場合がある。フィラーは焼結時において溶融しないものであることが好ましい。
【0027】
用いるフィラーの平均粒子径としては、0.01〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.01〜0.05μmであることが好ましい。0.01μm以上のフィラー添加により、焼成後の部材の強度を向上することができ、0.5μm以下のフィラーを使用することにより、良好な感光特性を得ることができる。フィラーの平均粒子径は窒素ガスを用いたBET法により比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求める。
【0028】
本発明において感光性有機成分は、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃のバインダーポリマーを有する。バインダーポリマーのTgは、より好ましくは40〜95℃で、さらに好ましくは60〜90℃である。Tgを30℃以上とすることでペーストの粘着性を低減することができ、Tgを100℃以下とすることでガラス基板に対するペーストの密着性を保持することができる。また、Tgが100℃を越えると、感光性ペースト組成物の膜を露光、現像した後に、パターンにクラックが発生する可能性が大きくなる。
【0029】
バインダーポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどの各種ポリマーを用いることができるが、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。さらに、無機粉末の分散性や現像性の観点から、加えて、感光によるパターン形成性の観点から、バインダーポリマーはカルボキシル基や水酸基、エチレン性不飽和二重結合などの反応性官能基を有していることが好ましい。
【0030】
バインダーポリマーのガラス転移温度は、共重合するモノマーの種類、ポリマーを構成するモノマーの含有比によって制御が可能である。この場合、バインダーポリマーのガラス転移温度は、以下のフォックス式に従って、バインダーポリマーを構成している各モノマー単独重合体種のガラス転移温度から計算できる。
フォックス式:100/Tg = Σ(Wn/Tgn)
Tg:バインダーポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
Wn:各モノマー単独重合体の重量分率(%)
Tgn:各モノマー単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)
本発明ではバインダーポリマーのガラス転移温度が30〜100℃になるように、フォックス式に従って、共重合するモノマーを選び、それらを重合し、バインダーポリマーを得ても良い。
【0031】
得られたバインダーポリマーのTgの測定法は、島津製作所(株)製DSC−50型測定装置を用い、サンプル重量10mg、窒素気流下で昇温速度20℃/分で昇温し、ベースラインの偏起が開始する温度をTgとした。
【0032】
各モノマー単独重合体のガラス転移温度としては、例えば、三菱レイヨン(株)などのモノマーメーカーの技術資料や高分子データハンドブック(倍風館発行、高分子学会編(基礎編)、昭和61年1月初版)に記載されている。例えば、メタクリル酸メチル(105℃)、メタクリル酸(228℃)、アクリル酸エチル(−22℃)、メタクリル酸グリシジル(74℃)、アクリル酸メチル(10℃)、スチレン(100℃)などである。
【0033】
また、バインダーポリマーの熱分解温度が500℃以下であること、さらには450℃以下であること、また150℃以上、さらに好ましくは400℃以上であることが好ましい。熱分解温度が150℃以上のバインダーポリマーを用いると、感光性ペースト組成物の熱安定性が保持され、ペーストを塗布し、パターン加工にいたるまでの各工程において、感光性を損なうことなく良好なパターン加工が可能となる。また500℃以下のバインダーポリマーを用いると、焼成工程でのクラック、剥がれ、反りや変形を防止できる。バインダーポリマーの熱分解温度を調整する手法は、共重合成分のモノマーを選択することで可能となる。特に低温で熱分解するモノマーを共重合成分とすることで共重合体の熱分解温度を低くできる。このように低温で熱分解する成分として、例えばメチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、α−メチルスチレン等を挙げることができる。熱分解温度は、TG測定装置(TGA−50、島津製作所(株)製)にて約20mgの試料をセットし、空気雰囲気で流量20ml/分、昇温速度0.6〜20℃/分で700℃まで昇温する。その結果、温度(縦軸)と重量変化(横軸)の関係がプロットされたチャートを印刷し、分解前(横軸に平行の部分)の部分と分解中の部分の接線を引き、その交点の温度を熱分解温度とする、等の方法で測定できる。
【0034】
さらに用いるバインダーポリマーの重量平均分子量は3000〜10万が好ましい。より好ましくは5千〜8万である。重量平均分子量を3000〜10万とすることにより、現像液溶解性が保持され、その結果、より精細なパターン化が可能となる。3000未満であると、アルカリ溶解性が高すぎて良好なパターンが得られないばかりか、タック性が悪化する。また、バインダーポリマーの粘度は重量平均分子量に比例して増大するため、感光性ペーストの粘度を低くして、濾過や脱気、塗布工程での作業性を保持するためには、バインダーポリマーの重量平均分子量を低くすることが好ましい。バインダーポリマーの重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。カラムはShodex KF−803を用い、重量平均分子量はポリスチレン換算により計算した。
【0035】
感光性有機成分中のバインダーポリマーの含有量は感光性有機成分に対して1〜50重量%が好ましい。より好ましくは5〜40重量%である。1〜50重量%の範囲とすることで、パターン加工性と、焼成時の収縮などの特性を両立させることができる。
【0036】
本発明において感光性有機成分に含まれる感光剤は、光によって硬化するネガタイプでも、光によって可溶化するポジタイプでも良い。本発明において感光性有機成分に含まれる感光剤はa)エチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤、b)グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物の群から選択された1種以上のカチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤、c)キノンジアジド化合物、ジアゾニウム化合物、アジド化合物から選択された1種以上の化合物等が好ましく用いられる。選択された感光剤に対して、バインダーポリマーの種類は特に限定されない。
【0037】
a)成分におけるエチレン性不飽和基含有化合物はバリエーションの豊富さ等から(メタ)アクリル系であることが好ましい。エチレン性不飽和基含有化合物の含有量は、感光性有機成分に対して、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。50重量%以上とすることで精細なパターン加工が可能となり、99重量%以下とすることで焼成後のパターン形状を良好に保つことができる。また、a)成分のうちの光重合開始剤は、特に波長400〜450nmの可視光に感度を有するものを用いるのが好ましく、本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性有機成分に対し0.05〜50重量%の範囲で添加され、より好ましくは1〜35重量%である。この範囲内であれば感度もよく、露光部の残存率を大きくすることができる。
【0038】
b)成分は、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物からなる群から選択された1種以上のカチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤を含有する。グリシジルエーテル化合物の感光性有機成分中に占める割合としては、1〜75重量%が好ましく、より好ましくは5〜35重量%である。この範囲内とすることでパターン形状を良好に保つことができる。光カチオン重合開始剤を使用する場合の配合量は、感光性有機成分中の0.01〜15重量%の範囲が好ましい。
【0039】
c)成分は、ジアゾニウム化合物、アジド化合物から選択された1種以上の化合物等が好ましく用いられる。キノンジアジド化合物の感光性有機成分中に占める割合としては、1〜96重量%が好ましく、さらには3〜80重量%以下が好ましい。キノンジアジド化合物が1重量%より少ない場合は露光時のキノンジアジド化合物による溶剤溶解性の変化が少なくなるためパターン形成性が悪くなり、一方、96重量%より多い場合は低分子量成分が増えるため、ガラスの分散が不良となりペーストとすることが困難となる。ジアゾニウム化合物の感光性有機成分中に占める割合としては、5〜80重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。ジアゾニウム化合物が少なすぎる場合は、硬化が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合は組成物の保存安定性に問題が生じる場合がある。アジド化合物の感光性有機成分中に占める割合としては、5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。アジド化合物が少なすぎる場合は、感光性成分の硬化が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合は組成物の安定性に悪影響をもたらす場合がある。
【0040】
また、焼成時のパターン形状を維持するのを目的にカゴ状シルセスキオキサンを感光性ペースト組成物に添加してもよい。
【0041】
感光性有機成分に含まれる感光剤としてa)成分を用いた場合における、好ましいバインダーポリマーは、上述のようなエチレン性不飽和二重結合含有化合物の共重合により、あるいは共重合で得られたバインダーポリマーの反応性官能基の一部に、反応性官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物を付加するなどして得ることができる。具体的には、不飽和カルボン酸を共重合成分に持つバインダーポリマーのカルボキシル基の一部に、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート化合物を付加させる方法により、カルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するバインダーポリマーが得られる。
【0042】
上記の好ましいバインダーポリマーの具体例としては、メチルメタクリレート−メタクリル酸−スチレン共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したもの、イソブチルメタクリレート−2−エチルヘキシルメタクリレート−アクリル酸の共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したもの、エチルアクリレート−メチルアクリレート−メタクリル酸の共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したもの、メチルメタクリレート−メタクリル酸−エチルアクリレートの共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したもの、等が挙げられる。これらのうち、メチルメタクリレート−メタクリル酸−スチレン共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したもの、メチルメタクリレート−メタクリル酸−エチルアクリレートの共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したもの、メチルメタクリレート−メタクリル酸−エチルアクリレートの共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したものが好ましく、特に、メチルメタクリレート−メタクリル酸−エチルアクリレートの共重合体にグリシジルメタクリレートを付加したものが好ましい。
【0043】
このようなバインダーポリマーの酸価は50〜140(mgKOH/g)であることが好ましい。酸価を140以下とすることで、現像許容幅を広くすることができ、酸価を50以上とすることで、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が保持され、高精細なパターンを得ることができる。なお、酸価の測定は、バインダーポリマー1gをエタノール100mLに溶解した後、0.1N水酸化カリウム水溶液を用いた滴定にて求められる。さらに、バインダーポリマーの二重結合密度を0.1〜2.7mmol/gとすることが好ましく、さらには0.2〜1.6mmol/gが好ましい。二重結合密度が0.1mmol/g未満では露光によるパターン形成が十分でなく膜減りが大きく、現像性が著しく悪くなる。一方2.7mmol/gを越える範囲では焼成工程でのクラック、剥がれ、反りなどが発生する。
【0044】
本発明で、有機溶媒を含む感光性ペースト組成物は基材上に塗布されて膜にした後、乾燥して溶媒が除去される。
【0045】
感光性ペースト組成物の膜の乾燥方法としては、熱風オーブンや遠赤外線、ホットプレート、自然乾燥、減圧乾燥など一般によく用いられている方法を用いることができるが、熱風オーブンや遠赤外線を用いることが好ましい。この方法であれば、感光性ペースト組成物の膜を深さ方向に対して、均一に乾燥できる。
【0046】
また乾燥温度は、感光性有機物が熱重合を引起こさない温度であれば特に限定されないが、室温レベルの温度では、乾燥時間が長くなる。また、乾燥温度が高すぎる場合は、感光性モノマーやオリゴマーが熱分解するおそれがある。このような点から、本発明では40〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは60〜120℃である。ここで乾燥温度とは、例えば熱風オーブンの場合は熱風の温度のことを意味する。
【0047】
また、露光に供する前の、感光性ペースト組成物中の有機溶媒残存量を3重量%以下に、好ましくは、1重量%以下にコントロールすることが重要である。3重量%を超えると、タック性が悪化する。
【0048】
また、乾燥時の注意点は、感光性ペースト組成物の膜を塗布した基板を水平に保つことである。基板が傾いていた場合、ペーストが流動して膜厚むらが発生するからである。
【0049】
本発明で乾燥して得られた感光性ペースト組成物の膜のタック値は、0〜4のいずれかであることが好ましい。この範囲であるとタック性が抑制され、コンタクト露光を容易に用いることができる。この範囲以外であると、感光性ペースト組成物の膜にピンホールが生じたり、フォトマスクに感光性ペースト組成物が付着したりするため、コンタクト露光を行うことが困難になる場合がある。タック値が、0〜4のいずれかである感光性ペースト組成物の膜を利用することで、コンタクト露光が可能であり、その結果、感光性ペースト組成物の膜とフォトマスクとの間にギャップを設けるアライメント方式の場合よりも、高精細なパターン形成が可能となる。さらに、フォトマスクを洗浄する手間を減らすことができるので、低コスト化も可能である。
【0050】
タック値は、バインダーポリマーのガラス転移温度やバインダーポリマーの分子量、有機溶媒量、感光性ペースト組成物中の無機粒子の比率等に寄るが、バインダーポリマーのガラス転移温度による影響が大きい。
【0051】
感光性有機成分に含まれるバインダーポリマーのガラス転移温度が30〜100℃である感光性ペースト組成物を用いることで、タック値を0〜4の範囲に収めることができる。
【0052】
本発明におけるタック値の評価は次のとおりである。ガラス基板上に感光性ペースト組成物をスクリーン印刷を用いて全面および部分的に均一に塗布し、熱風オーブンで乾燥した感光性ペースト組成物の膜を準備する。熱風オーブンでの乾燥は、85℃20分で行った。評価する基板の大きさは、JIS Z 0237(平成12年度)で記載されている傾斜式ボールタック装置で利用できる大きさである。また、評価では傾斜角として30°を利用した。JIS G 4805(平成11年度)で規定された材質のボールの大きさはJIS B 1501(昭和63年度)の“ボールの呼び”の1/16から1までの合計31種類(5/64、7/64、9/64、15/64、17/64の5種類は除く)とし、“ボールの呼び”の32倍の数値をボールナンバーと呼び、それをタック性の指標とした。傾斜式ボールタック装置の傾斜板上の所定の位置に感光性ペースト組成物の塗布した面を上にしたガラス板(厚み1.3mm、12.5cm角)を取り付け、各大きさのボールをゲートにセットした後、ゲートをゆっくりと開いてボールを転がし、測定部内に完全に停止(5秒以上ボールが動かないこと)するようなボールのうちで最大のものを見つけ出し、そのときのボールナンバーを感光性ペースト組成物のタック値とした。一番小さなボールでも、止まらない場合を0とした。助走路には、感光性ペースト組成物を塗ったガラスと段差が生じないように、それと同じ厚みのガラス板を置き、その上から厚み20μmのPETフィルムを貼り付けた。また、ペーストが感光しないように、暗幕の中で測定を行った。
【0053】
本発明の感光性ペースト組成物に含まれる感光性有機成分の屈折率は1.4〜1.7の範囲であり、上記ガラス粉末の屈折率範囲内においては、その屈折率差は0.3〜1.3と非常に大きい。しかし、感光性有機成分に露光波長を吸収し、露光波長より長波長の光線を発し、かつ発した光線が感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させる化合物(以下、化合物(A)という)を含有していると、屈折率差が小さい場合と同等、それ以上の効果を発揮する。本来は屈折率差が小さい方が望ましいが、屈折率差が大きくならざるを得ない場合、特に無機粉末の平均屈折率をN1、感光性有機成分の平均屈折率をN2とした時、|N1−N2|≧0.29である場合であっても、化合物(A)を含有し、化合物(A)に紫外線を吸収することで散乱を抑制し、しかも透過性の高い照射する紫外線よりも長波長の蛍光を化合物(A)から発することで、露光面から遠い部分も硬化させることが可能となる。|N1−N2|<0.29である場合は、光線が散乱されにくく、露光面から遠い部分も硬化されるため、化合物(A)を含有する効果が薄れる。なお、感光性有機成分は、露光および化合物(A)から発した光線の両者の作用によって、硬化あるいは可溶化する。
【0054】
本発明で用いる化合物(A)は紫外線を吸収して、青色蛍光を発する化合物が好ましい。本発明で用いる化合物(A)としては、クマリン系蛍光増白剤、オキサゾール系蛍光増白剤、スチルベン系蛍光増白剤、イミダゾール系蛍光増白剤、トリアゾール系蛍光増白剤などの蛍光増白剤、イミダゾロン系、オキサシアニン系、メチン系、ピリジン系、アントラピリダジン系、カルボスチリル系の蛍光増白剤が用いられるが、感光性有機成分に含まれるa)〜c)より選ばれた化合物やバインダーポリマー等との相溶性が良いため、好ましくは、クマリン系蛍光増白剤またはオキサゾール系蛍光増白剤が用いられる。これらの化合物を用いれば効果的に機能する。特にクマリン系蛍光増白剤は極性溶剤に対する溶解性が大きいため好ましい。化合物(A)の極性溶剤に対する溶解度は2g/100g溶剤以上であることが好ましく、より好ましくは50g/100g溶剤以上である。溶解性などの点から特にクマリン系誘導体が好ましい。またこれらは単独でも組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明における化合物(A)の含有量は、感光性有機成分に対して、0.1〜30重量%が好ましく、特に後に説明するフィールドエミッション部材および蛍光発光装置用途では2〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。この範囲内であれば精細なパターン加工が可能となる。
【0056】
本発明で用いる化合物(A)の紫外線を吸収する吸収波長域は、320〜410nmの波長域であり、より好ましくは350〜380nmの波長域、さらに好ましくは360〜375nmである。また化合物(A)の蛍光の発光波長域は、400〜500nmの波長域であり、より好ましくは400〜450nmの波長域であり、さらに好ましくは430〜445nmである。この範囲内であれば、露光時の紫外線を有効に吸収して、散乱を抑え、かつ照射する紫外線よりも透過性の高い上記波長域の蛍光を発することで深部、つまり露光面から遠い部分まで感光性有機成分を硬化させることができる。
【0057】
また、上記化合物(A)の含有量の範囲において化合物(A)のモル吸光係数は20000以上であることが好ましい。また60000以下であることが好ましい。この範囲において有効に紫外線を吸収し、露光時の紫外線の散乱を抑えることができ、かつより深部まで感光性有機成分を硬化させることができる。
【0058】
紫外線の吸収波長、蛍光の発光波長ならびにモル吸光係数は分光蛍光光度計(F−2500、日立製作所(株)製)、ならびに紫外可視分光光度計(MultiSpec 1500、島津製作所(株)製)にて測定できる。
【0059】
本発明において、クマリン系蛍光増白剤は、下記式で表わされるクマリン構造を分子中に有する。また、クマリン系蛍光増白剤の具体例としては、7−ジエチルジアミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、7−アミノ−4−メチルクマリンなどが挙げられる。
【0060】
【化1】

【0061】
また、本発明の感光性ペースト組成物には紫外線吸収剤を添加することも有効である。紫外線吸収剤を添加する目的は、上記化合物(A)を用いる目的とは異なり、感光性ペースト組成物の膜を通過する紫外線量を抑えるためである。紫外線量が多いと、露光条件のマージンが狭くなる。また、紫外線吸収効果の高い吸収剤を添加することによって高アスペクト比、高精細、高解像度が得られる。紫外線吸収剤としては有機系染料からなるもの、中でも350〜450nmの波長範囲で高UV吸収係数を有する有機系染料が好ましく用いられる。有機系染料は紫外線吸収剤として添加した場合にも、焼成後のガラス膜中に残存しないで紫外線吸収剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。このような化合物としてアゾ系およびベンゾフェノン系染料が吸収波長を所望の波長域に制御しやすく好ましい。感光性有機成分中の有機系染料の添加量は感光性有機成分に対して0.05〜5重量%が好ましい。より好ましくは0.1〜1重量%である。0.05重量%未満では紫外線吸収剤の添加効果が減少し、5重量%を越えると焼成後の絶縁膜特性が低下するので好ましくない。
【0062】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を添加する場合、その添加量は感光性成分に対して0.05〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0063】
さらに、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤を添加する場合、その添加量は、感光性ペースト組成物に対し、0.001〜1重量%が好ましい。
【0064】
また、可塑剤、酸化防止剤を添加してもよい。可塑剤を添加する場合、その添加量は感光性ペースト組成物に対し0.5〜10重量%が好ましい。酸化防止剤を添加する場合、その添加量は感光性ペースト組成物に対し0.001〜1重量%が好ましい。
【0065】
感光性有機成分の平均屈折率は以下のような方法で求める。感光性有機成分をガラス上に塗布・乾燥したのち、エリプソメーターを用いて直接測定する。屈折率は露光波長で測定することが効果を確認する上で正確である。特に、350〜650nmの波長範囲の光で測定することが好ましい。さらには、i線(365nm)もしくはg線(436nm)での屈折率測定が好ましい。あるいは、まず感光性有機成分を構成する個々の成分についてVブロック法にて所望の波長における屈折率を測定する。次に感光性有機成分の重量%に応じて、それぞれの屈折率を足し合わせることによって求める。例えば、ある感光性有機成分がA(50重量%)とB(50重量%)で構成されており、Aのある波長における屈折率が1.46、BのAと同じ波長での屈折率が1.58の場合、感光性有機成分の平均屈折率は(1.46×0.5)+(1.58×0.5)=0.73+0.79=1.52となる。
【0066】
本発明の感光性ペースト組成物は次のようにして調製できる。感光性有機成分としてガラス転移温度が30〜100℃のバインダーポリマー、および必要に応じてa)〜c)成分から選択される化合物、化合物(A)、各種添加剤等を混合した後、濾過し、有機ビヒクルを調製する。これに、必要に応じて前処理されたガラス粉末を添加し、ボールミルなどの混練機で均質に混合、分散して感光性ペースト組成物を作製する。
【0067】
感光性ペースト組成物の粘度は無機成分、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・s(パスカル・秒)である。例えばガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、2〜5Pa・sが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、50〜200Pa・sが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、2〜20Pa・sが好ましい。
【0068】
ペーストの粘度を調整するために用いられる有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0069】
本発明の感光性ペースト組成物は、フラットパネルディスプレイの各種部材や、蛍光発光管(冷陰極管)部材などに好ましく用いられるが、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層に代表されるフィールドエミッション部材として特に好ましく用いられる。
【0070】
フィールドエミッションとは電界放出のことであり、電界放出とは真空中で半導体や金属などの導電体を陰極とし、その表面近傍に陽極を設置すると、陰極表面から陽極へ向かって、電子が真空中へ放出される物理現象のことをいう。本発明において、フィールドエミッション部材とはこのような電界放出を利用した部材のことを指す。具体的にはフィールドエミッションディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト、フィールドエミッションランプ、走査型電子顕微鏡の電子線源、微少真空管などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
本発明の感光性ペースト組成物から、フィールドエミッション部材を製造する場合、基板として、ガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板として、ソーダライムガラスや耐熱ガラス(旭硝子(株)製PD200、日本電気硝子(株)製PP8、サンゴバン(株)製CS25、セントラル硝子(株)製CP600Vなど)を好ましく用いることができる。また、セラミック基板、金属基板や半導体基板(AlN、CuW、CuMo、SiC基板など)、各種プラスチックフィルムも用いることも可能である。これら基板の上に、必要に応じて、絶縁体、半導体、導体を一層以上、あるいはそれらを組み合わせたものを形成しても構わない。
【0072】
次に、フィールドエミッション部材の製造方法について、一例として、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層の製造方法を挙げて説明する。
【0073】
基板として、ITO電極が形成されたガラス基板上に、感光性ペースト組成物を全面もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、スリットダイコーター等の一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、感光性ペースト組成物の粘度を選ぶことによって調整できるが、乾燥や焼成による収縮を考慮して、乾燥後の厚みが5〜100μm、好ましくは5〜60μm、さらに好ましくは5〜40μmになるように塗布することが好ましい。
【0074】
感光性ペースト組成物を複数回、塗布する場合、1回目と2回目以降の塗布される感光性ペースト組成物は、同じ感光性ペースト組成物であってもよいし、異なった感光性ペースト組成物であってもよい。また、感光性ペースト組成物を複数回塗布する場合、1回目の感光性ペースト組成物の塗布後、2回目以降の感光性ペースト組成物の塗布前に、乾燥させるのが好ましい。そうすると、1回目塗布した感光性ペースト組成物が乾燥し、2回目の感光性ペースト組成物塗布時の塗膜の厚みの減少を防ぐことができる。乾燥の温度および時間は構成する感光性ペースト組成物の組成によって異なるが、50〜100℃で5分から30分程度施すのが好ましい。また、乾燥は熱風オーブンや遠赤外線で行うことが望ましい。
【0075】
上述した評価方法に基づきタック性の評価を行い、次いで感光性ペースト組成物を全面または部分的に塗布したガラス基板を用いて、露光、現像を行い、パターンを形成する。パターンの形状は、フィールドエミッション部材により必要とされる形状は様々であるが、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層の場合は、直径3〜100μmの円形もしくは一辺3〜100μmの四角形のホールを含むパターンを形成することが好ましく、より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは3〜20μmである。この範囲内であれば感光性ペースト組成物の効果を十分に発揮することができる。露光は、フォトマスクを用いて露光する方法とレーザー光等で直接描画露光する方法を用いることができるが、フォトマスクを用いた露光のほうが、露光時間を短くできる。この場合の露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。使用される活性光源は、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、近赤外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられるが、これらの中で、紫外線が好ましく、その光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらの中でも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、5〜1000W/mの出力の超高圧水銀灯を用いて0.5〜30分間露光を行う。特に、露光量が0.05〜1J/cm程度の露光を行うことが好ましい。
【0076】
その後、現像液を使用して現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、シャワー法、ブラシ法で行う。これらの中でもシャワー法が均一な現像を実現できる点で好適である。シャワー法で現像を行う際の現像液の流量、圧力は現像液の種類、濃度によっても異なるが、流量は50〜200ml/分が好ましく、100〜170ml/分がより好ましい。圧力は0.05〜0.2MPaが好ましく、1〜1.6kg/分がより好ましい。現像液は、感光性ペースト組成物中の有機成分が溶解または分散可能な有機溶媒や水溶液を使用する。また、有機溶剤含有の水溶液を使用してもよい。感光性ペースト組成物中にカルボキシル基やフェノール性水酸基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液でも現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液のアルカリ成分の濃度は0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また露光部を腐食させるおそれがあり好ましくない。現像時の現像液の温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0077】
また、現像液には、感光性ペースト組成物の塗布膜への塗れ性改善、現像の均一性や残渣の低減などのために、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン、アニオン、カチオン、両性の各種界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の添加量としては、0.01〜20重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。添加量が20重量%を越えると、現像性が不十分になる可能性が生じ、0.01重量%より少ないと、界面活性剤添加の効果が発現しにくくなることがある。
【0078】
また、現像時に、現像液中で超音波処理を行うことが好ましく、さらに周波数変調型超音波処理が、特に20〜50KHzの間の波長範囲で変調される周波数変調型超音波処理が好ましい。このような超音波処理により、微細で均一なパターンの形成と共に、残渣の低減に大きな効果が得られる。
【0079】
上記のような方法により、本発明の感光性ペースト組成物から、基板上に厚さ5〜100μm、直径3〜100μmの円形もしくは一辺3〜100μmの四角形のホールを含むパターンを形成することができる。
【0080】
この後、直接、もしくは、必要に応じて、ゲート電極やエミッターなどを形成した後、焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度、時間は、感光性ペースト組成物や基板の種類によって適宜選択することでき、空気中、窒素、水素等の雰囲気中で焼成する。焼成は400〜600℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。また、以上の各工程中に、乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃の加熱をおこなっても良い。
【0081】
以上の工程により、基板上に形成された厚さ5〜100μm、直径3〜100μmの円形もしくは一辺3〜100μmの四角形のホールを含むパターンを有するフィールドエミッションディスプレイ用絶縁層が得られる。フィールドエミッションディスプレイの低電圧駆動化のためには、ゲート電極部と電子放出素子の距離を近接化する必要があるため、そのために絶縁層の厚さは30μm以下が好ましい。また、高解像度化と輝度の均一化のために、絶縁層に形成されるホールは30μm以下であることが好ましい。
【0082】
ゲート電極の形成は次のような方法で行う。所望のパターンが形成された絶縁層を得た後、スパッタ法あるいは蒸着法によって、クロム系薄膜を均一に成膜したクロム成膜を形成する。あるいは感光性導体ペーストなどを用いてパターン形成を行ってもよい。つぎに、クロム膜の表面にポジ型レジストをスピンコート法やスクリーン印刷法などの公知のコーティング方法で全面に塗布し、ホットプレートなどにてプリベークする。つぎに、所望のパターンのフォトマスクを上記のレジスト層を設けたクロム膜上に設置し、紫外線照射、露光、現像の各工程を経て、クロム膜上に残ったポジ型レジストによるエッチングマスクを形成する。つぎに、エッチングマスクで覆われていないクロム膜を酸性エッチング液(硝酸第二アンモニウムセリウム:9wt%+過塩素酸:6wt%等)にて数分エッチングを行い、ガラス基板からクロム系薄膜の一部を除去する。その後、エッチングマスクを剥離液を使用して剥離し、水洗浄することによって、不要な部分のみがエッチングされたクロム膜が残り、ゲート電極が形成される。この際、所望のパターンが形成された絶縁層がエッチング液に溶けにくいことが必要である。
【0083】
電子放出素子の形成は次のような方法で行う。形成方法は電子放出源によって異なり、モリブデンを主材質とするスピントタイプの金属チップ(またはマイクロチップ)の場合には蒸着法が、CNTを用いる場合には前記パターン内部に感光性を有するCNTペーストをスクリーン印刷法などにより塗布したのち、基板の後面から光を照射して、前記CNTペーストのうち、パターン内部の部分のみを選択的に露光させる工程と、前記CNTペーストのうち、露光されていない部分を除去することによって、露光された部位のCNTを残存させる方法などにより形成される。
【0084】
このような絶縁層、ゲート電極に加え、電子放出素子を形成した上記基板を背面板として使用し、別途作製された前面板と封着した後、配線の実装を行うと、高輝度でコントラストの高いフィールドエミッションディスプレイを得ることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されない。なお、実施例、比較例中の濃度は特に断らない限り重量%である。
【0086】
感光性ペースト組成物に用いた材料は次のとおりである。
【0087】
有機成分
<バインダーポリマーI>
40重量部のメタクリル酸メチル、30重量部のアクリル酸エチル、30重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量18000、酸価111mgKOH/g、二重結合密度1.4mmol/g、粘度13.4Pa・sのポリマーである。熱分解温度は422℃、Tgは38℃であった。
【0088】
なお、バインダーポリマーの重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。カラムはShodex KF−803を用い、重量平均分子量はポリスチレン換算により計算した。
【0089】
酸価の測定は、バインダーポリマー1gをエタノール100mLに溶解した後、0.1N水酸化カリウム水溶液を用いた滴定を行い、求めた。
【0090】
粘度の測定は、回転粘度計(RVDVII+、ブルックフィールド社製)にて、温度25±0.1℃、回転数10rpm、測定開始から5分後の粘度を測定した。
【0091】
熱分解温度は、TG測定装置(TGA−50、島津製作所(株)製)にて約20mgの試料をセットし、空気雰囲気で流量20ml/分、昇温速度0.6〜20℃/分で700℃まで昇温する。その結果、温度(縦軸)と重量変化(横軸)の関係がプロットされたチャートを印刷し、分解前の部分と分解中の部分の接線を引き、その交点の温度を熱分解温度とした。ガラス転移点は、島津製作所(株)製DSC−50型測定装置を用い、サンプル重量10mg、窒素気流下で昇温速度20℃/分で昇温し、ベースラインの偏起が開始する温度をTgとした。
【0092】
<バインダーポリマーII>
40重量部のメタクリル酸メチル、20重量部のアクリル酸エチル、40重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量16000、酸価105mgKOH/g、二重結合密度2.5mmol/g、粘度11.2Pa・sのポリマーである。熱分解温度は430℃、Tgは74℃であった。
【0093】
<バインダーポリマーIII>
50重量部のメタクリル酸メチル、30重量部のスチレン、20重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量31000、酸価58mgKOH/g、二重結合密度1.4mmol/g、粘度7.7Pa・sのポリマーである。熱分解温度は421℃、Tgは94℃であった。
【0094】
<バインダーポリマーIV>
30重量部のアクリル酸メチル、40重量部のアクリル酸エチル、30重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量17000、酸価100mgKOH/g、二重結合密度1.5mmol/g、粘度8.2Pa・sのポリマーである。熱分解温度は390℃、Tgは22℃であった。
【0095】
<バインダーポリマーV>
50重量部のメタクリル酸メチル、30重量部のスチレン、20重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量22000、酸価52mgKOH/g、二重結合密度0.34mmol/g、粘度13.3Pa・sのポリマーである。熱分解温度は402℃、Tgは106℃であった。
【0096】
<バインダーポリマーVI>
30重量部のメタクリル酸メチル、30重量部のスチレン、40重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量34000、酸価102mgKOH/g、二重結合密度2.7mmol/g、粘度8.3Pa・sのポリマーである。熱分解温度は433℃、Tgは118℃であった。
【0097】
<ガラス粉末I>
ガラス粉末として、Bi(74重量%)、SiO(7.2重量%)、B(10重量%)、ZnO(2.3重量%)、ZrO(2.2重量%)、Al(2.5重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は509℃、平均粒子径0.5μm、比重5.86g/cm、屈折率(n)は2.15であった。
【0098】
ガラス軟化点はガラス粉末を白金セルに入れ、示差熱分析装置(TG8120、理学電機(株)製)を用いて、常温から700℃まで20℃/分の昇温速度で示差熱分析を行い、最初に現れる吸熱部の極小点を経て吸熱が終了する温度を軟化点(Ts)とした。平均粒子径はレーザー回折散乱測定装置(マイクロトラック粒度分布計HRA、日機装(株)製)を用いて測定した。比重は、ガラスを約5×5×5mmの大きさに加工し、アルキメデス法を用いて測定した。
【0099】
屈折率は、石英ガラス上にガラス膜を作製した後、エリプソメーターを用いたエリプソメトリー法によって、25℃における436nmの波長の光に関して測定を行った。
【0100】
<ガラス粉末II>
Bi(82重量%)、SiO(4.9重量%)、B(8.1重量%)、ZnO(1.5重量%)、ZrO(0.15重量%)、Al(2.2重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は462℃、平均粒子径0.5μm、比重6g/cm、屈折率(n)は2.31であった。
【0101】
<ガラス粉末III>
Bi(77.2重量%)、SiO(6.9重量%)、B(10.2重量%)、ZnO(2.5重量%)、ZrO(0重量%)、Al(2.7重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は493℃、平均粒子径0.5μm、比重6.1g/cm、屈折率(n)は2.21であった。
【0102】
<ガラス粉末IV>
Bi(67重量%)、SiO(7.6重量%)、B(13.7重量%)、ZnO(8重量%)、ZrO(0重量%)、Al(3.2重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は534℃、平均粒子径1.4μm、比重5.4g/cm、屈折率(n)は1.98であった。
【0103】
<ガラス粉末V>
Bi(70.2重量%)、SiO(9.7重量%)、B(11.5重量%)、ZnO(3.8重量%)、ZrO(3.3重量%)、Al(4重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は529℃、平均粒子径0.5μm、比重5.33g/cm、屈折率(n)は1.95であった。
【0104】
<ガラス粉VI>
ガラス粉末として、Bi(70重量%)、SiO(16重量%)、B(9.2重量%)、ZnO(2.3重量%)、ZrO(0重量%)、Al(2.5重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は590℃、平均粒子径1.6μm、比重5.0g/cm、屈折率(n)は1.95であった。
【0105】
<ガラス粉末VII>
PbO(70重量%)、SiO(13重量%)、B(10重量%)、ZnO(4重量%)、ZrO(0重量%)、Al(3重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は589℃、平均粒子径は1.2μm、屈折率(n)は2.11であった。
【0106】
<フィラーI>
フィラーは平均粒子径70nmのマグネシア(宇部マテリアルズ(株)製)を用いた。
【0107】
平均粒子径は窒素ガスを用いたBET法により比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求めた。
【0108】
<化合物(A)I>
クマリン系誘導体(日本化薬(株)製、商品名Kayalight B)3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中での紫外線の吸収最大波長は370nm、蛍光の最大発光波長は441nmであった。
【0109】
<化合物(A)II>
オキサゾール系誘導体(日本化薬(株)製 商品名Kayalight O)3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中での紫外線の吸収最大波長は374nm、蛍光の最大発光波長は436nmであった。なお、表1において、感光性有機成分に露光波長を吸収し、露光波長より長波長の光線を発し、かつ発した光線が感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させる化合物は化合物(A)と表記する。
【0110】
実施例1
感光性有機成分として、エチレン性不飽和基含有化合物であるアクリルモノマー(日本化薬(株)製カラヤッドTPA−330)を7重量部、上記バインダーポリマーIIを7重量部(溶剤(3−メチル−3−メトキシブタノール)を10重量部)、光重合開始剤(日本化薬(株)製、2,4−ジメチルオキサントンとチバスペシャルティケミカルズ社製、商品名イルガキュア369を1:2の重量比で用いる)を2重量部、化合物(A)Iを3重量部、紫外線吸光剤(アゾ系有機染料4−アミノアゾベンゼン:和光純薬工業(株)製)を0.2重量部、分散剤(サンノプコ(株)製 商品名ノプコスパース092)を0.3重量部、重合禁止剤(p−メトキシフェノール)を0.5重量部用いた。得られた感光性有機成分の屈折率は、塗布および乾燥工程後に、エリプソメーターを用いてエリプソメトリー法によって、25℃における436nmの波長の光に関して測定を行った。屈折率(n)は1.52であった。
【0111】
次に、80重量部のガラス粉末IIを上記の感光性有機成分と混合した。これを3本ロールで5回通し、感光性ペースト組成物を作製した。この感光性ペースト組成物をさらに400メッシュのフィルターを用いて濾過した。
【0112】
ガラス基板上に上記感光性ペースト組成物を、スクリーン印刷を用いて均一に塗布し、80℃で15分間保持して乾燥し、厚さ15μmの感光性ペースト組成物の膜を10枚形成した。このペーストの膜のタック性評価を行ったところ、10枚のタック値は、0か2であった。その後、15μmのビアパターン/60μmピッチを持つネガ型クロムマスクをペーストの膜に直接コンタクトさせ、上面から0.5kw出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は0.5J/cmであった。これを順番に10回連続で行った。
【0113】
次に25℃に保持した炭酸ナトリウム0.1重量%の水溶液をシャワーで50秒間現像し、その後シャワースプレーを用いて水洗浄し、光硬化していない部分を除去してガラス基板上に約15μmの孔径をもつビアパターンを形成した。
【0114】
フォトマスクのビアパターン100個のうち、パターンが形成された割合をビア加工率(%)として評価した。ここでいうパターンが形成されたとは、顕微鏡500倍の倍率において、約15μmのビアを通して光が透過している状態を示す。その結果、10枚とも100個のビアパターンが形成されており、100%のビア加工率であった。このサンプルの表面観察を行ったところ、パターンのクラックは見られなかった。
【0115】
パターン形成後の基板を4℃/分の昇温レートでガラス粉末の軟化点付近まで昇温し、20分保持して焼成を行った。次に、焼成後のパターン形成基板にスパッタ法を用いて膜厚100nmのクロム膜を形成した。得られたクロム膜付きパターン基板にスピンコーター法でポジ型のフォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 商品名AZ1500)を塗布したのち100℃で1分ベークした。フォトレジストの膜厚は1.5μmであった。その後、25μmのビアパターン/60μmピッチ、37.5μmのビアパターン/90μmピッチを持つネガ型クロムマスクを用いて、上面から0.5kw出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は100mJ/cmであった。
【0116】
次に25℃に保持したレジスト現像液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 商品名AZ400Kを5倍に希釈)に60秒間浸漬、揺動した後、30秒間純水洗浄し、120℃2分のポストベークを行うことでレジストパターンを得た。硝酸第二アンモニウムセリウム9wt%、過塩素酸6重量%、純水85重量%の組成で作製したクロムエッチング液を25℃に保持し、180秒浸漬した後、純粋で洗浄を行った。クロムエッチング後、アセトンで洗浄し、レジストを剥離した。
【0117】
得られたクロムエッチング後のパターン形成基板のSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて表面観察を行い、1万5000倍率時に3μm四方の面積内に0.3μm以上の大きさの塊の個数を目視にて数え、観察場所を変えて10回繰り返した平均値を評価したところ、大きさ0.3μm以上の塊は1個であり残渣は少なかった。
【0118】
実施例2
表1に記載された組成に基づき、実施例1における化合物(A)を利用しないで感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は10枚とも0であった。
【0119】
実施例3、4、比較例1〜4
表1に記載された組成に基づき、実施例1におけるガラス粉末の種類が異なる以外は、同様に感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は、実施例3、4、比較例1〜4の10枚すべてにおいて0であった。
【0120】
実施例5
実施例1における化合物(A)が異なる以外は、実施例1と同様に感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は10枚すべてにおいて0であった。
【0121】
実施例6
実施例1における無機成分として、フィラーが添加される以外は、実施例1と同様に感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は2か3であった。
【0122】
実施例7、8、比較例5〜7
実施例1におけるバインダーポリマーの種類が異なる以外は、実施例1と同様に感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は、実施例7では2か3か4であった。実施例8では10枚すべてにおいて0であった。比較例5では6か7か8であった。比較例6と7ではいずれの比較例で10枚すべてにおいて0であった。
【0123】
実施例9〜12
実施例1における化合物(A)の添加量が異なる以外は、実施例1と同様に感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は、実施例9〜11ではいずれの実施例で、10枚すべてにおいて0であった。実施例12では0か2であった。
【0124】
実施例13、14
実施例1におけるガラス粉末の重量濃度が異なる以外は、実施例1と同様に感光性ペースト組成物を作製し、タック値、パターン加工性、現像後のクラックの有無、エッチング後の残渣を評価した。タック値は、実施例13では10枚すべてにおいて0であった。実施例14では2か3であった。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス粉末を含む無機粒子と感光性有機成分を有する感光性ペースト組成物であって、感光性有機成分に含まれるバインダーポリマーのガラス転移温度が30〜100℃であり、酸化物換算表記で70〜95重量%のBi、3〜15重量%のSiO、5〜20重量%のB、1〜10重量%のZnO、0〜3重量%のZrOの組成範囲のガラス粉末を含有する感光性ペースト組成物。
【請求項2】
基板上に形成した感光性ペースト組成物の膜のタック値が0〜4のいずれかである請求項1記載の感光性ペースト組成物。
【請求項3】
無機粉末の平均屈折率をN1、感光性有機成分の平均屈折率をN2とした時、|N1−N2|≧0.29であり、露光波長を吸収し、吸収した波長より長波長の光線を発し、かつ発した光線が感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させる化合物を含有し、当該化合物の含有量が感光性有機成分に対して、0.1〜30重量%である請求項1記載の感光性ペースト組成物。
【請求項4】
請求項1記載の感光性ペースト組成物をパターン形成し、次いで焼成し、焼成されたパターンを基板上に有するフラットパネルディスプレイ部材。

【公開番号】特開2007−279407(P2007−279407A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105989(P2006−105989)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】