説明

感光性樹脂組成物

【課題】 感光性樹脂組成物自体の明室安定性を改善し、かつ画像残存性および耐刷性に優れた印刷版材を得ることができるアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 本発明は、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物、ニトロキシル化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物およびそれを基板に塗布した印刷用版材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、特にアルカリ現像可能な印刷版材用感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性の感光性樹脂組成物は、その光架橋度を上げることにより強靭な皮膜が得られること、開始剤系の適切な選択によって高感度化が比較的容易であることなどから、感光性平版印刷版やフォトレジスト、ホログラムなどの感光材料として、印刷や電子材料などの分野で広く利用されてきている。特に近年のコンピューター技術およびレーザー技術の著しい進歩に伴い、コンピューター処理された画像情報を、レーザー走査露光により光重合性の感光性樹脂組成物層に直接記録し、記録した画像を現像して印刷版をする方法が検討されている(CTP;Computer To Plate)。
【0003】
このようなレーザー等による画像情報の直接記録に用いられる光重合性の感光性組成物が、数多く提案されている(例えば、特許文献1等)。特許文献1には、(a)アルカリ可溶性樹脂、(b)赤外吸収色素、(c)重合開始剤、および(d)エチレン性不飽和二重結合含有化合物を含有する感光性組成物に於いて、(a)アルカリ可溶性樹脂が側鎖二重結合を有することを特徴とする感光性組成物が開示されている。上記(c)重合開始剤として、有機ホウ素錯体が記載されている。しかしながら、上記特許文献の感光性組成物を用いた印刷版材においては、暗室安定性(光の無い暗い部屋に置いた場合の保存安定性)、画像残存性、耐刷性などの印刷性能が十分に得られないという問題があった。また、この組成物は可視光領域にも感光性を有するので、黄色灯または紫外線カットした白色灯などの明るい安全光下でも光重合反応が生起するという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、赤外線吸収剤、重合性化合物、トリハロアルキル系重合開始剤および/または有機ホウ素塩系重合開始剤、およびアルカリ可溶性基を有するバインダーポリマーを含有する感光層が開示されており、アルカリ可溶性基を有するバインダーポリマーについては、耐刷性の観点から、分子内に重合性基を有することが好ましいとされ、構造式が図示されている。感光性樹脂組成物は、露光光以外の光、例えば黄色灯または紫外線カットした白色灯などの明るい安全光に感光しないのが理想的であるが、特許文献2の感光性組成物も現実には露光光以外の安全光にも感光性を有しているのが現実であり、露光光以外の光の下での保存安定性(以下、明室安定性という。)が改善される必要がある。
【特許文献1】特開2000‐187322号公報
【特許文献2】特開2005‐202150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、感光性樹脂組成物は露光光以外の光に感光しないのが理想的であるが、感光性組成物は現実には露光光以外の光(例えば、安全光)にも感光性を有しているのが現実である。感光性樹脂組成物の上層に、保護層を設けて露光光以外の光を遮断する機能を持たせて、明室安定性の改善を試みているのだが、感光性樹脂組成物自体の感光特性を変えれば、保護層に多くの機能を課している現状を改善し、設計の自由度を大きくすることができる。
【0006】
本発明は上記のような従来の感光性樹脂組成物の有する問題を解決するものであり、その目的とするところは、感光性樹脂組成物自体の感光特性を改善し、かつ暗室安定性、画像残存性、耐刷性および明室安定性に優れた印刷版材を得ることができるアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物、ニトロキシル化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有することによって、暗室安定性、画像残存性、耐刷性および明室安定性に優れた印刷版材を得ることができるアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物が得られ、そのことにより上記目的が達成されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物、ニトロキシル化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
【0009】
本発明を好適に実施するためには、
上記エチレン性不飽和化合物が、2〜15個の(メタ)アクリル基を有し、分子量300〜3,000を有し、該エチレン性不飽和化合物の含有量が30〜90重量%であり;
上記アルカリ可溶性樹脂が、酸価30〜150、重量平均分子量5,000〜200,000を有し;
前記アルカリ可溶性樹脂がエチレン不飽和基を有さず;
前記アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を側鎖に有する場合もあり;
エチレン性不飽和基を側鎖に有する場合は、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸基と、グリシジル(メタ)アクリレートまたは脂環式エポキシ不飽和化合物との反応によって導入され;
上記アルカリ可溶性樹脂が、アクリル系樹脂であり;
上記近赤外吸収色素が、シアニン系色素および/またはポリメチン系色素であり;
上記近赤外吸収色素が、800〜860nmに極大吸収波長を有し;
上記近赤外吸収色素の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.05〜20重量部であり;
上記ハロメチル基含有化合物の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部であり;
上記ニトロキシル化合物の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜1重量部であり;
上記有機ホウ素アニオン含有化合物の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部であり;
上記近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物の重量比率が、該近赤外吸収色素の重量を1とした時に、該ハロメチル基含有化合物が0.1〜10であり、該有機ホウ素アニオン含有化合物0.1〜10であり;
更に有機顔料および/または有機溶剤可溶性の染料を含有する;
ことが好ましい。
本発明は、上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、その上に遮蔽色素を含まない保護層を設けた印刷用版材も提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物、ニトロキシル化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有することによって、暗室安定性、画像残存性、耐刷性および明室安定性に優れた印刷版材を得ることができるアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を提供し得たものである。特に、本発明の感光性樹脂組成物はその上層に設けられる保護層に露光光以外の光の遮断性能を必要とせず、印刷用版材の設計自由度を大きくすることができる。この組成物は近赤外域の光、特に800〜860nmの光に感光性を有し、いわゆるコンピューター‐ツー‐プレート(CTP)に用いられる印刷用版材に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を更に詳細に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、前述のように、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物、ニトロキシル化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する。
【0012】
(エチレン性不飽和化合物)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、光重合開始剤の作用によりラジカル付加重合して硬化するエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であれば特に限定されない。
【0013】
具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、iso‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、iso‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐ノニル(メタ)アクリレート、n‐デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n‐トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、n‐ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3‐ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N‐ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N‐t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3‐プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート;アクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミドおよびヘキサメチレンビスメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0014】
また、ポリエステルポリオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,3‐ブチレングリコールのようなジオール成分と、フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびヘキサヒドロフタル酸のような二塩基酸またはその無水物のような酸成分とから得られる)とポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、4,4'‐ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートなど)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(例えば、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど)とを反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;特開平10‐90886号公報に記載されている分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物(例えばジイソシアネート類のイソシアヌレート体、ビュレット体、アダクト体)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(例えば、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど)を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、シェルのエピコート828、エピコート1001、エピコート1004およびエピコート807など)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるビスフェノール型エポキシアクリレート;ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、シェルのエピコート152およびエピコート154)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるノボラック型エポキシアクリレートなども好適に用いることができる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、前述のような化合物であってもよいが、(メタ)アクリル基を2個以上、好ましくは3〜15個、より好ましくは4〜15個有することが望ましく、分子量300〜3,000、好ましくは500〜3,000を有するものが望ましい。上記エチレン性不飽和化合物の(メタ)アクリル基が2個未満では、耐刷性が低くなる。上記エチレン性不飽和化合物の分子量が300未満では架橋密度は高くなるものの耐衝撃性が弱くなり、かえって耐刷性が低くなり、3,000を超えると架橋密度が低くなり、耐刷性が低くなる。
【0016】
上記のようなエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂組成物の総重量に対して、30〜90重量%、好ましくは40〜80重量%であることが望ましい。上記エチレン性不飽和化合物の含有量が30重量%未満では感度が低下して耐刷性が低くなり、90重量%を超えると印刷版材など製品の固形保持性が必要な場合、固形保持性が悪くなる。
【0017】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるアルカリ可溶性樹脂は、カルボン酸を側鎖に有する樹脂、およびカルボン酸およびエチレン性不飽和基を側鎖に有する樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
上記カルボン酸を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂の具体例として、モノマーとして(メタ)アクリル酸、メタクリル酸2‐サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐マレイノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸を単独重合させた樹脂や、これらの不飽和カルボン酸とカルボキシル基を有さないビニルモノマーの1種以上とを共重合させた樹脂が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基を有さないビニルモノマーとしては、
(I)ヒドロキシル基含有モノマー:例えば2‐ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN‐(4‐ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o‐、m‐、p‐ヒドロキシスチレン、o‐、m‐、p‐ヒドロキシフェニル‐アクリレートまたは‐メタクリレート;
(II)アルキルアクリレートもしくはメタクリレート:例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチルアクリレート、2‐クロロエチルアクリレート;
(III)重合性アミド:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N‐ヘキシルアクリルアミド、N‐シクロヘキシルアクリルアミド、N‐ヒドロキシエチルアクリルアミド、N‐フェニルアクリルアミド、N‐ニトロフェニルアミド、N‐エチル‐N‐フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド類;
【0020】
(IV)含窒素アルキルアクリレートもしくはメタクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート;
(V)ビニルエーテル類:例えばエチルビニルエーテル、2‐クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル;
(VI)ビニルエステル類:例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル;
【0021】
(VII)スチレン類:例えばスチレン、α‐メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン;
(VIII)ビニルケトン類:例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン;
(IX)オレフィン類:例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン;
【0022】
(X)グリシジル(メタ)アクリレート;
(XI)重合性ニトリル:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル;
(XII)N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルカルバゾール、4‐ビニルピリジン:
(XIII)両性イオン性単量体:N,N‐ジメチル‐N‐メタクリルオキシエチル‐N‐(3‐スルホプロピル)‐アンモニウム‐ベタイン、N,N‐ジメチル‐N‐メタクリルアミドプロピル‐N‐(3‐スルホプロピル)‐アンモニウム‐ベタイン、1‐(3‐スルホプロピル)‐2‐ビニルピリジニウム‐ベタイン;等が挙げられる。
【0023】
また、無水マレイン酸をスチレン、α‐メチルスチレン等と共重合させ、無水マレイン酸をメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の一価アルコールでハーフエステル化あるいは水により加水分解させた樹脂も挙げられる。
【0024】
さらに、ノボラックエポキシアクリレート樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂等に(メタ)アクリル酸、メタクリル酸2‐サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐マレイノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、等の不飽和カルボン酸あるいは酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸等の飽和カルボン酸を付加させた後、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水フタル酸等の酸無水物で変性させた樹脂も挙げられる。
【0025】
それらの中では、合成のし易さ、エチレン性不飽和化合物との相溶性の点から、アクリル系樹脂が好ましく、それらの具体例(好ましい例)として、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2‐エチルヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸n‐ブチル/アクリル酸2‐エチルヘキシル/メタクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2‐ヒドロキシエチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸n‐ブチル/アクリル酸2‐エチルヘキシル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸n‐ブチル/アクリル酸2‐エチルヘキシル/スチレン/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0026】
これらのカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和基を有していないものでもよいが、エチレン性不飽和基を有していても良い。このエチレン性不飽和基を有する樹脂の場合、アルカリ可溶性樹脂にエチレン性不飽和基を導入する方法は特に限定的ではないが、通常アルカリ可溶性樹脂に存在するカルボキシル基の一部がエポキシ基含有エチレン性不飽和基化合物と反応することにより導入される。
【0027】
上記アルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基と反応してエチレン性不飽和基を導入するためのエポキシ基含有エチレン性不飽和基化合物としては、特許第2758737号において、化合物(III)(エポキシ基と(メタ)アクリロイル若しくは(メチル置換基を有してよい)ビニル基とを有する化合物)として記載されている化合物、特許第2763775号において、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(一分子中に1個のラジカル重合性の不飽和基と脂環式エポキシ基とを有する化合物)として記載されている化合物などが使用可能である。脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の例としては、例えば以下の化合物を例示することができる。
【0028】
【化6】

好ましいものは、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどである。
【0029】
本発明においては、側鎖にエチレン性不飽和基を有するが、アルカリ可溶性でない樹脂を混合して使用することもできる。そのような側鎖にエチレン性不飽和基を有するが、アルカリ可溶性でない樹脂としては、例えば、カルボン酸を有するアルカリ可溶性樹脂のカルボン酸の全てを、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(グリシジル(メタ)アクリレート、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなど)のエポキシ基と反応させた樹脂、ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性でない樹脂を、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物のイソシアネート基と反応させた樹脂などが挙げられる。その他の方法で、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性でない樹脂を合成し使用しても特に問題ない。
【0030】
これらの樹脂とアルカリ可溶性樹脂を混合したものが結果としてアルカリ可溶性であれば特に問題なく、全体としてアルカリ可溶性樹脂と見なすことができる。その場合の樹脂特性は混合物として見なしている。
【0031】
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂は、酸価30〜150KOH・mg/g、好ましくは50〜130KOH・mg/gを有し、重量平均分子量5,000〜200,000、好ましくは10,000〜200,000を有することが望ましい。上記アルカリ可溶性樹脂の酸価が、30KOH・mg/g未満ではアルカリ現像性が不十分となり、150KOH・mg/gより大きいと、アルカリ現像性は十分であるが、膜減りして画像残存性が悪くなる。
【0032】
上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が、5,000未満では耐刷性が低くなり、印刷版材など製品の固形保持性が必要な場合に固形保持性が低下し、200,000を超えるとアルカリ現像性が低くなる。
【0033】
上記エチレン性不飽和化合物:アルカリ可溶性樹脂の配合比は、40:60〜90:10、好ましくは50:50〜90:10、より好ましくは60:40〜90:10である。上記アルカリ可溶性樹脂が、10重量%未満ではアルカリ現像性が低く、また固形保持性が悪くなり、60重量%を超えると耐刷性が低くなる。
【0034】
(近赤外吸収色素)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる近赤外吸収色素は、600〜1100nmの波長領域に吸収を有する化合物であって、具体的には、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポリメチン系色素などが挙げられるが、増感色素として当業者に知られているものであれば特に限定されない。その中でも、シアニン系色素、ポリメチン系色素が好ましく、さらに、800〜860nmに極大吸収波長を有するものが特に好ましい。
【0035】
具体的には、以下に例示したものが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
キノリン系シアニン色素、例えば以下の式:
【化7】

で表される1‐エチル‐4‐[5‐(1‐エチル‐4(1H)‐キノリニリデン)‐1,3‐ペンタジエニル]キノリニウムアイオダイド(814nm;MeOH)、以下の式:
【化8】

で表される1‐エチル‐2‐[7‐(1‐エチル‐2(1H)‐キノリニリデン)‐1,3,5‐ヘプタトリエニル]キノリニウムアイオダイド(817nm;MeOH);
ベンゾピリリウム系シアニン色素、例えば以下の式:
【化9】

で表される8‐[(6,7‐ジヒドロ‐2,4‐ジフェニル‐5H‐1‐ベンゾピラン‐8‐イル)メチレン]5,6,7,8‐テトラヒドロ‐2,4‐ジフェニル‐1‐ベンゾピリリウムパークロレート(840nm;ジクロロエタン);
ベンゾチアゾール系シアニン色素、例えば以下の式:
【化10】

で表される5‐クロロ‐2‐[2‐[3‐[2‐(5‐クロロ‐3‐エチル‐2(3H)‐ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]‐2‐ジフェニルアミノ‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エテニル]‐3‐エチルベンゾチアゾリウムパークロレート(825nm;DMSO)、以下の式:
【化11】

で表される3‐エチル‐2‐[2‐[3‐[2‐(3‐エチル‐2(3H)‐ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]‐2‐ジフェニルアミノ‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エテニル]ベンゾチアゾリウムパークロレート(831nm;DMSO);
インドール系シアニン色素、例えば以下の式:
【化12】

で表される2‐[2‐[2‐クロロ‐3‐[(3‐エチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロヘキセン‐1‐イル]エテニル]‐1,1‐ジメチル‐3‐エチル‐1H‐ベンズ[e]インドリウムテトラフルオロボレート(816nm;MeOH)、以下の式:
【化13】

で表される3‐ブチル‐1,1‐ジメチル‐2‐[2[2‐ジフェニルアミノ‐3‐[(3‐ブチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エチエニル]‐1H‐ベンズ[e]インドリウムパークロレート(830nm;MeOH)、以下の式:
【化14】

で表される2[2‐[2‐クロロ‐3‐[(3‐エチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エテニル]‐1,1‐ジメチル‐3‐エチル‐1H‐ベンズ[e]インドリウムアイオダイド(841nm;MeOH);
ポリメチレン系色素、例えば以下の式:
【化15】

で表される1,1,5,5‐テトラキス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウム=p‐トリエンスルホナート(817nm;AcCN アセトニトリル)、以下の式:
【化16】

で表される1,5‐ビス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,5‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウムトリフルオロメタンスルホネート(819nm;AcCN)、以下の式:
【化17】

で表される1,1,5,5‐テトラキス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウム=ブチル(トリフェニル)ボレート(820nm;AcCN)
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記近赤外吸収色素の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物および上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.05〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。上記近赤外吸収色素の配合量が0.05重量部を下回ると硬化が不十分となり、20重量部を上回ると下層部の硬化が困難となる。
【0037】
(ハロメチル基含有化合物)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるハロメチル基含有化合物としては、水素原子の少なくとも1つが塩素原子または臭素原子で置換されたメチル基を少なくとも1つ有するS‐トリアジン化合物、好ましくは以下の式:
【化18】

[式中、R13、R14およびR15は、R13〜R15の少なくとも1つはトリクロロメチル基であるという条件で、独立してトリクロロメチル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜4の置換基を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基、炭素数7〜25、好ましくは7〜14のアラルキル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜15、好ましくは2〜10のアルケニル基、ピペリジノ基、ピペロニル基、アミノ基、炭素数2〜20、好ましくは2〜8のジアルキルアミノ基、チオール基または炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキルチオ基である。]
で示されるような、少なくとも1つのトリクロロメチル基がS‐トリアジン骨格の炭素原子に結合しているS‐トリアジン化合物、およびトリブロモメチルスルホニル基を有する化合物、例えばトリブロモメチルフェニルスルホン、2‐トリブロモメチルスルホニルピリジン、2‐トリブロモメチルスルホニルベンズチアゾール等が挙げられる。
【0038】
本発明に特に好適に用いることができるS‐トリアジン化合物の具体的には、2,4,6‐トリス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐メチル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐メトキシ‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐フェニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐メトキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(4‐メチルチオフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐クロロフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(4‐メトキシナフチル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐ピペロニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐ピペリジノ‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐スチリル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐メトキシスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(3,4‐ジメトキシスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐ジメチルアミノスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジンが挙げられる。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物中において、上記ハロメチル基含有化合物の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物および上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。上記ハロメチル基含有化合物の量が0.1重量部を下回ると硬化が不十分となり、20重量部を上回ると硬化物の耐溶剤性等が低下する。
【0040】
(有機ホウ素アニオン含有化合物)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる有機ホウ素アニオン含有化合物は、以下の式(a):
【化19】

[式中、R、R、RおよびRは、独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数2〜10のアルカリール基、アリル基、炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜10のアルキニル基であり、該基は置換基を有していてよく、Xは対カチオン、アルカリ金属カチオン(例えば、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン)またはホスホニウムカチオンである。]
で表されることが必要である。
【0041】
本発明の有機ホウ素アニオン含有化合物は、以下の式(b):
【化20】

[式中、R、R、RおよびRは独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数2〜10のアルカリール基、アリル基、炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、シリル基、脂環式基または複素環基であり、該基は置換基を有していてもよく、また環状構造を有してもよく、R、R10、R11およびR12は、独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数2〜10のアルカリール基、アリル基、炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜10のアルキニル基であり、該基は置換基を有していてもよい(但し、R、R10、R11およびR12の少なくとも一つがアルキル基であるのが好ましい)。]
で表される化合物から成る群から選択されることが望ましい。
【0042】
上記式(a)で表される有機ホウ素アニオン含有化合物の例として、ナトリウムテトラフェニルボレート、リチウムトリフェニルn‐ブチルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラキス(4‐メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、4‐メチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラキス(4‐メチルフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0043】
上記式(b)で表される有機ホウ素アニオン含有化合物の例として、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムテトラアニシルボレート、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン‐5‐テトラフェニルボレート、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7‐テトラフェニルボレート、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムトリフェニルn‐ブチルボレート、テトラメチルアンモニウムトリフェニルn‐オクチルボレート、テトラエチルアンモニウムトリフェニルn‐ブチルボレート、テトラメチルアンモニウムトリアニシルn‐ブチルボレートおよびテトラエチルアンモニウムジフェニルジn‐ブチルボレート等が挙げられる。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記有機ホウ素アニオン含有化合物の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物および上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。上記有機ホウ素アニオン含有化合物の配合量が0.1重量部を下回ると硬化が不十分となり、20重量部を上回ると硬化物の耐溶剤性等が低下する。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物において、近赤外吸収色素、有機ホウ素アニオン含有化合物およびハロメチル基含有化合物の重量比率が、近赤外吸収色素の重量を1とした時に、有機ホウ素アニオン含有化合物が0.1〜10、好ましくは0.2〜5、およびハロメチル基含有化合物が0.1〜10、好ましくは0.2〜5であることが望ましい。
【0046】
(ニトロキシル化合物)
本発明の感光性樹脂組成物には、ニトロキシル化合物を含む。ニトロキシル化合物は本発明の感光性樹脂組成物、特に830nmに感光性を有するCTP(コンピューター‐ツー‐プレート)用の印刷版材の暗室安定性を大きく改善する。また、驚くことに、感光特性に起因するものであると考えられるが、ニトロキシル化合物を含有する本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、感光性樹脂層上に設けた保護層に遮蔽色素(露光光以外の光であって感光層に対して感光機能を有する光を吸収する色素)を添加するなどして露光光以外の不要の光を遮断しなくても感光性樹脂組成物の明室安定性が著しく向上する。
【0047】
ニトロキシル化合物は特開平10‐97059号公報に詳しく記載されているが、より具体的には、ジ‐第三ブチルニトロキシル、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジノ‐4‐オール、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジノ‐4‐オン、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イルアセテート、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル2‐エチルヘキサノエート、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イルステアレート、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イルベンゾエート、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル4‐第三ブチルベンゾエート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)スクシネート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)アジペート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)セバケート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)n‐ブチルマロネート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)フタレート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)イソフタレート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)テレフタレート、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’‐ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)アジパミド、N‐(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)カプロラクタム、N‐(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6‐トリス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)イソシアヌレート、2,4,6‐トリス[N‐ブチル‐N‐(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)]s‐トリアジン、または4,4’‐エチレンビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペラジノ‐3‐オン)が挙げられる。最も好ましいものは、ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)セバケートである。
【0048】
ニトロキシル化合物の組成物中への配合量は、上記エチレン性不飽和化合物および上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。0.1重量部より少ないと、暗室安定性の効果が発現されない。1重量部より多いと、感光層の硬化が困難となる。
【0049】
(その他の添加剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、得られる印刷版の画像可視性(視認性)を向上することによって作業性を向上することを目的として、着色剤として有機顔料および/または有機溶剤可溶性の染料を含有することが望ましい。本発明の感光性樹脂組成物は、それらに限定されるものではないが、赤色または青色に着色されることが好ましく、上記有機顔料および染料として、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系染料などを使用することができる。また、上記有機顔料を感光性樹脂組成物に用いることによって、上記視認性に加えて、感光層の粘着性を防止する効果も得ることができる。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記着色剤の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物および上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは5〜45重量部である。上記着色剤の配合量が50重量部を上回ると感光層の硬化が困難となり、1重量部を下回ると十分な視認性が得られなくなる。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物には、またその他添加剤として溶剤、マット化剤、充填剤、熱重合禁止剤、可塑剤、塗布性改良のための界面活性剤、消泡剤および無機または有機の微小フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、微粉末シリカ(粒径0.001〜2μm)や溶剤に分散したコロイダルシリカ(粒径0.001〜1μm)が好ましい。有機フィラーとしては、内部がゲル化したマイクロジェル(粒径0.01〜5μm)が好ましい。特に好ましいそれらのマイクロジェルの例は特開平4‐274428号公報に開示されている。これはSp値が9〜16の高分子乳化剤を用いる乳化重合により調整された粒子径が0.01〜2μmのマイクロジェルである。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物の調製は、常法に従って行ってよく、例えば、遮光下に上記各配合剤を高速撹拌器のような当業者に周知の装置を用いて機械的撹拌混合することにより行うことができる。
【0053】
印刷版の製造
本発明のアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を用いて、印刷版を作製することができる。印刷版の作製方法は、通常の方法に従って行うことができ、例えば、まず、適当な支持体に本発明のアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を塗布する。支持体としては、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛および銅などのような金属板、および二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸メチルセルロース、酢酸エチルセルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびポリビニルアセタールなどのようなプラスチックのフィルムに上記のような金属をラミネートもしくは蒸着した材料等が挙げられる。これらの支持体のうち、アルミニウム板は寸法的に著しく安定であり、しかも、比較的軽量安価であるので特に好ましい。特公昭48‐18327号公報に記載のようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートを接着した複合体シートも好ましい。金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体を用いる場合は、既知の方法で表面に親水化処理を施すことが望ましい。
【0054】
塗布法は特に限定されず、例えば、バーコーターを用いて塗布し、その後、例えば、60〜100℃で1〜10分間乾燥させる。乾燥後の塗布量は0.5〜2.5g/m程度とすることが好ましい。なお、必要に応じて、アルカリ現像液に可溶な樹脂、例えば、ポリビニルアルコールおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等をさらに塗布し、乾燥させることにより保護層を設けてもよい。
【実施例】
【0055】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0056】
(アクリル樹脂Aの合成)
4リッターコルベンにジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)1260gを仕込み、撹拌しながら110℃に昇温する。この中に予め精秤したスチレン(ST)280g、メチルメタクリレート(MMA)532g、メタクリル酸(MAA)276gおよび2ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)111gの混合物とカヤエステルO開始剤12gをDMDG360gに溶解した混合物を別々の経路から3時間を要して滴下する。滴下終了後30分後にさらにカヤエステルO開始剤2.5gをDMDG180gに溶解した混合物を30分で滴下し、滴下終了後120℃に昇温して2時間キープ後冷却してアクリル樹脂Aを合成した。得られたアクリル樹脂Aの樹脂特性は、不揮発分43.4%、気泡粘度Z2、ワニス酸価61.5mgKOH/g、樹脂酸価141.7mgKOH/g、数平均分子量Mn16,100、重量平均分子量Mw59,300、分子量分布Mw/Mnは3.68であった。
【0057】
(アクリル樹脂Iの合成)
3リッターコルベンにアクリル樹脂Aを1507g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)430g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.25gおよびメトキシフェノール0.24gを仕込み、空気を吹き込み撹拌しながら100℃に昇温する。この中に予め精秤したグリシジルメタクリレート(GMA)114gを1時間を要して滴下する。滴下終了後3時間後からワニス酸価を測定し、23.0mgKOH/gを確認後、冷却してアクリル樹脂Iを合成した。得られたアクリル樹脂Iの樹脂特性は不揮発分34.8%、気泡粘度M‐N、ワニス酸価22.8mgKOH/g(樹脂酸価65.5mgKOH/g)、数平均分子量Mn16,300、重量平均分子量Mw84,100、分子量分布Mw/Mnは5.16であった。であった。
【0058】
(アクリル樹脂Bの合成)
4リッターコルベンにジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)1260gを仕込み、撹拌しながら110℃に昇温する。この中に予め精秤したスチレン(ST)280g、メチルメタクリレート(MMA)532gおよび2ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)387gの混合物とカヤエステルO開始剤12gをDMDG360gに溶解した混合物を別々の経路から3時間を要して滴下する。滴下終了後30分後にさらにカヤエステルO開始剤2.5gをDMDG180gに溶解した混合物を30分で滴下し、滴下終了後120℃に昇温して2時間キープ後、冷却してアクリル樹脂Bを合成した。得られたアクリル樹脂Bの樹脂特性は、不揮発分43.2%、気泡粘度Y、数平均分子量Mn15,300、重量平均分子量Mw53,700、分子量分布Mw/Mnは3.51であった。
【0059】
(アクリル樹脂IIの合成)
4リッターコルベンにアクリル樹脂Bを1507g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)430g、触媒DBTLを0.8gおよび重合禁止剤MEHQ2.3gを仕込み、撹拌しながら80℃に昇温する。この中に予め精秤した2‐イソシアナトエチルアクリレート130gを1時間を要して徐々に滴下する。滴下終了後、1時間後から赤外線分光器で2220cm−1イソシアナート基の吸収ピークを追跡し、この吸収強度がゼロになったら反応を終了し、目的のアクリル樹脂IIを合成した。得られたアクリル樹脂IIの樹脂特性は不揮発分34.6%、気泡粘度S、数平均分子量Mn15,500、重量平均分子量Mw59,800、分子量分布Mw/Mnは3.85であった。
【0060】
(アクリル樹脂IIIの合成)
4リッターコルベンにジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)1260gを仕込み、撹拌しながら110℃に昇温する。この中に予め精秤したスチレン(ST)280g、メチルメタクリレート(MMA)532g、メタクリル酸(MAA)133gおよび2ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)254gの混合物とカヤエステルO開始剤12gをDMDG360gに溶解した混合物を別々の経路から3時間を要して滴下する。滴下終了後30分後にさらにカヤエステルO開始剤2.5gをDMDG180gに溶解した混合物を30分で滴下し、滴下終了後120℃に昇温して2時間キープ後、冷却してアクリル樹脂IIIを合成した。得られたアクリル樹脂IIIの樹脂特性は、不揮発分43.1%、気泡粘度Z、ワニス酸価31.2mgKOH/g(樹脂酸価72.3mgKOH/g)、数平均分子量Mn15,300、重量平均分子量Mw53,700、分子量分布Mw/Mnは3.51であった。
【0061】
(実施例1〜7および比較例1〜7)
以下の表1および2に示した成分を有する感光性樹脂組成物の有機溶剤溶液(有機溶剤:メトキシプロパノール、8%)を、バーコーターを用いて親水化処理されたアルミニウム支持体に塗布し、80℃で5分間乾燥した。乾燥後の塗布量は約1g/mであった。
【0062】
その上に、部分ケン化ポリ酢酸ビニル(クラレポバール205)の7%水溶液を、バーコーターを用いて塗布し、60℃で5分間乾燥した。乾燥後の塗布量は約1.5g/mであった。各感光性樹脂組成物に関して、画像残存性、耐刷性の代用特性としての耐ラビング性、更にはインキ汚れ性を評価し、その結果を同表に示した。それぞれの特性は製造直後と製造後45℃で75%相対湿度の条件下で7日間保存したものの両方で同じ評価方法を用いて評価した。試験方法は以下の通りである。
【0063】
(試験方法)
(1)画像残存性
クレオ(Creo)社のトレンドセッター(Trendsetter)NEWSにて、網点50%のパターンを用いて、6Wで描画露光した後、ブラシ型の自動現像機に富士写真フィルム社の現像液(DH‐N)を4倍の水で希釈して満たし、30℃で現像し、水洗後、風乾して画像を形成した。得られた画像を目視判定することによって、以下の評価基準に従って、画像残存性を決定した。
評価基準
○…鮮明な画像が形成された。
△…画像は認められるが、鮮明な膜残存性は不十分であった。
×…画像の残存は全く認められなかった。
【0064】
(2)耐ラビング性
上記のようにして得られた画像の画線部を、ラビングテスター(大平理化工業株式会社社製 RUBBING TESTER)にて実施する。ラビングテスターにラビングテスター用フェルト(大平理化工業株式会社製)を取り付けエッチ液(日本新聞インキ株式会社製 ドン‐H NS‐7)を十分に湿らせてから画像部に接触させた後、2kgの荷重をかけて500回擦り、上記画線部の支持体との密着性および摩耗性を目視判定することによって、以下の評価基準に従って、耐ラビング性を決定した。
評価基準
◎…全く摩耗せず鮮明な画像が残った。
○…ほとんど摩耗せず鮮明な画像が残った。
△…画像が少し摩耗した。
×…画像がかなり摩耗した。
【0065】
(3)インキ汚れ性
レーザーによる描画露光を行わずに、ブラシ型の自動現像機に富士写真フィルム社の現像液(DH‐N)を4倍の水で希釈して満たし、30℃で現像した後、水洗、水切り、ガム引きをして、70℃で1分間乾燥した。水道水を30秒間流してガムを除去し、70℃で2分間乾燥した後、新聞インキをロールで塗布し、室温で30分間放置した。水道水を20秒間流してインキを浮き上がらせた後、引き続き水をかけながらウエス(綿布)でインキを拭い取った。風乾後、インキによる汚れ具合を目視判定することによって、以下の評価基準に従って、インキ汚れ性を決定した。
評価基準
◎…まったく汚れがない。
○…わずかに黒ずみがある。
△…黒ずみがある。
×…黒くなる。
【0066】
(試験結果)
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
(注1)ダイセル化学工業(株)の商品で、側鎖にアクリル基とカルボキシル基とを含有するアクリル共重合樹脂であって、アクリル基は脂環式エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート)の反応によって導入したもの。
(注2)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(注3)1,1,5,5‐テトラキス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウム=p‐トリエンスルホナート(817nm)
(注4)2‐[2‐[2‐クロロ‐3‐[(3‐エチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロヘキセン‐1‐イル]エテニル]‐1,1‐ジメチル‐3‐エチル‐1H‐ベンズ[e]インドリウムテトラフルオロボレート(816nm)
(注5)テトラn‐ブチルアンモニウムトリフェニルn‐ブチルボレート
(注6)2,4,6‐トリス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン
(注7)IRGASTAB UV10:ビス(1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジニ‐4‐イル)セバケート、チバ社製
(注8)フタロシアニンブルー(大日本インキ化学工業社製 FASTOGEN Blue NK)
(注9)ハイドロキノンモノメチルエーテル
【0069】
上記表1および2から明らかなように、実施例1〜7の本発明の感光性樹脂組成物は、比較例1〜7の感光性樹脂組成物に比較して、製造直後でも所定条件下で7日間保存後でも、耐ラビング性およびインキ汚れ性が非常に優れ、暗室安定性がよいことがわかった。
【0070】
(実施例8〜12および比較例8〜12)
上記実施例2と比較例2の感光性樹脂組成物の有機溶剤溶液(有機溶剤:メトキシプロパノール、8%)を、バーコーターを用いて親水化処理されたアルミニウム支持体に塗布し、80℃で5分間乾燥した。塗布量は約1g/mであった。
【0071】
その上に、下記表3の配合を混合することにより保護層用混合液(7%水溶液)A〜Dの4種を形成し、ついでバーコーターを用いてそれぞれ別に塗布し、60℃で5分間乾燥した。塗布量は約1.5g/mであった。一晩放置後、各感光性樹脂組成物に関して、約250ルクスのイエローランプに5時間暴露したものと、しなかったものの画像残存性(2W、4W、6W、8Wおよび10Wで描画露光した。)、耐刷性の代用特性としての耐ラビング性を評価し、その結果を表4に各保護層別に示した。
【0072】
【表3】

【0073】
(注10)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:88
(注11)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:75
(注12)ISP製のビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
(注13)エアープロダクツジャパン社製のアセチレングリコール系界面活性剤
(注14)御国色素(株)製の顔料分散液「Himicron K Blue 2453」を使用。固形分:20.3%、顔料分:15.6%、平均粒径:103.4nm、分散用樹脂:MMA・AAを主成分とする共重合体のアミン中和物。
【0074】
【表4】

【0075】
上記表4から明らかなように、実施例2ではニトロキシル化合物(IRGASTAB UV10)を0.5重量部含有しているので、保護層への遮蔽色素の添加の有無に拘わらず明室安定性がよい。一方、比較例2では、実施例2と同じ組成だがニトロキシル化合物を配合しない組成の感光層を用いているので、保護層に遮蔽色素を添加しない場合(比較例10及び11)5時間のイエローランプ暴露で、不溶化してしまい、明室安定性が悪いことが解った。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物は、いわゆるコンピューター‐ツー‐プレート(CTP)の印刷用版材に有用である。もちろん、所定の光を露光して、その露光部分が硬化し、未露光部分はアルカリで現像するいわゆるネガ型の種々のレジスト等の用途にも利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物、ニトロキシル化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和化合物が、2〜15個の(メタ)アクリル基を有し、分子量300〜3,000を有し、該エチレン性不飽和化合物の含有量が30〜90重量%である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性樹脂が、酸価30〜150、重量平均分子量5,000〜200,000を有する請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を有さない請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂が更にエチレン性不飽和基を側鎖に有する請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和基が、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸基と、クリシジル(メタ)アクリレートまたは脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応によって導入される、請求項5記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂が、アクリル系樹脂である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記近赤外吸収色素が、シアニン系色素および/またはポリメチン系色素である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記近赤外吸収色素が、800〜860nmに極大吸収波長を有する請求項8記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記近赤外吸収色素の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.05〜20重量部である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記ハロメチル基含有化合物の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記ニトロキシル化合物の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜1重量部である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記有機ホウ素アニオン含有化合物の含有量が、前記エチレン性不飽和化合物および前記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物の重量比率が、該近赤外吸収色素の重量を1とした時に、該ハロメチル基含有化合物が0.1〜10であり、該有機ホウ素アニオン含有化合物0.1〜10である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
更に有機顔料および/または有機溶剤可溶性の染料を含有する請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、その上に遮蔽色素を含まない保護層を設けた印刷用版材。

【公開番号】特開2007−79153(P2007−79153A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267205(P2005−267205)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】