説明

感冒用医薬組成物

【課題】 かぜの諸症状、特に咳、痰、さらにのどの痛みの症状を改善する上で有用な感冒用医薬組成物の提供。
【解決手段】 イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分およびカルボシステインを含有する感冒用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感冒用医薬組成物、さらに詳しくは、かぜの諸症状、特に咳、痰、さらにのどの痛みの症状を改善する上で有用なかぜ薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
かぜ症候群に対しては、その原因の80〜90%がウイルスによることから、抗ウイルス剤による治療が望ましいとされているが、十分な効果が期待できる抗ウイルス剤はインフルエンザウイルスに対するザナミビル水和物やリン酸オセルタミビルを除き、未だ見いだされていない。そのため、かぜの諸症状に対しては、対症療法や細菌による二次感染の予防などがその治療の中心であり、一般用かぜ薬として、例えば、発熱を解消するための解熱鎮痛剤、咳を抑制するための鎮咳去痰剤、呼吸器系の症状を改善するための気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤などを配合した製剤等が繁用されている。
一方、かぜ症候群においては、一般に、鼻水、鼻づまり、くしゃみ等の鼻症状、咳、痰、のどの痛みなどの咽喉頭症状などの呼吸器系症状、悪寒、頭痛、関節や筋肉の痛み等の全身症状などの諸症状が複合的に発現することが多い。その中でも咳、痰およびのどの痛みは睡眠を妨げたり、その症状により集中力を欠いたりし、患者にとって非常に苦しく、生活の質に影響を与える。
感冒薬には、これらの症状を早期に消失させるべく種々の成分が配合されている。例えば、痛みや発熱に対しては解熱鎮痛成分が、また、鼻の症状に対しては抗ヒスタミン成分が、また咳などには鎮咳成分や気管支拡張成分が、痰などには去痰成分が配合されている。
そして、解熱鎮痛成分としては、最近では、強力な解熱鎮痛作用を有するイブプロフェンが配合され、また咳の症状にはリン酸ジヒドロコデイン、痰の症状にはグアヤコールスルホン酸カリウム、塩化リゾチーム、塩酸ブロムヘキシンが配合され、これらを併用した感冒薬が広く用いられるに至っている。
しかし、従来の製剤では、複合的に発現するかぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みを効果的に改善することは困難であった。また、リン酸ジヒドロコデインを増量すれば鎮咳効果がさらに増強されることも考えられるが、副作用も増加することが懸念される。
そこで、気道粘液溶解薬であるアセチルシステイン、カルボシステインまたはこれらの塩と、気管支拡張薬であるトリメトキノール、フェニルプロパノールアミン、メトキシフェナミン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリンまたはこれらの塩を配合することを特徴とする医薬組成物(特許文献1参照)やグアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、クレゾールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン、アンブロキソール、アセチルシステインおよびカルボシステインの少なくとも1種、ならびにプソイドエフェドリンを含有することを特徴とする鎮咳用組成物(特許文献2参照)により、かぜによる咳嗽症状を改善する技術が提案されている。
しかし、これらの組合せのかぜ薬ではかぜによる咳、痰症状およびのどの痛みに対する改善作用は未だ充分ではないと考えられる。
【特許文献1】特開2002−348251号公報
【特許文献2】特開2002−363072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、かぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みを有効に改善または解消できるかぜ薬製剤である感冒用医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分を含有する感冒薬に、カルボシステインおよび抗炎症作用成分等を配合すれば、鎮咳去痰効果が顕著に向上し、かぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みを効果的に改善または解消でき、かつ便秘などの副作用の発現率は同程度であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分およびカルボシステインを含有する感冒用医薬組成物;
(2)鎮咳成分が、リン酸ジヒドロコデインである上記(1)記載の感冒用医薬組成物;
(3)気管支拡張薬が塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、塩酸トリメトキノールまたはその塩である上記(1)記載の感冒用医薬組成物;
(4)抗ヒスタミン成分が、クロルフェニラミン、カルビノキサミン、メキタジン、ケトチフェンまたはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である上記(1)記載の感冒用医薬組成物;
(5)さらにカフェイン類を含有する上記(1)記載の感冒用医薬組成物;
(6)さらにビタミン成分を含有する上記(1)記載の感冒用医薬組成物;
(7)さらに抗炎症成分を含有する上記(1)記載の感冒用医薬組成物;などを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の感冒用医薬組成物は、かぜの諸症状、特に咳、痰,さらにのどの痛みを有効に改善または解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の感冒用医薬組成物において、イブプロフェンは解熱鎮痛成分として配合されるものであり、その配合量は成人に対する1日服用量として150〜600mgが好ましい。
【0008】
鎮咳成分としては、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピンまたはその塩類(例、塩酸塩等)、ジメモルファンまたはその塩類(例、リン酸塩等)、クロペラスチンまたはその塩類(例、塩酸塩等)、塩酸エプラジノン、塩酸クロブチノール、オキセラジンまたはその塩類(例、クエン酸塩等)、クエン酸イソアミニル、クエン酸ペントキシベリン、ジブナートナトリウム、ヒドロコタルニンなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を併せて用いることができる。このうち、リン酸ジヒドロコデインが特に好ましく、成人1日服用量として12〜30mg配合するのが好ましい。
【0009】
気管支拡張成分としてはメチルエフェドリン、メトキシフェナミン、トリメトキノール、エピネフリン、エチルノルエピネフリン、エフェドリン、イソプレナリン、オルシプレナリン、クロルプレナリン、コルテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、アルブテロール、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、テルブタリン、ヘキソプレナリン、ホルモテロール、ツロブテロール、フェノテロール、プロカテロール、クレンブテロール、テオフィリン、アミノフィリン、コリンテオフィリン、プロキシフィリン、ジプロフィリンまたはこれらの塩類(例、塩酸塩、硫酸塩等)などが挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合せて用いることができる。このうち、塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、塩酸トリメトキノールが特に好ましい。気管支拡張成分の配合量は、成分によって異なるが、成人に対する1日服用量として塩酸メチルエフェドリンの場合、15〜110mg、塩酸メトキシフェナミンの場合、25〜150mg、塩酸トリメトキノールの場合、1.5〜6mgが好ましい。
【0010】
抗ヒスタミン成分が、クロルフェニラミン(d体,dl体を含む)、カルビノキサミン、メキタジン、ケトチフェン、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、ジフェニルピラリン、トリプロリジン、アリメマジン、プロメタジン、ホモクロルシクリジン、シプロヘプタジン、トラニラスト、アンレキサノクス、ケトチフェン、アゼラスチン、オキサトミド、フェキソフェナジン、エメダスチン、エピナスチン、エバスチン、セチリジン、ロラタジン、ベポタスチン、オロパタジンまたはこれらの塩類(例、マレイン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、硫酸塩等)などが挙げられ、これらは単独または2種以上を併せて用いることができる。このうち、マレイン酸クロルフェニラミン(d体,dl体を含む)、マレイン酸カルビノキサミン、メキタジン、フマル酸ケトチフェンが特に好ましい。抗ヒスタミン成分の配合量は、成分によって異なるが、成人に対する1日服用量としてマレイン酸クロルフェニラミンの場合、1.5〜12mg、マレイン酸カルビノキサミンの場合3〜16mg、メキタジンの場合、1〜6mg、フマル酸ケトチフェンの場合、0.5〜2mgが好ましい。
【0011】
カルボシステインは、去痰作用として知られている成分であるが、本発明においては鎮咳および去痰成分として配合されるものであり、本発明感冒薬においては成分1日服用量として500〜1500mg配合されるのが好ましい。
【0012】
本発明感冒薬には、さらにカルボシステイン以外の去痰剤、中枢神経興奮成分、ビタミン成分、抗炎症成分などを配合できる。
ここで、去痰剤としては、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム、ヒベンズ酸チペピジン、杏仁、桜皮、車前草、フドステイン、塩酸アンブロキソール、アセチルシステイン、塩酸メチルシステイン、塩酸エチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン,セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼ、塩化リゾチーム等が挙げられる。
中枢神経興奮成分としては、カフェイン類を用いることができる。
ビタミン成分としては、ビタミンB1またはその誘導体またはそれらの塩類、ビタミンB2またはその誘導体またはそれらの塩類、ビタミンC、ヘスペリジンまたはその誘導体またはそれらの塩類などであり、これらは単独または2種以上を併せて用いることができる。
抗炎症成分としては、トラネキサム酸(止血成分でもある)、グリチルリチン酸、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼまたはこれらの塩類などが挙げられ、これらは単独または2種以上を併せて用いることができる。このうち、トラネキサム酸、グリチルリチン酸、塩化リゾチーム、セラペプターゼまたはこれらの塩類が特に好ましい。抗炎症成分の配合量は、成分によって異なるが、成人に対する1日服用量としてトラネキサム酸の場合、42〜1500mg、グリチルリチン酸およびグリチルリチン酸ジカリウムの場合、20〜200mg、塩化リゾチームの場合、9〜90mg、セラペプターゼの場合、7.5〜30mgが好ましい。
【0013】
本発明の医薬組成物の投与形態や、剤型は、特に限定するものではないが、例えば、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル内に上記細粒剤や顆粒剤等を充填したカプセル剤等の固形製剤;液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液剤およびゼリー剤等の半固形製剤などの経口投与用製剤、特に、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口投与用固形製剤である場合が多い。これらの製剤は、必要に応じて薬理学的に許容される担体を用いて、常法により調製することができる。
本発明の感冒用医薬組成物は、かぜの諸症状、特に咳、痰およびのどの痛みの改善に優れた効果を有し、改善、解消できる。したがって、本発明の感冒用医薬組成物は、かぜの呼吸器症状、特に咳、痰、さらにのどの痛みの改善を目的とした一般用かぜ薬として有用である。
【0014】
本発明の感冒用医薬組成物を、例えば、ヒト等哺乳動物の感冒薬として用いる場合は、常法により、各有効成分に関して通常採用される投与量で経口的に投与できる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、下記例において特に断らない限り、各成分の配合量は成人1日服用量を示し、常法に従い製剤化するものとする。
【実施例1】
【0015】
【表1】


上記処方に従い、日本薬局方製剤総則、錠剤の項に準じて錠剤として製造した。
【実施例2】
【0016】
モルモットを用い、霧化したクエン酸を10分間吸入させて咳を惹起し、薬物投与前の10分間のクエン酸吸入により10〜20回の咳を誘発した動物を選択した。咳反射数をもとに無作為化法により群分けし、被験物質投与60分後、再度クエン酸を噴霧吸入させて、被験物質投与前と投与後の咳反射数の比および咳の実測値を測定した。
イブプロフェン(消炎鎮痛成分)、リン酸ジヒドロコデイン(鎮咳成分)、d-マレイン酸クロルフェニラミン(抗ヒスタミン剤)、dl-塩酸メチルエフェドリン(気管支拡張成分)および無水カフェインを含む感冒用組成物をベースとし、被験物質として、以下の表2のA〜Fを使用した。
【表2】


結果を表3および図1に示す。
【表3】


表2および図1から明らかなごとく、被験物質C(ベース)に、カルボシステインとトラネキサム酸を配合した被験物質EおよびFは、被験物質Cに比べて高い咳抑制率を示し、溶媒処置の対照群に比べて有意な鎮咳作用を示している。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上記載したごとく、本発明によれば、かぜの諸症状、特に咳、痰、さらにのどの痛みの症状を効果的に改善または解消できる、総合感冒薬を含む一般用かぜ薬として有用な感冒用医薬組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例2におけるモルモットのクエン酸誘発咳に対する被験物質の抑制作用を測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン、鎮咳成分、気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分およびカルボシステインを含有する感冒用医薬組成物。
【請求項2】
鎮咳成分が、リン酸ジヒドロコデインである請求項1記載の感冒用医薬組成物。
【請求項3】
気管支拡張薬が塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、塩酸トリメトキノールまたはその塩である請求項1記載の感冒用医薬組成物。
【請求項4】
抗ヒスタミン成分が、クロルフェニラミン、カルビノキサミン、メキタジン、ケトチフェンまたはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の感冒用医薬組成物。
【請求項5】
さらにカフェイン類を含有する請求項1記載の感冒用医薬組成物。
【請求項6】
さらにビタミン成分を含有する請求項1記載の感冒用医薬組成物。
【請求項7】
さらに抗炎症成分を含有する請求項1項記載の感冒用医薬組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−96749(P2006−96749A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242694(P2005−242694)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】