説明

感光性樹脂組成物

【課題】撥液性、耐熱性、および耐溶剤性に優れ、パターン形成部以外の部位に感光性樹脂組成物が残渣として残らず、かつパターン形成が可能なネガ型の感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶解性樹脂(A)、フッ素系撥液剤(B)、架橋剤(C)、および酸発生剤(D)を含む感光性樹脂組成物であり、フッ素系撥液剤が、炭素数4〜6のフルオロアルキル基及び炭素−炭素二重結合を有する構造単位を含む付加重合体であり、その添加割合が、全固形分に対して0.01〜1.0重量%であるネガ型の感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ネガ型感光性樹脂組成物、パターン構造物、表示装置、および隔壁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置等を製造する方法として、当該装置等の一部を構成するカラーフィルタ、液晶表示素子のITO電極、有機EL(Electro Luminescence)素子、回路配線基板等をインクジェット法等の塗布型プロセスにより作製する方法が報告されている。このようなインクジェット法等の塗布型プロセスにおいては、感光性樹脂組成物を用いて形成された隔壁が利用される。
【0003】
例えば有機EL素子を利用した表示装置では、3種類の有機EL素子が支持板上に設けられている。すなわち、(1)赤色の光を出射する赤色有機EL素子、(2)緑色の光を出射する緑色有機EL素子、(3)青色の光を出射する青色有機EL素子がそれぞれ支持基板上に設けられている。支持基板上には、通常、画素パターンを規定する隔壁が設けられており、上記3種類の有機EL素子は、上記隔壁によって画成される区画(すなわち隔壁に囲まれた領域)にそれぞれ整列して配置されている。
【0004】
各有機EL素子は、隔壁に囲まれた領域5に第1電極2、有機EL層4及び第2電極7
を順次積層することにより形成されている(図1参照)。
【0005】
図2を参照して有機EL層4の形成方法を説明する。まず、支持基板1上に第1電極2および隔壁3を形成する。次に、有機EL層4となる材料と溶媒とからなるインク6を、隔壁3に囲まれた領域5に供給する(図2(1))。供給されたインク6は、隔壁3で囲まれた領域5に収容され(図2(2))、当該領域5内においてインク6の溶媒が蒸発することによって有機EL層4が形成される図2(3)。このようなインク6を供給する塗布型プロセスとして、インクジェット法やノズルコート法等が提案されている。
【0006】
ここで画素パターンを規定する隔壁3は、感光性樹脂組成物を使用したフォトリソグラフィーによりパターン形成される。塗布型プロセスで利用される隔壁3は、隔壁に囲まれた領域5内に供給されたインク6を確実に収容し、保持する必要があり、意図しない箇所に濡れ広がらないように、いわゆる撥液性を有することが要求されている。
【0007】
上記撥液性を示す部材を形成するための感光性樹脂組成物としては、例えば炭素原子数4〜6のフルオロアルキル基を有するα位置換アクリレートを重合して得られる感光性樹脂組成物を含むものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−287251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら従来から提案されている感光性樹脂組成物を用いて上記隔壁のようなパターン構造物を形成した場合、適度な撥液性を有する隔壁が形成されるため、隔壁に囲まれた領域内に供給されたインクは収容・保持されるものの、得られたパターン構造物の耐熱性が低いと言った安定性に問題があった。また有機EL素子形成のために、支持基板上に隔壁をパターン形成した場合、パターンを形成した部位以外の部位に感光性樹脂組成物の残渣が残ることがあり、この残渣によって、有機EL層を形成するためのインクが弾かれることがあり、塗布膜を形成する際に必ずしも膜厚が十分に均一で、かつ平坦な塗布膜を形成することができない場合があった。
【0010】
したがって本発明の目的は、撥液性、耐熱性に優れ、パターン形成部以外の部位に感光性樹脂組成物が残渣として残らず、かつパターン形成が可能なネガ型の感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アルカリ可溶解性樹脂(A)、フッ素系撥液剤(B)、架橋剤(C)、および酸発生剤(D)を含む感光性樹脂組成物であり、
フッ素系撥液剤が、炭素原子数4〜6のフルオロアルキル基を有する不飽和化合物由来の構造単位を含む付加重合体であり、その添加割合が、全固形分に対して0.01〜1.0重量%であるネガ型の感光性樹脂組成物に関する。
【0012】
また本発明は、さらに溶剤(E)を含む感光剤樹脂組成物に関する。
【0013】
また本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)がフェノール樹脂を含む感光性樹脂組成物に関する。
【0014】
また本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)が、ノボラック樹脂を含む記載の感光性組成物に関する。
【0015】
また本発明は、フッ素系撥液剤(B)が、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を含む付加重合体である感光性樹脂組成物に関する。
【0016】
また本発明は、フッ素系撥液剤(B)が、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造を有する不飽和化合物由来の構造単位を含む付加重合体である感光性樹脂組成物に関する。
【0017】
また本発明は、前記感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターン構造物に関する。
【0018】
また本発明は、前記パターン構造物を含む表示装置に関する。
【0019】
また本発明は、前記パターン構造体を含むインクジェット用の隔壁に関する。
【発明の効果】
【0020】
撥液性、耐熱性に優れ、パターン形成部以外の部位に感光性樹脂組成物が残渣として残らず、かつパターン形成が可能なネガ型の感光性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】表示装置における有機EL素子の断面図である。
【図2】有機EL層の形成方法を説明するための図である。
【図3】隔壁の形成方法を説明するための図である。
【図4】隔壁の形成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物は、下記(A)、(B)、(C)及び(D)を含むネガ型の感光性樹脂組成物である。
(A)アルカリ可溶性樹脂
(B)フッ素系撥液剤
(C)架橋剤
(D)酸発生剤
なお、本明細書においては、各成分として例示する化合物は、特に断りのない限り、単独で又は組合せて使用することができる。
また本発明の感光性樹脂組成物は、さらに溶剤(E)を含む組成で膜形成に使用される。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物はフッ素系撥液剤(B)を含む。フッ素系撥液剤(B)は、炭素原子数4〜6のフルオロアルキル基を有する不飽和化合物(例えば、フルオロアルキル基及び炭素−炭素二重結合を有する不飽和化合物)由来の構造単位を含む付加重合体であり、その添加割合が、感光性樹脂組成物中の全固形分に対して0.01〜1.0重量%である。
【0024】
フッ素系撥液剤(B)は、たとえば炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を有する不飽和化合物(d)(以下「(d)」という場合がある)に由来する構造単位を含む付加重合体である。
【0025】
(d)としては、下記式(d−0)で表される化合物が挙げられる。

【0026】
[式(d−0)中、Rは、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は炭素原子数1〜21のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0027】
は、単結合、炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の2価の脂環式炭化水素基又は炭素原子数6〜12の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、−C−(フェニレン基)、−NR−、−S−又は−SO−で置き換わっていてもよい。]
【0028】
は、炭素原子数4〜6のペルフルオロアルキル基であり、ペルフルオロブチル基であることが好ましい。
【0029】
におけるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが例示される。
【0030】
における炭素原子数1〜21のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の直鎖状アルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、1−ブチルブチル基、1−ブチル−2−メチルブチル基、1−ブチル−3−メチルブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、2−エチル−3−メチルブチル基等の分枝鎖状アルキル基等が挙げられる。
【0031】
としては、水素原子、ハロゲン原子及びメチル基が好ましい。
【0032】
における炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
【0033】
における炭素原子数3〜10の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロデカンジイル基等が挙げられる。
【0034】
における炭素原子数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。
【0035】
としては、炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基が例示される。
【0036】
脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−が−O−、−CO−、−COO−、−C−(フェニレン基)、−NR−、−S−又は−SO−で置き換わったXとしては、例えば、式(xd−1)〜式(xd−10)で表される基等が挙げられる。
【0037】

【0038】
としては、炭素原子数1〜6のアルカンジイル基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0039】
式(d−0)で表される化合物としては、例えば、化合物(d−1)〜化合物(d−94)等が挙げられる。表中、X欄に示した式番号は、上記に例示した基の式番号を表す。また、例えば、化合物(d−1)は下記式(d−1)で表される化合物である。
【0040】

【0041】
【表1】

【0042】

【0043】
【表2】

【0044】

【0045】
フッ素系撥液剤(B)としては、(d)に由来する構造単位と後述する(a)に由来する構造単位とを含む付加重合体であることが好ましく、(d)に由来する構造単位と(a)に由来する構造単位と後述する(b)に由来する構造単位とを含む付加重合体であることがより好ましい。フッ素系撥液剤(B)が(a)に由来する構造単位を含むことにより、現像性に優れるため、残渣や現像に由来するムラが抑制される傾向がある。フッ素系撥液剤(B)が(b)に由来する構造単位を含むことにより、耐溶剤性に優れる傾向がある。また、フッ素系撥液剤(B)は後述する(c)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0046】
フッ素系撥液剤(B)が、(a)と(d)との共重合体である場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、フッ素系撥液剤(B)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
(a)に由来する構造単位;5〜40重量%(より好ましくは10〜30重量%)
(d)に由来する構造単位;60〜95重量%(より好ましくは70〜90重量%)
【0047】
フッ素系撥液剤(B)が、(a)、(b)及び(d)の共重合体である場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、フッ素系撥液剤(B)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
(a)に由来する構造単位;5〜40重量%(より好ましくは10〜30重量%)
(b)に由来する構造単位;5〜80重量%(より好ましくは10〜70重量%)
(d)に由来する構造単位;10〜80重量%(より好ましくは20〜70重量%)
【0048】
フッ素系撥液剤(B)が、(a)、(b)、(c)及び(d)の共重合体である場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、フッ素系撥液剤(B)を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
(a)に由来する構造単位;5〜40重量%(より好ましくは10〜30重量%)
(b)に由来する構造単位;5〜80重量%(より好ましくは10〜70重量%)
(c)に由来する構造単位;10〜50重量%(より好ましくは20〜40重量%)
(d)に由来する構造単位;10〜80重量%(より好ましくは20〜70重量%)
【0049】
各構造単位の比率が、上記の範囲にあると、撥液性、現像性に優れる傾向がある。
【0050】
フッ素系撥液剤(B)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜20,000、より好ましくは5,000〜15,000である。フッ素系撥液剤(B)の重量平均分子量が、前記の範囲にあると、塗布性に優れる傾向があり、また現像時に露光部の膜減りが生じにくく、さらに非露光部が現像で除去しやすい。
【0051】
フッ素系撥液剤(B)の酸価は、20〜200mgKOH/gであり、好ましくは40〜150mgKOH/gである。
【0052】
感光性樹脂組成物中のフッ素系撥液剤(B)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)、及び架橋剤(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。フッ素系撥液剤(B)の含有量が前記の範囲にあると、パターン形成の際に現像性に優れ、かつ得られたパターン(上面)の撥液性に優れる傾向がある。
【0053】
(a)は、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる不飽和化合物である。(a)としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、o−ビニル安息香酸、m−ビニル安息香酸、p−ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3‐ビニルフタル酸、4−ビニルフタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、ジメチルテトラヒドロフタル酸、1、4−シクロヘキセンジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸類;
メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のカルボキシ基を含有するビシクロ不飽和化合物類;
無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、3−ビニルフタル酸無水物、4−ビニルフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、ジメチルテトラヒドロフタル酸無水物、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物(ハイミック酸無水物)等の不飽和ジカルボン酸類無水物;
こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の2価以上の多価カルボン酸の不飽和モノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル類;
α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸のような、同一分子中にヒドロキシ基及びカルボキシ基を含有する不飽和アクリレート類等が挙げられる。
【0054】
これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等が共重合反応性の点やアルカリ溶解性の点から好ましく用いられる。
【0055】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。「(メタ)アクリロイル」及び「(メタ)アクリレート」等の表記も同様の意味を有する。
【0056】
(b)は、炭素原子数2〜4の環状エーテル(例えば、オキシラン環、オキセタン環およびテトラヒドロフラン環(オキソラン環)からなる群から選ばれる少なくとも1種)を有する不飽和化合物であり、炭素原子数2〜4の環状エーテルとエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体が好ましく、炭素原子数2〜4の環状エーテルと(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体がより好ましい。
【0057】
(b)としては、例えば、オキシラニル基を有する不飽和化合物(b1)(以下「(b1)」という場合がある)、オキセタニル基を有する不飽和化合物(b2)(以下「(b2)」という場合がある)、テトラヒドロフリル基を有する不飽和化合物(b3)(以下「(b3)」という場合がある)などが挙げられる。
【0058】
(b1)としては、アルケンをエポキシ化した構造を有する不飽和化合物(b1−1)(以下「(b1−1)」という場合がある)、シクロアルケンをエポキシ化した構造を有する不飽和化合物(b1−2)(以下「(b1−2)」という場合がある)が挙げられる。
【0059】
(b1)としては、オキシラニル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体が好ましく、シクロアルケンをエポキシ化した構造と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体がより好ましい。これらの単量体であると、感光性樹脂組成物の保存安定性に優れる。
【0060】
(b1−1)としては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、β−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,5−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,6−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,4−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,5−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,6−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、3,4,5−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4,6−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、特開平7−248625号公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0061】
(b1−2)としては、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(例えば、セロキサイド2000;ダイセル化学工業(株)製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、サイクロマーA400;ダイセル化学工業(株)製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(例えば、サイクロマーM100;ダイセル化学工業(株)製)、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物等が挙げられる。
【0062】

【0063】
[式(I)及び式(II)において、R及びRは、互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基はヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0064】
及びXは、互いに独立に、単結合、−R−、*−R−O−、*−R−S−、*−R−NH−を表す。
【0065】
は、炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。
【0066】
*は、Oとの結合手を表す。]
【0067】
及びRで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0068】
ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0069】
及びRとしては、好ましくは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基が挙げられ、より好ましくは水素原子、メチル基が挙げられる。
【0070】
で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0071】
及びXとしては、好ましくは単結合、メチレン基、エチレン基、*−CH−O−(*はOとの結合手を表す)基、*−CHCH−O−基が挙げられ、より好ましくは単結合、*−CHCH−O−基が挙げられ、ここで*はOとの結合手を表す。
【0072】
式(I)で表される化合物としては、式(I−1)〜式(I−15)で表される化合物等が挙げられる。好ましくは式(I−1)、式(I−3)、式(I−5)、式(I−7)、式(I−9)、式(I−11)〜式(I−15)が挙げられる。より好ましくは式(I−1)、式(I−7)、式(I−9)、式(I−15)が挙げられる。
【0073】

【0074】
式(II)で表される化合物としては、式(II−1)〜式(II−15)で表される化合物等が挙げられる。好ましくは式(II−1)、式(II−3)、式(II−5)、式(II−7)、式(II−9)、式(II−11)〜式(II−15)が挙げられる。
より好ましくは式(II−1)、式(II−7)、式(II−9)、式(II−15)が挙げられる。
【0075】

【0076】
式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物は、それぞれ単独で用いることができる。また、それらは、任意の比率で混合することができる。混合する場合、その混合比率はモル比で、好ましくは式(I):式(II)で、5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、とりわけ好ましくは20:80〜80:20である。
【0077】
(b2)としては、オキセタニル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体が好ましい。(b2)としては、例えば、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン等が挙げられる。
【0078】
(b3)としては、テトラヒドロフリル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体が好ましい。
【0079】
(b3)としては、具体的には、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えば、ビスコートV#150、大阪有機化学工業(株)製)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0080】
(c)としては、(メタ)アクリル酸エステル類、N−置換マレイミド類、不飽和ジカルボン酸ジエステル類、脂環式不飽和化合物類、スチレン類、その他のビニル化合物等が挙げられる。
【0081】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキルエステル類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート(当該技術分野では、慣用名として、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートといわれている。
)、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキルエステル類;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルエステル類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール及びアラルキルエステル類等が挙げられる。
【0082】
不飽和ジカルボン酸ジエステル類としては、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
【0083】
N−置換マレイミド類としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミド等が挙げられる。
【0084】
脂環式不飽和化合物類としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−tert−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ビス(tert−ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ビス(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のビシクロ不飽和化合物類等が挙げられる。
【0085】
スチレン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。
【0086】
その他のビニル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0087】
(c)としては、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が、共重合反応性及びアルカリ溶解性の点から好ましい。
【0088】
<アルカリ可溶性樹脂(A)>
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)を含む。アルカリ可溶性樹脂(A)としては塗膜性が良好で、他成分との相溶性のあるものであればよい。
【0089】
感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)、架橋剤(C)及び酸発生剤(D)の合計を100重量%とした時のアルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は、好ましくは60〜98重量%である。アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量が、前記の範囲にあると、感光性樹脂組成物の現像性、得られるパターンの密着性、耐溶剤性及び機械特性が良好になる傾向がある。
【0090】
有機ELデバイスの構造上、例えば透明電極(ITO(スズドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム:略称IZO))上に感光性樹脂組成物をパターンを形成する必要がある。
【0091】
透明電極と感光性樹脂組成物とは密着性が良いため、たとえアルカリ可溶性樹脂を用いたとしても、パターン構造物を形成した後に、パターン構造物以外の部分、たとえばパターン構造物の開口部の周縁部に感光性樹脂組成物の残渣が残る現象が見られることがある。
【0092】
有機EL材料を含むインクを、パターン構造物の開口部内にインクジェット法等で塗布した場合、この開口部周縁部に残留する樹脂残渣により、インクがはじかれる。この「はじき(Dewetiing)」が軽微な場合には、発光層などの膜厚にムラが生じることがある。例えば発光層の膜厚が、開口部の中央部と比較して周縁部の方が薄くなることがある。このため発光層の周縁部の電気抵抗が中央部と比較して低くなり、発光層に電圧を印加した際に周縁部に電流が集中して流れ、中央部が周縁部に比べると暗くなる。このように膜厚にムラが生じると、膜厚差に起因すると考えられる発光ムラが生じることがある。とくに「はじき(Dewetiing)」が顕著な場合は、開口部の周縁部に発光層などが形成されず、そのままこの発光層上に電極を形成した場合、一対の電極間に電流リークが生じ、画素内に形成した発光層に電流が流れず、発光しないという現象が生じることがある。
【0093】
本発明者が鋭意検討した結果、上記課題を解決するためには、アルカリ可溶性樹脂としては、ビニルフェノール樹脂(以下、「ポリビニルフェノール」ということがある)またはノボラック樹脂を用いることが好まいことを見出し、とくにポリビニルフェノールとノボラック樹脂とを併用することにより、感光性樹脂組成物をパターン形成したパターン構造物と基板(または電極)との密着性を確保するとともに、パターン構造物を除く領域に実質的に残渣がなく(残渣が残り難い)、耐熱温度を顕著に改善できることを見いだした。
【0094】
ポリビニルフェノールとしては、ビニルフェノールの単独重合体、ビニルフェノールとこれと共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0095】
ポリビニルフェノールは、4-ビニルフェノール、3-ビニルフェノール、2-ビニルフェノール、2-メチル-4-ビニルフェノール、2,6-ジメチル-4-ビニルフェノール等のビニルフェノールを単独または、2種以上組み合わせて、アゾビスイソブチロにトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の重合開始剤を用いて、ラジカル重合させることによって得ることができる。
【0096】
ビニルフェノール類およびポリビニルフェノール類については丸善石油化学(株)研究所編“ビニルフェノール 基礎と応用”(教育出版センター発行)に詳細が記載されている。ビニルフェノールと共重合可能な単量体としては、例えば、イソプロペニルフェノール、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルフェノールの単独重合体が好ましく、p−ビニルフェノールの単独重合体が特に好ましい。
【0097】
ポリビニルフェノールの平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した単分散ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常、3,000〜20,000、好ましくは4,000〜15,000、より好ましくは5,000〜10,000である。ポリビニルフェノールの重量平均分子量が低すぎると、露光領域が架橋反応しても、分子量が充分に増大しないため、アルカリ現像液に溶解しやすくなり、また、耐熱性の向上効果が低下する。ポリビニルフェノールの重量平均分子量が大きすぎると、露光領域と未露光領域とのアルカリ現像液に対する溶解度の差が小さくなるため、良好なレジストパターンを得ることが難しくなる。
【0098】
ノボラック樹脂としては、レジストの技術分野で広く用いられているものを使用することができる。ノボラック樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類またはケトン類とを酸性触媒(例えば、シュウ酸)の存在下で反応させることにより得ることができる。
フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール,2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−メトキシ5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、チモール、イソチモールなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0099】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジフェニルケトンなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
上述した中でも、メタクレゾールとパラクレゾールとを併用し、これらとホルムアルデヒド、ホルマリン、またはパラホルムアルデヒドとを縮合反応させたノボラック樹脂が、レジストの感度制御性の観点から特に好ましい。メタクレゾールとパラクレゾールとの仕込み重量比は、通常、80:20〜20:80、好ましくは70:30〜50:50である。さらに、3,5−ジメチルフェノール(すなわち、3,5−キシレノール)を使用することも好ましい。この場合、クレゾール類(メタクレゾールとパラクレゾールの合計量)と3,5−キシレノールとの仕込み重量比は、通常、50:50〜80:20、好ましくは60:40〜70:30である。ノボラック樹脂の平均分子量は、GPCにより測定した単分散ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜10,000、好ましくは2,000〜7,000、より好ましくは2,500〜6,000である。ノボラック樹脂の重量平均分子量が低すぎると、露光部の架橋反応が起こっても、分子量増大効果が小さく、アルカリ現像液に溶解しやすくなる。
【0101】
ノボラック樹脂の重量平均分子量が高すぎると、露光部と未露光部とのアルカリ現像液に対する溶解度の差が小さくなり、良好なレジストパターンを得ることが難しくなる。ポリビニルフェノール及びノボラック樹脂の重量平均分子量は、合成条件を調整することにより、所望の範囲に制御することができる。この他、例えば、(1)合成により得られた樹脂を粉砕し、適当な溶解度を持つ有機溶剤で固−液抽出する方法、(2)合成により得られた樹脂を良溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下するか、または貧溶剤を滴下して、固−液もしくは液−液抽出する方法などにより、重量平均分子量を制御することができる。
【0102】
GPCによる重量平均分子量の測定は、GPC測定装置として、SC8020(TOSO社製)を用いて、以下の条件で実施する。
【0103】
カラム:TOSO社製TSKGEL G3000HXLとG200HXL1000の
各1本の組み合わせ、
温度:38℃、
溶剤:テトラヒドロフラン、
流速:1.0ml/min、
試料:濃度0.05〜0.6重量%の試料を0.1ml注入。
ポリビニルフェノールとノボラック樹脂との使用割合を重量比で表わすと、通常30:70〜95:5、好ましくは35:65〜95:5、より好ましくは40:60〜90:10の範囲である。
【0104】
ポリビニルフェノールの割合が大きくなるほど、レジストパターンの耐熱性は良好となるものの、基板から剥がれやすくなる。ノボラック樹脂の割合が大きくなると、基板からのレジストパターンの剥離問題は解消するものの、耐熱性が低下する。したがって、両者の割合が前記の範囲内にあることによって、耐熱性と耐はがれ性とのバランスが良好となる。
【0105】
<酸発生剤(D)>
酸発生剤(D)としては、活性光線によって酸を発生する化合物、熱により酸を発生する化合物が例示される。
【0106】
活性光線によって酸を発生する化合物としては、活性化放射線によって露光されると、ブレンステッド酸またはルイス酸を発生する物質であれば特に制限はなく、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、キノンジアジド化合物、α,α′−ビス(スルホニル)ジアゾメタン系化合物、α−カルボニル−α′−スルホニルジアゾメタン系化合物、スルホン化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物など公知のものを用いることができる。これらの中でも、芳香族スルホン酸エステル類、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ハロゲン化アルキル残基を有する芳香族化合物などが好ましい。これらの酸発生剤(D)は、パターンを露光する光源の波長に応じて、分光感度の面から選択することが好ましい。
【0107】
オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ジフェニルヨードニウムトリフレートなどのヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムトリフレートなどのスルホニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩などが挙げられる。
ハロゲン化有機化合物としては、ハロゲン含有オキサジアゾール系化合物、ハロゲン含有トリアジン系化合物、ハロゲン含有アセトフェノン系化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン系化合物、ハロゲン含有スルホキサイド系化合物、ハロゲン含有スルホン系化合物、ハロゲン含有チアゾール系化合物、ハロゲン含有オキサゾール系化合物、ハロゲン含有トリアゾール系化合物、ハロゲン含有2−ピロン系化合物、その他のハロゲン含有ヘテロ環状化合物、ハロゲン含有脂肪族炭化水素化合物、ハロゲン含有芳香族炭化水素化合物、スルフェニルハライド化合物などが挙げられる。
【0108】
ハロゲン化有機化合物の具体例としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモ−3−クロロプロピル)ホスフェート、テトラブロモクロロブタン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロγメチル)−S−トリアジン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモシクロドデセン、ヘキサブロモビフェニル、アリルトリブロモフェニルエーテル、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールAのビス(クロロエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス(ブロモエチル)エーテル、ビスフェノールAのビス(2,3−ジクロロプロピル)エーテル、ビスフェノールAのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラクロロビスフェノールAのビス(2,3−ジクロロプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラクロロビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールSのビス(クロロエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールSのビス(ブロモエチル)エーテル、ビスフェノールSのビス(2,3−ジクロロプロピル)エーテル、ビスフェノールSのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパンなどのハロゲン系難燃剤;ジクロロジフェニルトリクロロエタン、ペンタクロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェニル、4−ニトロフェニルエール、2,4−ジクロロフェニル、3′−メトキシ−4′−ニトロフェニルエーテル、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、4,5,6,7−テトラクロロフタリド、1,1−ビス(4−クロロフェニル)エタノール、1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール、2,4,4′,5−テトラクロロジフェニルスルフィド、2,4,4′、5−テトラクロロジフェニルスルホンなどの有機クロロ系農薬;などが例示される。
【0109】
キノンジアジド化合物の具体例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,1−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステルのようなキノンジアジド誘導体のスルホン酸エステル;1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノン−1−ジアジド−6−スルホン酸クロライド、1,2−ベンゾキノン−1−ジアジド−5−スルホン酸クロライド等のキノンジアジド誘導体のスルホン酸クロライド;などが挙げられる。
【0110】
α,α′−ビス(スルホニル)ジアゾメタン系化合物としては、未置換、対称的もしくは非対称的に置換されたアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、芳香族基、またはヘテロ環状基を有するα,α′−ビス(スルホニル)ジアゾメタンなどが挙げられる。
α−カルボニル−α−スルホニルジアゾメタン系化合物の具体例としては、未置換、対称的もしくは非対称的に置換されたアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、芳香族基、またはヘテロ環状基を有するα−カルボニル−α−スルホニルジアゾメタンなどが挙げられる。
【0111】
スルホン化合物の具体例としては、未置換、対称的もしくは非対称的に置換されたアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、芳香族基、またはヘテロ環状基を有するスルホン化合物、ジスルホン化合物などが挙げられる。
【0112】
有機酸エステルとしては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステルなどが挙げられ、有機酸アミドとしては、カルボン酸アミド、スルホン酸アミド、リン酸アミドなどが挙げられ、有機酸イミドとしては、カルボン酸イミド、スルホン酸イミド、リン酸イミドなどが挙げられる。
【0113】
このほか、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジシクロヘキシル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−オキソシクロヘキシル(2−ノルボルニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−シクロヘキシルスルホニルシクロヘキサノン、ジメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンス ルホナート、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホナート、フェニルパラトルエンスルホナート等が挙げられる。
【0114】
酸発生剤(D)は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜8重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の割合で使用される。酸発生剤(D)の割合が過小または過大であると、レジストパターンの形状が劣化するおそれがある。
【0115】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)は、活性光線の照射(露光)によって生じた酸の存在下で、アルカリ可溶性樹脂を架橋しうる化合物(感酸物質)である。このような架橋剤としては、例えば、アルコキシメチル化尿素樹脂、アルコキシメチル化メラミン樹脂、アルコキシメチル化ウロン樹脂、アルコキシメチル化グリコールウリル樹脂、アルコキシメチル化アミノ樹脂などの周知の酸架橋性化合物を挙げることができる。この他、アルキルエーテル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アルキルエーテル化ユリア樹脂、ウレタン−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルエーテル化レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0116】
これらの中でも、アルコキシメチル化アミノ樹脂が好ましく、その具体例としては、メトキシメチル化アミノ樹脂、エトキシメチル化アミノ樹脂、n−プロポキシメチル化アミノ樹脂、n−ブトキシメチル化アミノ樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、解像度が良好である点で、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメトキシメチル化アミノ樹脂が特に好ましい。アルコキシメチル化アミノ樹脂の市販品としては、PL−1170、PL−1174、UFR65、CYMEL300、CYMEL303(以上、三井サイテック社製)、BX−4000、ニカラックMW−30、MX290(以上、三和ケミカル社製)等を挙げることができる。
【0117】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。架橋剤(C)は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、通常0.5〜60重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜40重量部の割合で使用される。架橋剤の使用量が少なすぎると、架橋反応が十分進行することが困難となり、アルカリ現像液を用いた現像後のレジストパターンの残膜率が低下したり、レジストパターンの膨潤や蛇行などの変形が生じやすくなる。架橋剤の使用量が多すぎると、解像度が低下するおそれがある。
【0118】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤(E)を含む。
本発明において使用し得る溶剤としては、例えば、エステル溶剤(−COO−を含む溶剤)、エステル溶剤以外のエーテル溶剤(−O−を含む溶剤)、エーテルエステル溶剤(−COO−と−O−とを含む溶剤)、エステル溶剤以外のケトン溶剤(−CO−を含む溶剤)、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、ジメチルスルホキシド等の中から選択して用いることができる。
【0119】
エステル溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヒドロキシイソブタン酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、シクロヘキサノールアセテート、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0120】
エーテル溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソールなどが挙げられる。
【0121】
エーテルエステル溶剤としては、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0122】
ケトン溶剤としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
【0123】
アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0124】
芳香族炭化水素溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
【0125】
アミド溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0126】
これらの溶剤は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
上記の溶剤のうち、塗布性、乾燥性の点から、1atmにおける沸点が120℃以上180℃以下である有機溶剤が好ましい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−1−ブタノール等が好ましい。溶剤がこれらの溶剤であると、塗布時のムラを抑制し、塗膜の平坦性を良好にすることができる。
【0128】
感光性樹脂組成物中における溶剤(E)の含有量は、感光性樹脂組成物に含まれる成分の合計量に対して、好ましくは60〜95重量%であり、より好ましくは70〜90重量%である。言い換えると、溶媒(E)を含む感光性樹脂組成物中の固形分は、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。溶剤の含有量が前記の範囲にあると、感光性樹脂組成物を塗布して形成した膜の平坦性が高い傾向がある。ここで、固形分とは、感光性樹脂組成物から溶剤を除いた成分のことをいう。
【0129】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて活性光線を吸収する光吸収剤(H)を添加してもよい。
【0130】
活性光線を吸収する化合物
感光性樹脂組成物中に活性光線を吸収する化合物を含有させると、露光時に、レジスト膜の深さ方向に進行する光を吸収するため、断面を順テーパーから逆テーパー状またはオーバーハング状のレジストパターンを得ることができる。なお基板や基板上に形成されたITO膜などにより露光した光が反射することによっても、レジストパターンの形状が影響を受ける。したがって、露光光の反射防止のためにも、光吸収剤(H)が必要となる。特に酸発生剤(D)と架橋剤(C)との組み合わせを用いた感光性樹脂組成物は、架橋型化学増幅レジストであって、光の照射により生成した酸がレジスト膜内で拡散し、光が当たらない領域にまで架橋反応を起こすため、活性光線を吸収する光吸収剤(H)を存在させることにより、レジストパターンの形状を制御することができる。
【0131】
光吸収剤(H)としては、露光光源の波長に応じて、その波長領域に吸収領域を有する化合物を選択すればよい。ただし、光吸収剤(H)がアルカリ現像液に対して溶解度が低い化合物である場合には、現像後に該光吸収剤(H)が基板上に残留し易いので、フェノール性水酸基やカルボキシ基、スルホニル基等の酸性残基を付与し、アルカリ現像液に対する溶解度を高めた化合物が好ましい。また、こうした残渣発生の問題を解決する目的で、より吸光度の高い化合物を選択して、少ない添加量で充分な吸光度が得られるようにすることが好ましい。形成されたレジストパターンが、露光後ベーク(PEB)やスパッタリング工程で高温にさらされる場合には、光吸収剤(H)が昇華して装置を汚染することがあるので、光吸収剤(H)は、昇華性の低い化合物であることが好ましい。
【0132】
本発明で使用する光吸収剤(H)としては、いわゆるアゾ染料が好ましい。アゾ染料としては、例えば、アゾベンゼン誘導体、アゾナフタレン誘導体、アリールピロリドンのアゾベンゼンもしくはアゾナフタレン置換体、さらに、ピラゾロン、ベンズピラゾロン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール等の複素環のアリールアゾ化合物等が挙げられる。
これらのアリールアゾ化合物は、吸収波長を所望の領域に設定するために、共役系の長さや置換基の種類等を適宜選択することができる。例えば、スルホン酸(金属塩)基、スルホン酸エステル基、スルホン基、カルボキシ基、シアノ基、(置換)アリールまたはアルキルカルボニル基、ハロゲン原子等の電子吸引基で置換することによって、短波長に吸収領域を設定したアリールアゾ化合物とすることができる。また、(置換)アルキル、(置換)アリールまたはポリオキシアルキレンなどで置換されたアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、若しくはアリールオキシ基等の電子供与基によって置換することにより、吸収波長を長波長領域に設定したアリールアゾ化合物とすることもできる。置換基には、アミノ基のようにアルカリ現像液に対する溶解性を低下する基と、カルボキシ基やヒドロキシ基のようにアルカリ現像液に対する溶解性を高める基とがあるので、本発明の感光性樹脂組成物の感度が実用的水準になるように、アリールアゾ化合物の置換基の種類を適宜選定することが望ましい。
【0133】
アゾ染料の場合には、化合物の構造や置換基の種類を選択することによって、200〜500nmの広い波長領域で活性光線を吸収する種々の化合物を用いることができる。こうした共役系の長さや置換基の選定は、アゾ染料以外の化合物についても当てはまる。主として300〜400nmの波長領域の光源に対応する化合物としては、(置換)ベンズアルデヒドと活性メチレン基を有する化合物とを縮合して得られるスチレン誘導体が挙げられる。ベンズアルデヒドの置換基としては、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、ポリオキシアルキレンアミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基等が挙げられる。
活性メチレン基を有する化合物としては、例えば、アセトニトリル、α−シアノ酢酸エステル、α−シアノケトン類、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル等の1,3−ジケトン類等が挙げられる。
【0134】
また、光吸収剤(H)として、アリールピラゾロンとアリールアルデヒドとを縮合して得られるメチン染料類、アリールベンゾトリアゾール類、アミンとアルデヒドとの縮合物として得られるアゾメチン染料、クルクミン、キサントンなどの天然化合物等を用いることもできる。アリールヒドロキシ基を有する染料のキノンジアジドスルホン酸エステル化物やビスアジド化合物など、露光光を吸収すると同時にアルカリ現像液に対する溶解性を変化させたり、架橋反応する化合物を用いて現像特性を調整してもよい。
【0135】
さらに、光吸収剤(H)として、例えば、シアノビニルスチレン系化合物、1−シアノ−2−(4−ジアルキルアミノフェニル)エチレン類、p−(ハロゲン置換フェニルアゾ)−ジアルキルアミノベンゼン類、1−アルコキシ−4−(4′−N,N−ジアルキルアミノフェニルアゾ)ベンゼン類、ジアルキルアミノ化合物、1,2−ジシアノエチレン、9−シアノアントラセン、9−アントリルメチレンマロノニトリル、N−エチル−3−カルバゾリルメチレンマロノニトリル、2−(3,3−ジシアノ−2−プロペニリデン)−3−メチル−1,3−チアゾリンなどを用いることができる。
【0136】
市販されている染料の中で光吸収剤(H)として有用なものとしては、例えば、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルイエロー#117、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業株式会社製)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、ローダミンB(C.I.45170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等を挙げることができる。
前記1−シアノ−2−(4−ジアルキルアミノフェニル)エチレン類として、具体的には、1−カルボキシ−1−シアノ−2−(4−ジ−n−ヘキシルアミノフェニル)エチレン、1−カルボキシ−1−シアノ−2−(4−ジ−n−ブチルアミノフェニル)エチレン、1−カルボキシ−1−シアノ−2−(4−ジ−n−ヘプチルアミノフェニル)エチレンなどの1位にカルボキシル基を有する1−シアノ−2−(4−ジアルキルアミノフェニル)エチレン類が挙げられる。
【0137】
これらの1−シアノ−2−(4−ジアルキルアミノフェニル)エチレン類、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルイエロー#107などは、逆テーパー状のレジストパターンプロファイルの形成性に優れる点で特に好ましい。なお逆テーパ形状とは、感光性樹脂組成物をパターン形成したパターン構造物の断面形状が、基板から離間するにしたがって幅広になる形状を意味する。断面が逆テーパー状またはオーバーハング状のレジストパターンを形成する場合、光吸収剤(H)の使用量は、感光性樹脂組成物の膜厚や光吸収剤(H)の種類等に応じて適宜定めることができるが、一般に、膜厚が厚い場合には、光が透過し難いので比較的少なくてもよく、薄い場合には、比較的多く用いる。光吸収剤(H)は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜8重量部の割合で用いられる。断面が順テーパー状のレジストパターンを形成する場合は、逆テーパー状またはオーバーハング状のレジストパターンを形成する場合と比較して光吸収材(H)の使用量は少なく、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、未使用(0)〜0.1重量部未満の割合で用いられる。
【0138】
本発明の感光性樹脂組成物は界面活性剤(F)を含有してもよい。界面活性剤(F)としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、フッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。ただし、界面活性剤(F)は、フッ素系撥液剤(B)とは異なる構造の化合物を主成分とするものである。
【0139】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合を有する界面活性剤が挙げられる。
具体的には、トーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、ポリエーテル変性シリコーンオイルSH8400(商品名:東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0140】
フッ素系界面活性剤としては、フルオロカーボン鎖を有する界面活性剤が挙げられる。
具体的には、フロリナート(登録商標)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同R30(DIC(株)製)、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)、E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)等が挙げられる。
【0141】
フッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合及びフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤が挙げられる。具体的には、メガファック(登録商標)R08、同BL20、同F475、同F477、同F443(DIC(株)製)等が挙げられる。好ましくはメガファック(登録商標)F475が挙げられる。
【0142】
界面活性剤(F)の含有量は、感光性樹脂組成物に含まれる成分の合計量に対して、0.001重量%以上0.2重量%以下であり、好ましくは0.002重量%以上0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以上0.05重量%以下である。界面活性剤をこの範囲で含有することにより、塗膜の平坦性を良好にすることができる。
【0143】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、他の高分子化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、連鎖移動剤等の種々の添加剤を併用してもよい。
【0144】
本発明の感光性樹脂組成物は、顔料および染料などの着色剤を実質的に含有しない。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物において、組成物全体に対する着色剤の含量は、例えば、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。
【0145】
本発明の感光性樹脂組成物は、光路長が1cmの石英セルに充填し、分光光度計を使用して測定波長400〜700nmの条件下で透過率を測定した場合の平均透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0146】
本発明の感光性樹脂組成物は、塗膜にした際に、塗膜の平均透過率が、好ましくは90%以上であり、さらに95%以上となることがより好ましい。この平均透過率は、加熱硬化(例えば、100〜250℃、5分〜3時間の条件で硬化)後の厚みが3μmの塗膜を、分光光度計を使用して、測定波長400〜700nmの条件下で測定した場合の平均値である。これにより、可視光領域での透明性に優れた塗膜を提供することができる。
【0147】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、後述するように、基材、例えば、ガラス、金属、プラスチック等の基板、カラーフィルタ、各種絶縁又は導電膜、駆動回路等を形成したこれらの基板上に塗布することによって、塗膜として形成することができる。塗膜は、乾燥及び硬化したものであることが好ましい。また、得られた塗膜を所望の形状にパターニングして、パターン構造物として用いることもできる。さらにこれら塗膜又はパターンを、表示装置等の構成部品の一部として形成して使用してもよい。

【0148】
まず、本発明の感光性樹脂組成物を、基材上に塗布する。
塗布は、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター、インクジェット、ロールコーター、ディップコーター等の種々の塗布装置を用いて行うことができる。
【0149】
次いで、乾燥又はプリベークして、溶剤等の揮発成分を除去することが好ましい。これにより、平滑な未硬化塗膜を得ることができる。
【0150】
この場合の塗膜の膜厚は、特に限定されず、用いる材料、用途等によって適宜調整することができ、例えば、1〜6μm程度である。
【0151】
さらに、得られた未硬化塗膜に、目的のパターンを形成するためのフォトマスクを介して、光、例えば、水銀灯、発光ダイオードから発生する紫外線等を照射する。この際のフォトマスクの形状は特に限定されず、形状や大きさは、パターンの用途に応じて選択すればよい。
【0152】
近年の露光機では、350nm未満の光を、この波長域をカットするフィルタを用いてカットしたり、436nm付近、408nm付近、365nm付近の光を、これらの波長域を取り出すバンドパスフィルタを用いて選択的に取り出して、露光面全体に均一に略平行光線を照射したりすることができる。マスクアライナ、ステッパ等の装置を用いれば、このときマスクと基材との正確な位置合わせを行うことができる。
【0153】
露光後の塗膜を現像液に接触させて所定部分、例えば、非露光部を溶解させ、現像することにより、目的とするパターン形状を得ることができる。
【0154】
現像方法は、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等のいずれでもよい。さらに現像時に基材を任意の角度に傾けてもよい。
【0155】
現像に使用する現像液は、塩基性化合物の水溶液が好ましい。塩基性化合物は、無機及び有機の塩基性化合物のいずれでもよい。
【0156】
無機の塩基性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二アンモニウム、燐酸二水素アンモニウム、燐酸二水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0157】
有機の塩基性化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
【0158】
これらの無機及び有機の塩基性化合物の水溶液中の濃度は、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.03〜5重量%である。
【0159】
前記の現像液は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤のいずれでもよい。
【0160】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、その他のポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0161】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウムやオレイルアルコール硫酸エステルナトリウムのような高級アルコール硫酸エステル塩類、ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸アンモニウムのようなアルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0162】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ステアリルアミン塩酸塩やラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのようなアミン塩又は第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0163】
アルカリ現像液中の界面活性剤の濃度は、好ましくは0.01〜10重量%の範囲、より好ましくは0.05〜8重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0164】
現像後、水洗を行うことで、パターニングし、パターン構造物を得ることができる。さらに必要に応じて、ポストベークを行ってもよい。ポストベークは、例えば、150〜240℃の温度範囲、10〜180分間が好ましい。
【0165】
未硬化塗膜を露光する際に、パターンが形成されたフォトマスクを使用せず、全面に光照射を行うこと及び/又は現像を省略することで、パターンを有さない塗膜を得ることができる。
【0166】
このようにして本発明の感光性樹脂組成物から得られるパターン構造物は、高い耐熱性と撥液性を有し、パターンの形成部以外の残渣がない(または非常に少ない)ことから、特に、インクジェット法等の塗布型プロセスでカラーフィルタ、液晶表示素子のITO電極、有機EL表示素子及び回路配線基板等を作製するために用いられる隔壁として有用である。特に本発明の感光性樹脂組成物は、上記特性から有機EL素子を作製するための隔壁として好適に用いられる。
【0167】
有機EL素子を支持基板上に形成するために設けられる隔壁を、上記感光性樹脂組成物を用いて形成する隔壁形成プロセスについて、図3を参照して説明する。なお図3に示す隔壁のテーパー形状は、例示であり、必ずしも例示された形状である必要はなく、有機EL層を均一で平坦な膜厚の塗膜に形成できる構造であればよい。
【0168】
まず第1電極2が形成された支持基板1を用意する(図3(1))。次に、塗布プロセスによって感光性樹脂組成物11を支持基板1上に成膜し、プレベークを施す(図3(2))。その後、成膜した感光性樹脂組成物に対して、マスク10を介して隔壁を形成すべき部位にのみ選択的に光を照射する(図3(3))。さらに、現像し、ポストベークを施すことにより、隔壁3を形成する(図3(4))。
【0169】
なお、隔壁3は、単一の構成に限らず、たとえば図3に示す隔壁3上に、さらに隔壁3aを重ねて形成してもよい(図4参照)。これら重ね合わされた隔壁3,3aは、互いに同じ感光性樹脂組成物を用いて形成してもよく、また異なる感光性樹脂組成物を用いて形成してもよい。図4に示す隔壁のテーパー形状は、例示であり、必ずしも例示された形状である必要はなく、有機EL層を均一でな平坦な膜厚の塗膜にを形成できる構造であれば良よい。従って、積層された隔壁のテーパー形状は、同じまたはそれぞれ異なる形状をしていてもよい。
【0170】
このように隔壁を重ねて形成する場合には、例えば図3(4)で得られた支持基板において、さらに、感光性樹脂組成物を塗布成膜し、プレベークを施し(図4(2))、露光し(図4(3))、現像し、ポストベークを施すことにより、隔壁3aを形成する。
【0171】
つぎに有機EL表示装置として用いられる有機EL素子の構成について、例示説明する。
【0172】
<有機EL素子の構成>
有機EL素子は、有機EL層として少なくとも1層の発光層を有するが、有機EL層として、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などを有していてもよい。
【0173】
有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
以下同じ。)
なお上記では陽極として機能する第1電極が、第2電極に対して支持基板寄りに配置される形態の有機EL素子について説明したが、陰極として機能する第1電極が、第2電極に対して支持基板寄りに配置される形態の有機EL素子にも適用することができる。
【0174】
<支持基板>
支持基板には、有機EL素子を製造する工程において化学的に変化しないものが好適に用いられ、たとえばガラス、プラスチック、高分子フィルム、およびシリコン板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。
【0175】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って外界に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0176】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光に対する反射率の高い材料が好ましい。陰極には、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられることもある。
【0177】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法などを挙げることができる。
【0178】
陽極または陰極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。なお、陽極および陰極のうちで第2電極に相当する電極は、第2電極および前記有機EL層の界面と隔壁の頂面との、支持基板の厚み方向における間隔よりも、その膜厚が厚くなるように形成してもよい。
【0179】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0180】
正孔注入層の成膜方法としては、たとえば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。たとえば正孔注入材料を含む溶液を所定の塗布法によって塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔注入層を形成することができる。
【0181】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0182】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0183】
正孔輸送層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0184】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、たとえば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、塗布法によって発光層を形成する場合には、発光層は高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量はたとえば103〜108程度である。発光層を構成する発光材料としては、たとえば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0185】
(色素系材料)
色素系材料としては、たとえば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0186】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、たとえばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、たとえばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0187】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0188】
発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0189】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0190】
電子輸送層の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0191】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、およびこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、たとえばLiF/Caなどを挙げることができる。
【0192】
電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0193】
上述の各有機EL層は、たとえばノズルプリンティング法、インクジェットプリンティング法、凸版印刷法、凹版印刷法などの塗布型プロセスや、真空蒸着法、スパッタリング法、またはCVD法などによって形成することができる。
【0194】
なお塗布型プロセスでは、各有機EL層となる材料と溶媒を含むインクを塗布・成膜し、さらに、溶媒を蒸発させて、これを固化することによって有機EL層を形成するが、その際に使用されるインクの溶媒には、たとえばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水などが用いられる。
【実施例】
【0195】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、重量%及び質量部である。
【0196】
(合成例1)
還流冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中に、メタクリル酸30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、イソボルニルメタクリレート40部、2−スルファニルエタノール5.9部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート163部を入れ、70℃に加熱した後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにアゾビスイソブチロニトリル1.3部を添加し、18時間重合した。その後、2−イソシアナトエチルアクリレート(カレンズAOI;昭和電工(株)製)29.3部を入れ、全組成物に対して50ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを入れ、窒素気流下で45℃1時間反応させることにより、固形分34重量%の共重合体(アルカリ可溶性樹脂Ab)の溶液を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂Abの重量平均分子量(Mw)は4900であった。
【0197】
(合成例2)
還流冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にα−クロロアクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,6−ナノフルオロヘキシル78部、メタクリル酸19.5部、イソボルニルメタクリレート19.5部、グリシジルメタクリレート13部、ドデカンチオール12.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート266部を入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにアゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、18時間重合して、固形分33重量%、酸価68mg−KOH/g(固形分換算)の共重合体(フッ素系撥液剤Ba)の溶液を得た。得られた樹脂Baの重量平均分子量は7,500であった。
フッ素系撥液剤Baは、以下の構造単位を有する。

【0198】
(合成例3)
還流冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にα−クロロメタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル78部、メタクリル酸19.5部、イソボルニルメタクリレート19.5部、グリシジルメタクリレート13部、ドデカンチオール12.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート266部を入れ、70℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにアゾビスイソブチロニトリル1部を添加し、18時間重合して、固形分33重量%、酸価65mg−KOH/g(固形分換算)の共重合体(フッ素系撥液剤Bb)の溶液を得た。得られた樹脂Bbの重量平均分子量は6,800であった。
フッ素系撥液剤Bbは、以下の構造単位を有する。

【0199】
合成例1、2、3で得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、GPC法を用いて、以下の条件で行なった。
【0200】
装置;K2479((株)島津製作所製)
カラム;SHIMADZU Shim−pack GPC−80M
カラム温度;40℃
溶媒;THF(テトラヒドロフラン)
流速;1.0mL/min
検出器;RI
上記で得られたポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量の比(Mw/Mn)を分子量分布とした。
【0201】
(合成例4)
ポリp−ビニルフェノール(重量平均分子量6,000)90重量部と、m−クレゾール/p−クレゾールとを70/30(重量比)の仕込み比でホルムアルデヒドと脱水縮合して得たノボラック樹脂(重量平均分子量4,000)10重量部とからなるアルカリ可溶性樹脂Aaを得た。
【0202】
またポリp−ビニルフェノール(重量平均分子量6,000)60重量部と、m−クレゾール/p−クレゾールとを70/30(重量比)の仕込み比でホルムアルデヒドと脱水縮合して得たノボラック樹脂(重量平均分子量4,000)40重量部とからなるアルカリ可溶性樹脂Aa’を得た。
【0203】
<感光性樹脂の調整>
表3の組成を、固形分量が18.0%となるように溶剤Ea(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に混合して、表3記載のネガ型感光性樹脂組成物1、2、3を得た。
【0204】
【表3】

【0205】
表3中、実施例における各組成の数値は、感光性樹脂組成の固形分(A+C+D)を100質量部とした際の各組成の重量%(組成割合)を表す。比較例における各組成の数値は、感光性樹脂組成の固形分(A+B+C+G)を100質量部とした際の各組成の重量%(組成割合)を示す。
【0206】
各組成は以下の通りである。
【0207】
Ca:メラミン系樹脂架橋剤(三井サイテックス社製、サイメル303)
Cb:メラミン系樹脂架橋剤(三井サイテックス社製、サイメル300)
Ha;光吸収剤(染料)オリエント化学社製:オイルイエロー
Ga:テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化(株)製)
Gb:2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(光重合開始剤 イルガキュア127;BASFジャパン(株)製)
Gc:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(重合性化合物) A−TMMT;新中村化学工業(株)製)
【0208】
<組成物の透過率>
上記で得られた感光性樹脂組成物について、それぞれ、紫外可視近赤外分光光度計(V−650;日本分光(株)製)(石英セル、光路長;1cm)を用いて、400〜700nmにおける平均透過率(%)を測定した。結果を表4に示す。
【0209】
【表4】

【0210】
<塗膜の作製>
2インチ角のガラス基板(イーグルXG;コーニング社製)を、中性洗剤、水およびアルコールで順次洗浄してから乾燥した。このガラス基板上に、上記で得られた感光性樹脂組成物1、2、3をそれぞれ、ポストベーク後の膜厚が3.0μmになるようにスピンコートし、減圧乾燥機(マイクロテック(株)製)で減圧度が66kPaになるまで減圧乾燥させた後、ホットプレートで80℃で2分間プレベークして乾燥させた。冷却後、露光機(TME−150RSK;トプコン(株)製、光源;超高圧水銀灯)を用いて、大気雰囲気下、露光量50mJ/cm(365nm基準)の光を照射した。なお、このときの感光性樹脂組成物への照射は、超高圧水銀灯を使用した。光照射後、感光性樹脂組成物1、2は、110℃で60秒間ホットプレートでベークすることにより露光部を架橋させた。その後、非イオン系界面活性剤0.12%と水酸化カリウム0.04%を含む水系現像液に前記塗膜を23℃で60秒間浸漬・揺動して接触させ、その後、オーブン中、230℃で20分加熱(ポストベーク)して塗膜を得た。
【0211】
感光性樹脂組成物3については、露光量を500mJ/cm(365nm基準)に代えると共に、光照射後のベークは実施しないこと以外は上記と同様の方法で塗膜を得た。
【0212】
<塗膜の平均透過率>
得られた塗膜について、顕微分光測光装置(OSP−SP200;OLYMPUS社製)を用いて、400〜700nmにおける平均透過率(%)を測定した。透過率が高くなることは、吸収が小さくなることを意味する。
【0213】
<接触角>
得られた塗膜について、接触角計(DGD Fast/60;GBX社製)を用いて、アニソールとの接触角を測定した。測定結果を表5に示す。
【0214】
【表5】

【0215】
接触角が高いほど、撥液性が高いことを意味する。塗膜における接触角が高ければ、同じ感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターンにおいても接触角は高い。接触角の高い感光性樹脂組成物で隔壁を形成し、該隔壁で囲まれた中にインクジェット装置によりインクを印写した場合、インクをはじきやすい。そのため、例えばインクジェット法によりカラーフィルタを作製すると、隣り合う画素領域間におけるインクの混色が生じにくい。
【0216】
<耐熱性評価>
得られた塗膜を、クリーンオーブン中、240℃で1時間加熱し、膜厚及び透過率を測定した。加熱前後の膜厚及び400nmにおける透過率から、次式にしたがって、それぞれ変化率を求めた。
【0217】
膜厚変化率(%)=(加熱後の膜厚(μm)/加熱前の膜厚(μm))×100
透過率変化率(%)=(加熱後の透過率(%)/加熱前の透過率(%))×100
塗膜における耐熱性が良好であれば、同じ感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターンにおいても耐熱性は良好である。結果を表6に示す。
【0218】
【表6】

【0219】
<パターン形成>
2インチ角のガラス基板(イーグルXG;コーニング社製)を、中性洗剤、水およびアルコールで順次洗浄してから乾燥した。このガラス基板上に、感光性樹脂組成物1、2をそれぞれ、ポストベーク後の膜厚が3.5μmになるようにスピンコートし、減圧乾燥機(マイクロテック(株)製)で減圧度が66kPaになるまで減圧乾燥させた後、ホットプレートで80℃で2分間プレベークして乾燥させた。冷却後、この感光性樹脂組成物1、2、3をそれぞれ塗布した基板と石英ガラス製フォトマスクとの間隔を10μmとし、露光機(TME−150RSK;トプコン(株)製、光源;超高圧水銀灯)を用いて、大気雰囲気下、露光量50mJ/cm(365nm基準)の光を照射した。なお、このときの感光性樹脂組成物への照射は、超高圧水銀灯からの放射光を、光学フィルタ(UV―33;朝日分光(株)製)を通過させて行った。また、フォトマスクとして、パターン(1辺が13μmである複数の正方形の透光部を有し、当該正方形の間隔が100μm)(すなわち透光部)が同一平面上に形成されたフォトマスクを用いた。
【0220】
光照射後、感光性樹脂組成物1、2は、110℃で60秒間ホットプレートでベークすることにより露光部を架橋させた。その後、非イオン系界面活性剤0.12%と水酸化カリウム0.04%を含む水系現像液に前記塗膜を25℃で100秒間浸漬・揺動して現像し、水洗後、オーブン中、235℃で15分間ポストベークを行い、パターンを得た。
【0221】
感光性樹脂組成物3について、露光量を500mJ/cm(365nm基準)に代えると共に、光照射後のベークは実施しない以外は上記と同様の方法で塗膜を得た。
【0222】
<パターン部以外の残渣の「有無」の判定>
上記で形成したパターン構造物からなる隔壁に囲まれた領域に、インクジェット装置(ULVAC製Litrex142P)で純水とアニソールとを充填した。隔壁と、隔壁に囲まれた領域との境界部ではじきが発生していないか顕微鏡観察した。実施例である感光性樹脂組成物1、2から得られた隔壁にははじきが発生せず、比較例である感光性樹脂組成物3から得られた隔壁にははじきが発生した。
【0223】
実施例の結果から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物からは、耐熱性に優れた塗膜及びパターン部以外の残渣がない(非常に少ない)パターンを形成することできることがわかる。
【符号の説明】
【0224】
1 支持基板
2 第1電極
3,3a 隔壁
4 EL層
5 隔壁に囲まれた領域
6 インク
7 第2電極
10 マスク
11 感光性樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶解性樹脂(A)、フッ素系撥液剤(B)、架橋剤(C)、および酸発生剤(D)を含む感光性樹脂組成物であり、
フッ素系撥液剤が、炭素原子数4〜6のフルオロアルキル基を有する不飽和化合物由来の構造単位を含む付加重合体であり、その添加割合が、全固形分に対して0.01〜1.0重量%であるネガ型の感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに溶剤(E)を含む請求項1記載の感光剤樹脂組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂(A)がフェノール樹脂を含む請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
アルカリ可溶性樹脂(A)が、ノボラック樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項5】
フッ素系撥液剤(B)が、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を含む付加重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
フッ素系撥液剤(B)が、炭素原子数2〜4の環状エーテル構造を有する不飽和化合物由来の構造単位を含む付加重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターン構造物。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン構造物を含む表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載のパターン構造体を含むインクジェット用の隔壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−108499(P2012−108499A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234721(P2011−234721)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】