説明

感圧導電シート及びその製造方法、並びにこれを用いたタッチパネル

【課題】各種電子機器の入力操作に用いられる感圧導電シート及びタッチパネルに関し、透過性が良好で安定した操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】光透過性の弾性体16内に分散された複数の導電粒子17を連結接合させて導電体18を形成すると共に、この導電体18を厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列して感圧導電シート15を構成し、この感圧導電シート15を上基板1下面の上導電層2と、下基板3上面の下導電層4の間に挟持することによって、透過性が良好で安定した操作が可能な感圧導電シート、及びこれを用いたタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作に用いられるタッチパネル、及びこの感圧導電シートと製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やカーナビゲーション等の各種電子機器においては、液晶等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の表示素子に表示された文字や記号の視認や選択を行うと共に、指や専用ペン等でタッチパネルを押圧操作することによって、機器の各機能の切換えを行うものが増えている。
【0003】
このようなタッチパネルについて、図4を用いて説明する。
【0004】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表わしている。
【0005】
図4(a)は従来のタッチパネルの断面図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板、3は光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層2が、下基板3の上面には同じく下導電層4が、各々形成されている。
【0006】
また、5は光透過性の感圧導電シートで、透明なゴム等の弾性体6内に平均粒子径50μmで不透明な複数の導電粒子7が分散され、この感圧導電シート5が上導電層2と下導電層4の間に挟持されている。
【0007】
さらに、上導電層2の両端には一対の上電極(図示せず)が、下導電層4の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されてタッチパネルが構成されている。
【0008】
そして、このように構成されたタッチパネルは、液晶等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が電子機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0009】
以上の構成において、タッチパネル背面の表示素子の表示を視認しながら、上基板1上面の所定箇所を指或いはペン等で押圧操作すると、図4(b)に示すように、上基板1が撓み、押圧された箇所の感圧導電シート5が圧縮されて、その中の複数の導電粒子7が互いに接近し接触する。
【0010】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加されると、押圧された箇所の導電粒子7を介して上導電層2と下導電層4の間が導通され、これらの電極間の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われるように構成されているものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平5−143219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、弾性体6内の不透明な導電粒子7の平均粒子径が50μmと大きいため、導電粒子7の添加量を多くすると、感圧導電シート5の透過性が低下し、タッチパネル背面の表示素子の表示が見づらくなってしまい、逆に、導電粒子7の添加量を少なくすると、分散している導電粒子7間の間隔が大きくなり、押圧操作時の導電粒子7間の接触が不安定なものになってしまうという課題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、透過性が良好で安定した操作が可能な感圧導電シート、及びこれを用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0015】
本発明の請求項1に記載の発明は、光透過性の弾性体内に分散された複数の導電粒子を連結接合させて導電体を形成すると共に、この導電体を厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列して感圧導電シートを構成したものであり、導電体が弾性体内に直線状に配列されているため、弾性体の光透過性を損なうことなく良好な透過性が得られると共に、導電体の間隔分を押圧するだけで、複数の導電体同士が容易に接触する、安定した押圧操作が可能な感圧導電シートを得ることができるという作用を有する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、導電粒子の粒子径を5〜1000nmにすると共に、この導電粒子の弾性体に対する添加量を0.0001〜1.0体積%としたものであり、粒子径を5〜1000nmとすることによって、導電粒子の製作も容易で弾性体の良好な透過性が得られると共に、添加量を0.0001〜1.0体積%とすることによって、透過性が良好で押圧操作時の安定した接触が可能なものとすることができるという作用を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、複数の導電粒子が分散したシート状の弾性体に、厚さ方向へ磁界を印加して、複数の導電粒子を連結接合させて導電体を形成し、これを硬化させた後、膨潤性液体で弾性体を膨潤させ、導電体を厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列して請求項1記載の感圧導電シートを製作するものであり、磁界の印加によって導電体を形成し、弾性体の膨潤によって導電体を所定間隔で配列することによって、少ない導電粒子の添加量で、透過性が良好で安定した操作が可能な感圧導電シートを製作することができるという作用を有する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明において、弾性体の膨潤性液体による体積膨張率を、4〜100体積%としたものであり、導電体の所定間隔での配列を容易に行うことができるという作用を有する。
【0019】
請求項5に記載の発明は、下面に上導電層が形成された光透過性の上基板と、上面に上導電層と所定の空隙を空けて対向する下導電層が形成された光透過性の下基板の間に、請求項1記載の感圧導電シートを挟持してタッチパネルを構成したものであり、透過性が良好で安定した操作が可能なタッチパネルを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、透過性が良好で安定した操作が可能な感圧導電シート、及びこれを用いたタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0022】
なお、これらの図面のうち断面図は、構成を判り易くするために、厚さ方向の寸法を拡大して表している。
【0023】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図であり、同図において、15は透明な感圧導電シートで、透明なシリコーンゴム等の弾性体16内に分散された、粒子径5〜1000nmで不透明な強磁性導電粒子であるニッケルやコバルト、鉄等の各金属粉または各金属粉を混錬して形成した複数の導電粒子17が、連結接合して導電体18が形成されると共に、この複数の導電体18が厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列されて、感圧導電シート15が構成されている。
【0025】
また、1はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の上基板、3はガラスまたはアクリル、ポリカーボネート等の光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の上導電層2が、下基板3の上面には同じく下導電層4が、各々形成されている。
【0026】
そして、上導電層2と下導電層4の間には感圧導電シート15が挟持されると共に、上導電層2の両端には銀やカーボン等の一対の上電極(図示せず)が、下導電層4の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が、各々印刷等によって形成されてタッチパネルが構成されている。
【0027】
次に、以上のように構成された感圧導電シート15の製造方法について、図2の断面図を用いて説明する。
【0028】
図2(a)において、19はシート状の支持体で、先ず、この支持体19上面に、ニッケルやコバルト、鉄等からなる複数の導電粒子17が0.0001〜1.0体積%分散された透明なシリコーンゴム等を塗布し、シート状の弾性体16を形成する。
【0029】
次に、図2(b)に示すように、この弾性体16に厚さ方向へ電磁石等を用いて磁界を印加して、複数の導電粒子17が厚さ方向に連結接合された導電体18を形成した後、弾性体16を硬化させて、弾性体16内に複数の導電体18を直線状に配列させる。
【0030】
そして、この後、ジブチルフタレートやディーゼルオイル等の膨潤性液体に浸漬し、弾性体16を膨潤させることによって、図2(c)に示すように、直線状に配列された導電体18の間に所定の間隔を形成し、これを支持体19から剥離して、複数の導電体18が厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列された感圧導電シート15が製作される。
【0031】
なお、弾性体16内に分散する導電粒子17の粒子径は、粒径が小さくなりすぎると、その粒子のみで磁石の性質を持ち、粒子同士が固まりとなってしまうため、その径より大きい5〜1000nm、好ましくは約200nm以下とすることによって、導電粒子17の製作も比較的容易に行うことができると共に、不透明な導電粒子17によって弾性体16の光透過性を損なうこともなく良好な透過性を得ることができる。
【0032】
また、導電粒子17の弾性体16に対する添加量を0.0001〜1.0体積%、好ましくは0.05〜1.0体積%とすることによって、安定した導通が得られると共に、厚さ方向へ直線状に配列された複数の導電体18の所定間隔を確保でき透過性を良好なものとすることができる。
【0033】
さらに、弾性体16や膨潤性液体の材質によって、浸漬した時の弾性体16の体積膨潤率は異なり、厚さ方向へ直線状に配列された複数の導電体18の間隔も異なるものとなるが、この体積膨潤率を4〜100体積%、好ましくは15〜30体積%とすることによって、導電体18の間隔を制御し、複数の導電体18を所定間隔で容易に配列させることができる。
【0034】
そして、この感圧導電シート15を、下面に上導電層2が形成された上基板1と、上面に下導電層4が形成された下基板3の間に挟持したタッチパネルは、液晶等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が電子機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0035】
以上の構成において、タッチパネル背面の表示素子の表示を視認しながら、上基板1上面の所定箇所を指或いはペン等で押圧操作すると、図3の断面図に示すように、上基板1が撓み、押圧された箇所の感圧導電シート15が圧縮されて、厚さ方向へ所定の間隔を空け、弾性体16内に直線状に配列された複数の導電体18が互いに接近し接触する。
【0036】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加されると、押圧された箇所の互いに接触した複数の導電体18を介して、上導電層2と下導電層4の間が導通され、これらの電極間の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0037】
なお、この時、感圧導電シート15の弾性体16内には、粒子径の小さな導電粒子17が連結接合された複数の導電体18が、厚さ方向へ直線状に配列されているため、導電体18の間隔分を押圧するだけで、複数の導電体18同士が容易に接触すると共に、弾性体16の光透過性を損なうことなく良好な透過性が得られるように構成されている。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、光透過性の弾性体16内に分散された複数の導電粒子17を連結接合させて導電体18を形成すると共に、この導電体18を厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列して感圧導電シート15を構成し、この感圧導電シート15を上基板1下面の上導電層2と、下基板3上面の下導電層4の間に挟持することによって、透過性が良好で安定した操作が可能な感圧導電シート、及びこれを用いたタッチパネルを得ることができるものである。
【0039】
そして、複数の導電粒子17が分散したシート状の弾性体16に、厚さ方向へ磁界を印加して複数の導電体18を形成し、膨潤性液体で弾性体16を膨潤させて、導電体18を厚さ方向へ所定間隔で配列することによって、少ない導電粒子17の添加量で、透過性が良好で安定した操作が可能な感圧導電シート15を、容易に製作することができる。
【0040】
また、上基板1下面の上導電層2と下基板3上面の下導電層4の間には、感圧導電シート15が挟持され、上導電層2と下導電層4の間に空隙のないようにタッチパネルが形成されているため、太陽光や灯火等の外部光が当たった場合でも、反射や縞模様のニュートンリング等の発生が少なく、タッチパネル背面の表示素子等の表示を明確に視認することができる。
【0041】
さらに、上導電層2と下導電層4が互いに直接接触することがなく、上基板1の撓みも小さくできるため、指或いはペン等の押圧操作による上導電層2の耐磨耗性を高め、長期間の使用が可能なタッチパネルを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明による感圧導電シート及びこれを用いたタッチパネルは、透過性が良好で安定した操作が可能なものが得られ、各種電子機器の入力操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同製造方法を示す断面図
【図3】同操作時の断面図
【図4】従来のタッチパネルの断面図
【符号の説明】
【0044】
1 上基板
2 上導電層
3 下基板
4 下導電層
15 感圧導電シート
16 弾性体
17 導電粒子
18 導電体
19 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の弾性体と、この弾性体内に分散された複数の導電粒子からなり、上記複数の導電粒子を連結接合させて導電体を形成すると共に、この導電体を厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列した感圧導電シート。
【請求項2】
導電粒子の粒子径を5〜1000nmにすると共に、この導電粒子の弾性体に対する添加量を0.0001〜1.0体積%とした請求項1記載の感圧導電シート。
【請求項3】
複数の導電粒子が分散したシート状の弾性体に、厚さ方向へ磁界を印加して、上記複数の導電粒子を連結接合させて導電体を形成し、これを硬化させた後、膨潤性液体で上記弾性体を膨潤させ、上記導電体を厚さ方向へ所定の間隔を空け、直線状に配列する請求項1記載の感圧導電シートの製造方法。
【請求項4】
弾性体の膨潤性液体による体積膨張率を、4〜100体積%とした請求項3記載の感圧導電シートの製造方法。
【請求項5】
下面に上導電層が形成された光透過性の上基板と、上面に上記上導電層と所定の空隙を空けて対向する下導電層が形成された光透過性の下基板の間に、請求項1記載の感圧導電シートを挟持したタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−236988(P2006−236988A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15906(P2006−15906)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】