説明

感光性組成物

【課題】高温に晒されたとしても、黄変などの変色が生じ難いレジスト膜を形成することを可能とする感光性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、(B)分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物と、(C)白色フィラーとを含有し、前記(C)白色フィラーが、該白色フィラー5gを純水100mLに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、次に得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mLとした液のpHを測定したとき、pH6.8以上、11以下の値を示す白色フィラーである、感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にソルダーレジスト膜を形成したり、または発光ダイオードチップが搭載される基板上に光を反射させるレジスト膜を形成したりする用途に好適に用いられる感光性組成物及びソルダーレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板を高温の半田から保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。
【0003】
下記の特許文献1は、上記ソルダーレジスト膜を形成するための材料を開示している。より具体的には、特許文献1は、アクリレートプレポリマー樹脂を含有するソルダーレジスト材料を開示している。
【0004】
従来、様々な電子機器用途において、プリント配線基板の上面に発光ダイオード(以下、LEDと略す)チップが搭載されている。LEDから生じた光の内、上記プリント配線基板の上面側に到達した光をも利用するために、プリント配線基板の上面に到達した光を高い反射率で反射するために、プリント配線基板が上面に白色ソルダーレジスト膜が形成されていることがある。LEDチップの表面からプリント配線基板とは反対側に直接照射される光だけでなく、プリント配線基板の上面側に到達し、白色ソルダーレジスト膜により反射された反射光も利用される。従って、LEDから生じた光の利用効率を高めることができる。
【0005】
下記の特許文献2は、白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例を開示している。具体的には、特許文献2は、加水分解性アルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂とを含有しているソルダーレジスト材料を開示している。
【0006】
他方、下記の特許文献3は、アクリレート樹脂と、エポキシ樹脂とを含有している白色ソルダーレジスト材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−25374号公報
【特許文献2】特開2007−249148号公報
【特許文献3】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている各材料からなるレジスト膜は、半田リフロー時の温度のような200℃近くの高温の環境に晒されると、レジスト膜が黄色に変色することがあった。
【0009】
本発明の目的は、高温に晒されたとしても、黄変などの変色が生じ難い感光性組成物及びソルダーレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、(B)分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物と、(C)白色フィラーとを含有し、前記(C)白色フィラーが、該白色フィラー5gを純水100mLに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、次に得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mLとした液のpHを測定したとき、pH6.8以上11以下の値を示す白色フィラーである感光性組成物が提供される。
【0011】
なお、本願明細書では、白色フィラー5gを純水100mLに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、次に得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mLとした液のpHを測定する方法を、煮沸法と呼ぶことがある。
【0012】
本発明のある特定の局面では、前記(B)分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物が有する該環状エーテル基が、シクロヘキセンオキシド骨格である。この場合には、高温に晒された場合でもレジスト膜が変色し難い。
【0013】
本発明のさらに他の特定の局面では、白色フィラー(C)がルチル型酸化チタンであり、それによって、屈折率が高いために反射性能がより一層高い白色ソルダーレジスト膜を得ることができる。
【0014】
好ましくは、白色フィラー(C)は、感光性組成物100重量%中、3重量%以上、80重量%以下の割合で含有され、それによって、レジスト膜の高温下における黄変を確実に抑制し、かつ感光性組成物の塗工性を高めることができる。
【0015】
本発明のソルダーレジスト組成物は、本発明に係る感光性組成物からなる。従って、得られるレジスト膜は、黄変を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る感光性組成物は、(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、(B)分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物と、(C)白色フィラーとを含有し、前記(C)白色フィラーが、該白色フィラーの煮沸法により得られた液のpHが、pH6.8以上、11以下の値を示す白色フィラーである感光性組成物であるため、該感光性組成物を露光・現像処理することによりレジスト膜を得ることができ、該レジスト膜は、高温に晒されたとしても、黄変などの変色が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0019】
〔重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物(A)〕
本発明に係る感光性組成物は、上記特定の重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方を含む。すなわち、本発明に係る感光性組成物は、上記化合物(A)として、重合性炭化水素モノマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素ポリマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの双方を含んでいてもよいが、現像した際の解像度を高めることができるため、カルボキシル基を有する重合性炭化水素ポリマーを含むことが好ましい。また、上記重合性炭化水素モノマーとしては、1種の重合性炭化水素モノマーのみが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素モノマーが用いられてもよい。同様に、上記重合性炭化水素ポリマーとしても、1種の重合性炭化水素ポリマーのみが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素ポリマーが用いられてもよい。
【0020】
上記重合性炭化水素モノマーとしては、重合性不飽和基を有するモノマーが挙げられる。上記重合性炭化水素ポリマーとしては、重合性不飽和基を有するアクリル樹脂が挙げられる。なお、本明細書における「樹脂」なる用語は、固形の樹脂だけでなく、液状樹脂及びオリゴマーをも含む。
【0021】
重合性不飽和基を有するモノマーは、(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリル基を有する化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレートや、多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレートや、フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートや、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
多価アルコールとしては、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。フェノールの(メタ)アクリレートとしては、フェノキシ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0024】
上記重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含むことが好ましく、より好ましくは、重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーである。重合性不飽和基を有するモノマーが、2個以上の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含む場合には、最終的に得られたレジスト膜の架橋密度を高めることができ、従って、高温に晒されたとしてもレジスト膜が変色し難い。
【0025】
上記重合性炭化水素ポリマーは、下記の(i)〜(iv)で挙げられるカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0026】
(i)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合とを有する化合物を共重合させた樹脂
(ii)カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基とを有する化合物(b2)を反応させた樹脂
(iii)1分子中に1個のエポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、反応により生成した第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた樹脂
(iv)水酸基を有するポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、反応により生成したカルボン酸基に、1分子中に1個のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる、水酸基とカルボキシル基とを有する樹脂
【0027】
なお、レジスト膜を高温下においてより一層変色しにくくできるので、上記重合性炭化水素ポリマーは、上記(ii)カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0028】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(b11)と、1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)とを共重合させることにより得られる。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルやグリコール変性(メタ)アクリレートが挙げられる。1種の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が用いられてもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が併用されてもよい。
【0030】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリコール変性(メタ)アクリレートとして、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)としては、(メタ)アクリル酸、不飽和基とカルボン酸との間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性などによりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。1種の上記化合物(b12)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b12)が用いられてもよい。
【0032】
1分子中にオキシラン環及びエチレン性不飽和基を有する化合物(b2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレートが挙げられる。なかでも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。1種の化合物(b2)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b2)が用いられてもよい。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂(i)〜(iv)の酸価は50〜150mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。酸価が50〜150mgKOH/gの範囲内にあると、現像の際の解像度を高めることができる。
【0034】
なお、化合物(i)は、1個以上の不飽和二重結合基および2個以上のカルボキシル基または酸無水物基を有する重合性炭化水素ポリマーを含有し、酸価が50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。現像の際の解像度を高めることができる。
【0035】
なお、ここでいう「酸価」は、具体的には、化合物を溶剤(トルエン/2−プロパノール/水(体積比で5/5/0.05))に溶かして水酸化カリウムを用いて中和滴定することにより算出できる。中和滴定法としては、P−ナフトールベンゼイン指示薬法や電位差滴定法が挙げられる。
【0036】
〔分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物(B)〕
本発明に係る感光性組成物は、1分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物を含有する。このような環状エーテル基を有するエポキシ化合物(B)としては、トリグリシジルイソシアヌレート、エポキシ化ポリオレフィン、アジピン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸のグリシジルエステル、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。1種のエポキシ化合物(B)が用いられてもよく、2種以上のエポキシ化合物(B)が組み合わせて用いられてもよい。
【0037】
また、エポキシ化合物(B)は、1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有するエポキシ化合物であることが好ましい。
【0038】
上記エポキシ化合物(B)の環状エーテル骨格は、シクロヘキセンオキシド骨格であることが好ましい。シクロヘキセンオキシド骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルー3’ ,4’ ,−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチルー3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられ、入手可能な商品として、セロキサイド2021P(ダイセル社製)などが挙げられる。
【0039】
エポキシ化合物(B)は、重合性炭化水素ポリマー(A)の有するカルボキシル基などの官能基と反応し、感光性組成物を硬化させる。
【0040】
上記エポキシ化合物(B)は、上記化合物(A)100重量部に対し、好ましくは、0.1〜50重量部の割合で配合し、より好ましくは1〜30重量部の割合で配合される。エポキシ化合物(B)の配合割合が上記好ましい範囲内にある場合、レジスト膜の黄変をより一層抑制することができる。
【0041】
〔白色フィラー(C)〕
本発明に係る感光性組成物は白色フィラー(C)を含有する。このような白色フィラー(C)としては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム又はチタン酸鉛が挙げられる。なお、反射性能が高い酸化チタンが好ましい。なお、白色フィラー(C)は、煮沸法により測定されたpHが6.8以上、11以下であり、そのことによって、レジスト膜の黄変をより一層抑制できる。より好ましくはpH7.0以上、さらに好ましくはpH7.4以上であり、さらに好ましくはpH8.1以上である。感光性組成物のポットライフをより一層良好にすることができるので、上記白色フィラー(C)の煮沸法により測定されたpHは10.0以下であることが好ましく、より好ましくはpH9.0以下である。
【0042】
なお、上記煮沸法とは、(a)上記白色フィラー(C)5gを純水100mLに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、(b)次に、得られた沸騰処理液に、沸騰に際し蒸発した量の水を加えて、全量を100mLとして得られた液のpHを測定する方法である。
【0043】
上記煮沸法では、具体的には、上記白色フィラー(C)5gを純水100mLに加えた液を、開口を有する容器内に入れる。上記容器を加熱することにより容器内の液を加熱し、容器内の液を沸騰させる。沸騰し始めてから5分間、沸騰状態を維持する。その後、容器の開口に栓体を取り付けて、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得る。容器の開口から栓を取り外して、得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて、水量を100mLとする。容器の開口に栓体を取り付けて、1分間振り混ぜた後、5分間静置する。このようにして、測定液を得る。得られた測定液のpHは、JIS Z8802の7.に記載された操作に準拠して測定できる。
【0044】
上記白色フィラー(C)は、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。ルチル型酸化チタンの場合、反射性能の高いソルダーレジスト膜を得ることができる。
【0045】
上記白色フィラー(C)の数平均粒子径は、0.01〜1.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜0.5μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0046】
感光性組成物100重量%中の白色フィラー(C)の含有量は、3重量%以上80重量%以下であることが好ましい。より好ましい下限は10重量%であり、より好ましい上限は75重量%である。白色フィラー(C)の含有量が3重量%未満の場合、ソルダーレジスト膜が高温に晒されたときに黄変することがある。白色フィラー(C)の含有量が80重量%を超える場合、塗工に適した粘度を有する感光性組成物を調製し難くなることがある。
【0047】
表面を塩基性にするために、少なくとも1種の上記白色フィラー(C)は、塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物により被覆されていることが好ましい。この場合には、ソルダーレジスト膜が高温に晒されたときに、さらに一層黄変し難くすることができる。上記塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物として、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウム又はカルシウム等を含有する金属化合物が挙げられる。高温下でのソルダーレジスト膜の黄変をより一層抑制できるので、上記塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物を構成する金属元素は、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウム及びカルシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。高温下でのソルダーレジスト膜の黄変をさらに一層抑制できるので、上記白色フィラー(C)は、酸化ジルコニウムを含む被覆材料により被覆されていることが好ましい。上記塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物として、酸化ジルコニウムが好適に用いられる。
【0049】
上記塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物により被覆された白色フィラー(C)は、例えば以下のようにして得ることができる。
【0050】
水又は水を主成分とする媒液中に白色フィラー(C)を分散させ、スラリーを得る。必要に応じてサンドミル又はボールミル等で粉砕する。次いで、スラリーのpHを中性又はアルカリ性、場合によっては酸性にする。その後、被覆材料の原料となる水溶性塩をスラリーに添加し、白色フィラー(C)の表面を被覆する。その後、分散液を中和し、白色フィラー(C)を回収する。回収された白色フィラー(C)は、乾燥又は乾式粉砕されてもよい。
【0051】
また、必要に応じて、本発明に係る感光性組成物に含有させる上記白色フィラー(C)の他に、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド粉末、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、タルク、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、雲母粉、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、窒化チタン、フッ化セリウム又は酸化セリウムなどの他のフィラーを含有させてもよい。
【0052】
塩基性を高めるために、上記白色フィラー(C)は、白色フィラー(C)の酸性部位と反応可能な化合物により表面処理されていることが好ましい。
【0053】
上記白色フィラー(C)の酸性部位と反応可能な化合物として、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレートもしくはペンタエリスリトール等の多価アルコール、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミンもしくはトリプロパノールアミン等のアルカノールアミン、クロロシラン又はアルコキシシラン等が挙げられる。
【0054】
高温下でのレジスト膜の黄変をより一層抑制できるので、上記白色フィラー(C)の酸性部位と反応可能な化合物は、塩基性化合物であることが好ましい。塩基性化合物の場合、白色フィラー(C)の塩基性をより高めることができる。高温下でのレジスト膜の黄変をさらに一層抑制できるので、上記塩基性化合物は、多価アルコール、アルカノールアミン及びアルコキシシランからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、アルカノールアミンであることが特に好ましい。アルカノールアミンの場合、レジスト膜が高温下で極めて黄変し難くなる。
【0055】
白色フィラー(C)と、白色フィラー(C)の酸性部位と反応可能な化合物とを反応させる方法として、(1)流体エネルギー粉砕機もしくは衝撃粉砕機等の乾式粉砕機に上記化合物と白色フィラー(C)とを投入し、白色フィラー(C)を粉砕する方法、(2)ヘンシェルミキサーもしくはスーパーミキサー等の高速攪拌機を用いて、上記化合物と、乾式粉砕した白色フィラー(C)とを攪拌し、混合する方法、(3)白色フィラー(C)の水性スラリー中に上記化合物を添加し、撹拌する方法等が挙げられる。
【0056】
なお、本発明に係る感光性組成物は、煮沸法により測定されたpHが6.8以上11以下の白色フィラー(C)に加えて、煮沸法により測定されたpHが6.8未満、又は該pHが11を超える白色フィラーを含有してもよい。
【0057】
〔その他の成分〕
本発明に係る感光性組成物は、光重合開始剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。また、無機フィラーの塩基性を高めることにより、高温下でのレジスト膜の黄変をより一層抑制できるので、無機フィラーの酸性部位と反応可能な化合物を含有させてもよい。
【0058】
光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシム、またはこれらの誘導体等が挙げられる。1種の光重合開始剤が用いられてもよく、2種以上の光重合開始剤が用いられてもよい。
【0059】
上記重合性炭化水素モノマーと重合性炭化水素ポリマーとの合計100重量部に対して、上記光重合開始剤は0.1〜30重量部の範囲内で含有されることが好ましく、1〜15重量部の範囲内で含有されることがより好ましい。光重合開始剤が上記好ましい範囲内で含有される場合には、感光性組成物の感光性をより一層高めることができる。
【0060】
〔調製方法〕
本発明に係る感光性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製できる。
【0061】
感光性組成物を硬化させるために使用される光源として、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源として、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ又はエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、感光性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は感光性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。
【0062】
〔LEDデバイス〕
本発明に係る感光性組成物は、LEDチップが基板に実装されているLEDデバイス中のソルダーレジスト膜の形成に好適に用いられる。図1は、本発明に係る感光性組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスを模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【0063】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2a上に、ソルダーレジスト膜3が形成されている。ソルダーレジスト膜3上に、LEDチップ7が搭載されている。
【0064】
基板2は、ガラス層5と樹脂層6とを有する積層基板からなる。もっとも、基板2は特に限定されず、樹脂と他の材料からなる積層基板に限らず、セラミック多層基板などの他の積層基板により形成されていてもよい。さらに、基板2は、単一の樹脂材料からなる樹脂基板であってもよい。基板2の上面2a上には、電極4a,4bが形成されている。電極4a,4bは、適宜の金属もしくは合金からなる。
【0065】
ソルダーレジスト膜3は、本発明の感光性組成物を基板2の上面2a上に塗工し、露光・現像することにより形成されている。より具体的には、電極4a,4bを形成した後に、基板2の上面2a上の全面に感光性組成物を塗工する。次に、下方に電極4a,4bが位置する部分が遮光部とされているマスクを用いて感光性組成物を上方から選択的に露光する。露光により、光が照射された領域では、感光性組成物が硬化する。遮光部で覆われた領域では感光性組成物の硬化は進行しない。従って、硬化していない感光性組成物を溶解する溶剤を用いて、露光されていない感光性組成物部分を除去する。このようにして、図1に示す開口部3a,3bを有するソルダーレジスト膜3を得ることができる。開口部3a,3bには、上記電極4a,4bがそれぞれ露出している。
【0066】
次に、下面7aに端子8a,8bを有するLEDチップ7をソルダーレジスト膜3上に搭載し、半田9a,9bにより端子8a,8bと電極4a,4bとをそれぞれ接合する。このようにして、LEDデバイス1が得られる。
【0067】
LEDデバイス1では、LEDチップ7を駆動すると、破線で示すように光が発せられる。この場合、LEDチップ7から基板2の上面2aとは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ソルダーレジスト膜3に到達した光が矢印Aで示すように反射される。ソルダーレジスト膜3は、白色であり、上記光を高い効率で反射させる。従って、矢印Aで示す反射光も利用されるので、LEDチップ7の光の利用効率を高めることができる。
【0068】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。
【0069】
まず、実施例及び比較例の評価方法を説明する。
【0070】
(評価方法)
(1)測定サンプルの調製
80mm×90mm×厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板からなる基板上に、スクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルバイアス製スクリーン印刷版を用いて、感光性組成物を全面に印刷した。印刷後、80℃のオーブン内で20分間印刷された感光性組成物層を乾燥させた。次に、紫外線照射装置を用い、未露光領域が遮光部とされているパターンを有するフォトマスクを介し、感光性組成物層に、波長365nmの紫外線を照射エネルギーが400mJ/cmとなるように、100mW/cmの紫外線照度で4秒間照射した。紫外線による硬化が進行し、白色のレジスト膜が形成された。照射後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト膜を浸漬して現像し、未露光部の感光性組成物層部分を除去した。このようにして、遮光部が開口部とされているパターンを有するレジスト膜を得た。しかる後、150℃のオーブン内でレジスト膜を1時間加熱し硬化させ、レジスト膜が形成されているサンプルを得た。なお、得られたサンプルにおけるレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0071】
(2)耐熱性
(1)で得たサンプルを加熱オーブン内に入れ、270℃で5分間加熱した。
【0072】
色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、熱処理される前のサンプルのL*、a*、b*を測定した。また、熱処理された後の評価サンプルのL*、a*、b*を測定し、これら2つの測定値からΔE*abを求めた。
【0073】
〔黄変度の評価基準〕
熱処理された後のサンプルのΔE*abが、1.8以下の場合を「◎」、1.8を超え、2.5以下の場合を「○」、2.5を超え、3以下の場合を「×」、3を超える場合を「××」として、結果を下記の表1に示した。
【0074】
(合成例1)(アクリルポリマー1)
温度計、攪拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてエチルカルビトールアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートを30:70のモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下した。さらに1時間攪拌した後、温度を120℃にまで上げた。
【0075】
この溶液を室温まで冷却した後、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用いて、グリシジルアクリレートをメタクリル酸及びメチルアクリレートの合計100に対し10のモル比となるように投入し、100℃で30分間得られた樹脂のカルボキシル基の等量と付加反応させ、しかる後室温まで冷却した。冷却後フラスコから溶液を取り出した。この溶液を分析したところ、固形分の酸価は60mgKOH/gであり、重量平均分子量が15,000のカルボキシル基含有樹脂を50質量%(不揮発分)を含む溶液であることが確かめられた。この溶液を、以下、アクリルポリマー1と呼ぶ。
【0076】
(実施例1)
アクリルポリマー1を100重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部と、ルチル型酸化チタン(D−918、堺化学社製)150重量部と、光ラジカル重合開始剤(「ルシリンTPO」、BASF社製)8重量部と、エポキシ化合物(B)としてシクロヘキセンオキシド骨格を有し、直鎖エーテル骨格を有しないエポキシ化合物である、3’4’−エポキシシクロヘキサン)メチル3’4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(「セロキサイド2021P」、ダイセル社製)10重量部と、エチルカルビトールアセテート30重量部とを配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合した。その後、混合機(SP−500、シンキー社製)を用いて、混合物を3分間脱泡することにより、感光性組成物を得た。
【0077】
得られた感光性組成物を、FR−4からなる基板上に、スクリーン印刷法により、塗工した。塗工後、80℃のオーブンで20分間乾燥させ、レジスト材料層を基板上に形成した。次に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、紫外線照射装置を用い、レジスト材料層に365nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが400mJ/cm2となるように100mW/cm2の紫外線照度で4秒間照射した。紫外線を照射した後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト材料層を浸漬して現像し、未露光部のレジスト材料層を除去することにより、基板上にレジスト膜のパターンを形成した。その後、150℃のオーブン内で1時間加熱しレジスト膜を後硬化させることで、レジスト膜を得た。得られたレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0078】
(実施例2〜7および比較例1〜2)
表1に記載された組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして感光性組成物を調製した。
【0079】
【表1】

【0080】
表1から明らかなように、比較例1では、エポキシ樹脂として、水添ビスA型エポキシ化合物を用いているため、得られたレジスト膜の耐熱性の評価において、ΔE*abが2.8と高かった。
【0081】
また、比較例2では、エポキシ化合物(B)を含有していないため、また白色フィラー(C)として、表面処理されていないルチル型酸化チタンを用いたため、ΔE*abが3.1とさらに高く、黄変が認められた。
【0082】
これに対して、実施例1及び2では、耐熱評価において、ΔE*abがそれぞれ1.8及び2.2と低く、高温下に晒されたとしてもレジスト膜の黄変が生じがたかった。特に、環状エーテル骨格を有し、該環状エーテル骨格がシクロヘキセンオキシル骨格であり、直鎖エーテル骨格を有しないエポキシ化合物を用いた実施例1によれば、ΔE*abを1.8とより一層低くなり、したがってレジスト膜の黄変がより一層生じがたいことがわかる。
【符号の説明】
【0083】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…ソルダーレジスト膜
3a,3b…開口部
4a,4b…電極
5…ガラス層
6…樹脂層
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、
(B)分子中に環状エーテル骨格を有し、かつ直鎖エーテル骨格を持たないエポキシ化合物と、(C)白色フィラーとを含有し、
前記(C)白色フィラーが、該白色フィラー5gを純水100mLに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、次に得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mLとした液のpHを測定したときに、pH6.8以上、11以下の値を示す白色フィラーである、感光性組成物。
【請求項2】
前記(A)のエポキシ化合物が有する環状エーテル骨格が、シクロヘキセンオキシド骨格であることを特徴とする、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記(C)白色フィラーがルチル型酸化チタンである、請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記(C)白色フィラーの含有量が3重量%以上、80重量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物である、ソルダーレジスト組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−181647(P2010−181647A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25196(P2009−25196)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】