説明

感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、パターン膜、反射防止膜、絶縁膜、光学デバイス及び電子デバイス

【課題】誘電率が低く、かつ、ヤング率及び耐熱性が高いパターン膜(以上、例えば、半導体素子デバイス等における層間絶縁膜に適した性能)を、高解像度で形成可能な感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、及び、パターン膜を提供する。更に、該感光性組成物を用いて製造される反射防止膜及び絶縁膜、並びに、これらを用いた光学デバイス及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体と、(B)SiH結合を有する化合物と、(C)光重合開始剤とを含有する感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、パターン膜、反射防止膜、絶縁膜、光学デバイス及び電子デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する、感光性組成物、並びに、該感光性組成物を用いたパターン形成方法及び膜に関するものである。更に詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料や光学デバイスにおける反射防止膜などとして有用な、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能で、かつ、解像度、誘電率特性、屈折率特性などに優れたパターン膜を製造することができる感光性組成物、感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、パターン膜、反射防止膜、絶縁膜、光学デバイス及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体素子などにおける層間絶縁膜としては、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0003】
しかし、無機材料の膜の中で最も低い誘電率を示すCVD−SiO膜でも、比誘電率は約4程度である。また、低誘電率CVD膜として最近検討されているSiOF膜の比誘電率は約3.3〜3.5であるが、この膜は吸湿性が高く、使用しているうちに誘電率が上昇するという問題がある。
【0004】
かかる状況下、絶縁性、耐熱性、耐久性に優れた絶縁膜材料として、オルガノポリシロキサンに高沸点溶剤や熱分解性化合物を添加して空孔を形成し、誘電率を下げる方法が提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、このような多孔質膜では、多孔化することにより誘電率特性が下がっても、機械強度が低下すること、吸湿による誘電率増加がおこることなどが問題になっていた。また、互いに連結した空孔が形成されるため、配線に用いられた銅が、絶縁膜中に拡散するといった問題が生じていた。
【0005】
一方、有機ポリマーに低分子のカゴ型化合物を添加した溶液を塗布することによって、低誘電率、低密度の膜を得る試みも知られている(特許文献1参照)。しかし、カゴ型化合物単量体を添加する方法では、得られる膜の誘電率及びヤング率などの諸特性が実用的な観点からは必ずしも満足いくものではなく、更に塗布面状悪化などの問題点があった。
【0006】
このような誘電特性に加え、更には製造工程の煩雑さなど多くの課題解決が望まれている。特許文献2及び3には製造工程の煩雑性を解消するため、フォトレジストを用いないパターニング方法として、感光性を備えたシリカ系材料を用いて、それ自体を露光・現像してパターンを形成する方法が記載されているが、未だ不十分な点が多く改善が望まれている。
具体的には、特許文献2にはダブルデッカー型POSS重合体によるネガ型レジストが記載されているが、パターン形成における解像度が不充分であるとともに、得られるパターンの誘電率も不充分である。
また、特許文献3にはゾルゲル重合体によるレジストが記載されているが、パターン形成における解像度が不充分であるとともに、得られるパターンの低誘電率性も不充分である。
更に、特許文献4の実施例には、特定の構造を有するカゴ型ケイ素化合物から誘導されたポリシルセスキオキサンポリマーと、感光性金属錯体とを含有する溶液を用いて、膜を形成し、この膜に対して、露光及び現像を行うことにより、ゾルゲル縮合反応を利用してパターンを形成する技術が知られている。しかしながら、照射露光量は非常に大きく低感度な感光膜であり、得られるパターンの屈折率の低屈折率性、及び誘電率の低誘電率性は不充分である。更に金属触媒を用いていることから適用可能なデバイスも大きく制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−334881号公報
【特許文献2】特開2009−215423号公報
【特許文献3】米国特許公開2009/291389号明細書
【特許文献4】特開2007−298841号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chem.Rev.56,2010,110,56〜110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、誘電率が低く、かつ、ヤング率及び耐熱性が高いパターン膜(以上、例えば、半導体素子デバイス等における層間絶縁膜に適した性能)を、高解像度で形成可能な感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、及び、パターン膜を提供することを目的とする。
更に、本発明は、該感光性組成物を用いて製造される反射防止膜及び絶縁膜、並びに、これらを用いた光学デバイス及び電子デバイスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0011】
[1]
(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体と、
(B)SiH結合を有する化合物と、
(C)光重合開始剤と
を含有する感光性組成物。
[2]
前記光重合開始剤が、非金属性の光重合開始剤である、上記[1]に記載の感光性組成物。
[3]
前記光重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤である、上記[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
[4]
前記(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体が、下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(RSiO1.5 式(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。aは8〜16の整数を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。)
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
[5]
ネガ型の組成物である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
[6]
前記光重合開始剤が、オキシム化合物である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
[7]
前記かご状シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記[4]〜[6]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)の各々において、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。)
[8]
前記重合体中の前記重合性基の含有量が、ケイ素原子に結合した全有機基中、10〜90モル%である、上記[4]〜[7]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
[9]
前記重合体の重量平均分子量が1万〜50万である、上記[4]〜[8]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
[10]
上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の感光性組成物であるパターン形成材料。
[11]
上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の感光性組成物により形成される感光性膜。
[12]
上記[11]に記載の感光性膜を形成する工程、前記感光性膜を露光する工程、及び、現像してパターン膜を得る現像工程を含むパターン形成方法。
[13]
前記現像工程が有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程である上記[12]に記載のパターン形成方法。
[14]
前記有機溶剤を含む現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤である、上記[13]に記載のパターン形成方法。
[15]
上記[12]〜[14]のいずれか1項にパターン形成方法により得られるパターン膜。
[16]
屈折率が1.35以下である上記[15]に記載のパターン膜。
[17]
25℃における比誘電率が2.50以下である上記[15]又は[16]に記載のパターン膜。
[18]
上記[15]〜[17]のいずれか1項に記載のパターン膜である反射防止膜。
[19]
上記[15]〜[17]のいずれか1項に記載のパターン膜である絶縁膜。
[20]
上記[18]に記載の反射防止膜を有する光学デバイス。
[21]
上記[19]に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【0015】
本発明は、更に、下記構成であることも好ましい。
[22] 前記SiH結合を有する化合物が、下記一般式(B−1)で表される化合物である、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
HSiR (B−1)
一般式(B−1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R、R、及びRの少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。
[23]
前記SiH結合を有する化合物が、シロキサン結合を少なくとも1つ有する化合物である、上記[1]〜[8]及び[22]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
[24]
前記SiH結合を有する化合物が、直鎖状ポリシロキサンである、上記[23]に記載の感光性組成物。
[25]
露光により、ラジカル重合反応又はカチオン重合反応が進行する、上記[1]〜[8]及び[22]〜[24]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電率が低く、かつ、ヤング率及び耐熱性が高いパターン膜(以上、特に、半導体素子デバイス等における層間絶縁膜に適した性能)を、高解像度で形成可能な感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法及びパターン膜を提供できる。
更に、本発明によれば、前記感光性組成物を用いて製造される反射防止膜及び絶縁膜、並びに、これらを用いた光学デバイス及び電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に記述する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0018】
本発明の感光性組成物は、(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体と、(B)SiH結合を有する化合物と、(C)光重合開始剤とを含有する。(A)としては側鎖にかご状シルセスキオキサンを有する繰り返し単位と重合性基を含有する重合体、又は主鎖or側鎖にかご状シルセスキオキサンを有し、かご状シルセスキオキサン上の置換基として重合性基を有している重合体が好ましい。より好ましくは、本発明の感光性組成物は、(A)後述する平均組成式で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体と、(B)SiH結合を有する化合物と、(C)光重合開始剤とを含有する。ただし、この重合体には、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
【0019】
本発明の感光性組成物を用いることによって、本発明の感光性組成物に含有される重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体(好ましくは、かご状シルセスキオキサン化合物の重合体)の構造が、塗布面状が良好で、誘電率が低く、かつ、ヤング率が高いパターン膜を形成できることに大きく寄与しているものと考えられる。
また、重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体(好ましくは、かご状シルセスキオキサン化合物より得られる重合体)と光重合開始剤とを含有する本発明の感光性組成物により膜を形成した後に、該膜に露光を行うことで、前記重合体中の残存重合性基による反応が進行し、露光部が硬化する。次いで、有機溶剤を用いた現像工程を行うことにより、未露光部が除去されて、パターンを形成することができる。
【0020】
本発明に係る感光性組成物は、典型的にはネガ型の組成物(ネガパターンを形成する組成物)である。
また、本発明は、上記感光性組成物であるパターン形成材料にも関する。
【0021】
先ず、組成物に含まれる重合体の原料である化合物(好ましくはシルセスキオキサン類)について説明する。その後、該化合物(好ましくはシルセスキオキサン類)から製造される重合体、及びその製造方法について詳述する。
【0022】
[1]重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体の原料である化合物
本発明の(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体における重合性基としては、特に限定されず、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基などが挙げられる。より具体的には、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基などのカチオン重合性基や、アルケニル基、アルキニル基、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステルなどのラジカル重合性基が好ましい。なかでも、合成が容易であり、重合反応が良好に進行する点から、ラジカル重合性基が好ましく、アルケニル基又はアルキニル基がより好ましい。
【0023】
なお、アルケニル基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。なかでも、炭素数2〜12が好ましく、更に炭素数2〜6が好ましい。例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられ、重合制御性の容易さ、機械強度の観点から、ビニル基が好ましい。
アルキニル基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基の任意の位置に3重結合を有する基が挙げられる。なかでも、炭素数2〜12が好ましく、更に炭素数2〜6が好ましい。重合制御性の容易さの観点から、エチニル基が好ましい。
【0024】
シルセスキオキサン構造とは、各ケイ素原子が3個の酸素原子と結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子と結合している構造(RSiO1.5、珪素原子数に対する酸素原子数が1.5。Rは、有機基を表す。)である。より具体的には、RSiO1.5ユニットが別のRSiO1.5ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結している構造である。本発明の前記(A)重合体が有するかご状シルセスキオキサン構造とは、前述のシルセスキオキサン構造がかご状構造である。なお、かご状構造は、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような構造を指す。
【0025】
重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体の原料である化合物としては、かご状シルセスキオキサン構造を有すると共に、重合反応後に重合性基が残存するように重合性基を有する化合物(i)であれば特に限定されない。重合反応後に重合性基が残存するように重合性基を有する化合物が、かご状シルセスキオキサン構造を有さない化合物(ii)である場合には、重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する化合物(iii)と共に原料として重合に供される。ここで、化合物(iii)が有する重合性基は、重合後に残存していてもしていなくてもよい。また前述の化合物(i)〜(iii)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、重合性基を有する化合物(iv)が原料として使用可能である。なお、化合物(iv)が有する重合性基は、重合後に残存しない。
【0026】
本発明の感光性組成物に含まれる、重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体の原料である化合物は、以下に説明するシルセスキオキサン類であることが、組成物から得られる膜の低誘電率性、ヤング率、解像性、耐熱性の観点で好ましい。
【0027】
シルセスキオキサン類
<かご状シルセスキオキサン化合物>
シルセスキオキサンとは、前述のシルセスキオキサン構造を有する化合物である。なお、かご状構造は、前述の構造を指す。
本発明のシルセスキオキサン類は、下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるため、該重合体を用いた膜がより低屈折率となると共に、優れた低屈折率性、耐熱性、耐湿性などを示す。なお、複数種(2種以上)のかご状シルセスキオキサン化合物を使用する場合は、同じかご形状の化合物を2種使用してもよいし、異なるかご形状の化合物をそれぞれ1種ずつ使用してもよい。
(RSiO1.5 式(1)
【0028】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
式(1)中、aは8〜16の整数を表す。aは8、10、12、14又は16の整数がより好ましい。得られる膜がより優れた低屈折率性及び耐熱性を示す点より、aが8、10、12であることが好ましく、更に重合制御性の観点から、8がより好ましい。
【0029】
上記かご状シルセスキオキサン化合物の好適態様としては、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物が挙げられる。なかでも、入手性、重合制御性、溶解性の観点から、一般式(Q−6)で表される化合物が最も好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
(一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)の各々において、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。)
【0033】
Rの有機基としては、重合性基、及び、非重合性基を挙げることができる。
重合性基としては、特に限定されず、前述の(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体における重合性基と同様のものが挙げられ、その好ましい範囲も同様である。
【0034】
非重合性基とは、上述した重合性を有さない基を指し、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、又はそれらを組み合わせた基などが挙げられる。なかでも、感光性膜が優れた現像性を示す点、及び、得られるパターン膜が優れた低屈折率性及び耐熱性を示す点から、アルキル基又はシクロアルキル基が好ましい。
【0035】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基である。アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子を有していてもよい。アルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基などが挙げられる。
なお、アルキル基の好ましい態様の一つとして、得られる膜がより低屈折率性を示す点から、フッ素原子を有するアルキル基(フッ素化アルキル基)が好ましい。フッ素化アルキル基とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基などが挙げられる。
【0036】
シクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、多環でもよく、環内に酸素原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0037】
アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0038】
アラルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基が挙げられる。
【0039】
アルコキシ基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基などが挙げられる。
【0040】
ケイ素原子含有基は、ケイ素が含有されていれば特に制限されないが、一般式(2)で表される基が好ましい。
*−L−Si−(R20 (2)
一般式(2)中、*はケイ素原子との結合位置を表す。Lはアルキレン基、−O−、−S−、−Si(R21)(R22)−、−N(R23)−又は、これらを組み合わせた2価の連結基を表す。Lは、アルキレン基、−O−又は、これらを組み合わせた2価の連結基が好ましい。
アルキレン基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。R21、R22、R23及びR20は、それぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基を表す。R21、R22、R23及びR20で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基の定義は、上述の定義と同じであり、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
ケイ素原子含有基としては、シリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)が好ましい。
【0041】
式(1)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物は、下記平均組成式(3)で表されることが好ましい。
(RSiO1.5(RSiO1.5 式(3)
(式(1)中、Rは、重合性基を表す。Rは、非重合性基を表す。ここで重合性基、非重合性基は上と同義である。xは2.0〜14.0の数を表し(2.0≦x≦14.0)、yは0〜14.0の数を表す(0≦y≦14.0)。ただし、x+y=8〜16を満たす。なお、複数のR及びRは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
式(3)中、xは2.0〜14.0の数を表し、得られる膜がより優れた低屈折率性、耐熱性、耐光性、及び硬化性を示す点より、xは2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。
式(3)中、yは0〜14.0の数を表し、得られる膜がより優れた低屈折率性、耐熱性及び塗布性を示す点より、yは0〜12.0が好ましく、0〜10.0が更に好ましく、0〜7.5がより好ましく、0〜5.0が最も好ましい。
【0043】
式(3)中、x+y=8〜16を満たし、得られる膜がより優れた低屈折率、耐熱性、吸湿性、及び保存安定性を示す点より、x+y=8〜14が好ましく、x+y=8〜12がより好ましく、x+y=8〜10が更に好ましい。
更に、式(3)中、xの割合(x/x+y)は0.1≦(x/x+y)≦1.0を満たすことが好ましく、得られる膜がより優れた低屈折率性、耐熱性、及び機械強度を示す点より、0.2≦(x/x+y)≦1.0がより好ましく、0.3≦x/y≦1.0が更に好ましい。
【0044】
<シルセスキオキサン類の好適態様>
シルセスキオキサン類の好適態様の一つとして、得られる膜がより優れた低屈折率性及び耐熱性を示す点から、式(3)においてxが2.0≦x≦8.0の範囲の数を表し(好ましくは3.0≦x≦8.0)、yが0≦y≦6.0の範囲の数を表し(好ましくは0≦y≦5.0)、x+y=8を表し、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T8型)より構成される。例えば、8つの重合性基を有するかご状シルセスキオキサン化合物と、4つの重合性基及び4つの非重合性基を有するかご状シルセスキオキサン化合物との混合物であってもよい。
【0045】
シルセスキオキサン類の他の好適態様として、式(3)においてxが2.0≦x≦10.0の範囲の数を表し(好ましくは3.0≦x≦10.0)、yが0≦y≦8.0の範囲の数を表し(好ましくは0≦y≦7.0)、x+y=10を表し、上記一般式(Q−2)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物及び/又は一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の、上記一般式(Q−2)又は一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T10型)より構成される。
【0046】
シルセスキオキサン類の他の好適態様として、式(3)においてxが2.0≦x≦12.0の範囲の数を表し(好ましくは3.0≦x≦12.0)、yが0≦y≦10.0の範囲の数を表し(好ましくは0≦y≦9.0)、x+y=12を表し、上記一般式(Q−1)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物及び/又は一般式(Q−3)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の、上記一般式(Q−1)又は一般式(Q−3)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T12型)より構成される。
【0047】
シルセスキオキサン類の他の好適態様として、式(3)においてxが2.0≦x≦14.0の範囲の数を表し、yが0≦y≦12.0の範囲の数を表し、x+y=14を表し、上記一般式(Q−4)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の上記一般式(Q−4)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T14型)より構成される。
【0048】
シルセスキオキサン類のその他の好適態様の一つとして、少なくとも3つの重合性基と、少なくとも3つの非重合性基とを有するかご状シルセスキオキサン化合物(以下、化合物(A)とも言う)を含むシルセスキオキサン類が挙げられる。すなわち、該化合物(A)は、式(3)中のRのうち少なくとも3つが重合性基を表し、更にRのうち少なくとも3つが非重合性基を表す化合物である。該化合物(A)を含有することにより、より低屈折率で耐熱性に優れるパターン膜を得ることができる。
この形態において、かご状シルセスキオキサン化合物(A)は、3つ以上の重合性基と3つ以上の非重合性基を有していてもよい。
化合物(A)の構造は特に限定されないが、上述した一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物であることが好ましい。
例えば、一般式(Q−6)で表される化合物においては、3〜5つの重合性基と3〜5つの非重合性基を有し、両者の総数が8である化合物が化合物(A)に該当する。
また、一般式(Q−2)又は一般式(Q−7)で表される化合物においては、3〜7つの重合性基と3〜7つの非重合性基とを有し、両者の総数が10である化合物が化合物(A)に該当する。
また、一般式(Q−4)で表される化合物においては、3〜11つの重合性基と3〜11つの非重合性基とを有し、両者の総数が14である化合物が化合物(A)に該当する。
【0049】
全シルセスキオキサン類中における上記した化合物(A)の含有量は、特に制限されないが、得られる膜の諸特性がより優れる点より、シルセスキオキサン類全量に対して、10モル%以上であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましく、60〜100モル%以上であることが更に好ましい。特に、シルセスキオキサン類が化合物(A)のみによって構成され、他のかご状シルセスキオキサン化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
【0050】
上述したシルセスキオキサン類は、通常、かご状シルセスキオキサン化合物から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他のポリシロキサン化合物(ラダー型シルセスキオキサン化合物など)を含んでいてもよい。
【0051】
以下に、シルセスキオキサン類の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、表1中の置換基比率は、式(3)中のx/yに該当する。
【0052】
【表1】

【0053】
本発明で使用されるかご状シルセスキオキサン化合物は、アルドリッチ、Hybrid Plastics社から購入できるものを使用してもよいし、Polymers, 20, 67-85, 2008, Journal of Inorganic and Organometallic Polymers, 11(3), 123-154, 2001, Journal of Organometallic Chemistry, 542, 141-183, 1997, Journal of Macromolecular Science A. Chemistry, 44(7), 659-664, 2007, Chem. Rev., 95, 1409-1430, 1995, Journal of Inorganic and Organometallic Polymers, 11(3), 155-164, 2001, Dalton Transactions, 36-39, 2008, Macromolecules, 37(23), 8517-8522, 2004, Chem. Mater.,8, 1250-1259, 1996などに記載の公知の方法で合成してもよい。
【0054】
[2](A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体
(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体としては、前述の重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する限り特に限定されない。
(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体としては、前述の式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体であることが、組成物から得られる膜の低誘電率性、ヤング率、解像性、耐熱性の観点で好ましい。ここで、この重合体には、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
【0055】
シルセスキオキサン類の重合体
以下に、上述したシルセスキオキサン類を原料として得られる重合体の物性値、及びその製造方法について詳述する。
【0056】
重合体の重量平均分子量(M)は特に限定されないが、1.0×10〜50×10であることが好ましく、3.5×10〜40×10であることがより好ましく、5.0×10〜35×10であることが最も好ましい。
重合体の数平均分子量(M)は特に限定されないが、1.5×10〜35×10であることが好ましく、1.5×10〜20×10であることがより好ましく、2.5×10〜15×10であることが最も好ましい。
重合体のZ+1平均分子量(MZ+1)は特に限定されないが、1.5×10〜65×10であることが好ましく、2.5×10〜50×10であることがより好ましく、3.5×10〜35×10であることが最も好ましい。
上記範囲の重量平均分子量及び数平均分子量に設定することにより、有機溶媒に対する溶解性及びフィルターろ過性が向上し、保存時のパーティクルの発生が抑制でき、塗布膜の面状が改善された、低屈折率である膜を形成することができる。
【0057】
有機溶媒に対する溶解性、フィルターろ過性、及び塗布膜面状の観点から、重合体は分子量300万以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200万以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100万以上の成分を含まないことが最も好ましい。
【0058】
重合体には、かご状シルセスキオキサン化合物由来の未反応の重合性基が残存している。
かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基のうち、10〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、20〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、30〜90モル%が未反応で残存していることが最も好ましい。上記範囲内であれば、本発明の感光性組成物から形成される膜の現像性が充分に得られるとともに、得られるパターン膜の耐熱性、硬化性、機械強度がより向上する。
これらについては、H−NMRスペクトル等から定量することができる。
【0059】
上述した重合体は、上記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類を主成分とする重合体である。該重合体中、重合性基の含有量は特に限定されないが、ケイ素原子に結合した全有機基中(すなわち、上記式(1)におけるRに対応する基の全てに対して)、好ましくは5〜90モル%であり、より好ましくは10〜90モル%であり、更に好ましくは10〜80モル%である。上記範囲内であれば、本発明の感光性組成物から形成される膜の現像性が充分に得られるとともに、得られるパターン膜の耐熱性、機械強度がより向上する。これらについても、H−NMRスペクトル等から定量することができる。
【0060】
なお、重合体中、かご状シルセスキオキサン化合物由来の構造が、10〜100質量%含まれていることが好ましく、20〜100質量%含まれていることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる膜の耐熱性、低屈折率性、及び透明性がより向上する。
【0061】
また、重合体は、実質的には芳香族基を有さないことが好ましく、これにより、優れた低屈折率性をより確実に発現することができる。具体的には、重合体のケイ素原子に結合した全有機基に対して(すなわち、上記式(1)におけるRに対応する基の全てに対して)、芳香族基の含有量は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%(すなわち、重合体が芳香族基を有さない)である。
重合体は、1種を単独で用いても良く、あるいは、2種以上を併用しても良い。
【0062】
<シルセスキオキサン類の重合体の製造方法>
重合体を製造するための方法としては、得られる重合体に前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存すれば、特に制限されず、例えば、重合性基の重合反応、ハイドロシリレーション反応が挙げられる。
重合性基の重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
【0063】
ハイドロシリレーション反応は、例えば、上記のかご状シルセスキオキサン化合物と、それに加えて、分子内に2個以上のSiH基を含む化合物(例えばビス(ジメチルシリル)エタン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなど)を有機溶媒(例えばトルエン、キシレンなど)に溶解し、触媒(例えば、Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3− tetramethyl disiloxane complexなど)を添加して20〜200℃で加熱する、などの方法で行うことができる。
【0064】
上記重合体を製造するための方法としては、重合性基を介した重合反応が好ましく、ラジカル重合が最も好ましい。合成方法としては、上記シルセスキオキサン類及び開始剤を溶媒に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、シルセスキオキサン類を溶媒に溶解させ加熱し、開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法(連続添加)、開始剤を複数回分割して加える分割添加重合法(分割添加)などが挙げられる。膜強度及び分子量再現性がより改善される点で、分割添加及び連続添加が好ましい。
【0065】
重合反応の反応温度は、通常0℃〜200℃であり、好ましくは40℃〜170℃、更に好ましくは80℃〜160℃である。
また、酸による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0066】
重合時の反応液中のシルセスキオキサン類の濃度は、反応液全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。上記濃度範囲に設定することにより、ゲル化成分などの不純物の生成を抑制することができる。
【0067】
上記重合反応で使用する溶媒は、シルセスキオキサン類が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成される膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。以下の記述において、例えば、エステル系溶媒とは分子内にエステル基を有する溶媒のことである。
溶媒としては、例えば、特開2008−218639号公報の段落番号[0038]に記載の溶媒を用いることができる。
これらの中でより好ましい溶媒は、エステル系溶媒、エーテル系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒であり、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、t−ブチルベンゼンが好ましく、特に好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応時に重合開始剤を分解させるのに必要な温度まで反応液を加温できるために、溶媒の沸点は65℃以上であることが好ましい。
【0068】
上記溶媒のなかでも、得られる重合体の重合制御がし易く、かつ、得られる膜の諸特性がより優れる点から、連鎖移動定数(Cx)が0<Cx≦5.0×10である溶媒を使用することが特に好ましい。
また、溶媒の好ましいSP(溶媒度パラメータ)値としては、得られる重合体の重合制御がし易く、かつ、得られる膜の諸特性がより優れる点から、10〜25(MPa1/2)が好ましく、15〜25(MPa1/2)がより好ましい。ここで、SP値は、例えば、Polymer Handbook Fourth Edition Volume2(A John Wiley&Sons, Inc., Publication)J. BRANDRUP, E. H. IMMERGUT and E. A. GRULKE(1999) p.675〜714に記載の方法を用いて得られる値である。
【0069】
シルセスキオキサン類の重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤の存在下で重合することができる。
重合開始剤としては、特に、有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。有機過酸化物及び有機アゾ系化合物としては、特開2008−239685号公報の段落番号[0033]〜[0035]に記載の化合物を使用することができる。
【0070】
重合開始剤としては、試薬自体の安全性及び重合反応の分子量再現性から、有機アゾ系化合物が好ましく、なかでも重合体中に有害なシアノが取り込まれないV−601などのアゾエステル化合物が好ましい。
重合開始剤の10時間半減期温度は、100℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下であれば、重合開始剤を反応終了時に残存しないようにすることが容易である。
重合開始剤は1種のみ、又は2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、シルセスキオキサン類1モルに対して、好ましくは0.0001〜2モル、より好ましくは0.003〜1モル、特に好ましくは0.001〜0.5モルである。
【0071】
以上に述べたような条件で重合体を合成することにより、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存した重合体を好適に得ることができる。
また、得られる重合体において、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基のうち、未反応で残存する重合性基の含有量は、上記した、重合性基の重合反応の反応温度や重合時の反応液中のシルセスキオキサン類の濃度等の諸条件を、適宜、変更することにより、変更可能である。
【0072】
シルセスキオキサン類の重合反応を行った反応液をそのまま塗布液として用いてもよいが、反応終了後、精製処理を実施することが好ましい。精製の方法としては、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過、遠心分離処理、カラムクロマトグラフィー等の溶液状態での精製方法や、重合体溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体を貧溶媒中に凝固させ、残留単量体等を除去する再沈澱法や、ろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法など通常の方法を適用できる。
例えば、上記重合体が難溶又は不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、重合体含有溶液に接触させることにより重合体を固体として析出させる。重合体溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該重合体の貧溶媒であればよく、重合体の種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0073】
シルセスキオキサン類の重合体及びその製造工程において、必要以上の重合を抑制するために重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の例としては、4−メトキシフェノール、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、カテコールなどが挙げられる。
【0074】
[3]感光性組成物
本発明の感光性組成物は、上述した重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体(好ましくは、上述した所定の平均組成式で表される1種又は2種以上のシルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体(ただし、上記したように、重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。))を含有する。
本発明の感光性組成物は、露光により、ラジカル重合反応又はカチオン重合反応が進行する組成物であることが硬化性及び保存安定性の観点で好ましい。
なお、本発明の組成物は、重合体が溶媒(例えば、有機溶媒)に溶解した溶液であってもよいし、重合体を含む固形物であってもよい。
本発明の組成物は、種々の用途に用いることができ、その目的に応じて重合体の含有量や添加する添加剤などの種類が決められる。用途としては、例えば、膜(例えば、絶縁膜)を製造するためや、低屈折率膜(例えば、反射防止膜)、低屈折率材料、ガス吸着材料、レジスト材料などが挙げられるが、絶縁膜、反射防止膜であることが好ましい。
【0075】
組成物中における上記重合体の含有量は、特に限定されないが、後述する膜形成に使用する場合には、全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、最も好ましくは70質量%以上である。最大値としては98質量%である。固形分中のこれらの含量が大きいほど、塗布面状が改善した膜を形成することができる。なお、固形分とは、後述する膜を構成する固形成分を意味し、溶媒などは含まれない。
【0076】
本発明の組成物は、溶媒を含有していてもよい。つまり、重合体を適当な溶媒に溶解させて、支持体上に塗布して使用することが好ましい。
溶媒としては、25℃で重合体を5質量%以上溶解する溶媒が好ましく、10質量%以上がより好ましい。具体的には、特開2008−214454号公報の段落番号[0044]に記載の溶媒を使用することができる。
上記の中でも、好ましい溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:別名1−メトキシ−2−プロパノール)、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0077】
組成物が溶媒を含む場合、組成物中の全固形分濃度は、組成物全量に対して、好ましくは1〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。上記範囲内であれば、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、塗布液の保存安定性もより優れるものとなる。
【0078】
組成物中には、不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。組成物中の金属濃度はICP−MS法等により高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0079】
以下、本発明の感光性組成物の各成分について詳細に説明する。
【0080】
[3−1]SiH結合を有する化合物
本発明の感光性組成物は、(B)SiH結合を有する化合物(以下、単に“化合物(B)”ともいう)を含有する。
SiH結合を有する化合物とは、化合物中にケイ素−水素結合(SiH結合)を少なくとも1つ有する化合物であり、SiH結合を少なくとも1つ有する化合物である限り特に限定されない。
詳細な機構は定かではないが、本発明の感光性組成物において、後述する(C)光重合開始剤が生成する活性ラジカル等の活性種が、(B)SiH結合を有する化合物に作用することにより、化学的に高い活性を有するSiH結合が活性化され、SiH結合が開裂するとともに前記活性種がSiH結合を有する化合物に移動すると考えられる。本発明の感光性組成物においては、SiH結合を有する化合物が、酸素などの阻害種による阻害を受けず、活性種を前記(A)重合体の残存重合性基に効率的に伝達することにより、SiH結合を有する化合物を含まない感光性組成物と比べて、前記(A)重合体の残存重合性基の重合反応を促進するものと推定される。また、SiH結合を1つ有する化合物は前記(A)重合体の残存重合性基による重合の末端に組み込まれ、SiH結合を2つ以上有する化合物は前記(A)重合体の残存重合性基による重合における架橋剤として機能することが推定される。
以上のように、(B)SiH結合を有する化合物が、本発明の感光性組成物中に存在する活性ラジカル等の活性種を前記(A)重合体の残存重合性基に効率的に伝達する機能を果たすと共に、低誘電率性及び耐熱性に優れるケイ原子を有する化合物を使用することにより、得られるパターンの低誘電率性及び耐熱性を維持しつつ、ヤング率及び解像性を向上することが可能となると推定される。
【0081】
SiH結合を有する化合物は、下記一般式(B−1)で表される化合物であることが好ましい。
HSiR (B−1)
一般式(B−1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R、R、及びRの少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。R〜Rが置換基を表す場合、R〜Rで表される置換基中にSiH結合を有していてもよい。
【0082】
、R及びRで表される置換基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、ケイ素原子含有基、又はそれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0083】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基である。アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子を有していてもよい。アルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基などが挙げられる。
なお、アルキル基の好ましい態様の一つとして、得られる膜がより低屈折率性を示す点から、フッ素原子を有するアルキル基(フッ素化アルキル基)が好ましい。フッ素化アルキル基とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ノナフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0084】
シクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20(より好ましくは炭素数3〜10)のシクロアルキル基であり、多環でもよく、環内に酸素原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0085】
アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0086】
アラルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基が挙げられる。
【0087】
アルコキシ基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基などが挙げられる。
アミノ基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数0〜20(より好ましくは炭素数0〜10)のアミノ基であり、例えば無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−ブチル基アミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、メチル(トリメチルシリル)アミノ基、ジメチルシリルアミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
【0088】
ケイ素原子含有基は、ケイ素原子が含有されていれば特に制限されないが、一般式(B−2)で表される基が好ましく、その形状は鎖状、環状、かご状であってもその限りではない。
*−L−Si−(R20 (B−2)
一般式(B−2)中、*はケイ素原子との結合位置を表す。Lは単結合、アルキレン基、−O−、−S−、−Si(R21)(R22)−、−N(R23)−又は、これらを組み合わせた2価の連結基を表す。Lは、アルキレン基、−O−又は、これらを組み合わせた2価の連結基が好ましい。アルキレン基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。
21、R22、R23及びR20は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はケイ素原子含有基を表す。R21、R22、R23及びR20で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基の定義は、上述のR、R、及びRで表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基の定義と同じであり、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基などが挙げられる。
ケイ素原子含有基としては、シリルオキシ基(ジメチルシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルシリルオキシ基)が好ましい。
【0089】
、R及びRで表される置換基としては、前述の基からなる群より選択される少なくとも2つを組み合わせてなる基であってもよく、アルキル基、アミノ基及びケイ素原子含有基からなる群より選択される少なくとも2つを組み合わせてなる基であることが好ましい。これら少なくとも2つを組み合わせてなる基における総炭素数は0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましい。
【0090】
揮発抑制の観点で、R、R及びRの内、少なくとも1つは置換基を表すことが好ましく、少なくとも2つは置換基を表すことがより好ましく、R、R及びRがそれぞれ独立に、置換基を表すことが更に好ましい。R、R及びRで表される置換基としては、アルキル基、アリール基、アミノ基、ハロゲン原子、ケイ素原子含有基、又はそれらを組み合わせた基を表すことが好ましく、アルキル基、アリール基、ケイ素原子含有基、又はそれらを組み合わせた基を表すことがより好ましい。
なかでも、ベークにより揮発しない点、及び、得られるパターン膜が優れた低誘電率性及び耐熱性を示す点から、R、R及びRで表される置換基としては、ケイ素原子含有基であることが好ましく、ケイ素原子含有基を含む重合体であることがより好ましい。ケイ素原子含有基を含む重合体の形状は鎖状、環状、かご状であってもその限りではない。
【0091】
、R、及びRの少なくとも2つは互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は単環であっても多環であってもよい。形成される環は3〜30員環であることが好ましく、6〜20員環であることがより好ましい。低誘電率性及び耐熱性の観点から、形成される環はシロキサン結合(Si−O−Si)を少なくとも1つ含むことが好ましく、シロキサン結合のみからなる環であることがより好ましい。また、R、R、及びRの3つ全てが互いに結合して環を形成する場合には、前述の一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物のようなかご状シルセスキオキサン構造を形成することが好ましい。
【0092】
更に、SiH結合を有する化合物としては、低誘電率性及び耐熱性の観点から、シロキサン結合(Si−O−Si)を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、具体的には下記一般式(B−3)〜(B−5)で表される部分構造の少なくとも1つを有する化合物が好ましい。
【0093】
【化5】

【0094】
一般式(B−3)〜(B−5)中、*はケイ素原子との結合位置を表す。R及びR’はそれぞれ、前記一般式(B−1)中のR〜Rと同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
【0095】
前記一般式(B−3)〜(B−5)で表される部分構造の少なくとも1つを有する化合物は、解像性及び塗布性の観点で、重合体であることが好ましく、重合体の形態としては特に制限は無く、例えば公知の直鎖状の重合体、かご型ポリシロキサン、ラダー型ポリシロキサンなどを挙げることができる。特に樹脂の主鎖に珪素原子を含有する樹脂であることが、更なる低誘電率化、高耐熱の観点で好ましい。直鎖状の重合体である樹脂としては、例えば、直鎖状ポリシロキサン、直鎖状ポリカルボシラン等が挙げられ、その中でも直鎖状ポリシロキサンであることが原料入手性の観点からより好ましい。直鎖状ポリシロキサンとしては、下記一般式(B−6)で表される繰り返し単位を含有することが、低誘電率下及びヤング率の観点から好ましい。
【0096】
【化6】

【0097】
上記一般式(B−6)中、R’’は置換基を表す。
’’で表される置換基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(B−1)中のR〜Rと同様であるが、低誘電率性の観点で、R’’はアルキル基であることが最も好ましい。
上記一般式(B−6)のように、SiH結合を多く含有する重合体を用いることにより、膜の硬化反応が促進され、誘電率の低下及びヤング率の向上に寄与するものと考えられる。
【0098】
直鎖状ポリシロキサンにおける、上記一般式(B−6)で表される繰り返し単位の含有量は、直鎖状ポリシロキサンの全繰り返し単位に対して、5〜100モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、10〜60モル%であることが更に好ましい。
【0099】
直鎖状ポリシロキサンは更に下記一般式(B−7)で表される繰り返し単位を含有していてもよい。
【0100】
【化7】

【0101】
上記一般式(B−7)中、R’’’及びR’’’’はそれぞれ独立に、置換基を表す。
’’’及びR’’’’で表される置換基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(B−1)中のR〜Rと同様であるが、低誘電率性の観点で、R’’’及びR’’’’で表される置換基はアルキル基であることが最も好ましい。
【0102】
直鎖状ポリシロキサンは上記一般式(B−7)で表される繰り返し単位を含有していてもしていなくてもよいが、含有する場合、上記一般式(B−7)で表される繰り返し単位の含有量は、直鎖状ポリシロキサンの全繰り返し単位に対して、0.1〜95モル%であることが好ましく、20〜90モル%であることがより好ましく、40〜90モル%であることが更に好ましい。
【0103】
上記の重合体の末端は、ジメチルシロキサンやトリメチルシロキサンなどにより修飾されていてもよい。
【0104】
本発明の(B)SiH結合を有する化合物が重合体である場合、重合体のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算数平均分子量(M)は、500〜100,000であることが好ましく、800〜50,000がより好ましい。数平均分子量が上記の数値の範囲内にあれば、本発明の化合物(B)としての重合体は良好な溶解性を有し、また、加熱時に気散することなく硬化することができる。重合体の分散度は1〜3の範囲であることが好ましい。
【0105】
本発明の(B)SiH結合を有する化合物の具体的を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0106】
【化8】

【0107】
本発明の(B)SiH結合を有する化合物としては、各種市販品が利用可能である。またゾルゲル反応や、カップリング反応により合成することも可能である。
【0108】
(B)SiH結合を有する化合物は、1種を単独で用いても良く、あるいは、2種以上を併用しても良い。
上記した化合物(B)の本発明の感光性組成物に対する含有量は、特に制限されないが、得られる膜の諸特性がより優れる点より、感光性組成物中の全固形分に対して、20質量%以下であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが更に好ましい。
【0109】
[3−2]光重合開始剤
本発明の感光性組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。
(C)光重合開始剤を含有することによって感光性が付与された本発明の感光性組成物は、フォトレジスト、カラーレジスト、光学用コーティング材料等に好適に用いることができるようになる。光重合開始剤としては、以下に述べる光重合開始剤として知られているものを用いることができる。
光重合開始剤としては、前記(A)重合体の残存重合性基の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、光重合開始剤は、約200〜800nm(300〜450nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0110】
光重合開始剤としては、硬化性と保存安定性の観点で、光ラジカル重合開始剤が好ましい。また適用可能なデバイスに制限が無いことや、低誘電率の膜が形成可能であること、及び硬化性が良好であることから、光重合開始剤が、非金属性の光重合開始剤であることも好ましい。非金属性の光重合開始剤とは金属を含有しない光重合開始剤である。金属性の触媒としては、例えばゾルゲル反応を触媒するチタンメタクリルトリイソプロポキシ等が挙げられ、このような金属性の触媒は非金属性の光重合開始剤に相当しない。
【0111】
光ラジカル重合開始剤においては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物類、ロフィンダイマー類、ベンゾイン類、ケタール類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、有機過酸化物、チオ化合物、ジスルフィド化合物類、アゾ化合物、ホウ酸塩類、無機錯体、クマリン類、ケトン化合物(ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チオクロマノン類、アントラキノン類)、芳香族オニウム塩、フルオロアミン化合物類、ケトオキシムエーテル、アセトフェノン類(アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン化合物)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、オキシム誘導体等のオキシム化合物、などが挙げられる。
【0112】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0113】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0114】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0115】
ホウ酸塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martinらの“Rad Tech’98.Proceeding April”、19〜22頁(1998年,Chicago)等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、具体例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0116】
また、上記以外のラジカル重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタンなど)、N−フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5−19475号公報、特開平7−271028号公報、特開2002−363206号公報、特開2002−363207号公報、特開2002−363208号公報、特開2002−363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)など)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる
【0117】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾルフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0118】
ラジカル重合開始剤としては、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アシルホスフィン化合物、及びオキシム化合物からなる群より選択される化合物が更に好ましい。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤、及び、既述のオキシム系開始剤、更にオキシム系開始剤として、特開2001−233842号記載の化合物も用いることができる。
【0119】
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379(商品名:いずれもBASFジャパン社製)を用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもBASFジャパン社製)を用いることができる。
【0120】
ヒドロキシアセトフェノン化合物は、下記式(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0121】
【化9】

【0122】
式(V)中、Rは水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10のアルコキシ基)、又は、2価の有機基を表す。Rが2価の有機基である場合、2個の光活性なヒドロキシアセトフェノン構造(すなわち、一般式(V)で表される化合物から置換基Rを除外した構造)がRを介して連結してなる2量体を表す。R、Rは互いに独立して、水素原子、又は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基)を表す。また、RとRは結合して環(好ましくは炭素数4〜8の環)を形成していてもよい。
上記Rとしてのアルキル基及びアルコキシ基、R及びRとしてのアルキル基、並びに、RとRとが結合して形成される環は、更に置換基を有していてもよい。
【0123】
ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCURE 1173)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルブタン−1−オン、1−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−オクチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メチルチオフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−カルボエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
また、市販のα−ヒドロキシアセトフェノン化合物として、BASFジャパン社製からイルガキュア184(IRGACURE 184)、ダロキュア1173(DAROCURE 1173)、イルガキュア127(IRGACURE 127)、イルガキュア2959(IRGACURE 2959)、イルガキュア1800(IRGACURE1800)、イルガキュア1870(IRGACURE1870)及びダロキュア4265(DAROCURE4265)の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。
【0124】
アシルホスフィン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−819、IRGACURE−819DW,DAROCUR−TPO(商品名:いずれもBASFジャパン社製)を用いることができる。また特開2009−134098記載のホスフィン系開始剤も適用できる。
【0125】
本発明における光重合開始剤としては、感度、硬化速度の観点からオキシム誘導体等のオキシム化合物が最も好ましい。オキシム化合物は、ラジカルの再結合による活性種の失活を抑制でき、膜の硬化反応がスムーズに進行することから、感度に優れ、効率的に前記(A)重合体の残存重合性基の重合反応を進行させることが出来る。すなわち、同じ露光量の条件下では、オキシム化合物を用いる場合は、他の光重合開始剤を用いる場合と比較して良好に重合反応を進行させることが可能になると考えられ、これにより同じ露光量の条件下で得られる膜について比較した時、オキシム化合物を用いる場合は、低誘電率性、ヤング率及び解像性に優れるものと推定される。オキシム化合物としては、特に限定はなく、例えば、特開2000−80068号公報(段落番号0004〜0296)、WO02/100903A1、特開2001−233842号公報、特開2006−342166号公報(段落番号0004〜0264)等に記載のオキシム系化合物が挙げられる。
具体的な例としては、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−プロプル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0126】
これらのうち、露光量、パターン形状、現像残渣、経時安定性、後加熱時の着色の観点から、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等のオキシム−O−アシル系化合物が特に好ましく、具体的には、CGI−124、CGI−242、IRGACURE OXE−01(以上、BASFジャパン社製)等が好ましい。
【0127】
本発明における光重合開始剤は、1種を単独で用いても良く、あるいは、2種以上を併用しても良い。
本発明の組成物の固形分中における光重合開始剤の含有量は、通常、1質量%〜40質量%であり、2質量%〜30質量%であることが好ましく、2質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0128】
[3−3]重合性化合物
本発明の組成物は、更に、重合体(A)とは異なる重合性化合物を含有しても良い。
本発明の組成物が、重合性化合物を含有することにより、パターン膜の耐溶剤性、寸法均一性、ヤング率、解像性、耐熱性及び硬度がより向上する傾向となる。
前記重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。
このような化合物は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。
【0129】
これらは、例えばモノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体、及びオリゴマー)、又はそれらの混合物若しくはそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、又はアミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、又はメルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のイソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及びヒドロキシ基、アミノ基、又はメルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基又はエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、又はチオール類との付加反応物も好適である。更に、ハロゲン基又はトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、又はチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、又はビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0130】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0131】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0132】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0133】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0134】
更に、酸基を含有するモノマーも使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。特に、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルが現像性・感度の観点から好ましい。
【0135】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0136】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で表される化合物における水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0137】
一般式 CH=C(R10)COOCHCH(R11)OH
(ただし、R10及びR11は、H又はCHを示す。)
【0138】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0139】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0140】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわちパターン膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。硬化感度の観点から、(メタ)アクリル酸エステル構造を2個以上含有する化合物を用いることが好ましく、3個以上含有する化合物を用いることがより好ましく、4個以上含有する化合物を用いることが最も好ましい。また、硬化感度、及び、未露光部の現像性の観点では、カルボン酸基又はEO変性体構造を含有する化合物が好ましい。また、硬化感度、及び、露光部強度の観点ではウレタン結合を含有することが好ましい。
【0141】
また、組成物中の他の成分(例えば、樹脂、光重合開始剤、顔料)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0142】
以上の観点より、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルなどが好ましいものとして挙げられ、また、市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)、UA−7200(新中村化学社製)が好ましい。
【0143】
中でも、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルなどが、市販品としては、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)がより好ましい。
【0144】
重合性化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0145】
本発明の組成物は、重合性化合物を含有してもしなくて良いが、含有する場合、組成物の固形分中における重合性化合物の含有量は、1質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましく、5質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0146】
[3−4]アルカリ可溶性樹脂
本発明の組成物は、更に、アルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、アルカリ現像性を付与することが可能となる。
【0147】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0148】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
また、本発明における組成物の架橋効率を向上させるために、重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。
【0149】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては好ましくは30mgKOH/g〜200mgKOH/g、より好ましくは50mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜120mgKOH/gであることが最も好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、2,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000が更に好ましく、7,000〜20,000が最も好ましい。
【0150】
本発明の組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有してもしなくても良いが、含有する場合、アルカリ可溶性樹脂の組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは、2〜12質量%であり、特に好ましくは、3〜10質量%である。これにより水ハジキ性、現像欠陥性能が向上する。
【0151】
[3−5]添加剤
更に、組成物には、組成物を用いて得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、密着促進剤、空孔形成剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、増感剤などの添加剤を添加してもよい。
【0152】
組成物の製造方法は特に限定されず、溶媒を含む場合、所定量の重合体を溶媒に添加して、攪拌することにより得られる。
【0153】
上記の組成物はフィルターろ過により、不溶物、ゲル状成分等を除いてから膜形成に用いることが好ましい。その際に用いるフィルターの孔径は0.05〜2.0μmが好ましく、孔径0.05〜1.0μmがより好ましく、孔径孔径0.05〜0.5μmが最も好ましい。フィルターの材質はポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン及びナイロンがより好ましい。
【0154】
[4]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、感光性膜を形成する工程、前記感光性膜を露光する工程、及び、現像してパターン膜を得る現像工程を含む。
ここで、感光性膜は、本発明の感光性組成物から形成される。
また、本発明は、このパターン形成方法により得られるパターン膜にも関する。
本発明の感光性組成物から形成される感光性膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、感光性組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法、スプレー法、バー塗布法、インクジェット法等の任意の方法により、シリコンウエハ、SiOウエハ、SiNウエハ、ガラス、プラスチックフィルム、マイクロレンズなどの基板に塗布した後、溶媒を必要に応じて加熱処理で除去して塗膜(感光性膜)を形成し、プリベーク処理を施すことにより形成することができる。
【0155】
基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法が好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法である。
【0156】
プリベーク処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。上記プリベークの条件としては、ホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜150℃で、0.5分間〜15分間程度加熱する条件が挙げられる。
【0157】
感光性膜を露光する工程は、必要に応じてマスクを介して行われる。
この露光に適用し得る活性光線又は放射線としては、赤外光、g線、h線、i線、KrF光、ArF光、X線、電子線等を挙げることができる。露光量、感度、解像度の観点から、i線、KrF光、ArF光、電子線が好ましく、更に汎用性の観点から、i線、KrF光が最も好ましい。照射光にi線を用いる場合、100mJ/cm〜10000mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。KrF光を用いる場合は、30mJ/cm〜300mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。
また、露光した組成物層は、必要に応じて、次の現像処理前にホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜180℃で、0.5分間〜15分間程度加熱することができる。
【0158】
続いて、露光後の組成物層に対し、現像液にて現像を行う(現像工程)。これにより、ネガ型のパターン(レジストパターン)を形成することができる。
【0159】
ネガ型現像を行う際には、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を使用することが好ましい。
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0160】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0161】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号
明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0162】
なお、本発明は、有機系現像液による現像の前又は後に、アルカリ現像液による現像を行ってもよい。
【0163】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液を感光性膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液が感光性膜に与える圧力が小さくなり、感光性膜・パターン膜が不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0164】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することでを変える方法などを挙げることができる。
【0165】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0166】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0167】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、パターン膜を溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチルー2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチルー2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0168】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0169】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0170】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0171】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0172】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0173】
現像工程後、必要に応じて、形成されたパターン膜に対し後加熱及び/又は後露光を行い、パターン膜の硬化を更に促進させてもよい(硬膜処理による後硬化工程)。
これにより、耐光性、耐気候性、膜強度が向上し、更に低屈折率性、低誘電率性も向上させることができる場合がある。
【0174】
硬膜処理とは、基板上のパターン膜を更に硬化し、膜に溶媒耐性などを、より与えることを意味する。硬膜の方法としては、加熱処理(焼成)することが好ましい。例えば、重合体中に残存する重合性基の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜600℃、より好ましくは200〜500℃、特に好ましくは200℃〜450℃で、好ましくは1分〜3時間、より好ましくは1分〜2時間、特に好ましくは1分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。
【0175】
また、本発明では加熱処理ではなく、光照射や放射線照射などの高エネルギー線を照射することで、重合体中に、依然、残存する重合性基間の重合反応を起こして硬膜してもよい。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは0.1〜50keVが好ましく、より好ましくは0.2〜30keV、特に好ましくは0.5〜20keVである。電子線の総ドーズ量は好ましくは0.01〜5μC/cm 、より好ましくは0.01〜2μC/cm、特に好ましくは0.01〜1μC/cmである。電子線を照射する際の基板温度は0〜500℃が好ましく、より好ましくは20〜450℃、特に好ましくは20〜400℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。
重合体の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
【0176】
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は160〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0177】
加熱処理と光照射や放射線照射などの高エネルギー線処理照射を、同時に又は順次行うことにより硬膜してもよい。
【0178】
膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。
重合体のかご状シルセスキオキサン構造が焼成時に分解しないために、組成物及び膜の製造中にSi原子に求核攻撃する基(水酸基、シラノール基など)が実質的に存在しないことが好ましい。
【0179】
本発明の感光性組成物は、上記したように種々の用途に用いることができる。例えば、その用途としては、絶縁膜又は反射防止膜を作製するために使用することが好ましい。
よって、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法により得られるパターン膜である反射防止膜にも関する。
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法により得られるパターン膜である絶縁膜にも関する。
更に、本発明は、上記反射防止膜を有する光学デバイスにも関する。本発明は、上記絶縁膜を有する電子デバイスにも関する。
以下、このような絶縁膜、及び、低屈折率膜(例えば、反射防止膜)について詳述する。ただし、絶縁膜又は低屈折率膜における下記の各種物性の好ましい範囲は、特に絶縁膜又は低屈折率膜の用途においては好ましい範囲であるものの、その用途に限られたものではない。
【0180】
<絶縁膜>
上述した組成物から得られる絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、0.005〜10μmであることが好ましく、0.01〜5.0μmであることがより好ましく、0.01〜1.0μmであることが更に好ましい。
ここで、本発明の絶縁膜の厚さは、光学干渉式膜厚測定器にて任意の3箇所以上を測定した場合の単純平均値を意味するものとする。
【0181】
上述の本発明の方法により得られる絶縁膜の比誘電率は、使用する材料によって異なるが、測定温度25℃において、比誘電率が2.50以下であることが好ましく、1.80〜2.40であることがより好ましい。
【0182】
本発明の絶縁膜のヤング率は、使用する材料によって異なるが、25℃において2.0〜15.0GPaであることが好ましく、3.0〜15.0GPaであることがより好ましい。
【0183】
上述した膜形成用組成物から得られる膜は好ましくは多孔質膜であり、多孔質膜中の空孔の空孔分布曲線における最大ピークを示す空孔直径(以後、最大分布直径とも称する)は5nm以下であることが好ましい。最大分布直径が5nm以下であると、より優れた機械的強度と比誘電率特性との両立が可能となる。
最大分布直径は、3nm以下がより好ましい。なお、最大分布直径の下限は、特に制限されないが、公知の測定装置により測定可能な下限として0.5nmが挙げられる。
なお、最大分布直径とは、窒素ガス吸着法により得られた空孔分布曲線における最大ピークを示す空孔直径を意味する。
【0184】
本発明の組成物を使用して得られる絶縁膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があってもよい。また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けてもよい。
【0185】
本発明の絶縁膜は、他の含Si絶縁膜又は有機膜と積層構造を形成させて用いてもよい。炭化水素系の膜と積層して用いることが好ましい。
【0186】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、銅配線又はその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、更にはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0187】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMPをすることができる。CMPスラリー(薬液)としては,市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、JSR製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製,荏原製作所製等)を適宜使用することができる。更にCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0188】
<用途>
本発明の絶縁膜は、多様の目的に使用することができ、特に電子デバイスへ好適に用いることができる。電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。また、光学装置用の表面保護膜、反射防止膜、位相差膜としても用いることができる。
【0189】
<低屈折率膜>
上述した組成物を用いて得られるパターン膜は、優れた低屈折率性を示す。具体的には、パターン膜の屈折率(波長633nm、測定温度25℃)は、1.35以下であることが好ましく、1.27〜1.35であることがより好ましく、1.27〜1.33であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、後述する反射防止膜として有用である。
【0190】
組成物を用いて得られるパターン膜は、膜内に多数の空孔を有しているため、優れた低屈折率性を示す。具体的には、得られる膜の膜密度が、0.7〜1.25g/cm、好ましくは0.7〜1.2g/cm、更に好ましくは0.8〜1.2g/cmである。膜密度が0.7g/cm未満では、得られる膜の機械的強度が劣る場合があり、一方、1.25g/cmを超えると、耐熱性に劣る場合がある。なお、膜密度の測定は、X線反射率法(XRR)など公知の測定装置により実施できる。
【0191】
<反射防止膜>
上述した本発明の組成物を用いて得られるパターン膜の好適な使用態様として、反射防止膜が挙げられる。特に、光学デバイス(例えば、イメージセンサ用マイクロレンズ、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスなど)用の反射防止膜として好適である。
反射防止膜として使用した場合の反射率は低いほど好ましい。具体的には、450〜650nmの波長領域での鏡面平均反射率が3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。なお、下限値は小さければ小さいほど好ましく0である。
反射防止膜のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。なお、下限値は小さければ小さいほど好ましく0である。
【実施例】
【0192】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
【0193】
以下のGPC測定は、Waters2695及びShodex製GPCカラムKF−805L(カラム3本を直結)を使用し、カラム温度40℃、試料濃度0.5質量%のテロラヒドロフラン溶液を50μl注入し、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量でフローさせ、RI検出装置(Waters2414)及びUV検出装置(Waters2996)にて試料ピークを検出することでおこなった。M及びMは標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。
【0194】
<化合物I−12の合成>
電子グレード濃塩酸2000g、n−ブタノール12L、イオン交換水4000gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン840gとメチルトリエトキシシラン786gの混合溶液を20分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール300mLで洗浄した。洗浄後、結晶をテトラヒドロフラン4000mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール4000mL、続いてイオン交換水8000mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−12)105gを得た。H−NMR測定(300MHz,CDCl)の結果、6.08〜5.88及び0.28〜0.18ppmに多重線が観測され、この積分比からビニル/メチル比=3.9/4.1と算出された。上記式(3)においては、xが3.9、yが4.1であり、x+y=8.0であった。なお、得られるシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
【0195】
<化合物I−32の合成>
電子グレード濃塩酸67g、n−ブタノール305g、イオン交換水133gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン59gを15分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール50gで洗浄した。これをテトラヒドロフラン42gに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール42g、続いてイオン交換水127gを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−32)4.2gを得た。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。H−NMR (300 MHz, CDCl3) :6.13−5.88 (m, 24H)
【0196】
以下に、上記で合成したシルセスキオキサン類(化合物I)を用いた重合体(樹脂A)の合成方法について詳述する。
【0197】
<樹脂A−32の合成>
上記で合成した化合物(I−32)5gを、クロロベンゼン132gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温120℃で加熱しながら、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)0.2gをクロロベンゼン80gに溶解させた溶液6.25mlを60.5分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却後、反応液に電子グレードメタノール100mL、イオン交換水5mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール10mLで洗浄した。洗浄後、固体をテトラヒドロフラン100gに溶解し、攪拌しながらイオン交換水20gを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール20gを加えた。析出した固体を濾取、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−32)2.3gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=20.28×10、M=9.63×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−32)は1質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.5〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が6.7/1.3の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して83.8モル%であった。
【0198】
<樹脂A−12の合成>
上記で合成した化合物(I−12)80gを、クロロベンゼン2112gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温120℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)500mgをクロロベンゼン200gに溶解させた溶液398mlを265.3分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで冷却後、反応液に電子グレードメタノール5200g、イオン交換水520mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄し減圧下12時間乾燥した。固体をテトラヒドロフラン825gに溶解し、攪拌しながらイオン交換水110g、電子グレードメタノール110gを滴下し、析出固体を濾取、乾燥した。同様の操作を3回繰り返し白色固体の目的物(樹脂A−12)31gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=19.3×10、M=7.85×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−12)は1質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、メチル基由来のプロトンピーク(−0.5〜0.5ppm)と、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.5〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が3.5/2.8/1.7の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して21.3モル%であった。
【0199】
<比較例用樹脂(R−1)>
50ml三口フラスコにテトラエトキシシラン625mg、ビニルトリエトキシシラン2.32g、シュウ酸100mg、イソプロピルアルコール12ml、ブタノール4ml、イオン交換水3mlを入れ、7時環加熱還流し比較例用樹脂(R−1)を得た。放冷後、孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した。
【0200】
<感光性組成物の調製>
下記表2に示す成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)に溶解させ、全固形分濃度10質量%とし、孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、実施例1〜9及び比較例1、2の感光性組成物を調製した。
表2中において樹脂、SiH結合を有する化合物(“SiH化合物”と表記)、SH結合を有する化合物(“SH化合物”と表記)、光重合開始剤、重合性化合物の含有量は、組成物(塗布液)中の全固形物に対する質量%で表される。
SiH化合物としては、Gelest社及びAldrich社より購入した、以下の化合物を使用した。SiH化合物(1)〜(5)の構造を以下に示す。
SiH化合物(1):Gelest社製 (50−55mol% Methylhydrosiloxane)−Dimethylsiloxane copolymer, Trimethylsiloxane Terminated 数平均分子量約1000
SiH化合物(2):Gelest社製 (25−30mol% Methylhydrosiloxane)−Dimethylsiloxane copolymer, Trimethylsiloxane Terminated 数平均分子量約2000
SiH化合物(3):Gelest社製 (15−18mol% Methylhydrosiloxane)−Dimethylsiloxane copolymer, Trimethylsiloxane Terminated 数平均分子量約2000
SiH化合物(4):Aldrich社製 Triphenylsilane
SiH化合物(5):Aldrich社製 Tris(dimethylsiloxy)phenylsilane
重合開始剤は、市販品を使用した。その詳細は前記した通りである。使用した重合開始剤の構造を以下に示す。
重合性化合物としては、DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いた。
【0201】
〔SiH結合を有する化合物〕
【0202】
【化10】

【0203】
また比較のため、SH結合を有する以下の構造の化合物を使用した。
【0204】
【化11】

【0205】
〔光重合開始剤〕
【0206】
【化12】

【0207】
【表2】

【0208】
下記の方法で形成した膜について下記の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0209】
上記のように調製した感光性組成物の液を、6インチのシリコンウエハの上に塗布し、ホットプレート上にて110℃で1.0分間、基板を予備乾燥し、膜厚300nmの感光性膜を形成させた。次いで、365nm光を含む水銀ランプを使用して、365nmのバンドパスフィルターを通して1000mJ/cmの照射量で露光し、全面硬化膜を得た。この硬化膜について比誘電率、ヤング率、耐熱性、解像性を評価した。
<比誘電率(k値)>
フォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて、1MHzにおける容量値(硬化膜部分、測定温度25℃)から算出した。測定値が2.1以上2.3未満の場合を◎、2.3以上2.5未満の場合を○、2.5以上2.7未満の場合を△、2.7以上の場合を×とした。
【0210】
<ヤング率>
MTS社ナノインデンターSA2を使用して25℃におけるヤング率を測定した。測定値が5.5GPa以上の場合を◎、3.5GPa以上5.5GPa未満の場合を○、2、0GPa以上3.5GPa未満の場合を△、2.0GPa未満の場合を×とした。なお、実用上の観点から、×が含まれていないことが必要である。
<耐熱性>
耐熱性の評価は、得られたパターン膜を空気中400℃、60秒加熱し、膜厚変化率を測定することによって行った。膜厚変化率の値が0%に近い値である塗膜ほど、耐熱性が良いといえる。膜厚変化率の値が0%以上5%未満の場合を◎、5%以上10%未満の場合を○、10%以上20%未満の場合を△、20%以上30%未満の場合を×とした。
<解像性>
上記のように調製した感光性組成物の液を、6インチのシリコンウエハの上に塗布し、ホットプレート上にて100℃で1.0分間、基板を予備乾燥し、膜厚300nmの感光性膜を形成させた。次いで、365nm光を含む水銀ランプを使用して、365nmの波長で500mJ/cmの照射量で露光し、線幅0.5μmのラインアンドスペース1:1のパターン露光マスクを使用して、パターン露光を行った。
得られた露光膜を有する露光基板について、現像液としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)が満たされた槽中に露光基板を60秒間浸漬し現像を行い、その後別のPGMEA溶液に通しリンスし、そしてホットプレート上にて220℃で2分間乾燥させ、パターン膜を得た。
得られたパターン膜を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により観察し、解像限界線幅が0.5μm未満のパターンが解像している場合を◎、0.5μm以上1μm未満のパターンが解像している場合を○、1μm以上〜2μm未満のパターンが解像している場合を△、2μm未満のパターンが解像できなかった場合を×と標記した。なお、実用上の観点から、×が含まれていないことが必要である。
【0211】
表3の現像液及びリンス液にはPGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)を用いた。
【0212】
【表3】

【0213】
表3の結果より、本発明の感光性組成物を使用した場合、誘電率が低く、かつ、ヤング率及び耐熱性が高いパターン膜を、高解像度で形成できることが分かった。
一方、かご状シルセスキオキサン構造を有さない重合体を使用した場合、本発明の上記効果を同時に満たすことはできなかった。
更に、実施例2において、SiH化合物(1)の代わりに、連鎖移動剤として機能すると考えられるSH化合物を使用した比較例2は、誘電率、ヤング率、解像性及び耐熱性のいずれも実施例2に劣っていた。
また実施例1において、樹脂A−12の代わりに化合物I−12を用いた組成物は、化合物I−12の溶解性が悪く、また組成物を塗布したところ粉体が析出し、均一な膜の形成ができなかった。これより、本発明に係る重合体を用いることで、原料である化合物と比較して、溶解性及び塗布性が向上したことが分かる。
【0214】
更に、以下の項目についても、評価した。
比誘電率の評価に用いた全面硬化膜の屈折率を測定したところ、実施例1〜9の組成物を用いた硬化膜は屈折率が1.35以下であったが、比較例1及び2の組成物を用いた硬化膜は屈折率が1.45であった。本発明の硬化組成物の硬化膜は優れた低屈折率を示し、反射防止膜用途においても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体と、
(B)SiH結合を有する化合物と、
(C)光重合開始剤と
を含有する感光性組成物。
【請求項2】
前記光重合開始剤が、非金属性の光重合開始剤である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記(A)重合性基とかご状シルセスキオキサン構造を有する重合体が、下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
(RSiO1.5 式(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。aは8〜16の整数を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。)
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
【請求項5】
ネガ型の組成物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記光重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記かご状シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【化1】

【化2】

(一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)の各々において、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。)
【請求項8】
前記重合体中の前記重合性基の含有量が、ケイ素原子に結合した全有機基中、10〜90モル%である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記重合体の重量平均分子量が1万〜50万である、請求項4〜8のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性組成物であるパターン形成材料。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性組成物により形成される感光性膜。
【請求項12】
請求項11に記載の感光性膜を形成する工程、前記感光性膜を露光する工程、及び、現像してパターン膜を得る現像工程を含むパターン形成方法。
【請求項13】
前記現像工程が有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程である請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記有機溶剤を含む現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤である、請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項にパターン形成方法により得られるパターン膜。
【請求項16】
屈折率が1.35以下である請求項15に記載のパターン膜。
【請求項17】
25℃における比誘電率が2.50以下である請求項15又は16に記載のパターン膜。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載のパターン膜である反射防止膜。
【請求項19】
請求項15〜17のいずれか1項に記載のパターン膜である絶縁膜。
【請求項20】
請求項18に記載の反射防止膜を有する光学デバイス。
【請求項21】
請求項19に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2012−53243(P2012−53243A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195225(P2010−195225)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】