説明

感光性樹脂組成物、感光性樹脂積層体、レジストパターン形成方法、並びに導体パターン、プリント配線板、リードフレーム、凹凸パターンを有する基板及び半導体パッケージの製造方法

【課題】感度、解像度及びレジストスソ界面密着性に優れ、剥離時の剥離片サイズが細かく、かつ廃液処理性が良好な感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を含む重合成分から重合された特定酸当量及び特定重量平均分子量の熱可塑性重合体、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する付加重合性モノマー及び(c)光重合開始剤を特定量含み、(a)熱可塑性重合体として、(a−1)重量平均分子量15,000以上85,000以下の重合体と(a−2)重量平均分子量150,000以上400,000以下の重合体とを含み、該(a−1)重合体の該(a−2)重合体に対する質量比が1〜3であり、かつ該重合成分のうち芳香族基を含む重合成分の割合が10質量%以下である感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性水溶液によって現像可能な感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を支持体上に積層した感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途に関する。さらに詳しくは、プリント配線板の製造、フレキシブルプリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム(以下、単にリードフレームという)の製造、メタルマスク製造等の金属箔精密加工、BGA(ボールグリッドアレイ)やCSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ製造、TAB(Tape Automated Bonding)やCOF(Chip On Film:半導体ICをフィルム状の微細配線板上に搭載したもの)に代表されるテープ基板の製造、半導体バンプの製造、フラットパネルディスプレイ分野におけるITO電極、アドレス電極、又は電磁波シールド等の部材の製造に好適なレジストパターンを与える感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板はフォトリソグラフィー法によって製造されている。フォトリソグラフィー法によれば、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、パターン露光して該感光性樹脂組成物の露光部を重合硬化させ、未露光部を現像液で除去して基板上にレジストパターンを形成し、エッチング又はめっき処理を施して導体パターンを形成した後、該レジストパターンを該基板上から剥離除去することによって、基板上に導体パターンを形成することができる。
【0003】
上記のフォトリソグラフィー法においては、感光性樹脂組成物を基板上に塗布するにあたって、通常、感光性樹脂組成物の溶液を基板に塗布して乾燥させる方法、又は支持体、感光性樹脂組成物からなる層(以下、「感光性樹脂層」ともいう。)、及び必要によっては保護層、を順次積層した感光性樹脂積層体(以下、「ドライフィルムレジスト」ともいう。)を基板に積層する方法のいずれかが使用される。そして、プリント配線板の製造においては、後者のドライフィルムレジストが使用されることが多い。
【0004】
上記のドライフィルムレジストを用いてプリント配線板を製造する方法について、以下に簡単に述べる。まず、ドライフィルムレジストがポリエチレンフィルム等の保護層を有する場合には、感光性樹脂層からこれを剥離する。次いで、ラミネーターを用いて、銅張積層板等の基板上に、該基板、感光性樹脂層、支持体の順序になるよう、感光性樹脂層及び支持体を積層する。次いで、配線パターンを有するフォトマスクを介して、該感光性樹脂層を超高圧水銀灯が発するi線(365nm)等の紫外線で露光することによって、露光部分を重合硬化させる。次いでポリエチレンテレフタレート等からなる支持体を剥離する。次いで、弱アルカリ性を有する水溶液等の現像液により感光性樹脂層の未露光部分を溶解又は分散除去して、基板上にレジストパターンを形成させる。次いで、形成されたレジストパターンを保護マスクとして公知のエッチング処理、又はパターンめっき処理を行う。エッチングにより金属部分を除去する方法では、基板の貫通孔(スルーホール)や層間接続のためのビアホールを硬化レジスト膜で覆うことにより孔内の金属がエッチングされないようにする。この工法はテンティング法と呼ばれる。最後に、該レジストパターンを基板から水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液により剥離して導体パターンを有する基板、すなわちプリント配線板を製造する。めっきを行う方法では、レジストパターンを形成した銅面上に、銅、半田、ニッケル及び錫等のめっき処理を行った後、同様にレジストパターン部分を剥離除去し、さらに現れた銅張り積層板等の銅面をエッチングし、最後にめっきを剥離する。上述のエッチング工程においては、塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液等が用いられる。
【0005】
レジストパターンの剥離工程において、硬化レジスト膜の剥離片サイズが大きい場合、剥離層のリングロールへの絡みつきが問題になることがある。また、めっき処理を行う場合、しばしばめっきがオーバーハングすることがあり、この際は剥離片が細かくなければ剥離不良が起こり基板上にレジスト膜が残ってしまうことがある。よって剥離片微細化の技術が求められている。特許文献1〜3では、低分子量の熱可塑性重合体を用いることにより、剥離片サイズを微細化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−55550号公報
【特許文献2】特開昭63−266448号公報
【特許文献3】特開平11−327138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、現像後のレジストパターンと銅との界面密着性が悪く、スソが浮いていると、後に続く工程においてエッチング液及びめっき液の界面への染込みが起こり、導体パターンのショート及びガタつきの原因となるため、レジストスソ界面密着性が良好であることによりスソが浮かないドライフィルムレジストの開発が望まれている。
【0008】
また、近年は、環境への配慮からプリント配線板製造工程で生じる廃液の処理性にも関心が向けられ、酸によるスカム沈降工程(以下、酸沈ともいう。)において迅速に廃液を処理できるドライフィルムが望まれている。
【0009】
本発明は、感度及び解像度を良好に維持しつつ、レジストスソ界面密着性に優れ、光硬化膜のアルカリ水溶液による剥離の際に剥離片サイズが細かく、かつ廃液酸沈性(すなわち廃液処理性)が良好である感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、本発明の次の構成によって達成することができる。
【0011】
[1] (a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を含む重合成分から重合された、酸当量が100〜600、かつ重量平均分子量が5,000〜500,000である熱可塑性重合体20〜90質量%、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する付加重合性モノマー3〜75質量%、及び(c)光重合開始剤0.01〜30質量%を含む感光性樹脂組成物であって、
(a)熱可塑性重合体として、(a−1)重量平均分子量が15,000以上85,000以下の重合体と、(a−2)重量平均分子量が150,000以上400,000以下の重合体とを含み、該(a−1)重合体の該(a−2)重合体に対する質量比(a−1)/(a−2)が1〜3であり、かつ
該重合体のうち共重合成分として芳香族基を含む共重合体の割合が10質量%以下である、感光性樹脂組成物。
[2] 上記(c)光重合開始剤として、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体を含有する、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 上記(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する付加重合性モノマーとして、下記一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立にH又はCH3であり、そしてn1、n2及びn3は各々独立に3〜20の整数である。)
で表される光重合可能な不飽和化合物及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、R3及びR4は各々独立にH又はCH3であり、AはC24であり、BはC36であり、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数でかつn4+n5は2〜30の整数であり、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数でかつn6+n7は0〜30の整数であり、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−と−(B−O)−とのいずれがビスフェニル基側でもよい。)
で表される光重合可能な不飽和化合物からなる群から選択される1種以上を含有する、上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物が支持体上に積層されてなる感光性樹脂積層体。
[5] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を基板上に形成するラミネート工程、
該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、及び
該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程
を含む、レジストパターン形成方法。
[6] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を、金属板又は金属皮膜絶縁板である基板上に形成するラミネート工程、
該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、及び
該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきすることによって導体パターンを形成する工程
を含む、導体パターンの製造方法。
[7] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を、銅張積層板又はフレキシブル基板である基板上に形成するラミネート工程、
該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする工程、及び
該基板から該レジストパターンを剥離する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
[8] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を、金属板である基板上に形成するラミネート工程、
該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
該レジストパターンが形成された基板をエッチングする工程、及び
該基板から該レジストパターンを剥離する工程
を含む、リードフレームの製造方法。
[9] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を基板上に形成するラミネート工程、
該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
該レジストパターンが形成された基板をサンドブラスト処理加工する工程、及び
該基板から該レジストパターンを剥離する工程
を含む、凹凸パターンを有する基板の製造方法。
[10] 上記[4]に記載の感光性樹脂積層体を、LSIとしての回路形成が完了したウェハである基板上に形成するラミネート工程、
該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
該レジストパターンが形成された基板をめっきする工程、及び
該基板から該レジストパターンを剥離する工程
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、感度及び解像度を良好に維持しつつ、レジストスソ界面密着性に優れ、光硬化膜のアルカリ水溶液による剥離の際に剥離片サイズが細かく、かつ廃液酸沈性(すなわち廃液処理性)が良好である感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途を提供する。本発明の感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂積層体は、プリント配線板の製造、リードフレームの製造、半導体パッケージの製造、平面ディスプレイの製造等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
<感光性樹脂組成物>
本発明は、(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を含む重合成分から重合された、酸当量が100〜600、かつ重量平均分子量が5,000〜500,000である熱可塑性重合体(本明細書において「(a)熱可塑性重合体」ともいう)20〜90質量%、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する付加重合性モノマー(本明細書において「(b)付加重合性モノマー」ともいう)3〜75質量%、及び(c)光重合開始剤0.01〜30質量%を含む感光性樹脂組成物であって、
(a)熱可塑性重合体として、(a−1)重量平均分子量が15,000以上85,000以下の重合体と、(a−2)重量平均分子量が150,000以上400,000以下の重合体とを含み、該(a−1)重合体の該(a−2)重合体に対する質量比(a−1)/(a−2)が1〜3であり、かつ
該重合体のうち共重合成分として芳香族基を含む共重合体の割合が10質量%以下である、感光性樹脂組成物を提供する。
【0015】
(a)熱可塑性重合体
(a)熱可塑性重合体は、α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を含む重合成分から重合された、酸当量が100〜600、かつ重量平均分子量が5,000〜500,000である熱可塑性重合体である。α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体中のカルボキシル基は、本発明の感光性樹脂組成物がアルカリ水溶液からなる現像液又は剥離液に対して、現像性又は剥離性を有するのに寄与する。また、α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体は、良好なレジスト積層体が得られるという観点からα,β−不飽和単量体である。
【0016】
(a)熱可塑性重合体の酸当量は、100〜600であり、好ましくは250〜450である。酸当量は、溶媒又は感光性樹脂組成物中の他の成分、特に後述する(b)付加重合性モノマーとの相溶性を確保するという観点から100以上であり、また、現像性及び剥離性を維持するという観点から600以下である。ここで、酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する熱可塑性重合体の質量(グラム)をいう。なお、本明細書における酸当量は、滴定装置(例えば平沼レポーティングタイトレーター(COM−555))を用い、0.1mol/LのNaOH水溶液で電位差滴定法により測定することにより得られる値である。
【0017】
(a)熱可塑性重合体の重量平均分子量は、5,000〜500,000である。重量平均分子量は、感光性樹脂積層体(すなわちドライフィルムレジスト)の厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から5,000以上であり、また、現像性を維持するという観点から500,000以下である。好ましくは、重量平均分子量は、20,000〜300,000である。本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン(例えば昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)の検量線を用いて測定した重量平均分子量を意味する。該重量平均分子量は、典型的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(例えば日本分光(株)製)を使用して、以下の条件で測定することができる。
示差屈折率計:RI−1530
ポンプ:PU−1580
デガッサー:DG−980−50
カラムオーブン:CO−1560
カラム:順にKF−8025、KF−806M×2、KF−807
溶離液:THF
【0018】
(a)熱可塑性重合体は、後述する第一の単量体の1種の重合体若しくは2種以上の共重合体であるか、又は後述する第二の単量体の1種の重合体若しくは2種以上の共重合体であるか、又は該第一の単量体の1種以上と該第二の単量体の1種以上との共重合体であることが好ましい。
【0019】
第一の単量体は、分子中重合性不飽和基を1個有するカルボン酸又はカルボン酸無水物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。中でも、アルカリ溶液による現像性の観点から特に(メタ)アクリル酸が好ましい。なお本明細書において(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味する。
【0020】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体が挙げられる。中でも、画像形成性の観点から、特にメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
(a)熱可塑性重合体のより具体的な例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びスチレンを共重合成分として含む重合体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びアクリル酸n−ブチルを共重合成分として含む重合体、並びにメタクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルを共重合成分として含む重合体等が挙げられる。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される(a)熱可塑性重合体は、(a−1)重量平均分子量が15,000以上、85,000以下の重合体(本明細書において「(a−1)重合体」ともいう)と、(a−2)重量平均分子量が150,000以上、400,000以下の重合体(本明細書において「(a−2)重合体」ともいう)とを含み、該(a−1)重合体の該(a−2)重合体に対する質量比(a−1)/(a−2)が1〜3であることが必要である。(a−1)重合体は、レジストパターン剥離片を微細化するために必要であり、(a−2)重合体は、レジストパターンのスソ界面密着性(すなわちレジストパターンと基板との界面密着性)を十分に得るために必要である。また上記質量比(a−1)/(a−2)が1以上であれば剥離片が微細化し、3以下であれば上記スソ界面密着性が良好である。上記質量比(a−1)/(a−2)は、好ましくは1以上2.5以下であり、さらに好ましくは、1.5以上2以下である。
【0023】
(a−1)重合体の重量平均分子量は、スソ界面密着性の観点から15,000以上であり、20,000以上が好ましく、また、剥離片微細化の観点から85,000以下であり、75,000以下が好ましい。(a−1)重合体は1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0024】
(a−1)重合体の含有量は、(a)熱可塑性重合体と(b)付加重合性モノマーとの合計質量のうちの30質量%〜45質量%であることが好ましい。上記含有量は、剥離片を微細化するために、30質量%以上であることが好ましく、レジストパターンと基板との密着性を維持するために、45質量%以下であることが好ましい。上記含有量は、30質量%〜40質量%であることがより好ましく、33質量%〜40質量%であることが更に好ましい。
【0025】
(a−2)重合体の重量平均分子量は、スソ界面密着性の観点から150,000以上であり、180,000以上が好ましく、また、剥離片微細化の観点から400,000以下であり、300,000以下が好ましい。(a−2)重合体は1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0026】
(a−2)重合体の含有量は、(a)熱可塑性重合体と(b)付加重合性モノマーとの合計質量のうちの15質量%〜30質量%であることが好ましい。上記含有量は、レジストパターンと基板との密着性を維持するために、15質量%以上であることが好ましく、剥離片を微細化するために、30質量%以下であることが好ましい。上記含有量は、15質量%〜25質量%であることがより好ましく、17質量%〜25質量%であることが更に好ましい。
【0027】
(a)熱可塑性重合体のうち、芳香族基を共重合成分として含む共重合体の割合は(a)熱可塑性重合体全体に対して、10質量%以下である。上記割合が10質量%以下であることは、酸沈による良好な廃液処理性を得るために必要であり、上記割合はより好ましくは8質量%以下である。一方、上記割合は、現像工程におけるスカム凝集を低減する観点から5質量%以上であることが好ましい。
【0028】
共重合成分の芳香族基としては、例えば、アリール(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタアクリレート)等)、フェニル基を有するビニル化合物(例えばスチレン)、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの芳香環にアルコキシ基、ハロゲン、アルキル基等の置換基を有する化合物(例えばメトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。中でも、良好な画像形成が得られるという観点から、特にスチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物中の(a)熱可塑性重合体の含有量は、20〜90質量%の範囲であり、好ましくは、25〜70質量%の範囲である。上記含有量は、アルカリ現像性を維持するという観点から20質量%以上であり、また、露光によって形成されるレジストパターンがレジストとしての性能を十分に発揮するという観点から90質量%以下である。
【0030】
(b)付加重合性モノマー
(b)付加重合性モノマーは、分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する。エチレン性不飽和結合は、画像形成性が良好である観点から、末端エチレン性不飽和基であることが好ましい。高解像性及びエッジフューズ性の観点から、(b)付加重合性モノマーとしては、下記一般式(I):
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、R1及びR2は各々独立にH又はCH3であり、そしてn1、n2及びn3は各々独立に3〜20の整数である。)
で表される光重合可能な不飽和化合物及び下記一般式(II):
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R3及びR4は各々独立にH又はCH3であり、AはC24であり、BはC36であり、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数でかつn4+n5は2〜30の整数であり、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数でかつn6+n7は0〜30の整数であり、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−と−(B−O)−とのいずれがビスフェニル基側でもよい。)
で表される光重合可能な不飽和化合物からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0035】
上記一般式(I)で表される化合物において、R1及びR2は、各々独立にH又はCH3である。また、n1、n2及びn3は、テンティング性が向上する点から各々独立に3以上であり、感度及び解像度が向上する点から各々独立に20以下である。より好ましくは、n1及びn3が、各々独立に3以上10以下であり、n2が、5以上15以下である。
【0036】
上記一般式(II)で表される化合物において、R3及びR4は各々独立にH又はCH3である。n4及びn5は、硬化レジスト膜の柔軟性の観点から各々独立に1以上であり、十分な感度が得られるという観点から各々独立に29以下である。n4+n5は、テンティング性の観点から2以上であり、画像形成性の観点から30以下である。n6及びn7は、画像形成性の観点から各々独立に29以下である。n6+n7は現像凝集性の観点から30以下である。
【0037】
上記一般式(II)で表される化合物において、n4+n5+n6+n7の値は、感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化レジスト膜の柔軟性及びテンティング性の観点から2以上であることが好ましく、解像度に対する効果から40以下であることが好ましい。
【0038】
上記一般式(I)で表される不飽和化合物の好ましい具体例としては、平均12モルのプロピレンオキサイドを付加したポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドを更に両端にそれぞれ平均3モル付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートが挙げられる。
【0039】
上記一般式(II)で表される不飽和化合物の好ましい具体例としては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−200)やビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−500)、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均6モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均15モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートが挙げられる。
【0040】
(b)付加重合性モノマーに占める、上記一般式(I)で表される光重合可能な不飽和化合物の割合としては、感度、解像度、密着性及びテンティング性が向上する点から3質量%以上が好ましく、エッジフューズが抑制される点から70質量%以下が好ましい。上記割合はより好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは3〜30質量%である。
【0041】
(b)付加重合性モノマーに占める、上記一般式(II)で表される光重合可能な不飽和化合物の割合としては、感度が向上する点から3質量%以上が好ましく、エッジフューズが抑制される観点から70質量%以下が好ましい。上記割合はより好ましくは10〜65質量%、さらに好ましくは15〜55質量%である。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物に用いる(b)付加重合性モノマーとしては、上記一般式(I)及び(II)で表される化合物以外にも、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する公知の化合物を使用できる。このような化合物としては、例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物中の(b)付加重合性モノマーの含有量は、3〜75質量%であり、より好ましくは5〜75質量%であり、さらに好ましくは15〜70質量%である。上記含有量は、感光性樹脂組成物の硬化不良、及び現像時間の遅延を抑えるという観点から3質量%以上であり、また、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から75質量%以下である。
【0044】
(c)光重合開始剤
(c)光重合開始剤は、感光性樹脂の光重合開始剤として通常使用されるもの全般を包含する。特に、良好な画像形成が得られる観点から、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(以下、トリアリールイミダゾリル二量体ともいう。)が好ましく用いられる。トリアリールイミダゾリル二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体(以下、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール、ともいう。)、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、及び2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体が挙げられる。特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体は解像性や硬化レジスト膜の強度に対して高い効果を有する光重合開始剤であり、好ましく用いられる。これらは単独でもよいし2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(c)光重合開始剤としてアクリジン化合物やピラゾリン化合物を含有することは、高い感度が得られる観点から好ましい。アクリジン化合物としては、アクリジン、9−フェニルアクリジン、9−(4−トリル)アクリジン、9−(4−メトキシフェニル)アクリジン、9−(4−ヒドロキシフェニル)アクリジン、9−エチルアクリジン、9−クロロエチルアクリジン、9−メトキシアクリジン、9−エトキシアクリジン、9−(4−メチルフェニル)アクリジン、9−(4−エチルフェニル)アクリジン、9−(4−n−プロピルフェニル)アクリジン、9−(4−n−ブチルフェニル)アクリジン、9−(4−tert−ブチルフェニル)アクリジン、9−(4−エトキシフェニル)アクリジン、9−(4−アセチルフェニル)アクリジン、9−(4−ジメチルアミノフェニル)アクリジン、9−(4−クロロフェニル)アクリジン、9−(4−ブロモフェニル)アクリジン、9−(3−メチルフェニル)アクリジン、9−(3−tert−ブチルフェニル)アクリジン、9−(3−アセチルフェニル)アクリジン、9−(3−ジメチルアミノフェニル)アクリジン、9−(3−ジエチルアミノフェニル)アクリジン、9−(3−クロロフェニル)アクリジン、9−(3−ブロモフェニル)アクリジン、9−(2−ピリジル)アクリジン、9−(3−ピリジル)アクリジン、9−(4−ピリジル)アクリジンが挙げられる。中でも、良好な画像性が得られるという観点から9−フェニルアクリジンが望ましい。
【0046】
また、ピラゾリン化合物としては、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert-ブチル−フェニル)−ピラゾリン、若しくは1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン及び1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリンが好ましい。
【0047】
また、(c)光重合開始剤として使用できる、上記以外の光重合開始剤としては、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、及び3−クロロ−2−メチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸との組み合わせ、並びに、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾインオキシム及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類が挙げられる。
【0048】
なお、上述のチオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸との組み合わせとしては、例えば、エチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、2−クロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、及びイソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせが挙げられる。また、上記アルキルアミノ安息香酸に代えてN−アリールアミノ酸を用いてもよい。N−アリールアミノ酸の例としては、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等が挙げられる。中でも、N−フェニルグリシンが特に好ましい。
【0049】
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量は、0.01〜30質量%であり、好ましくは0.05〜10質量%である。上記含有量は、露光による光重合時に十分な感度を得るという観点から0.01質量%以上であり、また、光重合時に感光性樹脂組成物の底面(すなわち光源から遠い部分)にまで光を充分に透過させ、良好な解像性及び密着性を得るという観点から30質量%以下である。
【0050】
その他の成分
本発明の感光性樹脂組成物には、上記(a)〜(c)成分の他の成分として各種の添加剤を含有させることができる。具体的には、例えば染料、顔料等の着色物質、発色性染料、安定剤、可塑剤等を採用することができる。
【0051】
着色物質としては、例えば、フタロシアニングリーン、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、及びダイヤモンドグリーン等が挙げられる。
【0052】
発色系染料は、露光により可視像を与える目的で感光性樹脂組成物中に含有させることができる。発色系染料としては、ロイコ染料又は、フルオラン染料とハロゲン化合物との組み合わせ等が挙げられる。該ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、及びクロル化トリアジン化合物等が挙げられる。
【0053】
感光性樹脂組成物中の着色物質及び発色性染料の含有量としては、各々0.01〜10質量%が好ましい。該含有量としては、良好な着色性及び発色性が得られる点から、0.01質量%以上が好ましく、露光部と未露光部とのコントラストが良好である点及び保存安定性が良好である点から10質量%以下が好ましい。
【0054】
さらに、感光性樹脂組成物の熱安定性又は保存安定性を向上させるために、安定剤として、感光性樹脂組成物に、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類からなる群から選ばれる1種以上の化合物等を含有させることが好ましい。
【0055】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミンが挙げられる。
【0056】
また、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、及びビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0057】
また、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0058】
感光性樹脂組成物中の、安定剤の含有量、特にラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類及びカルボキシベンゾトリアゾール類の合計含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。該含有量としては、感光性樹脂組成物に良好な保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、良好な露光感度を維持するという観点から3質量%以下が好ましい。
【0059】
上記可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルフォン酸アミド、p−トルエンスルフォン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチルが挙げられる。
【0060】
感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜30質量%である。上記含有量としては、現像時間の遅延を抑え、硬化レジスト膜に柔軟性を付与するという観点から5質量%以上が好ましく、また、硬化不足やコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下が好ましい。
【0061】
<感光性樹脂組成物調合液>
本発明の感光性樹脂組成物は、溶媒を添加した感光性樹脂組成物調合液の形態でも各種用途に使用できる。好適な溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、並びにメタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。感光性樹脂組成物調合液の、E型粘度計で測定される溶液粘度が25℃で500〜4000mPa・secとなるように、感光性樹脂組成物に添加する溶媒の量を調整することが好ましい。
【0062】
<感光性樹脂積層体>
本発明はまた、上述したような本発明の感光性樹脂組成物が支持体上に積層されてなる感光性樹脂積層体を提供する。感光性樹脂積層体は、感光性樹脂組成物からなる層(以下、感光性樹脂層ともいう。)の上記支持体と反対側の表面に保護層を有していてもよい。
【0063】
支持体としては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。このような支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、及びセルロース誘導体フィルム等が挙げられる。支持体としては、必要に応じ延伸されたフィルムも使用可能である。支持体のヘーズは5以下が好ましい。支持体の厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要から、10〜30μmのものが好ましい。
【0064】
感光性樹脂積層体において保護層を形成する場合、該保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について、支持体よりも保護層の方が充分小さく保護層を容易に剥離できることである。上記観点から、例えば、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム等が保護層として好ましく使用できる。また、特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムも好ましく用いることができる。保護層の膜厚としては10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0065】
感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚みは、好ましくは、5〜100μmであり、より好ましくは、7〜60μmである。感光性樹脂層の厚みが薄いほど解像度は向上し、また、厚いほど膜強度が向上するので、膜厚は用途に応じて適宜選択することができる。
【0066】
支持体、感光性樹脂層、及び必要により保護層を順次積層して、本発明の感光性樹脂積層体を作製する方法としては、従来知られている方法を採用することができる。
【0067】
例えば、本発明の感光性樹脂組成物を用いて前述の感光性樹脂組成物調合液を調製しておき、これをまず支持体上にバーコーターやロールコーターを用いて塗布して乾燥させ、支持体上に該感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層する。次いで、必要により該感光性樹脂層上に保護層を積層する。以上により感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0068】
<レジストパターン形成方法>
本発明はまた、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いたレジストパターン形成方法を提供する。該レジストパターン形成方法は、基板上に該感光性樹脂積層体を形成するラミネート工程、該感光性樹脂積層体に露光する露光工程、及び該感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程を含む。レジスト形成方法の具体的な例を以下に説明する。
【0069】
まず、ラミネート工程においては、例えばラミネーターを用いて感光性樹脂積層体を基板上に形成する。感光性樹脂積層体が保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂層を基板表面に加熱圧着しラミネートする。この場合、感光性樹脂層は基板表面の片面だけにラミネートしてもよいし、必要に応じて両面にラミネートしてもよい。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。また、該加熱圧着を2回以上行う場合、得られるレジストパターンの基板に対する密着性が向上するため好ましい。この時、圧着には二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用してもよいし、感光性樹脂積層体及び基板を何回か繰り返してロールに通すことにより圧着してもよい。
【0070】
次に、露光工程において、露光機を用いて感光性樹脂積層体に露光する。必要ならば支持体を剥離しフォトマスクを通して活性光により感光性樹脂積層体に露光することができる。露光量は、光源照度及び露光時間より適宜決定され、光量計を用いて測定してもよい。
【0071】
露光工程においては、マスクレス露光方法を用いてもよい。マスクレス露光はフォトマスクを使用せず基板上に直接描画装置によって露光する方法である。光源としては波長350〜410nmの半導体レーザーや超高圧水銀灯等を使用できる。描画パターンはコンピューターによって制御される。マスクレス露光の露光量は、露光光源の照度及び基板の移動速度によって適宜決定される。
【0072】
次に、現像工程において、現像装置を用いて感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去する。具体的には、上記の露光後、感光性樹脂層上に支持体がある場合にはこれを除く。続いてアルカリ水溶液からなる現像液を用いて感光性樹脂の未露光部分を現像除去し、レジストパターンを得る。アルカリ水溶液としては、Na2CO3、又はK2CO3等の水溶液が好ましい。現像液は感光性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、0.2〜2質量%の濃度のNa2CO3水溶液が一般的である。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。なお、現像工程における該現像液の温度は、20〜40℃の範囲で一定温度に保つことが好ましい。
【0073】
上述の工程によってレジストパターンが得られるが、場合によっては、現像工程の後、さらに100〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、レジストパターンの更なる耐薬品性向上が可能となる。加熱には、熱風、赤外線、又は遠赤外線等の方式の加熱炉を用いることができる。
【0074】
<導体パターンの製造方法及びプリント配線板の製造方法>
本発明はまた、上述の感光性樹脂積層体を用いて導体パターンを製造する方法、及び上述の感光性樹脂積層体を用いてプリント配線板を製造する方法を提供する。導体パターンの製造方法は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を、金属板又は金属皮膜絶縁板、例えば銅張積層板である基板上に形成するラミネート工程、感光性樹脂積層体に露光する露光工程、感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、及びレジストパターンが形成された基板(例えば銅張積層板においては基板の銅面)をエッチング又はめっきすることによって導体パターンを形成する工程を含む。ラミネート工程、露光工程及び現像工程においては、レジストパターン形成方法において上述したのと同様の方法及び条件を好ましく採用できる。
【0075】
また、プリント配線板の製造方法は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を、銅張積層板又はフレキシブル基板である基板上に形成するラミネート工程、感光性樹脂積層体に露光する露光工程、感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする工程、及び基板からレジストパターンを剥離する工程を含む。典型的には、ラミネート工程、露光工程及び現像工程を、レジストパターン形成方法において上述したのと同様の方法及び条件で行った後、露出した基板をエッチング法、又はめっき法等の既知の方法で処理し、更に、レジストパターンを、現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する剥離工程を行うことにより所望のプリント配線板を得ることができる。剥離用のアルカリ水溶液(以下、「剥離液」ともいう)についても特に制限はないが、2〜5質量%の濃度のNaOH、又はKOHの水溶液が一般的に用いられる。剥離液にも、少量の水溶性溶媒を加えることは可能である。なお、剥離工程における該剥離液の温度は、40〜70℃の範囲であることが好ましい。
【0076】
<リードフレームの製造方法>
本発明はまた、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いてリードフレームを製造する方法を提供する。該方法は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を、金属板である基板上に形成するラミネート工程、感光性樹脂積層体に露光する露光工程、感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、レジストパターンが形成された基板をエッチングする工程、及び基板からレジストパターンを剥離する工程を含む。典型的には、基板として銅、銅合金、又は鉄系合金等の金属板を用い、ラミネート工程、露光工程及び現像工程を、レジストパターン形成方法において上述したのと同様の方法及び条件で行った後、露出した基板をエッチングして導体パターンを形成する工程を行う。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、所望のリードフレームを得ることができる。
【0077】
<凹凸パターンを有する基板の製造方法>
本発明はまた、上述の感光性樹脂積層体を用いて凹凸パターンを有する基板を製造する方法を提供する。該方法は、感光性樹脂積層体を、基板上に形成するラミネート工程、感光性樹脂積層体に露光する露光工程、感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、レジストパターンが形成された基板をサンドブラスト処理加工する工程、及び基板からレジストパターンを剥離する工程を含む。ラミネート工程、露光工程及び現像工程においては、レジストパターン形成方法において上述したのと同様の方法及び条件を好ましく採用できる。該基板の製造方法において形成されるレジストパターンは、サンドブラスト工法で基板に加工を施す際の保護マスク部材として使用することができる。
【0078】
基板としては、ガラスリブペーストを塗布したガラス基板の他、ガラス、シリコンウエハー、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、セラミック、サファイア、金属材料等を用いることができる。典型的には、ガラスリブペーストを塗布した基板上に、前述のレジストパターン形成方法と同様の方法によってラミネート工程、露光工程及び現像工程を行いレジストパターンを形成する。その後、形成されたレジストパターン上からブラスト材を吹き付け目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、基板上に残存したレジストパターン部分をアルカリ剥離液等で基板から除去する剥離工程を経て、基板上に微細な凹凸パターンを有する基板を形成できる。サンドブラスト処理工程に用いるブラスト材としては公知のものが用いられ、例えばSiC,SiO2、Al23、CaCO3、ZrO、ガラス、ステンレス等の粒径2〜100μm程度の微粒子が用いられる。
【0079】
<半導体パッケージの製造方法>
本発明はまた、上述の感光性樹脂積層体を用いて半導体パッケージを製造する方法を提供する。該方法は、上述した本発明の感光性樹脂積層体を、LSIとしての回路形成が完了したウェハである基板上に形成するラミネート工程、感光性樹脂積層体に露光する露光工程、感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、レジストパターンが形成された基板をめっきする工程、及び基板からレジストパターンを剥離する工程を含む。典型的には、レジストパターン形成方法において前述したのと同様の方法及び条件でラミネート工程、露光工程及び現像工程を行った後、露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施して、導体パターンを形成する工程を行う。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行い、更に、柱状めっき以外の部分の薄い金属層をエッチングにより除去する工程を行うことにより、所望の半導体パッケージを得ることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例にて本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法並びに得られたサンプルについての評価方法及び評価結果について以下に説明する。
【0081】
1.評価用サンプルの作製
実施例及び比較例における感光性樹脂積層体は次のようにして作製した。
【0082】
<感光性樹脂積層体の作製>
表1に示す化合物を用意し、表2に示す組成割合(表2中の数値は質量部であり、P−1〜P−5は溶媒を含まない固形分量を示している)の感光性樹脂組成物をよく攪拌、混合し、支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で4分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは45μmであった。
【0083】
表1,2に示す組成において、MEKとはメチルエチルケトンを示し、MEK以外の化合物の組成割合における質量部は、MEKを含まない値である。
【0084】
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない方の表面上に、保護層として22μm厚のポリエチレンフィルムを張り合わせて、感光性樹脂積層体を得た。
【0085】
<基板整面>
感度、解像性及び密着性の評価用基板としては、35μm厚の圧延銅箔を積層した1.2mm厚の銅張積層板を用い、表面を湿式バフロール研磨(スリーエム(株)製、スコッチブライト(登録商標)HD#600を使用、2回通し)した。
【0086】
評価用基板は、スプレー圧0.20MPaでジェットスクラブ研磨(日本研削砥粒(株)製、サクランダムA(登録商標)#F220Pを使用)したものを用意した。
【0087】
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、上記の基板整面の後に60℃に予熱した銅張積層板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)製、AL−700)を用いて、ロール温度105℃でラミネートした。エアー圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0088】
<露光>
感光性樹脂層の評価に必要なマスクフィルムを、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム上におき、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製、HMW−201KB)により、ストーファー製21段ステップタブレットが7段となる露光量で露光した。
【0089】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を最小限像時間の2倍の時間で溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。
【0090】
2.評価方法
(1)感度評価
上記評価用基板を用いて上記ラミネートを行った後15分経過させ、透明から黒色に21段階に明度が変化しているストーファー製21段ステップタブレットを用いて感光性樹脂層を露光した。露光後、最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、レジスト膜が完全に残存しているステップタブレット段数を感度の値とした。
【0091】
(2)解像性評価
上記評価用基板を用いて上記ラミネートを行った後15分経過させ、露光部と未露光部との幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して感光性樹脂層を露光した。最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスク幅を解像度の評価値とし、解像性を下記のようにランク分けした。
◎:解像度の値が45μm以下。
○:解像度の値が45μmを超え、55μm以下。
△:解像度の値が55μmを超える。
【0092】
(3)密着性評価
上記評価用基板を用いて上記ラミネートを行った後15分経過させ、露光部と未露光部との幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して感光性樹脂層を露光した。最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスクライン幅を密着性の評価値とした。
◎:密着性の値が45μm以下。
○:密着性の値が45μmを超え、55μm以下。
△:密着性の値が55μmを超える。
【0093】
(4)レジスト剥離片評価
上記評価用基板を用いて上記ラミネートを行った後15分経過させ、6cm×6cmのパターンを有するマスクを通して感光性樹脂層を露光した。最小現像時間の2倍の現像時間で現像した後、50℃、3質量%の苛性ソーダ水溶液に浸漬し、基板から剥がれたレジスト硬化膜の形状(剥離片形状)を以下のように評価した。
○:硬化膜が基板から剥がれるとき、亀裂が多数生じて剥離された後、長辺が5mm未満程度の微細片となる。
△:硬化膜が基板から剥がれるとき、亀裂が生じて剥離された後、長辺が5mm以上10mm未満程度の細片となる。
×:硬化膜が基板から剥がれるとき、亀裂が生じて剥離された後、長辺が10mm以上程度の形状となる。
【0094】
(5)スソ界面密着性
レジストと基板との界面のスソ密着性は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、露光部と未露光部との幅が1:1の比率の45μmラインの先端におけるレジストと基板との密着状態を観察し、下記の基準で評価した。
○:ライン先端が完全に密着している。
△:ライン先端が一部浮いている。
×:完全に先端が浮いている。
【0095】
(6)廃液処理性
上述される感光性樹脂積層体の作製方法にしたがって評価用のレジストを作製した。1質量%のNa2CO3水溶液200mLに未露光のレジストを0.4m2/Lの処理量で完全に溶解させた現像液(イ)と、3質量%NaOH水溶液200mLに、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製、HMW−201KB)によりストーファー製21段ステップタブレットが7段となる露光量で露光したレジストを1.0m2/Lの処理量で投入し50℃で3時間攪拌し調製した剥離液(ロ)とを、胴外径が80mmのビーカー内で混合し、35℃で攪拌しながら、60質量%硫酸を滴下し、pH3に調整した。攪拌停止後以下のように評価した。
○:攪拌停止後30分において沈殿物が全体の液高さの30%以下になり、上澄み液が透明になる。
△:攪拌停止後30分において沈殿物が全体の液高さの30%超50%以下になり、上澄み液が透明になる。
×:攪拌停止後30分において沈殿物が全体の液高さの50%を超えるか、又は上澄み液が濁った状態である。
【0096】
3.評価結果
実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、プリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム製造、メタルマスク製造等の金属箔精密加工、BGA及びCSP等のパッケージの製造、COF及びTAB等のテープ基板の製造、半導体バンプの製造、ITO電極及びアドレス電極の製造、電磁波シールド等のフラットパネルディスプレイの隔壁の製造等に好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を含む重合成分から重合された、酸当量が100〜600、かつ重量平均分子量が5,000〜500,000である熱可塑性重合体20〜90質量%、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する付加重合性モノマー3〜75質量%、及び(c)光重合開始剤0.01〜30質量%を含む感光性樹脂組成物であって、
(a)熱可塑性重合体として、(a−1)重量平均分子量が15,000以上85,000以下の重合体と、(a−2)重量平均分子量が150,000以上400,000以下の重合体とを含み、前記(a−1)重合体の前記(a−2)重合体に対する質量比(a−1)/(a−2)が1〜3であり、かつ
前記重合体のうち共重合成分として芳香族基を含む共重合体の割合が10質量%以下である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(c)光重合開始剤として、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する付加重合性モノマーとして、下記一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立にH又はCH3であり、そしてn1、n2及びn3は各々独立に3〜20の整数である。)
で表される光重合可能な不飽和化合物及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、R3及びR4は各々独立にH又はCH3であり、AはC24であり、BはC36であり、n4及びn5は各々独立に1〜29の整数でかつn4+n5は2〜30の整数であり、n6及びn7は各々独立に0〜29の整数でかつn6+n7は0〜30の整数であり、−(A−O)−及び−(B−O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックの場合、−(A−O)−と−(B−O)−とのいずれがビスフェニル基側でもよい。)
で表される光重合可能な不飽和化合物からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物が支持体上に積層されてなる感光性樹脂積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を基板上に形成するラミネート工程、
前記感光性樹脂積層体に露光する露光工程、及び
前記感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を、金属板又は金属皮膜絶縁板である基板上に形成するラミネート工程、
前記感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
前記感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、及び
前記レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきすることによって導体パターンを形成する工程
を含む、導体パターンの製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を、銅張積層板又はフレキシブル基板である基板上に形成するラミネート工程、
前記感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
前記感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
前記レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする工程、及び
前記基板から前記レジストパターンを剥離する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を、金属板である基板上に形成するラミネート工程、
前記感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
前記感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
前記レジストパターンが形成された基板をエッチングする工程、及び
前記基板から前記レジストパターンを剥離する工程
を含む、リードフレームの製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を基板上に形成するラミネート工程、
前記感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
前記感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
前記レジストパターンが形成された基板をサンドブラスト処理加工する工程、及び
前記基板から前記レジストパターンを剥離する工程
を含む、凹凸パターンを有する基板の製造方法。
【請求項10】
請求項4に記載の感光性樹脂積層体を、LSIとしての回路形成が完了したウェハである基板上に形成するラミネート工程、
前記感光性樹脂積層体に露光する露光工程、
前記感光性樹脂積層体における感光性樹脂の未露光部分を除去してレジストパターンを形成する現像工程、
前記レジストパターンが形成された基板をめっきする工程、及び
前記基板から前記レジストパターンを剥離する工程
を含む、半導体パッケージの製造方法。

【公開番号】特開2011−75706(P2011−75706A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225415(P2009−225415)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】