説明

感光性変性ポリイミド樹脂組成物及びその用途

【課題】電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた光造形性を有する感光性変性ポリイミド樹脂組成物並びに該組成物から形成される樹脂フィルム、該フィルムを絶縁保護膜や層間絶縁膜として具備するプリント配線板やフレキシブルプリント配線板(FPC)等を提供すること。
【解決手段】感光性変性ポリイミド樹脂組成物は、ポリカーボネートのような柔軟構造を主鎖中に含む、特定の構造を有する変性ポリイミドと、感光剤と、熱硬化剤と、溶媒とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた光造形性を有する感光性変性ポリイミド樹脂組成物並びに該組成物から形成される樹脂フィルム、該フィルムを絶縁保護膜や層間絶縁膜として具備するプリント配線板やフレキシブルプリント配線板(FPC)等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブル配線基板などの絶縁保護膜として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが用いられている。この配線基板を作製する際には、パターン回路の形成、配線板表面及びパターン回路の保護層形成、層間絶縁膜の形成等のために感光性材料が用いられている。感光性材料は、大別すると液状のタイプとフィルム状のタイプに分けることができる。いずれの場合も硬化膜は、耐熱性、電気的特性が優れている他に柔軟性、耐屈曲性、低そり性などが優れている必要がある。ポリイミドは、耐熱性、電気的特性が優れているために多く用いられているが、それ自身は剛直であるため、種々の方法により改善することが提案されている。一つは、ポリイミド又はその前駆体であるポリアミック酸に柔軟性のある樹脂成分を混ぜる、いわゆる混合タイプ、もう一つは柔軟な成分であるポリシロキサン構造などをポリイミド主鎖に導入する、いわゆる変性タイプがある。
【0003】
混合タイプの感光性材料として、特許文献1にはポリイミド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂を含有してなるドライフィルムレジストが開示されている。しかし、硬化性の付与や低温ラミネート性を可能とするために(メタ)アクリル系化合物を多量添加することが多く、用いる(メタ)アクリル系化合物によっては、耐熱性を低下させ、ポリイミドの優れた特性を損なうことがある。また、樹脂同士の相溶性なども考慮する必要があり、相溶性が著しく悪い場合には、感光特性の面内ばらつきが大きくなり、パターン精度や膜厚等の信頼性が低下する恐れがある。
【0004】
変性タイプの感光性材料として、特許文献2にはジアミノポリシロキサンから誘導されるシロキサン変性ポリイミドからなる組成が開示されている。シロキサン変性ポリイミドは、耐熱性、電気絶縁性が優れ、加えて低弾性であるため低そり性が優れている。しかし、ポリシロキサン成分のために硬化膜表面の密着性が十分でなく、また高温加熱時に生じる環状シロキサンの飛散の問題もある。
【0005】
一方、感光性材料ではないものの特許文献3には、ポリカーボネート変性したポリイミド樹脂、特許文献4には、エステル変性したポリイミド樹脂、からなる組成物が開示されている。これらの組成物は、低そり性が優れ、シロキサン変性ポリイミドで見られるような硬化膜表面の密着性の問題、環状シロキサンの発生の問題が改善されている。これら変性樹脂に特許文献1に記載されているように、(メタ)アクリル系樹脂を添加させるなど、感光性樹脂組成物を混合することで感光性を付与できると推測されるが、感光特性の面内ばらつきの問題など、非感光性の樹脂が主の構造材料となるような組成物において、混合タイプでは類似した問題が発生する傾向がある。また、それぞれの樹脂単独では耐薬品性が低い傾向があるため特許文献中にあるようにエポキシを添加する添加しなければならず、保存安定性が低下する傾向がある。
【0006】
このように、混合系ではなく、変性ポリイミドに感光特性を付与する方法が最適であると推測される。特許文献5には、エーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂からなる組成物が開示されている。ここでは感光性基に(メタ)アクリロイル基を用い、さらに(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、熱重合開始剤からなる組成となっている。しかし、いわゆるネガ型感光性であるため硬化膜の耐溶剤性は向上しているものの、硬化剤としてエポキシやイソシアネート化合物を添加する必要があるため保存安定性が悪い問題がある。また、ポリイミド鎖の末端等に(メタ)アクリロイル基を導入しなければならず、ポリイミド合成時にゲル化しやすいという合成の難しさがある。すなわち、合成時の熱で(メタ)アクリロイル基が反応しないように注意しなければならず、粘度管理も容易ではない。逆に重合禁止剤を添加してしまうと感光時に硬化反応を阻害してしまい製品に影響が出てしまうため簡単に解決できる問題ではない。
【0007】
樹脂組成物として保存安定性も考慮するとノボラック樹脂に代表されるようなポジ型感光性とする方が容易であると推測される。具体的には、変性ポリイミドの主鎖中に水酸基又はカルボキシル基を導入する方法が適している。しかし、特許文献3,4にあるように、変性ポリイミドはテトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートを反応させることにより合成しているため、水酸基やカルボキシル基を導入することができない。すなわち、水酸基やカルボキシル基は、イソシアネートと反応してしまうため、架橋反応などとして消費されてしまう。特許文献5も同様に水酸基末端エーテルイミドオリゴマー、ジオール化合物、((メタ)アクリロイル基を有する化合物)、ジイソシアネート化合物を反応させるため、所望の水酸基を保護することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−167336号公報
【特許文献2】特開2002−174896号公報
【特許文献3】特開2002−145981号公報
【特許文献4】特開2008−297388号公報
【特許文献5】特開2009−69664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた光造形性を有する感光性変性ポリイミド樹脂組成物並びに該組成物から形成される樹脂フィルム、該フィルムを絶縁保護膜や層間絶縁膜として具備するプリント配線板やフレキシブルプリント配線板(FPC)等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、カーボネート基、エステル基又はウレタン基を含む繰返し単位から成る柔軟構造を有すると共に、主鎖中に遊離の水酸基又は/及びカルボキシル基を有する、特定の構造を持つ変性ポリイミドと、感光剤と、熱硬化剤とを含む樹脂組成物が、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れ、光造形性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは、それぞれ独立にカーボネート基、エステル基又はウレタン基を示し、Yは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、Aは、ジアミンのアミノ基を除いた2価の有機基を示し、Z及びZ'は、テトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の有機基を示し、かつ、A、Z及びZ'の少なくともいずれか1つが遊離の水酸基又は/及びカルボキシル基を有し、m、p、qは、互いに独立して1〜20の整数を示す)
で表される変性ポリイミドと、感光剤と、熱硬化剤と、溶媒とを含有する、感光性変性ポリイミド樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記本発明の組成物を成膜し、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去することにより得られた感光性樹脂フィルムを提供する。さらに、本発明は、上記本発明の組成物を、基板上に塗布して成膜する工程、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去する工程、溶媒が除去された前記組成物を、マスクを通して露光する工程、露光後現像する工程、及び現像後、前記硬化剤の硬化温度以上に加熱する工程を有するパターン化ポリイミド樹脂フィルムの作製方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の方法により作製されたパターン化ポリイミド樹脂フィルムを具備するプリント配線板又はFPCを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、室温保存が可能で保存安定性がよい変性ポリイミド樹脂ペーストが得られ、また、感光性樹脂フィルムを作製することもでき、形成された塗膜は電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性の優れた樹脂フィルムとなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記の通り、本発明の感光性樹脂組成物は、上記一般式(I)で示される構造を有する感光性変性ポリイミドを含む。以下、該感光性変性ポリイミドの製造方法を説明し、併せて、好ましい感光性変性ポリイミドについても説明する。
【0017】
本発明の樹脂組成物に含まれる変性ポリイミドは、下記一般式(II)で表されるイソシアネート末端オリゴマーを必須成分として反応させた下記一般式(III)で表される酸無水物末端オリゴマーを、ポリイミド化反応の原料とする方法、すなわち、下記一般式(III)で表される酸無水物末端オリゴマーを、さらにジアミン及びテトラカルボン酸二無水物と反応させてポリイミド化する方法により製造することが好ましい。
【0018】
【化2】

(式中、R、Y、X、m及びnは、それぞれ上記一般式(I)におけるこれらのそれぞれと同義)。
【0019】
【化3】

(式中、R、Y、X、Z、m、n及びpは、それぞれ上記一般式(I)におけるこれらのそれぞれと同義)。
【0020】
上記一般式(III)で表される酸無水物末端オリゴマーは、一般式(IV)
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R、X及びmは、それぞれ上記一般式(I)におけるこれらのそれぞれと同義)
で表されるジオール化合物と一般式(V)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Yは、上記一般式(I)におけるYと同義)
で表されるジイソシアネートと反応させ、次いでテトラカルボン酸二無水物と反応させることによりイミド主鎖へ導入させることが可能となる。
【0025】
上記の一般式(IV)で表されるジオール化合物は、Rが脂肪族炭化水素であるものが望ましい。一部芳香族環を含むジオール化合物も用いることが可能であるが、高弾性化し、そり性に問題が生じやすくなる。また、ジオール化合物中の連結基Xの量が増えると高弾性率化すると共に耐熱性の低下が起こる傾向にある。ここで使用されるジオール化合物の数平均分子量は、500〜10000が好ましく、より好ましくは800〜5000である。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得られがたく、また平均分子量が10000を超えると粘度が高くなりハンドリング性が悪くなる。具体的には、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリウレタンジオールが挙げられ、この発明で用いられるポリカーボネートジオールとしては、一般式(VI)
【0026】
【化6】

(式中、R及びmは、それぞれ上記一般式(I)中におけるこれらのそれぞれと同義)
で表されるものが好ましい。一般式(VI)中、Rにより示されるアルキレン基の炭素数は、2〜8が好ましく、また、mは6〜16が好ましい。このようなポリカーボネートジオールの好ましい具体例として、旭化成ケミカルズ(株)製の製品名デュラノール T6001、T5651、T4691などやダイセル化学(株)製の製品名PLACCEL CD−210、CD−210PL、CD−210HLなどの市販されているものを例示することができる。また、ポリエステルジオールとしては、一般式(VII)
【0027】
【化7】

(式中、R及びmは、それぞれ上記一般式(I)中におけるこれらのそれぞれと同義)
で表されるものが好ましく、好ましいR及びmは、一般式(VI)の場合と同様である。このようなポリエステルジオールの好ましい具体例としては、例えば、ダイセル化学(株)製の製品名PLACCEL 210、210N、L212ALなどを例示することができる。また、ジイソシアネート化合物に過剰量のジオール化合物を反応させることにより合成したポリウレタンジオールオリゴマーも用いることができる。このポリウレタンジオールオリゴマーとしては、一般式(VIII)
【0028】
【化8】

(式中、R及びmは、それぞれ上記一般式(I)中におけるこれらのそれぞれと同義)
で表されるものが好ましく、好ましいR及びmは、一般式(VI)の場合と同様である。
【0029】
これらのジオール化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
また、上記の一般式(V)で表されるジイソシアネートは、Yとして炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を有し、1分子中に2個のイソシアネート基を有するものであれば特に制限されない。例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネートで、好ましくはイソシアネート基を除いて炭素数が1〜18の脂肪族、脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートを用いると脂肪族ジイソシアネートの時と比較して変性ポリイミド樹脂の耐熱性が高くなり、高弾性率化する傾向がある。具体的なジイソシアネートとしては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン−4,4'−ジイソシアネートなどを例示することができる。また、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製の製品名デュラネート D101、D201のようなイソシアネート末端を有する変性品も用いることができる。また、耐溶剤性を向上させる目的で、3価以上のイソシアネートをゲル化しない程度、用いることもでき、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製の製品名デュラネート TPA−100のような3価のイソシアネート品を例示することができる。なお、上記イソシアネート化合物は、経日変化を避けるためにアルコール、フェノール、オキシム等でブロック化したものを用いても良い。
【0031】
上記の一般式(IV)で表されるカーボネートジオールと上記の一般式(V)で表されるジイソシアネートの配合比は、イソシアネート基数/水酸基数=1.1〜2.5が好ましい。イソシアネート基数/水酸基数=1.1未満になると粘度が高くなり、後工程のイミド化の時に問題となる。また、イソシアネート基数/水酸基数=2.5より大きくなるとイソシアネート同士の反応が起こりやすくなるだけで意味が無い。
【0032】
反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で行なうことができる。反応温度は、40℃〜180℃とすることが好ましく、反応時間は、反応条件、スケールなどにより適宜選択することができ、例えば、30分間〜2時間程度である。
【0033】
このようにして得られる一般式(II)で表されるイソシアネート末端オリゴマーとテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを合成する。ここで用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に限定されないが、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレンビス(トリメリテート)二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物や1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
一般式(II)で表されるイソシアネート末端オリゴマーとテトラカルボン酸二無水物の配合比は、カルボン酸無水物基/イソシアネート基=1.1以上が好ましい。カルボン酸無水物基/イソシアネート基=1.1未満になると粘度が高くなり、後工程のイミド化の時に問題となる。具体的なテトラカルボン酸二無水物オリゴマーの数平均分子量としては、500〜10000であることが好ましく、1000〜9000であることがより好ましい。数平均分子量が500未満であるとそり性が悪くなる傾向にあり、10000を超えると末端の酸無水物の反応性が低下して、ポリイミド主鎖への導入が困難となる傾向がある。
【0035】
反応温度は、80℃〜200℃とすることが好ましく、反応時間は、反応条件、スケールなどにより適宜選択することができ、例えば30分間〜3時間程度である。このようにして得られたテトラカルボン酸二無水物オリゴマーは、メタノール等の貧溶媒を用いて単離することも可能であるが経済性が劣るため、そのままイミド化工程を行なうことが最も好ましい。
【0036】
上記方法により、一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーが得られる。一般式(III)中のnは、1〜20の整数、好ましくは、1〜4の整数であり、pは、1〜20の整数、好ましくは1〜8の整数であり、これらの範囲に入るように反応成分の量比を設定することが好ましい。
【0037】
上記のようにして得られた一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーと必要ならば更にテトラカルボン酸二無水物、及び少なくとも一部は水酸基又はカルボキシル基を含むジアミンを有機溶媒に溶解させて直接イミド化することによって、水酸基又は/及びカルボキシル基を有する柔軟構造変性ポリイミド樹脂を製造することができる。全体のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合比は、酸二無水物の合計量1モル%に対して、ジアミンの合計量0.95〜1.05モル%とするのが好ましい。合成方法は公知の方法を用いれば良く、無水酢酸/トリエチルアミン系、バレロラクトン/ピリジン系などの触媒を用いた化学的イミド化が好適に用いることができる。
【0038】
ここで用いられるジアミン化合物には特に制限はないが、柔軟性、屈曲性、低そり性などの特性はポリカーボネート構造等の柔軟構造部位で付与されているために、耐熱性、耐薬品性で劣る脂肪族、脂環族よりは芳香族ジアミンが好適に使用できる。水酸基又はカルボキシル基を有するジアミンとして具体的には、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸等を挙げることができる。これらのジアミンは単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
また、耐熱性、耐薬品性の向上及び現像性能の調整のため水酸基又はカルボキシル基を含まないジアミンを同時に使用することができる。具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]−4−アミノベンゾエート、[4−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]−4−アミノベンゾエート、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチル−1,1’−ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらのジアミンは単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
また、耐薬品性の向上のため変性ポリイミドの末端部分に反応性基を導入することができる。例えば、変性ポリイミドの末端が酸無水物となるようにテトラカルボン酸の量を僅かに多く添加、合成し、次いで3−エチニルアニリンや4−エチニルアニリンに代表されるアミン化合物を添加することでポリマー末端にアセチル基を導入できる。また、アミン末端になるようにジアミン化合物量を僅かに多く添加し、合成、次いで無水マレイン酸や無水エチニルフタル酸や無水フェニルエチニルフタル酸に代表される酸無水物を添加することによっても同様に反応性基である二重結合や三重結合を導入できる。これらの末端基同士は、150℃以上の加熱により反応し、ポリマー主鎖が架橋する。
【0041】
また、必要によりここで用いるテトラカルボン酸二無水物としては、上記した一般式(III)の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物と同様なテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、一般式(III)の合成に用いたテトラカルボン酸二無水物と同じものでも異なるものでもよい。
【0042】
また、本発明の変性ポリイミド組成物において、製造する際の変性ポリイミドの重量に対する柔軟構造(上記一般式(I)中の、繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Yが芳香族である場合にはYの重量を除く))は0.3〜0.7であることが好ましく、0.4−0.65がより好ましい。0.3未満となると低そり性を満足することができず、0.7を超えると耐熱性、耐薬品性が低下する傾向がある。
【0043】
このようにして得られたポリイミド樹脂の数平均分子量は、6000〜60000であることが好ましく、7000〜50000であることがより好ましい。数平均分子量が6000未満であると、破断強度などの膜物性が低下する傾向があり、60000を超えると作業性の適したペーストが得がたくなる。
【0044】
上記方法により、上記一般式(I)で表される変性ポリイミドが得られる。なお、一般式(I)中、qは、好ましくは1〜10であり、この範囲になるように一般式(III)のオリゴマーと上記ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を反応させることが好ましい。
【0045】
本発明で使用する合成溶媒としては、25℃での蒸気圧が3mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下の溶媒を使用することができる。具体的には、γ−ブチロラクトン、トリグライム、テトラグライム、安息香酸メチル、安息香酸エチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を混合して使用できる。また、樹脂組成物作製時の粘度調整のために希釈剤として、シクロヘキサノンのようなケトン系溶剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのようなカーボネート系溶剤を用いることもできる。
【0046】
本発明の感光性変性ポリイミド樹脂組成物は、上記した変性ポリイミドと、感光剤と、熱硬化剤と、溶媒とを含有する。
【0047】
本発明で用いられる変性ポリイミドは、水酸基やカルボキシル基の量でアルカリ溶解速度が制御できるため、露光部分が溶解するポジ型感光性及び未露光部分が溶解するネガ型感光性の両方が可能であるが、本発明の組成物は、高精細、高解像度が必要な場合は膨潤などの問題が発生しないポジ型感光性を有することが好ましい。
【0048】
ネガ型感光性の場合には、感光剤は、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキシド系に代表される光ラジカル発生剤やオニウム塩に代表される光酸発生剤やニトロベンジルカルバメートに代表される光塩基発生剤等の光反応開始剤、及びそれらの開始剤により重合や橋架け反応が起こるようなモノマー又はポリマーである。ここで用いられるモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレートのような(メタ)アクリル系化合物が挙げられる。このようなネガ型感光剤の樹脂組成物中の含有量は、ポリイミド100重量部に対して、通常、10〜100重量部程度、好ましくは、20〜60重量部程度である。
【0049】
ポジ型感光性の場合には、感光剤としては、フェノールノボラック系として一般的に使用できる感光剤であれば特に制限なく使用できるが、最も入手しやすいオルトナフトキノンジアジド化合物が好適に使用できる。一般的にはオルトナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドとフェノール性水酸基を有した化合物を反応させたものが用いられる。フェノール性の化合物としては、例えば、フェノール、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α,α’−トリメチル−α,α’,α’−トリ(p−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4'−ビフェニルジオール、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシフェニルスルホンなどを挙げることができる。これらの構造を有するオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物等のポジ型感光剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、このようなポジ型感光剤の樹脂組成物中の含有量は、ポリイミド100重量部に対して、通常、5〜30重量部程度、好ましくは、10〜25重量部程度である。
【0050】
本発明の樹脂組成物中に含まれる硬化剤としては、エピコート828(油化シェル社製)のようなエポキシ化合物、2,2’−( 1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン(三国製薬工業社製)のようなオキサゾリン化合物、BF−BXZ(小西化学社製)のようなベンゾオキサジン化合物、BMI−1000(大和化成社製)のようなビスマレイミド等を挙げることができる。これらの硬化剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、このような硬化剤の樹脂組成物中の含有量は、ポリイミド100重量部に対して、通常、5〜30重量部程度、好ましくは、10〜25重量部程度である。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、上記した各成分を溶媒中に含む液状のものであってもよいし、溶媒を含まない乾燥タイプのものであってもよい。溶媒としては、変性ポリイミドの製造に用いる反応溶媒をそのまま用いることができ、好ましい溶媒は、上記の通りである。
【0052】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、低そり性を満足させるため樹脂単独では難燃性について解決していない問題がある。このため、難燃性が必要な用途に関して変性ポリイミド樹脂100重量部に対して非ハロゲン系難燃剤1〜20重量部を含有していることが好まく、5〜15重量部がより好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、感光特性を著しく低下させないものであれば特に限定されないが、有機溶剤に可溶な難燃剤としては、リン酸エステル系化合物、フォスファゼン系化合物、トリフェニルホスフェート、環状フェノキシホスファゼン等のリン系難燃剤が特に好適に使用できる。また、非ハロゲン系無機難燃剤としては、金属水和物系難燃剤の水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらを単独又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物には、必要に応じて、感光特性に影響しない程度、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン等の着色剤、シリカ等のフィラーを添加することができる。また、光増感剤、アルカリ溶解促進剤、密着助剤、消泡剤、レベリング剤等を添加する事もできる。
【0054】
このようにして作製した変性ポリイミド樹脂組成物は、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷等により塗布することができる。また、変性ポリイミド樹脂組成物を用いて感光性カバーレイを作製して使用することもできる。また、このとき、熱圧着時の埋め込み性を改善する目的で、(メタ)アクリル系化合物のような可塑剤を用いることもできる。
【0055】
また、本発明の感光性変性ポリイミド樹脂組成物をフィルム状にしてドライフィルムとして扱うことも可能である。その場合には、(A)アルカリ溶解性変性ポリイミド樹脂、(B)感光剤、(C)可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤を含有することにより、組成物のTgが低下するため、圧着が容易になる、ドライフィルム化時の反りが軽減する等の効果がある。
【0056】
本発明に係る感光性変性ポリイミド樹脂組成物における可塑剤とは、樹脂組成物に可塑性を与え、組成物のTgを下げうるものであれば特に限定されない。このような可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、クラウンエーテルなどのエーテル化合物;テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリル基含有化合物;テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどのアクリル基含有化合物;ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸エステル;トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートなどのトリメリット酸エステル;ジメチルアジペート、ジブチルアジペートなどの脂肪族二塩基酸エステル;トリメチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル;(C6H5O)2P(O)OC6H4C(CH3)2C6H4OP(O)(OC6H5)2で表されるような芳香族縮合リン酸エステル;イソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレートなどが挙げられる。この中で、ドライフィルム化後の反りの観点から、メタクリル基含有化合物、イソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレート及びイソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレートがより好ましい。
【0057】
本発明に係る感光性変性ポリイミド樹脂組成物において可塑剤の添加量は、充分な可塑性を考慮すると(A)アルカリ溶解性変性ポリイミド樹脂の量を100重量部とした場合、5重量部以上、30重量部以下が好ましい。また、硬化体の難燃性の観点から、5重量部以上、20重量部以下がより好ましい。本発明に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じて(A)アルカリ溶解性変性ポリイミド樹脂、(B)感光剤、(C)難燃剤、(D)可塑剤が均一に溶解及び/又は分散しうる溶媒を含むことができる。溶媒としては、前述の変性ポリイミド樹脂組成物に用いる溶媒を使用することができる。本発明の感光性変性ポリイミド樹脂組成物は感光性フィルムに好適に用いることができる。感光性フィルムを製造するという観点からは、感光性樹脂組成物における変性ポリイミドの濃度は、10重量%以上、70重量%以下が好ましい。変性ポリイミドの濃度は、感光性フィルムの膜厚の観点から10重量%以上が好ましく、感光性樹脂組成物の粘度、膜厚の均一性の観点から70重量%以下が好ましい。得られる感光性フィルムの膜厚の観点から、20重量%以上、60重量%以下がより好ましい。
【0058】
次に、本発明に係る感光性フィルムの製造方法について説明する。まず、本発明に係る、溶媒を含む感光性樹脂組成物を基材上にコートする。前記基材としては、感光性ドライフィルム形成の際に損傷しない基材であれば、特に限定されない。このような基材としては、シリコンウエハ、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂、キャリアフィルムなどが挙げられる。本発明におけるキャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムが挙げられる。取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びキャリアフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。次に、コートした樹脂組成物中の溶媒を乾燥させることにより、本発明の感光性樹脂フィルムを得ることができる。乾燥条件は、特に限定されないが、通常、60℃〜130℃程度の温度下で10分間〜60分間程度行うことができる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて、パターン化ポリイミド樹脂フィルムを作製することができる。この方法は、基材上に塗布して成膜する工程、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去する工程、溶媒が除去された前記組成物を、マスクを通して露光する工程、露光後現像する工程、及び現像後、前記硬化剤の硬化温度以上に加熱する工程を有する。
【0060】
ここで、感光性変性ポリイミド樹脂組成物を基材へ塗布する方法は特に限定されず、例えばスクリーン印刷により行なうことができ、その他にも、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、ドクターナイフコート、フレキソ印刷等を挙げることができる。露光は、任意のパターンを有するフォトマスクを介して、通常、200〜2000mJの照射量、紫外線、X線、電子線等を照射することにより行うことができる。現像液としては、アルカリ現像液、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ等の水溶液を用いることができる。現像は、通常、15℃〜60℃程度で0.5分間〜10分間程度行われる。硬化のための加熱は、通常、120℃〜200℃程度で30分間〜120分間程度行われる。この方法で、基材として配線がされたプリント配線板やFPC基板を用いることにより、任意のパターンを有する、プリント配線板やFPC基板の保護膜や層間絶縁膜を形成することができる。以下、これらについてさらに説明する。
【0061】
すなわち、好ましい態様では、前記の本発明の感光性変性ポリイミド樹脂組成物は、FPCの保護膜の形成に使用できると共に、感光性樹脂フィルムの形成に用いることができる。この感光性樹脂フィルムは、感光性樹脂組成物を、例えば、適当な離型処理を施したPETフィルム上に塗布する等の方法により成膜することができる。コート方法としては、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。コート後、必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理して組成物中の溶媒を除去することにより、製造することができる。この感光性樹脂フィルムは、感光性ドライフィルムレジストとして使用することができる。このように、本発明の感光性樹脂組成物で構成された感光性フィルムを用いる場合は、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法で任意の基材上に塗布後乾燥し、ドライフィルム化し、例えばキャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムとする。また、感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。本発明に係る積層フィルムおいて、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなど感光性フィルムを保護するフィルムであれば特に限定されない。
【0062】
前記の本発明のポジ型感光性変性ポリイミド樹脂組成物を使用してFPCの保護膜(カバーレイ)を製造する方法は、配線が形成されたFPC基板上にこのポジ型感光性変性ポリイミド樹脂組成物を塗布して成膜した後、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去し、その後、マスクを通して露光、さらに現像して、ポジ型パターンを得た後加熱して、溶媒可溶耐熱性樹脂を架橋することにより行われる。
【0063】
本発明は、また、上記のようにして作製されたパターン化ポリイミド樹脂フィルムを具備するプリント配線板又はFPCをも提供するものである。
【0064】
以下、本発明に使用するポリイミド溶液の製造方法と、その特性を実施例及び比較例で具体的に説明する。なお、ジオール化合物から変性ポリイミドを合成するという点では、ポリカーボネート変性ポリイミドもポリエステル変性ポリイミドもポリウレタン変性ポリイミドも変わらないので、ここではポリカーボネートジオールを用いた例のみを説明する。また、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンの組み合わせにより種々の特性を持ったポリイミドが得られることから、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
合成実施例1
ステンレス製の碇型攪拌器を取り付けた2リットルのセパラブル3つ口フラスコに、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。デュラノールT5651(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール)[分子量986(水酸基価から算出)]98.60g(100ミリモル)、デュラネートD201(旭化成ケミカルズ(株)製ジイソシアネート)[分子量532(イソシアネートの重量%から算出)]106.40g(200ミリモル)、γ−ブチロラクトン(γBL)156gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)62.04g(200ミリモル)、γBL156gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しエチレンビス(トリメリテート)二無水物28.73g(70ミリモル)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ABPS)16.82g(60ミリモル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸(MBAA)17.18g(60ミリモル)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)21.62g(50ミリモル)、安息香酸エチル312g、トルエン70g、γ−バレロラクトン3.0g(30ミリモル)、ピリジン4.8g(60ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら3.5時間反応させた。還流物を系外に除くことにより35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0066】
合成実施例2
合成実施例1と同様の装置を用いた。デュラノールT5651 118.32g(120ミリモル)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)40.37g(240ミリモル)、γ−ブチロラクトン(γBL)165gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA55.84g(180ミリモル)、γBL166gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却し3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)35.31g(120ミリモル)、ABPS33.64g(120ミリモル)、MBAA17.18g(60ミリモル)、γBL331g、トルエン70g、γ−バレロラクトン3.0g(30ミリモル)、ピリジン4.8g(60ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら4.5時間反応させた。還流物を系外に除くことにより30%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0067】
合成実施例3
合成実施例1と同様の装置を用いる。デュラノールT5652[分子量1972(水酸基価から算出)] 157.76g(80ミリモル)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)33.63g(160ミリモル)、γBL172gを仕込む。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA49.64g(160ミリモル)、γBL171gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しエチレンビス(トリメリテート)二無水物32.83g(80ミリモル)、ABPS40.36g(144ミリモル)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン6.57g(16ミリモル)、トリグライム228g、トルエン80g、γ−バレロラクトン2.5g(25ミリモル)、ピリジン3.9g(50ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら4時間反応させた。還流物を系外に除くことにより35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0068】
合成比較例1
合成実施例1と同様の装置を用いる。デュラノールT5651 133.11g(135ミリモル)、HDI45.41g(270ミリモル)、γBL155gを仕込む。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA55.84g(180ミリモル)、γBL155gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しBPDA39.72g(135ミリモル)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)77.85g(180ミリモル)、γBL310g、トルエン70g、γ−バレロラクトン3.2g(32ミリモル)、ピリジン5.0g(64ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら3時間反応させた。還流物を系外に除くことにより35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0069】
上記の合成実施例、合成比較例で得られたポリイミド樹脂の物性を下記の方法で測定し、結果を下記表1に示す。
【0070】
共重合ポリカーボネート構造を有する変性ポリイミド樹脂の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーGPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)により、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散(Mw/Mn)を測定した。カラムとして東ソー社製TSKgel GMHHR−Hを使用し、キャリア溶媒としては、NMPにLiBrを0.1Nの濃度で溶解したものを使用した。分子量は、標準ポリスチレン(TSK標準ポリスチレン)を用いて計算した換算値である。
【0071】
ガラス転移温度Tg、熱分解温度、伸び率、弾性率を測定するためのサンプルは、古河サーキットフォイル株式会社製の銅箔F2−WS(18μm)上に、厚さ15±2μmのフィルムなるようにスクリーン印刷にて塗布、その薄膜を、120℃で60分、次いで180℃で30分間、乾燥および熱処理し、銅箔をエッチングして取り除くことにより作製した。
【0072】
そり性を測定するためのサンプルは、25μm厚のカプトンフィルム上に15±2μmのフィルムなるようにスクリーン印刷にて塗布、その薄膜を、120℃で60分、次いで180℃で30分乾燥させることにより作製した。サンプルの端の浮いた高さにより評価し、1mm以下を◎、10mm以下を○、10mm以上で測定できる場合を△、測定不能な程そっている場合は×とした。
【0073】
耐薬品性を評価するためのサンプルは、銅箔をエッチングさせない以外はガラス転移温度Tg測定用サンプルと同様に作製したものを使用した。調べた薬品は、1規定の水酸化ナトリウム水溶液及び有機溶剤のメチルエチルケトンである。膜表面に光沢があり、膜厚の減少が無いものを◎、膜厚の減少が0.1μm以下を○、膜厚の減少が0.2〜0.9μmのものは△、光沢が無くなるもしくは膜厚の減少が1.0μm以上のものは×とした。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜8、比較例1〜3
ポジ型感光性樹脂組成物の製造
合成例1〜2及び合成比較例1で得られた各ワニス(ベースワニス)に、感光剤としてナフトキノンジアジドスルホン酸エステル(ダイトーケミックス社製:DTEP−350、PA−6、東洋合成社製:4NT−300)、難燃剤として(大塚化学社製:SPB−100、大八化学工業社製:PX−200、クラリアンドジャパン社製:EXOLIT OP 935)をポリマー固形分に対して表2に示す通りに配合し混合して感光性変性ポリイミド樹脂組成物(感光性インク)を調合した。なお、レベリング剤(サイテック社製:XL480)をポリマー固形分に対して約1wt%添加しており、最終的な攪拌混合の後、真空下で脱泡を行ない、ポジ型感光性変性ポリイミド樹脂組成物を得た。
【0076】
現像性評価:感光現像実験
このようにして得られた各ポジ型感光性変性ポリイミド樹脂組成物を、古河サーキットフォイル株式会社製の銅箔F2−WS(18μm)上に、スクリーン印刷法にて塗布した後、プリベーク(90℃×30分)して組成物中の溶媒を除去し、厚さ13〜17μmのフォトレジスト皮膜を得た。このフォトレジスト配合塗布膜上に、ポジ型フォトマスク用のテストパターン(10、15、20、25、・・・、200ミクロンのスルーホール及びラインアンドスペースパターン)を置き、2kW超高圧水銀灯照射装置(オーク製作所製品:JP−2000G)を用いて、画像が得られる露光量で照射した。500〜2000mJで照射したサンプルを現像液(2%水酸化ナトリウム水溶液)でスプレー現像した。1000mJの照射では、40℃の現像液で0.5〜3分間現像を行ない、脱イオン水で洗浄し、熱風乾燥炉で乾燥後、解像度を観察した。このポリイミド塗布膜の120℃で60分間、180℃で30分間の乾燥処理におけるポリイミド膜厚は、約16ミクロンであった。以上の方法により得られた共重合体ポリイミド塗布膜のスルーホールパターンの口径及びラインアンドスペースパターンの線幅結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

注1)感光剤、難燃剤及び消泡剤の配合量はポリイミド樹脂固形分100重量部に対する添加量(重量部)である。
【0078】
実施例1〜6及び比較例1〜4
上記の表2に示す感光性変性ポリイミド樹脂組成物について、以下の項目につき評価を実施し、その結果を下記表3に示す。
【0079】
屈曲性
各難燃性変性ポリイミド組成物を165−3Dメッシュのステンレス製版でスクリーン印刷により基板に塗布し、熱風オーブンにてプリベーク(90℃×30分)して組成物中の溶媒を除去し、厚さ14〜17μmのフォトレジスト皮膜を得た。このフォトレジスト配合塗布膜を40℃の現像液で2分間現像を行ない、脱イオン水で洗浄し、熱風オーブンにて120℃で60分間、180℃で30分間の乾燥処理におけるポリイミド膜厚は、約15μmであった。得られたポリイミドフィルムを、塗布面を外側に180°に折り曲げて乾燥膜の割れの有無を目視により判定した。判定基準を以下に示す。
○:乾燥膜の割れなし。
×:乾燥膜が割れ、もしくは亀裂が生じる。
【0080】
ハンダ耐熱性
JIS・C−6481の試験法に準じ、上記のフィルム作製方法にて表2に示す実施例1〜6および比較例1〜4記載の各感光性変性ポリイミド組成物を基板〔(登録商標)ESPANEX、新日鐵化学(株)製〕MC18−25−00FRMに塗布し試験用サンプルを作製した。得られた試験片にロジン系フラックスを塗布し、260℃のハンダ浴に5秒間フロートさせることを1サイクルとして、サイクル毎に乾燥膜を目視観察し、"フクレ"、"剥れ"及び"ハンダもぐりこみ"がなく、全く変化が認められないことを確認しながら繰り返したときの最大サイクル回数で表した。
【0081】
燃焼性
燃焼性試験片は、以下の方法で作製した。厚み25μm、200mm×50mmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製,カプトン100EN)の両面に、厚みが20μmの上記表2に示す実施例1〜6および比較例1〜4記載の感光性変性ポリイミド組成物の乾燥膜を設けて試験片とした。燃焼特性は米国のUnderwriters Laboratories Inc.(ULと略す)の高分子材料の難燃性試験規格94UL−VTM試験に準拠した方法で難燃性を評価した。
【0082】
なお、表3中の「VTM」及び「NOT」は、以下の基準による。
VTM−0:下記の要求事項をすべて満足する。
(1)全ての試験片が、各回接炎中止後10秒を越えて有炎燃焼しない事。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が50秒を超えない事。
(3)有炎又は赤熱燃焼が125mmの標線まで達しない事。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しない事。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計が30秒を超えない事。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき又は有炎時間の合計が51秒から55秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが前記(1)から(5)を満足する事。
【0083】
VTM−1:下記の要求事項をすべて満足する。
(1)全ての試験片が、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない事。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えない事。
(3)有炎又は赤熱燃焼が125mmの標線まで達しない事。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しない事。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計が60秒を超えない事。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき又は有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが前記(1)から(5)を満足する事。
【0084】
VTM−2:下記の要求事項をすべて満足する。
(1)全ての試験片が、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない事。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えない事。
(3)有炎又は赤熱燃焼が125mmの標線まで達しない事。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火してもよい。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は60秒を超えない事。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき又は有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが前記(1)から(5)を満足する事。
【0085】
NOT:以上のクラス、いずれにも合格しない。
【0086】
HHBT耐性
市販の基板(IPC規格)のIPC−C(櫛型パターン)上に、各難燃性変性ポリイミド組成物を165−3Dメッシュのステンレス製版でスクリーン印刷により基板に塗布し、熱風オーブンにて120℃60分間、180℃30分間加熱を行った。その試験片を85℃、相対湿度85%の雰囲気下において、直流電流100Vを印加した。1000時間後の層内絶縁抵抗値を測定してHHBT耐性を評価した。絶縁抵抗値の測定は、100V直流電圧を加え1分間保った後、その電圧印加状態で電気絶縁計にて行なった。判定基準を以下に示す。
○:絶縁抵抗が108Ω以上のもの。
×:絶縁抵抗が108Ω未満のもの。
【0087】
【表3】

【0088】
印刷性の評価
印刷は、ピーアイのテスト用ベータマスク用いてマイクロテック社製MT−550TVCスクリーン印刷機を用いて行った。又、評価で使用した印刷版については、ピーアイ技術研究所のテスト用印刷スクリーン(165メッシュ−3Dのステンレス製、乳剤厚15μm)枠サイズ(550mm×650mm)のもの、印刷条件として、スキージ速度を50〜100mm/min、ギャップ(クリアランス)1.5mm〜2.0mm、スキージ印圧を0.1〜0.2MPaに設定下で印刷を行ない、次の項目について特性を評価した。
【0089】
銅基板に印刷を連続で20ショット行った後、室温で5〜10分間レベリングを行ない、90℃熱風オーブンにて30分間加熱し、目視及び光学顕微鏡にて評価を行った。評価は、『ニジミ』、『かすれ』、『ボイドまたはカケ』、及び『ローリング性(スキージの移動時にペーストがスクリーン上でスキージの進行方向側の前面で、ほぼ円柱状態で回転流動する時の回転状態の不良)』について行った。結果を表4に示す。
【0090】
【表4】

【0091】
連続印刷性連続印刷性
この評価は膜厚の変化させずに100回連続して印刷できるかを評価するものである。前記ベータパターンを連続印刷し、印刷開始から10ショット目、それ以降については10ショット毎に100ショットまで抜き取り、上記の同様な条件に乾燥した後、前記と同じ形状を目視及び光学顕微鏡にて観察した。これらの結果を表5に示す。なお、表中の連続ショットの○印は良好な膜形状、×印は不良なで膜形状あったことを意味する。但し、膜形状が著しく悪化した場合は印刷を中止した。
【0092】
【表5】

【0093】
表4及び表5の結果からわかるように、本発明の印刷用感光性ポリイミドインクは、膜形状及び連続印刷性に優れていた。
【0094】
FPC作製
実施例1〜8及び比較例1〜3、のポジ型感光性変性樹脂組成物をFPC基板上に感光性カバーレイとしてスクリーン印刷後、プリベークし、その後順次、露光、現像、アフターベーク(120℃×60分+180℃×30分)の工程を行ない、さらにその後、電解金メッキを施す保護膜付きFPCを作製した。
【0095】
金めっき処理
一般的な電解金めっき及び無電解金めっき処理により行なった。すなわち、以下に示す工程順序で行なった。具体的には、サンプルを各工程の槽に順次浸漬した後、乾燥した。
電解金めっき処理工程
脱脂処理(酸性又はアルカリ脱脂)、水洗、酸処理、水洗、ソフトエッチング、水洗、プリディップ処理(酸処理)、水洗、電解ニッケル(ワット浴)めっき、水洗、電解金(シアン化金カリウム)めっき、水洗、乾燥
無電解金めっき処理工程
脱脂処理(酸性又はアルカリ性脱脂)、水洗、酸処理、水洗、ソフトエッチング、水洗、プリディップ処理(酸処理)、塩化パラジウム触媒化、水洗、無電解ニッケルめっき処理工程 (硝酸ニッケル)、水洗、無電解金(シアン化金カリウム)めっき、水洗、乾燥
【0096】
積層体の評価
フレキシブルなプリント配線板の基材としてエスパネックスM(新日鐵化学(株)製)(絶縁層の厚さ25μm、導体層は銅箔F2−WS(18μm))を使用し、ライン/スペース:30/30μm、50/50μm、100/100μm、200/200μmの櫛形配線板を作製した。この配線基板上にポジ型感光性変性ポリイミド組成物を印刷し、プリベークを行なった。めっきする部分にはマスクを使用し、露光、現像、アフターベーク(120℃×60分+180℃×30分)の工程を行なった。露光、現像工程で開口した部分に電解ニッケル−金めっき又は無電解ニッケル−金めっきを行なうことで、それぞれニッケルの厚さ約3〜5μm、金の厚さ約0.03〜0.07μmを施した。開口部から内部分へのめっきの潜り込みはマイクロ蛍光X線分析又は断面観察にて確認した。その結果を表6に示す。
【0097】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポジ型感光性変性ポリイミド組成物は、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネル等に使用されるフレキシブル配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体チップ搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用の感光性インクとして好適である。
【0099】
従来のフレキシブルプリント基板の表面被覆材、多層リジット基板の内層被覆材、液晶配向膜、ICやLSIのコート材、等の電子材料部品の被覆用工業材料としての表面保護膜や層間絶縁膜用ポリイミド膜に関しては、カバーレイフィルムの所定の位置へ穴を開けるためレーザーエッチングやプラズマエッチングなどの方法が行なわれてきた。しかし、位置精度は大変良好であるが、穴あけに時間がかかり、装置や運転コストが高いという欠点がある。近年、感光性ポリイミドを用いるフォトプリント法の技術が大きく進んだため、像形成工程がより簡略化され、エレクトロニクス分野でのポリイミドの適用が広まってきた。本発明の感光性ポリイミドインク組成物を用いると、露光、現像の工程を行なうことで、微細パターン加工が従来のフォトエッチング法に比べてより簡略化された像形成ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは、それぞれ独立にカーボネート基、エステル基又はウレタン基を示し、Yは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、Aは、ジアミンのアミノ基を除いた2価の有機基を示し、Z及びZ'は、テトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた4価の有機基を示し、かつ、A、Z及びZ'の少なくともいずれか1つが遊離の水酸基又は/及びカルボキシル基を有し、m、p、qは、互いに独立して1〜20の整数を示す)
で表される変性ポリイミドと、感光剤と、熱硬化剤とを含有する、感光性変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光剤がポジ型感光剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される変性ポリイミドの末端部分に、さらに反応性基を有し、それによって該変性ポリイミドが熱硬化性を有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
上記一般式(I)で表される変性ポリイミドに対する上記一般式(I)中の、繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Yが芳香族である場合にはYの重量を除く)が0.3〜0.7である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記感光剤が、芳香族ポリヒドロキシ化合物のナフトキノンジアジドスルホニルエステル又はキノンジアジド化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記変性ポリイミド100重量部に対して非ハロゲン系難燃剤1〜20重量部をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記非ハロゲン系難燃剤が非ハロゲン系の金属水酸化物等の水和金属化合物又は、リン酸エステル系化合物若しくはフォスファゼン系化合物である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を成膜し、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去することにより得られた感光性樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を、基材上に塗布して成膜する工程、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去する工程、溶媒が除去された前記組成物を、マスクを通して露光する工程、露光後現像する工程、及び現像後、前記硬化剤の硬化温度以上に加熱する工程を有するパターン化ポリイミド樹脂フィルムの作製方法。
【請求項10】
前記基材が、配線が形成されたプリント配線板又はFPC基板である請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により作製されたパターン化ポリイミド樹脂フィルムを具備するプリント配線板又はFPC。

【公開番号】特開2010−260902(P2010−260902A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110759(P2009−110759)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】